JP2015082509A - 強誘電体膜の成膜装置及び強誘電体膜の成膜方法 - Google Patents

強誘電体膜の成膜装置及び強誘電体膜の成膜方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2015082509A
JP2015082509A JP2013218052A JP2013218052A JP2015082509A JP 2015082509 A JP2015082509 A JP 2015082509A JP 2013218052 A JP2013218052 A JP 2013218052A JP 2013218052 A JP2013218052 A JP 2013218052A JP 2015082509 A JP2015082509 A JP 2015082509A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
precursor liquid
coating
drying
forming
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2013218052A
Other languages
English (en)
Inventor
上田 恵司
Keiji Ueda
恵司 上田
惇 竹内
Jun Takeuchi
惇 竹内
光 下福
Hikari Shimofuku
光 下福
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ricoh Co Ltd filed Critical Ricoh Co Ltd
Priority to JP2013218052A priority Critical patent/JP2015082509A/ja
Publication of JP2015082509A publication Critical patent/JP2015082509A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Formation Of Insulating Films (AREA)

Abstract

【課題】化学溶液堆積法により異なる熱履歴を経たアモルファス膜の積層を高温加熱して結晶化させて得た強誘電体膜において、厚み方向でその結晶性を均一化し、良好な特性の強誘電体膜を得る。【解決手段】複合酸化物の前駆体液を塗布して前駆体液塗膜を形成する塗布工程と、前駆体液塗膜を乾燥・熱分解を行い複合酸化物のアモルファス膜を形成する乾燥・熱分解工程とを複数回繰り返してアモルファス膜を複数積層し、アモルファス膜の積層を高温加熱して複合酸化物結晶膜を形成する結晶化工程とをおこなう強誘電体膜の成膜する際、繰り返に伴い塗布工程で塗布する前駆体液に分散されている固形分の粒径分布のピークを大きくし、かつ、各前駆体液塗膜の乾燥・熱分解工程の熱分解加熱温度を高くする。【選択図】図7

Description

本発明は、圧電素子等に用いられる強誘電体膜の成膜装置および強誘電体膜の成膜方法に関するものである。
従来、圧電体膜を電極で挟むように構成された圧電素子を、例えばインクジェット記録装置の液滴吐出手段で用いることが知られている。この液滴吐出手段では、ノズル孔と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子で変形させることで圧力発生室内のインクを加圧してノズル孔からインクの液滴を吐出させる。この際、圧電素子の軸方向の伸長収縮を利用するものとたわみ力を利用するものとの2種類が知られているが、たわみ力を利用するものでは圧電体膜としてチタン酸ジルコン酸鉛(以下、PZTという)などの複合酸化物結晶膜からなる強誘電体膜が用いられる。PZTの複合酸化物結晶膜の製造方法としては、スパッタリング法、あるいはゾルゲル法、MOD法((Metal Organic Deposition)等の化学溶液堆積法(Chemical Solution Deposition:以下、CSD法という)(例えば、特許文献1)が知られている。
CSD法では、形成する複合酸化物結晶膜の組成に合わせて、複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマーが固形分として溶媒中に分散された前駆体液を合成し、合成した前駆体液を用いて以下の工程で複合酸化物結晶膜を製造する。
まず、電極が成膜された基板上に、合成された前駆体液を塗布して前駆体液塗膜を形成する(塗布工程)。この前駆体液塗膜を乾燥温度まで加熱して塗膜中に残された溶媒を蒸発させ乾燥膜を形成する(乾燥工程)。ついで、乾燥温度より高い熱分解温度まで乾燥膜を加熱して乾燥膜中の有機成分を分解し、複合酸化物のアモルファス膜を基板上に形成する(熱分解工程あるいは脱脂工程とも称される)。このアモルファス膜を、熱分解工程よりも高温加熱して結晶化をおこない、強誘電体特性を有する複合酸化物結晶膜を形成する(結晶化工程)。CSD法では、基板上に塗布する前駆体液中の(金属)成分組成を容易に変更・制御することが可能で、それにより得られる複合酸化物結晶膜組成と強誘電体膜としての特性を制御できるというメリットを有している。
一方、圧電素子において所望の圧電特性を得るためには、強誘電体膜の膜厚を所望の膜厚に形成することが必要である。上記インクジェット記録装置の液滴吐出手段に使用する圧電素子では、不揮発性メモリー(FRAM(登録商標))等の電子デバイスに使用する圧電素子に比べて、強誘電体膜を格段に厚く形成することが必要となっている。しかしながら、厚い強誘電体膜を一回の塗布、乾燥、熱分解、結晶化工程で形成しようとすると熱処理によりクラックを生じ易い。このため、塗布、乾燥、熱分解、結晶化の工程を複数回繰り返すことが知られている。しかし、塗布、乾燥、熱分解工程を行い、アモルファス膜を形成するたびに、高温まで加熱して結晶化すると、所望の膜厚の強誘電体膜が得られるまでのプロセス時間が極端に長くなってスループットが低下し、量産プロセスとしてコスト的に成立しえなくなる。このため、塗布、乾燥、熱分解工程を所定回数繰り返して複数のアモルファス膜を積層し、複数のアモルファス膜をまとめて高温加熱する結晶化工程により複合酸化物結晶膜を形成する。さらに、このような複合酸化物結晶膜を形成する工程を、複数回繰り返すことにより、複数の複合酸化物結晶膜を積層して所望の膜厚の強誘電体膜を形成することが知られている。
また、特許文献1には、クラックを発生させずに強誘電体膜の厚膜化をおこなうため、前駆体液中に金属複合酸化物と同一種類の金属の酸化物で、粒径0.01[μm]以上10[μm]以下の微粒子を添加することが記載されている。
上記、塗布、乾燥、熱分解工程を所定回数繰り返して複数のアモルファス膜を積層した後に高温加熱して結晶化する方法では、アモルファス膜の最下層は乾燥、熱分解工程を複数回経ている一方、最上層は乾燥、熱分解工程を1回しか経ていない。このような乾燥、熱分解工程の熱履歴が異なる複数のアモルファス膜をまとめて高温加熱して形成された複合酸化物結晶膜では、厚み方向でその結晶性が不均一になるという問題が発生する。
さらに、厚み方向で結晶性が不均一な複合酸化物結晶層を形成する工程を複数回繰り返すことにより所望の厚みとするため、得られた所望の厚みの強誘電体膜(複合酸化物結晶膜)としても、厚み方向にかけて結晶性が不均一になる。
強誘電体膜の結晶性が不均一であると、強誘電体膜としての機能を阻害し、例えると、電子部品の内部抵抗に類似した悪影響を与える働きを有している。このため、得られた強誘電体膜の特性が狙いとする理論上・設計上の特性に達しない不具合を生じる。
このような問題を解決するために、本出願人は、特願2013−125483号(以下、先願という)にて、以下の強誘電体膜の製膜方法を提案している。すなわち、複数回繰り返しておこなわれる前駆体液の塗布工程で、前駆体液に分散されている固形分である、複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマーの粒径分布が繰り返しの各回に応じて異なるピークを有するようにする。
これは、以下の知見に基づくものである。複合酸化物のアモルファス相が結晶相に変化する際には、アモルファス相の内部に発生した「結晶の核」を起点として結晶粒が成長し、結晶化が進行する。この「結晶の核」が発生する確率は、アモルファス相が晒された熱履歴により異なり、異なる熱履歴を経たアモルファス膜の積層を結晶化する場合、厚さ方向に関して、内部に発生している「結晶の核」の密度に疎密が発生する。「結晶の核」の密度が密な部分では結晶の成長が大きくなる一方で、疎な部分では結晶成長が密な部分と比べて進まない。また、アモルファス相の内部に発生した「結晶の核」が密な状態で結晶化が開始・進行する場合、結晶化は互いに影響・干渉しながら進行するため、所謂「結晶方位が揃った」(配向性の高い)結晶膜ができる。一方、「結晶の核」が疎な状態で結晶化が開始・進行する場合、結晶化は個々の結晶粒がそれぞれ無関係な方向に進行するため、配向性の低い結晶膜ができる。このため、厚み方向で熱履歴の異なるアモルファス膜を結晶化して得た複合酸化物結晶膜からなる強誘電体膜は、厚み方向でその結晶性が不均一となると考えられる。
そこで、先願では、熱履歴により「結晶の核」が疎となる層では、密となる層に比べて、前駆体液に分散されている固形分の粒径分布のピークを大きくする。これにより、前駆体液中の複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマーの重合度があがり、複合酸化物結晶を形成する金属原子間の距離が短く、密な状態で固形分が分散されている前駆体塗膜が成膜される。このため、「結晶の核」が疎となる層において、結晶化における金属原子間の反応(複合酸化物結晶の形成)が生じやすい状況を作りだすことができ、「結晶の核」が密となる層に比べて結晶成長が進行しにくくなる現象を補うことができる。よって、化学溶液堆積法により異なる熱履歴を経たアモルファス膜の積層を高温加熱して結晶化させて得た強誘電体膜において、厚み方向でその結晶性が不均一となることを抑制し、良好な特性の強誘電体膜を得ることができる。
さらに、本発明者は先願の製膜方法に基づき、厚み方向でその結晶性をより均一化し、より良好な特性の強誘電体膜を得ることができる製膜方法を検討した。
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、化学溶液堆積法により異なる熱履歴を経たアモルファス膜の積層を高温加熱して結晶化させて得た強誘電体膜において、厚み方向でその結晶性を均一化し、良好な特性の強誘電体膜を得ることのできる強誘電体膜の成膜装置および強誘電体膜の成膜方法を提供することである。
上記目的を達成するために請求項1の発明は、複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合したオリゴマーを固形分として分散した前駆体液を塗布して前駆体液塗膜を形成する塗布手段と、該前駆体液塗膜を乾燥・熱分解して複合酸化物のアモルファス膜を形成する乾燥・熱分解手段と、該アモルファス膜を高温加熱して複合酸化物結晶膜を形成する結晶化手段とを備え、該塗布手段による前駆体液の塗布と該乾燥・熱分解手段による乾燥・熱分解とを複数回繰り返して該アモルファス膜を複数積層して形成し、該複数積層したアモルファス膜を該結晶化手段により高温加熱して複合酸化物結晶膜を形成する強誘電体膜の成膜装置において、
上記塗布手段による前駆体液の塗布と上記乾燥・熱分解手段による乾燥・熱分解とを複数回繰り返す各回において、該塗布手段は分散した上記固形分の粒径分布が異なるピークを有する前駆体液を塗布し、且つ、該乾燥・熱分解手段は該固形分の粒径分布が異なるピークを有する前駆体液塗膜毎に異なる加熱条件で熱分解を行うことを特徴とするものである。
本発明によれば、化学溶液堆積法により異なる熱履歴を経たアモルファス膜の積層を高温加熱して結晶化させて得た強誘電体膜において、厚み方向でその結晶性を均一化し、良好な特性の強誘電体膜を得ることができるという優れた効果がある。
ゾルゲル法により強誘電体膜を成膜するフローチャート。 ゾルゲル法により強誘電体膜を成膜するプロセスの概念図。 アモルファス相から結晶相への変化の説明図。 従来のCSD法で成膜した強誘電体膜の厚み方向における複合酸化物結晶粒の概念図。 本実施形態にかかる自動成膜装置の概略構成図。 本実施形態の自動成膜装置に採用するスピナー塗布装置の概略構成図。 実施例に使用した各前駆体液の粒径(流体半径)分布のグラフ。 EBSD法によるPZT強誘電体膜の厚み方向の結晶配向性の分析結果であり、(a)は実施例のPZT強誘電体膜、(b)は比較例1のPZT強誘電体膜を示す。 実施例および比較例1,2のPZT強誘電体膜を加工して作製した圧電アクチュエータの経時特性を示すグラフ。
以下、本発明の実施形態について、ゾルゲル法に代表される化学溶液堆積法(CSD法)にて強誘電体膜を成膜する成膜方法を用い、図面を参照して説明する。
図1は、ゾルゲル法により強誘電体膜を成膜するフローチャートである。シリコンウェハ基板上に成膜された電極(下部電極)上に、形成する強誘電体膜の複合酸化物組成に合わせて合成された前駆体液をスピンコート法等によって塗布し、前駆体液塗膜を基板上に形成する(塗布工程)。この前駆体液塗膜を第一の加熱温度(乾燥温度)まで加熱して塗膜中に残された溶媒を蒸発させ、前駆体液塗膜を乾燥させた乾燥膜を基板上に形成する(乾燥工程)。ついで、第一の加熱温度(乾燥温度)より高い第二の加熱温度(熱分解温度)まで乾燥膜を加熱して乾燥膜中の有機成分を分解し、複合酸化物のアモルファス膜を基板上に形成する(熱分解工程あるいは脱脂工程とも称される)。次いで、基板を室温程度になるよう冷却する(冷却工程)。この前駆体液塗膜の塗布、乾燥、熱分解、冷却の工程を所定回数(X回)繰り返す。その後に第二の加熱温度(熱分解温度)より高い第三の加熱温度(結晶化温度)まで基板上に形成されたアモルファス膜を加熱して結晶化を行い、強誘電体特性を有する複合酸化物結晶膜を形成する(結晶化工程)。このような、塗布工程〜結晶化工程を所定回数(Y回)繰り返すことによって、所望の厚みを持った複合酸化物結晶膜からなる強誘電体膜を基板上に形成する。これにフォトリソ・エッチング等の加工を施すことによって、狙いとする圧電アクチュエータ素子等のデバイスを得る。
上記強誘電体膜の成膜プロセスでは、塗布〜熱分解工程を所定回数(X回)繰り返して複数のアモルファス膜を積層した後に、まとめて高温加熱する結晶化工程を行い複合酸化物結晶膜を形成する。この際、高温加熱するアモルファス膜の最下層は熱分解温度まで温度が上昇する加熱処理をX回経ている一方で、アモルファス膜の最上層は熱分解温度まで温度が上昇する加熱処理を1回しか経ていない。このように、熱履歴が異なる複数のアモルファス膜をまとめて高温加熱して形成された複合酸化物結晶膜は、厚み方向でその結晶性が不均一となってしまう。
さらに、塗布〜熱分解工程を所定回数(X回)繰り返して複数のアモルファス膜を積層した後に高温加熱する結晶化工程を、所定回数(Y回)繰り返すことによって所望の厚みの強誘電体膜(複合酸化物結晶膜)としている。すなわち、厚み方向で結晶性が不均一な複合酸化物結晶層を積層して所望の厚みとするため、得られた所望の厚みの強誘電体膜(複合酸化物結晶膜)としても、厚み方向で結晶性が不均一となる。
さらに、詳細に分析すると、各複合酸化物結晶膜の層の結晶性は、その層の下地、すなわち基板上に成膜された電極膜あるいはそのその複合酸化物結晶層の下に既に形成されている複合酸化物結晶層の結晶性に影響を受けている。この結果、得られた所望の厚みの強誘電体膜(複合酸化物結晶膜)全体を分析した場合においても、下地電極膜と接している部分から膜上面までの厚み方向にかけて、その結晶性が不均一となっている。
図2は、ゾルゲル法にて強誘電体膜を成膜するプロセスの概念図である。
ゾルゲル法にて強誘電体膜を成膜する場合、初めに前駆体液を合成する(図2(a))。前駆体液1は、所定の溶媒2の中にオリゴマー3が均一に分散されている液体(ゾル)でる。オリゴマー3とは、強誘電体膜を形成する複合酸化物となる金属原子がアルコール基あるいはカルボキシル基等の(有機系)官能基と結合したモノマーが比較的少数重合した固形分である。
次に、合成した前駆体液1を下部電極4が成膜されたシリコンウェハ基板5上に滴下、塗布する(図2(b))。この塗布工程は一般的にスピンコーティング法が採用され、下部電極4が成膜されたシリコンウェハ基板5上に前駆体液塗膜6が成膜される(図2(c))。続いて、前駆体液塗膜6が成膜されたシリコンウェハ基板5をホットプレート等で加熱(図示せず)し、前駆体液塗膜6中の溶媒を蒸発させて前駆体液塗膜6を乾燥させる。この乾燥工程により、シリコンウェハ基板5上には前駆体液の乾燥膜7が形成される(図2(d))。この乾燥膜7は、前駆体液1中に分散していたオリゴマー3が互いに絡み合い、また絡み合ったオリゴマー3の間の一部でさらに重合が行われているものからなり、「ゲル」とも呼ばれる。次に、乾燥膜7が形成されたシリコンウェハ基板5をホットプレートあるいはRTA(Rapid Thermal Annealing)等の加熱装置(図示せず)で乾燥工程時より高い温度に加熱して乾燥膜7中の有機物を燃焼・分解させる。この熱分解工程(脱脂工程とも称される)の結果、シリコンウェハ基板5上には複合酸化物のアモルファス膜8が形成される(図2(e))。
このような塗布工程から熱分解工程までのプロセスをX回繰り返す。これにより、シリコンウェハ基板5上には、X層重ねたアモルファス膜8’が形成される(図2(f))。続いて、X層重ねたアモルファス膜8’が形成されたシリコンウェハ基板5を熱分解工程時より高い温度で加熱(図示せず)してアモルファス膜8’を結晶化する。この結晶化工程の結果、シリコンウェハ基板5上には強誘電性を有する複合酸化物結晶膜9が形成される(図2(g))。さらに、このような塗布工程から結晶化工程までのプロセスをY回繰り返す。これにより、シリコンウェハ基板5上には、Y層の複合酸化物結晶層を重ねた所望の膜厚の強誘電体膜10が形成される(図2(h))。
このような強誘電体膜を成膜するプロセスにおいては、結晶化工程では熱履歴の異なるX層を重ねたアモルファス膜8’を結晶化温度まで加熱して複合酸化物結晶を得ている。詳しくは、最下層は熱分解温度まで加熱されるプロセスをX回経ている一方、最上層は熱分解温度まで加熱されるプロセスは1回のみ、を重ねたアモルファス膜8’を結晶化温度まで加熱して複合酸化物結晶を得ている。その結果、得られた複合酸化物結晶の下層部と上層部では、結晶性あるいは結晶の成長の仕方が異なる。
以下、結晶性の違いが生じる理由について、図3に基づき説明する。
複合酸化物のアモルファス相11(非晶質相)が結晶相12に変化(結晶化)する際には、アモルファス相の内部に発生した「結晶の核」13を起点として結晶粒14が成長し、結晶化が進行することが知られている。この「結晶の核」13が発生する確率は、アモルファス相11が晒された温度が高いほど、また高い温度に晒された時間が長いほど高くなることが知られている。
上記のように、最下層部のX回熱分解温度に晒されている層から最上層部の1回のみ熱分解温度に晒されている層によって構成されているアモルファス膜8’を結晶化する場合、内部に発生している「結晶の核」の密度に疎密(下層側が密、上層側が疎)が発生する。このため、図4に示すように、得られた複合酸化物結晶の下層部では結晶の成長が大きくなる一方で、上層部では結晶成長が下層と比較して進まない。
また、アモルファス相の内部に発生した「結晶の核」13が密な状態で結晶化が開始・進行する場合、結晶化は互いに影響・干渉しながら進行するため、所謂「結晶方位が揃った」(配向性の高い)結晶膜ができる。一方、「結晶の核」13が疎な状態で結晶化が開始・進行する場合、結晶化は個々の結晶粒がそれぞれ無関係な方向に進行するため、配向性の低い結晶膜ができる。
上述の「結晶の核」13の疎密による結晶成長あるいは結晶配向性の違いと、「結晶の核」の発生確率がそのアモルファス相の熱履歴で異なる。このため、厚み方向で熱履歴の異なるアモルファス膜8’を結晶化して得た複合酸化物結晶膜9は、その厚み方向で結晶性の不均一性が認められる。また、その不均一性により、複合酸化物結晶膜9からなる強誘電体膜10は十分な強誘電特性を得ることができない。
そこで、本実施形態の成膜方法では、1回の結晶化工程に投入されるまでX回行われる前駆体液1の塗布工程において、1回目、2回目・・・・、X回目の各回に塗布される前駆体液1の液中に分散されている固形分の粒径分布を塗布回数に応じて変化させる。前駆体液1の液中に分散されている固形分、すなわち、複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマー3の粒径分布を塗布回数に応じて変化させる。なお、前駆体液の液中に分散されている固形分の粒径とは、後述するように動的光散乱装置等で測定される、液中の重合体からなる固形分の流体半径をさしている。さらに、各塗布工程の後に前駆体液塗膜6に施す熱処理工程である各熱分解工程において、その塗布回数により変化させた前駆体液の液中に分散されている固形分の粒径分布に応じて、各前駆体液塗膜6に加える熱処理条件を変化させている。
具体的には、1回目、2回目・・・・、X回目に塗布される前駆体液1の液中に分散されている固形分の粒径分布を大きくする、すなわち、前駆体液中の複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマー3の重合度を上げている。言い換えると、結晶化工程前に高温に晒される回数が少ない(短い)上層ほど、前駆体液の状態で複合酸化物結晶を形成する金属原子間の距離を短く、密な状態の固形分が分散されている前駆体液塗膜6を成膜する。つまり、後の高温加熱による結晶化工程で金属原子間の反応(複合酸化物結晶の形成)が生じやすい状況を作ることにより、熱履歴により結晶成長が下層と比較して進行しにくくなり、その結果、厚み方向の結晶性が不均一になる現象を補っている。
また、各塗布工程の後の各熱分解工程において、その塗布回数、すなわち、前駆体液中の複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマー3の重合度に応じて熱処理条件を変化させている。具体的には、1回目、2回目・・・・、X回目と熱分解工程への投入回数が増すに従ってその加熱温度を順に高く設定して熱処理(熱分解)をおこなう。すなわち、結晶化工程前に高温に晒される(熱分解工程に投入される)回数が少ない上層ほど、加熱処理前の前駆体液塗膜6の状態でオリゴマー重合度をより高めた状態を形成し、かつ、より高い温度で加熱処理する。これにより、繰り返し熱処理が加えられたことにより結晶化工程で結晶化が進行しやすい下層のアモルファス膜8と均質な「結晶の核」を内包する複合金属酸化物のアモルファス膜8を上層に形成できる。このため、積層されたアモルファス膜8’に結晶化工程を加えて得られた複合酸化物結晶膜9は、厚み方向で均一な結晶性を有する。このため、強誘電体膜10を形成する複合酸化物結晶は、下地の下部電極と接する部分から膜上面まで均一な結晶性を有する複合酸化物結晶となり、その強誘電特性は極めて良好な特性を示す。
なお、上述の特許文献1には、クラックを発生させずに強誘電体膜の厚膜化をおこなうため、前駆体液中に金属複合酸化物と同一種類の金属の酸化物で、粒径0.01[μm]以上10[μm]以下の微粒子を添加することが記載されている。この成膜方法は、クラック抑制のために前駆体液中に添加する金属複合酸化物と同一種類の金属の酸化物の微粒子の粒径について検討したものである。本発明の課題である、異なる熱履歴を経たアモルファス膜の積層を結晶化させて得られる強誘電体膜の厚み方向の不均一性を解消するものではない。
次に、実施形態にかかる強誘電体膜の成膜装置として、自動成膜装置100を用いて説明する。
図5は、本実施形態にかかる強誘電体膜を形成する自動成膜装置100の概略構成図である。自動成膜装置100は、下部電極が成膜されたシリコンウェハ基板(図5では不図示)を1枚ずつ流動させる枚葉式装置である。自動成膜装置100は、シリコンウェハ基板を収納する収納部材101、シリコンウェハ基板を自動成膜装置100の各装置へ搬送する搬送装置102、基板の受け渡し位置ならびに各装置内での基板の位置決め・芯だしを行うアライナー103を備えている。また、強誘電体膜の前駆体液1をシリコンウェハ基板上に塗布するスピナー塗布装置104、塗布された前駆体液塗膜の乾燥を行うホットプレート105、乾燥膜の熱分解工程並びに結晶化工程の熱処理を行うRTA(Rapid Thermal Annealing)装置106を備えている。さらに、RTA装置106での熱処理後にウェハ冷却を行う冷却ステージ107を備えている。
収納部材101に収納されたシリコンウェハ基板は、搬送装置102により搬送され、アライナー103によって位置決め・芯だしされる。その後、搬送装置102により、図1に示すフローチャートに従って、チャート中の各工程を担当する各装置間を流動する。なお、本実施形態では、熱分解工程と結晶化工程を共通の1台のRTA装置106で行っているが、熱分解工程と結晶化工程をそれぞれ別にした2台のRTA装置で行う、あるいは熱分解工程をホットプレート、さらに結晶化工程をRTA装置で行う構成でも良い。
搬送装置102によってシリコンウェハ基板はスピナー塗布装置104に投入され、スピナー塗布装置104にて前駆体液1が塗布される。前駆体液1が塗布されたシリコンウェハ基板は、搬送装置102によってホットプレート105に投入され、塗布された前駆体液塗膜の加熱・乾燥処理を行う。乾燥工程を終えたシリコンウェハ基板は、搬送装置102によってRTA装置106に投入され、前駆体液の乾燥膜の加熱・熱分解処理を行いアモルファス膜を形成させる。このような塗布工程〜熱分解工程を所定回数(X回)繰り返してアモルファス膜を積層した後、RTA装置106にて熱分解温度より高い結晶化温度までアモルファス膜を加熱して結晶化を行い、強誘電性を有する複合酸化物結晶膜を形成させる。さらに、上記塗布工程〜結晶化工程を所定回数(Y回)繰り返すことによって、所望の厚みを持った強誘電体膜を形成し、これをさらに加工することによって、狙いとする圧電素子等のデバイスを得る。
次に、本実施形態の自動成膜装置100の強誘電体膜の前駆体液をシリコン基板上に塗布する塗布手段としてのスピナー塗布装置104について説明する。
図6は、本実施形態の自動成膜装置100に採用するスピナー塗布装置104の概略構成図である。スピナー塗布装置104は、シリコンウェハ基板5を吸着保持するスピナーチャック111、図示しないスピンドルモーターと連結してスピナーチャック111を図示しない制御装置により入力されたプログラムに従って回転させるスピンドル112を備えている。また、図示しない前駆体液1を収納し、前駆体液1を図示しない加圧ガスによって加圧する加圧タンク114、加圧された前駆体液1をアーム115先端に装着されたノズル116まで流送する送液ライン117を備えている。また、シリコンウェハ基板5、スピナーチャック111、スピンドル112は、スピンコート法による前駆体液の塗布操作によって飛散する液滴によって、自動成膜装置100内部が汚染されることの無いように、スピナ−カップ(不図示)にて周囲を覆われている。
本実施形態のスピナー塗布装置104は、前駆体液1をシリコンウェハ基板5上に滴下する加圧タンク114からノズル116までのシステムとして、結晶化工程の前に行われる塗布工程〜熱分解工程の所定回数(X回)に相当するX個のシステムを有している。各加圧タンク114には前駆体液1の液中に分散されている固形分である複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマーの粒径(流体半径)分布が容器間でそれぞれ異なる前駆体液1が収納されている。このスピナー塗布装置104では、塗布回数(1回目、2回目・・・・、X回目)に応じて前駆体液1の液中に分散されている固形分の粒径分布が異なる前駆体液1をシリコンウェハ基板5上に滴下・塗布している。
スピナー塗布装置104により、塗布回数に応じて固形分の粒径分布が異なる前駆体液1が塗布されたシリコンウェハ基板5は、搬送装置102によってホットプレート105に投入され、塗布された前駆体液塗膜の加熱・乾燥処理を行う。乾燥工程を終えたシリコンウェハ基板は、搬送装置102によってRTA装置106に投入され、前駆体液の乾燥膜の加熱・熱分解処理を行いアモルファス膜を形成させる。ここで、塗布回数に応じて液中のオリゴマー重合度が高められた前駆体液塗膜が形成されたシリコンウェハ基板5がRTA装置106により熱分解される熱分解工程で、熱分解工程への投入回数が増すに伴い、その加熱温度を順に高く設定して熱分解を行っている。すなわち、前駆体液中の複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマー3の重合度が増す伴い、加熱温度を高く設定して熱分解を行っている。具体的には、RTA装置106の制御プログラムで、加熱温度条件を、塗布回数に応じて高くなるよう設定している。
このようなプロセスによって得られた強誘電体膜は、結晶化工程以前の熱処理履歴が厚み方向で異なる為に生じる不具合を、前駆体液の塗布回数に応じて固形分の粒径(流体半径)分布が異なる前駆体液1を塗布することで回避している。すなわち、上述のように結晶化工程前のアモルファス膜中に発生している「結晶の核」分布が厚み方向で疎密ができるため、結晶化工程中の複合酸化物結晶の成長あるいは配向性が均一とならない。このような不具合を、あらかじめ前駆体液1の状態での複合酸化物結晶を形成する金属原子間の結合状態をそれぞれの熱履歴の違いに合わせて変化・補正し、同時に金属原子間の結合状態が変化している前駆体液塗膜6の熱分解条件も補正する。これにより、得られた強誘電体膜の特性が良好になる。
<実施例>
最も良好な強誘電特性並びに圧電特性を有することで知られているPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)強誘電膜をシリコンウェハ基板上に成膜する実施例について説明する。
1.前駆体液の合成
実施例では、後述のように、塗布工程〜熱分解工程を3回繰り返した後、結晶化を行うプロセスを採用している。このため、液中に分散されている固形分の粒径(流体半径)分布が異なる3種類の前駆体液を準備した。
出発材料としては、酢酸鉛三水和物Pb(CHCOO)・3HO、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシドZr(OCHCHCH、チタニウムテトライソプロポキシドTi[OCH(CHを用いた。これらの出発材料は、Pb(Zr0.53Ti0.47)O、一般的にPZT(53/47)と示される、特に良好な圧電特性を現すジルコン酸チタン酸鉛の化学量論組成に対し鉛量が10mol%過剰になる組成、即ちPb1.10(Zr0.53Ti0.47)Oとなるように秤量した。これは、塗布されたゾルゲル液膜の加熱処理中に発生する、いわゆる「鉛抜け」による結晶性低下を防ぐためである。
秤量後、まず酢酸鉛三水和物を2−メトキシエタノールCHOCHCHOHに溶解した後、溶媒の沸点(125℃)以上の溶液温度にて18時間加熱・還流し、水和物の脱水および酢酸鉛のアルコール交換処理を行った。
続いて脱水・アルコ−ル交換処理した前記酢酸鉛の2−メトキシエタノール溶液に対し、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシドおよびチタニウムテトライソプロポキシドを投入して加熱・還流した。これにより、アルコール交換反応、エステル化反応(重縮合反応)を進行させるとともに、副生成物のエステルを除去した。溶媒沸点に達した後の保持時間は18時間とした。最後に前駆体液中のPZT濃度が0.5[mol/l]となるように溶媒を追加、濃度調整を行うとともに、安定剤として2.5[vol%]相当の酢酸CHCOOHを添加してPZTの前駆体液1とした。
なお、前駆体液1中に分散している固形分である複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマー3の粒径分布を変化させるため、以下のようにしている。上記前駆体液合成プロセス中における加熱・環流時の溶液温度を(1)125〜126℃、(2)129〜131℃に管理する、異なる加熱制御条件にて2種類の前駆体液を(2種類)合成した。これを、以下、前駆体液1−1、前駆体液1−2と呼ぶ。また、前記(2)の加熱・環流条件で合成した前駆体液に、3wt%相当の水を添加し、前駆体液中に分散している固形分である複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマー3のさらなる加水分解・重合反応を促進させた。これを、前駆体液1−3と呼ぶ。
このように合成した前駆体液1−1、前駆体液1−2、前駆体液1−3について、分散している固形分である複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマー3の粒径分布を、動的光散乱装置(DLS、大塚電子製ELS−Z2)を用いて測定した。なお、前駆体液の液中に分散されている固形分の粒径は、動的光散乱装置により測定される液中のオリゴマー3の流体半径である。図7に、実施例に使用した3種類の前駆体液を測定した粒径(流体半径)分布のグラフを示す。また、表1に、実施例に使用した前駆体液測定した粒径(流体半径)分布のピークおよびバラツキのデータを示す。


各前駆体液中に分散されている固形分の流体半径(粒径)分布のピーク値は、前駆体液1−1が2.5[nm]、前駆体液1−2が3.1[nm]、前駆体液1−3が7.9[nm]であった。
2.PZT強誘電体膜の成膜
強誘電体膜を成膜するシリコンウェハ基板5は、下部電極として白金膜(膜厚250[nm])、SrRuO膜(膜厚50[nm])を成膜したものを準備し、図1のフローチャートに示したフローに従って強誘電体膜10の形成を実施した。なお、シリコンウェハ基板5に成膜された下部電極膜は、(111)方向の強い結晶配向性を有するように成膜されている。以下、具体的に説明する。
まず、収納部材101に収納されたシリコンウェハ基板5は、搬送装置102により搬送され、アライナー103によって位置決め・芯だしが成される。その後、搬送装置102によりスピナー塗布装置104に投入される。スピナー塗布装置104では、<1.前駆体液の合成>で準備した前駆体液1の中で最も固形分の粒径分布ピークが小さい前駆体液1−1を滴下され、最大3000rpmで回転されることにより前駆体液塗膜6がシリコンウェハ基板5上に形成される(塗布工程)。
次に、シリコンウェハ基板5は搬送装置102により、主溶媒の沸点より高い140℃に加熱されたホットプレート105に1分間投入され、シリコンウェハ基板5上に乾燥膜7が形成される(乾燥工程)。
続いてシリコンウェハ基板5は、搬送装置102によりRTA装置106に投入され、熱分解温度480℃にて5分間加熱、強誘電体前駆体の乾燥膜中の有機物成分を分解させ、一層目のアモルファス膜8を得た(熱分解工程)。
続いてシリコンウェハ基板5は、搬送装置102により冷却ステージ107に移動し、冷却ステージ107上に2分間(以上)留め置かれることによりウェハ温度を室温まで冷却した(冷却工程)。
上記塗布工程〜冷却工程までのプロセスをさらに2回(合計3回)繰り返した。ただし、2回目のプロセスでは前駆体液1−2、3回目のプロセスでは前駆体液1−3をそれぞれ滴下し、塗布、乾燥させる。さらに、乾燥工程後の熱分解工程では、2回目、3回目となるに従い、加熱温度条件を順に高く設定した。すなわち、2回目では熱分解温度500℃にて5分間加熱して二層目のアモルファス膜8を、3回目では520℃にて5分間加熱して3層目のアモルファス膜8を製膜した。すなわち、繰り返しの順により大きな固形分が分散されている前駆体液1を用いて、より高い熱分解温度でアモルファス膜8の成膜して、3層積層したアモルファス膜8’を得た。
3層積層したアモルファス膜8’を得た後、搬送装置102によりシリコンウェハ基板5をふたたびRTA装置106に投入し、結晶化温度750℃にて6分間加熱して3層積層したアモルファス膜8’を結晶化した。これにより、厚さ200[nm]の複合酸化物結晶膜9を得た(結晶化工程)。
上記塗布工程〜結晶化工程までのプロセスを10回繰り返すことで厚さ約2[μm]のPZTの強誘電体膜10を得た。
このようにして得られたPZTの強誘電体膜10の厚み方向の結晶配向性について、電子線後方散乱回折法((Electron Backscatter Diffraction:EBSD法)にて分析した。この結果を図8(a)に示す。
また、比較例1として、従来の同一の前駆体液を繰り返し塗布・成膜する手法で成膜したPZTの強誘電体膜の厚み方向の結晶配向性について、同様にEBSD法にて分析した。この結果を図8(b)に示す。
図8(b)の比較例1の同一の前駆体液を繰り返し塗布する手法で成膜したPZT強誘電体膜では、膜の厚み方向の結晶性が変化することが認められる。詳しくは、(111)配向性の高い下部電極に接している近傍ではPZTの強誘電体膜を形成するPZT結晶も(111)配向が強い傾向がある。一方、膜の上面方向になるに従って(100)配向が強くなる。これに対して、図8(a)の実施例の手法で成膜したPZTの強誘電体膜では、厚み方向全体が下部電極と同じく(111)配向性の強い均一性の高い膜となっている。
図9に、実施例、比較例1として得られたPZTの強誘電体膜を加工して得た各圧電アクチュエータの特性(繰り返し動作による振動振幅の変化を評価した耐久性)の評価結果を示す。また、比較例2として、先願の塗布回数に応じて固形分の粒径分布のピークが異なる前駆体液を塗布・成膜し、各前駆体液塗膜を同じ加熱条件で熱分解をした手法で成膜したPZTの強誘電体膜を加工して得た圧電アクチュエータの特性の評価結果を図9に示す。図9より、実施例の均一性を高めた強誘電体膜を加工して作成した圧電アクチュエータの耐久性は、比較例1の従来の成膜方法を用いた強誘電体膜を加工して作成した圧電アクチュエータよりも格段に良好な耐久性を示していることが判る。また、比較例2の先願の塗布回数に応じて固形分の粒径分布のピークのみを変化させた成膜方法を用いた強誘電体膜を加工して得た圧電アクチュエータに比べても、耐久性が向上していることが判る。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様ごとに特有の効果を奏する。
(態様A)
PZTなどの複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合したオリゴマーを固形分として分散した前駆体液1を塗布して前駆体液塗膜6を形成するスピナー塗布装置104などの塗布手段と、前駆体液塗膜を乾燥・熱分解して複合酸化物のアモルファス膜8を形成する乾燥・熱分解手段と、アモルファス膜を高温加熱して複合酸化物結晶膜9を形成する結晶化手段とを備え、塗布手段による前駆体液の塗布と乾燥・熱分解手段による乾燥・熱分解とを複数回繰り返してアモルファス膜を複数積層して形成し、複数積層したアモルファス膜を結晶化手段により高温加熱して複合酸化物結晶膜を形成する自動成膜装置100などの強誘電体膜10の成膜装置において、塗布手段による前駆体液の塗布と乾燥・熱分解手段による乾燥・熱分解とを複数回繰り返す各回において、塗布手段は分散した固形分の粒径分布が異なるピークを有する前駆体液を塗布し、且つ、乾燥・熱分解手段は固形分の粒径分布が異なるピークを有する前駆体液塗膜毎に異なる加熱条件で熱分解を行う。
(態様A)においては、化学溶液堆積法によりアモルファス膜の積層を結晶化して強誘電体膜を得る際、各アモルファス膜を固形分の粒径分布のピ−クが異なる前駆体液を用いて形成することで、先願と同様の理由で厚み方向の均一性を確保する。すなわち、熱履歴により「結晶の核」が疎となる層では、密となる層に比べて、前駆体液に分散されている固形分の粒径分布のピークを大きくする。これにより、前駆体液中の複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマーの重合度があがり、複合酸化物結晶を形成する金属原子間の距離が短く、密な状態で固形分が分散されている前駆体液塗膜が成膜される。このため、「結晶の核」が疎となる層において、結晶化における金属原子間の反応(複合酸化物結晶の形成)が生じやすい状況を作りだすことができ、「結晶の核」が密となる層に比べて結晶成長が進行しにくくなる現象を補うことができる。
さらに、固形分の粒径分布のピ−クが異なる前駆体液塗膜を熱分解して各アモルファス膜を形成する際に、前駆体液塗膜毎に異なる熱分解の加熱条件を用いることで、厚み方向の均一性を向上させる。具体的には、「結晶の核」が疎となる層に形成した、複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマーの重合度が高い前駆体液塗膜では、オリゴマーの重合度の低い前駆体液塗膜よりも高温で熱分解をおこなう。これにより、オリゴマーの重合度の高い前駆体液塗膜を、オリゴマーの重合度が低い前駆体液塗膜と同じ温度で熱分解した場合に比べて、より効果的に結晶化における金属原子間の反応が生じやすい状態のアモルファス膜を形成することができる。よって、「結晶の核」が疎となる層において、「結晶の核」が密となる層に比べて結晶成長が進行しにくくなる現象をより良好に補うことができる。
このため、化学溶液堆積法により異なる熱履歴を経たアモルファス膜の積層を高温加熱して結晶化させて得た強誘電体膜において、先願よりもさらに厚み方向のその結晶性が均一化し、より良好な特性の強誘電体膜を得ることができる。
(態様B)
強誘電体膜の複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合したオリゴマーを固形分として分散した前駆体液を塗布して前駆体液塗膜を形成する塗布工程と、前駆体液塗膜を乾燥・熱分解を行い複合酸化物のアモルファス膜を形成する乾燥・熱分解工程とを複数回繰り返してアモルファス膜を複数積層し、アモルファス膜の積層を高温加熱して複合酸化物結晶膜を形成する結晶化工程とをおこなう強誘電体膜の成膜方法において、複数回繰り返しておこなわれる塗布工程で塗布する前駆体液に分散されている固形分の粒径分布が、繰り返しの各回に応じて異なる。これによれば、化学溶液堆積法により異なる熱履歴を経たアモルファス膜の積層を高温加熱して結晶化させて得た強誘電体膜において、厚み方向の均一性を確保し、良好な特性の強誘電体膜を得ることができる。
(態様C)
(態様B)において、塗布工程の繰り返しに伴い前駆体液の液中に分散されている固形分の粒径分布のピークを大きくする。上記複合酸化物のアモルファス相が結晶相に変化する際に起点となる「結晶の核」は、複数回熱分解温度に晒されている下層側が密となり、熱分解温度に晒されている回数が少ない上層では疎となる。このため、上層となるアモルファス膜の形成に、下層となるアモルファス膜に比べて、分散した固形分の粒径分布のピークが大きい前駆体液を用いることで、結晶性に与える熱履歴による疎密の影響を補正することができる。
(態様D)
(態様C)において、乾燥・熱分解工程の繰り返しに伴い熱分解温度を高くする。「結晶の核」が疎となる上層に固形分の粒径分布のピークが大きい前駆体液を用いるため、上層では複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合しているオリゴマーの重合度が高い。このため、上層の熱分解温度を高くすることで、上層に結晶化における金属原子間の反応が生じやすい状態のアモルファス膜を形成することができる。また、下層側の熱分解温度を低くするため、下層側が上層と同じ高温の熱分解温度に複数回晒されるという現象が回避できる。このため、下層側のアモルファス膜と上層側のアモルファス膜の状態を近づけることができる。
1 前駆体液
2 溶媒
3 オリゴマー
4 下部電極
5 シリコンウェハ基板
6 前駆体液塗膜
7 乾燥膜
8 アモルファス膜
8’ アモルファス膜(積層)
9 複合酸化物結晶膜
10 強誘電体膜
11 アモルファス相
12 結晶相
13 結晶の核
14 結晶粒
100 自動成膜装置
101 収納部材
102 搬送装置
103 アライナー
104 スピナー塗布装置
105 ホットプレート(乾燥手段)
106 RTA装置(熱分解、結晶化手段)
107 冷却ステージ
111 スピナーチャック
112 スピンドル
114 加圧タンク
115 アーム
116 ノズル
117 送液ライン
特許3477724号公報

Claims (4)

  1. 複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合したオリゴマーを固形分として分散した前駆体液を塗布して前駆体液塗膜を形成する塗布手段と、該前駆体液塗膜を乾燥・熱分解して複合酸化物のアモルファス膜を形成する乾燥・熱分解手段と、該アモルファス膜を高温加熱して複合酸化物結晶膜を形成する結晶化手段とを備え、該塗布手段による前駆体液の塗布と該乾燥・熱分解手段による乾燥・熱分解とを複数回繰り返して該アモルファス膜を複数積層して形成し、該複数積層したアモルファス膜を該結晶化手段により高温加熱して複合酸化物結晶膜を形成する強誘電体膜の成膜装置において、
    上記塗布手段による前駆体液の塗布と上記乾燥・熱分解手段による乾燥・熱分解とを複数回繰り返す各回において、該塗布手段は分散した上記固形分の粒径分布が異なるピークを有する前駆体液を塗布し、且つ、該乾燥・熱分解手段は該固形分の粒径分布が異なるピークを有する前駆体液塗膜毎に異なる加熱条件で熱分解を行うことを特徴とする強誘電体膜の成膜装置。
  2. 強誘電体膜の複合酸化物結晶を形成する金属原子と結合したオリゴマーを固形分として分散した前駆体液を塗布して前駆体液塗膜を形成する塗布工程と、該前駆体液塗膜の乾燥・熱分解を行い複合酸化物のアモルファス膜を形成する乾燥・熱分解工程とを複数回繰り返してアモルファス膜を複数積層し、該アモルファス膜の積層を高温加熱して複合酸化物結晶膜を形成する結晶化工程とをおこなう強誘電体膜の成膜方法において、
    上記複数回繰り返しておこなわれる塗布工程で塗布する上記前駆体液に分散されている上記固形分の粒径分布が、該繰り返しの各回に応じて異なるピークを有し、且つ、上記複数回繰り返して行われる乾燥・熱分解工程における熱分解の加熱条件が、該固形分の粒径分布が異なるピークを有する前駆体液塗膜毎に異なることを特徴とする強誘電体膜の成膜方法。
  3. 請求項2の強誘電体膜の成膜方法において、上記塗布工程の繰り返しに伴い上記前駆体液の液中に分散されている固形分の粒径分布のピークを大きくすることを特徴とする強誘電体膜の成膜方法。
  4. 請求項3の強誘電体膜の成膜方法において、上記乾燥・熱分解工程の繰り返しに伴い上記熱分解温度を高くすることを特徴とする強誘電体膜の成膜方法。
JP2013218052A 2013-10-21 2013-10-21 強誘電体膜の成膜装置及び強誘電体膜の成膜方法 Pending JP2015082509A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013218052A JP2015082509A (ja) 2013-10-21 2013-10-21 強誘電体膜の成膜装置及び強誘電体膜の成膜方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013218052A JP2015082509A (ja) 2013-10-21 2013-10-21 強誘電体膜の成膜装置及び強誘電体膜の成膜方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2015082509A true JP2015082509A (ja) 2015-04-27

Family

ID=53012978

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013218052A Pending JP2015082509A (ja) 2013-10-21 2013-10-21 強誘電体膜の成膜装置及び強誘電体膜の成膜方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2015082509A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018078181A (ja) * 2016-11-09 2018-05-17 株式会社リコー 強誘電体膜の製造方法及び製造装置

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018078181A (ja) * 2016-11-09 2018-05-17 株式会社リコー 強誘電体膜の製造方法及び製造装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101970832B1 (ko) 강유전체 박막의 제조 방법
KR101926194B1 (ko) 강유전체 박막의 제조 방법
EP2645438B1 (en) Method of manufacturing ferroelectric thin film and an electrostatic spray solution
WO2015030064A1 (ja) PNbZT薄膜の製造方法
US9799821B2 (en) Silicon substrate having ferroelectric film attached thereto
TWI650774B (zh) 摻雜Mn之PZT系壓電體膜形成用組成物及摻雜Mn之PZT系壓電體膜
JP2014177359A (ja) 複合酸化物、薄膜容量素子、液滴吐出ヘッド、複合酸化物の製造方法
KR20130111306A (ko) Pzt 계 강유전체 박막 및 그 제조 방법
KR20160138384A (ko) Mn 및 Nb 도프의 PZT 계 압전체막 형성용 조성물
US10618285B2 (en) Piezoelectric substrate and method of manufacturing the piezoelectric substrate, and liquid ejection head
JP2015082509A (ja) 強誘電体膜の成膜装置及び強誘電体膜の成膜方法
TW201344724A (zh) 鐵電體薄膜之製造方法
JP2015002238A (ja) 強誘電体膜の成膜装置及び強誘電体膜の成膜方法
JP2006228447A (ja) 強誘電体薄膜の製造方法
EP2784804A1 (en) PZT-based ferroelectric thin film and method of forming the same
US20140288233A1 (en) Method of producing ferroelectric thin film-forming composition and application of the same
KR102176808B1 (ko) Ce 도프의 PZT 계 압전체막 형성용 조성물
KR102385773B1 (ko) Ce 도프의 PZT 계 압전체막
JPH10291888A (ja) セラミックス薄膜の製造方法
JP2014168072A (ja) Pzt強誘電体薄膜の製造方法
JP2001019543A (ja) 圧電体薄膜の製造方法及び圧電体薄膜素子
JP2014154868A (ja) 強誘電体膜の成膜方法および製造装置