JP6152599B2 - 免震構造物のフェイルセーフ機構 - Google Patents

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Description

本発明は、免震構造物のフェイルセーフ機構に関し、詳しくは、過大な水平変位を抑制する免震構造物のフェイルセーフ機構に関する。
従来、地震時の耐震安全性を実現するため、建物の浮き上がりを利用することが提案されている。
例えば、図12の断面図に示す免震装置は、建物102の下部に、建物重量を支持する略楕円形状のロッキングボール104を複数個設け、地震時の水平方向の運動の一部を、ロッキングボール104の転動によって上下方向の運動に変換し、建物基部106から建物102に伝達される地震動を低減する。また、図13の断面図に示す耐震構造110は、建物102を三角形の支持部材114で支持し、地震により所定以上の水平力が作用したときに、支持部材114は、支持部材114の底面部118の一方の頂点部120を支点とし、他方の頂点部122が建物とともに浮き上がるように回動する(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
特開2010−121413号公報 松下ほか、「建物に加わる震力の低減方法に関する研究」、日本建築学会論文報告集、昭和41年4月、第122号、p.15−22
ゴムなどの免震装置によって地震の揺れを減衰させ、建物に伝えないようにして地震の被害を減らす方法として免震構造が多く提案されている。この免震構造の場合、建物と地面とでは揺れ方が異なり、違う挙動を示すことになる。そのため、地中に建物の床面積よりも一回り大きな擁壁を構築し、地震が起きた際はその擁壁内で建物が揺れるような仕組みになっている。この擁壁の大きさは、これまでの地震の規模を考慮して設定された国土交通大臣告示や学会規準等にのっとって決定されており、十分なクリアランスがあるとされてきた。
しかし東北地方太平洋沖地震を受けて、今までの規模を超える地震が起こる可能性が示唆されている。地震動レベルがある限界を超えると、免震構造の建物の揺れがクリアランスを超え擁壁に衝突することとなり、建物の壁に衝撃が加わることで想定外の損傷を受ける可能性がある。
この免震建物基礎の擁壁への衝突を防ぐには、建物の揺れがクリアランスを超えなければよい。しかし、免震構造を新しいものにする、あるいはクリアランスを大きくするという対策は、コストと手間がかかり現実的ではない。また、免震構造の持つ特性を変えてしまうと、元々設計していた地震による建物の応答が変わってしまう。よって、免震構造の特性をできるだけ変えずに、建物の揺れをクリアランス内に収める方法が必要である。
本発明は、かかる実情に鑑み、水平変位が免震装置の限界に近づいてきた場合に水平変位の増加を抑制し、過大な水平変位による損傷を回避することができる、免震構造物のフェイルセーフ機構を提供しようとするものである。
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成した免震構造物のフェイルセーフ機構を提供する。
免震構造物のフェイルセーフ機構は、(a)下向きの第1の水平面を有する上部構造体と、(b)前記第1の水平面に対向する上向きの第2の水平面を有する下部構造体と、(c)前記上部構造体と前記下部構造体との間の上下方向隙間に取り付けられ、前記上部構造体を水平免震状態にする免震装置と、(d)前記上部構造体の前記第1の水平面と、前記下部構造体の前記第2の水平面との間に配置され、前記第1の水平面に対向する凸状の第1の曲面と、前記第2の水平面に対向する凸状の第2の曲面とを有する転動部材とを備える。前記上部構造体は、前記転動部材の頂点及びその近傍に対向する部分に、初期状態において前記転動部材の頂点及びその近傍との間に間隔を形成する凹部を有する。前記転動部材の前記第1の曲面と前記第2の曲面は、前記第1の曲面と前記第2の曲面とにそれぞれ接する互いに平行な一対の仮想平面の水平方向に対する傾きが増加すると、前記一対の仮想平面の間の間隔が増加するように形成されている。前記下部構造体に対する前記上部構造体の水平方向の相対移動距離が所定値を超えると、前記上部構造体の前記第1の水平面が前記転動部材の前記第1の曲面に接し、前記転動部材が前記上部構造体の前記第1の水平面と前記下部構造体の前記第2の水平面との間に挟まれた状態で回転して、前記上部構造体を上方に移動させる。
上記構成によれば、下部構造体に対する上部構造体の水平方向の相対移動距離(単に、「水平変位」ともいう。)が所定値以下であるときには、免震装置によって上部構造体を水平免震状態にすることができる。水平変位が所定値を超えると、転動部材は、上部構造体の第1の水平面と下部構造体の第2の水平面との間に挟まれた状態で回転する。この回転に伴って、上部構造体の第1の水平面と下部構造体の第2の水平面との間の距離が大きくなり、上部構造体は転動部材によって持ち上げられる。これによって、水平変位が所定値を超え、水平変位が免震装置の限界に近づいてきた場合に、水平変位の増加を抑制し、過大な水平変位による免震装置等の損傷を回避することができる。
好ましくは、前記転動部材は、前記初期状態において前記上部構造体の前記凹部との間に間隔を設けて前記凹部内に配置される当接部を有する。前記当接部は、前記下部構造体に対する前記上部構造体の水平方向の前記相対移動距離が所定値に達すると、前記凹部を形成する内面に当接する。
この場合、当接部が凹部の内面に当接することによって、転動部材が確実に回転を開始するため、動作の信頼性が向上する。
好ましくは、前記下部構造体は、前記第2の水平面から突出又は後退した変形部を有する。前記転動部材は、前記転動部材の回転に伴って解除可能に前記変形部に係合する係合部を有する。
この場合、転動部材が回転を開始するタイミングは、転動部材の第2の曲面と下部構造体の第2の水平面との間のすべりによってずれることがないため、動作の信頼性が向上する。
好ましくは、免震構造物のフェイルセーフ機構は、回転した前記転動部材を前記初期状態に戻す弾性部材を、さらに備える。
この場合、免震構造物のフェイルセーフ機構は、安定して繰り返し動作可能となる。
本発明によれば、水平変位が免震装置の限界に近づいてきた場合に水平変位の増加を抑制し、過大な水平変位による損傷を回避することができる。
免震構造物のフェイルセーフ機構の要部断面図である。(実施例1) 免震構造物のフェイルセーフ機構の要部断面図である。(実施例1) サイクロイドの説明図である。(実施例1) 実験装置の概略側面図である。(実施例1) 実験装置の概略斜視図である。(実施例1) 転動部材の断面図である。(実施例1) 実験結果のグラフである。(実施例1) 実験結果のグラフである。(実施例1) 免震構造物のフェイルセーフ機構の要部断面図である。(変形例1) 免震構造物のフェイルセーフ機構の要部断面図である。(変形例2) 免震装構造物のフェイルセーフ機構の要部断面図である。(変形例3) 免震装置の断面図である。(従来例1) 耐震構造の断面図である。(従来例2)
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図10を参照しながら説明する。
<実施例1> 実施例1について、図1〜図8を参照しながら説明する。
図1は、実施例1の免震構造物のフェイルセーフ機構の初期状態の要部断面図である。図1に示すように、上部構造体4の下向きの第1の水平面4aと、下部構造体2の上向きの第2の水平面2aとが対向し、その間に、適宜個数(1個以上、好ましくは3個以上)の転動部材10が配置されている。例えば、上部構造体4は免震対象である建物本体であり、下部構造体2は基礎部である。
転動部材10は、略回転楕円体形状であり、上部構造体4の第1の水平面4aに対向する凸状の第1の曲面10aと、下部構造体2の第2の水平面2aに対向する凸状の第2の曲面10bとを有する。初期状態における転動部材10の第1の曲面10aと第2の曲面10bは、第1の曲面10aと第2の曲面10bとにそれぞれ接する互いに平行な一対の仮想平面の水平方向に対する傾きが増加すると、一対の仮想平面の間の間隔が増加するように、形成されている。
上部構造体4は、転動部材10の頂点10t及びその近傍に対向する部分に、凹部4xが形成されている。転動部材10は、頂点10t及びその近傍に、当接部10pが形成されている。当接部10pは、初期状態において、上部構造体4の凹部4x内に、凹部4xを形成する内面との間に間隔を設けて配置されている。
下部構造体2には、変形部として、第2の水平面2aから突出した突起2xが形成されている。転動部材10の下部には、係合部として、突起2xが嵌まり込んで係合する孔10qが形成されている。
図示していないが、上部構造体4と下部構造体2との間の上下方向隙間に免震装置が取り付けられ、上部構造体4は水平免震状態となっている。免震装置は適宜に選択すればよく、積層ゴム等の周知の構成のものを用いることができる。上部構造体4と下部構造体2との間に、水平方向の相対振動エネルギーを吸収するダンパーを設けてもよい。
次に、実施例1の免震構造物のフェイルセーフ機構の動作について説明する。
図1に示す初期状態から、上部構造体4が下部構造体2に対して水平方向に相対移動したときに、上部構造体4の下部構造体2に対する水平方向の相対移動距離(以下、「水平変位」ともいう。)が所定値に達するまで、水平変位は免震装置によって抑制される。
水平変位が増加して、転動部材10と上部構造体4との間の間隔がなくなると、上部構造体4の凹部4xの内周面が、転動部材10の当接部10pに当接し、転動部材10は回転を開始する。水平変位がさらに増加して、水平変位が所定値に達すると、転動部材10の第1の曲面10aが上部構造体4の第1の水平面4aとの接触を開始する。
水平変位が所定値を超えると、図2の要部断面図に示すように、上部構造体4の第1の水平面4aが転動部材10の第1の曲面10aに接しながら移動し、転動部材10の第2の曲面10aが下部構造体2の第2の水平面2aと接し、転動部材10は上部構造体4の第1の水平面4aと下部構造体2の第2の水平面2aとの間に挟まれた状態で回転する。
初期状態における転動部材10の第1の曲面10aと第2の曲面10bは、第1の曲面10aと第2の曲面10bとにそれぞれ接する互いに平行な一対の仮想平面の水平方向に対する傾きが増加すると、一対の仮想平面の間の間隔が増加するように形成されているため、転動部材10の回転に伴って、上部構造体4の第1の水平面4aと下部構造体2の第2の水平面2aとの間の間隔が広げられ、その結果、上部構造体4は上方に移動する。すなわち、水平変位の一部の成分が、上部構造体4の上下方向の変位に変換される。これによって、水平変位が所定値を超え、水平変位が免震装置の限界に近づいてきた場合に、水平変位の増加を抑制し、過大な水平変位による免震装置等の損傷を回避することができる。
例えば、免震装置の免震ゴムが線形変形域で挙動する場合、上部構造体は水平方向にのみ運動しているとみなせる。その運動は、運動エネルギー及び免震ゴムのひずみエネルギーの、2タイプのエネルギーで釣り合っていると考えられる。それぞれのエネルギーは、次の式(1a)及び(1b)で表すことができる。xは上部構造体の水平方向の変位、mは上部構造体の質量、kは免震ゴムのばね定数である。
Figure 0006152599
転動部材が回転して上部構造体が上方に移動すると、上部構造体の位置エネルギーの要素も加え、3タイプのエネルギーで釣り合う。位置エネルギーは、次の式(2)で表すことができる。gは重力の加速度であり、hは上部構造体の上向きの変位である。
Figure 0006152599
水平方向の変位がxを超えると上部構造体の上下方向の変位が発生し始めると仮定すると、x≦xのとき、式(1a)、(1b)、(2)より、次の式(3)の運動方程式が成立する。
Figure 0006152599
式(3)は、運動エネルギーと免震ゴムのひずみエネルギーが位置エネルギーに変換されていることを意味している。上部構造体に上向きの変位を生じさせることによって、位置エネルギー:mghが増加すると、水平方向の変位:xが減少するため、上部構造体の水平方向の最大変位を減少させることができる。
次に、転動部材10の第1及び第2の曲面10a,10bの設計例について、図3を参照しながら説明する。
サイクロイドを用いて転動部材10の第1及び第2の曲面10a,10bを形成する場合を例に挙げて説明する。なお、転動部材10の第1及び第2の曲面10a,10bをサイクロイド以外の曲線を用いて形成することも可能である。
図3に示すサイクロイド80をy軸の周りに回転することによって、転動部材10の第1の曲面10aを形成する。この場合、y軸に垂直な断面が円形になり、転動部材がどの方向に回転しても同じ特性となるため、好ましい。もっとも、y軸に垂直な断面が、楕円形等の円形以外の形状になるようにすることも可能である。
サイクロイド80の方程式は、次の式(4a)及び(4b)で表せる。なお、サイクロイド80がy軸に関して対称となるように、x軸方向に−π移動させている。
Figure 0006152599
サイクロイド80と直線(接線)82との接点を(x,y)、直線82の傾きをΔとすると、直線は、次の式(5)で表せる。
Figure 0006152599
直線と原点(0,0)との間の距離をdとすると、dは、式(5)から導き出される次の式(6)によって、求めることができる。θは、接点(x,y)でのθの値である。
Figure 0006152599
また、頂点(0,2a)から接点(x,y)までのサイクロイド80の長さは、次の式(7)によって、求めることができる。
Figure 0006152599
第2の曲面10bについても、同様の式が成り立つ。なお、第1の曲面10aと第2の曲面10bは、aの値が同じサイクロイドで形成しても、aの値が異なるサイクロイドで形成してもよい。
式(6)を用いると、転動部材の回転に対応する上部構造体4の上下方向の変位を算出することができる。また、式(7)を用いると、転動部材の回転に対応する上部構造体の水平方向の変位を算出することができる。
次に、模型実験について、図4〜図8を参照しながら説明する。
図4は、実験装置50の概略側面図である。図5は、実験装置50の概略斜視図である。図4及び図5に示すように、実験装置50は、基礎フレーム20の上に、1層目の免震装置30を介して、1層目のフレーム22が支持され、1層目のフレーム22の上に、2層目の免震装置32及びシリンダ34を介して、2層目の矩形枠状のフレーム24が支持されている。
基礎フレーム20は矩形形状を有し、1層目及び2層目のフレーム22,24は矩形枠形状を有する。基礎フレーム20、1層目及び2層目のフレーム22,24は、鋼材を溶接した構造物である。
免震装置30,32及びシリンダ34は、1層目及び2層目のフレーム22,24の四隅付近にそれぞれ配置した。免震装置30,32には、天然積層ゴム型免震支承を用いた。シリンダ34は、上下方向にのみ自在に伸縮する。これにより、2層目のフレーム24が上向きに移動しても、免震装置30,32に引張力は作用しない。
基礎フレーム20上の2か所に台21を固定し、台21に対向するように、2層目のフレーム24に、鉄製の天板26を固定した。台21と天板26との間に、転動部材10を配置した。
図6は、模型実験に用いた転動部材10の断面図である。図中の寸法の単位は、mmである。転動部材10は、上下方向の軸10yのまわりを回転する形状を有し、上下方向の軸10yに垂直な断面は円形である。第1及び第2の曲面を形成する上下の曲線10m,10nは、中心10kを原点とし、水平方向の軸10x及び上下方向の軸10yを、x軸及びy軸として、前述の式(4a)及び(4b)で定義されるサイクロイドである。
天板26には、凹部として、円形の穴が形成され、この穴の内周面と、転動部材10の上部に形成された当接部10pとの間に隙間が形成されている。
転動部材10の下部に形成された孔10qの断面は、孔10qの下部両端10i,10jをそれぞれ中心とする半径74mmの円弧によって形成される。台21の上面21aには、転動部材10の孔10qに嵌まり込む形状の突起(図示せず)を形成し、突起に転動部材10の孔10qを嵌めて、転動部材10を位置決めした。
図4及び図5に示すように、実験装置50の基礎フレーム20を振動試験装置の振動台60に固定し、2層目のフレーム22の上に重り28を載せた状態で、神戸海洋気象台で観測された阪神淡路大地震のときの地震波に相当する振動を振動台60に加え、実験装置50の各部の変位を計測した。具体的には、図6において矢印で示すように、外部に設けたレーザー変位計を用いて、基礎フレーム20、1層目及び2層目のフレーム22,24の水平方向(図6においてx方向)の変位と、天板26の上下方向(図6においてz方向)の変位とを計測し、1層目のフレーム22に設けたレーザー変位計を用いて、1層目のフレーム22に対する2層目のフレーム24の上下方向(図6においてz方向)の変位を計測した。
図7及び図8は、実験結果のグラフである。横軸は、基礎フレーム20に対する2層目のフレーム24の水平方向の変位(各部の計測値の平均値)を示し、縦軸は、基礎フレーム20に対する2層目のフレーム24の上下方向の変位(各部の計測値の平均値)を示す。図7は、重り28が1tの場合であり、図8は、重り28が3tの場合である。図7及び図8から、重り28が重い方が実験結果は理論値に近づくことが分かる。このことから、免震構造物のフェイルセーフ機構の動作特性は摩擦力に依存しており、転動部材10に作用する面圧が重要であると考えられる。
以上に説明した実施例1の免震構造物のフェイルセーフ機構は、通常の範囲内ではこれまで通りの免震装置として機能し、水平変位が限界に近づいた場合にのみ、フェイルセーフ機構がその力を発揮する。エネルギー的には本機構は中立であり、弾性的に(線形)挙動するが、上下変位出現機構を免震装置の上部に組み込む際に、そこにダンパーを設置することによりエネルギー吸収をさせることも可能である。そのようなエネルギー吸収機構を組み込んだ場合には、上下動方向には制震構造として機能することになる。なお、生じる上下動は水平動の変位に比べて極めて小さく、本機構は大変優れたエネルギー変換機能を有しているということができる。
転動部材には、上部構造体の水平変位が所定値を超えたときにのみ、上部構造体の荷重が作用し、常時は、上部構造体の荷重が作用しない。そのため、上部構造体の荷重が転動部材に常に作用している場合に比べ、長期間の信頼性が高く、メンテナンスも容易になり、小型化も容易である。さらに、免震装置で支持された既設の建物に、免震構造物のフェイルセーフ機構を追加することも容易である。
次に、変形例1〜3について、図9〜図11を参照しながら説明する。
<変形例1> 図9の要部断面図に示すように、下部構造体2の第2の水平面2aに、変形部として、第2の水平面2aから後退した凹部2yを形成する。転動部材10uの下部に、係合部として、凹部2yに嵌まり込んで係合する突起10rを形成する。突起10rは、転動部材10uの回転に伴って、凹部2yとの係合が解除される。
<変形例2> 図10の要部断面図に示すように、上部構造体4の凹部4x内に配置される当接部をなくした転動部材10vを用いる。水平変位が所定範囲を超え、上部構造体4の第1の水平面4aが転動部材10vの第1の曲面10aに接すると、転動部材10vは回転を開始する。このとき、上部構造体4の第1の水平面4aと転動部材10vの第1の曲面10aとの間ですべりが発生すると、転動部材10vが回転を開始するタイミングが遅れる。
これに対し、実施例1の転動部材10のように当接部10pを設けると、転動部材10が回転を開始するタイミングが遅れることはないため、好ましい。
<変形例3> 図11の要部断面図に示すように、転動部材10と、下部構造体2の第2の水平面2aとの間に、皿ばね11aや、引張ばね11b等の弾性部材を配置して、傾いた転動部材10を、初期状態の姿勢に復帰させるように構成する。この場合、免震構造物のフェイルセーフ機構は、安定的に繰り返し動作可能となる。
<まとめ> 以上に説明したように、本発明の免震構造物のフェイルセーフ機構は、水平変位が免震装置の限界に近づいてきた場合に水平変位を抑制し、過大な水平変位による損傷を回避することができる。すなわち、過大な水平変位に対するフェイルセーフ機構として働き、ある限界が近づいてきた場合に変位抑制機能を発揮する。一方、水平変位が小さい範囲内では、免震装置の特性に影響を及ぼさない。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
例えば、転動部材の第1の曲面や、第2の曲面は、転動部材の上下方向の軸のまわりの全周に連続して形成する場合を例示したが、全周のうち一部分にのみ形成することも可能である。
近年大変多数建設されている免震構造物に応用することができる。特に都会で周囲に大きなクリアランスを取りづらい超高層免震マンションなどに活用することが期待される。また、究極の安全性を要求される原子力施設の免震化においても、このような機構を設けて最悪の場合でも想定した許容変形を超えないように準備しておく必要があり、本発明に相当するフェイルセーフ機構の設置は必要不可欠と考えられる。
2 下部構造体
2a 第2の水平面
2x 突起(変形部)
2y 凹部(変形部)
4 上部構造体
4a 第1の水平面
4x 凹部
10,10u,10v 転動部材
10a 第1の曲面
10b 第2の曲面
10i,10j 下部両端
10k 中心
10m,10n 曲線
10p 当接部
10q 孔(係合部)
10r 突起(係合部)
10t 頂点
10x,10y 軸
11a 皿ばね(弾性部材)
11b 引張ばね(弾性部材)
20 基礎フレーム
21 台
21a 上面
22 1層目のフレーム
24 2層目のフレーム
26 天板
28 重り
30,32 免震装置
34 シリンダ
50 実験装置
60 振動台
80 サイクロイド
82 直線

Claims (4)

  1. 下向きの第1の水平面を有する上部構造体と、
    前記第1の水平面に対向する上向きの第2の水平面を有する下部構造体と、
    前記上部構造体と前記下部構造体との間の上下方向隙間に取り付けられ、前記上部構造体を水平免震状態にする免震装置と、
    前記上部構造体の前記第1の水平面と、前記下部構造体の前記第2の水平面との間に配置され、前記第1の水平面に対向する凸状の第1の曲面と、前記第2の水平面に対向する凸状の第2の曲面とを有する転動部材と、
    を備え、
    前記上部構造体は、前記転動部材の頂点及びその近傍に対向する部分に、初期状態において前記転動部材の頂点及びその近傍との間に間隔を形成する凹部を有し、
    前記転動部材の前記第1の曲面と前記第2の曲面は、前記第1の曲面と前記第2の曲面とにそれぞれ接する互いに平行な一対の仮想平面の水平方向に対する傾きが増加すると、前記一対の仮想平面の間の間隔が増加するように形成され、
    前記下部構造体に対する前記上部構造体の水平方向の相対移動距離が所定値を超えると、前記上部構造体の前記第1の水平面が前記転動部材の前記第1の曲面に接し、前記転動部材が前記上部構造体の前記第1の水平面と前記下部構造体の前記第2の水平面との間に挟まれた状態で回転して、前記上部構造体を上方に移動させることを特徴とする、免震構造物のフェイルセーフ機構。
  2. 前記転動部材は、前記初期状態において前記上部構造体の前記凹部との間に間隔を設けて前記凹部内に配置される当接部を有し、前記当接部は、前記下部構造体に対する前記上部構造体の水平方向の前記相対移動距離が所定値に達すると、前記凹部を形成する内面に当接することを特徴とする、請求項1に記載の免震構造物のフェイルセーフ機構。
  3. 前記下部構造体は、前記第2の水平面から突出又は後退した変形部を有し、
    前記転動部材は、前記転動部材の回転に伴って解除可能に前記変形部に係合する係合部を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の免震構造物のフェイルセーフ機構。
  4. 回転した前記転動部材を前記初期状態に戻す弾性部材を、さらに備えたことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の免震構造物のフェイルセーフ機構。
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