東日本大震災における大津波による被災地での新たな防波堤、防潮堤の構築、被災地以外の沿岸部での新たな防波堤、防潮堤の構築や既存の堤防の改善を進める場合、強固で大津波にも対応できる高性能・高品質の堤防にすることは言うまでもないが、上記の通り、コンクリートの供給不足、道路整備が進んでいない沿岸部の道路事情、輸送コストや施工コスト、緊急性等も考慮し、従来に比べコンクリートの使用量が少なく、資材や部材の陸上輸送が容易で、施工が容易なものにする必要がある。しかし、このようなものはほとんど見当たらない。
特許文献1に記載されるものは、鋼・コンクリート合成構造のプレキャスト部材を用いたハイブリッド型のものであり、耐久性、施工性、大津波への対応等を考慮したもので、従来の堤体に比べれば小型化や軽量化も図られているものの、壁体やフーチングは大型で重量の大きいプレキャストコンクリート版からなるものであり、必ずしも陸上輸送が容易なものとは言えない。また、コンクリートの供給不足への対応も十分とは言えない。
引用文献2に記載されるカーテン型防波堤は、第一の防波壁と第二の防波壁からなる二重壁構造のものであるが、外海からの通常の波浪に対し港湾での静穏化を図るためのものであり、大津波にも対応できる強固なものではない。
特許文献3に記載される嵩上げ堤も、両側板を有する二重壁構造のものであるが、単に既設堤の上にプレキャスト化された堤資材を組立てて断面略コ字形の堤を被せて嵩上げするものであるからして、堤全体としての強度は既設堤と大きく変わらず、大津波への対応をも想定したものではない。
本発明は、上述のような背景・課題を鑑みて成したものであり、大津波にも対応可能な強固で高品質なものであるとともに、資材や部材の陸上輸送及び施工が容易でコンクリートの使用量をできるだけ抑制した堤体を提供することを目的とするものである。
本発明は、「上方に壁ユニットを備えたフーチングと接合ユニットとを堤体連続方向に交互に並べて壁面を形成した堤体であって、鋼管杭と、該鋼管杭に支持され堤体連続方向に所定の間隔をあけて並設されるフーチングと、該フーチングの上方に配置され支柱下端部が前記鋼管杭との接続部となっている支柱で支えられた第1壁パネルを備えた壁ユニットと、前記フーチング間に配置される接合ユニットとからなる堤体であって、前記接合ユニットは前記第1壁パネルに接続され支柱で支えられた第2壁パネルと、該第2壁パネルの下方に該第2壁パネルの下端に接して設けられるブロックとを備えたものであることを特徴とする堤体」である。
本発明の堤体は、工場で製作した複数のユニットを施工現場に運び、そこで各ユニットを接合して構築するものであり、中でも接合ユニットを用い、上方に壁ユニットを備えたフーチングと接合ユニットとを堤体連続方向に交互に並べて壁面を形成することを特徴とする。接合ユニットは、地盤の状況が良くないところに壁高の高い堤体を構築する場合に好適に用いることができる。
本発明の堤体は、大別して、基礎杭となる鋼管杭と、該鋼管杭に支持され堤体連続方向に所定の間隔をあけて並設されるフーチングと、該フーチングの上方に配置される壁ユニットと、前記フーチング間に配置される接合ユニットとからなるからなる鋼・コンクリート合成構造のハイブリット型のものである。
このように工場で製作した複数のユニットを用いるので、品質が安定した高品質のものとすることができるとともに陸上輸送効率と施工効率の向上が図れる。また、ハイブリッド型であるため、コンクリートの使用量を従来より少なくしても軽量で強固なものが得られ、コンクリート使用量の抑制が図れる。
鋼管杭は従来と同様のものである。フーチングは従来通りの現場施工のものでもユニット化した部分を含むものであってもよい。ユニット化した部分を含むものであれば、フーチングの高品質化やフーチング施工の容易化が図れる。フーチングの上方には壁ユニットが備えられる。
壁ユニットは、支柱下端部が前記鋼管杭との接続部となっている支柱で支えられた第1壁パネルを備えたものである。支柱としては、H形鋼、角型鋼管、トラス構造材、波形鋼板等の鋼材からなるものの他、プレキャストコンクリート製のもの、セラミック製のもの、コンクリートと炭素繊維との複合体からなるものなどが挙げられる。第1壁パネルはフーチングの上に配置され堤体の壁面の一部を形成するものであり、縦長のプレキャストコンクリート版、鋼主体のパネル、鋼・コンクリート合成版などからなるものである。
接合ユニットは前記第1壁パネルに接続され支柱で支えられた第2壁パネルと、該第2壁パネルの下方に該第2壁パネルの下端に接して設けられるブロックとを備えたものである。第2壁パネルを備える支柱とコンクリートブロックとを一体化したものでもよいが、これらを分離した2つの部材からなるものでもよい。このように、本発明で言う接合ユニットは、一体物だけでなく、2つの部材からなるものも含む。2つの部材からなるものは圧縮版のみを合成断面の一部とみなす場合に用いられる。2つの部材からなる接合ユニットにすることにより、陸上輸送の容易性の向上、位置決めの容易性、工程の短縮といった効果がより高められる。
支柱は上記壁ユニットの支柱と同様であり、第2壁パネルは上記壁ユニットの第1壁パネルと同様である。ブロックは鉄筋コンクリートブロック、繊維補強コンクリートブロック、高強度コンクリートブロック等のコンクリート製のもの、あるいは鋼材からなるもの、あるいはコンクリートと鋼材との複合体からなるものなどである。なお、接合ユニットとして、第2壁パネルを備える支柱とブロックとが分離された2つの部材からなる接合ユニットを用いる場合は、埋設内型枠で中央に空間を形成した中空ブロックを使用するのが好ましい。埋設内型枠としては鋼管の短管、H形鋼による枠組が挙げられる。
接合ユニットは、堤体連続方向に所定の間隔をあけて並設されるフーチングとフーチングを堤体連続方向に接続する部材であり、フーチングよりも小さく、その直下には基礎(鋼管杭)がない。
接合ユニットは、このように、主部材(支柱)の本数と基礎(鋼管杭、フーチング)の数とが一致しない場合に、基礎直上ではない主部材からの応力を基礎へと伝達する役割を担う。また、ユニット化することで、現場打ちコンクリートの量を大幅に減らすことができるだけでなく、施工効率や施工精度の向上が図れる。
前記第1壁パネルと第2壁パネルは、2枚のプレキャスト版が所定の間隔をあけて平行に配置された二重壁構造の壁パネルであり、前記壁ユニットと前記接合ユニットにおける支柱は前記2枚のプレキャスト版を連結する機能を有する連結支柱であるのが好ましい。
2枚のプレキャスト版としては、耐久性、強度、成形性、製作容易性などの観点から、プレキャストRC版が好ましい。プレキャストRC版とは、工場において製作される鉄筋コンクリート版である。
二重壁構造の壁パネルのうち、引張側の部材となる表側(水辺側)の壁パネル(プレキャスト版)は波圧版としての役割を果たすものであり、津波等を直接受け、荷重を主部材(支柱)に伝える役割に加え、主部材としての役割も兼ねる。そのため、鉄筋のみを有効として剛性を見込む。
防潮堤では、どのような主部材構造であっても波圧板は必要であるが、波圧板を主部材の合成断面の一部として見込み主部材の構造の一部を兼ねることで、効率的な部材利用が実現できる。
一方、圧縮側の部材となる裏側(陸地側)の壁パネル(プレキャスト版)は圧縮版としての役割を果たすものであり、曲げ圧縮力を負担し、剛性の向上に寄与する。また、支柱が鋼材からなる場合は鋼材を塩害から保護する密閉空間を形成する際のカバー板としての役割も担う。このように、裏側(陸地側)の壁パネルに圧縮版としての機能とカバー板としての機能の両方を持たせることにより、効率的な部材利用が実現できる。
また、連結支柱は上記表側の壁パネルと裏側の壁パネルをつなぎ(連結し)、せん断力を負担する役割を担う。2枚の壁パネル間を連結支柱でつなぎ壁ユニット化あるいは接合ユニット化することで、ユニット全体の軽量化が可能となり、壁高の高い構造のものでも陸上輸送が容易となり、現場施工も簡略化できる。
以上の通り、前記第1壁パネルと第2壁パネルを二重壁構造の壁パネルとすることにより、支柱の負担を軽減しつつ軽量で強固な壁パネルとすることができる。そして、引張側に鋼材を主体とした部材を用い、圧縮側にコンクリートを主体とした部材を用いたハイブリッド型のユニットにすれば、それぞれの材料特性を活かした効率的・効果的なものとすることができ、コンクリートの使用量を抑制することも可能となる。
前記二重壁構造の壁ユニットと接合ユニットにおいて、連結支柱はH形鋼であるのが好ましい。本発明のような二重壁構造であれば、H形鋼単体では負担できない荷重であっても負担可能となるので、安価で容易に入手可能なH形鋼を用いることができる。
そして、H形鋼と2枚の壁パネル(プレキャスト版)を工場で連結したユニットであれば従来のプレキャストコンクリート壁体や鋼・コンクリート合成壁パネルに比べはるかに軽量なので陸上輸送がし易く、杭位置の施工誤差によって壁パネルが収まらなくなるといった現場施工での問題も解決することができる。
また、前記フーチングと前記接合ユニットにおけるブロックには、隣に配置されるフーチングと接合ユニットとの接続部の接続を強化するための接続鋼材が突設されているのが好ましい。接続鋼材としては、孔あき鋼板ジベル、H形鋼+高力ボルト、鋼板+高力ボルトなどである。
本発明では、フーチングと接合ユニットとが堤体連続方向に交互に並べられ、これらの上に立設される第1壁パネルと第2壁パネルとが交互に接続されて堤体の壁面が形成されるが、その際、隣同士のフーチングと接合ユニットはこれらの間に間詰コンクリートが打設され接続される。
上記接続において、両者に接続鋼材を突設しておき、両者の連結機構を間詰コンクリートと接続鋼材の両方によるものにすれば、曲げとせん断をシンプルな機構で確実に伝達することができ施工性も良くなる。
また、本発明の堤体においては、前記鋼管杭の上端部は前記フーチング内に入り込んでおり、前記フーチング内で該鋼管杭の上端部における管内に前記支柱の前記接続部が差し込まれ、該鋼管杭の周囲がコンクリートで固められて前記壁ユニットとフーチングと鋼管杭とが一体化されているのが好ましい。
すなわち、堤体を強固なものにするためには、フーチングの上方に設置される壁ユニットとフーチングと該フーチングを支持する鋼管杭とが鉛直方向で強固に一体化されている必要があるが、本発明では壁ユニットにおける支柱下端部の接続部をフーチング内で鋼管杭上端部の管内に差し込んで、壁ユニットの下端部と鋼管杭とがフーチング内で重なり合って接続されるので、壁ユニットとフーチングと鋼管杭とを強固に一体化できる。
また、本発明の堤体では、前記フーチングはフーチングユニットを用いたものであり、該フーチングユニットは鋼材で枠組みされた箱枠とするのが好ましい。
本発明では、高品質な部材による強固な堤体の構築、部材の陸上輸送の容易性、施工性、使用コンクリートの抑制などの観点から、壁ユニットや接合ユニットなど鋼・コンクリート合成によるハイブリッド型の複数のユニットを用いることを特徴とする。したがって、フーチングもハイブリッド型のものとし、その少なくとも一部をユニット化してフーチングユニットにしておくことは好ましい。フーチングユニットの材質や構造は特に限定されないが、本発明の好ましいものとしては鋼材で枠組みされた箱枠であり、施工現場で該箱枠の周囲にコンクリートを打設してフーチングが完成される。
本発明の堤体の好ましい一態様として、「前記鋼管杭は、各々所定の間隔で二列に並列される水辺側鋼管杭と内陸側鋼管杭とからなり、フーチングは3つに区画され、両側の区画の底面には前記水辺側鋼管杭もしくは内陸側鋼管杭のいずれかの上端部を各区画内に差し込むための挿入孔が設けられた箱形状のものからなり、両側の区画のうち水辺側の区画は前記壁ユニットにおける前記支柱の接続部を前記挿入孔から該区画内に差し込まれた前記水辺側鋼管杭上端部の管内に差し込んで該区画内をコンクリートで満たすことにより前記壁ユニットとフーチングと水辺側鋼管杭とが一体化されており、内陸側の区画は前記挿入孔から前記内陸側鋼管杭を差し込んで該区画内をコンクリートで満たすことによりフーチングと内陸側鋼管杭とが一体化されており、中央の区画は中空となっている堤体」がある。
鋼管杭は、各々所定の間隔で二列に並列される水辺側鋼管杭と内陸側鋼管杭とからなる。これら鋼管杭の径や長さは変えても良いが、通常は同じである。また、これら鋼管杭は2本で1つのフーチングを支持するよう、千鳥状ではなく、フーチングの長さ方向(縦方向)に一列に設けられる。
フーチングは箱形状(直方体の箱)であり、直下に水辺側鋼管杭がある部分と直下に内陸側鋼管杭がある部分とこれら鋼管杭のいずれもない中央部分の3つに鋼板等で区画されている。直下に鋼管杭のある両側の区画の底面には、水辺側鋼管杭もしくは内陸側鋼管杭のいずれかの上端部を区画内に差し込むための挿入孔が設けられている。このフーチングは、前記箱枠からなるフーチングユニットであるのが好ましい。
そして、3つに区画されたフーチングの両側の区画のうち、水辺側の区画は前記壁ユニットにおける前記支柱の接続部を前記挿入孔から該区画内に差し込まれた前記水辺側鋼管杭上端部の管内に差し込んで該区画内をコンクリートで満たすことにより前記壁ユニットとフーチングと水辺側鋼管杭とが一体化されており、内陸側の区画は前記挿入孔から前記内陸側鋼管杭を差し込んで該区画内をコンクリートで満たすことによりフーチングと内陸側鋼管杭とが一体化されている。
このように、2本の鋼管杭の上端部をフーチング内に差し込んで鋼管杭とフーチングとを一体化するとともに、水辺側では壁ユニットをもフーチング内で水辺側鋼管杭と一体化しているので堤体が強固なものとなる。
また、鋼管杭が直下にない中央部分は中空にしてある。中空にしているのは、コンクリート使用量の低減、陸上輸送可能な重量の制限などの理由による。中空であっても剛性の高い鋼材(H形鋼等)で箱枠を形成しコンクリートで覆ったハイブリッド型の構造とすることで強度や耐久性で問題になることはない。
前記フーチングユニットを用いたフーチングにおいて、フーチングは2つのH形鋼を並べて箱枠を形成したフーチングユニットの周囲をコンクリートで被覆したものであるのが好ましい。
箱枠は、鋼板を用いたりプレストレストコンクリート、繊維補強コンクリート、繊維補強樹脂板などにより形成しても良いが、2つのH形鋼を並べ鋼板で側壁、底板、天井板、仕切板を作って鋼製箱枠にすれば軽量かつ製作の容易性などのメリットが得られるので好ましい。
前記フーチングと前記接合ユニットとの接続は、前記接続鋼材によるものの他、SRC梁を用いて行うこともできる。SRC梁は鋼材とコンクリートとの混合構造である。このSRC梁を用いる場合は、棒状のSRC梁をフーチングの溝に嵌め込みながら積み木のようにして接続する。このSRCによる接続は、現場打ちコンクリートの使用量を最小限に抑制したい場合に効果的に用いることができる。
本発明の堤体は、工場で製作した複数のユニットを現場で組立てて構築されるものなので大津波にも対応可能な強固で高品質なものであるとともに施工性も良く、また、コンクリートの使用量をできるだけ低減した鋼・コンクリート合成構造のハイブリッド型のものにしたため各材料の特性を活かしたコンクリート使用量の少ない軽量のものとすることができ陸上輸送が容易となる。そして、施工現場へのコンクリートの供給不足といった昨今の問題も解決できる。
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の堤体の一実施形態を示す斜視図である。(a)は表側(水辺側)から見た図、(b)は裏側(陸地側)から見た図である。
本発明の堤体1は、既設堤防2の上に構築されている。そして、所定の間隔で堤体連続方向に2列に設けられた鋼管杭5に支持され所定の間隔をあけて並列されたフーチング6の上方には壁パネル4が配置されている。隣り合うフーチング6,6の間には、接合ユニット8が設けられている。
壁パネル4は、連結支柱に支持された2枚のプレキャスト版からなる二重壁構造で、プレキャスト版間は空間となっており、フーチング6の上方に設置される第1壁パネル4−1と接合ユニット8に備わる第2壁パネル4−2とからなり、これらが交互に堤体連続方向に並べられて堤体1の壁面を形成している。
フーチング6には、隣の接合ユニット8を強固に接合するための孔あき鋼板ジベル(接続鋼材)7が突設している。また、壁パネル4の裏側は道路3となっている。壁パネル4は、図に示すように縦長でフーチング6や接合ユニット8の幅に合せたものである。この例では、高さ方向に一段の例を示しているが、必要な壁高、製作効率、陸上輸送効率、施工効率等を勘案し、複数段とすることもできる。
また、この例では二重壁構造であるが、必ずしもすべてが二重壁構造でなくても良い。地形との関係で強固にすべき箇所は二重壁のような多重壁とし、あまり強固にする必要がない箇所は一枚壁とすればよい。また、今後、軽量で極めて防波力の高い壁材料が開発されれば一枚壁にしてもよい。
図2は、一体物の接合ユニット8を用いた上記本発明の堤体の構造の一例を示す図である。(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
鋼管杭5は、水辺側鋼管杭と内陸側鋼管杭とからなり、これらが堤体の連続方向に向かって所定の間隔で平行に2列に設けられている。間隔は250〜450cm程度が好ましい。また、該2列の対応する各1組の鋼管杭5,5は、堤体の連続方向に対して略直角に150〜600cmの一定間隔で設けられている。そして、表側(水辺側)の鋼管杭5の上方にはフーチング6を介して連結支柱9で支持された壁パネル4(第1壁パネル4−1)が設置されている。
フーチング6は、図に示すように、上記鋼管杭5の配列に合せて所定の間隔で設けられている。各フーチング6は鋼材で枠組された箱枠からなるフーチングユニットを用いて作られており、仕切鋼板11により3つに区画されている。直下に鋼管杭5がある両側の区画はコンクリート13が充填されており、直下に鋼管杭5がない中央の区画は中空部12となっている。中空とするのは、軽量化して陸上輸送を可能にするためである。
隣り合うフーチング6,6の間の表側(水辺側)には接合ユニット8が設けられ、フーチング6,6と接合ユニット8が一体化した基礎を形成している。接合ユニット8は、壁パネル4(第2壁パネル4−2)と該壁パネル4の下方に該壁パネル4の下端に接して設けられるブロック16とを備えたものであり、第2壁パネル4−2は第1壁パネル4−1に、ブロック16は隣のフーチング6にそれぞれ接続される。ブロック16の高さは、図に示すように、フーチング6の高さと同じである。
ブロック16は鉄筋コンクリートブロック、繊維補強コンクリートブロック、高強度コンクリートブロック等のコンクリート製のもの、あるいは鋼材からなるもの、あるいはコンクリートと鋼材との複合体からなるものなどのいずれでもよい。
接合ユニット8の直下には鋼管杭はないので接続機能を果たせる大きさであればよく、図に示すように、前記ブロック16の縦方向(水辺側から内陸側への方向)の長さはフーチング6より短くなっている。この例では、3つに区画されたフーチングにおける表側(水辺側)の区画に合わしている。
接合ユニット8は、鋼管杭5(基礎杭)が直下にない支柱からの荷重をフーチング6へ伝達する役割を果たす。すなわち、従来技術では、基礎(鋼管杭)と主部材(支柱)の割付を合せることが施工性やコスト面で最も効率的と考えられていたが、本発明では、基礎の割付間隔と主部材の割付間隔を一致させる必要がなくなる。そのため、基礎と主部材をそれぞれ施工性やコストに応じて最適な支間割付に設定することが可能となる。その結果、荷重の大きなケースでも、基礎の本数を増やす必要がなくなり、また、主部材として安価なH形鋼を選択することも可能となり、トータルコストの縮減が図れる。
また、ユニット化したものを用いることで、品質の確保、現場打ちコンクリート量の低減、施工効率の向上が図れる。
3つに区画されたフーチング6のうちの表側(水辺側)の区画の上方には、支柱下端部が鋼管杭5との接続部10となっている連結支柱9で支えられた第1壁パネル4−1を備えた壁ユニット14が設けられている。この例では、壁ユニット14は二重壁構造の壁パネル4からなるユニットであり、2枚のプレキャスト版が連結支柱9で連結され、プレキャスト版間は空間となっている。堤体の壁面形成を壁ユニットにより行うので、品質の確保、施工効率の向上、コンクリート使用量の低減が図れる。
連結支柱9は、鋼材製、コンクリート製など種々の材質のものを用いることができるが、鋼材製の場合、プレキャスト版間を空間にしておくことで防食性や維持管理に懸念が生じる場合は、発泡材などを充填しておいてもよい。この例では連結支柱9が鋼材からなるものであり、第1壁パネル4−1は、頭付きスタッド15により連結支柱9に取付けられている。
フーチング直下の鋼管杭5は、図に示すように、その上端部がフーチング内6に差し込まれている。そして、壁ユニット14における第1壁パネル4−1は、その下端がフーチング6の上面に接して設けられ、連結支柱9下端の接続部10は鋼管杭5上端部の管内に差し込まれ、周囲をコンクリートで固めることによって鋼管杭5とフーチング6と壁ユニット14が一体化されている。
接合ユニット8におけるブロック16の上方には、支柱で支えられた第2壁パネル4−2が設けられている。壁ユニット14に合せ、支柱は鋼材からなる連結支柱9で第2壁パネル4−2は2枚のプレキャスト版からなる二重壁構造のものである。
第2壁パネル4−2も、頭付きスタッド15により連結支柱9に取付けられている。また、連結支柱9の下端部の接続部10はブロック16に差し込まれて固定されている。第2壁パネル4−2の幅は、ブロック16とこれの両側に打設される間詰コンクリートの合計幅と同じになっている。
第1壁パネル4−1と第2壁パネル4−2は、図に示すように、同じ高さであって、これらが堤体連続方向に交互に並べられて堤体1の壁面を形成する。交互に配列されるフーチング6と接合ユニット8のブロック16は間詰コンクリートで接続されるが、第1壁パネル4−1と第2壁パネル4−2の間は止水材で隙間が塞がれ水密性が確保されている。
により行われる。
第1壁パネル4−1と第2壁パネル4−2からなる壁パネル4は、2枚のプレキャスト版(RC版、鋼・コンクリート合成版など)を連結支柱9(H形鋼、角型鋼管、トラス構造材、波型鋼板等の鋼材からなるもの、プレキャストコンクリート製のもの、セラミック製のもの、コンクリートと炭素繊維との複合体からなるものなど)を支持してなる二重壁構造の壁パネル4である。
連結支柱9は、上記の通り、種々の材質を用いることができ、設計条件、輸送条件、施工条件等によって適宜選択できる。例えば、堤体の高さが低く連結支柱9に高い強度を求めない場合や、壁パネル4の輸送重量にも余裕がある場合には、鋼材製に代えてアルミニウム合金製の連結支柱9を用いたり、コンクリート(鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート、プレストレストコンクリートなど)製の連結支柱9を用いることもできる。
2枚のプレキャスト版は、同じ版厚のものであってもよいが異なっていても良く、例えば、堤体の内陸側に配置される方が水辺側に配置される方に比べて厚くなっているものでもよい。版厚は波圧、引張力、圧縮力などを考慮して計算で求められる。少なくとも12cm以上あるのが好ましく、より好ましくは15〜30cmであり、更に好ましくは16〜25cmである。
壁パネル4を二重壁構造とするのは、軽量化による陸上輸送の容易性やコンクリート使用量の低減を考慮したものでもあるが、力学的作用効果の観点からは、二重壁構造にした方がしない構造に比べ効率的に剛性を高めることができる。特に、圧縮側に配した壁パネル(プレキャスト版)は、圧縮力をコンクリートに負担させるメリットと鋼部材(支柱など)の座屈を防ぐメリットの2つのメリットを併せ持つ。
二重壁のうち、表側(水辺側)に配置される壁パネル(プレキャスト版)は波圧版として津波等を直接受け、荷重を主部材(連結支柱9)に伝える役割に加え、主部材としての役割も兼ねる。引張側の部材となるため鉄筋等の鋼材の多いものとした方がよい。
裏側(内陸側)の壁パネル(プレキャスト版)は、圧縮板として曲げ圧縮力を負担し剛性の向上に寄与する他、連結支柱9が鋼材製の場合これを塩害から保護する密閉空間を形成する際の裏壁となるカバー板としての役割も果たす。
以上の通り、本発明の堤体構築に用いる壁ユニット14、接合ユニット8、これらに備わる壁パネル4は鋼・コンクリート合成構造のハイブリッド型のものでユニット化されたものであるため、それぞれの材料特性を活かした軽量で高性能のものとすることができ、コンクリート使用量の削減が図れる。また、比較的軽量で小〜中型のユニットであるため、陸上輸送が容易で施工性もよい。
(A)ハイブリッド構造、(B)接合ユニットの使用、(C)複数のユニットの接続による構築といった本発明の基本技術思想に加え、更に(D)二重壁構造の技術思想を加味して堤体を形成すれば、より効果的に本発明の目的を達成することができる。本発明は、このように、本発明特有の課題に対し、これら(A)〜(C)と必要に応じて考慮される(D)の技術思想を組み合わせて成るものである。
次に、本発明で使用するユニットについて説明する。図3は、壁ユニット14の一例を示す図である。(a)は全体を示す斜視図、(b)は正面図、(c)は平面図、(d)は側面図である。図に示すように、壁ユニット14は二重壁構造であり、連結支柱9(この例ではH形鋼18)に2枚の縦長のプレキャスト版が平行に取付けられ壁パネル4を構成している。そして、壁パネル4がない連結支柱9の下端部は接続部10となっている。また、壁パネル4と連結支柱9とは、頭付きスタッドで結合されている(図示省略)。
連結支柱9の長さは、250〜1000cm程度である。また、壁パネル4の好ましい寸法は、縦150〜800cm、横(幅)150〜300cm、厚さ15〜30cm程度である。横(幅)はフーチングの幅に合せて設計される。壁パネル4における2枚のプレキャスト版間の間隔は、壁パネル4内部の点検スペース確保、壁パネル4の剛性確保、陸上輸送サイズの制約等の観点から、40〜200cm程度が好ましい。この壁ユニット14は工場で製作されて施工現場に輸送される。このような形態なので、従来の壁パネルに比べ軽量で陸上輸送がし易い。また、製作にコンクリート使用量が少なくて済む。
図4は、フーチング6の構築に用いるフーチングユニット6−1の一例を示す斜視図である。(a)は鋼材で箱枠17を組あげた状態を示す図、(b)はフーチングユニット6−1の完成を示す図である。
このフーチングユニット6−1は工場で製作される。まず、図4(a)に示すように鋼材で枠組みし箱枠17が作られる。ここでは、H形鋼18を側壁に用いた例を示すが、これに限定されるものではない。仕切鋼板11で3つに区画され、中央の区画は頭付きスタッド15を設けた天井鋼板19で密閉され中は中空部12となる。また、図に示すように、H形鋼18の外側面には、孔あき鋼板ジベル7が設けられる。その後、天井鋼板19のある中央の区画がコンクリート13で被覆され、フーチングユニット6−1が完成する。
フーチング6を構築するのに、このようなフーチングユニット6−1を用いれば、施工効率が構築するとともに強固な高品質のものが得られる。また、工場から施工現場までの陸上輸送があり、コンクリート使用量の抑制もできる。
なお、上記例では鋼製のフーチングユニット6−1であるが、鋼製に限らずコンクリート製や樹脂製やこれらの複合体とすることもできる。
図5は、一体物の接合ユニット8の一例を示す図である。(a−1)は接続金具を取付けた連結支柱9の斜視図、(a−2)は接合ユニット8の斜視図、(b)は正面図、(c)は平面図、(d)は側面図である。
この接合ユニット8も工場で製作される。先ず、図5(a−1)に示すように、連結支柱9(この例ではH形鋼18)に壁パネル4を取付ける際の接続金具となる頭付きスタッド15と接続鋼材である孔あき鋼板ジベル7が図のように取り付けられる。孔あき鋼板ジベル7に代えて、H形鋼を接続鋼材として用いることもできる。連結支柱9の長さは、設計壁高(壁パネル4の高さ)と設計差し込み長(接続部10の長さ)によって決定される。
次に、連結支柱9に2枚の縦長のプレキャスト版が平行に取付けられ二重壁構造の壁パネル4を構成する。好ましい壁パネル4の寸法は、縦150〜800cm、横(幅)150〜300cm、厚さ15〜30cm程度である。縦は、壁ユニット14の壁パネル4にあわせて決められる。横(幅)は、できるだけ壁ユニット14の壁パネル4との間に隙間ができないように決められ、おおよそ、ブロック16の幅と該ブロック16の両側に打設される間詰コンクリートの幅との合計と同じである。
上記壁パネル4の下方には、図に示すように、壁パネル4の下端部がブロック16の上面に接するようにしてコンクリートが打設され、孔あき鋼板ジベル7(接続鋼材)が突設したブロック16を設ける。これによって、図5(a−2)に示すように、壁パネル4を備えた連結支柱9とブロック16とが一体化した一体物の接合ユニット8が完成する。
ブロック16の幅は壁パネル4の幅よりも小さく、30〜80cm程度である。長さは130〜270cm程度であり、前記3つに区画されたフーチング6の対応する区画の長さに合せて決められる。高さは130〜180cm程度であり、隣り合うフーチング6と上面が一致するように決められる。
本発明では、接合ユニット8を用いることを発明の特徴の一つとするが、その力学的作用効果は前述の通りである。接合ユニット8も陸上輸送が容易であり、施工効率の向上やシコンクリート使用量の低減に大きく寄与する。
上記図5の例では、接合ユニット8は壁パネル4を備えた連結支柱9とブロック16とが一体化した一体物であるが、図6に示すように、壁パネル4を備えた連結支柱9とブロック16とが分離されてなる上下2つの部材からなるものにすることもできる。この場合は、上部材は壁ユニット14の壁パネル4と同様のものであり、連結支柱9の下端部は接続部10となる。
ブロック16には、上記一体物の場合と同様、接続鋼材である孔あき鋼板ジベル7が突出している。また、中央には、上記連結支柱9の接続部10を差し込むための孔が埋設内型枠22で形成されている。孔あき鋼板ジベル7は埋設内型枠22に取付けられている。
接続鋼材は、孔あき鋼板ジベル7に代えてH形鋼と高力ボルトからなるものにすることもできる。孔あき鋼板ジベル7が突出している接続ユニット8とフーチング6との接続は、後述の図7の場合と同じである。
この例では、接合ユニット8の2つの部材は施工現場まで別々に輸送され、施工現場で前記接続部10を前記埋設内型枠22で形成した孔に差し込んだ後、該埋設内型枠22内にコンクリートを充填して一体化される。
図7は、孔あき鋼板ジベル7によるフーチング6と一体物の接合ユニット8との接続の一例を示す図である。(a)は(c)のI−Iの方向に見た平面図、(b)は(c)のII−IIの方向に見た平面図、(c)は正面図である。
図7(a)に示すように、所定の間隔で2列に杭施工された鋼管杭5の上方に鋼管杭5に支持され長さ方向に仕切鋼板11により3つに区画されたフーチング6,6が所定の間隔で配置されている。3つの区画のうち両側の区画は鋼管杭5の上端部が埋設される形でコンクリート13が充填され中央の区画は中空部12となっている。
フーチング6は、箱枠17からなるフーチングユニット6−1の周囲をコンクリート13で被覆して構築されている。また、両側には接続鋼材である孔あき鋼板ジベル7が突設している。
中空部12を挟んで水辺側の区画には、フーチング6の上方に二重壁構造の壁ユニット14が立設している。壁ユニット14は、図7(b)に示すように、2枚のプレキャスト版からなる第1壁パネルが連結支柱9(ここではH形鋼18)で支持されその間は中空部12となっている。また、連結支柱9の下端部は接続部10となってフーチング6内で鋼管杭5上端部の管内に差し込まれてコンクリート13で固められ、それにより、鋼管杭5とフーチング6と壁ユニット14とが一体化している。
図に示すように、フーチング6,6の間には一体物の接合ユニット8が配設されている。接合ユニット8の下部は両側に孔あき鋼板ジベル7が突設したブロック16からなり、その上方には連結支柱9(ここではH形鋼18)で支持された2枚のプレキャスト版からなる第2壁パネルがあり、2枚のプレキャスト版間は中空部12となっている。
隣り合うフーチング6と接合ユニット8とは、双方の孔あき鋼板ジベル7に鉄筋21を通し間詰コンクリート20を現場打設することにより接続されている。また、隣り合う第1壁パネル4−1と第2壁パネル4−2との間は、止水材により隙間が塞がれ水密性が保たれている(図示省略)。
図8は、上下2つの部材からなる接合ユニット8を用いた上記本発明の堤体の構造の一例を示す図である。(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
接続ユニット8の上部材はフーチング6の壁ユニット14と同様の構造をしており、これの接続部10が、鋼管杭5の上端部があるフーチング6と同様、埋設内型枠22で形成される孔に差し込まれコンクリートで固定されている。図に示すように、この例では、上部の壁ユニット14と接合ユニット8は同一またはほぼ同様であり、鋼管杭5と埋設内型枠22とが交互に並ぶ構造となっている。
フーチング6と接合ユニット8との接続は、接続鋼材として孔あき鋼板ジベル7を用いた上記記載の他、H形鋼18と高力ボルトにより行うこともできる。この接続によれば架設時の位置決めが容易となり工程を短縮することもできるといったメリットがあるので好ましい。
図9は、H形鋼18と高力ボルトを用いた、フーチング6と接合ユニット8との接続の一例を示す斜視図である。
(a)はフーチングユニット6−1の一例、(b)は接合ユニット8の下部材(ブロック16)の一例、(c)はこれらによる接続を示す図である。
図9(a)に示すフーチングユニット6−1は、H形鋼18により箱枠17が形成され仕切鋼板11で3つに区画されている。一部の仕切鋼板11はH形鋼18よりなっており、両端部は接続鋼材としての役割を担う。中央の区画には頭付きスタッドを備えた天井鋼板19が取り付けられコンクリート13で被覆されている。そして中は中空部12となっている。また、両端部もコンクリート13で被覆されている。
図9(b)に示す接合ユニット8の下部材(ブロック16)は、埋設内型枠22となる鋼管の短管に接続鋼材となる2つのH形鋼18が頭付きスタッド15により取付けられ、図に示すように、この例ではプレキャストコンクリートが打設されてブロック16が作られている。該短管内は中空部12となっている。埋設内型枠22は、ここに示す鋼管の短管の他、H形鋼を井桁に組んだ枠組などでもよい。ブロック16は、コンクリートを用いず、すべて鋼材からなるものにしてもよい。
図9(c)は、上記図9(a)に示すフーチングユニット6−1と図9(b)に示す接合ユニット8の下部材(ブロック16)とを施工現場で接続した現場打ちコンクリート打設前の構造を示す図である。わかり易いように地面の記載は省略してある。
フーチングユニット6−1の両側の区画がそれぞれ杭鋼管5の杭頭部に差し込まれて杭頭部にフーチングユニット6−1が設置され、隣り合うフーチングユニット6−1,6−1の間に接合ユニット8の下部材(ブロック16)が設置されている。そして、それぞれ突設されている接続鋼材のH形鋼18同士を高力ボルトで締結することによりフーチングユニット6−1と接合ユニット8の下部材(ブロック16)とが接続されている。
図10は図9(c)に対応するものであり、フーチングユニット6−1と接合ユニット8の下部材(ブロック16)とを、H形鋼18による接続鋼材で接続した接続構造を示す図である。(a)は(c)のI−Iの方向に見た平面図、(b)は(c)のII−IIの方向に見た平面図、(c)は正面図である。
フーチング6はH形鋼18で箱枠17を形成したフーチングユニット6−1を用いて作られ、該フーチングユニット6−1はコンクリート13で被覆されている。仕切鋼板11の役目もするH形鋼の両端は接続鋼材の役目を果たすように突設して作られている(図9(a)参照)。
図10(b)に示すように、フーチング6の上方には連結支柱9(ここではH形鋼18)で支持された二重壁構造の壁ユニット14が立設している。連結支柱9下端部の接続部10はフーチング6内の杭鋼管5上端部の管内に差し込まれ周囲をコンクリート13で固めることにより鋼管杭5とフーチング6と壁ユニット14とが一体化している。
接合ユニット8は、図6に示すような上下2つの部材(ただし、下部材は図9(b)に記載するもの)からなり、隣り合うフーチング6,6間に設置される。そして、フーチング6に突設している接続鋼材のH形鋼18と接合ユニット8の下部材(ブロック16)に突設している接続鋼材のH形鋼18が高力ボルトで締結され、間詰コンクリート20を打設することによりフーチング6と接合ユニット8が接続される。壁ユニット14の第1壁パネル4−1と接合ユニット8の第2壁パネル4−2の間は、ゴムやポリマーモルタルなどの止水材で隙間が塞がれ水密性が保たれている。
このように、接合ユニット8を埋設内型枠22を用いた上下2つの部材からなるものとし、接続鋼材をH形鋼材にしてフーチング6と接合ユニット8(ブロック16の下部材)とを接続した本発明のこの堤体構造は、施工精度を確保し易く工程も短縮できるので好ましい。
フーチング6と接合ユニット8との接続は、上述の接続鋼材によるものだけでなく、SRC梁を用いて行うこともできる。このSRC梁による接続を用いるのは、現場打ちコンクリートの使用量を最小限に抑えたい場合である。
図11は、このSRC梁による接続に用いるSRC梁23とフーチング6と接合ユニット8の下部材(ブロック16)の例を示す斜視図である。(a)がSRC梁23、(b)がフーチングユニット6、(c)が接合ユニット8の下部材(ブロック16)である。
図11(a)に示すSRC梁23は、H形鋼18を芯材とした角棒型のコンクリートブロック30である。これは接合ユニット8に作用した荷重をフーチング6に伝達する役割を果たす。
フーチング6は、図11(b)に示すような嵌合凹部を有し壁ユニット14を立設するための孔24がある。H形鋼18を用いた箱枠からなるフーチングユニットは前述のものと同じであり、施工現場で打設するコンクリート13により図のような形状のフーチング6なる。
接合ユニット8の下部材(ブロック16)は、図9(c)に示すような嵌合凹部を有し壁パネルを備えた連結支柱鋼材を立設するための孔24がある。
図12は、SRC梁23によるフーチング6と接合ユニット8との接続を示す図である。(a)は平面図、(b)はフーチング6における側面図、(c)は接合ユニット8における側面図である。この接続は前記図11に示すものを用いてなされる。
接続棒となるSRC梁23は、図に示すように上下に2列2段からなり、フーチング6と接合ユニット8とに設けられた嵌合凹部に嵌め込まれてこれらを強固に接続する。
鋼管杭5とフーチング6と壁ユニット14(壁パネル4、連結支柱9)と接合ユニット8との位置関係、配置関係は、図8等に示したものと同様である。
図13は、上記SRC梁23によるフーチング6と接合ユニット8の下部材(ブロック16)との接続工程の概要を示す斜視図である。(a)はフーチング6の架設工程を、(b)は接合ユニット8の下部材(ブロック16)の設置工程を、(c)は接続の完了工程をそれぞれ示す。
SRC梁23は、下側SRC梁23−1と上側SRC梁23−2とからなり、図13(a)に示すように、鋼管杭5による杭施工を行った後、所定の位置に下側SRC梁23−1が設置され、その上にフーチング6が鋼管杭5の上端部を差し込み下側SRC梁23−1を該フーチング6の嵌合凹部に嵌め込むことができるようにして置かれる。黒枠はフーチング6の架設状況をわかり易く示す図である。
その後、図13(b)に示すように、接合ユニット8の下部材(ブロック16)がフーチング6,6間に下側SRC梁23−1を該ブロック16の嵌合凹部に嵌め込んで置かれる。黒枠はブロック16の設置状況をわかり易く示す図である(下側SRC梁23−1の記載は省略)。
その後、図13(c)に示すように、上側SRC梁23−2がフーチング6の嵌合凹部と接合ユニット8の下部材(ブロック16)の嵌合凹部で形成される溝に嵌め込まれてフーチング6と接合ユニット8の下部材(ブロック16)との接続が完了する(下側SRC梁23−1の記載は省略)。
図14は、H形鋼18によるフーチングユニット6−1と一体物の接合ユニット8を用い、孔あき鋼板ジベルを接続鋼材とした本発明の堤体1の施工例を示す斜視図である。(a)は鋼管杭5の施工工程を、(b)はフーチング6の施工工程を、(c)は接合ユニット8の施工工程を、(d)は壁ユニット14の施工工程を、(e)は現場打ちコンクリートの施工工程を、(f)は本発明の堤体1の完成図を、それぞれ示す。なお、わかり易いよう、地面の記載は省略してある。
図14(a)に示すように、鋼管杭5による杭施工をし2列に所定間隔をおいて配列する。鋼管杭5の杭頭部は100cm程度地上に出す。杭内には杭上端から200cm程度の深さに底板を設け現場打設コンクリートを杭頭部の杭内に充填する。
また、杭頭部には現場溶接によりズレ止め(鋼板)を設置する。鋼管杭5を打ち込んだ後、場合によっては杭頭を切断するなどして高さの調節を行う。
次に、図14(b)に示すように、工場で製作し施工現場に輸送した箱枠からなるフーチングユニット6−1を一組(2本)の鋼管杭5,5の杭頭部に落とし込み、鋼管杭5の上端部がフーチング6の中に入るような格好にする。
次に、図14(c)に示すように、工場で製作し施工現場に輸送した一体物の接合ユニット8をフーチング6,6間に設置する。
次に、図14(d)に示すように、フーチングユニット6−1の上方に壁ユニット14を立設し、第1壁パネル4−1と第2壁パネル4−2との間の処理を行う。該処理は、前述の通り、ゴムやポリマーモルタルなどによる水密性の確保である。壁ユニット14における連結支柱9(ここではH形鋼18)下端部の接続部は、鋼管杭5上端部の管内に差し込まれた状態となる。
次に、図14(e)に示すように、現場打設コンクリートによる施工を行い、フーチングユニット6−1のコンクリート被覆によるフーチング6の構築と間詰コンクリート20によるフーチング6と接合ユニット8との接続を行う。
コンクリート施工は1次コンクリートによるフーチングユニット6−1のコンクリート被覆と、2次コンクリート(間詰コンクリート20)によるフーチング6と接合ユニット8との接続の2段階で行う。該接続は、前述の通り、孔あき鋼板ジベル7(接続鋼材)を併用して強固になす。
図14(f)は、上記構築方法により完成した本発明の堤体1を示す図である。上記構築方法を用いれば、従来より少ないコンクリート量で強固な堤体1が効率良くかつ効果的に構築できる。
図15〜図16は、H形鋼18によるフーチングユニット6−1と上下2部材からなる接合ユニット18を用い、H形鋼18を接続鋼材とした本発明の堤体1の施工例を示す斜視図である。
図15は、基礎部27完成(1次コンクリート26施工終了)までの工程を示す。(a)は鋼管杭5の施工工程を、(b)はフーチング6−1の設置工程を、(c)は接合ユニット8における下部材(ブロック16)の設置工程を、(d)はフーチングユニット6−1と接合ユニット8における下部材(ブロック16)の接続工程を、(e)は1次コンクリート26の打設による基礎部27の完成工程を示す。
図15(a)に示すように、図14(a)と同様にして既設堤防2に鋼管杭5による杭施工をし2列に所定間隔をおいて配列する。
次に、図15(b)に示すように、工場で製作し施工現場に輸送した箱枠からなるフーチングユニット6−1を一組(2本)の鋼管杭5,5の杭頭部に落とし込み、鋼管杭5の上端部がフーチング6の中に入るような格好にする。フーチングユニット6−1には、図に示すように、H形鋼18からなる接続鋼材がフーチングユニット6−1の側面から突出している。
次に、図15(c)に示すように、工場で製作し施工現場に輸送した上下2部材接合ユニット8のうち下部材(埋設内型枠22を有しH形鋼18からなる接続鋼材が突出したブロック16)をフーチング6,6間に設置する。フーチングユニット6−1から突出した接続鋼材のH形鋼18と上記下部材から突出した接続鋼材のH形鋼18は、高力ボルト25で締結できるよう対向して配置されている。
次に、図15(d)に示すように、フーチングユニット6−1から突出した接続鋼材のH形鋼18と上記下部材から突出した接続鋼材のH形鋼18とを添接板(図示省略)と高力ボルト25により締結して基礎部27の枠組みを完成する。
その後、図15(e)に示すように、フーチングユニット6−1における壁面を設けない内陸側の区画及び接続鋼材のH形鋼18で接続したフーチングユニット6−1と前記接合ユニット8の下部材との間に1次コンクリート26を打設して本発明の堤体1における基礎部27を完成する。
図16は、基礎部27の完成以降、本発明の堤体1の完成までの工程を示す。(f−1)と(f−2)は、フーチング6における壁ユニット14(第1壁パネル4−1)と接合ユニット8の上部材(第2壁パネル4−2)の立設工程を示す。(f−1)は前面からの図、(f−2)は背面からの図である。(g−1)と(g−2)は、2次コンクリート28の打設工程を示す。(g−1)は前面からの図、(g−2)は背面からの図である。(h)は、土の埋め戻し工程(道路3の構築工程)を示す。
図16(f−1)と図16(f−2)に示すように、第1壁パネル4−1を備える壁ユニット14の接続部10をフーチングユニット6−1内にある鋼管杭5上端部の管内に、第2壁パネル4−2を備える接合ユニット8の上部材の接続部10を埋設内型枠22で形成される孔24内にそれぞれ差し込んで壁ユニット14と接合ユニット8を立設し、第1壁パネル4−1と第2壁パネル4−2とからなる本発明の堤体1の壁面を形成する。第1壁パネル4−1と第2壁パネル4−2との間は、前述の通り、止水材により水密性が確保される(図示省略)。
次に、図16(g−1)と図16(g−2)に示すように、2次コンクリート28を打設し、フーチングユニット6−1の被覆、鋼管杭5上端部管内への充填による接続部10(連結支柱9)の固定、埋設内型枠22で形成される孔24への充填による接合ユニット8の上部材の固定などを行う。
その後、図16(h)に示すように、埋め戻しの土29による埋め戻しを行い、本発明の堤体1が完成する。また、必要に応じて、堤体1の背面側に道路3を構築する。
上記図15〜図16に示す上下2部材からなる接合ユニット8とH形鋼18からなる接続鋼材を用いた構築方法は図14に示す一体物の接合ユニット8と孔あき鋼板ジベル7からなる接続鋼材を用いた構築方法に比べ、施工時の位置決めの容易さで優れており、工程の短縮も図れる。一方、孔あき鋼板ジベル7からなる接続鋼材による構築方法では、位置調整の幅が大きいため、複雑な線形にも対応可能となる。したがって、両者は、施工現場となる沿岸部の地形によって使い分けられる。また、上記図15〜図16に示す構築方法では、H形鋼の活用がより図れる。そして、従来より少ないコンクリート量で強固な堤体1が効率良くかつ効果的に構築できる。