JP2021091799A - エポキシ樹脂組成物および成形物 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形性に優れ、無機充填材と複合化させた場合の熱伝導率が高く、かつ低熱膨張性で耐熱性、耐湿性および難燃性に優れた成形物を与えるエポキシ樹脂組成物を提供し、更にそれを用いた成形物を提供する。【解決手段】エポキシ樹脂及び硬化剤、またはこれらと無機充填材を主成分とするエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分として、ターフェニル基を持つエポキシ樹脂をエポキシ樹脂成分中50wt%以上用い、硬化剤成分として、二官能フェノール性化合物を硬化剤成分中50wt%以上用いて得られるエポキシ樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、電気絶縁性等の信頼性に優れた半導体封止、積層板、放熱基板等の電気・電子材料用絶縁材料として有用なエポキシ樹脂組成物及びそれを用いた成形物に関する。
従来、ダイオード、トランジスタ、集積回路(IC)等の電気、電子部品や、半導体装置等の封止方法として、例えばエポキシ樹脂やシリコン樹脂等による封止方法や、ガラス、金属、セラミック等を用いたハーメチックシール法が採用されていたが、近年では電気絶縁性等の信頼性の向上と共に大量生産が可能で、コストメリットのあるトランスファー成形による樹脂封止が主流を占めている。
トランスファー成形による樹脂封止に用いられる樹脂組成物においては、エポキシ樹脂と、硬化剤としてフェノール樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる封止材料が一般的に使用されている。
パワーデバイスなどの素子を保護する目的で使用されるエポキシ樹脂組成物は、素子が放出する多量の熱に対応するため、結晶シリカなどの無機充填材を高密度に充填している。
パワーデバイスには、ICの技術を組み込んだワンチップで構成されるものやモジュール化されたものなどがあり、封止材料に対する熱放散性、耐熱性、熱膨張性の更なる向上が望まれている。
これらの要求に対応するべく、熱伝導率を向上するために熱伝導率の大きい結晶シリカ、窒化珪素、窒化アルミニウム、球状アルミナ粉末等の無機充填材を含有させるなどの試みがなされている(特許文献1、2)。ところが、無機充填材の含有率を上げていくと成形時の粘度上昇とともに流動性が低下し、成形性が損なわれるという問題が生じる。従って、単に無機充填材の含有率を高める方法には限界があった。
上記背景から、マトリックス樹脂自体の高熱伝導率化によって組成物の熱伝導率を向上する方法も検討されている。例えば、特許文献3、特許文献4および特許文献5には、剛直なメソゲン基を有する液晶性のエポキシ樹脂およびそれを用いたエポキシ樹脂組成物が提案されている。しかし、これらのエポキシ樹脂組成物に用いる硬化剤としては、芳香族ジアミン化合物を用いており、無機充填材の高充填率化に限界があるとともに、電気絶縁性の点でも問題があった。また、芳香族ジアミン化合物を用いた場合、硬化物の液晶性は確認できるものの、硬化物の結晶化度は低く、高熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等の点で十分ではなかった。さらには液晶性発現のために、強力な磁場をかけて分子を配向させる必要があり、工業的に広く利用するためには設備的にも大きな制約があった。また、無機充填材との配合系では、マトリックス樹脂の熱伝導率に比べて無機充填材の熱伝導率が圧倒的に大きく、マトリックス樹脂自体の熱伝導率を高くしても、複合材料としての熱伝導率向上には大きく寄与しないという現実があり、十分な熱伝導率向上効果は得られていなかった。なお、特許文献6にはターフェニル基を持つエポキシ樹脂が示され、硬化剤に多官能フェノール樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物が開示されているが、多官能フェノール樹脂を用いた場合、ターフェニル構造のエポキシ樹脂の分子の配向が十分ではなく、熱伝導率等の物性向上が十分ではなかった。これまで、ターフェニル構造のエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂と二官能性フェノール化合物を主成分とする硬化剤から得られる硬化物の物性については教えるものはなかった。
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、成形性に優れ、無機充填材と複合化させた場合の熱伝導率が高く、かつ低熱膨張性で耐熱性、耐湿性、さらには難燃性に優れた成形物を与えるエポキシ樹脂組成物を提供し、更にそれを用いた成形物を提供することである。
本発明者らは、ターフェニル構造を持つエポキシ樹脂と二次元的に反応が進行する特定の二官能の硬化剤を組み合わせた場合において、熱伝導率、耐熱性、低熱膨張性等の物性が特異的に向上することを見出し、本発明に到達した。
本発明は、エポキシ樹脂及び硬化剤、又はこれらと無機充填材を主成分とするエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂の50wt%以上がターフェニル構造を持つエポキシ樹脂であり、硬化剤の50wt%以上が二官能フェノール性化合物であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
上記の二官能フェノール性化合物としては、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ジヒドロキシジフェニルメタン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド及びナフタレンジオール類からなる群より選ばれる少なくとも1種の二官能フェノール性化合物が好ましく挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は無機充填材を含むことができ、この場合エポキシ樹脂組成物中に無機充填材を50〜96wt%含有することが好ましい。また、後述するとおり、無機充填材としては、球状のアルミナが好ましく挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、電子材料用、特に、後述するとおり電子部品の封止材用又は電気絶縁基板用のエポキシ樹脂組成物として適する。
更に、本発明は、上記のエポキシ樹脂組成物を反応させて成形硬化して得られることを特徴とする成形物である。
上記硬化成形物は、熱伝導率が4W/m・K以上であることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成形性、電気絶縁性等の信頼性に優れ、かつ高熱伝導性、低吸水性、低熱膨張性、高耐熱性、難燃性に優れた成形物を与え、半導体封止、積層板、放熱基板等の電気・電子材料用絶縁材料として好適に応用され、優れた高放熱性、高耐熱性、難燃性および高寸法安定性が発揮される。このような特異的な効果が生ずる理由は、ターフェニル構造の剛直構造を有するエポキシ樹脂を主成分として用いたことと、硬化剤に二官能フェノール性化合物を主成分として用いたことにより樹脂骨格の配向性が良くなったためと推察される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂は、下記式(1)で表されるターフェニル構造を持つエポキシ樹脂を50wt%以上含む。
(但し、R1、R2は水素原子または、炭素数1〜8の炭化水素基であり、nは0〜50の数を示す。)
式(1)において、ターフェニル構造としてはo−ターフェニル骨格、m−ターフェニル骨格、p−ターフェニル骨格があるが、好ましくは、m−ターフェニル骨格である。m−ターフェニル骨格との比較では、o−ターフェニル骨格は、耐熱性および熱伝導率が不十分であり、p−ターフェニル骨格は、エポキシ樹脂としての融点が高くなり、取り扱い性が低下する。
ターフェニル骨格に対する酸素原子の置換位置は、3,3’’−位、3,4’’−位、4,4’’−位が好ましいが、特には4,4’’−位が好ましい。R1、R2は、水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基であり、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、炭化水素基としてはメチル基、エチル基、iso−プロピル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基等が例示されるが、水素原子またはメチル基が好ましい。炭化水素基の置換位置は、特に限定されないが、3−位、3’’−位が好ましい。
式(1)のnは0から50の数を表すが、好ましいnの値は、適用する用途に応じて異なる。例えば、フィラーの高充填率化が要求される半導体封止材の用途には、低粘度であるものが望ましく、nの値は0〜3、好ましくは0.1〜2、さらに好ましくは、nが0のものが50wt%以上含まれるものである。本発明のエポキシ樹脂が、nの値が異なる混合物である場合は、nの数平均値として0〜5、好ましくは0.1〜2、更に好ましくは、nが0のものが50wt%以上含まれるものであり、nの数平均値が0.1〜1のものである。これらの低分子量のエポキシ樹脂は、場合により結晶化され、常温で固体として使用される。また、プリント配線板等の用途には、高分子量のエポキシ樹脂が好適に使用され、この場合のnの値は、5〜50、好ましくは10〜40、更に好ましくは、20〜40である。nの値が異なる混合物である場合は、nの数平均値としても、上記の範囲がよい。この場合、数平均値が50以下となれば、nの値が50以上の整数となる分子が含まれてもよい。
本発明に用いるエポキシ樹脂の製法は、特に限定されるものではないが、下記式(2)のターフェニル基を持つフェノール性化合物とエピクロルヒドリンとを反応させることにより製造することができる。この反応は、通常のエポキシ化反応と同様に行うことができる。
(但し、R1、R2は、水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示す。)
一般式(2)で、R1およびR2は、上記一般式(1)のR1およびR2と同じである。
フェノール性化合物とエピクロルヒドリンとの反応は、例えば、フェノール性化合物を過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に、50〜150℃、好ましくは、60〜100℃の範囲で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。この際のアルカリ金属水酸化物の使用量は、フェノール性化合物中の水酸基1モルに対して、0.8〜2.0モル、好ましくは、0.9〜1.5モルの範囲である。エピクロルヒドリンは、フェノール性化合物中の水酸基に対して過剰量が用いられ、通常は、フェノール性化合物中の水酸基1モルに対して、1.5から15モルである。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより目的のエポキシ樹脂を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂は、ターフェニル基を持つフェノール性化合物とターフェニル基を持たない他のフェノール性化合物とを混合させたものを用いて合成することもできる。この場合のターフェニル基を持つフェノール性化合物の混合比率は50wt%以上であることが好ましい。また、他のフェノール性化合物については特に制約はなく、一分子中に水酸基を2個以上有するものの中から選択される。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、通常180から600の範囲であるが、無機フィラーの高充填率化および流動性向上の観点からは低粘度性のものが良く、エポキシ当量が180から300の範囲のものが好ましい。
このターフェニル基を持つエポキシ樹脂は、通常、常温で結晶性を有するものが好適に使用される。好ましい融点の範囲は80℃〜250℃であり、より好ましくは、100℃〜200℃の範囲である。これより低いとブロッキング等が起こりやすくなり固体としての取扱い性に劣り、これより高いと硬化剤等との相溶性、溶剤への溶解性等が低下する。
このターフェニル基を持つエポキシ樹脂の純度、特に加水分解性塩素量は、適用する電子部品の信頼性向上の観点より少ない方がよい。特に限定するものではないが、好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。なお、本発明でいう加水分解性塩素とは、以下の方法により測定された値をいう。すなわち、試料0.5gをジオキサン30mlに溶解後、1N−KOH、10mlを加え30分間煮沸還流した後、室温まで冷却し、さらに80%アセトン水100mlを加え、0.002N−AgNO3水溶液で電位差滴定を行い得られる値である。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必須成分として使用されるターフェニル基を持つエポキシ樹脂以外に、エポキシ樹脂成分として分子中にエポキシ基を2個以上有する他のエポキシ樹脂を併用してもよい。例を挙げれば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、フルオレンビスフェノール、2,2’−ビフェノール、レゾルシン、カテコール、t‐ブチルカテコール、t‐ブチルハイドロキノン、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化フェノールノボラック等の2価のフェノール類、あるいは、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、o‐クレゾールノボラック、m‐クレゾールノボラック、p‐クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、ポリ‐p‐ヒドロキシスチレン、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フルオログリシノール、ピロガロール、t‐ブチルピロガロール、アリル化ピロガロール、ポリアリル化ピロガロール、1,2,4‐ベンゼントリオール、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂等の3価以上のフェノール類、または、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル化物等がある。これらのエポキシ樹脂は、1種または2種以上を用いることができる。また、メソゲン基を持つエポキシ樹脂についても、1種または2種以上を用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いるターフェニル基を持つエポキシ樹脂の配合割合は、全エポキシ樹脂の50wt%以上であり、好ましくは70wt%以上、より好ましくは80wt%以上である。さらには、二官能性エポキシ樹脂の合計量が70wt%以上、好ましくは80wt%以上であることが望ましい。これより少ないと硬化物とした際の熱伝導率等の物性向上効果が小さい。これは、ターフェニル基を持つエポキシ樹脂の含有率が高く、かつ二官能性エポキシ樹脂の含有率が高いものほど、成形物としての配向度が高くなるためである。
ターフェニル基を持つエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂としては、下記一般式(3)で表されるビスフェノール系エポキシ樹脂が好ましい。
(但し、Zは単結合、メチレン基、ケトン基、酸素原子または硫黄原子であり、rは0〜1の数を示す。)
これらのエポキシ樹脂は、例えば、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドを原料として、通常のエポキシ化反応を行うことで合成することができる。これらのエポキシ樹脂は、原料段階でメソゲン基を持つジヒドロキシ化合物と混合させたものを用いて合成してもよい。
硬化剤として用いる二官能フェノール性化合物は、一分子中に2個のフェノール性水酸基を有するものであり、特に限定されるものではないが、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、ヒドロキノン、レゾルシン、t‐ブチルハイドロキノン、1,2‐ジヒドロキシナフタレン、1,3‐ジヒドロキシナフタレン、1,4‐ジヒドロキシナフタレン、1,5‐ジヒドロキシナフタレン、1,6‐ジヒドロキシナフタレン、1,7‐ジヒドロキシナフタレン、1,8‐ジヒドロキシナフタレン、2,3‐ジヒドロキシナフタレン、2,6‐ジヒドロキシナフタレン、2,7‐ジヒドロキシナフタレン、さらには、上記式(2)のターフェニル基を持つビスフェノール化合物等を挙げることができる。これらは2種類以上を使用しても良い。
硬化剤として用いる二官能フェノール性化合物としては、メソゲン基を有するものが好ましく用いられ、具体的には、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,4,4’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、1,5−ナフタレンジオール、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、さらには、上記式(2)のターフェニル基を持つビスフェノール化合物を例示することができる。また、メソゲン基を持たないもので、好ましい二官能フェノール性化合物としては、ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドを挙げることができる。
硬化剤として用いる二官能フェノール性化合物の使用量は全硬化剤の50wt%以上、好ましくは60wt%以上、より好ましくは70wt%以上である。これより少ないと硬化物とした際の熱伝導率等の物性向上効果が小さい。これは、二官能フェノール性化合物の含有率が高いものほど、成形物としての配向度が高くなるためである。
本発明のエポキシ樹脂組成物にて用いる硬化剤としては、上記の二官能フェノール性化合物以外に、硬化剤として一般的に知られている他の硬化剤を併用して用いることができる。例を挙げれば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。これら他の硬化剤の配合量は、配合する硬化剤の種類や得られる熱伝導性エポキシ樹脂成形体の物性を考慮して適宜設定すればよい。しかし、全硬化剤の50wt%を超えないようにする。
本発明のエポキシ樹脂組成物では、エポキシ樹脂と硬化剤の配合比率は、エポキシ基と硬化剤中の官能基が当量比で0.8〜1.5の範囲であることが好ましい。この範囲外では硬化後も未反応のエポキシ基、または硬化剤中の官能基が残留し、電子部品用絶縁材料に関しての電気絶縁性等の信頼性が低下する。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、無機充填材が配合されることが好ましい。この場合の無機充填材の添加量は、通常、エポキシ樹脂組成物に対して50〜98wt%であるが、好ましくは75〜96wt%、さらに好ましくは85〜96wt%である。これより少ないと高熱伝導性、低熱膨張性、高耐熱性等の効果が十分に発揮されない。これらの効果は、無機充填材の添加量が多いほど向上するが、その体積分率に応じて向上するものではなく、特定の添加量以上となった時点から飛躍的に向上する。これらの物性は、エポキシ樹脂が硬化剤と反応した高分子状態での高次構造が制御された効果によるものであり、この高次構造が主に無機充填材表面で達成されることから、特定量の無機充填材を必要とするものであると考えられる。一方、無機充填材の添加量がこれより多いと粘度が高くなり、成形性が悪化する。
無機充填材は球状のものが好ましく、断面が楕円上であるものも含めて球状であれば特に限定されるものではないが、流動性改善の観点からは、極力真球状に近いものであることが特に好ましい。これにより、組成物において無機充填材が面心立方構造や六方稠密構造等の最密充填構造をとり易く、充分な充填量を得ることができる。球形でない場合、充填量が増えると充填材同士の摩擦が増え、上記の上限に達する前に流動性が極端に低下して粘度が高くなり、成形性が悪化する。
熱伝導率向上の観点からは、無機充填材の50wt%以上、好ましくは80wt%以上を、熱伝導率が5W/m・K以上のものとすることがよい。かかる無機充填材としては、アルミナ、窒化アルミニウム、結晶シリカ等が好適である。これらの中でも、球状アルミナが優れる。その他、必要に応じて形状に関係なく無定形無機充填材、例えば溶融シリカ、結晶シリカなどを併用しても良い。
また、無機充填材の平均粒径は30μm以下であることが好ましい。平均粒径がこれより大きいとエポキシ樹脂組成物の流動性が損なわれ、また強度も低下する。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、公知の硬化促進剤を用いることができる。例を挙げれば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等があり、具体的には、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレートなどのテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルポレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルポレートなどのテトラフェニルボロン塩などがある。添加量としては、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.2〜10重量部の範囲である。これらは単独で用いても良く、併用しても良い。
上記硬化促進剤の添加量は、エポキシ樹脂と硬化剤の合計に対して、0.1〜10.0wt%が好ましい。0.1wt%未満ではゲル化時間が遅くなって加熱反応時の剛性低下による作業性の低下をもたらし、逆に10.0wt%を超えると成形途中で反応が進んでしまい、未充填が発生し易くなる。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、上記成分の他に、離型剤、カップリング剤、熱可塑性のオリゴマー類、その他の一般的にエポキシ樹脂組成物に使用可能なものを適宜配合して用いることができる。例えば、リン系難燃剤、ブロム化合物や三酸化アンチモン等の難燃剤、及びカーボンブラックや有機染料等の着色剤等を使用することができる。
離型剤としては、ワックスが使用できる。ワックスとしては、例えばステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、リン酸エステル等が使用可能である。
カップリング剤としては、例えばエポキシシランが使用可能である。カップリング剤の添加量は、エポキシ樹脂組成物に対して、0.1〜2.0wt%が好ましい。0.1wt%未満では樹脂と基材のなじみが悪く成形性が悪くなり、逆に2.0wt%を超えると連続成形性での成形品汚れが生じる。カップリング剤は無機充填材と樹脂成分の接着力を向上させるために用いられる。
熱可塑性のオリゴマー類としては、C5系およびC9系の石油樹脂、スチレン樹脂、インデン樹脂、インデン・スチレン共重合樹脂、インデン・スチレン・フェノール共重合樹脂、インデン・クマロン共重合樹脂、インデン・ベンゾチオフェン共重合樹脂等が例示さえる。添加量としては、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、2〜30重量部の範囲である。熱可塑性のオリゴマー類は、エポキシ樹脂組成物の成形時の流動性改良およびリードフレーム等の基材との密着性向上のために用いられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化剤を必須成分として含み、無機充填材等の成分を含む配合成分(カップリング剤を除く)をミキサー等によって均一に混合した後、カップリング剤を添加し、加熱ロール、ニーダー等によって混練して製造することができる。これらの成分の配合順序にはカップリング剤を除き特に制限はない。更に、混練後に溶融混練物の粉砕を行い、パウダー化することやタブレット化することも可能である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特に電子部品封止用および放熱基板用として優れるので、電子材料用のエポキシ樹脂組成物として適する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ガラス繊維等の繊維状基材と複合させて複合材とすることができる。例えば、エポキシ樹脂および硬化剤を主成分としたエポキシ樹脂組成物を有機溶剤に溶解させたものを、シート状繊維基材に含浸し加熱乾燥して、エポキシ樹脂を部分反応させて、プリプレグとすることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて硬化成形物を得るためには、例えば、トランスファー成形、プレス成形、注型成形、射出成形、押出成形等の加熱成形方法が適用されるが、量産性の観点からは、トランスファー成形が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂および硬化剤がともに二官能性のもののみから構成された場合においても、加熱反応させた場合、エポキシ樹脂と硬化剤が反応して生成する水酸基の一部がさらにエポキシ樹脂中のエポキシ基と反応するため、通常は三次元硬化物を与えるが、場合により有機溶剤の使用、硬化促進剤種の選択、および反応温度等の加熱反応条件の制御により、実質的に二次元高分子のみで構成された熱可塑性の成形物とすることができる。
本発明の硬化成形物は、高耐熱性、低熱膨張性および高熱伝導性の観点から結晶性を有するものであることが好ましい。成形物の結晶性の発現は、走査示差熱分析で結晶の融解に伴う吸熱ピークを融点として観測することにより確認することができる。好ましい融点は120℃から320℃の範囲であり、より好ましくは150℃から300℃の範囲である。また、硬化成形物の好ましい熱伝導率は4W/m・K以上であり、特に好ましく6W/m・K以上である。
ここで結晶性発現の効果を簡単に説明する。一般的に、エポキシ樹脂硬化物においては耐熱性の指標としてガラス転移点が用いられる。これは、通常のエポキシ樹脂硬化物が結晶性を持たないアモルファス状(ガラス状)の成形物でありガラス転移点を境として物性が大きく変化するためである。従って、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性を高くするため、すなわちガラス転移点を高くするためには架橋密度を高くする必要があるが、逆に可撓性が低下し脆くなる欠点があった。これに対して、本発明の硬化成形物は、結晶性を発達させる点に特徴があるが、融点まで物性変化が少ないことから融点を耐熱性の指標とすることができる。高分子物質は、融点の方がガラス転移点よりも高い温度にあるため、本発明の硬化成形物は、低い架橋密度により高い可撓性を維持しつつ、高い耐熱性を確保できる。また、結晶性発現は、高い分子間力を意味しており、これにより分子の運動が抑制され、低熱膨張性の達成とともに、高い熱拡散率が発揮され熱伝導率が向上する。
従って、本発明の硬化成形物の結晶化度は高いものほどよい。ここで結晶化の程度は、走査示差熱分析での結晶の融解に伴う吸熱量から評価することができる。好ましい吸熱量は、充填材を除いた樹脂成分の単位重量あたり10J/g以上である。より好ましくは30J/g以上であり、特に好ましくは50J/g以上である。これより小さいと成形物としての耐熱性、低熱膨張性および熱伝導率の向上効果が小さい。なお、ここでいう吸熱量は、示差走査熱分析計により、約10mgを精秤した試料を用いて、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件で測定して得られる吸熱ピークの積分値を指す。また、結晶化した本発明の硬化成形物は、広角X線回折においても、明確なピークとして観察することができる。この場合、結晶化度は、全体のピーク面積から結晶化していないアモルファス状樹脂のピークを差引いた面積を全体のピーク面積で除することにより求めることができる。このようにして求めた望ましい結晶化度は15%以上、より望ましくは30%以上、特に望ましくは50%以上である。
本発明の硬化成形物は、上記成形方法により加熱反応させることにより得ることができるが、通常、成形温度としては80℃から280℃であり、成形物の結晶化度を上げるためには、成形物の融点よりも低い温度で反応させることが望ましい。好ましい成形温度は100℃から220℃の範囲であり、より好ましくは130℃から200℃である。また、好ましい成形時間は30秒から1時間であり、より好ましくは1分から30分である。さらに成形後、ポストキュアにより、さらに結晶化度を上げることができる。通常、ポストキュア温度は130℃から250℃であり、時間は1時間から20時間の範囲であるが、示差熱分析における吸熱ピーク温度よりも5℃から40℃低い温度で、1時間から24時間かけてポストキュアを行うことが望ましい。
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
参考例1
4,4”−ジヒドロキシ−m−ターフェニル40.0g、エピクロルヒドリン400g、ジエチレングリコールジメチルエーテル100gを仕込み、減圧下(約130Torr)、65℃にて48.8%水酸化ナトリウム水溶液26.5gを3時間かけて滴下した。この間、生成する水はエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに1時間反応を継続し脱水した。その後、エピクロルヒドリンを減圧除去し、ジエチレングリコールジメチルエーテル100gを加えた後、ろ過により生成塩を除去した。ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液を減圧蒸留により濃縮した後、室温まで冷却し、析出した生成物を回収、乾燥して、白色の粉末状固体38gを得た。GPC測定から、n=0が93.8%、n=1体が4.4%、であった。エポキシ当量は204g/eq、キャピラリー法により昇温速度2℃/分で得られる融点は175℃から188℃であった。
4,4”−ジヒドロキシ−m−ターフェニル40.0g、エピクロルヒドリン400g、ジエチレングリコールジメチルエーテル100gを仕込み、減圧下(約130Torr)、65℃にて48.8%水酸化ナトリウム水溶液26.5gを3時間かけて滴下した。この間、生成する水はエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに1時間反応を継続し脱水した。その後、エピクロルヒドリンを減圧除去し、ジエチレングリコールジメチルエーテル100gを加えた後、ろ過により生成塩を除去した。ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液を減圧蒸留により濃縮した後、室温まで冷却し、析出した生成物を回収、乾燥して、白色の粉末状固体38gを得た。GPC測定から、n=0が93.8%、n=1体が4.4%、であった。エポキシ当量は204g/eq、キャピラリー法により昇温速度2℃/分で得られる融点は175℃から188℃であった。
実施例1〜4、比較例1〜5
エポキシ樹脂として、参考例1で得たエポキシ樹脂(エポキシ樹脂A)、ビフェニル系エポキシ樹脂(エポキシ樹脂B:三菱化学製、YX−4000H、エポキシ当量193、融点105℃)、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C:軟化点71℃、エポキシ当量197)を使用する。硬化剤として4,4”−ジヒドロキシビフェニル(硬化剤A)、ジヒドロキシジフェニルエーテル(硬化剤B)、フェノ−ルノボラック(硬化剤C:群栄化学製、PSM−4261;OH当量103、軟化点 80℃)を使用する。硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン、無機充填材として、球状アルミナ(平均粒径12.2μm)を使用する。
エポキシ樹脂として、参考例1で得たエポキシ樹脂(エポキシ樹脂A)、ビフェニル系エポキシ樹脂(エポキシ樹脂B:三菱化学製、YX−4000H、エポキシ当量193、融点105℃)、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C:軟化点71℃、エポキシ当量197)を使用する。硬化剤として4,4”−ジヒドロキシビフェニル(硬化剤A)、ジヒドロキシジフェニルエーテル(硬化剤B)、フェノ−ルノボラック(硬化剤C:群栄化学製、PSM−4261;OH当量103、軟化点 80℃)を使用する。硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン、無機充填材として、球状アルミナ(平均粒径12.2μm)を使用する。
表1に示す成分を配合し、ミキサーで十分混合した後、加熱ロールで約5分間混練したものを冷却し、粉砕してそれぞれ実施例1〜4、比較例1〜5のエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いて170℃、5分の条件で成形後、170℃で12時間ポストキュアを行い、成形物を得て、その物性を評価した。結果をまとめて表1に示す。なお、表1中の各成分の数字は重量部を表す。
[評価]
(1)熱伝導率
熱伝導率は、NETZSCH製LFA447型熱伝導率計を用いて非定常熱線法により測定した。
(2)融点、融解熱の測定(DSC法)
示差走査熱量分析装置(セイコーインスツル製DSC6200型)を用い、昇温速度10℃/分で測定した。吸熱のピーク温度を融点、吸熱ピークの積分値を融解熱とした。
(3)線膨張係数、ガラス転移温度
線膨張係数およびガラス転移温度は、セイコーインスツル(株)製TMA120C型熱機械測定装置を用いて、昇温速度10℃/分にて測定した。
(4)吸水率
エポキシ樹脂組成物を170℃、5分の条件で、直径50mm、厚さ3mmの円盤に成形し、ポストキュア後、85℃、相対湿度85%の条件で100時間吸湿させた後の重量変化率とした。
(1)熱伝導率
熱伝導率は、NETZSCH製LFA447型熱伝導率計を用いて非定常熱線法により測定した。
(2)融点、融解熱の測定(DSC法)
示差走査熱量分析装置(セイコーインスツル製DSC6200型)を用い、昇温速度10℃/分で測定した。吸熱のピーク温度を融点、吸熱ピークの積分値を融解熱とした。
(3)線膨張係数、ガラス転移温度
線膨張係数およびガラス転移温度は、セイコーインスツル(株)製TMA120C型熱機械測定装置を用いて、昇温速度10℃/分にて測定した。
(4)吸水率
エポキシ樹脂組成物を170℃、5分の条件で、直径50mm、厚さ3mmの円盤に成形し、ポストキュア後、85℃、相対湿度85%の条件で100時間吸湿させた後の重量変化率とした。
Claims (5)
- 二官能フェノール性化合物が、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ジヒドロキシジフェニルメタン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド及びナフタレンジオール類からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 無機充填材を50〜96wt%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 電子材料用のエポキシ樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる成形物。
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