JP6160295B2 - 強誘電体膜の成膜方法並びに成膜装置 - Google Patents
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Description
そしてさらに前記した前駆体液塗膜の形成から結晶化までのプロセスを所定回数繰り返すことによって、所望の厚みの強誘電体膜を形成する。
(1)前駆体液中に溶存していた気体が発泡して形成された気泡が、塗布プロセス以前より前駆体液中に存在していた気泡共々、前駆体液あるいは前駆体塗膜の外に抜け出る現象。
(2)前記気泡が前記加熱プロセスを経ても外に抜け出ること無く、形成された強誘電体膜中に空隙となって残留する現象。
そして形成された強誘電膜中に前記気泡が膜外に抜け出た痕跡あるいは空隙が残されると、これらは強誘電膜中の欠陥となり、前記強誘電膜が形成された基板をさらに加工して得られる様々な素子・デバイスの不良原因となる。
逆に塗布液を高い圧力下で加圧することで液中の気泡を液内に溶解させる特許文献5の手法では、塗布液を基板上に滴下する際に、塗布液は必ず常圧環境、つまり塗布液にとって直前の加圧環境下と比較して減圧環境下に雰囲気が変化する。その際に高圧環境下に置かれていた故に塗布液中に溶解していた気体が溶解できなくなって発泡し、これが欠陥原因となる問題があった。
さらに塗布液を基板上に滴下する際の滴下速度を限定することにより、気泡の巻き込みを回避する特許文献7の手法は、塗布液を基板上に滴下する際に新たに生じる気泡に起因する欠陥は回避できる。しかしながら、この手法では元々塗布液中に既に発生していた気泡、溶存していた気体に起因する欠陥の対策にはなり得ない問題があった。
本発明の手法では、欠陥がない強誘電体膜を形成し、高い歩留まりで強誘電体膜を加工して圧電素子等のデバイスを製造することが、複雑なプロセスの追加とそれに伴う大きな装置コストの上昇、またスループットの低下を抑止できる。
そして前記した塗布工程〜結晶化工程を所定回数(Y回)繰り返すことによって、所望の厚みを持った強誘電体膜を形成し、これをさらに加工することによって、狙いとする圧電素子等のデバイスを得る。
なお、乾燥工程、熱分解工程および結晶化工程を、本発明に係る強誘電体膜の成膜方法では熱処理工程と称することもあり、乾燥手段、熱分解手段および結晶化手段を、本発明に係る強誘電体膜の成膜装置では熱処理手段と称することもある。また、塗布工程および熱処理工程を繰り返す工程を繰り返し工程、塗布手段および熱処理工程を繰り返す手段を繰り返し手段と称することもある。
なお、上記前駆体液が全面に盛られ、第二の回転速度にてシリコンウェハが回転している際には、前駆体液はまだ充分な流動性を保持している状態にあるため、脱気・脱泡処理によって生じた気泡は、前駆体液内部に痕跡を残すことなく液面まで浮上するとともに、シリコンウェハ外縁近傍まで液面を移動することができる。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
収納部材1に収納されたウェハは、搬送装置2により、まず始めにアライナー3によってウェハの位置決め・芯だしが成された後、図2に示すフローチャートに従って、チャート中の各工程を担当する各装置間を流動する。
なお、本実施形態では、熱分解工程と結晶化工程を共通のRTA装置1台で行っているが、熱分解工程と結晶化工程をそれぞれ別にした2台のRTA装置で行う、あるいは熱分解工程をホットプレート、さらに結晶化工程をRTA装置で行う構成でも良い。
前記したウェハの流動に関し、スピナー塗布装置4にて前駆体液が塗布されたウェハ(図示せず)は、搬送装置2によってホットプレート5に投入され、塗布された前駆体膜の加熱・乾燥処理を行う。
乾燥工程を終えたウェハは、搬送装置2によってRTA装置6に投入され、前駆体乾燥膜の加熱・熱分解処理を行う。
続いて前記した塗布工程〜熱分解工程を所定回数(X回)繰り返した後、RTA装置6にて、熱分解温度より高い結晶化温度までシリコンウェハ(上に成膜された膜)を加熱して結晶化を行い、強誘電体薄膜を形成させる。
そして前記した塗布工程〜結晶化工程を所定回数(Y回)繰り返すことによって、所望の厚みを持った強誘電体膜を形成し、これをさらに加工することによって、狙いとする圧電素子等のデバイスを得る。
図4に本発明に係る手法によって前駆体液をウェハ上に塗布するスピナー塗布装置4を示す。
スピナー塗布装置4は、シリコンウェハ10を吸着保持するスピナーチャック11、図示しないスピンドルモーターと連結してスピナーチャック11に吸着保持されたシリコンウェハ10を図示しない制御装置に入力されたプログラムに従って回転させるスピンドル12、図示しない前駆体液13を収納し、この前駆体液13を図示しない加圧ガスによって加圧する加圧容器14、加圧された前駆体液14をアーム15先端に装着されたノズル16まで流送する送液ライン17によって構成される。なおシリコンウェハ10、スピナーチャック11、スピンドル12は、スピンコート法による前駆体液の塗布操作によって周囲に飛散する液滴によって、自動成膜装置100内部が汚染されることの無いように、スピナーカップにて周囲を覆われているが、図示することを省略している。
次に前駆体液13が全面に盛られた状態のシリコンウェハ10を第二の回転速度にて回転させながら前駆体液13の脱気・脱泡処理を行う(図5(c))。
なお、前記した前駆体液13を加熱する際の液温は、必ず前駆体液13に使用されている溶媒の沸点より低い温度に設定している。このような温度設定にて加熱することにより、脱気・脱泡処理中に揮発する前駆体液溶媒の蒸発を抑制し、得られる前駆体膜並びに最終的な強誘電体膜の膜厚変動を回避できる。
また前記した脱気・脱泡処理は、スピナーチャック11内部に設けられたヒーター20を作動させることによって行っているが、同時に超音波振動を与えると、より好ましい効果が得られる。
さらに前記第二の回転速度にてシリコンウェハ10の回転を所定時間継続する。すると、脱気・脱泡処理によって液面まで浮上、遠心力によって移動した気泡18はシリコンウェハ10外縁近傍に集まった状態になる(図5(e))。
なお前記した脱気・脱泡処理工程において、前駆体液13はまだ充分に流動性を保持した状態にあるため、前記気泡18の浮上並びに外縁近傍への移動による痕跡が液中並びに液面表層に残ることはほとんど無い。
その結果、シリコンウェハ10上には、所望の膜厚の前駆体膜19が形成される(図5(g))。
また、第二の回転速度は、基板外周端まで広がった塗布液が、シリコンウェハの裏側に廻り込まない(それ以上外側へ広がろうとしない)弱い遠心力が塗布液に加えられ、かつ極めて軽い気泡には、外側に移動するだけ強い遠心力が気泡に加えられる回転速度である。換言すると、シリコンウェハ全面に広げた塗布液の膜(液盛り)中の気体成分が本発明の手法によって発泡し、その後塗布液表面に浮上した前記泡を遠心力でシリコンウェハ外周端まで移動させる為の速度である。塗布液表面の泡は外周側に向かって移動する一方で、シリコンウェハ上の塗布液がウェハの裏面に「回りこむ」ことがない回転速度範囲に設定されるものであって、この回転速度は、塗布液の粘度、表面張力によって決まるものであり、一義的に定まるものではない。
例えば、粘度が高い、あるいは表面張力が高い塗布液の場合、シリコンウェハ上の塗布液はウェハの裏面に回りこみ難い性質を持つ為、第二の回転速度を(第一の回転速度より)速く設定し、効率的に塗布液表面に浮上した前記泡を遠心力でシリコンウェハ外周端まで移動させることができる。
逆に、粘度が低い、あるいは表面張力が低い塗布液で第二の回転速度を速く設定すると、シリコンウェハ上の塗布液はウェハの裏面に回りこんで裏面を汚染し、その後のプロセスで不具合を起こす原因となる。その為、第二の回転速度は、第一の回転速度より、低く設定しなければならない。
なお、粘度が高い、あるいは表面張力が高い塗布液の場合においても、速い速度で第一の回転速度が設定されている(短時間で滴下した塗布液をシリコンウェハ外周端まで広げる条件)条件では、第二の回転速度をさらに速く設定してしまうと、シリコンウェハ上の塗布液がウェハの裏面に回りこんで裏面を汚染してしまう。従って第二の回転速度は、第一の回転速度と同じあるいは遅い速度に設定する必要がある。
以上の説明のように、第二の回転速度は、第一の回転速度との相対的関係というよりも、シリコンウェハ全面に広がった塗布液膜の「裏周り」を生じさせる速度と、塗布液膜表面に浮上した「泡が外周に向かって移動する」速度との関係で決まるものである。
シリコンウェハは下部電極として白金膜(膜厚250nm)、SrRuO3膜(膜厚50nm)を成膜したウェハ、強誘電体前駆体液として、2−メトキシエタノール(沸点:125℃)を主溶媒とし、Pb:Zr:Ti=110:53:47の組成比で調合されたPZT前駆体液を準備した。このシリコンウェハと前駆体液を用いて、自動成膜装置図3においてフローチャート図2のごとく強誘電体膜の形成を実施した。
次に、搬送装置2により、主溶媒の沸点より高い140℃に加熱されたホットプレート5に1分間投入される(乾燥工程)。
次に、ウェハは、搬送装置2により、RTA装置6に投入され、熱分解温度:550℃にて5分間加熱、強誘電体前駆体の乾燥膜中の有機物成分を分解させ、一層目のアモルファス層を得た(熱分解工程)。
続いてウェハは、搬送装置2により冷却ステージ7に移動し、冷却ステージ7上に2分間(以上)留め置かれることによりウェハ温度を室温まで冷却した(冷却工程)。
そしてさらに、前記した塗布工程〜結晶化工程までのプロセスを10回繰り返すことで厚さ約2μmの強誘電体結晶膜を得た。
スピンコート装置4に投入、スピナーチャック11に吸着されたシリコンウェハ10は、図示しない制御装置に入力されたプログラムに従って回転動作するスピンドル12によって、第一の回転速度:100rpmの回転数で回転する。
続いてアーム14が移動して第一の回転速度:100rpmの回転数で回転しているシリコンウェハ10の中心部に、ノズル16から前駆体液13を3ml滴下する。
シリコンウェハ10の中心部に滴下された前駆体液13は、遠心力によって外周方向に展延し、シリコンウェハ10全面に盛られた状態となる。
次に、前駆体液13が全面に盛られた状態のシリコンウェハ10をスピナーチャック11内部に設けられたヒーター20を作動させて加熱し、前駆体液13の液温を前駆体液に用いている2−メトキシエタノール溶媒の沸点(125℃)より低い100℃まで上昇させる。溶液温度は図示しない赤外線温度計でスピナー装置4の上部から測定し、測定値をヒーター20動作にフィードバックさせて制御を行う。
液温が上昇すると、溶存していた気体が溶解しきれなくなって発泡し、もともと前駆体液13中に存在していた気泡共々液面まで浮上する。
また前記した脱気・脱泡処理工程において、前駆体液13はまだ充分に流動性を保持した状態にあるため、前記気泡18の浮上並びに外縁近傍への移動による痕跡が液中並びに液面表層に残ることはほとんどない。
その結果、シリコンウェハ10上には、所望の膜厚の前駆体膜19が形成される。
その為、得られた前駆体膜19を図2に示したフローに従って乾燥、熱分解、さらに結晶化を行う加熱処理を経て得られた強誘電体膜中(図6及び図7にSEM写真を示す。)には、図1のSEM写真に示すような膜中の空隙の欠陥が出現することがない。またウェハ間の強誘電体膜圧ばらつきも小さく抑えられている。その結果、この強誘電体膜を加工して圧電素子等のデバイスを得る際の歩留まりを高く保つことが可能になる。
また前記したスピン塗布工程時における前駆体液13の温度が、常に脱気・脱泡処理条件温度に管理されている為、得られた前駆体膜19の膜厚、さらに最終的な強誘電体膜のウェハ間ばらつきが小さく抑えられている。
2:搬送装置
3:アライナー
4:スピナー塗布装置
5:ホットプレート
6:RTA装置
10:シリコンウェハ
11:スピナーチャック
12:スピンドル
13:前駆体液
14:加圧タンク
15:アーム
16:ノズル
17:送液ライン
18:気泡
19:前駆体膜(塗膜)
20:ヒーター
100:自動成膜装置
Claims (4)
- 化学溶液堆積法で強誘電体膜を成膜する強誘電体膜の成膜方法であって、
溶媒を含む前駆体液を塗布して基板またはウェハ上に塗膜を形成する塗布工程と、
前記塗膜に熱処理を行って強誘電体膜を成膜する熱処理工程と、
前記塗布工程および前記熱処理工程を繰り返して積層成膜する繰り返し工程と、を備え、
前記塗布工程は、第一の回転速度にて前記基板またはウェハを回転させながら所定の量の前記前駆体液を当該基板またはウェハ上に滴下し、前駆体液を基板またはウェハの外縁まで展延させて塗膜を形成した後、第二の回転速度にて前記基板またはウェハを回転させながら当該基板またはウェハ全面に展延させた前記塗膜の脱気・脱泡処理を行うとともに、前記第二の回転速度で回転させながら、前記溶媒の沸点よりも低い温度で前記塗膜を加熱し、次いで、前記第二の回転速度よりも高い回転速度で前記基板またはウェハを回転させることを特徴とする強誘電体膜の成膜方法。 - 前記第二の回転速度が、前記基板またはウェハの外縁まで展延させた前記前駆体液が当該基板またはウェハの裏面にまで回り込まないだけ低く、且つ、脱気・脱泡処理により生じた気泡が前記基板またはウェハの外縁まで移動するだけ高く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の強誘電体膜の成膜方法。
- 化学溶液堆積法で強誘電体膜を成膜する強誘電体膜の成膜装置であって、
溶媒を含む前駆体液を塗布して基板またはウェハ上に塗膜を形成する塗布手段と、
前記塗膜に熱処理を行って強誘電体膜を成膜する熱処理手段と、
前記塗布工程および前記熱処理工程を繰り返して積層成膜する繰り返し手段と、を備え、
前記塗布手段は、第一の回転速度にて前記基板またはウェハを回転させながら所定の量の前記前駆体液を当該基板またはウェハ上に滴下し、前駆体液を基板またはウェハの外縁まで展延させて塗膜を形成した後、第二の回転速度にて前記基板またはウェハを回転させながら当該基板またはウェハ全面に展延させた前記塗膜の脱気・脱泡処理を行うとともに、前記第二の回転速度で回転させながら、前記溶媒の沸点よりも低い温度で前記塗膜を加熱し、次いで、前記第二の回転速度よりも高い回転速度で前記基板またはウェハを回転させることを特徴とする強誘電体膜の成膜装置。 - 前記第二の回転速度が、前記基板またはウェハの外縁まで展延させた前記前駆体液が当該基板またはウェハの裏面にまで回り込まないだけ低く、且つ、脱気・脱泡処理により生じた気泡が前記基板またはウェハの外縁まで移動するだけ高く設定されていることを特徴とする請求項3に記載の強誘電体膜の成膜装置。
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