JP6161438B2 - 脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減剤 - Google Patents

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本発明は、脂肪蓄積抑制技術、脂肪蓄積量低減技術に関するものである。詳細には、ヒトなどにおいて、安全に且つ効果的に脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減をさせるための剤、及び、当該剤を用いたヒトなどの脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減方法等に関するものである。
食の欧米化が進んだ近年の日本では、生活習慣病(糖尿病、高脂血症、高血圧症など)が多く発生しており、肥満はこれらの疾患の原因のひとつとされている。この肥満の対策としては、脂質摂取量(あるいは食事量)の制限、野菜類の摂取比率向上、継続的な運動などが挙げられているが、おいしいものを食べたいという欲求に相反する場合が多く、また日常生活の習慣を変えにくい場合も多く、簡単ではない。
肥満のうち、腹腔内の内臓の隙間に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満は、皮下脂肪型肥満よりも脂質が血管に入り込みやすく、生活習慣病の危険因子により強い関係があると言われている。肥満には、脂肪細胞が重要な役割を果たしており、脂肪細胞中に蓄えられる油滴の肥大化と新しい脂肪細胞への分化の繰り返しが肥満につながるとされている。
この脂肪細胞の肥大化や分化を抑制する方法としては、医薬品だけでなく、トレハロース(特許文献1)、酢酸又は酢酸塩(特許文献2)、イネ科植物の種子及び/又は地上部茎葉から抽出される成分(特許文献3)などの食品由来成分も提案され、これらを添加した飲食品も開発されている。
最近では、温州みかんなどから得られるβ−クリプトキサンチンの体脂肪低減作用が認められ(非特許文献1)、これを有効成分とする脂肪蓄積抑制剤及びそれを含有する飲食品も開発されている(特許文献4)。
しかし、当業界においては、安全に且つ効果的にヒトなどの脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減(脂肪細胞の肥大化や分化の抑制)ができる更なる成分、方法等の開発が引き続き望まれている。
国際公開第2004/089964号 特開2010−111585公報 特開2005−247695公報 特開2010−254592公報
Food Style 21;vol16,No.7,p27−30(2012)
本発明は、簡便且つ効果的で安全性の高い、脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減をするための剤、及び、当該剤を用いた脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減方法等を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究の結果、主に甜菜種子から抽出される下記化1で示されるフェノール性アミド化合物(以下、ビートアミド1ということもある)、及び/又は、下記化2で示されるフェノール性アミド化合物(以下、ビートアミド2ということもある)を有効成分としてヒトなどに経口投与又は給与することで、脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減を効果的に行うことができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の実施形態は次のとおりである。
(1)下記化1で示されるフェノール性アミド化合物、及び/又は、下記化2で示されるフェノール性アミド化合物を有効成分としてなる脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減剤(言い換えれば、脂肪細胞中の中性脂肪蓄積抑制及び/又は中性脂肪蓄積量低減剤、更に言えば、脂肪細胞の肥大化及び/又は分化抑制剤)。
(2)フェノール性アミド化合物が甜菜由来であることを特徴とする、(1)に記載の剤。
(3)フェノール性アミド化合物が甜菜種子由来であることを特徴とする、(2)に記載の剤。
(4)1食当たりの単位包装形態からなり、該単位中に、フェノール性アミド化合物を5〜600mg含有することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の剤。
(5)5〜600mg/日のフェノール性アミド化合物が、ヒトに対して1日1回経口摂取されるように用いられることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の剤。
(6)(1)の化1及び/又は化2で示されるフェノール性アミド化合物を5〜600mg含有する飲食品を経口的に継続摂取させることを特徴とする、脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減方法(ヒトに対する医療行為を除く)。
本発明によれば、下記化1で示されるフェノール性アミド化合物、及び/又は、下記化2で示されるフェノール性アミド化合物を有効成分としてなる剤等を用いることで、簡便に、また安全に且つ効果的に、脂肪細胞中の中性脂肪蓄積を抑制し、ひいては脂肪細胞の肥大化や分化を抑制し、内臓脂肪などの体内の脂肪が蓄積するのを抑制及び/又は脂肪蓄積量を低減させることができる。そして、これによって肥満を改善・抑制し、糖尿病やメタボリックシンドロームなどの発症を抑制することができる。
コントロール(DMSO(ジメチルスルホキシド;dimethyl sulfoxide))、あるいは、50μMのビートアミド1(Beet Amide−I)、ビートアミド2(Beet Amide−II)、又はフェルラ酸(Ferulic acid;FA)存在下での脂肪細胞の中性脂肪蓄積について測定した結果を示すグラフである。左上が分化誘導6日目の各中性脂肪(TG)量、右上が分化誘導8日目の各中性脂肪量、左下が分化誘導10日目の各中性脂肪量を示し、右下がこれらをまとまた折れ線グラフである(縦軸がTG量、横軸が分化誘導日数、グラフ中黒丸がコントロール(DMSO)、黒四角がビートアミド1、黒菱形がビートアミド2、黒三角がフェルラ酸を示す)。 コントロール(DMSO)、あるいは、100μMのビートアミド1(Beet Amide−I)、ビートアミド2(Beet Amide−II)、又はフェルラ酸(Ferulic acid;FA)存在下での脂肪細胞の中性脂肪蓄積について測定した結果を示すグラフである。左上が分化誘導6日目の各中性脂肪(TG)量、右上が分化誘導8日目の各中性脂肪量、左下が分化誘導10日目の各中性脂肪量を示し、右下がこれらをまとめた折れ線グラフである(縦軸がTG量、横軸が分化誘導日数、グラフ中黒丸がコントロール(DMSO)、黒四角がビートアミド1、黒菱形がビートアミド2、黒三角がフェルラ酸を示す)。
本発明においては、主に甜菜種子から抽出される下記化1で示されるフェノール性アミド化合物(ビートアミド1;N−トランス−フェルロイルホモバニリルアミン)、及び/又は、下記化2で示されるフェノール性アミド化合物(ビートアミド2;N−トランス−フェルロイルチラミン)を脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減剤等の有効成分として使用する。
Figure 0006161438
Figure 0006161438
ビートアミド1、ビートアミド2は、例えば、甜菜種子から有機溶媒(アセトン、エタノールなど)により抽出し、シリカゲルカラム等で分離、精製することで取得できる。また、種子以外の甜菜原料を用いても良いし、上記アミド化合物が含まれる他の植物原料等を用いることもできる。そして、ビートアミド1、ビートアミド2は、必要に応じて乾燥粉末状、顆粒状、液体状、ペースト状等として使用することができ、その形態は限定されるものではない。また、ビートアミド1及び/又はビートアミド2の粗精製品の使用も除外はされないが、一定以上(例えば10%以上)の含有率まで精製されたものを用いることが好ましい。
本発明に係る剤の形態としては、例えばビートアミド1及び/又はビートアミド2を粉末状、顆粒状、液状、ペースト状等として粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤、ゲル剤等としたものが例示される。これらの各種製剤は、有効成分となるビートアミド1及び/又はビートアミド2のみを経口投与できるよう単独成分として製剤化しても良いし、必要であれば医薬剤などの製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤等を併用して、常法により製剤化することもできる。また、ビートアミド1及びビートアミド2以外の脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減に関与する有効成分の併用も完全には除外されないが、本発明ではビートアミド1及び/又はビートアミド2のみを有効成分とすることが好適である。
製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤等としては、例えば、添加剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤、界面活性剤、防腐剤(抗菌剤)、香料、増粘剤、抗酸化剤、キレート剤、ビタミン類、アミノ酸類、水性媒体、糖質、水溶性高分子、pH調整剤、発泡剤など例示することができ、これらの成分の1種又は2種以上を適宜組み合わせて、目的とする剤型に応じて、原料の段階から製品が完成するまでの工程で配合されたものであればよい。
本発明に係るビートアミド1及び/又はビートアミド2を有効成分として含有する剤等は、ヒトなどに対して経口投与又は給与を行う。投与量は、5〜600mg/日の有効成分が、ヒトに対して1日1回経口摂取されることが例示され、好ましくは100〜400mg/日の有効成分が、ヒトに対して1日1回経口摂取されるのが有効である。なお、この数値から体重等による所要の換算等を行って投与量を設定してもよく、投与時期についても特に限定されず、1日摂取量を数回に分けて摂取しても構わない。
本発明は、主としてヒトの脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減をするものであるが、対象動物はヒトに限定されるものではなく、家畜、ペットなどのヒトを除く脂肪細胞を有する動物を対象として、これらに上記有効成分を経口投与又は給与しても良い。
このようにして、安全性の高いビートアミド1及び/又はビートアミド2を有効成分としてなる本発明に係る脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減剤を用いることにより、簡便に、また安全に且つ効果的に、脂肪細胞中の中性脂肪蓄積を抑制し、ひいては脂肪細胞の肥大化や分化を抑制し、内臓脂肪や皮下脂肪などが蓄積するのを抑制及び/又は低下させることができる。
なお、本発明において「脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減剤」とは、ビートアミド1及び/又はビートアミド2を医薬有効成分としてなる医薬剤だけでなく、上記有効成分を含有し、健康補助食品、保健機能食品、サプリメント等の特定の機能及び形態を有し、健康維持などを目的として摂取され、有効成分の用量(有効量)や用法が規定され且つ単位包装当たりでその用量が摂取できる、単に食品としてのみ利用されるものとは明確に区別される脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減用途の食品組成物(医薬部外品を含む)も包含される。但し、畜肉加工品、乳製品、魚肉加工品などの単に食品として利用されるのみの組成物に上記成分を含有させたものは除外され、また、脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減用途以外のものは当然除外される。
しかし、本発明の「脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減方法(ヒトに対する医療行為を除く)」においては、上記食品組成物だけでなく、ビートアミド1及び/又はビートアミド2を5〜600mg含有する飲食品(畜肉加工品、乳製品、魚肉加工品などの単に食品として利用されるのみの組成物を包含する)を経口的に継続摂取(毎日連続摂取)させる方法が包含される。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内においてこれらの様々な変形が可能である。
(ビートアミド1及びビートアミド2の取得)
ビートアミド1及びビートアミド2の取得は、以下のようにして行った。
まず、粉砕した甜菜種子を、等量以上のアセトンで3回抽出し、次にアセトンと同量のエタノールで3回抽出した。得られた抽出液を減圧濃縮し、これを炭酸水素ナトリウムで中和した後にヘキサンで洗浄して油分を除去した。得られた水溶性成分を含む溶液を等量以上の酢酸エチルで6回抽出し、酢酸エチル層を減圧濃縮して濃縮液を得た。これを、シリカゲルカラムに供給し、ベンゼン、酢酸エチル、エタノールの混合比を変えながら溶出し、第4フラクションからビートアミド1及びビートアミド2を単離した。
(ビートアミド1及びビートアミド2の生理活性確認試験)
実施例1で取得したビートアミド1、ビートアミド2の生理活性をフェルラ酸と比較確認するため、以下の試験を実施した。
3T3−L1細胞(マウス胎児性由来前駆脂肪細胞)を24well plate上で培養(37℃、5%CO存在下)した。下記表1に示す分化誘導培地で3日間培養した後、維持培地に交換することで脂肪細胞への分化(脂肪蓄積)を誘導した。分化誘導培地添加時を0日目として、10日目まで培養を続けた。ビートアミド及びフェルラ酸は、最終濃度50μM又は100μMで0日目から培地に添加した。脂肪細胞は0、6、8、10日目にサンプリングした。サンプリングした細胞をPBS(リン酸緩衝生理食塩水;phosphate buffered saline)で2回洗浄後、再度PBS100μLを添加し、超音波破砕装置で細胞ホモジネートの作成を行った。その後、ホモジネートとイソプロパノール(5%Triton X−100を含有する)を4:1の割合で混合し、30秒間撹拌した。中性脂肪量の測定にはTG−ENカイノス(株式会社カイノス製品)を用いた。全ての数値は平均値±標準偏差で表した。有意差の判定は一元配置分散分析後、Tukey−Kramerの検定で行った(P<0.05)。
Figure 0006161438
この試験結果を図1及び図2に示した。図1は50μMのビートアミド1、ビートアミド2、又はフェルラ酸存在下での脂肪細胞の中性脂肪蓄積について測定した結果である。ビートアミド2群がコントロール群およびビートアミド1群に比べて6、8、10日目の全てで有意な中性脂肪量の減少を示した。ビートアミド1群はビートアミド2群に比べて効果が弱いものの、6、8日目ではコントロール群より有意に中性脂肪蓄積を抑制した。フェルラ酸群は6日目ではビートアミド2群と同程度の強い抑制効果を示したが、8日目以降では抑制効果がビートアミド2群に比べ弱くなり、ビートアミド1群とほぼ同等の効果を示すにとどまった。
図2は、添加濃度を高めた場合(100μM)での中性脂肪蓄積についての測定結果である。50μM添加時と同様に、ビートアミド2群がコントロール群に比べて6、8、10日目の全てで有意な中性脂肪量の減少を示し、ビートアミド1群に比べて6、8日目で有意な中性脂肪量の減少を示した。特に6日目ではフェルラ酸群よりも有意に低下し、この数値は図1で示した50μMビートアミド2群の6日目の数値よりもさらに低値であった。100μMビートアミド1群はビートアミド2群に比べて抑制効果が弱かったが、コントロール群に対して6、8、10日目で有意な減少を示した。フェルラ酸群についてもビートアミド2群に比べて抑制効果が弱かったが、コントロール群に対して6、8日目で有意な減少を示した。ただし、10日目ではコントロール群との間に有意な差は見られなくなっていた。
これらの結果から、アミド化合物(ビートアミド1及びビートアミド2)とフェルラ酸は3T3−L1細胞での中性脂肪蓄積を抑制することが明らかとなった。特にビートアミド2はビートアミド1及びフェルラ酸よりも強い抑制効果を示し、かつその効果は他に比べて極めて持続性の高いものであった。
以上より、ビートアミド1及びビートアミド2が脂肪細胞中の中性脂肪蓄積を抑制する効果を発揮すること、つまり、ビートアミド1及びビートアミド2が脂肪蓄積抑制の生理活性を有することが確認された。
本発明を要約すれば、以下の通りである。
本発明は、簡便且つ効果的で安全性の高い、脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減をするための剤、及び、当該剤を用いた脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減方法等を提供することを目的とする。
そして、上記化1で示されるフェノール性アミド化合物(ビートアミド1)、及び/又は、上記化2で示されるフェノール性アミド化合物(ビートアミド2)を有効成分として経口投与又は給与することで、脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減を効果的に行うことができる。

Claims (6)

  1. 下記化3で示されるフェノール性アミド化合物を有効成分としてなる脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減剤。
    Figure 0006161438
  2. フェノール性アミド化合物が甜菜由来であることを特徴とする、請求項1に記載の剤。
  3. フェノール性アミド化合物が甜菜種子由来であることを特徴とする、請求項2に記載の剤。
  4. 1食当たりの単位包装形態からなり、該単位中に、フェノール性アミド化合物を5〜600mg含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤。
  5. 5〜600mg/日のフェノール性アミド化合物が、ヒトに対して1日1回経口摂取されるように用いられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤。
  6. 請求項1の化3で示されるフェノール性アミド化合物を5〜600mg含有する飲食品を経口的に継続摂取させることを特徴とする、脂肪蓄積抑制及び/又は脂肪蓄積量低減方法(ヒトに対する医療行為を除く)。
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