以下、本発明の実施形態について、図面を用いて以下に詳しく説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
[裏面保護シート]
まず、図1に本願発明の裏面保護シート60の断面の概略を示す。本願発明の裏面保護シート60は、図2に示した太陽電池モジュール10の反受光面の表面である裏面外側11となる耐候層Aの外表面61から少なくとも耐候層A、熱可塑性樹脂を含む絶縁層B、及び封止材接着層Cがこの順に積層されている。
(1)耐候層
耐候層Aは少なくとも、耐候層Aの外表面61が電離放射線硬化性樹脂組成物を電離放射線照射により架橋されて形成された層62(以下保護層62とも記載する。)を有する層である。必要に応じて外層ベースフィルム64を設けてもよい。また、必要に応じて保護層62と外層ベースフィルム64の間に密着性の向上、耐候性の向上を目的としてプライマー層63を設けてもよいし、更にバリア性が必要な場合には、ベースフィルム64の片面にバリア層68を設けてもよい。
耐候層Aの典型的な第一の形態は、図3に記載したように、耐候層Aの外表面61から、保護層62、プライマー層63、外層ベースフィルム64からなるものを例示できる。また、更にバリア性を付加したい場合には図4に示したようにプライマー層63と外層ベースフィルム64の間にバリア層68を形成することもできる。さらに、使用形態によって物理的強度、耐候性、耐加水分解性等の要求条件が満たされれば保護層62単独から形成されていても良い。
(1−1)電離放射線硬化性樹脂組成物を電離放射線照射により架橋されて形成された層(保護層とも称する。)
保護層62は、電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布後、電離放射線照射により架橋硬化して形成される層62であり本発明に必須となる層である。本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート60として、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して得られる保護層62を太陽電池モジュール10の裏面側の外表面61に積層することにより、耐候性、耐熱性、耐湿熱性等の耐久性や耐擦傷性を向上することが可能になる。該保護層62は、太陽電池モジュール10とした際の裏面外側11の構成と一致すこととなる。
本発明において、電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線、電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。
太陽電池モジュール10は、例えばガラス等で構成される前面透明基板30の上に、前面封止材40、太陽電池素子20、背面封止材50、及び裏面保護シート60等を順次積層し、封止材を構成する樹脂の溶融温度以上で加熱し真空吸引することで作成されるが、その際、保護層62はその弾性率が300Mpa以上1500Mpa以下であり、且つ、前記電離放射線硬化性樹脂組成物を電離放射線照射により架橋されて形成された層の破断伸度が10%以上100%以下であることを要する。
例えば、保護層62の弾性率が1500Mpaを超えると、保護層62の放射線硬化型樹脂が硬すぎるため、真空吸引時の歪曲に保護層が耐えられず、その端面からクラックが入る。また、太陽電池の稼働時に熱サイクル等による、保護層62とプライマー層63との熱膨張率・熱収縮率の差による収縮・膨張への追従性が低下して、応力が発生し、微細なひびの発生、密着性の低下等の不都合を生じ易くなるおそれがある。一方、前記弾性率が300Mpa以上とすることで、真空吸引時にも保護層62が十分に歪曲することで、クラックの発生を抑えることができ、更に、保護層62の表面にタック性が発現するのを効果的に抑制でき、ゴミの付着や、裏面保護シートをロール形態や重ねて保管したときに裏面保護シート同士で貼り付いてしまう等の不都合(ブロッキング)を回避することが可能になる。
また、保護層62の破断伸度が10%に満たないと、真空吸引時の歪曲に保護層62が追従する前に破断を生じ、その端面からクラックが入る。一方、前記破断伸度が100%を超えると、保護層62に十分な硬さが得られなくなり、砂や埃等により生じる小さな傷により太陽光の入射が阻害され、太陽電池モジュールの発電効率の低下につながる。
本発明において、弾性率は、引張弾性率もしくはヤング率を示しており、破断伸度とともに、テンシロン万能試験機を用い、JIS K7127:1999もしくはISO527−3に準拠して測定された値である。
測定条件測定機:テンシロン万能測定器「RTC−1250A」(株式会社エー・アンド・デイ社製)
測定資料:幅25mm×長さ(チャック間距離)50mm×厚さ10±5μmになるように、保護層62形成用の電離放射線硬化性組成物を塗布・乾燥した後、酸素濃度100ppm以下の窒素中雰囲気下において、加速電圧125kV吸収線量50kGy、搬送速度10m/minの条件にて電離放射線を照射して架橋硬化することによって製膜した測定試料を150℃のオーブンに投入後240秒放置した後、弾性率、及び、破断伸度を測定する。
なお、本発明において、電離放射線硬化性樹脂組成物を電離放射線照射により架橋されて形成された層(保護層62)の破断伸度は、保護層62が破断した時を破断伸度の値として測定する。仮に、積層体である耐候層(A)にて測定を行った場合でも、最初に破断する保護層62の破断時を破断伸度として測定しているため、外層ベースフィルム64の影響は極めて少ないものと想定される。
破断伸度は、引張試験機を用いて、速度50mm/minで引張、測定試料が切断(破断)したときの強度(引張荷重値を試験片の断面積で除した値)、および伸びを求める。引張伸びは次の式によって算出する。
引張伸び(%)=100×(破断時の測定試料長さ−試験前の測定試料長さ)/試験前の測定試料長さ
また、弾性率(ヤング率、引張弾性係数)は、試験装置・試験片は破断伸度と同じであり、ヤング率は試料が変形する直前での最大弾性(SSカーブの最大傾斜の接線の一次式)から求める。
本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物は、少なくとも電離放射線重合性オリゴマー及び反応性シリコーンアクリレートを含む組成物により形成されており、前記電離放射線重合性オリゴマーは、少なくとも、1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー40質量%から80質量%、及び1分子中に3個から15個のラジカル重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー20質量%から60質量%含有する混合物であることが好ましい。本条件の電離放射線硬化性樹脂組成物を前述の混合物とすることで保護層62の弾性率が300Mpa以上1500Mpa以下であり、且つ、前記電離放射線硬化性樹脂組成物を電離放射線照射により架橋されて形成された層の破断伸度が10%以上100%以下とすることができる。
電離放射線重合性オリゴマーは、公知の電離放射硬化型樹脂組成物に用いられているものを適用することができる。特に、本発明では、より具体的には、1分子中に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと1分子中に3〜15個のラジカル重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとを含む。
本発明のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1分子中に2個のラジカル重合性不飽和基を有するもの(いわゆる2官能ウレタンアクリレートオリゴマー)である。これは、例えばジイソシアネート、1分子中に水酸基を2個以上有する多価アルコール(好ましくは重量平均分子量が500〜2000)、末端に水酸基を有するとともにラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート化合物が結合してなるオリゴマーが挙げられる。このオリゴマーは重量平均分子量が1000〜4000であることが好ましい。前記分子量が1000未満では、硬化後の樹脂層においてウレタン(メタ)アクリレートの持つ柔軟性を十分に発揮できなくなるおそれが生じ、モジュール作成に保護層62にクラックを生じる可能性が高くなる。また、前記分子量が4000を超える場合には、耐汚染性等の特性が低下するおそれがある。
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物に使用することができるジイソシアネートとしては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式又は芳香族のイソシアネートであり、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物に使用することができる前記多価アルコールとしては、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール等が例示される。上記ポリエステルポリオールとしては、芳香族又はスピロ環骨格を有するジオール化合物と、ラクトン化合物又はその誘導体又はエポキシ化合物との付加反応生成物、多塩基酸とアルキレングリコールとの縮合生成物、及び環状エステル化合物から誘導される開環ポリエステル化合物があり、これらを単独又は2種以上を混合して使用することができる。例えば、上記の多塩基酸としてアジピン酸を用い、アルキレングリコールとの縮合生成物として得られる、両末端に水酸基を有するポリエステルジオール(特に重量平均分子量500〜2000)が、各種物性が良好であることから好ましく用いられる。上記ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物に使用することができる上記(メタ)アクリレートは、アクリル酸又はメタクリル酸あるいはこれらの誘導体のエステル化合物であって、末端に水酸基を有する。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピルアクリレート等の重合性不飽和基を1個有する(メタ)アクリル酸エステル化合物、あるいはその他の1分子中に重合性不飽和基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル化合物等が例示される。
本発明では、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、好ましくは、多価アルコール成分を、アルキレングリコールとアジピン酸から形成される重量平均分子量500〜2000のポリエステルポリオールとし、また、ジイソシアネート成分をイソホロンジイソシアネートとし、アクリレート成分をヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとし、これらを反応させて得られる重量平均分子量が1000〜3000のオリゴマーが望ましい。
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物に使用することができる上記脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1分子中に3個〜15個の(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合性不飽和基を有するものである。これは、脂肪族ジイソシアネート、多官能ポリオール、末端に水酸基を有するとともにラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートとを反応させて得られる、多官能(3〜15官能)ウレタンアクリレートである。
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物に使用することができる上記脂肪族ジイソシアネートは、例えば1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物に使用することができる上記多官能ポリオールは、前記の多価アルコールを基本骨格とし、官能基を複数有するものを使用することができる。例えば、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール等がある。上記ポリエステルポリオールとしては、芳香族またはスピロ環骨格を有するジオール化合物と、ラクトン化合物またはその誘導体またはエポキシ化合物との付加反応生成物、多塩基酸とアルキレングリコールとの縮合生成物、環状エステル化合物から誘導される開環ポリエステル化合物等がある。これらは、単独又は2種以上を混合して使用することができる。上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が例示される。上記多塩基酸とアルキレングリコールとの縮合生成物の多塩基酸としてアジピン酸を用い、アルキレングリコールと縮合生成物として得られる重量平均分子量500〜2000の、両末端に水酸基を有するポリエステルジオールが、各種物性が良好であることから好ましく用いられる。
上記(メタ)アクリレートc)は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピルアクリレート等の重合性不飽和基を1個有する(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられる。
本発明の電離放射線重合性オリゴマーとしては、前記の1分子中に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと1分子中に3〜15個のラジカル重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む混合物を用いる。特に、電離放射線重合性オリゴマーとして、1分子中に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー40質量%〜80質量%、及び1分子中に3〜15個のラジカル重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー60質量%〜20質量%からなる混合物を用いる。
前記1分子中に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが40質量%未満になると、硬化型樹脂層の可とう性、展性等が不十分となり、耐衝撃性が低下するおそれがあり、太陽電池モジュール10を作成する際に、受光面70をガラス等の前面透明基板30で覆い、前面封止材40、太陽電池素子20、背面封止材50、及び裏面保護シート60等を順次積層し、これらを真空吸引して、封止材を構成する樹脂の溶融温度以上で加熱する工程において、放射線硬化樹脂層である保護層62にクラックが入る場合が多くなる。
また、前記1分子中に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが80質量%を超える場合、裏面保護シート60の表面の耐擦傷性、耐候性、耐加水分解性に等の耐久性が低下するおそれがある。
なお、上記の1分子中に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと1分子中に3〜15個のラジカル重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの配合量は、硬化型樹脂層を形成する塗工組成物における、上記1分子中に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと1分子中に3〜15個のラジカル重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの合計質量に対する、各成分の質量%を表す。
本発明の電離放射線硬化性樹脂組成物には、ゴミの付着等の耐汚染性、裏面保護シートをロール形態や重ねて保管したときに裏面保護シート同士で貼り付いてしまう等の不都合(ブロッキング)の防止を目的として反応性シリコーンアクリレートを添加する。前記反応性シリコーンアクリレートとしては、特に限定されないが、前記の電離線放射線重合性オリゴマーと反応するものが好ましい。前記シリコーンアクリレートは、1分子中の側鎖、末端又はその両方に2個以上のアクリレート系の重合性不飽和基を有するもの使用できる。アクリレート系の重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基のいずれか1種以上のものが挙げられる。但し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタアクリロイル基の意味で用いる(以下同様に記載する)。なお、シリコーンアクリレートの平均分子量は、通常1000〜100000であることが好ましい。これらの反応性シリコーンアクリレートは、公知又は市販のものを使用することができる。
なお、本発明においては、上記のシリコーンアクリレートは、電子線硬化重合性オリゴマーとの混合物中にそのままの状態で存在していても良いが、ある程度上記オリゴマーとコポリマー化していてもよく、本発明はこのような態様も包含する。
本発明においては、保護層62を形成する際に、前記電離放射線硬化性樹脂に必要に応じて、各種添加剤を配合して塗工液である電離放射線硬化性樹脂組成物を得ることができる。これらの添加剤としては、例えば、光重合用開始剤、耐候性改善剤、着色剤、ブロッキング防止剤、重合禁止剤、架橋剤、充填剤、粘度調整剤等が挙げられる。尚、電離放射線硬化性樹脂組成物としては電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物を使用する場合には、光重合用開始剤を必要としないので、安定した硬化特性が得られる。
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜5.0質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができる。耐候性改善剤としては、公知の紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよい。着色剤は、保護層62に光遮蔽性付与、意匠性付与等を目的に用いることができる。光遮蔽性を目的とする場合は、酸化チタン等の白色顔料やカーボンブラック等の黒色顔料を保護層62とプライマー層63間の密着性を損なわない程度に添加することができ、具体的には、白色顔料として酸化チタンを添加する場合の添加量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対し、0.5〜300.0質量部の範囲が好ましい。黒色顔料としてカーボンブラックを添加する場合の添加量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対し0.5〜20.0質量部の範囲が好ましい。
前記電離放射線硬化性樹脂組成物にブロッキング防止剤を添加することにより、太陽電池モジュール用裏面保護シートをロール等に巻き取る際のブロッキングを防止することができると共に耐擦傷性を向上することが可能になる。この場合に添加されるブロッキング防止剤として、無機質微粉末、有機質微粉末等を用いることができる。該無機質微粉末としては、シリカ、タルク、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、水酸化アルミニウム、ケイ酸微粉末等が使用でき、該有機質微粉末として、耐熱性を有するアクリル、ウレタン、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、尿素系樹脂等からなるフィラー、スチレン架橋フィラー、ベンゾグアナミン架橋フィラー、ワックスなどが挙げられる。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどを用いることができる。架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などを用いることができる。充填剤としては、上述のブロッキング防止剤を用いることができる。粘度調整剤としては、上述の単官能性(メタ)アクリレートや有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を用いることができる。
本発明における保護層62の形成については、前記の電離放射線硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を得ることができる。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。高粘度の塗工液を用いる場合は、塗工液を加温したり、有機溶剤等で希釈したりして、適正粘度まで低下させて塗工することもできる。本発明においては、このようにして得られた塗工液を、塗布する表面に、硬化後の厚さが好ましくは0.5〜10.0μm程度になるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート、ダイコート、スリットコート、カーテンコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。塗工液が硬化後に相対的に硬い層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物系で構成される場合は、膜厚は比較的薄い方が保護層62のクラックは生じにくく、一方、塗工液が硬化後に相対的に軟らかい層を形成する組成物系である場合には、膜厚は比較的厚い方でも、保護層62のクラックは生じにくい傾向がある。
前述のようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線を照射して外未硬化器脂層を硬化させる場合、電離放射線の電子線源としては、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧10kV〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましく、10kV〜180kV程度で硬化させることがより好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物を、紫外線により硬化させる場合には紫外線源としては、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源を使用すれば良い。紫外線光源は電子線源にくらべて、コンパクトで、安全であり、かつ安価に入手できる。しかし、紫外線は、物質を透過する能力が電子線にくらべて劣るため、重合開始剤の添加、紫外線吸収性の物質の介在に留意する必要があるが、光重合の開始を阻害しない範囲で、紫外線吸収剤を配合することができる。高圧水銀灯を用いる場合、例えば紫外線を30〜1000mJ/cm2程度照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させることができる。該電離放射線硬化樹脂中のラジカル重合性不飽和基の反応率が60%以上となるように電離放射線照射により架橋硬化することが望ましい。
尚、ラジカル重合性不飽和基(アクリロイル基)の反応性は、FT−IRチャートのラジカル重合性不飽和基の特性ピークの消失を観察することで評価した。反応率とは、次式で表される。次式において「特性ピーク高さ」とは、チャート上に示されたIR特性ピークの高さを測定した値であり、基準特性ピークとは電離放射線照射前後で変化のほとんどないピークのことであり、本実施例ではラジカル重合性不飽和基の特性ピーク高さはC=C二重結合由来の810cm-1、基準特性ピーク高さはC−H結合由来の2960cm-1の特性ピーク高さを用いた。
[1−(電離放射線照射後のラジカル重合性不飽和基の特性ピーク高さ/電離放射線照射後の基準特性ピーク高さ電離放射)÷(線照射前のラジカル重合性不飽和基の特性ピーク高さ/電離放射線照射前の基準特性ピーク高さ)]×100
本発明で使用する電離放射線硬化性樹脂中の硬化前のモノマー中の官能基数が多いほど、ラジカル重合性不飽和基の反応性は低下する傾向があるが、反応点が多くなるため、架橋密度が高くなるので弾性率高くなり、破断伸度は低くなる。また、該硬化前のモノマーの分子量が小さいほどラジカル重合性不飽和基の反応性は低下する傾向があるが、反応点の距離(架橋点間分子量)が短くなるため、架橋密度が高くなるので弾性率高くなり、破断伸度は低くなる傾向がある。又、保護層62を形成する電離放射線硬化性樹脂の結晶性や剛直性が高くなると、弾性率も高くなる傾向がある。このような剛直性の高いものとして、イソボルニル骨格、アダマンタン骨格やベンゼン環等の環構造を有する樹脂が挙げられる。本発明において、このようなモノマーから得られる樹脂の電離放射線硬化性樹脂の特性等を考慮して好ましいモノマー、又はその組み合わせを選択する。尚、本発明で使用する電離放射線硬化性樹脂中の硬化前のモノマー中の官能基数が少ないほど硬化収縮は小さくなり、また、該硬化前のモノマーの分子量が大きくなるほど硬化収縮は小さくなる傾向がある。
保護層62の厚みは、0.5〜30.0μmが好ましく、2.0〜15.0μmがより好ましい。保護層62の厚みが0.5μm未満では耐候性等が不十分となり保護層62としての機能を充分に発揮し得なくなる。尚、保護層62の厚みは、その断面を電子顕微鏡(例えば、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope))等により、測定することができる。
マット剤は、表面保護層の表面をマット化できるものであれば良く、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、シリカ、シリコーン樹脂(パウダー、ビーズ)等の無機粒子;架橋アルキル、架橋スチレン、インゾグアナミン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリアミド系合成繊維等の有機材料パウダーないしビーズ等が挙げられる。この中でも、特にシリカを好適に用いることができる。また、未処理のシリカを使用するのが好ましい。ワックス処理された有機処理シリカは、撥液性のあるものと併用すると、シート表面からブリードする可能性があるが、上記未処理シリカではそのような問題を未然に回避することができる。
また、見かけ比重が0.05〜0.40g/cm3、0.45〜1.00g/cm3のシリカを併用することが好ましい。見かけ比重が小さいシリカは特に艶消し剤として使用し、見かけ比重が大きなシリカは特に減摩剤粒子として使用するのが好ましい。添加量の制限はないが、0.05〜0.40g/cm3のシリカは、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して通常0.5〜40.0質量部、特に5.0〜30.0質量部とすることが好ましい。また、0.45〜1.00g/cm3のシリカは、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して通常2.5〜10.0質量部とすることが好ましい。なお、0.05〜0.40g/cm3のシリカは、上述した未処理のシリカとすることが望ましい。
マット剤の粒径も限定的でなく、用途等に応じて適宜決定することができる。一般的には、粒径0.1〜30.0μm程度とし、特に粒径3.0〜6.0μmの範囲とすることがより好ましい。
(1−2)外層ベースフィルム
保護層62やプライマー層63、バリア層68は、裏面保護シート60の基材層66としての役割を果たす絶縁層Bと直接積層してもよいが、保護層62やプライマー層63、バリア層68を形成する際の基材として、外層ベースフィルム64を使用してもよい。外層ベースフィルム64を用いることで、保護層62形成の際に照射される電離放射線によるダメージから絶縁層Bを保護することができるとともに、バリア層68を真空プロセスで形成する際に巻き取りの径に対するフィルムの長さを長くする事が出来るため生産性が向上しコストを低減することができる。また、外層ベースフィルム64に長期耐久温度性や耐加水分解性等の耐候性材料を使用することで、裏面保護シート60の耐候性を向上することもできる。
外層ベースフィルム64の材料としてはポリエステル樹脂を用いることができる。ポリエステル系樹脂を形成するポリエステル系樹脂の原料ジカルボン酸化合物としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸等を用いることができる。上記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を挙げることができる。上記脂肪族ジカルボン酸成分としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を挙げることができる。
上記ジカルボン酸化合物を1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシ酸等を一部共重合してもよい。前記ポリエステル系樹脂の原料ジオール化合物としては、上記ジカルボン酸と縮合し、ポリエステル系樹脂を構成できるものであれば特に限定されない。このようなジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。上記ジオール化合物として、1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
上記ジカルボン酸化合物と、上記ジオール化合物とが縮合して形成されるポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用いることが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。上記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、強靭性、剛性、および耐熱性等に優れているために外層ベースフィルム64としての使用に適している。外層ベースフィルム64の厚みは、40〜70μm程度が好ましい。外層ベースフィルム64の厚みが前記40μm以上で基材としての機能を効果的に発揮することができる。
(1−3)プライマー層
本発明において、外層ベースフィルム64上、または絶縁層B上に保護層62を積層する際に密着性を向上させるために、外層ベースフィルム64、または絶縁層Bと保護層62間にウレタン系プレポリマーをイソシアネート系架橋剤で架橋硬化して形成されるポリウレタン樹脂からなるプライマー層63を設けることもできる。プライマー層63にポリウレタン樹脂を使用することにより、該ポリウレタン樹脂が架橋硬化する際に保護層62と外層ベースフィルム64、または絶縁層B上の間の密着性の向上が発現し、保護層62と外層ベースフィルム64、または絶縁層B上との間で経時変化による劣化を原因とする密着性の低下を抑制したり、温度変化による膨張・収縮に対する追従性が向上したりして、クラック、剥離等の発生を顕著に抑制することができる。また、ポリウレタン樹脂は、柔軟性と耐湿熱性にも優れているので、太陽電池モジュール用裏面保護シート60におけるプライマー層63として、長期間の使用においても該層間において層間剥離、クラック等の発生を顕著に抑制する効果を発揮する。
プライマー層63に使用する材料は、保護層62と外層ベースフィルム64、または絶縁層B間の密着性を向上するものであれば特に制限されるものではないが、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等を挙げることができる。上記樹脂その他等から選択される1種類または2種類以上を組み合わせたものを使用することができ、また、上記樹脂を共重合したものを使用することもできる。また、耐久性を付与するには、上記樹脂を主剤とし硬化剤を用いた組成物が好適に使用できる。硬化剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。ポリイソシアネート化合物が好ましく使用される。
硬化剤として一般に使用されるイソシアネート系硬化剤には、環状構造を有するイソシアヌレートタイプと鎖状構造を有するアロファネートタイプがある。イソシアヌレート系イソシアネートは、例えば、イソシアヌレート化触媒の存在下、有機ジイソシアネートを反応させて得られる。アロファネート変性イソシアネートは、例えば、アロファネート化触媒の存在下、ジオール化合物と有機ジイソシアネートを反応させて得られる。有機ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3、5、5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートが好ましい。
上記プライマー層63を形成するための組成物において、硬化剤である変性イソシアネートの含有量は、プライマー層63を形成する樹脂組成分100質量部に対し、5.0〜50.0質量部の範囲が好ましい。硬化剤の含有量がこの範囲内であると、十分な接着強度を有し、かつ長時間経過後の密着性が低下しないなどの利点がある。
添加剤プライマー層63には、例えば、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、色調、塗工適性、等を改良、改質する目的で、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、耐候性改善剤、着色剤等の種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができる。その添加量としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。例えば、などが挙げられる。着色剤は、色調を整える範囲で添加することが出来る。着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等をさらに配合してもよい。
ここで、プライマー層63の耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤や酸化防止剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5nm〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。また、トリアジン系、具体的には、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール、1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリ[[3,5−ビス−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]などが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。酸化防止剤としては、前述の高分子の光劣化あるいは熱劣化等を防止するものであり、例えば、フェノール系、アミン系、硫黄系、燐酸系、その他等の酸化防止剤を使用することができる。また、使用目的に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤、光安定剤や酸化防止剤を用いることもできる。上記紫外線吸収剤としては、太陽光中の有害な紫外線を吸収して、分子内で無害な熱エネルギーへと変換し、上記樹脂中の光劣化開始の活性種が励起されるのを防止するものである。具体的には、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サルチレート系、アクリルニトリル系、金属錯塩系、ヒンダードアミン系、および、超微粒子酸化チタン(粒子径:0.01μm〜0.06μm)あるいは超微粒子酸化亜鉛(粒子径:0.01μm〜0.04μm)等の無機系等の紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも1種類のものを使用することができる。
有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、1種単独 又は2種以上を混合して使用できる。
プライマー層63の形成は、上記プライマー層63形成用塗工液を外層ベースフィルム64、または、絶縁層B上に塗布され、乾燥後加熱下に架橋硬化されて形成される。前記プライマー層63形成用塗工液の塗布方法としては、硬化後の厚さが0.5μm〜8μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート、ダイコート、スリットコート、カーテンコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行い、未硬化樹脂層を形成させる。次に、加熱によりプライマー層63を硬化させる。プライマー層63の厚みが前記0.5μm未満では保護層との密着性が充分でなく、一方、前記8.0μmを超えるとコストが高くなり経済上の不都合を生ずる。尚、プライマー層63の形成は、実用的には外層ベースフィルム64、または、絶縁層B上にプライマー層63と保護層62を塗布して逐次的に硬化させる、下記方法を採用することが望ましい。
外層ベースフィルム64、または、絶縁層B上にプライマー層63形成用塗工液を塗布し、該層が乾燥した後に電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布する。その後、先ず電離放射線硬化性樹脂組成物からなる保護層62を電離放射線照射により架橋硬化させて形成し、次に、加熱によりプライマー層63を架橋硬化させて形成する。尚、プライマー層63を架橋硬化させて形成する際、40〜45℃程度の弱加熱下に7日間程度エージングさせて硬化することが好ましい。このような硬化方法を採用することにより、プライマー層63が確実に架橋硬化するばかりでなく、プライマー層63を形成する樹脂中のイソシアネート残基が外層ベースフィルム64、または、絶縁層Bを形成する樹脂中の水酸基残基、及び保護層62を形成する樹脂中の水酸基残基との間で付加反応を進行させて両層間の密着性を一層向上させる効果が発現する。
(1−4)バリア層
裏面保護シート60に高いバリア性が要求される場合には、外層ベースフィルム64を構成するフィルムの表面に金属もしくは金属酸化物の蒸着膜、またはアルミニウム箔を積層することができる。
外層ベースフィルム64を構成するフィルムに金属または金属酸化物蒸着膜を形成し水蒸気バリア層として、外層ベースフィルム64を構成するフィルムに形成する金属または金属酸化物の蒸着膜について説明すると、該金属または金属酸化物の蒸着膜としては、例えば、物理気相成長法(PVD法)、または、化学気相成長法(CVD法)、あるいは、その両者を併用して、金属または金属酸化物の蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を製造して形成することができる。かかる物理気相成長法による金属または金属酸化物の蒸着膜としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法を用いて金属または金属酸化物の蒸着膜を形成することができる。具体的には、金属または金属酸化物を原料とし、これを加熱し、蒸気化して基材フィルムの上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属酸化物を使用し、必要ならば、酸素ガス等を導入して酸化させて基材フィルムの上に蒸着する酸化反応蒸着法、更に、酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて金属または金属酸化物の蒸着膜を形成することができる。蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式等にて行うことができる。
上記の異種の金属または金属酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜としては、まず、外層ベースフィルム64を構成するフィルムの上に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る金属酸化物の蒸着膜を設け、次いで、該金属酸化物の蒸着膜の上に、物理気相成長法による金属酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる金属酸化物の蒸着膜を構成することが望ましい。一方、外層ベースフィルム64を構成するフィルムの上に、先に、物理気相成長法により、金属酸化物の蒸着膜を設け、次に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る金属酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる金属酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
アルミニウム箔水蒸気バリア層において外層ベースフィルム64を構成するフィルムにアルミニウム箔を積層する場合には、その厚みは20〜40μm程度とすることが好ましい。厚みが上記範囲未満では積層時に皺が発生する等の不都合を生じてバリア機能を充分に発揮しないおそれがあり、一方、上記範囲を超えるとコストが高くなり経済上の問題を生ずる。
(2)絶縁層
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート60を構成する絶縁層Bは、太陽電池素子20及び太陽電池モジュール10中の配線と外部の絶縁を担うと共に、該裏面保護シート60中で支持体としての役目を有しているが、更にその使用目的により、強度、剛性、水蒸気バリア性、耐候性、耐熱性、耐加水分解性、光反射性、意匠性等の機能が必要とされる場合がある。絶縁層Bが支持体等としての機能を発揮するには少なくとも熱可塑性樹脂1層、又は2層以上から形成される。更に水蒸気バリア性が必要とされる場合には、該1層、又は2層以上の熱可塑性樹脂の少なくとも1層の片面に金属もしくは金属酸化物蒸着膜を設けた水蒸気バリア層、又はアルミニウム箔からなる水蒸気バリア層を形成することができる。
絶縁層Bを形成する熱可塑性樹脂基材に使用可能な、強度等に優れた樹脂としては、例えば、機械的、化学的、あるいは、物理的強度に優れ、かつ、耐候性、耐熱性、耐水性、耐光性、耐薬品性、防湿性、意匠性、その他等の諸特性に優れ、その長期間の使用に対し性能劣化等を最小限に抑え、耐久性に富み、その保護の機能性に優れ、軽く、かつ、加工性等に優れ、そのハンドリングし易い等の利点を有し、更に、より低コストで安全性に富む樹脂の1種ないし2種以上を使用することができる。具体的には、上記の樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂を使用することができる。
尚、上記ポリプロピレン系樹脂を使用する場合にフィルム又はシートとしては延伸と無延伸のいずれのも使用することができ、また、耐加水分解性が要求される場合には、ポリエステル系樹脂として、オリゴマーの含有量が0.1質量%〜0.6質量%であり、さらにカルボキシル末端基量が3当量/トン〜15当量/トン程度である耐加水分解性ポリエステル樹脂を使用することもできる。本発明においては、上記の樹脂の中でも、高密度ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、又はポリエステル系樹脂が好ましい。絶縁層Bに種々の機能を付与するために、絶縁層Bを形成するいずれかの1層、又は2層以上の層に以下の添加剤を配合することができる。
絶縁層Bに光反射機能を付与するため絶縁層Bを形成するいずれかの層に添加する白色顔料としては、上述した白色層用透明樹脂に均一に分散することができ、本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シートを太陽電池モジュール10に用いた場合に、上記太陽電池モジュール10に含まれる太陽電池素子20を透過した光を効率よく反射することができるものであれば特に限定されるものではない。このような白色顔料としては、具体的には、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム等の金属酸化物;炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機化合物のうちの1種類のみを単独で用いても良く、2種類以上を併用して用いても良い。本発明においては、なかでも酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウムを好ましく用いることができる。本発明に用いられる白色顔料の粒径としては、光を反射することができるものであれば特に限定されるものではないが、平均粒径が、0.1〜10.0μmの範囲が好ましく、0.1μm〜3.0μmの範囲がより好ましい。白色層の厚みは、太陽電池モジュール10とした際に、十分な強度等を示すことができるものであれば特に限定されるものではないが、35μm〜200μmが好ましく、80μm〜180μmがより好ましい。
絶縁層Bを形成するいずれかの層に意匠性等の点から、カーボンブラックのような黒色顔料を添加することができる。
その他の添加剤なお、上記の各種の樹脂の1種ないし2種以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができる。その添加量としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
絶縁層Bを形成するフィルムないしシ−トの製造
本発明において、上記絶縁層Bを構成する各フィルムないしシートとしては、例えば、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレ−ション法、その他等の製膜化法を用いて、上記の各種の樹脂を単独で製膜化する方法、あるいは、2種以上の各種の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化する方法、更には、2種以上の樹脂を使用し、製膜化する前に混合して製膜化する方法等により、各種の樹脂のフィルムないしシートを製造することができる。更に、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂のフィルムないしシ−トを使用することができる。本発明において、絶縁層Bを構成する樹脂層のうち支持体としての機能が要求される基材層66の厚みは80μm〜150μmが好ましく、90μm〜120μmがより好ましい。
(3)封止材接着層
本発明においては、裏面保護シート60と背面封止材50との密着性を向上する目的で封止材接着層Cが設けられている。封止材接着シートCは、少なくとも裏面保護シート60の最も受光面70に近い面、すなわち封止材接着層Cの最も受光面70に近い面に易接着層67が形成されている。
易接着層67の材料としては、背面封止材50の材料であるフッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレンフィン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、その他等の樹脂の1種ないし2種以上の混合物など、モジュール作成時に熱圧着された際に優れた接着性を有する材料であれば、特に制限のあるものではない。背面封止材50と同系統材料のフィルム、シートもしくは、塗布膜が使用可能である。
フィルムとしては、白色もしくは透明のポリオレフィン系の材料高密度ポリエチレン(HDPE)、または無延伸ポリプロピレン系樹脂(CPP)などが好適に用いられる。易接着層67は裏面保護シート60の基材層66と背面封止材50との密着性を向上させる機能を有する。又、これらの易接着層67を形成する前記透明ポリエステル系樹脂層、又は透明延伸ポリプロピレン系層に白色粒子を配合して太陽光反射機能を付与することができる。
(4)接着層
本願発明において耐候層Aと絶縁層Bの間、及び絶縁層Bを形成する複数の熱可塑性樹脂の間、絶縁層Bと封止材接着層Cの間の積層にドライラミネート積層法が採用される場合、接着層65を形成してもよい。接着層65を構成するラミネート用接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー、あるいは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤、その他等の接着剤を使用することができる。
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよい。上記の接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、あるいは、印刷法等によって施すことができ、そのコーティング量としては、0.1g/m2〜10.0g/m2(乾燥状態)程度が望ましい。なお、本発明において、樹脂のフィルムないしシートを使用し、ドライラミネートによる積層を行う場合には、その表面に、予め、コロナ放電処理、オゾン処理、あるいは、プラズマ放電処理等の表面改質前処理を任意に施すことができる。上記接着剤中には、紫外線劣化等を防止するために、光安定剤、紫外線吸収剤および/または酸化防止剤を添加することができる。
(5)太陽電池モジュール用裏面保護シートの製造方法
本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート60の厚みは、太陽電池モジュール10を形成させた際に、十分な強度等を示すことができるものであれば特に限定されるものではないが、150μm〜450μmの範囲であることが好ましく、200μm〜350μmの範囲がより好ましい。本発明の太陽電池モジュール用裏面保護シート60の製造方法としては、外層ベースフィルム64上に、プライマー層63と保護層62をそれぞれ塗工後、硬化により形成し、絶縁層B及び封止材接着層Cを構成する上記各層が密着性良く積層されたものとすることができるものであれば特に限定されるものではない。
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池モジュール10は、前面透明基板30、前面封止材40、太陽電池素子20、背面封止材50、及び裏面保護シート60がこの順に配置された太陽電池モジュール10であって、前記裏面保護シート60は、太陽電池モジュール10の裏面外側11から、少なくとも保護層62を有する耐候層A、熱可塑性樹脂を含む絶縁層B、封止材接着層Cがこの順に積層されてなり、保護層62が電離放射線硬化性樹脂組成物を電離放射線照射により架橋硬化して形成された層であることを特徴とする。図2に例示するように、本発明の太陽電池モジュール10は、例えば、少なくとも、太陽電池モジュール用裏面保護シートである裏面保護シート60と、該裏面保護シート60上に形成された、背面封止材50と、該背面封止材50上に形成された、太陽電池素子20と、該太陽電池素子20上に形成された前面封止材40と、該前面封止材40上に形成された前面透明基板30とから構成されるものである。尚、図2中の裏面保護シート60は、図1、図3、又は図4に例示された、本発明の態様に係る太陽電池モジュール用裏面保護シ−トである。
本発明によれば、裏面保護シート60を用いることによって、十分な表面硬さにより耐擦傷性、耐候性、耐加水分解性に等の耐久性に優れるとともに、太陽電池モジュール10を作成する際に、受光面70をガラス等の前面透明基板30で覆い、前面封止材40、太陽電池素子20、背面封止材50、及び裏面保護シート60等を順次積層し、これらを真空吸引して、封止材を構成する樹脂の溶融温度以上で加熱する工程において、放射線硬化樹脂層である保護層62にクラックが入ることのない十分な柔軟性を合わせ持つ裏面保護シート60とすることが可能となる。以下、本発明の太陽電池モジュール10の各構成について説明する。
[太陽電池素子]
本発明に用いられる太陽電池素子20としては、一般的な太陽電池素子を用いることができる。具体的には、単結晶シリコン型太陽電池素子、多結晶シリコン型太陽電池素子等の結晶シリコン太陽電子素子、シングル接合型あるいはタンデム構造型等からなるアモルファスシリコン太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電子素子、カドミウムテルル(CdTe)や銅インジウムセレナイド(CuInSe2)等のII−VI族化合物半導体太陽電子素子、有機太陽電池素子等を用いることができる。また本発明に用いられる太陽電池素子20としては、薄膜多結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜微結晶性シリコン太陽電池素子、薄膜結晶シリコン太陽電池素子とアモルファスシリコン太陽電池素子とのハイブリット素子等も使用することができる。
[透明前面板]
本発明に用いられる前面透明基板30としては、太陽光の透過性を有する基板であれば特に限定されず、例えば、ガラス板、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂(各種のナイロン)、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種の樹脂フィルムを用いることができる。また、前面透明基板30の厚みは、所望の強度を実現できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、12μm〜7000μmが好ましく、25μm〜4000μmがより好ましい。
[前面封止材]
本発明に用いられる前面封止材40としては、太陽光に対する透過性を有し、太陽電池素子20の裏面の平滑性を保持するための熱可塑性、太陽電池の保護の点で耐スクラッチ性、衝撃吸収性を有し、かつ、上記前面透明基板30および太陽電池素子20に対して接着性を示すものであれば特に限定されない。このような前面封止材40を構成する材料の具体例としては、例えば、フッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレンフィン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、その他等の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。なお、本発明においては、前面封止材40を構成する樹脂には、耐熱性、耐光性、耐水性等の耐候性等を向上させるために、その透明性を損なわない範囲で、例えば、架橋剤、熱酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光酸化防止剤、その他等の添加剤を任意に添加し、混合することができる。本発明においては、太陽光の入射側である前面封止材40としては、耐光性、耐熱性、耐水性等の耐候性を考慮すると、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂が望ましい素材である。尚、上記の充填剤層の厚さは、200μm〜1000μmが好ましく、350μm〜600μmがより好ましい。
さらに、本発明に用いられる前面封止材40は、全光線透過率が、70%〜100%の範囲が好ましく、80%〜100%の範囲がより好ましく、90%〜100%の範囲が更に好ましい。上記全光透過率が、上記範囲内であることにより太陽電池モジュール10の発電効率が損なわれるのを抑制することができる。尚、上記全光線透過率は、通常の方法により測定することができ、例えば日本電色工業(株)製、型式:HAZEメータ NDH2000等により測定することができる。
[背面封止材]
本発明に用いられる背面封止材50は、裏面保護シート60との接着性を有し、太陽電池素子20の裏面の平滑性を保持するための熱可塑性を有し、太陽電池の保護の点で耐スクラッチ性、衝撃吸収性を有し、かつ、耐熱性、耐光性、耐水性等の耐候性を有するものであれば特に限定されない。上記背面封止材50としては、例えば、フッ素系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレンフィン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、その他等の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。なお、背面封止材50を構成する樹脂には、耐熱性、耐光性、耐水性等の耐候性等を向上させるために、例えば、架橋剤、熱酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、光酸化防止剤、その他等の添加剤を任意に添加し、混合することができる。なお、背面封止材50の厚さは、200μm〜1000μm好ましく、350μm〜600μmがより好ましい。さらに、背面封止材50としては、複数のシートが積層された構成を有するものであっても良い。このような複数のシートが積層された構成としては、例えば、無機蒸着膜を有するガスバリア性シートが積層された構成や、強靭性シートが積層された構成を例示することができる。
その他にも本発明においては、太陽光の吸収性、補強、その他等の目的のもとに、さらに、他の層を任意に加えて積層することができるものである。このような他の層としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネ−ト系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース等の公知の樹脂フィルムないしシートから任意に選択して使用することができる。
<太陽電池モジュールの作成>
本発明において前面透明基板30、前面封止材40、太陽電池素子20、背面封止材50、及び裏面保護シート60をこの順で積層した後、これらを加熱圧着する方法としては、上記各構成を密着できる方法であれば特に限定されず、一般的に公知の方法を用いることができる。このような方法としては、例えば、前面透明基板30、前面封止材40、太陽電池素子20、背面封止材50、及び裏面保護シート60をこの順で積層した後、これらを一体として、真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等を例示することができる。上記ラミネーション法を用いた際のラミネート温度は、通常、90℃〜230℃が好ましく、110℃〜190℃がより好ましい。なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に本実施例、比較例で評価用に作製した樹脂層、及び評価方法を記載するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(1)太陽電池モジュール用裏面保護シート中の各層の形成に使用した塗工液、及び樹脂フィルム
保護層62形成に使用した電離放射線硬化性樹脂組成物(塗工液)のオリゴマー(A)とオリゴマー(B)組成を表1に示す。
保護層62形成に使用した電離放射線硬化性樹脂組成物(塗工液)は、以下のものをそれぞれ用いた。
・オリゴマー(A):1分子中に少なくとも2個のラジカル重合性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
・オリゴマー(B):1分子中に3〜15個のラジカル重合・性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
・シリカ:平均粒径5μm、表面未処理品(見かけ比重:0.1〜0.4)+平均粒径4μm(見かけ比重:0.45〜0.85)
・反応性シリコーンアクリレート:両末端反応性シリコーンアクリレート
プライマー層63の形成に使用した塗工液は、ポリカーボネートジオールとイソホロンジイソシアネートとから得られる、末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー100質量部に対し、架橋剤としてHDI変性イソシアヌレート17質量部を添加し、有機溶剤MEKを塗工適正粘度に調整し、プライマー層用塗工液を調製した。
裏面保護シート60の外層ベースフィルム64に使用したポリエステル樹脂フィルムは、厚さ50μmの耐加水分解性二軸延伸ポリエステルフィルム(東レ(株)製、商品名:ルミラーX10S)を使用した。
裏面保護シート60の基材層66に透明二軸延伸ポリエステルフィルムに帝人・デュポンフィルム社製メリネックスS(100μm)を使用した。
裏面保護シート60の易接着層67に(イ)白色高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム白色HDPE層には、厚さ120μmの白色高密度ポリエチレンフィルム(白色顔料として、平均粒径5μmの酸化チタンが8質量%、及び平均粒径0.3μmの酸化チタンが3質量%となるように配合されたもの)を用いた。
その他接着剤層の形成には2液ウレタン系接着剤を使用した。
(2)裏面保護シートの作製
太陽電池モジュール用裏面保護シート60の一部を形成する、保護層62、プライマー層63、及びポリエステル系樹脂層よりなる外層ベースフィルム64からなる耐候層Aおよび裏面保護シート60を作製し、評価を行った。
耐候層Aの作製は、保護層62、プライマー層63、及びポリエステル系樹脂層よりなる外層ベースフィルム64からなる耐候層Aを下記方法により作製した。
(イ)コロナ処理を施した表面張力が60dyneを示すポリエステル系樹脂層よりなる外層ベースフィルム64上に、プライマー層形成用塗工液を架橋硬化後の厚みが3μmになるようにMEKで粘度を調整した後、塗布し、乾燥後保護層を硬化後の厚みが5μmになるように電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布し乾燥させた。
(ロ)電離放射線硬化性樹脂組成物からなる層に、電子線照射装置(岩崎電気(株)製、型式:エレクトロカーテンEC250/150/180L)を用いて酸素濃度100ppm以下の窒素中雰囲気下において、加速電圧125kV吸収線量50kGy、搬送速度10m/minの条件で架橋硬化させ、保護層62を形成した。
(ハ)電離放射線硬化性樹脂組成物を電離放射線照射により架橋硬化させて保護層62を形成し、次に、40〜45℃程度の加熱下に7日間エージングさせて塗工液を架橋硬化させて、ウレタン樹脂からなるプライマー層63を形成することにより、耐候層Aを作製した。
裏面保護シートの作製は、耐候層Aの保護層62とは反対側に、2液ウレタン系接着剤を5μm塗工し、次に透明二軸延伸PETフィルム(帝人・デュポン社製メリネックスS 厚み100μm)を貼り合わせ、次に、2液ウレタン系ウレタン接着剤を5μm塗工し、白色HDPE120μmを貼り合わせた。これを40℃の加熱下で7日間硬化させ、太陽電池モジュール用裏面シートを作製した。
(3)太陽電池モジュールの作製
硝子よりなる前面透明基板30の上に前面封止材40、太陽電池素子20、背面封止材50、上記で作成した実施例1から実施例3、比較例1から比較例2の裏面保護シート60を積層して、真空熱ラミネート加工により150℃にて4分間の真空引き後、9分間加圧することによって太陽電池モジュール10を作製した。
(4)評価方法
裏面保護シートを作製した後、裏面保護シートの保護層面について以下の評価を行った。
(4−1)弾性率、及び破断伸度の測定
測定条件測定機:テンシロン万能測定器「RTC−1250A」(株式会社エー・アンド・デイ社製)
測定資料:幅25mm×長さ(チャック間距離)50mm×厚さ10±5μmになるように、保護層62形成用の電離放射線硬化性組成物を塗布・乾燥した後、酸素濃度100ppm以下の窒素中雰囲気下において、加速電圧125kV吸収線量50kGy、搬送速度10m/minの条件にて電離放射線を照射して架橋硬化することによって製膜した測定試料を150℃のオーブンに投入後240秒放置した後、弾性率、及び、破断伸度を測定した。
破断伸度は、引張試験機を用いて、速度50mm/minで引張、測定試料が切断(破断)したときの強度(引張荷重値を試験片の断面積で除した値)、および伸びを求める。引張伸びは次の式によって算出する。
引張伸び(%)=100×(破断時の測定試料長さ−試験前の測定試料長さ)/試験前の測定試料長さ
また、弾性率(ヤング率、引張弾性係数)は、試験装置・試験片は破断伸度と同じであり、ヤング率は試料が変形する直前での最大弾性(SSカーブの最大傾斜の接線の一次式)から求める。
(4−2)真空プレス加工性
作成した太陽電池モジュール10の耐候層外表面に染色液を塗布後ふき取って観察した。30枚確認して、まったくクラックがみられなかったものを「○」、1枚から10枚にクラックがみられたものを「△」、10枚以上のクラックがみられたものを「×」として評価した。結果、実施例1から実施例3では、クラックは、認められなかった。一方、比較例2では、クラック発生したものが認められた。
(4−3)耐スチールウール試験
スチールウール(#0000)を用いて、保護層表面を一定の圧力(1500g/cm2)で10往復擦った後の表面状態(傷つきの有無)を評価した。傷つきが認められた場合を「×」、傷つきが認められなかった場合を「○」と評価した。
これらの評価の結果を表1に示す。本発明に該当する実施例1乃至実施例3においては、モジュール化に際の真空プレス加工時のクラックが発生せず、優れた耐擦傷性(耐スチールウール試験)を示すことが明らかとなった。
実施例1から実施例3の太陽電池用集電シートを用いて作成した太陽電池モジュールは、屋外の環境で3500時間放置する試験を行った結果、太陽電池モジュール10の発電効率の低下もなく、優れた耐久性を示すものであった。