JP6183821B2 - エマルション型粘着剤組成物 - Google Patents
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Description
本発明のエマルション型粘着剤組成物は、アクリル系粘着剤エマルション(A)をその主成分とし、51〜90質量%含有してなる。アクリル系粘着剤エマルション(A)を60〜80質量%含有するものであることがより好ましい。また、本発明を構成するアクリル系粘着剤エマルション(A)は、そのTgが、併用する共重合体エマルション(B)のTgよりも低い、−70℃〜−50℃であることを要する。上記ガラス転移温度を満たすアクリル系の粘着剤エマルションであれば、従来公知のものをいずれも使用することができる。なお、共重合体のTgについては、日本エマルジョン工業会規格「合成樹脂エマルジョンの皮膜の硬さ表示方法(107−1996)」に記載された、各ホモポリマーのTg値を使用して計算値から求めることができる。この点については後述する。
上記アクリル系粘着剤エマルション(A)は、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステル等のアクリル系単量体を乳化重合してなる、上記Tgの範囲を満たす(共)重合体を有するものであればよい。アクリル系単量体としては、例えば、下記に挙げるような(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体を、単独で或いは2種以上を乳化重合することによって容易に得られる。エマルション(A)の調製に用いることのできる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート及びエチルカルビトールアクリレート等が挙げられる。本発明を構成するエマルション(A)は、上記に挙げた単量体の群より1種以上使用することで調製できるが、特に、炭素数4〜12のアルキル鎖を有するアクリル酸エステルから選ばれた単量体を主成分として使用することが好ましい。
本発明のエマルション型粘着剤組成物を構成するアクリル系粘着剤エマルション(A)を共重合して得る場合は、各ホモポリマーのTg値を使用して得た計算値から、得られるエマルションを構成する共重合体のTgが−70℃〜−50℃の範囲内になるように、上記に挙げたような単量体を適宜に選択してモノマー組成を設計し、乳化重合する。この際に行う乳化重合方法は特に限定されず、従来公知の乳化重合方法を利用して適宜に製造することができる。例えば、1段重合方法、多段重合方法、または、これらの組み合わせによる方法の、いずれの方法でも製造することができる。
上記した乳化重合の際に用いる重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩過酸化物、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の有機過酸化物等を使用できる。これらの重合開始剤の使用量は、アクリル系粘着剤エマルション(A)を製造する際に用いる、単独単量体或いは単量体混合物100質量部あたり、0.1〜1.0質量部程度とすることが好ましい。また、重合開始剤は、重合の各段階で用いることができ、各段階で所定量を添加して、重合反応を行うことができる。
上記した乳化重合の際には、乳化剤として界面活性剤を用いることができる。本発明で規定する共重合体エマルション(B)を得る際に行う乳化重合の際も同様であり、従来公知の陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等、如何なるものも用いることができる。例えば、−SO3NH4基、−OSO2NH4基、或いは、エチレンオキサイド鎖の中から選ばれた少なくとも1種の、親水基を有する界面活性剤等が挙げられる。具体的な陰イオン性界面活性剤としては、例えば、ニューコール707SF、ニューコール714SF、ニューコール723SF及びニューコール740SF〔共に商品名、日本乳化剤(株)製〕等を使用することができる。また、本発明で使用し得る具体的な非イオン性界面活性剤としては、例えば、ニューコール707、ニューコール710、ニューコール714、ニューコール723、ニューコール740及びニューコール780(共に商品名、日本乳化剤(株)製)等が挙げられる。
上記のようにして得られる本発明を構成するアクリル系粘着剤エマルション(A)は、先述したように、そのガラス転移温度(Tg)が、−70℃〜−50℃と、低Tgであることを必須とする。より好ましくは、−70〜−60℃であることが好ましい。Tgが、−70℃よりも低いと、凝集力が低く、糊のはみ出しやダイカット性に劣り、−50℃より高いと、高タックが得られ難い場合がある。
次に、上記した主成分である低Tgのアクリル系粘着剤エマルション(A)に混合して用いられる、(A)よりもTgが高い、副成分である高Tgの共重合体エマルション(B)について説明する。本発明のエマルション型粘着剤組成物を構成する共重合体エマルション(B)は、粘着付与樹脂の存在下、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体を乳化重合することにより得られた共重合体のエマルションである。更に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体を含む単量体混合物100質量部に、20〜200質量部の粘着付与樹脂を存在させて乳化重合してなるものであり、且つ、そのTgが−30℃〜30℃であり、その分子量が5000〜70000であり、更に、共重合体の平均粒子径が200〜2000nmの共重合体エマルションである。このように構成したことで、上記共重合体のゲル分率は20%以下と小さくなるが、0であってもよい。本発明のエマルション型粘着剤組成物の副成分である共重合体エマルション(B)の含有量は、10〜49質量%の範囲内であるが、20〜40質量%の範囲内で混合することがより好ましい。
本発明を構成する共重合体エマルション(B)を得る際に用いる、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体には、先にアクリル系粘着剤エマルション(A)の説明で示したと同様のものをいずれも使用することができる。すなわち、エマルション(B)を製造する際には、エマルション(A)の説明の際に列記した前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体の単量体混合物で、或いは、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体と共に、前記したその他のアクリル系単量体や、アクリル系単量体以外の共重合可能な単量体、及び、前記した種々の官能基を有する不飽和単量体(以下、「その他の共重合可能な単量体」と呼ぶ。)を併用した単量体混合物を使用することができる。このため、使用できる単量体についての説明は省略する。また、エマルション(B)は、上記した単量体の中から、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体を含む単量体を併用した単量体混合物を共重合することで得られるが、その際の製造方法は、エマルション(A)を製造する際の方法と同様のものが利用できる。よって、この点についても説明を省略する。但し、共重合体エマルション(B)を得るための単量体混合物を設計する際には、乳化重合して得られる共重合体のTgが、−30℃〜30℃となるようにする必要がある。この点については後述する。
本発明を構成する高Tgの共重合体エマルション(B)は、上記したような単量体混合物を乳化重合して得る際に、粘着付与樹脂の存在下、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体を少なくとも有する単量体を乳化重合させてなることを特徴とする。すなわち、本発明では、主成分である低Tgのアクリル系粘着剤エマルション(A)の製造の際に粘着付与樹脂を存在させるのでなく、副成分となる高Tgの共重合体エマルション(B)を乳化重合して得る調製時に、粘着付与樹脂を存在させる。このような構成としたことで、通常は、保持力が高くタックが低い、高Tgの共重合体エマルション(B)のタックを高めることができ、更に、粘着付与樹脂を多く含有させることができるので、本発明の粘着剤において、十分な高粘着力と高タックの実現が可能になる。更に、エマルション(B)を構成する共重合体を本発明で規定する特定の性状のものとしたことで、本発明の顕著な効果を達成する。すなわち、本発明者らの検討によれば、このように構成したことで、共重合体エマルション(B)は、エマルションと粘着付与樹脂とが良好な状態に複合化したものとなり、更に、該エマルション(B)を、先に説明した主成分である低Tgのアクリル系粘着剤エマルション(A)に混合して、本発明のエマルション型粘着剤組成物にした場合にも、粘着付与樹脂の良好な溶解或いは分散状態が保たれる。
共重合体エマルション(B)も、アクリル系粘着剤エマルション(A)と同様に、従来公知の乳化重合方法によって適宜に製造することができる。乳化重合方法としては、例えば、1段重合方法、多段重合方法、または、これらの組み合わせによる方法があるが、いずれも使用することができる。上記重合において使用可能な重合開始剤や界面活性剤は、先に記載したアクリル系粘着剤エマルション(A)の製造において使用できるものと同じものを使用することができるので、説明を省略する。
上記のようにして得られる本発明を構成する共重合体エマルション(B)は、そのガラス転移温度(Tg)が、先に説明した併用するエマルション(A)よりも高く、−30℃〜30℃であることを要する。更には、−20〜20℃程度のものがより好ましい。Tgが、−30℃より低い、或いは、30℃よりも高いと、先に説明した低Tgのアクリル系粘着剤エマルション(A)と混合してなる、粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層が、高粘着力と高タックを実現できなくなる。なお、共重合体エマルション(B)のTgは、先に説明したアクリル系粘着剤エマルション(A)を共重合体とした場合と同様の方法で求めることができる。
本発明のエマルション型粘着剤組成物は、上記した低Tgのアクリル系粘着剤エマルション(A)を主成分とし、その含有量が51〜90質量%、好ましくは、60〜80質量%の範囲であり、上記した特有の性状を有する高Tgの共重合体エマルション(B)を副成分とし、その含有量が10〜49質量%、好ましくは、20〜40質量%の割合で構成されている。本発明のエマルション型粘着剤組成物は、主成分である低Tgのアクリル系粘着剤エマルション(A)と、副成分である高Tgの共重合体エマルション(B)とを上記の割合で混合してなることで、その液安定性に優れ、また、該エマルション型粘着剤組成物を用いて形成した粘着剤層の粘着性能(高粘着力・高タック)とを、バランスよく達成したものとなる。
式:1/(Tg+273)=Σ〔Wn/(Tgn+273)〕
(上記式中、Tg(℃)は、共重合体のガラス転移温度、Wnは各モノマーの重量分率を表し、Tgn(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度を表し、nは、各モノマーの種類を表す。)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
ブチルアクリレート(BA):−55℃
メチルメタクリレート(MMA):105℃
イソノニルアクリレート(INA):−85℃
スチレン:100℃
アクリル酸(AAC):106℃
温度計、撹拌機、滴下装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた反応装置に、イオン交換水28部を秤量し、窒素を封入して内温を80℃まで昇温させた。そして、その温度に保ちながら、10%濃度の過硫酸アンモニウム水溶液2部を添加し、直ちに、別に準備しておいた、下記のようにして調製した単量体乳化物を連続的に4時間滴下して乳化重合した。上記で用いた単量体乳化物は、2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHAと略記)69部、ブチルアクリレート(BAと略記す)30部、アクリル酸(AACと略記)1部の単量体混合物に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B)4部とイオン交換水30部を混合し、乳化することで調製した。また、この単量体乳化物の滴下に並行して、5%濃度の過硫酸アンモニウム水溶液4部を滴下した。滴下終了後、80℃で4時間熟成し、その後、室温まで冷却した。最後に、アンモニア水で中和し、固形分を水で調整して、固形分60%、25℃における粘度が70mPa・s、pH8.0、比重カップでの比重が1.03である樹脂の水分散液の、アクリル系粘着剤エマルションA−1を得た。得られたエマルションA−1について、下記の方法で物性を測定し、その結果を表1中に、配合組成とともに記載した。
<粘度>
単一円筒回転式粘度計、いわゆるB型粘度計を用い、25℃で、回転数60rpmで測定した。
本発明では、エマルションのゲル分率を下記のようにして測定した。エマルションを、ポリラミシリコンセパレーター上に20g/m2/dryになるように塗工し、120℃の乾燥機で60秒間乾燥した。得られた皮膜試料1gをトルエン500gに24時間浸漬した。そして、24時間浸漬後、300メッシュステンレス金網でろ過し、ろ過後の残渣を熱風乾燥機で90℃、3時間乾燥させ、デシケーターに24時間放置後に残存皮膜の重量を測定し、浸漬前後の重量変化よりゲル分率を算出した。
本発明では、エマルションの平均粒子径を、レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD−7100(株式会社島津製作所製)にて測定した。
本発明では、乾燥皮膜のテトラヒドロフラン可溶物の重量平均分子量を、ポリスチレンを標準物質とするGPC(Gel Permeation Chromatography)にて測定した。
合成例1における単量体混合物の構成成分及び配合量を、表1に記載のものに代えて、合成例1と同様の方法で、Tgがそれぞれ−45℃、−75℃のアクリル系粘着剤エマルションをそれぞれ調製した。これを、比較合成例の、アクリル系粘着剤エマルションA−2と、A−3とした。得られたエマルションA−2、A−3のそれぞれの物性についても、エマルションA−1の場合と同様に測定して、その結果を表1中に記載した。表1に示したように、A−2のTgは−45℃、A−3のTgは−75℃であり、いずれも本発明で規定する低Tgの範囲内のものではなかった。
温度計、撹拌機、滴下装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた反応装置に、イオン交換水28部を秤量し、窒素を封入して内温を80℃まで昇温させた。そして、その温度に保ちながら、10%濃度の過硫酸アンモニウム水溶液2部を添加し、直ちに、別に準備しておいた、下記のようにして調製した単量体乳化物を連続的に4時間滴下して乳化重合した。上記で用いた単量体乳化物は、2−エチルヘキシルアクリレート49部、メチルメタクリレート(MMAと略記)10部、スチレン(STと略記)40部、アクリル酸1部、タッキファイヤー(粘着付与樹脂)としてロジン系樹脂(荒川化学工業株式会社製、商品名:ペンセルD−125)50部の単量体混合物に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B)4部とイオン交換水63部を混合し、乳化することで調製した。また、この単量体乳化物の滴下に並行して、5%濃度の過硫酸アンモニウム水溶液4部を滴下した。滴下終了後、80℃で4時間熟成し、その後室温まで冷却した。最後に、アンモニア水で中和し、固形分を水で調整して、固形分60%、25℃での粘度が100mPa・s、pH8.0、平均粒子径290nm、比重カップでの比重が1.05の樹脂の水分散液である、共重合体エマルションB−1を得た。また、モノマー組成から求めたB−1のTg値は、−8℃である。得られたエマルションB−1の物性についても、エマルションA−1と同様の方法で測定した。その結果を表2中に配合組成とともに記載した。また、図1に、B−1の平均粒子径を測定した際に得た粒度分布を示した。
合成例2における単量体構成成分及び配合量を、表2に記載のものに代えた以外は、合成例2と同様の方法で、共重合体エマルション(B−2)〜(B−6)をそれぞれ作製した。得られたエマルション(B−2)〜(B−6)のそれぞれの物性についても同様に測定して、その結果を表2中に配合組成とともに記載した。
合成例2における単量体構成成分及び配合量を、表2に記載のものに代えた以外は、合成例2と同様の方法で、共重合体エマルションB−7、B−8をそれぞれ作製した。得られたエマルションB−7、B−8についても同様に測定して、その結果を表2中に配合組成とともに記載した。表2に示したように、B−7のTgは−42℃、B−8のTgは40℃であり、いずれも本発明で規定する高Tgの範囲内のものではなかった。
合成例5の配合に加え、更に架橋剤として、トリメチロールプロパントリメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトエステルTMP)を5部配合して、合成例2と同様の方法で、共重合体エマルションB−9を作製した。得られたエマルションB−9の物性を配合組成とともに表3に示した。表3に示したように、B−9の重量平均分子量は11万であり、本発明で規定する範囲内のものではなかった。
合成例5の配合において、ラテムルE−118Bを3倍量(12部)使用して、合成例2と同様の方法で、共重合体エマルションB−10を作製した。得られたエマルションB−10の物性を配合組成とともに表3に示した。表3に示したように、B−10の平均粒径は100nmであり、本発明で規定する範囲内のものではなかった。
合成例5の配合において、ラテムルE−118Bを0.5倍量(2部)使用して、合成例2と同様の方法で、共重合体エマルションB−11を作製した。得られたエマルションB−11の物性を配合組成とともに表3に示した。表3に示したように、B−11の平均粒径は2500nmであり、本発明で規定する範囲内のものではなかった。
合成例5の配合において、タッキファイヤー(粘着付与樹脂)であるペンセルD−125を使用せず、合成例2と同様の方法で、共重合体エマルションB−12を作製した。得られたエマルションB−12の物性を配合組成とともに表3に示した。表3に示したように、B−12の重量平均分子量は36万であり、本発明で規定する範囲内のものではなかった。
温度計、撹拌機、滴下装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた反応装置に、イオン交換水28部を秤量し、窒素を封入して内温を80℃まで昇温させ、その温度に保ちながら、10%濃度の過硫酸アンモニウム水溶液2部を添加し直ちに、別に準備した2−エチルヘキシルアクリレート55.5部、ブチルアクリレート28.5部、メチルメタクリレート15部、アクリル酸1部の単量体混合物に、タッキファイヤーとしてロジン系樹脂(荒川化学工業株式会社製、商品名:ペンセルD−125)15部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:ラテムルE−118B)4部とイオン交換水40部を混合し乳化した単量体乳化物を、連続的に4時間滴下して乳化重合した。並行して5%濃度の過硫酸アンモニウム水溶液4部を滴下した。滴下終了後、80℃で4時間熟成し、その後室温まで冷却した。アンモニア水で中和し、固形分を水で調整して、固形分60%、25℃における粘度が500mPa・s、pH8.0なる水分散液を得た。これを共重合体エマルションAB−1とし、その物性を配合組成とともに表3中に示した。AB−1は、低Tgの単量体と高Tgの単量体に、タッキファイヤーを加えて乳化重合したものであり、本発明で規定する構成とは全く異なる。
上記した合成例1と比較合成例1、2で得たアクリル系粘着剤エマルション(A−1)〜(A−3)と、上記した合成例2〜7及び比較合成例3〜8で得た共重合体エマルション(B−1)〜(B−12)とを用い、表4−1、表4−2に記載した組み合わせと割合で配合し、増粘剤で粘度を500mPa・s程度に調整することにより、本発明の実施例と比較例のエマルション型粘着剤組成物をそれぞれに得た。また、上記した比較合成例9で得た共重合体エマルション(AB−1)を用いたものを比較例7のエマルション型粘着剤組成物とした。なお、表4−2中のタッキファイヤーエマルションには、荒川化学工業株式会社製のスーパーエステルE−730−55(商品名、粘度40mPa・s、平均粒子径500nm、比重1.05)を使用した。上記のようにして調製した実施例1のアクリル系粘着剤エマルションについて、下記の方法で測定したレオメーターでのずり速度104s-1時の粘度は、100mPa・sであった。
レオメーターによる粘度測定は下記のようにして行った。粘弾性測定装置Physica MCR301(Anton Paar社製)にてコーンプレートを使用して、25℃の条件で、ずり速度104s-1までの粘度を測定した。
比較例8、9の粘着剤組成物は、比較合成例1、2で作製したアクリル系粘着剤エマルションA−2と、A−3とをそれぞれに用い、併用する共重合体エマルション(B)として、合成例5で作製した本発明で規定する共重合体エマルション(B−4)を用い、実施例4と同様にして粘着剤組成物を作製したものである。
比較例10、11の粘着剤組成物は、合成例1で得た本発明で規定するアクリル系粘着剤エマルション(A−1)と、合成例5で作製した本発明で規定する共重合体エマルション(B−4)を用い、両者の使用比率を本発明で規定する範囲外としたものである。
上記した表4−1に示した配合を有する実施例の各エマルション型粘着剤組成物と、上記した表4−2に示した配合を有する比較例の各エマルション型粘着剤組成物のそれぞれについて、下記の方法及び基準で性能を評価した。具体的には、粘着力及びループタックを測定し、性能を評価するとともに、液の安定性を下記の基準で評価した。そして、表5に、得られた結果をまとめて示した。先の方法で測定した粘度についても、表5中にまとめて示した。
(試験用の試料の作製)
実施例及び比較例の各エマルション型粘着剤組成物を、ポリラミシリコンセパレーター上に20g/m2/dryになるように塗工し、120℃の乾燥機で60秒間乾燥後、粘着層上に上質紙(64g/m2)を貼り合わせ、23℃、50%RH雰囲気中に16時間以上放置して、粘着シートを作製し、これを試験試料とした。また、該試験試料は、同じ条件で複数作製し、下記の試験に用いた。
上記で得た試験試料を、23℃、50%RH雰囲気中で、ステンレス板に圧着した直後の180°はくり強度を、JIS Z0237粘着テープ・粘着シート試験方法に準じ、テンシロンにて測定した。そして、粘着力については、測定値が15N/25mm以上のものを、高粘着力のものであると評価した。表5に、得られた測定値を示した。
上記で得た試験試料を、23℃、50%RH雰囲気中で、ループ状にして、水平にしたステンレス板に貼り付け、300mm/minの速度で引き剥がした時の強度をテンシロンにて測定した。そして、タックについては、13N/25mm以上のものを高タックのものであると評価した。表5に、得られた測定値を示した。
実施例及び比較例の各エマルション型粘着剤組成物について、製造時の凝集物の有無や、放置後(3ヶ月)の液の分離状態を目視で確認し、評価した。表5中の「○」は、製造時に凝集物がなく、放置後に液の分離がなかったことを意味する。一方、「凝集」は製造時に凝集物があったことを意味し、「分離」は放置後の液が分離したことを意味する。表5に、評価結果を示した。
Claims (4)
- 主成分として低Tgのアクリル系粘着剤エマルション(A)を51〜90質量%、副成分として高Tgの共重合体エマルション(B)を10〜49質量%の範囲内で含む、少なくともこれら2種類のエマルションの混合物を含有してなるエマルション型粘着剤組成物であって、
その固形分が50%以上で、25℃での粘度が1000mPa・s以下であり、
前記低Tgのアクリル系粘着剤エマルション(A)は、そのガラス転移温度(Tg)が−70℃〜−50℃であり、
前記高Tgの共重合体エマルション(B)は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体を含む単量体混合物100質量部に、20〜200質量部の粘着付与樹脂を存在させて乳化重合した共重合体のエマルションであり、該共重合体のガラス転移温度(Tg)が−30℃〜30℃で、その重量平均分子量が5000〜70000で、且つ、その平均粒子径が200〜2000nmであることを特徴とするエマルション型粘着剤組成物。 - 前記粘着付与樹脂の量が、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体を含む単量体混合物100質量部に対して、40〜120質量部の範囲内であり、前記共重合体の重量平均分子量が5000〜60000である請求項1に記載のエマルション型粘着剤組成物。
- 前記低Tgのアクリル系粘着剤エマルション(A)を60〜80質量%、副成分として高Tgの共重合体エマルション(B)を20〜40質量%の範囲内で含む請求項1又は2に記載のエマルション型粘着剤組成物。
- 前記粘着付与樹脂の軟化点(℃)が、70℃〜170℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載のエマルション型粘着剤組成物。
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