以下、図1〜図7を参照して、この発明を電子ギターに適用した一実施形態について説明する。
この電子ギターは、図1に示すように、ギター本体1を備えている。このギター本体1は、胴部2とネック3とで構成されている。また、このギター本体1は、複数(この実施形態では6本の)の弦4が、胴部2およびネック3に亘って張り渡されるように構成されている。
この場合、胴部2のほぼ中央部には、図1に示すように、複数の弦4の各一端部4aが取り付けられるブリッジ部5が設けられている。このブリッジ部5の近傍には、複数の弦4の各弦振動を電気信号として検出するピックアップ部6が設けられている。また、胴部2には、電子回路部7および表示部8が設けられている。電子回路部7は、電子ギターに必要な各種の電子部品を備えている。表示部8は、電子ギターによる演奏に必要な各種の情報を表示するように構成されている。
一方、ネック3の先端部(図1では右端部)には、図1に示すように、弦支持部9を介してヘッド10が設けられている。弦支持部9は、複数の弦4を等間隔で支持するように構成されている。ヘッド10には、複数の弦4の各他端部4bがそれぞれ弦張調整可能に取り付けられる複数のペッグ11が設けられている。これにより、複数の弦4は、胴部2のブリッジ部5とヘッド10との間に張り渡されるように構成されている。これら複数の弦4は、それぞれ導電性を有する線材であり、電気抵抗をもって電流が流れるように構成されている。
また、ネック3には、図1および図2に示すように、指板12が胴部2とヘッド10との間に設けられている。この指板12は、木製または合成樹脂製の帯状板であり、複数の弦4の張り渡し方向、つまりネック3の長手方向に沿って複数(この実施形態では22個)のフレット13が所定間隔で設けられている。これら複数のフレット13は、それぞれ銅や洋銀などの電気抵抗の小さい、導電性を有する金属で形成され、図3に示すように、指板12に設けられた複数の取付孔12aにそれぞれ取り付けられている。
すなわち、このフレット13は、図2および図3に示すように、半円柱状に形成されたフレット本体部13aと、このフレット本体部13aの平面である下面に設けられた足部13bとを有し、この足部13bが指板12の取付孔12aに打ち込まれて抜け止めされた状態で取り付けられるように構成されている。この場合、指板12の取付孔12aは、指板12の上下に貫通するスリット状の長孔であり、複数の弦4の張り渡し方向に対して直交する方向である弦4の配列方向、つまりネック3の長手方向と直交する方向に沿って設けられている。
これにより、フレット13は、図2および図3に示すように、足部13bが指板12の上方から取付孔12aに打ち込まれて、フレット本体部13aが指板12の上面に突出した状態で、指板12に取り付けられることにより、フレット本体部13aの円弧面である上面に複数の弦4がそれぞれ押し付けられるように構成されている。
また、この指板12とネック3との間には、図2および図3に示すように、一対の配線基板14が設けられている。この場合、指板12の下面には、一対の基板収納部12bがネック3の長手方向に沿って並列に設けられている。一対の配線基板14は、それぞれ帯状の細長い板であり、指板12の一対の基板収納部12b内に収納された状態で、ネック3上に配置されるように構成されている。
また、一対の配線基板14の上面には、図2および図3に示すように、複数の電極パッド15が複数のフレット13にそれぞれ対応して設けられている。また、これら一対の配線基板14の上面には、複数の電極パッド15をそれぞれ配線基板14の一端部、つまり胴部2側に位置する端部に導くための複数の配線パターン16が設けられている。これら複数の配線パターン16は、配線基板14の端部に設けられたコネクタ17に接続され、このコネクタ17を介して胴部2内の電子回路部7と電気的に接続されている。
また、複数のフレット13と複数の電極パッド15との間には、図3に示すように、その両者をそれぞれ電気的に接続する複数の弾性導電部材18が設けられている。この弾性導電部材18は、導電性を有するゴム、あるいは導電ゴムと絶縁ゴムとを交互に張り合わせたゼブラタイプのインターコネクタなどからなり、フレット13と電極パッド15とに弾力的に接触して、その両者を電気的に接続するように構成されている。
このような複数の電極パッド15を有する配線基板14、複数の弾性導電部材18、複数のフレット13、および複数の弦4によって、押弦センサ19が構成されている。すなわち、この押弦センサ19は、図2および図3に示すように、弦4が押されてフレット13に押し付けられると、この押された弦4とフレット13とが電気的に導通すると共に、このフレット13が配線基板14の電極パッド15に弾性導電部材18を介して導通するように構成されている。
これにより、押弦センサ19は、図2および図3に示すように、押された弦4と、この弦4が導通するフレット13に対応する電極パッド15とによって、押弦位置に対応する音高を電気信号として検出するように構成されている。この場合、ネック3の内部には、図2に示すように、ネック3の反りを調整するための反り調整部材20が設けられている。すなわち、ネック3には、その下部から内部に向けて切り込まれた切込溝21が、ネック3の長手方向に沿って設けられている。
反り調整部材20は、ネック3の切込溝21内に配置された状態で、両端部がネック3の両端部に締め付け可能に取り付けられている。これにより、反り調整部材20は、図2に示すように、その両端部の締め付けを調整することにより、ネック3の反りを調整するように構成されている。また、この切込溝21は、その下部に蓋部材22が嵌め込まれることにより、反り調整部材20が外部から見えないように、蓋部材22によって塞がれるように構成されている。
ところで、複数の弦4の各一端部4a(図1では左端部)が取り付けられるブリッジ部5は、図1および図4に示すように、胴部2の中央部に設けられたブリッジ孔23内に配置されるブリッジ本体24と、このブリッジ本体24上に複数の弦4それぞれに対応して配置された複数のブリッジ駒25とを備えている。
ブリッジ本体24は、図4に示すように、金属製のブリッジブロック26と金属製のブリッジベース27とを有している。ブリッジブロック26は、胴部2のブリッジ孔23内に配置されて、胴部2から上方に突出するように構成されている。また、ブリッジベース27は、胴部2から上方に突出したブリッジブロック26上に設けられている。
また、ブリッジ本体24は、図4に示すように、ブリッジブロック26の下部にばね部材28が取り付けられ、このばね部材28のばね力によってネック3側(図4では左端部)に向けて付勢された状態で、ブリッジベース27の先端部27aつまりネック3側に位置する先端部27aが胴部2上に設けられたピン部材29に押し当てられていることにより、胴部2のブリッジ孔23内にブリッジブロック26が浮いた状態で揺動可能に取り付けられている。
この場合、ブリッジ本体24には、図1に示すように、トレモロアーム30が取り付けられている。このトレモロアーム30は、これを操作して、ブリッジ本体24を弦4の張り渡し方向およびこれと直交する方向に揺動させることにより、複数の弦4の張力を変化させて、効果音を付加させるように構成されている。なお、胴部2の下部には、ブリッジ孔23を塞ぐ裏蓋23aが取り付けられている。
一方、複数のブリッジ駒25は、図4および図5に示すように、それぞれ板状の駒本体31と、この駒本体31の前端部(図4では左端部)に設けられた山形状の弦支持部32と、駒本体31の後端部(図4では右端部)に設けられた板状の突起部33とを備え、ブリッジベース27上に絶縁シート34を介して配置されるように構成されている。これら複数のブリッジ駒25は、ユリア樹脂などの絶縁性を有する合成樹脂によって形成され、複数の弦4が相互に導通しないように構成されている。
また、このブリッジ駒25の弦支持部32には、図4および図5に示すように、弦音調整ねじ35が取り付けられている。この弦音調整ねじ35は、弦支持部32にその上部から下部に突き抜けた状態で螺合している。これにより、弦音調整ねじ35は、これを回して弦音調整ねじ35の下端部をブリッジ駒25の下側に出没させることにより、ブリッジベース27上において絶縁シート34を介して、ブリッジ駒25を上下に変位させて弦4の音を調整するように構成されている。
また、ブリッジ駒25の突起部33には、図4および図5に示すように、オクターブ調整ねじ36が取り付けられている。このオクターブ調整ねじ36は、ブリッジベース27の取付部37に設けられた挿入孔37aを通して、ブリッジ駒25の突起部33に設けられたねじ孔33aに螺合している。この場合、オクターブ調整ねじ36の外周には、コイルばね38がブリッジ駒25の突起部33とブリッジベース27の取付部37との間に位置して設けられている。
このコイルばね38は、図4に示すように、ブリッジ駒25の突起部33を前側(図4では左側)に向けて押し出す方向に付勢することにより、オクターブ調整ねじ36の頭部36aをブリッジベース27の取付部37の外面(図4では右側)に押し付けるように構成されている。このため、ブリッジ駒25の突起部33とブリッジベース27の取付部37とは、コイルばね38のばね力によって互いに離れる方向に付勢されている。
これにより、オクターブ調整ねじ36は、図4に示すように、これを回すと、頭部36aがブリッジベース27の取付部37に当接した状態で回転すると共に、先端のねじ部がブリッジ駒25の突起部33のねじ孔33a内を回転しながら螺旋移動することにより、ブリッジ駒25をブリッジベース27の前後方向(図4では左右方向)に移動させるように構成されている。
すなわち、オクターブ調整ねじ36は、図4に示すように、これを回してブリッジ駒25の突起部33を前側(図4では左側)に向けて押し出す際に、コイルばね38のばね力によってブリッジ駒25が前側に移動して弦4のオクターブを下げる方向に調整するように構成されている。
また、このオクターブ調整ねじ36は、図4に示すように、これを回してブリッジ駒25の突起部33をコイルばね38のばね力に抗して後側(図4では右側)に向けて引き寄せると、ブリッジ駒25が後側に移動して弦4のオクターブを上げる方向に調整するように構成されている。
ところで、複数の弦4は、図4および図5に示すように、その各一端部4aがブリッジ駒25の駒本体31の弦挿入孔31a、絶縁シート34の弦挿入孔34a、およびブリッジベース27の弦挿入孔27cを通して、ブリッジブロック26の弦取付孔39内にそれぞれ挿入された状態で、取り付けられるように構成されている。
この場合、複数の弦4の各一端部4aには、図4および図5に示すように、導電性を有するエンドボール40がそれぞれ取り付けられている。また、複数の弦4の各一端部4aは、絶縁チューブ41を介してブリッジブロック26の弦取付孔39内にそれぞれ挿入されていることにより、ブリッジブロック26およびブリッジベース27に接触して導通しないように構成されている。
この場合、ブリッジブロック26の弦取付孔39は、図4に示すように、上部が小径孔39aに形成され、下部が大径孔39bに形成され、この小径孔39aと大径孔39bとの境にテーパ部39cがくびれた状態で形成されている。絶縁チューブ41は、塩化ビニル樹脂(PVC)などの絶縁性を有する合成樹脂で形成されている。
この絶縁チューブ41は、図4および図5に示すように、ブリッジブロック26の弦取付孔39と同様、弦4が挿入する小径孔部41aと、エンドボール40が挿入する大径孔部41bとを有し、この小径孔部41aと大径孔部41bとの境にテーパ部41cがくびれた状態で形成されている。
これにより、絶縁チューブ41は、図4および図5に示すように、大径孔部41bがブリッジブロック26の弦取付孔39の大径孔39b内に挿入されて、テーパ部41cがブリッジブロック26の弦取付孔39のテーパ部39cに当接した状態で、小径孔部41aがブリッジブロック26の弦取付孔39の小径孔39aおよびブリッジベース27の弦挿入孔27cに挿入されるように構成されている。
また、この絶縁チューブ41は、図4および図5に示すように、その内面に導電層42が設けられた構成になっている。これにより、絶縁チューブ41は、その大径孔部41b内にエンドボール40が挿入され、この挿入されたエンドボール40がテーパ部41cの内面の導電層42に当接すると、このエンドボール40が導電層42と導通するように構成されている。
さらに、この絶縁チューブ41は、図5に示すように、その下端部に接続クリップ43が導電層42を介して取り付けられ、この接続クリップ43が接続ケーブル44によって電子回路部7と電気的に接続されていることにより、導電層42に電流が供給されるように構成されている。これにより、複数の弦4は、それぞれ絶縁チューブ41の導電層42に供給された電流がエンドボール40を介して流れるように構成されている。
この場合、複数の弦4は、図4および図5に示すように、絶縁チューブ41によってブリッジ部5のブリッジ本体24に接触することがなく、ブリッジブロック26の弦取付孔39、ブリッジベース27の弦挿入孔27c、絶縁シート34の弦挿入孔34a、およびブリッジ駒25の駒本体31の弦挿入孔31aを通り、ブリッジ駒25の弦支持部32上に押し付けられた状態で、相互に導通することなく、張り渡されるように構成されている。
次に、図6に示されたブロック図を参照して、この電子ギターの回路構成について説明する。
この電子ギターの回路構成は、回路全般を制御するCPU(中央演算処理装置)45と、予め定められたプログラムおよび入力されたデータを格納するメモリ部46と、音量、音色、モード切替などの各種スイッチを備えた操作スイッチ部47と、複数の弦4の押弦位置を検出する押弦センサ19と、複数の弦4の弾弦操作による弦振動を電気信号として検出するピックアップ部6とを備えている。
CPU45は、この実施形態においては、押弦センサ19により検知された押弦位置により発音すべき楽音の発音開始時の音高を決定する。また、CPU45は、ピックアップ部6からの弦振動に基づいて楽音の発音タイミングおよび発音されている楽音の音高を制御する。
また、この電子ギターの回路構成は、CPU45からの指令に基づいて各種の情報を表示する表示部8と、CPU45からの音高および発音タイミング指令に基づいて楽音データを生成する音源部48と、この音源部48で生成された楽音データにエフェクトを付加するエフェクト部49と、このエフェクト部49でエフェクトの付加された楽音データをアナログ信号に変換してオーディオ機器に出力するD/A変換部50と、CPU45からの指令に基づいて外部機器との間でデータの授受を行うインターフェイス(I/F)51とを備えている。
この場合、押弦センサ19は、図7に示すように、複数(6本)の弦4と複数(22個)のフレット13とでXY座標のマトリクススイッチが構成され、このXY座標のスイッチスキャンを行うことにより、複数の弦4の押弦位置に応じたスイッチ信号を出力するように構成されている。すなわち、この押弦センサ19は、複数のフレット13に対応する複数の電極パッド15それぞれから時分割に順次出力された出力信号に基づいてX座標に対応するX座標信号を出力するX信号制御部52と、複数の弦4それぞれから順次時分割に出力された出力信号に基づいてY座標に対応するY座標信号を出力するY信号制御部53とを有している。
これにより、押弦センサ19は、複数の弦4のいずれかが押されて複数のフレット13のいずれかに押し付けられると、押し付けられた弦4とフレット13とが導通し、これに対応する配線基板14の電極パッド15と弦4とに電流が流れて、弦4が導通したフレット13のX座標位置がX信号制御部52によって指定されると共に、フレット13に導通した弦4のY座標位置がY信号制御部53によって指定され、これにより押弦された弦4およびこれに対応するフレット13のXY座標位置が指定されるように構成されている。
すなわち、この押弦センサ19は、押弦された弦4およびこれに対応するフレット13のXY座標位置が指定されると、X信号制御部52が指定されたフレット13のX座標に対応する位置信号を出力すると共に、Y信号制御部53が指定された弦4のY座標に対応する位置信号を出力し、これにより押弦位置に対応する音高をXY座標位置として検出して出力するように構成されている。
次に、このような電子ギターの作用について説明する。
この電子ギターで演奏する際には、アコースティックギターと同様、ネック3の指板12に張設された複数の弦4を指で押えて複数のフレット13のいずれに押し付けながら、このフレット13に対応する弦4を弾く。このときには、押弦センサ19によって押弦位置に対応する音高が検出され、ピックアップ部6によって押された弦4の弦振動が検出され、これらに基づいて楽音が発生される。
すなわち、押弦センサ19は、複数の弦4のいずれかが押されて複数のフレット13のいずれかに押し付けられると、弦4とフレット13とが導通し、これに対応する配線基板14の電極パッド15と弦4とに電流が流れる。これにより、弦4が導通したフレット13のX座標位置がX信号制御部52によって指定されると共に、フレット13に導通した弦4のY座標位置がY信号制御部53によって指定され、これにより音高情報が決定される。
また、ピックアップ部6は、フレット13に導通した弦4が弾かれると、その弾かれた弦4の振動を検出する。そして、押弦センサ19によって検出された音高情報と、ピックアップ部6によって検出された弦振動情報とによって、CPU45が音源部48に指令を与えて音源データを生成させ、この音源データに基づいてエフェクト部49で楽音データを生成させてオーディオ機器に出力し、楽音を発生させる。
このように、この電子ギターによれば、胴部2とネック3とを有するギター本体1に張設された導電性を有する複数の弦4と、ギター本体1のネック3上に設けられた指板12と、この指板12上に複数の弦4の張り渡し方向に沿って所定間隔で設けられた金属製の複数のフレット13と、指板12とネック3との間に設けられ、かつ複数のフレット13にそれぞれ対応する複数の電極パッド15を有する配線基板14と、複数のフレット13と複数の電極パッド15とに弾力的に接触してその両者をそれぞれ電気的に接続する複数の弾性導電部材18と、を備えているので、弦4の操作に違和感なく、正確にかつ確実に楽音情報を検出して良好に演奏ができる。
すなわち、この電子ギターでは、ギター本体1に張り渡された弦4を指で押えながら、同じ弦4を弾いて演奏することができるほか、指で押えられた弦4を金属製のフレット13に押し付けることができるので、フレット13に押し付けられた弦4を配線基板14の電極パッド15に弾性導電部材18によって弾力をもって確実に導通させることができる。このため、弦4の操作に違和感なく、正確にかつ確実に楽音情報を検出して良好に演奏することができる。
この場合、金属製のフレット13と配線基板14の電極パッド15との間には、導電性を有するゴム、あるいは導電ゴムと絶縁ゴムとを交互に張り合わせたゼブラタイプのインターコネクタなどからなる弾性導電部材18が、フレット13と電極パッド15とに弾力的に接触した状態で配置されているので、この弾性導電部材18によってフレット13と電極パッド15とを電気的に接続することができる。
このため、金属製のフレット13が外部から衝撃を受けると、その衝撃を弾性導電部材18の弾力によって吸収することができるので、フレット13が外部から衝撃を受けても、接触不良を起さず、フレット13と電極パッド15とを確実にかつ良好に接続することができると共に、衝撃によって配線基板14およびその各電極パッド15が破損するのを確実にかつ良好に防ぐことができる。
また、弾性導電部材18は、指板12に設けられたフレット13と配線基板14に設けられた電極パッド15との間に配置するだけで、その両者に弾力的に接触した状態で、その両者を電気的に接続することができるので、組み付け作業が簡単で容易にでき、これにより生産効率が良く、低コスト化を図ることができる。
なお、上述した実施形態では、指板12に設けられた複数のフレット13と、配線基板14に設けられた複数の電極パッド15とを、弾性導電部材18によって電気的に接続した場合について述べたが、これに限らず、例えば図8に示す第1変形例のように、ばね部材60によって電気的に接続するように構成しても良い。
すなわち、このばね部材60は、図8に示すように、導電性を有するコイルばねであり、複数のフレット13と配線基板14の複数の電極パッド15との間に配置されている。これにより、ばね部材60は、その上端部が複数のフレット13における各足部13bの下面にそれぞれ弾接し、下端部が配線基板14の複数の電極パッド15にそれぞれ弾接することにより、複数のフレット13と複数の電極パッド15とをそれぞれ電気的に接続するように構成されている。
このようなばね部材60を用いても、上述した実施形態と同様、ばね部材60によって複数のフレット13と複数の電極パッド15とをそれぞれ電気的に接続することができると共に、金属製のフレット13が外部から衝撃を受けると、その衝撃をばね部材60の弾力によって吸収することができるので、上述した実施形態と同様、フレット13が外部から衝撃を受けても、接触不良を起さず、フレット13と電極パッド15とを確実にかつ良好に接続することができると共に、衝撃によって配線基板14およびその各電極パッド15が破損するのを確実にかつ良好に防ぐことができる。
また、上述した実施形態およびその第1変形例では、指板12の複数のフレット13と配線基板14の複数の電極パッド15とを、弾性導電部材18または導電性を有するばね部材60によって電気的に接続した場合について述べたが、これに限らず、例えば図9および図10に示す第2変形例のように構成しても良い。
すなわち、この第2変形例は、図9および図10に示すように、指板12の複数のフレット13と配線基板14の複数の電極パッド15とを電気的に接続する接続部材として、複数のフレット13にそれぞれ取り付けられた金属部材65と、この金属部材65に設けられて複数の電極パッド15にそれぞれ弾力的に接触して導通する弾性導通部66と、を有した構成になっている。
この場合、複数のフレット13の各足部13bには、図9および図10に示すように、山形状の係止突起67が側方に突出して設けられている。金属部材65は、導電性に優れ、かつフレット13の足部13bに対して結合性の良い金属からなり、フレット13の足部13bが挿入するカシメ部65aが設けられ、このカシメ部65aがカシメ加工によって足部13bに取り付けられるように構成されている。
すなわち、このカシメ部65aは、図10に示すように、足部13bが挿入する凹部状に形成され、その上部の内周面に足部13bの係止突起67を乗り越えて係止される係止部65bが形成されている。これにより、カシメ部65aは、カシメ冶具を用いて、内部に足部13bを挿入させると、係止部65bが足部13bの係止突起67を乗り越えて係止され、この状態でカシメ加工によって係止部65bが変形して足部13bに固着されることにより、電気的に導通した状態で接合されるように構成されている。
また、弾性導通部66は、図10に示すように、金属部材65の下端部にジグザグ状または螺旋状に切込溝66aを形成することにより、上下方向に弾性変形するように構成されている。この弾性導通部66は、その下端部に接触リング66bが取り付けられるように構成されている。この場合、配線基板14は、図9に示すように、その下面に複数の電極パッド15および複数の配線パターン16が形成され、複数の電極パッド15にそれぞれ貫通孔14aが配線基板14の上下に貫通して設けられ、この貫通孔14aに弾性導通部66が上方から挿入するように構成されている。
これにより、弾性導通部66は、図9および図10に示すように、金属部材65をフレット13の足部13bにカシメ加工によって取り付けた状態で、弾性導通部66の下部が配線基板14の貫通孔14aに上方から挿入して、配線基板14の下側に突出し、この突出した部分に接触リング66bが取り付けることにより、この接触リング66bが弾性導通部66の弾性力によって配線基板14の下側に設けられた電極パッド15に弾接して導通するように構成されている。
このため、このような弾性導通部66が一体に形成された金属部材65を用いても、上述した実施形態と同様、金属部材65がフレット13の足部13bにカシメ加工によって取り付けられて導通し、弾性導通部66の接触リング66bが配線基板14の下面の電極パッド15に弾接して導通しているので、金属部材65とその弾性導通部66とによって、複数のフレット13と複数の電極パッド15とをそれぞれ電気的に接続することができる。
また、この状態で金属製のフレット13が外部から衝撃を受けた際には、その衝撃を弾性導通部66の弾力によって吸収することができるので、上述した実施形態と同様、フレット13が外部から衝撃を受けても、接触不良を起さず、フレット13と電極パッド15とを確実にかつ良好に接続することができると共に、衝撃によって配線基板14およびその各電極パッド15が破損するのを確実にかつ良好に防ぐことができる。
この場合、金属製のフレット13が外部から強い衝撃を受け、その強い衝撃を弾性導通部66で吸収しきれないときには、弾性導通部66が接触リング66bを押し下げて、接触リング66bを電極パッド15から下側に離すことができるので、フレット13が外部から強い衝撃を受けても、配線基板14およびその各電極パッド15が破損するのを確実にかつ良好に防ぐことができる。
なおまた、上述した実施形態およびその各変形例では、電子ギターに適用した場合について述べたが、必ずしも電子ギターに適用する必要がなく、例えば電子マンドリン、電子ウクレレ、電子三味線などの各種の電子弦楽器に広く適用することができる。
以上、この発明の一実施形態およびその各変形例について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、楽器本体と、この楽器本体に張り渡された導電性を有する複数の弦と、これら複数の弦の下側に位置する前記楽器本体上に設けられた指板と、この指板上に前記複数の弦の張り渡し方向に沿って所定間隔で設けられた導電性を有する複数のフレットと、前記指板と前記楽器本体との間で、かつ前記複数のフレットにそれぞれ対応して設けられた配線部と、前記複数のフレットと前記配線部との少なくとも一方に弾力的に接触してその両者をそれぞれ電気的に接続する複数の接続部材と、を備えていることを特徴とする電子弦楽器である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子弦楽器において、前記配線部は、前記指板と前記楽器本体との間に設けられ、かつ前記複数のフレットにそれぞれ対応する複数の電極部を有する配線基板を有することを特徴とする電子弦楽器である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電子弦楽器において、前記接続部材は、前記フレットと前記電極部とに弾力的に接触する弾性導電部材であることを特徴とする電子弦楽器である。
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電子弦楽器において、前記接続部材は、前記フレットと前記電極部とに弾力的に接触する導電性を有するばね部材であることを特徴とする電子弦楽器である。
請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電子弦楽器において、前記接続部材は、前記フレットに取り付けられた金属部材と、この金属部材に設けられて前記電極部に弾力的に接触して導通する弾性導通部と、を有していることを特徴とする電子弦楽器である。