JP6030816B2 - 光弾性定数が低いポリカーボネート樹脂を用いたフィルム状物 - Google Patents
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1.下記式
で表されるメタンスルホン酸を使用して製造された環状アセタール系ジオール類を精製して、メタンスルホン酸イオンの含有量を8.0ppm以下とした環状アセタール系ジオール類を得、得られた環状アセタール系ジオール類(A)と、下記式
で表される芳香族ジオール類(B)または下記式
で表される脂肪族ジオール類(Ca)または(Cb)をジオール成分とし、そのモル比(A/(B+Ca+Cb))が10/90〜90/10の範囲として、溶融重合により20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.2〜1.2であるポリカーボネート樹脂を製造し、得られたポリカーボネート樹脂を用いて温度180〜350℃の範囲で溶融押出法により、厚み30〜10000μmのフィルム状物を製造する、フィルム状物の製造方法。
2.環状アセタールジオール類(A)が下記式
3.フィルム状物は、厚さ50μmに換算したゲル数が100個/m2以下である上記1記載のフィルム状物の製造方法。
4.上記1記載のフィルム状物の製造方法により得られたフィルム状物を、未延伸のままかあるいはさらに延伸する、位相差フィルム、偏光板保護フィルムまたは反射防止フィルムの製造方法。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明のフィルム状物に用いられるポリカーボネート樹脂は、前記環状アセタール系ジオール類(A)を含むジオール成分を溶融重合する際に、前記(A)成分中に残留するメタンスルホン酸イオンの含有量が8.0ppm以下のものを用いることを特徴とするものである。
本発明で用いられる環状アセタールジオール類は、前記(A)式で表される。具体的には、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ジエチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(1,1−ジプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。そして、特に、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(以下スピログリコールと略す)が好ましい。
本発明で用いられる芳香族ジオール類(B)は、前記(B)式で表される。
前記(B)式のR5およびR6は夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示す。かかる炭化水素基としては、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、炭素原子数7〜10のアラルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基が挙げられる。一方、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。mおよびnは、夫々独立して0〜4の整数を示す。
本発明で用いられる脂肪族ジオール類は、前記(Ca)または(Cb)式で表され、脂肪族直鎖ジオール類や脂環式ジオール類が挙げられる。例えば脂肪族直鎖ジオール類としては、炭素原子数は20以下2以上であり、好ましくは10以下2以上、特に好ましくは6以下3以上である。この値が大きくなると、耐熱性が低くなったり、コストが高価だったりする。また、脂環式ジオール類としては、特に限定されないが、通常5員環構造又は6員環構造を含む化合物が用いられる。5員環構造、6員環構造を含むことにより耐熱性を高くすることができる。また、6員環構造は共有結合によって椅子形もしくは舟形に固定されていてもよい。脂環式ジオール類に含まれる炭素原子数は20以下4以上であり、好ましくは20以下5以上である。この値が大きくなるほど、合成が困難になったり、精製が困難になったり、コストが高価だったりする。炭素原子数が少なくなるほど、精製しやすく、入手しやすくなる。
また、本発明に係る硫黄含有環状ジオール化合物としては、デオキシチオフルクトース等のS−ヘテロ環状ジオールが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂中の組成比は、前記(A)成分と、前記(B)または前記(Ca)または(Cb)成分のモル比(A/(B+Ca+Cb))が、10/90〜90/10である。好ましくは20/80〜80/20、さらに好ましくは30/70〜70/30である。モル比は、日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し算出する。
本発明のフィルム状物に用いるポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
反応温度は通常120〜350℃の範囲であり、反応後期には系の減圧度を10〜0.1Torrに高めて生成するモノヒドロキシ化合物の留出を容易にさせて反応を完結させる。必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
本発明のフィルム状物に用いるポリカーボネート樹脂の比粘度(ηSP)としては、0.20未満であると強度等が低下し1.50を超えると成形加工特性が低下するようになるので、0.20〜1.50の範囲が好ましく、0.23〜1.20の範囲がより好ましく、0.25〜1.00の範囲がさらに好ましい。また、成形性等が維持される範囲内で、比粘度が上記範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合することも可能である。例えば、比粘度が1.50を超える高分子量のポリカーボネート樹脂を少量配合することも可能である。この場合、比粘度の異なるポリカーボネート樹脂体を混合したポリカーボネート樹脂混合物の比粘度が上記範囲であればよい。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
本発明のフィルム状物について説明する。本発明におけるフィルム状物は、所謂フィルムに限定されず、シート状であっても板状であってもよく、特に光学用途に好適に用いられる。具体的には、位相差フィルム、プラセル基板フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルム、輝度上昇フィルム、光ディスクの保護フィルム、拡散フィルム等の用途が挙げられ、なかでも位相差フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルムが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂の光弾性定数の絶対値は、40×10−12Pa−1以下、より好ましくは35×10−12Pa−1以下、さらに好ましくは30×10−12Pa−1以下である。絶対値が40×10−12Pa−1を超えると、成形時の残留応力によって生じる複屈折が大きくなりやすい。光弾性定数は未延伸フィルムを日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用し測定する。
本発明のフィルム状物中のゲル数は、好ましくは100個/m2以下、より好ましくは50個/m2以下、さらに好ましくは30個/m2以下であり、ゲル数は少ないほど好ましい。フィルム状物中のゲル数が100個/m2を超えると、延伸時にフィルム破断が多発したり、製膜時のフィルターライフが短くなるため問題である。また光学用途の場合、フィルム品質を悪くするため問題である。なお、本発明のフィルム状物のゲル数とは、(株)キーエンス製 カラー3Dレーザー顕微鏡 VK−9700を用いて、フィルム状物1m2中に存在する長軸の直径が300μm以上の干渉縞を有する欠点の数を厚み50μmに換算した値である。なお、ゲルは蛍光顕微鏡で光ることから、ごみとの識別も可能である。
SPGモノマー5gを50mlの純水に懸濁し、70℃の温水バスで2時間加熱し、超音波装置で30分間処理、マイクロフィルターでろ過したろ液をイオンクロマトグラフィー(DIONEX社 DX−320)を用いて、以下の条件でギ酸イオン、メタンスルホン酸イオン、硫酸イオンを定量した。
カラム: AS17, 溶離液: KOH水溶液, オーブン温度: 35℃, 流速: 1.5ml/min, グラジエント条件: 溶離液濃度 0mM(0min)→1mM(4min)→1mM(7min)→12mM(14min)→35mM(18min)→35mM(22min)
20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
未延伸フィルムを日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用して測定した。
厚さ50μmのフィルム状物をカラー3Dレーザ顕微鏡を用いて、500mm×300mmに存在する長軸の直径が300μm以上の干渉縞を有するゲル数をフィルム状物1m2中に換算して求めた。
<ポリカーボネート樹脂の製造>
市販の3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(以下SPGという)150部をメタノール10リットルに温度60℃で完全に溶解させた後、室温まで冷却しスピログリコールを再結晶させた。結晶を濾別し、結晶とほぼ同体積のイオン交換水で2回リンスした後、真空乾燥機で60℃で乾燥させ結晶128部を得た。このSPGのメタンスルホン酸イオン、ギ酸イオン、硫酸イオンの陰イオン成分の合計は2.6ppmであった。またメタンスルホン酸イオンは1.9ppmであった。上記精製SPG86.97部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“BPA”と略す)27.95部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒として炭酸水素ナトリウム5.2×10−4部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、20℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。合計6時間撹拌下で反応を行い、反応終了後、触媒量の4倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
次に、(株)テクノベル製15φ二軸押出混練機に幅150mm、リップ幅500μmのTダイとフィルム引取り装置を取り付け、得られたポリカーボネート樹脂をフィルム成形することにより厚さ50μmの透明な押出しフィルムを得て、光弾性定数、ゲル数を測定した。結果を表1に示す。
<ポリカーボネート樹脂の製造>
市販のSPG150部をメタノール10リットルに温度60℃で完全に溶解させた後、室温まで冷却しスピログリコールを再結晶させた。結晶を濾別し、結晶とほぼ同体積のイオン交換水で2回リンスした後、真空乾燥機で60℃で乾燥させ結晶128部を得た。このSPGのメタンスルホン酸イオン、ギ酸イオン、硫酸イオンの陰イオン成分の合計は2.6ppmであった。またメタンスルホン酸イオンは1.9ppmであった。上記精製SPG85.12部、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下BCFと略す)45.36部、ジフェニルカーボネート89.29部、および触媒として炭酸水素ナトリウム5.2×10−4部を窒素雰囲気下180℃に加熱し溶融させた。その後、30分かけて減圧度を13.4kPaに調整した。その後、20℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、1時間かけて減圧度を133Pa以下とした。合計6時間撹拌下で反応を行い、反応終了後、触媒量の4倍モルのドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を添加し、触媒を失活した後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数を測定した。結果を表1に示す。
<ポリカーボネート樹脂の製造>
実施例1と同様に再結晶を実施した後、結晶とほぼ同体積のイオン交換水で3回リンスした以外は同様の操作を行い、精製SPG123部を得た。このSPGのメタンスルホン酸イオン、ギ酸イオン、硫酸イオンの陰イオン成分の合計は2.3ppmであった。またメタンスルホン酸イオンは1.6ppmであった。上記精製SPG49.7部、イソソルビド(以下ISSという)35.8部を用いた以外は実施例1と同様の操作を実施した。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数を測定した。結果を表1に示す。
<ポリカーボネート樹脂の製造>
実施例1と同様に再結晶を実施した後、結晶とほぼ同体積のイオン交換水で1回リンスした以外は同様の操作を行い、精製SPG123部を得た。このSPGのメタンスルホン酸イオン、ギ酸イオン、硫酸イオンの陰イオン成分の合計は5.3ppmであった。またメタンスルホン酸イオンは4.2ppmであった。上記精製SPG85.12部を用いた以外は実施例1と同様の操作を実施した。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数測定した。結果を表1に示す。
<ポリカーボネート樹脂の製造>
市販のSPGのメタンスルホン酸イオン、ギ酸イオン、硫酸イオンの陰イオン成分の合計は13.2ppmであった。またメタンスルホン酸イオンは12.1ppmであった。このSPG86.97部を用いて、実施例1と全く同様の操作を行い、重合反応を実施した該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数を測定した。結果を表1に示す。
<ポリカーボネート樹脂の製造>
市販のSPG150部をメタノール10リットルに温度60℃で完全に溶解させた後、室温まで冷却しスピログリコールを再結晶させた。結晶を濾別し、結晶とほぼ同体積のメタノールで1回リンスした後、真空乾燥機で60℃で乾燥させ結晶128部を得た。このSPGのメタンスルホン酸イオン、ギ酸イオン、硫酸イオンの陰イオン成分の合計は9.2ppmであった。またメタンスルホン酸イオンは8.2ppmであった。このSPG86.97部を用いて、実施例1と全く同様の操作を行い、重合反応を実施した。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数測定した。結果を表1に示す。
<ポリカーボネート樹脂の製造>
市販のSPG150部をメタノール10リットルに温度60℃で完全に溶解させた後、室温まで冷却しスピログリコールを再結晶させた。結晶を濾別し、結晶とほぼ同体積のメタノールで1回リンスした後、真空乾燥機で60℃で乾燥させ結晶128部を得た。このSPGのメタンスルホン酸イオン、ギ酸イオン、硫酸イオンの陰イオン成分の合計は9.2ppmであった。またメタンスルホン酸イオンは8.2ppmであった。このSPG49.7部を用いて、実施例3と全く同様の操作を行い、重合反応を実施した。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数測定した。結果を表1に示す。
<ポリカーボネート樹脂の製造>
温度計、攪拌機、還流冷却器を備えた反応器にイオン交換水9809部、48%水酸化ナトリウム水溶液2271部を加え、BPA1775部及びナトリウムハイドロサルファイト3.5部を溶解し、塩化メチレン7925部を加えた後、攪拌しながら16〜20℃にてホスゲン1000部を60分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール52.6部と48%水酸化ナトリウム水溶液327部を加え、さらにトリエチルアミン1.57部を添加して20〜27℃で40分間攪拌して反応を終了した。生成物を含む塩化メチレン層を希塩酸、純水にて洗浄後、塩化メチレンを蒸発させポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度を測定し、表1に記載した。
得られたポリカーボネート樹脂を15φ二軸押し出し混練機によりペレット化した。次に実施例1と同様にしてフィルムを作成し、フィルムの光弾性定数、ゲル数測定した。結果を表1に示す。
Claims (4)
- 下記式
で表されるメタンスルホン酸を使用して製造された環状アセタール系ジオール類を精製して、メタンスルホン酸イオンの含有量を8.0ppm以下とした環状アセタール系ジオール類を得、得られた環状アセタール系ジオール類(A)と、下記式
で表される芳香族ジオール類(B)または下記式
で表される脂肪族ジオール類(Ca)または(Cb)をジオール成分とし、そのモル比(A/(B+Ca+Cb))が10/90〜90/10の範囲として、溶融重合により20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.2〜1.2であるポリカーボネート樹脂を製造し、得られたポリカーボネート樹脂を用いて温度180〜350℃の範囲で溶融押出法により、厚み30〜10000μmのフィルム状物を製造する、フィルム状物の製造方法。 - フィルム状物は、厚さ50μmに換算したゲル数が100個/m2以下である請求項1記載のフィルム状物の製造方法。
- 請求項1記載のフィルム状物の製造方法により得られたフィルム状物を、未延伸のままかあるいはさらに延伸する、位相差フィルム、偏光板保護フィルムまたは反射防止フィルムの製造方法。
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