JP2010070691A - 環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハイポリマーの生成を抑制し、環状ポリカーボネートオリゴマーを簡易かつ高収率に製造する方法を提供する。
【解決手段】直鎖ポリカーボネートオリゴマーと、ビスフェノール化合物の水不混合性有機溶液と、を原料として、水不混合性有機溶媒相とアルカリ性水溶液相との二相系において環状ポリカーボネートオリゴマーを製造する方法において、直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物とが有する水酸基の合計モル数に対する、直鎖ポリカーボネートオリゴマーが有するクロロホーメート基のモル数の割合が、1.05〜1.5となる範囲の比率で、直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物を添加する。
【選択図】なし
【解決手段】直鎖ポリカーボネートオリゴマーと、ビスフェノール化合物の水不混合性有機溶液と、を原料として、水不混合性有機溶媒相とアルカリ性水溶液相との二相系において環状ポリカーボネートオリゴマーを製造する方法において、直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物とが有する水酸基の合計モル数に対する、直鎖ポリカーボネートオリゴマーが有するクロロホーメート基のモル数の割合が、1.05〜1.5となる範囲の比率で、直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物を添加する。
【選択図】なし
Description
本発明は、ポリカーボネート樹脂の前駆体である環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法に関する。
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、機械的強度、耐衝撃性等に極めて優れており、幅広い分野で使用されている。その用途は、各種機械部品、各種電気絶縁性材料、自動車部品、光ディスク等の情報機器材料、ヘルメット等の安全防護材料など、極めて多岐にわたっている。
ポリカーボネート樹脂の製造方法としては、ビスフェノール化合物を原料とし、有機液体とアルカリ性水溶液の二相系中でホスゲンと反応させ、次いで触媒を用いて重縮合反応を進める方法や、ビスフェノール化合物とジフェニルカーボネートとを高温で溶融させてエステル化反応によって重縮合反応を進める方法が一般的である。その他、環状のポリカーボネートオリゴマーを合成し、これを開環重合して分子量を高める方法も提案されている(特許文献1、特許文献2)。
環状ポリカーボネートオリゴマーは低粘度であることから、これを原料とする方法は、流動性が要求される成形加工に有利であり、また各種添加剤との混合がし易いという利点を有する。さらに、通常のポリカーボネート樹脂よりはるかに大きな分子量の成形体を得られる可能性も有している。
特表昭61−502132号公報
特開平5−51443号公報
しかしながら、原料とする環状のポリカーボネートオリゴマーを製造する方法に関しては、未だ満足のゆくものが得られていないのが現状である。例えば、特許文献1で開示されている環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法は、有機液体とアルカリ性水溶液との混合系において、ビスフェノールビスクロロホーメート化合物溶液を系内に滴下することで環状オリゴマーを生成させるというものである。しかしながら、同時に分子量が数万を越える「ハイポリマー」が多く生成してしまい、目的の環状オリゴマーの収率が下がってしまうという問題があった。
また、特許文献2では、環状ポリカーボネートオリゴマーの前駆体として、末端水酸基と末端クロロホーメート基の比がほぼ1になるモノクロルホーメートオリゴマーを含有する組成物を用いている。しかしながら、そのようなモノクロルホーメートオリゴマーを合成するためには、pHなどの反応条件を精密にコントロールしなければならず、工業的に製造するには問題を有していた。
そこで本発明は、ハイポリマーの生成を抑制し、環状ポリカーボネートオリゴマーを簡易かつ高収率に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の原料を、置換基が特定の比率となるように用いることで本発明の目的を達成できることを見出した。
すなわち本発明は、直鎖ポリカーボネートオリゴマーと、ビスフェノール化合物の水不混合性有機溶媒と、を原料として、水不混合性有機溶媒相とアルカリ性水溶液相との二相系において環状ポリカーボネートオリゴマーを製造する方法であって、直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物とが有する水酸基の合計モル数に対する、直鎖ポリカーボネートオリゴマーが有するクロロホーメート基のモル数の割合が、1.05〜1.5となる範囲の比率で、直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物が添加されることを特徴とする、環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
ここで、本明細書における「水不混合性有機溶媒」とは、水に完全には溶解せず、少なくとも一部が水と分離し、二相系を形成し得る有機溶媒であって、通常のポリカーボネート樹脂の製造に用いることが可能な有機溶媒をいう。
この態様において、原料のうちの、少なくとも直鎖ポリカーボネートオリゴマーは滴下によって二相系に添加されるものであり、該滴下は、水不混合性有機溶媒相中のビスフェノールカーボネート構造単位の濃度が、滴下開始10分後の時点で0.05mol/L以下であるように、かつ滴下開始40分後の時点で0.13mol/L以下であるように、速度を調整して行われることが好ましい。
本発明によれば、安価かつ容易に入手又は製造できる原料を出発物質として、簡易に高収率に環状ポリカーボネートオリゴマーを製造することができる。本発明の製造方法では、ハイポリマーの生成が抑えられるため、高純度な環状ポリカーボネートオリゴマーを製造することができる。また、ポリカーボネートオリゴマーの滴下速度を調整することによって、より高純度かつ高収率に環状ポリカーボネートオリゴマーを製造することができる。
本発明の製造方法において製造される環状ポリカーボネートオリゴマーは、下記一般式(1)で示される環状構造を有する化合物である。
一般式(1)中、Yは単結合又は2価基を表し、R1及びR2は、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン基又はアルコキシ基を表す。a及びbは、各々独立に1〜4の整数を表す。また、nは、2〜1000の整数である。
R1及びR2において、アルキル基としては、製造容易性の観点からは、炭素数1〜炭素数10のアルキル基が好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜炭素数8であり、特に好ましくは炭素数1〜炭素数2である。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましい。ハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基が好ましい。
また、Yとしては、単結合、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、シクロヘキシレンが挙げられる。これらの中でも、単結合、−O−、−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、シクロヘキシレンが好ましい。
一般式(1)で示される環状ポリカーボネートオリゴマーのビスフェノール残基部分を構成するビスフェノール成分の具体例としては、例えば、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、(2−ヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン等が挙げられる。
これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンが好ましい。これらのビスフェノール成分を複数組み合わせて用いることも可能である。
本発明の環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法においては、直鎖のポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物の水不混合性有機溶液とを原料とする。特許文献1等に示されているようなビスフェノールビスクロロホーメートを原料に使用した場合に比べ、原料が工業的に入手しやすいばかりでなく、収率低下の原因となる「ハイポリマー」の生成も低減できるという利点を有する。また、本発明で用いる直鎖ポリカーボネートオリゴマーとしては、特許文献2で使用されている直鎖ポリカーボネートオリゴマーのような、末端に存在するフェノール性水酸基とクロロホーメート基の量がほぼ等しいものである必要はなく、後述のようにクロロホーメート基が優勢である直鎖ポリカーボネートオリゴマーであれば用いることができる。そのような直鎖ポリカーボネートオリゴマーは、ポリカーボネート樹脂製造工程における中間体として入手することができ、工業化を進める上で大変有利である。
本発明の環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法に使用されるビスフェノール化合物としては、環状ポリカーボネート中のビスフェノール成分として上記例示したものと同じ化合物を例示することができ、好ましい化合物もまた同様である。
本発明の環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法に使用される直鎖ポリカーボネートオリゴマーは、従来公知の方法により合成して得ることもできる。従来公知の方法としては、例えば、上述したビスフェノール成分を含有した水酸化アルカリ金属水溶液又は水酸化アルカリ土類金属水溶液と、水不混合性有機溶媒とを用いた二相系で、これらの撹拌条件下にホスゲンを導入する方法が挙げられる。ホスゲンは気体状、液体状又は水不混合性有機溶媒溶液として導入される。
水不混合性有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化脂肪族炭化水素が挙げられる。これらの中でも、ジクロロメタンが特に好ましい。
この際、ホスゲンは、ビスフェノール成分を含有した水酸化アルカリ金属水溶液相に、数分から数十分にわたり連続的に導入される。この時の反応系の温度は0℃〜40℃、好ましくは0℃〜20℃の範囲に保たれる。
使用する水酸化アルカリ金属水溶液と水不混合性有機溶媒の比率は、体積比で通常、(5/1)〜(1/5)の範囲であり、(3/1)〜(1/3)の範囲であることが好ましい。また、水酸化アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、水酸化アルカリ金属の使用量としては、反応系中に含まれるフェノール性水酸基の1.01倍当量〜3倍当量の範囲が好ましい。
なお、この際、必要に応じ、触媒、分子量制御剤、還元剤等を用いることも可能である。触媒を添加することにより、直鎖ポリカーボネートオリゴマーの生成反応が促進され、分子量制御剤を添加することにより、直鎖ポリカーボネートオリゴマーの分子量が調節される。また、還元剤は着色の抑制に有用である。
使用される触媒としては、例えば、公知の3級アミン、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等が挙げられる。具体的には、3級アミンとして、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、ピリジン、ジメチルアニリン等が挙げられる。4級アンモニウム塩又は4級ホスホニウム塩としては、トリブチルアミンやトリオクチルアミン等の3級アルキルアミンの塩酸、臭素酸、ヨウ素酸等の塩、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、トリエチルオクタデシルホスホニウムブロミド、N−ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリルピコリニウムクロリド等が挙げられる。
ホスゲンを用いた上記方法によって直鎖ポリカーボネートオリゴマーを合成する場合、直鎖ポリカーボネートオリゴマーは、水不混合性有機溶媒の溶液として得られるため、水相との分離を経た後、水不混合性有機溶液をそのまま環状ポリカーボネートオリゴマーの製造に用いることができる。この溶液中の直鎖ポリカーボネートオリゴマーの濃度は、通常10質量%〜30質量%程度である。
上記合成方法によって得られる直鎖ポリカーボネートオリゴマーは、通常1量体〜20量体程度のものである。直鎖ポリカーボネートオリゴマーの分子量は、触媒や分子量制御剤の量、反応時間等を調節することによって制御することが可能である。
本発明に用いる直鎖ポリカーボネートオリゴマー分子は、両末端にそれぞれフェノール性水酸基とクロロホーメート基のいずれかを有する。したがって、直鎖ポリカーボネートオリゴマー全体としては、ある特定の比率でフェノール性水酸基とクロロホーメート基とを有する。本発明においては、直鎖ポリカーボネートオリゴマー全体として、クロロホーメート基が優勢であるものを使用する。その比率は、クロロホーメート基のモル数/水酸基のモル数(以下<CF>/<OH>ともいう。)が、1.5〜10であるのが好ましい。本発明の製造方法では、後述するように、原料全体(反応系に添加される直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物が有する置換基の合計)の<CF>/<OH>が1.05〜1.5になるように、直鎖ポリカーボネートオリゴマーに対するビスフェノール化合物の添加量を決定するが、直鎖ポリカーボネートオリゴマー自体の<CF>/<OH>があまり大きいと、添加するビスフェノール化合物が多くなりすぎて取り扱いが困難になる場合がある。
なお、直鎖ポリカーボネートオリゴマーの<CF>(クロロホーメート基のモル数)は、直鎖ポリカーボネートオリゴマーをアニリンと反応させて得られるアニリン塩酸塩を0.2規定水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して求めることができ、<OH>(水酸基のモル数)は、直鎖ポリカーボネートオリゴマーのジクロロメタン溶液に四塩化チタンと酢酸のジクロロメタン溶液を添加して発色させ、これらの発色を546nmで比色定量して求めることができる。
(環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法)
本発明の環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法においては、原料全体の<CF>/<OH>が1.05〜1.5となるように、原料である直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物の添加比率が決定される。すなわち、直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物は、直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物とが有する水酸基の合計モル数に対する、直鎖ポリカーボネートオリゴマーが有するクロロホーメート基のモル数の割合が、1.05〜1.5となる範囲の比率で、添加される。
本発明の環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法においては、原料全体の<CF>/<OH>が1.05〜1.5となるように、原料である直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物の添加比率が決定される。すなわち、直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物は、直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物とが有する水酸基の合計モル数に対する、直鎖ポリカーボネートオリゴマーが有するクロロホーメート基のモル数の割合が、1.05〜1.5となる範囲の比率で、添加される。
ここで、直鎖ポリカーボネートオリゴマーが有する水酸基とクロロホーメート基のモル数は、上述のようにそれぞれ中和滴定して求めた値と比色定量して求めた値であり、ビスフェノール化合物が有する水酸基のモル数は、原料として添加するビスフェノール化合物のモル数を2倍した値である。
原料全体の<CF>/<OH>が1.05より小さいと、クロロホーメート基は反応中に一部が加水分解されて水酸基となるので、結果として水酸基が過剰となり環状ポリカーボネートオリゴマーの生成反応(以下環状化反応ともいう。)が遅くなったり、十分進まなかったりして環状オリゴマーの収率が低下する傾向にある。また、1.5より大きい場合も環状化反応が遅くなり、ハイポリマーが増大する傾向にあり好ましくない。原料全体の<CF>/<OH>は、より好ましくは下限が1.1以上であり、上限が1.3以下である。
本発明において、環状ポリカーボネートオリゴマーの製造は、水不混合性有機液体相とアルカリ性水溶液相の二相系で行う。また、反応系に添加するビスフェノール化合物は、水不混合性有機溶媒にあらかじめ溶解させておくことが肝要であり、ビスフェノール化合物の水不混合性有機溶液としたものを原料として用いる。ビスフェノール化合物をアルカリ性水溶液に溶解させて用いると、ハイポリマーの低減に効果がみられない、又はハイポリマーが増大する傾向にあり好ましくない。一般的に、ビスフェノール化合物は水不溶性有機溶媒には溶解しにくいが、超音波処理等を行うことによって溶解させることができる。例えばビスフェノールAをジクロロメタンに添加したものを超音波処理することによってビスフェノールAをジクロロメタンに溶解させることができる。
ビスフェノール化合物の水不混合性有機溶液は反応槽に仕込んでおいてもよいし、直鎖ポリカーボネートオリゴマー溶液と同時に系内に徐々に滴下してもよい。滴下する場合は、直鎖ポリカーボネートオリゴマー溶液中にビスフェノール化合物を共存させてもよく、別々に滴下してもよい。ハイポリマーをより低減させる目的のためには、直鎖ポリカーボネートオリゴマー溶液中にビスフェノール化合物を共存させて滴下するのが好ましい。ビスフェノール化合物の水不混合性有機溶液の濃度は、添加方法によっても異なるが、通常、反応槽に仕込んでおく場合、0.1〜3.0質量%程度であり、反応槽に滴下する場合は、0.1〜5.0質量%程度である。
反応槽にはあらかじめ水不混合性有機溶媒とアルカリ性水溶液とを入れておき、懸濁状態となるように撹拌しておく。ビスフェノール化合物の水不混合性有機溶液を滴下で反応槽に添加しない場合には、ビスフェノール化合物も水不混合性有機溶媒相に溶解させた状態で反応槽に仕込まれる。環状化反応中は常に水不混合性有機溶媒相とアルカリ性水溶液相が懸濁状態となるように激しく攪拌しておくことが好ましい。
直鎖ポリカーボネートオリゴマーは、環状体の生成を効率的に行う観点からは、水不混合性有機溶媒に溶解させ、反応槽の二相系に経時的に滴下することが好ましい。その際、滴下する前の直鎖ポリカーボネートオリゴマー溶液の濃度とその滴下速度が環状体を高純度に生成せしめるのに重要である。直鎖ポリカーボネートオリゴマーを水不混合性有機溶媒溶液として滴下する場合の好ましい濃度範囲は、上限は15質量%であり、好ましくは10質量%である。下限は1質量%であり好ましくは2質量%である。
本発明の環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法においては、原料の滴下は、直鎖ポリカーボネートオリゴマー溶液の滴下開始10分後の時点で、反応系の水不混合性有機溶媒相に存在するビスフェノールカーボネート構造単位の濃度が、0.05mol/L以下となるように速度を調整して徐々に滴下することが好ましい。0.05mol/Lより大きくなると、ハイポリマーの生成量が増大する傾向がある。滴下始めの10分以降は、その速度を概ね保ったまま滴下を完了させる。
一方、原料滴下開始40分後の時点における、反応系の水不混合性有機溶媒相に存在するビスフェノールカーボネート構造単位の濃度は、0.5mol/L以下であることが好ましい。好ましくは、0.2mol/L以下、より好ましくは0.1mol/L以下である。0.5mol/Lより大きいとハイポリマーの生成量が増大して好ましくない。
原料の滴下時間は、生産性の点からは、200分以下であることが好ましく、その観点からは、直鎖ポリカーボネートオリゴマー滴下開始10分後における、反応系の水不混合性有機溶媒相に存在するビスフェノールカーボネート構造単位の濃度が、0.01mol/L以上となるように、そして滴下開始40分後における、反応系の水不混合性有機溶媒相に存在するビスフェノールカーボネート構造単位の濃度が0.02mol/L以上となるように滴下することが好ましい。
ここで、本発明におけるビスフェノールカーボネート構造単位とは、下記一般式(2)で示す部分構造である。
一般式(2)中、Y、R1、R2、a及びbは、一般式(1)におけるY、R1、R2、a及びbと同義であり、好ましい置換基も同様である。水不混合性有機溶媒相に存在する複数のビスフェノールカーボネート構造単位は、互いに同じでも異なっていてもよい。
本発明における、「反応系の水不混合性有機溶媒相に存在するビスフェノールカーボネート構造単位の濃度」とは、該濃度測定時点(以下単に測定時点という。)で反応槽に存在するビスフェノールカーボネート構造単位のモル数を、測定時点で反応槽に存在する水不混合性有機溶媒の体積で割った値である。
ビスフェノールカーボネート構造単位のモル数は、測定時点までに反応槽に添加された直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物の総質量から反応によって脱離する末端基の総質量を除いた質量を、一般式(2)で表されるビスフェノールカーボネート構造単位の分子量で割ることによって求めることができる。なお、ビスフェノール成分を複数組み合わせるなどして、一般式(2)で表される構造単位が複数種類存在する場合には、分子量としては、その構造が由来する原料の比率から計算される平均分子量を用いる。また、反応によって脱離する末端基の総質量は、以下のような考え方により計算する。
直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物を用いた環状ポリカーボネートオリゴマーの生成反応では、直鎖ポリカーボネートオリゴマー末端のクロロホーメート基は、反応槽に添加されると、直鎖ポリカーボネートオリゴマー末端又はビスフェノール化合物に存在する水酸基と速やかに反応し、HClが脱離してカーボネート構造を形成する。したがって、測定時点で反応槽の水酸基が過剰な場合、すなわち測定時点までに反応槽に添加された原料全体(直鎖ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノール化合物が有する置換基の合計)が有するクロロホーメート基のモル数を<CF>、水酸基のモル数を<OH>として、<CF>/<OH>が1以下の場合、クロロホーメート基は水酸基との反応で速やかに消費されるため、脱離するHClの質量を、反応によって脱離する末端基の総質量とみなす。
一方、測定時点で反応槽中のクロロホーメートが過剰な場合、すなわち原料全体の<CF>/<OH>が1より大きい場合には、水酸基との反応に供されなかった余剰のクロロホーメート基の約半数が、加水分解・脱炭酸して水酸基となり、それが残り半分の余剰クロロホーメート基と反応してさらにカーボネート構造を形成する。したがって、<CF>/<OH>が1より大きい場合には、脱離するHClの質量と、脱炭酸する際に失われるCOの質量との和を、反応によって脱離する末端基の総質量とみなす。
環状化反応に使用される水不混合性有機溶媒としては、直鎖ポリカーボネートオリゴマーの製造に使用される水不混合性有機溶媒として上述したものと同じものを例示することができ、好ましい水不混合性有機溶媒もまた同様である。
環状化反応に使用されるアルカリ性水溶液と水不混合性有機溶媒との混合比は、体積比で通常、(5/1)〜(1/10)の範囲であり、(3/1)〜(1/8)の範囲であることが好ましい。また、滴下時も含めた反応の際の温度は、0〜40℃の範囲であることが好ましい。
環状化反応に使用されるアルカリ性水溶液を調製するのに用いられる水酸化アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これら水酸化アルカリ金属は、原料中の水酸基との反応とクロロホーメート基の加水分解反応によって消費される。したがって、水酸化アルカリ金属の使用量としては、この加水分解反応を考慮に入れた水酸化アルカリ金属の必要量、2<CF>−<OH>に対して、1.1〜10倍であることが好ましく、1.5〜5倍がより好ましい。1.1倍より小さいと環状化反応が十分進行せず、未反応の直鎖オリゴマーが残りやすい。一方、10倍より大きいと、反応後にアルカリ成分を洗浄しても残存しやすいため、洗浄操作が困難となる場合がある。
環状ポリカーボネートオリゴマーの合成に使用される触媒としては、例えば、公知の3級アミン、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等が挙げられる。具体的には、3級アミンとして、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン、ピリジン、ジメチルアニリン等が挙げられる。4級アンモニウム塩又は4級ホスホニウム塩としては、トリブチルアミンやトリオクチルアミン等の3級アルキルアミンの塩酸、臭素酸、ヨウ素酸等の塩、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、トリエチルオクタデシルホスホニウムブロミド、N−ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリルピコリニウムクロリド等が挙げられる。
ここで用いられる触媒は、反応槽にあらかじめ全量を仕込んでおいてもよく、あるいは経時的に添加してもよい。経時的に添加する場合は、反応中連続的に滴下してもよく、また数回に分けて断続的に滴下してもよい。触媒は、水不混合性有機溶媒と混合して添加するのが好ましい。
直鎖ポリカーボネートオリゴマーの環状化反応は、原料の滴下によって速やかに進行するため、原料の滴下終了とほぼ同時に反応も終了する。通常、滴下終了後しばらく攪拌を続けて反応を完了させた後、洗浄、抽出、溶媒除去などの後処理をすることによって、目的の環状ポリカーボネートオリゴマーを得ることができる。
本発明の製造方法によって得られる環状ポリカーボネートオリゴマーは、ハイポリマーの含有量が極めて少ないため、ハイポリマーを除去せずに使用することもできるが、ハイポリマーの含有量をさらに低減するために、貧溶媒による再沈操作を行ってもよい。貧溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類などが挙げられる。ハイポリマーを除去する操作を行った場合でも、本発明で得られる環状ポリカーボネートオリゴマーから除去されるハイポリマーは少量であるので、廃棄物を少なく抑えることができ、その点においても工業的に優位である。なお、得られた環状ポリカーボネートオリゴマー中のハイポリマーの生成量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によって見積もることができる。
(環状ポリカーボネートオリゴマーを用いたポリカーボネート樹脂の製造)
本発明の製造方法によって得た環状ポリカーボネートオリゴマーを重合することによって、高品質なポリカーボネート樹脂が製造される。
本発明の製造方法によって得た環状ポリカーボネートオリゴマーを重合することによって、高品質なポリカーボネート樹脂が製造される。
環状ポリカーボネートオリゴマーの重合方法としては、固相重合法、溶液重合法、溶融重合法等が挙げられる。これらの中でも、溶融重合法が好ましい。溶融重合法の場合、環状ポリカーボネートオリゴマーを溶融させた後、金型等に流し込み、重合、固化させることによって、直接所望の成形体を得ることができる。
環状ポリカーボネートオリゴマーを重合させる際には、適宜重合触媒を用いることが好ましい。重合触媒については、特に限定するものではないが、特許文献1に示されているような各種のルイス酸、弱塩基性塩等が使用できる。また、各種のりん化合物も有用である。特にはテトラアルキルホスホニウム塩、トリアリールホスホニウム塩、トリアリールホスフィンが好ましい。
環状ポリカーボネートオリゴマーと重合触媒とを混合させる方法としては、例えば、無溶媒で混合させる方法、溶媒を用いて混合させる方法、環状ポリカーボネートオリゴマーを加熱、溶融させた後に混合させる方法等の種々の方法が可能である。溶媒を用いて混合させる場合は、環状ポリカーボネートオリゴマーと重合触媒の両方が溶解する溶媒を用いるのが好ましい。このような溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
環状ポリカーボネートオリゴマーの重合温度は、通常150℃〜350℃、好ましくは160℃〜320℃、より好ましくは180℃〜300℃である。重合温度が過度に低いと、重合反応が進行しにくく、所望のポリカーボネート樹脂を得ることが困難になる傾向がある。一方、重合温度が過度に高いと、ポリカーボネート樹脂や触媒の分解反応が頻繁に起こるようになり、所望のポリカーボネート樹脂を得ることが困難になる傾向がある。このような温度範囲で環状ポリカーボネートオリゴマーの重合反応を行うことにより、重合反応が迅速に進行し、所望のポリカーボネート樹脂を得ることができる。重合反応は撹拌条件下に行ってもよいし、撹拌せずに行ってもよい。さらに重合時間は、生産性の点からは24時間以内であることが好ましく、触媒や温度等を調整することによって制御することができる。
環状ポリカーボネートオリゴマーの重合に際しては、構造の異なる他の環状ポリカーボネートオリゴマー、環状カーボネート、環状エステル、環状アミド、環状エーテル、環状アセタール、環状アミン、環状スルフィド、オキサゾリン誘導体、環状シロキサン、リン含有環状化合物、エポキシド、ラクタム、ラクトン等の開環重合性化合物を添加していてもよい。その他、ビニル基を含有する重合性化合物や、架橋構造を導入するための多官能性化合物を添加してもよい。
また、重合により得られるポリカーボネート樹脂の性能を向上させるため、環状ポリカーボネートオリゴマーやその重合体であるポリカーボネート樹脂に、無機物、有機物、天然由来化合物等を含有させてもよい。
環状ポリカーボネートオリゴマーの重合により得られるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、通常、10,000以上、好ましくは12,000以上、さらに好ましくは14,000以上である。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が過度に低いと、機械的強度が劣り、所望のポリカーボネート樹脂を得ることが困難になる傾向がある。
本発明の方法で製造される環状ポリカーボネートオリゴマーの重合によって得られるポリカーボネート樹脂は高品質であり、各種機械部品、各種電気絶縁性材料、自動車部品、光ディスク等の情報機器材料、ヘルメット等の安全防護材料等に幅広く利用される。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。なお、本発明はその趣旨に反しない限り実施例に限定されるものではない。また、実施例等における「部」は、特に指定しない限り質量単位である。
(調整例1:直鎖ポリカーボネートオリゴマーの製造)
以下の操作によって、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及びホスゲンを原料とする直鎖ポリカーボネートオリゴマーを合成した。
以下の操作によって、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及びホスゲンを原料とする直鎖ポリカーボネートオリゴマーを合成した。
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン100部(0.438mol)、水酸化ナトリウム45.6部(1.14mol)、水848部、ハイドロサルファイトナトリウム0.336部及びジクロロメタン432部(328ml)を、撹拌機付き反応槽に仕込み、撹拌混合した。次に、温度0℃〜10℃の範囲に保たれた反応槽内に、ホスゲン110部(1.111mol)を約6時間で吹き込み、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとホスゲンとの反応を行った。
反応終了後、生成した直鎖ポリカーボネートオリゴマーを含有するジクロロメタン溶液を捕集した。得られた直鎖ポリカーボネートオリゴマーのジクロロメタン溶液の分析結果は下記の通りであった。
・直鎖ポリカーボネートオリゴマー濃度:25.4質量%
・末端クロロホーメート基濃度:0.73規定
・末端フェノール性水酸基濃度:0.19規定
・<CF>/<OH>:3.84
・直鎖ポリカーボネートオリゴマー濃度:25.4質量%
・末端クロロホーメート基濃度:0.73規定
・末端フェノール性水酸基濃度:0.19規定
・<CF>/<OH>:3.84
なお、直鎖ポリカーボネートオリゴマーの濃度は、ジクロロメタン溶液を蒸発乾固させて測定した。末端クロロホーメート基濃度は、直鎖ポリカーボネートオリゴマーをアニリンと反応させて得られるアニリン塩酸塩を0.2規定水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して測定した。末端フェノール性水酸基濃度は、直鎖ポリカーボネートオリゴマーのジクロロメタン溶液に四塩化チタンと酢酸のジクロロメタン溶液を添加して発色させ、546nmで比色定量して求めた。
(環状ポリカーボネートオリゴマーの製造)
(実施例1)
ビーカーに、水酸化ナトリウム8.5g(0.213mol)及び水42.5mLを加えて撹拌し、水酸化ナトリウム水溶液を調製した。次に、20℃に保った反応槽にジクロロメタン290mLと上記の水酸化ナトリウム水溶液を加えた。
(実施例1)
ビーカーに、水酸化ナトリウム8.5g(0.213mol)及び水42.5mLを加えて撹拌し、水酸化ナトリウム水溶液を調製した。次に、20℃に保った反応槽にジクロロメタン290mLと上記の水酸化ナトリウム水溶液を加えた。
続いて、ジクロロメタン200mLにビスフェノールA(以下BPAともいう。)3.62g(0.0159mol)を溶解させた。溶解させるにあたっては、超音波洗浄器を用いた。このジクロロメタン溶液を、調整例1で得た直鎖ポリカーボネートオリゴマーのジクロロメタン溶液100gと混合し、これを滴下ロートに入れた。この溶液の<CF>/<OH>は1.2となった。また、トリエチルアミン1.9g(18.8mmol)にジクロロメタン40mLを添加した溶液を調製し、これを上記とは別の滴下ロートに入れた。
次に、撹拌条件下、反応槽中に、トリエチルアミンのジクロロメタン溶液を10分毎、4回に分けて添加した。直鎖ポリカーボネートオリゴマーのジクロロメタン溶液は、滴下始め10分後の反応槽内のジクロロメタン中におけるビスフェノールカーボネート構造単位(以下BPA単位ともいう。)濃度が0.07mol/Lとなるように速度を調節し、40分かけて全量を滴下した。滴下終了後、そのまま2分間撹拌した後、撹拌を停止し、有機相のみを取り出した。
この有機相を0.1規定の塩酸400mLで2回洗浄し、水400mLで2回洗浄した後、有機相を取り出した。続いてジクロロメタンを乾固させクロロホルムに溶解させてGPC測定を行った。
GPCの測定は、東ソー(株)製HLC−8220GPCを用いて行い、カラムはSuperMultiporeHZ−Mを使用した。分子量はポリスチレン換算によって算出した。得られたクロマトグラフより、分子量2万以上の高分子量成分の比率を算出し、これをハイポリマー含有量とした。
(実施例2)
ビーカーに、水酸化ナトリウム4.25g(0.106mol)及び水42.5mLを加えて撹拌し、水酸化ナトリウム水溶液を調製した。次に、20℃に保った反応槽にジクロロメタン290mLと上記の水酸化ナトリウム水溶液を加えた。
ビーカーに、水酸化ナトリウム4.25g(0.106mol)及び水42.5mLを加えて撹拌し、水酸化ナトリウム水溶液を調製した。次に、20℃に保った反応槽にジクロロメタン290mLと上記の水酸化ナトリウム水溶液を加えた。
続いて、ジクロロメタン200mLにBPA1.81g(0.008mol)を溶解した。溶解させるにあたっては、超音波洗浄器を用いた。このジクロロメタン溶液を、調整例1で得た直鎖ポリカーボネートオリゴマーのジクロロメタン溶液50gと混合し、これを滴下ロートに入れた。この溶液の<CF>/<OH>は1.2となった。また、トリエチルアミン1.9g(18.8mmol)にジクロロメタン40mLを添加した溶液を調製し、これを上記とは別の滴下ロートに入れた。
次に、撹拌条件下、反応槽中に、トリエチルアミンのジクロロメタン溶液を10分毎、4回に分けて添加した。直鎖ポリカーボネートオリゴマーのジクロロメタン溶液は、滴下始め10分後の反応槽中のジクロロメタンにおけるBPA単位濃度が0.035mol/Lとなるように速度を調節し、40分かけて全量を滴下した。滴下終了後、そのまま2分間撹拌した後、撹拌を停止し、有機相のみを取り出した。
この有機相を0.1規定の塩酸400mLで2回洗浄し、水400mLで2回洗浄した後、有機相を取り出した。続いてジクロロメタンを乾固させクロロホルムに溶解させて実施例1と同様にGPC測定を行った。
(実施例3)
滴下開始10分後のBPA単位濃度が0.028mol/L、40分後には0.087mol/Lとなるように速度を調節し、120分かけて全量を滴下した以外は、実施例1と同様に反応を行った。
滴下開始10分後のBPA単位濃度が0.028mol/L、40分後には0.087mol/Lとなるように速度を調節し、120分かけて全量を滴下した以外は、実施例1と同様に反応を行った。
(実施例4)
滴下開始10分後のBPA単位濃度が0.014mol/L、40分後には0.046mol/Lとなるように速度を調節し、120分かけて全量を滴下した以外は、実施例2と同様に反応を行った。
滴下開始10分後のBPA単位濃度が0.014mol/L、40分後には0.046mol/Lとなるように速度を調節し、120分かけて全量を滴下した以外は、実施例2と同様に反応を行った。
(比較例1)
直鎖ポリカーボネートオリゴマーのジクロロメタン溶液にBPAを添加せず、反応にBPAを用いないこと以外は、実施例1と同様に行った。この際の滴下始め10分後のBPA単位濃度は、0.057mol/Lであり、40分かけて全量を滴下した。
直鎖ポリカーボネートオリゴマーのジクロロメタン溶液にBPAを添加せず、反応にBPAを用いないこと以外は、実施例1と同様に行った。この際の滴下始め10分後のBPA単位濃度は、0.057mol/Lであり、40分かけて全量を滴下した。
(比較例2)
実施例1でジクロロメタンに溶解させたBPAを水酸化ナトリウム水溶液(NaOH2.04g/水40mL)に溶解して、別のロートから滴下する以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1でジクロロメタンに溶解させたBPAを水酸化ナトリウム水溶液(NaOH2.04g/水40mL)に溶解して、別のロートから滴下する以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1〜4及び比較例1、2の製造条件及びGPC測定結果について表1に示す。
表1に示されるBPA単位濃度は反応槽のジクロロメタン中に存在するBPA単位濃度を示すものである。比較例1では、水酸化ナトリウム水溶液中にBPAを溶解させて滴下しているが、反応槽中で反応した後はジクロロメタン中に溶解した状態となるため、水酸化ナトリウム水溶液として滴下したBPAもBPA単位形成に寄与したものとして扱った。
表1より、本発明の製造方法で製造した環状ポリカーボネートオリゴマーにおけるハイポリマーの含有量はいずれも10%以下であり、ハイポリマーの含有量が少ない高品質の環状ポリカーボネートオリゴマーが得られたことが分かる。特に、滴下開始後10分後と滴下開始40分後の時点での原料の滴下量が少なく制御された実施例2〜4では、滴下開始40分後の時点での滴下量が多い実施例1と比べ、より顕著なハイポリマーの低減が確認された。一方、BPAを添加しなかった比較例1や、BPAをジクロロメタンに溶解させないで反応槽に添加した比較例2で得られた環状ポリカーボネートオリゴマーは、ハイポリマーの含有量が非常に多いことが確認された。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
Claims (2)
- 直鎖ポリカーボネートオリゴマーと、ビスフェノール化合物の水不混合性有機溶液と、を原料として、水不混合性有機溶媒相とアルカリ性水溶液相との二相系において環状ポリカーボネートオリゴマーを製造する方法であって、前記直鎖ポリカーボネートオリゴマーと前記ビスフェノール化合物とが有する水酸基の合計モル数に対する、前記直鎖ポリカーボネートオリゴマーが有するクロロホーメート基のモル数の割合が、1.05〜1.5となる範囲の比率で、前記直鎖ポリカーボネートオリゴマーと前記ビスフェノール化合物が添加されることを特徴とする、環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法。
- 前記原料のうちの、少なくとも前記直鎖ポリカーボネートオリゴマーは滴下によって前記二相系に添加されるものであり、該滴下は、前記水不混合性有機溶媒相中のビスフェノールカーボネート構造単位の濃度が、滴下開始10分後の時点で0.05mol/L以下であるように、かつ滴下開始40分後の時点で0.13mol/L以下であるように、速度を調整して行われること特徴とする請求項1に記載の環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法。
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JP2008241638A JP2010070691A (ja) | 2008-09-19 | 2008-09-19 | 環状ポリカーボネートオリゴマーの製造方法 |
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