以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における扇風機の一部分解側面図である。まず、この図1を参照して、本実施の形態における流体送り装置としての扇風機1について説明する。
図1に示すように、扇風機1は、前ガード2と、後ガード3と、本体部4と、スタンド5と、プロペラファン10Aとを主として備えている。
本体部4は、スタンド5によって支持されており、内部に図示しない駆動モータが収容されている。本体部4の前面には、駆動モータの回転軸4aが露出して位置しており、この回転軸4aに後述するプロペラファン10Aの回転軸部としてのボスハブ部11(図2等参照)がスクリューキャップ6を用いて固定される。
前ガード2および後ガード3は、本体部4に固定されたプロペラファン10Aを囲うように設けられる。より詳細には、後ガード3は、プロペラファン10Aの背面側を覆うように本体部4に固定されており、前ガード2は、プロペラファン10Aの正面側を覆うように後ガード3に固定される。
スタンド5は、床面等に扇風機1を載置するために設けられたものであり、本体部4を支持している。また、スタンド5の所定位置には、扇風機1のオン/オフや運転状態の切換え等を行なうための図示しない操作部が設けられている。
なお、本体部4とスタンド5とは、扇風機1が首ふり機能を有することとなるように、本体部4が水平面内および垂直面内において揺動可能となるように連結されていることが好ましい。
また、スタンド5は、扇風機1が高さ調節機能を有することとなるように、鉛直方向に沿って伸縮自在に構成されていることが好ましい。
図2および図3は、本実施の形態におけるプロペラファンの背面側および正面側から見た斜視図であり、図4ないし図6は、本実施の形態におけるプロペラファンの背面図、正面図および側面図である。次に、これら図2ないし図6を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン10Aの基本的な構造について説明する。
図2ないし図6に示すように、プロペラファン10Aは、回転軸部としての上述したボスハブ部11と、滑らかに曲成された板状の複数の翼12Aとを備えている。ボスハブ部11は、有底略円筒状の形状を有しており、複数の翼12Aのそれぞれは、ボスハブ部11の周方向に沿って並ぶようにボスハブ部11の外周面から径方向外側に向けて突設されている。
本実施の形態におけるプロペラファン10Aは、7枚翼のものであり、たとえばAS(acrylonitrile-styrene)樹脂等の合成樹脂によりボスハブ部11と7枚の翼12Aとが一体的に成形された樹脂成形品にて構成されている。
ボスハブ部11は、上述した駆動モータが駆動することにより、仮想の中心軸20を回転中心として図中に示す矢印A方向に回転する。これにより、プロペラファン10Aの全体が上述した中心軸20を回転中心として図中に示す矢印A方向に回転することになり、ボスハブ部11の周方向に沿って並んで設けられた複数の翼12Aも、上述した中心軸20回りに回転することになる。
当該複数の翼12Aの回転に伴い、プロペラファン10Aの背面側である吸込側からプロペラファン10Aの正面側である噴出側に向けて空気が流れることになり、扇風機1の前方に向けて送風が行なわれることになる。
ここで、本実施の形態においては、複数の翼12Aが、回転方向に沿って互いに離間するように等間隔に配置されており、複数の翼12Aのそれぞれが、同一の形状を有している。そのため、いずれかの翼12Aを中心軸20を回転中心として回転させた場合には、その翼12Aの形状と別の翼12Aの形状とが合致することになる。
翼12Aは、プロペラファン10Aの回転方向における前方側に位置する前縁部13と、プロペラファン10Aの回転方向における後方側に位置する後縁部14と、プロペラファン10Aの回転方向に沿って延びる外縁部15とを含んでいる。すなわち、中心軸20に沿ってプロペラファン10Aを平面視した状態においては、翼12Aの外形が、ボスハブ部11に接続された部分を除いてこれら前縁部13、後縁部14および外縁部15によって規定されることになる。
前縁部13および後縁部14は、ボスハブ部11から径方向外側に向けて延在している。中心軸20に沿ってプロペラファン10Aを平面視した状態において、前縁部13および後縁部14は、いずれも概ね径方向内側から外側に向かうにつれて徐々に回転方向の前方側に位置することとなるように全体として概ね弧状の形状を有している。
ここで、翼12Aの噴出側に中心軸20に直交する平面を想定し、その平面からの中心軸20の軸方向における長さを高さという場合に、前縁部13は、その内端と当該内端から径方向外側に離れた位置との間で一定の高さを有する部位を含んでいる。
より詳細には、中心軸20が延びる方向に沿って吸込側において最も外側に位置する翼12Aの部位を含みかつ中心軸20と直交する平面形状の吸込側端面を想定すると、前縁部13のボスハブ部11に繋がる径方向内側寄りの部分が、上記吸込側端面上に重なるように延びている。これを換言すると、前縁部13の径方向外側寄りの部分は、上記吸込側端面上に重なっておらず、全体として上記吸込側端面よりも噴出側に寄せて設けられていることになる。
また、翼12Aの噴出側に中心軸20に直交する平面を想定し、その平面からの中心軸20の軸方向における長さを高さという場合に、後縁部14の外端を含む径方向外側部分が、径方向内側から径方向外側に向かうにつれてその高さが高くなるように構成されている。
これを換言すると、中心軸20が延びる方向に沿って噴出側において最も外側に位置する翼12Aの部位を含みかつ中心軸20と直交する平面形状の噴出側端面を想定すると、後縁部14は、径方向外側に向かうにつれて上記噴出側端面から離れるように構成されていることになる。すなわち、後縁部14の径方向外側寄りの部分は、上記噴出側端面上に重なっておらず、全体として上記噴出側端面よりも吸込側に寄せて設けられている。
なお、前縁部13および後縁部14の径方向内側の部分においては、回転方向に沿ったそれらの幅が小さくなうように翼12Aが構成されており、前縁部13および後縁部14の径方向外側の部分においては、回転方向に沿ったそれらの幅が大きくなるように翼12Aが構成されている。
前縁部13の径方向外側に位置する外端は、外縁部15の回転方向における前端15aに接続されており、後縁部14の径方向外側に位置する外端は、外縁部15の回転方向における後端15bに接続されている。すなわち、外縁部15は、前縁部13の外端と後縁部14の外端とを回転方向に沿って接続するように構成されており、全体として概ね弧状の形状を有している。
また、外縁部15は、その全体が中心軸20が延びる方向に沿って上記吸込側端面から離間して位置しているとともに、その全体が中心軸20が延びる方向に沿って上記噴出側端面から離間して位置している。すなわち、外縁部15は、いずれの位置においても上記吸込側端面および上記噴出側端面上に重なっておらず、全体として上記吸込側端面および上記噴出側端面よりも内側に寄せて設けられている。
前縁部13および後縁部14は、上述したように、いずれも概ね弧状の形状を有するように形成されることで滑らかな形状とされている。一方、外縁部15も、上述したように、大略弧状の形状を有するように形成されることで滑らかな形状とされている。そのため、上述した外縁部15の前端15aおよび後端15bは、少なくともそれらの付近において極大となる曲率を有することになる。
上述した外縁部15の前端15aは、中心軸20に沿ってプロペラファン10Aを平面視した状態において、鎌状に尖った形状を有している。この鎌状に尖った前端15aは、回転方向において翼12Aの最も前方側の位置に配置されている。なお、当該前端15aの近傍に位置する前縁部13および外縁部15は、回転方向において前方に位置する部分であるため、翼先端渦が発生する翼先端部に該当することになる。
翼12Aには、プロペラファン10Aの回転に伴って送風を行なう(すなわち、吸込側から噴出側に空気を送り出す)ための翼面が形成されている。翼面は、吸込側に位置する翼12Aの背面に相当する負圧面12aと、噴出側に位置する翼12Aの前面に相当する正圧面12bとによって構成されており、これらはいずれも上述した前縁部13、後縁部14および外縁部15に囲まれた領域にて形成されている。
翼面である負圧面12aおよび正圧面12bは、いずれもプロペラファン10Aの回転方向に沿って後縁部14から前縁部13に向かうにつれてプロペラファン10Aの噴出側から吸込側に向けて傾斜する湾曲面にて構成されている。これにより、プロペラファン10Aの回転時において、翼面上で空気の流れが発生するのに伴い、正圧面12b上において相対的に大きくなるとともに負圧面12a上において相対的に小さくなる圧力分布が生じることになる。
翼12Aは、相互に異なる翼面形状を有する翼内側領域18aおよび翼外側領域18bを有している(図7参照)。翼内側領域18aは、翼12Aのうちのボスハブ部11側に位置する領域に相当し、翼外側領域18bは、翼12Aのうちの外縁部15側に位置する領域に相当する。これら相互に異なる翼面形状を有する翼内側領域18aと翼外側領域18bとが翼12Aに設けられることにより、翼12Aには、図示するように、これら翼内側領域18aと翼外側領域18bとの境目においてこれらを湾曲して連結する連結部16が設けられている。
すなわち、翼12Aは、ボスハブ部11側に位置する翼内側領域18aと、外縁部15側に位置する翼外側領域18bと、負圧面12a側が凹となり正圧面12b側が凸となるように翼内側領域18aと翼外側領域18bとの境目においてこれらを湾曲してまたは屈曲して連結する連結部16とを有している。
連結部16は、その付近において極大となる表面の曲率を有しており、負圧面12aにおいて湾曲状の窪んだ溝部となって現れており、正圧面12bにおいて湾曲状に突出した突条部として現れている。当該連結部16は、概ね回転方向に沿って設けられており、外縁部15の前端15a近傍の位置から後縁部14の径方向における途中の位置の近傍に向けて延在している。
また、翼12Aは、プロペラファン10Aの回転方向に沿ってこれを見た場合に、前縁部13および後縁部14から翼中央付近に向かうほどその厚みが厚くなるとともに翼中央よりも前縁部13側に寄った位置に最大厚みを有する翼型形状に形成されている。
ここで、本実施の形態におけるプロペラファン10Aにあっては、翼12Aの外縁部15が、前縁部13側に位置する前方外縁部17b(図7参照)と、後縁部14側に位置する後方外縁部17c(図7参照)と、これら前方外縁部17bおよび後方外縁部17cを接続する所定形状の接続部17aとを含んでいる。このような形状の外縁部15とすることにより、後述する様々な効果が発揮されることになる。以下においては、上述した図2ないし図6とともに図7を参照して、当該外縁部15の具体的な形状について詳説する。
図7は、本実施の形態におけるプロペラファンの翼の形状を示す拡大背面図である。図2ないし図7に示すように、翼12Aの外縁部15には、中心軸20側に向けて窪む形状を有する接続部17aが形成されている。当該接続部17aは、外縁部15の前端15aと後端15bとの間の途中の位置に形成されている。
外縁部15に上述した接続部17aが形成されることにより、翼12Aの外縁部15には、外縁部15の前端15a側に位置する前方外縁部17bと、外縁部15の後端15b側に位置する後方外縁部17cとが設けられることになる。
ここで、接続部17aは、図示するように滑らかに湾曲した形状となるように形成されていることが好ましいが、必ずしもこれが湾曲した形状とされず、屈曲した形状とされていてもよい。また、本実施の形態においては、接続部17aが比較的浅く窪むように形成されているため、当該接続部17aは、略鈍角形状を有している。
接続部17aが形成される位置は、外縁部15上の位置であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態においては、外縁部15の後端15b寄りの位置に接続部17aが形成されている。そのため、本実施の形態においては、前方外縁部17bの回転方向に沿った幅が、後方外縁部17cの回転方向に沿った幅よりも大きく形成されている。
より詳細には、図7に示すように、本実施の形態においては、中心軸20に沿って翼12Aを平面視した状態において、外縁部15の前端15aと中心軸20とを結ぶ線分と、外縁部15の後端15bと中心軸20とを結ぶ線分とが成す角の二等分線30を描いた場合に、当該二等分線30と直交する方向に沿った前端15aと後端15bとの間の距離をWとし、当該二等分線30と直交する方向に沿った後端15bと上記接続部17aのうちの最も径方向内側に位置する点との間の距離をwとすると、距離Wと距離wとが、W/2>wの条件を満たしている。
また、図7に示すように、本実施の形態においては、中心軸20に沿って翼12Aを平面視した状態において、前方外縁部17bの中心軸20からの最大半径R1maxと、後方外縁部17cの中心軸20からの最大半径R2maxとが、R1max>R2maxの条件を満たしている。
さらに、図7に示すように、本実施の形態においては、中心軸20に沿って翼12Aを平面視した状態において、上記接続部17aのうちの最も径方向内側に位置する点の中心軸20からの半径をRとすると、半径Rと上記最大半径R2maxとが、R<R2maxの条件を満たしている。
このような条件を満たして図示する如くの形状の翼12Aとすることにより、以下のような効果が得られることになる。
第一に、上記構成の翼12Aとすることにより、径方向における風速分布をより均一にすることができ、風速のムラを抑制することが可能となって風当たりの良い風とすることができる。
すなわち、外縁部に窪み形状の接続部が形成されていない翼形状とした場合には、径方向外側に向かうにつれてほぼ比例して風速が大きくなるため、径方向内側寄りの部分において発生する風の風速と、径方向外側寄りの部分において発生する風の風速との間に大きな差が生じ、発生する風に大きな風速のムラが生じてしまうことになる。
これに対し、本実施の形態においては、外縁部15上に窪み形状の接続部17aが形成されているため、外縁部15上に窪み形状の接続部17aが形成されていない場合に比べ、外縁部15近傍(すなわち径方向外側寄りの部分)において翼面積が減少することになる。そのため、径方向外側に向かうにつれてほぼ比例して大きくなる風速が、外縁部15寄りの部分において緩和されることになり、径方向内側寄りの部分において発生する風の風速と、外縁部15寄りの部分において発生する風の風速とが近づくことになり、径方向における風速分布がより均一になる。したがって、風速のムラが抑制可能となり、風当たりの良い風とすることができる。
第二に、上記構成の翼12Aとすることにより、径方向外側寄りの部分において発生される風に含まれる圧力変動が小さくなる風当たりの良い風を発生させることができる。
すなわち、外縁部に窪み形状の接続部が形成されていない翼形状とした場合には、翼と翼との間の比較的大きな空間を空気が通過することとなり、発生する風に大きな圧力変動が生じてしまうことになる。これは、より風速の速い風が発生される外縁部側の部分において特に顕著となり、翼枚数が少なくなればなるほど大きな圧力差を含む風が発生することになる。
これに対し、本実施の形態においては、外縁部15に窪み形状の接続部17aが形成された翼形状であるため、1枚の翼12Aの前方外縁部17bと後方外縁部17cとの間に比較的小さな空間(すなわち窪み形状の接続部17aが位置する空間)が形成されることになり、当該空間が、翼12Aの中に風を発生させない空間として存在することになる。その結果、風速の速い風が発生される外縁部15側の部分において、翼面積が減少することで発生される風に生じる圧力差が緩和されることとなる上に、圧力変動がより小刻みに生じることになるため、1枚の翼12Aに設けられた前方外縁部17bと後方外縁部17cとがあたかも2枚分の翼で風を送風する場合と近似の役目を果たすことになり、全体として圧力変動が小さな風当たりの良い風を発生させることができる。なお、当該効果の詳細については、後述する本発明の実施の形態2においてより具体的に言及することとする。
第三に、上記構成の翼12Aとすることにより、低速回転時においては、広範囲に拡散する風当たりの良い風とすることができ、高速回転時においては、直進性が高くより遠くへ到達する風とすることができる。この点につき、図8ないし図11を参照して、より詳細に説明する。
図8は、本実施の形態における扇風機においてプロペラファンを低速回転させた場合に得られる風の流れを示す概念図であり、図9は、当該プロペラファンを低速回転させた場合に得られる風の状態を模式的に示す図である。また、図10は、本実施の形態における扇風機においてプロペラファンを高速回転させた場合に得られる風の流れを示す概念図であり、図11は、当該プロペラファンを高速回転させた場合に得られる風の状態を模式的に示す図である。なお、図8および図10においては、翼先端渦の代表的な軌道として、外縁部15の前端15a付近で発生する翼先端渦の軌道を破細線にて模式的に示し、馬蹄渦の代表的な軌道を細線にて模式的に示し、さらに翼12Aの外縁部15寄りの位置にて発生される風の軌道を太線にて模式的に示している。
上述したように、本実施の形態においては、翼12Aの外縁部15上の位置に窪み形状の接続部17aが形成されている。当該外縁部15上の位置は、外縁部15の前端15aを含む翼先端部の下流側であってかつ翼面上を流れる翼先端渦の流線に沿った位置に該当することになる。
図8に示すように、翼12Aが低速で回転した場合には、翼12Aが回転することで生じる翼先端渦および馬蹄渦の運動エネルギーが小さく、そのため翼先端渦および馬蹄渦が窪み形状の接続部17aによって捉えられることなく当該部分においてその剥離が促されることになる。これにより、翼先端渦および馬蹄渦は、いずれも窪み形状の接続部17aが形成された部分において遠心力によって径方向外側に飛ばされることになる。したがって、図9に示すように、翼12Aで発生された風が扇風機1の前方において拡散することになり、風当たりの良い風200が広範囲に送風できることになる。そのため、夜間等の就寝時に風を殆ど感じることなく扇風機を運転させたい場合に、これを満足する微風運転の実現も可能になる。
一方、図10に示すように、翼12Aが高速で回転した場合には、翼12Aが回転することで生じる翼先端渦および馬蹄渦の運動エネルギーが大きく、そのため翼先端渦および馬蹄渦が窪み形状の接続部17aによって捉えられて保持されることになり、翼先端渦および馬蹄渦の変動や発達が抑制されることになる。また、その際、翼先端渦および馬蹄渦が窪み形状の接続部17aに沿って内側に移動することにもなるため、その後、外縁部15の後端15bにおいて剥離した翼先端渦および馬蹄渦が高速回転による大風量および高静圧によって軸方向に飛ばされることになる。したがって、図11に示すように、翼12Aで発生された風が扇風機1の前方において収束することになり、直進性が高くより遠くへ到達する風300が送風できることになる。そのため、効率よく送風を行なうことが可能になるとともに、風の直進性が高まることによって騒音の発生をも抑制することができる。
このように、本実施の形態におけるプロペラファン10Aおよびこれを備えた扇風機1とすることにより、発生される風の圧力変動が小さく風当たりの良い風を送り出すことが可能になるとともに、騒音の低減を図ることが可能になる。
なお、上記効果に加えて、本実施の形態におけるプロペラファン10Aにあっては、以下のような効果を得ることもできる。
上述したように、本実施の形態においては、前縁部13の径方向外側寄りの部分を除く部分が、上記吸込側端面上に位置するように構成されている。そのため、翼12Aの径方向内側寄りの部分において送風能力を高めることが可能となり、径方向内側寄りの部分において発生する風の風速を高めることが可能となって外縁部15寄りの部分において発生する風の風速にこれが近づくことになり、径方向における風速分布がより均一になる。したがって、風速のムラが抑制可能となり、風当たりの良い風とすることができる。
また、上述したように、本実施の形態においては、後縁部14が、径方向外側に向かうにつれて上記噴出側端面から離れるように構成されている。そのため、径方向外側に向かうにつれてほぼ比例して大きくなる風速が、外縁部15寄りの部分において緩和されることになり、径方向内側寄りの部分において発生する風の風速と、外縁部15寄りの部分において発生する風の風速とが近づくことになり、径方向における風速分布がより均一になる。したがって、風速のムラが抑制可能となり、風当たりの良い風とすることができる。
また、上述したように、本実施の形態においては、翼内側領域18aと翼外側領域18bとの境目においてこれらを湾曲して連結する連結部16が設けられている。そのため、当該連結部16上において馬蹄渦が発生することになり、当該馬蹄渦が翼面上を流れる主流の剥離を抑制することになるため、騒音が低減されるとともに、送風能力が高まることになる。さらには、上述したように、本実施の形態においては、上記連結部16が概ね回転方向に沿って設けられているため、当該連結部16上に発生する馬蹄渦に加えて翼先端渦も連結部16上において保持されることになり、主流の剥離をさらに抑制することが可能になる。なお、連結部16は、湾曲状でなくともよく、たとえば屈曲状であってもよい。
加えて、上述したように、本実施の形態においては、外縁部15の全体が、中心軸20が延びる方向に沿って上記吸込側端面から離間して位置しているとともに、その全体が中心軸20が延びる方向に沿って上記噴出側端面から離間して位置している。そのため、径方向外側の部分において中心軸20に沿った方向におけるプロペラファン10Aの翼12Aの全体としての厚みが大幅に減じられることになるため、上述した前ガード2および後ガード3との間の距離をこの部分において大きく確保することができる。したがって、扇風機1において指挟み等が発生してしまうことが抑制できることになり、安全性を高めることが可能になる。
次に、上述した外縁部に設けられる接続部の形状と上述した効果との関係を検証した第1検証試験について説明する。第1検証試験においては、外縁部上に設けられる接続部の回転方向および径方向に沿った位置が異なる複数のサンプルを準備し、これに基づいて各サンプルを回転させてその際に得られる風量および得られた風に含まれる圧力変動を測定した。なお、各サンプルにおいては、上述した翼内側領域と翼外側領域とが異なる翼面形状を有するように構成することとはせず、翼面全体が単一の翼面形状を有するように構成した。
ここで、各サンプルにおいては、接続部が設けられる位置を予め決定し、当該接続部を一つの頂点とする平行四辺形を翼の外縁部の後端寄りの部分であってかつ翼の後縁部の外端寄りの部分に描き、当該平行四辺形に概ね沿ったかたちで翼の一部を切り欠くこととした。ただし、回転時に発生する騒音を低減させる観点から、上記接続部および当該接続部を境目として形成される前方外縁部および後方外縁部がいずれも角を有さない滑らかな形状となるように、外縁部を適度に湾曲させることとした。
風量および圧力変動については、いずれもプロペラファンの中心軸に沿って噴出側に30mm離れた位置であってかつプロペラファンの回転中心からの径方向に沿った距離が外縁部の最大半径の70%となる位置に対応した位置において測定した。当該プロペラファンの回転中心からの径方向に沿った距離が外縁部の最大半径の70%となる位置に対応した位置は、概して風速が最も大きくなる位置であり、そのため圧力変動が最も生じる位置でもある。
図12は、第1検証試験において得られた、翼形状と相対風量との関係を示すグラフである。ここで、図12においては、横軸が上記接続部の回転方向に沿った位置を表わしており、縦軸が相対風量を表わしている。なお、横軸に示したξは、上述した距離Wおよび距離wを用いてw/Wで表わされる値であり、ηは、上述した最大半径R1max、半径Rおよびボスハブ部の半径r(図7参照)を用いて(R1max−R)/(R1max−r)で表わされる値である。また、縦軸に示した相対風量は、各サンプルにおいて測定された風量を、外縁部に何ら窪み形状の接続部が形成されていないプロペラファンにおける風量にて除算した値である。
図12に示されるように、接続部が回転方向に沿って外縁部の後端寄りにある場合には、当該接続部が外縁部の後端から前端に向かうにつれて風量が徐々に減少する傾向にあり、接続部が回転方向に沿って外縁部の前端寄りにある場合には、それ以上の風量の低下は生じない傾向にあることが理解される。また、接続部が径方向に沿って外縁部寄りの位置から回転中心寄りの位置に向かうにつれて風量が徐々に減少する傾向にあることが理解される。
図13は、第1検証試験において得られた、翼形状と相対圧力変動との関係を示すグラフである。ここで、図13においては、横軸が上記接続部の回転方向に沿った位置を表わしており、縦軸が相対圧力変動を表わしている。また、縦軸に示した相対圧力変動は、各サンプルにおいて測定された圧力差の最大値を、外縁部に何ら窪み形状の接続部が形成されていないプロペラファンにおける圧力差の最大値にて除算した値である。
図13に示されるように、接続部が回転方向に沿って外縁部の後端寄りの位置から前端寄りの位置に向かうにつれて圧力変動が徐々に減少する傾向にあることが理解される。また、接続部が径方向に沿って外縁部寄りの位置から回転中心寄りの位置に向かうにつれて圧力変動がさらに減少する傾向にあることが理解される。
図14は、第1検証試験において得られた、翼形状と快適指数との関係を示すコンター図である。当該コンター図は、上述した図12および図13に示される結果に基づいて、快適指数κを含むファン性能として、第1検証試験の結果を表わしたものである。快適指数κは、図12において示す相対風量を図13において示す相対圧力変動にて除することにより算出されるものであり、この値が高いほど快適性が上がることになる。図14においては、横軸が上記接続部の回転方向に沿った位置を表わしており、縦軸が上記接続部の径方向に沿った位置を表わしている。
図14に示されるように、ξに着目して見た場合には、外縁部に窪み形状の接続部が形成されていないプロペラファンに比べて快適指数κを5%以上向上させるためには、少なくともξが概ね0<ξ≦0.75の条件を満たしていることが必要である。一方、ηに着目して見た場合には、外縁部に窪み形状の接続部が形成されていないプロペラファンに比べて快適指数κを5%以上向上させるためには、少なくともηが概ね0<η≦0.6の条件を満たしている必要がある。
さらに、ξおよびηの両方に着目して見た場合に、ξが0.2≦ξ≦0.6の条件を満たすとともに、ηが0<η≦0.2の条件を満たすことにより、外縁部に窪み形状の接続部が形成されていないプロペラファンに比べて快適指数κが確実に10%以上向上することになる。
次に、上述した外縁部に設けられる接続部の形状と上述した効果との関係を検証した第2検証試験について説明する。第2検証試験においては、上述した本実施の形態におけるプロペラファンを実際に試作してこれを実施例1とするとともに、これとは形状の異なるプロペラファンを実際に試作してこれを比較例1とし、これら実施例1および比較例1に係るプロペラファンを回転させた場合における風速の測定を行なって径方向における風速分布を算出した。
ここで、比較例1に係るプロペラファンは、実施例1に係るプロペラファンと比較した場合に、外縁部において窪み形状の接続部が形成されていない点、翼面全体が単一の翼面形状を有するように構成されている点、および、前縁部が径方向に沿って概ね単調に傾斜して形成されている点において相違しており、他の点においては、共通の形状を有するものとした。
風速については、プロペラファンの中心軸に沿って噴出側に30mm離れた位置において測定を行なうこととし、その計測点としては、径方向における分布を把握するために、中心軸からの距離が外縁部の最大半径の1.1倍となる位置に対応した位置にまで中心軸から0.1倍刻みに配置することとした。
図15は、第2検証試験において得られた、実施例1および比較例1に係るプロペラファンの回転中心からの距離と風速との関係を示すグラフである。ここで、図15においては、横軸が回転中心からの距離を表わしており、縦軸が風速を表わしている。なお、横軸においては、回転中心に対応した位置を0としかつ外縁部に対応した位置を1とした無次元値にて回転中心からの距離を表わしており、縦軸においては、実施例1および比較例1で風量を一致させ、それぞれの風速の実測値を風量で除算した無次元値にて風速を表わしている。
図15に示されるように、比較例1に係るプロペラファンにおいては、径方向内側において風速が小さく、径方向外側に向かうにつれて徐々に風速が増加し、外縁部の最大半径の0.7倍の位置において風速が最大値を示し、さらに径方向外側に向かうにつれて風速が徐々に減少する傾向が見られる。これに対し、実施例1に係るプロペラファンにおいては、径方向内側において比較例1に比べて風速が大きく、径方向外側に向かうにつれても概ね風速の変化がなく、外縁部の最大半径の0.7倍の位置において風速が減少をし始め、さらに径方向外側に向かうにつれて風速が徐々に減少する傾向が見られる。ここで、風速の最大値は、比較例1に比べて実施例1の方で低くなった。
このように、実施例1に係るプロペラファンとすることにより、径方向に沿った風速分布が大幅に均一化されることになり、風速のムラを抑制することが可能となって風当たりの良い風とすることができることが確認された。
図16は、本実施の形態におけるプロペラファンの成形用金型を示す模式断面図である。次に、この図16を参照して本実施の形態におけるプロペラファンの成形用金型100について説明する。
上述したように、本実施の形態におけるプロペラファン10Aは、樹脂成形品にて構成されている。当該プロペラファン10Aの成形に際しては、たとえば図16に示す如くの射出成形用の成形用金型100が利用される。
図16に示すように、成形用金型100は、固定側金型101および可動側金型102を有する。固定側金型101および可動側金型102により、プロペラファン10Aと略同一形状であって、流動性の樹脂が注入されるキャビティ103が規定される。
成形用金型100には、キャビティ103に注入された樹脂の流動性を高めるための図示しないヒータが設けられていてもよい。このようなヒータの設置は、たとえば、ガラス繊維入りAS樹脂のような強度を増加させた合成樹脂を用いる場合に特に有効である。
なお、図中に示す成形用金型100においては、プロペラファン10Aにおける正圧面12b側の表面を固定側金型101によって成形し、負圧面12a側の表面を可動側金型102によって成形することを想定しているが、プロペラファン10Aの負圧面12a側の表面を固定側金型101によって成形し、プロペラファン10Aの正圧面12b側の表面を可動側金型102によって成形してもよい。
一般に、プロペラファンとして、材料に金属を用い、プレス加工による絞り成形により一体に形成するものがある。これらの成形は、厚い金属板では絞りが困難であり、質量も重くなるため、一般的には薄い金属板が用いられる。この場合、大きなプロペラファンでは、強度(剛性)を保つことが困難である。これに対して、翼部分より厚い金属板で形成したスパイダーと呼ばれる部品を用い、翼部分を回転軸に固定するものがあるが、質量が重くなり、ファンバランスも悪くなるという問題がある。また、一般的には、薄く、一定の厚みを有する金属板が用いられるため、翼の断面形状を翼型にすることができないという問題がある。
これに対し、本実施の形態の如く、プロペラファン10Aを樹脂を用いて成形することにより、これらの問題を一括して解決することができる。
なお、プロペラファンが固定される上述した駆動モータに直流モータが使用される場合には、直流モータ特有のコッキング音対策としてさらなる騒音の低減を図るため、回転軸4aを挿し込むために設けられるボスハブ部11の軸孔に、円筒状のゴムボスをインサート成形してもよい。その場合、プロペラファン10Aの負圧面12a側の表面を成形する金型に、インサート部品としてのゴムボスを射出成形に先立って設置することとしておけばよい。
以下、上述した本実施の形態に基づいた第1ないし第10変形例に係るプロペラファン10B〜10Kについて説明する。以下に示す第1ないし第10変形例に係るプロペラファン10B〜10Kは、基本的に、上述した本実施の形態におけるプロペラファン10Aと、外縁部15に設けられる接続部17aの形状や位置等において相違するものである。
(第1変形例)
図17および図18は、第1変形例に係るプロペラファンの背面図および側面図であり、図19は、第1変形例に係るプロペラファンの翼の形状を示す拡大背面図である。
図17ないし図19に示すように、第1変形例に係るプロペラファン10Bは、上述した本実施の形態におけるプロペラファン10Aとは異なり、翼内側領域と翼外側領域とが異なる翼面形状を有するように構成されることなく翼面全体が単一の翼面形状を有するように構成されたものであるとともに、外縁部15の全体が、中心軸20が延びる方向に沿って上記吸込側端面から離間して位置していない点において相違しており、その他の構成においては、上述した本実施の形態におけるプロペラファン10Aと共通の構成を有している。
すなわち、プロペラファン10Bにあっては、外縁部15に窪み形状の接続部17aが設けられることにより、翼12Bの外縁部15には、外縁部15の前端15a側に位置する前方外縁部17bと、外縁部15の後端15b側に位置する後方外縁部17cとが設けられている。なお、本第1変形例においては、接続部17aが比較的浅く窪むように形成されているため、当該接続部17aは、略鈍角形状を有している。
ここで、本第1変形例に係るプロペラファン10Bの翼12Bにあっては、距離Wと距離wとが、W/2>wの条件を満たし、最大半径R1maxと最大半径R2maxとが、R1max>R2maxの条件を満たし、半径Rと最大半径R2maxとが、R<R2maxの条件を満たしている。
このように構成した場合にも、上述した本実施の形態において説明した、連結部16を設けることによって得られる効果以外の効果がすべて得られることになるため、発生される風の圧力変動が小さく風当たりの良い風を送り出すことが可能になるとともに、騒音の低減が図られることになる。
(第2変形例)
図20および図21は、第2変形例に係るプロペラファンの背面図および翼の形状を示す拡大背面図である。
図20および図21に示すように、第2変形例に係るプロペラファン10Cは、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと、外縁部15に設けられる窪み形状の接続部17aの形状においてのみ相違しており、その他の構成においては、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと共通の構成を有している。具体的には、プロペラファン10Cにあっては、外縁部15に設けられた接続部17aが比較的深く窪むように形成されており、当該接続部17aは、略鋭角形状を有している。
ここで、本第2変形例に係るプロペラファン10Cの翼12Cにあっては、距離Wと距離wとが、W/2>wの条件を満たし、最大半径R1maxと最大半径R2maxとが、R1max>R2maxの条件を満たし、半径Rと最大半径R2maxとが、R<R2maxの条件を満たしている。
このように構成した場合にも、上述した第1変形例において得られる効果と同様の効果が得られることになり、発生される風の圧力変動が小さく風当たりの良い風を送り出すことが可能になるとともに、騒音の低減が図られることになる。なお、本第2変形例においては、上述した第1変形例に比較して外縁部15に設けられた窪み形状の接続部17aが大きい分だけ、径方向に沿った風速分布の均一化がより効果的に実現できることになる。
(第3変形例)
図22および図23は、第3変形例に係るプロペラファンの背面図および翼の形状を示す拡大背面図である。
図22および図23に示すように、第3変形例に係るプロペラファン10Dは、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと、外縁部15に設けられる窪み形状の接続部17aの形状においてのみ相違しており、その他の構成においては、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと共通の構成を有している。具体的には、プロペラファン10Dにあっては、外縁部15に設けられた接続部17aが比較的深く窪むように形成されており、当該接続部17aは、略鈍角形状を有している。
ここで、本第3変形例に係るプロペラファン10Dの翼12Dにあっては、距離Wと距離wとが、W/2>wの条件を満たし、最大半径R1maxと最大半径R2maxとが、R1max>R2maxの条件を満たし、半径Rと最大半径R2maxとが、R<R2maxの条件を満たしている。
このように構成した場合にも、上述した第1変形例において得られる効果と同様の効果が得られることになり、発生される風の圧力変動が小さく風当たりの良い風を送り出すことが可能になるとともに、騒音の低減が図られることになる。なお、本第3変形例においては、上述した第1変形例に比較して外縁部15に設けられた窪み形状の接続部17aが大きい分だけ、径方向に沿った風速分布の均一化がより効果的に実現できることになる。
(第4変形例)
図24および図25は、第4変形例に係るプロペラファンの背面図および翼の形状を示す拡大背面図である。
図24および図25に示すように、第4変形例に係るプロペラファン10Eは、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと、外縁部15に設けられる窪み形状の接続部17aの形状においてのみ相違しており、その他の構成においては、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと共通の構成を有している。具体的には、プロペラファン10Eにあっては、外縁部15に設けられた接続部17aが前方外縁部17bと後方外縁部17cとが段差を成すように形成されるとともに、後方外縁部17cの最大半径R2maxが前方外縁部17bの最大半径R1maxよりも小さくなるように構成されている。
ここで、本第4変形例に係るプロペラファン10Eの翼12Eにあっては、距離Wと距離wとが、W/2>wの条件を満たし、最大半径R1maxと最大半径R2maxとが、R1max>R2maxの条件を満たし、半径Rと最大半径R2maxとが、R=R2maxの条件を満たしている。
このように構成した場合にも、上述した第1変形例において得られる効果と同様の効果が得られることになり、発生される風の圧力変動が小さく風当たりの良い風を送り出すことが可能になるとともに、騒音の低減が図られることになる。なお、本第4変形例においては、上述した第1変形例に比較して外縁部15に設けられた窪み形状の接続部17aが大きい分だけ、径方向に沿った風速分布の均一化がより効果的に実現できることになる。
(第5変形例)
図26および図27は、第5変形例に係るプロペラファンの背面図および翼の形状を示す拡大背面図である。
図26および図27に示すように、第5変形例に係るプロペラファン10Fは、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと、外縁部15に設けられる窪み形状の接続部17aの形状においてのみ相違しており、その他の構成においては、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと共通の構成を有している。具体的には、プロペラファン10Eにあっては、外縁部15に設けられた接続部17aが前方外縁部17bと後方外縁部17cとが段差を成すように形成されるとともに、後方外縁部17cの最大半径R2maxが前方外縁部17bの最大半径R1maxよりも大幅に小さくなるように構成されている。
ここで、本第5変形例に係るプロペラファン10Fの翼12Fにあっては、距離Wと距離wとが、W/2>wの条件を満たし、最大半径R1maxと最大半径R2maxとが、R1max>R2maxの条件を満たし、半径Rと最大半径R2maxとが、R>R2maxの条件を満たしている。
このように構成した場合にも、上述した第1変形例において得られる効果と同様の効果が得られることになり、発生される風の圧力変動が小さく風当たりの良い風を送り出すことが可能になるとともに、騒音の低減が図られることになる。なお、本第5変形例においては、上述した第1変形例に比較して外縁部15に設けられた窪み形状の接続部17aが大きい分だけ、径方向に沿った風速分布の均一化がより効果的に実現できることになる。
(第6変形例)
図28および図29は、第6変形例に係るプロペラファンの背面図および翼の形状を示す拡大背面図である。
図28および図29に示すように、第6変形例に係るプロペラファン10Gは、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと、外縁部15に設けられる窪み形状の接続部17aの形状においてのみ相違しており、その他の構成においては、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと共通の構成を有している。具体的には、プロペラファン10Gにあっては、外縁部15に設けられた接続部17aが比較的深く窪むように形成されるとともに、当該窪み形状の接続部17aがくさび状の形状を有するように鋭く尖った鋭角状に形成されている。
ここで、本第6変形例に係るプロペラファン10Gの翼12Gにあっては、距離Wと距離wとが、W/2>wの条件を満たし、最大半径R1maxと最大半径R2maxとが、R1max>R2maxの条件を満たし、半径Rと最大半径R2maxとが、R<R2maxの条件を満たしている。
このように構成した場合にも、上述した第1変形例において得られる効果と同様の効果が得られることになり、発生される風の圧力変動が小さく風当たりの良い風を送り出すことが可能になるとともに、騒音の低減が図られることになる。なお、本第6変形例においては、上述した第1変形例に比較して1枚の翼12Gに設けられた前方外縁部17bと後方外縁部17cとがあたかも2枚分の翼で風を送風する場合と近似の役目を果たすという作用がより鮮明に現れることになり、全体として圧力変動が小さな風当たりの良い風をより効果的に実現できることになる。
また、上記構成とした場合には、当該接続部17aが設けられた部分において馬蹄渦が発生することになり、当該馬蹄渦が翼面上を流れる主流の剥離を抑制することになるため、騒音が低減されるとともに、送風能力が高まることになる。さらには、当該接続部17aの回転方向の前方側に回転方向における後方外縁部17cの先端が位置しているため、当該接続部17a上に発生する馬蹄渦に加えて翼先端渦も接続部17a上において保持されることになり、主流の剥離をさらに抑制することが可能になる。
(第7変形例)
図30および図31は、第7変形例に係るプロペラファンの背面図および翼の形状を示す拡大背面図である。
図30および図31に示すように、第7変形例に係るプロペラファン10Hは、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと、外縁部15に設けられる窪み形状の接続部17aの位置においてのみ相違しており、その他の構成においては、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと共通の構成を有している。具体的には、プロペラファン10Hにあっては、外縁部15の回転方向に沿った中央部に接続部17aが設けられている。
ここで、本第7変形例に係るプロペラファン10Hの翼12Hにあっては、距離Wと距離wとが、W/2=wの条件を満たし、最大半径R1maxと最大半径R2maxとが、R1max>R2maxの条件を満たし、半径Rと最大半径R2maxとが、R<R2maxの条件を満たしている。
このように構成した場合にも、上述した第1変形例において得られる効果と同様の効果が得られることになり、発生される風の圧力変動が小さく風当たりの良い風を送り出すことが可能になるとともに、騒音の低減が図られることになる。
(第8変形例)
図32および図33は、第8変形例に係るプロペラファンの背面図および翼の形状を示す拡大背面図である。
図32および図33に示すように、第8変形例に係るプロペラファン10Iは、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと、外縁部15に設けられる窪み形状の接続部17aの位置においてのみ相違しており、その他の構成においては、上述した第1変形例に係るプロペラファン10Bと共通の構成を有している。具体的には、プロペラファン10Iにあっては、外縁部15の前端15a寄りの位置に接続部17aが設けられている。
ここで、本第8変形例に係るプロペラファン10Iの翼12Iにあっては、距離Wと距離wとが、W/2<wの条件を満たし、最大半径R1maxと最大半径R2maxとが、R1max>R2maxの条件を満たし、半径Rと最大半径R2maxとが、R<R2maxの条件を満たしている。
このように構成した場合にも、上述した第1変形例において得られる効果と同様の効果が得られることになり、発生される風の圧力変動が小さく風当たりの良い風を送り出すことが可能になるとともに、騒音の低減が図られることになる。
(第9変形例)
図34および図35は、第9変形例に係るプロペラファンの背面図および翼の形状を示す拡大背面図である。
図34および図35に示すように、第9変形例に係るプロペラファン10Jは、上述した第3変形例に係るプロペラファン10Dと、外縁部15に設けられる後方外縁部17cの形状においてのみ相違しており、その他の構成においては、上述した第3変形例に係るプロペラファン10Dと共通の構成を有している。具体的には、プロペラファン10Jにあっては、外縁部15に窪み形状の接続部17aが設けられることによって形成された後方外縁部17cにさらに複数の窪み17c1が設けられた構成とされている。
窪み17c1は、外縁部15に設けられた上記接続部17aよりも小さい窪み形状を有するものであり、そのため本第9変形例に係るプロペラファン10Jとしては、全体としては第3変形例に係るプロペラファン10Dと近似の形状を有している。なお、窪み17c1の数としては、図に示す如くの2つに限られるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
ここで、本第9変形例に係るプロペラファン10Jの翼12Jにあっては、距離Wと距離wとが、W/2>wの条件を満たし、最大半径R1maxと最大半径R2maxとが、R1max>R2maxの条件を満たし、半径Rと最大半径R2maxとが、R<R2maxの条件を満たしている。
このように構成した場合にも、上述した第3変形例において得られる効果と同様の効果が得られることになり、発生される風の圧力変動が小さく風当たりの良い風を送り出すことが可能になるとともに、騒音の低減が図られることになる。なお、本第9変形例においては、上述した第3変形例に比較して、後方外縁部17cに複数の窪み17c1が設けられている分だけ、1枚の翼12Jであたかも複数枚分の翼で風を送風する場合と近似の役目を果たすという作用がより鮮明に現れることになり、全体として圧力変動が小さな風当たりの良い風をより効果的に実現できることになる。
(第10変形例)
図36は、第10変形例に係るプロペラファンの翼の形状を示す拡大背面図である。図36に示すように、本第10変形例に係るプロペラファン10Kは、ボスハブ部11から径方向外側に向けて突設された複数の翼のそれぞれが異なる形状を有しているものである。
ここで、それぞれの翼は、たとえば上述した本実施の形態およびこれに基づいた第1ないし第9変形例において示した翼12A〜12Jが適宜選択されて配置される。このように各翼の形状は必ずしも同一でる必要はなく、互いに異なるように構成されていもよい。
一般に、プロペラファンを覆うケーシング(扇風機においてはガード)の定点に対して、一定周期で翼がその近傍を通過した場合には、翼通過音と呼ばれる狭帯域騒音が発生することが知られている。そのため、本第10変形例の如く、外縁部15に設けられた窪み形状の接続部17aの具体的な形状が相互に異なる翼を備えたプロペラファン10Kとすれば、ケーシングの定点の近傍を当該窪み形状の接続部17aが通過する際に、その周期が積極的にずらされることになるため、上述した翼通過音の発生を抑制することが可能になり、さらなる騒音の低減が図られることになる。
(実施の形態2)
図37は、本発明の実施の形態2におけるプロペラファンの背面側から見た斜視図であり、図38ないし図40は、本実施の形態におけるプロペラファンの背面図、正面図および側面図である。また、図41は、本実施の形態におけるプロペラファンの翼の形状を示す拡大背面図である。以下、これら図37ないし図41を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン10Lについて説明する。なお、本実施の形態におけるプロペラファン10Lは、上述した実施の形態1において示したプロペラファン10Aと同様に、扇風機1に搭載されて使用されるものである。
図37ないし図40に示すように、本実施の形態におけるプロペラファン10Lは、4枚翼のものであり、それぞれの翼12Lは、上述した実施の形態1に基づいた第1変形例に係るプロペラファン10Bの翼12Bよりもより湾曲した滑らかな形状の前縁部13、後縁部14および外縁部15を有している。このより湾曲した滑らかな形状の前縁部13、後縁部14および外縁部15を有している点を除き、本実施の形態におけるプロペラファン10Lに設けられた翼12Lの基本的な構造は、上述した実施の形態1に基づいた第1変形例に係るプロペラファン10Bに設けられた翼12Bのそれと同様である。以下、当該プロペラファン10Lに設けられた翼12Lの形状について、さらに詳細に説明する。
図37ないし図41に示すように、翼12Lの外縁部15には、中心軸20側に向けて窪む形状を有する接続部17aが形成されている。当該接続部17aは、外縁部15の前端15aと後端15bとの間の途中の位置に形成されている。
外縁部15に上述した接続部17aが形成されることにより、翼12Lの外縁部15には、外縁部15の前端15a側に位置する前方外縁部17b(図41参照)と、外縁部15の後端15b側に位置する後方外縁部17c(図41参照)とが設けられることになる。
ここで、接続部17aは、図示するように滑らかに湾曲した形状となるように形成されていることが好ましいが、必ずしもこれが湾曲した形状とされず、屈曲した形状とされていてもよい。また、本実施の形態においては、接続部17aが比較的深く窪むように形成されているため、当該接続部17aは、略鋭角形状を有している。
接続部17aが形成される位置は、外縁部15の回転方向に沿った中央部よりも後端15b側の位置であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態においては、外縁部15の後端15b寄りの位置のうちの上記中央部寄りの位置に接続部17aが形成されている。そのため、本実施の形態においては、前方外縁部17bの回転方向に沿った幅が、後方外縁部17cの回転方向に沿った幅よりも僅かに大きく形成されている。
より詳細には、図41に示すように、本実施の形態においては、中心軸20に沿って翼12Lを平面視した状態において、外縁部15の前端15aと中心軸20とを結ぶ線分と、外縁部15の後端15bと中心軸20とを結ぶ線分とが成す角の二等分線30を描いた場合に、当該二等分線30と直交する方向に沿った前端15aと後端15bとの間の距離をWとし、当該二等分線30と直交する方向に沿った後端15bと上記接続部17aのうちの最も径方向内側に位置する点との間の距離をwとすると、距離Wと距離wとが、W/2>wの条件を満たしている。
また、図41に示すように、本実施の形態においては、中心軸20に沿って翼12Aを平面視した状態において、前方外縁部17bの中心軸20からの最大半径R1maxと、後方外縁部17cの中心軸20からの最大半径R2maxとが、R1max=R2maxの条件を満たしている。
さらに、図41に示すように、本実施の形態においては、中心軸20に沿って翼12Lを平面視した状態において、上記接続部17aのうちの最も径方向内側に位置する点の中心軸20からの半径をRとすると、半径Rと上記最大半径R2maxとが、R<R2maxの条件を満たしている。
このような条件を満たして図示する如くの形状の翼12Lとすることにより、以下のような効果が得られることになる。
第一に、上記構成の翼12Lとすることにより、径方向における風速分布をより均一にすることができ、風速のムラを抑制することが可能となって風当たりの良い風とすることができる。なお、当該効果は、上述した実施の形態1において説明した効果と同様であるため、その詳細については説明を繰り返さない。
第二に、上記構成の翼12Lとすることにより、径方向外側寄りの部分において発生される風に含まれる圧力変動が小さくなる風当たりの良い風を発生させることができる。
すなわち、外縁部に窪み形状の接続部が形成されていない翼形状とした場合には、翼と翼との間の比較的大きな空間を空気が通過することとなり、発生する風に大きな圧力変動が生じてしまうことになる。これは、より風速の速い風が発生される外縁部側の部分において特に顕著となり、翼枚数が少なくなればなるほど大きな圧力差を含む風が発生することになる。
これに対し、本実施の形態においては、外縁部15に窪み形状の接続部17aが形成された翼形状であるため、1枚の翼12Lの前方外縁部17bと後方外縁部17cとの間に比較的小さな空間(すなわち窪み形状の接続部17aが位置する空間)が形成されることになり、当該空間が、翼12Lの中に風を発生させない空間として存在することになる。その結果、風速の速い風が発生される外縁部15側の部分において、翼面積が減少することで発生される風に生じる圧力差が緩和されることとなる上に、圧力変動がより小刻みに生じることになるため、1枚の翼12Lに設けられた前方外縁部17bと後方外縁部17cとがあたかも2枚分の翼で風を送風する場合と近似の役目を果たすことになり、全体として圧力変動が小さな風当たりの良い風を発生させることができる。
ここで、当該効果の詳細について、図を参照して説明する。図42は、本実施の形態におけるプロペラファンを含む各種のプロペラファンを回転させた場合の圧力変動を概念的に示すグラフである。図42においては、横軸が時間を表わしており、縦軸がプロペラファンの噴出側の定点(翼の外縁部に対応した位置)における圧力変動を表わしている。
本実施の形態の如く外縁部に窪み形状の接続部が形成された4枚翼のプロペラファンと、外縁部に何ら窪み形状の接続部が形成されていない4枚翼のプロペラファンと、外縁部に窪み形状の接続部が形成されていない8枚翼のプロペラファンとを回転させた場合に観測される上記定点における圧力変動は、概ね図42に示す如くとなる。
当該図42から理解されるように、本実施の形態の如く外縁部に窪み形状の接続部が形成された4枚翼のプロペラファンにあっては、外縁部に何ら窪み形状の接続部が形成されていない4枚翼のプロペラファンに比べて圧力変動が抑制される結果となり、そのピークが外縁部に窪み形状の接続部が形成されていない8枚翼のプロペラファンと近いタイミングで発生することになる。これは、1枚の翼12Lに設けられた前方外縁部17bと後方外縁部17cとがあたかも2枚分の翼で風を送風する場合と近似の役目を果たすことを示すものであり、その結果、本実施の形態におけるプロペラファン10Lとすることにより、圧力変動が抑制された風当たりの良い風を発生できることが理解される。
第三に、上記構成の翼12Lとすることにより、低速回転時においては、広範囲に拡散する風当たりの良い風とすることができ、高速回転時においては、直進性が高くより遠くへ到達する風とすることができる。なお、当該効果は、上述した実施の形態1において説明した効果と同様であるため、その詳細については説明を繰り返さない。
このように、本実施の形態におけるプロペラファン10Lとすることにより、発生される風の圧力変動が小さく風当たりの良い風を送り出すことが可能になるとともに、騒音の低減を図ることが可能になる。
次に、上述した外縁部に設けられる接続部の形状と上述した効果との関係を検証した第3検証試験について説明する。第3検証試験においては、外縁部上に設けられる接続部の回転方向および径方向に沿った位置が異なる複数のサンプルを準備し、これに基づいて各サンプルを回転させてその際に得られる風量および得られた風に含まれる圧力変動を測定した。
ここで、各サンプルにおいては、接続部が設けられる位置を予め決定し、当該接続部を一つの頂点とする三角形を翼の外縁部寄りの部分に描き、当該三角形に概ね沿ったかたちで翼の一部を切り欠くこととした。ただし、回転時に発生する騒音を低減させる観点から、上記接続部および当該接続部を境目として形成される前方外縁部および後方外縁部がいずれも角を有さない滑らかな形状となるように、外縁部を適度に湾曲させることとした。
風量および圧力変動については、いずれもプロペラファンの中心軸に沿って噴出側に30mm離れた位置であってかつプロペラファンの回転中心からの径方向に沿った距離が外縁部の最大半径の70%となる位置に対応した位置において測定した。当該プロペラファンの回転中心からの径方向に沿った距離が外縁部の最大半径の70%となる位置に対応した位置は、概して風速が最も大きくなる位置であり、そのため圧力変動が最も生じる位置でもある。
図43は、第3検証試験において得られた、翼形状と相対風量との関係を示すグラフである。ここで、図43においては、横軸が上記接続部の回転方向に沿った位置を表わしており、縦軸が相対風量を表わしている。なお、横軸に示したξは、上述した距離Wおよび距離wを用いてw/Wで表わされる値であり、ηは、上述した最大半径R1max、半径Rおよびボスハブ部の半径r(図41参照)を用いて(R1max−R)/(R1max−r)で表わされる値である。また、縦軸に示した相対風量は、各サンプルにおいて測定された風量を、外縁部に何ら窪み形状の接続部が形成されていないプロペラファンにおける風量にて除算した値である。
図43に示されるように、接続部が回転方向に沿って外縁部の後端から前端に向かうにつれて風量が徐々に減少する傾向にあり、また接続部が径方向に沿って外縁部寄りの位置から回転中心寄りの位置に向かうにつれて風量が徐々に減少する傾向にあることが理解される。
図44は、第3検証試験において得られた、翼形状と相対圧力変動との関係を示すグラフである。ここで、図44においては、横軸が上記接続部の回転方向に沿った位置を表わしており、縦軸が相対圧力変動を表わしている。また、縦軸に示した相対圧力変動は、各サンプルにおいて測定された圧力差の最大値を、外縁部に何ら窪み形状の接続部が形成されていないプロペラファンにおける圧力差の最大値にて除算した値である。
図44に示されるように、接続部が回転方向に沿って外縁部の後端寄りにある場合には、接続部が外縁部の後端から前端に向かうにつれて圧力変動が徐々に減少する傾向にあり、接続部が回転方向に沿って外縁部の前端寄りにある場合には、接続部が外縁部の後端から前端に向かうにつれて圧力変動が徐々に増加する傾向にあることが理解される。また、接続部が径方向に沿って外縁部寄りの位置から回転中心寄りの位置に向かうにつれて圧力変動が徐々に減少する傾向にあることが理解される。
これら図43および図44の結果に基づけば、圧力変動を効果的に抑制しつつ風量の低下を防止するためには、ξが0<ξ<0.5であることが好適であると言える。すなわち、窪み形状の接続部が外縁部の後端寄りの位置に設けられることにより、圧力変動を効果的に抑制しつつ風量の低下を防止することができることが分かる。
図45は、第3検証試験において得られた、翼形状と快適指数との関係を示すコンター図である。当該コンター図は、上述した図43および図44に示される結果に基づいて、快適指数κを含むファン性能として、第3検証試験の結果を表わしたものである。快適指数κは、図43において示す相対風量を図44において示す相対圧力変動にて除することにより算出されるものであり、この値が高いほど快適性が上がることになる。図45においては、横軸が上記接続部の回転方向に沿った位置を表わしており、縦軸が上記接続部の径方向に沿った位置を表わしている。
図45に示されるように、ξに着目して見た場合には、外縁部に窪み形状の接続部が形成されていないプロペラファンに比べて快適指数κを5%以上向上させるためには、少なくともξが概ね0.05≦ξの条件を満たしていることが必要である。一方、ηに着目して見た場合には、外縁部に窪み形状の接続部が形成されていないプロペラファンに比べて快適指数κを5%以上向上させるためには、少なくともηが概ね0<η≦0.4の条件を満たしている必要がある。
さらに、ξおよびηの両方に着目して見た場合に、ξが0.2≦ξ≦0.8の条件を満たすとともに、ηが0<η≦0.2の条件を満たすことにより、外縁部に窪み形状の接続部が形成されていないプロペラファンに比べて快適指数κが確実に10%以上向上することになる。
次に、上述した外縁部に設けられる接続部の形状と上述した効果との関係を検証した第4検証試験について説明する。第4検証試験においては、上述した本実施の形態におけるプロペラファンを実際に試作してこれを実施例2とするとともに、これとは形状の異なるプロペラファンを実際に試作してこれを比較例1とし、これら実施例2および比較例1に係るプロペラファンを回転させた場合における風速の測定を行なって径方向における風速分布を算出した。ここで、比較例1に係るプロペラファンは、上述した実施の形態において説明したものと同様である。
風速については、プロペラファンの中心軸に沿って噴出側に30mm離れた位置において測定を行なうこととし、その計測点としては、径方向における分布を把握するために、中心軸からの距離が外縁部の最大半径の1.1倍となる位置に対応した位置にまで中心軸から0.1倍刻みに配置することとした。
図46は、第4検証試験において得られた、実施例2および比較例1に係るプロペラファンの回転中心からの距離と風速との関係を示すグラフである。ここで、図46においては、横軸が回転中心からの距離を表わしており、縦軸が風速を表わしている。なお、横軸においては、回転中心に対応した位置を0としかつ外縁部に対応した位置を1とした無次元値にて回転中心からの距離を表わしており、縦軸においては、実施例2および比較例1で風量を一致させ、それぞれの風速の実測値を風量で除算した無次元値にて風速を表わしている。
図46に示されるように、比較例1に係るプロペラファンにおいては、径方向内側において風速が小さく、径方向外側に向かうにつれて徐々に風速が増加し、外縁部の最大半径の0.7倍の位置において風速が最大値を示し、さらに径方向外側に向かうにつれて風速が徐々に減少する傾向が見られる。これに対し、実施例2に係るプロペラファンにおいては、径方向内側において比較例1に比べて風速が大きく、径方向外側に向かうにつれて徐々に風速が増加し、外縁部の最大半径の0.8倍の位置において風速が減少をし始め、さらに径方向外側に向かうにつれて風速が徐々に減少する傾向が見られる。ここで、風速の最大値は、比較例1に比べて実施例2の方で低くなった。
このように、実施例2に係るプロペラファンとすることにより、径方向に沿った風速分布が均一化されることになり、風速のムラを抑制することが可能となって風当たりの良い風とすることができることが確認された。
次に、上述した外縁部に設けられる接続部の形状と上述した効果との関係を検証した第5検証試験について説明する。第5検証試験においては、上述した本実施の形態におけるプロペラファンを実際に試作してこれを実施例2とするとともに、これとは形状の異なるプロペラファンを実際に試作してこれを比較例2および3とし、これら実施例2、比較例2および3に係るプロペラファンを回転させた場合における周波数別の騒音の測定を行なった。
ここで、比較例2に係るプロペラファンは、実施例2に係るプロペラファンと比較した場合に、外縁部において窪み形状の接続部が形成されていない点において相違しており、他の点においては、共通の形状を有するものとした。また、比較例3に係るプロペラファンは、比較例2に係るプロペラファンと比較した場合に、8枚翼とされている点のみ相違しており、他の点においては、共通の形状を有するものとした。
騒音の測定は、プロペラファンをいずれも回転数800rpmで回転させ、プロペラファンの中心軸に沿って噴出側に1m離れた地点での計測とした。
図47ないし図49は、それぞれ第5検証試験において得られた、実施例2、比較例2および比較例3に係るプロペラファンの周波数別の騒音を示すグラフである。ここで、図47ないし図49においては、横軸が周波数を表わしており、縦軸が騒音を表わしている。
図47ないし図49に示されるように、騒音の中でも異音として出現する狭帯域騒音のうち、特にプロペラファンの翼枚数に関係するnZ音(プロペラファンの回転数×翼枚数に起因する騒音)について着目すると、比較例2において計測されたピーク騒音の一部が実施例2において消失していることが分かる。その結果、実施例2において計測された騒音は、比較例3で計測された騒音とよく似たものとなっている。
これは、上記のとおりnZ音がプロペラファンの翼枚数に起因する騒音であることを考慮すれば、実施例2に係るプロペラファンにおいては、1枚の翼に設けられた前方外縁部および後方外縁部とがあたかも2枚分の翼で風を送風する場合と近似の役目を果たした結果と考えられる。すなわち、実施例2に係るプロペラファンが、あたかも8枚翼であるかの如くの挙動を示したためと考察される。
また、上記結果より、外縁部に窪み形状の接続部を設けることにより、1dB程度の騒音の低減が図られていることも確認された。したがって、実施例2に係るプロペラファンとすることにより、騒音の低減が図られることが確認された。
(実施の形態3)
図50は、本発明の実施の形態3におけるプロペラファンの側面図である。以下、この図50を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン10Mについて説明する。なお、本実施の形態におけるプロペラファン10Mは、上述した実施の形態1において示したプロペラファン10Aと同様に、扇風機1に搭載されて使用されるものである。
図50に示すように、本実施の形態におけるプロペラファン10Mは、上述した実施の形態1におけるプロペラファン10Aとは異なり、翼内側領域と翼外側領域とが異なる翼面形状を有するように構成されることなく翼面全体が単一の翼面形状を有するように構成されたものであるとともに、後縁部14が、径方向外側に向かうにつれて上記噴出側端面から離れるように構成されていない点、および、外縁部15の全体が、中心軸20が延びる方向に沿って上記吸込側端面から離間して位置していない点において相違しており、その他の構成においては、上述した実施の形態1におけるプロペラファン10Aと共通の構成を有している。
ここでは、その詳細な説明は省略するが、本実施の形態におけるプロペラファン10Mの翼12Mにおいても、距離Wと距離wとが、W/2>wの条件を満たしており、最大半径R1maxと最大半径R2maxとが、R1max>R2maxの条件を満たしており、半径Rと最大半径R2maxとが、R<R2maxの条件を満たしている。
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1の如くに構成した場合に比べて得られる効果の程度が減少してしまうものの、基本的には、発生される風の圧力変動が小さく風当たりの良い風を送り出すことが可能となり、また騒音の低減も図られることになる。
(実施の形態4)
図51は、本発明の実施の形態4におけるプロペラファンの側面図である。以下、この図51を参照して、本実施の形態におけるプロペラファン10Nについて説明する。なお、本実施の形態におけるプロペラファン10Nは、上述した実施の形態1において示したプロペラファン10Aと同様に、扇風機1に搭載されて使用されるものである。
図51に示すように、本実施の形態におけるプロペラファン10Nは、上述した実施の形態1におけるプロペラファン10Aと比較した場合に、外縁部15の全体が中心軸20が延びる方向に沿って上記吸込側端面から離間して位置していない点においてのみ相違しており、その他の構成においては、上述した実施の形態1におけるプロペラファン10Aと共通の構成を有している。
ここでは、その詳細な説明は省略するが、本実施の形態におけるプロペラファン10Nの翼12Nにおいても、距離Wと距離wとが、W/2>wの条件を満たしており、最大半径R1maxと最大半径R2maxとが、R1max>R2maxの条件を満たしており、半径Rと最大半径R2maxとが、R<R2maxの条件を満たしている。
このように構成した場合にも、上述した実施の形態1と同様に、発生される風の圧力変動が小さく風当たりの良い風を送り出すことが可能となり、また騒音の低減も図られることになる。
上述した本発明の実施の形態およびその変形例において開示した扇風機用プロペラファン、扇風機、および、扇風機用プロペラファンの成形用金型を要約して示すと、以下のとおりとなる。
[付記1]
中心軸を回転中心として回転する回転軸部と、
前記回転軸部から径方向外側に向けて突設され、吸込側に位置する負圧面および噴出側に位置する正圧面を含む翼とを備え、
前記翼は、回転方向における前方側に位置する前縁部と、回転方向における後方側に位置する後縁部と、回転方向に沿って延びる外縁部とを含み、
前記外縁部は、前記前縁部側に位置する前方外縁部と、前記後縁部側に位置する後方外縁部と、前記前方外縁部および前記後方外縁部を接続する接続部とを有し、
前記中心軸に沿って前記翼を平面視した状態において、前記前方外縁部の前記回転中心からの最大半径R1 max と、前記後方外縁部の前記回転中心からの最大半径R2 max とが、R1 max >R2 max の条件を満たしている、プロペラファン。
[付記2]
前記外縁部は、前記前方外縁部が前記前縁部の外端に接続する前端と、前記後方外縁部が前記後縁部の外端に接続する後端とを有し、
前記中心軸に沿って前記翼を平面視した状態において、前記前端および前記回転中心を結ぶ線分と前記後端および前記回転中心を結ぶ線分とが成す角の二等分線に対して直交する方向に沿った、前記前端と前記後端との間の距離Wと、前記二等分線と直交する方向に沿った、前記接続部のうちの最も径方向内側に位置する点と前記後端との間の距離wとが、0<w/W≦0.7の条件を満たしている、付記1に記載のプロペラファン。
[付記3]
前記中心軸に沿って前記翼を平面視した状態において、前記最大半径R1 max と、前記接続部のうちの最も径方向内側に位置する点の前記回転中心からの半径Rと、前記回転軸部の半径rとが、0<(R1 max −R)/(R1 max −r)≦0.6の条件を満たしている、付記1に記載のプロペラファン。
[付記4]
前記外縁部は、前記前方外縁部が前記前縁部の外端に接続する前端と、前記後方外縁部が前記後縁部の外端に接続する後端とを有し、
前記中心軸に沿って前記翼を平面視した状態において、前記前端および前記回転中心を結ぶ線分と前記後端および前記回転中心を結ぶ線分とが成す角の二等分線に対して直交する方向に沿った、前記前端と前記後端との間の距離Wと、前記二等分線と直交する方向に沿った、前記接続部のうちの最も径方向内側に位置する点と前記後端との間の距離wとが、0.2≦w/W≦0.6の条件を満たしているとともに、前記最大半径R1 max と、前記接続部のうちの最も径方向内側に位置する点の前記回転中心からの半径Rと、前記回転軸部の半径rとが、0<(R1 max −R)/(R1 max −r)≦0.2の条件を満たしている、付記1に記載のプロペラファン。
[付記5]
前記中心軸に沿って前記翼を平面視した状態において、前記接続部のうちの最も径方向内側に位置する点の前記回転中心からの半径Rと、前記最大半径R2 max とが、R<R2 max の条件を満たしている、付記1に記載のプロペラファン。
[付記6]
前記中心軸に沿って前記翼を平面視した状態において、前記接続部のうちの最も径方向内側に位置する点の前記回転中心からの半径Rと、前記最大半径R2 max とが、R=R2 max の条件を満たしている、付記1に記載のプロペラファン。
[付記7]
前記中心軸に沿って前記翼を平面視した状態において、前記接続部のうちの最も径方向内側に位置する点の前記回転中心からの半径Rと、前記最大半径R2 max とが、R>R2 max の条件を満たしている、付記1に記載のプロペラファン。
[付記8]
中心軸を回転中心として回転する回転軸部と、
前記回転軸部から径方向外側に向けて突設され、吸込側に位置する負圧面および噴出側に位置する正圧面を含む翼とを備え、
前記翼は、回転方向における前方側に位置する前縁部と、回転方向における後方側に位置する後縁部と、回転方向に沿って延びる外縁部とを含み、
前記外縁部は、前記前縁部側に位置する前方外縁部と、前記後縁部側に位置する後方外縁部と、前記前方外縁部および前記後方外縁部を接続する接続部と、前記前方外縁部が前記前縁部の外端に接続する前端と、前記後方外縁部が前記後縁部の外端に接続する後端とを有し、
前記中心軸に沿って前記翼を平面視した状態において、前記前方外縁部の前記回転中心からの最大半径R1 max と、前記後方外縁部の前記回転中心からの最大半径R2 max とが、R1 max =R2 max の条件を満たしているとともに、前記前端および前記回転中心を結ぶ線分と前記後端および前記回転中心を結ぶ線分とが成す角の二等分線に対して直交する方向に沿った、前記前端と前記後端との間の距離Wと、前記二等分線と直交する方向に沿った、前記接続部のうちの最も径方向内側に位置する点と前記後端との間の距離wとが、0<w/W<0.5の条件を満たしている、プロペラファン。
[付記9]
前記接続部は、角部を有さない滑らかな形状を有している、付記1から8のいずれかに記載のプロペラファン。
[付記10]
前記接続部は、略鈍角形状を有している、付記1から9のいずれかに記載のプロペラファン。
[付記11]
前記接続部は、略鋭角形状を有している、付記1から9のいずれかに記載のプロペラファン。
[付記12]
前記後方外縁部が、前記中心軸側に向けて窪んだ部位をさらに含んでいる、付記1から11のいずれかに記載のプロペラファン。
[付記13]
前記翼が、回転方向に沿って互いに離間して位置するように複数設けられ、
前記複数の翼に設けられた前記外縁部が、いずれも同一形状である、付記1から12のいずれかに記載のプロペラファン。
[付記14]
前記翼が、回転方向に沿って互いに離間して位置するように複数設けられ、
前記複数の翼に設けられた前記外縁部が、異なる形状のものを含んでいる、付記1から12のいずれかに記載のプロペラファン。
[付記15]
前記翼の噴出側に前記中心軸に直交する平面を想定し、その平面からの前記中心軸の軸方向における長さを高さという場合に、前記前縁部が、その内端と当該内端から径方向外側に離れた位置との間で一定の高さを有している、付記1から14のいずれかに記載のプロペラファン。
[付記16]
前記翼の噴出側に前記中心軸に直交する平面を想定し、その平面からの前記中心軸の軸方向における長さを高さという場合に、前記後縁部の外端を含む径方向外側部分が、径方向内側から径方向外側に向かうにつれてその高さが高くなるように構成されている、付記1から15のいずれかに記載のプロペラファン。
[付記17]
前記中心軸が延びる方向に沿って吸込側において最も外側に位置する前記翼の部位を含みかつ前記中心軸と直交する平面形状の吸込側端面を想定した場合に、前記外縁部の全体が、前記中心軸が延びる方向に沿って前記吸込側端面から離間して位置している、付記1から16のいずれかに記載のプロペラファン。
[付記18]
前記中心軸が延びる方向に沿って噴出側において最も外側に位置する前記翼の部位を含みかつ前記中心軸と直交する平面形状の噴出側端面を想定した場合に、前記外縁部の全体が、前記中心軸が延びる方向に沿って前記噴出側端面から離間して位置している、付記1から17のいずれかに記載のプロペラファン。
[付記19]
前記翼が、前記回転軸部側に位置する翼内側領域と、前記外縁部側に位置する翼外側領域と、前記負圧面側が凹となり前記正圧面側が凸となるように前記翼内側領域と前記翼外側領域との境目においてこれらを湾曲してまたは屈曲して連結する連結部とを有している、付記1から18のいずれかに記載のプロペラファン。
[付記20]
樹脂成形品からなる、付記1から19のいずれかに記載のプロペラファン。
[付記21]
付記1から20のいずれかに記載のプロペラファンと、
前記プロペラファンを回転駆動する駆動モータとを備えた、流体送り装置。
[付記22]
付記20に記載のプロペラファンを成形するために用いられる、プロペラファンの成形用金型。
上述した本発明の実施の形態およびその変形例においては、本発明が適用されたプロペラファンとして、合成樹脂により一体成形されてなるプロペラファンを例示したが、本発明の適用対象はこれに限られるものではない。たとえば、一枚物の板金を捻り加工することによって形成されるプロペラファンに本発明を適用してもよいし、曲面を有して形成される一体の薄肉状物により形成されるプロペラファンに本発明を適用してもよい。また、これらの場合には、別に成形したボスハブ部に翼を接合する構造としてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態およびその変形例においては、7枚翼または4枚翼のプロペラファンに本発明を適用した場合を例示したが、7枚または4枚以外の複数枚の翼を備えるプロペラファンに本発明を適用してもよいし、1枚翼を備えるプロペラファンに本発明を適用してもよい。1枚翼のプロペラファンに本発明を適用する場合には、中心軸に対して翼の反対側に、バランサーとしての錘を設けることが好ましい。
また、上述した本発明の実施の形態およびその変形例においては、本発明が適用される流体送り装置として扇風機を、また本発明が適用されるプロペラファンとして扇風機に搭載されるプロペラファンをそれぞれ例示したが、この他にも、サーキュレータ、エアーコンディショナ、空気清浄機、加湿機、除湿機、ファンヒータ、冷却装置または換気装置などの各種の流体送り装置ならびにこれに搭載されるプロペラファンに本発明を適用することも当然に可能である。
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。