JP6185318B2 - ポリカーボネート樹脂 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明によれば、発明の課題は、下記により達成される。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明のポリカーボネート樹脂は、前記式(A)に示した環状アセタール系ジオール類を含むジオール成分からなり、環状2量体成分量を低減することを特徴とするものである。
本発明で用いられる環状アセタール系ジオール類は、前記式(A)で表される。具体的には、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ジエチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ジプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどが例示される。なかでも、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(以下スピログリコールと略す)が、低い光弾性定数を有するという点から好ましい。
本発明では、前記式(A)に示した環状アセタール系ジオール類以外のジオール類(B)として、下記式(B1)で示される芳香族ジオール類を好ましく用いることができる。
前記式(B1)のR7およびR8は夫々独立して、炭素原子数1〜10の炭化水素基を示し、好ましくは炭素原子数1〜10のアルキレン基を示す。pおよびqは、夫々独立して0〜4の整数を示す。
またR11およびR12はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基又は炭素原子数6〜12アリール基を表す。R13は炭素原子数1〜9のアルキレン基である。aは0〜20の整数を表し、bは1〜500の整数を表す。
また、酸成分を共重合することにより、一部ポリエステルカーボネートとすることもできる。
本発明のポリカーボネート樹脂は、前記式(A)で示される環状アセタール系ジオール成分と、前記式(B)成分で示されるジオール成分のモル比(A/B)が、好ましくは1/99〜95/5である。より好ましくは10/90〜80/20、さらに好ましくは30/70〜70/30である。環状アセタール系ジオール成分の割合が下限以上では、得られるポリカーボネート樹脂の光弾性定数が低く、熱や応力による斑が発生しづらく好ましい。また、環状アセタール系ジオール残基の割合が上限以下では、樹脂の結晶化が起こりづらく好ましい。モル比は、日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し算出する。
本発明のポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
これらの重合触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対し好ましくは1×10−9〜1×10−2当量、好ましくは1×10−8〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−7〜1×10−3当量の範囲で選ばれる。
さらに、用途や必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
本発明の環状アセタール系ジオールの環状2量体成分の構造は下記式(C)で表される。
本発明のポリカーボネート樹脂の比粘度(ηSP)は、強度と成形加工性とを両立させやすいことから、0.20〜1.50の範囲が好ましく、0.23〜1.20の範囲がより好ましく、0.25〜1.00の範囲がさらに好ましく、0.30〜0.50の範囲が特に好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂の比粘度(ηSP)が0.20以上であると、所望の強度が得られるため好ましい。また、比粘度(ηSP)が1.50以下であると、成形加工性が良好であり好ましい。
本発明でいう比粘度は、20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
本発明のポリカーボネート樹脂の光弾性定数の絶対値は、好ましくは40×10−12Pa−1以下、より好ましくは35×10−12Pa−1以下、さらに好ましくは30×10−12Pa−1以下である。絶対値が40×10−12Pa−1を超えると、成形時の残留応力によって生じる複屈折が大きくなりやすい。光弾性定数は、未延伸フィルムを日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用し測定する。
本発明のポリカーボネート樹脂を用いてなる成形体は、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。
本発明のポリカーボネート樹脂は、光弾性定数が低く、しかも成形性にも優れているので、光ディスク基板、光学レンズ、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレーなどの光学部品の構造材料、パソコンや携帯電話の外装や前面板などの電気電子部品、自動車のヘッドランプや窓などの自動車用途、または機能材料用途に適した成形体として有利に使用することができる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂は、光弾性定数が低く、延伸により所望の波長分散性を実現することができるため特に光学フィルムとして有利に使用することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂を用いてなる光学フィルムは、具体的には、表面保護フィルム、加飾用フィルム、前面板、位相差フィルム、プラセル基板フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルム、輝度上昇フィルム、光ディスクの保護フィルム、拡散フィルム等の用途が挙げられる。
光学フィルムの製造方法としては、例えば、溶液キャスト法、溶融押出法、熱プレス法、カレンダー法等公知の方法を挙げることが出来る。なかでも、溶液キャスト法、溶融押出法が好ましく、特に生産性の点から溶融押出法が好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂から形成される光学フィルムの引張伸度は、好ましくは1.0%以上であり、さらに好ましくは1.5%以上であり、特に好ましくは2.0%以上である。上限は限定されないが20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。1.0%より低いと延伸時に割れやすく、生産性が著しく悪化する。
本発明のポリカーボネート樹脂から形成される光学フィルムのHazeは、好ましくは1.0%以下であり、さらに好ましくは0.7%以下であり、特に好ましくは0.5%以下である。1.0%より高いと光学用途として用いた場合好ましくない。
20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて以下の式から求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解後、ヘキサン抽出により、低分子量分を抽出後、ガスクロマトグラフィーによる面積ピークより算出した。
未延伸フィルムを日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用して測定した。
ポリカーボネート樹脂を120℃、5時間乾燥後、JSW(株)製N−20C射出成形機を用いてシリンダー温度280℃、金型温度70〜80℃にて外径2.0mm、中心厚0.8mm、焦点距離2.0mmの平凸レンズを連続3,000ショット射出成形し、2,901ショットから3,000ショットまでの100ショット分のレンズを微分顕微鏡を用いて検査し、不良個数率を%で求めた。なお、レンズ表面の凹み不良およびレンズ表面への付着物の有無などの表面形状異常のあるものを不良とした。
ポリカーボネート樹脂を120℃で5時間乾燥後、スクリュー径120mmのTダイリップの付いた押出機にて温度280℃で押出し幅1000mm、厚さ100μm、片面タッチ方式で製造し、製造開始から3日後にロール付着物によるフィルムの外観不良が発生した場合を×、5日後にロール付着物によるフィルムの外観不良が発生した場合を△、5日後にロール付着物によるフィルムの外観不良が発生しなかった場合を○とした。
上記フィルム評価で得られた製造開始後5日後のフィルムを用いて、(株)オリエンテック製のフィルム強伸度自動測定装置“テンシロンRTC−1210A”を用いて、次の条件で測定した。
試料サイズ:幅10mm、長さ140mm
チャック間距離100mm
引張速度:5mm/分
測定環境:25℃、相対湿度(RH)50%、大気圧下
フィルム破断時の長さからチャック間距離を減じたものをチャック間距離で除したものに100を乗じて引張伸度(%)とした。測定はフィルムの長手方向と、厚み方向に直交する方向についてそれぞれ5回行い、これら10点の平均値をとった。
上記フィルム評価で得られた製造開始後5日後のフィルムを用いて、フィルムを85℃85%R.H.条件下で2000時間放置し、幅方向の中心部を基準に試験片を切り出し、濁度計NDH−2000型(日本電色工業(株)製)を使用し、JIS K7105に従って、フィルムのHazeを測定した。
<ポリカーボネート樹脂の製造>
3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(以下SPGと略す)86.97部、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)46.35部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒として炭酸水素ナトリウム4.3×10−4部を、窒素雰囲気下樹脂温度を150℃に加熱し溶融させた。その後、10分かけて真空度を10kPaに調整し、樹脂温度を160℃に加熱し反応させた。その後、60℃/hrの速度で樹脂温度225℃まで昇温を行い、その後、真空度を2kPaで10分間その温度で保持し、さらに30℃/hrの速度で最終樹脂温度を250℃にし、最終真空度を30Paとし合計230分間反応を行った。反応終了後、触媒量の1.5倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットを乾燥後、比粘度、環状2量体成分量、光弾性定数を測定し、成形不良率、ロール付着物によるフィルムの外観不良、引張伸度、Hazeを評価し、表1に記載した。
最終樹脂温度を255℃に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。得られたペレットを用いて評価した結果を表1に記載した。
最終真空度を80Paに変更した以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。得られたペレットを用いて評価した結果を表1に記載した。
ジフェニルカーボネート88.41部に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。得られたペレットを用いて評価した結果を表1に記載した。
SPG86.97部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下BPAと略す)27.95部、ジフェニルカーボネート89.29部に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。得られたペレットを用いて評価した結果を表1に記載した。
SPG49.7部、イソソルビド(以下ISSという)35.8部、ジフェニルカーボネート89.29部に変更した以外は実施例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。得られたペレットを用いて評価した結果を表1に記載した。
3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(以下SPGと略す)86.97部、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)46.35部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒として炭酸水素ナトリウム5.2×10−4部を、窒素雰囲気下樹脂温度を150℃に加熱し溶融させた。その後、10分かけて真空度を10kPaに調整し、樹脂温度を160℃に加熱し反応させた。その後、60℃/hrの速度で樹脂温度190℃まで昇温を行い、減圧度10kPaで、10分間その温度で保持し、さらに30℃/hrの速度で最終樹脂温度を260℃にし、最終真空度を133Paとし合計230分間反応を行った。反応終了後、触媒量の1.5倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。得られたペレットを用いて評価した結果を表1に記載した。
最終真空度を300Paに変更した以外は比較例1と同様にして、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。得られたペレットを用いて評価した結果を表1に記載した。
最終樹脂温度を275℃、最終真空度を133Paに変更した以外は実施例5と同様にして、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。得られたペレットを用いて評価した結果を表1に記載した。
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