JP6165080B2 - マニピュレータシステムの初期化方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、このようなマニピュレータシステムとして、先端の湾曲部が操作可能な内視鏡と、内視鏡の処置具チャンネルに挿通させた処置具とからなる医療装置が記載されている。
この装置では、処置具の先端に外部から操作可能な処置具湾曲部が設けられており、内視鏡から突出させた処置具を能動的に湾曲させることができる。このため、内視鏡の湾曲部の動作に加えて、処置具湾曲部の動作が加わることにより、処置具先端の湾曲動作の自由度が増大する。これにより、術者の作業性を向上させることができる。
特許文献1に記載の技術では、処置具湾曲部の湾曲形状が湾曲駆動部によって制御されているため、曲がった状態の処置具チャンネルへの挿通性が悪いという問題がある。
これに対しては、処置具湾曲部の処置具チャンネルの挿通時には、駆動力を遮断して、処置具湾曲部が自在に湾曲するようにしておき、処置具の先端を内視鏡から突出させてから、駆動力を伝達して、湾曲操作を開始することも考えられる。
この場合、処置具の突出時には、処置具湾曲部が湾曲自在になっており、駆動開始の処置具の位置や姿勢が不定となるため、操作を開始する前に、処置具湾曲部の関節を所定の原点姿勢に初期化する必要がある。
例えば、処置具と駆動部とはモータが原点位置にあるときのみ装着可能としておけば、常に関節が原点姿勢になる。
しかし、一般に体内に挿入された内視鏡の挿入部は、複雑に湾曲しており、これに倣って湾曲する処置具の挿入部も湾曲している。処置具の駆動ワイヤは、例えば、シースに挿通されることで、経路長が変化しにくくなっているが、シースと駆動ワイヤとの間にはわずかな隙間がある。このため、シースが湾曲していると、駆動ワイヤの湾曲経路がシースの中心軸線の湾曲形状とずれて、駆動ワイヤの経路長が変化する。また、シースと駆動ワイヤ間の経路長変化に加えて、アウターチューブとシース間の経路長変化も生じる。
すなわち、ほとんどの湾曲状態では、駆動ワイヤの経路長は原点姿勢を決めた際の経路長とは異なる。
したがって、駆動部をモータの原点位置で装着するようにしても、必ずしも関節が原点姿勢にはならないという問題がある。
前記駆動部に対して前記駆動原点からの駆動指令値を送出する駆動制御部において、前記駆動指令値の許容限界を設定することにより、前記駆動リミットを設定することが好ましい。
本発明の第1の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いるマニピュレータシステムについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いるマニピュレータシステムの全体構成を示す模式的な斜視図である。図2は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる形状規定部材と、医療用器具の外観を示す模式的な斜視図である。図3(a)は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる形状規定部材の部分断面図である。図3(b)は、図3(a)における右側面図である。図4は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる医療用器具の模式的なシステム構成図である。
なお、各図面は、模式図のため、寸法や形状は誇張されている(以下の図面も同様)。
マスタマニピュレータ2は、操作者Opが操作入力を行うマスタアーム3と、処置用内視鏡装置10を用いて撮影した映像等を表示する表示部4と、マスタアーム3の動作に基づいて、スレーブマニピュレータ6を動作させるための操作指令を生成する制御部5とを備える。
マスタアーム3は、後述する処置用内視鏡装置10の湾曲部11Bや医療用器具20の関節部22(屈曲用関節)のように少なくとも1自由度の屈曲用関節を有するマニピュレータを動作させるために関節構造を有している。
また、マスタアーム3において操作者Op側に位置する端部には、医療用器具20の把持部26(後述)を動作させるための把持操作部(図示略)が設けられている。
多関節ロボット8には処置用内視鏡装置10が保持されている。処置用内視鏡装置10には、スレーブマニピュレータ6の一部を構成する医療用器具20を挿通させることが可能である。
多関節ロボット8、処置用内視鏡装置10、および医療用器具20は、マスタマニピュレータ2から発せられた操作指令に従って動作する。
ただし、本発明のマニピュレータシステムにおいて、多関節ロボットは必須ではなく、例えば処置用内視鏡装置10を図示しない補助者が保持する構成としてもよい。
外套管11は、近位端から遠位端に向かって、可撓性を有する管状の挿入部11C(図1参照)、例えば、節輪や湾曲コマ等を備えた周知の湾曲部11B、および円柱状の硬質材料で形成された先端部11A(形状規定部材)を、この順に備える。
湾曲部11Bは、マスタアーム3への操作入力によって、湾曲させることにより先端部11Aの向きを変更することができる。湾曲部11Bを湾曲させる機構としては、例えば、節輪や湾曲コマの内周面に挿通され、先端部11Aに固定された駆動ワイヤを挿入部11C内に挿通させて、近位端側の駆動モータなどで牽引する周知の構成を採用することができる。
挿入部11Cおよび湾曲部11Bの内部には、医療用器具20等の処置具を供給する経路である処置具チャンネル16が設けられている。
処置具チャンネル16の先端部16bは、図3(a)に示すように、先端部11Aを軸方向に貫通して、先端部11Aの先端面11aに開口する形状規定部12の基端側に接続されている。
処置具チャンネル16は、内径d1を有する可撓性の管状部材で形成されている。
形状規定部12は、本実施形態では、処置具チャンネル16の内径d1よりもわずかに小径の内径d0の円筒孔からなる。内径d0の設定の仕方は後述する。
撮像機構13および照明機構14は、先端部11Aの内部に配置され、図示略の電気配線や光ファイバが、湾曲部11Bおよび挿入部11Cの内部に挿通され、制御部5における電気回路や光源に連結されている。
撮像機構13および照明機構14は、先端部11Aの先端面11aにおいて、それぞれ光学的な開口窓を有しており、この開口窓を通して、先端部11Aの前方の外光を受光したり、照明光を前方に出射したりすることができる。
例えば、外套管11の内部に観察手段用チャンネルを設けておき、この観察手段用チャンネルに、先端に観察部を有する観察用の内視鏡を挿通して、観察部を外套管に対して進退可能としたり、湾曲可能としたりすることができる。
図4に示すように、医療用器具20は、マスタアーム3の操作により回動する関節部22(屈曲用関節)と、関節部22に連結された軸状部21と、処置対象等を把持する把持部26と、可撓性を有する筒状部23と、関節部22に駆動力を供給する駆動ユニット30と、を備える。
把持部26は、医療用器具20のエンドエフェクタであり、最も先端側(遠位端側)の軸状部21の先端に取り付けられている。
筒状部23は、最も基端側(近位端側)の軸状部21に接続されている。
以下では、関節部22の一例として、近位端側から順に、医療用器具20の延在方向に交差する方向に屈曲する関節部22Bと、関節部22Bの屈曲方向と直交する方向に屈曲する関節部22Aとを有するものとして説明する。
関節部22B、22Aは、いずれも、図示略のプーリを有しており、それぞれのプーリに、駆動ワイヤ24B、24Aが駆動力伝達部材として巻き回されて、端部が固定されている。以下では、駆動ワイヤ24B、24Aの区別を特に明示しない場合には、単に駆動ワイヤ24と称する。
このため、軸状部21Cは、医療用器具20において最も基端側の軸状部21になっており、関節部22Bが接続された端部と反対側の端部が筒状部23の先端に固定されている。
軸状部21Aは、医療用器具20において最も先端側の軸状部21になっており、関節部22Aと反対側の端部である先端に、把持部26が固定されている。
軸状部21Bの両端部には、関節部22B、22Aが連結されている。
以下では、このような軸状部21C、関節部22B、軸状部21B、関節部22A、軸状部21A、および把持部26からなる連結体を、先端屈曲部25と称する。
各関節部22は、連結された軸状部21の外形よりも突出しない大きさに形成されている。
例えば、本実施形態では、形状規定部12が円筒形状を有するため、d0=D0とすれば、各軸状部21は真直軸Oと同軸に整列し、関節部22の関節角度は、互いに隣接する軸状部21のなす角度を180°とする角度になる。内径d0が外径D0よりも大きい場合には、その差に応じて180°の近傍の一定の範囲の角度になる。
このような関節角度の設定バラツキの大きさは、駆動原点の設定誤算になり、把持部26の移動位置誤差になるため、医療用器具20の操作上、許容できる大きさになるように、内径d0を決めておく。
把持部26の駆動力の伝達手段は、特に限定されず、例えば、操作ワイヤによって把持部材26a、26bに連結した図示略のリンクを駆動するなどの手段が可能である。
把持部26は、図4に示すように、被把持物を把持することなく閉じている場合には、連結された軸状部21の外形よりも突出しない大きさになっている。
このため、先端屈曲部25は、真直に延ばした状態であって、把持部26を上記のように閉じた状態では、最大外径がD0の軸状体になっており、形状規定部12に進退可能に挿入可能な形状になっている。
駆動ワイヤ24A、24Bは、筒状部23の基端部から先端のプーリの近傍までの間では、両端部の位置が固定されたシース27の内部にそれぞれ挿通されている。
各シース27は、各駆動ワイヤ24と略同径の内径を有する密巻コイルなどによって形成され、これにより、外力を受けて湾曲しても、ほとんど長さが変化しないようになっている。ただし、シース27の内径は、駆動ワイヤ24を円滑に牽引するため、駆動ワイヤ24の外径よりもわずかに大きくなっている。
駆動機構部31は、回転軸32aによって回転支持され、駆動ワイヤ24が巻き回された駆動プーリ32と、駆動モータ34による駆動力の中継制御を行うため、駆動モータ34の出力軸34aと回転軸32aと間に設けられたクラッチ33(駆動力中継部)とを備える。
本実施形態では、駆動モータ34は、出力軸34aの回転量を検出するエンコーダ34bを有しており、マスタアーム3の操作に基づいて駆動モータ34の駆動制御を行う制御部5と通信可能に接続されている。
クラッチ33の種類は、機械的なクラッチ機構でもよいし、電磁クラッチ等の電気的なクラッチ機構でもよい。
クラッチ33による駆動力中継状態と駆動力解除状態との切り替え動作(以下、誤解のおそれがない場合には、単に切り替え動作と称する)は、例えば、駆動機構部31等に設けられた手動スイッチによる切り替えが可能である。本実施形態では、クラッチ33は、制御部5と通信可能に接続されており、マスタアーム3の操作に基づいて制御部5から送出される制御信号に基づいて、切り替え動作が行われる。
このため、各関節部22は、それぞれ独立に切り替え動作が可能であり、駆動力中継状態に切り替えられた場合には、それぞれ駆動量を独立に変更することができる。
制御部5は、駆動制御部として、駆動量算出部100、原点設定部101、およびクラッチ制御部102を備える。
原点設定部101によるこのような原点設定のタイミングは、本実施形態では、クラッチ制御部102によって、クラッチ33が駆動力解除状態から駆動力中継状態に切り替えられたタイミングでは必ず行われる。
このため、原点設定部101は、駆動量算出部100およびクラッチ制御部102と通信可能に接続されている。
本実施形態では、原点設定部101は原点を設定すると、各関節部22に対する駆動リミットを設定する。
この駆動リミットは、予め、各関節部22に対して決められており、原点設定部101は、それぞれの駆動リミットを、通信可能に接続された駆動量算出部100にソフト設定する。
一方、駆動量算出部100は、駆動指令値を駆動モータ34に送出する前に、駆動指令値が駆動リミットを越えていないかどうか判定する動作を行う。
駆動リミットを越えていると判定された場合には、駆動量算出部100は、駆動モータ34の駆動を停止し、駆動リミットを越えていることが分かる情報を表示部4に表示させる。
クラッチ制御部102は、クラッチ33を駆動力解除状態から駆動力中継状態に切り替えたときは、その動作が行われたことを原点設定部101に通知する。
図5は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法のフローを示すフローチャートである。図6(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法の模式的な動作説明図である。
また、医療用器具20をマスタアーム3によって正確に操作するには、各関節部22の関節角度が一定値になった状態に、駆動モータ34の駆動原点を対応付ける必要がある。
駆動原点の対応付けを外套管11に挿入する前、あるいは外套管11への挿入後であっても外套管11を体内への挿入する前に行うと、外套管11の湾曲に応じて先端屈曲部25の湾曲操作も行わなくてはならないため作業性が悪くなり、時間がかかってしまう。
本実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法では、外套管11を患者Pの体内への挿入した後に、医療用器具20の駆動原点の対応付けを含む初期化動作を行う。
具体的には、図5のステップS1〜S5を図5に示すフローにしたがって実行する。
操作者Opは、マスタアーム3を用いてクラッチ33を駆動力解除状態とする操作入力を行う。これにより、制御部5のクラッチ制御部102がクラッチ33に制御信号を送出して、クラッチ33を駆動力解除状態にする。
医療用器具20の挿入を進めて、図6(a)に示すように、先端屈曲部25を処置具チャンネル16の先端部16bまで到達したら、挿入を停止する。
以上で、ステップS1が終了する。
したがって、ステップS1は、外套管11を患者Pの体内に挿入する前に行うこともできるし、外套管11を患者Pの体内に挿入した後でも行うことができる。
処置の最初に医療用器具20を用いる場合には、外套管11を患者Pの体内に挿入する前に、先端屈曲部25を処置具チャンネル16の先端部16bまで挿入しておくと効率的である。
他の処置を行ってから医療用器具20を用いる処置を行う場合には、他の処置具を引き抜いた後に、外套管11を患者Pの体内にとどめた状態で、医療用器具20を処置具チャンネル16に挿入することが効率的である。
図6(a)に示す状態から、医療用器具20をさらに先端側に挿入していくと、把持部26を先頭として、先端屈曲部25が形状規定部12の内部に挿入される。
形状規定部12の内径d0は、先端屈曲部25の外径D0よりわずかに大きい程度である。このため、例えば、関節部22Aに連結された軸状部21A、21Bは、処置具チャンネル16内では屈曲していても、軸状部21A、21Bは、形状規定部12の内周面に沿って移動して嵌合し、一定の許容範囲内で真直に整列する。
これにより、関節部22Aの関節角度は、軸状部21A、21Bとの角度を略180°(180°の場合を含む)とする所定の角度になっている。
本実施形態では、図6(b)に示すように、形状規定部12に先端屈曲部25のすべての関節部22と、それらに連結された軸状部21の少なくとも一部が挿入されたら、操作者Opは、医療用器具20の挿入を停止する。
以上で、ステップS2が終了する。
しかし、本ステップでは、クラッチ33が駆動力解除状態になっているため、駆動プーリ32は自由に回転することができる。
操作者Opは、マスタアーム3を用いてクラッチ33を駆動力中継状態とする操作入力を行う。これにより、制御部5のクラッチ制御部102がクラッチ33に制御信号を送出して、クラッチ33を駆動力中継状態にする。
クラッチ33が駆動力中継状態に切り替わったら、クラッチ制御部102は、原点設定部101にクラッチ33が駆動力中継状態に切り替わったことを通知する。
このため、駆動モータ34が駆動されない限りは、先端屈曲部25における各関節部22の関節角度は、駆動力中継状態に切り替えられたときの関節角度が維持される。例えば、医療用器具20をさらに先端側に移動すると、先端屈曲部25が真直状態を保って、先端部11Aの前方に突出することになる。
以上で、ステップS3が終了する。
クラッチ33が駆動力中継状態に切り替わったことを通知された原点設定部101は、駆動量算出部100が各駆動モータ34に送出する駆動指令値の原点を、現在駆動モータ34の回転位置に設定する制御信号を送出する。これにより、駆動量算出部100は、現在の各駆動モータ34の回転位置を駆動原点と認識して、駆動量の算出を行うようになる。
以上で、ステップS4が終了する。
原点設定部101は上記ステップS4で駆動指令値の原点を設定すると、予め、各関節部22に対して決められた駆動リミットに対応する駆動指令値を、駆動量算出部100に送出し、駆動量算出部100に記憶させる。
例えば、関節部22の可動範囲が、駆動指令値で原点から±X0の場合であっても、医療用器具20の操作上必要な駆動範囲は、±X(ただし、X<X0)に過ぎないことが多い。これを越えて移動できるようにしておくと、操作を誤って過剰に動作させた場合に、患者Pの体内の他の処置具や器具と干渉する可能性がある。また駆動ワイヤ24にかかる負荷が過大になり、駆動ワイヤやマニピュレータが破損したりする可能性がある。
このため、本実施形態では、駆動リミットとして、例えば、上記駆動指令値Xを駆動量算出部100に記憶させる。
以上で、ステップS5が終了し、医療用器具20に対する本実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法が終了する。
例えば、操作者Opは、観察部15が取得した術野の映像を表示部4で確認しながら、医療用器具20の先端屈曲部25を外套管11から突出させる。
このとき、筒状部23が処置具チャンネル16の内部を移動することにより、駆動ワイヤ24の湾曲形状がわずかに変化する。しかし、先端屈曲部25の全長は、筒状部23の全長に比べて十分短いため、先端屈曲部25を突出させるのに要する移動による湾曲形状の変化では、駆動ワイヤ24の経路長はほとんど変化しない。したがって、先端屈曲部25は、各関節部22の関節角度を一定に保った状態で突出され、本実施形態では真直に延ばさされた状態を維持している。
例えば、先端屈曲部25を湾曲させる操作入力が行われると、制御部5の駆動量算出部100は、マスタアーム3の操作入力を解析して、操作入力された湾曲状態を実現する各関節部22の関節角度を求め、各関節角度に応じて、各関節部22に駆動力を伝達する各駆動モータ34に対する駆動指令値を算出する。
駆動量算出部100は、各駆動指令値が、駆動リミットを越えていないかどうか判定し、すべての駆動指令値が駆動リミットの範囲内である場合には、各駆動指令値を、各駆動モータ34に送出する。
駆動リミットを越えた駆動指令値が存在する場合には、駆動量算出部100は、各駆動指令値の送出を停止し、表示部4に駆動リミットを越えていることを警告するメッセージを表示部4に表示させる。操作者Opは、表示部4のメッセージを見て、マスタアーム3の操作入力を変更する。
なお、警告するメッセージを表示部4に表示するのは一例である。警告手段は、メッセージの表示以外の手段を採用することも可能である。例えば、アラーム音を発生させて警告するようにしてもよいし、アラーム音の発生と表示部4への表示とを併用するなどしてもよい。
このようにして、関節部22が駆動され、マスタアーム3の操作に基づいて先端屈曲部25が屈曲される。
また、このような原点復帰を行わず、単に、駆動力解除状態に切り替えた後に、先端屈曲部25を引き戻す操作を行ってもよい。この場合、各関節部22の回転が自由になるため、先端屈曲部25は、形状規定部12の内部に受動的に収納される。
医療用器具20を単独で、もしくは外套管11とともに患者Pの体内から引き出す場合には、クラッチ33を駆動力解除状態に切り替えてから、引き出す操作を行う。
このため、処置具チャンネル16が湾曲していても、医療用器具20を円滑に挿入することができる。
また、本方法では、処置具チャンネル16の湾曲状態に倣って医療用器具20のシース27および駆動ワイヤ24が湾曲した状態で、形状規定部12に先端屈曲部25を挿入して、先端屈曲部25の形状を規定し、この状態で駆動原点の設定を行う。
このため、処置具チャンネル16の湾曲状態が維持される限りは、湾曲状態とは無関係に、原点における先端屈曲部25の姿勢として、形状規定部12で規定された姿勢を正確に再現することができる。
このため、先端屈曲部25の正確な湾曲操作を行うことができる。
次に、上記第1の実施形態の変形例(第1変形例)のマニピュレータシステムの初期化方法について説明する。
図7は、本発明の第1の実施形態の変形例(第1変形例)のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる医療用器具の模式的なシステム構成図である。図8(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態の変形例(第1変形例)のマニピュレータシステムの初期化方法の初期化方法に用いる医療用器具の駆動ユニットの構成を示す模式的な断面図である。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
駆動ユニット30Aは、駆動ユニット30のクラッチ33、駆動モータ34に代えて、着脱部43(駆動力中継部)、駆動モータ34A(駆動部)を備え、駆動機構部31の筐体に固定部46を追加したものである。
固定側受け部材44および装着部材45は、略円板状の部材であり、互いに対向する面に、少なくとも周方向に滑ることなく嵌合し合う凹凸形状からなる凹凸連結面44a、45aを備える。
凹凸連結面44a(45a)の形状としては、例えば、断面山形状の複数の凸部が固定側受け部材44(装着部材45)の中心に対して放射状に延ばされるとともに、周方向に隣接して配置された形状を採用することができる。
本変形例では、一例として、駆動機構部31の筐体に設けられ、駆動モータ34Aの側面に嵌合する孔部31aと、孔部31aの内周面に進退可能に設けられた嵌合突起46aとを備える構成としている。
嵌合突起46aは、図8(a)に示すように、駆動モータ34Aの嵌合凹部47と嵌合する形状に設けられ、付勢部材46bによって、孔部31aの中心に向かって付勢されている。
付勢部材46bは、種々のばね部材や弾性部材を採用することができる。
図8(a)に示すように、駆動モータ34Aが装着された状態では、固定部46の嵌合突起46aが、駆動モータ34Aの嵌合凹部47に嵌合することにより、駆動モータ34Aの位置を、軸方向および周方向に固定している。
このような装着状態では、着脱部43の固定側受け部材44と装着部材45とが、凹凸連結面44a、45aにおいて、互いに軸方向および周方向に嵌合されている。
このため、駆動モータ34Aが駆動されると、出力軸34aの回転が、着脱部43を介して回転軸32aに伝達される。したがって、着脱部43は、駆動力中継状態になっている。
このような取り外し状態では、着脱部43が固定側受け部材44と装着部材45とに分離して、装着部材45が駆動モータ34Aとに引き抜かれる。
このため、着脱部43は、駆動力を伝達する機能を有しておらず、駆動モータ34Aが駆動されても、出力軸34aの回転は、回転軸32aに伝達されない。したがって、着脱部43は、駆動力解除状態になっている。
このため、着脱部43は、駆動力が中継される駆動力中継状態と駆動力が遮断されて屈曲用関節の動きが自由になる駆動力解除状態とが切り替え可能な駆動力中継部を構成している。
このように、本変形例は、駆動力中継状態と、駆動力解除状態とを、駆動モータ34Aの着脱によって実現する場合の例になっている。
すなわち、本変形例では、医療用器具20に代えて、医療用器具20Aを用いる点と、ステップS1、S3において、駆動力中継状態と、駆動力解除状態との切り替える動作を、操作者Opが駆動モータ34Aを固定部46に着脱することによって行う点とが、上記第1の実施形態と異なる。
また、本変形例のステップS4では、制御部5Aがクラッチ制御部102を有しないため、クラッチ制御部102に代えて、図示略の通知手段によって、駆動力解除状態になったことを原点設定部101に通知する点が上記第1の実施形態と異なる。
このような通知手段としては、例えば、装着部材45または駆動モータ34の着脱に連動して装着状態を検知する検知センサなどの手段や、操作者Opが装着を済ませてから押しボタンスイッチによって、手動で通知するといった手段を挙げることができる。検知センサの種類としては、例えば、光センサ、押し込みスイッチなどの機械的センサ、電界や磁界を用いた検知センサなどの例を挙げることができる。
本変形例では、図示は省略するが、嵌合突起46aが押し込まれる動作に連動した検知センサが設けられ、この検知センサの出力によって原点設定部101に駆動力中継状態になったことが通知される。
本変形例の駆動力解除状態では、駆動ユニット30Aから、駆動モータ34Aが取り外された状態になるため、医療用器具20Aが軽量化され、処置具チャンネル16への挿入動作などがより容易となる点で作業性を向上することができる。
次に、本発明の第2の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法について説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる医療用器具の模式的なシステム構成図である。図10は、本発明の第2の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる医療用器具の初期張力付加部の構成を示す模式的な斜視図である。図11は、本発明の第2の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる医療用器具の駆動部および駆動力中継部の構成を示す模式的な断面図である。図12は、本発明の第2の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる医療用器具の駆動力中継部の駆動力解除状態を示す模式的な断面図である。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
駆動ユニット30Bは、駆動ユニット30のクラッチ33、駆動プーリ32、駆動モータ34に代えて、駆動連結部53(駆動力中継部)、駆動モータ部34Bを備え、駆動機構部31の筐体に駆動モータ部34Bを着脱可能に固定する固定部46と、初期張力付与部60とを追加したものである。
なお、駆動連結部53、駆動モータ部34B、固定部46、および初期張力付与部60は、各関節部22に応じてそれぞれ1組ずつ設けられているが、いずれも同じ構成を有する。以下では、関節部22Bを駆動する場合の例で説明する。
第1内歯車50(第2内歯車51)は、駆動ワイヤ24Bを巻き回すための外周面50a(51a)と有しており、図示略の駆動機構部31の筐体に固定されたギアケース52に収容されている。
なお、本実施形態では、第1内歯車50(第2内歯車51)の回転が駆動ワイヤ24Bに確実に伝達されるように、駆動ワイヤ24Bの端部が、外周面50a(51a)上の図示略の位置で固定されている。これにより、駆動ワイヤ24Bに大きなたるみが生じた場合でもスリップなどを起こすことなく確実に牽引することが可能となる。
ただし、例えば、摩擦係合のみでもスリップを起こさない場合には、外周面50a(51a)固定しない構成も可能である。
駆動ワイヤ24Bにおける関節部22B側の両端部は、関節部22Bのプーリ22bに巻き回されてから接合部22cにおいてプーリ22bに固定されている。
駆動ワイヤ24Bの中間部は、駆動連結部53の第1内歯車50の外周面50a、初期張力付与部60の後述するプーリ55、および第2内歯車51の外周面51aに、この順に巻き回されている。
また、特に、プーリ55に対しては、駆動ワイヤ24Bが、摩擦係合している状態であるため、スリップしにくいように巻き付け角が大きくなるように巻き回すことが好ましく、1周以上巻き回すことがより好ましい。
軸受52aとしては、例えば、ボールベアリングを採用することができる。
第1内歯車50および第2内歯車51の中心部には、後述する駆動モータ部34Bのピニオン32Bが軸方向に挿入可能、かつ周方向に係合可能な内歯部50b、51bが回転中心軸O3と同軸に形成されている。
駆動モータ34Aは、出力軸34aにピニオン32Bが固定されている点以外は、上記第1変形例と同様の構成を有しており、マスタアーム3を用いた操作入力に基づいて駆動量算出部100から送出される駆動指令値に基づいて、回転動作が制御される。
本実施形態の固定部46は、駆動モータ34Aを固定する際に、ピニオン32Bが、内歯部50b、51bと略同幅(同幅の場合を含む)ずつ噛み合う位置に、駆動モータ34Aを固定する点を除いて、上記第1変形例の固定部46と同様の構成を有する。したがって、ピニオン32Bをこのような位置に挿入できれば、上記第1変形例の固定部46と同様に、図8(a)、(b)に示す一例以外の構成も可能である。
図11では、固定部46に対して、駆動モータ部34Bを装着した状態を描いている。これに対して、図12では、固定部46から駆動モータ部34Bを取り外した状態を描いている。
以下の説明では、駆動連結部53に対する駆動モータ部34Bの位置関係を説明する場合には、特に断らない限りは、駆動モータ部34Bの装着状態における位置関係を説明する。
また、駆動モータ部34Bは、逆に回転中心軸O3に沿って押し込んで、固定部46に装着することができる。駆動モータ部34Bが固定部46に装着されると、駆動モータ部34Bの軸方向の位置が位置決めされ、図11に示すように、ピニオン32Bが、内歯部50b、51bと略同幅ずつ噛み合う。
このため、バネ58は、プーリ保持部56をガイド57に沿って遠位端側に引っ張っており、駆動ワイヤ24Bは、バネ58の弾性復元力に対応する初期張力が付加されている。この場合、プーリ保持部56は、バネ58に牽引されて直線上を移動するため、ガイド57を削除した構成も可能である。
ただし、バネ58は、プーリ保持部56を遠位端側に向かって押圧するように配置してもよい。この場合には、バネ58が伸縮方向の側方に座屈するおそれがあるため、ガイド57とは異なる構成でもよいが、プーリ保持部56の移動方向を規定する何らかの移動ガイド部を設けることが好ましい。
図13(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる医療用器具の主要部の模式的な動作説明図である。
図13(a)、(b)に医療用器具20Bにおける関節部22Bを駆動する主要構成を模式的に示す。簡単のため、駆動ワイヤ24Bの配回しは平面に展開して表しているため、第1内歯車50、第2内歯車51の位置はずらして描いている。図13(a)は、駆動モータ部34Bの取り外し状態を示し、図13(b)は、駆動モータ部34Bの装着状態を示している。
なお、図13(a)、(b)は、模式図であり簡略化している。このため、駆動ワイヤ24Bの配回しや巻き付け角や巻き付け回数などを正確に表すものではない。
プーリ55は、バネ58によって、遠位端側に力Fで牽引されている。このため、駆動ワイヤ24Bには、プーリ55を境に分けられた第1ワイヤ部24R、第2ワイヤ部24Lのそれぞれにおいて、初期張力T(=F/2)が付加されている。
これにより、駆動ワイヤ24Bはたるみが生じることなく張架されている。
したがって、駆動連結部53は、関節部22Bの動きが自由になる駆動力解除状態になっている。
すなわち、制御部5Aの駆動量算出部100から駆動指令値が送出されると、駆動モータ34Aが駆動され、ピニオン32Bが回転し、第1内歯車50および第2内歯車51に駆動力が伝達される。
このように、本実施形態は、駆動力中継状態と、駆動力解除状態とを、駆動モータ部34Bの着脱によって実現する場合の例になっている。
具体的には、図14に示すステップS11〜S16を図14のフローにしたがって実行する。
図14は、本発明の第2の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法のフローを示すフローチャートである。
医療用器具20Bは、初期張力付与部60を有することにより、常時、初期張力が付加されている。このため、本ステップは、操作者Opや制御部5Aが特に何らかの操作を行う必要があるステップではない。
ただし、初期張力付与部60が故障すると、初期張力が付与されないおそれがあるため、初期張力付与部60が正常に動作していることを確認してから、次のステップに移行することが好ましい。
すなわち、ステップS12〜S16は、医療用器具20に代えて、医療用器具20Bを用いる点と、ステップS14では、上記ステップS3とは異なり、駆動力中継状態に切り替える動作を操作者Opが駆動モータ部34Bを固定部46に装着することによって行う点とが、上記第1の実施形態と異なる。
本実施形態では、医療用器具20Bは、ステップS11において、駆動力解除状態にされているため、ステップS12において、特に駆動力解除状態とする操作は行う必要はない。
また、ステップS11の実行後は、駆動ワイヤ24のたるみが除去された状態になっているため、ステップS14において駆動力中継状態になる際にも、駆動ワイヤ24のたるみが除去された状態である。
さらに、ステップS11において、各駆動ワイヤ24に初期張力を付加して、たるみを除去するため、ステップS12以降、処置具チャンネル16に沿って、医療用器具20Bが湾曲することにより、駆動ワイヤ24の経路長が変化しても、たるみが除去された状態になっている。
このため、ステップS14で駆動力中継状態に切り替えられる際にも、たるみが除去されているため、駆動ワイヤ24のたるみによる駆動誤差をなくすことができる。これにより、より正確な湾曲操作を行うことができる。
次に、上記第2の実施形態の変形例(第2変形例)のマニピュレータシステムの初期化方法について説明する。
上記第2の実施形態では、初期張力付加工程を、最初に行う場合の例で説明したが、初期張力を付加して駆動ワイヤ24のたるみを除去するのは、駆動原点の設定誤差を低減するためである。
このため、初期張力付加工程を実行するタイミングは、原点設定工程であるステップS15より前であれば、いつ実行してもよい。
このため、上記第2の実施形態のステップS11は、ステップS12、S13の間、ステップS13、S14の間、ステップS14、S15の間のいずれかのタイミングで実行するように、変形することができる。
ただし、駆動ワイヤ24のたるみを容易に除去できるのは駆動力解除状態であるため、駆動部連結工程であるステップS14よりも前に実行することがより好ましい。
初期張力付加工程を実行するには、具体的には、バネ58によってプーリ保持部56を引っ張る状態と、バネ58の付勢力を解除する状態とを切り替えるスイッチを設けておけばよい。
次に、本発明の第3の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法について説明する。
図15は、本発明の第3の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる医療用器具および形状規定部材の模式的なシステム構成図である。図16(a)、(b)は、本発明の第3の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる処置用内視鏡装置の関節位置検出部の位置と医療用器具の挿入位置との関係を示す模式的な断面図である。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
駆動ユニット30Cは、上記第2の実施形態の駆動連結部53、駆動モータ部34Bに代えて、駆動連結部53C、駆動モータ部34Cを備え、クラッチ33Cを追加したものである。
なお、駆動連結部53C、駆動モータ部34C、クラッチ33C、初期張力付与部60は、各関節部22にそれぞれ1組ずつ設けられているが、いずれも同じ構成を有する。以下では、関節部22Bを駆動する場合の例で説明する。
第1プーリ50Cおよび第2プーリ51Cは、上記第2の実施形態の第1内歯車50および第2内歯車51の内歯部50b、51bを削除して、それぞれ第1内歯車50および第2内歯車51と同様に回転可能に支持されている。ただし、本実施形態では、第1プーリ50Cは、図示略の可動支持部材によって、第2プーリ51Cに対して回転軸に沿う方向(図示両矢印方向。以下、回転軸線方向と称する)に接離可能に支持されている。
すなわち、可動支持部材は、第1プーリ50Cに回転軸線方向に押圧する一定以上の外力が作用しない状態では、第1プーリ50Cが第2プーリ51Cから離間する位置に支持している。第1プーリ50Cに一定以上の外力が作用すると、第1プーリ50Cは回転軸線方向に移動して第2プーリ51Cと当接する。
第1プーリ50Cおよび第2プーリ51Cの間の当接面は、凹凸形状を備える図示略のかみ合い面が形成され、当接時に互いに一体化して回転することが可能である。
また、第1プーリ50Cには、同様のかみ合い面が、裏面側にも設けられている。
かみ合い板34cは、対向位置の第1プーリ50Cのかみ合い面と当接した際に、出力軸34aからの回転駆動力を第1プーリ50Cに伝達するものである。
駆動モータ部34Cは、図示略の可動支持部材によって、回転軸線方向に進退可能に支持されている。
クラッチ33Cに、駆動モータ部34Cを進出させる制御信号が送信されると、駆動モータ部34Cが、第1プーリ50Cに向かって出力軸34aに沿う方向に移動する。
これにより、かみ合い板34cが第1プーリ50Cのかみ合い面に一定以上の力で押圧され、第1プーリ50Cの反対側のかみ合い面が、第2プーリ51Cのかみ合い面に当接し、かみ合い板34c、第1プーリ50C、および第2プーリ51Cが連結される。
このため、出力軸34aが回転すると、駆動モータ部34Cからの駆動力が中継され、第1プーリ50Cと第2プーリ51Cとが同期して回転する。すなわち、駆動力中継状態が形成される。
クラッチ33Cに、駆動モータ部34Cを後退させる制御信号が送信されると、駆動モータ部34Cが、第1プーリ50Cから離れる方向に移動する。
これにより、かみ合い板34c、第1プーリ50C、第2プーリ51Cが互いに離間し、駆動力が遮断される駆動力解除状態が形成される。
このため、クラッチ33Cは、駆動力中継状態と駆動力解除状態とを切り替える駆動力中継部になっている。
関節位置検出部80は、形状規定部12に対する関節部22および軸状部21の挿入状態を検出することができ、これにより、形状規定部12によって関節部22の関節角度の設定が成功しているかどうかを確認できれば、特に限定されない。
本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、関節角度を規定する関節部22と、これに連結された一対の軸状部21が、形状規定部12内に挿入されることにより、関節角度が所定値に設定される。
したがって、関節位置検出部80は、特定の関節部22がこれに連結された軸状部21とともに、形状規定部12に位置しているかどうかを検出できる手段をすべて採用することができる。
このような関節位置検出部80は、図16(a)に示すように先端屈曲部25を挿入していくと、例えば、軸状部21Aの先端が通過する時点で、検出信号が生成される。
このとき、図16(b)に示すように、軸状部21Cが、一定の長さ以上、形状規定部12に挿入された位置関係にあると、軸状部21A、関節部22A、軸状部21B、および関節部22Bは、すべて形状規定部12に挿入されていることになる。したがって、このような位置に関節位置検出部80を設置すれば、関節部22A、22Bの関節角度の設定に成功している状態であると判定できる。
例えば、関節位置検出部80を形状規定部12に軸方向に沿って複数設けることで、先端屈曲部25の軸状部21Aの先端部の通過状況や、挿入長さを判定することができる。例えば、軸状部21Aの位置として、許容できる範囲にそれぞれ関節位置検出部80を配置することにより、挿入量が多すぎて、関節角度の設定に失敗していることも判定することが可能である。
関節位置判定部104は、処置用内視鏡装置10Cに設けられた関節位置検出部80と通信可能に接続され、関節位置検出部80の検出信号に基づいて、形状規定部12に挿入された関節部22の形状規定部12における位置を判定するものである。
関節位置判定部104は、表示部4と通信可能に接続されており、関節位置検出部80の検出信号に基づいて判定した関節部22の位置、または関節角度の設定が成功したかどうかどうかの情報を、表示部4に表示させることができる。以下では、関節角度の設定に成功した場合に表示する情報を成功情報、関節角度の設定に失敗した場合に表示する情報を失敗情報と称する。
関節部22の位置を、数値やグラフによって表示させる場合は、操作者Opが数値やグラフを見て、成功、失敗を判定することができる。
図17は、本発明の第3の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法のフローを示すフローチャートである。
ステップS21〜S23は、医療用器具20Cを用いて行う点を除いて、上記第2の実施形態におけるステップS11〜S13(図14参照)と同様のステップである。
ただし、本実施形態のステップS23では、操作者Opは、適宜量だけ、医療用器具20Cを押し込んだら、ステップS24に移行する。
本実施形態では、関節位置判定部104が関節位置検出部80の検出信号を監視している。
本実施形態では、関節位置判定部104は、関節位置検出部80から検出信号を受信すると、表示部4に各関節部22の設定に成功情報を表示させる。
このため、操作者Opは、表示部4の表示を見て、関節位置判定部104による判定結果を知ることができる。
操作者Opは、表示部4に成功情報が表示されたことを確認したら、医療用器具20Cの挿入を終了して、ステップS25に移行する。
表示部4に成功情報が表示されていなかったら、ステップS23に移行する。
すなわち、操作者Opは、医療用器具20Cをさらに先端に向けて挿入する。ただし、関節位置判定部104が失敗情報や挿入位置などが表示される等で、挿入しすぎたことが分かった場合には、ステップS23において、医療用器具20Cを基端側に戻して挿入をやり直す動作も可能である。
ただし、上記第2の実施形態では、ステップS14において、駆動モータ部34Bを装着状態として、駆動力中継状態に切り替えたのに対して、本実施形態のステップS25では、上記第1の実施形態のステップS3と同様にクラッチ33を操作して駆動力中継状態に切り替える点が異なる。
本実施形態の初期化方法によれば、上記第1、2の実施形態と同様にして、屈曲用関節の関節角度を正確に初期化することができる。また、駆動リミットをして、医療用器具20Cや処置対象に対する過度の負荷がかかることを防止することができる。また、駆動ワイヤ24のたるみによる駆動誤差をなくすことができる。これにより、より正確な湾曲操作を行うことができる。
次に、上記第3の実施形態の変形例(第3〜第5変形例)のマニピュレータシステムの初期化方法について説明する。
図18(a)、(b)、(c)は、本発明の第3の実施形態の変形例(第3〜第5変形例)のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる関節位置検出部の例を示す模式的な断面図である。
処置用内視鏡装置10Dは、処置用内視鏡装置10Cの関節位置検出部80に代えて処置具チャンネル16の内周部の特定位置に配置され、その位置で軸状部21の到達を検知する関節位置検出部80Dを備える。
すなわち、本変形例は、上記第3の実施形態の処置用内視鏡装置10Cが、関節位置検出部80を形状規定部12に配置していたのに対して、形状規定部12以外の部位に同様のセンサを配置した場合の例になっている。
処置用内視鏡装置10Dは、処置用内視鏡装置10Cの関節位置検出部80に代えて、光学センサからなる関節位置検出部81を備える。
関節位置検出部81は、検出光を出射する光出射部81aと、検出光を光電変換し、受光量に応じて検出信号を生成する受光部81bとからなる。
光出射部81aと受光部81bとは、形状規定部12の内周面の近傍において、互いに対応する位置に配置されている。
関節位置検出部81によれば、先端屈曲部25の位置を非接触で検出することができるため、接触型の関節位置検出部80に比べると、先端屈曲部25をより円滑に進退させることが可能になる。
医療用器具20Fは、関節位置検出部として医療用器具20Cの筒状部23の近位端側の表面に、挿入量検出マーカ82(関節位置検出部)を設けた例である。本変形例の場合、外套管11側には、関節位置検出部80等のセンサを必要としないため、処置用内視鏡装置10Cは、上記第1の実施形態の処置用内視鏡装置10に代えることができる。
挿入量検出マーカ82としては、例えば、目視や図示しない光学読取センサ、磁気センサ等によって挿入量を読み取ることができる数直線や、目盛りなどのマーカを採用することができる。
このため、供給口16aに位置qを表す挿入量検出マーカ82が到達したら、関節角度の設定が成功したことが分かる。
そこで、操作者Opは、供給口16aにおいて、挿入量検出マーカ82を監視しながら、医療用器具20Fを挿入し、供給口16aにおいて位置qになったら、挿入を停止する。これにより、上記ステップS23、S24が実行されたことになる。
次に、本発明の第4の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法について説明する。
図19は、本発明の第4の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる医療用器具の主要部および形状規定部材を示す模式的な断面図である。図20は、本発明の第4の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法に用いる制御部の機能ブロック図である。
処置用内視鏡装置10Gは、処置用内視鏡装置10Cの外套管11に代えて、外套管11Gを備える。
以下、上記第3の実施形態と異なる点を中心に説明する。
本実施形態では、一例として、先端部91Aが、1つの関節部22と、これに連結された一対の軸状部21の一部とのみを挿入できる長さを有している。
関節位置判定部104Gは、関節位置判定部104の機能に加えて、関節位置検出部80の位置に到達した軸状部21の先端の個数をカウントする機能を有し、何番目の関節部22が関節角度の設定に成功したかを原点設定部101、クラッチ制御部102に通知する機能を有する。原点設定部101、クラッチ制御部102では、通知された関節部22に対してそれぞれの動作を行う。
このため、関節位置判定部104Gは、原点設定部101、クラッチ制御部102とも通信可能に接続されている。
図21は、本発明の第4の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法のフローを示すフローチャートである。
ステップS31は、上記第3の実施形態のステップS21と同様のステップである。
次に、ステップS33を行う。本ステップは、関節位置判定部104Gのカウンタをn=n+1として更新するステップである。
すなわち、外套管11Gでは、関節位置検出部80が、各関節部22に対する近位端側の軸状部21の先端の位置を検出するため、この検出信号によってこの軸状部21の先端(遠位端側)に連結された関節部22の関節角度に成功したことが検知される。
例えば、n=1のとき、関節位置検出部80が検出信号を発生するのは、先端屈曲部25における先端側から1番目の関節部22Aの関節角度の設定に成功した場合である。
そこでステップS37〜S39では、通知されたn番目の関節部22に対して、原点設定部101、クラッチ制御部102が、上記ステップS25〜S27と同様な動作を行う。
nがN未満の場合には、ステップS33に移行し、ステップS33〜S40を繰り返す。すなわち、ステップS33では、カウンタ値nを更新し、ステップS34〜S36では、操作者Opは、さらに医療用器具20Cの挿入を続けて、上記と同様にして、近位端側に配置された次の関節部22の関節角度の設定を行う。
nがN以上の場合には、初期化動作を終了する。これにより、医療用器具20Cの各関節部22が初期化される。
本実施形態の初期化方法によれば、形状規定部12の長さは、最短で、1つの関節部22とこれに連結された一対の軸状部21の一部のみを挿入できる長さを有すればよい。このため、先端屈曲部25の長さがどんなに長くても、外套管11Gのように患者Pの体内に挿入した状態でも、わずかのスペースで初期化動作が可能になる。
また、形状規定部12は、先端部11Aとは異なる1以上の管状部材によって構成されていてもよい。
この場合は、形状規定部12として、湾曲管形状を採用することができる。
形状規定部は、屈曲用関節の関節角度を規定することができれば、孔形状以外にも、例えば、屈曲用関節の外周を半周以上の範囲で覆う溝形状や、屈曲用関節の外周面に複数の位置で当接して関節角度が所定値となる位置に位置決めする適宜形状のガイド部を採用することができる。
この場合には、原点設定工程において、駆動中継部が駆動力中継状態に切り替えられるまでの間に、位置センサの検出出力に基づいて、駆動部の原点出しを行う原点出し工程を実行することが好ましい。
本工程では、例えば、駆動部の回転角度を、位置センサによる許容限度となる位置の中心位置に変更するような原点出しを行う。
この場合、位置センサによる駆動限界が優先される場合に、実質的な駆動範囲が制限されてしまうことを防止することができる。また、ソフト設定の駆動リミットが優先される場合に、位置検出センサによる駆動限界を越えて駆動リミットが設定されてしまうことを防止することができる。
この場合、上記第2、第3の実施形態のように、関節位置検出部80を備えていれば、この検出信号に基づいて挿入機構を動作させることにより、本発明のマニピュレータシステムの初期化方法を自動化することが可能である。
ただし、医療用器具と形状規定部材との組み合わせはこれには限定されない。
例えば、処置用内視鏡装置10は、手動の内視鏡装置に代えることが可能である。
また、処置用内視鏡装置10に代えて、電動、手動を問わず、ガイドチューブやトロッカを採用することができる。この場合、ガイドチューブやトロッカの一部に設けられた孔部を形状規定部として用いることが可能である。この場合、医療用器具としては、例えば、処置用内視鏡装置10等のような電動の内視鏡や、医療用器具20等のような先端に関節部を有する処置具を採用することができる。
しかし、形状規定部材は、患者Pの体内に挿入されることは必須ではない。例えば、形状規定部材として、患者Pの体外に設けられた筒状の校正器具を採用することができる。
すなわち、本発明のマニピュレータシステムの初期化方法は、形状規定部材をマニピュレータ以外の治具として用意しておき、患者Pの体外で、初期化を行う方法とすることが可能である。
例えば、上記第3の実施形態の処置用内視鏡装置10Cの先端部11Aを用いて、上記第4の実施形態のマニピュレータシステムの初期化方法を行うことが可能である。
この場合、すべての関節部22が形状規定部12に挿入されていて、関節角度の設定が可能であっても、先端側から順に初期化されていく。
また、上記第3の実施形態において、関節位置検出部80の位置をより近位端側に配置して、先端部11Aを有していても、上記第4の実施形態と同様の初期化動作を行うことも可能である。
2 マスタマニピュレータ
3 マスタアーム
4 表示部
5、5A、5C、5G 制御部(駆動制御部)
6 スレーブマニピュレータ
10、10C、10D、10E、10G 処置用内視鏡装置
11、11G 外套管
11A、91A 先端部(形状規定部材)
11B 湾曲部
11C 挿入部
12 形状規定部
15 観察部
16 処置具チャンネル
16a 供給口
16b 先端部
20、20A、20B、20C、20F 医療用器具(マニピュレータ)
21、21A、21B、21C 軸状部
22、22A、22B 関節部(屈曲用関節)
22b プーリ
23 筒状部
24、24A、24B 駆動ワイヤ(駆動力伝達部、駆動力伝達部材)
24R 第1ワイヤ部
24L 第2ワイヤ部
25 先端屈曲部
26 把持部
27 シース
30、30A、30B、30C 駆動ユニット
31 駆動機構部(駆動力伝達部)
32 駆動プーリ(駆動力伝達部)
33、33C クラッチ(駆動力中継部)
34、34A 駆動モータ(駆動部)
32B ピニオン
34B、34C 駆動モータ部
43 着脱部(駆動力中継部)
44 固定側受け部材
44a、45b 凹凸連結面
45 装着部材
50 第1内歯車
50C 第1プーリ
51 第2内歯車
51C 第2プーリ
53 駆動連結部(駆動力中継部)
60 初期張力付与部
80、80D、81、90 関節位置検出部
82 挿入量検出マーカ(関節位置検出部)
100 駆動量算出部
101 原点設定部
102 クラッチ制御部
104、104G 関節位置判定部
O 真直軸
O3 回転中心軸
Op 操作者
P 患者
T 初期張力
Claims (9)
- 屈曲用関節で連結された複数の軸状部を有する医療用器具と、前記屈曲用関節に駆動力を伝達する駆動力伝達部と、該駆動力伝達部に前記駆動力を供給する駆動部と、前記駆動力が中継される駆動力中継状態と前記駆動力が遮断されて前記屈曲用関節の動きが自由になる駆動力解除状態とが切り替え可能な駆動力中継部とを有するマニピュレータシステムの初期化方法であって、
前記駆動力中継部を前記駆動力解除状態にして、前記屈曲用関節の関節角度を所定値にする形状規定部を有する形状規定部材に、前記屈曲用関節と該屈曲用関節で連結された前記軸状部の対とを挿入して、前記屈曲用関節の関節角度を前記所定値に設定する関節角度設定工程と、
関節角度が設定された前記屈曲用関節に対して、前記駆動力中継部を前記駆動力中継状態に切り替える駆動部連結工程と、
該駆動部連結工程を実行してから、前記屈曲用関節の関節角度の状態を前記駆動部の駆動原点に対応付ける原点設定工程と、
を備える、マニピュレータシステムの初期化方法。 - 前記原点設定工程を実行してから、
前記駆動部に対して、前記屈曲用関節を駆動する際の前記駆動原点からの駆動リミットを設定する駆動リミット設定工程を実行する
ことを特徴とする、請求項1に記載のマニピュレータシステムの初期化方法。 - 前記駆動リミット設定工程では、
前記駆動部に対して前記駆動原点からの駆動指令値を送出する駆動制御部において、前記駆動指令値の許容限界を設定することにより、前記駆動リミットを設定する
ことを特徴とする、請求項2に記載のマニピュレータシステムの初期化方法。 - 前記駆動部は、原点出しを行うための位置センサを有しており、
前記原点設定工程において、前記駆動力中継部が前記駆動力中継状態に切り替えられるまでの間に、前記位置センサの検出出力に基づいて、前記駆動部の原点出しを行う駆動部原点出し工程を実行する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマニピュレータシステムの初期化方法。 - 前記駆動力中継部は、
前記駆動部を、前記駆動力伝達部に着脱可能に連結し、連結時に前記駆動力中継状態となり、連結解除時に前記駆動力解除状態となるようにした
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマニピュレータシステムの初期化方法。 - 前記駆動力中継部は、
前記駆動部と前記駆動力伝達部とをクラッチを介して連結することにより、該クラッチの接離に応じて、前記駆動力中継状態と前記駆動力解除状態とが切り替えられる
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマニピュレータシステムの初期化方法。 - 前記駆動力伝達部は、
線状の駆動力伝達部材を有しており、
前記原点設定工程を実行する前に、
前記駆動力伝達部材のたるみを除去するため、前記駆動力伝達部材に初期張力を付与する初期張力付与工程を実行する
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のマニピュレータシステムの初期化方法。 - 前記関節角度設定工程と前記駆動部連結工程との間、または前記関節角度設定工程の途中で、
前記形状規定部に対する前記屈曲用関節および前記軸状部の挿入状態を検出することにより、前記形状規定部によって前記関節角度の設定が成功しているかどうかを判定する挿入状態判定工程を実行し、
前記関節角度の設定に成功していると判定されなかった場合には、前記関節角度設定工程を繰り返す
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のマニピュレータシステムの初期化方法。 - 前記屈曲用関節と前記駆動部とが、それぞれ複数設けられており、
前記複数の屈曲用関節のうち、前記形状規定部に挿入可能な1以上の前記屈曲用関節に関して、少なくとも、前記関節角度設定工程、前記駆動部連結工程、および前記原点設定工程を実行することを、
前記形状規定部に挿入される前記1以上の前記屈曲用関節を換えて繰り返すことにより、
前記複数の屈曲用関節と前記複数の駆動部とのすべてを初期化する
ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のマニピュレータシステムの初期化方法。
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