JP3754244B2 - 軸流送風機の翼設計方法及び軸流送風機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気調和装置の室外機や換気扇、扇風機などに使用される軸流送風機、及びその軸流送風機の翼設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
空気調和装置の室外機や換気扇などに適用される軸流送風機は、多くの風量を得ることと同時に、騒音が低いものでなければならない。従って、このような軸流送風機の翼は、騒音の低減化のために低回転としても、風量を多量に発生できる翼弦長の長い翼が用いられる。軸流送風機の直径に対し翼弦長の長い翼は、軸流送風機の効率を向上させる必要上、3次元曲面形状を備えたものとなっている。
【0003】
上述のような3次元性の強い翼を設計する方法は、種々提案されている。例えば、航空機(ヘリコプター等)の2次元翼の断面形状を基本とし、この断面形状を周方向に変形しながら延長して、3次元性の強い翼を形成する方法がある。ところが、このような翼の設計方法は、試行錯誤的な設計方法であり、しかも非常に困難である。
【0004】
そこで、3次元性の強い翼を設計する方法として、特公平2−2000号公報に記載の如く、数式を用いて、現実的に必要な空力性能を有する翼を設計する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の公報記載の発明においては、翼の周方向断面形状が単一の円弧の場合に限られ、従って単純な形状の翼しか設計できない。このため、このような翼を備えた軸流送風機は、適用範囲が非常に限定されたものとなっている。
【0006】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、適用範囲の広い軸流送風機を実現できる軸流送風機の翼設計方法及び軸流送風機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、回転中心を備えたハブ部の外周に配置された翼を設計する軸流送風機の翼設計方法において、前記翼の回転軸に垂直な平面において前記回転中心を原点とする座標系を設定した場合に周方向の角度により示される前記翼の端位置を数式で定義するとともに、前記座標系における任意の角度位置における前記翼の半径方向断面形状を、当該角度位置における任意の点から前記回転中心までの距離と当該角度位置における翼先端から前記回転中心までの距離との差を変数とする数式により定義して、前記翼を設計することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、回転中心を備えたハブ部の外周に複数枚の翼が配置された軸流送風機において、前記翼は、数式にて定義された周方向断面形状と、前記翼の任意の位置における半径と当該位置に対応する最大半径とを前記数式に加味することにより定義された半径方向断面形状とを有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項1乃至4に記載の発明には、次の作用がある。
【0012】
軸流送風機の翼が、周方向断面形状と半径方向断面形状とを数式にて定義して構成されたことから、複雑な形状の翼を製作できる。このため、翼面形状、翼の反り深さ方向の形状、または翼の最大反り深さ位置のそれぞれを容易に設定できるので、適用範囲の広い軸流送風機を実現できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る軸流送風機の一実施の形態であるプロペラファンが適用された空気調和装置の室外機を示す正面図である。
【0015】
空気調和装置は、室外機10と図示しない室内機とが冷媒配管(不図示)により接続され、これらの間を冷媒が循環することにより冷房運転または暖房運転がなされる。室外機10は、室外に設置されて外気と冷媒とを熱交換し、冷房運転時には冷媒を凝縮させて外気へ熱を放出し、暖房運転時には冷媒を蒸発させて外気から熱を取り込むものである。
【0016】
室外機10は、ケーシング11内に圧縮機12、アキュムレータ13、四方弁14、熱交換器15、及び軸流送風機としてのプロペラファン16を有して構成される。このプロペラファン16は、図2に示すようにファンモータ17に連結され、このファンモータ17が支持板18に支持されて熱交換器15の前方に配置される。このプロペラファン16のファンモータ17による駆動によって、空気(外気)が図2の矢印Aの如く熱交換器15の内側から外側へ送風されて、熱交換器15内の冷媒と外気とが熱交換される。
【0017】
さて、上記プロペラファン16は、図3及び図4に示すように、ハブ部19と、このハブ部19の外周に所定ピッチで配置された複数枚(例えば3枚)の同一形状の翼20とを有して構成される。これらのハブ部19及び翼20は、例えば一体に樹脂成形される。
【0018】
ハブ部19は、その回転中心19Aにファンモータ17のモータシャフト21(図2)が挿通され、ファンモータ17の駆動により各翼20を図4の矢印N方向に回転させる。また、このハブ部19は、外径がほぼ三角柱形状に構成されている。
【0019】
上記翼20は、図3〜図5に示すように、矢印N方向の回転により、その翼前縁22側から翼後縁23側へ向かい翼負圧面24(翼裏面)に沿って空気(外気)を流動させ、この空気を全体として、プロペラファン16の裏側から表側へ図2の矢印A方向に送風する。
【0020】
この翼20は、図5に示すように、翼面が空間的に捻れながら、しかも翼前縁22側が空気の吸込側に大きく前傾した3次元形状に構成される。この翼20の形状(3次元形状)は、図6に示すように、プロペラファン16の回転中心19Aを原点Oとする座標系において、周方向断面形状と半径方向断面形状の2つの断面形状を用いて定義される。具体的には、プロペラファン16の送風性能を決定するために重要な周方向断面形状に重きを置き、原点Oから任意の半径rにおける周方向断面形状を数式で定義し、半径方向断面形状については、上記周方向断面形状を維持したままで変化させていくために、翼20の最大半径Rと上記任意の半径rとの差(r−R)を上記周方向断面形状に加味することによって定義する。
【0021】
原点Oから任意の半径rにおける翼20の周方向断面形状を図7に示す。この翼20の周方向断面形状を示す曲線25は、翼断面形状の基本となる翼弦直線26から曲線27を減算して求められたものであり、この曲線27は、2本の異なる2次曲線28及び29をそれぞれのピーク位置で接続して構成したものである。ここで、図7の横軸は、図6の原点Oを通る水平軸Xから時計回りに増加する翼20の周方向角度θであり、縦軸は翼20の翼高さHである。
【0022】
この曲線25にて示される翼20の周方向断面形状を表す数式に、翼20の半径方向の関係式(r−R)を加味して、翼20の3次元形状が数式(1)、(2)のように表記される。
【0023】
【数1】
【0024】
【数2】
ここで、W1(r)は反り前半角、W2(r)は反り後半角であり、曲線27のピーク位置を決定するパラメータであって、後述の式(8)、(9)の如く半径rの関数である。また、θS(r)は翼20の開始角度(翼前縁22側)を示すパラメータであり、半径rの関数である。
【0025】
また、式(1)、(2)中のθL(r)は翼20の角度範囲を示すパラメータであり、半径rの関数であって次式(3)により定義される。
【0026】
【数3】
ここで、θE(r)は翼20の終了角度(翼後縁23側)を示すパラメータであり、半径rの関数であって次式(4)で示される。また、SS(r)は翼20の翼前縁22位置を示すパラメータであり、翼20の上面投影図から設定され、次式(5)の如く半径rの関数として示される。
【0027】
【数4】
【0028】
【数5】
これらの式(4)、(5)において、A1、A2、B1、B2、C1、C2、D1、D2はそれぞれ定数である。
【0029】
また、式(1)、(2)中のHL(r)は、翼20の高さ範囲を示すパラメータであり、半径rの関数であって次式(6)で示される。
【0030】
【数6】
ここで、HE(r)は、翼20の終了高さ(翼後縁23側)であり、任意の値に設定される。また、HS(r)は翼20の開始高さ(翼前縁22側)を示すパラメータであり、ハブ部19との接続位置を考慮して設定され、次式(7)の如く半径rの関数として示される。
【0031】
【数7】
このA3、B3、C3、D3も定数である。
【0032】
前記W1(r)、W2(r)は、これらの反り前半角W1(r)、反り後半角W2(r)の比を決定する翼変曲点分配率をPとすると、それぞれ次式(8)、(9)で示される。
【0033】
【数8】
【0034】
【数9】
さらに、式(1)、(2)中のD(r)は、翼20の最大反り深さ(つまり、図7の翼弦直線26と曲線25との最大距離)を示すパラメータであり、次式(10)に示す如く半径rの関数である。
【0035】
【数10】
ここで、DOは基準最大反り深さを示すパラメータであり、翼20の最大半径R位置における最大反り深さD(R)を示す。
【0036】
上述の式(1)〜(10)によって翼20の3次元形状が決定されるが、この決定に際しては翼20の最外周位置、つまり最大半径R位置が基準とされる。
【0037】
また、式(4)、(5)、(7)において、翼20の半径方向断面形状の関係式(r−R)が加味されている。そして、これら翼20の終了角度θE(r)、翼前縁22位置SS(r)、翼20の開始高さHS(r)をそれぞれ規定する式(4)、(5)、(7)は、複数の翼20を組み合わせて一つのプロペラファン16を形成したとき、互いの翼20が干渉しないように3次の多項式で定義され、翼20の翼前縁22側形状と翼後縁23側形状の制約に柔軟に対応できるよう考慮されている。
【0038】
更に、翼20の開始角度θS(r)は、図7に一点鎖線で示すように、翼20の半径方向各位置における翼20の周方向断面形状を示す曲線25を定義するための開始点である。実際の翼20は、翼20の開始角度θS(r)と終了角度θE(r)との間で定義された上記曲線25を、翼面の歪みを少なくするために不必要な部分を切除して形成される。この切除位置が翼20の翼前縁22位置SS(r)である。また、翼20の開始角度θS(r)の値によって、翼20の半径方向の広がり方やねじれを設定することができる。
【0039】
次に、上述の式(1)〜(10)を用いて、プロペラファン16における3次元形状の翼20を設計する手順を示す。
【0040】
まず、翼20の最大半径Rを数値設定し(例えばR=230(mm))、翼前縁22側の迎え角αと空気の入射角βとを考慮して、基準最大反り深さDO及び翼変曲点分配率Pを数値設定する。その他、翼最外周の翼終了角度θE(R)及び翼終了高さHE(R)と、翼20の半径方向断面形状に関する関係式(r−R)の項の係数An、Bn、Cn、Dnをそれぞれ数値設定する。更に、翼20の開始角度θS(r)を零(θS(r)=0)と設定する。
【0041】
ここで、翼20の迎え角αは、図5に示すように、プロペラファン16(ハブ部19)の回転中心19Aに直交する平面30に対する翼前縁22の角度である。また、空気の入射角βは、上記平面30に対し空気がプロペラファン16へ流れ込む角度である。この空気の入射角βは、プロペラファン16の相互の翼20における空気の干渉や各翼20の半径方向位置などによってバラツキがあるため、正確に把握することが困難であるが、既存のプロペラファンのデータから経験的に決定する。また、翼20の迎え角αは、過小である場合には空気の流れの変化に対応できず、プロペラファン16が失速してしまうおそれがあるため、空気の入射角βよりも大きな適切な角度に設定される。
【0042】
図8に示すように、翼20の迎え角αを例えば12度以上とするためには、翼変曲点分配率Pを例えば65%としたとき、基準最大反り深さDOの値は40(mm)以上が望ましい。この実施の形態では、α=12(度)、P=65(%)、DO=40(mm)にそれぞれ数値設定されている。
【0043】
次に、上述のように数値設定されたパラメータR、DO、P、θE(R)、HE(R)、An、Bn、Cn、Dn、θS(r)の各値を式(4)、(5)、(3)、(7)、(6)にそれぞれ代入して、パラメータθE(r)、SS(r)、θL(r)、HS(r)、HL(r)を算出し、また、式(8)、(9)にそれぞれ代入してパラメータW1(r)、W2(r)をそれぞれ算出し、更に式(10)に代入してパラメータD(r)を算出する。
【0044】
次に、翼20の半径方向各位置(例えばr=250、230、210、190、170、150、130、110、90、70、50、30・・・)における、上述のパラメータθE(r)、SS(r)、θL(r)、HS(r)、HL(r)、W1(r)、W2(r)及びD(r)の値を算出する。これを整理したものが図9である。この図9では、パラメータθS(r)及びHE(r)の値も表示されている。
【0045】
その後、この図9の数値を式(1)、(2)に代入して、翼20の半径方向各位置(r=250、230、210、・・・)での翼20の周方向断面形状を表示するθに関する数式を求め、次に、これらの各数式にθの数値を代入して翼20の翼高さHの値を算出する。これにより、翼20の3次元形状を表すH(θ、r)の多数の座標データが点群として求められる。
【0046】
これらの多数の座標データは、例えば3次元CAD(Computer Aided Design)に入力されることにより、3次元形状として見ることができる。
【0047】
従って、上記実施の形態によれば、プロペラファン16の翼20が、周方向断面形状と半径方向断面形状とを数式(1)〜(10)を用いて定義して構成されたことから、図7に示す異なる2次曲線28及び29を用いて翼20の断面形状を設計できるので、複雑な形状の翼20を設計し製作できる。このため、各種パラメータの数式を変更して、翼20の翼面をスムーズな形状とし、翼面に極端に曲率変化が存在することによる抵抗の発生を防止したり、翼20の最大反り深さD(r)の数値を調整してプロペラファン16による風量を適切に確保したり、翼20の最大反り深さD(r)の位置を、翼変曲点分配率Pを用いて調整して、翼20の翼前縁22側と翼後縁23側の働きの相違を明確化することなどを容易に実施できる。この結果、適用範囲の広いプロペラファン16を実現できる。
【0048】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
例えば、翼20の周方向断面形状を表す曲線25を定義する際に、2つの2次曲線28、29を組み合わせた曲線27を用いるものを述べたが、3以上の異なる2次曲線を組み合わせた曲線を用いて翼20の周方向断面形状を定義しても良い。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の発明に係る軸流送風機の翼設計方法によれば、翼の周方向断面形状と半径方向断面形状とを数式にて定義することにより翼を設計することから、適用範囲の広い軸流送風機を実現できる。
【0051】
請求項2に記載の発明に係る軸流送風機によれば、ハブ部の外周に複数枚配置された翼が、周方向断面形状と半径方向断面形状とを数式にて定義することにより、構成されたことから、適用範囲の広い軸流送風機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る軸流送風機の一実施の形態であるプロペラファンが適用された空気調和装置の室外機を示す正面図である。
【図2】図1の室外機における主要部を示す縦断面図である。
【図3】図1及び図2のプロペラファンを示す斜視図である。
【図4】図3のIV矢視図である。
【図5】図3のV矢視図である。
【図6】図3のVI矢視図であり、単一の翼のみを示した図である。
【図7】図6の半径r位置における翼の周方向断面形状を示す図である。
【図8】翼前縁の迎え角、翼変曲点分配率、翼の基準最大反り深さの関係を示すグラフである。
【図9】翼の半径方向各位置におけるパラメータの値を示す図表である。
【符号の説明】
16 プロペラファン(軸流送風機)
19 ハブ部
19A 回転中心
20 翼
Claims (2)
- 回転中心を備えたハブ部の外周に配置された翼を設計する軸流送風機の翼設計方法において、
前記翼の回転軸に垂直な平面において前記回転中心を原点とする座標系を設定した場合に周方向の角度により示される前記翼の端位置を数式で定義するとともに、
前記座標系における任意の角度位置における前記翼の半径方向断面形状を、当該角度位置における任意の点から前記回転中心までの距離と当該角度位置における翼先端から前記回転中心までの距離との差を変数とする数式により定義して、前記翼を設計することを特徴とする軸流送風機の翼設計方法。 - 回転中心を備えたハブ部の外周に複数枚の翼が配置された軸流送風機において、
前記翼は、数式にて定義された周方向断面形状と、前記翼の任意の位置における半径と当該位置に対応する最大半径とを前記数式に加味することにより定義された半径方向断面形状とを有することを特徴とする軸流送風機。
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