しかしながら、近接露光においては、フォトマスクと被露光体との間隔が大きくなるに従って、その解像度が劣化することは変わらず、回折によって広がる光の一部を打ち消せる程度である。このため、解像度限界寸法も半分にまで改善できる程度であり、その効果は限定的である。
本発明は、上記の問題に鑑み、近接露光において、フォトマスクを透過した光が所定の間隔をおいた被露光体上で結像する投影転写露光の原理を実現して、被露光体のフォトマスクとの間隔の大小に依らない解像度の向上を実現すると共に、原理的な解像限界も投影転写露光並みに大幅な向上を実現できるようにすることを目的とする。
上記の目的を達成するため、本開示は、フォトマスクを、マスクパターン開口部に設けられた透光性領域における所望のパターンと対応する領域の周辺部に複数の透光性領域を設け、所望のパターンから外側に離れるにつれて、透光性領域を透過した光の位相面が進む構成とする。
具体的に、本開示に係るフォトマスクは、透明性基板と、透明性基板に設けられ、露光光を遮る遮光部とを備え、遮光部は、透光性のマスクパターン開口部を有し、マスクパターン開口部には、所望のパターンと対応する領域の周辺部に、露光光に対して少なくとも3つの異なる位相で光を透過する複数の透光性領域が設けられ、複数の透光性領域は、マスクパターン開口部を透過した露光光が所定の距離だけはなれた被露光体に所望のパターンの投影像を結ぶように、複数の透光性領域のうち、所望のパターンと対応する領域から離れた透光性領域を透過した露光光の位相面が、所望のパターンと対応する領域に近い透光性領域を透過した露光光の位相面よりも、被露光体に対して進むように構成されている。
本開示によると、透光性のマスクパターン開口部で且つ所望のパターンと対応する領域の周辺部に設けられた複数の透光性領域のうち、所望のパターンと対応する領域から離れた透光性領域を透過した露光光の位相面が、所望のパターンと対応する領域に近い透光性領域を透過した露光光の位相面よりも、被露光体に対して進むように構成されている。このため、フォトマスクから所定の距離だけ離れた被露光体上に所望のパターンと対応するように、所望のパターンの両側の透光性領域を透過した光の位相が一致して、レンズ作用と同様に、所望のパターン像を結像することができる。
本開示に係るフォトマスクにおいて、各透光性領域を透過する露光光は、所望のパターンと対応する領域から離れるに従って、その透過強度が低くなるように構成されていてもよい。
このようにすると、フォトマスクから所定の距離だけ離れた被露光体上に所望のパターン像を結像する上で、該フォトマスク上の所望のパターンと対応する領域から離れた領域を透過した光と、該フォトマスク上の所望のパターンと対応する領域に近い領域を透過した光との強度のバランスが調整されて、良好な形状のパターンを形成することができる。
本開示に係るフォトマスクにおいて、マスクパターン開口部には、所望のパターンと対応する領域に主パターン部が設けられ、所望のパターンと対応する領域の周辺部には、主パターン部と異なる位相で露光光を透過する、複数の透光性領域を含む補助パターン部が設けられており、補助パターン部は、主パターン部から近い領域に設けられた第1位相シフタ部と、主パターン部から遠い領域に設けられた第2位相シフタ部とを有し、第2位相シフタ部を透過した露光光の位相面は、第1位相シフタ部を透過した露光光の位相面よりも、被露光体に対して進むように構成されていてもよい。
このようにすると、主パターン部と、第1位相シフタ部及び第2位相シフタ部とを透過した露光光の位相が、フォトマスクから所定の距離だけ離れた被露光体上の所望のパターンと対応する位置で位相が一致して互いに強調し合うことにより、コントラストが高い像を形成できる。
この場合に、補助パターン部の周囲には、遮光部が設けられていてもよい。
このようにすると、所望のパターンを孤立状の転写像として形成することができる。
また、この場合に、主パターン部と補助パターン部とは、ライン状であり、主パターン部の延伸方向の両側に第1の位相シフタ部と第2の位相シフタ部とが、主パターン部を挟んで対をなす位置に設けられていてもよい。
このようにすると、所望のラインパターンに、より多くの光が集光するので、より高いコントラストを持つ像を形成することができる。
また、この場合に、第1位相シフタ部及び第2位相シフタ部の少なくとも一方は、その幅が露光波長以上であってもよい。
また、この場合に、第1位相シフタ部と第2位相シフタ部とを透過する露光光の位相差は、120°以内であってもよい。
このようにすると、高いコントラストを持つ像を形成することができる。
また、この場合に、第1位相シフタ部及び第2位相シフタ部は、それぞれがライン状であり、第2位相シフタ部の幅は、第1位相シフタ部の幅よりも小さくてもよい。
このようにすると、第1位相シフタ部及び第2位相シフタ部を透過した露光光の位相がフォトマスクから所定の距離だけ離れた被露光体上に、所望のパターンと対応する位置で、より正確に位相が一致するので、高いコントラストを持つ像を得ることができる。
また、この場合に、第2位相シフタ部の幅は、第1位相シフタ部の幅の0.71倍(1/√2)以下であってもよい。
また、この場合に、第1位相シフタ部及び第2位相シフタ部は、それぞれライン状であり、第2位相シフタ部の長さは、第1位相シフタ部の長さよりも短くてもよい。
また、この場合に、主パターン部は、外側に突き出す凸コーナ部を有し、該凸コーナ部の周辺部には、補助パターン部が設けられていなくてもよい。
また、この場合に、主パターン部は、外側に突き出す凸コーナ部を有し、凸コーナ部の周辺部において、補助パターン部の幅は小さくなってもよい。
また、この場合に、主パターン部は、ライン状の端部又は外側に突き出す凸コーナ部を有し、第1位相シフタ部及び第2位相シフタ部は、主パターン部の外周部と並行して設けられ、第2位相シフタ部は、端部又は凸コーナ部の周辺部において分断されていてもよい。
また、この場合に、補助パターン部には、主パターン部と同一の位相又は360°の整数倍の位相差を生じるパターンが含まれていてもよい。
また、この場合に、第1位相シフタ部及び第2位相シフタ部は、透明性基板を彫り込むことにより構成されていてもよい。
このようにすると、透明性基板を彫り込む加工のみでフォトマスクを作製することができるので、該フォトマスクの作製が容易となる。
また、この場合のフォトマスクは、透明性基板におけるマスクパターン開口部の上に設けられた透明膜をさらに備え、透明膜における第1位相シフタ部の形成領域の厚さは、透明膜における第2位相シフタ部の形成領域の厚さよりも大きくてもよい。
このようにすると、高いコントラストを持つ像を形成することができる。
この場合に、透明膜における主パターン部の形成領域の厚さは、透明膜における第1位相シフタ部及び第2位相シフタ部のいずれの形成領域の厚さよりも大きくてもよい。
また、この場合に、透明性基板と透明膜との間の領域で、且つ第1位相シフタ部及び第2位相シフタ部には、ライン状の複数の遮光部が設けられており、複数の遮光部のそれぞれの幅は、露光光の波長以下であってもよい。
このようにすると、第2位相シフタ部を透過した露光光の位相を、第1位相シフタ部を透過した露光光の位相よりも確実に進めることができる。
この場合に、第1位相シフタ部に設けられた互いに隣接する遮光部同士の間隔は、第2位相シフタ部に設けられた互いに隣接する遮光部同士の間隔よりも大きくてもよい。
このようにすると、第2位相シフタ部の露光光に対する実効的な透過率(以下、実効透過率と呼ぶ。)を、第1位相シフタ部の実効透過率よりも確実に低くすることができる。
また、この場合に、互いに隣接する遮光部同士の間隔は、露光光の波長以下であってもよい。
このようにすると、各位相シフタ部を透過する露光光の位相を確実に調整できるようになる。
また、この場合に、第1位相シフタ部に設けられた各遮光部の幅は、第2位相シフタ部に設けられた各遮光部の幅よりも小さくてもよい。
このようにすると、第2位相シフタ部の露光光に対する実効透過率を、第1位相シフタ部の実効透過率よりも確実に低くすることができる。
また、この場合に、透明性基板と透明膜との間の領域で、且つ第1位相シフタ部及び第2位相シフタ部には、孤立状の複数の微小開口部を有する遮光部が設けられており、第1位相シフタ部に設けられた微小開口部の単位面積当たりの面積率は、第2位相シフタ部に設けられた微小開口部の単位面積当たりの面積率よりも大きくてもよい。
このようにすると、第2位相シフタ部の露光光に対する実効透過率を、第1位相シフタ部の実効透過率よりも確実に低くすることができる。
また、この場合に、透明性基板と透明膜との間の領域で、且つ第1位相シフタ部及び第2位相シフタ部には、孤立状の複数の微小開口部を有する遮光部が設けられており、第1位相シフタ部に設けられた互いに隣接する微小開口部同士の間隔は、第2位相シフタ部に設けられた互いに隣接する微小開口部同士の間隔よりも小さくてもよい。
このようにすると、第2位相シフタ部の露光光に対する実効透過率を、第1位相シフタ部の実効透過率よりも確実に低くすることができる。
また、この場合に、透明性基板と透明膜との間の領域で、且つ第1位相シフタ部及び第2位相シフタ部には、孤立状の複数の遮光部が設けられており、第1位相シフタ部に設けられた複数の遮光部の単位面積当たりの面積率は、第2位相シフタ部に設けられた複数の遮光部の単位面積当たりの面積率よりも小さくてもよい。
このようにすると、第2位相シフタ部の露光光に対する実効透過率を、第1位相シフタ部の実効透過率よりも確実に低くすることができる。
また、この場合に、透明性基板と透明膜との間の領域で、且つ第1位相シフタ部及び第2位相シフタ部には、孤立状の複数の遮光部が設けられており、第1位相シフタ部に設けられた互いに隣接する遮光部同士の間隔は、第2位相シフタ部に設けられた互いに隣接する遮光部同士の間隔よりも大きくてもよい。
このようにすると、第2位相シフタ部の露光光に対する実効透過率を、第1位相シフタ部の実効透過率よりも確実に低くすることができる。
本開示に係るフォトマスクにおいて、マスクパターン開口部には、所望のパターンと対応する領域の周辺部に補助パターン部が設けられ、補助パターン部は、所望のパターンと対応する領域から近い領域に設けられた第1彫り込み部と、所望のパターンと対応する領域から遠い領域に設けられた第2彫り込み部とを有し、第1彫り込み部及び第2彫り込み部は、透明性基板を彫り込んで形成され、第2彫り込み部の深さは、第1彫り込み部の深さよりも深くてもよい。
このようにすると、第2彫り込み部を透過した露光光の位相を、第1彫り込み部を透過した露光光の位相よりも確実に進めることができる。
この場合に、補助パターン部は、所望のパターンと対応する領域に対して第2彫り込み部よりも遠い領域に第3彫り込み部を有し、第3彫り込み部の深さは、第1彫り込み部の深さと第2彫り込み部の深さのいずれか一方よりも浅くてもよい。
このようにすると、第3彫り込み部を透過した露光光の位相を、第1彫り込み部又は第2彫り込み部を透過した露光光の位相よりも確実に進めることができる。
本開示に係るフォトマスクにおいて、マスクパターン開口部には、所望のパターンと対応する領域の周辺部に補助パターン部が設けられ、補助パターン部は、所望のパターンと対応する領域から近い領域に設けられた第1導波路部と、所望のパターンと対応する領域から遠い領域に設けられた第2導波路部とを有し、第1導波路部及び第2導波路部は、露光光の波長の以下の厚さ及び間隙とを持つ透光性材料により構成され、第2導波路部を透過した露光光の位相面は、第1導波路部を透過した露光光の位相面よりも被露光体に対して進むように構成されていてもよい。
このようにすると、第1導波路部を透過した露光光の位相と第2導波路部を透過した露光光の位相とが、フォトマスクから所定の距離だけ離れた被露光体上の所望のパターンと対応する位置で位相が一致して互いに強調し合うことにより、コントラストが高い像を形成することができる。
この場合に、第1導波路部及び第2導波路部は、それぞれ透明性基板に設けられた複数の狭彫り込み部から構成され、狭彫り込み部の幅は、露光光の波長以下であり、互いに隣接する狭彫り込み部同士の間隔は、露光光の波長以下であってもよい。
このようにすると、透明性基板を彫り込むだけで、種々の位相を生成する位相シフタ部を形成することができるので、フォトマスクを作製する工数を減らすことができる。
この場合に、第2導波路部における互いに隣接する狭彫り込み部同士の間隔は、第1導波路部における互いに隣接する狭彫り込み部同士の間隔よりも小さくてもよい。
このようにすると、第2導波路部を透過した露光光の位相を、第1導波路部を透過した露光光の位相に対して確実に進めることができる。
また、この場合に、第2導波路部における狭彫り込み部の幅は、第1導波路部における狭彫り込み部の幅よりも大きくてもよい。
このようにすると、第2導波路部を透過した露光光の位相を、第1導波路部を透過した露光光の位相に対して確実に進めることができる。
また、この場合に、第1導波路部における狭彫り込み部の深さは、第2導波路部における狭彫り込み部の深さと同一であってもよい。
このようにすると、1種類の彫り込み深さで、複数の位相シフタ部を形成することができるので、フォトマスクの作製における工数を削減できる。
また、この場合に、第2導波路部における狭彫り込み部の深さは、第1導波路部における狭彫り込み部の深さよりも深くてもよい。
このようにすると、導波路部の加工寸法の範囲を限定ししつ、より多くの種類の位相を透過させる導波路部を形成することができる。
また、この場合に、第1導波路部と第2導波路部との間の領域と、所望のパターンと対応する領域に対して第2導波路部よりも遠い側で且つ第2導波路部と隣接する領域との少なくとも一方に、露光光の波長以上の幅を有する彫り込み部が設けられていてもよい。
このようにすると、1つの彫り込む部に形成できる露光光の位相を変化させる範囲が最大となる。
また、この場合に、透明性基板における、互いに隣接する狭彫り込み部同士の間の領域の表面上には、遮光部が設けられていてもよい。
このようにすると、各導波路部は、露光光の位相のみでなく、実効透過率を調整できるようになる。
この場合に、遮光部は、表面上の中央部に設けられていてもよい。
このようにすると、各導波路部における露光光の実効透過率が、フォトマスクの作製における製造誤差に影響されにくくなる。
また、この場合に、遮光部は、表面上の中央部を露出するように設けられていてもよい。
このようにすると、各導波路部における露光光の実効透過率が、フォトマスクの作製における製造誤差に影響されにくくなる。
この場合に、遮光部は、第1導波路部及び第2導波路部の少なくとも一方において周期的に繰り返して配置されていてもよい。
このようにすると、各導波路部における露光光の実効透過率が、フォトマスクの作製における製造誤差に影響されにくくなる。
また、この場合に、第2導波路部における狭彫り込み部同士の間の表面の露出部分の遮光部に対する割合は、第1導波路部における露出部分の遮光部に対する割合よりも小さくてもよい。
このようにすると、第2導波路部の露光光に対する実効透過率を、第1導波路部の実効透過率よりも確実に低くすることができる。
また、この場合に、第1導波路部及び第2導波路部の少なくとも一方において、狭彫り込み部、遮光部及び狭彫り込み部同士の間の表面の露出部分は、周期的に繰り返して配置されていてもよい。
このようにすると、各導波路部を透過する露光光の位相と透過率とを個別に調整できるようになる。
この場合に、繰り返して配置される配置周期は、露光光の波長の1.5倍以下であってもよい。
このようにすると、各導波路部を透過する露光光の位相と透過率とを確実に調整できるようになる。
この場合に、第2導波路部における狭彫り込み部の割合は、第1導波路部における狭彫り込み部の割合よりも大きくてもよい。
このようにすると、第2導波路部を透過した露光光の位相を、第1導波路部を透過した露光光の位相よりも確実に進めることができる。
また、この場合に、第2導波路部における遮光部の割合は、第1導波路部における遮光部の割合よりも大きくてもよい。
このようにすると、第2導波路部の露光光に対する実効透過率を、第1導波路部の露光光に対する実効透過率よりも確実に低くすることができる。
また、この場合に、第2導波路部における露出部分の割合は、第1導波路部における露出部分の割合よりも小さくてもよい。
このようにすると、第2導波路部の露光光に対する実効透過率を、第1導波路部の露光光に対する実効透過率よりも確実に低くすることができる。
本開示に係るフォトマスクが、第1及び第2彫り込み部又は第1及び第2導波路部を有する場合に、所望のパターンと対応する領域には、透明性基板の表面が露出する主パターン部が設けられていてもよい。
このようにすると、所望のパターンと対応する領域を透過する光の強度が強くなるので、所望のパターンの寸法に依存せず、所望のパターン対してより鮮明な像を形成することができる。
本開示に係るフォトマスクが、第1及び第2彫り込み部を有する場合に、第1彫り込み部及び第2彫り込み部は、透明性基板を彫り込むことにより構成されていてもよい。
このようにすると、周縁部に通常の遮光部が設けられた透明性基板のみからなる単純なマスク構造を加工することにより、本開示のフォトマスクを実現することができる。
また、本開示に係るフォトマスクが、第1及び第2彫り込み部を有する場合に、透明性基板と遮光部との間に設けられた半透明膜をさらに備え、第1彫り込み部及び第2彫り込み部は、半透明膜を彫り込むことにより構成されていてもよい。
このようにすると、マスクパターン開口部における複数の透光性領域の光の透過率を容易に変更することができる。
また、本開示に係るフォトマスクが、第1及び第2彫り込み部を有する場合に、透明性基板と遮光部との間に設けられ、透明性基板側の半透明膜と、遮光部側の透明膜とをさらに備え、第1彫り込み部及び第2彫り込み部は、透明膜を彫り込むことにより構成されていてもよい。
このようにすると、マスクパターン開口部における複数の透光性領域の光の透過率を容易に変更することができる。その上、透明膜を彫り込むことから、彫り込み工程等におけるエッチング加工によっても、透明膜の透過率が変化しないので、位相と透過率とを独立に調整することができる。
本開示に係るフォトマスクが、第1及び第2導波路を有し、さらに該導波路部が狭彫り込み部から構成される場合に、複数の狭彫り込み部は、透明性基板を彫り込むことにより構成されていてもよい。
このようにすると、周縁部に通常の遮光部が設けられた透明性基板のみからなる単純なマスク構造を加工することにより、本開示のフォトマスクを実現できる。
また、本開示に係るフォトマスクが、第1及び第2導波路を有し、さらに該導波路部が狭彫り込み部から構成される場合に、透明性基板と遮光部との間に設けられた半透明膜をさらに備え、複数の狭彫り込み部は、半透明膜を彫り込むことにより構成されていてもよい。
このようにすると、マスクパターン開口部における複数の透光性領域の光の透過率を容易に変更することができる。
また、本開示に係るフォトマスクが、第1及び第2導波路を有し、さらに該導波路部が狭彫り込み部から構成される場合に、透明性基板と遮光部との間に設けられ、透明性基板側の半透明膜と、遮光部側の透明膜とをさらに備え、複数の狭彫り込み部は、透明膜を彫り込むことにより構成されていてもよい。
このようにすると、マスクパターン開口部における複数の透光性領域の光の透過率を容易に変更することができる。その上、透明膜を彫り込むことから、彫り込み工程等におけるエッチング加工によっても、透明膜の透過率が変化しないので、位相と透過率とを独立に調整することができる。
本開示に係るフォトマスクは、透明性基板と遮光部との間に設けられた半透明膜をさらに備え、マスクパターン開口部における所望のパターンと対応する領域には、透明性基板が露出した主パターン部が設けられ、主パターン部に隣接して透明性基板を彫り込んだ彫り込み部が設けられ、彫り込み部の外側に、半透明膜が露出した半透明部が設けられていてもよい。
このようにすると、複雑なマスク加工を必要とせずに、被露光基板上における所望のパターンに対応する位置に光を集光して像を形成するのに必要な位相分布と透過率分布とを実現することができる。
この場合に、主パターン部と彫り込み部とを透過する露光光の位相差は、120°以内であってもよい。
このようにすると、露光光が所望のパターン位置に精度良く集光するので、所望の像を得ることができる。
また、この場合に、主パターン部と半透明部とを透過する露光光の位相差は、120°以内であってもよい。
このようにすると、露光光が所望のパターン位置に精度良く集光するので、所望の像を得ることができる。
本開示に係るフォトマスクを用いたパターン形成方法は、レジスト膜を形成した基板を準備する工程と、レジスト膜にフォトマスクを介して露光光を選択的に照射する工程と、露光光を照射されたレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程とを備えている。
本開示に係るフォトマスクを用いたパターン形成方法によると、本開示によるフォトマスクを透過する光を集光することにより、微細パターンの形成が可能となる。
本発明に係るフォトマスク及びそれを用いたパターン形成方法によると、投影転写露光並みの解像度の大幅な向上を実現することができる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るフォトマスクについて図面を参照しながら説明する。
図1A及び図1Bは本実施形態に係るフォトマスクの一例を示している。
図1Aに示すように、本実施形態に係るフォトマスク10には、所望のライン状の転写パターンと対応する位置に、ライン状の主パターン部102が設けられている。主パターン部102の周辺部には、所望の転写パターンをフォトマスク10から所定の距離だけ離れた被露光体に結像させるため、該所望の転写パターンを結像させるための補助パターン部103が設けられている。補助パターン部103は、透過する光に対してその透過強度と位相とを調整できる位相シフタ機能を有している。補助パターン部103は、主パターン部102に近い位置に設けられている順に、第1位相シフタ部103a、第2位相シフタ部103b及び第3位相シフタ部103cにより構成されている。ここで、各位相シフタ部103a〜103cを透過する光の位相面は、第1位相シフタ部103aから、該第1位相シフタ部103aよりも主パターン部102から離れた位置に設けられた第3位相シフタ部103cに向かって順に進む。言い換えれば、主パターン部102に最も近い第1位相シフタ部103aを透過する光の位相面が最も遅れることになる。また、各位相シフタ部103a〜103cの透過強度は、第1位相シフタ部103aから第3位相シフタ部103cに向かって順にその強度が弱くなる。
図1Bの断面構成に示すように、本実施形態に係るフォトマスク10は、例えば、ガラス又は石英等からなり、露光光を透過する透明性基板101と、該透明性基板101の主面上に形成されたクロム(Cr)等の遮光性の膜からなる遮光部104とを有している。遮光部104には、所望のパターンと対応した主パターン部102と該主パターン部102の周囲に配置された補助パターン部103とを含むマスクパターン開口部104dが形成される。
補助パターン部103は、上述したように、マスクパターン開口部104dに形成され、光透過性を有する膜からなる位相シフタ部103a〜103cを含む。なお、通常、フォトマスク10では、遮光部104が設けられる面を主面と呼び、該主面と反対側の面を裏面と呼ぶ。ここでは、透明性基板101におけるマスクパターン開口部104dから露出した部分が主パターン部102を構成している。このとき、各位相シフタ部103a〜103cは、それぞれを構成する光透過性の膜の屈折率と膜厚とを適宜調整することにより、各位相シフタ部103a〜103cを透過する光の透過率と位相とを調整することができる。ここで、各位相シフタ部103a〜103cを構成する光透過性の膜には、レジスト材又は酸化シリコン(SiO2)を用いることができる。例えば、透過性が高いレジスト材として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いることができる。また、SiO2膜は、化学気相堆積(CVD)法若しくはスパッタ法、又はSOG(spin on glass)等を用いた塗布法により形成することができる。なお、各位相シフタ部103a〜103cにおいて、光の位相を変えるには、それぞれの膜厚を変えることにより調整することができる。また、光の透過率を変えるには、レジスト材であれば、それぞれの組成によって透明性を調整でき、SiO2膜であれば、モリブデン(Mo)等を添加して調整することができる。
なお、本実施形態においては、位相シフタ部103a〜103cを、3種類の膜で構成したが、2種類の膜で構成してもよく、また、4種類以上の膜で構成してもよい。また、本実施形態においては、位相シフタ部103a〜103cは、それぞれ3種類の個別の光透過性の膜により形成しているが、位相シフト機能を有する構成であれば、どのような構成であってもよい。
以下、本明細書においては、フォトマスクの主面上において、遮光性の材料で覆われた部分を遮光部と呼び、遮光性の材料で覆われていない部分をマスクパターン開口部と呼ぶ。但し、部分的に遮光性の材料が存在する場合であって、領域として露光光を透過する場合は、マスクパターン開口部と呼ぶ。また、特に断らない限り、透明性基板は、単にガラスと称する場合がある。但し、透明性基板はガラスに限られず、遮光部もクロム(Cr)膜に限られない。
次に、図2A及び図2Bを用いて、フォトマスク10の裏面から光を照射したときの光学像を説明する。
以下、特に断らない限り、光とは波長が365nmのi線と呼ばれる、リソグラフィで最もよく使われる露光光を想定して説明する。但し、ここで説明する光の屈折に関する諸原理は、露光波長に限定されず、波長が436nmのg線と呼ばれる露光光、又はフッ化クリプトン(KrF)若しくはフッ化アルゴン(ArF)と呼ばれる、波長がそれぞれ248nm及び193nmのエキシマレーザ光でも、さらに、それ以下の波長の光でも同様に成り立つ。
まず、図2Aに示すように、本実施形態に係るフォトマスク10の裏面から被露光体である基板(図示せず)の表面に向かって照射された平行な光は、そのまま平行な状態を保ったままガラスの内部を透過する。しかしながら、光が位相シフタ部103a〜103cを透過する際には、光は位相シフタ部103a〜103cによってその位相が変更される。その結果、位相シフタ部103a〜103cを透過した光の位相面の位置は、主パターン部102を透過した光の位相面に対してそれぞれ変化する。このとき、各位相シフタ部103a〜103cをそれぞれ透過する光は、主パターン部102から離れるに従って順次その位相面が進んだ状態になると、それぞれの光の進行方向は、主パターン部102の方向に向かってその位相面の進行方向が変わることになる。その結果、フォトマスク10を透過した光は該フォトマスク10の主面から所定の距離だけ離れた位置において、ライン状の主パターン部102の中心線付近で強い光強度となる強いコントラストの像を形成する。
その結果、図2Bに示すように、フォトマスク10を用いて露光した場合には、該フォトマスク10の主面から所定の距離だけ離れた位置においても、フォトマスク10のマスクパターン開口部104dの中心線付近に相当する位置に、幅が1μm以下のライン状のパターンを形成できる光強度分布の像を明瞭に形成することができる。
上記のような現象が発生する理由について、以下に説明する。具体的なフォトマスクを透過する光の振る舞いを説明する前に、本発明者が考案した、近接露光により投影転写露光と同程度の解像度を実現する原理について図3A及び図3Bを参照しながら説明する。
図3Aは投影転写露光法の構成及び動作を模式的に表している。図3Aに示すように、フォトマスク105の裏面から入射した光は、該フォトマスク105の開口部を透過する際に回折現象によって広がることは、近接露光と同じである。ここで、被露光体108とフォトマスク105との間には、レンズ106が設けられているため、回折によって広がった光は、レンズ106から所定の距離だけ離れた投影面で結像する。すなわち、結像面にはマスク面の開口部を透過した光の強度分布がレンズ106によって再構成される。但し、回折角が大きくてレンズ106を透過できないほど回折してしまった光、及びエバネッセント波はこの結像に寄与しないため、解像度は露光波長程度となる。しかしながら、被露光体108をこの結像面に設ければ、回折による劣化を大幅に低減することができ、極めて高い解像度を得られることになる。
ここで、レンズ106と被露光体108上の結像面との間で、且つ被露光体108から所定の距離dだけはなれた伝播面107を透過する光を考える。光は波であり、振幅強度分布と位相分布とを有している。この伝播面107において、同一の振幅強度分布と位相分布とを持つ光は、該伝播面107に到達するまでどのような経路を透過してきたかに拘わらず、同一の結像面に同一の強度分布の像を形成するはずである。図3Bに示すように、本発明者は、この原理に基づいて、フォトマスク105Aを透過する光に上記の伝播面107と同一の強度分布及び位相分布を直接に与えることにより、マスク面107Aから所定の距離dだけ離れた位置に、投影転写露光の場合と同一の像を形成できることを解明した。
図3Bは上述した原理を模式的に表している。図3Bにおいて、実際には、フォトマスク105Aの内部に、図3Aに示すフォトマスク105と同一の開口部及びレンズ106が存在するわけではないが、マスク面107Aの開口部を大きく広げ、その開口部を透過する際に、図3Aの伝播面上における光の振幅強度分布と位相分布とを再現する透過率と位相シフト機能とを有した位相シフタを開口部に設けることを考案した。図3Bに示すように、本実施形態に係る位相シフタを設けると、図3Aの投影転写露光によって被露光体108に転写される投影像と同一の像を、近接露光によっても被露光体108上に形成することができる。
上記の伝播面107における光の振幅強度分布と位相分布とについて、図4A〜図4Eを参照しながら説明する。
図4Aは投影転写露光用のフォトマスク105であり、該フォトマスク105には、幅が1μmのライン状のパターンがマスク開口部105aとして描かれている。このフォトマスク105を用いて露光を行った場合を例として説明する。ここでは、波長が365nmの露光光を用いている。図4Bに、投影転写露光で実現される、被露光体108上における転写像のシミュレーション結果による光強分布を示す。このように、幅が1μmのライン状のパターンであれば、投影転写露光によって十分なコントラストが得られることが分かる。
図4C及び図4Dは、レンズ106と被露光体108との間で、且つ該被露光体108から30μmだけ離れた伝播面107での光の振幅強度分布と位相分布とをそれぞれ示している。すなわち、伝播面107において、これらの振幅強度分布と位相分布とを有する光は、30μmだけ伝播することにより、図4Aに示すマスク開口部105aと対応する図4Bに示す転写像に集光する。
上記のことから、伝播面107での光は、フォトマスク105及び転写像と対応する領域よりも広い領域に光が分布しており、それらの光が30μmを伝播する間に被露光体108上に集光されることが分かる。すなわち、伝播面107において、マスク開口部105aと対応する位置を伝播する光は、そのまま直進することによってマスク開口部105aと対応する位置に結像する。一方、そのマスク開口部105aと対応する位置の周辺領域を伝播する光は、該マスク開口部105aの中心部と対応する位置に向かって進行していくことが分かる。これは、図4Eに示すように、マスク開口部105aの中心部と対応する領域Aを進行する波の位相面よりも、マスク開口部105aの周辺領域と対応する領域Bを進行する波の位相面が進んでいることを意味している。
上記の状況を、図5A及び図5Bを用いて、伝播面107上の光の振幅強度分布(透過率分布)と位相分布とを詳細に説明する。図5A及び図5Bには、図4C及び図4Dの伝播面107における光の振幅強度分布と位相分布とをそれぞれ拡大して表している。
まず、図5Bに示す位相分布に注目する。図中には所望のパターン、すなわちマスク開口部105aと対応する図形を記載している。図5Bから分かるように、所望のパターンと対応する領域の光の位相に対して、所望のパターンと対応する領域の中心位置から離れた位置の位相は、その位置が離れるに従ってその位相の値が増えている。すなわち、位相面が進行していることが分かる。ここでは、位相は360°で循環するため、所望のパターンと対応する領域の光の位相値が0から、その中心位置から離れるに従って360°まで増える。さらに、その中心位置から離れると0に戻り、再び360°までに増えるように記載している。この2番目に現れる位相値は、720°=360°+360°と同値である。
以上により、本実施形態の要点について、再度、図1Aを用いて説明する。所望のパターンと対応する領域を透過する光の位相に対して、その周辺部を透過する光は、所望のパターンと対応する領域の中心から離れるに従ってその位相面が進行方向に進む構成を有していることが望ましい。特に、所望のパターンがライン状であれば、その所望のパターンの周辺部に設けた位相シフタ部における位相は、所望のパターンのラインの中心線に対して線対称として、同一位相が対をなす構成とすることが望ましい。これにより、ラインパターンの中心線に光が集光される。
これらの構成を実現するため、図1Aに示すフォトマスク10において、所望のライン状の転写パターンと対応する領域には、ライン状の主パターン部102が設けられている。主パターン部102の周辺部には、ライン状の第1位相シフタ部103a、第2位相シフタ部103b及び第3位相シフタ部103cからなる複数の位相シフタ部103a〜103cが設けられている。各位相シフタ部103a〜103cは、主パターン部102を透過する光に対してそれぞれ異なる位相を生成する位相シフタが含まれる。例えば、主パターン部102を透過する光に対して、2種類の異なる位相を生成する位相シフタが含まれることが好ましい。さらに、主パターン部102に近い位置に設けられた第1位相シフタ部103aと、該第1位相シフタ部103aに対して主パターン部102よりも遠い位置に設けられた第2位相シフタ部103bとにおいて、第2位相シフタ部103bを透過する光の位相が、第1位相シフタ部103aを透過する光の位相よりも進んでいることが望ましい。
さらに、第2位相シフタ部103bよりも主パターン部102から遠い位置に第3位相シフタ部103cが設けられていることが好ましい。これら第1位相シフタ部103a、第2位相シフタ部103b及び第3位相シフタ部103cの順に主パターン部102に近い位置から遠い位置に向かうほど、各位相シフタ部103a〜103cを透過する光の位相面が進行方向に進む構成であることが、光を転写像により厳密に集光させる上で、さらに望ましい。
次に、図5Aに表した光の振幅強度分布についても考察する。ここでも、図中に所望のパターンに対応する図形を振幅強度分布に重ねて記載している。図5Aに示すように、振幅強度は、所望のパターンの周辺部にまで大きく広がるように分布している。所望のパターンの周辺部においては、所望のパターンから遠ざかるに従ってその強度が低下する傾向がある。以上のことより、図1Aに示したフォトマスク10の各位相シフタ部103a〜103cにおいて、その透過率を第1位相シフタ部103aから第3位相シフタ部103cに向かって、すなわち、主パターン部102に近い位置から遠い位置に向かって順に低くすることにより、伝播面での光の振幅強度分布を実現することができる。
なお、図5Aに示す所望のパターンから離れた領域で光の透過強度が実質的に0である領域は、図5Bに示す位相分布における図5Aと対応する領域での位相分布は不要である。
以上、所望のパターンが単純なラインパターンである場合について説明したが、伝播面での上記の特徴は、一般的な2次元レイアウトでも同じである。
図6A〜図6Bは所望のパターンが十字型のパターンである場合における伝播面の光の振幅強度分布と位相分布とを表している。図6Cは転写像を表している。ここで、図6A及び図6Bは、図5A及び図5Bとそれぞれ対応している。また、所望の十字型のパターンを表す図形を、図6A及び図6Bに重ねて記載している。ここでも、図6Bに示すように、所望のパターンと対応する領域の光の位相に対して、所望のパターンと対応する領域の中心位置から離れるに従って位相の値が増える、すなわち位相面が進行していることが分かる。図6Aに示す振幅強度に対しても、所望のパターンの周辺部においては、所望のパターンから遠ざかるに従ってその強度が低下する傾向があることが分かる。
このように、本実施形態に係るフォトマスク10によると、所望のパターンと対応する領域の周辺部に、補助パターン部103を構成する複数の位相シフタ部103a〜103cを設け、投影転写露光における伝播波を近接露光によるフォトマスク10に直接に生成することにより、微細パターンが形成可能な転写像を被露光体の上に形成することができる。
なお、光の振幅強度分布において、その振幅強度が十分に小さい領域は、マスクレイアウトにおいて遮光部とすればよい。伝播波においては、振幅強度が極めて低い領域であっても位相分布が存在する。但し、振幅強度が極めて低い領域は、転写像に寄与しない。
そこで、図7A及び図7Bとして、図5A〜図6Bから光の振幅強度分布における強度を考慮して、必要な光の位相分布を作製し直した位相分布を示す。図7Aは、図5Bのラインパターンに対する有意な位相分布に変形し、図7Bは、図6Bの十字型のパターンに対する有意な位相分布に変形している。
このように、本実施形態に係る構成においても、主パターン部102及び位相シフタ部103a〜103cを含めた外周部に遮光部104を設けることが好ましいことが分かる。
ところで、図5B及び図6Bに示される、光の伝播面での位相分布をフォトマスクで再現するには、理想的には光の位相面が連続的に変化する位相シフタ部を設けることが望ましい。しかしながら、これらの位相をいくつかの離散的な値に近似して、それぞれの離散的な値に対応する位相面を生成する位相シフタ部を設けてもよい。離散化は、例えば、主パターン部の位相を0°として、位相シフタ部におけるそれぞれの光の位相を[表1]のように設定すればよい。
ここで、位相シフタ部の位相とは、位相シフタ部を透過する露光光の位相面が主パターン部を透過する露光光の位相面に対して進んでいる値をいう。位相シフタ部のなかには、主パターン部と同一の位相となる位相シフタ部が存在する。光の位相は360°で循環するため、360°の任意の整数倍の差は同一の位相と見なせる。このため、位相シフタ部における位相の表記には±360×n(nは、0を含めた任意の整数)を加えてある。
すなわち、[表2]を例にすると、0°、120°及び240°の3種類の位相シフタ部を主パターン部に近い側から順に、0°、120°、240°、0°、120°及び240°と循環するように設けてもよい。この場合、0°の位相シフタ部が240°の位相シフタ部よりも主パターン部から遠くに位置するため、主パターン部から遠くに位置する位相シフタ部の位相が遅れているように見える。しかし、これは、位相シフタ部の種類を0°、120°、240°、360°、480°及び600°とし、主パターン部に近い側から順に、0°、120°、240°、360°、480°及び600°と増え続けるように、位相シフタ部を設定することと同値の位相分布を形成することになる。
また、例えば[表3]を例にすると、0°、90°、180及び270°の4種類の位相シフタ部を主パターン部に近い側から順に、0°、90°、180°、270°、0°、90°、180°及び270°と循環するように設けてもよい。
このように、より解像性が高いパターン像を形成するには、より多くの光の位相波を集めることが好ましい。上記のように、位相循環に対応した位相シフタ部を設ける場合は、主パターン部の周辺部の片側には、同一位相の補助パターン部を2種類以上設けることが好ましい。
図8A〜図8Eは位相シフタ部の離散化が被露光体の像に与える影響をシミュレーションした結果を表している。具体的に、図8Aに示すように、主パターン部102のライン幅をL0とし、該主パターン部102を含むライン状の位相シフタ部103a〜103cのそれぞれの全体(外形)の幅を内側から順に、L1、L2及びL3とする。また、各位相シフタ部103a〜103c自体のそれぞれの幅(単独幅とも呼ぶ。)をW1、W2及びW3とする。
主パターン部102の位相を0°とし、主パターン部102の位相以外に設けた位相の数を、(1)180°の反対位相の1種類のみ、(2)120°及び240°の2種類、(3)90°、180°及び270°の3種類、並びに(4)連続的に分布した位相を用いる場合の、以上4つの場合について比較する。
以下に挙げる[表4]から[表6]には、上記の(1)から(3)の場合における主パターン部の幅L0、各位相シフタ部の位相、各位相シフタ部の外形幅及び単独幅がそれぞれ記載されている。全ての場合において、最外周に設けた位相シフタ部の外形幅は20μmに統一されている。例えば[表4]においては、最下欄の「L4」における外形幅が20μmに設定されている。光の位相の離散化は、主パターン部の位相を含め、各位相が均等な差となるように離散化している。この均等な差を持つ離散化が好ましいことはいうまでもないが、必ずしも均等な差を生じるように離散化しなくてもよい。
伝播面での位相分布を再現するための位相シフタ部を、位相の変化を連続的に生じさせることができるとして扱った場合の光強度分布のプロファイルと、位相シフタ部により位相を離散化した光強度プロファイルとを、図8Bから図8Eに示している。図8Bから図8Dは、[表4]から[表6]と対応する。また、それぞれの離散化における光強度分布のプロファイルのピーク値も[表7]に記載している。図8Bに示すように、0°と180°との2種類の位相のみで離散化したときの光強度のピークは、図8Eに示す、連続的に位相を分布させたときの半分にも満たない。しかし、図8Cに示すように、位相を3種類の位相に離散化し、120°まで離散化の幅を小さくすると、光強度のピークは80%近くにまで達する。さらに、図8Dに示すように、位相を4種類の位相に離散化し、90°まで離散化の幅を小さくすると、光強度のピークは90%以上にまで達する。
以上より、大幅な効果を得るには、離散化により隣り合う位相シフタ部の位相差は120°まで小さくすることが望ましく、さらに、90°まで小さくすると、理想的な効果を十分に得られるので、さらに好ましい。すなわち、少なくとも、主パターン部と異なる2種類の位相分の位相シフト、すなわち3つの位相に離散化する補助パターン部を設けることが好ましい。もちろん、主パターン部と異なる3種類以上の位相分の位相シフトを実現する補助パターン部を設けることはさらに好ましい。
また、光の伝播面での位相分布の特徴として、主パターン部から離れるに従って位相面が進むだけでなく、360°分の位相が循環する距離が短くなるという特徴がある。これは原理的にも、所望のパターンからn番目に現れる位相循環における周期長は、所望のパターンからの距離をrとし、伝播面と結像面との距離をGとし、露光波長の寸法をλで表すと、√(2×n×G×λ)−√(2×(n−1)×G×λ)で近似的に表すことができると想定される。これは、ピンホールを通過する光の位相分布の周期分布を考える原理と同様の考えによって推測される。よって、上記のように離散化された位相シフタ部を設ける場合は、主パターン部から遠い位置に設けられた位相シフタ部の幅(単独幅)は、主パターン部の近い位置に設けられた位相シフタ部の幅(単独幅)よりも小さいことが望ましい。特に、同一位相の位相シフタ部においては、主パターン部に近い位置に設けられた位相シフタ部よりも、主パターン部から遠い位置に設けられた位相シフタ部の幅の方が小さいことが望ましい。同一位相の位相シフタ部同士であれば、主パターン部から数えてn番目の位置に設けられた位相シフタ部の幅は、その内側に隣接する(n―1)番目の位置に設けられた位相シフタ幅の√((n―1)/n)であることが望ましい。具体的には、主パターン部から2番目以降に設けられた補助パターン部には、主パターン部の最も近くに設けられた補助パターン部の幅の1/√2以下、すなわち、約0.71倍以下の幅の位相シフタ部が含まれることが望ましい。
図1Aに示した具体的な構成で表現すると、第2位相シフタ部103bの幅(単独幅)は、第1位相シフタ部103aの幅(単独幅)よりも小さいことが望ましい。このような位相シフタ部の幅(単独幅)の関係は、離散化により同一位相を生成する位相シフタ部同士の間ではもちろんのこと、異なる位相を生成する位相シフタ部同士の間でも同様に成り立つ。このことは、例外もあるが、[表4]から[表6]を見ても明らかである。また、[表4]から[表6]からも分かるように、離散化した位相に対応した位相シフタ部の幅は、少なくとも露光波長よりも大きいことが分かる。通常、補助パターン部の形成位置には所望のパターンが形成されないため、露光波長よりも小さい寸法のパターンが補助パターン部として用いられる。但し、本実施形態に係る補助パターン部は、所定の位相分布を形成するため、露光波長よりも大きい透光部を有する補助パターン部であることが望ましい。
ここで、図9に、上掲の[表6]に相当する0°、90°、180°及び270°に離散化する場合のマスクレイアウトの一例を示す。主パターン部102の位相を0°として、主パターン部102に近い順に、補助パターン部103となる位相シフタ部をそれぞれ、第1位相シフタ部103a、第2位相シフタ部103b、第3位相シフタ部103c、第4位相シフタ部103d、第5位相シフタ部103e、第6位相シフタ部103f及び第7位相シフタ部103gとする。各位相シフタ部103a〜103gを透過する光の位相面が、主パターン部102を透過する光の位相面よりも、それぞれ第1位相シフタ部103aから順に90°、180°、270°、0°、90°、180°及び270°に進むように構成されている。
以上、第1の実施形態に係るマスクレイアウトの特徴として、光の伝播面における位相分布を再現するためのレイアウト構成について説明した。一方、振幅強度分布の特徴は、各位相シフタ部の透過率を変更することにより再現できる。さらに、振幅強度分布の特徴は、各位相シフタ部の透過率を変更するだけでなく、マスクレイアウトの構成を変更することによっても実現することができる。
以下、このマスクレイアウトの構成を変更した実施形態を第1変形例として説明する。
(第1の実施形態の第1変形例)
第1の実施形態の第1変形例に係るフォトマスクについて、図10A及び図10Bを参照しながら説明する。
図10Aに示すように、本変形例に係るフォトマスク10Aには、マスクパターン開口部104dの中央部で所望の転写パターンと対応する位置にライン状の主パターン部102が設けられている。主パターン部102の周辺部には、第1の実施形態と同様に、所望の転写パターンをフォトマスク10Aから所定の距離だけ離れた被露光体に結像させるための位相シフタ部となる補助パターン部103が設けられている。
本変形例においては、投影転写露光におけるレンズと被露光体との間の伝播面における光の振幅強度分布と位相分布とを近接露光で再現し得るフォトマスクを得るため、補助パターン部103に、すなわち、各位相シフタ部103a〜103cのそれぞれの両側に遮光部104a〜104cを設けている。より具体的には、補助パターン部103に遮光部104a〜104cを導入することにより、各移相シフタ部103a〜103cにおける位相は、主パターン部102からの距離に応じて必要な位相が設定される。その上、主パターン部102から離れるに従って、各位相シフタ部103a〜103cの線幅(単独幅)を順に小さくした分、各位相シフタ部103a〜103cの間の遮光部104a〜104cの幅を順に広くすることにより、透過する光の強度を低下させることが可能となる。すなわち、主パターン部102から離れるに従って各位相シフタ部103a〜103cの線幅を小さくするだけで、たとえ各位相シフタ部103a〜103cにおける透過率を個々に変えることができない場合であっても、伝播面における光の振幅強度分布を再現することが可能となる。
図10Aに示すフォトマスク10Aのレイアウトについて、より詳細に説明する。
本変形例に係るフォトマスク10Aには、マスクパターン開口部104dにおける所望の転写パターンと対応する領域には、主パターン部102が設けられている。主パターン部102の周辺部には、該主パターン部102側から順に、ライン状の第1位相シフタ部103a、第2位相シフタ部103b及び第3位相シフタ部103cからなる補助パターン部103が設けられている。補助パターン部103には、主パターン部102を透過する光に対して異なる位相を生成する位相シフタ部が含まれる。また、第1の実施形態と同様に、主パターン部102を透過する光に対して少なくとも2種類の異なる位相を生成する位相シフタ部が含まれることが好ましい。
また、第1の実施形態と同様に、主パターン部102に近い位置に設けられた第1位相シフタ部103aと、該第1位相シフタ部103aに対して主パターン部102よりも遠い位置に設けられた第2位相シフタ部103bとにおいて、第2位相シフタ部103bを透過する光の位相が第1位相シフタ部103aを透過する光の位相よりも進んでいることが望ましい。第1位相シフタ部103aと第2位相シフタ部103bとの間には、遮光部104bが設けられており、第2位相シフタ部103bの幅は、第1位相シフタ部103aの幅よりも小さいことが望ましい。さらに、第2位相シフタ部103bよりも主パターン部102から遠い位置には、第3位相シフタ部103cが設けられている。第3位相シフタ部103c、第2位相シフタ部103b及び第1位相シフタ部103aの順に、各位相シフタ部103a〜103cを透過する光の位相面が進む。第2位相シフタ部103bと第3位相シフタ部103cとの間にも遮光部104cが設けられており、第3位相シフタ部103cの幅は、第2位相シフタ部103bの幅よりも小さいことが、所望の写像に厳密に結像させる上でさらに望ましいことはいうまでもない。
次に、断面構造の一例である図10Bに示すように、本変形例に係るフォトマスク10Aは、例えば、ガラス又は石英等の透明性基板101の主面上に、クロム(Cr)等の遮光性の膜によって遮光部104、104a〜104cを構成するパターンが描かれている。遮光性の膜で覆われず、且つマスクパターン開口部104dにおける補助パターン部103に相当する部分には、透明性基板101が露出した露出部を覆うように位相シフタ部103a〜103cがそれぞれ形成されている。
なお、ここでは、各位相シフタ部103a〜103cは、各遮光部104、104a〜104cの表面の一部をも覆うように形成されている。また、各位相シフタ部103a〜103cは、それぞれを透過する光強度を、遮光部104、104a〜104cの各開口幅によっても調整することができる。位相シフタ部103a〜103cは、光の位相のシフトのみが考慮されればよく、透過率と位相シフト量とを両立する必要がなくなるため、位相シフト部103a〜103cの選択条件が緩和されるので、フォトマスク10Aの作製が容易となる。また、位相シフタ部103a〜103cの加工寸法においても、遮光部104、104a〜104cの幅の分だけ位相シフタ部103a〜103cを構成する膜の形成時における寸法誤差の許容値となるので、該膜の加工が容易となる。
(第1の実施形態の第2変形例)
以下、第2変形例として、遮光部に孤立状の位相シフタ部を設けることにより、さらに好ましいマスクレイアウトの構成について、図11Aを用いて説明する。
図11Aはライン状のパターンを形成するための一例である。図11Aに示すように、本変形例に係るフォトマスク10Bは、遮光部104と、該遮光部104に形成されたライン状の主パターン部102と、該主パターン部102の両側方の領域で且つ主パターン部102と平行に形成され、補助パターン部103となる位相シフタ部103a〜103cとを有している。第1位相シフタ部103a、第2位相シフタ部103b及び第3位相シフタ部103cにおける位相及び線幅の関係は、図10A及び図10Bに示した第1変形例に係る第1位相シフタ部103a、第2位相シフタ部103b及び第3位相シフタ部103cと同様である。より厳密には、光の伝播面ではライン状となる方形パターンの短辺側の周辺部にも位相分布は存在するが、その長さが短いため、実際の結像に対する寄与分は大きくはない。従って、図11Aに示すように、長辺側の周辺部にのみ補助パターン部103を設けることにより、フォトマスク10Bの作製時には補助パターン部103を形成する際の負荷を軽減しながら、ライン状の結像パターンを得ることができる。
ところで、図7Aに示した理想的な位相分布から、図5Aに示した振幅分布を考慮すると、ライン部に並行して設けられるライン状の位相分布は、ライン部から離れるに従って短くなることが分かる。これは、ライン部と全て同一の長さの補助パターン部103を設けると、ラインの端部に光が集光し過ぎるためである。よって、ライン部である主パターン部102に平行に設けられた補助パターン部103を構成する各位相シフタ部103a〜103cにおいて、主パターン部102に近い位置に設けられた第1位相シフタ部103aよりも、主パターン部102からより遠い位置に設けられた第2位相シフタ部103bの長さが短いことが望ましい。言い換えると、主パターン部102における短辺を延長した延長線と第1位相シフタ部103aにおける延伸方向(ライン方向)の端部までの距離は、該延長線と第2位相シフタ部103bにおける延伸方向(ライン方向)の端部までの距離よりも短くなることが望ましい。
(第1の実施形態の第3変形例)
図11Bに第3変形例を示す。本変形例では、互いの幅が異なる2つのライン状のパターンを形成する一例を説明する。
所望のパターンとして、通常のフォトマスクでは形成が困難な寸法、例えば、露光波長が365nmで、フォトマスクと被露光体との間隔(ギャップ長)が50μmの場合を想定し、5μm未満の線幅とそれよりも十分に太い線幅とが混在している例である。
通常のフォトマスクでは形成が可能なパターン寸法は、露光波長をλとし、フォトマスクと被露光体とのギャップ長Gを用いて、√(2×G×λ)程度と見積もることができる。ここで、本変形例に係るフォトマスク10Cにおける第1主パターン部102Aは、5μm未満の線幅に相当する部分であり、第2主パターン部102Bは、5μmよりも十分に大きい線幅に相当する部分である。このとき、補助パターン部103は、第1主パターン部102Aのライン部の周辺部に平行に設けられることが好ましい。補助パターン部103は、主パターン部102A、102Bの全体の周辺部を囲むように設けるのではなく、必要性が高い領域にのみ設けることにより、フォトマスク10Cの作製の負荷を軽減することができる。
(第1の実施形態の第4変形例)
図12に第4変形例を示す。本変形例では、互いの幅が異なる2つのライン状のパターンを形成する他の例を説明する。
本変形例においても、波長が365nmで、ギャップ長が50μmを想定し、5μm未満の線幅と、それよりも十分に大きい線幅が混在している例である。第1主パターン部102Aは、5μm未満の線幅に相当する部分であり、第2主パターン部102Bは、5μmよりも十分に大きい線幅に相当する部分である。
第4変形例に係るフォトマスク10Dの第3変形例と異なる点は、第2主パターン部102Bの周辺部にも、補助パターン部103を設けている点である。前述したように、解像度の点からは、必ずしも第2主パターン部102Bの周辺部に補助パターン部103を設ける必要はない。しかし、パターン形状を所望の形状にするためには、十分に大きいパターンの周辺部にも補助パターン部103を設けることが好ましい。
但し、パターン形状を所望の形状にするために、第2主パターン部102Bの角部である凸コーナ部102bの周辺には、補助パターン部103を設けない構成としている。これは、図11Aで説明したように、ライン状のパターンにおいても、ラインの端部の周辺に設けられる補助パターン部103が、ラインの端部に近づくにつれて少なくなることが好ましいからである。すなわち、第2主パターン部102Bの凸コーナ部102bに光が集光し過ぎないための構成である。このように、第2主パターン部102Bの凸コーナ部102bの周辺には、補助パターン部103が設けられていない構成と、ライン部の延伸方向の中心から凸コーナ部102bに近づくにつれて補助パターン部103を構成する位相シフタ部103a〜103cの本数が少なくなる構成であることが望ましい。
(第1の実施形態の第5変形例)
図13に第5変形例を示す。本変形例では、図11Aと同様に、ライン状のパターンを形成するための他の例である。
図13に示すように、図11Aに示す第2変形例と異なる点は、補助パターン部103として、主パターン部102のそれぞれの片側の領域に、同一位相の位相シフタ部が設けられている点である。すなわち、位相シフタ部103a〜103gにおける光の位相面が、主パターン部102から離れるに従って進む。さらに、光の位相面の進行方向が、主パターン部102の転写像に向かうように露光光の位相をシフトする構成でありながら、位相シフト部103a〜103gの位相が360°で循環する構成例である。
ここで、補助パターン部103を構成する位相シフタ部103a〜103gにおける光の位相は、第1位相シフタ部103aと第5位相シフタ部103eとが露光光に対して同一の位相シフトを生じさせる。同様に、第2位相シフタ部103bと第6位相シフタ部103f、及び第3位相シフタ部103cと第7位相シフタ部103gとがそれぞれ同一の位相シフトを生じさせる。第4位相シフタ部103dは、主パターン部102と同一の位相で露光光を透過する。また、第1位相シフタ部103a、第2位相シフタ部103b及び第3位相シフタ部103cにおける各位相の関係は、図11Aの例と同様である。
ここで、本変形例に係るフォトマスク10Eの、図11Aに示す第2変形例の構成と異なる特徴は、ライン状の主パターン部102の一側方に、主パターン部102から異なる距離で、2本のライン状で同一位相の位相シフタ部(例えば、第1位相シフタ部103aと第5位相シフタ部103e)がライン部にほぼ平行に設けられていること、及び主パターン部102に近い位置に設けられた位相シフタ部よりも、主パターン部102からより遠い位置に設けられた位相シフタ部の長さが短いことである。言い換えると、主パターン部102における短辺を延長した延長線と第1位相シフタ部103aにおける延伸方向(ライン方向)の端部までの距離は、該延長線と第5位相シフタ部103eにおける延伸方向(ライン方向)の端部までの距離よりも短くなる。この構成により、より多くの光を集光することで結像させるライン状のパターンにおいて、その端部に光が集光し過ぎて像の形状がひずむことを防止することができる。
以上、マスクレイアウトの種々の変形例をマスクレイアウトの特徴的な構成として説明したが、正確なマスクレイアウトを実際に計算した例を以下に示す。
図14〜図18Dは上記の変形例に係る所望のパターンとなる設計パターン、マスクレイアウト図、及びこれらのマスクレイアウトを用いたときの転写像のシミュレーション結果をそれぞれ示している。
図14は所望のパターンであり、且つマスクレイアウト図を計算するために用いた設計パターンである。図15〜図17は、該設計パターンからそれぞれ計算されたマスクレイアウト図である。ここで、図15は、マスクレイアウトを0°と180°との位相で作製した例である。図16は、マスクレイアウトを0°、120°及び270°の位相で作製した例である。図17は、マスクレイアウトを0°、90°、180°及び270°の位相で作製した例である。ここで、図15〜図17の各補助パターン部に記した位相は、その部分を透過する露光光の位相面を進める値を示している。
図18A〜図18Dは、フォトマスクと被露光体とのギャップ長を50μmとし、露光波長を365nmとし、露光光源のコリメーション角を1.5°として、光学シミュレーションを行った結果を示している。
図18Aは比較例であって、通常のマスク、すなわち設計パターンをそのままマスクレイアウトの開口部として露光を行った場合のシミュレーション結果である。図18Aに示すように、通常のフォトマスクでは、設計パターン幅が2μmの第1主パターン部102Aの転写像が全く形成されないことが分かる。一方、パターン幅が十分に大きい第2主パターン部102Bでは、転写像が形成されることが分かる。これにより、少なくとも第1主パターン部102Aに補助パターン部を設けることが必要であることが分かる。
図18Bは、図15に示すフォトマスクを露光した場合のシミュレーション結果である。図18Cは、図16に示すフォトマスクを露光した場合のシミュレーション結果である。図18Dは、図17に示すフォトマスクを露光した場合のシミュレーション結果である。これらの結果から、第1主パターン部102Aに補助パターン部を設けることにより、該第1主パターン部102Aに明瞭に転写像が形成されることが分かる。また、第2主パターン部102Bは、補助パターン部が設けられていなくても転写像自体は形成される。但し、図15〜図17に示すように、第2主パターン部102Bにそれぞれ補助パターン部を設けることにより、所望のパターン形状の輪郭部に明瞭なパターン像が実現され、より所望のパターン形状に対して歪みが少ない転写像を得られることが分かる。
さらに、図15に示す構成の0°及び180°の2つの位相のみでなく、図16に示す構成の0°、120°及び240°の3つの位相を用いる場合、並びに図17に示す構成の0°、90°、180°及び270°の4つの位相を用いる場合に、より明瞭な輪郭部を得られることも分かる。ここで、補助パターン部が設けられた全ての例において、第2主パターン部102Bの凸コーナ部の周辺の領域では、補助パターン部が設けられていないか、又はライン状部分に沿って設けられた補助パターン部の線幅よりも小さくなっていることが分かる。また、設計パターンにおけるライン状部分に沿って設けられた、ほぼライン状である補助パターン部の長さは、設計パターンから遠ざかるに従って短くなっていることも分かる。さらに、設計パターンから遠ざかるに従って、ライン状である補助パターン部が分断されることも分かる。
これらの要件を満足することにより、設計パターン、すなわち、所望のパターンをより正確に実現できるマスクレイアウトを得ることができる。
また、図15及び図16に示すマスクレイアウト図から、第1主パターン部102Aと第2主パターン部102Bとの接続部分に形成される凹コーナ部に設けられる補助パターン部は、孤立状のパターンであることが好ましいことが分かる。これは、所望のパターンの2つのライン状の辺となる像を形成するために、位相分布が重なり合って交差した状態となるので、ライン状では必要な位相分布を実現できないからである。但し、この場合でも、所望のパターンから垂直な方向に離れるに従って位相面が進む構成となっていることは、図15及び図16からも明らかである。さらに、これらの孤立状の補助パターン部においては、線幅ではなく、所望のパターンから離れるに従って補助パターン部の面積が小さくなる構成となる。
また、図16及び図17の例にみられるように、主パターン部となる開口部が必ずしも所望のパターンの内部に配置される構成に限定されないことが分かる。すなわち、設計パターンにおける第1主パターン部102Aに相当する位置が、マスクレイアウトではマスクパターン開口部ではなく、遮光部である場合でも、良好なパターン像を形成できることが分かる。
主パターン部は、所望のパターンのほぼ相似形であることは望ましいが、これに限定されない。極端な場合、所望のパターン位置にパターンが存在せず、補助パターン部のみで構成されることもあり得る。従って、正確には、主パターン部及び補助パターン部という区別は本質的ではなく、本実施形態に係るフォトマスクは、下記のように定義するのが適切である。
本実施形態に係るフォトマスクは、所望のパターンがライン状のパターンである場合は、所望のライン状パターン部及びその周辺部に、複数の位相を透過する位相透過領域が設けられ、所望のライン状パターン部の中心線から離れるに従って、複数の位相透過領域における位相面が順次進む構成を有する。
より詳細に説明するなら、ライン状の所望のパターンの位置又はそれを含む周辺領域において、所望のライン状パターンの中心線に最も近い位置に設けられた露光光を透過する領域で、その領域内でほぼ同一の位相の光を透過するライン状の領域を第1のパターン部とする。上記の中心線からみて、第1のパターン部を介して離れる方向の位置に設けられた露光光を透過する領域で、その領域内でほぼ同一の位相の光を透過しつつ、その位相が第1のパターン部と異なるライン状の領域を第2のパターン部とする。上記の中心線からみて、さらにこの第2のパターン部を介して離れる方向の位置に設けられた露光光を透過する領域で、その領域内でほぼ同一の位相の光を透過しつつ、その位相が第1のパターン部及び第2のパターン部のいずれとも異なるライン状の領域を第3のパターン部とする。これらの3つの異なる位相を生成する3つのパターン部において、それぞれのパターン部を透過する露光光は、所望のパターンの中心線から離れるに従ってその位相面が進む状態となることが望ましい。
すなわち、第3のパターン部、第2のパターン部及び第1のパターン部の順で、光の位相面が進む構成を有していることである。さらに、これらのライン部の幅は所望のパターンの中心線から離れるに従って小さくなっていることが好ましい。また、上記の構成が所望のライン状のパターンの中心線に対して線対称に設けられていることが望ましい。また、上述したように、所望のパターンの位置に相当する部分に透光部が存在することが望ましいことはいうまでもないが、所望のパターンの位置に相当する部分に遮光部があってもよい。
上述した定義は、ライン状の主パターン部により構成される場合の定義である。しかし、所望のパターンの周辺部に設けられる補助パターン部は、所望のパターンが、例えば、第1主パターン部102Aと第2主パターン部102Bとの接続部分のような、凹コーナ部を有する場合は、ライン状ではなく、孤立状に設けられることが好ましい。この場合、所望のパターン及びその周辺部を含め、所望のパターンの近傍に設けられた第1のパターン群において、ほぼ同一の位相の光を透過する位相透過領域を第1のパターンとする。所望のパターンの外周部に向かう方向で、且つ第1のパターン群を介して所望のパターンの近傍に現れる第2のパターン群において、ほぼ同一の位相の光を透過しつつ、その位相が第1のパターンとは異なる位相を透過させる位相透過領域を第2のパターンとする。さらに、第2のパターン群を介して所望のパターンの近傍に現れる第3のパターン群において、ほぼ同一の位相の光を透過しつつ、その位相が第1のパターン及び第2のパターンとは異なる位相を透過させる位相透過領域を第3のパターンとする。
ここで、第1のパターンから第2のパターン及び第3のパターンが、所望のパターンの内部からその外周部に向かう直線上に設けられており、且つ、第3のパターン、第2のパターン及び第1のパターンの順にその位相面が進む構成を有していれば、所望のパターン位置に光を集光する機能を有する構成となる。このとき、第1のパターンから第2のパターン及び第3のパターンの順にその開口面積が減少する構成が好ましい。上記の第1のパターンから第3のパターンと同様の構成が、所望のパターンの外側に向けて複数存在すれば、なお望ましい構成となる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態に係るフォトマスクの一例について図19A及び図19Bを参照しながら説明する。第1の実施形態と同様に、投影転写露光におけるレンズと被露光体との間に位置する伝播面における光の振幅強度分布と位相分布とを近接露光で再現するフォトマスクを実現する。本実施形態においては、光の位相分布を実現するために、フォトマスクとして透明性基板に彫り込み部を設ける構成とする。
図19A及び図19Bに示すように、第2の実施形態に係るフォトマスク20は、例えば、ガラス又は石英からなる透明性基板201と、該透明性基板201の主面上に設けられたクロム(Cr)等の遮光性膜からなる遮光部204とを有している。遮光部204の中央部には、該遮光部204に囲まれたライン状のマスクパターン開口部204dが設けられている。該マスクパターン開口部204dにおける中央部分で、所望の転写パターンと対応する領域には、ライン状の主パターン部202が設けられている。主パターン部202は、透明性基板201の主面が掘り込まれない表面露出部により構成される。主パターン202部の周辺部には、透明性基板201の主面が掘り込まれた複数の彫り込み部203a〜203cが設けられている。これにより、フォトマスク20から所定の距離だけ離れた被露光体(図示せず)に所望の転写パターンを結像することができる。各彫り込み部203a〜203cは、透過する光に対してその彫り込み深さが深い程、該彫り込み部203a〜203cを透過する光の位相面が進む。これは、該彫り込み部203a〜203cには空気が満たされ、該空気は透明性基板201に用いられるどんな物質よりも屈折率が低いため、位相面の進行速度は速くなるからである。
本実施形態においては、所望の転写パターンと対応する主パターン部202に近い位置から順に、第1彫り込み部203a、第2彫り込み部203b及び第3彫り込み部203cが設けられている。また、各彫り込み部203a〜203cの深さは、第1彫り込み部203a、第2彫り込み部203b及び第3彫り込み部203cの順に深くなるように形成されている。言い換えれば、各彫り込み部203a〜203cの深さは、第3彫り込み部203cが最も深く、第1彫り込み部203aが最も浅く形成されている。この構成により、各彫り込み部203a〜203cを透過する光の位相面の進み方は、第3彫り込み部203cが最も進み、該第3彫り込み部203cの次が第2彫り込み部203b、該第2彫り込み部203bの次が第1彫り込み部203aの順となる。すなわち、各彫り込み部203a〜203cのうち、転写パターンと対応する領域に近い第1彫り込み部203aの位相面が最も遅れることになる。
なお、本実施形態においては、主パターン部202に対する補助パターン部203となる位相シフタ部を3つの彫り込み部203a〜203cによって構成したが、該彫り込み部の数は、2つでもよく、また、4つ以上で構成してもよい。
本実施形態においても、透明性基板201の表面が露出した表面露出部からなる主パターン部202と複数の彫り込み部203a〜203cとによって、投影転写露光におけるレンズと被露光体との間の伝播面に位相分布を形成するようにフォトマスク20を構成すれば、該フォトマスク20を用いた近接露光において高い解像度を実現することができる。
具体的には、複数の彫り込み部203a〜203cにおける各彫り込み深さでそれぞれの光の位相を調整するために、深さdを彫り込むことによって、透明性基板201の主面が露出した領域に対して、下記の位相差が生じることを利用する。
位相差[rad]=d/λ×(n1−n0)
ここで、λは露光波長であり、n1は透明性基板の屈折率であり、n0は空気の屈折率である。なお、被露光体に向かう方向に位相面が進む状態を正としている。よって、深さd1と深さd2との彫り込み部の位相差は、下記の式で表される。
位相差[rad]=(d2−d1)/λ×(n1−n0)
従って、フォトマスク20上における所望のパターンである主パターン部202の周辺部に設けられた複数の彫り込み部203a〜203cにおいて、所望のパターンと対応する領域から遠ざかるに従って順次その彫り込み深さを深くすることにより、光の伝播面での位相分布を形成することができる。ここで、光の位相での360°分の差は同値として扱える。このため、彫り込み部203a〜203cにおいて、透明性基板201の主パターン部202に対して360°以上の位相差を生じる彫り込み部は360°分だけ浅くしてもよく、また、360°分だけ深くしてもよい。
(第2の実施形態の第1変形例)
図20A及び図20Bに第2の実施形態の第1変形例を示す。
図20A及び図20Bに示すように、本変形例に係るフォトマスク20Aは、第2の実施形態に係るマスクレイアウトにおいて、透明性基板201の主面上における各彫り込み部203a〜203cのそれぞれの間に遮光部が設けられている。本構成は、第1の実施形態の第1変形例に相当する構成である。すなわち、マスクレイアウトの構成としては、第1の実施形態の第1変形例における図10Aの構成において、複数の位相シフタ部103a〜103cを複数の彫り込み部203a〜203cとして読み替えれば良い。すなわち、より位相面が進む構成として、彫り込み部が主パターン部202から遠くなるに従ってより深く彫り込まれる構成である。具体的には、主パターン部102に近い位置に設けられた第1位相シフタ部103aと、該第1位相シフタ部103aに対して主パターン部よりも遠い位置に設けられた第2位相シフタ部103bにおいて、該第2位相シフタ部103bを透過する光の位相は、第1位相シフタ部103aを透過する光の位相よりも進んでいる、という内容は、主パターン部202に近い位置に設けられた第1彫り込み部203aと、該第1彫り込み部203aに対して主パターン部202よりも遠い位置に設けられた第2彫り込み部203bにおいて、該第2彫り込み部203bは、第1彫り込み部部203aよりも透明性基板201が深く彫り込まれている、と解釈すればよい。
また、図11A〜図13に示したマスクレイアウトの第2変形例から第5変形例においても、各位相シフタ部を彫り込み部と読み替えることにより構成することができる。
(第2の実施形態の第2変形例)
図21及び図22に第2の実施形態の第2変形例を示す。
図21及び図22に示すように、本変形例に係るフォトマスク20Bは、補助パターン部203である複数の彫り込み部203a〜203gが光の位相の進行を循環するように設けられている。
例えば、所望の転写パターンと対応する領域に近い位置に設けられている順に、第1彫り込み部203a、第2彫り込み部203b、第3彫り込み部203c、第4彫り込み部203d、第5彫り込み部203e、第6彫り込み部203f及び第7彫り込み部203gとするとき、各彫り込み部203a〜203gの深さは、第1彫り込み部203a、第2彫り込み部203b及び第3彫り込み部203cの順に深くなる。また、第4彫り込み部203dは、少なくとも第3彫り込み部203cよりも浅い。すなわち、第4彫り込み部203dから第7彫り込み部203gは、本来の彫り込み部に対して360°分だけ浅く設けられている。従って、第4彫り込み部203dから第7彫り込み部203gまでを360°分だけ彫り込んだと想定すると、第2の実施形態と同様に、所望のパターンと対応する領域から遠ざかるに従って、順次その彫り込み深さが深くなっていることと同値となる。
なお、本変形例に係る、360°分だけ浅くした構成においては、透明性基板201の主面が露出しただけの状態で、彫り込み量が実質的に0の彫り込み部、例えば図22に示す第4彫り込み部203dが、主パターン部202の周辺領域に設けられた彫り込み部であってもよい。具体的に、透明性基板201の主面が露出した領域に対する光の位相において、第1彫り込み部203a、第2彫り込み部203b及び第3彫り込み部203cが、それぞれ90°、180°及び270°の位相差を生じればよい。
この場合、第4彫り込み部203d、第5彫り込み部203e、第6彫り込み部203f及び第7彫り込み部203gは、それぞれ0°、90°、180°及び270°の位相差を生じる深さであってもよい。すなわち、第4彫り込み部203dは、透明性基板201の主面が露出しただけの状態であっても、フォトマスク20Bを透過する光に生じる位相面は、第4彫り込み部203dが360°分だけ彫り込んだ彫り込み部と同値に扱うことができる。従って、所望のパターンと対応する領域から遠ざかるに従って、彫り込み部を順に深くした後、さらに、所望のパターンと対応する領域から遠くに存在する彫り込み部によって、再度360°分だけ浅くなった彫り込み部から順に深くなる構成とすることができる。
このように彫り込み深さを循環させる場合は、90°、180°、270°、360°、450°、540°及び630°分の深さの彫り込み部を設ける場合と比べて、図22に示すように、90°、180°及び270°分だけの深さの彫り込み部を設け、その彫り込み部の配置を循環させることにより、より広範囲な領域の位相分布を形成することができる。その結果、彫り込み深さの種類を減らすことができるので、より高い解像度を持つフォトマスク20Bの作製が容易となる。すなわち、実際のフォトマスクの作製時に、異なる彫り込み深さを有する複数の彫り込み部を作製する工程における手間を軽減することができる。
(第2の実施形態の第3変形例)
また、第3変形例に係るフォトマスク20Cを図23に示す。
図23に示すように、第1変形例と同様に、補助パターン部203を構成する位相シフタ部である各彫り込み部203a〜203gのそれぞれの間に遮光部204を設けてもよい。この場合、彫り込み深さが互いに同一の彫り込み部においては、所望のパターンと対応する領域から遠ざかるに従ってパターン幅が小さくなるように構成する。
第2の実施形態及びその第3変形例までは、透明性基板に複数の彫り込み部を設ける構成について説明したが、透明性基板に透過性の膜を設け、その膜に彫り込み部を設ける構成でもよい。
(第2の実施形態の第4変形例)
以下、第4変形例に係るフォトマスク20Dとして、図24を参照しながら説明する。
図24に示すように、本変形例に係るフォトマスク20Dには、ガラス又は石英等からなる透明性基板201の主面上に、透光性を有する半透明膜205が設けられている。さらに、所望のパターンと対応する領域には、透明性基板201の主面が露出した表面露出部からなるライン状の主パターン部202が設けられている。主パターン部202の両側の半透明膜205には、第2変形例と同様の構成を持つ補助パターン部203である複数の彫り込み部203a〜203gが設けられている。なお、本変形例に係るフォトマスク20Dのレイアウトは、図21と同様である。
以上の構成により、主パターン部202と各彫り込み部203a〜203gとの間で透過率差を設けることができる。また、半透明膜205の透過率を低くすることにより、所望のパターンと対応する領域に設けられた主パターン部202に対して、その周辺部に設けられた各彫り込み部203a〜203gにおける透過率を低くすることができる。
なお、彫り込み部203a〜203gが設けられる半透明膜205には、透過率が1よりも小さく、0よりも大きい材料を用いることができる。例えば、フォトマスク20Dを透過した露光光が照射されるレジストの実質的な感光に関わる影響度を考慮して、遮光状態でもなく、透明状態でもないという特性を有効に活用するには、光の透過率で3%以上且つ60%以下程度が好ましい。このような材料には、例えば、前述したような、組成を調整したPMMA膜、又はMo等を添加したSiO2膜を用いることができる。
本変形例に係るフォトマスク20Dによると、図5Aに示されるように、伝播面での光の振幅強度が所望のパターンと対応する領域の振幅強度に対して、所望のパターンと対応する領域から離れた位置にある振幅強度が弱くなっている状況をより忠実に再現することができる。
実際には、解像限界は光を効果的に集光するための位相分布に依存するが、透過率分布は、所望の形状の光強度分布を形成する上で重要である、上記の構成により、異なる寸法の図形及び異なる形状の図形が混在するパターンを形成するための光強度分布の生成に効果がある。
(第2の実施形態の第5変形例)
第4変形例においては、透明性基板に設けられた半透明膜に単層膜を用いる例について説明したが、透明性基板に光の透過率を調整するための半透明膜と、光の位相を調整するための透明膜とが順次積層された構成を用いてもよい。
以下、第5変形例に係るフォトマスク20Eとして、図25を参照しながら説明する。
図25に示すように、本変形例に係るフォトマスク20Eには、ガラス又は石英等からなる透明性基板201の主面上に透光性を有する半透明膜205が設けられ、該半透明膜205の上に透明膜216が設けられている。さらに、所望のパターンと対応する領域には、透明性基板201の主面が露出した表面露出部からなるライン状の主パターン部202が設けられている。主パターン部202の両側の透明膜216には、第2変形例と同様の構成を持つ補助パターン部203である複数の彫り込み部203a〜203gが設けられている。なお、本変形例に係るフォトマスク20Eのレイアウトは、図21と同様である。
第5変形例においては、主パターン部202が形成された透明性基板201と、補助パターン部203を構成する複数の彫り込み部203a〜203gが形成された透明膜216との間に設けた半透明膜205の光の透過率を低くすることにより、第4変形例と同様に、所望のパターンと対応する領域に設けられた主パターン部202に対して、その周辺部に設けられた各彫り込み部203a〜203gの透過率を低くすることができる。
本変形例においては、彫り込み部203a〜203gを透明膜216に設けている。このため、各彫り込み部203a〜203gの彫り込み深さに依存してそれぞれの透過率が変化することがない。これにより、所望の透過率と所望の位相とを実現する上で、透過率及び位相のそれぞれの値を単独に設定できる構成が可能となる。
このように、本変形例に係るフォトマスク20Eによると、透過率と位相とを独立に調整できることより、異なる寸法の図形が混在する場合の光強度分布を形成する上で、より好ましい構成を実現することができる。
以上説明したように、第2の実施形態及びその第1変形例から第5変形例に係る彫り込み部は、第1の実施形態に係る位相シフタ部と対応する。従って、第1の実施形態と同様に、第2の実施形態及びその変形例においても、所望のパターンと対応する領域から遠くに離れた位置に設けられた彫り込み部の幅は、所望のパターンと対応する領域の近くに設けられた彫り込み部の幅よりも小さいことが望ましい。
特に、第2変形例から第5変形例で説明したように、各彫り込み部の彫り込み深さが所望のパターンと対応する領域が遠ざかるにつれて、一の彫り込み部の深さと同一の深さの他の彫り込み部が循環して設けられる場合には、第1の実施形態と同様に、同一の位相差、すなわち同一の深さの彫り込み部同士の間において、所望のパターンと対応する領域から遠くに設けられた他の彫り込み部の幅は、所望のパターンと対応する領域の近くに設けられた一の彫り込み部の幅より狭くすることが好ましい。
また、主パターン部がライン状のパターンである場合には、第1の実施形態と同様に、主パターン部を挟む位置に設けられた彫り込み部の深さは、主パターン部の延伸方向の中心線に対して線対称として、同一の深さの彫り込み部が対をなすように構成されることが好ましい。
また、第1の実施形態と同様に、所望のパターンの位置に対応して設けられた主パターン部及びその周辺部に設けられた彫り込み部を含めたマスクパターン開口部の周囲に遮光部を設けることが好ましい。
また、第1の実施形態と同様に、解像度を大幅に向上するには、互いに隣接する彫り込み部の彫り込み深さの差は、露光光に対する位相差換算で、120°以内にすることが望ましい。さらに、位相差を90°以内にまで小さくすると、理想的な効果を十分に得られるので、さらに好ましい。
また、本実施形態においては、各変形例も含めて、所望のパターンと対応する領域には、全て透明性基板が露出した表面露出部に主パターン部を設けている。この構成は、所望のパターンと対応する領域の光強度を強くする上で好ましい構成ではあるが、必ずしも必須ではない。第1の実施形態でも説明したように、転写像よりもはるかに広い透光領域を透過した光が転写像に集光されてくるため、所望のパターンと対応する領域に遮光部が存在していても、その周辺部に光が透過する多くの彫り込み部が存在すれば十分な転写像が形成される。
以上説明したように、本実施形態によれば、投影転写露光におけるレンズと被露光体との間の伝播面における位相分布を、フォトマスクを構成する透明性基板又は該透明性基板に成膜された半透明膜若しくは透明膜を彫り込むことによって実現することができる。さらに、彫り込み部の彫り込み深さを変更するだけで、所望の位相分布を形成することができる。従って、必要な位相ごとに異なる膜(位相シフタ)を用意する必要がなくなるので、フォトマスクの作製が容易となる。
従って、第1の実施形態と同様に、近接露光においても投影転写露光と同等の解像度を容易に得られるようになる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、図26A及び図26Bを参照しながら説明する。第3の実施形態においても、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に、投影転写露光におけるレンズと被露光体との間に位置する伝播面における振幅分布と位相分布とを近接露光で再現するフォトマスクを実現する。本実施形態においては位相分布を実現するために、フォトマスクとして、透明性基板に露光波長程度以下の隙間(狭彫り込み部)を設け、該隙間を光が伝播する導波路部を設けることにより位相分布を形成する構成とする。
図26A及び図26Bに示すように、第3の実施形態に係るフォトマスク30は、例えば、ガラス又は石英からなる透明性基板301と、該透明性基板301の主面上に設けられたクロム(Cr)等の遮光性膜からなる遮光部304とを有している。遮光部304の中央部には、該遮光部304に囲まれたライン状のマスクパターン開口部304dが設けられている。該マスクパターン開口部304dにおける中央部分で、所望の転写パターンと対応する領域には、ライン状の主パターン部302が設けられている。主パターン部302は、透明性基板301の主面が掘り込まれない表面露出部により構成される。主パターン部302の周辺部には、透明性基板301の主面が掘り込まれた複数の導波路部303a〜303cが設けられている。これにより、フォトマスク30から所定の距離だけ離れた被露光体(図示せず)に所望の転写パターンを結像することができる。
透明性基板301の主面に設けられ、補助パターン303を構成する各導波路部303a〜303cは、屈折率が互いに異なる材質の幅寸法d及びその隙間を波長以下にすることにより、各導波路部303a〜303cを透過する光に対してその位相を変化させる構成を持つ。この原理の詳細は、後述する。
本実施形態においては、所望の転写パターンに対応する主パターン部302に近い位置から順に、第1導波路部303a、第2導波路部303b及び第3導波路部303cが設けられている。このとき、光の位相面の進み方は、第3導波路部303cが最も進み、該第3導波路部303cに続いて第2導波路部303b、該第2導波路部303bに続いて第1導波路部303aの順となるように構成されている。すなわち、各導波路部303a〜303cのうち、転写パターンと対応する領域に近い第1導波路部303aの位相面が最も遅れる構成となる。この構成により、狭彫り込み部301aを透過する光の位相面の進行は、第1導波路部303aから第3導波路部303cの方向に向かって進むことになる。
次に、本実施形態において、透明性基板301に設けた導波路部303a〜303cとして定義した構成について詳細に説明する。
図27Aは光を透過する媒体としてのガラス300を表し、図27Bは薄層化された複数のガラス板の間にそれぞれ空気層を挟むように重ねられた構造体300Aを表し、図27Cは媒体としての空気300Bを表している。各図中の矢印で示すように、ガラス300、構造体300A及び空気300Bに光をそれぞれ照射する。図27Bにおいては、ガラス板の主面と平行に光を照射する。図27A及び図27Cは、方向性がない媒体であるため、光の照射方向は特に重要ではない。
ここで、ガラス板同士の間隔、すなわち、ガラス板同士の間の空気層の厚さが光の波長よりも小さい場合、すなわち、光が伝播する材質の寸法及びその間隙が十分に狭い場合に、図27Bに示す構造体300Aを導波路部と呼ぶ。
図27Bに示す構造体300Aに照射された光の伝播は、図27Aに示すガラス300及び図27Cに示す空気300Bに照射された、それぞれの光の伝播の中間的な振る舞いをすると考えられる。すなわち、光が構造体300Aを透過する間の位相変化は、ある領域をガラス300で満たされた物質を透過する間の位相変化と、その領域と同じ領域を空気300Bで満たされた物質とを透過する間の位相変化との中間の値になると考えられる。
図28A〜図28D、図29A及び図29Bを用いて、上記の内容をシミュレーションにより確認した結果を説明する。図28A及び図28Bはそれぞれ、屈折率が1.25の透明物質である、例えばガラス300aと、屈折率が1.5の透明物質である、例えばガラス300bとをそれぞれ空気中に置き、それぞれに光を照射する様子を模式的に表している。
図28A及び図28Bにおける光の伝播のシミュレーション結果をそれぞれ図28C及び図28Dに示している。ガラス300a、300bを透過した光の位相面は、屈折率が高い物質を透過するほど遅れる。通常、透明物質としては空気の屈折率が最も小さいので、空気中を透過する光の位相面が進み、高い屈折率を透過した光の位相面が遅れる。これは、図28Cと図28Dとの結果からも、屈折率がより高い物質を透過した光の位相面が、空気中を透過した光の位相面よりも遅れていることが分かる。
次に、光の波長λに対して、屈折率が1.5の透明物質(ガラス板)をその厚さ及びガラス板同士の間の空気の間隙がそれぞれλ/2以下とした構造体300Aに光を照射する場合のシミュレーション結果について説明する。
図29Aはガラス板の厚さと該ガラス板同士の間隙とを同一寸法とし、ガラス板の平面に対して平行な方向に光を照射する様子を模式的に表している。図29Bにこの状態での光の伝播のシミュレーション結果を示している。
図29Bに示す構造体300Aを透過した後の光の伝播の結果は、前述の図28Cに示した屈折率が1.25の均一なガラス300bを透過した光の伝播と同一の結果となっている。すなわち、空気の屈折率が1.0であることより、図29Aに示す構造体300Aを透過した光は、該構造体300Aにおける構成物質の平均的な屈折率を有した物質を透過するときと同一の振る舞いをする。ここでは、屈折率が1.5のガラスと屈折率が1.0の空気とによって構造体300Aを構成したため、屈折率が1.5のガラスと屈折率が1.0の空気との屈折率の平均値である屈折率が1.25の物質のように振る舞った。
以上により、屈折率が互いに異なる複数の物質を用意しなくても、透明物質を層状に構成した構造体を作製し、その層の間に空気の間隙を設ける導波路を用いれば、構造体を構成する物質とその間の間隙(空気)との寸法比を変えることによって、異なる屈折率を持つ物質のように扱える。言い換えれば、透明物質に空気の層を入れた層状の構造体に対して、それらの層に平行に光を照射することにより、構造体を透過する間に変化する光の位相が、上記の透明物質とその間隙との構成比の値で調整することができる。すなわち、種々の位相を生成する位相シフタを構成することが可能となる。以下、特に断らない限り、導波路部と呼ぶ場合は、透光性材料と該透光性材料とは屈折率が異なる物質(例えば、空気)とが露光波長以下の厚さで交互に積層され、露光光の位相を変化させる機能を有する構造体を指す。ここで、位相シフタ機能を十分に有効とするには、光が透過する光路長が光の波長以上であることが望ましいことが分かっている。
以上の説明のように、光の位相を調整可能な導波路部を応用した本実施形態に係るフォトマスク30の断面構成について、図26Bを用いて説明する。
図26Bに示すように、透明性基板301の主面における遮光部304で覆われていない領域には、透明性基板301の主面が露出した主パターン部302と複数の狭彫り込み部301aとが形成されている。これ以降、第2の実施形態の彫り込み部203a等と区別するため、本実施形態に係る導波路部303a〜303cを構成する、光の波長λ以下程度の幅寸法を持つ彫り込み部を狭彫り込み部301aと呼ぶ。ここで、狭彫り込み部301aは、基本的に同一の深さで彫り込まれている。但し、狭彫り込み部301aの幅寸法は露光波長以下である。また、狭彫り込み部301a同士の間の透明性基板301の厚さtも露光波長以下である。
以上の構成により、上述した位相シフタとして機能する導波路部303a〜303cが設けられたことになる。ここで、フォトマスク30を平面視した場合には、複数の狭彫り込み部301aは、主パターン部302と並行するライン状に構成されている。従って、各導波路部303a〜303cを構成する透明物質(透明性基板301)と空気との構成比の値は、狭彫り込み部301a同士の間の透明性基板301の厚さtと狭彫り込み部301aの幅との比率で表される。
主パターン部302に近い位置に設けられている順に、第1導波路部303a、第2導波路部303b及び第3導波路部303cとするとき、各導波路部303a〜303cを透過する光の位相面が、主パターン部302から最も遠い位置に設けられている第3導波路部303cが最も進み、次に第2導波路部303b、該第2導波路部303bの次に第1導波路部303aの順となるように構成するには、透明物質の厚さと狭彫り込み部301aの幅が、下記の(1)及び(2)の少なくとも一方の関係を満たすように構成することが望ましい。
(1)透明性基板301における狭彫り込み部301a同士の間の領域の厚さは、主パターン部302に最も近い位置に設けられる第1導波路部303aが最も厚く、該主パターン部302から離れるに従って、第2導波路部303b、第3導波路部303cの順に薄くなる。すなわち、狭彫り込み部301a同士の間隔は、第1導波路部303aが最も大きく、第2導波路部303b、第3導波路部303cの順に小さくなる。
(2)狭彫り込み部301aの幅は、第1導波路部303aが最も小さく、第2導波路部303b、第3導波路部303cの順に大きくなる。
以上の説明では、各導波路部303a〜303cに設けられた狭彫り込み部301aがライン状の構成を想定したが、狭彫り込み部301aの構成は孤立状であってもよい。例えば、狭彫り込み部301aの平面形状は、方形状又は他の多角形状であってもよい。なぜなら、導波路部としての位相シフト機能は、屈折率が互いに異なる物質が光の波長以下の寸法で交互に構成されれば、その形状に拘わらず、その構成比の値で決定されるからである。
図30Aは、狭彫り込み部301aがライン状のパターンである場合における、上記の(1)及び(2)の関係を模式的に表している。また、図30Bは、狭彫り込み部301aが孤立状のパターンである場合における、上記の(1)及び(2)の関係を模式的に表している。図30Bにおいては、狭彫り込み部301aのパターンが、平面方形状である場合の例を示している。
狭彫り込み部301aは、各導波路部303a〜303bに周期的に配置されている。複数の狭彫り込み部301aを位相シフタ機能を有する導波路とするには、互いに隣接する狭彫り込み部301a同士の間隔は、露光波長よりも小さいことが望ましい。また、狭彫り込み部301aの短辺も、露光波長よりも小さいことが望ましい。このような場合、所定の領域に占める狭彫り込み部301aの面積率は、第1導波路部303aが最も小さく、第2導波路部303b、第3導波路部303cの順に大きくなることが望ましい。狭彫り込み部301aの個々の形状がそれぞれの相似形として形成されるなら、狭彫り込み部301aの個々の面積及び間隔は、下記の(1)及び(2)の少なくとも一方の関係を満たすように構成されることが望ましい。
(1)狭彫り込み部301a同士の間隔は、第1導波路部303aが最も大きく、第2導波路部303b、第3導波路部303cの順に小さくなる。
(2)狭彫り込み部301aの面積率は、第1導波路部303aが最も小さく、第2導波路部303b、第3導波路部303cの順に大きくなる。
本実施形態においては、複数の導波路部を3つの導波路部303a〜303cで構成したが、2つの導波路部で構成してもよく、また、4つ以上の導波路部で構成してもよい。また、導波路部における位相シフタ機能を十分に機能させるには、狭彫り込み部301aにおける彫り込み深さは、露光波長以上であることが望ましい。
以上のように、本実施形態に係るフォトマスク30によると、露光波長以下の幅寸法を持つ狭彫り込み部301aと、該狭彫り込み部301a同士の間の領域により構成される導波路部303a〜303cを設けることにより、狭彫り込み部301aの彫り込み深さを1種類のみとしても、任意の位相を生成できる位相シフタを構成することができる。
従って、投影転写露光におけるレンズと被露光体との間の伝播面に位相分布を形成するように、本実施形態に係るフォトマスク30を構成すれば、該フォトマスク30を用いた近接露光において高い解像度を実現できることは、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様である。
また、本実施形態によると、透明性基板301に狭彫り込み部301aを作製する工程において、狭彫り込み部301aの彫り込み深さを全て同一にできるので、複数種類の彫り込み深さを用いる場合のように、狭彫り込み部の形成工程を複数回行う必要がない。従って、フォトマスク30における作製の手間を大幅に軽減することができる。
以上、透明性基板301に導波路部303a〜303cを設ける構成について説明したが、該透明性基板301に透過性の膜を設け、設けた透過性の膜に導波路部303a〜303cを設ける構成としてもよい。
また、各導波路部において、同一の位相を生成する領域を1つの導波路部と定義する。すなわち、狭彫り込み部301aにおける同一の狭彫り込み幅と同一の間隔とを有する領域を1つの導波路部と定義する。このようにすると、主パターン部302から遠くに設けられた導波路部の幅が、該主パターン部302の近くに設けられた導波路部の幅よりも狭いことが望ましいことは、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様である。
また、第2の実施形態の第2変形例と同様に、複数の位相を生成する導波路部が主パターン部から離れるに従って循環的に設けられる構成とすることは、高い解像性を実現するために好ましい。この場合、同一の位相を生成する導波路部、すなわち、狭彫り込み部における同一の彫り込み幅と同一の間隔とを有する導波路部においては、主パターン部から遠くに位置する方がその導波路部の幅が狭くなることも、第2の実施形態の第2変形例と同様である。
また、第2の実施形態の第4変形例と同様に、透明性基板の主面上に半透明膜を設け、主パターン部として透明性基板の表面が露出した表面露出部を設け、半透明膜に狭彫り込み部を形成することにより、複数の導波路部を構成してもよい。このようにすると、主パターン部を透過する光の振幅強度を、その周辺部に設けられた複数の導波路部を透過する光の振幅強度よりも強くすることができる。その結果、第2の実施形態の第4変形例と同様に、異なる寸法の図形が混在する場合の光強度分布を形成する上で有効である。
また、第2の実施形態の第5変形例と同様に、透明性基板に光の透過率を調整するための半透明膜と光の位相を調整するための透明膜とが順次積層された構成を用い、主パターン部と対応する位置に透明性基板の表面が露出した表面露出部を設け、その周辺部には半透明膜を挟んだ透明膜に導波路部を設ける構成としてもよい。このようにすると、第2の実施形態の第5変形例と同様に、所望の透過率と所望の位相とを実現できる構造を容易に得ることができる。
特に、主パターン部がライン状のパターンであれば、該ライン状パターンを両側から挟む位置に設けられる各導波路部は、ライン状パターンの中心線に対して線対称として、同一の位相シフタ機能を有する導波路部が対をなすように構成されることが好ましい。これは、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様である。
また、主パターン部及びその周辺の導波路部を含めたマスクパターン開口部の周囲の領域に遮光部を設けることが好ましいことは、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様である。
また、本実施形態においては、変形例も含めて、所望のパターンと対応する領域の主パターン部には、透明性基板が露出した表面露出部が設けられている。これは、主パターン部の光強度を強くする上で好ましい構成ではあるが、必ずしも必須の構成でないことは、第1の実施形態及び2の実施形態と同様である。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について図31A及び図31Bを参照しながら説明する。
図31A及び図31Bに示すように、第4の実施形態に係るフォトマスク31は、第2の実施形態と同様に、主パターン部312の周辺部には複数の彫り込み部315a、315b及び315cが設けられている。各彫り込み部315a〜315cが主パターン部312から遠ざかるに従って、彫り込み深さが順次深くなる。
さらに、第3の実施形態と同様に、各彫り込み部315a〜315cの主パターン部312側には導波路部316a、316b及び316cがそれぞれ設けられている。具体的には、主パターン部312と隣接する第1彫り込み部315aは、主パターン部312側に第1導波路部316aが形成されて、第1位相シフタ部313aを構成する。第1彫り込み部315aの外側部分は、通常の彫り込み部であり、第2位相シフタ部313bを構成する。
これと同様に、第2彫り込み部315bは、主パターン部312側に第2導波路部316bが形成されて、第3位相シフタ部313cを構成する。第2彫り込み部315bの外側部分は、通常の彫り込み部であり、第4位相シフタ部313dを構成する。また、第3彫り込み部315cは、主パターン部312側に第3導波路部316cが形成されて、第5位相シフタ部313eを構成する。第3彫り込み部315cの外側部分は、通常の彫り込み部であり、第6位相シフタ部313fを構成する。この構成により、複数の位相シフタ部313a〜313fは、主パターン部312から遠ざかるに従って、順次、露光光の位相面が進む。
すなわち、本実施形態においては、各彫り込み部315a〜315cのそれぞれに、複数の位相変化を発生する位相シフタ機能を設けることが可能となる。図31A及び図31Bに示す例では、例えば、第1彫り込み部315aには、1つの位相変化を生成する第1導波路部316aを主パターン部312に近い側の2分の1の領域に設けている。これは、第2彫り込み部315b及び第3彫り込み部315cにおいても同様である。この構成により、例えば、第1彫り込み部315aの第1導波路部316aにおいては、残りの単純な彫り込み部315aに対して光の位相が遅れる。これは、第2彫り込み部315b及び第3彫り込み部315cにおいても同様である。
なお、この場合、単純な彫り込み部315a〜315cのそれぞれの幅は、露光波長以上であることが好ましい。このような構成とすることにより、例えば、第1彫り込み部315aにおいて、主パターン部312に近い側の2分の1の領域と遠い側の残りの領域とにおいて、遠い側の領域で露光光の位相面が進むことになる。
従って、第2彫り込み部315b及び第3彫り込み部315cに、同様の第2導波路部316b及び第3導波路部316cをそれぞれ設けることにより、各彫り込み部315a〜315cに複数の位相が生成される。その上、各位相シフタ部313a〜313fを透過する露光光の位相面が、主パターン部312から遠ざかるに従って、順次、その位相面が進むように構成することができる。
本実施形態においては、1つの彫り込み部に1種類の導波路部を設ける例を示したが、1つの彫り込み部に複数種類の導波路部を設けてもよい。また、各導波路部を構成する狭彫り込み部311aの幅寸法と、透明性基板311における狭彫り込み部311a同士の間の領域の厚さとが、共に露光波長以下であることが好ましいことは、第3の実施形態と同様である。
また、第3の実施形態と同様に、1つの彫り込み部に設けた複数の導波路部においては、下記の(1)及び(2)の少なくとも一方の関係が満たされるように構成されていることが望ましい。
(1)狭彫り込み部311a同士の間隔は、主パターン部に近い方が大きく、該主パターン部から遠ざかる順に小さくなる。
(2)狭彫り込み部311aの幅は、主パターン部に近い方が小さく、該主パターン部から遠ざかる順に大きくなる。
以上、透明性基板にそれぞれ導波路部を有する彫り込み部を設ける構成について説明したが、透明性基板に別の透過性の膜を設け、設けた透過性の膜に導波路部を有する彫り込み部を設ける構成であってもよい。
特に、主パターン部がライン状のパターンであれば、該ライン状パターンを両側から挟む位置に設けられる各導波路部を有する彫り込み部は、ライン状パターンの中心線に対して線対称として、同一の深さを持つ彫り込み部又は同一の構造を持つ導波路部が対をなすように構成されることが好ましい。これは、第2の実施形態及び第3の実施形態と同様である。
また、主パターン部312及びその周辺の各位相シフタ部313a〜313fを含めたマスクパターン開口部314dの周囲の領域に遮光部314を設けることが好ましいことは、第2の実施形態及び第3の実施形態と同様である。
また、本実施形態においては、変形例も含めて、主パターン部312には、透明性基板311が露出した表面露出部が設けられている。これは、主パターン部312の光強度を強くする上で好ましい構成ではあるが、必ずしも必須の構成でないことは、第2の実施形態及び3の実施形態と同様である。
また、第4の実施形態においても、第2の実施形態の第4変形例と同様に、透明性基板の主面上に半透明膜を設け、主パターン部として透明性基板の表面が露出した表面露出部を設け、半透明膜に導波路部を有する彫り込み部を形成することにより、複数の位相シフタ部を構成してもよい。このようにすると、主パターン部を透過する光の振幅強度を、その周辺部に設けられた導波路部を有する複数の彫り込み部を透過する光の振幅強度よりも強くすることができる。その結果、第2の実施形態の第4変形例と同様に、異なる寸法の図形が混在する場合の光強度分布を形成する上で有効である。
また、第4の実施形態においても、第2の実施形態の第5変形例と同様に、透明性基板に光の透過率を調整するための半透明膜と光の位相を調整するための透明膜とが順次積層された構成を用い、主パターン部と対応する位置に透明性基板の表面が露出した表面露出部を設け、その周辺部には半透明膜を挟んだ透明膜に、導波路部を有する彫り込み部を設ける構成としてもよい。このようにすると、第2の実施形態の第5変形例と同様に、所望の透過率と所望の位相とを実現できる構造を容易に得ることができる。
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について図32A及び図32Bを参照しながら説明する。
図32A及び図32Bに示すように、第5の実施形態に係るフォトマスク32は、第3の実施形態と同様に、所望のパターンに対応する主パターン部322の周辺部に複数の導波路部323a〜323cが設けられている。各導波路部323a〜323cは、主パターン部322から遠ざかるに従って、順次、露光光の位相面が進む構造を有している。
第5の実施形態に係るフォトマスク32が、第3の実施形態に係るフォトマスク30と異なる点は、マスクパターン開口部324dであって、ガラス又は石英からなる透明性基板321における各導波路部323a〜323cを構成する狭彫り込み部321a同士の間の領域の表面(露出部321b)の上に、遮光膜からなる遮光部324aが選択的に設けられている点である。
本実施形態においては、表面露出部である主パターン部322に近い位置の第1導波路部323aには、遮光部324aは設けられていない。該第1導波路部323aの外側の第2導波路部323bには、遮光部324aが露出部321bの一部に設けられている。また、第2導波路部323bの外側の第3導波路部323cには、遮光部324aが露出部321bの全面に設けられている。
図32Bに、第1導波路部323aにおける露出部321bの拡大断面図を領域Aとして、第2導波路部323bの露出部321b及び遮光部324aの拡大断面図を領域Bとして、第3導波路部323cの遮光部324aの拡大断面図を領域Cとして、それぞれ表している。
図33に、各導波路部323a〜323cのレイアウトを拡大して示している。図33に示すように、第1導波路部323aは、狭彫り込み部321aと透明性基板321の露出部321bとが交互に並んでいる。第2導波路部323bは、狭彫り込み部321aと透明性基板321の露出部321bとが交互に並び、且つ透明性基板321の露出部321bの中央部分に遮光部324aが選択的に設けられている。第3導波路部323cは、狭彫り込み部321aと遮光部324aとが交互に並んでいる。
このように、本実施形態に係るフォトマスク32は、所望のパターンである主パターン部から遠ざかるに従って、各導波路部323a〜323cにおける遮光部324aの割合を大きくしている。これにより、主パターン部322から遠ざかるに従って、各導波路部323a〜323cを透過する光の振幅強度、すなわち、実効透過率を低くすることができる。
具体的には、図33に示すように、各導波路部323a〜323cにおける光の実効透過率は、第1導波路部323a、第2導波路部323b及び第3導波路部323cの順に、すなわち、主パターン部に近い位置に設けられた第1導波路部323aから離れた第3導波路部323cに向かうに従って低くなる。
なお、ここでは、第1導波路部323aにおいて透明性基板321の表面の全面が露出し、第3導波路部323cにおいて透明性基板321の全面が遮光部324aで覆われる例を説明したが、これに限られない。例えば、全ての導波路部323a〜323cにおいて、第2導波路部323bと同様に、透明性基板321の露出部321bの中央部に遮光部324が部分的に設けられた構成でもよい。この場合、透明性基板321における各導波路部323a〜323cを構成する露出部321bの中央部に部分的に設けられる遮光部324aの幅は、第1導波路部323aが最も小さく、第2導波路部323b及び第3導波路部323cの順に大きくなることが望ましい。このようにすると、各導波路部323a〜323cにおける光の実効透過率が、主パターン部322から遠ざかるに従って低下する。
第3の実施形態及び第4の実施形態においては、狭彫り込み部に満たされる空気と透明性基板との構成比の値によって光の位相を調整する機能を導波路部に導入した。本実施形態においては、さらに、フォトマスク32の主面における透明性基板321の露出部321bと、狭彫り込み部321aと遮光部324aとの構成比の値によって光の透過率を調整する機能を導入する。
ここで、図32Bに示される断面構造のように、遮光部324aを、透明性基板321における狭彫り込み部321a同士の間の領域の露出部321bの一部を覆うように構成する場合における、狭彫り込み部321a、遮光部324a及び透明性基板321の露出部321bのレイアウトのバリエーションについて、図34A〜図39Iを用いて説明する。
各導波路部323a〜323cにおける光の実効的な位相及び透過率は下記のように近似することができる。ここで、dは狭彫り込み部321aの深さであり、λは露光波長であり、n0は空気の屈折率であり、n1は透明性基板321の屈折率である。ATは狭彫り込み部321aの面積、ASは透明性基板321の主面の露出部321bの面積であり、ADは遮光部324aの面積である。
実効屈折率=(n0×AT+n1×(AS+AD))/(AT+AS+AD)
実効位相シフト=d/λ×(実効屈折率−n0)
実効透過率=(AT+AS)/(AT+AS+AD)
ここでは、狭彫り込み部321a、透明性基板321の主面の露出部321b及び遮光部324aは、それぞれ露光波長の1.5倍以内の寸法で繰り返して配置されることが望ましい。なぜなら、このようにすると、各部位の平均寸法が露光波長以下となるため、個々の部材の光学特性でなく、全体の平均的な光学特性の材質と同値に扱えるからである。
図34A〜図34Eは、透明性基板321に形成されて導波路部を構成する狭彫り込み部321aをライン状のパターンで形成される場合の種々の変形例を示している。これらの変形例について、そのフォトマスク32のプロセスフローとそれぞれのレイアウトの特徴について説明する。
図34Aは、狭彫り込み部321a、透明性基板321の露出部321b及び遮光部324aが順に循環する導波路部を有する第1のレイアウトを示している。
図35A〜図35Iを用いて、図34Aに示す第1のレイアウトを有するフォトマスク32を作製するプロセスフローについて説明する。
図35A及び図35Bに、図34Aの第1のレイアウトを再掲する。図35Bは、図35AのXXXVb−XXXVb線における断面構成を表している。図35C〜図35Iに、本構成のフォトマスク32のプロセスフローを示す。各断面図は、図35AにおけるXXXVb−XXXVb線に沿った断面に対応する。
まず、図35Cに示すように、透明性基板321の上に遮光膜324Aを成膜する。続いて、遮光膜324Aの上に、第1のレジスト膜325を塗布して成膜する。
次に、図35Dに示すように、リソグラフィ法により、第1のレジスト膜325から、狭彫り込み部321aの形成領域に開口部を有する第1のレジストパターン325Aを形成する。このときの第1のレジストパターン325Aの平面レイアウトを図35Hに示す。
次に、図35Eに示すように、第1のレジストパターン325Aをマスクとして、遮光膜324A及び透明性基板321をエッチングして、透明性基板321に、それぞれ複数の遮光部324a及び複数の狭彫り込み部321aを形成する。
次に、図35Fに示すように、狭彫り込み部321aが形成された透明性基板321の上に、第2のレジスト膜326を塗布して成膜する。
次に、図35Gに示すように、リソグラフィ法により、第2のレジスト膜326から、狭彫り込み部321aと遮光部324aの延伸方向(ライン方向)における片側の2分の1程度の領域とを露出する開口部を有する第2のレジストパターン326Aを形成する。このときの第2のレジストパターン326Aの平面レイアウトを図35Iに示す。続いて、第2のレジストパターン326Aをマスクとして、遮光部324aをエッチングすることにより、図35A及び図35Bに示すレイアウトを得る。
第1のレイアウトは、最も単純なレイアウトであり、マスクの加工で微細寸法を形成する際にも、露光及び現像工程により形成するレジストパターン及びレジストのスペースパターンの双方において、微小な寸法が要求されない。
図34Bは、狭彫り込み部321aと透明性基板321の露出部321bとの境界に遮光部324aを配置する導波路部を有する第2のレイアウトを示している。
図36A〜図36Iを用いて、図34Bに示す第2のレイアウトを有するフォトマスク32を作製するプロセスフローについて説明する。
図36A及び図36Bに、図34Bの第2のレイウアトを再掲する。図36Bは、図36AのXXXVIb−XXXVIb線における断面構成を表している。図36C〜図36Iに、本構成のフォトマスク32のプロセスフローを示す。各断面図は、図36AにおけるXXXVIb−XXXVIb線に沿った断面に対応する。
まず、図36Cに示すように、透明性基板321の上に遮光膜324Aを成膜する。続いて、遮光膜324Aの上に、第1のレジスト膜325を塗布して成膜する。
次に、図36Dに示すように、リソグラフィ法により、第1のレジスト膜325から、狭彫り込み部321aの形成領域に開口部を有する第1のレジストパターン325Aを形成する。このときの第1のレジストパターン325Aの平面レイアウトを図36Hに示す。
次に、図36Eに示すように、第1のレジストパターン325Aをマスクとして、遮光膜324A及び透明性基板321をエッチングして、透明性基板321に、それぞれ複数の遮光部324a及び複数の狭彫り込み部321aを形成する。
次に、図36Fに示すように、狭彫り込み部321aが形成された透明性基板321の上に、第2のレジスト膜326を塗布して成膜する。
次に、図36Gに示すように、リソグラフィ法により、第2のレジスト膜326から、遮光部324aの延伸方向(ライン方向)における中央部分を露出する開口部を有する第2のレジストパターン326Aを形成する。このときの第2のレジストパターン326Aの平面レイアウトを図36Iに示す。続いて、第2のレジストパターン326Aをマスクとして、遮光部324aをエッチングすることにより、図36A及び図36Bに示すレイアウトを得る。
第2のレイアウトは、遮光部324aの延伸方向の中央部分に透明性基板321の露出部321bが配置されることが特徴である。これにより、図36Gの断面構成及び図36Iの平面構成に示す、2度目のレジストパターニング工程において、第2のレジストパターン326Aに設ける開口パターンの位置合わせが、遮光部324aの幅だけ余裕を持たせることができる。
すなわち、各遮光部324aの中央部分を除去する際に位置ずれが生じたとしても、最終的に残る遮光部324aがなくなるほどずれない限り、狭彫り込み部321a、遮光部324a及び透明性基板321の露出部321bの割合が変化しない。従って、マスク作製工程における1回目と2回目とのレジストパターニングのずれによっても、第2のレイアウトを有するフォトマスク32は、その実効的な位相及び透過率が変化しないという効果を有する。
図34Cは、狭彫り込み部321aと遮光部324aとの境界に透明性基板321の露出部321bを配置する導波路部を有する第3のレイアウトを示している。
図37A〜図37Iを用いて、図34Cに示す第3のレイアウトを有するフォトマスク32を作製するプロセスフローについて説明する。
図37A及び図37Bに、図34Cの第3のレイウアトを再掲する。図37Bは、図37AのXXXVIIb−XXXVIIb線における断面構成を表している。図37C〜図37Iに、本構成のフォトマスク32のプロセスフローを示す。各断面図は、図37AにおけるXXXVIIb−XXXVIIb線に沿った断面に対応する。
まず、図37Cに示すように、透明性基板321の上に遮光膜324Aを成膜する。続いて、遮光膜324Aの上に、第1のレジスト膜325を塗布して成膜する。
次に、図37Dに示すように、リソグラフィ法により、第1のレジスト膜325から、狭彫り込み部321aの形成領域に開口部を有する第1のレジストパターン325Aを形成する。このときの第1のレジストパターン325Aの平面レイアウトを図37Hに示す。
次に、図37Eに示すように、第1のレジストパターン325Aをマスクとして、遮光膜324A及び透明性基板321をエッチングして、透明性基板321に、それぞれ複数の遮光部324a及び複数の狭彫り込み部321aを形成する。
次に、図37Fに示すように、狭彫り込み部321aが形成された透明性基板321の上に、第2のレジスト膜326を塗布して成膜する。
次に、図37Gに示すように、リソグラフィ法により、第2のレジスト膜326から、遮光部324aの延伸方向(ライン方向)における中央部分をマスクする第2のレジストパターン326Aを形成する。このときの第2のレジストパターン326Aの平面レイアウトを図37Iに示す。続いて、第2のレジストパターン326Aをマスクとして、遮光部324aをエッチングすることにより、図37A及び図37Bに示すレイアウトを得る。
第3のレイアウトは、透明性基板321の露出部321bの中央部の上に遮光部324aが配置されることが特徴である。これにより、図37Gの断面構成及び図37Iの平面構成に示す、2度目のレジストパターニング工程において、第2のレジストパターン326Aに設ける開口パターンの位置合わせが、透明性基板321の露出部321bの幅だけ余裕を持たせることができる。
すなわち、各遮光部324aを残す部分に位置ずれが生じたとしても、最終的に残る透明性基板321の露出部321bがなくなるほどずれない限り、狭彫り込み部321a、遮光部324a及び透明性基板321の露出部321bの割合が変化しない。従って、マスク作製工程における1回目と2回目とのレジストパターニングのずれによっても、第3のレイアウトを有するフォトマスク32は、その実効的な位相及び透過率が変化しないという効果を有する。
図34Dは、透明性基板321の露出部321bと遮光部324aとの境界に狭彫り込み部321aを配置する導波路部を有する第4のレイアウトを示している。第4のレイアウトにおける狭彫り込み部321aは、第1から第3のレイアウトにおける狭彫り込み部321aとは、その平面形状が異なる。例えば、第4のレイアウトにおける狭彫り込み部321aには、該狭彫り込み部321aの延伸方向(ライン方向)の中央部分に沿って透明性基板321の表面の露出部321bが形成される。
図38A〜図38Iを用いて、図34Dに示す第4のレイアウトを有するフォトマスク32を作製するプロセスフローについて説明する。
図38A及び図38Bに、図34Dの第4のレイウアトを再掲する。図38Bは、図38AのXXXVIIIb−XXXVIIIb線における断面構成を表している。図38C〜図38Iに、本構成のフォトマスク32のプロセスフローを示す。各断面図は、図38AにおけるXXXVIIIb−XXXVIIIb線に沿った断面に対応する。
まず、図38Cに示すように、透明性基板321の上に遮光膜324Aを成膜する。続いて、遮光膜324Aの上に、第1のレジスト膜325を塗布して成膜する。
次に、図38Dに示すように、リソグラフィ法により、第1のレジスト膜325から、狭彫り込み部321aの形成領域に開口部を有する第1のレジストパターン325Aを形成する。このときの第1のレジストパターン325Aの平面レイアウトを図38Hに示す。
次に、図38Eに示すように、第1のレジストパターン325Aをマスクとして、遮光膜324A及び透明性基板321をエッチングして、透明性基板321に、それぞれ複数の遮光部324a及び複数の狭彫り込み部321aを形成する。
次に、図38Fに示すように、狭彫り込み部321aが形成された透明性基板321の上に、第2のレジスト膜326を塗布して成膜する。
次に、図38Gに示すように、リソグラフィ法により、第2のレジスト膜326から、透明性基板321の互いに近接した狭彫り込み部321aに挟まれた露出部321bを覆う遮光部324aを露出する第2のレジストパターン326Aを形成する。このときの第2のレジストパターン326Aの平面レイアウトを図38Iに示す。続いて、第2のレジストパターン326Aをマスクとして、遮光部324aをエッチングすることにより、図38A及び図38Bに示すレイアウトを得る。
第4のレイアウトは、透明性基板321の露出部321bと遮光部324aとが狭彫り込み部321aで分離された構造を持つことが特徴である。これにより、図38Gの断面構成及び図38Iの平面構成に示す、2度目のレジストパターニング工程において、第2のレジストパターン326Aの位置合せと加工寸法とにおいて、狭彫り込み部321aの幅だけ余裕を持たせることができる。
すなわち、遮光部324aを除去する部分に、位置ずれと寸法誤差による寸法ずれが生じたとしても、パターンエッジが狭彫り込み部321aの内部に収まっている限り、狭彫り込み部321a、遮光部324a及び透明性基板321の露出部321bの割合が変化しない。従って、マスク作製における1回目と2回目とのパターニングのずれや、2回目のパターニングにおける寸法誤差によっても、第4のレイアウトを有するフォトマスク32は、その実効的な位相及び透過率が変化しないという効果を有する。
図34Eは、透明性基板321の露出部321b上に、該露出部321bの延伸方向(ライン方向)に沿って、孤立した遮光部324aが周期的に配置される導波路部を有する第5のレイアウトを示している。
図39A〜図39Iを用いて、図34Eに示す第5のレイアウトを有するフォトマスク32を作製するプロセスフローについて説明する。
図39A及び図39Bに、図34Eの第5のレイウアトを再掲する。図39B1は、図39AのXXXIXb1−XXXIXb1線における断面構成を表している。また、図39B2は、図39AのXXXIXb2−XXXIXb2線における断面構成を表している。図39C〜図39Iに、本構成のフォトマスク32のプロセスフローを示す。各断面図は、図39AにおけるXXXIXb1−XXXIXb1線に沿った断面に対応する。
まず、図39Cに示すように、透明性基板321の上に遮光膜324Aを成膜する。続いて、遮光膜324Aの上に、第1のレジスト膜325を塗布して成膜する。
次に、図39Dに示すように、リソグラフィ法により、第1のレジスト膜325から、狭彫り込み部321aの形成領域に開口部を有する第1のレジストパターン325Aを形成する。このときの第1のレジストパターン325Aの平面レイアウトを図39Hに示す。
次に、図39Eに示すように、第1のレジストパターン325Aをマスクとして、遮光膜324A及び透明性基板321をエッチングして、透明性基板321に、それぞれ複数の遮光部324a及び複数の狭彫り込み部321aを形成する。
次に、図39Fに示すように、狭彫り込み部321aが形成された透明性基板321の上に、第2のレジスト膜326を塗布して成膜する。
次に、図39G1及び図39G2に示すように、リソグラフィ法により、第2のレジスト膜326から、透明性基板321における狭彫り込み部321aの延伸方向に垂直な方向に互いに間隔をおいて延びる第2のレジストパターン326Aを形成する。このときの第2のレジストパターン326Aの平面レイアウトを図39Iに示す。続いて、第2のレジストパターン326Aをマスクとして、遮光部324aをエッチングすることにより、図39A、図39B1及び図39B2に示すレイアウトを得る。
第5のレイアウトは、フォトマスク32を作製する2回のパターニング工程において、1回目は、狭彫り込み部321aの延伸方向に沿ってパターニングし、2回目は、該延伸方向に垂直な方向にパターニングする。このため、露光等の位置合わせ時に、1回目と2回目とのパターニングにずれが生じたとしても、その実効的な位相及び透過率が変化しないという効果がある。
その上、図34Aの第1のレイアウトと同様に、マスク加工時に微細な寸法を形成する際にも、露光及び現像工程で形成するレジストパターン及びレジストのスペースパターンの両方において微小な寸法が必要でない。
以上、ライン状のパターンを想定して狭彫り込み部321a、遮光部324a及び透明性基板321の露出部321bのレイアウトの変形例について説明してきたが、一般的な、2次元状のレイアウトに対応できるレイアウトについて、図40A〜図40Fを参照しながら説明する。
図40A〜図40Fに示される各レイアウトは、導波路部において、狭彫り込み部321a、透明性基板321の露出部321b及び遮光部324aは、露光波長の1.5倍以下の寸法に細分化された領域に設けられ、該領域に設けられたレイアウトが繰り返し配置される構成を有している。このため、該領域を集合して任意の形状を持つ領域から導波路部を構成できるので、任意の2次元形状の位相分布及び透過率分布を実現することができる。
図40A及び図40Bは、狭彫り込み部321aと透明性基板321の露出部321bとの境界に遮光部324aが配置されるレイアウトを示している。両者の相違点は、露出部321bと狭彫り込み部321aとのどちらが孤立パターンとして形成されているかである。図40Aは透明性基板321の露出部321bが孤立パターンとして形成されている。これに対し、図40Bは、狭彫り込み部321aが孤立パターンとして形成されている。これらのレイアウトは共に、フォトマスクの作製工程において、図34Bに示すレイアウトと同等の効果を有する。
図40C及び図40Dは、狭彫り込み部321aと遮光部324aとの境界に透明性基板321の露出部321bが配置されるレイアウトを示している。両者の相違点は、狭彫り込み部321aと遮光部324aとのどちらが孤立パターンとして形成されてるかである。図40Cは、狭彫り込み部321aが孤立パターンとして形成されている。これに対し、図40Dは、遮光部324aが孤立パターンとして形成されている。これらのレイアウトは共に、フォトマスクの作製工程において、図34Cに示すレイアウトと同等の効果を有する。
図40E及び図40Fは、透明性基板321の露出部321bと遮光部324aとの境界に狭彫り込み部321aが配置されたレイアウトを示している。両者の相違点は、露出部321bと遮光部324aとのどちらが孤立パターンとして形成されているかである。図40Eは、透明性基板321の露出部321bが孤立パターンとして形成されている。これに対し、図40Fは、遮光部324aが孤立パターンとして形成されている。これらのレイアウトは共に、フォトマスクの作製工程において、図34Dに示すレイアウトと同等の効果を有する。
以上、透明性基板321の狭彫り込み部321a、露出部321b及び遮光部324aの全てを含むレイアウトに基づいて説明したが、透明性基板321の露出部321bが遮光部324aによって全て覆われたレイアウトであっても、位相シフトと透過率とを調整することは可能である。
このように、第5の実施形態に係るフォトマスク32は、透明性基板321に設けられた狭彫り込み部321aに満たされる空気と、透明性基板321における狭彫り込み部321a同士の間の領域とにより構成された導波路部323a〜323cを有している。さらに、任意の位相を設定できる上に、透明性基板321における狭彫り込み部321a同士の間の露出部321bの上に部分的に遮光部324aを設けることにより、フォトマスク32には、任意の透過率を実現することができる。
これにより、投影転写露光によるレンズと被露光体との間の伝播面における光の振幅強度分布と位相分布とを生成可能な、近接露光用のフォトマスクを作製することができる。従って、数十μmの間隙を有する近接露光であっても、露光波長相当の寸法を持つパターンを良好な形状で形成できるリソグラフを実現することができる。
なお、第3の実施形態と同様に、各導波路部においては、下記の(1)又は(2)の少なくとも一方の関係が満たされるように構成されていることが望ましい。
(1)狭彫り込み部321a同士の間隔は、主パターン部322に近い方が大きく、主パターン部322から遠ざかる順に小さくなる。
(2)狭彫り込み部321aの幅は、主パターン部322に近い方が小さく、主パターン部322から遠ざかる順に大きくなる。
以上、透明性基板321に遮光部324aを有する導波路部323a〜323cを設ける構成について説明したが、透明性基板321に透過性の膜を設け、設けた透過性の膜に遮光部324aを有する導波路部を設ける構成としてもよい。
特に、第3の実施形態と同様に、所望のパターンに対応する主パターン部がライン状のパターンであれば、該ライン状パターンを両側から挟む位置に設けられる、遮光部を有する導波路部は、ライン状パターンの中心線に対して線対称として、同一の位相シフタ機能を有する導波路部が対をなすように構成されることが好ましい。
また、本実施形態においては、変形例も含めて、所望のパターンと対応する領域の主パターン部には、透明性基板が露出した表面露出部が設けられている。これは、主パターン部の光強度を強くする上で好ましい構成であるが、必ずしも必須の構成でないことは、第3の実施形態と同様である。
また、第5の実施形態においても、第2の実施形態の第4変形例と同様に、透明性基板の主面上に半透明膜を設け、主パターン部として透明性基板の表面が露出した表面露出部を設け、半透明膜に遮光部を有する導波路部を構成してもよい。このようにすると、主パターン部を透過する光の振幅強度を、その周辺部に設けられた遮光部を有する導波路部を透過する光の振幅強度よりも強くすることができる。その結果、第2の実施形態の第4変形例と同様に、異なる寸法の図形が混在する場合の光強度分布を形成する上で有効である。
また、第5の実施形態においても、第2の実施形態の第5変形例と同様に、透明性基板に光の透過率を調整するための半透明膜と光の位相を調整するための透明膜とが順次積層された構成を用い、主パターン部と対応する位置に透明性基板の表面が露出した表面露出部を設け、その周辺部には半透明膜を挟んだ透明膜に、遮光部を有する導波路部を設ける構成としてもよい。このようにすると、第2の実施形態の第5変形例と同様に、所望の透過率と所望の位相とを実現できる構造を容易に得ることができる。
(第6の実施形態)
以下、第6の実施形態について図41A及び図41Bを参照しながら説明する。
図41A及び図41Bに示すように、第6の実施形態に係るフォトマスク33は、第4の実施形態と同様に、マスクパターン開口部334dであって、所望のパターンに対応する主パターン部332の周辺部には、それぞれ彫り込み深さが異なる彫り込み部からなる位相シフタ部333a〜333cが設けられている。各位相シフタ部333a〜333cを構成する各彫り込み部は、主パターン部332から遠ざかるに従って、順次、彫り込み深さが深くなる。また、各彫り込み部には、それぞれ複数の狭彫り込み部を有する導波路部が設けられている。
第6の実施形態においては、一例として、1つの位相変化を生じさせる位相シフタ部(導波路部)333a等を1つの彫り込み部の全体に設けている。本実施形態に係るフォトマスク33が、第4の実施形態に係るフォトマスク31と異なる点は、ガラス又は石英からなる透明性基板331における、各導波路部を構成する狭彫り込み部331a同士の間の領域の表面(露出部331b)の上に遮光膜からなる遮光部334aが選択的に設けられている点である。
本実施形態においては、表面露出部である主パターン部332に近い位置の第1位相シフタ333aには、遮光部334aは設けられていない。該第1位相シフタ部333aの外側の第2位相シフタ部333bには、遮光部334aが露出部331bの一部に設けられ、該第2位相シフタ部333bの外側の第3位相シフタ部333cには、遮光部334aが露出部331bの全面に設けられている。
図41Bに、第1位相シフタ部333aにおける露出部331bの拡大断面図を領域Aとして、第2位相シフタ部333bの露出部331b及び遮光部334aの拡大断面図を領域Bとして、第3位相シフタ部333cの遮光部334aの拡大断面図を領域Cとして、それぞれ表している。
以上の構成により、第5の実施形態と同様に、主パターン部332から遠ざかるに従って、各位相シフタ部333a〜333cに設ける遮光部334aの割合を大きくする。これにより、主パターン部332から遠ざかるに従って、各位相シフタ部333a〜333cを透過する光の振幅強度、すなわち、実効透過率を低くすることができる。
すなわち、本実施形態に係るフォトマスク33は、第4の実施形態及び第5の実施形態に係るフォトマスク31、32と同等の効果を実現できる構成である。
以上、第6の実施形態に係るフォトマスク33によると、狭彫り込み部331aに満たされる空気と、透明性基板331における狭彫り込み部331a同士の間の領域とにより構成された導波路部である位相シフタ部333a〜333cを有している。さらに、位相シフタ部333a〜333cを構成する彫り込み部は、主パターン部332から遠ざかるに従ってその彫り込み深さを深くしているため、フォトマスク33として、任意の位相を負荷が小さいマスク作製工数で実現できる。さらに、透明性基板331における狭彫り込み部331a同士の間の露出部331bの上に、遮光部334aを選択的に設けることにより、フォトマスク33に、任意の透過率を構成することができる。
これにより、投影転写露光によるレンズと被露光体との間の伝播面における光の振幅強度分布と位相分布とを生成可能な、近接露光用のフォトマスクを作製することができる。従って、数十μmの間隙を有する近接露光であっても、露光波長相当の寸法を持つパターンを良好な形状で形成できるリソグラフを実現することができる。
また、透明性基板331の狭彫り込み部331a、露出部331b及び遮光部334aにより構成される平面レイアウトの変形例としては、第5の実施形態で示した図34A〜図34E及び図40A〜図40Fで示したレイアウトが可能である。
第6の実施形態に係るフォトマスク33は、第5の実施形態と同様に、図35A〜図39I及び図40A〜図40Fに示したプロセスフローによって作製することができる。これにより、第5の実施形態と同等の効果を得ることができる。なお、第6の実施形態に係るフォトマスク33の作製工程において、第5の実施形態に係るフォトマスク32の作製工程と異なるのは、彫り込み部の深さが位相シフタ部333a〜333cごとに異なるため、複数の深さに対応した彫り込み工程が必要になるという点である。従って、遮光部334と透明性基板331とを彫り込むエッチングを、彫り込み部の深さごとに複数回行うことになる。
本実施形態においては、1つの彫り込み部に1種類の導波路部(位相シフタ部)を設けた例を示しているが、1つの彫り込み部に複数種類の導波路部(位相シフタ部)を設けてもよい。
また、第3の実施形態と同様に、導波路部を構成する狭彫り込み部の寸法と、透明性基板における狭彫り込み部同士の間の厚さも、露光波長以下であることが好ましい。
また、第3の実施形態と同様に、各導波路部においては、下記の(1)又は(2)の少なくとも一方の関係が満たされるように構成されていることが望ましい。
(1)狭彫り込み部331a同士の間隔は、主パターン部332に近い方が大きく、主パターン部332から遠ざかる順に小さくなる。
(2)狭彫り込み部331aの幅は、主パターン部332に近い方が小さく、主パターン部332から遠ざかる順に大きくなる。
以上、透明性基板331に遮光部334aを有し、位相シフタ部333a〜333cを構成する導波路部を有する彫り込み部を設ける構成について説明したが、透明性基板に透過性の膜を設け、設けた透過性の膜に、遮光部を有し、位相シフタ部を構成する導波路部を含む彫り込み部を設ける構成としてもよい。
特に、第2の実施形態及び第3の実施形態と同様に、所望のパターンに対応する主パターン部がライン状のパターンであれば、該ライン状パターンを両側から挟む位置に設けられる、遮光部を有する導波路部を含む彫り込み部は、ライン状パターンの中心線に対して線対称として、同一深さの彫り込み部と同一構造の導波路部とが対をなすように構成されることが好ましい。
また、第2の実施形態及び第3の実施形態と同様に、主パターン部332及びその周辺の各位相シフタ部333a〜333cを含めたマスクパターン開口部の周囲の領域に遮光部334を設けることが好ましい。
また、本実施形態においては、主パターン部332には、透明性基板331が露出した表面露出部が設けられている。これは、主パターン部332の光強度を強くする上で好ましい構成ではあるが、必ずしも必須の構成でないことは、第2の実施形態及び3の実施形態と同様である。
また、第6の実施形態においても、第2の実施形態の第4変形例と同様に、透明性基板の主面上に半透明膜を設け、主パターン部として透明性基板の表面が露出した表面露出部を設け、半透明膜に、遮光部を有し導波路部を含む彫り込み部を形成することにより、複数の位相シフタ部を構成してもよい。このようにすると、主パターン部を透過する光の振幅強度を、その周辺部に設けられた導波路部を含む彫り込み部を透過する光の振幅強度よりも強くすることができる。その結果、第2の実施形態の第4変形例と同様に、異なる寸法の図形が混在する場合の光強度分布を形成する上で有効である。
また、第6の実施形態においても、第2の実施形態の第5変形例と同様に、透明性基板に光の透過率を調整するための半透明膜と光の位相を調整するための透明膜とが順次積層された構成を用い、主パターン部と対応する位置に透明性基板の表面が露出した表面露出部を設け、その周辺部には半透明膜を挟んだ透明膜に、遮光部を有し導波路部を含む彫り込み部を設ける構成としてもよい。このようにすると、第2の実施形態の第5変形例と同様に、所望の透過率と所望の位相とを実現できる構造を容易に得ることができる。
(第7の実施形態)
以下、第7の実施形態について図42A及び図42Bを参照しながら説明する。
図42A及び図42Bは本実施形態に係るフォトマスクを示している。
図42Aに示すように、本実施形態に係るフォトマスク40には、所望のライン状の転写パターンと対応する位置に、ライン状の主パターン部402が設けられている。主パターン部402の周辺部には、所望の転写パターンをフォトマスク40から所定の距離だけ離れた被露光体に所望の転写パターンを結像させるための補助パターン部403が設けられている。補助パターン部403は、透過する光に対してその透過強度と位相とを調整できる位相シフタ機能を有している。補助パターン部403は、主パターン部402に近い位置に設けられている順に、第1位相シフタ部403a、第2位相シフタ部403b及び第3位相シフタ部403cから構成されている。ここで、各位相シフタ部403a〜403cを透過する光の位相面は、第1位相シフタ部403aから、該第1位相シフタ部403aよりも主パターン部402から離れた位置に設けられた第2位相シフタ部403b及び第3位相シフタ部403cに向かって順に進む。言い換えると、主パターン部402に最も近い第1位相シフタ部403aの位相面が最も遅れる。また、各位相シフタ部403a〜403cの透過強度は、第1位相シフタ部403aから第3位相シフタ部403cに向かって順にその強度が弱くなる。
本実施形態において、補助パターン部403は、透過する光に対してその透過強度と位相とを調整できる機能を容易に実現することができる。その断面構成を図42Bに示す。
図42Bに示すように、本実施形態に係るフォトマスク40は、例えば、ガラス又は石英等からなり、露光光を透過する透明性基板401と、該透明性基板401の主面上に形成され、クロム(Cr)等の遮光性の膜からなり、ライン状の微小開口部404aを有する遮光部404と、該遮光部404を介して形成された透明膜405とを有している。
ここで、光の位相分布は、例えば、各位相シフタ部403a〜403cが、主パターン部402から遠ざかるに従って透明膜405の膜厚が小さくなるように形成された彫り込み部によって構成されることにより実現することができる。また、光の透過強度は、例えば、位相シフタ部403a〜403cに設けられた複数の微小開口部404aの配置位置(レイアウト)によって実現することができる。
本実施形態においては、主パターン部402とその周囲に設けられた補助パターン部403とを含む領域が、遮光部404のマスクパターン開口部404dとなる。ここで、遮光部404におけるマスクパターン開口部404dの内側で、且つ微小開口部404aに挟まれた領域を遮光部404bとする。
この構成において、補助パターン部403を構成する各位相シフタ部403a〜403cは、遮光部404の微小開口部404aの幅及び透明膜405の膜厚を適宜調整することにより、各位相シフタ部403a〜403cを透過する光の透過率と位相とを調整することができる。
具体的には、遮光部404に設けられた微小開口部404aの寸法と該微小開口部404a同士の間の幅寸法、すなわち遮光部404bの幅寸法が露光波長以下になると、光は微小開口部404aの面積率、すなわち単位面積当たりの開口面積率に依存した光強度で透過するようになる。これにより、光の実効透過率の調整が可能となる。各位相シフタ部403a〜403cにおける光の実効透過率は、下記のように近似できる。ここで、AKは微小開口部404aの面積であり、ADは遮光部404bの面積である。
実効透過率 =(AK)/(AK+AD)
ここでは、微小開口部404a及び遮光部404bは、共に露光波長の1.5倍以内の寸法で繰り返して配置されることが望ましい。このようにすると、微小開口部404a及び遮光部404bの平均寸法が露光波長以下となるため、個々の光学特性でなく、全体の平均的な光学特性の材質と同値に扱えるようになる。
以下に、微小開口部404aと遮光部404bとのレイアウトの種々の変形例について図43A、図43B及び図44を用いて説明する。
図43Aは、各位相シフタ部403a〜403cに含まれるライン状の微小開口部404aと遮光部404bとにおける、第1位相シフタ部403a、第2位相シフタ部403b及び第3位相シフタ部403cの関係を模式的に表している。第1位相シフタ部403a、第2位相シフタ部403b及び第3位相シフタ部403cにおいて、該第1位相シフタ部403a、第2位相シフタ部403b及び第3位相シフタ部403cの順に透過する光の強度が弱くなるように、すなわち、第1位相シフタ部403aを透過する光の強度が最も強くなるように構成するには、微小開口部404a及び遮光部404bの幅は、下記の(1)及び(2)の少なくとも一方の関係が満たされるように構成されている。
(1)微小開口部404aの幅は、第1位相シフタ部403aが最も大きく、第2位相シフタ部403b、第3位相シフタ部403cの順に小さくなる。
(2)遮光部404bの幅は、第1位相シフタ部403aが最も小さく、第2位相シフタ部403b、第3位相シフタ部403cの順に大きくなる。
以上、微小開口部404a及び遮光部404bがライン状に形成された構成を想定したが、これらの微小開口部404a及び遮光部404bは、孤立状に構成されていてもよい。例えば、微小開口部404a及び遮光部404bの平面形状は、方形状又は他の多角形状であってよい。これは、微小開口部404aと遮光部404bとが光の波長以下の寸法で交互に構成されれば、その平面形状に拘わらず、その構成比の値で実効的な透過率が決まるからである。
図43Bに、遮光部404bが孤立状パターンを有する場合の例を示す。ここでは、複数の遮光部404bは、一例として、平面方形状を有しており、且つ、周期的に配置されている。この周期的な配置における配置の周期は、露光波長の1.5倍以下の寸法であることが望ましい。このような場合、所定の領域に占める遮光部404bの面積率は、第1位相シフタ部403aが最も小さく、第2位相シフタ部403b及び第3位相シフタ部403cの順に大きくなることが望ましい。個々の遮光部404bの平面形状が相似形で形成される場合は、個々の遮光部404bの面積及びその間隔は、下記の(1)及び(2)の少なくとも一方の関係が満たされるように構成されていることが望ましい。
(1)遮光部404b同士の間隔は、第1位相シフタ部403aが最も大きく、第2位相シフタ部403b、第3位相シフタ部403cの順に小さくなる。
(2)遮光部404bの面積率は、第1位相シフタ部403aが最も小さく、第2位相シフタ部403b、第3位相シフタ部403cの順に大きくなる。
また、図44に、微小開口部404aが孤立状パターンを有する場合の例を示す。この場合も、微小開口部404aは、上記の遮光部404bと同様に、周期的に配置されており、その配置の周期は、露光波長の1.5倍以下の寸法であることが望ましい。
所定の領域に占める微小開口部404aの面積率は、第3位相シフタ部403cが最も小さく、第2位相シフタ部403b及び第1位相シフタ部403aの順に大きくなることが望ましい。個々の遮光部404bの平面形状が相似形で形成される場合は、個々の遮光部404bの面積及びその間隔は、下記の(1)及び(2)の少なくとも一方の関係が満たされるように構成されていることが望ましい。
(1)微小開口部404a同士の間隔は、第3位相シフタ部403cが最も大きく、第2位相シフタ部403b、第1位相シフタ部403aの順に小さくなる。
(2)微小開口部404aの面積率は、第3位相シフタ部403cが最も小さく、第2位相シフタ部403b、第1位相シフタ部403aの順に大きくなる。
以上の構成により、本実施形態に係るフォトマスク40においては、主パターン部402からその周辺部に遠ざかるに従って、光の実効透過率を順次低くすることができる。
上述したように、遮光部404を構成する膜に複数の微小開口部404aを設けることにより光の透過率分布を実現することができる。また、複数の微小開口部404aを有する遮光部404の上に、各位相シフタ部403a〜403cとなる適当な彫り込み部を有する透明膜405を設けることにより、光の位相分布を調整することができる。
本実施形態においては、主パターン部402とその周辺部に設けられた各位相シフタ部403a〜403cに透明膜405を設けている。透明膜405は、主パターン部402から離れた各位相シフタ部403a〜403cを透過する露光光の位相面が、主パターン部から離れるに従って、順次進むように構成されている。
具体的には、遮光部404の上に設けられた透明膜405における主パターン部402の上側部分の膜厚は、該主パターン部402の周辺部に設けられた各位相シフタ部403a〜403cの膜厚よりも厚く構成されている。
また、透明膜405における位相シフタ部403a〜403cを構成する領域の膜厚は、主パターン部402から離れるに従って、順次薄くなるように構成されている。すなわち、透明膜405の膜厚は、第1位相シフタ部403aが最も厚く、第2位相シフタ部403b、第3位相シフタ部403cの順に薄くなるように構成されている。
なお、透明膜405には、例えば、PMMA膜又はSiO2膜等を用いることができる。
以上、本実施形態に係るフォトマスク40によれば、遮光部404に設けた微小開口部404aのレイアウトによって、実効透過率分布を任意に構成することができる。さらに、遮光部404の上に設けられた透明膜405の膜厚の分布によって、位相分布を任意に構成することができる。このため、投影転写露光における伝播面での振幅分布及び位相分布を忠実に再現可能なフォトマスクを、より容易に実現することができる。すなわち、本実施形態によって、投影転写露光と同等の微細パターンの形成が可能となる。
なお、各位相シフタ部403a〜403cに遮光部404bを設けない構成であっても、透明膜405の膜厚を調整することにより、露光光の集光効果を得ることができる。
(第8の実施形態)
以下、第8の実施形態について、図45A及び図45Bを参照しながら説明する。本実施形態においては、フォトマスク用の基板として、透明性基板の上に半透明膜を積層し、透明性基板に設けた彫り込み部と透明性基板の上に設けた半透明膜を利用して、光の位相分布を実現する構成を採る。
図45A及び図45Bは本実施形態に係るフォトマスクを示している。
図45Aに示すように、本実施形態に係るフォトマスク50には、所望のライン状の転写パターンと対応する位置に、ライン状の主パターン部502が設けられている。主パターン部502の周辺部には、所望の転写パターンをフォトマスク50から所定の距離だけ離れた被露光体に所望の転写パターンを結像させるための、彫り込み部503aと該彫り込み部503aの周辺部に設けられた半透明部505aとが設けられている。
本実施形態においては、主パターン部502とその周囲に設けられた彫り込み部503a及び半透明部505aを含む領域が、遮光部504のマスクパターン開口部504dとなる。従って、マスクパターン開口部504dから露出する彫り込み部503a及び半透明部505aが、補助パターン部503となる。補助パターン部503は、透過する光に対してその透過強度と位相とを調整できる位相シフタ機能を有している。
また、フォトマスク50の断面構成は、図45Bに示すように、例えば、ガラス又は石英等からなり、露光光を透過する透明性基板501と、該透明性基板501の主面上に形成され、光の透過率を組成により調整されたPMMA膜又はSiO2膜等の半透明膜505と、該半透明膜505の周縁部に形成され、クロム(Cr)等の遮光性の膜からなる遮光部504とを有している。
ここで、例えば、透明性基板501における主面が露出した主パターン部502の周囲の領域には、深さが露光光の位相で120°だけ進む深さに彫り込まれた彫り込み部503aが設けられている。
さらに、半透明膜505のマスクパターン開口部504dから露出した部分である半透明部505aは、主パターン部502に対して露光光の位相で120°だけ遅れる厚さで構成されている。これは、位相面としては、240°だけ進んでいることと同値になる。
従って、透明性基板501の彫り込み深さを、120°+360°×n(但し、nは整数である。)とし、半透明部505aの膜厚を、240°+360°×m(但し、mは整数である。)とするように構成すれば、主パターン部502から遠ざかるほど、露光光の位相面が進む構成を実現することができる。
また、透明性基板501に設けた表面露出部である主パターン部502を透過する光の位相に対して、彫り込み部503aの位相が120°以下、例えば90°だけ進み、半透明部505aを透過する光の位相が主パターン部502に対して120°以下、例えば90°だけ遅れる構成としてもよい。
また、半透明部505aとして、透明性基板501の上に積層された半透明膜505の透過率を、例えば振幅強度が2分の1となるように半透明性を持たせれば、主パターン部から遠ざかるほど、露光光の透過率が低下するという構成を実現できる。
以上の構成を用いて、投影転写露光におけるレンズと被露光体との間の伝播面での位相分布を0°、120°及び240°で3値化したときの分布の構成に、主パターン部502、彫り込み部503a及び半透明部505aをそれぞれ対応させることにより、近接露光においても、投影転写露光に匹敵する解像度を実現できるフォトマスク50を得ることができる。
このとき、主パターン部502の周辺部に設ける彫り込み部503aのパターン幅に対して、該彫り込み部503aの周辺部に設けた半透明部505aのパターン幅を狭くすることが好ましい。これは、第1の実施形態で説明した、光の伝播面における位相分布を再現するフォトマスクの特徴に相当する構成である。
また、本実施形態においては、彫り込み部503a及び半透明部505aが主パターン部502を囲むパターン形状とし、遮光部504がマスクパターン開口部504dの周辺部にのみ形成されている。しかし、該マスクパターン開口部504dの内側に、遮光部504を部分的に形成しても構わない。
また、第5の実施形態及び第6の実施形態と同様に、彫り込み部503a又は半透明部505aの一部に導波路部を設けることにより、該彫り込み部503aにおける光の実効透過率、及び半透明部505aにおける光の実効透過率を部分的に変更することができる。
また、主パターン部502がライン状のパターンであれば、該ライン状パターンを両側から挟む位置に設けられる彫り込み部503a及び半透明部505aは、ライン状パターンの中心線に対して線対称として、同一の深さを有する彫り込み部503a及び半透明部505aが対をなすように構成されることが好ましい。
また、主パターン部502及びその周辺部に設けられた彫り込み部503a及び半透明部505aの周辺部で、半透明膜505の上には、遮光部504を設けることが好ましい。
また、所望のパターンと対応する領域に設けられた主パターン部502は、マスクパターン開口部504dの中央部に断面凸状に設けているが、主パターン部502は、断面凸状に限られない。例えば、主パターン部502は、透明性基板501を360°の整数倍の位相変化に相当する分だけ、彫り込み部503aよりも深く彫り込んでもよい。
また、本実施形態において、透明性基板501の彫り込み部503aの内部又は半透明部505aの内部に導波路部を構成して、位相分布をさらに細分化してもよい。
以上、第1から第8の実施形態に係るフォトマスクによると、該フォトマスクを透過した光を、該フォトマスクから所定の距離だけ離れた位置に、所定の形状で結像させることができる。すなわち、近接露光のような簡易な露光法であっても、従来のフォトマスクで形成が可能な限界寸法よりも小さいパターンを形成することができる。
また、レンズ作用を利用することより、所定の焦点位置に転写像を形成できるため、従来技術では光が十分な強度で透過しない小さい開口寸法に対する等倍の投影転写露光であっても、集光像を形成することができるので、微細パターンの形成が可能となる。
(第9の実施形態)
以下、第9の実施形態について、図46A〜図46Dを参照しながら説明する。本実施形態においては、第1から第8の実施形態及びその変形例を含めた形態のいずれかに係るフォトマスクを用いたパターン形成方法の一例を説明する。
まず、図46Aに示すように、基板600の主面上に、金属膜又は絶縁膜等の被加工膜601を形成する。
次に、図46Bに示すように、被加工膜601の上に、ポジ型のレジスト膜602を塗布法により成膜する。
次に、図46Cに示すように、第1から第8の実施形態及びその変形例を含めた形態のいずれかに係るフォトマスク650、例えば、図1Bに示す第1の実施形態に係るフォトマスクに対して露光光を照射する。これにより、フォトマスク650を透過した透過光によってレジスト膜602を露光する。ここで、フォトマスク650の主パターン部の周辺部には、フォトマスク650を透過する光が集光するように複数の位相シフタ部651が設けられている。
例えば、本露光工程においては、まず、露光光源を用いてレジスト膜602に対して露光を行なう。このとき、フォトマスク650を透過した光は、基板600の上に集光され、以降の現像工程においてレジスト膜602が溶解するに足りる露光エネルギーが照射されて潜像部602aが形成される。
次に、図46Dに示すように、露光されたレジスト膜602に対して現像を行なって潜像部602aを除去することにより、レジスト膜602に微細パターン602bを有するレジストパターン602Aが形成される。
次に、図示はしていないが、レジストパターン602Aをエッチングマスクとして、被加工膜601に対してエッチングを行なって、被加工膜601におけるレジストパターン602Aから露出する領域を除去することにより、被加工膜601に所望の形状を持つパターンを形成する。ここでは、レジストパターン602Aは、被加工膜601をエッチングするためのエッチングマスクとして用いたが、被加工膜601を形成せずに、基板600の所望の領域にイオン注入等を行なう場合の注入用マスクとしても用いることができる。
このように、第9の実施形態に示したパターン形成方法によれば、第1の実施形態と同様の効果、さらには、第2から第8の実施形態と同様の効果を得ることができる。具体的には、レジスト膜602が塗布された被加工膜601、又はレジスト膜602が塗布された基板600に対して、本開示に係るフォトマスク650を介して近接露光を行なう。このとき、フォトマスク650の開口部内の位相シフタ部651によって、該フォトマスク650を透過する光がレジスト膜602に集光されるため、微細なパターン形成が可能となる。
なお、本実施形態においては、ポジ型のレジストプロセスを用いたが、これに代えて、ネガ型のレジストプロセスを用いても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、上記した全実施形態においては、フォトマスクとして、平板マスクを用いる露光法を前提に説明をしたが、これに限定されない。例えば、ローラ型のフォトマスクを用いた露光法においても有効である。
以下に、第9の実施形態の一変形例として、ローラ型のフォトマスクを用いた露光装置について説明する。
(第9の実施形態の一変形例)
以下、図47A及び図47Bを用いてローラ型のフォトマスクを用いた露光装置について説明する。
図47Aは、ローラ型のフォトマスク701を表している。ローラ形のフォトマスク701は円筒状であり、円筒状のフォトマスク701の内部は空洞702である。円筒状のフォトマスク701の内壁は、ガラス又は石英等からなる透明性基板703で構成されている。透明性基板703の外側の表面には、マスクパターンが描かれている。マスクパターンは、マスクパターン形成部704に形成されている。フォトマスク701の外壁におけるマスクパターン形成部704を除く領域は、遮光膜705で覆われている。ここで、マスクパターン形成部704は、第1から第8の実施形態及びその変形例を含めた形態のいずれかに係るフォトマスクを含む構成として形成されている。
図47Bは、ローラ型のフォトマスク701を用いた露光装置とその動作とを模式的に表している。ここでは、円筒状のフォトマスク701の空洞702を側面方向から図示している。
図47Bに示すように、円筒状のフォトマスク701の空洞702には、光源706が設けられている。フォトマスク701から離れた位置には、被加工基板707が配置されている。また、フォトマスク701は、光源706を中心として回転可能に保持されている。これに対し、被加工基板707は、該被加工基板707の主面に平行な方向に移動可能に保持されている。このとき、フォトマスク701の回転速度と被加工基板707の移動速度との同期を取ることにより、円筒状のフォトマスク701の外壁に描かれたマスクパターンが、被加工基板707に露光される。
本露光装置によれば、ローラ型のフォトマスク701の表面を加工することにより、該フォトマスク701から所定の距離だけ離れた位置、すなわちレジスト膜(図示せず)が形成された被加工基板707の表面にフォトマスク701を透過した光を集光することができる。その結果、大面積にわたって微細パターンを形成することが可能となる。