JP6169694B2 - 放熱基板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、例えば車両の電気的制御機器や家庭用機器やLED部品又は産業用機器に使用される放熱基板及びその製造方法に関する。
電気回路における半導体素子は、高密度化や高電流化により発熱量が増加する傾向にある。特にSiを用いた半導体は周囲の温度が100℃以上になると誤動作、故障の原因となる。このような半導体素子等の発熱部品としては例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やIPM(Intelligent Power Module)等のスイッチング素子がある。
発熱部品を効果的に冷却するため、基板に対して部品の実装面とは反対側に放熱経路を形成した放熱基板が用いられている。具体的には、発熱部品から発生する熱を基板の背面側(部品搭載面(実装面)とは反対側)に伝導し、背面側にてヒートシンク等を用いて冷却している。
放熱経路の形成手法としては、例えば基板に形成された貫通孔内に熱伝導率の高い金属(Cu、Al等)からなる熱伝導体を配設し、この熱伝導体を貫通孔内に固定する方法がある。貫通孔への金属の固定は、圧入や塑性変形による密着、接着剤や半田による接合等で行われる(例えば特許文献1参照)。そして発熱部品の放熱は、熱伝導体を発熱部品と接続して部品から発生する熱を熱伝導体(例えば柱状の銅)を介して外部に放熱することで行われている。
しかしながら、熱伝導体を圧入によって貫通孔内に固定すると、圧入に伴って応力が生じるので、基板の絶縁層を形成しているプリプレグ(ガラスクロスとエポキシ樹脂からなる複合材料)にクラックが発生するおそれがある。
また、熱伝導体を塑性変形によって貫通孔内に固定すると、貫通孔内に挿入する際には熱伝導体の径を貫通孔の径よりも小さくし、挿入後に加圧により塑性変形させて固定することになる。このとき、熱伝導体と貫通孔との中心位置がずれていると、塑性変形後の熱伝導体と貫通孔との間に隙間が発生するおそれがある。また、熱伝導体の塑性変形を生じさせるための圧力が大きい場合、熱伝導体の径方向へ広がる塑性変形量が一定とは限らず、やはり熱伝導体と貫通孔との間に隙間が発生するおそれがある。このような隙間の存在は、発熱部品を実装させるために用いる半田が浸透することで実装のための半田不足を招き、歩留まりの低下及び接続信頼性の低下等の不具合を招く原因となる。また、隙間が発生していない部分では強い応力が基板に対して働くため、絶縁層破壊を招くおそれがある。
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、めっきを用いて熱伝導体を貫通孔内に固定し、且つ熱伝導体と貫通孔との間に隙間が生じることのない放熱基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明では、絶縁樹脂材料からなる絶縁層と、導電材料からなる導電層と、前記絶縁層及び前記導電層からなる基板本体と、該基板本体を貫通する貫通孔と、該貫通孔内に収容されている伝熱材料からなる熱伝導体と、前記貫通孔と前記熱伝導体との間に間隔として存する隙間部と、前記貫通孔に前記熱伝導体を固定するために前記隙間部にめっき処理によって形成された固定めっき部とを備え、前記隙間部は、前記熱伝導体の外周面とこれに対向する前記貫通孔の内壁面との間の間隔が非一定として形成され、最小間隔である最小部及び最大間隔である最大部とを有していることを特徴とする放熱基板を提供する。
好ましくは、前記貫通孔の内部空間及び前記熱伝導体は略円柱形状であり、前記最大部は、前記貫通孔の内壁面から前記貫通孔の貫通方向に沿って外側に膨出する略半円柱形状の突出部により形成されている。
また、本発明では、絶縁樹脂材料からなる絶縁層に導電材料からなる導電層が形成された基板本体を形成する基板本体形成工程と、前記基板本体を貫通する内部空間が略円柱形状の貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔内に金属からなる略円柱形状の熱伝導体を挿入して配する挿入工程と、前記熱伝導体を前記貫通孔内に保持した状態でめっき処理を施し、前記貫通孔と前記熱伝導体との間に間隔として存する隙間部にめっきからなる固定めっき部を形成する固定めっき工程とを備え、前記貫通孔形成工程にて、前記貫通孔の内壁面から前記貫通孔の貫通方向に沿って外側に膨出する略半円柱形状の突出部を複数形成することを特徴とする放熱基板の製造方法を提供する。
好ましくは、前記固定めっき工程にて、前記貫通孔の両端にめっき液が通過可能な多孔質体からなる保持具を配する。
本発明によれば、熱伝導体の外周面とこれに対向する貫通孔の内壁面との間の間隔が非一定として形成されるので、隙間部が最短間隔である最短部及び最大間隔である最大部とを有することになるので、固定めっき部を形成するためのめっき金属を最大部を介して十分に充填することができる。すなわち、めっき処理時にめっき液が最大部に流れ込むので確実に熱伝導体の周りにめっき金属を析出させることができる。さらに最大部を設けることで固定めっき部を介した熱伝導体と貫通孔との密着面積を増加させることができ、より強固な固定が可能となり、固定めっき部により確実に熱伝導体を貫通孔内に固定することができる。
また、貫通孔の内部空間及び熱伝導体を略円柱形状とし、さらに最大部を貫通孔の内壁面から貫通孔の貫通方向に沿って外側に膨出する略半円柱形状の突出部により形成することで、容易に突出部を形成することができるので、最大部を容易に形成できる。
図1のフローチャートを参照しながら本発明に係る放熱基板の製造方法について説明する。
基板本体形成工程(ステップS1)で、図2に示すような基板本体1を製造する。図2の例では、基板本体1はいわゆる4層基板であり、導体パターンとなっている導電材料からなる導電層2が絶縁層3を介して4層形成されている。詳しく言えば、絶縁層3の片面にのみ導電層2が形成されたいわゆる片面板4aを2枚用いて絶縁層3の両面に導電層2が形成されたいわゆる両面板4bを挟み込み、これを積層することで4層の多層板としている。ここで、絶縁層3は絶縁樹脂材料からなり、例えばプリプレグである。導電層2は導電材料からなり、例えば銅である。基板本体1は、この絶縁層3と導電層2とを積層していれば、その積層枚数は適宜選択可能である。
次に貫通孔形成工程(ステップS2)を行う。この工程では、図3に示すように、基板本体1を貫通する貫通孔5を形成する。この貫通孔5は、例えばドリルやレーザ等を用いて穿設される。穿設後の孔形状、すなわち貫通孔5の内部空間は略円柱形状である。なお、詳細な貫通孔形成工程については後述する固定めっき工程(ステップS5)にて説明する。
次にめっき工程(ステップS3)を行う。この工程では、貫通孔5が形成された基板本体1に対してめっき処理を施す。このめっき処理は基板本体1の全表面に対して施されるため、めっき処理によって析出するめっき膜6は、図4に示すように、基板本体1の両面と貫通孔5の内壁面に形成される。このように、めっき膜6は基板本体1及び貫通孔5の全面を覆うため、めっき処理後も外形としてはめっき膜6で覆われているが基板本体1及び貫通孔5と略同一である。したがって、基板本体1の表面や貫通孔5の内壁面に対してめっき膜6が介在した状態でも基板本体1の表面、貫通孔5の内壁面と称する場合がある。
次に挿入工程(ステップS4)を行う。この工程では、貫通孔5内に熱伝導体7が挿入される。したがって、図5に示すように、熱伝導体7は貫通孔5内に配された状態となる。熱伝導体7は、金属製の板材や棒材を機械加工して、略円柱形状とされて形成されている。具体的には、金属板を略円柱形状となるように打ち抜いたり、長尺の略円柱形状の棒材を適宜所定長さに切断して形成されている。熱伝導体7の材料としては、伝熱性を有する金属材料、例えば銅が用いられる。このとき、熱伝導体7の外周面と貫通孔5(図5の例では貫通孔5内のめっき膜6)の内壁面とは離間し、隙間部8が形成されている。
次に固定めっき工程(ステップS5)を行う。この工程では、熱伝導体7を貫通孔5内に保持した状態でめっき処理を施し、隙間部8にめっきからなる固定めっき部9を形成する。このめっき処理は通常のめっき処理、すなわち析出させるべき金属がイオンとして溶解されためっき液に基板本体1を浸漬して行われる。このとき図6に示すように、基板本体1の両面側(貫通孔5の両端面)に略板形状の保持具10が配される。保持具はメッシュ状あるいは多孔形状に形成され、めっき液の流通が阻害されないような形状を有している。例えば、樹脂製の多孔質板のような多孔質体を用いることができる。
保持具10は多孔シート19及び多孔板20を重ねて形成され、多孔シート19が基板本体1側に配されている。多孔シート19は、熱伝導体7の径よりも小さい径の貫通孔21をさらに備えている。この貫通孔21を設けることにより、めっきを良好に析出させることができる。このような保持具10を配することで、液流や重力により熱伝導体7がめっき処理中に貫通孔5から出てしまったり、貫通孔5に対する位置ずれが起こってしまったりすることが防止される。なお、保持具10は基板本体1に対して片面側のみに用いてもよい。また、基板本体1と保持具10とを直接重ねてしまうとめっき析出により保持具10が基板本体1から取り外せなくなってしまうので、基板本体1と保持具10との間には間隔を設けるためのマスク処理を施すことが好ましい。
このような保持具10を用いて固定めっき工程を行うと、図7に示すように、保持具10と基板本体1との間、及び熱伝導体7と貫通孔5との間に固定めっき部9が形成される。ここで、熱伝導体7と貫通孔5との間に形成される固定めっき部9は、隙間部8にめっき液が入り込むことで形成される。後工程でのサブトラクティブ法による回路形成にいお手狭ピッチ細線の形成を考慮すると、隙間部8の距離は50μm〜70μmが好ましいとされている。しかしながら、この距離はめっき液が流通するのに十分な距離ではない。したがってめっき析出量の低下を招き、貫通孔5に熱伝導体7を確実に固定することが困難である。
そこで、上述した貫通孔形成工程にて、図8に示すように、貫通孔5の内壁面から貫通孔5の貫通方向に沿って外側に膨出する略半円柱形状の突出部22を複数形成する。すなわち貫通孔形成工程では、まず突出部22となる内部空間が略円柱形状の複数の貫通孔たる小孔25をドリル等を用いて形成する。この複数の小孔25は互いに間隔を存して設けられ、平面視(図7を正面から見た方向)でその中心が同一円周上に配されるように形成される。次に、小孔25の中心が配された円周をもとに、内部空間が略円柱形状の貫通孔たる大孔26を形成する。これにより、内壁面が外側に膨出した突出部22が複数形成された貫通孔5を得ることができる。この貫通孔5は、平面視にて大孔26の円周方向外側に間隔を存して複数の略は年形状の突出部が膨出しているような形状を有している。このような貫通孔5に熱伝導体7を挿入すると、隙間部8は熱伝導体7の外周面とこれに対向する貫通孔5の内壁面との間の間隔が非一定として形成される。すなわち、突出部22で形成された外側の内壁面と熱伝導体7との間隔が最大間隔である最大部23となり、それ以外の内側の内壁面と熱伝導体7との間隔が最小間隔である最小部24となる。
このように、隙間部8が最小間隔である最小部24及び最大間隔である最大部23とを有するので、固定めっき部9を形成するためのめっき金属を最大部23(突出部22)を介して十分に充填することができる。すなわち、めっき処理時にめっき液が最大部23を有する突出部22に流れ込むので確実に熱伝導体7の周りにめっき金属を析出させることができる。さらに最大部23を設けることで固定めっき部9を介した熱伝導体7と貫通孔5との密着面積を増加させることができ、より強固な固定が可能となり、固定めっき部9により確実に熱伝導体7を貫通孔5内に固定することができる。突出部22でのめっき液循環の効率を考慮すれば、小孔25の径は基板本体1の厚さに対して25%程度が好ましい。隣り合う突出部22間の間隔は、100μm〜1mm程度とすれば安定してめっきが充填される。
なお、最大部23と最小部24を設けるための突出部22はあくまで一例であり、熱伝導体7の外周面とこれに対向する貫通孔5の内壁面との間の間隔を非一定として形成すれば、おのずと最大部23及び最小部24が形成される。したがって、めっき液を十分に流通させる空間を設けることができれば、貫通孔5の平面視での形状をどのように形成してもよいし、逆に熱伝導体7を内側に凹ませるなどして形状を変形させてもよい。
本実施例では、貫通孔5の内部空間及び熱伝導体7を略円柱形状として、さらに最大部23を貫通孔5の内壁面から貫通孔5の貫通方向に沿って外側に膨出する略半円柱形状の突出部22により形成した。このような形状とすれば、上述したような手順に沿って容易に貫通孔5を形成できるので、加工容易性の観点から好ましい。
めっき処理終了後、めっき液から保持具10及び基板本体1を取り出すと、図9に示すような基板本体1の表面及び熱伝導体7と貫通孔5との間に固定めっき部9が形成された放熱基板27が形成される。この放熱基板27の両面は、バフ研磨等の物理研磨により面一とされる。
次に回路形成工程(ステップS6)を行う。この工程では、放熱基板27の両面に形成されているめっき膜6及び固定めっき部9をエッチング処理等で除去し、図10に示すような導体パターン11を形成する。
そして、ソルダレジスト塗布工程(ステップS7)を行う。この工程では、図11に示すように、放熱基板27の両面に絶縁体からなるソルダレジスト12を塗布する。
そして、ランド形成工程(ステップS8)を行う。この工程では、図12に示すように、ソルダレジスト12の一部を除去し、電気又は電子的な部品13を搭載するべき領域をランド14として露出させる。なお、ランド14は放熱基板27の両面にそれぞれ対応して形成される。
そして、部品搭載工程(ステップS9)を行う。この工程では、図13に示すように、半田16を介してランド14に部品13を搭載する。これにより、部品13と熱伝導体7とは半田16を介して熱的に接続される。すなわち、部品13から発生した熱の放熱経路が確保される。なお、半田16ではなく他の伝熱性を有する樹脂や伝熱シート等を用いて熱的に部品13と熱伝導体7とを接続してもよい。部品13が搭載された面と反対側の面のランド14には、導電性材料からなるシート状の熱伝導シート17が貼り付けられる。この熱伝導シート17と接して、ヒートシンク18が取り付けられる。すなわち部品13からの放熱経路は、部品13から始まって半田16、部品13側の固定めっき部9、熱伝導体7、部品13とは反対側の固定めっき部9、熱伝導シート17、ヒートシンク18の順番となり、この順に熱が伝達していく。
1:基板本体、2:導電層、3:絶縁層、4a:片面板、4b:両面板、5:貫通孔、6:めっき膜、7:熱伝導体、8:隙間部、9:固定めっき部、10:保持具、11:導体パターン、12:ソルダレジスト、13:部品、14:ランド、15:放熱基板、16:半田、17:熱伝導シート、18:ヒートシンク、19:多孔シート、20:多孔板、21:貫通孔、22:突出部、23:最大部、24:最小部、25:小孔、26:大孔、27:放熱基板
Claims (4)
- 絶縁樹脂材料からなる絶縁層と、
導電材料からなる導電層と、
前記絶縁層及び前記導電層からなる基板本体と、
該基板本体を貫通する貫通孔と、
該貫通孔内に収容されている伝熱材料からなる熱伝導体と、
前記貫通孔と前記熱伝導体との間に間隔として存する隙間部と、
前記貫通孔に前記熱伝導体を固定するために前記隙間部にめっき処理によって形成された固定めっき部と
を備え、
前記隙間部は、前記熱伝導体の外周面とこれに対向する前記貫通孔の内壁面との間の間隔が非一定として形成され、最小間隔である最小部及び最大間隔である最大部とを有していることを特徴とする放熱基板。 - 前記貫通孔の内部空間及び前記熱伝導体は略円柱形状であり、
前記最大部は、前記貫通孔の内壁面から前記貫通孔の貫通方向に沿って外側に膨出する略半円柱形状の突出部により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の放熱基板。 - 絶縁樹脂材料からなる絶縁層に導電材料からなる導電層が形成された基板本体を形成する基板本体形成工程と、
前記基板本体を貫通する内部空間が略円柱形状の貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔内に金属からなる略円柱形状の熱伝導体を挿入して配する挿入工程と、
前記熱伝導体を前記貫通孔内に保持した状態でめっき処理を施し、前記貫通孔と前記熱伝導体との間に間隔として存する隙間部にめっきからなる固定めっき部を形成する固定めっき工程と
を備え、
前記貫通孔形成工程にて、前記貫通孔の内壁面から前記貫通孔の貫通方向に沿って外側に膨出する略半円柱形状の突出部を複数形成することを特徴とする放熱基板の製造方法。 - 前記固定めっき工程にて、前記貫通孔の両端にめっき液が通過可能な多孔質体からなる保持具を配することを特徴とする請求項3に記載の放熱基板の製造方法。
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