JP3615943B2 - 使用済希土類元素系研摩材からの希土類元素の回収方法 - Google Patents

使用済希土類元素系研摩材からの希土類元素の回収方法 Download PDF

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  • Compounds Of Alkaline-Earth Elements, Aluminum Or Rare-Earth Metals (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は使用済希土類元素系研摩材からの希土類元素の回収方法に関し、より詳しくは、ガラス表面等の研摩に使用した希土類元素系研摩材から希土類元素を回収して再利用することに関する。
【0002】
【従来の技術】
希土類元素系研摩材は、例えばアメリカで産出されるバストネサイト等の希土類鉱物の鉱石から選鉱工程で異種鉱物を除去して得られたバストネサイト精鉱を原料として、粉砕、化学処理、濾過、乾燥、焙焼、粉砕、分級、添加剤混合等の各工程を経て製造されている。
【0003】
希土類元素系研摩材は、その研摩特性が優れているため、液晶ディスプレイ装置(LCD)用ガラス基板やコンピュータ用ハードディスク記憶装置に使われるガラス基板、レンズ等の光学ガラス、半導体IC用フォトマスクのガラス基板、陰極線管(CRT)用ガラス等の研摩に使用されている。
【0004】
近年、研摩対象物である液晶ディスプレイ装置用ガラス基板やコンピュータ用ハードディスク記憶装置に使われるガラス基板の需要が増大しているために希土類元素系研摩材の需要が年々増加している。現在、ガラス基板や光学レンズ等の研摩に年間4000トン程度の希土類元素系研摩材が使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
現在、これらの希土類元素系研摩材は使用後にはほぼ全量が産業廃棄物として廃棄されている。増加する産業廃棄物が深刻な社会問題となっている情勢下、使用済希土類元素系研摩材のリサイクル使用に対する要望が高まっている。
【0006】
また、これらの使用済希土類元素系研摩材には乾量基準で20〜80重量%の希土類元素酸化物が含まれており、これらの資源の有効利用という観点から、また輸入に依存している希土類元素資源の安定確保という面からも使用済希土類元素系研摩材からの希土類元素の回収は重要問題である。
従来、使用済希土類元素系研摩材からの希土類元素の回収方法として種々の方法が提案されているが、それらの回収方法には回収品の純度の面、コストの面等で問題があり、未だ、満足できる回収方法は提案されていない。
【0007】
例えば、鉱酸で処理するか又は陽極酸化処理することによって使用済希土類元素系研摩材から希土類元素を溶解させ、溶解液に直接蓚酸又は蓚酸アルカリ等の沈澱剤を添加し、希土類元素を蓚酸塩の形で回収し、次いでその蓚酸塩を酸化焙焼することにより希土類元素を酸化物の形で回収する方法が提案されている。
しかしながら、上記の回収方法は回収される希土類元素酸化物の純度の面で好ましい方法であるが、高価な蓚酸又は蓚酸アルカリが消費されるため、コスト高になるという欠点を有している。
【0008】
本発明は上記の欠点を解消するためになされたものであり、使用済希土類元素系研摩材から希土類元素を水酸化物又は酸化物として高純度で且つ比較的低コストで回収する方法を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、従来技術と同様にして希土類元素を蓚酸塩の形で回収した後、水酸化アルカリ水溶液で処理して希土類元素の水酸化物に転化させ且つ蓚酸アルカリ水溶液を生成させ、それらを固液分離で回収し、回収した蓚酸アルカリ水溶液を沈澱剤として再利用することにより、使用済希土類元素系研摩材から希土類元素を水酸化物として高純度で且つ比較的低コストで回収できることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明の使用済希土類元素系研摩材からの希土類元素の回収方法は、
使用済希土類元素系研摩材を鉱酸水溶液で処理して希土類元素を溶解させる第一工程、
該第一工程で生成した希土類元素を溶解している溶解液と未溶解物とを固液分離して該溶解液を回収する第二工程、
該回収した溶解液にpHが5以下となるように蓚酸及び蓚酸アルカリ水溶液を添加して希土類元素を蓚酸塩として析出させる第三工程、
該希土類元素の蓚酸塩を固液分離によって回収する第四工程、
該回収した希土類元素の蓚酸塩を水酸化アルカリ水溶液で処理して希土類元素の水酸化物に転化させ且つ蓚酸アルカリ水溶液を生成させる第五工程、及び
該第五工程で生成した希土類元素の水酸化物及び蓚酸アルカリ水溶液を固液分離によってそれぞれ回収する第六工程
を含み、第六工程で回収した蓚酸アルカリ水溶液を、第三工程で添加する蓚酸アルカリ水溶液として再利用することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において希土類元素を回収する源となる「使用済希土類元素系研摩材」とは、希土類元素酸化物、特に酸化セリウムを主成分とする希土類元素系研摩材を用いてガラス基板表面等を研摩した際に生じる希土類元素酸化物と被切削ガラス粉との混合物を意味する。
【0012】
現在使われているガラス基板研摩用の希土類元素系研摩材は希土類元素酸化物を80〜98重量%含んでおり、その内で酸化セリウムが最も多く、希土類元素酸化物全体の40〜90重量%を占めている。更に、フッ素を5〜9重量%含んでいる。フッ素は元々バストネサイト鉱石〔(Ce,La)(CO)F〕に含まれているが、ガラス研磨において物理研磨と共に重要な化学研磨の作用を持つため含有量を5〜9重量%に調整している。また、希土類元素系研摩材の平均粒径としては0.4〜3.0μmであることが好ましい。
【0013】
また、使用済希土類元素系研摩材スラリーを乾燥したもの、あるいは使用済希土類元素系研摩材スラリーを有機系または無機系凝集剤で凝集させ、フィルタープレス等の脱水濾過装置で固液分離した後の固形分(ケーキ)を乾燥したものの組成を調べると、被研摩物の材質、研摩方法によっても差は生じるが、ガラス成分、特にシリカ(SiO)が例えば2〜20重量%含まれている。使用前の希土類元素系研摩材中のシリカ含有量が2重量%以下であり、一般的にかなり増加している。
【0014】
また、使用済希土類元素系研摩材スラリーを凝集させる際にポリ塩化アルミニウムを使用した場合にはアルミナも3〜20重量%含まれている。
本発明の回収方法においては、使用済希土類元素系研摩材は乾量基準で希土類元素酸化物を一般的には20〜80重量%含むが、採算性の面を重要視する場合には、40重量%以上含むことが好ましく、60重量%以上含むことがより好ましい。
【0015】
本発明の回収方法の第一工程として、使用済希土類元素系研摩材を鉱酸、例えば硫酸水溶液で処理して希土類元素を溶解させる。この溶解操作により希土類元素を溶解している溶解液と未溶解物とからなる混合物が生成する。この際に用いる硫酸水溶液の濃度は希土類元素を溶解させ得る程度の濃度であり、硫酸水溶液の使用量としては、不純物の含量によっても影響を受けるが、一般的には希土類元素酸化物当り硫酸1〜1.5当量、好ましくは硫酸1.1〜1.3当量とする。硫酸の使用量が少ない場合には希土類元素が完全に溶解するのに長時間を要したり、希土類元素の一部が未溶解のままで残る傾向があり、また、硫酸の使用量が多い場合には無駄に消費されることになり、不経済である。この溶解処理の際の温度、時間については臨界的ではないが、温度が低いと希土類元素酸化物の溶解が困難になり、逆に温度が高くなるにつれて溶解速度が速くなるが、加熱、設備に費用がかかることになる。例えば、50〜70℃で3〜5時間溶解処理することができる。
【0016】
本発明の回収方法の第二工程として、第一工程で生成した希土類元素を溶解している溶解液と未溶解物とを固液分離し、例えば濾過して溶解液を濾液として回収する。この濾過の際に残渣を水洗し、その洗液を濾液と一緒にすることもできる。また、この残渣にはガラスの研摩で生じた種々の成分、例えばケイ素系、ホウ素系、リン系の化合物等が含まれているので、残渣は廃棄するか、或いは固めてブロックにすることもできる。
【0017】
本発明の回収方法の第三工程として、第二工程で固液分離によって回収した溶解液(濾液、又は濾液+洗液)にpHが5以下、好ましくは1〜2.5となるように蓚酸(通常は蓚酸水溶液)及び蓚酸アルカリ水溶液を添加して希土類元素を蓚酸塩として析出させる。この析出物は微細粒子であるので徐々に沈降する。この蓚酸水溶液及び蓚酸アルカリ水溶液の添加量については、できる限り多くの希土類元素を析出させるのに充分な量である必要があるが、その添加量が多い場合には無駄に消費されることになり、不経済である。
【0018】
本発明の回収方法の第四工程として、この析出した希土類元素の蓚酸塩を固液分離、例えばデカンテーションによって回収する。なお、希土類元素の蓚酸塩からなる析出物は分散媒中で徐々に沈降するので、操業時間を短縮する目的で、析出物が完全に沈降する前のかなりの分散媒が上澄みとなった段階でデカンテーションにより上澄み液を廃棄して希土類元素の蓚酸塩を回収する。この廃液中には鉄化合物、アルミニウム化合物、硫酸ナトリウム等が含まれている。
【0019】
本発明の回収方法の第五工程として、第四工程で回収した希土類元素の蓚酸塩を水酸化アルカリ水溶液で処理して希土類元素の水酸化物に転化させ且つ蓚酸アルカリ水溶液を生成させる。この水酸化アルカリ水溶液の添加量については、できる限り多くの希土類元素の蓚酸塩を水酸化物に変換させるのに充分な量である必要があるが、その添加量が多い場合には不経済である。
【0020】
本発明の回収方法の第六工程として、第五工程で生成した希土類元素の水酸化物及び蓚酸アルカリ水溶液を固液分離、例えばデカンテーションによってそれぞれ回収する。なお、希土類元素の水酸化物は蓚酸アルカリ水溶液中で徐々に沈降するので、操業時間を短縮する目的で、希土類元素の水酸化物が完全に沈降する前のかなりの蓚酸アルカリ水溶液が上澄みとなった段階でデカンテーションによって希土類元素の水酸化物及び蓚酸アルカリ水溶液をそれぞれ回収する。この回収した蓚酸アルカリ水溶液は希土類元素を蓚酸塩として析出させるのに有効な蓚酸分を含有しているので、第三工程で添加する蓚酸アルカリ水溶液として利用する。この第六工程で回収した蓚酸アルカリ水溶液は直ちに第三工程に循環させて用いても、或いは貯蔵しておき、その貯蔵しておいた蓚酸アルカリ水溶液を第三工程で添加する蓚酸アルカリ水溶液として用いてもよい。
【0021】
本発明の回収方法においては、上記のように第六工程で回収した蓚酸アルカリ水溶液を第三工程で添加する蓚酸アルカリ水溶液として利用するので、即ち、蓚酸分をリサイクルさせて使用するので、第三工程で添加する蓚酸の必要量は第四工程及び第六工程で失われる蓚酸分に相当する量でよい。
【0022】
従って、希土類元素を蓚酸塩の形で回収し、次いでその蓚酸塩を酸化焙焼することにより希土類元素を酸化物の形で回収する従来技術の回収方法と比較して、消費される蓚酸分の量は半分以下となり、使用済希土類元素系研摩材から希土類元素を水酸化物又は酸化物として高純度で且つ低コストで回収することが可能となる。
【0023】
また、本発明の回収方法においては、第六工程で回収した希土類元素の水酸化物を酸、例えば塩酸で処理し、次いで水洗することによって精製し、その後焼成して酸化物として回収することもできる。このようにして回収した酸化物は、希土類元素系研摩材を構成するのに必要なその他の成分と配合することにより希土類元素系研摩材として再利用することができる。
【0024】
【実施例】
製造例
ガラス基板の研摩に用いた使用済希土類元素系研摩材(希土類元素酸化物の含有率70.29重量%)200g(希土類元素酸化物の含有量140.6g)を25%HSO612ml中で60℃で4時間抽出処理して希土類元素を溶解させた。この溶解操作により希土類元素を溶解している溶解液と未溶解物とからなる混合物が生成した。
【0025】
この希土類元素を溶解している溶解液と未溶解物とからなる混合物を濾過して溶解液を濾液として回収し、更にその残渣を水705mlで水洗し、その洗液を濾液と一緒にした。その合計量は1200mlであった。一方、残渣の量は湿量で172.9g(希土類元素酸化物の含有量10.5g)であった。この残渣は廃棄した。
【0026】
回収した溶解液(濾液+洗液)1200mlの半量(600ml)に、水1000ml中に蓚酸85gを溶解させた溶液を添加して希土類元素を蓚酸塩として析出させた。この際のpHは1.1であった。なお、希土類元素の蓚酸塩からなる析出物は分散媒中で徐々に沈降したので、操業時間を短縮する目的で、分散媒の約半分量が上澄み液となった段階でデカンテーションにより上澄み液を廃棄した。その廃棄量は800mlであった。
【0027】
デカンテーション処理後の残留物に水2500mlを加えて攪拌し、これに15NのNaOH水溶液80mlを加えて希土類元素の水酸化物及び蓚酸アルカリ水溶液を生成させた。この際のpHは12.0であった。なお、希土類元素の水酸化物は蓚酸アルカリ水溶液中で徐々に沈降するので、操業時間を短縮する目的で、蓚酸アルカリ水溶液の約4分の3量が上澄み液となった段階でデカンテーションによって上澄み液(蓚酸アルカリ水溶液)を回収した。その回収量は2510mlであった。
【0028】
デカンテーション処理後に残留している希土類元素の水酸化物を含有している液に水2500mlを加え、この液を5Nの塩酸38mlで中和し、洗浄し、濾過した。濾残の量は湿量で155.4g(希土類元素の水酸化物の含有量は希土類元素酸化物として58.9g)であった。
【0029】
実施例1
前記の製造例で回収した溶解液(濾液+洗液)1200mlの残りの半量(600ml)に、前記の製造例で回収した蓚酸アルカリ水溶液2510ml及び水1000ml中に蓚酸45gを溶解させた溶液を添加して希土類元素を蓚酸塩として析出させた。この際のpHは1.5であった。なお、希土類元素の蓚酸塩からなる析出物は分散媒中で徐々に沈降したので、操業時間を短縮する目的で、分散媒の約5分の4量が上澄み液となった段階でデカンテーションにより上澄み液を廃棄した。その廃棄量は3350mlであった。
【0030】
デカンテーション処理後の残留物に水2500mlを加えて攪拌し、これに15NのNaOH水溶液80mlを加えて希土類元素の水酸化物及び蓚酸アルカリ水溶液を生成させた。この際のpHは12.9であった。なお、希土類元素の水酸化物は蓚酸アルカリ水溶液中で徐々に沈降するので、操業時間を短縮する目的で、蓚酸アルカリ水溶液の約4分の3量が上澄み液となった段階でデカンテーションによって上澄み液(蓚酸アルカリ水溶液)を回収した。その回収量は2570mlであった。
【0031】
デカンテーション処理後に残留している希土類元素の水酸化物を含有している液に水2500mlを加え、この液を5Nの塩酸41mlで中和し、洗浄し、濾過した。濾残の量は湿量で141.8g(希土類元素の水酸化物の含有量は希土類元素酸化物として61.1g)であった。
【0032】
実施例2
ガラス基板の研摩に用いた使用済希土類元素系研摩材(希土類元素酸化物の含有率70.29重量%)200g(希土類元素酸化物の含有量140.6g)を25%HSO612ml中で60℃で4時間抽出処理して、希土類元素を溶解させた。この溶解操作により希土類元素を溶解している溶解液と未溶解物とからなる混合物が生成した。
【0033】
この希土類元素を溶解している溶解液と未溶解物とからなる混合物を濾過して溶解液を濾液として回収し、更にその残渣を水703mlで水洗し、その洗液を濾液と一緒にした。その合計量は1200mlであった。一方、残渣の量は湿量で175.6g(希土類元素酸化物の含有量11.7g)であった。この残渣は廃棄した。
【0034】
回収した溶解液(濾液+洗液)1200mlの半量(600ml)に、前記の実施例1で回収した蓚酸アルカリ水溶液2570ml及び水1000ml中に蓚酸45gを溶解させた溶液を添加して希土類元素を蓚酸塩として析出させた。この際のpHは1.8であった。なお、希土類元素の蓚酸塩からなる析出物は分散媒中で徐々に沈降したので、操業時間を短縮する目的で、分散媒の約5分の4量が上澄み液となった段階でデカンテーションにより上澄み液を廃棄した。その廃棄量は3370mlであった。
【0035】
デカンテーション処理後の残留物に水2500mlを加えて攪拌し、これに15NのNaOH水溶液80mlを加えて希土類元素の水酸化物及び蓚酸アルカリ水溶液を生成させた。この際のpHは12.7であった。なお、希土類元素の水酸化物は蓚酸アルカリ水溶液中で徐々に沈降するので、操業時間を短縮する目的で、蓚酸アルカリ水溶液の約4分の3量が上澄み液となった段階でデカンテーションによって上澄み液(蓚酸アルカリ水溶液)を回収した。その回収量は2610mlであった。
【0036】
デカンテーション処理後に残留している希土類元素の水酸化物を含有している液に水2500mlを加え、この液を5Nの塩酸44mlで中和し、洗浄し、濾過した。濾残の量は湿量で140.9g(希土類元素の水酸化物の含有量は希土類元素酸化物として60.9g)であった。
【0037】
実施例3
前記の実施例2で回収した溶解液(濾液+洗液)1200mlの残りの半量(600ml)に、前記の実施例2で回収した蓚酸アルカリ水溶液2610ml及び水1000ml中に蓚酸45gを溶解させた溶液を添加して希土類元素を蓚酸塩として析出させた。この際のpHは1.7であった。なお、希土類元素の蓚酸塩からなる析出物は分散媒中で徐々に沈降したので、操業時間を短縮する目的で、分散媒の約5分の4量が上澄み液となった段階でデカンテーションにより上澄み液を廃棄した。その廃棄量は3120mlであった。
【0038】
デカンテーション処理後の残留物に水2500mlを加えて攪拌し、これに15NのNaOH水溶液80mlを加えて希土類元素の水酸化物及び蓚酸アルカリ水溶液を生成させた。この際のpHは12.7あった。なお、希土類元素の水酸化物は蓚酸アルカリ水溶液中で徐々に沈降するので、操業時間を短縮する目的で、蓚酸アルカリ水溶液の約4分の3量が上澄み液となった段階でデカンテーションによって上澄み液(蓚酸アルカリ水溶液)を回収した。その回収量は2520mlであった。
【0039】
デカンテーション処理後に残留している希土類元素の水酸化物を含有している液に水2500mlを加え、この液を5Nの塩酸45mlで中和し、洗浄し、濾過した。濾残の量は湿量で159.5g(希土類元素の水酸化物の含有量は希土類元素酸化物として61.6g)であった。
【0040】
以上の製造例及び実施例1〜3の記載から明らかなように、製造例に比較して実施例1〜3では、新たに添加する蓚酸量が約半分であっても、希土類元素の水酸化物の回収率は高くなっている。従って、使用済希土類元素系研摩材から希土類元素を水酸化物として高純度で且つ低コストで回収することができる。
【0041】
【発明の効果】
本発明の回収方法においては、回収される希土類元素酸化物の純度の面で好ましい沈澱剤であるが高価な蓚酸の必要消費量を約半量にして実施できるので、使用済希土類元素系研摩材から希土類元素を水酸化物として高純度で且つ低コストで回収することができる。

Claims (5)

  1. 使用済希土類元素系研摩材を鉱酸水溶液で処理して希土類元素を溶解させる第一工程、
    該第一工程で生成した希土類元素を溶解している溶解液と未溶解物とを固液分離して該溶解液を回収する第二工程、
    該回収した溶解液にpHが5以下となるように蓚酸及び蓚酸アルカリ水溶液を添加して希土類元素を蓚酸塩として析出させる第三工程、
    該希土類元素の蓚酸塩を固液分離によって回収する第四工程、
    該回収した希土類元素の蓚酸塩を水酸化アルカリ水溶液で処理して希土類元素の水酸化物に転化させ且つ蓚酸アルカリ水溶液を生成させる第五工程、及び
    該第五工程で生成した希土類元素の水酸化物及び蓚酸アルカリ水溶液を固液分離によってそれぞれ回収する第六工程
    を含み、第六工程で回収した蓚酸アルカリ水溶液を、第三工程で添加する蓚酸アルカリ水溶液として再利用することを特徴とする使用済希土類元素系研摩材からの希土類元素の回収方法。
  2. 使用済希土類元素系研摩材が、乾量基準で希土類元素酸化物を20〜80重量%含むことを特徴とする請求項1記載の使用済希土類元素系研摩材からの希土類元素の回収方法。
  3. 第三工程をpH1〜2.5の範囲内で実施することを特徴とする請求項1又は2記載の使用済希土類元素系研摩材からの希土類元素の回収方法。
  4. 第六工程で回収した蓚酸アルカリ水溶液を貯蔵しておき、その貯蔵しておいた蓚酸アルカリ水溶液を第三工程で添加する蓚酸アルカリ水溶液として用いることを特徴とする請求項1、2又は3記載の使用済希土類元素系研摩材からの希土類元素の回収方法。
  5. 第六工程で回収した希土類元素の水酸化物を精製し、焼成して酸化物として回収することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の使用済希土類元素系研摩材からの希土類元素の回収方法。
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