本発明がより容易に理解されるため、まずいくつかの用語を定義する。
I.定義
本明細書で使用する場合、以下の用語のそれぞれが、本セクションおける用語と関連する意味を有する。
冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法的対象のうち1つ又は1つを超える(すなわち少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。一例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は1つを超える要素を意味する。
「含む(including)」という用語は、「限定されるわけではないが、含む」という句を意味するために本明細書で使用され、「限定されるわけではないが、含む」と互換的に使用される。
「又は」という用語は、状況が別途明らかに指摘しない限り、「及び/又は」という用語を意味するために本明細書で使用され、「及び/又は」という用語と互換的に使用される。
「などの」という用語は、「限定されるわけではないが、などの」という句を意味するために本明細書で使用され、「限定されるわけではないが、などの」と互換的に使用される。
本発明の方法によって処置される「患者」又は「被験体」は、ヒト又は非ヒト動物のどちらか、好ましくは哺乳動物を意味することができる。本明細書に記載する臨床観察がヒト被験体によって行われ、少なくともいくつかの実施形態において、被験体はヒトであることに注目すべきである。
「治療上有効な量」は、疾患を処置するために患者に投与されたときに疾患に対してこのような処置をもたらすのに十分である化合物の量を意味する。疾患を予防するために投与されたときに、この量は、疾患の開始を回避又は遅延するのに十分である。「治療上有効な量」は、化合物、疾患及びその重症度並びに処置される患者の年齢、体重などに応じて変動するであろう。
「予防すること」又は「予防」は、疾患又は障害を獲得するリスクの低減(すなわち疾患の臨床症候の少なくとも1つを、疾患に曝露され得る又は疾患の素因があり得るが、疾患の症候をまだ経験又は提示していない患者において発症させないようにすること)を指す。
「予防」又は「治療」的処置という用語は、対象組成物の1つ以上の被験体への投与を指す。望ましくない症状(例えば宿主動物の疾患又は他の望ましくない状態)の臨床顕在化の前に投与される場合、ここで処置は予防的であり、すなわち処置は宿主が望ましくない症状を発症することから保護するのに対して、望ましくない症状の顕在化後に投与される場合、処置は治療である(すなわち既存の望ましくない症状又はそれからの副作用を減少、緩和又は維持するものとする)。
「治療効果」という用語は、動物、特に哺乳動物、及びさらに詳細にはヒトにおいて薬理学的活性物質によって引き起こされる、局所又は全身効果を指す。該用語はそれゆえ、動物又はヒトにおける疾患の診断、治癒、軽減、処置若しくは予防での又は所望の身体的若しくは精神的発達及び状態の増強での使用が意図されるいずれの物質も意味する。「治療上有効な量」という句は、いずれの処置にも適用できる合理的な利益/リスク比にてある望ましい局所又は全身効果を生じるような物質の量を意味する。ある実施形態において、化合物の治療上有効な量は、その治療指数、溶解性などに依存するであろう。例えば、本発明の方法によって見出されたある化合物は、このような処置に適用できる合理的な利益/リスク比を生じるために十分な量で投与され得る。
「患者」とは、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、サル、モルモット、ラット、マウス、トカゲ、ヘビ、ヒツジ、魚類及び鳥類を含む、いずれかの動物(例えばヒト)を意味する。
「代謝経路」は、1つの化合物を別の化合物に変換して、中間体及び細胞機能のためのエネルギーを提供する、一連の酵素媒介反応を指す。代謝経路は線形又は環式であることができる。
「代謝状態」は、各種の化学的及び生物学的指標が健康又は疾患の状態に関連するため、各種の化学的及び生物学的指標によって測定されるような所与の時点における特定の細胞、多細胞又は組織環境の分子内容物を指す。
「マイクロアレイ」という用語は、基質、例えば紙、ナイロン若しくは他の種類の膜、フィルタ、チップ、ガラススライド、又はその他の好適な固体支持体上に合成された別個のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド(例えば抗体)又はペプチドのアレイを指す。
「障害」及び「疾患」という用語は、包括的に使用され、体のいずれの部分、器官又は系(又はそのいずれの組合せ)の正常な構造又は機能からのいずれの逸脱も指す。特異的疾患は、生物学的、化学的及び物理的変化を含む特徴的症候及び徴候によって明らかとなり、限定されるわけではないが、人口統計学的因子、環境因子、雇用因子、遺伝的因子及び病歴因子を含む、多種多様の他の因子と関連することが多い。ある特徴的な徴候、症候、及び関連因子は、重要な診断情報をもたらす多種多様の方法によって定量化することができる。
「肉腫」という用語は、身体の他の構造及び器官を連結し、支持し又は取り巻く組織の悪性腫瘍を指す。一実施形態では、肉腫は、「ユーイングファミリー腫瘍」の肉腫の1タイプである。
本明細書において使用する場合、「ユーイングファミリー腫瘍」という用語は、用語「EFT」と互換的に用いられ、骨又は隣接する軟組織を侵す癌の群を意味する。本明細書において用いられる「ユーイングファミリー腫瘍」という用語には、骨のユーイング腫瘍(ユーイング肉腫とも呼ばれる)、最も一般的なタイプのEFT、骨外性ユーイング(EOE)、骨の外側の軟組織において増殖する腫瘍、及び未分化神経外胚葉性腫瘍(PPNET)、骨及び軟組織においてみられる癌、例えばAskin腫瘍(胸壁のPPNET)が含まれる。
「発現」という用語は、ポリペプチドがDNAから産生されるプロセスを意味するために本明細書で使用される。このプロセスは、遺伝子のmRNAへの転写及びこのmRNAのポリペプチドへの翻訳を包含する。使用される状況に応じて、「発現」は、RNA、タンパク質又はその両方の産生を指す。
「細胞における遺伝子の発現レベル」又は「遺伝子発現レベル」という用語は、細胞中の、遺伝子によってコードされるmRNA、並びにプレmRNA新生転写物、転写プロセシング中間体、成熟mRNA及び分解生成物のレベルを指す。
「調節(変化、モジュレーション)」という用語は、応答の上方調節(すなわち活性化若しくは刺激)、下方調節(すなわち阻害若しくは抑制)、又は組み合わされた若しくは別々のその2つを指す。「モジュレーター(調節因子)」は、調節する化合物又は分子であり、例えばアゴニスト、アンタゴニスト、アクチベーター、刺激因子、サプレッサー、又はインヒビターであり得る。
「より高レベルの発現」、「より高レベルの活性」、「発現レベルの増加」、又は「活性レベルの増加」とは、発現及び/又は活性を評価するために利用されるアッセイの標準誤差よりも大きく、かつ対照サンプル(例えば、肉腫に罹患していない健常被験体からのサンプル)におけるマーカーの発現レベル及び/又は活性、好ましくは、いくつかの対照サンプルにおけるマーカーの平均発現レベル及び/又は活性の好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは3倍、4倍、5倍、又は10倍以上である、試験サンプル中の発現レベル及び/又は活性をいう。
「より低レベルの発現」、「より低レベルの活性」、「発現レベルの減少」、又は「活性レベルの減少」とは、発現及び/又は活性を評価するために利用されるアッセイの標準誤差よりも大きいが、しかし対照サンプル(例えば、マーカーの予測能力のための妥当性標準として機能するフォローアップ情報を有する肉腫のパネルに対して直接的又は間接的に較正されているサンプル)におけるマーカーの発現レベル及び/又は活性、好ましくは、いくつかの対照サンプルにおけるマーカーの平均発現レベル及び/又は活性の好ましくは少なくとも1/2倍、より好ましくは1/3倍、1/4倍、1/5倍、又は1/10倍である、試験サンプル中の発現レベル及び/又は活性をいう。
本明細書で使用される場合、「抗体」には、例として、天然に存在する型の抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE)と、一本鎖抗体、キメラ及びヒト化抗体、多価抗体、並びに前述のすべてのフラグメント及び誘導体などの組換え抗体が含まれ、このフラグメント及び誘導体は少なくとも1つの抗原結合部位を有する。抗体誘導体は、抗体にコンジュゲートされたタンパク質又は化学部分を含んでもよい。
本明細書で使用される場合、「既知の標準」又は「対照」とは、本発明のマーカー、及び肉腫の存在又は非存在に関して適用可能であるような、1つ以上の量及び/又は数学的な関係をいう。既知の標準は、好ましくは、再発腫瘍及び非再発腫瘍、並びに/又は侵襲性又は非侵襲性腫瘍に特徴的な量及び/又は数学的関係を反映するものである。既知の標準を生成するための試薬には、限定されるものではないが、侵襲性であることがわかっている腫瘍からの腫瘍細胞、非侵襲性であることがわかっている腫瘍からの腫瘍細胞、及び任意に標識された抗体が含まれる。既知の標準はまた、特定のマーカータンパク質を発現するように、若しくは特定のマーカータンパク質を発現しないように操作された細胞系統を含むがこれに限定されない組織培養細胞系統、又は一定量のマーカータンパク質を構成的に含むか、若しくはマーカータンパク質を発現するように操作されることもできる(例えば、環境の変化への曝露によって、ここで、このような環境の変化には、増殖因子、ホルモン、ステロイド、サイトカイン、抗体、種々の薬物及び代謝拮抗物質、並びに細胞外マトリックスが含まれるがこれらに限定されない)腫瘍異種移植片を含んでもよい。細胞系統は、分析のためにガラススライド上に直接的にマウントされ、固定され、ペレットとして直接的にパラフィンに包埋され、又はアガロースなどのマトリックスに懸濁され、次いで固定され、パラフィンに包埋され、切片化され、そして組織サンプルとして処理されてもよい。標準は、マーカータンパク質の予測能力のための妥当性標準として機能するフォローアップ情報を有する肉腫のパネルに対して直接的又は間接的に較正されなければならない。
本明細書で使用される場合、「初期の処置」とは、肉腫に罹患している被験体の最初の処置をいう。初期の処置には、限定されるものではないが、外科手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法、免疫療法、脈管形成療法、同種幹細胞治療、及び生物調節因子による療法が含まれる。
肉腫の少なくとも1つの徴候が軽減され、終了され、遅延され、若しくは予防されることが予測され、又は軽減され、終了され、減速され、若しくは予防されている場合、肉腫は「処置される」。本明細書で使用される場合、肉腫の再発又は転移が低減され、遅延され、減速され、又は予防される場合も、肉腫は「処置される」。
キットは、本発明のマーカーを特異的に検出するための少なくとも1種の試薬(例えば、プローブ)を含む任意の製品(例えば、パッケージ又は容器)であり、この製品は、本発明の方法を実施するための単位として、販売促進され、流通され、又は販売される。
「トロラミン」という用語は、本明細書で使用する場合、トロラミンNF、トリエタノールアミン、TEAlan(登録商標)、TEAlan 99%、トリエタノールアミン, 99%、トリエタノールアミン, NF又はトリエタノールアミン, 99%, NFを指す。これらの用語は、本明細書で互換的に使用され得る。
「コエンザイムQ10分子」又は「CoQ10分子」という用語は、本明細書で使用する場合、コエンザイムQ10、CoQ10のビルディングブロック、CoQ10の誘導体、CoQ10の類似体、CoQ10の代謝産物、又はコエンザイム生合成経路の中間体を含む。
CoQ10の「ビルディングブロック」は、限定されるわけではないが、フェニルアラニン、チロシン、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸、フェニル酢酸、3-メトキシ-4-ヒドロキシマンデル酸、バニリン酸、4-ヒドロキシベンゾエート、メバロン酸、ファルネシル、2,3-ジメトキシ-5-メチル-p-ベンゾキノン、並びに対応するその酸又はイオンを含む。
「CoQ10の誘導体」は、CoQ10と類似の構造を有するが、1個の原子又は官能基が別の原子又は原子の基で置き換わった化合物である。「CoQ10の類似体」は、イソプレニルリピートを全く有しない又は少なくとも1個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8又は9個)有する類似体を含む。
「コエンザイム生合成経路の中間体」という用語は、本明細書で使用する場合、チロシン及びアセチル-CoAのユビキノンへの化学的/生物学的変換の間に形成される化合物を特徴とする。コエンザイム生合成経路の中間体としては、3-ヘキサプレニル-4-ヒドロキシベンゾエート、3-ヘキサプレニル-4,5-ジヒドロキシベンゾエート、3-ヘキサプレニル-4-ヒドロキシ-5-メトキシベンゾエート、2-ヘキサプレニル-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノン、2-ヘキサプレニル-3-メチル-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノン、2-ヘキサプレニル-3-メチル-5-ヒドロキシ-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノン、3-オクタプレニル-4-ヒドロキシベンゾエート、2-オクタプレニルフェノール、2-オクタプレニル-6-メトキシ(metholxy)フェノール、2-オクタプレニル-3-メチル-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノン、2-オクタプレニル-3-メチル-5-ヒドロキシ-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノン、2-デカプレニル-3-メチル-5-ヒドロキシ-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノン、2-デカプレニル-3-メチル-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノン、2-デカプレニル-6-メトキシ-1,4-ベンゾキノン、2-デカプレニル-6-メトキシフェノール、3-デカプレニル-4-ヒドロキシ-5-メトキシベンゾエート、3-デカプレニル-4,5-ジヒドロキシベンゾエート、3-デカプレニル-4-ヒドロキシベンゾエート、4-ヒドロキシフェニルピルビン酸、4-ヒドロキシフェニル乳酸、4-ヒドロキシ-ベンゾエート、4-ヒドロキシ桂皮酸及びヘキサプレニル(hexapreny)2リン酸が含まれる。
特定の実施形態においては、コエンザイム生合成経路の中間体には以下が含まれる:(a)ベンゾキノン又はベンゾキノン環の生合成を促進する少なくとも1つの分子、及び(b)イソプレノイドユニットの合成及び/又はイソプレノイドユニットのベンゾキノン環への結合を促進する少なくとも1つの分子を含む。他の実施形態において、ベンゾキノン環の生合成を促進する上記少なくとも1つの分子には、以下が含まれる:L-フェニルアラニン、DL-フェニルアラニン、D-フェニルアラニン、L-チロシン、DL-チロシン、D-チロシン、4-ヒドロキシ-フェニルピルビン酸、3-メトキシ-4-ヒドロキシマンデル酸(バニリルマンデル酸又はVMA)、バニリン酸、ピリドキシン、又はパンテノール。他の実施形態において、イソプレノイドユニットの合成及び/又はベンゾキノン環へのイソプレノイドユニットの結合を促進する上記少なくとも1つの分子には、フェニルアセテート、4-ヒドロキシベンゾエート、メバロン酸、アセチルグリシン、アセチルCoA、又はファルネシルが含まれる。他の実施形態においては、中間体には以下が含まれる:(a)L-フェニルアラニン、L-チロシン、及び4-ヒドロキシフェニルピルビン酸の1つ以上;並びに(b)4-ヒドロキシベンゾエート、酢酸フェニル、及びベンゾキノンの1つ以上。他の実施形態においては、中間体は、(a)Bcl-2発現を阻害する及び/若しくはカスパーゼ-3発現を増進する;並びに/又は(b)細胞増殖を阻害する。
いくつかの実施形態において、本発明の化合物、例えば本明細書に記載するMIM又はエピシフター、例えば本発明のコエンザイムQ10分子は、コエンザイムQ10と共通の活性を共有する。本明細書で使用する場合、「コエンザイムQ10と共通の活性を共有する」という句は、化合物がコエンザイムQ10と同じ又は類似の活性の少なくとも一部を呈する能力を指す。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、コエンザイムQ10の活性の25%又はそれ以上を呈する。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、コエンザイムQ10の活性の最大約130%(130%を含む)を呈する。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、コエンザイムQ10の活性の約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、101%、102%、103%、104%、105%、106%、107%、108%、109%、110%、111%、112%、113%、114%、115%、116%、117%、118%、119%、120%、121%、122%、123%、124%、125%、126%、127%、128%、129%、又は130%を呈する。本段落に挙げられた各値が「約」という用語によって修飾され得ることが理解される。加えて、本段落に挙げられたいずれの2つの値によって定義されたいずれの範囲も、本発明に含まれることを意味することが理解される。例えばいくつかの実施形態において、本発明の化合物は、コエンザイムQ10の活性の約50%〜約100%を呈する。いくつかの実施形態において、コエンザイムQ10及び本発明の化合物によって共有される活性は、細胞代謝におけるシフトを誘導する能力である。ある実施形態において、CoQ10及び本発明の化合物によって共有される活性は、OCR(酸素消費速度)及び/又はECAR(細胞外酸性化速度)によって測定される。特定の実施形態において、CoQ10及び本発明の化合物が共有する活性は、肉腫細胞の増殖を抑制する能力である。特定の実施形態において、CoQ10及び本発明の化合物が共有する活性は、細胞骨格タンパク質の広範囲の発現を誘導する能力である。特定の実施形態において、CoQ10及び本発明の化合物が共有する活性は、癌細胞(例えば肉腫細胞)の構造アーキテクチャを不安定化する能力である。
ここで本発明の好ましい実施形態への参照が詳細になされるであろう。本発明は好ましい実施形態と併せて記載されるが、本発明をこれらの好ましい実施形態に限定する意図がないことが理解されるであろう。反対に、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神及び範囲に含まれ得る代替、修正、及び均等物を扱うことが意図される。
II.環境影響因子
一態様において、本発明は、環境影響因子の投与により肉腫を処置する方法を提供する。「環境影響因子」(env影響因子)は、ヒトの疾患環境を、正常状態をもたらす正常環境又は健常環境へシフトさせる、これらの環境を再建させる又はこれらの環境を保持させる有益な方式で、ヒトの疾患環境に影響する又は疾患環境を調節する分子である。env影響因子は、下で定義するような多次元細胞内分子(MIM)及びエピメタボリックシフター(エピシフター)の両方を含む。env影響因子、MIM及びエピシフターは、米国特許出願第12/778,094号、米国特許出願第12/777,902号、米国特許出願第12/778,029号、米国特許出願第12/778,054号、及び米国特許出願第12/778,010に非常に詳細に記載されており、それらの各々の全内容を参照により本明細書に組み入れる。
1.多次元細胞内分子(MIM)
「多次元細胞内分子(MIM)」という用語は、体によって自然に産生される及び/又はヒトの少なくとも1つの細胞中に存在する内因性分子の単離された形態又は合成産生された形態である。MIMは細胞に進入することが可能であり、細胞への進入は、分子の生物活性部分が完全に細胞に進入する限り、細胞への完全又は部分進入を含む。MIMは、細胞内でシグナル伝達及び/又は遺伝子発現機構を誘導することが可能である。MIMは、治療薬及びキャリアの両方、例えば薬物送達効果を有するため多次元である。MIMはまた、疾患状態において1つの方法で作用し、正常な状態においては異なる方法で作用するため多次元である。例えばCoQ-10の場合、VEGFの存在下での黒色腫細胞へのCoQ-10の投与は、Bcl2レベルの低下をもたらし、次に黒色腫細胞の発癌能の低下をもたらす。対照的に、正常な線維芽細胞において、CoQ-10及びVEFGの同時投与は、Bcl2のレベルに対する効果は有さない。
一実施形態において、MIMはエピシフターでもある。別の実施形態において、MIMはエピシフターではない。別の実施形態において、MIMは、上述した機能の1以上を特徴としている。別の実施形態において、MIMは、上述した機能の2以上を特徴としている。さらなる実施形態において、MIMは、上述した機能の3以上を特徴としている。また別の実施形態において、MIMは、上述した機能の全てを特徴としている。当業者は、本発明のMIMが2つ以上の内因性分子の混合物を含むことも意図され、この混合物が上述の機能の1つ以上を特徴とすることを認識するであろう。混合物中の内因性分子は、混合物がMIMとして機能するような比で存在する。
MIMは、脂質ベース分子又は非脂質ベース分子であることができる。MIMの例は、限定されるわけではないが、CoQ10、アセチルCo-A、パルミチルCo-A、L-カルニチン、例えばチロシン、フェニルアラニン及びシステインなどのアミノ酸を含む。一実施形態において、MIMは小分子である。本発明の一実施形態において、MIMはCoQ10でない。MIMは、本明細書で詳細に記載されたアッセイのいずれかを使用して、当業者によって慣用的に同定することができる。
(i)MIMを同定する方法
本発明は、MIMを同定する方法を提供する。MIMを同定する方法は、細胞への内因性分子の外部からの添加及び内因性分子の細胞(例えば細胞微小環境プロフィール)に対する効果の評価を包含する。細胞に対する効果は、細胞、mRNA、タンパク質、脂質、及び/又は代謝産物レベルの1つ以上で評価されて、細胞微小環境プロフィールにおける改変を同定する。一実施形態において、細胞は例えばインビトロで培養された培養細胞である。一実施形態において、細胞は生物中に存在する。内因性分子は、細胞に単一の濃度で添加されてもよいし、又は細胞に一連の濃度にわたって添加されてもよい。一実施形態において、内因性分子は対照の未処置細胞中の内因性分子のレベルと比較して、細胞中の内因性分子のレベルが上昇するように細胞に添加される(例えば1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍又はそれ以上、上昇する)。
例えば形態、生理機能、及び/又は組成(例えばmRNA、タンパク質、脂質、代謝産物)のいずれか1つ以上の改変により検出されるような、細胞中の変化を誘導する分子は、細胞微小環境プロフィールに対して誘導された変化が疾患細胞状態と正常な細胞状態との間で異なるか否かを判定するためにさらに評価され得る。多様な組織源、細胞型、又は疾患状態の細胞(例えば細胞培養系統)が、比較評価のために評価され得る。例えば癌細胞の細胞微小環境プロフィールにおける誘導された変化は、非癌性又は正常な細胞に誘導された変化と比較され得る。細胞の微小環境プロフィールにおける変化を誘導すること(例えば細胞の形態、生理機能及び/又は組成、例えばmRNA、タンパク質、脂質若しくは代謝産物の変化を誘導する)、並びに/あるいは正常な細胞と比較して罹患細胞の微小環境プロフィールにおける変化を示差的(例えば優先的)に誘導することが観察される内因性分子は、MIMとして同定される。
本発明のMIMは、脂質ベースMIM又は非脂質ベースMIMであり得る。脂質ベースMIMを同定する方法は、脂質ベース内因性分子が細胞に外部から添加される上記の細胞ベース方法を包含する。好ましい実施形態において、脂質ベース内因性分子は、細胞中の脂質ベース内因性分子のレベルが上昇するように、細胞に添加される。一実施形態において、脂質ベース内因性分子のレベルは、未処置対照細胞のレベルと比較して、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍又はそれ以上、上昇する。
脂質ベース分子の製剤及び細胞への送達は、試験される各分子の特性に依存するが、多くの方法が当分野で公知である。脂質ベース分子の製剤及び送達の例は、限定されるわけではないが、共溶媒による可溶化、キャリア分子、リポソーム、分散剤、懸濁剤、ナノ粒子分散剤、エマルジョン、例えば水中油型又は油中水型エマルジョン、多相エマルジョン、例えば油中水中油型エマルジョン、ポリマー捕捉及び封入を含む。脂質ベースMIMの細胞への送達は、質量分析法などの当分野で公知の所定の方法による、細胞脂質の抽出及びMIMの定量によって確認することができる。
非脂質ベースMIMを同定する方法は、非脂質ベース内因性分子が細胞に外部から添加される上記の細胞ベース方法を包含する。好ましい実施形態において、非脂質ベース内因性分子は、細胞中の非脂質ベース内因性分子のレベルが上昇するように、細胞に添加される。一実施形態において、非脂質ベース内因性分子のレベルは、未処置対照細胞のレベルと比較して、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍又はそれ以上、上昇する。非脂質ベース分子の製剤及び細胞への送達は、試験される各分子の特性に依存するが、多くの方法が当分野で公知である。非脂質ベース分子の製剤及び送達方法の例は、限定されるわけではないが、共溶媒による可溶化、キャリア分子、能動輸送、ポリマー捕捉又は吸着、ポリマーグラフト化、リポソーム封入及びターゲティング送達系を用いた製剤を含む。非脂質ベースMIMの細胞への送達は、質量分析法などの当分野で公知の所定の方法による、細胞内容物の抽出及びMIMの定量によって確認することができる。
2.エピメタボリックシフター(エピシフター)
本明細書で使用する場合、「エピメタボリックシフター」(エピシフター)は、健常(又は正常な)状態から疾患状態への代謝シフト及びその逆の代謝シフトを調節して、これによりヒトにおける細胞、組織、器官、系及び/又は宿主の健康を維持又は再建する分子である。エピシフターは、組織微小環境の正常化を達成することができる。例えば、エピシフターは、細胞に添加された又は細胞で消耗されたときに、細胞の微小環境(例えば代謝状態)に影響を及ぼすことができるいずれの分子も含む。当業者は、本発明のエピシフターが2つ以上の分子の混合物を含むことも意図され、混合物が上述の機能の1つ以上を特徴とすることを認識するであろう。混合物中の分子は、混合物がエピシフターとして機能するような比で存在する。エピシフターの例は、限定されるわけではないが、CoQ-10;ビタミンD3;フィブロネクチンなどのECM構成要素;TNFα又はインターロイキンのいずれかなどの免疫調節因子、例えばIL-5、IL-12、IL-23;血管新生因子;及びアポトーシス因子を含む。
一実施形態において、エピシフターもMIMである。一実施形態において、エピシフターはCoQ10でない。エピシフターは、本明細書で詳細に記載されたアッセイのいずれかを使用して、当業者によって慣用的に同定することができる。
(i)エピシフターを同定する方法
エピメタボリックシフター(エピシフター)は、細胞の代謝状態を調節する、例えば健常(又は正常な)状態から疾患状態への代謝シフト及びその逆の代謝シフトを誘導することが可能である分子であり、これによりヒトにおける細胞、組織、器官、系及び/又は宿主の健康を維持又は再建することが可能である。本発明のエピシフターはそれゆえ、罹患状態の診断評価に有用性を有する。本発明のエピシフターは、エピシフターの適用又は投与(他の治療分子によるエピシフターの調節)効果が組織微小環境及び疾患状態における正常化をもたらす治療用途においてさらなる有用性を有する。
エピメタボリックシフターの同定は概して、示差的な疾患状態、進行、又は侵襲性を提示する細胞又は組織のパネルについて、例えば代謝産物、脂質、タンパク質又はRNAの分子プロフィール(個別の又は併用されたプロフィール)を確立することを包含する。レベルの変化(例えばレベルの上昇又は低下)が疾患状態、進行又は侵襲性と相関するプロフィールからの分子は、潜在的エピシフターとして同定される。
一実施形態において、エピシフターはMIMでもある。潜在的なエピシフターは、当分野で公知のいくつもの所定の技法を使用することによって、及び本明細書に記載する方法のいずれかを使用することによって、細胞への外部からの添加時に細胞に進入するその能力が評価され得る。例えば、潜在的エピシフターの細胞中への進入は、質量分析法などの当分野で公知の所定の方法による、細胞内容物の抽出及び潜在的エピシフターの定量によって確認され得る。これにより、細胞に進入することができる潜在的エピシフターは、MIMとして同定される。
エピシフターを同定するために、潜在的エピシフターは次に、細胞の代謝状態をシフトする能力について評価される。潜在的エピシフターが細胞微小環境の代謝状態をシフトする能力は、細胞に潜在的エピシフターを導入すること(例えば外部から添加すること)、並びに細胞において:遺伝子発現の変化(例えばmRNA若しくはタンパク質発現の変化)、脂質若しくは代謝産物レベルの濃度変化、生体エネルギー分子レベルの変化、細胞エネルギー特性の変化、及び/又はミトコンドリアの機能若しくは数の変化の1つ以上をモニターすることによって評価される。細胞微小環境の代謝状態をシフトすることが可能である潜在的エピシフターは、本明細書で詳細に記載されたアッセイのいずれかを使用して、当業者によって慣用的に同定することができる。潜在的エピシフターは、罹患細胞の代謝状態を正常な健常状態に向けてシフトする能力について(又は反対に、正常細胞の代謝状態をを罹患状態に向けてシフトする能力について)、さらに評価される。それゆえ、罹患細胞の代謝状態を正常な健常状態に向けてシフトする(又は健常な正常細胞の代謝状態を罹患状態に向けてシフトする)ことが可能である潜在的エピシフターは、エピシフターとして同定される。好ましい実施形態において、エピシフターは、正常細胞の健康及び/又は増殖に悪影響を及ぼさない。
本発明のエピメタボリックシフターは、限定されるわけではないが、小分子代謝産物、脂質ベース分子、並びにタンパク質及びRNAを含む。小分子内因性代謝産物のクラスでエピメタボリックシフターを同定するために、示差的な疾患状態、進行、又は侵襲性を提示する細胞又は組織のパネルについて、代謝産物プロフィールが確立される。各細胞又は組織の代謝産物プロフィールは、細胞又は組織から代謝産物を抽出すること、並びに次に例えば液体-クロマトグラフィー連結質量分析法又はガスクロマトグラフィー連結質量分析法を含む、当業者に公知の所定の方法を使用して、代謝産物を同定及び定量することによって決定される。レベルの変化(例えばレベルの上昇又は低下)が疾患の状態、進行又は侵襲性と相関する代謝産物は、潜在的エピシフターとして同定される。
内因性脂質ベース分子のクラスでエピメタボリックシフターを同定するために、示差的な疾患状態、進行、又は侵襲性を提示する細胞又は組織のパネルについて、脂質プロフィールが確立される。各細胞又は組織の脂質プロフィールは、脂質抽出法と、続いての例えば液体-クロマトグラフィー連結質量分析法又はガスクロマトグラフィー連結質量分析法を含む、当業者に公知の所定の方法を使用する脂質の同定及び定量によって決定される。レベルの変化(大量又は微量レベルの上昇又は低下)が疾患の状態、進行又は侵襲性と相関する脂質は、潜在的エピシフターとして同定される。
タンパク質及びRNAのクラスでエピメタボリックシフターを同定するために、示差的な疾患状態、進行、又は侵襲性を提示する細胞又は組織のパネルについて、遺伝子発現プロフィールが確立される。各細胞又は組織の発現プロフィールは、例えば本明細書に詳細に記載されているような標準プロテオミクス法、mRNAアレイ法、又はゲノムアレイ法を使用して、mRNAレベル及び/又はタンパク質レベルで決定される。発現の変化(例えばmRNA又はタンパク質レベルでの発現の上昇又は低下)が疾患の状態、進行又は侵襲性と相関する遺伝子は、潜在的エピシフターとして同定される。
(例えば可溶性代謝産物、脂質ベース分子、タンパク質、RNA、又は他の生物学的クラスの組成物について)上記の分子プロフィールが確立された後、細胞及び生化学経路分析が行われて、細胞環境における同定された潜在的エピシフターの間の公知の連関が解明される。このような細胞及び/又は生化学経路分析によって得られた情報は、経路及び潜在的エピシフターを分類するために利用され得る。
エピシフターが疾患状態を調節する有用性は、当分野で公知の又は本明細書で詳細に記載されたいくつものアッセイを使用して、当業者がさらに評価及び確認することができる。エピシフターが疾患状態を調節する有用性は、エピシフターの細胞又は生物への直接外因性送達によって評価することができる。あるいは、エピシフターが疾患状態を調節する有用性は、エピシフター(例えばエピシフターのレベル又は活性)を直接調節する分子の発生によって評価することができる。エピシフターが疾患状態を調節する有用性はまた、エピシフターと同じ経路に配置された(例えばRNA又はタンパク質レベルで調節される)遺伝子などの他の分子を調節することによる、エピシフター(例えばエピシフターのレベル又は活性)を間接的に調節する分子の発生によって評価することができる。
本明細書に記載するエピメタボローム手法は、細胞微小環境に存在し、そのレベルが遺伝子、mRNA又はタンパク質をベースとする機構を通じて検知及び制御される内因性分子の同定を容易にする。本発明のエピシフターが引き起こす、正常細胞で見出される調節応答経路は、誤調節又は罹患細胞環境における治療価値を提供し得る。加えて、本明細書に記載するエピメタボリック手法は、臨床患者選択における、疾患診断キットにおける、又は予後指標としての使用のための診断指示を提供し得るエピシフターを同定する。
III.MIM/エピシフターを同定するのに有用なアッセイ
目的の分子及び化合物を分離及び同定するために用いた本発明の技法及び方法は、限定されるわけではないが:液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析(MS)、ガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC-MS)、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC-MS)、核磁気共鳴(NMR)、磁気共鳴画像法(MRI)、フーリエ変換赤外(FT-IR)、及び誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を含む。質量分析技法は、限定されるわけではないが、扇形磁場2重収束型装置、透過型4重極装置、4重極イオントラップ型装置、飛行時間型装置(TOF)、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型装置(FT-MS)及びマトリクス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)の使用を含むことが、さらに理解される。
生体エネルギー分子レベルの定量:
環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)は、候補エピシフターが適用された細胞の細胞生体エネルギー分子レベル(例えばATP、ピルビン酸、ADP、NADH、NAD、NADPH、NADP、アセチルCoA、FADH2)の変化によって同定され得る。生体エネルギー分子レベルの例示的なアッセイは、比色(colorometric)、蛍光、及び/又は生物発光ベースの方法を使用する。このようなアッセイの例は下で提供される。
細胞内のATPのレベルは、当分野で公知のいくつかのアッセイ及び系を用いて測定することができる。例えば1つの系において、溶解細胞から放出された細胞質ATPは、ルシフェリン及び酵素ルシフェラーゼと反応して、光を産生する。この生物発光はバイオルミノメータによって測定され、溶解細胞の細胞内ATP濃度を計算することができる(EnzyLightTM ATP Assay Kit (EATP-100), BioAssay Systems, Hayward, CA)。別の系において、例えばATP及びその脱リン酸化型のADPの両方が生物発光を介して計算される;ATPレベルが計算された後、ADPはATPに変換されて、次に同じルシフェラーゼ系(ApoSENSORTM ADP/ATP比アッセイキット、BioVision Inc., Mountain View, CA)を使用して検出及び計算される。
ピルビン酸塩は、細胞代謝経路において重要な中間体である。ピルビン酸塩は、細胞の代謝状態に応じて、糖新生を介して炭水化物に変換され得るか、アセチルCoAを介して脂肪酸に変換若しくは代謝され得るか、又はアラニン若しくはエタノールに変換され得る。それゆえピルビン酸塩レベルの検出は、細胞サンプルの代謝性活性及び状態の尺度を提供する。ピルビン酸塩を検出する1つのアッセイは例えば、比色及び蛍光定量の両方を使用して、異なる範囲内でのピルビン酸濃度を検出する(EnzyChromTM ピルビン酸アッセイキット(カタログ番号EPYR-100)、BioAssay Systems, Hayward, CA)。
環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)は、細胞中での生体エネルギー分子の発生及び維持に関与している細胞中のミトコンドリアによって行われる、酸化的リン酸化のプロセスに影響を及ぼし得る。細胞培養物及びサンプルの細胞エネルギー特性の変化を直接検出するアッセイ(後述する)に加えて、細胞中のミトコンドリアの別々の酵素及び複合体に対する化合物の影響を検出及び定量するアッセイが存在する。例えばMT-OXC MitoToxTM Complete OXPHOS活性アッセイ(MitoSciences Inc., Eugene, OR)は、ミトコンドリアから抽出された複合体I〜Vに直接適用された化合物の影響を検出及び定量することができる。NADHデヒドロゲナーゼ(複合体I)、シトクロムcオキシダーゼ(複合体IV)及びATPシンターゼ(複合体V)などの個別のミトコンドリア複合体に対する影響の検出及び定量のアッセイも利用可能である(MitoSciences Inc., Eugene, OR)。
細胞エネルギー特性の測定:
環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)は、細胞エネルギー特性の変化によっても同定され得る。細胞エネルギー特性の測定の1例は、分子酸素の消費及び/又は細胞培養物の培地のpHの変化のリアルタイム測定である。例えば潜在的エピシフターが細胞の代謝状態を調節する能力は、例えばXF24アナライザ(Seahorse, Inc.)を使用して分析され得る。本技術によって、細胞微小環境の生体エネルギーを評価するための、細胞の単層における酸素及びpH変化のリアルタイム検出が可能となる。XF24アナライザは、どちらも細胞エネルギー特性の主要な指標である、好気性代謝の尺度である酸素消費速度(OCR)及び解糖の尺度である細胞外酸化(ECAR)を測定及び比較する。
酸化的リン酸化及びミトコンドリア機能の測定:
酸化的リン酸化は、ミトコンドリアの膜に埋め込まれたタンパク質複合体を介して真核生物中で行われる栄養化合物の酸化を介して、ATPが発生するプロセスである。大半の生物の細胞における主なATP源として、酸化的リン酸化活性の変化は、細胞内での代謝及びエネルギーバランスを強力に改変することができる。本発明のいくつかの実施形態において、環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)は、酸化的リン酸化に対するその影響によって検出及び/又は同定され得る。いくつかの実施形態において、環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)は、限定されるわけではないが、電子輸送鎖及びATP合成を含む、酸化的リン酸化の特異的な態様に対するその影響によって検出及び/又は同定され得る。
酸化的リン酸化に関与するプロセスを行うミトコンドリアの膜埋込みタンパク質複合体は、特異的タスクを実行し、I、II、III及びIVとナンバリングされる。これらの複合体は、内膜貫通膜ATPシンターゼ(複合体Vとしても公知)と共に、酸化的リン酸化プロセスに関与する主要な実体である。環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)の、一般にミトコンドリア機能、及び特に酸化的リン酸化プロセスに対する影響を検査できるアッセイに加えて、個別の複合体に対するエピシフターの影響を、他の複合体と別に検査するために使用できるアッセイが利用可能である。
NADH-コエンザイムQオキシドレダクターゼ又はNADHデヒドロゲナーゼとしても知られる複合体Iは、電子輸送鎖中の最初のタンパク質である。いくつかの実施形態において、複合体IによるNAD+の産生に対するエピシフターの影響の検出及び定量が行われ得る。例えば複合体は、96ウェルプレート中のサンプルから免疫捕捉することができる;NADHからNAD+への酸化は、450nMにて吸光度の上昇を有する染料分子の還元と同時に起こる(複合体I酵素活性マイクロプレート・アッセイ・キット、MitoSciences Inc., Eugene, OR)。
シトクロムcオキシダーゼ(COX)としても知られる複合体IVは、電子輸送鎖中の最後のタンパク質である。いくつかの実施形態において、シトクロムcの酸化及び複合体IVによる酸素の水への還元に対するエピシフターの影響の検出及び定量が行われ得る。例えばCOXをマイクロウェルプレート中で免疫捕捉して、COXの酸化を比色アッセイ(複合体IV酵素活性マイクロプレート・アッセイ・キット、MitoSciences Inc., Eugene, OR)によって測定することができる。
酸化的リン酸化プロセスの最後の酵素は、他の複合体によって生成されたプロトン勾配を使用して、ADPからのATPの合成を促進する、ATPシンターゼ(複合体V)である。いくつかの実施形態において、ATPシンターゼの活性に対するエピシフターの影響の検出及び定量が行われ得る。例えばサンプル中のATPシンターゼの活性及びATPシンターゼの量はどちらも、マイクロウェル・プレート・ウェル中で免疫捕捉されたATPシンターゼについて測定され得る。酵素は、ある条件下でATPアーゼとしても機能することができ、それゆえATPシンターゼ活性についての本アッセイにおいて、ATPがADPに還元される速度は、NADHのNAD+への同時酸化を検出することによって測定される。ATPの量は、ATPアーゼに対する標識抗体を使用して計算される(ATPシンターゼ・デュプレクシング(活性+量)マイクロプレート・アッセイ・キット、MitoSciences Inc., Eugene, OR)。酸化的リン酸化の追加のアッセイは、複合体II及びIIIの活性に対する影響を試験するアッセイを含む。例えばMT-OXC MitoToxTM Complete OXPHOSシステム(MitoSciences Inc., Eugene, OR)を使用して、複合体II及びIII並びに複合体I、IV及びVに対する影響を評価し、酸化的リン酸化系全体に対する化合物の影響についてのデータを提供することができる。
上記のように、無処置細胞サンプルのリアルタイム観察は、細胞培養培地における酸素消費及びpHの変化のためのプローブを使用して行うことができる。細胞エネルギー特性のこれらのアッセイは、ミトコンドリア機能の大まかな概要及びサンプルの細胞内のミトコンドリアの活性に対する潜在的環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)の影響を提供する。
環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)は、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)の形成のために透過性の上昇を経験する現象である、ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)にも影響を及ぼし得る。ミトコンドリア透過性の上昇は、ミトコンドリア膨潤、すなわち酸化的リン酸化及びATP発生及び細胞死の実行不能をもたらすことができる。MPTは、アポトーシスの誘導に関与し得る(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、Halestrap, A.P., Biochem. Soc. Trans. 34:232-237 (2006)及びLena, A. et al. Journal of Translational Med. 7:13-26 (2009)を参照)。
いくつかの実施形態において、MPT及びMPTPの形成、中断及び/又は遂行に対する環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)の影響の検出及び定量が測定される。例えばアッセイは、ミトコンドリア及び他のサイトゾルコンパートメントの内膜内に局在する特殊化染料分子(カルセイン)の使用を通じてMPTを検出することができる。別の分子、CoCl2の適用は、サイトゾル中でのカルセイン染料の蛍光を抑制するよう働く。しかしCoCl2はミトコンドリア内部にアクセスできず、それゆえMPTが起こって、CoCl2がMPTPを介してミトコンドリア内部にアクセスできない限り、ミトコンドリア中のカルセイン蛍光は抑制されない。ミトコンドリア特異的蛍光シグナルの消失は、MPTの発生を通知する。フローサイトメトリを使用して、細胞及び細胞小器官の蛍光を評価することができる(MitoProbeTM遷移孔アッセイキット、Molecular Probes, Eugene, OR)。追加のアッセイは、実験結果を評価するために蛍光顕微鏡を利用する(Image-iTTM LIVEミトコンドリア遷移孔アッセイキット、Molecular Probes, Eugene, OR)。
細胞増殖及び炎症の測定
本発明のいくつかの実施形態において、環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)は、細胞増殖及び/又は炎症に関連する分子の産生又は活性に対するその影響によって同定及び評価され得る。これらの分子は、限定されるわけではないが、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、細胞外マトリクスの構成要素、ケモカイン、神経ペプチド、神経伝達物質、ニューロトロフィン及び細胞シグナル伝達に関与する他の分子、並びにシグナル伝達に関与する細胞内分子などの細胞内分子を含む。
血管内皮増殖因子(VEGF)は、強力な血管新生特性、血管特性及び分裂促進特性を有する増殖因子である。VEGFは内皮透過性及び膨潤を刺激し、VEGF活性は、関節リウマチ、転移性癌、老年性黄斑変性及び糖尿病性網膜症を含む多数の疾患及び障害に関わっている。
本発明のいくつかの実施形態において、環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)は、VEGFの産生に対するその影響によって同定及び特徴決定され得る。例えば低酸素条件又はアシドーシスを模倣する条件で維持された細胞は、VEGF産生の向上を呈するであろう。培地中に分泌されたVEGFは、ELISA又は、利用可能な抗VEGF抗体(R&D Systems, Minneapolis, MN)を使用する他の抗体ベースアッセイを使用してアッセイすることができる。本発明のいくつかの実施形態において、エピシフターは、細胞のVEGFへの応答性に対するその影響に基づいて及び/又はVEGF受容体の発現若しくは活性に対するその影響に基づいて同定及び/又は特徴決定され得る。
腫瘍壊死因子(TNF)は、健常免疫系機能並びに自己免疫疾患の両方に関わり、炎症及び免疫系活性化の主要なメディエータである。本発明のいくつかの実施形態において、エピシフターは、TNFの産生又は活性に対するその影響によって同定及び特徴決定され得る。例えば培養細胞により産生され、培地中に分泌されたTNFは、ELISA及び当分野で公知の他の抗体ベースアッセイを介して定量することができる。さらに、いくつかの実施形態において、環境影響因子は、TNFの受容体(ヒトTNF RI Duoset, R&D Systems, Minneapolis, MN)の発現に対するその影響によって同定及び特徴決定され得る。
細胞外マトリクス(ECM)の構成要素は、細胞及び組織の構造並びにシグナル伝達プロセスの両方において役割を果たす。例えば潜在型トランスフォーミング増殖因子ベータ結合タンパク質は、ECM内にトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)のリザーバを生成するECM構成要素である。マトリクス結合TGFβは、マトリクス再構築のプロセスの間に放出され、付近の細胞に増殖因子効果を及ぼすことができる(Dallas, S. Methods in Mol. Biol. 139:231-243 (2000))。
いくつかの実施形態において、環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)は、培養された細胞のECMの生成に対するその影響によって同定及び特徴決定され得る。研究者らは、細胞によるECMの生成、並びにECMの組成を研究及び定量することができる技法を開発してきた。例えば細胞によるECMの合成は、インキュベーションの前に細胞をハイドロゲルに埋込むことによって評価することができる。細胞によって発生したECMに対する生化学的分析及び他の分析は、細胞収集及びハイドロゲルの消化の後に遂行される(Strehin, I. and Elisseeff, J. Methods in Mol. Bio. 522:349-362 (2009))。
いくつかの実施形態において、生物中のECM又はその構成要素の1つの産生、状態又は欠失に対する環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)の影響が同定及び特徴決定され得る。別々の種類の細胞又は発生の特定のステージにおいてのみ特定のECM遺伝子のノックアウトを可能にする条件的ノックアウト(KO)マウスを作製する技法が開発されている(Brancaccio, M. et al. Methods in Mol Bio. 522:15-50 (2009))。特定の組織中で又は発生の特定のステージにおける特定のECM構成要素の活性又は非存在に対するエピシフター又は潜在的エピシフターの適用又は投与の影響は、それゆえ評価され得る。
原形質膜完全性及び細胞死の測定
環境影響因子(例えばMIM又はエピシフター)は、細胞死の可能性の上昇又は低下を証明する、アポトーシス、壊死又は細胞変化を受ける、細胞サンプルの原形質膜完全性の変化及び/又は細胞の数若しくはパーセンテージの変化によって同定され得る。
乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)のアッセイは、細胞状態及び損傷のレベルの測定を提供することができる。LDHは、安定で比較的豊富な細胞質酵素である。原形質膜が物理的完全性を失うとき、LDHは細胞外コンパートメントへ逃れる。LDHのより高い濃度は、原形質膜損傷及び細胞死のより高いレベルと相関する。LDHアッセイの例は、サンプル中のLDHのレベルを検出及び定量する比色系を使用し、テトラゾリウム塩の還元型がLDH酵素の活性を介して産生されるアッセイを含む(QuantiChromTM乳酸デヒドロゲナーゼキット(DLDH-100)、BioAssay Systems, Hayward, CA;LDH細胞傷害性検出キット、Clontech, Mountain View, CA)。
アポトーシスは、多種多様の異なる開始イベントを有し得るプログラムされた細胞死のプロセスである。いくつかのアッセイを使用して、アポトーシスを受ける細胞の速度及び/又は数の変化を検出することができる。アポトーシスを検出及び定量するために使用されるアッセイの1タイプは、カスパーゼ(capase)アッセイである。カスパーゼ(Capase)は、アポトーシスの間のタンパク質分解切断を介して活性化される、アスパラギン酸特異的システインプロテアーゼである。活性化カスパーゼ(capase)を検出するアッセイの例は、PhiPhiLux(登録商標)(OncoImmunin, Inc., Gaithersburg, MD)及びCaspase-Glo(登録商標) 3/7アッセイシステム(Promega Corp., Madison, WI)を含む。比較サンプル中でアポトーシスを受けている細胞のパーセンテージ又は数の変化、及びアポトーシスを検出できる追加のアッセイは、TUNEL/DNA断片化アッセイを含む。これらのアッセイは、アポトーシスの実行段階の間にヌクレアーゼによって発生した180〜200塩基対DNAフラグメントを検出する。例示的なTUNEL/DNA断片化アッセイは、in situ細胞死検出キット(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)及びDeadEndTM 比色及び蛍光定量TUNELシステム(Promega Corp., Madison, WI)を含む。
いくつかのアポトーシスアッセイは、アポトーシス及び/又は非アポトーシス状態に関連するタンパク質を検出及び定量する。例えばMultiTox-Fluorマルチプレックス細胞傷害性アッセイ(Promega Corp., Madison, WI)は、単一基質の蛍光定量(fluorimetric)システムを使用して、生細胞及び死細胞に特異的なプロテアーゼを検出及び定量し、それゆえ細胞又は組織サンプルにおける生細胞の、アポトーシスを受けた細胞に対する比を提供する。
アポトーシスを検出又は定量するために利用可能な追加のアッセイは、細胞透過性(例えばAPOPercentageTM アポトーシスアッセイ、Biocolor, UK)及びアネキシンVについてのアッセイ(例えばアネキシンV-ビオチンアポトーシス検出キット、BioVision Inc., Mountain View, CA)を含む。
IV.肉腫の処置
本発明は、肉腫を処置又は予防するのに十分な量の環境影響因子、例えばMIM又はEPIシフター、例としてCoQ10分子(例えば、CoQ10、CoQ10のビルディングブロック、CoQ10の誘導体、CoQ10の類似体、CoQ10の代謝産物、又はコエンザイム生合成経路の中間体)をヒトに投与して、これにより肉腫を処置又は予防することを含む、ヒトの肉腫を処置又は予防する方法を提供する。好ましい実施形態において、ヒトの肉腫を処置又は予防する方法は、CoQ10分子を、肉腫の処置又は予防に十分な量で該ヒトに投与し、それにより肉腫を処置又は予防することを含む。
本発明はまた、CoQ10分子の組成物、及び該組成物を調製する方法も提供する。一実施形態において、本発明は、CoQ10組成物及び該組成物を調製する方法を提供する。好ましくは、組成物は少なくとも約1%〜約25%w/wのCoQ10を含む。CoQ10は旭化成N&P(北海道、日本)から、ユビデカエレノン(UBIDECARENONE)(USP)として入手することができる。CoQ10は、Kaneka Q10から粉末形のKaneka Q10(USP UBIDECARENONE)(Pasadena, Texas, USA)として取得することもできる。本明細書で例示された方法で使用されるCoQ10は、以下の特徴を有する:残りの溶媒はUSP 467の必要条件を満足する;水含有率は、0.0%未満、0.05%未満、又は0.2%未満である;強熱残分は0.0%、0.05%未満、又は0.2%未満である;重金属含有率は0.002%未満、又は0.001%未満である;純度は98〜100%若しくは99.9%、又は99.5%である。組成物を調製する方法は、本明細書に提供されている。
本明細書で使用する場合、「腫瘍性障害」、「癌」、「新生物」、及び「腫瘍」という用語又は専門語は、互換的に及び単数形又は複数形のどちらかで使用され、これらを宿主生物に対して病的にする悪性形質転換を受けた細胞を指す。原発性癌細胞(すなわち、悪性形質転換の部位付近から得た細胞)は、十分に確立された技法、特に組織学的検査によって、非癌性細胞からただちに区別することができる。癌細胞の定義は、本明細書で使用する場合、原発性癌細胞だけではなく、癌幹細胞、並びに癌前駆細胞又は癌祖先細胞に由来するいずれの細胞も含む。これは転移癌細胞、並びに癌細胞に由来するインビトロ培養物及び細胞系を含む。固形腫瘍として正常に現れる癌細胞の種類に言及するとき、「臨床的に検出可能な」腫瘍は、腫瘍塊に基づいて;例えばCATスキャン、MR画像、X線、超音波若しくは触診、などの手順によって検出可能である及び/又は患者から入手可能なサンプル中の1つ以上の癌特異的抗原の発現のために検出可能である腫瘍である。
「肉腫」という用語は概して、胚性結合組織のような物質から成り、概して線維物質又は均質物質に埋込まれた密に充填された細胞から構成される腫瘍を指す。本発明の環境影響因子によって処置できる肉腫の例は、限定されるわけではないが、ユーイングファミリー腫瘍(例えば、ユーイング肉腫(骨のユーイング腫瘍とも呼ばれる)、骨外性ユーイング(EOE)、及び末梢系未分化神経外胚葉性腫瘍(PPNET))、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アバネシー(Abmethy’s)肉腫、脂肪肉腫、リポ肉腫、胞状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色肉腫、絨毛癌腫、胎児性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質性肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽細胞肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽細胞肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クップファー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉肉腫、傍骨性肉腫、細網肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫、及び毛細管拡張性(telangiectaltic)肉腫を含む。
従って、一実施形態では、本発明の処置又は予防方法は、ユーイング肉腫、骨外性ユーイング(EOE)、末梢系未分化神経外胚葉性腫瘍(PPNET)及びAskin腫瘍からなる群より選択される肉腫の処置又は予防を含む。一実施形態では、肉腫はユーイング肉腫である。一実施形態では、肉腫はEOEである。一実施形態では、肉腫はPPNETである。一実施形態では、肉腫はAskin腫瘍である。
いくつかの実施形態において、肉腫は、アポトーシスの欠如を特徴としている。他の実施形態において、肉腫は、血管新生の増大を特徴としている。他の実施形態において、肉腫は、細胞外マトリックス(ECM)分解を特徴としている。また他の実施形態において、肉腫は、細胞サイクル制御の喪失を特徴としている。さらに他の実施形態において、肉腫は、ミトコンドリア酸化的リン酸化から、乳酸及び解糖流量の利用及び/又はそれに対する依存性の増大への、代謝支配のシフトを特徴としている。さらなる実施形態において、肉腫は、免疫監視が回避される免疫調節メカニズムの適応を特徴としている。一実施形態では、肉腫は、上述した特徴の少なくとも2つ、例えば血管新生の増大とECM分解、を特徴としている。一実施形態では、肉腫は、上述した特徴の少なくとも3つを特徴としている。一実施形態では、肉腫は、上述した特徴の少なくとも4つを特徴としている。一実施形態では、肉腫は、上述した特徴の少なくとも5つを特徴としている。一実施形態では、肉腫は、上述した特徴の6つ全てを特徴としている。
従って、いくつかの実施形態において、本発明のCoQ10分子は、アポトーシスの能力を回復する又はアポトーシスを誘導することにより機能する。他の実施形態において、本発明のCoQ10分子は、血管新生を低下、減少又は阻害することにより機能する。さらに他の実施形態において、本発明のCoQ10分子は、細胞外マトリックスの再構築を回復することにより機能する。他の実施形態において、本発明のCoQ10分子は、細胞サイクル制御を回復することにより機能する。さらに他の実施形態において、本発明のCoQ10分子は、解糖からミトコンドリア酸化的リン酸化へと代謝の支配を戻すシフトにより機能する。さらなる実施形態において、本発明のCoQ10分子は、免疫監視の回復により、又は身体が癌細胞を外来物と認識する能力を回復することにより、機能する。
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、典型的には、その事象がまとまって癌(例えば肉腫)への発症に至る、協調的な事象のカスケードが存在すると考えられる。すなわち、いくつかの実施形態において、癌、例えば肉腫は、単独で、1遺伝子-1タンパク質の因果関係(1 gene-1 protein- root causality)に依存するものではない。いくつかの実施形態において、癌、例えば肉腫は、組織変化及び改変の兆候を示す生理学的病状であり、それは、腫瘍、改変された組織状態、例えばエネルギー、転移能を可能にする細胞外マトリックス完全性の障害、免疫監視の欠如、及び/又は改変された血管新生状態を生じる。
原発性癌細胞、例えば原発性肉腫細胞(すなわち、悪性形質転換の部位の近傍から得られた細胞)は、十分に確立された技法、特に組織学的検査によって、非癌性細胞と容易に区別することができる。癌細胞の定義は、本明細書において用いる場合、原発性癌細胞だけではなく、癌幹細胞、並びに癌前駆細胞又は癌原細胞(cancer cell ancestor)に由来する細胞を含む。これは、転移した癌細胞、並びにin vitro培養物及び癌細胞から誘導した細胞系を含む。固形腫瘍として通常発症するタイプの癌を参照する場合、「臨床的に検出可能な」腫瘍は、腫瘍塊(腫瘤)に基づいて検出可能なものであり、例えば、CATスキャン、MRイメージング、X線、超音波若しくは触診などの手法により検出可能なものであり、並びに/あるいは患者から得られるサンプル中の1以上の癌特異的抗原の発現のために検出可能なものである。
いくつかの実施形態において、本発明の化合物、例えば本発明のコエンザイムQ10分子は、その必要がある被験体におけるコエンザイムQ10応答性肉腫を処置するために用いることができる。「コエンザイムQ10応答性肉腫」又は「CoQ10応答性肉腫」という用語には、コエンザイムQ10の投与により処置、予防又はさもなければ改善することができる肉腫が含まれる。特定の理論に拘束されることを望むものではなく、さらに本明細書に記載するように、CoQ10は、少なくとも部分的には、細胞微小環境への代謝シフト、例えば通常状態の細胞における酸化的リン酸化のタイプ及び/又はレベルへのシフトを誘導することにより機能すると考えられる。従って、いくつかの実施形態において、CoQ10応答性肉腫は、細胞微小環境の代謝の改変から生じる肉腫である。コエンザイムQ10応答性肉腫には、例として、例えば解糖及び乳酸生合成に偏っている可能性のある肉腫が含まれる。
一般的に、CoQ10分子(例えば、CoQ10、CoQ10のビルディングブロック、CoQ10の誘導体、CoQ10の類似体、CoQ10の代謝産物、又はコエンザイム生合成経路の中間体)は、あらゆる新生物を予防的又は治療的に処置するために用いることができる。一実施形態では、CoQ10分子を用いて肉腫を処置又は予防する。一実施形態では、CoQ10分子は、ユーイングファミリー腫瘍の処置のために用いる。一実施形態では、ユーイングファミリー腫瘍はユーイング肉腫である。
癌細胞の定義は、本明細書で使用する場合、嫌気的解糖(例えばサイトゾルにおける解糖とそれに続く乳酸発酵)、好気的解糖(例えばミトコンドリアにおける解糖とそれに続くピルビン酸の酸化)、又は嫌気的解糖及び好気的解糖の組合せ、によってエネルギーを産生する癌細胞を含むことを意図する。一実施形態において、癌細胞は、主に嫌気的解糖によってエネルギーを産生する(例えば細胞のエネルギーの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上が嫌気的解糖によって産生される)。一実施形態において、癌細胞は、主に好気的解糖によってエネルギーを産生する(例えば細胞のエネルギーの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上が嫌気的解糖によって産生される)。癌細胞の定義は、本明細書で使用する場合、嫌気的解糖によってエネルギーを産生する細胞及び好気的解糖によってエネルギーを産生する細胞を含む癌細胞集団又は癌細胞の混合物を含むことも意図される。一実施形態において、癌細胞集団は、嫌気的解糖によってエネルギーを産生する細胞を主に含む(例えば集団の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上が嫌気的解糖によってエネルギーを産生する)。一実施形態において、癌細胞集団は、好気的解糖によってエネルギーを産生する細胞を主に含む(例えば集団の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上)。
本明細書で使用する場合、「グルコース嫌気的使用」又は「嫌気的解糖」という句は、サイトゾルでの解糖によるエネルギーの細胞産生とそれに続く乳酸発酵を指す。例えば多くの癌細胞は、嫌気的解糖によってエネルギーを産生する。
本明細書で使用する場合、「好気的解糖」又は「ミトコンドリア酸化的リン酸化」という句は、ミトコンドリアでの解糖によるエネルギーの細胞産生とそれに続くピルビン酸の酸化を指す。
本明細書で使用する場合、「グルコースの嫌気的使用の遮断及びミトコンドリア酸化的リン酸化の増強が可能である」という句は、環境影響因子(例えばエピメタボリックシフター)の、嫌気的解糖から好気的解糖又はミトコンドリア酸化的リン酸化への細胞の代謝状態のシフト又は変化を誘導する能力を指す。
本発明のいくつかの実施形態において、処置される肉腫は、治療上有効なレベルでの活性剤の全身送達を期待した局所投与によって典型的に処置される障害ではない。本明細書で使用する場合、「局所投与によって典型的に処置される障害ではない」という句は、局所投与を介して治療剤によって典型的又は慣例的に処置されないが、むしろ例えば静脈内投与を介して治療剤によって典型的に処置される肉腫を指す。
本発明は、より低い侵襲性癌又は非侵襲性腫瘍性障害のために使用又は選択された用量レジメンよりも低い選択された用量でCoQ10分子(例えば、CoQ10、CoQ10のビルディングブロック、CoQ10の誘導体、CoQ10の類似体、CoQ10の代謝産物、又はコエンザイム生合成経路の中間体)をヒトに投与することと、これにより侵襲性腫瘍性障害を処置又は予防することとを含む、ヒトの侵襲性腫瘍性障害を処置又は予防する方法を提供する。関連する態様において、本発明は、侵襲性腫瘍性障害のために使用又は選択された用量レジメンを超える選択されたより高い用量で環境影響因子をヒトに投与することと、これにより非侵襲性腫瘍性障害を処置又は予防することとを含む、ヒトの非侵襲性腫瘍性障害を処置又は予防する方法を提供する。
本明細書で使用する場合、「侵襲性腫瘍性障害」という用語は、急成長腫瘍を包含する腫瘍性障害を指す。侵襲性腫瘍性障害は典型的に、治療処置に応答しない、又は不十分にしか応答しない。侵襲性腫瘍性障害の例は、限定されるわけではないが、膵臓癌腫、肝細胞癌腫、ユーイング肉腫、転移性乳癌、転移性黒色腫、脳腫瘍(星状細胞腫、神経膠芽腫)、神経内分泌癌、結腸癌、肺癌、骨肉腫、アンドロゲン非依存性前立腺癌、卵巣癌及び非ホジキンリンパ腫を含む。
本明細書で使用する場合、「非侵襲性腫瘍性障害」という用語は、低成長腫瘍を包含する腫瘍性障害を指す。非侵襲性腫瘍性障害は典型的に、治療処置に有利に又は中程度に応答する。非侵襲性腫瘍性障害の例は、限定されるわけではないが、非転移性乳癌、アンドロゲン依存性前立腺癌、小細胞肺癌及び急性リンパ球性白血病を含む。一実施形態において、非侵襲性腫瘍性障害は、侵襲性腫瘍性障害でないいずれの腫瘍性障害も含む。
本発明はまた、ヒトの肉腫細胞における細胞骨格アーキテクチャを破壊する方法であって、肉腫を患うヒト被験者を選択すること、該ヒトに、治療上有効な量のコエンザイムQ10分子(例えば、CoQ10、CoQ10のビルディングブロック、CoQ10の誘導体、CoQ10の類似体、CoQ10の代謝産物、又はコエンザイム生合成経路の中間体)を投与し、それによって該ヒトにおける肉腫細胞の細胞骨格アーキテクチャを破壊することを含む方法を提供する。一実施形態では、この方法は、1以上の細胞骨格遺伝子又はタンパク質の発現を上方調節することを含む。
一実施形態において、CoQ10分子(例えば、CoQ10、CoQ10のビルディングブロック、CoQ10の誘導体、CoQ10の類似体、CoQ10の代謝産物、又はコエンザイム生合成経路の中間体)は、腫瘍サイズを縮小する、腫瘍増殖を阻害する、及び/又は腫瘍担持被験体の生存時間を延長する。したがって本発明は、ヒト又は他の動物の腫瘍を、このようなヒト又は動物にCoQ10分子(例えば、CoQ10、CoQ10のビルディングブロック、CoQ10の誘導体、CoQ10の類似体、CoQ10の代謝産物、又はコエンザイム生合成経路の中間体)の有効な非毒性量を投与することによって処置する方法にも関する。当業者は、通常の実験によって、悪性腫瘍を処置する目的での有効な非毒性量を決定できるであろう。例えばCoQ10分子(例えば、CoQ10、CoQ10のビルディングブロック、CoQ10の誘導体、CoQ10の類似体、CoQ10の代謝産物、又はコエンザイム生合成経路の中間体)の治療上有効な量は、疾患ステージ(例えばステージI対ステージIV)、被験体の年齢、性別、医学的合併症(例えば免疫抑制性症状又は疾患)及び体重、並びにCoQ10分子が被験体において望ましい応答を誘導する能力などの因子に従って変動し得る。用量レジメンは、最適治療応答を提供するように調整され得る。例えば、複数の分割用量が毎日投与され得る、又は用量は、治療状況の緊急性によって指示されるように比例的に低減され得る。
一実施形態において、コエンザイムQ10分子、例えばCoQ10は、6週間以上にわたり、24時間毎に1回以上、局所適用される。
一実施形態において、コエンザイムQ10分子、例えばCoQ10は、CoQ10クリームの形態で、皮膚1平方センチメートルに付きCoQ10クリーム0.5〜10mgの投与量で投与され、ここでCoQ10クリームは、1〜5%のコエンザイムQ10を含有する。一実施形態では、CoQ10クリームは、約3%のコエンザイムQ10を含有する。一実施形態では、コエンザイムQ10は、CoQ10クリームの形態で、皮膚1平方センチメートルに付きCoQ10クリーム3〜5mgの投与量で投与され、ここでCoQ10クリームは、1〜5%のコエンザイムQ10を含有する。一実施形態では、CoQ10クリームは、約3%のコエンザイムQ10を含有する。
上記処置又は予防方法のいくつかの実施形態では、該方法は、以下からなる群より選択される1以上の遺伝子(又はタンパク質)をモジュレートするために機能する:ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、PRMT3、HDAC2、一酸化窒素シンターゼbNOS、アセチルホスホヒストンH3 AL9 S10、MTA 2、グルタミン酸デカルボキシラーゼGAD65 67、KSR、HDAC4、BOB1 OBF1、a1シントロフィン、BAP1、Importina 57、αE-カテニン、Grb2、Bax、プロテアソーム26Sサブユニット13(エンドフィリンB1)、アクチン様6A(真核生物開始因子4All)、核クロライドチャネルタンパク質、プロテアソーム26Sサブユニット、ジスムターゼCu/Znスーパーオキシド、トランスリン会合因子(Translin-associated factor)X、亜ヒ酸塩輸送ATPase(スペルミン合成酵素)、リボソームタンパク質SA、dCTPピロホスファターゼ1、プロテアソームベータ3、プロテアソームベータ4、酸性ホスファターゼ1、ジアゼパム結合インヒビター、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、リボソームタンパク質P2(RPLP2);ヒストンH2A、微小管結合タンパク質、プロテアソームアルファ3、真核生物翻訳伸長因子1デルタ、ラミンB1、mif two 3ホモログ2のSMT 3サプレッサー、熱ショックタンパク質27kD、hnRNP C1/C2、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、HSPC-300に類似、DNA依存性DNAポリメラーゼイプシロン3;(canopy 2ホモログ)、LAMA5、PXLDC1、p300 CBP、P53R2、ホスファチジルセリン受容体、サイトケラチンペプチド17、サイトケラチンペプチド13、ニューロフィラメント160 200、Rab5、フィレンシン、P53R2、MDM2、MSH6、熱ショック因子2、AFX、FLIPg d、JAB 1、ミオシン、MEKK4、cRaf pSer621、FKHR FOXO1a、MDM2、Fasリガンド、P53R2、ミオシン調節軽鎖、hnRNP C1/C2、ユビキリン1(ホスファターゼ2A)、hnRNP C1/C2、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、ベータアクチン、hnRNP C1/C2、熱ショックタンパク質70kD、ベータチューブリン、ATP依存性ヘリカーゼII、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、ER脂質ラフト会合2アイソフォーム1(ベータアクチン)、シグナル配列受容体1デルタ、真核生物翻訳開始因子3, サブユニット3ガンマ、ビリベルジンレダクターゼA(トランスアルドラーゼ1)、ケラチン1,10(パラチモシン)、GSTオメガ1、Dj-1への鎖Bドパミンキノン結合、プロテアソームアクチベーターReg(アルファ)、T-コンプレックスタンパク質1アイソフォームA、鎖A タパシンERP57(TCP1含有シャペロニン)、ユビキチン活性化酵素E1;アラニル-tRNA合成酵素、ダイナクチン1、熱ショックタンパク質60kd、ベータアクチン、スペルミジンシンターゼ(ベータアクチン)、熱ショックタンパク質70kD、網膜芽細胞腫結合タンパク質4アイソフォームA、TAR DNA結合タンパク質、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、TCP1含有シャペロニン, サブユニット3、細胞質ダイニンIC-2、アンギオテンシン変換酵素(ACE)、カスパーゼ3、GARS、マトリックスメタロプロテイナーゼ6(MMP-6)、ニューロリシン(NLN)触媒ドメイン、及びニューロリシン(NLN)、ADRB、CEACAM1、DUSP4、FOXC2、FOXP3、GCGR、GPD1、HMOX1、IL4R、INPPL1、IRS2、VEGFA、推定c-myc応答性アイソフォーム1、PDK 1、カスパーゼ12、ホスホリパーゼD1、P34 cdc2、P53 BP1、BTK、ASC2、BUBR1、ARTS、PCAF、Raf1、MSK1、SNAP25、APRIL、DAPK、RAIDD、HAT1、PSF、HDAC1、Rad17、サバイビング(Surviving)、SLIPR、MAG13、カスパーゼ10、Crk2、Cdc 6、P21 WAF 1 Cip 1、ASPP 1、HDAC 4、サイクリンB1、CD 40、GAD 65、TAP、Par4(前立腺アポトーシス応答4)、MRP1、MDC1、ラミニン2 a2、bカテニン、FXR2、アネキシンV、SMAC Diablo、MBNL1、ジメチルヒストンh3、増殖因子非依存性1、U2AF65、mTOR、E2F2、Kaiso、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3、ATF2、HDRP MITR、ニューラビンI、AP1、及びApaf1。いくつかの実施形態において、本処置又は予防方法は、上述した遺伝子(又はタンパク質)のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30又はそれ以上の組合せをモジュレートするために機能する。
いくつかの実施形態において、本発明の処置又は予防方法は、以下からなる群より選択される1以上の遺伝子又は以下からなる群より選択される遺伝子の任意の組合せの発現レベルを上方調節するために機能する:LAMA5、PXLDC1、p300 CBP、P53R2、ホスファチジルセリン受容体、サイトケラチンペプチド17、サイトケラチンペプチド13、ニューロフィラメント160 200、Rab5、フィレンシン、P53R2、MDM2、MSH6、熱ショック因子2、AFX、FLIPg d、JAB 1、ミオシン、MEKK4、cRaf pSer621、FKHR FOXO1a、MDM2、Fasリガンド、P53R2、プロテアソーム26Sサブユニット13(エンドフィリンB1)、ミオシン調節軽鎖、hnRNP C1/C2、ユビキリン1(ホスファターゼ2A)、hnRNP C1/C2、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、ベータアクチン、hnRNP C1/C2、熱ショックタンパク質70kD、微小管結合タンパク質、ベータチューブリン、プロテアソームアルファ3、ATP依存性ヘリカーゼII、真核生物翻訳伸長因子1デルタ、熱ショックタンパク質27kD、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、HSPC-300に類似、ER脂質ラフト会合2アイソフォーム1(ベータアクチン)、ジスムターゼCu/Znスーパーオキシド、及びシグナル配列受容体1デルタ、ADRB、CEACAM1、DUSP4、FOXC2、FOXP3、GCGR、GPD1、HMOX1、IL4R、INPPL1、IRS2及びVEGFA、推定c-myc応答性アイソフォーム1、PDK 1、カスパーゼ12、ホスホリパーゼD1、P34 cdc2、P53 BP1、BTK、ASC2、BUBR1、ARTS、PCAF、Raf1、MSK1、SNAP25、APRIL、DAPK、RAIDD、HAT1、PSF、HDAC1、Rad17、サバイビング(Surviving)、SLIPR、MAG13、カスパーゼ10、Crk2、Cdc 6、P21 WAF 1 Cip 1、ASPP 1、HDAC 4、サイクリンB1、CD 40、GAD 65、TAP、Par4(前立腺アポトーシス応答4)、及びMRP1。いくつかの実施形態において、本処置又は予防方法は、上述した遺伝子(又はタンパク質)のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30又はそれ以上の組合せを上方調節するために機能する。
さらなる実施形態において、本発明の処置又は予防方法は、以下からなる群より選択される1以上の遺伝子又は以下からなる群より選択される遺伝子の任意の組合せの発現レベルを下方調節するために機能する:ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、PRMT3、HDAC2、一酸化窒素シンターゼbNOS、アセチルホスホヒストンH3 AL9 S10、MTA 2、グルタミン酸デカルボキシラーゼGAD65 67、KSR、HDAC4、BOB1 OBF1、a1シントロフィン、BAP1、Importina 57、αE-カテニン、Grb2、Bax、プロテアソーム26Sサブユニット13(エンドフィリンB1)、アクチン様6A(真核生物開始因子4All)、核クロライドチャネルタンパク質、プロテアソーム26Sサブユニット、ジスムターゼCu/Znスーパーオキシド、トランスリン会合因子(Translin-associated factor)X、亜ヒ酸塩輸送ATPase(スペルミン合成酵素)、リボソームタンパク質SA、dCTPピロホスファターゼ1、プロテアソームベータ3、プロテアソームベータ4、酸性ホスファターゼ1、ジアゼパム結合インヒビター、リボソームタンパク質P2(RPLP2);ヒストンH2A、微小管結合タンパク質、プロテアソームアルファ3、真核生物翻訳伸長因子1デルタ、ラミンB1、mif two 3ホモログ2のSMT 3サプレッサー、熱ショックタンパク質27kD、hnRNP C1/C2、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、HSPC-300に類似、DNA依存性DNAポリメラーゼイプシロン3(canopy 2ホモログ)、アンギオテンシン変換酵素(ACE)、カスパーゼ3、GARS、マトリックスメタロプロテイナーゼ6(MMP-6)、ニューロリシン(NLN)触媒ドメイン、ニューロリシン(NLN)、MDC1、ラミニン2 a2、bカテニン、FXR2、アネキシンV、SMAC Diablo、MBNL1、ジメチルヒストンh3、増殖因子非依存性1、U2AF65、mTOR、E2F2、Kaiso、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3、ATF2、HDRP MITR、ニューラビンI、AP1、及びApaf1。いくつかの実施形態において、本処置又は予防方法は、上述した遺伝子(又はタンパク質)のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30又はそれ以上の組合せを下方調節するために機能する。
一実施形態において、本発明の処置又は予防方法は、糖尿病に関与する遺伝子の発現レベルをモジュレートするために機能する。そのような遺伝子には、例えば、ADRB、CEACAM1、DUSP4、FOX C2、FOXP3、GCGR、GPD1、HMOX1、IL4R、INPPL1、IRS2、VEGFA、ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、LAMA5、及び/又はPXLDC1が含まれる。いくつかの実施形態において、本処置又は予防方法は、上述した遺伝子(又はタンパク質)のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19全ての組合せをモジュレートするために機能する。
さらなる実施形態において、本処置又は予防方法は、糖尿病に関与する遺伝子の発現レベルを上方調節するために機能する。そのような遺伝子には、例えば、ADRB、CEACAM1、DUSP4、FOX C2、FOXP3、GCGR、GPD1、HMOX1、IL4R、INPPL1、IRS2、及び/又はVEGFAが含まれる。いくつかの実施形態において、本処置又は予防方法は、上述した遺伝子(又はタンパク質)のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12全ての組合せを上方調節するために機能する。
さらなる実施形態において、本処置又は予防方法は、糖尿病に関与する遺伝子の発現レベルを下方調節するために機能する。そのような遺伝子には、例えば、ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、LAMA5、及び/又はPXLDC1が含まれる。いくつかの実施形態において、本処置又は予防方法は、上述した遺伝子(又はタンパク質)のうち少なくとも2、3、4、5、6、又は7全ての組合せを下方調節するために機能する。
また別の実施形態において、本処置又は予防方法は、血管新生に関与する遺伝子の発現レベルをモジュレートするために機能する。そのような遺伝子には、例えば、ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、LAMA5、及び/又はPXLDC1が含まれる。いくつかの実施形態において、本処置又は予防方法は、上述した群からの少なくとも2、3、4、5、6、又は7全ての遺伝子の組合せをモジュレートするために機能する。
さらなる実施形態において、本処置又は予防方法は、血管新生に関与する遺伝子の発現レベルを上方調節するために機能する。そのような遺伝子には、例えば、ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、及び/又はCXCL3が含まれる。いくつかの実施形態において、本処置又は予防方法は、上述した群からの少なくとも2、3、4、又は5全ての遺伝子の組合せを上方調節するために機能する。
さらなる実施形態において、本処置又は予防方法は、血管新生に関与する遺伝子の発現レベルを下方調節するために機能する。そのような遺伝子には、例えば、LAMA5、及び/又はPXLDC1が含まれる。一実施形態では、本処置又は予防方法は、LAMA5及びPXLDC1の両方を下方調節する。
別の実施形態において、本処置又は予防方法は、アポトーシスに関与する遺伝子の発現レベルをモジュレートするために機能する。そのような遺伝子には、例えば、本明細書に記載の実験においてモジュレートされた遺伝子、すなわち、表2〜9に列挙された遺伝子が含まれる。別の実施形態において、アポトーシスに関与する遺伝子又はタンパク質には、JAB1、P53R2、ホスファチジルセリン受容体、Rab 5、AFX、MEKK4、HDAC2、HDAC4、PDK1、カスパーゼ12、ホスホリパーゼD1、p34cdc2、BTK、ASC2、BubR1、PCAF、Raf1、MSK1、及びmTORのうちの1以上が含まれる。いくつかの実施形態において、本処置又は予防方法は、上述した群からの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19全ての遺伝子の組合せをモジュレートする。
V.本発明の診断方法
本発明は、肉腫を診断するための方法を提供する。本発明の方法は、肉腫の再発及び/又は肉腫について処置されている被験体の生存を予測するために、訓練を積んだ実施者に使用される任意の他の方法と組み合わせて実施され得る。例えば、本発明の方法は、被験体から得られたサンプルの形態学的又は細胞学的分析と併せて実施されてもよい。細胞学的方法には、任意の他の分子マーカーの、それ自体の、他のマーカーと併せての、及び/又はShcマーカーと組み合わせての免疫組織学的検出又は免疫蛍光検出(及び適切な場合、定量)が含まれる。他の方法には、in situ PCRによる、又は組織を抽出すること及びリアルタイムPCRによって他のマーカーを定量することによる、他のマーカーの検出が含まれる。PCRはポリメラーゼ連鎖反応として定義される。
処置レジメン(例えば、化学療法、放射線療法、外科手術、ホルモン療法、又は被験体の腫瘍性障害を処置するために有用な任意の他の治療的アプローチ)の有効性を評価するための方法もまた提供される。これらの方法において、サンプル対(第1サンプルは処置レジメンに供されておらず、第2サンプルは処置レジメンの少なくとも一部に供されている)におけるマーカーの量が評価される。
本発明はまた、肉腫が侵襲性であるかどうかを決定するための方法を提供する。上記方法には、細胞中に存在するマーカーの量を決定すること、及びこの量を、定義の中で定義した対照サンプル中に存在するマーカーの対照量と比較することが含まれ、それにより肉腫が侵襲性であるかどうかが決定される。
本発明の方法はまた、肉腫の侵襲性を調節する、すなわち、低下させることができる化合物を選択するために使用され得る。この方法では、癌細胞を試験化合物と接触させ、肉腫細胞中の本発明のマーカーの発現及び/又は活性を調節する上記試験化合物の能力を決定し、それにより、肉腫の侵襲性を調節することができる化合物が選択される。
本明細書に記載される方法を使用して、特に、細胞膜を横切ることが可能であるように十分に小さい分子を含む種々の分子を、本発明のマーカーの発現及び/又は活性を調節、例えば、増加する分子を同定するためにスクリーニングしてもよい。そのように同定された化合物は、被験体の肉腫の侵襲性を阻害するために、被験体の肉腫の再発を予防するために、又は被験体の肉腫を処置するために被験体に提供され得る。
VI.本発明のマーカー
本発明は、表2〜9に列挙されるマーカー(本明細書中以後、「マーカー」、又は「本発明のマーカー」)に関する。本発明は、マーカーによってコードされるか、又はマーカーに対応する核酸及びタンパク質(本明細書中以後、それぞれ、「マーカー核酸」及び「マーカータンパク質」)を提供する。これらのマーカーは、肉腫の存在についてのスクリーニングにおいて、肉腫の侵襲性及び転移の可能性の評価において、被験体が肉腫に罹患しているかどうかの評価において、肉腫の処置のための組成物の同定において、肉腫の処置についての環境影響因子化合物の有効性の評価において、肉腫の進行のモニターにおいて、肉腫の侵襲性の予測において、肉腫を有する被験体の生存の予測において、肉腫の再発の予測において、並びに、被験体に肉腫を発症する素因があるかどうかの予測において特に有用である。
「マーカー」は、正常又は健康な組織又は細胞中でのその発現レベルからの、1つの組織又は細胞中でのその変化した発現レベルが、肉腫のような疾患状態と関係がある遺伝子である。「マーカー核酸」は、本発明のマーカーによってコードされるか、又はそれに対応する核酸(例えば、mRNA、cDNA)である。このようなマーカー核酸には、本発明のマーカーである任意の遺伝子の全体配列若しくは部分配列又はこのような配列の相補物を含むDNA(例えば、cDNA)が含まれる。そのような配列は、当業者には公知であり、例えば、NIH政府pubmedウエブサイト上に見出すことができる。マーカー核酸は、本発明のマーカーである任意の遺伝子の全体配列若しくは部分配列又はこのような配列の相補物を含むRNAもまた含み、ここでは、すべてのチミジン残基がウリジン残基に置き換えられている。「マーカータンパク質」は、本発明のマーカーによってコードされるか又はそれに対応するタンパク質である。マーカータンパク質は、本発明の任意のマーカータンパク質の全体配列又は部分配列を含む。そのような配列は、当業者には公知であり、例えば、NIH政府pubmedウエブサイト上に見出すことができる。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、互換的に使用される。
「肉腫関連」体液は、患者の体内にある場合に、肉腫細胞と接触する若しくは肉腫細胞を通り抜けるか、又はその中を細胞若しくは肉腫細胞から放出されたタンパク質が通り抜けることができる流体である。例示的な肉腫と関連がある体液としては、血液(例えば、全血、血清、それらから取り出された血小板を含む血液)が挙げられ、これらは以下にさらに詳細に記載される。多くの肉腫障害と関連がある体液には、特に、細胞が転移性である場合には、その中に肉腫細胞が含まれ得る。肉腫細胞を含む可能性がある、細胞を含有している流体としては、全血、それらから取り出された血小板を含む血液、リンパ液、前立腺液、尿、及び精液が挙げられるが、これらに限定されない。
マーカーの「正常な」発現レベルは、肉腫に罹患していないヒト被験体又は患者の細胞中の上記マーカーの発現レベルである。
マーカーの「過剰発現」又は「高レベルの発現」とは、発現を評価するために利用されるアッセイの標準誤差より大きな試験サンプル中の発現レベルをいい、対照サンプル(例えば、マーカー関連疾患を、すなわち、肉腫を有さない健常被験体からのサンプル)中のマーカーの発現レベル、好ましくは、いくつかの対照サンプル中のマーカーの平均発現レベルの好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍である。
マーカーの「低レベルの発現」とは、対照サンプル(例えば、マーカー関連疾患、すなわち、肉腫を有さない健常被験体からのサンプル)中のマーカーの発現レベル、好ましくは、いくつかの対照サンプル中のマーカーの平均発現レベルよりも少なくとも2倍、より好ましくは3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍低い試験サンプル中の発現レベルをいう。
「転写されたポリヌクレオチド」又は「ヌクレオチド転写物」は、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA、hnRNA、cDNA、又はこのようなRNA若しくはcDNAのアナログ)であり、これは、本発明のマーカーの転写、並びに、もしあれば、RNA転写物の通常の転写後プロセシング(例えば、スプライシング)、及びRNA転写物の逆転写によって生成された成熟mRNAのすべて又は一部と相補的であるか又は相同である。
「相補的」とは、2つの核酸鎖の領域間、又は同じ核酸鎖の2つの領域間での配列相補性の広い概念をいう。第1の核酸領域のアデニン残基は、第1の領域に対して逆平行である第2の核酸領域の残基と、その残基がチミン又はウラシルである場合に、特異的水素結合の形成(「塩基対形成」)が可能であることが知られている。同様に、第1の核酸鎖のシトシン残基は、第1の鎖に対して逆平行である第2の核酸鎖の残基と、その残基がグアニンである場合に、塩基対形成が可能であることが知られている。2つの領域が逆平行様式で配置され、第1の領域の少なくとも1個のヌクレオチド残基が第2の領域の残基と塩基対形成可能である場合に、核酸の第1の領域は同じか又は異なる核酸の第2の領域に相補的である。好ましくは、第1の領域は第1の部分を含み、第2の領域は第2の部分を含み、それによって、第1の部分及び第2の部分は逆平行様式に配置され、第1の部分の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%のヌクレオチド残基が、第2の部分におけるヌクレオチド残基と塩基対形成が可能である。より好ましくは、第1の部分のすべてのヌクレオチド残基は、第2の部分のヌクレオチド残基と塩基対形成が可能である。
「相同的」とは、本明細書で使用される場合、同じ核酸鎖の2つの領域間、又は2つの異なる核酸鎖の領域間でのヌクレオチド配列類似性をいう。両方の領域中のヌクレオチド残基の位置が同じヌクレオチド残基によって占められるとき、これらの領域はその位置において相同である。各領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基位置が同じ残基によって占められる場合、第1の領域は第2の領域に対して相同である。2つの領域間の相同性は、同じヌクレオチド残基によって占められる2つの領域のヌクレオチド残基の位置の割合によって表現される。例として、ヌクレオチド配列5'-ATTGCC-3'を有する領域及びヌクレオチド配列5'-TATGGC-3'を有する領域は50%相同性を共有する。好ましくは、第1の領域は第1の部分を有し、第2の領域は第2の部分を有し、それによって、各々の部分のヌクレオチド残基位置の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%が同じヌクレオチド残基によって占められる。より好ましくは、各々の部分のすべてのヌクレオチド残基位置が同じヌクレオチド残基によって占められる。
「本発明のタンパク質」は、マーカータンパク質及びそれらのフラグメント、改変型マーカータンパク質及びそれらのフラグメント、マーカー又は改変型マーカータンパク質の少なくとも15アミノ酸セグメントを含むペプチド及びポリペプチド、並びにマーカー若しくは改変型マーカータンパク質、又はマーカー若しくは改変型マーカータンパク質の少なくとも15アミノ酸セグメントを含む融合タンパク質を包含する。
本発明はさらに、本発明のマーカータンパク質及びマーカータンパク質のフラグメントと特異的に結合する、抗体、抗体誘導体、及び抗体フラグメントを提供する。本明細書中で他に特定されない限り、「抗体」という用語は、天然に存在する型の抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE)、並びに一本鎖抗体、キメラ及びヒト化抗体、多特異性抗体などの組換え抗体、並びに少なくとも抗原結合部位を有する前述のすべてのフラグメント及び誘導体を広範に包含する。抗体誘導体は、抗体にコンジュゲートされたタンパク質又は化学部分を含んでもよい。
特定の実施形態において、本発明のマーカーには、以下からなる群より選択される1以上の遺伝子(又はタンパク質)が含まれる:ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、PRMT3、HDAC2、一酸化窒素シンターゼbNOS、アセチルホスホヒストンH3 AL9 S10、MTA 2、グルタミン酸デカルボキシラーゼGAD65 67、KSR、HDAC4、BOB1 OBF1、a1シントロフィン、BAP1、Importina 57、αE-カテニン、Grb2、Bax、プロテアソーム26Sサブユニット13(エンドフィリンB1)、アクチン様6A(真核生物開始因子4All)、核クロライドチャネルタンパク質、プロテアソーム26Sサブユニット、ジスムターゼCu/Znスーパーオキシド、トランスリン会合因子(Translin-associated factor)X、亜ヒ酸塩輸送ATPase(スペルミン合成酵素)、リボソームタンパク質SA、dCTPピロホスファターゼ1、プロテアソームベータ3、プロテアソームベータ4、酸性ホスファターゼ1、ジアゼパム結合インヒビター、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、リボソームタンパク質P2(RPLP2);ヒストンH2A、微小管結合タンパク質、プロテアソームアルファ3、真核生物翻訳伸長因子1デルタ、ラミンB1、mif two 3ホモログ2のSMT 3サプレッサー、熱ショックタンパク質27kD、hnRNP C1/C2、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、HSPC-300に類似、DNA依存性DNAポリメラーゼイプシロン3;(canopy 2ホモログ)、LAMA5、PXLDC1、p300 CBP、P53R2、ホスファチジルセリン受容体、サイトケラチンペプチド17、サイトケラチンペプチド13、ニューロフィラメント160 200、Rab5、フィレンシン、P53R2、MDM2、MSH6、熱ショック因子2、AFX、FLIPg d、JAB 1、ミオシン、MEKK4、cRaf pSer621、FKHR FOXO1a、MDM2、Fasリガンド、P53R2、ミオシン調節軽鎖、hnRNP C1/C2、ユビキリン1(ホスファターゼ2A)、hnRNP C1/C2、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、ベータアクチン、hnRNP C1/C2、熱ショックタンパク質70kD、ベータチューブリン、ATP依存性ヘリカーゼII、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、ER脂質ラフト会合2アイソフォーム1(ベータアクチン)、シグナル配列受容体1デルタ、真核生物翻訳開始因子3, サブユニット3ガンマ、ビリベルジンレダクターゼA(トランスアルドラーゼ1)、ケラチン1,10(パラチモシン)、GSTオメガ1、Dj-1への鎖Bドパミンキノン結合、プロテアソームアクチベーターReg(アルファ)、T-コンプレックスタンパク質1アイソフォームA、鎖A タパシンERP57(TCP1含有シャペロニン)、ユビキチン活性化酵素E1;アラニル-tRNA合成酵素、ダイナクチン1、熱ショックタンパク質60kd、ベータアクチン、スペルミジンシンターゼ(ベータアクチン)、熱ショックタンパク質70kD、網膜芽細胞腫結合タンパク質4アイソフォームA、TAR DNA結合タンパク質、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、TCP1含有シャペロニン, サブユニット3、細胞質ダイニンIC-2、アンギオテンシン変換酵素(ACE)、カスパーゼ3、GARS、マトリックスメタロプロテイナーゼ6(MMP-6)、ニューロリシン(NLN)触媒ドメイン、及びニューロリシン(NLN)、ADRB、CEACAM1、DUSP4、FOXC2、FOXP3、GCGR、GPD1、HMOX1、IL4R、INPPL1、IRS2、VEGFA、推定c-myc応答性アイソフォーム1、PDK 1、カスパーゼ12、ホスホリパーゼD1、P34 cdc2、P53 BP1、BTK、ASC2、BUBR1、ARTS、PCAF、Raf1、MSK1、SNAP25、APRIL、DAPK、RAIDD、HAT1、PSF、HDAC1、Rad17、サバイビング(Surviving)、SLIPR、MAG13、カスパーゼ10、Crk2、Cdc 6、P21 WAF 1 Cip 1、ASPP 1、HDAC 4、サイクリンB1、CD 40、GAD 65、TAP、Par4(前立腺アポトーシス応答4)、MRP1、MDC1、ラミニン2 a2、bカテニン、FXR2、アネキシンV、SMAC Diablo、MBNL1、ジメチルヒストンh3、増殖因子非依存性1、U2AF65、mTOR、E2F2、Kaiso、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3、ATF2、HDRP MITR、ニューラビンI、AP1、及びApaf1。いくつかの実施形態において、マーカーは、上述した遺伝子(又はタンパク質)のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50又はそれ以上の組合せである。
いくつかの実施形態において、本発明のマーカーは、コエンザイムQ10による肉腫細胞の処置時に上方調節される遺伝子又はタンパク質である。コエンザイムQ10による肉腫の処置時に上方調節されるマーカーには、LAMA5、PXLDC1、p300 CBP、P53R2、ホスファチジルセリン受容体、サイトケラチンペプチド17、サイトケラチンペプチド13、ニューロフィラメント160 200、Rab5、フィレンシン、P53R2、MDM2、MSH6、熱ショック因子2、AFX、FLIPg d、JAB 1、ミオシン、MEKK4、cRaf pSer621、FKHR FOXO1a、MDM2、Fasリガンド、P53R2、プロテアソーム26Sサブユニット13(エンドフィリンB1)、ミオシン調節軽鎖、hnRNP C1/C2、ユビキリン1(ホスファターゼ2A)、hnRNP C1/C2、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、ベータアクチン、hnRNP C1/C2、熱ショックタンパク質70kD、微小管結合タンパク質、ベータチューブリン、プロテアソームアルファ3、ATP依存性ヘリカーゼII、真核生物翻訳伸長因子1デルタ、熱ショックタンパク質27kD、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、HSPC-300に類似、ER脂質ラフト会合2アイソフォーム1(ベータアクチン)、ジスムターゼCu/Znスーパーオキシド、及びシグナル配列受容体1デルタ、ADRB、CEACAM1、DUSP4、FOXC2、FOXP3、GCGR、GPD1、HMOX1、IL4R、INPPL1、IRS2及びVEGFA、推定c-myc応答性アイソフォーム1、PDK 1、カスパーゼ12、ホスホリパーゼD1、P34 cdc2、P53 BP1、BTK、ASC2、BUBR1、ARTS、PCAF、Raf1、MSK1、SNAP25、APRIL、DAPK、RAIDD、HAT1、PSF、HDAC1、Rad17、サバイビング(Surviving)、SLIPR、MAG13、カスパーゼ10、Crk2、Cdc 6、P21 WAF 1 Cip 1、ASPP 1、HDAC 4、サイクリンB1、CD 40、GAD 65、TAP、Par4(前立腺アポトーシス応答4)、及びMRP1が含まれる。いくつかの実施形態において、上方調節されるマーカーは、上述した遺伝子(又はタンパク質)のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30又はそれ以上の組合せである。
さらなる実施形態において、マーカーは、CoQ10による処置時に肉腫細胞において下方調節される遺伝子又はタンパク質である。下方調節されるマーカーには、ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、PRMT3、HDAC2、一酸化窒素シンターゼbNOS、アセチルホスホヒストンH3 AL9 S10、MTA 2、グルタミン酸デカルボキシラーゼGAD65 67、KSR、HDAC4、BOB1 OBF1、a1シントロフィン、BAP1、Importina 57、αE-カテニン、Grb2、Bax、プロテアソーム26Sサブユニット13(エンドフィリンB1)、アクチン様6A(真核生物開始因子4All)、核クロライドチャネルタンパク質、プロテアソーム26Sサブユニット、ジスムターゼCu/Znスーパーオキシド、トランスリン会合因子(Translin-associated factor)X、亜ヒ酸塩輸送ATPase(スペルミン合成酵素)、リボソームタンパク質SA、dCTPピロホスファターゼ1、プロテアソームベータ3、プロテアソームベータ4、酸性ホスファターゼ1、ジアゼパム結合インヒビター、リボソームタンパク質P2(RPLP2);ヒストンH2A、微小管結合タンパク質、プロテアソームアルファ3、真核生物翻訳伸長因子1デルタ、ラミンB1、mif two 3ホモログ2のSMT 3サプレッサー、熱ショックタンパク質27kD、hnRNP C1/C2、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、HSPC-300に類似、DNA依存性DNAポリメラーゼイプシロン3 (canopy 2ホモログ)、アンギオテンシン変換酵素(ACE)、カスパーゼ3、GARS、マトリックスメタロプロテイナーゼ6(MMP-6)、ニューロリシン(NLN)触媒ドメイン、ニューロリシン(NLN)、MDC1、ラミニン2 a2、bカテニン、FXR2、アネキシンV、SMAC Diablo、MBNL1、ジメチルヒストンh3、増殖因子非依存性1、U2AF65、mTOR、E2F2、Kaiso、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3、ATF2、HDRP MITR、ニューラビンI、AP1、及びApaf1が含まれる。いくつかの実施形態において、下方調節されるマーカーは、上述した遺伝子(又はタンパク質)のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30又はそれ以上の組合せである。
一実施形態において、本発明のマーカーは、糖尿病と関連した又は糖尿病に関与する遺伝子又はタンパク質である。そのような糖尿病に関与する遺伝子又はタンパク質には、例えば、ADRB、CEACAM1、DUSP4、FOX C2、FOXP3、GCGR、GPD1、HMOX1、IL4R、INPPL1、IRS2、VEGFA、ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、LAMA5、及び/又はPXLDC1が含まれる。いくつかの実施形態において、本発明のマーカーは、上述した遺伝子(又はタンパク質)のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19全ての組合せである。
一実施形態において、糖尿病と関連した又は糖尿病に関与するマーカーは、CoQ10による肉腫細胞の処置時に上方調節される遺伝子又はタンパク質である。そのようなマーカーには、例えば、ADRB、CEACAM1、DUSP4、FOX C2、FOXP3、GCGR、GPD1、HMOX1、IL4R、INPPL1、IRS2、及び/又はVEGFAが含まれる。いくつかの実施形態において、糖尿病に関与する上方調節されるマーカーは、上述した遺伝子(又はタンパク質)のうち少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12全ての組合せである。
さらなる実施形態において、糖尿病と関連した又は糖尿病に関与するマーカーは、CoQ10による肉腫細胞の処置時に下方調節される遺伝子又はタンパク質である。そのような遺伝子には、例えば、ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、LAMA5、及び/又はPXLDC1が含まれる。いくつかの実施形態において、糖尿病に関与する下方調節されるマーカーは、上述した遺伝子(又はタンパク質)のうち少なくとも2、3、4、5、6、又は7全ての組合せである。
また別の実施形態において、本発明のマーカーは、血管新生と関連した又は血管新生に関与する遺伝子又はタンパク質である。そのような遺伝子には、例えば、ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、LAMA5、及び/又はPXLDC1が含まれる。いくつかの実施形態において、血管新生に関与するマーカーは、上述した群から選択される少なくとも2、3、4、5、6、又は7全ての遺伝子の組合せである。
さらなる実施形態において、血管新生と関連した又は血管新生に関与するマーカーは、CoQ10による肉腫細胞の処置時に上方調節される遺伝子又はタンパク質である。そのような遺伝子には、例えば、ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、及び/又はCXCL3が含まれる。いくつかの実施形態において、血管新生と関連した上方調節されるマーカーは、上述した群からの少なくとも2、3、4、又は5全ての遺伝子の組合せである。
さらなる実施形態において、血管新生と関連した又は血管新生に関与するマーカーは、CoQ10による肉腫細胞の処置時に下方調節される遺伝子又はタンパク質である。そのような遺伝子には、例えば、LAMA5及び/又はPXLDC1が含まれる。一実施形態では、下方調節されるマーカーは、LAMA5及びPXLDC1の両方である。
別の実施形態において、マーカーは、アポトーシスに関与する遺伝子又はタンパク質である。そのような遺伝子には、例えば、表2〜9に列挙された遺伝子が含まれる。一実施形態では、アポトーシスに関与するマーカーには、JAB1、P53R2、ホスファチジルセリン受容体、Rab 5、AFX、MEKK4、HDAC2、HDAC4、PDK1、カスパーゼ12、ホスホリパーゼD1、p34cdc2、BTK、ASC2、BubR1、PCAF、Raf1、MSK1、及びmTORが含まれる。
本発明の種々の態様は以下のサブセクションにおいてさらに詳細に説明される。
1.単離された核酸分子
本発明の1つの態様は、マーカータンパク質又はその一部をコードする核酸を含む単離された核酸分子に関する。本発明の単離された核酸には、マーカー核酸分子を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとしての使用のために十分な核酸分子、及びマーカー核酸分子のフラグメント、例えば、マーカー核酸分子の増幅又は変異のためのPCRプライマーとしての使用のために適切なものもまた含まれる。本明細書で使用される場合、「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えば、cDNA又はゲノムDNA)及びRNA分子(例えば、mRNA)、並びにヌクレオチドアナログを使用して生成されたDNA又はRNAのアナログを含むことが意図される。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。
「単離された」核酸分子は、核酸分子の天然の供給源に存在する他の核酸分子から分離されているものである。一実施形態において、「単離された」核酸分子は、その核酸が由来する生物のゲノムDNA中の核酸(すわわち、核酸の5'及び3'末端に位置する配列)に天然に隣接する配列(好ましくは、タンパク質コード配列)を含まない。例えば、種々の実施形態において、単離された核酸分子は、その核酸が由来する細胞のゲノムDNA中の核酸分子に天然に隣接するヌクレオチド配列の約5kB、4kB、3kB、2kB、1kB、0.5kB又は0.1kB未満を含むことができる。別の実施形態において、「単離された」核酸分子、例えば、cDNA分子は、組換え技術によって産生されたときには他の細胞物質若しくは培養培地を実質的に含まず、又は化学合成された場合には、化学前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まないことがあり得る。細胞物質を実質的に含まない核酸分子には、約30%、20%、10%、又は5%未満の異種核酸(本明細書では「夾雑核酸」とも呼ばれる)を有する調製物が含まれる。
本発明の核酸分子は、標準的な分子生物学的技術及び本明細書に記載されるデータベース記録における配列情報を使用して単離することができる。このような核酸配列のすべて又は一部を使用して、本発明の核酸分子は、標準的なハイブリダイゼーション及びクローニングの技術を使用して、(例えば、Sambrook et al.編, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されているように)単離することができる。
本発明の核酸分子は、標準的なPCR増幅技術に従って、鋳型としてcDNA、mRNA、又はゲノムDNAを、及び適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅することができる。そのように増幅された核酸は、適切なベクターにクローニングされ、DNA配列決定分析によって特徴決定できる。さらに、本発明の核酸分子のすべて又は一部に対応するヌクレオチドは、標準的な合成技術、例えば、自動DNA合成装置を使用して調製することができる。
別の好ましい実施形態において、本発明の単離された核酸分子は、マーカー核酸のヌクレオチド配列又はマーカータンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列に相補的な核酸配列を有する核酸分子を含む。所定のヌクレオチド配列に相補的な核酸分子は、所定のヌクレオチド配列に十分に相補的であるものであって、この分子は所定のヌクレオチド配列にハイブリダイズでき、それによって安定な二重鎖を形成する。
さらに、本発明の核酸分子は、核酸配列の一部のみを含むことができ、ここで、全長核酸配列はマーカー核酸を含み、又はこれはマーカータンパク質をコードする。このような核酸は、例えば、プローブ又はプライマーとして使用することができる。プローブ/プライマーは、典型的には、1つ以上の実質的に精製されたオリゴヌクレオチドとして使用される。このオリゴヌクレオチドは、典型的には、ストリンジェントな条件下で、本発明の核酸の少なくとも約7、好ましくは約15、より好ましくは約25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、又は400以上の連続するヌクレオチドにハイブリダイズする核酸配列の領域を含む。
本発明の核酸分子の配列に基づくプローブは、本発明の1つ以上のマーカーに対応する転写物又はゲノム配列を検出するために使用することができる。プローブは、そこに結合される標識基、例えば、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素、又は酵素補因子を含む。例えば、被験体からの細胞のサンプル中のタンパク質をコードする核酸分子のレベルを測定することによって、例えば、mRNAレベルを検出するか又はタンパク質をコードしている遺伝子が変異されたか若しくは欠失されたかを決定することによって、このようなプローブは、誤ってタンパク質を発現する細胞又は組織を同定するための診断検査キットの一部として使用できる。
本発明はさらに、遺伝コードの縮重に起因して、マーカータンパク質をコードしている核酸のヌクレオチド配列と異なり、したがって、同じタンパク質をコードする核酸分子を包含する。
アミノ酸配列の変化に導くDNA配列多型が集団(例えば、ヒト集団)内に存在しうることが当業者によって理解される。このような遺伝子多型は、天然の対立遺伝子のバリエーションに起因して、集団内で個体の間で存在しうる。対立遺伝子は、所定の遺伝子座において択一的に存在する遺伝子の群の1つである。加えて、RNA発現レベルに影響を与えるDNA多型が存在し、これは、(例えば、調節又は分解に影響を与えることによって)遺伝子の全体的な発現レベルに影響を与え得ることが理解される。
本明細書で使用される場合、「対立遺伝子変異」という語句は、所定の遺伝子座に起こるヌクレオチド配列、又はそのヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドをいう。
本明細書で使用される場合、「遺伝子」及び「組換え遺伝子」という用語は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸分子をいう。このような天然の対立遺伝子バリエーションは、典型的には、所定の遺伝子におけるヌクレオチド配列の1〜5%の変異を生じる。代替的な対立遺伝子は、多数の異なる個体の中で、目的の遺伝子を配列決定することによって同定できる。これは、さまざまな個体における同じ遺伝子座を同定するためにハイブリダイゼーションプローブを使用することによって容易に実行できる。任意の及びすべてのこのようなヌクレオチドのバリエーション、並びに天然の対立遺伝子バリエーションの結果であり、機能的活性を変化しない、得られるアミノ酸多型又はバリエーションは、本発明の範囲内にあることが意図される。
別の実施形態において、本発明の単離された核酸分子は、少なくとも7、15、20、25、30、40、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、550、650、700、800、900、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2200、2400、2600、2800、3000、3500、4000、4500、又はそれ以上のヌクレオチド長であり、ストリンジェントな条件下で、マーカー核酸又はマーカータンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする。本明細書で使用される場合、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という用語は、少なくとも60%(65%、70%、好ましくは75%)互いに同一であるヌクレオチド配列が通常互いにハイブリダイズしたままであるハイブリダイゼーション及び洗浄のための条件を説明することが意図される。このようなストリンジェントな条件は、当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989)のセクション6.3.1〜6.3.6において見い出すことができる。好ましい、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例は、約45℃の6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中のハイブリダイゼーション、続いて50〜65℃での0.2×SSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄である。
集団中に存在し得る本発明の核酸分子の天然に存在する対立遺伝子変異体に加えて、当業者は、配列の変化が変異によって導入でき、それによってコードされるタンパク質の生物学的活性を変化させることなく、コードされるタンパク質のアミノ酸配列の変化をもたらすことをさらに認識する。例えば、「非必須」アミノ酸残基においてアミノ酸置換をもたらすヌクレオチド置換を作製できる。「非必須」アミノ酸残基は、生物学的活性を変化させることなく、野生型配列から変化できる残基であるのに対し、「必須」アミノ酸は生物学的活性のために必要とされる。例えば、様々な種のホモログの間で保存されていないか又は単に半保存性であるアミノ酸残基は活性については必須でないかもしれず、したがって、変化のための標的となり得る。あるいは、様々な種(例えば、マウス又はヒト)のホモログの間で保存されているアミノ酸残基は活性については必須であるかもしれず、したがって、変化のための標的になりそうでない。
したがって、本発明の別の態様は、活性について必須でないアミノ酸残基の変化を含む改変型マーカータンパク質をコードする核酸分子に関する。このような改変型マーカータンパク質は、天然に存在するマーカータンパク質とはアミノ酸配列において異なっているが、なお生物学的活性を保持している。1つの実施形態において、このような改変型マーカータンパク質は、マーカータンパク質のアミノ酸配列と少なくとも約40%同一性、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一性を有するアミノ酸配列を有する。
1つ以上のアミノ酸残基の置換、付加、又は欠失が、コードされるタンパク質に導入されるように、改変型マーカータンパク質をコードする単離された核酸分子は、1つ以上のヌクレオチドの置換、付加、又は欠失をマーカー核酸のヌクレオチド配列に導入することによって作製することができる。変異は、部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発などの標準的な技術によって導入できる。好ましくは、保存性アミノ酸置換は、1つ以上の推定の非必須アミノ酸残基において作製される。「保存性アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該分野において規定されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するもの(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するもの(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するもの(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖を有するもの(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するもの(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。あるいは、変異は、例えば、飽和変異誘発によってコード配列のすべて又は一部に沿ってランダムに導入でき、得られた変異体は、活性を保持する変異体を同定するために生物学的活性についてスクリーニングすることができる。変異誘発後、コードされたタンパク質は、組換え的に発現でき、タンパク質の活性が決定することができる。
本発明は、アンチセンス核酸分子、すなわち、本発明のセンス核酸に相補的である分子を包含し、これは例えば、二本鎖マーカーcDNA分子のコード鎖に相補的であり、又はマーカーmRNA配列に相補的である。したがって、本発明のアンチセンス核酸は、本発明のセンス核酸に水素結合(すなわち、アニーリング)できる。アンチセンス核酸は、全体のコード鎖又はその一部のみに、例えば、タンパク質のコード領域(又はオープンリーディングフレーム)のすべて又は一部に相補的であり得る。アンチセンス核酸分子はまた、マーカータンパク質をコードするヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域のすべて又は一部に対してアンチセンスでもあり得る。非コード領域(「5'及び3'非翻訳領域」)は、コード領域に隣接し、アミノ酸に翻訳されない5'及び3'配列である。
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50以上のヌクレオチド長であり得る。本発明のアンチセンス核酸は、当分野で公知の手順を使用する化学合成及び酵素ライゲーション反応を使用して作製することができる。例えばアンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然型ヌクレオチド、又は分子の生物安定性を向上させる若しくはアンチセンス核酸とセンス核酸との間に形成された2本鎖の物理的安定性を向上させるように設計された多様に修飾されたヌクレオチドを使用して、化学的に合成することができ、例えばホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。アンチセンス核酸を生成するために使用することができる修飾ヌクレオチドの例には、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルクエオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6-ジアミノプリンが含まれる。あるいは、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス方向にサブクローニングされている発現ベクターを使用して、生物学的に産生できる(すなわち、挿入された核酸から転写されたRNAは、以下のサブセクションにおいてさらに説明される、目的の標的核酸に対してアンチセンス方向である)。
本発明のアンチセンス核酸分子は、典型的には、被験体に投与されるか、又はin situで生成され、その結果、これらがマーカータンパク質をコードする細胞mRNA及び/又はゲノムDNAとハイブリダイズし、又はそれらと結合し、それによって、例えば、転写及び/又は翻訳を阻害することによって、マーカーの発現を阻害する。ハイブリダイゼーションは、安定な二重鎖を形成するために慣用的なヌクレオチド相補性によってであり得、又は、例えば、DNA二重鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合には、二重へリックスの主要溝における特異的相互作用を介してであり得る。本発明のアンチセンス核酸分子の投与の経路の例は、組織部位における直接注射又は肉腫関連の体液へのアンチセンス核酸の注入が挙げられる。あるいは、アンチセンス核酸分子は、選択された細胞を標的とするために修飾でき、次いで、全身投与できる。例えば、全身投与のために、アンチセンス分子は、これらが、例えば、細胞表面受容体又は抗原に結合するペプチド又は抗体にアンチセンス核酸分子を連結することによって、選択された細胞表面上で発現される受容体又は抗原に特異的に結合するように修飾することができる。アンチセンス核酸分子はまた、本明細書に記載されるベクターを使用しても細胞に送達できる。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するために、アンチセンス核酸分子が強力なpolII又はpolIIIプロモーターの制御下に配置されているベクター構築物が好ましい。
本発明のアンチセンス核酸分子は、α-アノマー型核酸分子であり得る。α-アノマー核酸分子は、通常のα-ユニットとは反対に、鎖が相互に平行に並んだ、相補的RNAとの特異的な2本鎖ハイブリッドを形成する(Gaultier et al., 1987, Nucleic Acids Res. 15:6625-6641)。アンチセンス核酸分子はまた、2'-o-メチルリボヌクレオチド(Inoue et al., 1987, Nucleic Acids Res. 15:6131-6148)又はキメラRNA-DNAアナログを含むことができる(Inoue et al., 1987, FEBS Lett. 215:327-330)。
本発明はリボザイムもまた包含する。リボザイムは、一本鎖核酸、例えば、リボザイムが相補性領域を有するmRNAを切断可能なリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNA分子である。したがって、リボザイム(例えば、Haselhoff and Gerlach, 1988, Nature 334:585-591に記載されるようなハンマーヘッド型リボザイム)は、mRNA転写物を触媒的に切断するために使用でき、それによって、mRNAによってコードされているタンパク質の翻訳を阻害する。マーカータンパク質をコードしている核酸分子についての特異性を有するリボザイムは、マーカーに対応するcDNAのヌクレオチド配列に基づいて設計することができる。例えば、テトラヒメナL-19 IVS RNAの誘導体が構築でき、ここでは、活性部位のヌクレオチド配列が、切断されるヌクレオチド配列に相補的である(Cech et al.米国特許第4,987,071号;及びCech et al.米国特許第5,116,742号を参照のこと)。あるいは、本発明のポリペプチドをコードするmRNAは、RNA分子のプールから特定のリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNAを選択するために使用できる(例えば、Bartel and Szostak, 1993, Science 261:1411-1418を参照のこと)。
本発明は、三重へリックス構造を形成する核酸分子もまた包含する。例えば、本発明のマーカーの発現は、マーカー核酸又はタンパク質をコードする遺伝子の調節領域(例えば、プロモーター及び/又はエンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を標的として、標的細胞中の遺伝子の転写を妨害するための三重へリックス構造を形成することによって阻害できる。一般的には、Helene (1991) Anticancer Drug Des. 6(6):569-84;Helene (1992) Ann. N.Y. Acad. Sci. 660:27-36;及びMaher (1992) Bioassays 14(12):807-15を参照のこと。
種々の実施形態において、本発明の核酸分子は、塩基部分、糖部分、又はリン酸バックボーンにおいて、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーション、又は溶解性を改善するために修飾できる。例えば、核酸のデオキシリボースリン酸バックボーンは、ペプチド核酸を生成するために修飾できる(Hyrup et al., 1996, Bioorganic & Medicinal Chemistry 4(1): 5-23を参照のこと)。本明細書で使用される場合、「ペプチド核酸」又は「PNA」という用語は、核酸模倣物、例えば、DNA模倣物であり、ここでは、デオキシリボースリン酸バックボーンが擬ペプチドバックボーンによって置き換えられており、4種の天然の核酸塩基のみが保持されている。PNAの天然バックボーンは、低イオン強度の条件下で、DNA及びRNAへの特異的ハイブリダイゼーションを許容することが示されてきた。PNAオリゴマーの合成は、Hyrup et al. (1996) 前出;Perry-O'Keefe et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:14670-675に記載の標準的な固相ペプチド合成プロトコルを使用して実施することができる。
PNAは、治療的及び診断的適用において使用することができる。例えば、PNAは、例えば、転写若しくは翻訳の停止又は複製の阻害を誘導することによって、遺伝子発現の配列特異的調節のためのアンチセンス又はアンチ遺伝子剤として使用することができる。PNAはまた、例えば、遺伝子中の単一の塩基対変異の分析において、例えば、PNA指向性PCRクランピングによって、他の酵素、例えば、S1ヌクレアーゼと組み合わせて使用されるときの人工制限酵素として(Hyrup (1996)前出);又はDNA配列決定及びハイブリダイゼーションのためのプローブ若しくはプライマーとして(Hyrup, 1996, 前出;Perry-O'Keefe et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:14670-675)使用することができる。
別の実施形態において、PNAは、例えば、それらの安定性又は細胞の取り込みを増強するために、親油性又は他のヘルパー基をPNAに加えることによって、PNA-DNAキメラの形成によって、又はリポソームの使用若しくは当該分野において公知である薬物送達の他の技術によって修飾することができる。例えば、PNA及びDNAの有利な特性を合わせることができるPNA-DNAキメラが生成できる。PNA部分が高い結合親和性及び特異性を提供しながら、このようなキメラは、DNA認識酵素、例えば、RNase H及びDNAポリメラーゼが、DNA部分と相互作用することを可能にする。PNA-DNAキメラは、核酸塩基の間の結合の塩基の積み重ねの数と、配向によって選択される適切な長さのリンカーを使用して連結できる(Hyrup, 1996,前出)。PNA-DNAキメラの合成は、Hyrup(1996)前出及びFinn et al. (1996) Nucleic Acids Res. 24(17):3357-63において記載されるように実施することができる。例えば、DNA鎖は、標準的なホスホルアミダイトカップリング化学及び修飾ヌクレオシドアナログを使用して、固相支持体上で合成することができる。5'-(4-メトキシトリチル)アミノ-5'-デオキシ-チミジンホスホルアミダイトなどの化合物は、PNAとDNAの5'末端の間の連結として使用することができる(Mag et al., 1989, Nucleic Acids Res. 17:5973-88)。次いで、PNAモノマーは、5'PNAセグメント及び3'DNAセグメントを有するキメラ分子を産生するために、段階的な様式で結合される(Finn et al., 1996, Nucleic Acids Res. 24(17):3357-63)。あるいは、キメラ分子は、5'DNAセグメント及び3'PNAセグメントを用いて合成することができる(Peterser et al., 1975, Bioorganic Med. Chem. Lett. 5:1119-11124)。
他の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、インビボで宿主細胞受容体を標的化するため)、又は細胞膜(例えば、Letsinger et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6553-6556;Lemaitre et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:648-652;PCT公開番号WO 88/09810を参照のこと)、若しくは血液脳関門(例えば、PCT公開番号WO 89/10134を参照のこと)を通した輸送を容易にする薬剤などの他の付属基を含むことができる。加えて、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション誘発性切断因子(例えば、Krol et al., 1988, Bio/Techniques 6:958-976を参照のこと)又はインターカレート因子(例えば、Zon, 1988, Pharm. Res. 5:539-549を参照のこと)を用いて修飾することができる。この目的のために、オリゴヌクレオチドは、別の分子、例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘発性架橋剤、輸送因子、ハイブリダイゼーション誘発性切断剤などにコンジュゲートすることができる。
本発明は、分子ビーコンがサンプル中の本発明の核酸の存在を定量するために有用であるような、本発明の核酸に相補的である少なくとも1つの領域を有する分子ビーコン核酸もまた含む。「分子ビーコン」核酸は、1対の相補的領域、並びに蛍光団及びそれに付随する蛍光クエンチャーを有する核酸である。蛍光団及びクエンチャーは、相補性領域が互いにアニールするときに、蛍光団の蛍光がクエンチャーによってクエンチされるような方向で、核酸の様々な部分に結合している。核酸の相補性領域が互いにアニールしないとき、蛍光団の蛍光は、より低い程度にクエンチされる。分子ビーコン核酸は、例えば、米国特許第5,876,930号に記載されている。
2.単離されたタンパク質及び抗体
本発明の1つの態様は、単離されたマーカータンパク質及びその生物学的に活性な部分、並びにマーカータンパク質又はそのフラグメントに対する抗体を惹起するための免疫原としての使用のために適切なポリペプチドフラグメントに関する。1つの実施形態において、ネイティブマーカータンパク質は、標準的なタンパク質精製技術を使用して適切な精製スキームによって、細胞又は組織の供給源から単離することができる。別の実施形態において、マーカータンパク質の全体又はセグメントを含むタンパク質又はペプチドは、組換えDNA技術によって産生される。組換え発現の代替としては、このようなタンパク質又はペプチドは、標準的なペプチド合成技術を使用して化学合成することができる。
「単離された」又は「精製された」タンパク質又はその生物学的に活性な部分は、タンパク質が由来する細胞又は組織の供給源からの細胞物質又は他の夾雑タンパク質を実質的に含まず、あるいは化学合成の場合には、化学前駆体又は他の化学物質を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という言葉には、タンパク質がそれが単離された又は組換え産生された細胞の細胞成分から単離されている、タンパク質の調製物が含まれる。したがって、細胞物質を実質的に含まないタンパク質には、約30%、20%、10%、又は5%(乾燥重量)未満の異種タンパク質(本明細書では「夾雑タンパク質」とも呼ばれる)を有するタンパク質の調製物が含まれる。タンパク質又はその生物学的に活性な部分が組換え的に産生されるとき、これもまた、好ましくは、培養培地を実質的に含まず、すなわち、培養培地は、タンパク質調製物の約20%、10%、又は5%体積未満を表す。タンパク質が化学合成によって産生されるとき、これは、好ましくは、化学前駆体又は他の化学物質を実質的に含まず、すなわち、これは、化学前駆体又はタンパク質の合成に関与する他の化学物質から分離されている。したがって、このようなタンパク質の調製物は、約30%、20%、10%、又は5%(乾燥重量)未満の化学前駆体又は目的のポリペプチド以外の化合物を有する。
マーカータンパク質の生物学的に活性な部分には、マーカータンパク質のアミノ酸配列と十分に同一であるか又はそれに由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドが含まれ、これは、全長タンパク質よりも少ないアミノ酸を含み、対応する全長タンパク質の少なくとも1つの活性を示す。典型的には、生物学的に活性な部分は、対応する全長タンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメイン又はモチーフを含む。本発明のマーカータンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば、10、25、50、100又はそれ以上のアミノ酸長であるポリペプチドであり得る。さらに、マーカータンパク質の他の領域が欠失している、他の生物学的に活性な部分は、組換え技術によって調製でき、ネイティブ型のマーカータンパク質の機能的活性の1つ以上について評価することができる。
好ましいマーカータンパク質は、表2〜9に列挙される遺伝子のいずれかをコードする配列を含むヌクレオチド配列によってコードされる。他の有用なタンパク質は、これらの配列の1つに実質的に同一であり(例えば、少なくとも約40%、好ましくは、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一)、対応する天然に存在するマーカータンパク質の機能的活性を保持し、しかし、天然の対立遺伝子バリエーション又は変異誘発に起因してアミノ酸配列が異なっている。
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸の同一性パーセントを決定するために、配列は、最適な比較目的のためにアライメントされる(例えば、第2のアミノ酸又は核酸配列との最適なアライメントのために、第1のアミノ酸又は核酸配列にギャップを導入することができる)。次いで、対応するアミノ酸の位置又はヌクレオチドの位置において、アミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められているとき、これらの分子はその位置において同一である。好ましくは、2つの配列間の同一性パーセントは、全体のアライメントを使用して計算される。あるいは、2つの配列間の同一性パーセントは、局所的アライメントを使用して計算される。2つの配列間の同一性パーセントは、配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一の位置の数/全体の位置の数(例えば、重複する位置)×100)。1つの実施形態において、2つの配列は同じ長さである。別の実施形態において、2つの配列は同じ長さではない。
2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成できる。2つの配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268のアルゴリズムであって、これはKarlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877において修正されている。このようなアルゴリズムは、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410のBLASTN及びBLASTXプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得るために、BLASTNプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実施することができる。BLASTタンパク質検索は、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、BLAST Pプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実施できる。比較目的のためのギャップ付きアライメントを得るために、ギャップ付きBLASTと呼ばれるBLASTアルゴリズムのより新しいバージョンが、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載されるように利用でき、これは、プログラムBLASTN、BLASTP、及びBLASTXのためのギャップ付き局所的アライメントを実施することが可能である。あるいは、PSI-Blastが、分子間の距離の関係性を検出する繰り返し検索を実施するために使用することができる。BLAST、ギャップ付きBLAST、及びPSI-Blastプログラムを利用するとき、それぞれのプログラム(例えば、BLASTX及びBLASTN)のデフォルトパラメーターが使用できる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例は、Myers and Miller, (1988) CABIOS 4:11-17のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用するとき、PAM120重み残基表、ギャップ長ペナルティー12、及びギャップペナルティー4が使用できる。局所的配列類似性及びアライメントの領域を同定するためのなお別の有用なアルゴリズムは、Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444-2448に記載されるようなFASTAアルゴリズムである。ヌクレオチド又はアミノ酸配列を比較するためのFASTAアルゴリズムを使用するとき、PAM120重み残基表は、例えば、k組値2を用いて使用することができる。
2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップの許可を伴って又は伴わずに、上記のものと同様の技術を使用して決定することができる。同一性パーセントを計算する際に、正確な一致のみが計数される。
本発明は、マーカータンパク質又はそのセグメントを含むキメラ又は融合タンパク質もまた提供する。本明細書で使用される場合、「キメラタンパク質」又は「融合タンパク質」は、異種ポリペプチド(すなわち、マーカータンパク質以外のポリペプチド)に機能的に連結されたマーカータンパク質のすべて又はその一部(好ましくは、生物学的に活性な部分)を含む。融合タンパク質の中では、「機能的に連結される」という用語は、マーカータンパク質又はそのセグメント及び異種タンパク質が互いにインフレームで融合されていることを示すことが意図される。異種ポリペプチドは、マーカータンパク質又はセグメントのアミノ末端又はカルボキシ末端に融合できる。
1つの有用な融合タンパク質は、マーカータンパク質又はセグメントがGST配列のカルボキシ末端に融合されているGST融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、本発明の組換えポリペプチドの精製を容易にすることができる。
別の実施形態において、融合タンパク質は、そのアミノ末端において異種シグナル配列を含む。例えば、マーカータンパク質の天然シグナル配列は、取り除かれ、別のタンパク質からのシグナル配列で置き換えられることができる。例えば、バキュロウイルスエンベロープタンパク質のgp67分泌配列は、異種シグナル配列として使用することができる(Ausubel et al.編, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY, 1992)。真核生物異種シグナル配列の他の例には、メリチン及びヒト胎盤アルカリホスファターゼの分泌配列が含まれる(Stratagene; La Jolla, California)。なお別の例において、有用な原核生物異種シグナル配列には、phoA分泌シグナル(Sambrook et al.,前出)及びプロテインA分泌シグナル(Pharmacia Biotech; Piscataway, New Jersey)が挙げられる。
なお別の実施形態において、融合タンパク質は、マーカータンパク質のすべて又はその一部が免疫グロブリンタンパク質ファミリーのメンバーに由来する配列に融合されている、免疫グロブリン融合タンパク質である。本発明の免疫グロブリン融合タンパク質は、リガンド(可溶性又は膜結合型)と細胞の表面上のタンパク質(受容体)の間の相互作用を阻害するために、医薬組成物に組み込まれ、被験体に投与され、それによって、インビボでシグナル伝達を抑制することができる。この免疫グロブリン融合タンパク質は、マーカータンパク質の類似した(cognate)リガンドの生物学的利用能に影響を与えるために使用できる。リガンド/受容体相互作用の阻害は、増殖及び分化の障害を処置することと、細胞生存を調節すること(例えば、促進すること又は阻害すること)の両方のために、治療的に有用であり得る。さらに、本発明の免疫グロブリン融合タンパク質は、被験体におけるマーカータンパク質に対する抗体を産生するための免疫原として、リガンドを精製するために、及びスクリーニングアッセイにおいては、マーカータンパク質のリガンドとの相互作用を阻害する分子を同定するために、使用することができる。
本発明のキメラ及び融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって産生することができる。別の実施形態において、融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む慣用的な技術によって合成することができる。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅が、2つの連続する遺伝子フラグメント間の相補的突出を生じるアンカープライマーを使用して実行でき、これらは、続いてアニールされ、再増幅されてキメラ遺伝子配列を生成する(例えば、Ausubel et al.,前出を参照のこと)。さらに、すでに融合部分(例えば、GSTポリペプチド)をコードしている多くの発現ベクターが市販されている。本発明のポリペプチドをコードする核酸は、融合部分が本発明のポリペプチドに対してインフレームで連結されるように、このような発現ベクターにクローニングすることができる。
シグナル配列は、マーカータンパク質の分泌及び単離を容易にするために使用することができる。シグナル配列は、1つ以上の切断事象において、分泌の間に成熟タンパク質から一般的に切断される疎水性アミノ酸のコアを典型的には特徴とする。このようなシグナルペプチドは、成熟タンパク質からのシグナル配列の切断を、これらが分泌経路を通過するときに可能にするプロセシング部位を含む。したがって、本発明は、シグナル配列を有する、マーカータンパク質、融合タンパク質、又はそのセグメントに関し、並びに、シグナル配列がタンパク質分解的に切断されているこのようなタンパク質(すなわち、切断産物)に関する。1つの実施形態において、シグナル配列をコードする核酸配列は、マーカータンパク質又はそのセグメントなどの目的のタンパク質に発現ベクター中で機能的に連結することができる。シグナル配列は、例えば、真核生物宿主からのタンパク質の分泌を指令し、この宿主には、発現ベクターが形質転換され、シグナル配列は、引き続いて、又は同時に切断される。次いで、タンパク質は、当該分野において認識されている方法によって、細胞外培地から容易に精製することができる。あるいは、シグナル配列は、精製を容易にする配列を使用して、例えば、GSTドメインを用いて、目的のタンパク質に連結することができる。
本発明はまた、マーカータンパク質の改変体に関する。このような改変体は、アゴニスト(模倣物)又はアンタゴニストのいずれかとして機能できる変化したアミノ酸配列を有する。改変体は、変異誘発、例えば、離散点変異又は末端切断によって生成することができる。アゴニストは、天然に存在する型のタンパク質の生物学的活性の実質的に同じもの又はそのサブセットを保持しうる。タンパク質のアンタゴニストは、例えば、目的のタンパク質を含む細胞シグナル伝達カスケードの下流又は上流のメンバーに競合的に結合することによって、天然に存在する型のタンパク質の活性の1つ以上を阻害できる。したがって、特定の生物学的効果は、限られた機能の改変体を用いる処理によって誘発できる。天然に存在する型のタンパク質の生物学的活性のサブセットを有する改変体を用いる被験体の処置は、天然に存在する型のタンパク質を用いる処置と比較して、被験体におけるより少ない副作用を有し得る。
アゴニスト(模倣物)又はアンタゴニストのいずれかとして機能するマーカータンパク質の改変体は、変異体、例えば、本発明のタンパク質の切断型変異体のコンビナトリアルライブラリーを、アゴニスト又はアンタゴニスト活性についてスクリーニングすることによって同定することができる。1つの実施形態において、改変体の多様化されたライブラリーは、核酸レベルにおいてコンビナトリアル変異誘発によって作製され、多様化された遺伝子ライブラリーによってコードされている。潜在的なタンパク質配列の縮重セットが、個別のポリペプチドとして、又は代替的に、より大きな融合タンパク質のセットとして(例えば、ファージディスプレイ用)発現可能であるように、改変体の多様化されたライブラリーは、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的ライゲーションすることによって作製できる。縮重オリゴヌクレオチド配列からマーカータンパク質の潜在的な改変体のライブラリーを作製するために使用できる種々の方法が存在する。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は当該分野において公知である(例えば、Narang, 1983, Tetrahedron 39:3;Itakura et al., 1984, Annu. Rev. Biochem. 53:323;Itakura et al., 1984, Science 198:1056;Ike et al., 1983 Nucleic Acid Res. 11:477)を参照のこと。
加えて、マーカータンパク質のセグメントのライブラリーは、改変型マーカータンパク質又はそのセグメントのスクリーニング及び引き続く選択のためのポリペプチドの多様化された集団を作製するために使用することができる。例えば、コード配列フラグメントのライブラリーは、ニックが分子あたり約1個存在する条件下で、目的のコード配列の二本鎖PCRフラグメントをヌクレアーゼで処理すること、その二本鎖DNAを変性すること、様々なニックを有する生成物からセンス/アンチセンス対を含み得る二本鎖DNAを形成するためにDNAを再生させること、S1ヌクレアーゼを用いる処理によって、再形成された二本鎖から一本鎖部分を除外すること、及び得られるフラグメントライブラリーを発現ベクターにライゲーションすることによって作製することができる。この方法によって、種々のサイズの目的のタンパク質のアミノ末端及び内部フラグメントをコードする発現ライブラリーが誘導できる。
点変異又は末端切断によって作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、及び選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術が、当該分野において公知である。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための高スループット分析に適している最も広く使用されている技術には、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングすること、得られたベクターのライブラリーで適切な細胞を形質転換すること、及び所望の活性の検出が、産物が検出される遺伝子をコードしているベクターの単離を容易にする条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現することが含まれる。ライブラリー中の機能的変異体の頻度を増強する技術である再帰アンサンブル変異誘発(REM)は、本発明のタンパク質の改変体を同定するために、スクリーニングアッセイと組み合わせて使用することができる(Arkin and Yourvan, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7811-7815;Delgrave et al., 1993, Protein Engineering 6(3):327-331)。
本発明の別の態様は、本発明のタンパク質に対する抗体に関する。好ましい実施形態において、抗体は、マーカータンパク質又はそのフラグメントに特異的に結合する。本発明で互換的に使用される「抗体」及び「抗体群」という用語は、免疫グロブリン分子、並びに免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分を含むそのフラグメント及び誘導体をいう(すなわち、このような部分は、マーカータンパク質、例えば、マーカータンパク質のエピトープなどの抗原と特異的に結合する抗原結合部位を含む)。本発明のタンパク質に特異的に結合する抗体は、タンパク質と結合するが、サンプル、例えば、天然にタンパク質を含む生体サンプル中の他の分子とは実質的に結合しない抗体である。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例には、一本鎖抗体(scAb)、F(ab)及びF(ab’)2フラグメントが含まれるがこれらに限定されない。
本発明の単離されたタンパク質又はそのフラグメントは、抗体を生成するための免疫原として使用することができる。全長タンパク質が使用でき、又は代替的には、本発明は、免疫原としての使用のための抗原性ペプチド断片を提供する。本発明のタンパク質の抗原性ペプチドは、本発明のタンパク質の1つのアミノ酸配列の少なくとも8(好ましくは、10、15、20、又は30以上の)アミノ酸残基を含み、ペプチドに対して惹起された抗体がそのタンパク質と特異的免疫複合体を形成するように、タンパク質の少なくとも1つのエピトープを包含する。抗原性ペプチドに包含される好ましいエピトープは、タンパク質の表面に位置する領域、例えば、親水性領域である。疎水性配列分析、親水性配列分析、又は同様の分析は、親水性領域を同定するために使用できる。好ましい実施形態において、単離されたマーカータンパク質又はそのフラグメントは免疫原として使用される。
免疫原は、典型的には、ウサギ、ヤギ、マウス、又は他の哺乳動物若しくは脊椎動物などの適切な(すなわち、免疫適格)被験体を免疫することによって抗体を調製するために使用される。適切な免疫原性調製物は、例えば、組換え的に発現されるか又は化学合成されたタンパク質又はペプチドを含むことができる。この調製物は、フロイント完全若しくは不完全アジュバント又は同様の免疫刺激剤などのアジュバントをさらに含むことができる。好ましい免疫原組成物は、例えば、本発明のタンパク質の組換え発現のために非ヒト宿主細胞を使用して作製された免疫原組成物などの他のヒトタンパク質を含まないものである。このような様式で、得られる抗体組成物は、本発明のタンパク質以外のヒトタンパク質の結合が減少しているか、又はその結合がない。
本発明は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を提供する。本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、特定のエピトープと免疫反応することが可能である1つのみの種の抗原結合部位を含む抗体分子の集団をいう。好ましいポリクローナル及びモノクローナル組成物は、本発明のタンパク質に対する抗体について選択されているものである。特に好ましいポリクローナル及びモノクローナル抗体調製物は、マーカータンパク質又はそのフラグメントに対する抗体のみを含むものである。
ポリクローナル抗体は、免疫原として本発明のタンパク質を用いて適切な被験体を免疫することによって調製することができる。免疫された被験体における抗体力価は、固定化ポリペプチドを使用する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いるなどの標準的な技術によって経時的にモニターすることができる。免疫後の適切な時点において、例えば、特定の抗体力価が最高であるとき、抗体産生細胞を被験体から得て、標準的な技術、例えば、Kohler and Milstein (1975) Nature 256:495-497によってもともと記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al., 1983, Immunol. Today 4:72を参照のこと)、EBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al., pp. 77-96, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., 1985を参照のこと)、又はトリオーマ技術によってモノクローナル抗体(mAb)を調製するために使用することができる。ハイブリドーマを作製するための技術は周知である(一般的には、Current Protocols in Immunology, Coligan et al.編, John Wiley & Sons, New York, 1994を参照のこと)。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば、標準的なELISAアッセイを使用して、目的のポリペプチドと結合する抗体について、ハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることによって検出される。
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製することの代替として、本発明のタンパク質に対するモノクローナル抗体は、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)を目的のポリペプチドを用いてスクリーニングすることによって同定及び単離することができる。ファージディスプレイライブラリーを作製及びスクリーニングするためのキットは市販されている(例えば、the Pharmacia Recombinant Phage Antibody System, カタログ番号27-9400-01;及びthe Stratagene SurfZAP Phage Display Kit, カタログ番号240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリーを作製及びスクリーニングする際の使用のために特に適格である方法及び試薬の例は、例えば、米国特許第5,223,409号;PCT公開番号WO92/18619;PCT公開番号WO91/17271;PCT公開番号WO92/20791;PCT公開番号WO92/15679;PCT公開番号WO93/01288;PCT公開番号WO92/01047;PCT公開番号WO92/09690;PCT公開番号WO90/02809;Fuchs et al. (1991) Bio/Technology 9:1370-1372;Hay et al. (1992) Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85;Huse et al. (1989) Science 246:1275-1281;Griffiths et al. (1993) EMBO J. 12:725-734に見い出すことができる。
本発明は、本発明のタンパク質と特異的に結合する組換え抗体もまた提供する。好ましい実施形態において、組換え抗体は、マーカータンパク質又はそのフラグメントと特異的に結合する。組換え抗体には、ヒト部分及び非ヒト部分の両方を含むキメラ及びヒト化モノクローナル抗体、一本鎖抗体、並びに多特異性抗体が挙げられるがこれらに限定されない。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種から誘導されている分子、例えば、マウスmAbから誘導された可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有するものである。(例えば、Cabilly et al.,米国特許第4,816,567号;及びBoss et al.,同第4,816,397号を参照のこと、これらは、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。一本鎖抗体は1つの抗原結合部位を有し、単一のポリペプチドからなる。これらは、当該分野において公知の技術、例えば、Ladner et. al 米国特許第4,946,778号(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる);Bird et al., (1988) Science 242:423-426;Whitlow et al., (1991) Methods in Enzymology 2:1-9;Whitlow et al., (1991) Methods in Enzymology 2:97-105;及びHuston et al., (1991) Methods in Enzymology Molecular Design and Modeling: Concepts and Applications 203:46-88に記載されている方法を使用して製造することができる。多特異性抗体は、異なる抗原に特異的に結合する少なくとも2つの抗原結合部位を有する抗体分子である。このような分子は、当該分野において公知の技術、例えば、Segal,米国特許第4,676,980号(この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる);Holliger et al., (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448;Whitlow et al., (1994) Protein Eng. 7:1017-1026;及び米国特許第6,121,424号に記載されている方法を使用して製造することができる。
ヒト化抗体は、非ヒト種からの1つ以上の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク領域を有する、非ヒト種からの抗体分子である(例えば、Queen,米国特許第5,585,089号を参照のこと、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。ヒト化モノクローナル抗体は、当該分野において公知である組換えDNA技術によって、例えば、PCT公開番号WO87/02671;欧州特許出願184,187;欧州特許出願171,496;欧州特許出願173,494;PCT公開番号WO86/01533;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願125,023;Better et al. (1988) Science 240:1041-1043;Liu et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439-3443;Liu et al. (1987) J. Immunol. 139:3521-3526;Sun et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218;Nishimura et al. (1987) Cancer Res. 47:999-1005;Wood et al. (1985) Nature 314:446-449;及びShaw et al. (1988) J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559);Morrison (1985) Science 229:1202-1207;Oi et al. (1986) Bio/Techniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jones et al. (1986) Nature 321:552-525;Verhoeyan et al. (1988) Science 239:1534;及びBeidler et al. (1988) J. Immunol. 141:4053-4060に記載されている方法を使用して製造することができる。
より具体的には、ヒト化抗体は、例えば、内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することは不可能であるが、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを使用して製造することができる。トランスジェニックマウスは、選択された抗原、例えば、本発明のマーカーに対応するポリペプチドのすべて又は一部を用いて、通常の様式で免疫される。抗原に対するモノクローナル抗体は、慣用のハイブリドーマ技術を使用して得ることができる。トランスジェニックマウスによって保持されるヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再配列され、続いて、クラススイッチング及び体細胞変異を受ける。したがって、このような技術を使用すると、治療的に有用なIgG、IgA、及びIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を産生するためのこの技術の概説のために、以下を参照のこと:Lonberg and Huszar (1995) Int. Rev. Immunol. 13:65-93)。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を製造するためのこの技術、並びにこのような抗体を産生するためのプロトコルのより詳細な議論については、例えば、米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,661,016号;及び米国特許第号5,545,806号を参照のこと。加えて、Abgenix, Inc.(Freemont, CA)などの企業は、上記に記載されたものと類似の技術を使用して、選択された抗原に対するヒト抗体を提供することに従事している。
選択されたエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「ガイド選択」と呼ばれる技術を使用して生成することができる。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体は、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択をガイドするために使用される(Jespers et al., 1994, Bio/technology 12:899-903)。
本発明の抗体は、産生(例えば、被験体の血液若しくは血清から)又は合成の後で単離でき、さらに周知の技術によって精製してもよい。例えば、IgG抗体は、プロテインAクロマトグラフィーを使用して精製することができる。本発明のタンパク質に特異的な抗体は、選択でき(例えば、部分精製でき)、又は、例えば、アフィニティークロマトグラフィーによって精製できる。例えば、組換え発現され、精製された(又は部分精製された)本発明のタンパク質は、上記のように産生され、例えば、クロマトグラフィーカラムなどの固体支持体に共有結合的又は非共有結合的に結合される。次いで、カラムは、非常の多くの異なるエピトープに対する抗体を含むサンプルからの本発明のタンパク質に特異的な抗体をアフィニティー精製するために使用でき、それによって、実質的に精製された抗体組成物、すなわち、夾雑する抗体を実質的に含まないものを生成する。この状況において、実質的に精製された抗体組成物によって、抗体サンプルが、本発明の所望のタンパク質のエピトープ以外のエピトープに対する夾雑抗体の最大で30%(乾燥重量)のみを含み、好ましくは、サンプルの最大で20%、なおより好ましくは最大で10%、及び最も好ましくは、最大で5%(乾燥重量)が夾雑抗体であることが意味される。精製された抗体組成物とは、組成物中の少なくとも99%の抗体が本発明の所望のタンパク質に対するものであることを意味する。
好ましい実施形態において、本発明の実質的に精製された抗体は、シグナルペプチド、分泌配列、細胞外ドメイン、本発明のタンパク質の膜貫通ドメイン又は細胞質ドメイン又は細胞膜に特異的に結合してもよい。特に好ましい実施形態において、本発明の実質的に精製された抗体は、本発明のタンパク質のアミノ酸配列の分泌配列又は細胞外ドメインに特異的に結合する。より好ましい実施形態において、本発明の実質的に精製された抗体は、マーカータンパク質のアミノ酸配列の分泌配列又は細胞外ドメインに特異的に結合する。
本発明のタンパク質に対する抗体は、アフィニティークロマトグラフィー又は免疫沈降などの標準的な技術によってタンパク質を単離するために使用することができる。さらに、このような抗体は、マーカータンパク質又はそのフラグメントを(例えば、細胞溶解物又は細胞上清中で)検出するために使用して、マーカーの発現レベル及びパターンを評価することができる。抗体は、例えば、所定の処置レジメンの有効性を決定するために、臨床検査手順の一部として、組織又は体液中(例えば、肉腫関連の体液中)のタンパク質レベルをモニターするために診断的に使用することもできる。検出は、検出可能な物質に結合された本発明の抗体を含む、抗体誘導体の使用によって容易にできる。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生体発光物質、及び放射性物質が含まれる。適切な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ;適切な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが含まれ;適切な蛍光物質の例にはウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライド、又はフィコエリトリンが含まれ;発光物質の例にはルミノールが含まれ;生体発光物質の例にはルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが含まれ、そして適切な放射性物質の例には125I、131I、35S、又は3Hが含まれる。
本発明の抗体は、癌を処置する際の治療剤としてもまた使用されてもよい。好ましい実施形態において、本発明の完全ヒト抗体は、ヒト癌患者、特に癌を有する患者の治療的処置のために使用される。別の好ましい実施形態において、マーカータンパク質又はそのフラグメントに特異的に結合する抗体は、治療的処置のために使用される。さらに、このような治療用抗体は、細胞毒素などの治療部分、治療剤、又は放射性金属イオンにコンジュゲートされた、抗体誘導体又はイムノトキシン含有抗体であってもよい。細胞毒素又は細胞毒性剤には、細胞に対して有害な任意の薬剤が含まれる。その例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、並びにこれらのアナログ又はホモログが含まれる。治療剤には、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル デカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、並びに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)が含まれるがこれらに限定されない。
薬物部分が古典的な化学療法剤に限定されるように構築されているわけではないので、本発明のコンジュゲート抗体は、所定の生物学的応答を修飾するために使用することができる。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を保有するタンパク質又はポリペプチドであり得る。このようなタンパク質は、例えば、リボソーム阻害タンパク質(Better et al.,米国特許第6,146,631号を参照のこと、この開示は、その全体が本明細書に組み込まれる)、アブリン、リシンA、シュードモナスエキソトキシン、若しくはジフテリア毒素などの毒素;腫瘍壊死因子、αインターフェロン、βインターフェロン、神経増殖因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲン活性化因子などのタンパク質;又は、例えば、リンホカイン、インターロイキン-1(「IL-1」)、インターロイキン-2(「IL-2」)、インターロイキン-6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)、若しくは他の増殖因子などの生物反応修飾物質を含んでもよい。
このような治療部分を抗体にコンジュゲートするための技術は周知であり、例えば、Arnon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (編), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstrom et al., "Antibodies For Drug Delivery", Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (編), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (編), pp. 475-506 (1985);"Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy", Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (編), pp. 303-16 (Academic Press 1985);及びThorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates", Immunol. Rev., 62:119-58 (1982)を参照のこと。
したがって、1つの態様において、本発明は、実質的に精製された抗体、抗体フラグメント、及び誘導体を提供し、これらのすべてが、本発明のタンパク質、好ましくは、マーカータンパク質に特異的に結合する。種々の実施形態において、実質的に精製された本発明の抗体、又はそのフラグメント、又はその誘導体は、ヒト抗体、非ヒト抗体、キメラ抗体、及び/又はヒト化抗体であり得る。別の態様において、本発明は、非ヒト抗体、抗体フラグメント、及び誘導体を提供し、これらのすべてが、本発明のタンパク質、好ましくは、マーカータンパク質に特異的に結合する。このような非ヒト抗体は、ヤギ、マウス、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ウサギ、又はラットの抗体であり得る。あるいは、本発明の非ヒト抗体は、キメラ抗体及び/又はヒト化抗体であり得る。加えて、本発明の非ヒト抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であり得る。なおさらなる態様において、本発明は、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、及び誘導体を提供し、これらのすべてが、本発明のタンパク質、好ましくは、マーカータンパク質に特異的に結合する。このモノクローナル抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び/又は非ヒト抗体であり得る。
本発明は、検出可能な物質にコンジュゲートされた本発明の抗体、及び使用のための説明書を含むキットもまた提供する。本発明のなお別の態様は、本発明の抗体を含む医薬組成物である。1つの実施形態において、医薬組成物は、本発明の抗体及び製薬的に許容され得る担体を含む。
3.予測医学
本発明は、診断アッセイ、予測アッセイ、薬理ゲノミクス、及び臨床的な痕跡のモニターが予測(予後診断)目的のために使用され、それによって個体を予防的に処置する、予測医学の分野に関する。したがって、本発明の1つの態様は、個体が肉腫を発症するリスクがあるか否かを決定するために、1種以上のマーカータンパク質又は核酸の発現レベルを決定するための診断アッセイに関する。このようなアッセイは、予後診断又は予測目的のために使用され、それによって、障害の発症の前に個体を予防的に処置することができる。
本発明のなお別の態様は、臨床試験における本発明のマーカーの発現又は活性に対する薬剤(例えば、肉腫を阻害するため、又は任意の他の障害を処置若しくは予防するためのいずれかのために投与される薬物又は他の化合物)の影響を{すなわち、このような処置が有するかもしれないあらゆる発癌効果を理解するために}モニターすることに関する。これら及び他の薬剤は、以下のセクションにさらに詳細に記載されている。
A.診断アッセイ
生体サンプル中のマーカータンパク質又は核酸の存在又は非存在を検出するための例示的な方法には、試験被験体から生体サンプル(例えば、肉腫に関連する体液又は組織サンプル)を入手すること、及びポリペプチド又は核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA、又はcDNA)を検出可能な化合物又は薬剤と生体サンプルを接触させることが含まれる。したがって、本発明の検出方法は、例えば、生体サンプル中でインビトロで及びインビボで、mRNA、タンパク質、cDNA、又はゲノムDNAを検出するために使用することができる。例えば、mRNAの検出のためのインビトロ技術には、ノーザンハイブリダイゼーション及びin situハイブリダイゼーションが含まれる。マーカータンパク質の検出のためのインビトロ技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈殿、及び免疫蛍光が含まれる。ゲノムDNAの検出のためのインビトロ技術には、サザンハイブリダイゼーションが含まれる。mRNAの検出のためのインビボ技術には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ノーザンハイブリダイゼーション、及びin situハイブリダイゼーションが含まれる。さらに、マーカータンパク質の検出のためのインビボ技術には、タンパク質又はそのフラグメントに対する標識された抗体を被験体に導入することが含まれる。例えば、抗体は放射性マーカーで標識でき、被験体におけるその存在及び位置が標準的な画像化技術によって検出できる。
このような診断及び予測アッセイの一般的な原理には、マーカー及びプローブが相互作用及び結合することを可能にするために適切な条件下でかつ十分な時間にわたり、マーカーを含んでいる可能性のあるサンプル又は反応混合物及びプローブを調製し、したがって、反応混合物中で除去及び/又は検出ができる複合体を形成することが含まれる。これらのアッセイは、種々の方法で実施可能である。
例えば、このようなアッセイを実施するための1つの方法には、基板ともまた呼ばれる固相支持体にマーカー又はプローブを固着させること、及び固相に固着された標的マーカー/プローブ複合体を反応の最後に検出することが含まれる。このような方法の1つの実施形態において、マーカーの存在及び/又は濃度についてアッセイされる被験体からのサンプルは、キャリア又は固相支持体に固着できる。別の実施形態において、逆の状況が可能であり、ここでは、プローブは固相に固着でき、被験体からのサンプルはアッセイの固着されていない成分として反応させることができる。
アッセイ成分を固相に固着させるための多くの確立された方法が存在する。これらには、ビオチン及びストレプトアビジンのコンジュゲーションを通して固定化されているマーカー又はプローブ分子が含まれるがこれらに限定されない。このようなビオチン化アッセイ成分は、当該分野において公知である技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, IL)を使用してビオチン-NHS(N-ヒドロキシ-スクシンイミド)から調製され、そしてストレプトアビジンコートされた96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定化できる。特定の実施形態において、固定化アッセイ成分を有する表面は、前もって調製され、保存することができる。
このようなアッセイのための他の適切なキャリア又は固相支持体には、マーカー又はプローブが属する分子のクラスに結合可能な任意の物質が含まれる。周知の支持体又はキャリアには、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然及び修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩、及びマグネタイトが挙げられるがこれらに限定されない。
上記に言及されたアプローチを用いてアッセイを実施するために、固定化されていない成分は、第2の成分が固着されている固相に加えられる。反応が完了した後で、いかなる形成された複合体も固相上に固定化されているままであるように、複合体形成していない成分は(例えば、洗浄によって)除去されてもよい。固相に固着されたマーカー/プローブ複合体の検出は、本明細書に概説されている多数の方法において達成することができる。
好ましい実施形態において、プローブは、これが固着されていないアッセイ成分であるとき、検出及びアッセイの読みとりの目的のために、直接的又は間接的のいずれかで、本明細書において議論されており、かつ当業者に周知である検出可能な標識で標識することができる。
例えば、蛍光エネルギー移動の技術を利用することにより(例えば、Lakowicz et al.,米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulos, et al.,米国特許第4,868,103号を参照のこと)、いずれの成分(マーカー又はプローブ)のさらなる操作又は標識もなしで、マーカー/プローブ複合体形成を直接的に検出することもまた可能である。第1の「ドナー」分子上の蛍光団標識は、適切な波長の入射光を用いる励起の際に、その放出される蛍光エネルギーが第2の「アクセプター」分子上の蛍光標識によって吸収され、これは、次には吸収されたエネルギーに起因して蛍光を発することが可能であるように選択される。あるいは、「ドナー」タンパク質分子は、トリプトファン残基の天然蛍光エネルギーを単に利用してもよい。「アクセプター」分子標識が「ドナー」のそれから区別され得るように、異なる波長の光を発光する標識が選択される。標識間のエネルギー移動の効率は分子を隔てている距離と関係するので、分子間の空間的な関連性が評価できる。結合が分子間に存在する状況において、アッセイにおける「アクセプター」分子標識の蛍光発光は最大であるべきである。FET結合事象は、当該分野において周知である標準的なフルオロメトリー検出手段を通して(例えば、フルオロメーターを使用して)首尾よく測定することができる。
別の実施形態において、プローブがマーカーを認識する能力の決定は、いずれのアッセイ成分(プローブ又はマーカー)も標識することなく、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)を使用することによって達成することができる(例えば、Sjolander, S. and Urbaniczky, C., 1991, Anal. Chem. 63:2338-2345及びSzabo et al., 1995, Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699-705)。本明細書で使用される場合、「BIA」又は「表面プラズモン共鳴」は、相互作用する因子のいずれも標識することなく、リアルタイムで生物特異的相互作用を研究するための技術である(例えば、BIAcore)。結合表面における質量の変化(結合事象を示す)は、表面の近くの光の屈折率の変化を生じ(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学的現象)、生物学的分子間のリアルタイム反応の指標として使用できる検出可能なシグナルを生じる。
あるいは、別の実施形態において、類似の診断及び予測アッセイは、液相中の溶質としてマーカー及びプローブを用いて実施することができる。このようなアッセイにおいて、複合体形成したマーカー及びプローブは、示差的遠心分離、クロマトグラフィー、電気泳動、及び免疫沈降を含むがこれらに限定されない多数の標準的な技術のいずれかによって、複合体形成していない成分から分離される。示差的遠心分離において、マーカー/プローブ複合体は、それらの異なるサイズ及び密度に基づく複合体の異なる沈降平衡に起因して、一連の遠心工程を通して、複合体形成していないアッセイ成分から分離されてもよい(例えば、Rivas, G., and Minton, A.P., 1993, Trends Biochem Sci. 18(8):284-7)を参照のこと。標準的なクロマトグラフィー技術もまた、複合体形成した分子を複合体形成していない分子から分離するために利用されてもよい。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィーは分子をサイズに基づいて、カラム様式での適切なゲルろ過樹脂の利用を通して分離し、例えば、相対的に大きな複合体は、相対的に小さな複合体形成していない成分から分離されてもよい。同様に、複合体形成していない成分と比較した場合にマーカー/プローブ複合体の相対的に異なる電荷特性は、例えば、イオン交換クロマトグラフィー樹脂の利用を通して、複合体形成していない成分から複合体を区別するように利用されてもよい。このような樹脂及びクロマトグラフィー技術は、当業者に周知である(例えば、Heegaard, N.H., 1998, J. Mol. Recognit. Winter 11(1-6):141-8;Hage, D.S., and Tweed, S.A. J Chromatogr B Biomed Sci Appl 1997 Oct 10;699(1-2):499-525を参照のこと)。ゲル電気泳動もまた、複合体形成したアッセイ成分を未結合の成分から分離するために利用されてもよい(例えば、Ausubel et al.編, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1987-1999を参照のこと)。この技術において、タンパク質又は核酸複合体は、例えば、サイズ又は電荷に基づいて分離される。電気泳動プロセスの間の結合相互作用を維持するために、典型的には、非変性ゲルマトリックス材料及び還元剤の非存在下での条件が好ましい。特定のアッセイ及びその成分に対して適切な条件は当業者に周知である。
特定の実施形態において、マーカーmRNAのレベルは、当該分野において公知である方法を使用して、生体サンプル中で、in situ様式とインビトロ様式の両方によって決定することができる。「生体サンプル」という用語は、被験体から単離された組織、細胞、生物学的流体、及びそれらの単離物、並びに被験体の中に存在する組織、細胞、及び流体を含むことが意図される。多くの発現検出方法は単離されたRNAを使用する。インビトロ方法のために、mRNAの単離について選択されない任意のRNA単離技術が、細胞からのRNAの精製のために利用できる(例えば、Ausubel et al.編, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York 1987-1999を参照のこと)。加えて、多くの組織サンプルが、例えば、Chomczynski(1989,米国特許第4,843,155号)の1段階RNA単離プロセスなどの当業者に周知の技術を使用して容易に処理することができる。
単離されたmRNAは、サザン又はノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応分析、及びプローブアレイを含むがこれらに限定されない、ハイブリダイゼーション又は増幅アッセイにおいて使用できる。mRNAレベルの検出のための1つの好ましい診断方法は、検出される遺伝子によってコードされるmRNAにハイブリダイズできる核酸分子(プローブ)と、単離されたmRNAを接触させることを含む。核酸プローブは、例えば、全長cDNA又はその一部、例えば、少なくとも7、15、30、50、100、250、又は500ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドであり得、本発明のマーカーをコードするmRNA又はゲノムDNAにストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするために十分であり得る。本発明の診断アッセイにおける使用のための他の適切なプローブは本明細書に記載される。mRNAのプローブとのハイブリダイゼーションは、対象のマーカーが発現されていることを示す。
1つの形式において、例えば、アガロースゲル上で単離されたmRNAを泳動すること、及びmRNAをゲルからニトロセルロースなどのメンブレンに転写することによって、mRNAは、固体表面に固定化され、プローブと接触させる。代替の形式において、プローブは固体表面に固定化され、mRNAは、例えば、Affymetrix遺伝子チップアレイの中でプローブと接触させる。当業者は、本発明のマーカーによってコードされるmRNAのレベルを検出する際の使用のために公知のmRNA検出方法を容易に適合させることができる。
サンプル中のmRNAマーカーのレベルを決定するための代替方法には、例えば、RT-PCR(Mullis, 1987,米国特許第4,683,202号に示されている実験の実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:189-193)、自己持続配列複製(Guatelli et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878)、転写増幅系(Kwoh et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173-1177)、Q-βレプリカーゼ(Lizardi et al., 1988, Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardi et al.,米国特許第5,854,033号)、又は任意の他の核酸増幅方法による核酸増幅のプロセス、続いて当業者に公知の技術を使用する、増幅された分子の検出が含まれる。核酸分子が非常に少ない数で存在する場合に、これらの検出スキームは、このような分子の検出のために特に有用である。本明細書で使用される場合、増幅プライマーは、1つの遺伝子(それぞれプラス鎖及びマイナス鎖又は逆もまた同様)の5'又は3'領域にアニールすることができる1対の核酸分子であると定義され、その間に短い領域を含む。一般的に、増幅プライマーは、約10〜30ヌクレオチド長であり、約50〜200ヌクレオチド長の領域に隣接する。適切な条件下でかつ適切な試薬を用いて、このようなプライマーは、プライマーによって隣接されるヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能にする。
in situ方法のために、mRNAは、検出の前に単離される必要はない。このような方法において、細胞又は組織サンプルは、公知の組織学的方法を使用して調製/処理される。次いで、サンプルを、支持体、典型的には、ガラススライド上に固定化し、次いで、マーカーをコードするmRNAにハイブリダイズできるプローブと接触させる。
マーカーの絶対的な発現レベルに基づいて決定を行うための代替として、決定は、標準化されたマーカーの発現レベルに基づいてもよい。発現レベルは、マーカーではない遺伝子、例えば、構成的に発現されるハウスキーピング遺伝子の発現に対してマーカーの発現を比較することによって、マーカーの絶対的な発現レベルを補正することによって標準化される。標準化のための適切な遺伝子には、アクチン遺伝子又は上皮細胞特異的遺伝子などのハウスキーピング遺伝子が挙げられる。この標準化は、1つのサンプル、例えば、患者サンプル中の発現レベルの、別のサンプル、例えば、非癌性サンプルとの比較、又は異なる供給源からのサンプル間の比較を可能にする。
あるいは、発現レベルは、相対的な発現レベルとして提供できる。マーカーの相対的な発現レベルを決定するために、マーカーの発現レベルは、対象サンプルについての発現レベルの決定の前に、癌細胞単離物、好ましくは、50以上のサンプルに対して、10以上の正常単離物のサンプルについて決定される。大きな数のサンプルでアッセイされた遺伝子の各々の平均発現レベルが決定され、これは、マーカーについてのベースライン発現レベルとして使用される。次いで、試験サンプルについて決定されたマーカーの発現レベル(発現の絶対レベル)は、そのマーカーについて得られた平均発現値によって除算される。これは相対発現レベルを示す。
好ましくは、ベースライン決定において使用されるサンプルは、非癌細胞からである。細胞供給源の選択は、相対発現レベルの使用に依存する。平均発現スコアとして正常組織中で見い出された発現を使用することは、アッセイされたマーカーが(正常細胞に対して)癌特異的であるか否かを認証する際に補助となる。加えて、より多くのデータが蓄積するにつれて、平均発現値が修正でき、蓄積データに基づく改善された相対発現値を提供する。癌細胞からの発現データは、癌状態の重度をグレード決定するための手段を提供する。
本発明の別の実施形態において、マーカータンパク質が検出される。本発明のマーカータンパク質を検出するための好ましい因子は、このようなタンパク質又はそのフラグメントに結合可能な抗体、好ましくは、検出可能な標識を有する抗体である。抗体は、ポリクローナル、又はより好ましくは、モノクローナルであり得る。インタクトな抗体、又はそのフラグメント若しくは誘導体(例えば、Fab又はF(ab’)2)が使用できる。「標識された」という用語は、プローブ又は抗体に関して、プローブ又は抗体に検出可能な物質をカップリングすること(すなわち、物理的に連結すること)によるプローブ又は抗体の直接的標識、並びに直接的に標識された別の試薬との反応性によるプローブ又は抗体の間接的標識を包含することが意図される。間接的標識の例には、蛍光標識された二次抗体を使用する一次抗体の検出、及び蛍光標識されたストレプトアビジンを用いて検出できるようなビオチンを用いるDNAプローブの末端標識が含まれる。
細胞からのタンパク質は、当業者に周知である技術を使用して単離することができる。利用されるタンパク質単離方法は、例えば、Harlow and Lane(Harlow and Lane, 1988, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)に記載されているようなものであり得る。
サンプルが所定の抗体に結合するタンパク質を含むか否かを決定するために種々の形式が利用できる。このような形式の例には、エンザイムイムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタンブロット分析、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が含まれるがこれらに限定されない。当業者は、細胞が本発明のマーカーを発現するか否かを決定する際の使用のために、公知のタンパク質/抗体検出方法を容易に適合することができる。
1つの形式において、抗体又は抗体フラグメント若しくは誘導体は、発現されたタンパク質を検出するために、ウェスタンブロット又は免疫蛍光技術などの方法において使用することができる。このような用途において、抗体又はタンパク質のいずれかを固体支持体上に固定化することが一般的に好ましい。適切な固相支持体又はキャリアには、抗原又は抗体を結合可能である任意の支持体が含まれる。周知の支持体又はキャリアには、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然及び修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩、及びマグネタイトが挙げられる。
当業者は、抗体又は抗原を結合するための多くの他の適切なキャリアを知っており、本発明に伴う使用のためにこのような支持体を適合することができる。例えば、癌細胞から単離されたタンパク質は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動上で泳動でき、ニトロセルロースなどの固相支持体上に固定化できる。次いで、支持体は適切な緩衝液で洗浄され、検出可能に標識された抗体を用いる処理を行うことができる。次いで、固相支持体は、緩衝液を用いる2度目の洗浄を行い、未結合の抗体を除去できる。次いで、固体支持体上の結合した標識の量が慣用的な手段によって検出することができる。
本発明は、生体サンプル中のマーカータンパク質又は核酸の存在を検出するためのキットもまた包含する。このようなキットは、被験体が肉腫に罹患しているか、又はそれを発症する高リスクがあるかを決定するために使用することができる。例えば、このキットは、生体サンプル中のマーカータンパク質又は核酸を検出可能な標識化合物又は薬剤、及びサンプル中のタンパク質又はmRNAの量を決定するための手段を含むことができる(例えば、タンパク質若しくはそのフラグメントと結合する抗体、又はタンパク質をコードするDNA若しくはmRNAに結合するオリゴヌクレオチドプローブ)。キットは、そのキットを使用して得られる結果を解釈するための説明書もまた含むことができる。
抗体ベースのキットについては、そのキットは例えば、以下を含んでもよい:(1)マーカータンパク質に結合する第1の抗体(例えば、固体支持体に結合されている);及び、任意に、(2)タンパク質又は第1の抗体のいずれかに結合し、検出可能な標識にコンジュゲートされている第2の異なる抗体。
オリゴヌクレオチドベースのキットについては、このキットは、例えば、以下を含んでもよい:(1)マーカータンパク質をコードする核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、例えば、検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド、又は(2)マーカー核酸分子を増幅するために有用な1対のプライマー。このキットは、例えば、緩衝剤、保存剤、又はタンパク質安定剤もまた含むことができる。このキットは、検出可能な標識を検出するために必要な成分(例えば、酵素又は基質)をさらに含むことができる。このキットは、アッセイでき、試験サンプルと比較できる対照サンプル又は一連の対照サンプルもまた含むことができる。キットの各成分は個々の容器の中に入れることができ、キットを使用して実施されたアッセイの結果を解釈するための説明書とともにすべての様々な容器が単一のパッケージの中にあることができる。
B.薬理ゲノミクス
本発明のマーカーは、薬理ゲノミクスマーカーとしてもまた有用である。本明細書で使用される場合、「薬理ゲノミクスマーカー」とは、目的の生化学的マーカーであり、その発現レベルは患者の特定の臨床薬物応答又は感受性と相関する(例えば、McLeod et al. (1999) Eur. J. Cancer 35(12): 1650-1652を参照)。薬理ゲノミクスマーカー発現の存在又は量は、患者の予測される応答に関連し、より具体的には、特定の薬物又は薬物のクラスを用いる治療に対する患者の肉腫に関連する。患者における1つ以上の薬理ゲノミクスマーカーの発現の存在又は量を評価することによって、患者にとって最も適切であり、又はより大きな程度の成功を有すると予測される薬物治療が選択され得る。例えば、患者における特定の腫瘍マーカーによってコードされるRNA又はタンパク質の存在又は量に基づいて、患者において存在する可能性がある特定の腫瘍の処置のために最適化される薬物又は一連の処置が選択されてもよい。それゆえに、薬理ゲノミクスマーカーの使用は、異なる薬物又はレジメンを試すことなく、各々の癌患者のために最も適切な処置を選択又は設計することを可能にする。
薬理ゲノミクスの別の態様は、身体が薬物に対して作用する方法を変更する遺伝的条件を扱う。これらの薬理ゲノミクス条件は、まれな欠損又は多型のいずれかとして起こる可能性がある。例えば、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)欠損は一般的な遺伝性酵素病であり、ここでは、主要な臨床的合併症は、酸化性薬物(抗マラリア剤、スルホンアミド、鎮痛剤、ニトロフラン)の摂取及びソラマメの消費後の溶血である。
例示的な実施形態として、薬物代謝酵素の活性は、薬物作用の強度と期間の両方の主要な決定要因である。薬物代謝酵素(例えば、N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)並びにシトクロムP450酵素CYP2D6及びCYP2C19)の遺伝子多型の発見は、ある患者がなぜ予測された薬物効果を示さないか、又は標準的かつ安全な用量の薬物を摂取後に過剰となった薬物応答及び深刻な毒性を示すことについての説明を提供する。これらの多型は、集団中で2つの表現型、すなわち過剰な代謝者(extensive metabolizer(EM))及び乏しい代謝者(poor metabolizer(PM))として表現される。PMの有病率は異なる集団の間で異なる。例えば、CYP2D6をコードする遺伝子は高度に多型性であり、いくつかの変異がPM中で同定されており、これらはすべて、機能的CYP2D6の非存在に導く。CYP2D6及びCYP2C19の乏しい代謝者は、彼らが標準用量を受容するときに、過剰となった薬物応答及び副作用を極めて頻繁に経験している。代謝物が活性治療部分である場合、そのCYP2D6によって形成される代謝物モルヒネによって媒介されるコデインの鎮痛効果について実証されるように、PMは治療的応答を示さない。他の極端なものは、標準用量に応答しないいわゆる超迅速代謝者である。最近、超迅速代謝の分子的基礎がCYP2D6遺伝子増幅に起因して同定された。
したがって、個体における本発明のマーカーの発現レベルが決定でき、それによって、個体の治療的又は予防的処置のために適切な薬剤を選択する。加えて、薬理ゲノミクス研究は、個体の薬物応答性表現型の同定に対して、薬物代謝酵素をコードする多型性対立遺伝子の遺伝子型決定を適用するために使用することができる。この知見は、投薬又は薬物選択に適用されるとき、有害な反応又は治療の失敗を回避でき、したがって、本発明のマーカーの発現の調節因子を用いて被験体を治療するときに、治療的又は予防的な有効性を増強する。
C.臨床試験のモニター
本発明のマーカーの発現レベルに対する作用物(例えば薬物化合物)の影響をモニターすることは、基礎的な薬物スクリーニングにおいてのみならず、臨床試験においてもまた適用できる。例えば、作用物がマーカー発現に影響を与えるための有効性は、肉腫についての処置を受ける被験体の臨床試験においてモニターされる。好ましい実施形態において、本発明は、(i)作用物の投与の前に被験体から投与前サンプルを得る工程;(ii)投与前サンプルにおける1種以上の選択された本発明のマーカーの発現レベルを検出する工程;(iii)被験体からの1種以上の投与後サンプルを得る工程;(iv)投与後サンプル中のマーカーの発現レベルを検出する工程;(v)投与前サンプルのマーカーの発現レベルを、投与後サンプル中のマーカーの発現レベルと比較する工程;及び(vi)それに応じて、被験体への作用物の投与を変更する工程を包含する、作用物(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、又は他の薬物候補)を用いる被験体の治療の有効性をモニターするための方法を提供する。例えば、処置の過程の間のマーカー遺伝子の発現の増加は、非効果的な投薬量及び投薬量の増加が望ましいことを示し得る。逆に、マーカー遺伝子の発現の減少は、有効な処置及び投薬量を変更する必要がないことを示し得る。
D.アレイ
本発明は、本発明のマーカーを含有するアレイもまた含む。アレイは、アレイ中の1種以上の遺伝子の発現をアッセイするために使用することができる。1つの実施形態において、アレイは、アレイ中の遺伝子の組織特異性を確実にするために組織中の遺伝子発現をアッセイするために使用できる。この様式において、約7600個までの遺伝子が発現について同時にアッセイできる。このことは、1つ以上の組織において特異的に発現される一連の遺伝子を示すプロフィールが開発されることを可能にする。
このような定性的な決定に加えて、本発明は、遺伝子発現の定量を可能にする。したがって、組織特異性のみならず、組織における一連の遺伝子の発現レベルもまた確認可能である。したがって、遺伝子は、それらの組織発現それ自体及びその組織中での発現レベルに基づいてグループ分けできる。これは、例えば、組織の間又は組織の中で遺伝子発現の関連性を確認する際に有用である。したがって、1つの組織は摂動する可能性があり、第2の組織中での遺伝子発現に対する影響を決定することができる。この状況において、生物学的刺激に応答した、1つの細胞型の別の細胞型に対する影響が決定できる。このような決定は、例えば、遺伝子発現レベルにおける細胞-細胞相互作用の影響を知るために有用である。薬剤が1つの細胞型を処置するために治療的に投与されるが、別の細胞型に望ましくない影響を有する場合、本発明は、望ましくない影響の分子的基礎を決定するためのアッセイを提供し、したがって、反対に作用する薬剤を同時投与し、又はさもなくば望ましくない影響を処置するための機会を提供する。同様に、単一の細胞型の中でさえ、望ましくない生物学的影響は分子レベルにおいて決定できる。したがって、標的遺伝子以外の発現に対する薬剤の影響は、確認され、打ち消されることができる。
別の実施形態において、アレイは、アレイ中の1種以上の遺伝子の発現の時間経過をモニターするために使用できる。このことは、本明細書に開示されるような種々の生物学的状況において、例えば、肉腫の発症、肉腫の進行、及び肉腫と関連する細胞形質転換のようなプロセスにおいて行われる。
アレイは、同じ細胞又は異なる細胞における、1つの遺伝子の発現の他の遺伝子の発現に対する有効性を確認するためにもまた有用である。これは、例えば、最終的な又は下流の標的が調節できない場合に、治療的介入のために代わりの分子標的の選択を提供する。
アレイは、正常細胞及び異常細胞における1つ以上の遺伝子の示差的な発現パターンを確認するためにもまた有用である。これは、診断又は治療的介入のための分子標的として働くことができる一連の遺伝子を提供する。
VII.サンプルを得るための方法
本発明の方法において有用なサンプルには、本発明のマーカーを発現する任意の組織、細胞、生検、又は体液サンプルが挙げられる。1つの実施形態において、サンプルは、組織、細胞、全血、血清、血漿、口腔こすりとり物(buccal scrape)、唾液、脳脊髄液、尿、糞便、又は気管支肺胞洗浄液であり得る。好ましい実施形態において、組織サンプルは、肉腫サンプルである。
身体サンプルは、例えば、生検の使用、又は一定の領域を掻爬若しくはスワブすること、又は体液を吸引するために針を使用することを含む、当該分野において公知である種々の技術によって被験体から得ることができる。種々の体液サンプルを収集するための方法は当該分野において周知である。
本発明のマーカーを検出及び定量するために適切な組織サンプルは、当業者に公知である方法にしたがって、更新され、凍結され、又は固定されてもよい。適切な組織サンプルは、好ましくは、さらなる分析のために、切片化され、顕微鏡スライド上に配置される。あるいは、固形サンプル、すなわち、組織サンプルは、可溶化及び/又はホモジナイズされ、続いて、可溶性抽出物と同様に分析されてもよい。
1つの実施形態において、新鮮に得られた生検サンプルは、例えば、液体窒素又はジフルオロジクロロメタンを使用して凍結される。凍結サンプルは、例えば、OCTを使用する切片化のためにマウントされ、クリオスタット中で連続的に切片化される。連続切片は、ガラス顕微鏡スライド上で収集される。免疫組織化学染色のために、切片がスライドに貼り付くことを確実にするために、スライドは、例えば、クロム-ミョウバン、ゼラチン、又はポリ-L-リジンでコートされてもよい。別の実施形態において、サンプルは、切片化の前に固定及び包埋される。例えば、組織サンプルは、例えば、ホルマリン中に固定化されてもよく、連続的に脱水され、例えば、パラフィン中に包埋されてもよい。
サンプルが得られた後、本発明のマーカーを検出及び定量するために適切であることが当該分野において知られている任意の方法が(核酸レベル又はタンパク質のいずれかで)使用される。このような方法は当該分野において周知であり、これらには、ウェスタンブロット、ノーザンブロット、サザンブロット、免疫組織化学、ELISA、例えば、増幅ELISA、免疫沈降、免疫蛍光、フローサイトメトリー、免疫細胞化学、質量分析、例えば、MALDI-TOF及びSELDI-TOF、核酸ハイブリダイゼーション技術、核酸逆転写法、及び核酸増幅法が含まれるがこれらに限定されない。特定の実施形態において、本発明のマーカーの発現は、例えば、これらのタンパク質と特異的に結合する抗体を使用して、タンパク質レベルで検出される。
本発明のマーカーを抗体結合に利用可能にするために、サンプルは修飾される必要がある可能性がある。免疫細胞化学又は免疫組織化学方法の特定の態様において、スライドは、前処理された緩衝液に移され、任意に、抗原利用性を増加するために加熱されてもよい。前処理緩衝液中でのサンプルの加熱は、細胞の脂質二重層を急速に破壊し、抗原(新鮮な試料における場合である可能性はあるが、典型的には、固定された試料で起こることではない)を抗体結合に対してより利用可能にする。「前処理緩衝液」及び「調製緩衝液」という用語は、特に、抗体結合のために本発明のマーカーの利用可能性を増加することによって免疫染色のための細胞学的又は組織学的サンプルを調製するために使用される緩衝液をいうために、本明細書では互換的に使用される。前処理緩衝液は、pH特異的塩溶液、ポリマー、洗剤、又は、例えば、エチルオキシル化アニオン性又は非イオン性界面活性剤、アルカノエート若しくはアルコキシレート、又はさらにこれらの界面活性剤のブレンドなどの非イオン性若しくはアニオン性界面活性剤、あるいはさらには胆汁塩の使用を含んでもよい。前処理緩衝液は、例えば、0.1%〜1%のデオキシコール酸、ナトリウム塩の溶液、又はラウレス-13-カルボン酸ナトリウム(例えば、Sandopan LS)の溶液及びエトキシル化アニオン性錯体であってもよい。ある実施形態において、前処理緩衝液は、スライド保存緩衝液としてもまた使用されてもよい。
抗体結合のためにより利用可能である本発明のマーカータンパク質を作製するための任意の方法が本発明の実施において使用されてもよく、これには、当該分野において公知である抗原回復方法が含まれる。例えば、Bibbo, et al. (2002) Acta. Cytol. 46:25-29;Saqi, et al. (2003) Diagn. Cytopathol. 27:365-370;Bibbo, et al. (2003) Anal. Quant. Cytol. Histol. 25:8-11を参照のこと、これらの各々の全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
マーカータンパク質の利用可能性を増加するための前処理後、サンプルは、適切なブロッキング剤、例えば、過酸化水素などのペルオキシダーゼブロッキング試薬を使用してブロッキングされてもよい。ある実施形態において、サンプルは、抗体の非特異的結合を妨害するために、タンパク質ブロッキング試薬を使用してブロッキングされてもよい。タンパク質ブロッキング試薬には、精製カゼインが含まれてもよい。次いで、抗体、特に、本発明のマーカーに特異的に結合するモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を、サンプルとともにインキュベートする。当業者は、ある場合においては、患者サンプル中の本発明のマーカータンパク質上の複数のエピトープを検出することによって、より多くの正確な予測又は診断が得られるかもしれないことを認識している。それゆえに、特定の実施形態において、本発明のマーカーの異なるエピトープに対する少なくとも2つの抗体が使用される。1つよりも多くの抗体が使用される場合、これらの抗体は、個々の抗体試薬として連続的に、又は抗体カクテルとして同時に単一のサンプルに加えられてもよい。あるいは、各々個々の抗体が、同じ患者からの別個のサンプルに加えられ、得られたデータがプールされてもよい。
抗体結合を検出するための技術は当該分野において周知である。本発明のマーカーへの抗体結合は、抗体結合のレベルに対応し、したがって、マーカータンパク質発現レベルに対応する検出可能なシグナルを生成する化学試薬の使用を通して検出されてもよい。本発明の免疫組織化学又は免疫細胞化学の方法の1つにおいて、抗体結合は、標識されたポリマーにコンジュゲートされている二次抗体の使用を通して検出される。標識されたポリマーの例には、ポリマー-酵素コンジュゲートが含まれるがこれらに限定されない。これらの複合体における酵素は、典型的には、抗原-抗体結合部位における色素原の沈着を触媒するために使用され、それによって、目的のバイオマーカーの発現レベルに対応する細胞染色を生じる。特に関心が持たれる酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)及びアルカリホスファターゼ(AP)が含まれるがこれらに限定されない。
本発明の1つの特定の免疫組織化学又は免疫細胞化学方法において、本発明のマーカーへの抗体結合は、二次抗体にコンジュゲートされているHRP標識ポリマーの使用を通して検出される。抗体結合はまた、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体に結合する種特異的プローブ試薬、及び種特異的プローブ試薬に結合する、HRPにコンジュゲートされたポリマーの使用を通して検出できる。スライドは、任意の色素原、例えば、色素原3,3-ジアミノベンジジン(DAB)を使用する抗体結合について染色され、次いで、ヘマトキシリンで、及び任意に、水酸化アンモニウム又はTBS/Tween-20などの青色化剤で対比染色される。他の適切な色素原には、例えば、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)が挙げられる。本発明のある態様において、スライドは、細胞染色、例えば、蛍光染色(すなわち、マーカー発現)を評価するために、細胞技術者及び/又は病理学者によって顕微鏡的に詳細に観察される。あるいは、サンプルは、自動化顕微鏡により、又は陽性染色細胞の同定を容易にするコンピュータソフトウェアの補助を伴って人によって、詳細に観察されてもよい。
抗体結合の検出は、抗マーカー抗体を検出可能な物質に結合させることによって容易にできる。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生体発光物質、及び放射性物質が含まれる。適切な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ;適切な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが含まれ;適切な蛍光物質の例にはウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライド、又はフィコエリトリンが含まれ;発光物質の例にはルミノールが含まれ;生体発光物質の例にはルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが含まれ、そして適切な放射性物質の例には125I、131I、35S、14C又は3Hが含まれる。
本発明の1つの実施形態において、凍結サンプルは上記のように調製され、引き続いて、例えば、Tris緩衝化生理食塩水(TBS)を使用して適切な濃度まで希釈された本発明のマーカーに対する抗体で染色される。一次抗体は、ビオチン化抗免疫グロブリン中でスライドをインキュベートすることによって検出できる。このシグナルは、任意に、抗原のジアミノベンジジン沈殿を使用して、増幅及び可視化できる。さらに、スライドは、任意に、細胞を可視化するために、例えば、ヘマトキシリンで対比染色することができる。
別の実施形態において、固定及び包埋されたサンプルは、本発明のマーカーに対する抗体で染色され、凍結切片について上記に記載されたように対比染色される。加えて、サンプルは、抗体染色を可視化するために、シグナルを増幅するための試薬で任意に処理されてもよい。例えば、ビオチニル-チラミドのペルオキシダーゼ触媒性沈着物が使用されてもよく、これは、次には、ペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジン(Catalyzed Signal Amplification (CSA) System, DAKO, Carpinteria, CA)と反応させる。
組織ベースのアッセイ(すなわち、免疫組織化学)は、本発明のマーカーを検出及び定量する好ましい方法である。1つの実施形態において、本発明のマーカーの存在又は非存在は、免疫組織化学によって決定されてもよい。1つの実施形態において、免疫組織化学分析は、マーカーを欠く細胞が染色しないように、低濃度の抗マーカー抗体を使用する。別の実施形態において、本発明のマーカーの存在又は非存在は、マーカータンパク質を欠く細胞が過度に染色しないように、高濃度の抗マーカー抗体を使用する免疫組織化学法を使用して決定される。染色しない細胞は、変異したマーカーを含み、抗原的に認識可能なマーカータンパク質を産生することに失敗しているか、又はマーカーレベルを調節する経路が調節不全であり、定常状態での無視できるほどのマーカータンパク質の発現を生じる細胞であるかのいずれかである。
当業者は、本発明の方法を実施するために使用される特定の抗体の濃度が、本発明のマーカーについての抗体の特異性の結合レベルのための時間、及びサンプル調製の方法などの要因に依存して変化することを認識している。さらに、複数の抗体が使用されるとき、必要とされる濃度は、抗体がサンプルに適用される順番によって、例えば、カクテルとして同時に、又は個々の抗体試薬として連続的に、によって影響を受けるかもしれない。さらに、本発明のマーカーへの抗体結合を可視化するために使用される検出化学はまた、所望のシグナル対ノイズ比を生じるために最適化されなければならない。
本発明の1つの実施形態において、プロテオミック方法、例えば、質量分析が、本発明のマーカータンパク質を検出及び定量するために使用される。例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析(MALDI-TOF MS)又は表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析(SELDI-TOF MS)であって、これは、血清などの生体サンプルのタンパク質結合チップへの適用を含み(Wright, G.L., Jr., et al. (2002) Expert Rev Mol Diagn 2:549;Li, J., et al. (2002) Clin Chem 48:1296;Laronga, C., et al. (2003) Dis Markers 19:229;Petricoin, E.F., et al. (2002) 359:572;Adam, B.L., et al. (2002) Cancer Res 62:3609;Tolson, J., et al. (2004) Lab Invest 84:845;Xiao, Z., et al. (2001) Cancer Res 61:6029)、これを使用して、PY-Shc及び/又はp66-Shcタンパク質を検出及び定量することができる。質量分析法は、例えば、米国特許第5,622,824号、同第5,605,798号、及び同第5,547,835号に記載されており、これらの各々の全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
他の実施形態において、本発明のマーカーの発現は核酸レベルで検出される。発現を評価するための核酸ベースの技術は当該分野において周知であり、これには、例えば、被験体からのサンプル中のマーカーmRNAのレベルを決定することが含まれる。多くの発現検出方法は単離されたRNAを使用する。mRNAの単離に対して選択されない任意のRNA単離技術が、本発明のマーカーを発現する細胞からのRNAの精製のために利用できる(例えば、Ausubel et al.編, (1987-1999) Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, New Yorkを参照のこと)。加えて、多数の組織サンプルが、当業者に周知である技術、例えば、Chomczynskiの1段階RNA単離プロセス(1989,米国特許第4,843,155号)などを使用して容易に処理できる。
「プローブ」という用語は、本発明のマーカー、例えば、ヌクレオチド転写物及び/又はタンパク質に選択的に結合することが可能である任意の分子をいう。プローブは、当業者によって合成でき、又は適切な生物学的調製物から誘導できる。プローブは、標識されるように特に設計されてもよい。プローブとして利用できる分子の例には、RNA、DNA、タンパク質、抗体、及び有機分子が含まれるがこれらに限定されない。
単離されたmRNAは、サザン又はノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応分析、及びプローブアレイを含むがこれらに限定されないハイブリダイゼーション又は増幅アッセイにおいて使用できる。mRNAレベルの検出のための1つの方法は、マーカーmRNAにハイブリダイズできる核酸分子(プローブ)と単離されたmRNAを接触させることを含む。核酸プローブは、例えば、全長cDNA、又はその一部であり得、例えば、少なくとも7、15、30、50、100、250、又は500ヌクレオチド長であり、ストリンジェントな条件下でマーカーゲノムDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分である。
1つの実施形態において、mRNAは固体表面に固定化され、アガロースゲル上で単離されたmRNAを泳動すること、及びゲルからニトロセルロースなどのメンブレンにmRNAを転写することによってプローブと接触させる。代替の実施形態において、プローブは固体表面に固定化され、mRNAは、例えば、Affymetrix遺伝子チップアレイの中でプローブと接触させる。当業者は、マーカーmRNAのレベルを検出する際の使用のために公知のmRNA検出方法を容易に適合させることができる。
サンプル中のマーカーmRNAのレベルを決定するための代替方法には、例えば、RT-PCR(Mullis, 1987,米国特許第4,683,202号に示されている実験の実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189-193)、自己持続配列複製(Guatelli et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878)、転写増幅系(Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173-1177)、Q-βレプリカーゼ(Lizardi et al. (1988) Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardi et al.,米国特許第5,854,033号)、又は任意の他の核酸増幅方法による核酸増幅のプロセス、続いて当業者に公知の技術を使用する、増幅された分子の検出が含まれる。核酸分子が非常に少ない数で存在する場合に、これらの検出スキームは、このような分子の検出のために特に有用である。本発明の特定の態様において、マーカー発現は、定量的蛍光性RT-PCR(すなわち、TaqMan(商標)システム)によって評価される。このような方法は、典型的には、本発明のマーカーに特異的なオリゴヌクレオチドプライマー対を利用する。公知の配列に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを設計するための方法は当該分野において周知である。
本発明のマーカーの発現レベルは、メンブレンブロット(ノーザン、サザン、ドットなどのハイブリダイゼーション分析において使用されるものなど)、又はマイクロウェル、サンプルチューブ、ゲル、ビーズ、若しくはファイバー(又は結合した核酸を含む任意の固体支持体)を使用してモニターされてもよい。米国特許第5,770,722号、同第5,874,219号、同第5,744,305号、同第5,677,195号、及び同第5,445,934号を参照のこと、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。マーカー発現の検出は、溶液中の核酸プローブを使用することもまた含んでもよい。
本発明の1つの実施形態において、マイクロアレイは、本発明のマーカーの発現を検出するために使用される。マイクロアレイは、異なる実験間の再現性のため、この目的のために特に良好に適している。DNAマイクロアレイは、多数の遺伝子の発現レベルの同時測定のための1つの方法を提供する。各アレイは、固体支持体に結合された捕捉プローブの再現可能なパターンからなる。標識されたRNA又はDNAは、アレイ上の相補性プローブにハイブリダイズし、次いで、レーザースキャニングによって検出する。アレイ上の各プローブについてのハイブリダイゼーション強度を、測定し、相対的な遺伝子発現レベルを表す定量値に変換する。米国特許第6,040,138号、同第5,800,992号及び同第6,020,135号、同第6,033,860号及び同第6,344,316号を参照のこと、これらは参照により本明細書に組み込まれる。高密度オリゴヌクレオチドアレイは、サンプル中の多数のRNAのための遺伝子発現プロフィールを決定するために特に有用である。
マーカーの量、及び/又は本発明のマーカーの量の数学的な関連性は、当業者に公知である回帰分析を含んでもよい、本発明の方法を使用して、肉腫について処置される被験体における肉腫の再発リスク、肉腫について処置される被験体の生存、肉腫が侵襲性であるか否か、肉腫を処置するための処置レジメンの有効性などを計算するために使用されてもよい。例えば、適切な回帰モデルとしては、CART(例えば、Hill, T, and Lewicki, P. (2006) “STATISTICS Methods and Applications” StatSoft, Tulsa, OK)、Cox(例えば、www.evidence-based-medicine.co.uk)、指数関数、正規、及び対数正規(例えば、www.obgyn.cam.ac.uk/mrg/statsbook/stsurvan.html)、ロジスティック(例えば、www.en.wikipedia.org/wiki/Logistic_regression)、パラメトリック、ノンパラメトリック、セミパラメトリック(例えば、www.socserv.mcmaster.ca/jfox/Books/Companion)、線形(例えば、www.en.wikipedia.org/wiki/Linear_regression)、又は加法(例えば、www.en.wikipedia.org/wiki/Generalized_additive_model)が挙げられるがこれらに限定されない。
1つの実施形態において、回帰分析にはマーカーの量が含まれる。別の実施形態において、回帰分析にはマーカーの数学的関連性が含まれる。なお別の実施形態において、マーカーの量及び/又はマーカーの数学的関連性の回帰分析には、さらなる臨床的及び/又は分子の共変量が含まれる。このような臨床的共変量には、結節状態、腫瘍ステージ、腫瘍グレード、腫瘍サイズ、処置レジメン(例えば化学療法及び/又は放射線療法)、臨床的結果(例えば、再発、疾患特異的な生存、治療の失敗)、及び/又は診断後の時間の関数としての臨床的結果、治療の開始後の時間、及び/又は処置の完了後の時間が含まれるがこれらに限定されない。
別の実施形態において、マーカーの量及び/又はマーカーの量の数学的関連性は、当業者に公知である回帰分析の方法を含んでもよい、本発明の方法を使用して、肉腫について処置される被験体における肉腫の再発リスク、肉腫について処置される被験体の生存、肉腫が侵襲性であるか否か、肉腫を処置するための処置レジメンの有効性などを計算するために使用されてもよい。例えば、適切な回帰モデルとしては、CART(例えば、Hill, T, and Lewicki, P. (2006) "STATISTICS Methods and Applications" StatSoft, Tulsa, OK)、Cox(例えば、www.evidence-based-medicine.co.uk)、指数関数、正規、及び対数正規(例えば、www.obgyn.cam.ac.uk/mrg/statsbook/stsurvan.html)、ロジスティック(例えば、www.en.wikipedia.org/wiki/Logistic_regression)、パラメトリック、ノンパラメトリック、セミパラメトリック(例えば、www.socserv.mcmaster.ca/jfox/Books/Companion)、線形(例えば、www.en.wikipedia.org/wiki/Linear_regression)、又は加法(例えば、www.en.wikipedia.org/wiki/Generalized_additive_model)が挙げられるがこれらに限定されない。
1つの実施形態において、回帰分析にはマーカーの量が含まれる。別の実施形態において、回帰分析にはマーカーの数学的関連性が含まれる。なお別の実施形態において、マーカーの量及び/又はマーカーの数学的関連性の回帰分析には、さらなる臨床的及び/又は分子の共変量が含まれる。このような臨床的共変量には、結節状態、腫瘍ステージ、腫瘍グレード、腫瘍サイズ、処置レジメン(例えば化学療法及び/又は放射線療法)、臨床的結果(例えば、再発、疾患特異的な生存、治療の失敗)、及び/又は診断後の時間の関数としての臨床的結果、治療の開始後の時間、及び/又は処置の完了後の時間が含まれるがこれらに限定されない。
VIII.キット
本発明は、肉腫、肉腫の再発又は肉腫について処置されている被験体の生存を予測するための組成物及びキットもまた提供する。これらのキットは以下の1つ以上を含む:本発明のマーカーに特異的に結合する検出可能な抗体、本発明のマーカーに特異的に結合する検出可能な抗体、染色のために被験体の組織サンプルを入手及び/又は調製するための試薬、並びに使用のための説明書。
本発明のキットは、本発明の方法を実施するために有用なさらなる構成要素を任意に含むことができる。例として、これらのキットは、相補性核酸とアニーリングするため又は抗体が特異的に結合するタンパク質との抗体の結合のために適切な流体(例えば、SSC緩衝液)、1つ以上のサンプル成分、本発明の方法の実施を説明する説明書、及び組織特異的対照/標準を含んでもよい。
IX.スクリーニングアッセイ
本発明の標的としては、本明細書中の表2〜9において以下に列挙する遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。出願人によって本明細書に記載された実験の結果に基づいて、Q10によって調節された主要なタンパク質は、細胞骨格成分、転写因子、アポトーシス応答、ペントースリン酸経路、生合成経路、酸化ストレス(酸化促進物質)、膜改変、及び酸化的リン酸化代謝を含む異なる経路又は分子の群に関連する、又は分類することができる。
したがって、本発明の一実施形態においては、マーカーとして以下を挙げることができる:ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、PRMT3、HDAC2、一酸化窒素シンターゼbNOS、アセチルホスホヒストンH3 AL9 S10、MTA 2、グルタミン酸デカルボキシラーゼGAD65 67、KSR、HDAC4、BOB1 OBF1、a1シントロフィン、BAP1、Importina 57、αE-カテニン、Grb2、Bax、プロテアソーム26Sサブユニット13(エンドフィリンB1)、アクチン様6A(真核生物開始因子4All)、核クロライドチャネルタンパク質、プロテアソーム26Sサブユニット、ジスムターゼCu/Znスーパーオキシド、トランスリン会合因子(Translin-associated factor)X、亜ヒ酸塩輸送ATPase(スペルミン合成酵素)、リボソームタンパク質SA、dCTPピロホスファターゼ1、プロテアソームベータ3、プロテアソームベータ4、酸性ホスファターゼ1、ジアゼパム結合インヒビター、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、リボソームタンパク質P2(RPLP2);ヒストンH2A、微小管結合タンパク質、プロテアソームアルファ3、真核生物翻訳伸長因子1デルタ、ラミンB1、mif two 3ホモログ2のSMT 3サプレッサー、熱ショックタンパク質27kD、hnRNP C1/C2、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、HSPC-300に類似、DNA依存性DNAポリメラーゼイプシロン3;(canopy 2ホモログ)、LAMA5、PXLDC1、p300 CBP、P53R2、ホスファチジルセリン受容体、サイトケラチンペプチド17、サイトケラチンペプチド13、ニューロフィラメント160 200、Rab5、フィレンシン、P53R2、MDM2、MSH6、熱ショック因子2、AFX、FLIPg d、JAB 1、ミオシン、MEKK4、cRaf pSer621、FKHR FOXO1a、MDM2、Fasリガンド、P53R2、ミオシン調節軽鎖、hnRNP C1/C2、ユビキリン1(ホスファターゼ2A)、hnRNP C1/C2、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、ベータアクチン、hnRNP C1/C2、熱ショックタンパク質70kD、ベータチューブリン、ATP依存性ヘリカーゼII、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、ER脂質ラフト会合2アイソフォーム1(ベータアクチン)、シグナル配列受容体1デルタ、真核生物翻訳開始因子3, サブユニット3ガンマ、ビリベルジンレダクターゼA(トランスアルドラーゼ1)、ケラチン1,10(パラチモシン)、GSTオメガ1、Dj-1への鎖Bドパミンキノン結合、プロテアソームアクチベーターReg(アルファ)、T-コンプレックスタンパク質1アイソフォームA、鎖A タパシンERP57(TCP1含有シャペロニン)、ユビキチン活性化酵素E1;アラニル-tRNA合成酵素、ダイナクチン1、熱ショックタンパク質60kd、ベータアクチン、スペルミジンシンターゼ(ベータアクチン)、熱ショックタンパク質70kD、網膜芽細胞腫結合タンパク質4アイソフォームA、TAR DNA結合タンパク質、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、TCP1含有シャペロニン, サブユニット3、細胞質ダイニンIC-2、アンギオテンシン変換酵素(ACE)、カスパーゼ3、GARS、マトリックスメタロプロテイナーゼ6(MMP-6)、ニューロリシン(NLN)触媒ドメイン、及びニューロリシン(NLN)、ADRB、CEACAM1、DUSP4、FOXC2、FOXP3、GCGR、GPD1、HMOX1、IL4R、INPPL1、IRS2及びVEGFA。
同定されたマーカーのモジュレーターを同定するのに有用なスクリーニングアッセイが下に記載される。
本発明は、本発明のマーカーの発現及び/又は活性を調節することにより肉腫を治療又は予防するのに有用な、モジュレーター、すなわち候補又は試験化合物又は薬剤(例えばタンパク質、ペプチド、ペプチドミメティック、ペプトイド、小分子又は他の薬物)を同定するための方法(本明細書では「スクリーニングアッセイ」とも呼ばれる)も提供する。このようなアッセイは典型的には、本発明のマーカーと1つ以上のアッセイ成分との間の反応を含む。他の成分は、試験化合物自体、又は試験化合物及び本発明のマーカーの天然結合パートナーの組合せのどちらかであり得る。本明細書に記載するアッセイなどのアッセイを介して同定された化合物は、肉腫の侵襲性を調節、例えば抑制、改善、処置又は予防するのに有用であり得る。
本発明のスクリーニングアッセイで使用される試験化合物は、天然及び/又は合成化合物の系統的ライブラリーを含む、いずれの利用可能な供給源からも取得され得る。試験化合物はまた:生物ライブラリー;ペプトイドライブラリー(ペプチドの官能基を有するが、酵素分解に抵抗性であるが、それにもかかわらず生物活性を保持する新規の非ペプチド主鎖を持つ、分子のライブラリー;例えばZuckermann et al., 1994, J. Med. Chem. 37:2678-85を参照);空間的にアドレス可能なパラレル固相又は液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;及びアフィニティクロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法を含む、当分野で公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数の手法のいずれによっても取得され得る。生物ライブラリー及びペプトイドライブラリー法はペプチドライブラリーに限定されているが、他の4つの手法は化合物のペプチドライブラリー、非ペプチドオリゴマーライブラリー又は小分子ライブラリーに適用することができる(Lam, 1997, Anticancer Drug Des. 12:145)。
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当分野において、例えば:DeWitt et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909;Erb et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422;Zuckermann et al. (1994). J. Med. Chem. 37:2678; Cho et al. (1993) Science 261:1303;Carrell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059;Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061;及びGallop et al. (1994) J. Med. Chem. 37:1233に見出すことができる。
化合物のライブラリーは、溶液中に(例えばHoughten, 1992, Biotechniques 13:412-421)、又はビーズ(Lam, 1991, Nature 354:82-84)、チップ(Fodor, 1993, Nature 364:555-556)、細菌及び/若しくは胞子(Ladner, 米国特許第5,223,409号)、プラスミド上に(Cull et al, 1992, Proc Natl Acad Sci USA 89:1865-1869)又はファージ上に(Scott and Smith, 1990, Science 249:386-390;Devlin, 1990, Science 249:404-406;Cwirla et al, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6378-6382;Felici, 1991, J. Mol. Biol. 222:301-310;Ladner, 上掲)提供され得る。
本発明のスクリーニング方法は、肉腫細胞を試験化合物と接触させることと、試験化合物が細胞中での本発明のマーカーの発現及び/又は活性を調節する能力を決定することとを含む。本発明のマーカーの発現及び/又は活性は、本明細書に記載するように決定することができる。
別の実施形態において、本発明は、本発明のマーカーの基質又はその生物活性部分である候補又は試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。また別の実施形態において、本発明は、本発明のマーカー又はその生物活性部分に結合する候補又は試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。試験化合物がマーカーに直接結合する能力を決定することは、例えば、化合物のマーカーへの結合が複合体中の標識マーカー化合物を検出することによって決定できるように、化合物を放射性同位体又は酵素標識とカップリングすることによって達成することができる。例えば化合物(例えばマーカー基質)に131I、125I、35S、14C、又は3Hを直接又は間接的のどちらかで標識して、放射性同位体を電波放出の直接カウントによって又はシンチレーションカウントによって検出することができる。あるいはアッセイ成分に例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、又はルシフェラーゼを酵素標識して、この酵素標識を適切な基質の生成物への変換の決定によって検出することができる。
本発明は、上記のスクリーニングアッセイによって同定された新規薬剤にさらに関する。したがって、適切な動物モデルにおいて本明細書に記載するように同定された薬剤をさらに使用することは、本発明の範囲内である。例えば本明細書に記載するように同定された本発明のマーカーの発現及び/又は活性を調節することができる薬剤を動物モデルで使用して、このような薬剤を用いた処置の有効性、毒性、又は副作用を決定することができる。あるいは本明細書に記載するように同定された薬剤を動物モデルで使用して、このような薬剤の作用機序を決定することができる。さらに、本発明は、上記スクリーニングアッセイによって同定された、上記処置のための新規薬剤の使用に関する。
X.医薬組成物及び医薬の投与
本発明は、CoQ10分子、例えばCoQ10を含む組成物を提供する。CoQ10分子を被験体への投与に好適な医薬組成物中に組み入れることができる。典型的に、医薬組成物は、CoQ10分子及び製薬的に許容され得る担体を含む。本明細書で使用する場合、「製薬的に許容され得る担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散剤、媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、並びに生理学的に適合性である同様のものを含む。製薬的に許容され得る担体の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つ以上、並びにその組合せを含む。多くの場合において、組成物中に、等張性剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、又は塩化ナトリウムを包含することが好ましいであろう。製薬的に許容され得る担体は、環境影響因子の有効期間又は有効性を増強する、湿潤剤又は乳化剤、保存料又は緩衝液などの微量の補助物質をさらに含み得る。
本発明の組成物は、多種多様の剤形であり得る。これらは例えば、液体剤(例えば注射用及び輸液用液剤)、分散剤又は懸濁剤、錠剤、丸剤、粉剤、クリーム、ローション、リニメント剤、軟膏又はペースト剤、眼、耳又は鼻に投与するための滴剤、リポソーム及び坐剤などの液体、半固体及び固体投与剤形を含む。好ましい剤形は、投与及び治療用途の所期の様式に依存する。
CoQ10分子は、当分野で公知の多種多様の方法によって投与することができる。多くの治療用途では、好ましい投与経路/投与方法は、局所、皮下注射、静脈内注射又は輸液である。当業者によって認識されるように、投与経路及び/又は方法は、所望の結果に応じて変動するであろう。ある実施形態において、活性化合物は、インプラント、経皮パッチ及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤などの、高速放出から化合物を保護するであろう担体を用いて調製され得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製のための多くの方法は、特許が取得されているか、又は概して当業者に公知である。例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照。一実施形態において、投与方法は非経口(例えば静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。一実施形態において、環境影響因子は、静脈内輸液又は注射によって投与される。別の実施形態において、環境影響因子は、筋肉内又は皮下注射によって投与される。好ましい実施形態において、環境影響因子は局所投与される。
治療組成物は典型的に、製造及び貯蔵条件下で滅菌及び安定性でなければならない。組成物は、液剤、マイクロエマルション、分散剤、リポソーム、又は高い薬物濃度に好適な他の秩序構造として製剤することができる。滅菌注射用液剤は、要求される量の活性化合物(すなわち環境影響因子)を、必要に応じて上で列挙した各種の他の成分を含む適切な溶媒に組み入れ、それに続いて濾過滅菌することによって調製することができる。概して、分散剤は、活性化合物を、基本分散媒及び上に列挙されたものからの要求される他の成分を含有する滅菌基剤に組み入れることによって調製される。滅菌注射用液剤の調製のための滅菌凍結乾燥粉剤の場合、好ましい調製方法は、その先に滅菌濾過した溶液から活性成分及びいずれかの追加の望ましい成分の粉剤を産する、真空乾燥及び噴霧乾燥技法である。液剤の適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用により、分散剤の場合には要求される粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持され得る。注射用組成物の延長吸収は、組成物中に吸収を遅延する薬剤、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
技法及び製剤は一般に、Remmington's Pharmaceutical Sciences, Meade Publishing Co., Easton, Paに見出され得る。全身投与のためには、筋肉内、静脈内、腹腔内、及び皮下を含む注射が好ましい。注射の場合、本発明の化合物は、液体溶液中で、好ましくはハンクス液又はリンゲル液などの生理学的に適合性の緩衝液中で製剤することができる。加えて、化合物は固体形で製剤され、使用直前に再溶解又は懸濁され得る。凍結乾燥形も含まれる。
経口投与では、医薬組成物は、結合剤(例えばアルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、微晶質セルロース又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えばジャガイモデンプン又はグリコール酸デンプンナトリウム);又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)などの製薬的に許容され得る賦形剤を用いて慣用的な手段によって調製された、例えば錠剤又はカプセル剤の形をとり得る。錠剤は、当分野で周知の方法によってコーティングされ得る。経口投与のための液体調製物は、例えば液剤、シロップ剤又は懸濁剤の形をとり得る、あるいはこれらは、使用前の水又は他の好適な基剤による構成のための無水生成物として提供され得る。このような液体調製物は、懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用脂);乳化剤(例えばレシチン又はアラビアゴム);非水性基剤(例えばアチオンド油(ationd oil)、油性エステル、エチルアルコール又は分画植物油);及び保存料(例えばメチル若しくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)などの製薬的に許容され得る添加剤を用いて慣用的な手段によって調製され得る。調製物は必要に応じて、緩衝塩、香味剤、着色剤及び甘味剤も含有し得る。
経口投与用の調製物は、活性化合物の制御放出を与えるように好適に製剤され得る。舌下投与では、組成物は、慣用的な方式で製剤された錠剤又はロゼンジ剤の形を取り得る。吸入による投与では、本発明による使用のための化合物は、好適な噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適なガスの使用による加圧パック又はネブライザからのエアゾールスプレー提供の形で便利に送達される。加圧エアゾールの場合、投薬単位は、計量された量を送達する弁を設けることによって決定され得る。吸入器又は注入器での使用のための、例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物及びラクトース又はデンプンなどの好適な粉末ベースの粉末ミックスを含有して製剤され得る。
化合物は、注射による、例えばボーラス注射又は連続輸液による非経口投与のために製剤され得る。注射用製剤は、保存料が添加されて、単位投与剤形で、例えばアンプルで又は複数用量容器で与えられ得る。組成物は、油性又は水性基剤中の懸濁剤、液剤又は乳剤としてのこのような形を取り得て、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散化剤などの製剤化剤を含有し得る。あるいは活性成分は、使用前に好適な基剤、例えば発熱物質を含まない滅菌水による構成のための粉末形であり得る。
化合物は、例えばココアバター又は他のグリセリドなどの慣用的な坐剤用ベースを含有する、坐剤又は留置浣腸などの経直腸組成物としても製剤され得る。
先に記載した製剤に加えて、化合物はデポー調製物としても調合され得る。このような長時間作用型製剤は、インプラントによって(例えば皮下的に若しくは筋肉内に)又は筋肉内注射によって投与され得る。それゆえ、例えば化合物は、好適なポリマー材料又は疎水性材料(例えば許容され得る油中の乳剤として)若しくはイオン交換樹脂を用いて、又は難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として製剤され得る。
全身投与は、経粘膜又は経皮手段によっても可能である。経粘膜又は経皮投与では、透過されるバリアにとって適切な浸透剤が製剤に使用される。このような浸透剤は、概して当分野で公知であり、例えば経粘膜投与のためには、胆汁塩及びフシジン酸誘導体を含み、加えて洗剤が透過を容易にするために使用され得る。経粘膜投与は、鼻内スプレー又は坐剤の使用により行われる。局所投与では、本発明の化合物は、概して当分野で公知の軟膏、塗布剤、ゲル、又はクリームに製剤される。洗浄液を局所的に使用して、傷害又は炎症を処置し、治癒を加速することができる。
組成物は所望ならば、活性成分を含有する1つ以上の単位投与剤形を含有し得るパック又はディスペンサデバイスで与えられ得る。パックは例えば、金属箔又はブリスターパックなどのプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサデバイスは、投与のための説明書が添付され得る。
核酸の投与を含む療法では、全身及び局所又は局在投与を含む多種多様の投与方法のために、本発明の化合物を製剤することができる。技法及び製剤は一般に、Remmington's Pharmaceutical Sciences, Meade Publishing Co., Easton, Paに見出され得る。全身投与のためには、筋肉内、静脈内、腹腔内、結節内、及び皮下を含む注射が好ましい。注射の場合、本発明の化合物は、液体溶液中で、好ましくはハンクス液又はリンゲル液などの生理学的に適合性の緩衝液中で製剤することができる。加えて、化合物は固体形で製剤され、使用直前に再溶解又は懸濁され得る。凍結乾燥形も含まれる。
本発明の好ましい実施形態において、CoQ10分子、例えばCoQ10を含む組成物は局所投与される。活性成分、すなわちCoQ10分子を医薬製剤として与えることが好ましい。活性成分は、局所投与の場合、最終生成物において製剤の重量で約0.001%〜約20%w/wを構成し得るが、活性成分は製剤の30%w/w、好ましくは約1%〜約20%w/wをも構成し得る。本発明の局所製剤は、活性成分を1つ以上のそのための許容され得る担体及び場合によりその他の治療成分と共に含む。担体は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントにとって有害でないという意味で、「許容され得る」べきである。
目的の障害を呈している患者を処置するにあたって、これらのような1又は複数の薬剤の治療上有効な量が投与される。治療上有効な用量は、患者における症候の改善又は生存の延長を生じる化合物の量を指す。
このような化合物の毒性及び治療有効性は、例えばLD50(集団の50%にとって致死性である用量)及びED50(集団の50%にとって治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養又は実験動物の標準製薬手順によって決定することができる。毒性作用と治療効果との用量比は治療指数であり、治療指数は比LD50/ED50として表すことができる。大きい治療指数を呈する化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイ及び動物試験から取得したデータは、ヒトで使用するための投薬量の範囲を設定するのに使用することができる。このような化合物の投薬量は好ましくは、毒性がほとんど又は全くないED50を含む循環濃度の範囲内に存在する。投薬量は、用いた投与剤形及び利用した投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。
本発明の方法で使用されるいずれの化合物でも、治療上有効な用量は細胞培養アッセイから最初に推定することができる。例えば用量は、細胞培養で決定されたようなIC50を含む循環血漿濃度範囲を達成する動物モデルにおいて、設定することができる。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより的確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えばHPLCによって測定され得る。
正確な製剤、投与経路及び投薬量は、患者の症状を考慮して個別の医師によって選定されることができる(例えばFingl et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics, 1975, Ch. 1 p. 1を参照)。担当医が、毒性、又は器官障害のために投与を中止、中断、又は調整する方法及び時点を理解していることに注目すべきである。反対に、担当医は(毒性を除く)臨床応答が十分でなかった場合に、処置をより高レベルに調整することも理解しているであろう。目的の発癌(oneogenic)障害の管理における投与用量の大きさは、処置される症状の重症度及び投与経路によって変動するであろう。症状の重症度は、例えば一部は、標準予後評価方法によって評価され得る。さらに用量及びおそらく投薬頻度も、個別の患者の年齢、体重、及び応答によって変動するであろう。獣医学において、上述のプログラムに相当するプログラムが使用され得る。
処置されている特異的症状に応じて、このような薬剤は、全身的又は局所的に製剤及び投与され得る。製剤及び投与のための技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa. (1990)に見出され得る。好適な経路は、ほんのいくつか例を挙げると、経口、経直腸、経皮、経膣、経粘膜、又は経腸投与;筋肉内、皮下、髄内注射、並びに髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻内、又は眼内注射を含む非経口送達を含み得る。
上記の組成物は、いずれの好適な製剤中でも被験体に投与され得る。CoQ10分子、例えばCoQ10の局所製剤による肉腫の処置に加えて、本発明の他の態様において、CoQ10分子は他の方法によって送達されてもよい。例えば、CoQ10分子は非経口送達のために、例えば皮下、静脈内、筋肉内、又は腫瘍内注射のために製剤されるかもしれない。送達の他の方法、例えばリポソーム送達又は組成物を含浸させたデバイスからの拡散が使用されるかもしれない。組成物は、単回ボーラス、複数回注射で、又は連続輸液によって(例えば静脈内に又は腹膜透析によって)によって投与され得る。非経口投与では、組成物は好ましくは、発熱物質を含まない滅菌形で製剤される。本発明の組成物は、組成物を細胞が含有されている流体に単に添加することによって、(例えばインビトロ培養物中の癌細胞のアポトーシスを誘導するために)インビトロで細胞に投与することもできる。
注射では、本発明の薬剤は水溶液で、好ましくはハンクス液、リンゲル液などの生理学的に適合性の緩衝液、又は生理学的生理食塩水緩衝液で製剤され得る。このような経粘膜投与では、透過されるバリアにとって適切な浸透剤が製剤に使用される。このような浸透剤は、概して当分野で公知である。
本発明の実施のために本明細書で開示された化合物を全身投与に好適な投与剤形に製剤するための、製薬的に許容され得る担体の使用は、本発明の範囲内である。担体の適正な選出及び好適な製造実施によって、本発明の組成物、特に液剤として製剤された組成物は、静脈内注射などによって非経口的に投与され得る。化合物は、当分野で周知の製薬的に許容され得る担体を使用して、経口投与に好適な投与剤形にただちに製剤することができる。このような担体によって、本発明の化合物を処置される患者による経口摂取のために、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などとして製剤することができる。
細胞内投与されることを意図される薬剤は、当業者に周知の技法によって投与され得る。例えばこのような薬剤は、リポソーム中に封入され、次に上記のように投与され得る。リポソームは、水性の内部を有する球状脂質2重層である。リポソーム形成の時点で水溶液中に存在するすべての分子は、水性の内部に組み入れられる。リポソームの内容物は、外部微小環境から保護されながらも、リポソームが細胞膜と融合するために、細胞質中に効率的に送達される。加えて、小型有機分子は、その疎水性のために、細胞内に直接投与され得る。
本発明での使用に好適な医薬組成物は、その所期の目的を達成する有効量で活性成分が含有されている組成物を含む。有効量の決定は、とりわけ本明細書で提供された詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。活性成分に加えて、これらの医薬組成物は、製薬的に使用することができる活性化合物の調製物への処理を容易にする賦形剤及び助剤を含む、好適な製薬的に許容され得る担体を含有し得る。経口投与用に製剤された調製物は、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、又は液剤の形であり得る。本発明の医薬組成物は、それ自体公知である方式で、例えば慣用的な混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、浮上、乳化、封入、捕捉又は凍結乾燥のプロセスによって製造され得る。
局所投与に好適な製剤は、皮膚を通じた処置が必要である部位への浸透に好適なリニメント剤、ローション、クリーム、軟膏又はペースト剤、及び眼、耳又は鼻への投与に好適な滴剤などの液体又は半液体調製物を含む。本発明による滴剤は、滅菌水性又は油性液剤又は懸濁剤を含んでもよく、殺菌剤及び/又は殺真菌剤及び/又はその他の好適な保存料の、及び好ましくは界面活性剤を含む好適な水溶液に、活性成分を溶解することによって調製され得る。得られた溶液は次に、濾過によって清澄及び滅菌され、無菌技法によって容器に移され得る。滴剤への包含に好適な殺菌剤及び殺真菌剤の例は、硝酸又は酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)及び酢酸クロルヘキシジン(0.01%)である。油性液剤の調製に好適な溶媒は、グリセロール、希釈アルコール及びプロピレングリコールを含む。
本発明においてローションは、皮膚又は眼への適用に好適なローションを含む。眼用ローションは、場合により殺菌剤を含有する滅菌水溶液を含んでもよく、滴剤の調製方法に類似した方法によって調製され得る。皮膚への適用のためのローション又はリニメント剤は、アルコール若しくはアセトンなどの乾燥を促進して皮膚を冷やす薬剤、及び/又はグリセロールなどの保湿剤、又はヒマシ油若しくはラッカセイ油などの油も含み得る。
本発明においてクリーム、軟膏又はペースト剤は、外部適用のための活性成分の半固体製剤である。これらは微粉化形又は粉末化形の活性成分を、単独で又は水性若しくは非水性流体による溶液又は懸濁液中で、好適な機械を用いてグリース又は非グリース基剤と混合することによって作製され得る。基剤は、固形パラフィン、軟パラフィン又は流動パラフィンなどの炭化水素、グリセロール、ミツロウ、金属石鹸;滑粘薬;アーモンド油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、ヒマシ油又はオリーブ油などの天然源の油;羊毛脂若しくはその誘導体、又はプロピレングリコールなどのアルコール又はマクロゲルと共にステアリン酸又はオレイン酸などの脂肪酸を含んでもよい。製剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又はソルビタンエステル若しくはそのポリオキシエチレン誘導体などの非イオン性界面活性剤などのいずれの好適な界面活性剤も組み入れ得る。天然ゴム、セルロース誘導体などの懸濁化剤又はケイ質(silicaceous)シリカなどの無機材料、及びラノリンなどの他の成分も含まれ得る。
非経口投与のための医薬製剤は、水溶形の活性化合物の水溶液を含む。加えて、活性化合物の懸濁剤は、適切な油性注射用懸濁剤として調製され得る。好適な親油性溶媒又は基剤は、ゴマ油など脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームを含む。水性注射用懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの、懸濁剤の粘度を上昇させる物質を含有し得る。場合により、懸濁剤は、高濃度の液剤の調製を可能にするために、好適な安定剤又は化合物の溶解性を上昇させる薬剤も含有し得る。
経口使用のための医薬調製物は、活性化合物を固体賦形剤と組合せて、場合により得られた混合物を粉砕し、所望の場合には錠剤又は糖衣錠コアを取得するための好適な助剤を添加した後に顆粒の混合物を処理することによって取得することができる。好適な賦形剤は、特にラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖などの充填剤;例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物である。所望ならば、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩が添加され得る。
糖衣錠コアは、好適なコーティングを施されている。この目的のために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー液、並びに好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有し得る、濃縮糖溶液が使用され得る。色素又は顔料は、識別のために又は活性化合物用量の異なる組合せを特徴付けるために、錠剤又は糖衣錠コーティングに添加され得る。
経口的に使用することができる医薬調製物は、ゼラチンで作製されたプッシュ・フィット・カプセル剤、並びにグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤とゼラチンで作製された軟シールカプセル剤を含む。プッシュ・フィット・カプセル剤は、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び場合により安定剤と混合された活性成分を含むことができる。軟カプセル剤において、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解又は懸濁され得る。加えて、安定剤が添加され得る。
組成物は所望ならば、緩衝液系を含むことができる。緩衝液系は、組成物のpHを望ましい範囲内に維持又は緩衝するように選定される。「緩衝液系」又は「緩衝液」という用語は本明細書で使用する場合、1又は複数の溶質剤であって、水溶液中にあるときに、酸又は塩基がそれに添加された場合のpH(又は水素イオン濃度若しくは活性)の大きな変化に対してこのような溶液を安定させる溶質剤を指す。それゆえ上で指摘された範囲における開始時の緩衝pH値からのpHの抵抗又は変化に関係する、1又は複数の溶質剤は周知である。無数の好適な緩衝剤があるが、リン酸カリウム1水和物が好ましい緩衝液である。
医薬組成物の最終pH値は、生理学的に適合可能な範囲内で変動し得る。最終pH値は、ヒト皮膚を必ずしも刺激する値ではなく、好ましくは活性化合物、すなわちCoQ10分子の経皮輸送が促進されるような値である。pHは、本制約に反することなく、CoQ10分子の安定性を改善し、必要なときには稠度を調整するように選択され得る。一実施形態において、好ましいpH値は、約3.0〜約7.4、さらに好ましくは約3.0〜約6.5、最も好ましくは約3.5〜約6.0である。
好ましい局所送達基剤では、組成物の残りの構成要素は、必然的に精製されている水、例えば脱イオン水である。このような送達基剤組成物は、組成物の総重量に基づいて、約50〜約95パーセントを超える範囲の水を含有する。しかし存在する水の明確な量は重要ではなく、所望の粘度(通常約50cps〜約10,000cps)及び/又は他の構成要素の濃度を取得するように調整することができる。局所送達基剤は好ましくは、少なくとも約30センチポイズの粘度を有する。
他の公知の経皮浸透エンハンサを使用して、CoQ10分子の送達を容易にすることもできる。例示的には、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド;1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン(アゾン(商標)、Nelson Research, Inc.の登録商標)などの環式アミド;N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)N,N-ジエチルトルアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルオクタアミド、N,N-ジメチルデカアミドなどのアミド;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、2-ピロリドン-5-カルボン酸、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン又はその脂肪酸エステル、1-ラウリル-4-メトキシカルボニル-2-ピロリドン、N-タローアルキルピロリドンなどのピロリドン誘導体;プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ヘキサントリオールなどのポリオール;オレイン酸、リノール酸、ラウリン酸、吉草酸、ヘプタン酸、カプロン酸、ミリスチン酸、イソ吉草酸、ネオペンタン酸、トリメチルヘキサン酸、イソステアリン酸などの直鎖又は分枝鎖脂肪酸;エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、オレイル、ステアリル、リノレイルなどのアルコール;ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤;塩化ベンザルコニウム、ドデシルトリメチル塩化アンモニウム、セチルトリメチル臭化アンモニウムなどのカチオン性界面活性剤;プロポキシ化ポリオキシエチレンエーテル、例えばポロキサマー231、ポロキサマー182、ポロキサマー184など、エトキシ化脂肪酸、例えばTween 20、Myjr45など、ソルビタン誘導体、例えばTween 40、Tween 60、Tween 80、スパン60など、エトキシ化アルコール、例えばポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(Brij30)、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(Brij93)など、レシチン及びレシチン誘導体などの非イオン性界面活性剤;D-リモネン、α-ピネン、β-カレン、α-テルピネオール、カルボール、カルボン、メントン、酸化リモネン、酸化α-ピネン、ユーカリ油などのテルペンである。サリチル酸、サリチル酸メチル、クエン酸、コハク酸などの有機酸及びエステルも、皮膚浸透エンハンサとして好適である。
一実施形態において、本発明は、CoQ10分子組成物及びその調製方法を提供する。好ましくは、組成物は少なくとも約1%〜約25%w/wのCoQ10分子、例えばCoQ10を含む。CoQ10は旭化成N&P(北海道、日本)から、ユビデカレノン(USP)として入手することができる。CoQ10は、Kaneka Q10から粉末形のKanekaQ10(USP UBIDECARENONE)(Pasadena, Texas, USA)として取得することもできる。本明細書で例示された方法で使用されるCoQ10は、以下の特徴を有する:残りの溶媒はUSP 467の必要条件を満足する;水含有率は、0.0%未満、0.05%未満、又は0.2%未満である;強熱残分は0.0%、0.05%未満、又は0.2%未満である;重金属含有率は0.002%未満、又は0.001%未満である;純度は98〜100%若しくは99.9%、又は99.5%である。組成物を調製する方法は、下の実施例のセクションに提供されている。
本発明のある実施形態において、コエンザイムQ10分子、例えばCoQ10を、処置又は予防が行われるようにヒトに局所投与することによって、ヒトの肉腫を処置又は予防する方法が提供され、ここでコエンザイムQ10分子、例えばCoQ10が標的組織に皮膚1平方センチメートルに付きコエンザイムQ10分子(例えばCoQ10)約0.01〜約0.5ミリグラムの範囲で適用される、局所用基剤中のコエンザイムQ10分子(例えばCoQ10)の局所用量がヒトに投与される。一実施形態において、コエンザイムQ10分子(例えばCoQ10)は標的組織に、皮膚1平方センチメートルに付きCoQ10約0.09〜約0.15mgの範囲で適用される。各種の実施形態において、コエンザイムQ10分子(例えばCoQ10)は標的組織に、皮膚1平方センチメートルに付きコエンザイムQ10分子(例えばCoQ10)約0.001〜約5.0mg、約0.005〜約1.0mg、約0.005〜約0.5mg、約0.01〜約0.5mg、約0.025〜約0.5mg、約0.05〜約0.4mg、約0.05〜約0.30mg、約0.10〜約0.25mg、又は約0.10〜0.20mgの範囲で適用される。他の実施形態において、コエンザイムQ10分子(例えばCoQ10)は標的組織に皮膚1平方センチメートルに付きCoQ10約0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.10mg、0.11mg、0.12mg、0.13mg、0.14mg、0.15mg、0.16mg、0.17mg、0.18mg、0.19mg、0.20mg、0.21mg、0.22mg、0.23mg、0.24mg、0.25mg、0.26mg、0.27mg、0.28mg、0.29mg、0.30mg、0.31mg、0.32mg、0.33mg、0.34mg、0.35mg、0.36mg、0.37mg、0.38mg、0.39mg、0.40mg、0.41mg、0.42mg、0.43mg、0.44mg、0.45mg、0.46mg、0.47mg、0.48mg、0.49mg又は0.5mgの用量で適用される。一実施形態において、コエンザイムQ10分子(例えばCoQ10)は標的組織に、皮膚1平方センチメートルに付きコエンザイムQ10分子(例えばCoQ10)約0.12mgの用量で適用される。上限又は下限としてのこれらの値のいずれか1つを有する範囲、例えば皮膚1平方センチメートルに付き約0.03〜約0.12mg、約0.05〜約0.15mg、約0.1〜約0.20mg、又は約0.32〜約0.49mgも本発明の一部であるとすることが理解されるべきである。
本発明の別の実施形態において、コエンザイムQ10分子はCoQ10分子クリームの形で、皮膚1平方センチメートルに付きCoQ10分子クリーム0.5〜10ミリグラムの投薬量にて投与され、ここでCoQ10分子クリームは1〜5%のコエンザイムQ10分子、例えばCoQ10を含む。一実施形態において、CoQ10分子、例えばCoQ10クリームは、約3%のコエンザイムQ10分子、例えばCoQ10を含む。他の実施形態において、CoQ10分子クリームは、約1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%又は5%のコエンザイムQ10分子、例えばCoQ10を含む。各種の実施形態において、CoQ10分子クリームは、皮膚1平方センチメートルに付きCoQ10分子、例えばCoQ10クリーム約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5又は10ミリグラムの投薬量で投与される。上限又は下限としてのこれらの値のいずれか1つを有する範囲、例えば皮膚1平方センチメートルに付きCoQ10分子、例えばCoQ10クリーム約0.5〜約5.0mg、約1.5〜2.5mg、又は約2.5〜5.5mgも本発明の一部であるとすることが理解されるべきである。
別の実施形態において、コエンザイムQ10分子はCoQ10クリームの形で、皮膚1平方センチメートルに付きCoQ10分子(例えばCoQ10)クリーム3〜5ミリグラムの投薬量にて投与され、ここでCoQ10分子(例えばCoQ10)クリームは1〜5%のコエンザイムQ10を含む。一実施形態において、CoQ10分子(例えばCoQ10)クリームは、約3%のコエンザイムQ10を含む。他の実施形態において、CoQ10分子(例えばCoQ10)クリームは、約1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%又は5%のコエンザイムQ10を含む。各種の実施形態において、CoQ10分子(例えばCoQ10)クリームは、皮膚1平方センチメートルに付きCoQ10分子(例えばCoQ10)クリーム約3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9又は5.0ミリグラムの投薬量で投与される。上限又は下限としてのこれらの値のいずれか1つを有する範囲、例えば皮膚1平方センチメートルに付きCoQ10分子(例えばCoQ10)クリーム約3.0〜約4.0mg、約3.3〜5.3mg、又は約4.5〜4.9mgも本発明の一部であるとすることが理解されるべきである。
本発明のある態様は、コエンザイムQ10を処置又は予防が行われるようにヒトに局所投与することによって、ヒトの肉腫を処置又は予防する方法を提供し、ここでコエンザイムQ10は24時間につき1回以上、6週間以上にわたって局所適用される。
本発明のある態様は、相A、B、C、D及びEを調製するステップと、3%CoQ10クリームの水中油型乳剤が形成されるようにすべての相を合わせるステップとを含む、コエンザイムQ10クリーム3%を調製する方法を提供する。
いくつかの実施形態において、相A成分は、4.00%w/wの安息香酸C12-15アルキルNF、2.00%w/wのセチルアルコールNF、4.5%w/wのステアリン酸グリセリル/PEG-100及び1.50%w/wのステアリルアルコールNFを含むが、相B成分は、5.00%w/wのジエチレングリコールモノエチルエーテルNF、2.00%w/wのグリセリンUSP、1.50%w/wのプロピレングリコールUSP、0.475%w/wのフェノキシエタノールNF、16.725%w/wの精製水USP及び40.00%w/wのカルボマー分散剤2%を含み、相C成分は、0.50%w/wの乳酸USP、2.00%w/wの乳酸ナトリウム溶液USP、1.30%w/wのトロラミンNF、及び2.50%w/wの精製水USPを含む。さらにこれらの実施形態において、相D成分は1.00%w/wの二酸化チタンUSPを含むが、相E成分は15%w/wのCoQ10 21%濃縮物を含む。
ある他の実施形態において、相A成分は、4.00%w/wのカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、2.00%w/wのセチルアルコールNF、4.5%w/wのステアリン酸グリセリル/PEG-100及び1.50%w/wのステアリルアルコールNFを含むが、相B成分は、5.00%w/wのジエチレングリコールモノエチルエーテルNF、2.00%w/wのグリセリンUSP、1.50%w/wのプロピレングリコールUSP、0.475%w/wのフェノキシエタノールNF、16.725%w/wの精製水USP及び40.00%w/wのカルボマー分散剤2%を含み、相C成分は、0.50%w/wの乳酸USP、2.00%w/wの乳酸ナトリウム溶液USP、1.30%w/wのトロラミンNF、及び2.50%w/wの精製水USPを含む。さらにこれらの実施形態において、相D成分は1.00%w/wの二酸化チタンUSPを含むが、相E成分は15%w/wのCoQ10 21%濃縮物を含む。
本発明のある実施形態において、(1)相A成分を好適な容器に添加して、水浴内で70〜80℃まで加熱するステップと;(2)カルボマー分散剤を除く相B成分を好適な容器に添加して、混合して混合相Bを形成するステップと;(3)相E成分を好適な容器に入れ、水浴を使用して50〜60℃にて相E成分を溶融して、溶融相Eを形成するステップと;(4)カルボマー分散剤を混合タンクに添加して、混合しながら70〜80℃まで加熱するステップと;(5)温度を70〜80℃に維持しながら、混合相Bを混合タンクに添加するステップと;(6)温度を70〜80℃に維持しながら、相C成分を混合タンクに添加するステップと;(7)相D成分を混合タンクに添加して、次に混合タンクの内容の混合及び均質化を続けるステップと;次に(8)均質化を停止して、混合タンクの内容物を50〜60℃に冷却するステップと;次に(9)混合を中止して、溶融相Eを混合タンクに添加して分散液を形成するステップと;(10)次に、分散液が滑らかで均一になるまで混合を再開するステップと;次に(11)混合タンクの内容物を45〜50℃まで冷却するステップとを含む、コエンザイムQ10クリーム3%の調製方法が提供される。
本発明のいくつかの他の実施形態において、CoQ10クリーム3%を含む医薬組成物が提供される。クリームは、組成物の4.00%w/wの安息香酸C12-15アルキル、組成物の2.00%w/wのセチルアルコール、1.5%w/wのステアリルアルコール、4.5%w/wのステアリン酸グリセリル及びPEG-100を有する相A;2.00%w/wのグリセリン、1.5%w/wのプロピレングリコール、5.0%w/wのエトキシジグリコール、0.475%w/wのフェノキシエタノール、40.00%w/wのカルボマー分散剤、16.725%w/wの精製水を有する相B;1.300%w/wのトリエタノールアミン、0.500%w/wの乳酸、2.000%w/wの乳酸ナトリウム溶液、2.5%w/wの水を有する相C;1.000%w/wの二酸化チタンを有する相D;及び15.000%w/wのCoQ10 21%濃縮物を有する相Eを含む。いくつかの実施形態において、カルボマー分散剤は、水、フェノキシエタノール、プロピレングリコール及びカルボマー940を含む。
本発明のいくつかの他の実施形態において、CoQ10クリーム3%を含む医薬組成物が提供される。クリームは、組成物の4.00%w/wのカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、組成物の2.00%w/wのセチルアルコール、1.5%w/wのステアリルアルコール、4.5%w/wのステアリン酸グリセリル及びPEG-100を有する相A;2.00%w/wのグリセリン、1.5%w/wのプロピレングリコール、5.0%w/wのエトキシジグリコール、0.475%w/wのフェノキシエタノール、40.00%w/wのカルボマー分散剤、16.725%w/wの精製水を有する相B;1.300%w/wのトリエタノールアミン、0.500%w/wの乳酸、2.000%w/wの乳酸ナトリウム溶液、2.5%w/wの水を有する相C;1.000%w/wの二酸化チタンを有する相D;及び15.000%w/wのCoQ10 21%濃縮物を有する相Eを含む。いくつかの実施形態において、カルボマー分散剤は、水、フェノキシエタノール、プロピレングリコール及びカルボマー940を含む。
本発明のいくつかの他の実施形態において、CoQ10クリーム1.5%を含む医薬組成物が提供される。クリームは、5.000%w/wの安息香酸C12-15アルキル、2.000%w/wのセチルアルコール、1.5%w/wのステアリルアルコール、4.500%w/wのステアリン酸グリセリル及びステアリン酸PEG-100を有する相A;2.000%w/wのグリセリン、1.750%w/wのプロピレン、5.000%w/wのエトキシジグリコール、0.463%w/wのフェノキシエタノール、50%w/wのカルボマー分散剤、及び11.377%w/wの精製水を有する相B;1.3%w/wのトリエタノールアミン、0.400%w/wの乳酸、2.000%w/wの乳酸ナトリウム溶液及び4.210%w/wの水を有する相C;1.000%w/wの二酸化チタンを有する相D;並びに1.500%w/wのCoQ10 21%濃縮物を有する相Eを含む。
本発明のいくつかの他の実施形態において、CoQ10クリーム1.5%を含む医薬組成物が提供される。クリームは、5.000%w/wのカプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、2.000%w/wのセチルアルコール、1.5%w/wのステアリルアルコール、4.500%w/wのステアリン酸グリセリル及びステアリン酸PEG-100を有する相A;2.000%w/wのグリセリン、1.750%w/wのプロピレン、5.000%w/wのエトキシジグリコール、0.463%w/wのフェノキシエタノール、50%w/wのカルボマー分散剤、及び11.377%w/wの精製水を有する相B;1.3%w/wのトリエタノールアミン、0.400%w/wの乳酸、2.000%w/wの乳酸ナトリウム溶液及び4.210%w/wの水を有する相C;1.000%w/wの二酸化チタンを有する相D;並びに1.500%w/wのCoQ10 21%濃縮物を有する相Eを含む。いくつかの実施形態において、カルボマー分散剤は、水、フェノキシエタノール及びプロピレングリコールを含む。
1.併用療法
ある実施形態において、CoQ10分子及び/又はその医薬組成物は、少なくとも1つの他の治療剤を用いる併用療法で使用することができる。CoQ10分子及び/又はその医薬組成物並びに他の治療剤は、相加的に、又はさらに好ましくは相乗的に作用することができる。一実施形態において、CoQ10分子及び/又はその医薬組成物は、別の治療剤の投与と同時に投与される。別の実施形態において、化合物及び/又はその医薬組成物は、他の治療剤の投与の前に又はそれに続いて投与される。
一実施形態において、本発明の治療方法は、追加の薬剤を含む。例えば一実施形態において、本発明の治療方法で使用するための追加の薬剤は、化学治療剤である。
化学治療剤は一般に、例えば:1.トポイソメラーゼII阻害剤(細胞傷害性抗生物質)、例えばアントラサイクリン/アントラセンジオン、例えばドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン及びネモルビシン、アントラキノン、例えばミトキサントロン及びロソキサントロン、並びにポドフィロトキシン(podophillotoxine)、例えばエトポシド及びテニポシド;2.微小管形成に影響を及ぼす薬剤(有糸分裂阻害剤)、例えば植物アルカロイド(例えば生物活性及び細胞傷害性である、植物に由来するアルカリ性窒素含有分子のファミリーに属する化合物)、例えばタキサン、例えばパクリタキセル及びドセタキセル、並びにビンカアルカロイド、例えばビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビン、並びにポドフィロトキシンの誘導体;3.アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード、エチレンイミン化合物、スルホン酸アルキル並びにニトロソウレア、ダカルバジン、シクロホスファミド、イホスファミド及びメルファランなどのアルキル化作用を有する他の化合物;4.抗代謝産物(ヌクレオシド阻害剤)、例えば葉酸塩、例えば葉酸、フルオロピリミジン(fiuropyrimidine)、プリン又はピリミジン類似体、例えば5-フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、メトトレキサート及びエダトレキサート;5.トポイソメラーゼI阻害剤、例えばトポテカン、イリノテカン、並びに9-ニトロカンプトテシン、及びカンプトテシン誘導体;並びに6.白金化合物/錯体、例えばシスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン、を含む各種のクラスに属する。本発明の方法で使用するための例示的な化学治療剤は、限定されるわけではないが、アミフォスチン(エチヨル)、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(carrnustine)(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシンリポ(ドキシル)、ゲムシタビン(ジェムザール)、ダウノルビシン、ダウノルビシンリポ(ダウノキソーム)、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT-Ill、10-ヒドロキシ-7-エチル-カンプトテシン(SN38)、ダカルバジン、S-Iカペシタビン、フトラフル、5'デオキシフルオロウリジン、UFT、エニルウラシル、デオキシシチジン、5-アザシトシン、5-アザデオキシシトシン、アロプリノール、2-クロロアデノシン、トリメトレキサート、アミノプテリン、メチレン-10-デアザアミノプテリン(MDAM)、オキサプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、プラチナ-DACH、オルマプラチン、CI-973、JM-216、及びその類似体、エピルビシン、リン酸エトポシド、9-アミノカンプトテシン、10,11-メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン、9-ニトロカンプトテシン、TAS103、ビンデシン、L-フェニルアラニンマスタード、イホスファミド メフォスファミド、ペルフォスファミド、トリホスファミド カルムスチン、セムスチン、エポチロンA-E、トムデックス、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アムサクリン、リン酸エトポシド、カレニテシン、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジドブジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ペントスタチン、トリメトレキセート、クラドリビン、フロキシウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イフォスファミド、イダルビシン、メスナ、イリノテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペグアスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロランブシル、シスプラチン、ドキソルビシン、パクリタキセル(タキソール)及びブレオマイシン、並びに特定の腫瘍又は癌の適切な治療標準に基づいて当業者に容易に理解されるその組合せを含む。
別の実施形態において、本発明の併用療法で使用するための追加の薬剤は、生物剤である。
生物剤(生物製剤とも呼ばれる)は、生物系の生成物、例えば生物、細胞、又は組換え系の生成物である。このような生物剤の例は、核酸分子(例えばアンチセンス核酸分子)、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、抗体、例えばモノクローナル抗体、抗血管新生剤、及びサイトカインを含む。例示的な生物剤は、下でさらに詳細に議論され、一般に、例えば:1.ホルモン、ホルモン類似体、及びホルモン複合体、例えばエストロゲン及びエストロゲン類似体、プロゲステロン、プロゲステロン、プロゲステロン類似体及びプロゲスチン、アンドロゲン、アデノコルチコステロイド、抗エストロゲン、抗アンドロゲン、抗テストステロン、副腎ステロイド阻害剤、及び抗黄体形成ホルモン;並びに2.酵素、タンパク質、ペプチド、ポリクローナル及び/又はモノクローナル抗体、例えばインターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子などを含む各種のクラスに属する。
一実施形態において、生物製剤はインターフェロンである。インターフェロン(IFN)は、体内で自然に発生するタイプの生物剤である。インターフェロンは実験室でも産生されて、生物療法にて癌患者に与えられる。インターフェロンは、癌患者の免疫系が癌細胞に対して作用する方法を改善することが示されている。
インターフェロンは、癌細胞に直接働いて、その増殖を遅延させ得る、又はインターフェロンは癌細胞をより正常な挙動を有する細胞に変化させ得る。いくつかのインターフェロンは、癌細胞への対抗を補助する血流中の白血球のタイプである、ナチュラルキラー細胞(NK)細胞、T細胞、及びマクロファージも刺激し得る。
一実施形態において、生物製剤はインターロイキンである。インターロイキン(IL)は、多くの免疫細胞の増殖及び活性を刺激する。インターロイキンは、体内で自然に出現するが、実験室でも作製することができるタンパク質(サイトカイン及びケモカイン)である。
いくつかのインターロイキンは、癌細胞を破壊するよう働く、リンパ球などの免疫細胞の増殖及び活性を刺激する。
別の実施形態においては、生物製剤はコロニー刺激因子である。
コロニー刺激因子(CSF)は、患者に投与されて、骨髄内の幹細胞がより多くの血液細胞を産生するよう促進するタンパク質である。体は常に、とりわけ癌が存在するときに、新たな白血球、赤血球、及び血小板を必要とする。CSFは、化学療法と共に投与されて、免疫系を増強するのを補助する。癌患者が化学療法を受けるとき、骨髄が新たな血液細胞を産生する能力は抑制され、患者は感染をより発症しやすくなる。免疫系の一部は血液細胞なしでは機能できず、それゆえコロニー刺激因子は、骨髄幹細胞が白血球、血小板、及び赤血球を産生するよう促進する。
他の癌処置は適正な細胞産生によって、患者が引き続いてより高い用量の化学療法を安全に受けられるようにできる。
別の実施形態において、生物製剤は抗体である。抗体、例えばモノクローナル抗体は、癌細胞に結合する、実験室で産生される物質である。
癌破壊剤が体内に導入されるとき、癌破壊剤は抗体を探し出して、癌細胞を死滅させる。モノクローナル抗体剤は、健常細胞を破壊しない。モノクローナル抗体は、各種の機構を通じてその治療効果を達成する。モノクローナル抗体は、アポトーシス又はプログラムされた細胞死をもたらすのに直接効果を有することができる。モノクローナル抗体は、増殖因子受容体を遮断することができ、腫瘍細胞の増殖を有効に停止させる。モノクローナル抗体を発現する細胞において、モノクローナル抗体は、抗イディオタイプ抗体の形成を引き起こすことができる。
本発明の併用処置で使用され得る抗体の例は、抗インスリン様増殖因子受容体-1、抗CD20抗体、例えば限定されるわけではないが、セツキシマブ、トシツモマブ、リツキシマブ、及びイブリツモマブを含む。抗HER2抗体も、癌の処置のために環境影響因子と併用して使用され得る。一実施形態において、抗HER2抗体はトラスツズマブ(ハーセプチン)である。癌の処置のために環境影響因子と併用して使用され得る抗体の他の例は、抗CD52抗体(例えばアレムツズマブ)、抗CD-22抗体(例えばエピラツズマブ)、及び抗CD33抗体(例えばゲムツズマブオゾガマイシン)を含む。抗VEGFも、癌の処置のために環境影響因子と併用して使用され得る。一実施形態において、抗VEGF抗体はベバシズマブである。他の実施形態において、生物剤は、抗EGFR抗体、例えばセツキシマブである抗体である。別の例は、抗糖タンパク質17-1A抗体のエドレコロマブである。
別の実施形態において、生物製剤はサイトカインである。サイトカイン療法はタンパク質(サイトカイン)を使用して、被験体の免疫系が癌性である細胞を認識及び破壊するのを補助する。サイトカインは、免疫系によって体内で自然に産生されるが、実験室でも作製することができる。この療法は、進行した黒色腫と共に、及びアジュバント療法(原発性癌処置の後に、又はこれに加えて投与される療法)と共に使用される。サイトカイン療法は体のあらゆる部分に到達して、癌細胞を死滅させ、腫瘍が増殖するのを防止する。
別の実施形態において、生物製剤は融合タンパク質である。例えば、組換えヒトApo2L/TRAIL(Genentech)は併用療法で使用され得る。Apo2/TRAILは、アポトーシス(プログラムされた細胞死)の調節に関与するアポトーシス促進性受容体DR4及びDR5を両方とも活性化するように設計された、最初の2重アポトーシス促進性受容体アゴニストである。
一実施形態において、生物製剤はアンチセンス核酸分子である。
本明細書で使用する場合、「アンチセンス」核酸は、タンパク質をコードする「センス」核酸に相補的である、例えば2本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的である、mRNA配列に相補的である、又は遺伝子のコード鎖に相補的であるヌクレオチド配列を含む。したがって、アンチセンス核酸はセンス核酸に水素結合することができる。
一実施形態において、生物剤は、例えば血管新生を増強する分子の、例えばbFGF、VEGF及びEGFRのsiRNA分子である。一実施形態において、血管新生を阻害する生物剤はRNAiを媒介する。RNA干渉(RNAi)は、2本鎖RNA(dsRNA)を使用して、dsRNAと同じ配列を含有するメッセンジャーRNA(mRNA)を分解する、転写後標的化遺伝子サイレンシング技法である(Sharp, P.A. and Zamore, P.D. 287, 2431-2432 (2000);Zamore, P.D., et al. Cell 101, 25-33 (2000);Tuschl, T. et al. Genes Dev. 13, 3191-3197 (1999);Cottrell TR, and Doering TL. 2003. Trends Microbiol. 11:37-43;Bushman F.2003. MoI Therapy. 7:9-10;McManus MT and Sharp PA. 2002. Nat Rev Genet. 3.737-47)。プロセスが行われるのは、内因性リボヌクレアーゼがより長いdsRNAを切断して、低分子干渉RNA又はsiRNAと呼ばれる、より短い、例えば21又は22ヌクレオチド長RNAにするときである。次により小さいRNAセグメントが、標的mRNAの分解を媒介する。RNAiの合成キットは、例えばNew England Biolabs又はAmbionから市販されている。一実施形態において、アンチセンスRNAで使用するための1つ以上の化学薬品を、RNAiを媒介する分子中で用いることができる。
細胞における特定のタンパク質の発現を下方調節するためのアンチセンス核酸の使用は、当分野で周知である(例えばWeintraub, H. et al., Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis, Reviews - Trends in Genetics, Vol. 1(1) 1986;Askari, F.K. and McDonnell, W.M. (1996) N. Eng. J. Med. 334:316-318;Bennett, M.R. and Schwartz, S.M. (1995) Circulation 92:1981-1993;Mercola, D. and Cohen, J.S. (1995) Cancer Gene Ther. 2:47-59;Rossi, JJ. (1995) Br. Med. Bull. 51.217-225;Wagner, R.W. (1994) Nature 372:333-335を参照)。アンチセンス核酸分子は、別の核酸分子のコード鎖(例えばmRNA配列)に相補的であるヌクレオチド配列を含み、したがって他の核酸分子のコード鎖に水素結合することができる。mRNAの配列に相補的なアンチセンス配列は、mRNAのコード領域、mRNAの5'若しくは3'非翻訳領域又はコード領域と非翻訳領域を橋架けする領域(例えば5'非翻訳領域とコード領域の接合部にて)に見出される配列に相補的であることができる。さらにアンチセンス核酸は順次、mRNAをコードする遺伝子の調節領域、例として転写開始配列又は調節エレメントに相補的であることができる。好ましくは、アンチセンス核酸は、コード鎖上の又はmRNAの3'未翻訳領域内の開始コドンに先行する又は開始コドンに及ぶ領域に相補的であるように設計されている。
血管新生を増強する分子のコード鎖配列を考えると、本発明のアンチセンス核酸は、ワトソン・クリック塩基対合則に従って設計することができる。アンチセンス核酸分子は、mRNAのコード領域全体に相補的であることができるが、さらに好ましくはmRNAのコード又は非コード領域の一部のみにアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAの翻訳開始部位の周囲の領域に相補的であることができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50ヌクレオチドであることができる。
本発明のアンチセンス核酸は、当分野で公知の手順を使用する化学合成及び酵素ライゲーション反応を使用して作製することができる。例えばアンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然型ヌクレオチド、又は分子の生物安定性を向上させる若しくはアンチセンス核酸とセンス核酸との間に形成された2本鎖の物理的安定性を向上させるように設計された多様に修飾されたヌクレオチドを使用して、化学的に合成することができ、例えばホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。アンチセンス核酸を生成するために使用できる修飾ヌクレオチドの例は、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルクエオシン、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6-ジアミノプリンを含む。細胞における発現を阻害するために、1つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用することができる。あるいはアンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス配向でサブクローニングされている発現ベクターを使用して生物学的に産生することができる(すなわち以下の小節でさらに記載されるように、挿入された核酸から転写されたRNAは、目的の標的核酸に対してアンチセンス配向であろう)。
また別の実施形態において、本発明のアンチセンス核酸分子は、a-アノマー核酸分子である。a-アノマー核酸分子は、通常のa-ユニットとは対照的に、鎖が相互に平行に並んだ、相補的RNAとの特異的な2本鎖ハイブリッドを形成する(Gaultier et al. (1987) Nucleic Acids. Res. 15:6625-6641)。アンチセンス核酸分子は、2'-o-メチルリボヌクレオチド(Inoue et al. (1987) Nucleic Acids Res. 15:6131-6148)又はキメラRNA-DNA類似体(Inoue et al. (1987) FEBS Lett. 215:327-330)も含むことができる。
別の実施形態において、本発明のアンチセンス核酸は、RNAiを媒介する化合物である。RNA干渉剤は、限定されるわけではないが、標的遺伝子又はゲノム配列と相同であるRNA分子を含む核酸分子、「低分子干渉RNA」(siRNA)、「「短ヘアピン」又は「小ヘアピンRNA」(shRNA)、及びRNA干渉(RNAi)による標的遺伝子の発現を妨害又は阻害する小分子を含む。RNA干渉は、2本鎖RNA(dsRNA)を使用して、dsRNAと同じ配列を含有するメッセンジャーRNA(mRNA)を分解する、転写後標的遺伝子サイレンシング技法である(Sharp, P.A. and Zamore, P.D. 287, 2431-2432 (2000);Zamore, P.D., et al. Cell 101, 25-33 (2000);Tuschl, T. et al. Genes Dev. 13, 3191-3197 (1999))。プロセスが行われるのは、内因性リボヌクレアーゼがより長いdsRNAを切断して、低分子干渉RNA又はsiRNAと呼ばれる、より短い、例えば21又は22ヌクレオチド長RNAにするときである。次により小さいRNAセグメントが、標的mRNAの分解を媒介する。RNAiの合成キットは、例えばNew England Biolabs及びAmbionから市販されている。一実施形態においてアンチセンスRNAで使用するための上述の1つ以上の化学薬品を用いることができる。
例えば血管新生を阻害する、分子をコードする核酸分子は、被験体の細胞でのコード化タンパク質の発現に好適な形で被験体中に導入され得て、本発明の方法においても使用され得る。血管新生を阻害する例示的な分子は、限定されるわけではないが、TSP-I、TSP-2、IFN-g、IFN-a、アンギオスタチン、エンドスタチン、ツマスタチン、カンスタチン、VEGI、PEDF、バソヒビン、及びプロラクチン2-メトキシエストラジオールの16kDaフラグメントを含む(総説については、Kerbel (2004) J. Clin Invest 114:884を参照)。
例えば全長又は部分cDNA配列は組換え発現ベクター中にクローニングされ、ベクターは標準分子生物学技法を使用して細胞中にトランスフェクトされる。cDNAは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用する増幅によって又は適切なcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって取得することができる。cDNAのヌクレオチド配列は、標準PCR方法によるcDNAの増幅を可能にするPCRプライマの設計に、又は標準ハイブリダイゼーション方法を使用してcDNAライブラリーをスクリーニングするために使用できるハイブリダイゼーションプローブの設計に使用することができる。cDNAの単離又は増幅の後に、DNAフラグメントは好適な発現ベクター中に導入される。
本発明の方法で使用するための例示的な生物剤は、限定されるわけではないが、ゲフィチニブ(イレッサ)、アナストロゾール(anastrazole)、ジエチルスチルベストロール(diethylstilbesterol)、エストラジオール、プレマリン、ラロキシフェン、プロゲステロン、ノルエチノドレル、エチステロン(esthisterone)、ジメチステロン(dimesthisterone)、酢酸メゲストロール、酢酸メドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、ノルエチステロン、メチルテストステロン、テストステロン、デキサメタゾン(dexamthasone)、プレドニゾン、コルチゾール、ソルメドロール、タモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、アミノグルテチミド、テストラクトン、ドロロキシフェン、アナストロゾール、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、ゴセレリン、フルタミド、ロイプロリド、トリプトレリン、アミノグルテチミド、ミトタン、ゴセレリン、セツキシマブ、エルロチニブ、イマチニブ、トシツモマブ、アレムツズマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、リツキシマブ、イブリツモマブチウキセタン、ベバシズマブ、デニロイキンジフチトクス、ダクリズマブ、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、抗4-lBB、抗4-lBBL、抗CD40、抗CD154、抗OX40、抗OX40L、抗CD28、抗CD80、抗CD86、抗CD70、抗CD27、抗HVEM、抗LIGHT、抗GITR、抗GITRL、抗CTLA-4、可溶性OX40L、可溶性4-IBBL、可溶性CD154、可溶性GITRL、可溶性LIGHT、可溶性CD70、可溶性CD80、可溶性CD86、可溶性CTLA4-Ig、GVAX(登録商標)、及び特定の腫瘍又は癌の適切な標準治療に基づいて当業者にただちに明らかとなるその組合せを含む。薬剤の可溶形は、薬剤を例えばIg-Fc領域と機能的に連結することによって、例えば融合タンパク質として作製され得る。
1を超える、例えば1、2、3、4、5の追加の薬剤がCoQ10分子と併用して投与され得ることに注目すべきである。例えば一実施形態において、2つの化学治療剤がCoQ10分子と併用して投与され得る。別の実施形態において、化学治療剤、生物剤、及びCoQ10分子が投与され得る。
各種の生物剤の各種の形が使用され得る。これらは制限なく、腫瘍中にインプラント、注射又はそうでなければ挿入されたときに生物学的に活性化される、プロフォーム分子、非荷電分子、分子複合体、塩、エーテル、エステル、アミドなどのような形を含む。
本発明は、何ら制限するものとして解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに説明される。本出願を通じて引用されているすべての参考文献、例えば文献、発行された特許、並びに公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に完全に組み入れられている。
発明の例示:
実施例1:MIMとしてのCoQ10の同定
潜在的なMIMとしてCoQ10を評価するために、酸化型のCoQ10を癌細胞系及び正常な対照細胞系の両方を含む細胞系のパネルに外部から添加して、パネルの各細胞系について細胞微小環境プロフィールに誘導された変化を評価した。mRNAレベル及びタンパク質レベルの両方を含む、細胞形態/生理機能に対する及び細胞組成に対する変化を、正常細胞との比較として罹患細胞について評価及び比較した。これらの実験結果は、CoQ10、特にCoQ10の酸化型をMIMとして同定した。
実験の第1セットでは、細胞形態/生理機能に対する変化をCoQ10に対する細胞の感受性及びアポトーシス応答を検査することによって評価した。対照細胞系(ケラチノサイト及びメラノサイトの初代培養)及び複数の皮膚癌細胞系(SK-MEL-28、非転移性皮膚黒色腫;SK-MEL-2、転移性皮膚黒色腫;又はSCC、扁平上皮細胞癌腫;PaCa2、膵臓癌細胞系;又はHEP-G2、肝臓癌細胞系)を含む皮膚細胞系のパネルを各種のレベルのコエンザイムQ10によって処置した。これらの実験結果は、癌細胞系が、対照細胞系と比較して改変された用量依存性応答を、癌細胞のみにおけるアポトーシス及び細胞死の誘導と共に呈することを証明した。
次に、CoQ10による処置後に細胞の組成の変化を評価するアッセイを用いた。リアルタイムPCRアレイ法を使用して、mRNAレベルでの遺伝子発現の変化を分析した。相補的実験において、抗体マイクロアレイ法、2次元ゲル電気泳動、それに続く質量分析キャラクタリゼーションを使用するタンパク質同定を使用することによって、及びウェスタンブロット分析によって、タンパク質レベルでの遺伝子発現の変化を分析した。これらのアッセイからの結果は、検査された細胞系において、遺伝子発現の著しい変化がmRNAレベル及びタンパク質レベルの両方で、酸化型CoQ10の添加により誘導されることを証明した。CoQ10処置によって調節された遺伝子は、アポトーシス、癌生物学及び細胞増殖、解糖及び代謝、分子輸送、並びに細胞シグナル伝達を含む、複数の細胞経路中にクラスター化されることが見出された。
CoQ10の細胞中への進入を確認し、細胞中に存在するCoQ10のレベル及び型を決定するために実験を行った。特に、ミトコンドリア中に存在するコエンザイムQ10のレベル、並びにCoQ10の型(すなわち酸化型又は還元型)を、CoQ10で処置した細胞からのミトコンドリア濃縮調製物を分析することによって決定した。ミトコンドリア中に存在するコエンザイムQ10のレベルは、外因性Q10の添加に伴って、時間及び用量依存的に増加することが確認された。驚くべき予想外の結果において、CoQ10はミトコンドリア中に主に酸化型で存在することが決定された。加えて、ミトコンドリア濃縮サンプルからのタンパク質のレベルの変化を2次元ゲル電気泳動及び質量分析キャラクタリゼーションによるタンパク質同定によって分析した。これらの実験からの結果は、検査された時間経過でのミトコンドリア中の酸化型CoQ10のレベルが、代謝経路及びアポトーシス経路に関連する特異的タンパク質のmRNAレベル及びタンパク質レベルの調節によって明示されるように、多岐にわたる細胞変化と相関することを証明した。
本明細書で出願人らによって記載された結果は、内因性分子CoQ10、特にCoQ10の酸化型をMIMとして同定した。例えば結果がCoQ10をMIMとして同定したのは、CoQ10がmRNAレベル及びタンパク質レベルの両方での遺伝子発現の変化を誘導することが観察されたためである。結果が、CoQ10が多次元特徴を有するとして同定したのは、CoQ10が、正常な(例えば非癌性)状態と比較した疾患状態(例えば癌)において、細胞形態/生理機能及び細胞組成の示差的変化(例えばmRNAレベル及びタンパク質レベルの両方での遺伝子発現の示差的変化)を誘導したためである。その上、結果は、CoQ10が細胞に進入することができ、それゆえ治療効果及び担体効果の両方を呈するという点で多次元特徴を有するとして同定した。
実施例2:肉腫の関連プロセス及びバイオマーカーを同定する方法
細胞系、例えば肉腫細胞系が目的の分子によって処置された細胞ベースアッセイから、処置細胞対非処置細胞の相違をmRNAアレイ、タンパク質抗体アレイ、及び2次元ゲル電気泳動によって評価する。比較サンプル分析からMIM又はエピシフター、例えばCoQ10によって調節されることが同定されたタンパク質を、経路分析を使用するシステム・バイオロジー・パースペクティブ(Systems Biology perspective with pathway analysis)(Ingenuity IPA software)及び公知の文献の検討から評価した。潜在的な治療標的又はバイオマーカー標的として同定されたタンパク質をウェスタンブロット分析、siRNAノックダウン、又は組換えタンパク質産生及びキャラクタリゼーション方法などの確認アッセイに供した。
実施例3:コエンザイムQ10に対する発癌性細胞及び正常細胞の相対的感受性
種々の発癌性及び正常細胞系統に対するコエンザイムQ10処置の効果を試験及び比較した。コエンザイムQ10に対する細胞の感受性は、アポトーシスの誘導をモニターすることによって評価した。細胞のCoQ10処置は、材料及び方法において以下に詳細に記載されるように実行した。アポトーシスの誘導は、以下に記載されるように、早期アポトーシスの指標(例えば、Bcl-2発現、カスパーゼ活性化、及びアネキシンVアッセイを使用することによる)をモニターすることによって処置された細胞において評価した。これらの研究から、細胞系統のパネルにおいてアポトーシスを誘導するために必要である最小限のCoQ投薬量、例えば、CoQ10の濃度及び処置の時間を決定した。
予測されずかつ驚くべき結果において、データは、コエンザイムQ10処置の効力が、発癌性の増加及び/又はより大きな転移の潜在能力を示した細胞型、すなわち、より侵襲性の癌又は腫瘍から誘導された細胞型においてより大きかったことを実証した。これらの研究の結果は、表1において以下に要約されている。このデータは、CoQ10が、より侵襲性の癌の状態にある細胞に対して、時間と濃度の両方に依存的な様式でより有効であることを実証する。さらに、驚くべき相違する効果が、発癌性細胞と比較した場合に、正常細胞に対して観察された。具体的には、コエンザイムQ10は、正常組織環境においてわずかに支持的な役割を示すことが予想に反して見い出され、ここで、増殖及び移動の増加が、ケラチン形成細胞及び皮膚線維芽細胞を含む正常細胞において観察された。
癌における遺伝子調節及びタンパク質メカニズムに対するコエンザイムQ10の効果は、正常細胞においては異なっている。細胞骨格アーキテクチャ、膜の流動性、輸送メカニズム、免疫調節、血管新生、細胞周期制御、ゲノム安定性、酸化制御、解糖流量、代謝制御、及び細胞外マトリックスタンパク質の完全性などの、重要な細胞の機構及び構成要素は、異常調節され、従って、細胞の遺伝的及び分子的なフィンガープリントが変化している。疾患環境は、細胞制御プロセスの支配が優勢である。本明細書に提供されるデータは、アポトーシス能力の回復を可能にする様式で重要な上述のプロセスのいくつかを正常化することによって、CoQ10が、より高いレベルの効力を発揮していることを示唆する(例えば、正常細胞に対する癌細胞において、及びより侵襲性ではない又は非侵襲性の癌状態の細胞と比較した場合のより侵襲性の癌状態の細胞において)。
材料及び方法
細胞の調製及び処置
ディッシュ又はフラスコで調製された細胞
細胞は、37℃インキュベーター中、5%CO2レベルで、10%ウシ胎仔血清(FBS)、1%PSA(ペニシリン、ストレプトマイシン、アンホテリシンB)(Invitrogen及びCellgro)を添加した関連培地を含むT-75フラスコ中で、70〜80%コンフルエンスに達するまで培養した。処置のために細胞を収穫するために、フラスコに1mLトリプシンを加え、吸引し、さらに3mLでトリプシン処置し、そして37℃で3〜5分間インキュベートした。次いで、細胞を、等量の培地で中和し、その結果生じた溶液は10,000rpmで8分間遠心分離した。上清を吸引し、細胞を8.5mLの培地に再懸濁した。500μlの再懸濁物と9.5mLのイソプロパノールの混合物を、コールターカウンターによって2回読み取り、各ディッシュに播種される適切な細胞の数を決定した。対照及び0〜200μMの濃度範囲の群を3連で試験した。500μM CoQ-10ストック溶液から段階希釈を実施して、適切なディッシュ中での所望の実験濃度を達成した。ディッシュは、細胞型及び実験プロトコールに依存して、5%CO2レベルで0〜72時間の間、37℃インキュベーター中でインキュベートした。
タンパク質の単離及び定量
ディッシュ中で調製される細胞
細胞処置インキュベーション時間が完了後、タンパク質の単離を実施した。すべての処置群のディッシュは、2mLの氷冷1×リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で2回、1mLで1回洗浄した。PBSは最初の2回の洗浄後のみ、ディッシュから吸引した。細胞を穏やかにかき取り、3回目の洗浄からの最終量を使用して微量遠心分離チューブに収集し、10,000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後、上清を吸引し、ペレットを50μLの溶解緩衝液(100μLの溶解緩衝液毎に1μLのプロテアーゼ及びホスファターゼ(phosphotase)インヒビター)で溶解した。次いで、サンプルを-20℃で一晩凍結した。
フラスコ中で調製される細胞
細胞処置インキュベーション時間が完了後、タンパク質の単離を実施した。すべての処置群のフラスコは、5mLの氷冷1×PBSで2回、3mLで1回洗浄した。PBSは最初の2回の洗浄後のみ、フラスコから吸引した。細胞を穏やかにかき取り、3回目の洗浄からの最終量を使用して15mL遠心分離チューブに収集し、10,000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離後、上清を吸引し、ペレットを適切な量の溶解緩衝液(100μLの溶解緩衝液毎に1μLのプロテアーゼ及びホスファターゼインヒビター)で溶解した。溶解緩衝液の量はペレットサイズに依存した。サンプルを微量遠心チューブに移し、-20℃で一晩凍結した。
タンパク質の定量
サンプルを-4℃で融解し、超音波処理して、タンパク質単離の翌日における均質化を確実にした。タンパク質の定量は、マイクロBCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して実施した。免疫ブロッティングのためのサンプルを調製するために、βメルカプトエタノール(Sigma)対サンプル緩衝液(Bio-Rad)1:19溶液を調製した。サンプルは、βメルカプトエタノール-サンプル緩衝液を用いて1:1に希釈し、95℃で5分間煮沸し、そして-20℃で一晩凍結させた。
免疫ブロッティング
Bcl-2、カスパーゼ9、シトクロムc
ウェルあたりローディングするためのサンプルの量は、BCAタンパク質アッセイから得られたそのままの平均タンパク質濃度を使用して決定した。約30〜60μgのタンパク質を各処置の時点についてローディングした。タンパク質は、12%Tris-HClレディーゲル(Bio-Rad)又はハンドキャストゲル上で、1×泳動緩衝液中で、85及び100ボルトにて3連で泳動した。次いで、タンパク質を、100ボルトで1時間、ニトロセルロースペーパーに転写し、5%ミルク溶液中でさらに1時間ブロッキングした。膜を、一晩、-4℃で一次抗体(1μL Ab:1000μL TBST)(Cell Signaling)中に配置した。翌日、膜を、10分間を3回、各々Tris緩衝化生理食塩水Tween-20(TBST)で洗浄し、二次抗体(抗ウサギ;1μL Ab:1000μL TBST)を-4℃で1時間適用した。膜を、再度、10分間を3回、TBSTで洗浄し、ピコ又はフェムト基質を使用する化学発光が完了した(Pierce)。次いで、膜を最良の視覚的結果を生じる時間間隔で発色させた。発色後、アクチンレベルが測定可能になるまで、膜をTBST中で-4℃に維持した。
アクチン
膜は、-4℃で1時間、一次アクチン抗体(1μL Ab:5000μL TBST)(Cell Signaling)中に配置し、10分間を3回、各々TBSTで洗浄し、二次抗体(抗マウス;1μL Ab:1000μL TBST)を-4℃で1時間適用した。膜は、再度、10分間を3回、各々TBSTで洗浄し、ピコ基質を使用する化学発光が完了した(Pierce)。次いで、膜は、最良の視覚的結果を生じる時間間隔で発色させた。
アネキシンVアッセイ
細胞は、PBS10X中で2回洗浄し、結合緩衝液(0.1M HEPES、pH7.4;1.4M NaCl;25mM CaCl2)に再懸濁した。100μlのサンプルを、5μlのアネキシン-PE染料又は7-ADDとともに、培養チューブに加えた。細胞を混合し、遮光して室温にて15分間インキュベートした。その後、400μlの1×結合緩衝液を各サンプルに加え、これらをフローサイトメトリーによる分析に供した。
以下の実施例4〜7において、目標は、特にNCIES0808細胞に対するCoQ10の作用のメカニズムに関する見識を得ることであった。NCIES0808細胞系は、ユーイング肉腫を有する患者から直接誘導されたものであり、従って、本研究において使用した最も関連性のある細胞系である。本プロジェクトの根底にある考えは、本研究がAPIの開発に有益となり、その作用のより良好な理解をコミュニティに提供することである。
本実験の意図は、以下の実験に基いてRNAレベル及びタンパク質レベルで細胞環境内の変化を特徴づけることである:
(1) PCRアレイ
血管新生
糖尿病
ミトコンドリア
(2) 抗体アレイ
(3) 2次元ゲル分析
(4) ウエスタン分析。
実施例4〜8の材料及び方法
コエンザイムQ10ストック
500μMコエンザイムQ10(細胞増殖培地中5%イソプロパノール)を以下のように調製した。500μMコエンザイムQ10ストック10mLは、毎回更新した。分子量:863.34
(0.0005mol/L)(0.010L)(863.34g/mol)=0.004317g
500μMストック10mLを作製するために、4.32mgコエンザイムQ10を15mLファルコンチューブに秤量して、イソプロパノール500μLを添加した。溶液を完全に溶解するために撹拌しながら、50〜60℃の水浴で加温した。本溶液に培地9.5mL(細胞を培養したのと同じ培地)を添加した。
NCIES0808細胞
NCIES0808細胞は、glutamax及び17mMグルコースを5%FBS、Penstrep及びアンホテリシンと共に含むDMEM/F12中で増殖させた。細胞を継代させて、実験に十分な容量を得た。
コエンザイムQ10処置及び全タンパク質単離
添加培地をQ10によって50及び100マイクロモル濃度に調整した。細胞を対照、50μM Q10、及び100μM Q10によって3連で処置した。タンパク質を処置フラスコ及び対照フラスコから3、6又は24時間後に単離した。タンパク質の単離のために、細胞はpH7.4の氷冷PBS 5mLによって3回洗浄した。細胞を次にPBS 3mL中でこすり取り、遠心分離によってペレット化し、pH7.4の溶解緩衝液(プロテアーゼ阻害剤及びホスファターゼ阻害剤を含む、80mM TRIS-HCl、1%SDS)に再懸濁させた。BCA法を使用してタンパク質濃度を定量した。
RNA単離:
RNeasy Miniキット(Qiagen, Inc., Valencia CA)キットをメーカーの説明書に従って使用して、細胞を各種の処置時間にRNA単離のために溶解させた。RNAを260nmにおける光学密度を測定することによって定量した。
第1鎖合成:
第1鎖cDNAを、RT2第1鎖合成キット(SABiosciences., Frederick MD)をメーカーの推奨に従って使用して、全RNA 1μgから合成した。
リアルタイムPCR:
第1鎖合成からの生成物を水で希釈して、SYBRグリーン・マスター・ミックス(SABiosciences., Frederick MD)と混合し、PCRアレイ上にローディングした。リアルタイムPCRをBiorad CFX96でPCRアレイ(アポトーシスアレイ、糖尿病アレイ、酸化ストレスアレイ及び抗酸化防御アレイ並びに熱ショックタンパク質アレイ)(SABiosciences, Frederick MD)に対して実行した。
PCRアレイ:
NCIES0808細胞を、培地又は50μM/100μM Q10含有培地においてフラスコ当たり2x106細胞の密度でT25フラスコに播種した。すべての処理群は3回繰り返して泳動させた。細胞を0、3、6、24又は48時間後に収集した。収集前に細胞の形態を調べるために写真を撮影した。細胞を収集するために、培地を取り出したが、浮遊するアポトーシス細胞を回収することができるようにとっておいた。細胞を1mlのトリプシン‐EDTAでトリプシン処理して、4mlの完全培地の添加により酵素作用を停止させた。トリプシン処理した細胞を、死細胞と一緒に培地を含む適切なチューブに添加した。細胞を1,200rpmで5分遠心分離した後、培地を吸引して、RNA抽出のための細胞ペレットを残した。細胞ペレットからのRNA単離を、RNeasyキット(Qiagen、カリフォルニア州バレンシア)を用いて、製造者の指示に従い実施した。RNAサンプルを水中でスピンカラムから溶離して、吸光度を260nm、230nm及び280nmで測定した。RNAの純度を260/230及び280/230比によって評価した。すべてのサンプルの中のRNAの濃度を230nmでの吸光度の値から計算した。第1鎖cDNAを、First strandキット(SABioscience、メリーランド州フレデリック)と一緒に提供される説明書を用いて、0.5μgの全RNAサンプルから合成した。サンプルから合成した第1鎖を、経路内にプライマーを含むPCRアレイプレート(血管新生、糖尿病及びミトコンドリア)(SABiosciences Corporation、メリーランド州フレデリック)に同等に分配した。これらのアレイを、SYBR green検出法を用いて、製造者承認のプロトコルに従って、リアルタイムPCRで増幅した。サンプルの各々からのct値を3つのハウスキーピング遺伝子に対して正規化して、Q10処理群の調節倍率を、標準培地で増殖させた細胞からの時間並行対照と比較して、計算した。
プロテオミクスのためのサンプル調製:
NCIES0808細胞を、PCRアレイのセクションで記載したのと同様の実験条件でT25フラスコに播種した。処理時間の終わりに、細胞をPCRアレイのセクションに記載したようにトリプシン処理して、氷冷TBSで2回洗浄した後、液体窒素で急速凍結させた。ウエスタンブロットのさらなる処理をマサチューセッツ大学(UMass)で実施した。
プロテオーム解析を目的として、十分なミトコンドリアの単離のために、NCIES0808細胞をより多量のQ10で個別に処理した。細胞を培地、50μM Q10又は100μM Q10で0、3、6、24及び48時間にわたりT175フラスコ中で処理した。2つのフラスコを各々の条件について増殖させ、収集中に2つのフラスコからの細胞をプールした。必要な処理時間後、細胞をトリプシン処理して、氷冷TBS中で2回洗浄した。ペレット化細胞を液体窒素で急速凍結させて、ミトコンドリアを単離するまで−80℃で凍結した。ミトコンドリアを、MitoProfile Mitosciences Isolation Kit for Cultured Cells(Mitosciences Inc、オレゴン州ユージーン)と共に入手可能な製造者説明書に従って単離した。
ウエスタンブロット調製:
細胞を増殖させ、適切な対照と一緒に、50μM及び100μMのCoQ10で処理した。全細胞溶解物(上で調製したように)を処理した後、ウエスタンブロット分析により評価した。各処理群からのタンパク質をSDS-PAGEで分解し、PVDF膜に転写した。次に、これらを抗体とハイブリダイズさせた。
イムノブロッティング:
サンプル当たり5又は10μgいずれかのタンパク質をイムノブロッティングによりアッセイした。タンパク質を10〜20%Tris-HClゲル又は4〜12%Bis-Trisゲル上で分離して、電気泳動によりPVDF膜に転写してから、5%GE/Amercham ECFブロッカー及びTBST溶液を用いてブロッキングした後、一次抗体と一緒にインキュベートした。一次抗体を、5%BSA及びTBST溶液中4℃で一晩インキュベートした。二次抗体を室温で1時間インキュベートした。すべての抗体は販売業者から購入した。抗体は、製造者の推奨希釈度、すなわち1:5,000の希釈度で対照βアクチンと共に用いた。GE/Amercham ECF試薬を用いてブロットを展開させ、結果を、Fuji FL-5100レーザースキャナー及びBio-Rad Quantity Oneデンシトメトリー分析ソフトウエアを用いて定量した。また、すべてのブロットをそれぞれのβアクチン発現についても検出し、その発現に対して正規化した。
2次元電気泳動:
等電点電気泳動(IEF)の前に、サンプルを40mM Tris、7M尿素、2Mチオウレア、及び1%C7双性イオン洗浄剤に溶解して、トリブチルホスフィンで還元した後、10 mMアクリルアミドで90分にわたり室温でアルキル化した。その後、サンプルを、少なくとも3容量の再懸濁バッファーを含む10-kDaカットオフAmicon Ultra装置により泳動させたが、該バッファーは、サンプルの導電率を低減するために、7M尿素、2Mチオウレア、及び2%CHAPSからなるものであった。100マイクログラムのタンパク質を、100,000ボルト時までの11-cm pH3〜10、pH4〜7又はpH6〜11固定化pH勾配ストリップ(GE、Amersham、米国)上でIEFに付した。IEFの後、固定化pH勾配ストリップを6M尿素、2%SDS、50mM Tris-酢酸バッファー、pH7.0及び0.01%ブロムフェノールブルー中で平衡させて、8〜16%Tris-HClプレキャストゲル、1mm(Bio-Rad、米国)上でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に付した。ゲルは2連で泳動させた。これらを固定し、SYPRO Ruby、80 mL/ゲル(Invitrogen、米国)で染色して、Fuji FLA-5100レーザースキャナーで画像化した。
画像分析:
すべてのゲル画像の分析は、Progenesis Discovery and Pro(Nonlinear Dynamics Inc., Newcastle upon Tyne、英国)を用いて実施した。スポット検出、対合、バックグラウンド除去、正規化、及びフィルタリングの後、SYPRO Rubyゲル画像のためのデータをエクスポートした。グループ同士でペアワイズ比較を、Progenesis Discoveryでスチューデントt検定を用いて実施することにより、発現が有意に変化した(p>0.05)スポットを同定した。正確な検出を確実にするために、統計的に有意なスポットの各々に手でコメントをつけた。
質量分析:
それぞれのゲルプラグから抽出したトリプシンペプチドを10μl容量まで乾燥させて、1〜2μlの1%TFAで酸性化させた。サンプルを、0.1%TFA中でのプレ平衡後、uC18 Zip Tip(Millipore, Corp)にローディングした。0.1%TFAの2x10μlアリコートで洗浄した後、50:50アセトニトリル:0.1%TFA中の2.5ジヒドロキシ安息香酸のMatrix溶液15mg/ml(MassPrep DHB, Waters Corp.)を1μl用いて、サンプルをMALDIサンプル標的に直接載せた。サンプルを空気乾燥させた後、質量分析計に挿入した。分析は、Kratos Axima QIT(Shimadzu Instruments)マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)質量分析計で実施した。ペプチドを中間質量範囲(700〜3,000Da)内の陽イオンモードで分析した。計器はAngiotensin II(1046.54)、P14R(1533.86)及びACTH(18-39)2465.20 Daを用いて外部で較正した。衝突ガスとしてアルゴンを用いて、CID断片化のための質量分解幅250でのシグナル強度に基づいて前駆体を選択した。MSデータについてはPeptide Mass Fingerprintプログラムを、またCIDデータについてはMS/MS Ion Searchプログラムを用いて、Mascot(Matrix Sciences, Ltd.)でデータベース検索をインハウスで実施した。同定事項はすべてCID(MS/MS)データで確認又は確立した。
抗体アレイ:
NCIES0808細胞をT165フラスコ(x 55)中のSBHから取得した。細胞は約90〜95%コンフルエントであり、培地は典型的なピンク色をしていた。細胞形態を顕微鏡下で細かく注意して調べて、細胞は、夾雑又は細胞内包含物の視覚的兆候がなく、健康に見えることを記録した。
500μM Q10ストックを、PCRアレイについて概説した同じプロトコルを用いて、調製した。培地は、50μM及び100μM Q10培地を適切なフラスコに導入して、すべてのフラスコで交換した。細胞をQ10配合培地において3時間及び6時間かけてインキュベートした後、細胞を収集した。各フラスコを10mlの氷冷PBSで洗浄し、5mlのトリプシン‐EDTAでトリプシン処理した。細胞を穏やかなピペット操作により収集して、30mlの完全培地の添加により酵素作用を停止させた。細胞を1,200rpmで5分遠心分離した後、培地を、タンパク質抽出のための細胞ペレットを残してチューブから吸引した。
タンパク質は、製造者のProduct Information Sheet、Sigma(登録商標)、Panarama(登録商標)Antibody Microarray EPRESS Profiler725、カタログ番号:XP725の第2ページ;サブカテゴリーIAに従って細胞から抽出した。全細胞溶解物からのタンパク質材料をCy3及びCy5色素、GE Healthcare、製品番号:25-8009-86 Cy3及び25-8009-87 Cy5と、前述したプロダクトシートサブカテゴリーIIAに概説されている製造者の説明書に従ってコンジュゲートさせた。やはりプロダクトシートのサブカテゴリーIIIに記載されている製造者の説明書に従って抗体アレイチップを調製した後、暗室で24時間放置して乾燥させた。Cy3色素については532nm、Cy5色素については635nmでFuji FLA05100UVスキャナーを用いて、アレイを分析した。データは、3時間及び6時間で、培地のみ、50μM Q10及び100μM Q10サンプルについて収集し、これらはすべて3連で行った。
IPA分析:
以下に記載した実験からの結果を、ツールとしてIngenuity Pathway Analysis (http://www.ingenuity.com)を用いて統合することにより、Q10によりモジュレートされた経路候補を解明した。
実施例4:CoQ10処理に対するNCI-ES-0808細胞の感受性
NCI-ES-0808細胞の形態をCoQ10による処理後にモニターした。NCI-ES-0808細胞の写真を、Q10処理から3、6、24又は48時間後、及び収集直前に顕微鏡から撮影した。細胞は、処理から3時間後において部分的に付着したが、処理から6時間後までには、完全に付着したようだ。実験のタイムスケール(処理から3時間後及び6時間後)では処理群の間に顕微鏡検査による形態、視覚的に確認できるアポトーシス細胞の数又は細胞数に差はないようであった(図1)。
実施例5:リアルタイムPCRアレイ
この実施例に記載する実験は、Q10がユーイング肉腫細胞における複数の遺伝子の発現に影響を及ぼしうるという仮定全体を試験するために実施した。各種時間にわたって50μM及び100μM Q10で処理したNCIES0808細胞由来のmRNAを、ヒト糖尿病、ヒト血管新生又はヒトミトコンドリア経路に関与する標的タンパク質のパネルに対してRT-PCRにより評価した。
リアルタイムサーモサイクラーから得たCt値をSABiosciencesウェブサイトの分析ツールにロードして、培地による細胞と比較した調節倍率を計算した。ヒト糖尿病アレイの分析で、CoQ10によりモジュレートされた遺伝子を表2にまとめる。また、ヒト血管新生アレイの分析で、CoQ10によりモジュレートされる遺伝子を表3にまとめる。以下の表に含まれる遺伝子は、0.05に近いp値を示すものである。ヒトミトコンドリアアレイの分析は、試験したCoQ10用量及び時点では、モジュレートされた遺伝子を一切示さなかった。
実施例6:抗体マイクロアレイ分析
Q10の存在によるタンパク質濃度の変化の評価は、抗体マイクロアレイ法を用いて実施した。上記マイクロアレイは、700種以上のタンパク質についての抗体を含み、広範なタンパク質タイプ及び潜在的な経路マーカーをサンプリングするものである。
チップ調製物の効率及び再現性の最初の分析のために、全データセットについての各チップ(n=1、2、3)の全体的概観を実施した。50μM Q10、3時間のデータシリーズのパターン分析は、n=1及びn=2は非常に類似しているが、n=3はかなり異なるパターンを有することを示している。この理由から、n=3データは、アレイデータの統計評価では無視した。
全アレイについてデータセットを収集した後、データを3つの主要パラメーターに対して綿密に調べた。最初に、製造者の説明書のサブカテゴリーVに記載されている合計蛍光強度法を用いて、上記データを正規化した。正規化のプロセス後、正規化Cy3/Cy5比について0の値を有するデータ点は、統計的に関連性がないとみなし、試験セットからすべて除外した。正及び負のCy3/Cy5データ(チップの対照として含まれる)の評価、並びに所定スポットのスペクトル密度の視覚検査により、10未満のスペクトル密度を有するアレイデータ点はバックグラウンドレベルと近似であるため、統計的に関連性がないとみなし、試験セットから除外した。得られたデータをさらなる評価のためのベースデータセットとみなした。各データセットは、正規化スペクトル密度比に従ってソートした後、上位45の上方調節及び下方調節タンパク質を評価した。全複製試験(n=1、2、3)に出現することが記録されたタンパク質のみを統計的に関連性があるとみなし、これらを統計評価の95%信頼区間内に入れる。3時間後の時点での試験の各データセット内に有意な分散があることに注意すべきである。この時点で、細胞は、データから高率の統計的関連性で結論を引き出すことができる点まで収束していないようである。しかし、6時間後の時点から得られたデータは、本発明者らの統計分析のすべてを満足するものであり、複製試験(n=1、2、3)に存在する。これらの分析のためのデータを以下の表4及び表5に示す。
実施例7:2次元ゲル分析
3、6及び24時間かけて処理したNCIES0808細胞を2次元ゲル電気泳動に付して、対照培地サンプルと比較したタンパク質レベル変化を調べるために分析した。複数の重複ゲル全域のスポットの比較分析を実施し、50μM及び100μM用量で処理したサンプルのすべてに対して「対照培地サンプル」を比較した。分析は、増加、減少、又は翻訳後修飾による、時間経過に伴うスポット変化の同定を含んだ。ゲル画像の代表例を図3に示し、モジュレートされたタンパク質を表6に示す。
MASCOT分析からは、最上層のスポットがより速く検出された。分析の第2段階では、レベル2スポットを分析したが、これらは肉眼検査に基づいて実施し、またQCもMS同定に付した。
以下の表7に、CoQ10で3時間処理したNCIES0808細胞においてその量がモジュレートされたタンパク質についてのタンパク質IDのリストを示すが、これらは「レベル2」スポットとして同定された。
NCIES0808サンプルのミトコンドリア調製物はまたタンパク質についても分析し、以下の表8に、CoQ10による処理後にその量がモジュレートされたタンパク質のリストを示す。
実施例8:ウエスタンブロット分析
50μM又は100μM Q10で24時間処理したNCIES0808細胞をウエスタンブロット分析に付して、分析することにより、対照培地サンプルに対するタンパク質レベル変化を同定した。
処理細胞から得られたタンパク質は、アンギオテンシン変換酵素の抗体(ACE)(図4A)、カスパーゼ3の抗体(図4B)、GARSの抗体(図4C)、マトリックスメタロプロテイナーゼ6(MMP-6)の抗体(図4D)及びニューロリシン(NLN)の抗体のシリーズ(図4E〜F)に対するウエスタンブロット分析によって評価した。これらの実験から得られた結果は、試験タンパク質のすべてが、Q10による細胞処理の結果、下方調節されたことを示した。特に、100μM Q10で24時間処理したカスパーゼ3には著しい下方調節がみられた。
実施例4〜8についての論考
ユーイング肉腫は、高度に侵襲性の癌であり、これはメンデル遺伝、環境又は薬物暴露と関連していないようである。ESの一貫した最大の特徴は、EWSR1遺伝子座とETS転写因子遺伝子との間の染色体転座の結果としての融合遺伝子の存在である。EWS-ETS融合遺伝子は、EWS-FLI1のような転写因子をコードするが、その異常機能が、ES病因に関連している。ハイスループット(HTS)技術の使用における近年の進歩により、EWS-FLI1の機能的影響が理解され始めてきた。
前記実施例に記載した結果は、ユーイング肉腫の病因を特徴付ける重要な遺伝子マーカーに対するコエンザイムQ10の影響を証明するプロテオームデータの分析を説明するものである。抗体アレイ、2次元ゲル電気泳動/質量分析及びリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応マイクロアレイの組合せにより、CoQ10処理に応答して、ユーイング肉腫細胞系(JDT、0808)において有意に影響を受けたと思われる90以上の遺伝子産物発現を同定した。これらのうち、同定された遺伝子産物の約60%の発現パターンは上方調節され、40%が下方調節されていた。機能群は、「注釈、視覚化及び統合的発見のためのデータベース(The Database for Annotation, Visualization and Integrated Discovery)」[DAVID]を用いて同定したが、これは遺伝子を42個の主なクラスターに細分化した。上記リストからの大多数の遺伝子は“細胞プロセスの調節(Regulation of Cellular Process)”機能群及び“代謝プロセス(Metabolic Process)”機能群に分けられ、その他のタンパク質は、転写の調節、プログラムされた細胞死、細胞発生、細胞骨格、核、プロテオソーム及び器官発生などの機能群に分散した。タンパク質及びそれらの細胞事象のモジュレーションの機能評価は、CoQ10に暴露されたユーイング細胞が細胞骨格タンパク質の全体的発現を誘導し、これによって起こった構造的アーキテクチャの不安定化が、急速かつ頑健なアポトーシス応答を起こす細胞プログラムを開始することを示している。
A.コエンザイムQ10は数種の細胞骨格タンパク質の発現をモジュレートする:アポトーシス応答の開始における細胞アーキテクチャの破壊
CoQ10によるユーイング肉腫細胞系の処理によって、多数の細胞骨格成分の発現変化が起こったが、こうした成分として、ミクロフィラメント(βアクチン、ミオシン調節軽鎖、アクチン関連タンパク質ACTL6)、中間フィラメント(ケラチン1、10、13、17)及び微小管(βチューブリン、微小管結合タンパク質、ダイニン)、相互作用タンパク質(ダイナクチン)及びシャペロン(TCP1含有シャペロニン)がある。この現象は、観察されたリボソームタンパク質(RPLP2)、真核生物翻訳開始因子(EIF3G、EIF4A2)及び真核生物翻訳伸長因子(EEF1B2、EEF1D)の増加によって部分的に支持される。対応する熱ショックタンパク質(HSP27、HSP60、HSP70)の発現の増加、及びアクチンの発現を上方調節すると共に、微小管構造を安定化するHSP27の十分に立証された能力は、構造タンパク質の発現のCoQ10媒介変化が、細胞骨格アーキテクチャを不安定化させることを示唆している(Robitailleら、2009;Mounier & Arrigo, 2002)。アポトーシスの実施への、細胞骨格に関連する変化、例えば、細胞球状化、小胞化及びクロマチン凝縮の関与も十分に証明されている(Millsら、1999)。しかし、近年の研究は、細胞骨格の破壊又はモジュレーションは、アポトーシスのプロセスにおいて必要なステップであることを示している(Pawalak及びHelfman、2001)。サイトカラシンDによる細胞骨格破壊によって、カスパーゼ3活性化の増大が起こり、DNA損傷誘導のアポトーシスを加速する。この作用は、100μM CoQ10が、ユーイングJDT細胞系への暴露から1時間以内にカスパーゼ3発現の30%増大を引き起こした観察結果によって再確認される。ダイニン(その発現はCoQ10に応答して増大する)のような微小管がDNA損傷に応答して核へのp53の輸送を促進し、チューブリン及び微小管結合タンパク質が有糸分裂のプロセスに重要な役割を果たすと仮定すると、CoQ10は、細胞骨格アーキテクチャ及び細胞周期を破壊/不安定化し、その結果、プログラムされた細胞死の活性化が起こることが示唆される。
B.CoQ10はCBP/p300経路を介したアポトーシスのEWS-ETS媒介抑制を脱抑制する
NCIES0808細胞系へのCoQ10暴露に応答して上方調節されたタンパク質の1つは、CBP/p300、すなわちCREB結合タンパク質とそのE1A結合タンパク質ホモログであり、これらはいずれも十分に特性決定された翻訳コアクチベーターである(Chirivia JC ら、1995; Eckner Rら、1994)。CBP及びp300は、細胞成長及び発生を調節する類似の置換え可能な細胞機能を有する(Janknecht R, 2002;Goodman及びSmolik、2000)。CBP/p300は、多数の転写因子のコアクチベーターとして機能し、転写装置内でブリッジ/スカフォールドとして作用するようである(Smolik及びGoodman、2000)。正常な細胞機能の維持におけるEWSR1遺伝子産物の転写活性は、CBP/p300との相互作用を介して部分的に媒介されるという確証がある(Arayaら、2003; Rossow及びJanknecht, 2001)。さらに、欠失突然変異体を用いて、Fli-1単独及びEWS-Fli融合物はCBPに結合し、核受容体転写活性を妨害することが証明された(Ramakrishnanら、2004)。CBP/p300によるEWS-ETS融合タンパク質の間接的モジュレーションの証拠は、RNAヘリカーゼA(RHA)、RNAヘリカーゼのDEXHファミリーのメンバー及びRNAポリメラーゼIIと相互作用して、転写をモジュレートする能力に基づく(Nakajima T、1997)。RHAの発現は、ES細胞系及び腫瘍にみいだされているが、RHA及びEWS-FLI1融合物同士の物理的相互作用はEWS-FLI1タンパク質の転写及び形質転換能力を増強するようである(Toretskyら、2006)。実際に、EWS-ETSによるCBSのような転写補因子の活性のターゲティングは、部分的に細胞形質転換の原因でありうると考えられている(Fujimuraら、1996)。この考えは、CBP/p300経路に影響を与えることによってEWS-FLI1がアポトーシス経路を抑制したという観察結果によって支持される(Ramakrishnanら、2004)。同じ試験において、CBP/p300の細胞レベルが増大すると、細胞をレチノイン酸アポトーシスに対して感受性にしたことも証明された(Ramakrishnanら、2004)。本試験では、CoQ10によるES0808細胞系の処置によって、CBP/p300の発現の増大(ベースラインと比較して)が起こった。CoQ10媒介によるCBP/p300の増加は、通常、ユーイング肉腫においてEWS-ETSタンパク質により抑制されるアポトーシス経路を再活性化(すなわち、脱抑制)すると考えられる。
C.ユーイング肉腫細胞系におけるCoQ10誘導の細胞死は、p53転写因子調節アポトーシスの活性化によるものである
証拠である多数の細胞系が、ユーイング肉腫モデル細胞系においてCoQ10誘導細胞死におけるアポトーシスの役割を支持している。これらのうち最も重要なのは、CoQ10による処理から1時間後にユーイングJDT細胞系における発現の有意な増大によって証明されるp53活性化の関与である。p53転写因子は、細胞損傷/ストレスに応答して活性化されて、遺伝子発現経路を活性化し、これにより細胞周期の停止又はアポトーシスのいずれかを引き起こすことは十分に立証されている(Levine, 1997;Giaccia及びKastan, 1998)。さらに、CBP/p300は、p53と相互作用して、p53依存性MDM2、p21及びBaxプロモーターを転写により活性化して(Avantaggiatiら、1997; Guら、1997; Lillら、1997)、特定のリシン残基をアセチル化すると共に、p53のDNA結合性を高める(Gu及びRoeder、1997)。従って、CoQ10は、ユーイング肉腫細胞系においてp53の発現を直接及び/又は間接的に増大する。
Ku70(また、当分野及び本明細書ではATP依存性ヘリカーゼIIとも呼ばれる)の減少は、CoQ10で処理したユーイング肉腫ES0808細胞系で観察された。Ku70は、アポトーシス促進タンパク質Baxに関連し、デキュビキチン酵素活性を有する(Rathausら、2009)。近年の証拠から、アセチル化p53が、Ku70-Bax複合体を阻止し、これを破壊して、アポトーシスを増強する能力を有することが示唆されている(Yamaguchiら、2009)。従って、p53活性の増大と共に、CoQ10誘導によるKu70の低減によって、Baxのアポトーシス促進活性を増大することができることが示唆される。
CoQ10での処理によって、ヘテロ核内リボ核タンパク質C(hnRNP C1/C2)発現の下方調節が起こったが、これは24時間まで持続した。hnRNP C1/C2タンパク質は、アポトーシスのX連鎖性インヒビター(XIAP)及び内部リボソーム侵入部位(IRES)を形成する複合体の一部である(Holcikら、2003)。XIAPは、アポトーシスの最も強力な固有インヒビターであり、カスパーゼ3、カスパーゼ7及びカスパーゼ9と結合し、その活性を阻害する(Deverauxら、1997)。hnRNP C1/C2の過剰発現は、XIAP IRESの翻訳を特異的に増大するが、これは、XIAP発現のモジュレーションにおける役割を示唆している(Holcikら、2003)。hnRNP C1/C2発現の低減は、XIAP発現を低減すると共に、CoQ10誘導アポトーシスに対するユーイング肉腫細胞系の感受性を高めると考えられる。この仮定は、CoQ10処理から1時間後にユーイングJDT肉腫細胞系に観察されたカスパーゼ3発現の有意な増大によって支持される。EWSタンパク質でhnRNP C1/C2が同時精製された観察結果(Zinsznerら1994)は、XIAPの調節のための新規経路と、EWS-FLI1融合物の抗アポトーシスの可能性を示している。
CoQ10で処理したユーイング肉腫ES0808細胞系は、プロテオソームを構成する各種サブユニット(例えば、プロテオソームサブユニットPSMA3、PSMB3、PSMB4)及びユビキチン酵素(ユビキリン)の発現の持続的増大を明らかにした。プロテオソームは、ポリユビキチンタグによって標識されたタンパク質を認識して、結合し、これらタンパク質を分解する大きな多タンパク質複合体である。アポトーシスのプロセスは、細胞の大きさの段階的縮小を伴うことから、プロテオソームは、細胞質及び核タンパク質の分解に必須である(Wojcik、1999)。実際に、アポトーシス中のプロテオソーム系の活性化が、既に報告されている(Drexler、1998;Piedimonte, 1999)。
ユーイング肉腫細胞のCoQ10誘導細胞傷害性(例:腫瘍細胞増殖の阻害又はアポトーシスの活性化)において、そのモジュレーションが、アポトーシス及びその他の経路、例えば、細胞構造アーキテクチャの不安定化などの役割を支持する他のタンパク質としては、以下のものがある:
(a)JAB1発現の増大:JAB1(Jun活性化結合ドメイン又はCSN5)は、多シグナル伝達経路を調節するCOP9シグナロソームの一部である。JAB1は、BcLGs特異的結合タンパク質であり、BH3ドメイン依存性アポトーシス促進経路を増強する(Liu Xら、Cell Signaling 20(1): 230-240, 2008)。
(b)p53R2発現の増大:リボヌクレオシド二リン酸レダクターゼは、核及びミトコンドリアのDNA合成及び修復に関与する酵素である。p53R2発現は、DNA損傷後にp53によって誘導される。p53R2の過剰発現は、p53依存性DNA修復経路の調節を妨害して、抗癌薬に対する細胞の感受性を高める(Yamaguchi T,ら、Cancer Res. 2001 Nov 15; 61(22):8256-62.:Nakamura Y:Cancer Sci. 95(1):7-11, 2004;Pontarin G,ら、Proc Natl Acad Sci U S A. 105(46):17801-6, 2008)。
(c)ホスファチジルセリン受容体の発現の増大:これらの受容体は、マクロファージ及び樹状細胞のように抗原提示細胞(APC)の細胞表面上に発現される。これらは、アポトーシス細胞から生じるホスファチジルセリン又は分泌ホスファチジルセリンと相互作用して、腫瘍マクロファージのリクルートを補助することにより、抗炎症応答を促進する(Kim JS,ら、Experimental Molecular Med. 37(6):575-87, 2005)。
(d)
(e)サイトケラチンペプチド13及び17の発現の増大:サイトケラチンペプチドは、細胞質内細胞骨格タンパク質のファミリーに属し、その発現調節異常は、基底細胞癌(BCC)に関与しているとされてきた(Lo BK,ら、Am J Pathol. 176(5):2435-46, 2010)。サイトケラチン発現は、肺及び結腸直腸腺癌の診断のための最もばらつきのない(most consistent)マーカーの1つである(Kummar S,ら、Br J Cancer. 86(12):1884-7, 2002)。サイトケラチンペプチド(例えば、18)は、カスパーゼ3タンパク質分解の最終産物であることが知られているが、ペプチド17及び13についてはアポトーシスカスケードの産物としてあまり報告されていない。しかし、CK17は、BCC腫瘍発生における白血球走化性に役割を有するケモカイン受容体と共局在化することが明らかにされている。これらの産物は、処理NCI0808細胞において増加するアポトーシスの作用であるか、又は改変された腫瘍発生の原因であるかのいずれかであるようだ。
(f)ニューロフィラメント160及び200の発現の増大:ニューロフィラメント160及び200は、神経細胞で発現される中間線維タンパク質のそれぞれのアイソフォームである。ユーイング肉腫は、神経細胞に由来するものであり、200 kDアイソフォームの異常な発現がEWS細胞系に観察されている(Lizard-Nacol S,ら、Tumour Biol. 13(1-2):36-43, 1992)。
(g)Rab5の発現の増大:Rab5は、ファゴソームにおけるアポトーシス細胞の自食作用及びプロセシングに関与する小さなGTPaseである(Kinchen JM,ら、Nature. 464(7289):778-82, 2010)。CoQ10で処理したNCI0808細胞におけるRab5の発現増大は、アポトーシス事象後の最終段階を表している。
(h)AFXの発現の増大:これはFOXO4としても知られ、フォークヘッド転写因子ファミリーのメンバーである。FOXO4は、NAD依存性デアセチラーゼSIRT1及びアセチルトランスフェラーゼCBP/p300によって調節される。FOXO4は、酸化ストレス応答(MnSOD)、DNA修復(GADD45)、細胞周期停止(p27Kip1)及びアポトーシス(Bim及びFasリガンド)遺伝子を活性化する(Giannakou ME,ら、Trends Cell Biol. 14(8):408-12, 2004)。AFXの発現増大は、CoQ10誘導による細胞死に対するNCI0808細胞の感受性の増大と一致している。また、FOXO1aも100μM CoQ10での処理後に上方調節される。
(i)MEKK4の発現の増大:これはMAP3K4としても知られ、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ4であり、その下流マイトジェン活性化キナーゼ、p38及びcJun N末端キナーゼ(JNK)を調節する。心筋細胞におけるMEKK4の活性化は、アポトーシスのレベル増大を引き起こすことが明らかにされている(Mizote I,ら、J Mol Cell Cardiol. 48(2):302-9, 2010)。50μM CoQ10で処理したNCI0808細胞におけるMEKK4の発現増大は、処理に応答して進行中のアポトーシスを表すものであろう。
(j)HDAC2発現の低減:CBP/p300は、HDAC2と相互作用して、Bcl12のプロモーター活性を増大するが、この活性はHDACインヒビターの存在下で軽減される(Duan H,ら、Molecular and Cellular Biology. 25(5): 1608-1619, 2005)。従って、CoQ10に応答するHDAC2の低減は、Bcl12のプロモーター活性(及びそれに伴う抗アポトーシス機能)を低減するはずである。
(k)HDAC4発現の低減:CBP/p300とHDAC4の相互作用は、HIF-1αの転写調節に関与する(Seo H-W,ら、FEBS Letters 583:55-60, 2009; Buchwald M,ら、Cancer Letters. 280: 160-167, 2009)。従って、CoQ10によるHDAC4の発現の低減は、HIF-1αの転写活性化、及び細胞形質転換と発癌を伴う下流のシグナル伝達カスケードを低減するはずである。
(l)PDK1発現の増大:ホスホイノシトール3-リン酸依存性キナーゼ1(PDK1)は、AKTの主調節因子であり、AKTシグナル伝達による細胞生存において一定の役割を果たす。近年MEK/ERK及びPI3K/AKTシグナル伝達複合体の構成的活性化がユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)について報告されている(Benini S.ら、Int J Cancer. 108(3):358-66, 2004;Liu LZら、Cancer Res. 67(13):6325-32, 2007)。また、抗癌治療薬に応答する上記シグナル伝達酵素(PDK1を含む)の発現増大も報告されている(Kawaguchi W, ら、:Cancer Sci. 98(12):2002-2008, 2007, Liu SQ,ら、Dig Liver Dis. 2006 5月;38(5):310-318, 2006)。ESFTにおける抗癌治療薬と組み合わせたPDK1及びMAPKの阻害は、癌治療薬の開発において非常に成果のある戦略となっている(Yamamoto T,ら、J Cancer Res Clin Oncol. 135(8):1125-36, 2009)。
(m)カスパーゼ12発現の増大:これらは、ERストレス特異的アポトーシスの重要なメディエーターである、システインプロテアーゼの広範なファミリーに属する。ERストレスがEWSにおいて重要な要素であることはわかっていないが、CoQ10処理がERストレスをトリガーすると仮定されている。シスプラチンのような抗癌薬を用いた以前の試験から、カスパーゼ12媒介によるERストレス特異的アポトーシスの増大が起こることが明らかにされている(Liu H,ら、J Am Soc Nephrol. 16(7):1985-92, 2005)。
(n)ホスホリパーゼD1の発現の増大:これは、ホスファチジルコリン特異的ホスホリパーゼDであり、有糸分裂/細胞増殖及び膜輸送を調節するシグナル伝達事象に関与する。EWS/FLi又はFLiの過剰発現及びRNAiノックダウンを含む試験により、PLD2遺伝子発現のみが改変され、PLD1遺伝子発現は改変されなかったことが立証された(Kikuchi R,ら、Oncogene. 26(12):1802-10, 2007)。また、PLD1遺伝子の5’プロモーターが、EWS/FLi融合タンパク質の結合配列を欠失していることも示された。しかし、PLD1は、細胞生存及びアポトーシスからの保護に必須であることが明らかにされている。カスパーゼによるPLD1の切断は、p53依存性細胞死経路のモジュレーションによってアポトーシスを促進する(Jang YH,ら、Cell Death Differ. 15(11):1782-93, 2008)。
(o)p34 cdc2キナーゼ及びp34 BP1の発現の増大:p34cdc2は、細胞のM期への進入を調節するキナーゼである。p34cdc2の早期活性化は、細胞周期の停止とアポトーシスの開始を引き起こす。タキソールのような抗癌薬は、p34cdc2の早期活性化を誘導して、EWSにアポトーシスをもたらす(Duan, H.,ら、2005;Lee S.,ら、Cancer Res. 62(20):5703-10, 2002)。CoQ10に応答するp34cdc2及び結合タンパク質(p34BP1)発現の増大は、NCI0808細胞におけるCoQ10誘導のアポトーシス活性の増大を示唆するものである。
(p)ブルトン型無ガンマグロブリン血症チロシンキナーゼ(BTK)の発現の増大:BTKは、ホスホリパーゼγ2の活性化に関与しており、細胞内カルシウム放出、細胞外カルシウム流入及びPKC活性化を引き起こす。BTKは、EWSタンパク質に直接結合して、該タンパク質と相互作用すると報告されている(Bajpai UD,ら、J Exp Med. 191(10):1735-44, 2000)が、EWSにおけるその正確な役割はわかっていない。BTKはPKCを活性化するが、これは、BTKが、癌細胞においてカルシウム誘導のアポトーシスを媒介することを示唆している(Zhu, D-M.,ら、Clin. Cancer Res., 5: 355-360, 1999)。
(q)ASC2の発現の増大:CARDドメイン(カスパーゼリクルートドメイン)を含有するアポトーシス関連スペック様タンパク質は、ピリンドメイン含有タンパク質のクラスに属し、炎症、アポトーシス及びサイトカインプロセシングを調節する経路の重要な成分である。これらのタンパク質は、ピリンドメインを用いて、NFkb及びカスパーゼ1を活性化する(Stehlik C,ら、Biochem J. 373(Pt 1):101, 2003)。これらのタンパク質は、CoQ10に応答したNCI0808におけるアポトーシスの媒介に関与すると考えられる。
(r)BubR1の発現の増大:BubR1は、有糸分裂チェックポイントセリン/トレオニンプロテインキナーゼとして作用し、後期促進複合体(APC/C)を調節する上で必須である(Choiら、2009)。このタンパク質の破壊は、有糸分裂の停止、そして癌細胞のアポトーシスを引き起こす(Xu HZ,ら、Cell Cycle. 9(14):2897-907, 2010)。障害された紡錘体チェックポイントが多くの形態の癌について記載されており、BubR1の発現の増大は、CoQ10に対する応答と一致するようである。
(s)PCAFの発現の増大:PCAFは、ヒストンと非ヒストンタンパク質の両方をアセチル化するヒストンアセチルトランスフェラーゼ酵素である。これは、アポトーシスを含む様々な機能の媒介に関与している。
(t)Raf1の発現の増大:Raf1は、原癌遺伝子であり、セリントレオニンプロテインキナーゼとして機能し、これは、細胞周期のG2/M期終了を調節する。これは、核に対する細胞膜からの有糸分裂シグナルの導入に関与しており、受容体から核へのRas依存的シグナル伝達経路のサブセットを表している。
(u)MSK1の発現の増大:MSK1は、マイトジェン及びストレス活性化プロテインキナーゼ1であり、これは、MAPK及びSAPK/p38によって直接活性化されて、CREBタンパク質を活性化しうる(Deak M,ら、EMBO J. 17(15):4426-41, 1998)。活性CREBの抑制は、ヒト非小細胞肺癌においてアポトーシスを誘導すると共に、細胞増殖を阻害する。
(v)SNAP25の発現の増大:SNAP-25タンパク質は、SNARE複合体の成分であり、シナプス前ニューロン膜におけるチャンネルの集合に関与する。EWS/Fliキメラタンパク質は、SNAP25を調節する転写因子であるBrn-3aを調節することにより、神経分化及びSNAP25の発現を阻害する(Gascoyne DM,ら、Oncogene. 23(21):3830-40, 2004)。CoQ10は、処理されたNCIES0808細胞においてEWS/Fliキメラタンパク質の活性を阻害しうる。
(v)mTORの発現の低減:ラパマイシンの機構的標的タンパク質又はFK506結合タンパク質12-ラパマイシン関連タンパク質1(FRAP1)としても知られる哺乳動物ラパマイシン標的タンパク質は、ヒトにおいて、FRAP1遺伝子によりコードされるタンパク質である(Brown EJ,ら、Nature 369 (6483): 756-8, 1994; Moore PA,ら、Genomics 33 (2): 331-2, 1996)。mTORは、細胞成長、細胞増殖、細胞運動、細胞生存、タンパク質合成、転写を調節するセリン/トレオニンプロテインキナーゼであり、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ関連キナーゼタンパク質ファミリーに属する(Hay N,ら、Genes Dev 18 (16): 1926-45, 2004; Beevers C.,ら、Int J Cancer 119 (4): 757-64, 2006)。mTORは、栄養素及びマイトジェン(例えば成長因子など)によって起こるシグナル伝達に中心的役割を果たして、翻訳を調節する。mTORは、上流経路からの入力、例えばインスリン、成長因子(例えばIGF-1、IGF-2)、及びマイトジェンを統合する。mTORはまた、細胞栄養素及びエネルギーレベル並びにレドックス状態も感知する(Hay N,ら、2004)。細胞代謝/生物エネルギー状態の調節におけるその主な役割と、mTORの調節異常が癌と関連しているという観察結果を考慮すれば、NCIES0808細胞系におけるCoQ10に応答したmTORの発現の低減は、ユーイング肉腫における細胞代謝/生物エネルギー状態に影響を与える能力を示唆するものである。
実施例9:CoQ10 21%濃縮物及び安息香酸アルキルを含む0.5kgバッチのCoQ10クリーム3%を調製する方法
0.5kgバッチのCoQ10クリーム3.0%組成物は、以下の相を合わせることによって調製された。A相は、安息香酸C
12-15アルキルを4.00%w/w、セチルアルコールNFを2.00%w/w、ステアリン酸グリセリル/ステアリン酸PEG-100を4.50%w/w、及びステアリルアルコールNFを1.5%w/w含んだ。パーセンテージ及び量は以下の表に列挙されている。
B相は、ジエチレングリコールグリコールモノエチルエーテルNFを5.00%w/w、グリセリンUSPを2.00%w/w、プロピレングリコールUSPを1.50%w/w、フェノキシエタノールNFを0.475%w/w、精製水USPを16.725%w/w、及びカルボマー分散液、2%を40%w/w含んだ。パーセンテージ及び量は以下の対応する相の表に列挙されている。
C相は、乳酸USPを0.50%w/w、乳酸ナトリウム溶液USPを2.00%w/w、トリエタノールアミンNFを1.30%w/w、及び精製水USPを2.50%w/w含んだ。パーセンテージ、量及びさらなる詳細は以下の表に列挙されている。
D相は二酸化チタンUSPを1.00%w/w含んだのに対して、E相はCoQ10 21%濃縮物を15.00%w/w含んだ。パーセンテージ、量及びさらなる詳細は以下の表に列挙されている。
すべての重量パーセントは、CoQ10クリーム3.0%組成物全体の重量に対してである。
A相成分を適切な容器に加え、水浴中で70〜80℃の間に加熱した。カルボマー分散液を含まないB相成分は、適切な容器に加え、混合した。C相成分もまた、適切な容器に加え、次いで水浴中で70〜80℃の間に加熱した。E相のCoQ10 21%濃縮物は、適切な容器に配置し、水浴を使用して50〜60℃の間で融解した。これらの成分は、必要に応じて均一性を確実にするために混合した。次いで、カルボマー分散液は、適切な容器(混合タンク)に加え、混合しながら、70〜80℃の間に加熱した。成分を混合しながら、B相成分を、温度を維持しながら混合タンクの内容物に加えた。内容物は、継続して混合し、ホモジナイズした。次いで、ミキサーをオフにし、しかし、均質化は持続した。均質化を継続しながら、D相の二酸化チタンを混合タンクに加えた。次いで、ミキサーをオンにし、内容物を混合し、完全に均一かつ十分に引き伸ばされるまでさらにホモジナイズした(色をチェックした)。次いで、均質化を停止し、バッチを50〜60℃の間に冷却した。次いで、ミキサーをオフにし、融解したCoQ10 21%濃縮物を混合タンクに加えた。続いてミキサーをオンにし、分散液が滑らかかつ均一になるまで、内容物を混合/再循環した。次いで、混合タンクの内容物を45〜50℃の間に冷却した。次いで、内容物は開封まで、保存のために適切な容器に移した。
実施例10:in vivoにおけるユーイング肉腫腫瘍の処置
動物モデルにおいて、in vivoにおけるユーイング肉腫腫瘍に対する局所的コエンザイムQ10処置の有効性を評価するために実験を実施する。以下のユーイング肉腫細胞系の1以上をこれらの実験において使用する:TC71、TC32、RD-ES、5838、A4573、EWS-925、NCI-EWS-94、及びNCI-EWS-95(Kontny HU et al.、Simultaneous expression of Fas and nonfunctional Fas ligand in Ewings’s sarcoma. Cancer Res 1998;58:5842-9)。NCI-EWS-011及びNCI-EWS-021細胞系は、再発性ユーイング肉腫から得られた腫瘍組織から国立癌研究所(National Cancer Institute)において作製された。切除された腫瘍及び作製された細胞系の両方が、t(11;22) EWS/FLI-1転座について陽性である。横紋筋肉腫細胞系RD4A(Kalebic T, et al., Metastatic human rhabdomyosarcoma: molecular, cellular and cytogenetic analysis of a novel cellular model, Invasion Metastasis 1996; 16:83-96)、並びに神経芽腫細胞系CHP-212及びKCNR(Thiele C. Neuroblastoma.、Masters J, Palsson B編者、Human cell culture. Vol 1. Boston (MA): Kluwer Academic Publishers; 1999. p. 21-53)を陰性対照として使用する。細胞系は、2 mM L-グルタミン及び0.1%又は10%ウシ胎仔血清(Life Technologies, Gaithersburg, MD)を添加したRPMI-1640培地中で増殖させた。
腫瘍細胞を75%コンフルエンスになるまで培養し、トリプシン/EDTAを用いて回収し、続いてPBSで2回洗浄した。100μLのPBS中の200万のユーイング肉腫細胞を、4〜8週令の雌SCID/bgマウス(Taconic, Germantown, NY)の腓腹筋に注射した。それぞれのマウスは一般的に、接種の21〜28日後に単一の触知可能な腫瘍を発達させた。腫瘍体積が100〜500 mm3の時点で、マウスを、本明細書に記載する種々の用量で局所的コエンザイムQ10の投与を受ける群(例えば、皮膚1平方cm当たり0.01〜約0.5mgのコエンザイムQ10、又はマウスへの投与に等価な適当量)、あるいはビヒクル(基剤)単独の投与を受ける群にランダムに割り当てた(群当たり5又は10匹のマウス)。コエンザイムQ10の局所用量は、単回投与で又は複数回(例えば2、3、4、5若しくはそれ以上)のサイクル若しくはラウンドの投与でマウスに投与する。腫瘍の寸法を、デジタルカリパスを用いて1日毎又は2日毎に測定し、腫瘍領域(tumor sphere)の2つの直径を得る。腫瘍の部位における下肢の容量(lower extremity volume)は、式:(D x d2/6) ×π[式中、Dは長い直径であり、dは短い直径である]により決定した。腫瘍を含まない下肢の容量はおよそ50 mm3である。コエンザイムQ10で局所処置したマウス及びビヒクル単独で処置したマウスにおける腫瘍の寸法を経時的に比較し、in vivoでのユーイング肉腫腫瘍細胞の成長又は増殖の阻害におけるコエンザイムQ10の有効性を評価する。
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等価物
当業者は、通常の実験の範囲を超えない実験を使用して、本明細書に記載された特定の実施形態及び方法の多くの等価物を認識し、又はそれを確認することが可能である。このような等価物は、添付の特許請求の範囲の範囲に包含されることが意図される。
[1] ヒトにおいて肉腫を処置又は予防する方法であって、処置又は予防が生じるように、ヒトにコエンザイムQ10分子を局所投与することを含む方法。
[2] 局所投与が、処置される肉腫についてヒトにおいて有効性をもたらすように選択された用量により行われる、1に記載の方法。
[3] 前記処置される肉腫が、治療有効レベルの有効成分が全身に送達されるという見込みで通常は局所投与により処置される肉腫ではない、1に記載の方法。
[4] 処置されるヒトの組織中のコエンザイムQ10分子の濃度が、健康な状態又は正常な状態の典型であるヒト組織の対照基準の濃度とは異なる、1に記載の方法。
[5] 前記ヒトに投与されるコエンザイムQ10分子の形態が、ヒトの体内の体循環において見られる主要な形態とは異なる、1に記載の方法。
[6] 処置が、コエンザイムQ10分子と、以下:ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、PRMT3、HDAC2、一酸化窒素シンターゼbNOS、アセチルホスホヒストンH3 AL9 S10、MTA 2、グルタミン酸デカルボキシラーゼGAD65 67、KSR、HDAC4、BOB1 OBF1、a1シントロフィン、BAP1、Importina 57、αE-カテニン、Grb2、Bax、プロテアソーム26Sサブユニット13(エンドフィリンB1)、アクチン様6A(真核生物開始因子4All)、核クロライドチャネルタンパク質、プロテアソーム26Sサブユニット、ジスムターゼCu/Znスーパーオキシド、トランスリン会合因子(Translin-associated factor)X、亜ヒ酸塩輸送ATPase(スペルミン合成酵素)、リボソームタンパク質SA、dCTPピロホスファターゼ1、プロテアソームベータ3、プロテアソームベータ4、酸性ホスファターゼ1、ジアゼパム結合インヒビター、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、リボソームタンパク質P2(RPLP2);ヒストンH2A、微小管結合タンパク質、プロテアソームアルファ3、真核生物翻訳伸長因子1デルタ、ラミンB1、mif two 3ホモログ2のSMT 3サプレッサー、熱ショックタンパク質27kD、hnRNP C1/C2、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、HSPC-300に類似、DNA依存性DNAポリメラーゼイプシロン3;(canopy 2ホモログ)、LAMA5、PXLDC1、p300 CBP、P53R2、ホスファチジルセリン受容体、サイトケラチンペプチド17、サイトケラチンペプチド13、ニューロフィラメント160 200、Rab5、フィレンシン、P53R2、MDM2、MSH6、熱ショック因子2、AFX、FLIPg d、JAB 1、ミオシン、MEKK4、cRaf pSer621、FKHR FOXO1a、MDM2、Fasリガンド、P53R2、ミオシン調節軽鎖、hnRNP C1/C2、ユビキリン1(ホスファターゼ2A)、hnRNP C1/C2、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、ベータアクチン、hnRNP C1/C2、熱ショックタンパク質70kD、ベータチューブリン、ATP依存性ヘリカーゼII、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、ER脂質ラフト会合2アイソフォーム1(ベータアクチン)、シグナル配列受容体1デルタ、真核生物翻訳開始因子3, サブユニット3ガンマ、ビリベルジンレダクターゼA(トランスアルドラーゼ1)、ケラチン1,10(パラチモシン)、GSTオメガ1、Dj-1への鎖Bドパミンキノン結合(chain B Dopamine Quinone Conjugation to Dj-1)、プロテアソームアクチベーターReg(アルファ)、T-コンプレックスタンパク質1アイソフォームA、鎖A タパシンERP57(TCP1含有シャペロニン)、ユビキチン活性化酵素E1;アラニル-tRNA合成酵素、ダイナクチン1、熱ショックタンパク質60kd、ベータアクチン、スペルミジンシンターゼ(ベータアクチン)、熱ショックタンパク質70kD、網膜芽細胞腫結合タンパク質4アイソフォームA、TAR DNA結合タンパク質、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、TCP1含有シャペロニン, サブユニット3、細胞質ダイニンIC-2、アンギオテンシン変換酵素(ACE)、カスパーゼ3、GARS、マトリックスメタロプロテイナーゼ6(MMP-6)、ニューロリシン(NLN)触媒ドメイン、及びニューロリシン(NLN)、ADRB、CEACAM1、DUSP4、FOXC2、FOXP3、GCGR、GPD1、HMOX1、IL4R、INPPL1、IRS2、VEGFA、推定c-myc応答性アイソフォーム1、PDK 1、カスパーゼ12、ホスホリパーゼD1、P34 cdc2、P53 BP1、BTK、ASC2、BUBR1、ARTS、PCAF、Raf1、MSK1、SNAP25、APRIL、DAPK、RAIDD、HAT1、PSF、HDAC1、Rad17、サバイビン(Survivin)、SLIPR、MAG13、カスパーゼ10、Crk2、Cdc 6、P21 WAF 1 Cip 1、ASPP 1、HDAC 4、サイクリンB1、CD 40、GAD 65、TAP、Par4(前立腺アポトーシス応答4)、MRP1、MDC1、ラミニン2 a2、bカテニン、FXR2、アネキシンV、SMAC Diablo、MBNL1、ジメチルヒストンh3、増殖因子非依存性1、U2AF65、mTOR、E2F2、Kaiso、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3、ATF2、HDRP MITR、ニューラビンI、AP1、及びApaf1からなる群より選択される遺伝子との相互作用を介して生じる、1〜5のいずれか1項に記載の方法。
[7] コエンザイムQ10分子が、局所用基剤中で、皮膚1平方センチメートルあたりコエンザイムQ10約0.01ミリグラム〜約0.5ミリグラムの範囲の用量で標的組織に適用される、2に記載の方法。
[8] コエンザイムQ10分子が、局所用基剤中で、皮膚1平方センチメートルあたりコエンザイムQ10約0.09ミリグラム〜約0.15ミリグラムの範囲の用量で標的組織に適用される、2に記載の方法。
[9] コエンザイムQ10分子が、局所用基剤中で、皮膚1平方センチメートルあたりコエンザイムQ10約0.12ミリグラムの用量で標的組織に適用される、2に記載の方法。
[10] 肉腫が、ユーイングファミリー腫瘍における肉腫の1タイプである、1に記載の方法。
[11] ユーイングファミリー腫瘍における肉腫の上記タイプがユーイング肉腫である、10に記載の方法。
[12] ヒトにおいてEWS-FLI1融合タンパク質の活性を阻害する方法であって、
肉腫に罹患しているヒト被験体を選択すること、及び
前記ヒトに治療有効量のコエンザイムQ10分子を投与し、それによりEWS-FLI1融合タンパク質の活性を阻害すること
を含む方法。
[13] ヒトにおいて肉腫を処置又は予防する方法であって、ヒトの細胞膜の透過性が調節され、処置又は予防が生じるような投与レジメンにおいて、その必要があるヒトにコエンザイムQ10分子を投与することを含む方法。
[14] 以下:LAMA5、PXLDC1、p300 CBP、P53R2、ホスファチジルセリン受容体、サイトケラチンペプチド17、サイトケラチンペプチド13、ニューロフィラメント160 200、Rab5、フィレンシン、P53R2、MDM2、MSH6、熱ショック因子2、AFX、FLIPg d、JAB 1、ミオシン、MEKK4、cRaf pSer621、FKHR FOXO1a、MDM2、Fasリガンド、P53R2、プロテアソーム26Sサブユニット13(エンドフィリンB1)、ミオシン調節軽鎖、hnRNP C1/C2、ユビキリン1(ホスファターゼ2A)、hnRNP C1/C2、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、ベータアクチン、hnRNP C1/C2、熱ショックタンパク質70kD、微小管結合タンパク質、ベータチューブリン、プロテアソームアルファ3、ATP依存性ヘリカーゼII、真核生物翻訳伸長因子1デルタ、熱ショックタンパク質27kD、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、HSPC-300に類似、ER脂質ラフト会合2アイソフォーム1(ベータアクチン)、ジスムターゼCu/Znスーパーオキシド、及びシグナル配列受容体1デルタ、ADRB、CEACAM1、DUSP4、FOXC2、FOXP3、GCGR、GPD1、HMOX1、IL4R、INPPL1、IRS2及びVEGFA、推定c-myc応答性アイソフォーム1、PDK 1、カスパーゼ12、ホスホリパーゼD1、P34 cdc2、P53 BP1、BTK、ASC2、BUBR1、ARTS、PCAF、Raf1、MSK1、SNAP25、APRIL、DAPK、RAIDD、HAT1、PSF、HDAC1、Rad17、サバイビン(Survivin)、SLIPR、MAG13、カスパーゼ10、Crk2、Cdc 6、P21 WAF 1 Cip 1、ASPP 1、HDAC 4、サイクリンB1、CD 40、GAD 65、TAP、Par4(前立腺アポトーシス応答4)、及びMRP1からなる群より選択される1以上の遺伝子の発現レベルを上方調節すること、
並びに/あるいは、
以下:ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、PRMT3、HDAC2、一酸化窒素シンターゼbNOS、アセチルホスホヒストンH3 AL9 S10、MTA 2、グルタミン酸デカルボキシラーゼGAD65 67、KSR、HDAC4、BOB1 OBF1、a1シントロフィン、BAP1、Importina 57、αE-カテニン、Grb2、Bax、プロテアソーム26Sサブユニット13(エンドフィリンB1)、アクチン様6A(真核生物開始因子4All)、核クロライドチャネルタンパク質、プロテアソーム26Sサブユニット、ジスムターゼCu/Znスーパーオキシド、トランスリン会合因子X、亜ヒ酸塩輸送ATPase(スペルミン合成酵素)、リボソームタンパク質SA、dCTPピロホスファターゼ1、プロテアソームベータ3、プロテアソームベータ4、酸性ホスファターゼ1、ジアゼパム結合インヒビター、リボソームタンパク質P2(RPLP2);ヒストンH2A、微小管結合タンパク質、プロテアソームアルファ3、真核生物翻訳伸長因子1デルタ、ラミンB1、mif two 3ホモログ2のSMT 3サプレッサー、熱ショックタンパク質27kD、hnRNP C1/C2、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、HSPC-300に類似、DNA依存性DNAポリメラーゼイプシロン3 (canopy 2ホモログ)、アンギオテンシン変換酵素(ACE)、カスパーゼ3、GARS、マトリックスメタロプロテイナーゼ6(MMP-6)、ニューロリシン(NLN)触媒ドメイン、ニューロリシン(NLN)、MDC1、ラミニン2 a2、bカテニン、FXR2、アネキシンV、SMAC Diablo、MBNL1、ジメチルヒストンh3、増殖因子非依存性1、U2AF65、mTOR、E2F2、Kaiso、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3、ATF2、HDRP MITR、ニューラビンI、AP1、及びApaf1からなる群より選択される1以上の遺伝子の発現レベルを下方調節すること
をさらに含む、1〜5及び8〜13のいずれか1項に記載の方法。
[15] 処置が、コエンザイムQ10分子と、以下:ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、PRMT3、HDAC2、一酸化窒素シンターゼbNOS、アセチルホスホヒストンH3 AL9 S10、MTA 2、グルタミン酸デカルボキシラーゼGAD65 67、KSR、HDAC4、BOB1 OBF1、a1シントロフィン、BAP1、Importina 57、αE-カテニン、Grb2、Bax、プロテアソーム26Sサブユニット13(エンドフィリンB1)、アクチン様6A(真核生物開始因子4All)、核クロライドチャネルタンパク質、プロテアソーム26Sサブユニット、ジスムターゼCu/Znスーパーオキシド、トランスリン会合因子X、亜ヒ酸塩輸送ATPase(スペルミン合成酵素)、リボソームタンパク質SA、dCTPピロホスファターゼ1、プロテアソームベータ3、プロテアソームベータ4、酸性ホスファターゼ1、ジアゼパム結合インヒビター、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、リボソームタンパク質P2(RPLP2);ヒストンH2A、微小管結合タンパク質、プロテアソームアルファ3、真核生物翻訳伸長因子1デルタ、ラミンB1、mif two 3ホモログ2のSMT 3サプレッサー、熱ショックタンパク質27kD、hnRNP C1/C2、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、HSPC-300に類似、DNA依存性DNAポリメラーゼイプシロン3;(canopy 2ホモログ)、LAMA5、PXLDC1、p300 CBP、P53R2、ホスファチジルセリン受容体、サイトケラチンペプチド17、サイトケラチンペプチド13、ニューロフィラメント160 200、Rab5、フィレンシン、P53R2、MDM2、MSH6、熱ショック因子2、AFX、FLIPg d、JAB 1、ミオシン、MEKK4、cRaf pSer621、FKHR FOXO1a、MDM2、Fasリガンド、P53R2、ミオシン調節軽鎖、hnRNP C1/C2、ユビキリン1(ホスファターゼ2A)、hnRNP C1/C2、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、ベータアクチン、hnRNP C1/C2、熱ショックタンパク質70kD、ベータチューブリン、ATP依存性ヘリカーゼII、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、ER脂質ラフト会合2アイソフォーム1(ベータアクチン)、シグナル配列受容体1デルタ、真核生物翻訳開始因子3, サブユニット3ガンマ、ビリベルジンレダクターゼA(トランスアルドラーゼ1)、ケラチン1,10(パラチモシン)、GSTオメガ1、Dj-1への鎖Bドパミンキノン結合、プロテアソームアクチベーターReg(アルファ)、T-コンプレックスタンパク質1アイソフォームA、鎖A タパシンERP57(TCP1含有シャペロニン)、ユビキチン活性化酵素E1;アラニル-tRNA合成酵素、ダイナクチン1、熱ショックタンパク質60kd、ベータアクチン、スペルミジンシンターゼ(ベータアクチン)、熱ショックタンパク質70kD、網膜芽細胞腫結合タンパク質4アイソフォームA、TAR DNA結合タンパク質、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、TCP1含有シャペロニン, サブユニット3、細胞質ダイニンIC-2、アンギオテンシン変換酵素(ACE)、カスパーゼ3、GARS、マトリックスメタロプロテイナーゼ6(MMP-6)、ニューロリシン(NLN)触媒ドメイン、及びニューロリシン(NLN)、ADRB、CEACAM1、DUSP4、FOXC2、FOXP3、GCGR、GPD1、HMOX1、IL4R、INPPL1、IRS2、VEGFA、推定c-myc応答性アイソフォーム1、PDK 1、カスパーゼ12、ホスホリパーゼD1、P34 cdc2、P53 BP1、BTK、ASC2、BUBR1、ARTS、PCAF、Raf1、MSK1、SNAP25、APRIL、DAPK、RAIDD、HAT1、PSF、HDAC1、Rad17、サバイビン(Survivin)、SLIPR、MAG13、カスパーゼ10、Crk2、Cdc 6、P21 WAF 1 Cip 1、ASPP 1、HDAC 4、サイクリンB1、CD 40、GAD 65、TAP、Par4(前立腺アポトーシス応答4)、MRP1、MDC1、ラミニン2 a2、bカテニン、FXR2、アネキシンV、SMAC Diablo、MBNL1、ジメチルヒストンh3、増殖因子非依存性1、U2AF65、mTOR、E2F2、Kaiso、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3、ATF2、HDRP MITR、ニューラビンI、AP1、及びApaf1からなる群より選択される遺伝子との相互作用を介して生じる、12又は13に記載の方法。
[16] 外科手術、放射線療法、ホルモン療法、抗体療法、増殖因子を用いた療法、サイトカイン、化学療法及び同種幹細胞治療からなる群より選択される処置レジメンをさらに含む、1〜15のいずれか1項に記載の方法。
[17] 被験体の肉腫を処置するための治療の有効性を評価する方法であって、
処置レジメンの少なくとも一部を被験体に投与する前に該被験体から得られた第1サンプル中に存在するマーカーの発現レベルと、処置レジメンの少なくとも一部の投与後に該被験体から得られた第2サンプル中に存在する該マーカーの発現レベルとを比較すること
を含み、上記マーカーは、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択され、
ここで、第1サンプルと比較して第2サンプルにおけるマーカーの発現レベルの変化は、治療が、被験体の肉腫を処置するために有効であることの指標となる、上記方法。
[18] 被験体が肉腫に罹患しているかどうかを評価する方法であって、
被験体から得られた生体サンプル中に存在するマーカーの発現レベルを決定することであって、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択されるマーカーの発現レベルを決定すること、及び
被験体から得られた生体サンプル中に存在するマーカーの発現レベルを対照サンプル中に存在するマーカーの発現レベルと比較すること
を含み、ここで、対照サンプル中のマーカーの発現レベルと比較した被験体から得られた生体サンプル中のマーカーの発現レベルの変化は、被験体が肉腫に罹患していることの指標となり、それにより、被験体が肉腫に罹患しているかどうかが評価される、上記方法。
[19] 被験体に肉腫を発症する素因があるかどうかを予測する方法であって、
被験体から得られた生体サンプル中に存在するマーカーの発現レベルを決定することであって、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択されるマーカーの発現レベルを決定すること、及び
被験体から得られた生体サンプル中に存在するマーカーの発現レベルを対照サンプル中に存在するマーカーの発現レベルと比較すること
を含み、ここで、対照サンプル中のマーカーの発現レベルと比較した被験体から得られた生体サンプル中のマーカーの発現レベルの変化は、上記被験体に肉腫を発症する素因があることの指標となり、それにより、被験体に肉腫を発症する素因があるかどうかが予測される、上記方法。
[20] 被験体における肉腫の再発を予測する方法であって、
被験体から得られた生体サンプル中に存在するマーカーの発現レベルを決定することであって、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択されるマーカーの発現レベルを決定すること、及び
被験体から得られた生体サンプル中に存在するマーカーの発現レベルを対照サンプル中に存在するマーカーの発現レベルと比較すること
を含み、ここで、対照サンプル中のマーカーの発現レベルと比較した被験体から得られた生体サンプル中のマーカーの発現レベルの変化は、肉腫の再発の指標となり、それにより、被験体における肉腫の再発が予測される、上記方法。
[21] 肉腫を有する被験体の生存を予測する方法であって、
被験体から得られた生体サンプル中に存在するマーカーの発現レベルを決定することであって、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択されるマーカーの発現レベルを決定すること、及び
被験体から得られた生体サンプル中に存在するマーカーの発現レベルを対照サンプル中に存在するマーカーの発現レベルと比較すること
を含み、ここで、対照サンプル中のマーカーの発現レベルと比較した被験体から得られた生体サンプル中のマーカーの発現レベルの変化は、被験体の生存の指標となり、それにより、肉腫を有する被験体の生存が予測される、上記方法。
[22] 被験体において肉腫の進行をモニターする方法であって、
被験体への処置レジメンの少なくとも一部の投与の前に上記被験体から得られた第1サンプル中に存在するマーカーの発現レベルと、処置レジメンの少なくとも一部の投与後に上記被験体から得られた第2サンプル中に存在するマーカーの発現レベルとを比較すること
を含み、上記マーカーは、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択され、それにより、被験体における肉腫の進行がモニターされる、上記方法。
[23] 被験体における肉腫を処置するための化合物を同定する方法であって、
被験体から生体サンプルを得ること、
上記生体サンプルを試験化合物と接触させること、
被験体から得られた生体サンプル中に存在する1以上のマーカーの発現レベルを決定することであって、ここで、マーカーは、正の倍率変化及び/又は負の倍率変化を伴う、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択されること、
生体サンプル中の1以上のマーカーの発現レベルを適当な対照と比較すること、並びに
生体サンプル中に存在する負の倍率変化を伴う1以上のマーカーの発現レベルを低下させる試験化合物、及び/又は生体サンプル中に存在する正の倍率変化を伴う1以上のマーカーの発現レベルを増大させる試験化合物を選択すること
を含み、それにより、被験体の肉腫を処置するための化合物が同定される、上記方法。
[24] 肉腫が、ユーイングファミリー腫瘍における肉腫の1タイプである、17〜23のいずれか1項に記載の方法。
[25] ユーイングファミリー腫瘍における肉腫の上記タイプがユーイング肉腫である、24に記載の方法。
[26] サンプルが被験体から得られる流体を含む、17〜23のいずれか1項に記載の方法。
[27] 流体が、血液、嘔吐物、唾液、リンパ液、嚢胞液、尿、気管支洗浄により収集される流体、腹腔洗浄により収集される流体、及び婦人科系流体からなる群より選択される、26に記載の方法。
[28] サンプルが血液サンプル又はその成分である、27に記載の方法。
[29] サンプルが被験体から得られた組織又はその成分を含む、17〜23のいずれか1項に記載の方法。
[30] 組織が、骨、結合組織、軟骨、肺、肝臓、腎臓、筋肉組織、心臓、膵臓、及び皮膚からなる群より選択される、29に記載の方法。
[31] 被験体がヒトである、17〜23のいずれか1項に記載の方法。
[32] 生体サンプル中のマーカーの発現レベルが、サンプル中の転写されたポリヌクレオチド又はその一部をアッセイすることによって決定される、17〜23のいずれか1項に記載の方法。
[33] 転写されたポリヌクレオチドをアッセイすることが、転写されたポリヌクレオチドを増幅することを含む、32に記載の方法。
[34] 被験体サンプルにおけるマーカーの発現レベルが、サンプル中でタンパク質又はその一部をアッセイすることによって決定される、17〜23のいずれか1項に記載の方法。
[35] タンパク質が、該タンパク質と特異的に結合する試薬を使用してアッセイされる、34に記載の方法。
[36] サンプル中のマーカーの発現レベルが、前記サンプルの、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅反応、逆転写酵素PCR分析、一本鎖コンホメーション多型分析(SSCP)、ミスマッチ切断検出、ヘテロ二重鎖分析、サザンブロット分析、ノーザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、in situハイブリダイゼーション、アレイ分析、デオキシリボ核酸配列決定、制限断片長多型分析、及びこれらの組み合わせ又は下位組み合わせからなる群より選択される技術を使用して決定される、17〜23のいずれか1項に記載の方法。
[37] サンプル中のマーカーの発現レベルが、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー、ELISA、及び質量分析からなる群より選択される技術を使用して決定される、17〜23のいずれか1項に記載の方法。
[38] マーカーが、以下:ANGPTL3、CCL2、CDH5、CXCL1、CXCL3、PRMT3、HDAC2、一酸化窒素シンターゼbNOS、アセチルホスホヒストンH3 AL9 S10、MTA 2、グルタミン酸デカルボキシラーゼGAD65 67、KSR、HDAC4、BOB1 OBF1、a1シントロフィン、BAP1、Importina 57、αE-カテニン、Grb2、Bax、プロテアソーム26Sサブユニット13(エンドフィリンB1)、アクチン様6A(真核生物開始因子4All)、核クロライドチャネルタンパク質、プロテアソーム26Sサブユニット、ジスムターゼCu/Znスーパーオキシド、トランスリン会合因子X、亜ヒ酸塩輸送ATPase(スペルミン合成酵素)、リボソームタンパク質SA、dCTPピロホスファターゼ1、プロテアソームベータ3、プロテアソームベータ4、酸性ホスファターゼ1、ジアゼパム結合インヒビター、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、リボソームタンパク質P2(RPLP2);ヒストンH2A、微小管結合タンパク質、プロテアソームアルファ3、真核生物翻訳伸長因子1デルタ、ラミンB1、mif two 3ホモログ2のSMT 3サプレッサー、熱ショックタンパク質27kD、hnRNP C1/C2、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、HSPC-300に類似、DNA依存性DNAポリメラーゼイプシロン3;(canopy 2ホモログ)、LAMA5、PXLDC1、p300 CBP、P53R2、ホスファチジルセリン受容体、サイトケラチンペプチド17、サイトケラチンペプチド13、ニューロフィラメント160 200、Rab5、フィレンシン、P53R2、MDM2、MSH6、熱ショック因子2、AFX、FLIPg d、JAB 1、ミオシン、MEKK4、cRaf pSer621、FKHR FOXO1a、MDM2、Fasリガンド、P53R2、ミオシン調節軽鎖、hnRNP C1/C2、ユビキリン1(ホスファターゼ2A)、hnRNP C1/C2、α2-HS糖タンパク質(Bos Taurus、ウシ)、ベータアクチン、hnRNP C1/C2、熱ショックタンパク質70kD、ベータチューブリン、ATP依存性ヘリカーゼII、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、ER脂質ラフト会合2アイソフォーム1(ベータアクチン)、シグナル配列受容体1デルタ、真核生物翻訳開始因子3, サブユニット3ガンマ、ビリベルジンレダクターゼA(トランスアルドラーゼ1)、ケラチン1,10(パラチモシン)、GSTオメガ1、Dj-1への鎖Bドパミンキノン結合、プロテアソームアクチベーターReg(アルファ)、T-コンプレックスタンパク質1アイソフォームA、鎖A タパシンERP57(TCP1含有シャペロニン)、ユビキチン活性化酵素E1;アラニル-tRNA合成酵素、ダイナクチン1、熱ショックタンパク質60kd、ベータアクチン、スペルミジンシンターゼ(ベータアクチン)、熱ショックタンパク質70kD、網膜芽細胞腫結合タンパク質4アイソフォームA、TAR DNA結合タンパク質、真核生物翻訳伸長因子1ベータ2、TCP1含有シャペロニン, サブユニット3、細胞質ダイニンIC-2、アンギオテンシン変換酵素(ACE)、カスパーゼ3、GARS、マトリックスメタロプロテイナーゼ6(MMP-6)、ニューロリシン(NLN)触媒ドメイン、及びニューロリシン(NLN)、ADRB、CEACAM1、DUSP4、FOXC2、FOXP3、GCGR、GPD1、HMOX1、IL4R、INPPL1、IRS2、VEGFA、推定c-myc応答性アイソフォーム1、PDK 1、カスパーゼ12、ホスホリパーゼD1、P34 cdc2、P53 BP1、BTK、ASC2、BUBR1、ARTS、PCAF、Raf1、MSK1、SNAP25、APRIL、DAPK、RAIDD、HAT1、PSF、HDAC1、Rad17、サバイビン、SLIPR、MAG13、カスパーゼ10、Crk2、Cdc 6、P21 WAF 1 Cip 1、ASPP 1、HDAC 4、サイクリンB1、CD 40、GAD 65、TAP、Par4(前立腺アポトーシス応答4)、MRP1、MDC1、ラミニン2 a2、bカテニン、FXR2、アネキシンV、SMAC Diablo、MBNL1、ジメチルヒストンh3、増殖因子非依存性1、U2AF65、mTOR、E2F2、Kaiso、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3、ATF2、HDRP MITR、ニューラビンI、AP1、及びApaf1からなる群より選択されるマーカーである、17〜23のいずれか1項に記載の方法。
[39] 複数のマーカーの発現レベルが決定される、17〜23のいずれか1項に記載の方法。
[40] 被験体が、環境影響因子化合物、外科手術、放射線療法、ホルモン療法、抗体療法、増殖因子を用いた療法、サイトカイン、化学療法、及び同種幹細胞治療からなる群より選択される治療で処置されている、17〜23のいずれか1項に記載の方法。
[41] 環境影響因子化合物がコエンザイムQ10分子である、40に記載の方法。
[42] 肉腫を処置するための治療の有効性を評価するためのキットであって、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの発現レベルを決定するための試薬、及び肉腫を処置するための治療の有効性を評価するためのキットの使用についての説明書を含む、前記キット。
[43] 被験体が肉腫に罹患しているかどうかを評価するためのキットであって、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの発現レベルを決定するための試薬、及び前記被験体が肉腫に罹患しているかどうかを評価するためのキットの使用についての説明書を含む、前記キット。
[44] 被験体に肉腫を発症する素因があるかどうかを予測するためのキットであって、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの発現レベルを決定するための試薬、及び前記被験体に肉腫を発症する素因があるかどうかを予測するためのキットの使用についての説明書を含む、前記キット。
[45] 被験体において肉腫の再発を予測するためのキットであって、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの発現レベルを評価するための試薬、及び肉腫の再発を予測するためのキットの使用についての説明書を含む、前記キット。
[46] 肉腫の再発を予測するためのキットであって、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの発現レベルを評価するための試薬、及び肉腫の再発を予測するためのキットの使用についての説明書を含む、前記キット。
[47] 肉腫を有する被験体の生存を予測するためのキットであって、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの発現レベルを決定するための試薬、及び前記肉腫を有する被験体の生存を予測するためのキットの使用についての説明書を含む、前記キット。
[48] 被験体において肉腫の進行をモニターするためのキットであって、表2〜9に列挙されたマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのマーカーの発現レベルを決定するための試薬、及び被験体において肉腫の進行をモニターするためのキットの使用についての説明書を含む、前記キット。
[49] 被験体から生体サンプルを入手するための手段をさらに含む、42〜48のいずれか1項に記載のキット。
[50] 対照サンプルをさらに含む、42〜48のいずれか1項に記載のキット。
[51] 少なくとも1つのマーカーの発現レベルを決定するための手段が、サンプル中の転写されたポリヌクレオチド又はその一部をアッセイするための手段を含む、42〜48のいずれか1項に記載のキット。
[52] 少なくとも1つのマーカーの発現レベルを決定するための手段が、サンプル中のタンパク質又はその一部をアッセイするための手段を含む、42〜48のいずれか1項に記載のキット。
[53] 環境影響因子化合物をさらに含む、42〜48のいずれか1項に記載のキット。
[54] 複数のマーカーの発現レベルを決定するための試薬を含む、42〜48のいずれか1項に記載のキット。