JP6170368B2 - ヨウ化アリール化合物の製造用前駆体化合物及びそれを用いたヨウ化アリール化合物の製造方法 - Google Patents

ヨウ化アリール化合物の製造用前駆体化合物及びそれを用いたヨウ化アリール化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ヨウ化アリール化合物製造用の新規なモノマー前駆体化合物、該モノマー前駆体化合物を重合したポリマー前駆体化合物、及び、該ポリマー前駆体化合物からヨウ化アリール化合物を切り出すことを特徴とするヨウ化アリール化合物の製造方法に関し、特に、放射性ヨウ素標識アリール化合物の製造に有用なものに関する。
従来、ヨウ化アリール化合物の放射性ヨウ素標識反応は、交換反応又は金属との置換反応により行われている(非特許文献1)。
非特許文献1の記載によれば、非放射性化合物と放射性NaIとの交換反応による合成は、原料と生成物との化学形が同じであるため、反応生成物の同定が容易である。その反面、原料である非放射性化合物と生成した放射性化合物との分離が不可能であるため、高放射能化合物の合成には不適切である。また、この反応は高温条件で行われることが多いので、交換反応の利用は高温においても安定な化合物に限定される。
近年、金属有機化合物を用いる放射性ヨウ素標識も多く利用されている。非特許文献1によれば、この方法は、ベンゼン環に結合した臭素あるいはヨウ素を金属有機化合物誘導体とした後、放射性ヨウ素の導入を行う合成であり、高収率で目的とする標識位置への放射性ヨウ素の選択的な導入が可能であることが記載されている。更にこの方法より作製した放射性ヨウ素標識化合物は、基本的にキャリアフリーで得られるため、比放射能の高い標識化合物の合成に有利であるとも記載されている。
たとえば、非特許文献2記載のとおり、副腎に取り込みを示す(R)‐4‐[131I]ヨードメトミデートの合成法としては、スズ−ヨウ素交換反応によるヨウ化標識法が知られている。
また、特許文献1には、前駆体のスズ化合物をポリマーに結合させることが開示されている。特許文献1記載の技術は、ヨウ化アリール化合物の製造法に関するものではないが、ヨウ化物イオンとポリマー状の前駆体化合物とを反応させることで、ヨウ素化された生成物を前駆体化合物から切り出し、フィルター濾過により前駆体化合物と生成物とを分離することが記載されている。
米国特許出願公開第20070155976号公報
桜井弘、横山陽(編集)、「放射薬品学概論」、株式会社廣川書店(発行所)、平成11年3月15日(3刷発行) Schirbel A. et al., Radiochim. Acta 92, 297-303 (2004)
しかし、スズ−ヨウ素交換反応は、前駆体化合物の分解に伴う副生成物が生成しやすいため、標識体化合物へのスズ化合物の混入を防止する対策が必要であり、精製工程が煩雑になるという欠点がある。
また、特許文献1に記載されたポリマー前駆体化合物は、溶剤に溶解しないため、フィルター濾過により簡便に生成物化合物との分離精製が行える一方、反応溶媒に溶解しないことにより反応効率が低下したり、精製時にフィルターの詰まりが生じたりするおそれがある。また、容器等に吸着してハンドリングが煩雑になり、ポリマー前駆体化合物に放射能が吸着している場合には、放射能の回収効率の低下や放射能汚染の問題にもつながる。
また、上記課題は、放射性ヨウ素化合物に限定されず、非放射性ヨウ素化合物においても存在しえるものである。
本発明は、アリール化合物のヨウ化反応、特に、放射性ヨウ素標識反応であって、溶剤への溶解性を高めつつ、しかも、目的とするヨウ化アリール化合物の精製を簡単に行えるものを提供することを目的とする。
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ビニル基を含有する化合物にケイ素(Si)、スズ(Sn)又はゲルマニウム(Ge)からなる金属原子を介してアリール化合物のアリール基を結合させてなるモノマー前駆体化合物を用意し、該モノマー前駆体化合物を重合させてポリマー前駆体化合物を得た後、該ポリマー前駆体化合物を金属−ヨウ素交換反応に付すことにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、一局面によれば、
ヨウ化物イオンと反応させて有機ヨウ素化合物を製造するために用いられるポリマー前駆体化合物であって、
下記式(1)
Figure 0006170368

(式中、MはSi、Sn又はGeを表し、Lはリンカーを表し、Rは水素又はメチル基、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Arは、前記有機ヨウ素化合物の残基であって、置換又は非置換のアリール基を表す。)
で表わされるモノマー前駆体化合物を提供する。
このモノマー前駆体化合物は、重合することにより、ポリマー前駆体化合物を形成することができる。
したがって、本発明は、他の局面によれば、
ヨウ化物イオンと反応させて有機ヨウ素化合物を製造するために用いられるポリマー前駆体化合物であって、
下記式(2):
Figure 0006170368

(式中、MはSi、Sn又はGeを表し、Lはリンカーを表し、Rは水素又はメチル基、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Arは、前記有機ヨウ素化合物の残基であって、置換又は非置換のアリール基を表す。)
で表わされる構造単位を含むポリマー前駆体化合物を提供する。
このポリマー前駆体化合物を金属−ヨウ素交換反応に付すことにより、該ポリマー前駆体化合物からヨウ化アリール化合物を切り出すことができるので、該ポリマー前駆体化合物はヨウ化アリール化合物の製造に使用することができる。
したがって、本発明は、さらに他の局面によれば、上記ポリマー前駆体化合物を、ヨウ化物イオンと反応させ、式(3):
Figure 0006170368

(式中、Arは置換又は非置換のアリール基を表す。)
で表わされるヨウ化アリール化合物を前記ポリマー前駆体化合物から切り出すことを含む、ヨウ化アリール化合物の製造方法を提供する。
本発明によれば、ビニル基を含有する化合物にケイ素(Si)、スズ(Sn)又はゲルマニウム(Ge)からなる金属原子を介してアリール化合物のアリール基を結合させてなるラジカル重合性のモノマー前駆体化合物が提供されるので、該モノマー前駆体化合物を重合させて得られるポリマー前駆体化合物を金属―ヨウ素交換反応に付すことで、溶剤への溶解性を高めつつ、放射性ヨウ素標識アリール化合物等のヨウ化アリール化合物を製造することができる。
また、得られたヨウ化アリール化合物は、ポリマー前駆体化合物からアリール化合物が切り出された後の残余のポリマー部分及び未反応のポリマー前駆体化合物とは溶剤に対する溶解度が異なるので、溶剤を適宜選択することにより、固相抽出法により簡単に精製することができる。
実施例5で得られた反応時間と[123I]ヨウ素化率との関係を示すグラフである。
1.モノマー前駆体化合物
式(1)で示される本発明のモノマー前駆体化合物において、リンカーLは、ケイ素原子(Si)、スズ原子(Sn)又はゲルマニウム原子(Ge)とビニル基とを連結できるものであれば特に限定されるものではないが、式‐CO−X−Z−(式中、Zは1価の基)で表わされる基が挙げられる。Xは、O又はNHを表わす。Zの具体例としては、0〜4個のアリール基(好適にはフェニル)、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、及び炭素数1〜6のフルオロアルコキシ基からなる群から選ばれる1以上の基からなり、適宜、スルホニル基、アミド基、又はスルホンアミド基のような1〜4個の官能基を含む化合物の1価の残基が例示でき、より具体的な例は、特表2006-510706号公報、特表2007-500688号公報などに記載されており、当業者であればそれらの文献を基に適切なリンカーLを選択できる。
好ましいリンカーLとしては、下記式(L1)又は(L2)で示す基が挙げられる。
Figure 0006170368

(式中、XはO又はNHを表わし、pは1〜10の整数を表わす。)
Figure 0006170368

(式中、XはO又はNHを表わし、nは2〜4の整数を表わし、qは1〜10の整数を表わす。nは好ましくは2である。)
式(1)で示される本発明のモノマー前駆体化合物において、Rは水素又はメチル基であり、このうち、重合反応の反応効率を高める点から、メチル基が好ましい。
式(1)で示される本発明のモノマー前駆体化合物において、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を示す。本発明において、炭素数1〜4のアルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基である。
式(1)で示される本発明のモノマー前駆体化合物において、Arは、置換又は非置換のアリール基であり、生理活性を有しても有しなくてもよい。Arは、後述する重合反応において反応しないように、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有しないものであることが好ましく、窒素原子を含む複素環を有する置換基で置換されたアリール基がより好ましい。本発明において、窒素原子を含む複素環としては、3〜7員の複素環が好ましく、例えば、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンキヌクリジン、ヘキサメチレンイミンなどの脂肪族複素環、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、1,2,3‐トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリジン、フタラジン、プテリジン、1,4‐ベンゾジアゼピン、インドール、ベンズイミダゾール、プリン、アクリジン、フェノキサジン、フェノチアジンなどの芳香族複素環が挙げられる。中でも、イミダゾール環を有する置換基で置換されたアリール基がArとして好ましい。Arとして生理活性を有するものの具体例としては、下記のような基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、*(アスタリスク)は、式(1)中、Mとの結合部位である。
Figure 0006170368

(R)‐4‐ヨードメトミデート(IMTO)の前駆体残基
Figure 0006170368

N−イソプロピル−4−ヨードアンフェタミン(IMP)の前駆体残基(アミノ基は保護されていてもよい)。
Figure 0006170368

15-(4-ヨードフェニル)-3(R、S)-メチルペンタデカン酸(BMIPP)の前駆体残基(カルボキシル基は保護されていてもよい)。
Figure 0006170368

イオマゼニル(Iomazenil)
Figure 0006170368

イオフルオパン(Ioflupane)
本発明のモノマー前駆体化合物は、好ましい態様において、下記SCHEME 1に示されるように、芳香族環上に臭素等の脱離基Yを備えた置換又は非置換のフェニル基を、MR2R3Cl-で表わされる金属原子含有基を一方の末端に備えたリンカーLの当該末端と反応させるとともに(工程1)、当該リンカーLの他方の末端に反応性基X’(HN,N、OH等)を導入して、(メタ)アクリロイル基を結合させる(工程2)ことにより、調製することができる。反応性基X’としては、例えば、HN,N、OHが使用できる。
Figure 0006170368
上記SCHEME 1において、mは0〜5であり、Rは水素原子または任意の置換基であってよく、複数のRが互いに結合して環を形成してもよい。Mはケイ素原子(Si)、スズ原子(Sn)又はGe(ゲルマニウム)のいずれであってもよいが、目的のヨウ化アリール化合物に対し、スズ(Sn)のコンタミネーションを原理的に防止できる観点からは、Si(ケイ素)又はGe(ゲルマニウム)が好ましく、Si(ケイ素)がより好ましい。また、ヨウ素化反応条件における耐性を高める観点からXはNH、Xは’NHであることが好ましい
2.ポリマー前駆体化合物
本発明のポリマー前駆体化合物は、上記SCHEME 1に示されるように、本発明のモノマー前駆体化合物のビニル基の部分をラジカル重合させることにより調製することができる。重合は、通常のラジカル重合法に準拠して行うことができ、例えば、適当な溶媒中で、式(1)のモノマー前駆体化合物を重合開始剤の存在下に加熱又は光照射することにより行うことができる。
溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、アニソール、ベンジルアルコール、クロロベンゼン、O‐ジクロロベンゼン、1,2,4‐トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ベンゾニトリル、1,2‐ジクロロエタン、1,1,1‐トリクロロエタン、1,1,2,2‐テトラクロロエタン等の非極性溶媒が挙げられる。
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物等が挙げられる。
反応温度は、通常、25〜120℃である。
本発明のポリマー前駆体化合物を構成する構成単位である式(2)において、L、R、R、R、及びArは、式(1)に関して上述したことがそのまま当てはまる。
なお、ポリマー前駆体化合物が反応性の官能基を有する場合、該官能基が重合中に反応するのを防止するため、該官能基を保護基で保護してもよい。
本発明のポリマー前駆体化合物は、式(1)のモノマー前駆体化合物と共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマーに由来する構成単位を含んでもよい。かかる共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマーを併用することにより、ポリマー前駆体化合物のポリマー部分の親水性または疎水性を調整することができ、下記ヨウ素化アリール化合物の製造工程又は精製工程で用いる溶剤に対する溶解性を調整することができる。(メタ)アクリル酸は、ポリマー前駆体化合物の親水性を高めるために有用であり、アルキル(メタ)アクリレートは、ポリマー前駆体化合物の疎水性を高めるために有用である。
これらの共重合可能な他のエチレン性不飽和モノマーの含有量は、ポリマー前駆体化合物の全構成単位を100モル%とした場合、0〜99モル%が好ましく、0〜20モル%がより好ましい。換言すれば、本発明のポリマー前駆体化合物において、上記(2)で表わされる構成単位の含有量は、ポリマー前駆体化合物の全構成単位を100モル%とした場合、100〜1モル%が好ましく、100〜80モル%がより好ましい。
ポリマー前駆体化合物の分子量は特に限定されないが、1000〜100000であることが好ましく、1000〜50000であることが更に好ましく、5000〜20000であることが更により好ましく、8000〜10000であることが更により好ましい。なお、この分子量は、分子ふるいカラムによって測定した値である。
ポリマー前駆体化合物の重合度は、10〜1000であることが好ましく、10〜100であることが更に好ましく、20〜40であることが更により好ましい。
3.ポリマー前駆体化合物を用いたヨウ素化アリール化合物の製造方法
本発明のポリマー前駆体化合物は、炭素―炭素結合鎖を主鎖とするポリマーの側鎖にケイ素原子、スズ原子またはゲルマニウム原子からなる金属原子(M)を介して置換又は非置換のアリール化合物のアリール基(―Ar)を結合させてなる構造(−MR−Ar)を有するが、上記SCHEME 1に示されるように、非放射性又は放射性ヨウ素イオンと反応させることにより、アリール化合物の金属―ヨウ素交換反応を生起させて、上記式(3)で表わされるヨウ化アリール化合物(I−Ar)を製造することができる。この生成物のヨウ化アリール化合物(I−Ar)の分子量と、ポリマー前駆体化合物の分子量との比(ポリマー前駆体化合物/ヨウ化アリール化合物)は、100000000/1〜1/10であることが好ましい。より好ましくは、生成物が非放射性アリール化合物の場合において、ポリマー前駆体化合物/非放射性ヨウ化アリール化合物は、10/1〜1/10であり、生成物が放射性アリール化合物の場合において、ポリマー前駆体化合物/放射性ヨウ化アリール化合物は、100000000/1〜10000/1である。
本発明のポリマー前駆体化合物と非放射性又は放射性ヨウ素イオンとの反応は、ポリマー前駆体化合物と非放射性又は放射性ヨウ化物イオンを含む塩を、酸化剤存在下に適当な溶媒中で共存させることにより、行うことができる。放射性ヨウ化物イオンとしては、123I,124I,125I,131I等のイオンが挙げられる。
ヨウ化物イオンを含む塩としては、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化アンモニウム(NHI)、ヨウ化セシウム(CsI)、ヨウ化リチウム(LiI)、トリエチルアミンヨウ化水素酸塩(EtN HI)などのアミンのヨウ素酸塩、テトラブチルアンモニウムヨージド(BuNI)などの四級アンモニウム塩などが例示できるが、放射性ヨウ化物イオンを含む塩としては、放射性ヨウ化ナトリウムが好ましい。
溶媒としては、本発明のポリマー前駆体化合物を溶解できるものであることが好ましく、塩酸、トルフルオロ酢酸、硫酸、酢酸等の酸性液、エタノールなどのアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル系溶媒;アセトニトリル等から選択される極性溶媒、塩化メチレンなどのハロゲン系溶媒;トルエンなどから選択される非極性溶媒が例示できる。これらの酸性液、極性溶媒及び非極性溶媒は、一種又は二種以上組み合わせて用いることができる。極性溶媒及び非極性溶媒を使用する場合は、上記例示した酸性液や、リン酸、リン酸の酸性緩衝液を添加して用いることが好ましい。
酸化剤としては、N−クロロこはく酸イミド、過酸化水素などが例示できる。
溶媒中のポリマー前駆体化合物の濃度は特に限定されないが、0.1〜1000mg/mLであることが好ましく、1〜100mg/mLであることがより好ましく、10〜40mg/mLであることが更に好ましい。放射性ヨウ化物イオンを用いる場合には、0.1mg/mL〜10mg/mLが好ましい。
溶媒中のヨウ化物イオンを含む塩の濃度も特に限定されないが、0.1〜1000mg/mLであることが好ましく、1〜100mg/mLであることがより好ましく、10〜40mg/mLであることが更に好ましい。放射性ヨウ化物イオンを用いる場合には、0.1GBq/mL〜5GBq/mLが好ましい。
ポリマー前駆体化合物とヨウ化物イオンとの反応の際の温度は、特に限定されないが、0〜100℃であることが好ましく、25〜70℃であることがより好ましく、30〜50℃であることが更に好ましい。
ポリマー前駆体化合物とヨウ化物イオンとの反応時間は、特に限定されないが、10〜240分であることが好ましく、放射性ヨウ化物イオンを用いる場合、60〜120分であることがより好ましい。
前記反応によりヨウ化アリール化合物が切り出された前記ポリマー前駆体化合物の残余部分(即ち、ポリマー部分)及び未反応のポリマー前駆体化合物は、溶剤(好ましくは、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、アニソール、ベンジルアルコール、クロロベンゼン、O‐ジクロロベンゼン、1,2,4‐トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ベンゾニトリル、1,2‐ジクロロエタン、1,1,1‐トリクロロエタン、1,1,2,2‐テトラクロロエタン等の非極性溶媒)に可溶である。したがって、反応生成物からのヨウ化アリール化合物の精製は、HPLC、ディスポーザブルなカラムを用いた固相抽出法などの常法に従って行うことができるが、溶剤に対する溶解度がヨウ化アリール化合物とは異なる。具体的には、ヨウ化アリール化合物は低分子量であり、ポリマー前駆体化合物の上記残余部分及び未反応のポリマー前駆体化合物に比較して、極性の高い溶媒に溶解し易い。したがって、この溶解度差を利用した方法、例えば、反応溶液に非極性溶媒を混合して、シリカゲルなどを充填した順相カラムに通液してポリマー前駆体化合物の上記残余部分及び未反応のポリマー前駆体化合物を除去した後、該カラムに極性を高めた溶媒を通液してヨウ化アリール化合物を溶離させて分離回収することができる。回収されたヨウ化アリール化合物は、必要に応じて脱保護などを行い目的の化合物とすることができる。
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
なお、本実施例においては特に断りのない限り、以下の装置を用いて分析・測定を行った。
NMR装置: JNM-EPC400、日本電子社製
IR装置: Spectrum One FT-IR spectrophotometer、Perkin-Elmer社製
(参考例1)IMTOのモノマー前駆体化合物の合成
下記スキームに従い、1−(4−トリメチルシリルフェニル)エタノールを合成した。
Figure 0006170368
<1−(4−ブロモフェニル)エチル テトラヒドロピラニル エーテルの合成>
1−(4−ブロモフェニル)エタノール(6.00g,29.8mmol,1.00等量)の塩化メチレン溶液(149mL)にジヒドロピラン(5.45mL,59.7mmol,2.00等量)と触媒量のピリジニウムパラトルエンスルホン酸(749mg,2.98mmol,0.100等量)を氷冷下加えた。室温下、アルコールが消失するまで反応させた後、反応溶液をトリエチルアミンを加えて中和した。減圧下溶媒を除去した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=94:6)を用いて精製することにより、目的物の1−(4−ブロモフェニル)エチル テトラヒドロピラニル エーテルを得た(7.46g,26.2mmol,収率88%)。
Figure 0006170368
H‐NMR(400MHz,CDCl):δ 7.47−7.44(dd,2H,H−j,Jj,h−i=5.3Hz,Jj,Br=2.9Hz),7.28−7.26(d,1H,H−h,i),7.21−7.18(d,1H,H−h,i,J=8.3Hz),4.86−4.81(m,1H×0.5,H−e),3.96−3.67(m,1H×0.5,H−a),3.67−3.62(m,1H×0.5,H−a),3.39−3.35(m,1H×0.5,H−a);
FT−IR(neat):2943,2871,1593,1487,1202,1122,1078,1022,1011,980,824,549(cm−1)。
<1−(4−トリメチルシリルフェニル)エタノールの合成>
1−(4−ブロモフェニル)エチル テトラヒドロピラニル エーテル(4.00g,14.0mmol,1.00等量)のテトラヒドロフラン溶液(76.5ml)にn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.59mol/L n−hexyl solution,9.69mL,15.4mmol,1.10等量)を−78℃で滴下した。同一の温度で1時間撹拌した後、蒸留したトリメチルシリルクロリド(1.83g,16.8mmol,1.20等量)を滴下した。反応温度をゆっくりと室温まで昇温した後、反応溶液を飽和塩化アンモニア水溶液に注いだ。得られた水層を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウムと飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下溶媒を除去し濃縮して得られた残査を次の反応に用いた。得られた残査のメタノール(97.0mL)溶液にピリジウムパラトルエンスルホン酸を室温下加えた。TLCを用いて反応の終了を確認した後に、トリエチルアミンを用いて反応溶液を中和した。溶媒を減圧下除去した。得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=94:6)を用いて精製することにより、1−(4−トリメチルシリルフェニル)エタノール(1.59g,8.18mmol,1−(4−ブロモフェニル)エチル テトラヒドロピラニル エーテルに対する収率84%)を得た。
Figure 0006170368
H‐NMR(270MHz,CDCl):δ 7.54−7.51(d,2H,H−d,J=7.7Hz),7.39−7.36(d,2H,H−e,J=7.9Hz),4.93−4.86(q,1H,H−b,J=6.6Hz),1.63(m,1H,H−a),1.52−1.49(d,3H,H−c),0.26(s,9H,Hf);
13C‐NMR(373MHz,CDCl):δ 146.3,139.5,133.5,124.8,70.2,24.9,−1.2;
FT−IR(neat):3368,2957,1602,1393,1249,1113,1085,1008,840,821,758,551(cm−1
<1−N−[1−(4−トリメチルシリルフェニル)エチル]−5−メトキシカルボニル−1H−イミダゾール>
下記スキームに従い、1−N−[1−(4−トリメチルシリルフェニル)エチル]−5−メトキシカルボニル−1H−イミダゾールを合成した。
Figure 0006170368

4−メトキシカルボニル−1H−イミダゾール(177mg,1.00等量,1.40mmol)とトリフェニルフォスフィン(473mg,1.82mmol,1.30等量)の乾燥テトラヒドロピラン溶液(3.5mL)に1−(4−トリメチルシリルフェニル)エタノール(300mg,1.54mmol,1.10eq.)の乾燥テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)を−30℃で滴下した。その後、ジターシャリーブチルアゾジカルボン酸(387mg,1.68mmol,1.20等量)の乾燥テトラヒドロフラン溶液(4.0mL)を滴下した。その後、反応温度を2時間かけて、0℃まで昇温した。TLCを用いて、原料であるアルコールの消失を確認した後、減圧化溶媒を除去した。得られた残査をジエチルエーテルで希釈した。析出したトリフェニルフォスフィンオキシドをろ過別した後に、減圧下の再び濃縮した。得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=68:32)することにより、目的物を得た(225mg、78.4mmol,収率56%)。
Figure 0006170368
H‐NMR(400MHz,CDCl):δ 7.83(s,1H,H−a),7.80(s,1H,H−b),7.51−7.49(d,2H,H−f,J=7.8Hz),7.19−7.17(d,2H,H−g,J=7.8Hz),6.41−6.35(q,1H,H−d,J=7.1Hz),3.84(s,3H,H−c),1.88−1.86(d,3H,H−e,J=6.8Hz),0.25(s,9H,H−h);
13C‐NMR(373MHz,CDCl):δ 160.62,141.40,140.42,139.79,133.83,125.53,122.33,55.29,51.39,22.08,−1.24;
FT−IR(neat):2955,1715,1539,1438,1362,1249,1219,1134,1114,841.8,766,671(cm−1);
mp:142−143℃;
HRMS(ESI−TOF) calcd. for C1622Si[M+H] 303.1529, found 303.1556。
(参考例2)モノマー前駆体化合物を用いたヨウ素化実験
下記スキームに従い、参考例1で合成したポリマー前駆体化合物を用いて、IMTOを合成した。
Figure 0006170368
IMTOのモノマー前駆体化合物(20.0mg,0.0661mmol,1.0等量)のトリフルオロ酢酸溶液(530μL)に、ヨウ化ナトリウム(NaI;10.9mg,0.0727mmol,1.10等量)とN‐クロロコハク酸イミド(NCS;26.5mg,0.198mmol,3.0等量)を加えた。室温、40℃、60℃の各温度で60分反応させた後、10%チオ硫酸ナトリウムと飽和炭酸水素ナトリウムとを1:1で混合させた水溶液中に反応溶液を注ぐことにより、反応を停止させた。有機層をHPLCで分析することによって、収率を求めた。
カラム:Column: Inertsil(登録商標)WP300 C18
溶出溶媒:0分 (1%ギ酸 アセトニトリル:1%ギ酸 水=35:65)−25分(1%ギ酸 アセトニトリル:1%ギ酸 水=50:50)−26分(1%ギ酸 アセトニトリル:1%ギ酸 水=50:50)
リテンションタイム ヨウ化物 13.3分 シリル体 25.4分
Figure 0006170368
(実施例1)モノマー前駆体化合物の合成
下記スキームに従い、1−[1−(4−ヨードフェニル)エチル]‐1H‐イミダゾール‐5‐カルボン酸メチル(IMTO)のモノマー前駆体化合物を合成した。
Figure 0006170368
<1−((4−ブロモブチル)ジメチルシリルフェニル)エタノールの合成>
参考例1と同様な方法で合成した1−(4−ブロモフェニル)エチル テトラヒドロピラニル エーテル(4.70g,16.5mmol,1.00等量)のテトラヒドロフラン溶液(49.5mL)に,n-ブチルリチウム(1.64mol/L n−hexyl solution,12.1mL,19.8mmol,1.20等量)を−78℃で滴下した。一時間撹拌した後、反応溶液に、(4−ブロモブチル)クロロジメチルシラン(4.95g,21.5mmol,1.3等量)同一の温度のもと滴下した。反応温度を室温まで昇温した後に、塩化アンモニア溶液を用いて反応を停止させた。水層をジエチルエーテルで抽出した後に、飽和炭酸水素ナトリウムと飽和食塩水で中和し、硫酸マグネシウムを用い乾燥した。減圧下溶媒を除去した後に得られる残査を次ぎの反応に直接用いた。得られた残査をメタノール(165mL)に溶解させ、触媒量のピリジンニウムパラトルエンスルホン酸(415mg,1.65mmol,0.100等量)を0℃で加えた。TLCを用いて反応溶液を分析し、反応の終了確認した後、トリエチルアミンを加えて、反応溶液を中和した。溶媒を減圧下除去した後に、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=92:8)で精製することにより目的物の1−((4−ブロモブチル)ジメチルシリルフェニル)エタノール(4.60g,14.6mmol,1−(4−ブロモフェニル)エチル テトラヒドロピラニル エーテルに対する収率88%)を得た。
Figure 0006170368
H‐NMR(400MHz,CDCl): δ 7.51−7.49(d,2H,H−d,J=7.7Hz),7.38−7.36(d,2H,H−e,J=8.3Hz),4.92−4.87(q,1H,H−b,J=6.6Hz),3.41−3.37(t,2H,H−k,J=6.8Hz),1.89−1.83(dd,2H,H−i,J=7.2Hz),1.51−1.50(d,3H,H−a,J=6.3Hz),1.49−1.42(m,2H,H−h),0.77−0.72(m,2H,H−g),0.27(s,6H,H−f);13C‐NMR(100MHz,CDCl):13C‐NMR(373MHz,CDCl):δ 146.38,141.65,137.65,124.69,69.81,36.00,31.19,24.82,22.26,14.37,−3.19;
FT−IR (neat):3411,1719,1641,1411,1305,1117,1080,924,838(cm−1)。
<1−N−[1−(4−(4−ブロモブチル)ジメチルシリルフェニル)エチル]−5−メトキシカルボニル−1H−イミダゾールの合成>
4−メトキシカルボニル−1H−イミダゾール(1.68g,13.3mmol,1.00等量)とトリフェニルフォスフィン(4.32g,16.6mmol,1.25等量)の乾燥テトラヒドロピラン溶液(40mL)に1−(4−トリメチルシリルフェニル)エタノール(4.60g,14.6mmol,1.10等量)の乾燥テトラヒドロフラン溶液(15ml)を−30℃で滴下した。その後、ジターシャリーブチルアゾジカルボン酸(3.82g,16.6mmol,1.25等量)の乾燥テトラヒドロフラン溶液(25ml)を滴下した。その後、反応温度を2時間かけて、0℃まで昇温した。TLCを用いて、原料であるアルコールの消失を確認した後、減圧化溶媒を除去した。得られた残査をジエチルエーテルで希釈した。析出したトリフェニルフォスフィンオキシドをろ過別した後に、減圧下の再び濃縮した。得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=65:35)で精製することにより、目的物の1−N−[1−(4−(4−ブロモブチル)ジメチルシリルフェニル)エチル]−5−メトキシカルボニル−1H−イミダゾールを得た(3.70g,8.74mmol,収率66%)。
Figure 0006170368
H‐NMR(400MHz,CDCl):δ 7.92(s,1H,H−a),7.82(s,1H,H−b),7.50−7.48(d,2H,H−f,J=7.7Hz),7.21−7.19(d,2H,H−g,J=7.7Hz),6.43−6.38(q,1H,H−d,J=6.9Hz),3.86(s,3H,H−c),3.41−3.37(t,2H,H−l,J=6.8Hz),1.89−1.82(m,5H,H−e,k),1.49−1.43(m,2H,H−i),0.76−0.72(m,2H,H−i),0.26(s,6H,H−h);
19C‐NMR(373MHz,CDCl):δ 160.27,141.40,139.56,138.63,137.80,125.29,54.88,51.04,35.80,33.03,22.06,21.76,14.37,−3.43;
FT−IR(neat):2953,1715,1601,1539,1436,1362,1213,1113,1052,954,840(cm−1);
HRMS(ESI−TOF)calcd.for C1927BrNSi[M+H] 423.1103,found 423.1135。
<1−N−[1−(4−(4−アジドブチル)ジメチルシリルフェニル)エチル]−5−メトキシカルボニル−1H−イミダゾール>
1−N−[1−(4−(4−ブロモブチル)ジメチルシリルフェニル)エチル]−5−メトキシカルボニル−1H−イミダゾール(1.68g,3.97mmol,1.00等量)のジメチルホルムアミド(27.8mL)溶液に、アジ化ナトリウム(1.29g,19.8mmol,5.0等量)と触媒量のヨウ化ナトリウムを加えた。80℃で6時間反応させた後、混合物を冷却し、水を加えた。水層をジエチルエーテルで抽出した後に、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下溶媒を除去した後に、得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒;塩化メチレン:メタノール98:2)で精製することにより、目的物の1−N−[1−(4−(4−アジドブチル)ジメチルシリルフェニル)エチル]−5−メトキシカルボニル−1H−イミダゾールを得た。(1.35g,3.50mmol,収率89%)。
Figure 0006170368
H‐NMR(400MHz,CDCl):δ 7.85(s,1H,H−a),7.79(s,1H,H−b),7.48−7.46(d,2H,H−f,J=8.0Hz),7.19−7.17(d,2H,H−g,J=8.0Hz),6.40−6.35(q,1H,H−d,J=7.2Hz),3.83(s,3H,H−c),3.25−3.22(t,2H,H−l,J=6.8Hz),1.88−1.86(d,3H,H−e,J=7.2Hz),1.63−1.56(tt,2H,H−k,Jk,l=Jk,j=7.2Hz),1.42−1.34(m,2H,H−i),0.76−0.72(m,2H,H−i),0.24(s,6H,H−h);
13C‐NMR(100MHz,CDCl):δ 160.41,141.46,139.65,138.80,137.83,134,33,133.84,125.41,122.11,55.03,51.17,50.75,32.19,21.84,20.8, 15.03,−3.38;
FT−IR (neat):3785,2952,2315,2097,1714,1437,1362,1256,1218,1133,1113,1050,821 (cm−1);
HRMS (ESI−TOF) calcd. for C2333Si[M+H] 428.2369,found 428.2392.
<1−N−[1−(4−(4−(メタクリルアミドブチル)ジメチルシリルフェニル)エチル]−5−メトキシカルボニル−1H−イミダゾール>
1−N−[1−(4−(4−アジドブチル)ジメチルシリルフェニル)エチル]−5−メトキシカルボニル−1H−イミダゾールのテトラヒドロフラン:水(1:1)の混合溶液(6.72mL)に塩化アンモニウム(270mg,5.04mmol,3.0等量)と活性化亜鉛(446mg,6.82mmol,4.06等量)を0℃で加えた。TLC分析により反応の終了を確認した後、セライトろ過した。ろ液を減圧下濃縮した残査を次ぎの反応に用いた。得られた残査を炭酸水素ナトリウム(998mg,11.8mmol,7.0等量)のテトラヒドロフラン:水(1:1)溶液(6.72mL)に溶解させた後、メタクリル酸塩化物(522mg,5.04mmol,3.0等量)を0℃で加えた。TLC分析によりアミノ基の消失を確認した後に、反応溶液を酢酸エチルで希釈した。水層を飽和炭酸水素ナトリウムと飽和食塩水で洗浄した後に、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下溶媒を除去した後に得られる残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(溶出溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=98:2)することにより、目的物の1−N−[1−(4−(4−(メタクリルアミドブチル)ジメチルシリルフェニル)エチル]−5−メトキシカルボニル−1H−イミダゾール(モノマー前駆体化合物)を得た。(590mg,1.38mmol,収率83%)。
Figure 0006170368
H‐NMR(400MHz,CDCl):δ 7.82(s,1H,H−a),7.80(s,1H,H−b),7.48−7.46(d,2H,H−f,J=7.2Hz),7.19−7.16(d,2H,H−g,J=7.2Hz),6.40−6.35(q,1H,H−d,J=7.3Hz),5.71(m,1H,H−m),5.62(s,1H,H−p),5.28(s,1H,H−o),3.83(s,3H,H−c),3.30−3.25(dt,2H,H−l,J=6.6Hz),1.94(s,3H,H−n),1.53−1.51(tt,2H,H−k,J=7.2Hz),1.36−1.30(m,2H,H−j,J=3.9Hz),0.77−0.73(m,2H,H−i),0.24(s,6H,H−h);
13C‐NMR(100MHz,CDCl):δ 168,24,160.38,141.32,140.13,138.99,137.73,133.84,125.34,122.19,118.64,55.04,51.17,38.96,32.92,21.82,18.46,15.04,−3.35;
FT−IR(neat):3324,2953,1714,1660,1622,1539,1437,1362,1248,1219,1133,1113,1052,922,838,767,733,673,538(cm−1);
HRMS(ESI−TOF) calcd. for C2333Si[M+H] 428.2369,found 428.2392。
(実施例2)ポリマー前駆体化合物の合成
下記スキームに従い、実施例1で合成したモノマー前駆体化合物を用いて、IMTOのポリマー前駆体化合物を合成した。
Figure 0006170368
モノマー前駆体化合物(580mg,1.36mmol,1.00等量)をトルエン(1.24mL)に溶解させ、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN;11.2mg,0.0670mol,0.0500等量)と加えた。この混合溶液を、3回冷凍脱気した後に、液体窒素で凍結し、その後、65℃まで加熱し24時間反応させた。反応溶液の温度を室温にした後に、ヘキサンに注いだ。得られた個体を塩化メチレンに溶解させたのち、シリカゲルカラムカラムクロマトグラフィーを通した。塩化メチレン溶液で溶出したものをあつめて、再度、ヘキサンを用いて固化させることにより、目的とするポリマー前駆体化合物を得た(282mg,0.661mmol,収率49%、重合度(n)20)。
Figure 0006170368
H‐NMR(400MHz,CDCl):δ 7.91−7.76(br,1H,H−a),7.71(s,1H,H−b),7.47−7.38(br,2H,H−f),7.18−7.10(br,2H,H−g),6.35−6.27(br,1H,H−d),5.07(m,1H,H−m),3.72(s,3H,H−c),3.14−2.90(br,2H,H−l),1.87−1.77(br,3H,H−e),1.64−1.36(br,2H,H−k),1.36−1.20(br,5H,H−j,n),0.90−0.89(br,2H,H−o),0.73−0.62(br,2H,H−i),0.23−0.13(br,6H,H−h);
13C‐NMR(100MHz,CDCl):δ 160.65,142.22,140.19,139.16,137.93,134.11,128.23,125.62,122.45,77.62,45.27,39.82,31.67,22.73,22.05,21.68,15.33,13.94,−3.15;
FT−IR(neat):2945,2328,1705,1456,1360,1225,1114,1003,918,659,558(cm−1)。
(実施例3)ポリマー前駆体化合物を用いたヨウ素化実験
下記スキームに従い、実施例2で合成したポリマー前駆体化合物を用いて、IMTOを合成した。
Figure 0006170368
ポリマー前駆体化合物(20.0mg,0.0469mmol,1.00等量)のトリフルオロ酢酸溶液(469μL)に、ヨウ化ナトリウム(NaI;7.03mg,0.0469mmol,1.00等量)とN‐クロロコハク酸イミド(NCS;18.8mg,0.141mmol,3.0等量)を加えた。40℃で60分反応させた後、10%チオ硫酸ナトリウムと飽和炭酸水素ナトリウムとを1:1で混合させた水溶液中に反応溶液を注ぐことにより、反応を停止させた。有機層のみ減圧下濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成した。まず、塩化メチレンのみで溶出させることにより、ポリマー前駆体化合物を溶出させた。溶出したポリマー前駆体化合物はTLCにて確認した(ヘキサン:酢酸エチル=1:1,Rf値:0−0.3)。さらに、溶出液:クロロホルム:メタノール=98:2で溶出することにより、目的化合物のIMTOを得た(13.4mg,0.0376 mmol、80%)。
Figure 0006170368

1−N−[1−(4−ヨードフェニル)エチル]−5−メトキシカルボニル−1H−イミダゾール(IMTO)
H‐NMR(400MHz,CDCl):δ 7.91−7.86(m,1H,H−a),7.80(s,1H,H−b),7.69−7.66(d,2H,H−g,J=8.3Hz),6.93−6.91(d,2H,H−f,J=8.3Hz),6.33−6.30(q,1H,H−d,J=7.1Hz),3.81(s,3H,H−c),1.86−1.84(d,3H,H−e,J=7.2Hz);
13C‐NMR(100MHz,CDCl):δ 161.36,140.94,139.46,138.13,127.89,122.18,93.38,54.81,51.31,21.90;
FT−IR(neat):3419,3126,2984,2950,1715,1538,1488,1436,1362,1221,1134,1112,1064,1007,660,525(cm−1);
mp:69−71℃;
HRMS(ESI−TOF) calcd. for C1313IN[M+H] 357.0100, found 357.0093。
(実施例4)ポリマー前駆体化合物を用いた放射性ヨウ素標識実験[1]
下記スキームに従い、実施例2で合成したポリマー前駆体化合物を用いて、123I−IMTOを合成した。
Figure 0006170368
実施例2で得られたポリマー前駆体化合物1mgにトリフルオロ酢酸50μL、5mg/mLの濃度のN−クロロこはく酸イミド50μL、325MBqの[123I]ヨウ化ナトリウム20μLを添加した。当該混合液を40℃にて1時間静置した。反応終了後、ジクロロメタン15mLを加えた後、PS−DIEA(商品名、バイオタージ・ジャパン社製)400mgを加え、室温にて5分間静置した。
当該混合液を順相カラム(商品名:Sep−Pak(登録商標)Plus Silica Long Cartridges、Waters社製、充填剤の充填量695mg)に通液し、123I−IMTO及びポリマー前駆体化合物を当該カラムに吸着捕集した。このカラムをジクロロメタン20mLで洗浄してポリマー前駆体化合物を溶出させた後、メタノール/ジクロロメタン混=9/1混合溶液10mLを通液して、123I−IMTOを溶出させた。得られた溶液にアルゴンガスを吹き付け蒸散させた後、エタノール2mLを加えた。得られた放射能量は合成直後において154.1MBqであった。また、下記の条件によるTLC分析を行ったところ、その放射化学的純度は95.35%であった。
TLC分析条件:
TLCプレート:Silica Gel 60 F254(製品名、メルク社製)
展開相:ヘキサン/酢酸エチルメタノール=2/3
検出器:GitaStar(製品名、raytest社製)
(実施例5)[ 123 I]ヨウ素化反応時間の検討
実施例2で得られたポリマー前駆体化合物1mgにトリフルオロ酢酸200μL、10mg/mLの濃度のN−クロロこはく酸イミド100μL、370MBqの[123I]ヨウ化ナトリウム25μLを添加した。当該混合液を40℃にて静置し10分、20分、30分、60分後に当該混液から10μLずつ採取し、30%ピロ亜硫酸ナトリウム溶液500μLで反応を停止した後、下記の条件によるTLC分析を行い、[123I]ヨウ素化率を算出した。結果を表2及び図1に示す。この結果から、放射性ヨウ素化反応時間は10分以上が好ましく、60分以上がより好ましいことがわかる。
TLC分析条件:
TLCプレート:Silica Gel 60 F254(製品名、メルク社製)
展開相:ヘキサン/酢酸エチル=2/3
検出器:GitaStar(製品名、raytest社製)
Figure 0006170368
(実施例6)ポリマー前駆体化合物を用いた放射性ヨウ素標識実験[2]
実施例2で得られたポリマー前駆体化合物1mgにエタノール60μL、1mol/L塩酸190μL、329MBqの[123I]ヨウ化ナトリウム10μL、30%過酸化水素10μLを添加した。当該混合液を80℃にて静置し30分、60分後に当該混液から10μLずつ採取し、30%ピロ亜硫酸ナトリウム溶液500μLで反応を停止した後、下記の条件によるTLC分析を行い、[123I]ヨウ素化率を算出した。結果を表3に示す。この結果から、酸化剤としては、N−クロロこはく酸イミド、過酸化水素を用いることができるが、N−クロロこはく酸イミドがより好ましいことがわかる
TLC分析条件:
TLCプレート:Silica Gel 60 F254(製品名、メルク社製)
展開相:ヘキサン/酢酸エチルメタノール=2/3
検出器:GitaStar(製品名、raytest社製)
Figure 0006170368
(比較例1)アレンモノマーを用いた前駆体化合物の合成
実施例1のビニルモノマーに変えてアレンモノマーを用いたモノマー前駆体化合物を合成し、下記スキームに従い重合を検討した。AllylOCOCF3とNi(COD)2を窒素雰囲気下混合し、πアリールニッケルを形成したのち、モノマーを導入したが、重合は十分に進行しなかった。
Figure 0006170368
本発明は、置換または非置換のアリール化合物の芳香族環にヨウ素置換基を結合させてヨウ化するために利用でき、特に、アリール化合物の芳香族環を放射性ヨウ素標識するのに有用であり、放射性ヨウ素標識された放射線医薬品の製造に広く利用できる。

Claims (9)

  1. ヨウ化物イオンと反応させて有機ヨウ素化合物を製造するために用いられるポリマー前駆体化合物であって、
    下記式(1)
    Figure 0006170368

    (式中、MはSi、Sn又はGeを表し、Lは下記式(L1)
    Figure 0006170368

    (式中、XはO又はNHを表わし、pは1〜10の整数を表わす。)
    を表し、
    は水素又はメチル基、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Arは、前記有機ヨウ素化合物の残基であって、置換又は非置換のアリール基を表す。)
    で表わされるモノマー前駆体化合物を重合させて形成されるポリマー前駆体化合物。
  2. ヨウ化物イオンと反応させて有機ヨウ素化合物を製造するために用いられるポリマー前駆体化合物であって、
    下記式(2):
    Figure 0006170368

    (式中、MはSi、Sn又はGeを表し、Lは下記式(L1)
    Figure 0006170368

    (式中、XはO又はNHを表わし、pは1〜10の整数を表わす。)
    を表し、
    は水素又はメチル基、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Arは、前記有機ヨウ素化合物の残基であって、置換又は非置換のアリール基を表す。)
    で表わされる構造単位を含むポリマー前駆体化合物。
  3. Arで表わされる置換アリール基はエチレン性不飽和二重結合を有しない、請求項1又は2に記載のポリマー前駆体化合物。
  4. 前記式(1)中、Arは、窒素原子を含む複素環を有する置換基で置換されたアリール基を表す、請求項1乃至の何れか1項に記載のポリマー前駆体化合物。
  5. 前記ヨウ化物イオンが、放射性ヨウ化物イオンである、請求項1乃至の何れか1項に記載のポリマー前駆体化合物。
  6. 請求項1乃至の何れか1項に記載のポリマー前駆体化合物を、ヨウ化物イオンと反応させ、式(3):
    Figure 0006170368

    (式中、Arは置換又は非置換のアリール基を表す。)
    で表わされるヨウ化アリール化合物を前記ポリマー前駆体化合物から切り出すことを含む、ヨウ化アリール化合物の製造方法。
  7. 前記反応で得られたヨウ化アリール化合物を、前記反応によりヨウ化アリール化合物が切り出された前記ポリマー前駆体化合物の残余部分及び未反応のポリマー前駆体化合物から、両者の溶解度差を利用した方法で分離して回収する、請求項に記載の方法。
  8. 下記式(1)
    Figure 0006170368

    (式中、MはSi、Sn又はGeを表し、Lは下記式(L1)
    Figure 0006170368

    (式中、XはO又はNHを表わし、pは1〜10の整数を表わす。)
    を表し、
    は水素又はメチル基、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Arは置換又は非置換のアリール基を表す。)
    で表わされるモノマー前駆体化合物。
  9. 下記式(2):
    Figure 0006170368

    (式中、MはSi、Sn又はGeを表し、Lは下記式(L1)
    Figure 0006170368

    (式中、XはO又はNHを表わし、pは1〜10の整数を表わす。)
    を表し、
    は水素又はメチル基、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Arは置換又は非置換のアリール基を表す。)
    で表わされる構造単位を含むポリマー前駆体化合物。
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