JP6153060B2 - 熱交換器およびその製造方法 - Google Patents
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ところが、このような手段では、溶接作業を複数回にわたって繰り返すこととなるために、1回の溶接作業を終了する都度、溶接の終点Peの酸化防止を図るためのアフタフローを行なう必要が生じる。これでは、複数の伝熱管90の全ての溶接を終えるのに要する作業時間が相当に長くなる。溶接開始時のプリフローを長くとる場合には、溶接作業時間はさらに長くなる。このようなことから、前記手段では、生産性が余り良好ではなく、熱交換器の製造コストが高くなる不具合がある。
また、溶接作業の所要時間をできる限り短くしようとして、溶接速度を速めると、溶接の品質が低下する不具合を招く。さらに、溶接の終点は、溶接部のうちで最も品質劣化を生じ易い箇所であるが、前記手段によれば、そのような溶接の終点が複数の伝熱管90と同数だけ生じる。したがって、溶接の品質を良好にする上でも、改善の余地がある。
第1に、複数の伝熱管の各端部がケースの側板部に対して適切に溶接された構造が実現できるが、この溶接は、実質的に1回の溶接作業によって行なわれる。したがって、たとえば複数の伝熱管を個々に溶接する作業を複数回にわたって繰り返す場合とは異なり、溶接終了時のアフタフローは1回のみでよく、複数回行なう必要はない。また、溶接開始時のプリフローを行なう場合であっても、このプリフローは1回でよい。したがって、溶接作業時間を短くし、生産性を良好にすることにより、熱交換器の製造コストを低減することが可能である。
第2に、溶接終了時のアフタフローなどの所要時間を短縮できる分だけ、溶接作業に時間的な余裕をもたせることが可能となり、溶接進行速度(溶接トーチの移動速度)を遅くすることができる。溶接の品質は、溶接進行速度を速くするほど低くなる傾向があるが、本発明によれば、溶接進行速度を遅めにすることにより、溶接の品質を高めることができる。
第3に、溶接部のうち、溶接の終点は最も品質が悪化し易い箇所であるが、本発明によれば、溶接の終点の数は、最小数である。このことにより、溶接の品質をより高めることができる。
すなわち、熱交換器を実際に使用する場合、この熱交換器に接続された配管経路においてウォータハンマが発生する場合がある。このようなウォータハンマが発生し、各伝熱管内の圧力が高くなると、後の実施形態において詳述するように、第1および第2の延設管体部とケースの側板部との溶接箇所のうち、側板部の縁部側(側板部のz方向の中心とは反対側)の部分には、溶接を剥離させる方向の引張応力が生じる。前記構成においては、溶接部のうち、最も品質低下を生じ易い溶接の終点が、そのような引張応力を生じる箇所を避けた位置にあり、溶接の終点に不当な応力を生じ難くすることができる。さらに、溶接の終点は、第1の延設管体部どうしの間や、第2の延設管体部どうしの間をも避けた位置であるために、溶接の均一化を図る上でも好ましいものとなる。このようなことから、各伝熱管とケースの側板部との溶接強度を高め、また耐ウォータハンマ性能を向上させて、耐久性に優れたものとすることができる。
この熱交換器HE1は、ケース2と、このケース2内に収容された複数の伝熱管1と、これら複数の伝熱管1の下端部および上端部に繋がった入水用および出湯用の一対のヘッダ3(3A,3B)とを具備している。
なお、本実施形態では、ケース2の左右幅方向が本発明でいう「x方向」、ケース2の前後幅方向が本発明でいう「y方向」、上下方向が本発明でいう「z方向」に相当し、図面において適宜示す。
て一体的に形成されている。これらの膨出部22は、ヘッダ3の装着対象となる部分であるとともに、複数の伝熱管1の連結対象となる部分でもあり、本発明でいう「第1および第2の領域」の一例に相当し、側板部21の上下方向の中心線Laを挟んで上下に離間している。図3によく表われているように、各膨出部22の先端壁部22bには、複数の貫通孔28が比較的接近した間隔で略水平方向に並んで設けられており、これらの貫通孔28に、伝熱管1の端部(第1および第2の延設管体部10a,10bの端部)が挿入されて溶接されている。この溶接は、側板部21の外側から行なわれ、かつ側板部21の内面側に裏ビード部29が形成されるようにしてなされている。
すなわち、図5(a)の仮想線で示すように、たとえば右端に位置する伝熱管1の外周の一部を始点Psとして溶接を開始する場合、まず複数の伝熱管1の端部どうしの間を蛇行状に縫うように溶接を左側に進行させていき、複数の伝熱管1の端部のそれぞれの下側または上側の略半周ずつを交互に溶接していく(往きの溶接部81の形成)。この溶接が左端に位置する伝熱管1まで進行した際には、この左端の伝熱管1の端部の全周を溶接してから溶接進行方向を反転させ、その後は同図(b)に示すように、やはり複数の伝熱管1の端部どうしの間を蛇行状に縫うように溶接を進行させていく(戻りの溶接部82の形成)。その際、各伝熱管1の端部のうち、往きの溶接部81によって溶接されなかった残りの略半周を溶接する。同図(c)に示すように、前記溶接が右端の伝熱管1の位置まで復帰した際には、始点Psを越え、右端の伝熱管1の下側の位置を終点Peとする。同図では、理解の容易のために始点Psと終点Peとの間の2つの溶接部が重ならないように示しているが、実際には、これら2つの溶接部は互いに重なるように溶接を施す。始点Ps上に重ねて溶接を施せば、始点Psに溶接不備がある場合であっても、この不備を修正することが可能である。
7を参照して説明する。ウォータハンマの非発生時には、熱交換器HE1は、同図(a)に示す状態にある。これに対し、ウォータハンマが発生し、伝熱管1内の圧力が相当に高くなると、主管体部11はケース2に固定されているために、第1および第2の延設管体部10a,10bは、同図(b)に示すように、上下方向に膨らむように変形し、側板部21をケース2の内側に撓ませる力F2を発生させる。その際、膨出部22の先端壁部22bも撓み変形を生じる。このため、膨出部22Aにおける第1の延設管体部10aの溶接箇所では、この第1の延設管体部10aよりも上側の部分に引張応力σが発生する。膨出部22Bにおける第2の延設管体部10bの溶接箇所では、この第2の延設管体部10bの下側の部分に引張応力σが発生する。前記した引張応力σが発生する箇所は、図2(c)の符号n1,n2で示す部分およびその近辺である(本実施形態とは異なり、仮に、側板部21に膨出部22A,22Bが設けられていない構成とされ、かつ側板部21に設けられた貫通孔に複数の伝熱管1が挿入して溶接されただけの構成の場合も同様な作用を生じる)。
本実施形態の熱交換器HE2は、各伝熱管1の主管体部11が、略水平な姿勢の蛇行状管体部とされており、複数の伝熱管1は、上下高さ方向に並んでいる。第1および第2の
延設管体部10a,10bは、ケース2の左右幅方向に延びているが、これらはケース2の前後幅方向に間隔を隔てている。このため、ケース2の側板部21に設けられた2つの膨出部22(22A,22B)は、ケース2の前後幅方向の中心線Lbを挟んでケース2の前後幅方向に離間した配置とされている。各膨出部22における複数の貫通孔28および伝熱管1の端部(第1および第2の延設管体部10a,10b)の配列方向は、上下方向である。
Ps 溶接の始点
Pe 溶接の終点
1 伝熱管
10a,10b 延設管体部
11 主管体部(伝熱管の)
3(3A,3B) ヘッダ
21 側板部(ケースの)
22(22A,22B) 膨出部(第1および第2の領域)
28 貫通孔
2 ケース
8 往復蛇行状の溶接部
81,82 往きおよび戻りの溶接部
Claims (5)
- 複数の伝熱管と、これら複数の伝熱管を内部に収容するケースと、を備えており、
前記複数の伝熱管は、前記ケース内に位置決め固定される螺旋状または蛇行状の主管体部と、この主管体部に繋がって所定のx方向に延び、かつx方向に対して交差するz方向に離間した第1および第2の延設管体部と、を有しており、
前記ケースの側板部には、前記側板部のz方向の中心線を挟んでz方向に離間した第1および第2の領域が設けられ、かつこれら第1および第2の領域は、前記複数の伝熱管の端部としての第1および第2の延設管体部が挿入される複数の貫通孔が、x,z方向に対して交差するy方向に間隔を隔てて並んで設けられた領域であり、
前記第1および第2の領域において、前記複数の伝熱管の端部のそれぞれの全周が前記側板部に溶接されている、熱交換器であって、
前記溶接は、前記複数の伝熱管の端部どうしの間を蛇行状に縫う経路の溶接部が、y方向において往復して設けられた往復蛇行状の溶接とされ、
この往復蛇行状の溶接は、全体が一筆書き状に繋がり、溶接の始点および終点のそれぞれが1箇所ずつとされており、
前記第1および第2の領域における前記溶接の終点は、前記複数の伝熱管の端部の周囲のうち、前記側板部のz方向の中心線寄りの位置とされているとともに、前記溶接は、その終点が始点を越えた配置とされて、これら終点と始点との間においては、往きの溶接部と戻りの溶接部とが重なった構成とされていることを特徴とする、熱交換器。 - 請求項1に記載の熱交換器であって、
前記ケースの側壁部には、前記ケースの外方に向けて膨出する筒状の周壁部、およびこの周壁部の先端部を塞ぐ先端壁部を有する一対の膨出部が形成され、
これら一対の膨出部の前記先端壁部が、前記第1および第2の領域とされているとともに、前記一対の膨出部の前記周壁部には、前記複数の伝熱管への流体流入用または流出用のヘッダが外嵌されて接合されている、熱交換器。 - 請求項1または2に記載の熱交換器を製造するための熱交換器の製造方法であって、
前記ケースの側板部に設けられた前記第1および第2の領域に設けられている前記複数の貫通孔に、前記複数の伝熱管の端部としての前記第1および第2の延設管体部を挿入する伝熱管挿入工程と、
この伝熱管挿入工程の後において、前記複数の伝熱管の端部を前記側板部に溶接する溶接工程と、
を有しており、
前記溶接工程においては、前記複数の伝熱管の端部どうしの間を蛇行状に縫うようにして前記複数の伝熱管の端部のそれぞれの略半周ずつを順次溶接し、この溶接位置が前記複数の伝熱管の列の最端に位置する伝熱管の周囲に到達した際には、この伝熱管の端部の全周を溶接してから溶接進行方向を反転させ、その後は前記複数の伝熱管の端部のそれぞれの残りの略半周ずつを順次溶接し、前記複数の伝熱管の端部に対し、一筆書き状に繋がった溶接を施すとともに、
前記第1および第2の領域における前記溶接の終点は、前記複数の伝熱管の端部の周囲のうち、前記側板部のz方向の中心線寄りの位置とし、かつ前記溶接は、その終点が始点を越えた配置とし、これら終点と始点との間においては、往きの溶接部と戻りの溶接部とを重ねることを特徴とする、熱交換器の製造方法。 - 請求項3に記載の熱交換器の製造方法であって、
前記伝熱管挿入工程においては、前記伝熱管の端部を前記側板部の外側に突起状に突出した状態とし、
前記溶接工程においては、前記側板部の外側から溶接を施し、前記貫通孔の周縁部に加え、前記伝熱管の端部の突出部分をも溶融させる、熱交換器の製造方法。 - 請求項3または4に記載の熱交換器の製造方法であって、
前記溶接工程おいて、前記複数の伝熱管の端部どうしの間の領域を溶接する際には、他の領域を溶接する際よりも入熱を少なくする、熱交換器の製造方法。
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