JP6185608B2 - 積層型圧電素子およびこれを備えた噴射装置ならびに燃料噴射システム - Google Patents

積層型圧電素子およびこれを備えた噴射装置ならびに燃料噴射システム Download PDF

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Description

本発明は、例えば、圧電駆動素子(圧電アクチュエータ),圧力センサ素子および圧電回路素子等として用いられる積層型圧電素子およびこれを備えた噴射装置ならびに燃料噴射システムに関する。
積層型圧電素子として、圧電体層および内部電極層が積層された積層体と、この積層体の側面に設けられて内部電極層と導電性接合材を介して電気的に接続された外部電極板とを含む構成のものが知られている(例えば特許文献1を参照)。
特開2008−10742号公報
ここで、特許文献1に記載された積層型圧電素子では、突入電流が入ると外部電極板の入り口側の端部が発熱し、導電性接合材も発熱していた。更に、局所的な発熱を繰り返すと、導電性接合材が劣化して保持力が低下し、外部電極板が剥がれるという問題があった。また、導電性接合材と外部電極板との熱膨張差により、導電性接合材と外部電極板との間に亀裂が進展して、積層型圧電素子の駆動が停止するおそれがあった。
本発明は、上記の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、外部電極板の剥がれや導電性接合材に亀裂が生じるのを抑制した積層型圧電素子およびこれを備えた噴射装置ならびに燃料噴射システムを提供することである。
本発明の積層型圧電素子は、圧電体層と内部電極層とが積層されてなる活性部および該活性部の積層方向の外側に配置された不活性部を有する積層体と、該積層体の側面に前記積層方向に沿って設けられた導電性接合材と、該導電性接合材を介して前記積層体の側面に取り付けられた外部電極板とを含み、前記外部電極板の一方の端部が前記導電性接合材よりも前記積層方向に延出されており、当該一方の端部に外部回路と接続される部位を有しており、前記導電性接合材は、前記外部電極板の前記一方の端部側の端部に他の領域よりも幅の広い領域を有しており、前記活性部における前記不活性部との境界近傍の前記圧電体層は前記不活性部に近づくにしたがって徐々に厚みが増しており、厚みの増した前記圧電体層上に前記導電性接合材の前記幅の広い領域と前記他の領域との境界があることを特徴とする。
また本発明の積層型圧電素子は、圧電体層と内部電極層とが積層されてなる活性部および該活性部の積層方向の外側に配置された不活性部を有する積層体と、該積層体の側面に前記積層方向に沿って設けられた導電性接合材と、該導電性接合材を介して前記積層体の側面に取り付けられた外部電極板とを含み、前記外部電極板の一方の端部が前記導電性接合材よりも前記積層方向に延出されており、当該一方の端部に外部回路と接続される部位
を有しており、前記導電性接合材は、前記外部電極板の前記一方の端部側の端部に他の領域よりも幅の広い領域を有しており、前記活性部には前記積層体の伸縮により前記圧電体層および前記内部電極層よりもクラックが入りやすい破断層が設けられており、該破断層上に位置する前記導電性接合材の幅が最も狭くなっていることを特徴とする。
さらに本発明の積層型圧電素子は、圧電体層と内部電極層とが積層されてなる活性部および該活性部の積層方向の外側に配置された不活性部を有する積層体と、該積層体の側面に前記積層方向に沿って設けられた導電性接合材と、該導電性接合材を介して前記積層体の側面に取り付けられた外部電極板とを含み、前記外部電極板は外部回路と接続される部位を有しており、前記導電性接合材は他の領域よりも幅の広い領域を有しており、前記外部電極板の前記外部回路と接続される部位が前記導電性接合材の前記幅の広い領域上にあり、前記活性部には前記積層体の伸縮により前記圧電体層および前記内部電極層よりもクラックが入りやすい破断層が設けられており、該破断層上に位置する前記導電性接合材の幅が最も狭くなっていることを特徴とする。
また、本発明の噴射装置は、噴射孔を有する容器と、上記の積層型圧電素子とを備え、前記容器内に蓄えられた流体が前記積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から吐出されることを特徴とする。
また、本発明の燃料噴射システムは、高圧燃料を蓄えるコモンレールと、該コモンレールに蓄えられた前記高圧燃料を噴射する上記の噴射装置と、前記コモンレールに前記高圧燃料を供給する圧力ポンプと、前記噴射装置に駆動信号を与える噴射制御ユニットとを備えることを特徴とする。
本発明の積層型圧電素子によれば、外部電極板の剥がれや導電性接合材に亀裂が生じるのを抑制することができ、長期間にわたって駆動量が変動せず、安定して駆動する優れた積層型圧電素子が得られる。
また、本発明の噴射装置および燃料噴射システムによれば、高圧燃料の所望の噴射を長期にわたって安定して行なうことができる。
本発明の積層型圧電素子の実施の形態の一例を示す概略斜視図である。 (a)は本発明の積層型圧電素子の実施の形態の一例を示す一部省略概略縦断面図、(b)は(a)に示す積層型圧電素子の概略正面図である。 (a)は本発明の積層型圧電素子の実施の形態の他の例を示す一部省略概略縦断面図、(b)は(a)に示す積層型圧電素子の概略正面図である。 (a)は本発明の積層型圧電素子の実施の形態の他の例を示す一部省略概略縦断面図、(b)は(a)に示す積層型圧電素子の概略正面図である。 (a)は本発明の積層型圧電素子の実施の形態の他の例を示す一部省略概略縦断面図、(b)は(a)に示す積層型圧電素子の概略正面図である。 (a)は本発明の積層型圧電素子の実施の形態の他の例を示す一部省略概略縦断面図、(b)は(a)に示す積層型圧電素子の概略正面図である。 本発明の噴射装置の実施の形態の一例を示す概略的な断面図である。 本発明の燃料噴射システムの実施の形態の一例を示す概略的なブロック図である。
以下、本発明の積層型圧電素子の実施の形態の一例について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の積層型圧電素子の実施の形態の一例を示す概略斜視図である。また、図2(a)は本発明の積層型圧電素子の実施の形態の一例を示す一部省略概略縦断面図、図2(b)は図2(a)に示す積層型圧電素子の実施の形態の一例を示す概略正面図である。
図1および図2に示す積層型圧電素子1は、圧電体層2と内部電極層3とが積層されてなる活性部4aおよび活性部4aの積層方向の外側に配置された不活性部4bを有する積層体4と、積層体4の側面に積層方向に沿って設けられた導電性接合材5と、導電性接合材5を介して積層体4の側面に取り付けられた外部電極板6とを含み、外部電極板6の一方の端部が導電性接合材5よりも積層方向に延出されており、当該一方の端部に外部回路と接続される部位Aを有しており、導電性接合材5は、外部電極板6の一方の端部側の端部に他の領域よりも幅の広い領域51を有している。
積層型圧電素子1を構成する積層体4は、圧電体層2および内部電極層3が積層されてなるもので、例えば圧電体層2および内部電極層3が交互に複数積層されてなる活性部4aと、活性部4aの積層方向の外側(積層方向両端)に配置された圧電体層2からなる不活性部4bとを有し、例えば縦0.5〜10mm、横0.5〜10mm、高さ5〜100mmの直方体状に形成されている。
積層体4を構成する圧電体層2は、圧電特性を有するセラミックスで形成されたもので、このようなセラミックスとして、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO−PbTiO)からなるペロブスカイト型酸化物、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)などを用いることができる。この圧電体層2の厚みは、例えば3〜250μmとされる。
積層体4を構成する内部電極層3は、圧電体層2を形成するセラミックスと同時焼成により形成されたもので、圧電体層2と交互に積層されて圧電体層2を上下から挟んでおり、積層順に正極および負極が配置されることにより、それらの間に挟まれた圧電体層2に駆動電圧を印加するものである。この形成材料として、例えば圧電セラミックスとの反応性が低い銀−パラジウムを主成分とする導体、あるいは銅、白金などを含む導体を用いることができる。図1に示す例では、正極および負極がそれぞれ積層体4の対向する一対の側面に互い違いに導出されて、積層体4の側面に積層方向に沿って設けられた一対の導体層7と電気的に接続されている。この内部電極層3の厚みは、例えば0.1〜5μmとされる。
積層体4の側面に積層方向に沿って設けられて内部電極層3と電気的に接続された一対の導体層7は、例えば銀とガラスとからなるペーストを塗布して焼き付けて形成されたもので、積層体4の側面に接合されて、積層体4の対向する側面に互い違いに導出された内部電極層3とそれぞれ電気的に接続されている。この導体層7の厚みは、例えば5〜500μmとされる。
導体層7の上には、導電性接合材5を介して外部電極板6が取り付けられている。ここで用いられる導電性接合材5としては、例えばAg粉末やCu粉末など導電性の良好な金属粉末を含んだエポキシ樹脂やポリイミド樹脂からなる導電性接合材5からなるのが好ましい。導電性接合材5は、積層体4の側面に積層方向に沿って設けられ、例えば5〜500μmの厚さに形成される。
また、外部電極板6は、導電性接合材5を介して内部電極層3と電気的に接続されるとともに、一方の端部が導電性接合材5よりも積層方向に延出されている。図1および図2に示す積層型圧電素子1においては、外部電極板6の一方の端部が、積層体4よりも延出して取り付けられている。なお、積層体4よりも延出した外部電極板6の一方の端部は、リードなどが接合される部位Aを有しており、リードを介して外部回路と接続されるようになっている。なお、図面においてはこの部位を分かりやすくするため、あえて外部電極板6と異なるハッチングにて明示しているが、必ずしも明示されている必要はなく、積層体4よりも延出した一方の端部にリードなどが接合されればよい。
外部電極板6は、銅、鉄、ステンレス、リン青銅等の金属平板からなり、例えば幅0.5〜10mm、厚み0.01〜1.0mmに形成されたものである。積層体4の伸縮により生じる応力を緩和する効果の高い形状として、例えば幅方向にスリットの入った形状、網目状に加工された金属板などであってもよい。
そして、図1および図2に示すように、外部電極板6の一方の端部に外部回路と接続される部位を有し、導電性接合材5は、外部電極板6の一方の端部側の端部に他の領域よりも幅の広い領域51を有している。導電性接合材5が、突入電流の入り口側となる外部電極板6の一方の端部側の端部おいて、他の領域よりも幅が広い領域を有することで、この幅の広い領域での抵抗値が小さくなり、局部的に発熱し難くなる。したがって、発熱の繰り返しによる導電性接合材5の端部の劣化も少なくなり、外部電極板6が剥がれにくくなる。また、導電性接合材5と外部電極板6との熱膨張差も小さくなり、導電性接合材5と外部電極板6との間に亀裂が進展するのを抑制することができる。なお、導電性接合材5の幅は、例えば、中央部(他の領域)が0.5〜2.5mmのとき、幅の広い領域51は例えば0.6〜3mmとすることができる。導電性接合材5の厚みは例えば3〜50μmで、幅の広い領域51の積層方向長さは例えば1〜6mmである。
ここで、図2に示すように、外部電極板6および導電性接合材5は活性部4aから不活性部4bにかけて設けられていて、不活性部4bにおける導電性接合材5が幅の広い領域51とされているのが好ましい。不活性部4bは自己発熱しないので、自己発熱による影響を受けにくいこの領域において導電性接合材5の幅が広い領域とされていることで、強固な接着力を有することができ、外部電極板6が剥がれ難くなる。
図3は、積層型圧電素子の本実施の形態の他の例を示しており、(a)は一部省略概略縦断面図、(b)は(a)に示す積層型圧電素子の概略正面図である。
図3に示すように、幅の広い領域51が他の領域から遠ざかるにしたがって幅が広くなるように設けられているのが好ましい。導電性接合材5における幅が、他の領域から遠ざかるにしたがって徐々に幅が広くなっていることにより、急激な抵抗値の変化がなくなることから、応力が集中しにくくなり、外部電極板6の剥がれや導電性接合材5と外部電極板6との間の亀裂の進展を抑制する点で効果的である。
また、図3に示すように、活性部4aにおける不活性部4bとの境界近傍の圧電体層2は不活性部4bに近づくにしたがって徐々に厚みが増しており、厚みの増した圧電体層2上に導電性接合材5の幅の広い領域51と他の領域(幅の狭い領域)との境界があるのが好ましい。言い換えると、導電性接合材5の幅の広い領域51における幅が広くなる起点が、活性部4aにおける不活性部4bとの境界近傍に位置しているのが好ましい。
伸縮する活性部4aと伸縮しない不活性部4bとの境界に応力が集中して、この部分の導電性接合材5にクラックが入ったり外部電極板6が剥がれようとしたりするおそれがある。これに対し、活性部4aと不活性部4bとの境界への応力集中を緩和する目的で、活性部4aにおける不活性部4bとの境界近傍の圧電体層2は不活性部4bに近づくにしたがって徐々に厚みが増している領域(応力緩和領域4c)とすることができる。このような場合において、導電性接合材5の幅が広くなる起点が活性部における境界近傍に位置していることで、応力緩和領域4cへの熱的な影響を小さくすることができ、応力を低減させて外部電極板6を剥がれにくくすることができる。
図4は、積層型圧電素子の本実施の形態の他の例を示しており、(a)は一部省略概略縦断面図、(b)は(a)に示す積層型圧電素子の概略正面図である。
図4に示すように、導電性接合材5が、外部電極板6の他方の端部側の端部に、他の領域よりも幅の広い領域51を有しているのが好ましい。外部電極板6の他方の端部(先端部)は熱引きが悪いので、導電性接合材5における外部電極板6の他方の端部側の端部においても熱による影響を受けて劣化し、外部電極板6が剥がれやすくなるおそれがあるが、導電性接合材5は外部電極板6の他方の端部側の端部においても幅の広い領域51を有していることで接合強度が強くなるので、さらに外部電極板6を剥がれにくくすることができる。
図5は、積層型圧電素子の本実施の形態の他の例を示しており、(a)は一部省略概略縦断面図、(b)は(a)に示す積層型圧電素子の概略正面図である。
図5に示す積層型圧電素子においては、外部電極板6は外部回路と接続される部位を有しており、導電性接合材5は他の領域よりも幅の広い領域を有しており、外部電極板6の外部回路と接続される部位が導電性接合材5の幅の広い領域上にある例を示している。
図1、図2においては、外部電極板6の一方の端部が、積層体4よりも延出しており、この延出した外部電極板6の一方の端部にリードなどが接合される部位Aを設けているのに対して、図5においては、正面視して積層体4の内側に位置する外部電極板6に部位Aが設けられている。
そして、この積層体4の内側に位置する外部電極板6の外部回路と接続される部位Aの下方に位置する導電性接合材5が幅の広い領域とされていることが好ましい。言い換えれば、導電性接合材5の幅の広い領域上に、突入電流の入り口である部位Aが設けられていることが好ましい。それにより、幅の広い領域での抵抗値が小さくなり、局部的に発熱し難くなる。したがって、発熱の繰り返しによる導電性接合材5の劣化も少なくなり、外部電極板6が剥がれにくくなる。また、導電性接合材5と外部電極板6との熱膨張差も小さくなり、導電性接合材5と外部電極板6との間に亀裂が進展するのを抑制することができる。
図6は、積層型圧電素子の本実施の形態の他の例を示しており、(a)は一部省略概略縦断面図、(b)は(a)に示す積層型圧電素子の概略正面図である。
図6に示すように、活性部4aには積層体4の伸縮により圧電体層2および内部電極層3よりもクラックが入りやすい破断層4dが設けられており、破断層4d上に位置する導電性接合材5の幅が最も狭くなっているのが好ましい。なお、破断層4dとは、他の部位(例えば内部電極層3)にクラックが生じて積層型圧電素子1の駆動を阻害することのないように、あえてこの部位にクラックを発生させるように設けられたものである。例えば、破断層4dとして、内部電極層3よりも多数の空隙を有する金属層、複数の金属部が互いに独立して点在するように設けられた層などの内部電極層として機能しない金属層が挙げられる。破断層4dにはあえてクラックを入れたいことから、拘束力を弱める点で破断層4dと対応する位置は導電性接合材5の幅が狭くなっているのが効果的である。
次に、本実施の形態の積層型圧電素子1の製造方法について説明する。
まず、圧電体層2となるセラミックグリーンシートを作製する。具体的には、圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系,ブチラール系等の有機高分子からなるバインダーと、可塑剤とを混合してセラミックスラリーを作製する。そして、ドクターブレード法、カレンダーロール法等のテープ成型法を用いることにより、このセラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを作製する。圧電セラミックスとしては圧電特性を有するものであればよく、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO−PbTiO)からなるペロブスカイト型酸化物等を用いることができる。また、可塑剤としては、フタル酸ジブチル(DBP),フタル酸ジオクチル(DOP)等を用いることができる。
次に、内部電極層3となる導電性ペーストを作製する。具体的には、銀−パラジウムの金属粉末にバインダーおよび可塑剤を添加混合することによって導電性ペーストを作製する。この導電性ペーストを上記のセラミックグリーンシート上に、スクリーン印刷法を用いて内部電極層3のパターンで塗布する。
ここで、積層体中に破断層4dを設ける場合は、破断層4dを形成する導電性ペーストに、焼成によって焼失するような樹脂ビーズなどを含ませておくか、内部電極層を形成する導電性ペーストよりも例えば銀比率を多くして焼成によって拡散させるようにしておくなどすればよい。
さらに、この導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを複数枚積層し、所定の温度で脱バインダー処理を行なった後、900〜1200℃の温度で焼成し、平面研削盤等を用いて所定の形状になるよう研削処理を施すことによって、交互に積層された圧電体層2および内部電極層3を備えた積層体4を作製する。
なお、積層体4は、上記の製造方法によって作製されるものに限定されるものではなく、圧電体層2と内部電極層3とを複数積層してなる積層体4を作製できれば、どのような製造方法によって作製されてもよい。
その後、銀を主成分とする導電性粒子とガラスとを混合したものに、バインダー,可塑剤および溶剤を加えて作製した銀ガラス含有導電性ペーストを、導体層7のパターンで積層体4の側面にスクリーン印刷法等によって印刷後、乾燥させた後、650〜750℃の温度で焼き付け処理を行ない、導体層7を形成する。
次に、導電性接合材5を介して外部電極板6を導体層7の表面に接続し固定する。
導電性接合材5は、Ag粉末やCu粉末などの導電性の良好な金属粉末を含んだエポキシ樹脂やポリイミド樹脂からなる導電性接合材のペーストを用い、ディスペンス方式により所定の厚みや幅に制御して形成することができる。
ここで、導電接合材5の幅を調整するには、ディスペンサーと積層体4とのギャップを変えたり、広い部分は2回、狭い部分は1回というように塗布回数を変えたりすることによって調整すればよい。
外部電極板6は、銅、鉄、ステンレス、リン青銅等の金属平板を、例えば幅0.5〜10mm、厚み0.01〜1.0mmに形成する。積層体4の伸縮により生じる応力を緩和する効果の高い形状として、例えば幅方向にスリットの入った形状、網目状に打ち抜きやレーザ加工などで加工してもよい。
その後、一対の導体層7にそれぞれ接続した外部電極板6に0.1〜3kV/mmの直流電界を印加し、積層体4を構成する圧電体層2を分極することによって、積層型圧電素子1が完成する。この積層型圧電素子1は、外部電極板6を介して導体層7と外部の電源とを接続して、圧電体層2に電圧を印加することにより、各圧電体層2を逆圧電効果によって大きく変位させることができる。これにより、例えばエンジンに燃料を噴射供給する自動車用燃料噴射弁として機能させることが可能となる。
次に、本発明の噴射装置の実施の形態の例について説明する。図7は、本発明の噴射装置の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
図7に示すように、本実施の形態の噴射装置19は、一端に噴射孔21を有する収納容器(容器)23の内部に上記の本実施の形態の積層型圧電素子1が収納されている。
収納容器23内には、噴射孔21を開閉することができるニードルバルブ25が配設されている。噴射孔21には流体通路27がニードルバルブ25の動きに応じて連通可能になるように配設されている。この流体通路27は外部の流体供給源に連結され、流体通路27に常時高圧で流体が供給されている。従って、ニードルバルブ25が噴射孔21を開放すると、流体通路27に供給されていた流体が外部または隣接する容器、例えば内燃機関の燃料室(不図示)に、噴射孔21から吐出されるように構成されている。
また、ニードルバルブ25の上端部は径が大きくなっており、収納容器23に形成されたシリンダ29と摺動可能なピストン31になっている。そして、収納容器23内には、上述した例の積層型圧電素子1がピストン31に接して収納されている。
このような噴射装置19では、積層型圧電素子1が電圧を印加されて伸長すると、ピストン31が押圧され、ニードルバルブ25が噴射孔21に通じる流体通路27を閉塞し、流体の供給が停止される。また、電圧の印加が停止されると積層型圧電素子1が収縮し、皿バネ33がピストン31を押し返し、流体通路27が開放され噴射孔21が流体通路27と連通して、噴射孔21から流体の噴射が行なわれるようになっている。
なお、積層型圧電素子1に電圧を印加することによって流体通路27を開放し、電圧の印加を停止することによって流体通路27を閉鎖するように構成してもよい。
また、本実施の形態の噴射装置19は、噴射孔を有する容器23と、本実施の形態の積層型圧電素子1とを備え、容器23内に充填された流体を積層型圧電素子1の駆動により噴射孔21から吐出させるように構成されていてもよい。すなわち、積層型圧電素子1が必ずしも容器23の内部にある必要はなく、積層型圧電素子1の駆動によって容器23の内部に流体の噴射を制御するための圧力が加わるように構成されていればよい。なお、本実施の形態の噴射装置19において、流体とは、燃料,インク等の他、導電性ペースト等の種々の液体および気体が含まれる。本実施の形態の噴射装置19を用いることによって、流体の流量および噴出タイミングを長期にわたって安定して制御することができる。
本実施の形態の積層型圧電素子1を採用した本実施の形態の噴射装置19を内燃機関に用いれば、従来の噴射装置に比べてエンジン等の内燃機関の燃焼室に燃料をより長い期間にわたって精度よく噴射させることができる。
次に、本発明の燃料噴射システムの実施の形態の例について説明する。図8は、本発明の燃料噴射システムの実施の形態の一例を示す概略図である。
図8に示すように、本実施の形態の燃料噴射システム35は、高圧流体としての高圧燃料を蓄えるコモンレール37と、このコモンレール37に蓄えられた高圧流体を噴射する複数の本実施の形態の噴射装置19と、コモンレール37に高圧流体を供給する圧力ポンプ39と、噴射装置19に駆動信号を与える噴射制御ユニット41とを備えている。
噴射制御ユニット41は、外部情報または外部からの信号に基づいて高圧流体の噴射の量およびタイミングを制御する。例えば、エンジンの燃料噴射に噴射制御ユニット41を用いた場合であれば、エンジンの燃焼室内の状況をセンサ等で感知しながら燃料噴射の量およびタイミングを制御することができる。圧力ポンプ39は、燃料タンク43から流体燃料を高圧でコモンレール37に供給する役割を果たす。例えばエンジンの燃料噴射システム35の場合には例えば1000〜2000気圧(約101MPa〜約203MPa)、好ましくは例えば1500〜1700気圧(約152MPa〜約172MPa)の高圧にしてコモンレール37に流体燃料を送り込む。コモンレール37では、圧力ポンプ39から送られてきた高圧燃料を蓄え、噴射装置19に適宜送り込む。噴射装置19は、前述したように噴射孔21から一定の流体を外部または隣接する容器に噴射する。例えば、燃料を噴射供給する対象がエンジンの場合には、高圧燃料を噴射孔21からエンジンの燃焼室内に霧状に噴射する。
なお、本発明は、上記の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を行なうことは何ら差し支えない。例えば、積層体4の積層方向に直交する方向における断面の形状は、上記の実施の形態の例である四角形状以外に、六角形状や八角形状等の多角形状、円形状、あるいは直線と円弧とを組み合わせた形状であっても構わない。
本実施の形態の積層型圧電素子1は、例えば、圧電駆動素子(圧電アクチュエータ),圧力センサ素子および圧電回路素子等に用いられる。駆動素子としては、例えば、自動車エンジンの燃料噴射装置,インクジェットのような液体噴射装置,光学装置のような精密位置決め装置,振動防止装置が挙げられる。センサ素子としては、例えば、燃焼圧センサ,ノックセンサ,加速度センサ,荷重センサ,超音波センサ,感圧センサおよびヨーレートセンサが挙げられる。また、回路素子としては、例えば、圧電ジャイロ,圧電スイッチ,圧電トランスおよび圧電ブレーカーが挙げられる。
積層型圧電素子を備えた圧電アクチュエータを以下のようにして作製した。まず、平均粒径が0.4μmのチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO−PbTiO)を主成分とする圧電セラミックスの仮焼粉末、バインダーおよび可塑剤を混合したセラミックスラリーを作製した。このセラミックスラリーを用いてドクターブレード法により厚み50μmの圧電体層となるセラミックグリーンシートを作製した。
次に、銀−パラジウムにバインダーを加えて、内部電極層となる導電性ペーストを作製した。
次に、セラミックグリーンシートの片面に、内部電極層となる導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷し、導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを200枚積層した。また、内部電極層となる導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシート200枚を中心にして、その上下に、内部電極層となる導電性ペーストが印刷されていないセラミックグリーンシート合計15枚を積層した。そして、980〜1100℃で焼成し、平面研削盤を用いて所定の形状に研削して端面が5mm角の積層体を得た。
次に、積層体の側面の導体層の形成部に、銀とガラスにバインダーを混合した導電性ペーストをスクリーン印刷法により印刷し、700℃で焼き付け処理を行なって、導体層を形成した。
次に、導体層の表面に、Ag粉末とポリイミド樹脂を混合ペースト状にした導電性接着材をディスペンサーにて塗布し、外部電極板を積層体の表面と平行に接続し固定した。なお外部電極板は一方の端部が積層体よりも延出するようにして固定した。
ここで、試料1には、導電性接合材の幅が、外部電極板の一方の端部側の端部に他の領域よりも広い領域を有している外部電極板を用いた。具体的には、他の領域である中央部の幅が1.2mm、広い領域の幅が2.2mm、広い領域の積層方向長さを3mm、導電性接合材の厚みは20μmとした。
また、試料2として、導電性接合材の幅が、不活性部における導電性接合材が幅の広い領域とされている外部電極板を用いた。
また、試料3として、導電性接合材の幅が広い領域が、他の領域から遠ざかるに従って徐々に幅が広くなっている外部電極板を用いた。
また、試料4として、活性部における前記不活性部との境界近傍の圧電体層は不活性部に近づくにしたがって徐々に厚みが増しており、厚みの増した圧電体層上に導電性接合材の幅の広い領域と他の領域との境界がある外部電極板を用いた。
また、試料5として、活性部には積層体の伸縮により圧電体層および内部電極層よりもクラックが入りやすい破断層が設けられており、破断層上に位置する導電性接合材の幅が最も狭くなっている外部電極板を用いた。破断層上に位置する導電性接合材の幅は0.8mm、その他の部位の幅は1.2mmとした。
また、試料6として、導電性接合材の幅が、外部電極板の他方の端部側の端部に他の領域よりも幅の広い領域を有している外部電極板を用いた。この幅の広い領域の幅は2.2mm、他の領域の幅は1.2mmとした。
また、比較例として、導電性接合材の幅が、全体にわたって一定の幅である外部電極板を用いた。全体の厚み20μm、幅は1.2mmとした。
これらの積層型圧電素子に、外部電極板に溶接で接合されたリード部材を介して外部電極板に3kV/mmの直流電界を15分間印加して、分極処理を行なった。これらの積層型圧電素子に160Vの直流電圧を印加したところ、積層体の積層方向に30μmの変位量が得られた。さらに、30℃、90%の湿度内で0V〜+160Vの交流電圧を150Hzの周波数で印加して、連続駆動した耐久性試験を行なった。
その結果、比較例の積層型圧電素子は、1×10回の連続駆動で、積層体にクラックが発生し駆動が停止した。
これに対し、試料1,2の積層型圧電素子は、連続駆動1×10回でも停止せず、導電性接合材に微少なクラックが発生したが、外部電極板の剥がれはなかった。また、試料3,4の積層型圧電素子は、連続駆動1×10回でも亀裂が入ることなく駆動しており、また、駆動量の変化も確認されず、導電性接合材に微少なクラックの発生も確認されなかった。更に、試料5,6の積層型圧電素子では、連続駆動1×10回でも亀裂が入ることなく駆動しており、駆動量の変化も確認されなかった。また、導電性接合材にも微少なクラックの発生は確認できず、外部電極板の剥がれの発生もなかった。なお、試料5においては、破壊するまで耐久を続けたが、破壊起点は破断層であった。
1・・・積層型圧電素子
2・・・圧電体層
3・・・内部電極層
4・・・積層体
4a・・・活性部
4b・・・不活性部
4c・・・応力緩和領域
4d・・・容易破断層
5・・・導電性接合材
51・・・幅の広い領域
6・・・外部電極板
7・・・導体層
19・・・噴射装置
21・・・噴射孔
23・・・収納容器(容器)
25・・・ニードルバルブ
27・・・流体通路
29・・・シリンダ
31・・・ピストン
33・・・皿バネ
35・・・燃料噴射システム
37・・・コモンレール
39・・・圧力ポンプ
41・・・噴射制御ユニット
43・・・燃料タンク

Claims (9)

  1. 圧電体層と内部電極層とが積層されてなる活性部および該活性部の積層方向の外側に配置された不活性部を有する積層体と、該積層体の側面に前記積層方向に沿って設けられた導電性接合材と、該導電性接合材を介して前記積層体の側面に取り付けられた外部電極板とを含み、前記外部電極板の一方の端部が前記導電性接合材よりも前記積層方向に延出されており、当該一方の端部に外部回路と接続される部位を有しており、前記導電性接合材は、前記外部電極板の前記一方の端部側の端部に他の領域よりも幅の広い領域を有しており、前記活性部における前記不活性部との境界近傍の前記圧電体層は前記不活性部に近づくにしたがって徐々に厚みが増しており、厚みの増した前記圧電体層上に前記導電性接合材の前記幅の広い領域と前記他の領域との境界があることを特徴とする積層型圧電素子。
  2. 前記活性部には前記積層体の伸縮により前記圧電体層および前記内部電極層よりもクラックが入りやすい破断層が設けられており、該破断層上に位置する前記導電性接合材の幅が最も狭くなっていることを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電素子。
  3. 圧電体層と内部電極層とが積層されてなる活性部および該活性部の積層方向の外側に配置された不活性部を有する積層体と、該積層体の側面に前記積層方向に沿って設けられた導電性接合材と、該導電性接合材を介して前記積層体の側面に取り付けられた外部電極板とを含み、前記外部電極板の一方の端部が前記導電性接合材よりも前記積層方向に延出されており、当該一方の端部に外部回路と接続される部位を有しており、前記導電性接合材は、前記外部電極板の前記一方の端部側の端部に他の領域よりも幅の広い領域を有しており、前記活性部には前記積層体の伸縮により前記圧電体層および前記内部電極層よりもクラックが入りやすい破断層が設けられており、該破断層上に位置する前記導電性接合材の幅が最も狭くなっていることを特徴とする積層型圧電素子。
  4. 前記導電性接合材は、前記外部電極板の他方の端部側の端部に他の領域よりも幅の広い領域を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載の積層型圧電素子。
  5. 圧電体層と内部電極層とが積層されてなる活性部および該活性部の積層方向の外側に配置された不活性部を有する積層体と、該積層体の側面に前記積層方向に沿って設けられた導電性接合材と、該導電性接合材を介して前記積層体の側面に取り付けられた外部電極板とを含み、前記外部電極板は外部回路と接続される部位を有しており、前記導電性接合材は他の領域よりも幅の広い領域を有しており、前記外部電極板の前記外部回路と接続され
    る部位が前記導電性接合材の前記幅の広い領域上にあり、前記活性部には前記積層体の伸縮により前記圧電体層および前記内部電極層よりもクラックが入りやすい破断層が設けられており、該破断層上に位置する前記導電性接合材の幅が最も狭くなっていることを特徴とする積層型圧電素子。
  6. 前記導電性接合材は前記活性部から前記不活性部にかけて設けられており、前記不活性部における前記導電性接合材が前記幅の広い領域とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の積層型圧電素子。
  7. 前記幅の広い領域は、前記他の領域から遠ざかるにしたがって徐々に幅が広くなるように設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項のうちのいずれかに記載の積層型圧電素子。
  8. 噴射孔を有する容器と、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の積層型圧電素子とを備え、前記容器内に蓄えられた流体が前記積層型圧電素子の駆動により前記噴射孔から吐出されることを特徴とする噴射装置。
  9. 高圧燃料を蓄えるコモンレールと、該コモンレールに蓄えられた前記高圧燃料を噴射する請求項8に記載の噴射装置と、前記コモンレールに前記高圧燃料を供給する圧力ポンプと、前記噴射装置に駆動信号を与える噴射制御ユニットとを備えたことを特徴とする燃料噴射システム。
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