JP4224315B2 - フルオラス性を利用した回収容易なアミン類 - Google Patents

フルオラス性を利用した回収容易なアミン類 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術】
本発明は、有機合成化学およびフルオラスケミストリーで使用するアミン類に関するものであり、さらに詳しくは、精密有機合成に不可欠な2級アミンをフルオラス溶媒による溶媒抽出だけで回収し、再利用が可能となる高度にフッ素化されたアミン類に関する。従来、アミン類は、そのまま廃棄されるか、あるいは煩雑、高コストの回収操作が必要であった。
【0002】
【従来の技術】
精密有機合成において不可欠なリチウムジイソプロピルアミド(LDA)等の発生に必要な2級アミンは、これまで反応終了後の処理に問題があった。アミン類は反応終了後、系を塩基性にして抽出するか、蒸留して回収しているが、操作が煩雑である。また塩基性廃液が発生し、その処理などにコストがかかる。アミンが水溶性で安価な場合、そのまま下水へ廃棄することもあるが、環境や資源の有効活用(Molecular Economics)の観点から見ても問題である。有機合成の精密化に伴い、ファインチューニングされたアミンが合成研究のレベルでは数多く見いだされているが、回収・再利用の困難さから工業化できていないものが多いのが現状である。
【0003】
ところで、最近、フルオラスケミストリーという分野が開拓されてきた。「フルオラス」とは、親水性(aqueous)を真似て作られた言葉で、「親フルオロカーボン性の」という意味である。多数のフッ素原子で置換されたフルオロカーボンは、ほかの一般的な有機溶媒や水に殆ど溶けないが、フルオラス溶媒には良く溶ける。この性質を利用する化学である。この概念については、カレンら(D.P.Curran)の特許に開示されている(特許文献1参照)。一般的には、フルオラス性を持たせるために、フルオラスタグを結合する。
また、フルオラス性の尺度として有機相/フルオラス相の分配係数がよく用いられている。一般に、化合物に対するフッ素原子の割合を高めるとフルオラス性は増大し、フルオラス溶媒への溶解度は高まるが、細かく見るとフッ素原子の割合が同じであっても置換基等によって有機相/フルオラス相の分配係数は大きく異なり、構造とフルオラス性の関連は経験則の域を出ておらず一概には言えない。
【0004】
これまでにフルオラス溶媒で回収可能なリチウムアミドを発生させるジイソプロピルアミン(LDAH)型のアミンについては、本発明者らによる4-ペルフルオロオクチル-2-ブチル-2-プロピルアミンが開示されているが(非特許文献1参照)、この化合物はリチウムアミド発生条件(−78℃、ブチルリチウム)で一部分解するという欠点があり、改良が必要であった。
【0005】
なお、本明細書においては、フルオラスタグを結合したリチウムアミド類をF-LDA、その発生剤となるアミン類をフルオラスアミンと称し、F-LDAHと略す。フルオラスタグを結合することによりフルオラス溶媒で回収が可能となる。フルオラスタグとは、ペルフルオロ置換基である。
【0006】
【特許文献1】
国際公開98/00376号パンフレット。
【非特許文献1】
「フルオラスLDAの合成と反応」、日本化学会第81回春季年会予稿集II, 2002年3月、p.1172。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
精密有機合成において不可欠なリチウムジイソプロピルアミド(LDA)発生剤である2級アミンのジイソプロピルアミン(LDAH)を代替することが出来るフルオラス溶媒で回収が容易なアミン類(F-LDAH)を提供することである。回収が容易である化合物は、環境や資源の有効利用の観点から今後ますます重要になってくるものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、ジイソプロピルアミンの持つ塩基性や立体障害に伴う低い求核性を維持したまま、フルオラス溶媒によって抽出、回収できるようにするためのフルオラスタグを導入することについて鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記一般式(I)で表されるアミン類である。
【化4】
Figure 0004224315
(式中、Rはメチル基または下式
【化5】
Figure 0004224315
であり、Rf、R'fは互いに独立して炭素数6-16のペルフルオロ置換基を表す。m、nは互いに独立して1または2である。)
これらの化合物は、リチウムアミド発生剤であり、フルオラス溶媒で回収することが出来る。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明では精密有機合成に不可欠なリチウムアミド発生剤である2級アミン、ジイソプロピルアミンを代替し、フルオラス溶媒によって抽出、回収できるようにするため、フルオラスタグを導入した。この際、ジイソプロピルアミンの持つ塩基性や立体障害に伴う低い求核性を維持したまま、フルオラス性を高める必要があった。そのため、(1)2級アミンであること、(2)アミンα位に分岐があること、(3)リチウムアミド発生条件(−70℃から−100℃、ブチルリチウム)で分解しないこと、を満たす化合物を分子設計、合成した。
【0011】
既知化合物4-ペルフルオロオクチル-2-ブチル-2-プロピルアミンの分解を防ぐための工夫として、フルオラスタグの変更、メチレン基の導入によるフルオラスタグとアミン部とのスペース拡大等を検討した。しかしながら、いずれの場合にも反応性が低下し、問題の解決には至らなかった。また、リチウムアミド発生の際の技術的な事項、例えばブチルリチウムの滴下速度や反応溶媒、試薬濃度、反応温度、撹拌効率などについて再度詳細に検討したが、同様に4-ペルフルオロオクチル-2-ブチル-2-プロピルアミンの分解を抑えることは出来なかった。
【0012】
本発明者たちは、経験的にベンゼン環の導入はフッ素原子の割合を大幅に低下させることにつながり、フルオラス性の維持には不利であると考えていた。しかしながら、置換基によってフッ素原子のフルオラス性への寄与は大きく異なることから、ベンゼン環のフルオラス性への影響について検討する必要があるとの認識に達した。実際、ヘキサフルオロベンゼンなどの分配係数を測定したところ、母核のベンゼンと異なり、大きなフルオラス性を有していることが分かった。このような経緯を経て、ベンゼン環にフルオラスタグを有するリチウムアミド発生アミン(フルオラスアミン)である一般式(I)の設計・合成に至った。
【0013】
一般式(I)において、Rf、R'fはともにフルオラスタグであり、互いに独立してペルフルオロ置換基であれば何でも良い。ペルフルオロ置換基は大きいほどフルオラス性が増して好ましいが、取り扱い、入手のしやすさから炭素数6-16のペルフルオロアルキル基が適当であり、これらは鎖状でも環状でも分岐していても構わない。特に好ましいのはペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロデシル基、ペルフルオロシクロヘキシル基である。
フルオラスタグのベンゼン環への結合位置は限定されないが、m、nが1の時はアミノ基が結合したアルキル基に対してオルト位、パラ位が好ましく、m、nが2の時はアミノ基が結合したアルキル基に対してメタ位が好ましい。
Rは、メチル基またはフルオラスタグを結合したフェニル基である。
フルオラスタグは1本でも十分フルオラス性を高めるが、2本以上あればさらにフルオラス性が高まる。
【0014】
また、一般式(I)には立体異性体が存在するが、ラセミ体、メソ体、光学活性体、これらの混合物等いずれでも構わない。キラル化合物であれば立体選択的にエノラートを発生できるキラルのリチウムアミド発生剤が得られる。
一般式(I)で表わされるフルオラスアミンとしては、例えば4{1-(2-プロピルアミノ)エチル}-Rf-ベンゼン、3,5-ジRf -{1-(2-プロピルアミノ)エチル}-ベンゼン、ジ{1-(4-Rf-フェニル)エチル}アミン、ジ{1-(3,5-ジRfフェニル)エチル}アミン等が挙げられる(Rfはフルオラスタグである)。
【0015】
本発明の化合物はそれ自体公知の類似方法によって製造される。
どのような方法によっても構わないが、例えばハロゲン化エチルベンゼン、ハロゲン化アセトフェノン等を出発原料として合成することが出来る。
McLoughlinらのTetrahedron, 1969, 25, 5921に記載の金属銅を用いる方法によって、ハロゲン置換したベンゼン環にフルオラスタグを導入することができる(第1工程)。フルオラスタグを導入したエチルベンゼンを、KalirらのOrganic Synthesis Collective Volume 5, Wiley, NewYork, 1973, 825に記載のラジカル臭素化の反応でエチル基α位を臭素化して活性化する(第2工程)。また、フルオラスタグを導入したアセトフェノンに、KuzmenkoらによるJ. Am. Chem. Soc., 1999, 121, 2657記載の還元的アミノ化法によってアミノ基を導入する(第3工程)。そしてこれらを原料に、SandlerらのOrganic Functional Group Preparations Second edition, Academic Press, NewYork, 1983, 380に記載のアミノ基をアルキル化する方法を用いればフルオラスアミンを合成(第4工程)することが出来る。
【0016】
(第1工程 フルオラスタグの導入)ハロゲン化エチルベンゼンまたはハロゲン化アセトフェノンと、ヨウ化ペルフルオロアルキル、金属銅を有機溶媒中で反応させる。不溶物を除去した後、有機溶媒で抽出し、水系溶媒で洗浄後、乾燥、濃縮してカラムクロマトグラフィーで単離する。
ハロゲン化エチルベンゼンまたはハロゲン化アセトフェノンにおいて、ハロゲンの置換位置は限定されない。ベンゼン環の水素を置換するものであれば何でも良いが、一般的には1置換体の時はエチル基またはアセチル基に対してパラ位かオルト位であり、2置換体の時はエチル基またはアセチル基に対してメタ位である。ハロゲンとしては、特にヨードが好ましい。
フルオラスタグには、ヨウ化ペルフルオロアルキルが使用できる。例えば、ペルフルオロヨードヘキサン、ペルフルオロヨードオクタン、ペルフルオロヨードデカン、ペルフルオロヨードシクロヘキサンなどが挙げられる。ハロゲン化エチルベンゼン等に対して、1.0-1.5当量、好ましくは1.3当量使用する。
【0017】
反応溶媒は、高沸点の非プロトン性極性溶媒が反応系中生成する銅化合物の溶解性の面から適しており、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。好ましくはジメチルスルホキシドである。
金属銅は好ましくは200メッシュ以上の細粒か粉末状のものを用いる。ハロゲン化エチルベンゼン等に対して2.5-4当量、好ましくは3.3当量使用する。
2,2'−ジピリジルは、無しでも反応するが反応を加速させるために、触媒量加えることが出来る。好ましくは20mol%である。
反応温度は、100℃−200℃で、好ましくは180℃であり、反応時間は、6時間から60時間で、好ましくは36時間−48時間である。
不溶物を濾過して除く際、濾過助剤としてハイフロスーパーセルやセライトを使用することが出来る。
【0018】
抽出用溶媒は、特に限定されないが、例えばジエチルエーテル、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、クロロホルム等が挙げられ、特にジエチルエーテルが好ましい。
有機相の洗浄用水系溶媒としては、水または食塩水を使用できるが、好ましくは飽和食塩水である。
乾燥剤としては、特に限定しないが、例えば、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム、無水炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化カルシウム、モレキュラーシーブ等が挙げられ、好ましくは無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウムである。
カラムクロマトグラフィーは、固定相としてシリカゲル、アルミナを、移動相としてヘキサン、クロロホルム、エーテル、メタノール等を使用できるが、固定相にはシリカゲル、移動相にはヘキサンとメタノールが好ましい。
【0019】
(第2工程 エチル基α位の臭素化による活性化)第1工程で得られたフルオラスタグ導入後のエチルベンゼン誘導体のエチル基を臭素化する。
臭素化剤としては、特に限定されないが、例えばN−ブロモスクシンイミド等が挙げられる。エチルベンゼン誘導体に対して1.0-1.5当量、好ましくは1.2当量使用する。
ラジカル開始剤は無しでも反応は進行するが、例えば過酸化ベンゾイル、N,N'-アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられ、触媒量の過酸化ベンゾイルを添加するのが好ましい。
反応溶媒は、クロロホルム、ベンゼン、四塩化炭素等が挙げられ、四塩化炭素またはベンゼンが好ましい。
反応温度は60−80℃、4−24時間反応させるが、好ましくは、12時間である。
精製用カラムクロマトグラフィーは、固定相:シリカゲル、アルミナ、移動相:ヘキサン、クロロホルム、エーテル、メタノール等を使用することが出来、固定相にはシリカゲル、移動相にはヘキサン、クロロホルム、エーテルが好ましい。
【0020】
(第3工程 ケトンの還元的アミノ化) 第1工程によりフルオラスタグを導入したアセトフェノンのケトン基を還元しつつ、アミノ化する。
アミノ源としてはアンモニウム塩であれば特に限定されないが、酸性度と溶媒への溶解性の面から酢酸アンモニウムが好ましい。また還元剤も特に限定されないが、反応性が穏やかで溶解性にも優れるシアノホウ素化ナトリウムが好ましい。溶媒は特に限定されないが、還元剤との相性と基質の溶解性からメタノールが好ましい。
反応温度は、50−80℃で、60℃が好ましく、反応時間は、12時間から48時間で、24時間が好ましい。
使用する酸は特に限定されないが、取り扱いが容易で他の官能基に影響のない6M-塩酸が好ましい。また塩基及びその濃度は、特に限定されないが、フルオラスタグと反応しない10%水酸化ナトリウムが好ましい。
抽出用溶媒は、特に限定されないが、例えばジエチルエーテル、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、クロロホルム等が挙げられ、特にジエチルエーテルが好ましい。
乾燥剤としては、特に限定しないが、例えば、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム、無水炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化カルシウム、モレキュラーシーブ等が挙げられ、好ましくは無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウムである。
【0021】
(第4工程 本発明のフルオラスアミンの合成)
磁気撹拌子を備えた耐圧反応容器に第2工程で得られたαブロモエチルベンゼン誘導体と、イソプロピルアミンまたは第3工程により合成したアミン、塩基を入れ溶媒を加えて溶解させた後、アミンが低沸点の場合密閉して反応させ、冷却後水と有機溶媒で分液し有機相を洗浄、乾燥後、濃縮して減圧蒸留によって本発明のフルオラスアミンを得る。
耐圧反応容器はガラス製オートクレーブ、ステンレス製オートクレーブ、耐圧フラスコ、封緘チューブ等を使用できるがオートクレーブが好ましい。
イソプロピルアミンは、エチルベンゼン誘導体に対して2-10当量、好ましくは5当量使用する。しかしその他のアミンを使用する際は化学量論比の1当量でも構わない。
溶媒はとくに限定はされないが、原料の溶解度が高いアセトニトリルが好ましい。
塩基は特に限定されないが、溶媒と反応せず、副反応を起こさない、無水炭酸カリウムが好ましい。
反応温度は60−80℃で、75℃付近が好ましく、反応時間は6−48時間で、24時間が好ましい。
抽出用溶媒は、ジエチルエーテル、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、クロロホルム等が挙げられ、特にジエチルエーテルが好ましい。
有機相の洗浄には水または食塩水を使用するが、飽和食塩水が好ましい。
乾燥剤は、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウムが好ましい。
【0022】
また、第4工程として、第3工程で得られたアミンとヨウ化イソプロピルまたは臭化イソプロピルを反応させることも出来る。
【0023】
フルオラス溶媒による回収率の判定材料として、有機溶媒とフルオラス溶媒の混合物に合成した本発明のフルオラスアミンを加え、10分間激しく撹拌した後、5分静置し、2相を分離して、それぞれ濃縮した後、残ったフルオラスアミンを秤量し、その重量比から分配係数を算出した。
また、n−ブチルリチウムを作用させてリチウムアミドとし、各種カルボニル化合物にエノラートを生成させることができるかどうかチェックした。
【0024】
【発明の効果】
有機合成の精密化に伴い、ファインチューニングされたアミンが合成研究のレベルでは数多く見いだされているが、回収・再利用の困難さから工業化できていないものが多いが、本発明の化合物を使用することによって、回収・再利用が容易となり、工業化に対応出来る。また、新たに立体選択的反応性が付け加わることにより、合成用試薬としても有望である。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何等制限を受けるものではない。
【0026】
【実施例1】
4-エチルペルフルオロオクチルベンゼン(中間体)の合成。
磁気撹拌子と還流冷却器、および温度計を備え付けた反応フラスコ(Top社製)に、ジメチルスルホキシド40ml、4-ヨウ化エチルベンゼン11.60g(50mmol)、ペルフルオロヨードオクタン35.62g(65mmol)、2,2'-ジピリジル1.56g(10mmol)、金属銅10.48gを加え、180℃にて40時間反応させた。反応終了後室温まで冷却し、ハイフロスーパーセルを用いて不溶物を濾過して除いた。母液に水100mlとジエチルエーテル100mlを加えて撹拌し、有機相を分離した。水相はジエチルエーテルで3回抽出し、有機相を合わせて食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾去して濃縮後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:メタノール=95:5(v/v))にて単離、精製し、4-エチルペルフルオロオクチルベンゼン14.05g(26.8mmol)を得た(収率54%)。
1H-NMR(CDCl3、500MHz) δ1.26 (3H, t, J=7.3Hz), 2.71 (2H, q, J=7.3Hz), 7.33 (2H, d, J=8.3Hz), 7.52 (2H, d, J=8.3Hz). 13C-NMR(CDCl3、125MHz)δ15.08, 28.74, 126.37, 126.57, 128.10, 148.56 (フッ素の置換した炭素はフッ素とのカップリングにより108-119にかけて弱い多重線として観測される).
【0027】
【実施例2】
4−(1−ブロモエチル)ペルフルオロオクチルベンゼン(中間体)の合成。
磁気撹拌子と還流冷却器、および温度計を備え付けた反応フラスコにベンゼン40ml、実施例1で得られた4−エチルペルフルオロオクチルベンゼン11.00g(21.0mmol)、N−ブロモスクシンイミド4.48g(25.2mmol)、過酸化ベンゾイル120mg(0.5mmol)を順次加えて、70℃にて12時間反応させた。反応終了後室温まで冷却し不溶物を濾過して除いた。母液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム=80:20(v/v))により単離、精製し、4−(1−ブロモエチル)ペルフルオロオクチルベンゼン10.19g(16.9mmol)を得た(収率80%)。
1H-NMR(CDCl3、500MHz) δ2.06 (3H, d, J=7.3Hz), 5.21 (1H, q, J=7.3Hz), 7.63 (4H, s).
【0028】
【実施例3】
4-ペルフルオロオクチルアセトフェノン(中間体)の合成。
磁気撹拌子と還流冷却器、および温度計を備え付けた反応フラスコに、ジメチルスルホキシド40ml、4-ヨウ化アセトフェノン12.30g(50mmol)、ペルフルオロヨードオクタン35.62g(65mmol)、2,2'-ジピリジル1.56g(10mmol)、金属銅10.48gを加え、180℃にて40時間反応させた。反応終了後室温まで冷却し、ハイフロスーパーセルを用いて不溶物を濾過して除いた。母液に水100mlとジエチルエーテル100mlを加えて撹拌し、有機相を分離した。水相はジエチルエーテルで3回抽出し、有機相を合わせて食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾去して濃縮後、減圧蒸留にて単離、精製し、4-ペルフルオロオクチルアセトフェノン17.64g(33.78mmol)を得た(収率66%)。沸点50-55℃/1mmHg。
1H-NMR(CDCl3、500MHz) δ2.65 (3H, s), 7.70 (2H, d, J=8.1Hz), 8.07 (2H, d, J=8.1Hz). 13C-NMR(CDCl3、125MHz)δ26.78, 127.30, 128.38, 133.00, 139.78, 196.92 (フッ素の置換した炭素はフッ素とのカップリングにより108-119にかけて弱い多重線として観測される).
【0029】
【実施例4】
4-(1-アミノエチル)-ペルフルオロオクチルベンゼン(中間体)の合成。
磁気撹拌子と還流冷却器、および温度計を備え付けた反応フラスコに、無水メタノール80ml、実施例3で得られた4-ペルフルオロオクチルアセトフェノン5.00g(9.3mmol)、酢酸アンモニウム6.05g(78.5mmol)、シアノホウ素化ナトリウム0.40g (6.3mmol)を加え、60℃にて24時間反応させた。反応終了後室温まで冷却し、6M-塩酸を加えて強酸性(pH<1)とし、濃縮した。得られた結晶を水洗後、10%水酸化ナトリウム溶液(50ml)に溶解させ、ジエチルエーテルにて抽出した。エーテル溶液を水と飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を除き、濃縮後、減圧蒸留によって精製し、4-(1-アミノエチル)-ペルフルオロオクチルベンゼン2.42g(4.5mmol)を得た(収率48%)。沸点150-155℃/1mmHg。
1H-NMR(CDCl3、500MHz) δ1.40 (3H, d, J=6.9Hz), 4.19 (1H, q, J=6.9Hz), 7.50 (2H, d, J=8.2Hz), 7.54 (2H, d, J=8.2Hz). 13C-NMR(CDCl3、125MHz)δ25.70, 51.00, 126.04, 127.04, 128.83, 133.00, 151.94 (フッ素の置換した炭素はフッ素とのカップリングにより108-119にかけて弱い多重線として観測される).
【0030】
【実施例5】
4{1-(2-プロピルアミノ)エチル}ペルフルオロオクチルベンゼンの合成。
磁気撹拌子を備えた容量100mlのステンレス製オートクレーブ(Taiatsu社製)に実施例2で得られた4−(1−ブロモエチル)ペルフルオロオクチルベンゼン10.18g(16.9mmol)とイソプロピルアミン5.00g(84.6mmol)、無水炭酸カリウム2.34g(16.9mmol)を入れ、アセトニトリル30mlを加えて溶解させた。容器を密閉し、75℃にて24時間反応させた。反応終了後室温まで冷却し、水50mlとジエチルエーテル50mlを加えて撹拌し、有機相を分離した。水相はジエチルエーテルで3回抽出し、有機相を合わせて食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾去し、濃縮後、減圧蒸留によって4{1-(2-プロピルアミノ)エチル}ペルフルオロオクチルベンゼンを単離、精製した。8.35g(収率85%)。沸点95-105℃/3mmHg。
1H-NMR(CDCl3、500MHz) δ1.04 (3H, d, J=7.4Hz), 1.17 (3H, d, J=7.4Hz), 1.35 (3H, d, J=7.3Hz), 2.61 (1H, m), 3.97 (1H, q, J=7.3Hz), 7.53 (2H, d, J=8.2Hz), 7.57 (2H, d, J=8.2Hz).13C-NMR(CDCl3、125MHz) δ23.97, 24.64, 24.82, 46.01, 56.74, 126.73, 126.97, 133.60, 150.81 (フッ素の置換した炭素はフッ素とのカップリングにより108-119にかけて弱い多重線として観測される).
IR (neat) 3310(NH), 2950(CH), 2860(CH), 1510(NH), 1200(CF).HRMS (FAB) 891.16(理論値890.96)
【0031】
【実施例6】
ジ{1-(4-ペルフルオロオクチルフェニル)エチル}アミンの合成。
磁気撹拌子を備えた容量100mlのステンレス製オートクレーブに、実施例4で得られた4-(1-アミノエチル)-ペルフルオロオクチルベンゼン2.32g(4.3mmol)、実施例2で得られた4-(1-ブロモエチル)ペルフルオロオクチルベンゼン2.59g(4.3mmol)、無水炭酸カリウム0.60g(4.3mmol)を入れ、アセトニトリル20mlを加えたのち、75℃にて24時間反応させた。反応終了後室温まで冷却し、水50mlとジエチルエーテル50mlを加えて撹拌し、有機相を分離した。水相はジエチルエーテルで3回抽出し、有機相を合わせて食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾去し、濃縮後、減圧蒸留によってジ{1-(4-ペルフルオロオクチルフェニル)エチル}アミンを単離、精製した。収量2.91g (2.8mmol)、収率65%。
1H-NMR(CDCl3、500MHz) d 1.35 (6H, d, J = 7.2Hz), 3.57 (1H, bs), 3.84 (bs, 2H), 7.44 (4H, d, J=8.1Hz), 7.54 (4H, d, J=8.1Hz).
【0032】
【実施例7】
分配係数の測定。
有機溶媒(アセトニトリル、ベンゼン、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、シクロヘキサン、アセトン、酢酸エチル、クロロホルム)3mLとペルフルオロヘキサン3mLの混合物に4{1-(2-プロピルアミノ)エチル}ペルフルオロオクチルベンゼン300mgを加え、10分間激しく撹拌した。5分静置した後、2相を分離し、それぞれ濃縮した。残った4{1-(2-プロピルアミノ)エチル}ペルフルオロオクチルベンゼンを秤量し、その重量比から分配係数を算出した。
【0033】
【表1】
Figure 0004224315
【0034】
【実施例8】
エノラートの生成。
30 mlの三つ口フラスコに低温温度計とセプタムゴムを取り付け、真空ポンプでフラスコ内の空気を完全に脱気した後、窒素置換した。次に、4{1-(2-プロピルアミノ)エチル}ペルフルオロオクチルベンゼン(F-LDAH)、蒸留したテトラヒドロフラン(20ml)を注射器を用いて、室温で加えた(溶液の色は薄黄色)。5分ほど攪拌した後、−78℃に冷却し、n-ブチルリチウムを壁面を伝うようにして15分かけて加えた(溶液の色は黒色に変化)。10分ほど攪拌して、基質をゆっくり加えた。その後、−78℃を保ったまま30分攪拌した。クロロトリメチルシラン(TMSCl)をゆっくり加え、その後、−78℃から室温まで自然昇温した。
反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mlを加え、ヘキサンで3回抽出した。この有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ヘキサンを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行った。ヘキサンで溶出することにより反応生成物であるエノールシリルエーテルが得られ、メタノールで溶出することにより4{1-(2-プロピルアミノ)エチル}ペルフルオロオクチルベンゼン(F-LDAH)が溶出した。得られたメタノール溶液を濃縮後、回収率を算出した(表2)。
また、カラムクロマトグラフィーの前段階において、ヘキサン溶液を濃縮し、ジクロロメタンを加えて溶解後、ペルフルオロヘキサン(FC-72)にて5回抽出することによっても、F-LDAHを回収することができた。
【0035】
【表2】
Figure 0004224315

Claims (3)

  1. 下記一般式(I)で表されるアミン類。
    Figure 0004224315
    (式中、Rはメチル基または下式
    Figure 0004224315
    であり、Rf、R‘fは互いに独立して炭素数6−16のペルフルオロアルキル基を表す。m、nは互いに独立して1または2である。)
  2. 下記一般式(II)で表されるアミン類。
    Figure 0004224315
    (式中、Rfは炭素数6−16のペルフルオロアルキル基を表す。)
  3. 請求項1または2に記載のアミン類からなるリチウムアミド発生剤。
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