JP2006345701A - タキサン類応答性の判別方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】タキサン類に対する患者の応答性を予め判別する。
【解決手段】個体のタキサン類に対する応答性を判別する方法であって、特定の10個以上の遺伝子の発現を該個体由来のサンプルについて検出し、検出結果から該サンプルがタキサン類に対して応答性サンプルであるか非応答性サンプルであるかを決定する、上記方法を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、タキサン類応答性の判別方法及び該方法に用いるプローブセット及びキットに関する。
ドセタキセルは癌、特に乳癌の治療のために最も有効な抗癌剤の1つである(例えば非特許文献1及び2参照)。外科手術前にドセタキセルを投与することで腫瘍サイズを縮小させ、手術の成功率を高めることができることから、ネオアジュバント(neoadjuvant)として使用されている。
ドセタキセル等のタキサン類は微小管の動態を阻害することによって作用し、それによって細胞を細胞分裂のM期に停止させ、続いてアポトーシスのプログラムを活性化することが報告されている(例えば非特許文献2〜5参照)。
一方、多数の遺伝子について特定の状況下での発現を調べて分類する手法として、遺伝子発現プロファイルが用いられている。しかしながらタキサン類に対する乳癌の応答についてこうした手法を用いた例は知られていない。また、タキサン類に対する応答のメカニズムについて、具体的な遺伝子発現との関連性において報告されたものは現在のところ知られていない。
ヘイズ(Heys, S.D.)ら、「クリニカル ブレスト キャンサー(Clinical breast cancer)」 (米国) 2002年、Suppl 2, p.S69-p.74 ジョーダン(Jordan, M. A.)ら、「カレント メディシナル ケミストリー. アンチキャンサー エイジェント(Current medicinal chemistry. Anti-cancer agents)」 (オランダ) 2002年、第2巻、p.1-p.17 ラオ(Rao, S.)ら、「ジャーナル オブ ザ ナショナル キャンサー インスティテュート(Journal of the National Cancer Institute)」 (米国) 1992年、第84巻、p.785-p.788 シッフ(Schiff, P.B.)ら、「プロシーディングズ オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」 (米国) 1980年、第77巻、p.1561-p.1565 ステイン(Stein, C.A.)、「セミナーズ イン オンコロジー(Seminars in oncology)」 (米国) 1999年、第26巻、p.3-p.7
上記のように、タキサン類は非常に有効な抗癌剤でありながら、乳癌患者の約半分はタキサン類による化学療法に応答せず、副作用を生じるのみであることが知られている。特定の化学療法に対する患者の応答性を予測することができれば、治療のより良い選択が可能となり、不必要な副作用から患者を救うことができる。
本発明者等は、タキサン類に対する患者の応答性を予め判別するために、応答性グループと非応答性グループにおける遺伝子発現について発現プロファイル法を用いて検討した。
まず、ヒト乳房腫瘍組織から、ドセタキセル治療前に生検によってサンプルを採取し、腫瘍サイズの縮小の有無によって治療に対する応答を臨床的に評価した。同時にハイスループットRT-PCR技術によって生検サンプルにおける遺伝子発現プロファイリングを実施した。治療に対する応答性を示す(治療が有効である)乳癌由来のサンプル(以下応答性サンプルという)及び応答性を示さない(治療が無効である)乳癌由来のサンプル(以下非応答性サンプルという)間で示差的に発現している遺伝子を用い、weighted-votingアルゴリズム(Yeang, C.H.ら, Bioinformatics Suppl 1, S316-22 (2001); MacDonald T.J.ら, Nat. Genet. 29, 143-152 (2001))に基づく診断システムを構築した。このシステムによって、新たなサンプルについてドセタキセルに対する応答を臨床応用に有効なレベルである80%を超える精度で予測した。また、治療に対する非応答性サンプルでの診断遺伝子の1種は、チオレドキシン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、及びパーオキシレドキシン等の細胞内酸化還元環境を調節する遺伝子の発現上昇によって特性付けた。哺乳動物培養腫瘍細胞系におけるこれらの遺伝子の過剰発現によって、細胞はドセタキセル誘導性の細胞死から保護されており、レドックス系の増大がドセタキセル抵抗性において主要な役割を果たしていることが示唆された。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(13)を提供する。
(1)個体のタキサン類に対する応答性を判別する方法であって、表1に記載の10種以上の遺伝子の発現を該個体由来のサンプルについて検出し、検出結果から該サンプルがタキサン類に対して応答性サンプルであるか非応答性サンプルであるかを決定する、上記方法。
Figure 2006345701
Figure 2006345701
(2)応答性サンプル及び非応答性サンプルについての標準発現パターンを予め作製し、該パターンに基いてサンプルの応答性を決定する、上記(1)に記載の方法。
(3)個体がヒト乳癌患者であり、サンプルが乳癌組織サンプルである、上記(1)または(2)に記載の方法。
(4)乳癌組織が原発性乳癌組織または局所的再発性乳癌組織である、上記(3)に記載の方法。
(5)サンプルにおけるタキサン類に対する応答性を判別するための、表1に記載の遺伝子から選択される10種以上の遺伝子の発現を検出するプローブを含む、プローブセット。
(6)プローブがPCR増幅のためのプライマーである、上記(5)に記載のプローブセット。
(7)プローブが遺伝子と特異的にハイブリダイズする塩基配列を有する、上記(5)に記載のプローブセット。
(8)上記(7)に記載のプローブセットのプローブを固相支持体上のそれぞれ異なる位置に固定したマイクロアレイ。
(9)上記(5)〜(7)に記載のプローブセット、または上記(8)に記載のマイクロアレイを含む、タキサン類応答性検出用キット。
(10)表1に記載されている遺伝子であり、非応答性サンプルで高発現となっている1種以上の遺伝子の発現を抑制する、タキサン類に対する非応答性患者に投与するためのアンチセンス核酸。
(11)表1に記載されている遺伝子であり、非応答性サンプルで高発現となっている1種以上の遺伝子の発現を抑制する、タキサン類に対する非応答性患者に投与するための二本鎖RNA核酸。
(12)表1に記載されている遺伝子であり、非応答性サンプルで高発現となっている1種以上の遺伝子の発現産物に結合する、タキサン類に対する非応答性患者に投与するための抗体。
(13)表1に記載されている遺伝子であり、非応答性サンプルで高発現となっている1種以上の遺伝子の発現産物の活性を抑制する薬剤を含有する、タキサン類に対する非応答性患者に投与するための医薬組成物。
本発明の方法は、タキサン類に対する応答性に関して癌組織固有の性質のほとんどを把握することができるものであり、ヒトの癌に対する治療法の決定の際に臨床的に有用な指針を提供し得るものである。また本発明者等の結果から、グルタチオン及び/またはチオレドキシン系の酵素を阻害することによって非応答性サンプルに応答性の性質を与え、タキサン類の効果を補助する新規抗癌剤の設計ができることが示唆される。十分に設計された臨床試験に含まれる乳癌の遺伝子発現プロファイリングは、臨床並びに医薬の開発のために非常に重要である。
本発明は、個体のタキサン類に対する応答性を判別する方法であって、表1に記載の10種以上の遺伝子の発現を該個体由来のサンプルについて検出し、検出結果から該サンプルがタキサン類に対して応答性サンプルであるか非応答性サンプルであるかを決定する、上記方法を提供する。
本明細書において、「個体」とは、ヒトの癌患者または癌のおそれのあるヒト個体であり、特にヒト原発性乳癌または再発性乳癌患者または乳癌のおそれのあるヒト個体をいう。
本明細書において、タキサン類としては、例えばパクリタキセル、ドセタキセル、及び薬学上許容され、臨床的に有効であるこれらの誘導体を挙げることができ、特に限定されるものではない。パクリタキセル、ドセタキセルは、それぞれ商品名タキソール、タキソテールとして、例えばブリストルマイヤーズ社から入手することができる。
また、本明細書において、「応答性」とは、タキサン類による化学療法を行った後、腫瘍サイズの縮小によって応答を以下の基準:
(i)完全応答(CR)=全ての疾患症状の消失、
(ii)部分応答(PR)=腫瘍サイズで50%以上の縮小、
(iii)変化なし(NC)=腫瘍サイズで50%以下の縮小または25%未満の増加、
(iv)病状の進行(PD)=腫瘍サイズで25%以上の増加または新たな病変の出現。
に基づいて臨床的に評価したものであり、CR及びPRを「応答性」サンプル、NC及びPDを「非応答性」サンプルと定義する。
サンプルは、上記個体から切開生検または吸引コアニードル生検によって採取して得られる組織であっても良く、または上記個体から採取した後に培養保存されたものであっても良い。サンプルが癌組織である場合には、組織は原発性癌組織または再発性癌組織のいずれでも良い。本発明において特に好ましくは、サンプルはヒト乳癌組織である。
表1に記載の遺伝子群は、後の実施例に記載のように、タキサン類に対して応答性の乳癌サンプル及び非応答性の乳癌サンプルにおける遺伝子発現を解析した結果、応答性が未知である乳癌サンプルがタキサン類に対して応答性であるか非応答性であるかを化学療法前に予測する上で最も有効な遺伝子群である。本発明者等はこの遺伝子群から任意の10種以上の遺伝子の発現を検出することで、サンプルがタキサン類に対して応答性であるか非応答性であるかを高い精度で予測することができることを見出した。使用する遺伝子の数は10種以上であれば良いが、好適には20種以上、より好適には40種以上、更に好適には60種以上、更に好適には80種以上、最も好適には表1に記載の85種の遺伝子全てを使用すれば良い。このことは、検出の際にこれ以外の遺伝子の発現を検出しても良く、特に表1に記載の遺伝子のみを検出することを意味するものではない。特に、実施例に記載した表4に記載の遺伝子群は、パーミューテーションテストにより選択された有意な発現を示す遺伝子群であり、表1に記載の遺伝子を全て含んでいるが、表1に含まれていない遺伝子を検出のために用いても良い。すなわち、表4に記載の10種以上、20種以上、40種以上、60種以上、80種以上の遺伝子の発現によって本発明の方法と同様にタキサン類に対する応答性を決定することも可能である。しかしながら、表1の遺伝子は、検出・診断のためにデータ品質の高い遺伝子に絞るため、PCR反応で増幅が良好であった約1100種の遺伝子から選択されたものであり、最も良好な結果を得ることができる。
遺伝子の発現は、特に限定するものではないが、検出対象となる遺伝子の塩基配列に対して相補的な配列を有するプローブを用いてハイブリダイゼーション反応を行い、ハイブリダイゼーションの有無を検出することで検出することができる。表1に記載の遺伝子の塩基配列は、GenBank等のデータベースに登録されているものについては、表1に記載の登録番号に基づいて塩基配列情報を取得することができる。また、表1に記載の遺伝子の中でデータベースに未登録のものについては、配列表に配列番号1〜7として挙げてある。従って、個々の遺伝子について、それぞれの塩基配列と相補的な例えば15〜100個、好ましくは20〜50個の塩基からなる塩基配列を有するプローブを当分野で通常行われているようにして作製し、ハイブリダイゼーションの有無を検出することができる。この場合、反応を個々の遺伝子について別個に行っても良いが、固相支持体上に個々のプローブを固定したマイクロアレイ等を使用することにより、複数の遺伝子の発現を同時に検出することができる。
検出に先立って、PCR反応等を用いて発現産物を増幅し、検出感度を上げることができる。この場合、まずサンプルから当分野で通常行われている手法によってRNAを精製した後に、個々の遺伝子について特異的なプライマーを設計し、PCR反応を行う。また、これらのプライマーを使ってリアルタイムPCR法を用いて、遺伝子の発現量を測定することができる。
また、後記の表4に記載の遺伝子群にそれぞれ対応して記載した配列番号8〜155のプライマーを用い、アダプター付加競合的PCR(ATAC-PCR)(Kato, K., Nucleic Acid Res. 25, 4694-4696 (1997); Iwao, K.ら, Hum. Mol. Genet. 11, 199-206 (2002))によってハイスループット解析を行うこともできる。
タキサン類についての応答性が未知のサンプルについて応答性を決定する場合には、特に限定するものではないが、表1に記載の遺伝子から選択される10種以上の検出対象の遺伝子について、下記の実施例に記載したように、weighted votingアルゴリズムを用いた遺伝子の重みづけ投票の総和を計算し、予測強度0を閾値とした予測強度を求めることによって、予測強度が0より大きい場合には応答性サンプル、0より小さい場合には非応答性サンプルとして判定することができる。あるいはまた、応答性サンプル及び非応答性サンプルにおける標準的な発現パターンを予め作製し、該パターンに基いて決定することが好ましい。例えば、応答性サンプルに特徴的な発現パターンを示す場合、すなわち表1に記載の遺伝子で応答性サンプルで高発現する遺伝子が非応答性サンプルで高発現する遺伝子よりも発現量が高い場合には、該サンプルは応答性サンプルであると判別することができる。また、非応答性サンプルに特徴的な発現パターンを示す場合、すなわち表1に記載の遺伝子で非応答性サンプルで高発現する遺伝子が応答性サンプルで高発現する遺伝子よりも発現量が高い場合には、該サンプルは非応答性サンプルであると判別することができる。遺伝子の検出のためにそれぞれプローブを作製し、予めDNAチップ等のマイクロアレイ上に固定して使用する場合等には、ハイブリダイゼーションの有無をCy3、Cy5等の当分野において通常用いられる蛍光色素を用いて検出することができるが、応答性サンプル及び非応答性サンプルのいずれか、あるいはそれぞれについて特徴的な発現パターンを予め作製し、対象のサンプルについてどちらの発現パターンを示すかを視覚的に検出することができる。
本発明はまた、サンプルにおけるタキサン類に対する応答性を判別するための、表1に記載の遺伝子から選択される10種以上の遺伝子の発現を検出するプローブを含む、プローブセットを提供する。プローブセットは、表1に記載の遺伝子群から選択される任意の10個以上の遺伝子にそれぞれ対応するプローブを含むが、好適には表1に記載の20種以上、より好適には40種以上、更に好適には60種以上、更に好適には80種以上、最も好適には表1に記載の85種の遺伝子全てにそれぞれ対応するプローブを含むものである。
プローブの一形態は、表1に記載の遺伝子のPCR増幅のためのプライマーである。
プローブの別の一形態は、表1に記載の遺伝子と特異的にハイブリダイズする、例えば15〜100個、好ましくは20〜50個の塩基からなる塩基配列を有するものである。
本発明は更に、上記のプローブセットのプローブを固相支持体上のそれぞれ異なる位置に固定したマイクロアレイを提供する。マイクロアレイとしては、例えば基板上にプローブを固定したDNAチップ等が挙げられる。
本発明は更に、上記のプローブセット、または上記のマイクロアレイを含む、タキサン類応答性検出用キットを提供する。
上記プローブセット、マイクロアレイ及びキットは、本発明の方法を実施するために使用することができる。
本発明はまた、表1に記載されている遺伝子であり、非応答性サンプルで高発現となっている1種以上の遺伝子の発現を抑制する、タキサン類に対する非応答性患者に投与するためのアンチセンス核酸を提供する。
本発明において、アンチセンス核酸は、表1に記載されている遺伝子であって、非応答性サンプルで高発現となっている1種以上の遺伝子の塩基配列と相補的な塩基配列を有し、かつ、該核酸の発現を抑制し得るものである。
例えば、表1で番号10に相当する登録番号M24485の遺伝子は、非応答性サンプルで高発現(「N」)となっている。この遺伝子(グルタチオン-S-トランスフェラーゼpi遺伝子)の塩基配列と相補的な塩基配列を有し、かつ、該核酸の発現を抑制し得るアンチセンス核酸は、例えば、癌細胞に導入し、遺伝子の発現を変調させることによって、遺伝子がコードするタンパク質の機能又は生物学的活性を抑制することができる。この場合、アンチセンス核酸は、例えば、登録番号M24485の遺伝子の塩基配列の、例えば連続する14塩基以上の部分配列に対して相補的な配列を有するものとするのが好ましい。
アンチセンス核酸は、タキサン類に対して非応答性の癌細胞に、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法などのDNAトランスフェクション法、又はウイルスなどの遺伝子導入ベクターの使用を含む遺伝子導入法などの当該技術分野で公知の方法を用いて導入することができる。例えば、適切なレトロウイルスベクターを用いてアンチセンス核酸を発現するベクターを調製し、その後、該発現ベクターを細胞とin vivo又はex vivoで接触させることにより、細胞に導入すればよい。
本発明はまた、表1に記載されている遺伝子であり、非応答性サンプルで高発現となっている1種以上の遺伝子の発現を抑制する、タキサン類に対する非応答性患者に投与するための二本鎖RNA核酸を提供する。
本明細書において、遺伝子の発現を抑制する「二本鎖RNA」とは、特にRNAi効果を有するRNAが好ましい。RNAi(RNA interference)とは、標的分子の一部をコードするmRNAの一部を二本鎖にしたRNAを細胞内へ導入すると、標的遺伝子の発現が抑制される現象をいう。例えば非応答性サンプルで高発現している遺伝子から転写されるRNA(塩基配列)の連続する少なくとも10ヌクレオチドを含む二本鎖RNAを挙げることができる。RNAiの詳細については、例えば実験医学別冊「RNAi実験プロトコール」(羊土社、多比良和誠ら編)に記載されている。
二本鎖RNA核酸は、上記アンチセンス核酸と同様にして癌患者に投与することができる。
本発明は更に、表1に記載されている遺伝子であり、非応答性サンプルで高発現となっている1種以上の遺伝子の発現産物に結合する、タキサン類に対する非応答性患者に投与するための抗体を提供する。
抗体は、上記発現産物に特異的に結合し、その機能又は生物学的活性を中和する抗体であれば良く、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であっても良い。また、Fab、Fc等の抗体断片であっても良い。抗体は、好ましくはヒト抗体またはヒト化抗体である。
本発明の抗体は、例えば上記発現産物またはその断片等を抗原として用いて取得することができる。
ポリクローナル抗体は、宿主動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ等)に抗原を接種した後に血清を回収する通常の方法により製造することができる。モノクローナル抗体は、通常のハイブリドーマ法などの技術により製造できる。
本発明の抗体を投与することによって、上記発現産物の機能又は生物学的活性を抑制することができる。例えば、本発明の抗体を免疫原性アジュバント等の不活性成分又は治療的使用のためにさらなる有効成分と、安定化剤及び賦形剤とともに組み合わせ、濾過滅菌後、凍結乾燥物、又は安定化水性調製物中の貯蔵物として得ることができる。投与の際には、例えば、皮下注射、動脈内注射、静脈内注射などの当分野において公知である方法で行い得る。投与量は、患者の体重、腫瘍サイズ、投与方法等に応じて、当業者であれば適宜選択することができる。
本発明は更に、表1に記載されている遺伝子であり、非応答性サンプルで高発現となっている1種以上の遺伝子の発現産物の活性を抑制する薬剤を含有する、タキサン類に対する非応答性患者に投与するための医薬組成物を提供する。
遺伝子の発現産物の活性を抑制する薬剤としては、特に限定するものではないが、例えば発現産物に結合してその生理活性を抑制する抗体、酵素阻害剤等が挙げられる。
例えば、本発明者等は、表1及び表4に記載の遺伝子群の中に、細胞内酸化還元環境を調節する数種の遺伝子を見出した。そして、これらの遺伝子をトランスフェクトしたタキサン類応答性細胞が非応答性の性質を獲得し、タキサン類の作用に対して抵抗性を有するようになることを確認した。従って、これらの遺伝子がコードするタンパク質またはペプチドの活性に対する阻害剤を用いれば、タキサン類非応答性の腫瘍の治療に極めて有効である。
すなわち、本発明によって、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ pi 1(GSTP1)、グルタチオンパーオキシダーゼ1、チオレドキシン、ペルオキシレドキシン1(チオレドキシンパーオキシダーゼ2)、グルタチオンパーオキシダーゼ4、及びグルタチオンパーオキシダーゼ関連タンパク質1等の酵素に対する阻害剤を、乳癌等の腫瘍の治療に用いることができることが明らかとなった。
上記の酵素阻害剤を投与することによって、タキサン類に対する応答性を調整し、非応答性の腫瘍に対して応答性の性質を与え、本来タキサン類に対して非応答性の腫瘍においてタキサン類の作用を期待することができる。酵素阻害剤は、タキサン類非応答性の個体に対して単独で投与しても良く、またタキサン類と組み合わせて投与しても良い。また、医薬組成物において通常用いられる賦形剤、担体、緩衝剤等と組み合わせて医薬組成物として投与することができる。
また、酵素阻害剤の1種以上を組み合わせてタキサン類非応答性の腫瘍に対する治療用キットとして提供することもできる。
実施例1
本発明者等はまず、原発性乳癌(腫瘍サイズ3cm以上、n=29)または局所的再発性乳癌(n=15)の女性患者70名(学習セット用44名及び検証セット用26名)からサンプルを採取した。サンプル組織は、ドセタキセルによる一般的な化学療法を行う前に切開生検または吸引コアニードル生検によって採取した。腫瘍サンプルの半分は組織学的検査(H&E切片標本)を行い、各患者の腫瘍組織を正しくサンプリングしていることを確認した。腫瘍サンプルを液体窒素中で急速凍結し、使用まで−80℃で保存した。
サンプルを採取した学習セットとしての44名の患者及び検証セットとしての26名の患者の年齢及び閉経状態、並びに癌の状態について表2に示す。
Figure 2006345701
上記の各患者に対し、化学療法として、ドセタキセル(60mg/m2、静脈内注射、3週間毎)を、原発性乳癌の患者の場合には外科手術前に4サイクル、局所的再発性乳癌の患者の場合には病状の進行まで投与した。局所的再発性乳癌患者には再発後最初の化学療法としてドセタキセルを投与し、補助療法としてタキサンによる治療は行っていない。
化学療法を行った後、腫瘍サイズの縮小によって応答を以下の基準に基づいて臨床的に評価した。
(i)完全応答(CR)=全ての疾患症状の消失、
(ii)部分応答(PR)=腫瘍サイズで50%以上の縮小、
(iii)変化なし(NC)=腫瘍サイズで50%以下の縮小または25%未満の増加、
(iv)病状の進行(PD)=腫瘍サイズで25%以上の増加または新たな病変の出現。
本明細書において、CR及びPRを応答性サンプル、NC及びPDを非応答性サンプルとする。
実施例2
44名の患者から得られた治療に対して応答性のサンプル22種及び非応答性のサンプル22種から、Trizol試薬(GibcoBRL)を用い、当分野で通常行われている手法によってRNAを精製した。
12例の乳癌組織由来のRNAを混合して、報告されている方法(Iwao, K.ら, Hum. Mol. Genet. 11, 199-206 (2002))を用いて3'-末端cDNAライブラリーを作成した。このライブラリーのEST解析で見つかった乳癌で発現している遺伝子と追加の74遺伝子を含む計2453遺伝子についてのアダプター付加競合的PCR(ATAC-PCR)反応のためのPCRプライマーを設計した。このうち2つのアダプターを対照のための78種の原発性悪性組織の混合物に使用した。ATAC-PCRは本発明者等のグループが見出した、定量的RT-PCRの改良方法であり(Kato, K., Nucleic Acid Res. 25, 4694-4696 (1997); Iwao, K.ら, Hum. Mol. Genet. 11, 199-206 (2002))、マイクロアレイに匹敵するハイスループット解析を可能とするものである。RT-PCRはDNAマイクロアレイと比較して検出のダイナミックレンジがより広く、必要とするRNA量がより少ないため、臨床サンプルでの解析には有利な方法である。
乳癌組織における上記2453遺伝子の発現レベルをATAC-PCRで測定した。増幅産物はABI 3700-DNA analyzerまたはABI 3100-DNA analyzerで分離した。次に、各遺伝子について、対照と比較した相対発現レベルを算出した。得られたデータマトリクスをDNAマイクロアレイで使用されている方法(van't Veer. L.J.ら, Nature 415, 530-536 (2002))と類似の方法によってメディアンで正規化し、対数スケールに変換した。
リボソームタンパク質L30を含む、メディアンに類似の発現パターンを示す6種の遺伝子を、欠測値の数が全サンプルの20%より大きいものを除く2218遺伝子のプールから選択した。26症例を用いた検証実験では、これら6種の遺伝子の相対発現レベルをATAC-PCRで測定した。検証実験では6種の遺伝子の平均をメディアンの代わりに用いてデータを正規化した。
具体的には、ATAC-PCRによって、44種のサンプルにおける2453遺伝子の発現データを対照に対する相対比として取得した。対照には78症例の乳癌組織から精製したRNAの混合物を用いた。欠測値の数が全サンプルの20%以上である235遺伝子を除いた後、欠測値が20%未満である2218遺伝子のみを遺伝子の選択に用いた。これによって、最も情報量が多い遺伝子に注目することができる。更に、2218遺伝子の中から、PCR反応が良好な1125個の遺伝子を選択して用いたが、遺伝子の機能や性質についてはバイアスはかかっていない。
遺伝子発現の粗データを各サンプルのメディアン値が1になるように変換した。0.05未満の値については、最小限界値である0.05に変換した。
このクラスター分析では、階層解析及びパラメーター解析のいずれにおいても、ドセタキセルに対する応答性と相関した特徴を見出すことはできなかった。そのため、44名の患者のデータを学習セットとして用い、教師あり学習法(supervised learning methods)を適用して応答予測のための診断システムを構築した。
3種の一般的な分類予測アルゴリズム、weighted-voting(WV)(Golub, T.R.ら, Molecular classification of cancer: class discovery and class prediction by gene expression monitoring. Science 286, 531-537 (1999))、k-nearest neighbor(k-NN)(Pomeroy, S.L.ら, Prediction of central nervous system embryonal tumour outcome based on gene expression. Nature 415, 436-442 (2002))及びサポートベクターマシン(SVM)(Furey, T.S.ら, Support vector machine classification and validation of cancer tissue samples using microarray expression data. Bioinformatics 18, 906-914 (2000))を比較した。遺伝子の数がより小さいほど、具体的には100遺伝子未満であると、診断応用に望ましい。従って、これらのアルゴリズムを、シグナル対ノイズ比(SNR)、パーミューテーション p-値(PPT)及びリカーシブフィーチャーエリミネーション(RFE)に基づく遺伝子選択法とそれぞれ組み合わせた。遺伝子選択は良好なPCR増幅を示した1125遺伝子のプールから行い、アルゴリズムの妥当性をleave-one-outクロスバリデーションによって評価した。
Weighted votingアルゴリズムは、それぞれの遺伝子の重みづけ投票(weighted vote)の総和で予測する方法である。重みには学習検体(本実施例では44症例)のデータから計算したシグナル対ノイズ比(SNR)を用いる。遺伝子gの学習検体での応答性サンプルの発現量の平均をμRg、標準偏差をσRg、非応答性サンプルの発現量の平均をμNg、標準偏差をσNgとすると、SNRは以下の式1で求めることができる。
Figure 2006345701
得られたSNRの値から、遺伝子gの重みづけ投票は以下の式2で求めることができる。
Figure 2006345701
xgにテストしたいサンプルの遺伝子gの発現量を代入すると、そのサンプルにおける遺伝子gの重みづけ投票が計算できる。この重みづけ投票weighted voteを全ての遺伝子について計算する。
一方、SNRの式(式1)を参照すれば、応答性サンプルへの投票は正の値、非応答性サンプルへの投票は負の値をとることがわかる。85遺伝子のうち正のvoteをすべて加算すると、応答性サンプルへのvote合計VRが、負のvoteをすべて加算すると非応答性サンプルへのvote合計VNが計算できる(式3−1及び式3−2)。
Figure 2006345701
[式中、iは1〜nの整数、v1〜vnはそれぞれ選択した遺伝子のvoteを示す。]
「予測」の程度を表す尺度である予測強度(Prediction strength)は、以下の式4で定義され、値が大きければ応答性サンプル、小さければ非応答性サンプルと予測する。例えば、予測強度の閾値を0として、0より大きければ応答性サンプル、小さければ非応答性サンプルと予測できる。
Figure 2006345701
情報漏れのないleave-one-outクロスバリデーションの手順は以下の通りである。まず、1個のサンプルを抜き、残りの43種のサンプルで1125遺伝子の個々について、SNR、PPT(50000回のランダムな交換)、またはRFEを用いてドセタキセル感受性と発現比の対数との間の相関を算出した。次に、それぞれの値の絶対値によって遺伝子をソートした。次いで、上位にランクされた遺伝子のセットに基づき、WV、k-NNまたはSVMアルゴリズムを用いて抜いておいた1サンプルの結果を予測した。WV:応答性サンプルと非応答性サンプルを分類する予測強度の閾値は0であった。k-NN(nearest neighbor)のk値は1である。
遺伝子選択ステップと予測アルゴリズムの双方を含む厳密なleave-one-outクロスバリデーションの結果、WVアルゴリズムが概して良好な結果を示し、85遺伝子を用いた場合には、精度が最高(72.7%)に達した(図1)。しかしながら、10個以上の遺伝子を用いた場合でも、65%前後の精度が得られ、臨床における簡易判定においては有効である。
癌の分類において、クロスバリデーションは一般に全てのデータセットから遺伝子を選択した後に予測アルゴリズムと共にのみ行われることが多い。このタイプのクロスバリデーションは予測精度を過剰評価するが、上限を設定するには有用である。本実施例において、WVの評価精度は一般的に90%を越え、10個以上の遺伝子で良好な結果を得た(図1)。これらの解析結果から、weighted-votingによって表1に記載の85遺伝子を診断のための遺伝子セットとして選択し、精度は70-90%であると予測した。
次に、全44サンプルを用いて、シグナル対ノイズ比を再度計算し、上位85遺伝子を選択した。85遺伝子のリストを表1に示した。
表1において、登録番号はGenBank等のデータベースにおける登録番号を示す。登録番号記載の遺伝子は、例えばインターネットを介してデータベースにアクセスし、塩基配列情報を入手することができる。登録番号が記載されていない遺伝子(遺伝子番号4、57、59、112、121、122、及び125)は本発明者等が新規に見出した遺伝子配列であり、その塩基配列は配列表にそれぞれ配列番号1〜7として記載した。尚、各遺伝子についてSNR及びパーミューテーションテストにおけるp値を示した。遺伝子の番号は下記の表4と同じ番号をそれぞれ使用してある。「R/N」は、各遺伝子が応答性サンプルで高発現する遺伝子(R)であるか、非応答性サンプルで高発現する遺伝子(N)であるかを示す。
44名の患者を上記85遺伝子のセットを用いて応答性/非応答性の群にそれぞれ分類したた。結果を図2に示す。非応答性サンプルでは61遺伝子(表1における「N」)の発現が上昇しており、応答性サンプルでは24遺伝子(表1における「R」)の発現が上昇してい次いで患者を予測強度の順にソートした。
予測強度の閾値を0とすると、応答性サンプルと非応答性サンプルは明瞭に分かれ、誤分類は4症例のみであった(図2)。完全な応答性サンプルと進行性の症例は閾値近くには位置しないことから、応答性サンプルと非応答性サンプルで異なった発現パターンが得られることが示唆された。
実施例3
原発性乳癌(腫瘍サイズ3cm以上、n=29)の女性患者26名(表2の検証セット)からサンプルを採取し、実施例2と同じアルゴリズムを検討した。決定された85種のマーカー遺伝子(表1)の44サンプルにおける発現量比を、新たな検証用の26サンプルの予測強度の計算に用いた。応答性サンプル(予測強度「強」)と非応答性サンプル(予測強度「弱」)に分類する予測強度の閾値は0とした。
患者から得たサンプルのそれぞれで上記85遺伝子の発現レベルをATAC-PCRによって測定し、ドセタキセルに対する応答性を予測した。以下の表3は、検証セットにおける予測強度とドセタキセル治療に対する実際の応答性との関係を示す。表中の数値は患者の数を示す。
Figure 2006345701
表3において、応答性サンプルの予測精度は91.7%(11/12)、非応答性サンプルの予測精度は71.4%(10/14)、全体としての予測精度は80.8%であった。
実施例4
ドセタキセルに対する感受性を決定する分子特徴を明らかにするために、パーミューテーションテスト(交換50000回)によって全遺伝子セット(2218遺伝子)から新たな選択を行い、ドセタキセル感受性を決定する分子特徴を明らかにした。その結果、表4に記載の148遺伝子が統計的に有意であることが見出された(p-値<0.05)。表4に記載の遺伝子には、上記実施例2で用いた85遺伝子(表1)が全て含まれている。
Figure 2006345701
Figure 2006345701
Figure 2006345701
Figure 2006345701
表中、遺伝子の番号は表1と同じ番号をそれぞれ使用してある。尚、表4はp値の小さい順にソートしてある。また、それぞれの遺伝子のPCR増幅のために使用し得るプライマーを配列番号8〜155に示す。
次に、表4に記載された遺伝子において、応答性サンプルと非応答性サンプルとで異なって発現する遺伝子の機能を検討した。
ドセタキセル等のタキサン類は微小管の動態を阻害することが報告されていることから、非応答性サンプルにおける数種のチューブリン遺伝子の発現上昇はこのメカニズムと関連している可能性がある。
また、非応答性サンプルでは、細胞内酸化還元環境を調節する遺伝子の発現上昇がみられる。こうした遺伝子には、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ pi 1(GSTP1)、グルタチオンパーオキシダーゼ1、チオレドキシン、ペルオキシレドキシン1(チオレドキシンパーオキシダーゼ2)、グルタチオンパーオキシダーゼ4、及びグルタチオンパーオキシダーゼ関連タンパク質1が挙げられる。
グルタチオン系及びチオレドキシン系は、チオール基の還元及び酸化を通じて細胞内酸化還元環境を維持する2つの主要なメカニズムである。これらの主要な機能の1つは、パーオキシダーゼ、すなわちグルタチオンパーオキシダーゼ及びチオレドキシンパーオキシダーゼを介して酸素フリーラジカルから細胞を保護することである。ドセタキセルに対して非応答性のサンプルにおいてこれらの酸化還元関連ペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子(以下「酸化還元遺伝子」という)が異常に高発現していることから、これがドセタキセル抵抗性のメカニズムの1つであることが強く示唆された。
実施例5
酸化還元遺伝子の発現がドセタキセル抵抗性に関連することをトランスフェクション実験によって検討した。
グルタチオン-S-トランスフェラーゼ pi、チオレドキシン、及びペルオキシレドキシンをそれぞれコードする3種の遺伝子を、サイトメガロウイルスプロモーターの制御下においてGFP(緑色蛍光タンパク質)との融合タンパク質としてクローニングし、ドセタキセル応答性細胞株であるヒト乳癌細胞系(MCF-7)にトランスフェクションした。
MCF-7乳癌細胞は、10% FBS(Dainippon Pharm.)及びantimycotic-antimytotic(GIBCO BRL)を添加したDMEM(SIGMA, St Louis, MO)中で、37℃で5%CO2の加湿したインキュベータ中で増殖させ、週に2回分割した。全長cDNAを、哺乳動物細胞でGFP融合タンパク質をクローニング及び発現させるための発現ベクターpcDNA-DEST47 Gatewayベクター中にクローニングした。MCF7細胞のトランスフェクションは、LipofectAMINE Plus Reagent(Life Technologies, Inc.)を用い、使用説明書に従って70%コンフルエンシー条件で行った。
トランスフェクトした細胞は24マルチウェル培養皿上で増殖させ、種々の濃度のドセタキセルで処理した。24時間後、PBS中4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、TMR-red(Roche Molecular Biochemicals, Mannheim, Germany)で染色し、細胞死を染色体DNAの断片化を検出するTUNELアッセイで判定した。
その結果、試験した遺伝子は全て、ドセタキセル誘導性の細胞死からMCF-7を保護した(図3)。例えば、ドセタキセル10nMでは、対照の細胞系では50%の細胞のみが生存しているのに対し、3種の酸化還元遺伝子をトランスフェクトした細胞系では90%を越える細胞が生存していた。
薬剤に対する応答性は個人によって異なり、これを予測することができれば治療法の決定、並びに医薬の開発、感受性を有する患者に対してのみの投薬が可能となる。薬剤に対する応答性の個人差は薬剤代謝酵素、薬剤の受容体及びトランスポーター等をコードする遺伝子における多型に基づくと考えられている。一塩基多型(SNP)のゲノムワイドの解析によって、薬剤応答と関連する多型が同定できると予想されている。本発明者等は、薬剤抵抗性の予測及び理解のために、遺伝子発現プロファイリングも重要なアプローチであることを証明した。遺伝子ファミリーの発現が一致して変化すれば特に強力である。遺伝子発現に基くアプローチは、SNPの解析によって得られるものと良好な相補的方法である。
グルタチオンの系とチオレドキシンの系はこれまで別々に研究されていたが、本発明者等の結果から、タキサン類に対する抵抗性にはこれらの系の双方が協働して作用していることが示唆される。これらの酵素のメカニズムの詳細は不明であるが、パーオキシダーゼの存在から、タキサン類によって誘導される酸化的ストレスからの保護は最も考えられるメカニズムである。
一方、抗癌剤に対する応答性は、癌組織固有の性質によってのみでなく、薬物代謝能等の宿主側の種々の条件によって左右される。そのため、極めて正確な予測は一般に困難である。従って、本発明の方法は、タキサン類に対する応答性に関して癌組織固有の性質のほとんどを把握するものであり、癌に対する治療法の決定の際に臨床的に有用な指針として機能し得るものと考えられる。
本発明の方法の分類精度を、使用した遺伝子の数の関数として示す。Y軸は、シグナル対ノイズ比に基づくweighted votingアルゴリズム(●)またはパーミューテーションテスト(50000回のランダムな交換)に基づくk-nearest neighbor(k=1)(■)、をそれぞれ用いたleave-one-out法の予測精度の確率である。▲は、リカーシブフィーチャーエリミネーションで遺伝子選択し、サポートベクターマシンに基づく予測を行った結果を示す。点線は44サンプルから遺伝子を選択した後に行ったクロスバリデーションの精度を示す。X軸はリポーターの数である。 44症例から得た組織(縦軸)における85遺伝子の発現パターン(横軸)のクラスター解析の結果を示す。85遺伝子の発現を用いて2つの予測群を有する予測強度で腫瘍をソートした。点線は「予測強度=0」を示す。それぞれのセルは、遺伝子の発現量を模式的に示したもので、明るくなる程発現量が高くなるように表示されている(図下部にあるスケールを参照)。 右側のバーはドセタキセルに対する個々の症例の感受性を示したもので、図右上にその対応を示してある。PR、CR、NC、PDについては、本文を参照のこと。 遺伝子は、階層的クラスター分析により、発現の似たものが隣接するように配列させている。樹状図は、クラスター分析結果で、発現パターンの類似度を示す。 対照及びレドックス遺伝子でトランスフェクトしたMCF-7細胞におけるドセタキセルによるアポトーシスの誘導を示す。対照遺伝子でトランスフェクトしたMCF-7細胞(△)、チオレドキシンをコードする遺伝子でトランスフェクトしたMCF-7細胞(○)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼPi 1をコードする遺伝子でトランスフェクトしたMCF-7細胞(■)、及びペルオキシレドキシンをコードする遺伝子でトランスフェクトしたMCF-7細胞(▲)を、図に示す種々の濃度のドセタキセルで処理した。24時間のインキュベーションの後、アポトーシスの有無を決定した。Y軸は未処理の対照に対する生存細胞の比率を示す。実験は2回行った。
配列番号8〜155:合成DNA

Claims (13)

  1. 個体のタキサン類に対する応答性を判別する方法であって、表1に記載の10種以上の遺伝子の発現を該個体由来のサンプルについて検出し、検出結果から該サンプルがタキサン類に対して応答性サンプルであるか非応答性サンプルであるかを決定する、上記方法。
    Figure 2006345701
    Figure 2006345701
  2. 応答性サンプル及び非応答性サンプルにおける上記遺伝子の発現パターンを予め作製し、該パターンに基いてサンプルの応答性を決定する、請求項1に記載の方法。
  3. 個体がヒト乳癌患者であり、サンプルが乳癌組織サンプルである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 乳癌組織が原発性乳癌組織または局所的再発性乳癌組織である、請求項3に記載の方法。
  5. サンプルにおけるタキサン類に対する応答性を判別するための、表1に記載の遺伝子から選択される10種以上の遺伝子の発現を検出するプローブを含む、プローブセット。
  6. プローブがPCR増幅のためのプライマーである、請求項5に記載のプローブセット。
  7. プローブが遺伝子と特異的にハイブリダイズする塩基配列を有する、請求項5に記載のプローブセット。
  8. 請求項7に記載のプローブセットのプローブを固相支持体上のそれぞれ異なる位置に固定したマイクロアレイ。
  9. 請求項5〜7に記載のプローブセット、または請求項8に記載のマイクロアレイを含む、タキサン類応答性検出用キット。
  10. 表1に記載されている遺伝子であり、非応答性サンプルで高発現となっている1種以上の遺伝子の発現を抑制する、タキサン類に対する非応答性患者に投与するためのアンチセンス核酸。
  11. 表1に記載されている遺伝子であり、非応答性サンプルで高発現となっている1種以上の遺伝子の発現を抑制する、タキサン類に対する非応答性患者に投与するための二本鎖RNA核酸。
  12. 表1に記載されている遺伝子であり、非応答性サンプルで高発現となっている1種以上の遺伝子の発現産物に結合する、タキサン類に対する非応答性患者に投与するための抗体。
  13. 表1に記載されている遺伝子であり、非応答性サンプルで高発現となっている1種以上の遺伝子の発現産物の活性を抑制する薬剤を含有する、タキサン類に対する非応答性患者に投与するための医薬組成物。
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