JP6159548B2 - エポキシ樹脂組成物、樹脂シート及びエポキシ樹脂硬化物 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、樹脂シート及びエポキシ樹脂硬化物 Download PDF

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Description

本発明は、例えば電子材料分野に用いられる放熱材料用のエポキシ樹脂組成物、樹脂シート及びエポキシ樹脂硬化物に関する。
エポキシ樹脂は、接着性、耐熱性、成形性に優れていることから、例えば電子部品、電気機器、自動車部品、FRP、スポーツ用品などに広範囲に使用されている。特に近年では、電子材料分野において非常に注目されている材料の一つである(例えば、非特許文献1)。
電子材料の分野においては、電子回路の高集積化や、取り扱う電力の増大などによりICチップが発熱し、その熱により信号のエラーや故障などが発生するという問題があり、放熱技術の開発が喫緊の課題となっている。
この問題を解決するため、現在はセラミックス製の基板が広く用いられている。しかし、セラミックス製の基板は、加工性や生産性が非常に悪く、高コストであるという欠点があった。そのため、金属のベース材料の上に樹脂などからなる絶縁層を配し、さらにその上に配線、実装を施した金属ベース基板などが提案、販売されている。この金属ベース基板に用いられる絶縁層は、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などのバインダー樹脂に、アルミナなどの高い熱伝導性を有するフィラーを高充填したもので、通常ペースト材料ないしシート材料の形態で販売・使用されている。これらの材料は、放熱性と絶縁性を高次元で両立するものであり、これを用いた電子基板はある一定の市場を確保するに至っている。
しかしながら、さらに厳しい条件、具体的には高電圧あるいは大電流を取り扱う場合には、発熱量も大きくなるため、絶縁層にはさらに高い熱伝導性と優れた絶縁破壊耐性が求められる。しかし、現状の金属ベース基板は、高熱伝導性と優れた絶縁破壊耐性が求められる用途には適合しておらず、その用途には、生産性が悪く高コストなセラミックス製の基板が用いられている。
金属ベース基板において、絶縁層の熱伝導性は、フィラーの充填率を高めることにより改善することができる。また、高価ではあるが、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなど、より熱伝導性の高いフィラーを用いることにより解決する方法が提案されている。フィラーの充填率を高める手法は、熱伝導性を高めるという観点では容易と言えるが、バインダー樹脂の量が減るため樹脂材料がもろくなり、ハンドリング性が悪化するという問題がある。また、フィラーの充填率を高くすると、加工時の流動性が著しく悪化するため、密着力の低下や、材料が破損する、さらには絶縁破壊耐性が著しく低下するという問題もあるため、用途に応じたフィラー設計が必要となるのが実情である。また、高い熱伝導性を有するフィラーは、前述の通り高価であるほか、窒化アルミニウムなどでは加水分解によるアンモニアの生成が問題視されているため、こちらも用途に応じた設計が必要となる。
また、金属ベース基板において、絶縁層の熱伝導性については、バインダー樹脂の高熱伝導化も有効である。エポキシ樹脂の高熱伝導化については、樹脂自体の熱伝導性を改善するために、フォノン伝導性の高い骨格構造を選択する方法や、エポキシ樹脂を硬化する過程で樹脂内に配向を形成せしめ、熱伝導性を高める手法が提案されている。例えば、特許文献1では、メソゲン骨格を含有するエポキシ樹脂を用いて得られ、配向構造をとるような硬化物は、熱伝導性に優れることが開示されている。
しかし、配向性が高い結晶性エポキシ樹脂は、溶剤に溶解させたワニスの状態でモノマーが結晶として析出しやすい。そのため、硬化物の熱伝導率を向上させる目的で、結晶性エポキシ樹脂を配合すると、均一な樹脂組成物を得ることができず、硬化不良を起こす懸念がある。そこで、例えば特許文献2では、メソゲン構造を有するエポキシ樹脂をフェノール化合物と反応させて高次構造を形成させることにより、熱伝導性を向上させるとともに、融点を下げて溶剤への溶解性を改善できることが開示されている。しかし、このようなエポキシ樹脂組成物は、繊維基材が必要であり、自己支持性の接着フィルムを形成することが困難であった。そこで、例えば特許文献3では、メソゲン構造を有するエポキシ樹脂を含有する高熱伝導樹脂組成物による接着フィルムを提案している。しかし、このような樹脂組成物は、接着フィルムのタック性を確保しつつ、硬化物の熱伝導率を向上させることが困難であった。
また、本発明者らは、特願2012−098725において、エポキシ樹脂中の結晶成分に近い構造を有する高分子量エポキシ樹脂を併用することにより、熱伝導性と溶剤への溶解性、自己製膜性を改善できることを提案している。
日本国特許第4118691号 特開2004−002573号公報 特開2013−006893号公報
エレクトロニクス実装学会編 プリント回路技術便覧 第3版(2006)
上記のとおり、結晶性エポキシ樹脂を配合することは、硬化物の熱伝導率を向上させる上で有効であることが知られている。結晶性エポキシ樹脂の配合量を多くしていくと、それに伴って硬化物の熱伝導率も向上する。しかし、結晶性エポキシ樹脂を多量に配合すると、樹脂が割れやすくなったり、ワニス中で結晶が析出したりしてハンドリング性が低下したりするという弊害が生じる。そのため、結晶性エポキシ樹脂の配合量を無制限に増加させることは出来ず、金属ベース基板において、結晶性エポキシ樹脂による熱伝導率の向上効果には限界があった。
本発明は、結晶性エポキシ樹脂による熱伝導率の向上効果を高め、より熱伝導性に優れた硬化物を形成できるエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、鋭意研究の結果、低粘度の液状エポキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂とを組み合わせて配合すると、結晶性エポキシ樹脂の配合量を抑制しても、硬化物が高い熱伝導性を発現することを見出し、本発明を完成した。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、下記の成分(a)〜(c):
(a)25℃における粘度が1000mPa・s以下である液状エポキシ樹脂、
(b)示差走査熱量分析(DSC)において、70℃以上200℃以下の範囲内に結晶融解に起因する吸熱ピークが観測される結晶性エポキシ樹脂、
及び、
(c)エポキシ樹脂硬化剤、
を含有する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに、次の成分(d):
(d)下記の構造式(1)で示される高分子量エポキシ樹脂、
を含有してもよい。
[式中、Xは、下記式(2)で表されるビフェニレン骨格又は下記式(3)で表されるメチレンビスフェノール骨格を意味し、Yは、下記式(2)で表されるビフェニレン骨格を意味し、Zは水素原子又はグリシジル基を意味し、nは繰り返し単位を表す数を意味する。]
[式(2)及び式(3)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を意味する。]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記成分(b)が、4,4’−ジグリシドキシビフェニルを20質量%以上含有するものであってもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記式(1)において、Xの構造のうち45%以上が、前記式(2)で示される構造であってもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記成分(a)を構成するエポキシ化合物が、分子中に芳香環を有するものであってもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記成分(a)が、単一構造のエポキシ化合物から構成されるものであってもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記成分(a)と前記成分(b)の混合物が、150℃において液状であり、かつそのときの粘度が100mPa・s以下であってもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記成分(a)と前記成分(b)の混合物に占める前記成分(b)の割合[重量%]を、150℃における溶融粘度[mPa・s]で除して得られた値が1.1以上であってもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記成分(c)が、イミダゾール化合物を含有するものであってもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに、熱伝導率が3W/m・K以上の金属、金属酸化物及び金属窒化物からなる群より選ばれる1種又は2種以上を、エポキシ樹脂組成物中の樹脂成分100重量部に対して、1〜2000重量部の範囲内で含有するものであってもよい。
本発明の樹脂シートは、上記いずれかのエポキシ樹脂組成物を溶剤に溶解し、基材に塗工・乾燥してなるものである。
本発明の樹脂シートは、前記基材が、離型剤を塗布したPETフィルムであってもよい。
本発明の樹脂シートは、前記基材が、金属箔であってもよい。
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、上記いずれかのエポキシ樹脂組成物を硬化してなるものである。
本発明のエポキシ樹脂組成物によれば、(a)成分の液状エポキシ樹脂と、(b)成分の結晶性エポキシ樹脂とを組み合わせて配合することによって、(b)成分による熱伝導率の向上効果を増強させることができる。また、本発明のエポキシ樹脂組成物によれば、結晶性エポキシ樹脂の配合量を抑制しても、優れた熱伝導性を有する硬化物が得られる。従って、本発明のエポキシ樹脂組成物によって、熱伝導性に優れた硬化性樹脂シート、硬化性高放熱樹脂シート、絶縁シート、プリプレグ、接着フィルムなどの成形品や硬化物を提供することができる。また、本発明の硬化性高放熱樹脂シートは高いタック性が確保でき、得られる硬化物は高い熱伝導率を有する。
実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例7で得られたエポキシ樹脂中の結晶性エポキシ樹脂の比率と熱伝導率の関係を示すグラフである。 実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例7で使用した液状エポキシ樹脂(A)と結晶性エポキシ樹脂(B)との混合物の150℃における溶融粘度を測定した結果を示すグラフである。 実施例14で得られた硬化物の偏光顕微鏡画像を示す図面である。 実施例15で得られた硬化物の偏光顕微鏡画像を示す図面である。 比較例11で得られた硬化物の偏光顕微鏡画像を示す図面である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態のエポキシ樹脂組成物は、下記の成分(a)〜(c):
(a)25℃における粘度が1000mPa・s以下である液状エポキシ樹脂、
(b)示差走査熱量分析(DSC)において、70℃以上200℃以下の範囲内に結晶融解に起因する吸熱ピークが観測される結晶性エポキシ樹脂、
及び、
(c)エポキシ樹脂硬化剤、
を含有する。
<(a)成分:液状エポキシ樹脂>
(a)成分の液状エポキシ樹脂は、25℃における粘度が1000mPa・s以下、好ましくは、500mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下、更に好ましくは50mPa・s以下の低粘度のエポキシ樹脂である。25℃における粘度が1000mPa・sを超えるエポキシ樹脂は、粘性が高くなるため、硬化反応時に(b)成分の分子の配向を促す作用が小さく、硬化物の熱伝導性を向上させる効果が十分に得られない。(a)成分の液状エポキシ樹脂としては、硬化時に三次元架橋構造を形成させるために、1分子中に平均で2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。
(a)成分の液状エポキシ樹脂は、単一のエポキシ化合物からなるものでもよいし、複数のエポキシ化合物の混合物でもよい。(a)成分の液状エポキシ樹脂が単一のエポキシ化合物からなる場合、分子量分布を有していてもよい。(a)成分のエポキシ樹脂が混合物である場合、混合物の全体として25℃における粘度が1000mPa・s以下であればよい。
(a)成分の液状エポキシ樹脂としては、例えば、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製ZX−1658GS)、パラキシレングリコール型エポキシ樹脂、パラアミノフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ハンツマン・コーポレーション社製MY−0510)、4,4’−ジヒドロキシメチルビフェニル型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製ZX−1542)、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂(例えば、新日鉄住金化学株式会社製PG−207GS)などの低粘度エポキシ樹脂を挙げることができる。これらの中でも、分子中に芳香環を有するもの、例えばパラキシレングリコール型エポキシ樹脂、パラアミノフェノール型エポキシ樹脂、4,4’−ジヒドロキシメチルビフェニル型エポキシ樹脂などが好ましい。これらのエポキシ樹脂は1種または2種以上を用いることができる。また、これらの低粘度エポキシ樹脂と、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂に代表される汎用の液状樹脂を混合し、25℃における粘度を1000mPa・s以下に調整することによって、(a)成分の液状エポキシ樹脂を調製してもよい。さらに、物性を損なわない範囲で、上記低粘度エポキシ樹脂と、1分子中にエポキシ基を平均で1個以上2個未満有するエポキシ化合物(いわゆる反応性希釈材)を混合し、25℃における粘度を1000mPa・s以下に調整することによって、(a)成分の液状エポキシ樹脂を調製してもよい。
本実施の形態のエポキシ樹脂組成物において、(a)成分の液状エポキシ樹脂の配合量は、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ当量が500g/eq以下のエポキシ樹脂成分の合計100重量部に対して10重量部〜70重量部の範囲内であることが好ましく、15重量部〜60重量部の範囲内であることがより好ましい。エポキシ当量が500g/eq以下のエポキシ樹脂成分の合計100重量部に対して(a)成分の配合量が10重量部より少ないと、熱硬化の際に、エポキシ樹脂組成物の全体が低溶融粘度とならないために、熱伝導性を増強させる効果が発現しない。一方、エポキシ当量が500g/eq以下のエポキシ樹脂成分の合計100重量部に対して(a)成分の配合量が70重量部より多いと相対的に(b)成分の配合量が低下するため、硬化物が高熱伝導性を発現することが難しい。なお、本発明において、「エポキシ樹脂組成物中の樹脂成分」とは、例えばエポキシ樹脂組成物が所定の溶剤を含むワニスの場合、溶剤が除去された後に最終的に残る樹脂成分を意味する。
<(b)成分:結晶性エポキシ樹脂>
(b)成分の結晶性エポキシ樹脂としては、分子中にメソゲン骨格を有し、かつエポキシ樹脂モノマーが結晶性を有するエポキシ樹脂を意味する。ここで、「メソゲン骨格」とは、液晶性を発現する可能性がある官能基、もしくは硬化の際に配向構造を形成しうる官能基と定義することができる。また、「結晶性」とは、DSC(示差走査熱量分析)において、融点に基づく吸熱ピーク温度が確認できることを意味し、本実施の形態で用いる(b)成分の結晶性エポキシ樹脂は、DSCにおいて10℃/分で昇温した場合に、70℃以上200℃以下の範囲内に結晶融解に起因する吸熱ピークが観測されるエポキシ樹脂である。
本実施の形態において、好ましく用いられる(b)成分の結晶性エポキシ樹脂としては、例えば、4,4’−ジグリシドキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、3−メチル−4,4’’−ジヒドロキシターフェニル型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン型エポキシ樹脂、1−{(3−メチル−4−オキシラニルメトキシ)フェニル}−4−(4−オキシラニルメトキシ)−1−シクロヘキセンなどを挙げることができる。また、(b)成分の結晶性エポキシ樹脂は、配向構造を形成しやすくするため、4,4’−ジグリシドキシビフェニルを20質量%以上含有することが好ましい。
本実施の形態のエポキシ樹脂組成物において、(b)成分の結晶性エポキシ樹脂の配合量は、エポキシ当量が500g/eq以下のエポキシ樹脂成分の合計100重量部に対して30重量部〜90重量部の範囲内であることが好ましく、40重量部〜85重量部の範囲内であることがより好ましい。エポキシ当量が500g/eq以下のエポキシ樹脂成分の合計100重量部に対して(b)成分の配合量が30重量部より少ないと、高い熱伝導性が得られない。一方、エポキシ当量が500g/eq以下のエポキシ樹脂成分の合計100重量部に対して(b)成分の配合量が90重量部より多いと、ワニス中で結晶が析出したりしてハンドリング性が低下する。
本実施の形態のエポキシ樹脂組成物において、(a)成分と(b)成分との含有量の比[(a)成分/(b)成分]は、例えば、10/90〜70/30の範囲内にあることが好ましい。上記範囲より(a)成分が少ないと、熱硬化の際に、エポキシ樹脂組成物の全体が低溶融粘度とならないために高熱伝導性を発現せず、逆に、上記範囲より(a)成分が多いと、相対的に(b)成分が少なくなるため、その硬化物が高熱伝導性を発現することができない。
また、本実施の形態のエポキシ樹脂組成物において、使用する(a)成分と(b)成分との混合物は、150℃において液状であり、かつ、そのときの粘度が100mPa・s以下であることが好ましい。本実施の形態のエポキシ樹脂組成物は、150℃以上の温度で硬化反応を生じさせるが、硬化反応時に液状であり、かつ100mPa・s以下の低粘度であることによって、(b)成分の結晶性エポキシ樹脂の配向を促進させることができる。
また、本実施の形態のエポキシ樹脂組成物において、(a)成分と(b)成分との合計の含有量に対する(b)成分の比率[b/(a+b)の重量%]は、(a)成分によって(b)成分の分子の配向を促し、硬化物の熱伝導性を高くするために、例えば、40〜80%の範囲内が好ましく、50〜80%の範囲内がより好ましく、50〜60%の範囲内が最も好ましい。
また、別の観点から、本実施の形態のエポキシ樹脂組成物は、(a)成分と(b)成分との合計の含有量に対する(b)成分の比率[b/(a+b)の重量%]を、150℃における溶融粘度[mPa・s]で除して得られた値が1.1以上であることが好ましい。この値が1.1以上であると、硬化物の高熱伝導性を得る上で(b)成分を必要十分な量で配合しながら、(a)成分による粘度の低減が図られていることを意味し、硬化物の熱伝導性を高くすることができる。
<(c)成分:エポキシ樹脂硬化剤>
(c)成分のエポキシ樹脂硬化剤については、エポキシ基と反応しうる活性水素基を有するエポキシ樹脂硬化剤であれば良いが、エポキシ樹脂が最大限配向できる構造をとることが好ましく、具体的にはイミダゾール化合物がよい。
イミダゾール系硬化剤は、エポキシ樹脂組成物の粘度上昇を抑制することができるなど、配合後のエポキシ樹脂組成物の取り扱いが比較的容易となる。イミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4―メチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等を挙げることができる。上記イミダゾール化合物の中でも、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールを用いることが最も好ましい。2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールは、潜在性が高い硬化剤であり、Bステージ状態の樹脂シート作製時の乾燥工程において、硬化反応が進行することなく、更に長期保管時の安定性に優れる特徴がある。
イミダゾール化合物は、通常はエポキシ樹脂を主成分とする樹脂組成物において、硬化促進剤として配合されることが多いが、本実施の形態のエポキシ樹脂組成物においてイミダゾール化合物を硬化剤として用いる場合は、イミダゾール化合物を起点に進行するアニオン重合により、エポキシ樹脂組成物を硬化させることができる。このような反応特性から、付加型の硬化剤成分を配合した反応系と比較すると、硬化剤としての配合量も低く抑えることができる。
(c)成分としてイミダゾール系硬化剤を用いる場合の含有率は、(a)成分と(b)成分の合計100重量部に対して0.01重量部〜10重量部の範囲内であることが好ましく、1重量部〜7重量部の範囲内であることがより好ましい。イミダゾール系硬化剤の含有量が10重量部より多くなると、エポキシ樹脂に由来する有機ハロゲン化合物からハロゲンイオンを引き抜くおそれがあるほか、反応が早く進行するため、溶融して配向する時間を充分にとることができなくなって、熱伝導率の向上が望めない。また、0.01重量部より少ない場合でも、硬化反応が充分に進行せず、接着性が低下したり、硬化時間を長くとっても熱伝導率が高くならないことがある。
<任意成分>
本実施の形態のエポキシ樹脂組成物は、上記必須成分に加え、必要に応じて、例えば高分子量エポキシ樹脂、フィラー(無機フィラー、有機フィラー)、溶剤、ゴム成分、フッ素系、シリコーン系等の消泡剤、レベリング剤等を添加することができる。また、本実施の形態のエポキシ樹脂組成物には、金属基板、銅配線等の部材との密着性向上の観点から、例えば、シランカップリング剤、熱可塑性オリゴマー等の密着性付与剤を添加することができる。以下、代表的な任意成分として、高分子量エポキシ樹脂、フィラー、シランカップリング剤、溶剤について説明する。
<(d)成分:高分子量エポキシ樹脂>
(d)成分の高分子量エポキシ樹脂は、結晶性エポキシ樹脂を溶解させ、再結晶を抑制する作用、およびシート化を促す助剤としての機能を有する。(d)成分の高分子量エポキシ樹脂としては、例えば構造式(1)で表されるものを挙げることができる。
式(1)中、Xは、下記式(2)で表されるビフェニレン骨格又は下記式(3)で表されるメチレンビスフェノール骨格(ビスフェノールF残基)を意味し、Yは、下記式(2)で表されるビフェニレン骨格を意味し、Zは水素原子又はグリシジル基を意味し、nは繰り返し単位を表す数を意味する。
式(2)及び式(3)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を意味する。
本実施の形態のエポキシ樹脂組成物に(d)成分の高分子量エポキシ樹脂を配合することによって、エポキシ樹脂の再結晶を抑制し、シート化性能を向上させることが可能である。
(d)成分の高分子量エポキシ樹脂において、XとYの比率は、ほぼ1:1程度であるが、XとYの含有量に若干の差があってもよい。(d)成分の高分子量エポキシ樹脂の分子量は原料となる化合物のモル比によって設計され、反応温度、反応時間を制御しながら目的のものを得るのが一般的である。
(d)成分の高分子量エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば10,000〜200,000の範囲内であり、20,000〜100,000の範囲内がより好ましい。(d)成分の高分子量エポキシ樹脂の重量平均分子量が10,000に満たない場合は、得られる硬化物の自己製膜性を向上させる効果が少なく、シートやフィルムがもろくなる場合がある。また、(d)成分の高分子量エポキシ樹脂の重量平均分子量が200,000を超える場合、(d)成分の高分子量エポキシ樹脂が溶剤に対して溶解しにくくなる問題や、樹脂溶液の粘度が高くなるという問題が発生する。尚、ここでの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値である。
(d)成分の高分子量エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば2,500g/eq以上、好ましくは5,000g/eq以上がよい。(d)成分の高分子量エポキシ樹脂のエポキシ当量が2,500g/eqに満たない場合は、得られるフィルムの機械的強度の低下や可とう性の低下を招くことがある。
(d)成分の高分子量エポキシ樹脂の好ましい例としては、例えば、結晶性エポキシ樹脂を溶解し、ワニスでの析出を抑制する観点から、(b)成分に4,4’−ジグリシドキシビフェニルを含有する場合、式(1)において、Xの構造のうち45%以上が式(2)で示される構造であるものを挙げることができる。また、他の好ましい例として、式(1)中のX、Yがともに式(2)で表されるビフェニレン骨格であるものを挙げることができる。この場合、少なくともXについては、式(2)中、R〜Rのうち、少なくとも4つが炭素数4以下のアルキル基であり、残りが水素原子であることが好ましく、YはXと同様の置換基を有するか、あるいは式(2)中のR〜Rがすべて水素原子である非置換のビフェニル骨格であることが好ましい。すなわち、(d)成分の高分子量エポキシ樹脂としては、例えば、式(1)中のXが、3,3’位及び5,5’位、又は、2,2’位及び6,6’位に、それぞれ炭素数4以下のアルキル基が置換したビフェニレン骨格であり、Yが、Xと同様に、例えば3,3’位及び5,5’位、又は、2,2’位及び6,6’位に、それぞれ炭素数4以下のアルキル基が置換したビフェニレン骨格であるか、あるいは非置換のビフェニレン骨格であるものが好ましく、更に、前記炭素数4以下のアルキル基がメチル基であり、かつ重量平均分子量が10,000〜200,000の範囲内であることがより好ましい。さらに、溶剤中で(d)成分の高分子量エポキシ樹脂が固化又は結晶化することを、置換基を有するビフェニレン骨格の導入によって抑制しながら、非結晶性を損なわない程度に非置換(全て水素置換)のビフェニレン骨格をより多く導入するという観点から、式(1)中のXが3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニレン基であり、Yが非置換のビフェニレン基であることが特に好ましい。
一般式(1)により表される(d)成分の高分子量エポキシ樹脂は、例えば、下記一般式(4)で表される1分子中に2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物と、下記一般式(5)で表される1分子中に2つの芳香族性水酸基を有する化合物とを重合触媒存在下で反応させる方法か、あるいは、下記一般式(5)で表される1分子中に2つの芳香族性水酸基を有する化合物とエピハロヒドリンとをアルカリ金属水酸化物の存在下で反応させる公知慣用の方法によって製造できる。なお、(d)成分の高分子量エポキシ樹脂の合成に用いるエピハロヒドリンとしては、特に制限ないが、例えばエピクロルヒドリンが好ましい。また、アルカリ金属水酸化物としては、特に制限はないが、例えば水酸化ナトリウムが好ましい。
上記式(4)及び式(5)中のX、Yは、それぞれ前記と同じ意味を有する。ここで、一般式(4)で表される1分子中に2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、例えば三菱化学株式会社製YX−4000(テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂)、三菱化学株式会社製YL−6121Hなどが挙げられる。
(d)成分の好ましい配合量は、(a)成分と(b)成分の合計量を100重量部としたとき、(d)成分は0重量部以上100重量部以下が好ましい。(a)成分と(b)成分の合計量100重量部に対して、(d)成分を、100重量部を超えて配合すると、硬化反応時の溶融粘度が高くなるため、分子の配向構造を作りにくくなることがある。また、(d)成分は任意成分であるが、フィラー配合量が少ない場合は、樹脂シートがタック性を持つことがあり、好ましくない一方で、フィラー配合量が多い場合はシートが硬くなることがあり、ハンドリング性の観点で見ると(d)成分の配合量の最適値は使用する形態により異なる。
<フィラー>
本実施の形態のエポキシ樹脂組成物は、放熱性を高めるために、フィラーを用いることができる。フィラーには公知慣用のものを使用することができる。また、絶縁性を必要としない用途の場合には金属粉末や炭素繊維などを用いることができる。フィラーを高充填した場合、放熱性を高めることができるが、一般的には得られる組成物や硬化物は硬く、もろい性質となる。フィラーの高充填化や粒度分布に関する知見についてはこれまでにも数多く報告されており、公知慣用の手法によりおこなうことができる。
無機フィラーとしては、金属、金属酸化物、金属窒化物等を用いることが好ましく、例えば、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を挙げることができる。無機フィラーは、例えば熱伝導率が3W/m・K以上のものが好ましい。また、有機フィラーとしては、例えば、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、アクリロニトリル−ブタジエン系架橋ゴム等を挙げることができる。これらのフィラーについては、1種又は2種以上を用いることができる。また、本実施の形態のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、例えばフタロシアニン・グリーン、フタロシアニン・ブルー、カーボンブラック等の着色剤を配合することができる。
ここで、無機フィラーのアルミナとしては、例えば、結晶性のアルミナ、溶融アルミナ等が挙げられるが、この中でも特に結晶性の球状アルミナ粉末が好ましい。結晶性のアルミナは、溶融アルミナと比較して熱伝導率を高くする効果に優れている。また、球状アルミナ粉末を使用することにより、破砕アルミナと比較して、ワニスとした場合の粘度、または樹脂フィルムとした場合の溶融粘度を低くする効果もある。最密充填による高熱伝導性を図る観点から、球状アルミナ粉末の真球度を95%以上とすることが好ましい。
球状アルミナ粉末の最大粒子径は、熱伝導性と絶縁性に与える影響が非常に大きい。電圧印加時の導電パスは、球状アルミナ粉末の表面に形成されるため、硬化物の厚み方向に複数の球状アルミナ粒子が配列できるように最大粒子径を設定すれば、導電パスが長くなり、粒子間の絶縁箇所も増えて耐電圧性が高くなるが、放熱性が低下する。従って、球状アルミナ粉末の最大粒子径は、耐電圧性と放熱性のバランスを考慮して決定することが好ましい。
フィラーの配合量および粒度分布の最適値は目的により異なるが、本実施の形態のエポキシ樹脂組成物を金属ベースの放熱基板などにおける絶縁材料として用いる場合、フィラーの配合量は、エポキシ樹脂組成物中の樹脂成分100重量部に対して、1重量部以上2000重量部以下であることが好ましい。すなわち、本実施の形態のエポキシ樹脂組成物では、無機フィラーの含有率が、エポキシ樹脂組成物全体の重量に対して5〜95重量%であることが好ましい。エポキシ樹脂組成物中の無機フィラーの含有率は、多くなるほど高熱伝導化および低熱膨張化を図ることが可能になる。エポキシ樹脂組成物の固形分に対する無機フィラーの含有率が5重量%より少ないと熱伝導性を向上させる効果が不十分となり、十分な放熱性が発現しない場合がある。一方、エポキシ樹脂組成物の固形分に対する無機フィラーの含有率が95重量%より多くなると、ワニスとした場合の粘度が増大し、または接着剤フィルムとした場合の溶融粘度が増大して、絶縁性の接着剤層としての加工性、耐電圧特性、接着性が低下したり、表面状態が悪くなったりすることがある。
<シランカップリング剤>
本実施の形態のエポキシ樹脂組成物にフィラーを使用する場合、フィラーと樹脂の界面における密着性向上を目的にシランカップリング剤を併用することができる。シランカップリング剤としては、例えば、サイラーエースS−510(商品名;JNC株式会社製)などを用いることができる。
<溶剤>
本実施の形態のエポキシ樹脂組成物において、溶剤は、適宜使用することができる。溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド系溶剤、1−メトキシ−2−プロパノ−ル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤等の1種又は2種以上を混合したものを例示できる。
[組成物の調製、ワニス]
本実施の形態のエポキシ樹脂組成物は、上記の必須成分および任意成分を混合することにより調製できる。この場合、溶剤を含むワニスの形態とすることが好ましい。すなわち、本実施の形態のエポキシ樹脂組成物は、所定の溶剤に溶解又は分散させてワニスを形成するようにしてもよい。
ワニスに使用可能な溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド系溶剤、1−メトキシ−2−プロパノ−ル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤等の1種又は2種以上を混合したものを例示できる。(c)成分のエポキシ樹脂硬化剤、さらに、必要により添加される任意成分の中で無機フィラー、有機フィラー、着色剤等については、溶剤中に均一分散していれば、必ずしも溶剤に溶解していなくてもよい。
本実施の形態のエポキシ樹脂組成物の好ましい形態であるワニスは、例えば以下の手順により調製することができる。まず、上記溶剤に(a)成分の液状エポキシ樹脂と(b)成分の結晶性エポキシ樹脂を加えて加熱溶解する。このとき、必要に応じて、さらに(d)成分の高分子量エポキシ樹脂を配合することによって、(b)成分の結晶性エポキシ樹脂の溶解性が改善される。また、適宜、フィラーなどを添加して混練してもよい。使用する直前で再度混練し、(c)成分のエポキシ樹脂硬化剤を混合することにより、スラリー状のワニスを得ることができる。
ワニスは、粘度が1000〜20000Pa・sの範囲内であることが好ましく、2000〜10000Pa・sの範囲内であることがより好ましい。ワニスの粘度が1000Pa・sより小さい場合には、球状フィラーの沈降が生じやすくなり、また塗工時のムラやはじきなどを生じやすくなる。一方、ワニスの粘度が20000Pa・sより大きい場合は、流動性の低下により、塗工性が低下し、均一な塗膜の作製が困難になる。
[樹脂シート・樹脂シート付銅箔]
本実施の形態においては、上記ワニスを支持材としてのベースフィルム上に塗布し、乾燥させることでBステージ状態の樹脂シートを形成することができる。また、上記ワニスを銅箔上に塗布し、乾燥させることによって樹脂シート付き銅箔を形成することもできる。
樹脂シート、又は樹脂シート付き銅箔(硬化前)のフィルム支持性については、溶剤残存率が高いほどフィルム支持性が良好な傾向にある。ただし、溶剤残存率が高すぎると、樹脂シート、又は樹脂シート付き銅箔(硬化前)にタックが発生したり、硬化時に発泡したりする。したがって、溶剤残存率は5重量%以下が好ましい。なお、溶剤残存率は、180℃雰囲気にて60分乾燥した際の、樹脂シート部分の正味重量減少率の測定により求めた値である。
樹脂シート又は樹脂シート付き銅箔を形成する際に用いる支持材としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、銅箔、アルミ箔、離型紙等を挙げることができる。支持材の厚みは、例えば10〜100μmとすることができる。支持材として、銅箔、アルミ箔等の金属箔を用いる場合、金属箔は、例えば電解法、圧延法等により製造されたものであってもよい。なお、これらの金属箔においては絶縁層との接着性を高める観点から、絶縁層と接する側の面が粗化処理されていることが好ましい。
また、樹脂シート又は樹脂シート付き銅箔は、支持材としてのベースフィルム上に貼り合わせた後、銅箔に接していないもう一方の面を、保護材としてのフィルムで覆い、ロール状に巻き取って保存することもできる。この際に用いられる保護材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、離型紙等を挙げることができる。この場合、保護材の厚みは例えば10〜100μmの範囲内とすることができる。
[硬化物]
本実施の形態の硬化物は、例えば、エポキシ樹脂組成物から上記Bステージ状態の樹脂シート(又は樹脂シート付き銅箔)を調製した後、例えば150℃〜250℃の範囲内の温度に加熱して硬化させることによって製造できる。このようにして得られる硬化物は、後記実施例に示すように、優れた熱伝導性を有している。高熱伝導が要求される用途においては、硬化物の熱伝導率は、例えば15W/m・K以上であることが好ましい。硬化物の熱伝導率が15W/m・K以上であることにより、放熱特性が優れたものとなり、高温環境で使用される回路基板等への適用が可能になる。また、高熱伝導性フィラーを多く配合することにより放熱特性を向上させることが可能となるが、ハンドリング性や加工性、耐電圧性を低下させないように、使用目的によって高熱伝導性フィラーの種類や配合量を適宜選択することが好ましい。
[金属ベース回路基板]
次に、本実施の形態のエポキシ樹脂組成物を用いて金属ベース回路基板を製造する方法の一例について説明する。ここでは、アルミニウム基板を用いたアルミニウムベース回路基板を例示する。まず、エポキシ樹脂組成物から上記の樹脂シート付き銅箔を得た後、この樹脂シート付き銅箔を、アルミニウム基板の上にバッチ式真空プレスを用いて、例えば、温度150〜250℃、圧力1.0〜30MPaの条件で接着する。この際、アルミニウム基板面に樹脂シート面を接触させ、支持材としての銅箔を上面とした状態で加熱、加圧して、エポキシ樹脂を硬化させることにより、アルミニウム基板に貼り付ける。このようにして、樹脂シートを絶縁性の接着剤層として、銅箔層とアルミニウム基板との間に介在させた積層体を得ることができる。次に、エッチングによって所定箇所の銅箔を除去することにより回路配線を形成し、最終的にアルミニウムベース回路基板を得ることができる。なお、アルミニウム基板の厚さについては、特に制限はないが、一般的には例えば0.5〜3.0mmの範囲内とすることができる。
本実施の形態のエポキシ樹脂組成物を用いて、銅による導体層、絶縁性の接着剤層、及びアルミニウム層からなるアルミニウムベース回路基板を得るには、前記方法のほかに、離型性を付与したPETフィルム上に塗布、乾燥させたのち、離型PETを剥がし、シート状のエポキシ樹脂組成物をアルミニウム基板と銅箔に挟み、加熱、加圧しながら硬化させる方法、銅箔にエポキシ樹脂組成物を塗布、乾燥後、アルミニウム基板に加熱、加圧しながら硬化させる方法、アルミニウム基板面に接着剤層を形成し、この接着剤層の上に銅箔を載せて、加熱、加圧しながら硬化させる方法、又はアルミニウム基板面に絶縁性の接着剤層を形成し、硬化させた後に、銅めっきにより銅の導体層を形成する方法などを採用してもよい。なお、このときの接着剤層の形成に関しては、ワニスを塗布した後に加熱により溶剤を揮発させる方法、無溶剤のペーストを塗布する方法、あるいは樹脂シートを貼り合せる方法のいずれを用いてもよい。
[プリプレグ]
本実施の形態に係るエポキシ樹脂組成物を、織布や不織布などの繊維基材に含浸させ、加熱乾燥させてエポキシ樹脂を半硬化状態とすることによって、プリプレグを製造できる。繊維基材としては、例えばガラスクロス、有機繊維などを用いることができる。このように製造したプリプレグは加熱加圧成形して絶縁層とすることによって、プリント配線板の構成部材とすることができる。
<作用>
上記特許文献2の段落0003では、メソゲン構造を有する結晶性エポキシ樹脂がワニス中で結晶として析出することを抑制するために、溶解性の第3成分を配合すると硬化物の熱伝導率が低下する問題があると指摘されている。結晶性エポキシ樹脂の持つ配向性が熱伝導性の向上に寄与していることを考えると、非結晶性のエポキシ樹脂などの他の樹脂成分の添加は、熱伝導性の向上に対してマイナスの要因となることは容易に推測される。このことは、上記特許文献3の実施例1と実施例2の熱伝導率を比較すると、汎用の液状エポキシ樹脂を配合した実施例2に熱伝導率の低下が認められることにも裏付けられる。しかしながら、かかる知見に反し、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、低粘度の液状エポキシ樹脂を結晶性エポキシ樹脂と組み合わせることによって、硬化物が高い熱伝導性を発現し、結晶性エポキシ樹脂の含有率を低下させても、優れた熱伝導性が得られている。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、(a)成分の液状エポキシ樹脂を配合することによって、(b)成分の結晶性エポキシ樹脂による熱伝導率の向上効果が増強される原理は未だ明らかにはなっていないが、以下のように考えれば合理的な説明が可能である。エポキシ樹脂組成物が熱硬化する際の挙動として、まず、熱によって樹脂成分が溶融し、次いで(b)成分の結晶性エポキシ樹脂が配向しつつ硬化反応が進行し、その結果、異方性構造を含むエポキシ樹脂硬化物が形成されるものと考えられる。(b)成分の結晶性エポキシ樹脂とともに、粘度が1000mPa・s以下である(a)成分の液状エポキシ樹脂を配合しておくことによって、上記硬化反応の過程で、反応場全体の粘度が低下するため、(b)成分の結晶性エポキシ樹脂の分子運動が容易になり、結晶成分の配向が促進されて熱伝導率の向上効果が増強されるものと推測される。後記実施例では、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物の偏光顕微鏡による画像から、エポキシ樹脂が高度に配向していることが確認されており、(a)成分の液状エポキシ樹脂による(b)成分の結晶性エポキシ樹脂の配向促進作用が裏付けられているものと考えられる。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、本明細書における各種測定および評価は下記によるものであるが、当業者が一般的に知りうる範囲において、代替となる分析方法を用いてもよい。
[エポキシ樹脂のエポキシ当量]
液状エポキシ樹脂、結晶性エポキシ樹脂および高分子量エポキシ樹脂のエポキシ当量はJIS K−7236に従って測定した。
[液状エポキシ樹脂の粘度]
液状エポキシ樹脂の粘度は、E型粘度計を用いて測定した。装置は東機産業株式会社製RE−80Hを用いた。
[結晶性エポキシ樹脂の融点]
結晶性エポキシ樹脂の融点は、DSC(示差走査熱量分析)により測定した。DSCはセイコーインスツルメント株式会社製DSC6200を用いた。温度プログラムは室温より10℃/minの速度で300℃まで昇温し、融点の測定は昇温の過程でおこなった。また、ここでいう融点とは結晶の融解に伴う吸熱ピークの最下点における温度である。
[結晶性エポキシ樹脂中の4,4’−ジグリシドキシビフェニルの定量方法]
まず、4,4’−ジグリシドキシビフェニルを含むエポキシ樹脂から、公知慣用の手法により再結晶をおこない、純度99%以上の4,4’−ジグリシドキシビフェニルを得た。結晶性エポキシ樹脂中の4,4’−ジグリシドキシビフェニルの定量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて分析した。具体的には東ソー株式会社製HLC−8120本体に、東ソー株式会社製のカラム、TSK−gel G4000HXL,TSK−gel G3000HXL、TSK−gel G2000HXLを直列に備えたものを使用した。また、溶離液にはテトラヒドロフランを用い、流速は1ml/minとした。カラム室の温度は40度とした。検出にはRI検出器を使用し、測定をおこなった。得られたクロマトグラムから、4,4’−ジグリシドキシビフェニルと同じ溶出時間のピークの面積%を求めた。より精密に分析する例として、高速液体クロマトグラフィーを用いた絶対検量線法が一般的に知られており、こちらの手法を用いても良い。
[高分子量エポキシ樹脂の平均分子量]
高分子量エポキシ樹脂の平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて分析した。具体的には東ソー株式会社製HLC−8320本体に、東ソー株式会社製のカラム、TSK−gel GMHXL,TSK−gel GMHXL、TSK−gel G2000Hを直列に備えたものを使用した。また、溶離液にはテトラヒドロフランを用い、流速は1ml/minとした。カラム室の温度は40度とした。検出にはRI検出器を使用し、測定をおこなった。平均分子量は、標準ポリスチレン検量線を用いて求めた。
[高分子量エポキシ樹脂の不揮発分]
高分子量エポキシ樹脂溶液の不揮発分は、アルミカップに試料約1gをはかりとり、200℃の熱風循環式オーブン中で1時間乾燥させ、乾燥前の重量と、揮発せずに残った重量をもとに計算により求めた。
[熱伝導率]
所定量のBステージの樹脂シートを用いて、圧縮プレス成形機にて180℃で10分加熱し、プレスから取り出した後、さらに乾燥機中にて180℃で50分加熱することにより、直径50mm、厚さ5mmの円盤状試験片を得た。この試験片を、英弘精機製熱伝導率測定装置HC−110を用いて、定常法により25℃での熱伝導率[W/m・K]を測定した。
実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物を作製するために使用した原料とその略号は以下のとおりである。なお、実施例、比較例において、「B/(A+B)」とあるのは、液状エポキシ樹脂(A)と結晶性エポキシ樹脂(B)との合計の含有量に対する結晶性エポキシ樹脂(B)の重量%を意味し、液状エポキシ樹脂(A)には、実施例で使用した(a)成分の25℃における粘度が1000mPa・s以下である液状エポキシ樹脂、又は、比較例で使用した同温度における粘度が1000mPa・sを超える液状エポキシ樹脂を含む。
[液状エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂a−1(パラキシリレングリコール型エポキシ樹脂):
攪拌機、窒素吹きこみ口、減圧装置と冷却器と油水分離槽を備えた還流口、アルカリ金属水酸化物水溶液滴下口を備えたセパラブルフラスコにパラキシレングリコール220重量部、エピクロルヒドリンを1000重量部仕込み、窒素パージの後55℃まで昇温、ブチルトリエチルアンモニウムクロリド水溶液を3.3重量部、発熱に注意しながら仕込み、1時間反応させた。63℃にて、固形の水酸化ナトリウム240重量部を30分おきに、10回に分割して投入した。そのまま3時間撹拌を続けたのち、トルエンを350重量部、水を250重量部加えて油水分離をおこなった。水相およびゲル化物を取り除いたのち減圧下で昇温し、水、トルエンおよびエピクロルヒドリンを系内から取り除いた。得られた樹脂にトルエン600重量部と水100重量部を加えて油水分離により水相を取り除いた。さらに2度の水洗処理を加えて洗浄した。得られた樹脂溶液を加熱して脱水したのち、珪藻土濾過をおこない、さらに加熱・減圧により脱トルエンをおこなってパラキシレングリコールのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を得た。これをさらに多段蒸留することにより、無色透明の液状エポキシ樹脂を得た。この樹脂のエポキシ当量は128g/eqであり、また25℃における粘度は25mPa.sであった。
エポキシ樹脂a−2(1,4−シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂):
エポキシ樹脂a−2には新日鉄住金化学株式会社製ZX−1658GSを用いた。この樹脂のエポキシ当量は134g/eqであり、また25℃における粘度は37mPa・sであった。
エポキシ樹脂a−3(4,4’−ビフェニルジメタノール型エポキシ樹脂):
パラキシレングリコール220重量部の代わりに4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル300重量部を用いたほかはエポキシ樹脂a−1と同じ条件で合成したのち多段蒸留をおこない、無色透明の液状エポキシ樹脂を得た。この樹脂のエポキシ当量は171g/eqであり、また25℃における粘度は157mPa.sであった。
エポキシ樹脂a−4(トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂):
エポキシ樹脂a−4には、新日鉄住金化学株式会社製ZX−1542を用いた。この樹脂のエポキシ当量は120g/eqであり、また25℃における粘度は80mPa・sであった。
エポキシ樹脂a−5(ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂):
エポキシ樹脂a−5には、新日鉄住金化学株式会社製PG−207GSを用いた。この樹脂のエポキシ当量は320g/eqであり、また25℃における粘度は43mPa・sであった。
エポキシ樹脂a−6(パラアミノフェノール型エポキシ樹脂):
エポキシ樹脂a−6には、ハンツマン・コーポレーション社製MY−0510を用いた。この樹脂のエポキシ当量は97g/eqであり、また25℃における粘度は700mPa・sであった。
エポキシ樹脂a−7(ビスフェノールF型エポキシ樹脂):
エポキシ樹脂a−7には、新日鉄住金化学株式会社製YDF−8170を用いた。この樹脂のエポキシ当量は158g/eqであり、また25℃における粘度は1300mPa・sであった。
エポキシ樹脂a−8(ビスフェノールA型エポキシ樹脂):
エポキシ樹脂a−8には、新日鉄住金化学株式会社製YD−128を用いた。この樹脂のエポキシ当量は188g/eqであり、また25℃における粘度は13000mPa・sであった。
[結晶性エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂b−1(ビフェノールアラルキル型エポキシ樹脂)
2000mlの4口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシビフェニル186.0重量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル600重量部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら150℃まで昇温させ、ジエチレングリコールジメチルエーテル260重量部に1,4−ビスクロロメチルベンゼン52.5重量部を溶解させた溶液を滴下した後、170℃まで昇温して2時間反応させた。反応後、大量の純水に滴下して再沈殿により回収し、淡黄色で結晶性の樹脂202重量部を得た。
ここで、得た樹脂115重量部をエピクロルヒドリン549重量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル82.4重量部に溶解し、減圧下(約130Torr)62℃にて48%水酸化ナトリウム水溶液82.4重量部を4時間かけて滴下した。この間、生成する水はエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに1時間反応を継続した。その後、エピクロルヒドリンを留去し、メチルイソブチルケトン966重量部を加えた後、水洗により塩を除いた。その後、24%水酸化ナトリウム水溶液19.2重量部加え、85℃で2時間反応させた。反応後、濾過、水洗を行なった後、溶媒であるメチルイソブチルケトンを減圧留去し、エポキシ樹脂を得た。エポキシ当量は173g/eq、融点は128℃、樹脂中の4,4’−ジヒドロキシビフェニルの含有量は41area%であった。得られた樹脂は下記式(6)で表されるビフェノールアラルキル型エポキシ樹脂であった。なお、式(6)中、nは繰り返し単位を表す数を意味する。
[式中、nは数平均にて約30を示す。]
エポキシ樹脂b−2(ビフェニル型エポキシ樹脂):
4,4’−ジヒドロキシビフェニル46.5重量部と3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル60.5重量部をエピクロルヒドリン473重量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル82重量部に溶解し、減圧下(約130Torr)62℃にて48%水酸化ナトリウム水溶液155重量部を4時間かけて滴下した。以下はエポキシ樹脂b−1と同様の処理をおこない、エポキシ樹脂を得た。エポキシ当量は172g/eq、融点は125℃であった。
[高分子量エポキシ樹脂]
高分子量エポキシ樹脂c−1(ビフェニル型高分子量エポキシ樹脂):
攪拌機、窒素吹き込み口、熱電対、冷却機を備えた還流口を供えたセパラブルフラスコに、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名;YX−4000、エポキシ当量186、固形)を67.43重量部、4,4’−ビフェノールを32.56重量部、シクロヘキサノンを25重量部仕込み、145℃まで昇温、溶解して1時間撹拌した。その後、反応触媒としてトリス−(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィンを0.1重量部仕込み、165℃まで昇温した。反応の経過とともに粘度が上昇するが、適宜シクロヘキサノンを加えて一定のトルクとなるよう撹拌を継続した。反応はゲルパーミエーションクロマトグラフィにて追跡し、所定の重量平均分子量となったところでシクロヘキサノンを加えて冷却し、反応を停止した。得られた溶液は均一であり、固形分が30.1重量%であった。得られた高分子量エポキシ樹脂は、下記の式(7)で示され、淡黄色液状であり、そのエポキシ当量は12,900g/eq(固形分換算)、数平均分子量は15,500、重量平均分子量は42,200であった。
[式中、nは数平均にて約30を示す。]
高分子量エポキシ樹脂c−2(ビスフェノールF−ビフェニル型高分子量エポキシ樹脂):
攪拌機、窒素吹き込み口、熱電対、冷却機を備えた還流口を供えたセパラブルフラスコに、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名;YDF−8170、エポキシ当量158、液状)を63.65重量部、4,4’−ビフェノールを36.35重量部、それぞれ仕込んだほかは高分子量エポキシ樹脂c−1と同様の方法にて高分子量フェノキシ樹脂溶液を得た。得られた溶液は均一であり、固形分が34.5重量%であった。得られたフェノキシ樹脂は、下記の式(8)に示されるように、淡黄色液状であり、そのエポキシ当量は10,400g/eq(固形分換算)、数平均分子量は11,300、重量平均分子量は61,800であった。
[式中、nは数平均にて約30を示す。]
硬化剤:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名;キュアゾール2PHz−PW)
シランカップリング剤:チッソ株式会社製、商品名;サイラーエースS−510
アルミナ粉末A:マイクロン社製、商品名;AL35−75R、球状、結晶性、最大粒子径;75μm、平均粒子径D50;35μm、Na;1.8ppm
アルミナ粉末B:マイクロン社製、商品名;AL10−75R、球状、結晶性、最大粒子径;75μm、平均粒子径D50;10μm、Na;3.9ppm
アルミナ粉末C:アドマテックス社製、商品名;AO−802、球状、結晶性、最大粒子径;10μm、平均粒子径D50;0.7μm、Na;1.3ppm
[実施例1〜13、比較例1〜10]
表1〜4に示す組成で、液状エポキシ樹脂、高分子量エポキシ樹脂、シクロペンタノンを加えて撹拌し、均一の樹脂溶液を得た。次に、結晶性エポキシ樹脂を加えて加温し、これを溶解した。そこに、フィラー、シランカップリング剤を加えて混練した。さらに、硬化剤を配合し、樹脂スラリーを得た。得られた樹脂スラリーをPET基材(三菱化学株式会社製MRX−50)の離型面に塗工し、120℃で12分間乾燥し、厚み150μmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを各種試験に供した。その結果を表1〜4に示した。なお、表中、エポキシ樹脂、硬化剤、フェノキシ樹脂、アルミナ粉末、シランカップリング剤、及び溶剤(シクロヘキサノン及びシクロペンタノン)の配合量は重量部で示した。
表1〜4から、低粘度の液状エポキシ樹脂を用いた実施例1〜13では、硬化物の熱伝導率が15W/m・K以上となっており、比較例に比べ、熱伝導率の高い硬化物が得られることがわかった。
図1は、実施例1〜6、比較例1〜7で得られたエポキシ樹脂中の結晶性エポキシ樹脂の比率と熱伝導率の関係についてプロットしたものである。比較例1から比較例7では、結晶性エポキシ樹脂の配合比率を高めるほど熱伝導率が高くなる傾向があった。上記特許文献2には、結晶性エポキシ樹脂の配合比率を低くすると熱伝導率が低くなる旨の記述があり、比較例1から比較例7で示される傾向は従来の知見と一致していた。一方、実施例1〜6は、比較例(従来技術)の傾向とは明らかに異なる傾向を示した。すなわち、実施例1〜6では、結晶性エポキシ樹脂の配合比率と、熱伝導率との間に、正の比例関係は見いだせなかった。特に、B/(A+B)が50〜80%の範囲内では、結晶性エポキシ樹脂の配合比率を低くしても、熱伝導率が上昇しており、比較例とは反対の傾向を示した。このような結果は、(a)成分の液状エポキシ樹脂自体に熱伝導率の向上作用があるか、あるいは、(a)成分には熱伝導率の向上作用はないが、(b)成分の結晶性エポキシ樹脂による熱伝導率の向上作用を、(a)成分がアシストしていると考えなければ説明が困難である。そこで、本発明者らは、(a)成分によって、(b)成分の配向が促進されたことによって、熱伝導率が向上したものと推測した。
図2は、実施例1〜6、比較例1〜7で使用した(a)成分と(b)成分との混合物の150℃における溶融粘度を測定した結果を示すグラフである。図2の縦軸は粘度[mPa・s]を、横軸は、B/(A+B)を示している。この図2と表1〜4の結果から、低粘度の液状エポキシ樹脂を用いて熱伝導率が15W/m・K以上と高い硬化物が得られた実施例1〜6では、比較例1〜7に比べて、硬化反応温度域での粘度が低いことが理解される。この硬化反応温度域での粘度の低下が、結晶性エポキシ樹脂による分子配向を促しているものと推測される。
[実施例14、実施例15、比較例11]
表5に示す組成で、フィラーを配合しない以外は、実施例1等と同様にして樹脂硬化物を作成し、偏光顕微鏡観察をおこなった。観察はクロスニコル状態としたステージ上に試料を置き、その透過光写真を撮影することにより行った。実施例14の結果を図3、実施例15の結果を図4、比較例11の結果を図5に示す。
図3〜5から、いずれの試料についても異方性構造を含み、リオトロピック液晶様構造と推定される異方性構造が形成されることがわかった。しかし、25℃における粘度が1000mPa・s以下である低粘度液状エポキシ樹脂を用いた実施例14、実施例15は、比較的高粘度の液状エポキシ樹脂を用いた比較例11と比べて明らかに大きな異方性構造のドメインを有することがわかった。この理由については明らかになっていないが、液状エポキシ樹脂として、25℃における粘度が1000mPa・s以下である低粘度のものを使用することによって、硬化反応時に分子運動が容易になり、結晶成分の配向が促進された結果、異方性構造のドメインが大きく成長したものと考えられる。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。

Claims (12)

  1. 下記の成分(a)〜(d):
    (a)25℃における粘度が1000mPa・s以下である液状エポキシ樹脂、
    (b)示差走査熱量分析(DSC)において、70℃以上200℃以下の範囲内に結晶融解に起因する吸熱ピークが観測される結晶性エポキシ樹脂、
    (c)エポキシ樹脂硬化剤、及び、
    (d)前記成分(a)及び前記成分(b)とは異なるエポキシ樹脂であって、下記の構造式(1)で示される、エポキシ当量が2,500g/eq以上であり、重量平均分子量が20,000〜100,000の範囲内の高分子量エポキシ樹脂、
    [式中、Xは、下記式(2)で表されるビフェニレン骨格又は下記式(3)で表されるメチレンビスフェノール骨格を意味し、Yは、下記式(2)で表されるビフェニレン骨格を意味し、Zはグリシジル基を意味し、nは繰り返し単位を表す数を意味する。]
    [式(2)及び式(3)中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を意味する。]
    を含有するとともに、前記式(1)において、Xの構造のうち45%以上が、前記式(2)で示される構造であり、
    エポキシ当量が500g/eq以下のエポキシ樹脂成分の合計100重量部に対して、前記成分(a)の液状エポキシ樹脂の配合量が10〜70重量部の範囲内であり、前記成分(b)の結晶性エポキシ樹脂の配合量が30〜90重量部の範囲内であるとともに、
    前記成分(a)と前記成分(b)の合計量100重量部に対して、前記成分(d)の配合量が100重量部以下であるエポキシ樹脂組成物。
  2. 前記成分(b)が、4,4’−ジグリシドキシビフェニルを20質量%以上含有するものである請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 前記成分(a)を構成するエポキシ化合物が、分子中に芳香環を有する請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 前記成分(a)が、単一構造のエポキシ化合物から構成される請求項1から3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 前記成分(a)と前記成分(b)の混合物が、150℃において液状であり、かつそのときの粘度が100mPa・s以下である請求項1から4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 前記成分(a)と前記成分(b)の混合物に占める前記成分(b)の割合[重量%]を、150℃における溶融粘度[mPa・s]で除して得られた値が1.1以上である請求項1から5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 前記成分(c)が、イミダゾール化合物を含有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  8. さらに、熱伝導率が3W/m・K以上の金属、金属酸化物及び金属窒化物からなる群より選ばれる1種又は2種以上を、エポキシ樹脂組成物中の樹脂成分100重量部に対して、1〜2000重量部の範囲内で含有する請求項1から7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を溶剤に溶解し、基材に塗工・乾燥してなる樹脂シート。
  10. 前記基材が、離型剤を塗布したPETフィルムである請求項9に記載の樹脂シート。
  11. 前記基材が、金属箔である請求項9に記載の樹脂シート。
  12. 請求項1から8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物。
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