JP6155961B2 - 酸化セリウム系研磨材の再生方法 - Google Patents
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Description
そして、これらのガラス材料の表面は、研磨によって鏡面状に仕上げる場合があり、このようなガラス材料の研磨に用いられる研磨材としては、従来から、希土類酸化物、特に酸化セリウムを主成分とする研磨材(以下、「酸化セリウム系研磨材」と記載)が知られている。
このようなことから、ガラス材料の研磨が繰り返し行われることで、酸化セリウム微粒子の表面は、付着した珪素成分によって徐々に覆われることとなり、酸化セリウム系研磨材の研磨能力が低下していく(劣化していく)。
よって、劣化した酸化セリウム系研磨材(以下、「劣化酸化セリウム系研磨材」と記載)を再生するためには、酸化セリウム微粒子に付着した珪素成分を除去することが必要となる。
具体的には、特許文献1において、酸化セリウム系研磨材と水とを用いて非晶質固体を研磨した際に得られる、非晶質固体が表面に付着した酸化セリウム系研磨材を含む懸濁液を遠心分離し、前記非晶質固体が表面に付着した酸化セリウム系研磨材を含む分離堆積物を得る工程と、非晶質固体の溶解剤と前記分離堆積物とを水中で混合することにより、前記酸化セリウム系研磨材の表面に付着した非晶質固体を溶解させる溶解工程と、を備える、酸化セリウム系研磨材の製造方法(再生方法)に関する技術が開示されている。
また、この方法によれば、アルカリ成分などからなる非晶質固体の溶解剤の使用量を抑制できるため、従来の方法に比べて、労力が小さく、環境への負荷も小さい、酸化セリウム系研磨材の再生方法を提供できる。
従って、この方法では、詳細な説明は後述するが、例えば、遠心分離による固液分離工程を、少なくとも三度行うこととなり、最終的に得られる再生酸化セリウム系研磨剤の歩留まりが低下するという問題点があった。
具体的には、アルカリ処理工程にて、酸化セリウム微粒子に付着した珪素成分を水酸化物イオンと反応させて水に可溶として、酸化セリウム微粒子から除去した後に、該酸化セリウム微粒子に水洗いを施して、該酸化セリウム微粒子の水素イオン指数を降下させる必要もなく、遠心分離を行う回数を減らすことが可能であることから、最終的に回収される、再生酸化セリウム系研磨材の歩留まりの向上を図ることができる。
よって、溶解剤を投入する際には、水中におけるこれらの酸化セリウム微粒子の分散性が、十分に確保された状態となっており、その後のアルカリ処理において、酸化セリウム微粒子に付着する珪素成分と、溶解剤とを効率よく反応させることができる。
先ず、本発明を具現化する、酸化セリウム系研磨材の再生方法の全体的な流れについて、図1を用いて説明する。
具体的には、前記研磨材再生法は、劣化酸化セリウム系研磨材と水とを用いて、被研磨材(研磨材によって研磨される部材)を研磨する際に発生する懸濁液をもとにして、該懸濁液に含有される劣化酸化セリウム系研磨材を再生する方法である。
また、酸化セリウム系研磨材は、研磨時間の増加に伴って研磨速度が低下することからも、珪素成分の多くが酸化セリウム微粒子に付着した状態で存在しているものと考えられていた。
このことは、前述した、酸化セリウム系研磨材の研磨原理や、経時的に研磨速度が低下する事実などからして、本発明者らにとって驚くべき事実であった。
なかでも、使用済みの劣化酸化セリウム系研磨材において、その懸濁液中の珪素成分の多くが、固体として該懸濁液中に分散していることは、特に驚くべきことであった。
なお、以下の説明においては、例えば珪素成分を含むガラス材料などの非晶質固体を被研磨材とする場合について記載するが、これに限定されるものではない。
即ち、酸化セリウム系研磨材によって研磨される被研磨材としては、このような珪素成分を含むガラス材料に限定されず、例えばアモルファスシリコンや、酸化珪素を含有する硼珪酸塩系ガラスや珪酸塩系ガラス(ソーダ石灰ガラス)など、他の非晶質固体であってもよい。また、マトリックスガラス中に結晶を析出してなる非晶質固体、いわゆる結晶化ガラスであってもよい。
前記劣化研磨材回収工程(P01)は、劣化酸化セリウム系研磨材を回収する工程である。
具体的には、劣化研磨材回収工程(P01)は、酸化セリウム系研磨材と水とを用いてガラス材料を研磨した際に得られる懸濁液を遠心分離することにより、劣化酸化セリウム系研磨材を分離して回収する工程である。
また、酸化セリウム系研磨材は、通常、メディアン径(d50)が0.3〜5.0[μm]程度のものが用いられる。
アルカリ処理工程(P02)は、劣化研磨材回収工程(P01)にて回収された劣化酸化セリウム系研磨材と、非晶質固体を溶解するためのアルカリ性溶解剤とを水中にて混合することにより、前記劣化酸化セリウム系研磨材にアルカリ処理を施して、酸化セリウム微粒子の表面に付着する珪素成分を水中に溶解させる工程である。
再生研磨材回収工程(P03)は、アルカリ処理工程(P02)によって得られた水懸濁液を、珪素成分が取り除かれた再生酸化セリウム系研磨材と、アルカリ性溶解剤および該アルカリ性溶解剤によって溶解された珪素成分を含有する水溶液とに分離して、再生酸化セリウム系研磨材を回収する工程である。
また、後述するように、前記研磨材再生法においては、再生研磨材回収工程(P03)において、酸を投入して中和する中和工程を経た水懸濁液を遠心分離することとしており、この工程を経ることにより、再生酸化セリウム系研磨材の歩留まりの向上化が図られている。
次に、劣化研磨材回収工程(P01)の具体的な流れについて、図2および図3を用いて説明する。
ここで、前記懸濁液は、酸化セリウム系研磨材と水とを用いて、被研磨材であるガラス材料を研磨した後に残った懸濁液である。
本実施形態においては、劣化セリウム系研磨材3A・3A・・・の総質量に対する珪素(Si)の含有量は、SiO2換算で通常0.3[質量%]〜20[質量%]程度であってもよい。
例えば、懸濁液1の遠心分離は、500〜20000[G]程度の遠心力をもって行えば、懸濁液1に分散している劣化セリウム系研磨材3A・3A・・・を、沈殿、堆積させることができる。
そして、劣化研磨材回収工程(P01)において回収された劣化セリウム系研磨材3A・3A・・・は、後述するアルカリ処理工程(P02)によって、引き続き処理される。
次に、アルカリ処理工程(P02)の具体的な流れについて、図2および図4を用いて説明する。
ここで、分散剤6としては、オキシカルボン酸類やポリカルボン酸類、より具体的には、乳酸、りんご酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシイソ酪酸などを使用することができる。
また、これらの分散剤6は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などの塩であってもよい。
このように、従来の研磨材再生法のアルカリ処理工程では、新たに用意された水5中に、劣化セリウム系研磨材3A・3A・・・のみを投入することとしていたが、本実施形態における研磨材再生法のアルカリ処理工程(P02)では、予め水5中に分散剤6を投入しておき、その後、劣化セリウム系研磨材3A・3A・・・を投入することとしている。
これにより、劣化セリウム系研磨材3A・3A・・・は、互いに良好に分散され、水中にて凝集することを防止できる。
なお、分散剤6は、100質量部の水5に対して、0.1〜5質量部を投入することが好ましい。
ここで、前記溶解剤7は、非晶質成分を溶解可能なアルカリ性の水溶液であって、各劣化セリウム系研磨材3Aの表面に付着する珪素成分2を、水5中に溶解可能とするために投入されるものである。
前記アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムがより好ましく用いられる。また、前記アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化カルシウムが、アミン錯体の水酸化物としては、ジアンミン銀(I)水酸化物がより好ましく用いられる。
これらの中でも、コストの面から、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
一方、水酸化物イオン(OH-)の量と珪素(Si)の量とのmol比が大きすぎると、溶解剤7の量が過剰となり、後述する中和工程での酸性溶液の投入量が増え、環境への負荷も大きくなる可能性がある。
即ち、アルカリ水溶液の水酸化物イオン(OH-)の量が、劣化セリウム系研磨材3A・3A・・・に含まれる珪素(Si)の量の15〜200倍程度となるように、これらの溶解剤7と劣化セリウム系研磨材3A・3A・・・とを混合することが好ましく、前記アルカリ水溶液の水酸化物イオン(OH-)の量が劣化セリウム系研磨材3A・3A・・・に含まれる珪素(Si)の量の20〜150倍程度となるように混合することがより好ましい。
これにより、水懸濁液11に含有される劣化セリウム系研磨材3A・3A・・・と、溶解剤7とが十分に混合され、酸化セリウム微粒子3の表面に付着する珪素成分2と、水酸化物イオン(OH-)とが十分に接触し、該酸化セリウム微粒子3に対するアルカリ処理が促進される。
その結果、図4(b)に示すように、水懸濁液11において、酸化セリウム微粒子3の表面に付着していた珪素成分2は、アルカリ処理により少なくとも一部が溶解し、該酸化セリウム微粒子3の表面より剥離して、珪素成分2と水懸濁液11における水5中へと溶解し、再生酸化セリウム系研磨材3B・3B・・・に分離する。
例えば、本実施形態においては、水懸濁液11の温度条件として、40〜70℃程度としている。
また、本実施形態においては、水懸濁液11を撹拌し、劣化セリウム系研磨材3A・3A・・・と溶解剤7とを混合する際の時間的条件として、1〜10時間程度としている。
これにより、アルカリ処理が施される前に、劣化セリウム系研磨材3A・3A・・・が互いに凝集するのを、予め防止することが可能となる。
よって、溶解剤7を投入する際には、水5中における劣化セリウム系研磨材3A・3A・・・の分散性が、十分に確保された状態となっており、その後のアルカリ処理において、酸化セリウム微粒子3に付着する珪素成分2と、溶解剤7とを効率よく反応させることができる。
そして、アルカリ処理工程(P02)においてアルカリ処理が施された水懸濁液11は、後述する再生研磨材回収工程(P03)によって、引き続き処理される。
次に、再生研磨材回収工程(P03)の具体的な流れについて、図2および図5を用いて説明する。
このような状態における水懸濁液11に酸性溶液8を投入することにより、該水懸濁液11は中和される。
この際、酸性溶液8による中和後における、水懸濁液11のpH(水素イオン指数)は、投入する酸性溶液8の量をコントロールして、例えば、8〜12程度とするのが好ましい。即ち、水懸濁液11のpHが8〜12程度となるように酸性溶液8の投入量を調整すれば、たとえ、本方法において、耐酸性の低い容器を使用したとしても、該容器が酸によって溶け出し難いのである。
また、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、臭素酸、リン酸などが例示される。
さらに、再生研磨材回収工程(P03)にて投入される酸性溶液8は、アルカリ処理によってアルカリ性を呈することとなった水懸濁液11を中和するために投入されることから、例えば、溶解剤7に含まれるアルカリ金属の水酸化物と反応し易く、取り扱いが容易な、塩酸を用いることがより好ましい。
これにより、図5(b)に示すように、水懸濁液11において、水5中に分散する再生酸化セリウム系研磨材3B・3B・・・は沈殿して堆積物となり、該水5中に珪素成分2・2・・・が溶解した状態となる。
例えば、水懸濁液11の遠心分離は、500〜20000[G]程度の遠心力をもって行うことができる。
そして、再生研磨材回収工程(P03)において回収された再生酸化セリウム系研磨材3B・3B・・・は、再生された酸化セリウム系研磨材として、再びガラス材料などの非晶質固体の研磨に用いられる。
そのため、前記セリウム系研磨材を、再び水中に投入して十分に水洗いし、水素イオン指数を降下させる必要があった。
そして、水洗いの終了後、再び遠心分離を行い、沈殿したセリウム系研磨材を、最終的に再生セリウム系研磨材として回収していた。
つまり、従来の酸化セリウム系研磨材の再生方法においては、本実施形態における酸化セリウム系研磨材の再生方法よりも多く、遠心分離がなされることとなり、遠心分離の回数が増えることにより、再生酸化セリウム系研磨材の回収率が低くなっていた。
つまり、本実施形態の酸化セリウム系研磨材の再生方法においては、再生研磨材回収工程における遠心分離が一度のみで済み、該再生研磨材3B・3B・・・の歩留まりを向上させることができるのである。
3A 劣化セリウム系研磨材
3B 再生セリウム系研磨材
4 水
5 水
6 分散剤
7 溶解剤
8 酸性溶液
11 水懸濁液
P01 劣化研磨材回収工程
P02 アルカリ処理工程
P03 再生研磨材回収工程
Claims (5)
- 非晶質固体の研磨後の劣化酸化セリウム系研磨材を再生し、再生酸化セリウム系研磨材を得る、酸化セリウム系研磨材の再生方法であって、
前記劣化酸化セリウム系研磨材と、アルカリ性溶解剤とを水中にて撹拌しながら混合してアルカリ処理し、再生酸化セリウム系研磨材を含む水懸濁液を得るアルカリ処理工程と、
該アルカリ処理工程によって得た前記水懸濁液を酸により中和する中和工程と、を備える、
ことを特徴とする酸化セリウム系研磨材の再生方法。 - 前記アルカリ性溶解剤は水酸化ナトリウム水溶液である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の酸化セリウム系研磨材の再生方法。 - 前記アルカリ処理工程において、
前記劣化酸化セリウム系研磨材と、前記アルカリ性溶解剤とを水中にて混合する前に、
前記劣化酸化セリウム系研磨材の分散剤を該水中に投入する、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の酸化セリウム系研磨材の再生方法。 - 前記中和工程の終了後の、
前記水懸濁液の水素イオン指数は8〜12である、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の酸化セリウム系研磨材の再生方法。 - 前記酸は塩酸である、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の酸化セリウム系研磨材の再生方法。
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