以下、添付図面を参照して本願の開示するコンバインの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、コンバイン1の全体説明図である。なお、図1には、コンバイン1の概略左側面(一部断面)を示している。また、以下では、図1に示すように、コンバイン1の前進方向を前後方向の「前」、コンバイン1の後進方向を前後方向の「後」といい、鉛直方向の上下を上下方向の「上」および「下」という。また、コンバイン1の前方へ向かって、右側を左右方向の「右」、左側を左右方向の「左」という(図3参照)。
また、本実施形態に係るコンバイン1は、たとえば、大豆、そば、麦などの穀稈を、圃場を走行しながら収穫するいわゆる汎用コンバインである。図1に示すように、コンバイン1は、走行装置3と、刈取前処理装置4と、脱穀装置5と、グレンタンク6と、排出筒7とを備えている。走行装置3は、機体フレーム2の下方に設けられ、左右一対のクローラによって機体を走行させる。
刈取前処置装置4は、機体フレーム2の前方に設けられ、圃場の穀稈を収穫する。脱穀装置5は、機体フレーム2の上方に設けられ、フィーダハウス10によって搬送されてきた穀稈を脱穀し、さらに、脱穀した穀粒を選別する。グレンタンク6は、機体フレーム2の上方、脱穀装置5の右方に設けられ、脱穀装置5によって選別された穀粒を貯留する。排出筒7は、グレンタンク6に貯留された穀粒を機体の外部へ排出する。また、コンバイン1は、機体フレーム2の上方に操縦席9を備えている。
次に、図2および図3を参照して刈取前処理装置4について説明する。図2および図3は、刈取前処理装置4の説明図である。なお、図2には、刈取前処理装置4の概略左側面(一部断面)を示し、図3には、刈取前処理装置4の概略平面(一部断面)を示している。また、図3においては、掻込装置40を省略している。図2および図3に示すように、刈取前処理装置4は、フィーダハウス10と、オーガ装置20と、第1刈刃装置(横刈刃装置)30と、掻込装置40とを備えている。
フィーダハウス10は、オーガ装置20と脱穀装置5との間に設けられ、オーガ装置20によって集められた穀稈を脱穀装置5へ搬送する装置である。フィーダハウス10の前部には、オーガ装置20および掻込装置40へエンジンE(図4参照)の回転動力を伝達するスプロケットが装着された軸11と、第1刈刃装置(横刈刃装置)30および後述する縦刈刃装置50へエンジンEの回転動力を伝達するスプロケットが装着された軸12とが上下に所定間隔をあけて設けられている。
なお、図示しないが、フィーダハウス10の上部(上面)には、藁屑が堆積することを防止するために、オーガ装置20の後端部の上面とフィーダハウス10の前端部の上面とを覆うような板材が取り付けられてもよい。
図2および図3に示すように、オーガ装置20は、機体の左右幅と略同等の左右幅を有し、フィーダハウス10の前方に設けられ、掻込装置40によって掻き込まれた穀稈を一側に寄せ集めてフィーダハウス10へ引き継ぐ装置である。オーガ装置20は、刈取枠体(オーガフレーム)21と、送込口22と、掻込オーガ23とを備えている。刈取枠体、すなわち、オーガフレーム21は、左右一対の側板24,24と、側板24,24の後面を連結する後板25と、側板24,24の一部下面と後板25の下面とを連結する底板26とを備え、バケット状に形成されている。
また、側板24,24の前端部には、圃場の植立穀稈を分草する分草体27が設けられ、後板25の左側部には、穀稈をフィーダハウス10に搬送する送込口22が設けられ、底板26の前端部には、穀稈を株元付近から切断する第1刈刃装置(横刈刃装置)30が設けられている。
なお、図3に示すように、オーガフレーム21の側板24,24は、前後に分割されており、バケット状の構造体の一部を形成している後側側板24bと、分草体27が取り付けられた前側側板24aとを有している。前側側板24aの前端部には、機体の前後方向と交差する平坦面が形成され、この平坦面と、分草体27の後端部に形成され機体の前後方向と交差する平坦面とを突き合わせた状態でボルトなどの締結具によって連結されている。また、図3に示すように、植立穀稈の分草をより効率的に行うために、たとえば、一方の分草体27の後部を揺動アーム28(図2参照)に取り付けて、分草体27の前部を左右に揺動させる構成としてもよい。
また、図2に示すように、揺動アーム28は、先端部が後述する可動刃32(図3参照)の基部に連結され、後端部が軸13に対して揺動アーム28が略直交する姿勢となるように軸13の先端部に連結されている。
また、図2に示すように、側板24,24の上面は、前から後にかけて上り傾斜して形成されている。側板24,24の下面は、前から中途まで略水平に形成されているとともに、中途から後まで下方へ円弧状に突出して形成されている。また、図2および図3に示すように、後板25は、略長方形に形成されている。また、図2に示すように、底板26は、側板24,24の下面に沿って前から中途まで略水平に形成されているとともに、中途から後まで下方へ円弧状に突出して形成されている。
なお、オーガフレーム21は、側板24,24と後板25とを溶接によって一体的に形成されてもよいし、切断や折曲加工によって一体形成されてもよい。また、側板24などの形状は、上述したような形状に限定されることはなく、用途に応じて任意に形成することができる。
掻込オーガ23は、オーガフレーム21の左右の側板24,24に回転自在に軸支された軸23aに取り付けられている。掻込オーガ23の外周には、掻込装置40によって掻い込まれた穀稈を送込口22の前方に寄せ集める向きに傾斜した搬送螺旋23bが設けられている。また、掻込オーガ23の送込口22に対向する部位には、穀稈の滞留を防止するために複数の掻込フィンガ23cが出没自在に設けられている。
掻込フィンガ23cは、軸23aの重心に対して偏心した状態で、軸23aと一体で回転するクランク軸部23dに基部が回転自在に取り付けられ、クランク軸部23dの偏心運動によって掻込オーガ23の外周に設けられた穴から出没する。なお、掻込オーガ23の穴には、掻込フィンガ23cを円滑に摺動させるためにガイド部材23eが設けられている。
図2および図3に示すように、第1刈刃装置、すなわち、横刈刃装置30は、掻込装置40によって掻き込まれた植立穀稈の株元付近を切断して、穀稈を刈り取る装置である。図3に示すように、横刈刃装置30は、オーガフレーム21の底板26の前端部に左右にわたって設けられている。
図3に示すように、横刈刃装置30は、穀稈の株元を保持する、刃幅が狭く刃長が長いフィンガ状の複数の下刃31aを有する固定刃31と、固定刃31の後部に連結されたアングル鋼材などの横刈刃プレート33と、固定刃31に形成された溝を左右方向に摺動する、刃幅が広く刃長が短い三角形状の複数の上刃32aを有する可動刃32とを備えている。
図2に示すように、掻込装置40は、オーガ装置20の上方に設けられ、たとえば、倒伏している穀稈、丈が低い穀稈、丈が高い穀稈などを掻き込む装置である。掻込装置40は、掻込リール41と、掻込リール41を支持する支持アーム42とを備えている。なお、図示しないが、掻込装置40は、オーガ装置20の左右幅と略同等の左右幅を有している。
掻込リール41は、左右方向から見て五角形状に形成され、5箇所の各隅部にタイン支持杆43が設けられている。また、タイン支持杆43には、左右方向に所定間隔をあけて複数のリールタイン44が吊り下げられている。
支持アーム42は、掻込リール41を上下に移動可能に支持している。支持アーム42の基端部は、オーガフレーム21の左右の側板24,24に架け渡されて設けられた軸部45に回転自在に取り付けられている。また、支持アーム42の先端部には、掻込リール41が回転自在に取り付けられる軸部46が設けられている。なお、図示しないが、支持アーム42の中間部は、支持アーム42を上下に昇降させる油圧シリンダなどの昇降装置に連結されている。
図2および図3に示すように、刈取前処理装置4は、横刈刃装置30に加えて縦刈刃装置50をさらに備えている。縦刈刃装置50は、オーガフレーム21の左方に設けられ、左側側板24の上方において絡み合った穀稈を切断する装置である。縦刈刃装置50は、上端部が掻込リール41の軸部46よりも前方に設けられ、下端部が分草体27よりも後方に設けられている。また、縦刈刃装置50は、上端部から下端部へ向かって緩やかに上り傾斜して設けられている。
また、縦刈刃装置50は、丈が高い穀稈などを保持する、刃幅が狭く刃長が長いフィンガ状の複数の左刃51aを有する固定刃51と、固定刃51の後部に連結されたアングル鋼材などの縦刈刃プレート53と、固定刃51に形成された溝を左右方向に摺動する、刃幅が広く刃長が短い三角形状の複数の右刃52aを有する可動刃52とを備えている。
なお、図2に示すように、縦刈刃装置50において、左刃51aの下方に穀稈が詰まることを防止するために、固定刃51の最下端に位置する左刃51aaがオーガフレーム21の左側側板24の上面と平行、かつ、同一高さで配置されている。
また、縦刈刃装置50の縦刈刃プレート53は、上端部がオーガフレーム21の左側板24の左面から前方および上方へ向かって突出して設けられた支持フレーム54の先端部にボルトなどの締結具によって取り付けられ、下端部がオーガフレーム21の左側側板24の左面の前部にボルトなどの締結具によって取り付けられている。
また、支持フレーム54の基部には、オーガフレーム21の左側側板24の左面に支持された支持部55の溝に嵌合して刈取り後の穀稈と刈取り前の穀稈との絡まりを防止するために、縦刈刃プレート53と支持フレーム54との間に金属製やプラスチック製のカバー56が設けられている。
また、図2に示すように、刈取前処理装置4は、ガイド60(第1ガイド61および第2ガイド62)をさらに備えている。ガイド60は、オーガフレーム21と縦刈刃装置50との間に形成される隙間に穀稈が詰まることを防止し、かつ、揺動アーム28および揺動アーム57の前方に穀稈が堆積することを防止するために、左側の分草体27の左面に設けられている。第1ガイド61は、分草体27の前部から後方へ向けて上り傾斜して設けられている。第2ガイド62は、分草体27の中途部から後方へ向けて略水平に延伸して設けられている。
なお、第1ガイド61は、縦刈刃装置50の固定刃51の下方に穀稈が詰まることを防止するために、前端部が分草体27の左側面の前部に固定され、後端部が固定刃51の最下端の左刃51aaに嵌入されている。また、図3に示すように、第1ガイド61は、縦刈刃装置50に刈取り前の穀稈が絡まるのを防止するために、前端部から後端部にかけて緩やかに左方へ傾斜している。
また、第2ガイド62は、縦刈刃装置50で穀稈が切断されるまで分草体27によって刈取り前の穀稈と刈取り後の穀稈とを効率良く分草するために、前端部が分草体27の左側面の中途部に固定され、後端部が横刈刃装置30(図3参照)の左方に設けられた刈刃ガード58付近まで延伸して設けられている。また、図3に示すように、第2ガイド62は、前端部から後端部にかけて緩やかに左方へ傾斜している。
なお、上述した縦刈刃装置50およびガイド60は茎が太い穀稈を刈り取る場合に有効に機能するが、刈取前処理装置4は、これらを必ずしも備えるものではない。
次に、図4を参照して第1刈刃装置としての横刈刃装置30、および縦刈刃装置50の伝動経路の一例について説明する。図4は、コンバイン1の伝動線図である。図4に示すように、横刈刃装置30に対して、エンジンEの回転動力は、フィーダハウス10へ向けた伝動経路とは分離して軸12を介して、スプロケット70や変換機構(たとえば、ウォーブル機構)71などを介して軸13へ伝達され、変換機構71の入力側に伝達された回転が変換機構71の基部に一定の角度を有して設けられた偏角軸部によって往復運動に変換され、出力側に接続された軸13を軸心まわりで往復揺動させる。
また、揺動アーム28の先端部を、軸13の往復揺動に伴って揺動アーム28の後端部を中心として左右方向に往復揺動し、可動刃32が固定刃31(図3参照)によって形成された溝を左右方向に摺動させる。なお、横刈刃装置30は、上述した実施形態に限定されることはなく、可動刃32の移動によって発生する振動などを低減するために、たとえば、左側に位置する可動刃32と右側に位置する可動刃32とが分離して形成され、左側の可動刃32と右側の可動刃32とが互いに反対に往復揺動される構成としてもよい。
また、縦刈刃装置50に対して、エンジンEの回転動力は、スプロケット70や変換機構71などを介して軸13へ伝達され、変換機構71の入力側に伝達された回転が変換機構71の基部に一定の角度を有して設けられた偏角軸部によって往復運動に変換され、出力側に接続された軸13を軸心まわりで往復揺動させる。
さらに、揺動アーム57の先端部を、軸13の往復揺動に伴って揺動アーム57の後端部を中心として左右方向に往復揺動し、可動刃52が固定刃51(図2参照)によって形成された溝を上下方向に摺動させる。
なお、上述したオーガ装置20の掻込オーガ23および掻込装置40の掻込リール41に対して、エンジンEの回転動力は、フィーダハウス10に対する伝動経路とは分離して軸11を介して軸23a、軸部45および軸部46などを経由してそれぞれ伝達される。さらに、エンジンEの回転動力は、第2刈刃装置80へ伝達される。第2刈刃装置80へ向けた伝動経路については、同図を用いて後述する。
次に、図5〜図8を参照して第2刈刃装置80について説明する。図5は、第2刈刃装置80の対地姿勢を示す概略左側面(一部断面)図である。図6は、第2刈刃装置80の収納姿勢を示す概略左側面(一部断面)図である。図7は、第2刈刃装置80の伝動機構100の説明図である。図8は、第2刈刃装置80の昇降駆動機構150の説明図である。なお、図7および図8では、それぞれ第2刈刃装置80の一側部(左側部)を後方から見ている。
コンバイン1は、第1刈刃装置(横刈刃装置)30に刈り取られた後の植立穀稈(残稈)を、切株の背丈を短くするために刈り払う第2刈刃装置80をさらに備えている。なお、第1刈刃装置30、第2刈刃装置80は、それぞれ「ファーストモア」、「セカンドモア」とも呼ばれる。
図5および図6に示すように、第2刈刃装置80は、左右方向に延伸して設けられ、オーガ装置20の刈取枠体(オーガフレーム)21と走行装置3との間に形成される空間部Sに昇降自在に配置されている。また、第2刈刃装置80は、オーガフレーム21から後方へ向けて延出するリンク機構90によって、オーガフレーム21側に昇降自在に支持され、かつ、空間部Sに位置した状態で支持されている。なお、オーガフレーム21と走行装置3との間の空間部Sは、第2刈刃装置80を昇降自在に配置可能な前後長Lを有している(図5参照)。
第2刈刃装置80は、圃場の残稈を刈り払う刃部81を備えている。刃部81は、第1刈刃装置である横刈刃装置30によって切断された穀稈(残稈)の株元を保持する、刃幅が狭く刃長が長いフィンガ状の複数の下刃82aを有する固定刃82と、固定刃82の後部に連結されたアングル鋼材などの第2刈刃プレート84と、固定刃82に形成された溝を左右方向に摺動する、刃幅が広く刃長が短い三角形状の複数の上刃83aを有する可動刃83とを備えている(図7参照)。
リンク機構90は、オーガフレーム21の左右の両側部に設けられ、左右それぞれにおいて第2刈刃装置80を昇降自在に支持する上下のリンクアーム(上側のリンクアーム91、下側のリンクアーム92)を備えている。上側のリンクアーム91および下側のリンクアーム92は、前後方向に沿って並んだ前側および後側の2つの回動支点(前側支点93、後側支点94)を有する前側回動軸および後側回動軸をそれぞれ備えている。なお、リンク機構90は、上側のリンクアーム91と下側のリンクアーム92とが平行に配置された平行リンク機構である。
また、上側のリンクアーム91および下側のリンクアーム92のうち少なくとも一方の前側支点93は、オーガフレーム21における後端部(後板25)よりも前方に位置する部位に配置されている。なお、図5および図6に示す例では、上下のリンクアーム91,92の各前側支点93,93がオーガフレーム21における後端部よりも前方の部位に配置されている。また、上側のリンクアーム91の前側支点93となる前側回動軸には、後述する伝動機構100(図7参照)の入力プーリ101が軸支されている。
上下のリンクアーム91,92の各後側支点94,94となる後側回動軸は、それぞれ第2刈刃装置80の本体に対して回動可能に取り付けられている。図5に示すように、第2刈刃装置80が対地姿勢(刈取作業姿勢)をとった場合、上下のリンクアーム91,92の各後側支点94,94は、オーガフレーム21の後端部よりも後方、すなわち、空間部Sに配置されるようになる。また、図6に示すように、第2刈刃装置80が収納姿勢をとった場合、各後側支点94,94は、対地姿勢の場合よりも上方位置へ移動する。
また、図6に示すように、第2刈刃装置80は、オーガフレーム21に対する上限位置まで上昇させた場合、すなわち、上述した収納姿勢をとった場合に、刃部81がオーガフレーム21の後部下方へ入り込む。このように、刃部81がオーガフレーム21の下方へ入り込むことで、たとえば、オーガフレーム21を圃場面の近くまで下げて刈取作業を行っても、刃部81が残稈などに引っ掛かりにくくなる。これにより、第2刈刃装置80の破損を抑えることができる。
また、下側のリンクアーム92の前側支点93は、オーガフレーム21の底部(底板26)よりも下方に配置されている。このため、上側のリンクアーム91の前側支点93と下側のリンクアーム92の前側支点93との上下の間隔を大きくとることができる。これにより、第2刈刃装置80の支持を安定させることができ、第2刈刃装置80が安定することで、第2刈刃装置80の切断性能を高めることができる。
図7に示すように、コンバイン1(図5参照)は、エンジンE(図4参照)の回転動力、すなわち、駆動力を第2刈刃装置80へ伝達する伝動機構100をさらに備えている。また、伝動機構100は、入力プーリ101と、伝動ベルト102と、変換機構103と、無端帯104と、テンションプーリ111と、テンションアーム112と、連動アーム113とを備えている。
入力プーリ101は、上側のリンクアーム91の前側支点93となる前側回動軸と同一軸心上に軸支されている。入力プーリ101は、フィーダハウス10またはオーガフレーム21に設けられた入力軸110との間に、エンジンEの回転動力を入力プーリ101へ伝達する伝動ベルト(駆動ベルト)102が掛け回され、入力軸110に対して動力的に接続/接続解除可能に連結されている。なお、本実施形態では、入力軸110は、上述した軸11(図2参照)と同一のものである。したがって、図5〜図8に示す例では、入力軸110がフィーダハウス10側に設けられている(図5参照)。入力プーリ101には、入力軸110を介してエンジンEの回転動力が入力される。
上述したように、入力プーリ101と入力軸110との間では、エンジンEの回転動力が接続/接続解除される。具体的には、テンションプーリ111によって回転動力が接続/接続解除される。テンションプーリ111は、テンションアーム112に軸支されるとともに、テンションアーム112によって駆動ベルト102へ向けて付勢された状態で、入力プーリ101と入力軸110との間に設けられている(図5参照)。
また、テンションプーリ111は、第2刈刃装置80が収納姿勢の場合に、上下のリンクアーム91,92の上下回動に連動する連動アーム(押上アーム)113によって駆動ベルト102とは反対側へ押し上げられる。具体的には、押上アーム113は、第2刈刃装置80が予め設定された位置(上限位置)、すなわち、第2刈刃装置80が収納姿勢となる位置まで上昇すると、テンションアーム112を回動させてテンションプーリ111を駆動ベルト102から引き離すように押し上げて駆動ベルト102を弛緩させる。なお、図5〜図8に示す例では、押上アーム113は、上側のリンクアーム91から延伸して設けられ(図6参照)、上側のリンクアーム91に連動する。
図5に示すように、テンションプーリ111は、第2刈刃装置80が対地姿勢の場合に、駆動ベルト102にテンションを付与して駆動ベルト102を緊張させ、入力プーリ101と入力軸110との間を動力的に接続する。また、図6に示すように、テンションプーリ111は、第2刈刃装置80が収納姿勢の場合に、押上アーム113によって押し上げられて駆動ベルト102を弛緩させて、入力プーリ101と入力軸110との間を動力的に接続解除する。
このように、上方に配置されたテンションプーリ111によって駆動ベルト102を押圧することで、泥水などの影響のない位置でベルトクラッチを構成することができ、機械式でもあることから、安定的、かつ、自動的に第2刈刃装置80の駆動を入切することができる。
また、図7に示すように、変換機構103は、上側のリンクアーム91の後側支点94となる後側回動軸と同軸心上に設けられている。変換機構103は、一方向の回転運動を往復運動に変換するいわゆるウォーブル機構である。具体的には、変換機構103は、入力プーリ101との間に掛け回されて入力プーリ101と変換機構103とを連動する無端帯(駆動チェン)104の回転運動を第2刈刃装置80の駆動軸85の軸心まわりの往復運動(往復揺動)に変換して、刃部81の固定刃82および可動刃83を駆動する。
このように、変換機構103が第2刈刃装置80の上方に配置され、変換機構103が第2刈刃装置80の刃部81から離れていることで、変換機構103に藁屑などが堆積するのを防止することができる。また、圃場が湿田の場合であっても、変換機構103の駆動ベルト102や駆動チェン104に泥などが付着しにくくなる。さらに、変換機構103を収納するウォーブルギヤボックスなどの筐体が不要となり、伝動機構100を安価に構成することができる。
なお、図5に示すように、入力軸110は、入力軸110から左右方向に延伸するスプロケット105(図4参照)や駆動ベルト23gを介して、上述した伝動機構100よりも左右方向の内方に設けられた掻込オーガ23の駆動軸23fと動力的に接続される。このように構成されることで、入力軸110の回転動力(駆動力)が掻込オーガ23へ伝達され、入力軸110の駆動力によって掻込オーガ23を駆動する。
ここで、図4に戻り、第2刈刃装置80の伝動経路について説明する。図4に示すように、第2刈刃装置80に対して、エンジンEの回転動力は、軸11と同一の軸である入力軸110から入力プーリ101へ入力され、変換機構(ウォーブル機構)103を介して駆動軸85へ伝達され、変換機構103の入力側に伝達された回転が変換機構103の基部に一定の角度を有して設けられた偏角軸部によって往復運動に変換され、出力側に接続された駆動軸85を軸心まわりで往復揺動させる。
また、揺動アーム86の先端部を、駆動軸85の往復揺動に伴って揺動アーム86の後端部を中心として左右方向に往復揺動し、可動刃83が固定刃82(図7参照)によって形成された溝を左右方向に摺動させる。なお、第2刈刃装置80においても、横刈刃装置30と同様に上述した実施形態に限定されることはなく、可動刃83の移動によって発生する振動などを低減するために、たとえば、左側に位置する可動刃83と右側に位置する可動刃83とが分離して形成され、左側の可動刃83と右側の可動刃83とが互いに反対に往復揺動される構成としてもよい。
このような伝動機構100では、入力プーリ101と変換機構103とが駆動チェン104によって連動されるため、第2刈刃装置80へ至る伝動経路がリンクアーム91,92の上下回動の影響を受けにくくなる。これにより、第2刈刃装置80の駆動を安定させることができる。
また、第2刈刃装置80が設定位置まで上昇すると、すなわち、収納姿勢をとると、駆動ベルト102が弛緩状態、すなわち、伝動不能な状態となり、第2刈刃装置80へ動力が伝達されるのを防ぐことができる。これにより、たとえば、回り刈りなどで圃場の一辺を刈り終えて旋回する場合にオーガフレーム21側へ上昇した第2刈取装置80が誤って駆動されなくなり、安全性を向上させることができる。
また、図8に示すように、コンバイン1(図5参照)は、リンク機構90を駆動して第2刈刃装置80を昇降駆動する昇降駆動機構150をさらに備えている。昇降駆動機構150は、リンク機構90を駆動する駆動装置として油圧シリンダ151を備えている。油圧シリンダ151は、オーガフレーム21(図5参照)の左右の両側部のいずれか一方に設けられ、左右の両側部のそれぞれに設けられたリンク機構90,90のうちの一方との間に配置されている。
油圧シリンダ151は、左右のリンク機構90,90のうち、油圧シリンダ151が配置された側と同じ側に配置された一方のみを駆動する。なお、図8に示す例では、油圧シリンダ151は、オーガフレーム21の左側部に設けられている。したがって、油圧シリンダ151は、左側のリンク機構90を駆動する。また、左右のリンク機構90,90は、互いに連動可能に設けられており、いずれか一方を駆動すれば他方が連動する。具体的には、一方の下側のリンクアーム92を駆動することで、左右方向に延伸するロッドなどで連結された他方の下側のリンクアーム92を駆動する。
このような昇降駆動機構150では、第2刈刃装置80を支持する左右のリンク機構90,90のうちいずれか一方を駆動すると他方が連動するため、第2刈刃装置80を適切な姿勢で昇降させることができる。
また、駆動装置(油圧シリンダ)151が1つで済むようになり、安価となる。また、たとえば、油圧シリンダ151を左右に設けた場合に比べてストロークの調整などが不要となり、第2刈刃装置80の水平状態を確保しやすくなる。なお、左右の下側のリンクアーム92,92を連結するロッドがオーガフレーム21の後方に配置されるため、刈取作業時にこのロッドが抵抗になることはない。
上述してきたように、本実施形態に係るコンバイン1によれば、第2刈刃装置80を支持する上下のリンクアーム91,92のうち少なくとも一方のリンクアーム(たとえば、上側のリンクアーム91)の前側支点93がオーガフレーム21における後端部よりも前方の部位に配置されるため、リンクアーム91,92を長めに形成することができる。このように、リンクアーム91,92を長くすることで、第2刈刃装置80が昇降するときの前後の移動量が小さくなり、空間部Sを前後に短縮することができる。これにより、機体のコンパクト化を図ることができる。
また、空間部Sの前後長Lが短縮されることで、フィーダハウス10の前後長を最小限とすることができ、フィーダハウス10における穀稈の搬送トラブルを抑えることができる。
なお、上述した実施形態に係るコンバイン1では、上下のリンクアーム91,92の各前側支点93,93の双方を刈取枠体(オーガフレーム)21の後端部よりも前方に配置しているが、これに限定されることはない。たとえば、図9(a)に示すように、上側のリンクアーム91の前側支点93をオーガフレーム21の後端部よりも前方に配置し、下側リンクアーム92の前側支点93をオーガフレーム21の後端部よりも後方に配置する構成としてもよい。
また、たとえば、図9(b)に示すように、下側のリンクアーム92の前側支点93をオーガフレーム21の後端部よりも前方に配置し、上側リンクアーム91の前側支点93をオーガフレーム21の後端部よりも後方に配置する構成としてもよい。
また、上述した実施形態に係るコンバイン1は、脱穀装置5に穀稈から穀粒を脱穀する扱胴200を備えている。次に、図10および図11を参照して扱胴200について説明する。図10は、扱胴200の平面図である。図11は、扱胴200の説明図である。なお、図11(a)および図11(b)は、それぞれ扱胴200の一例を示す背面図(前後方向の後方から見た図)である。
図10に示すように、扱胴200は、胴部201の外周面に複数の棒状の扱歯202が外方へ向けて突出して設けられている。また、複数の扱歯202は、胴部201の軸方向に沿って列が形成されている。扱歯202の列は、胴部201の周方向に等間隔をあけて6つ並んで設けられている。
ここで、脱穀装置5の扱室に穀稈が多量に供給されると、扱胴と、扱胴の周囲を覆っている受網との間のスペースがなくなり、過負荷状態となって詰まりが生じることがあった。このため、図11に示すように、扱胴200は、隣接する扱歯202,202の間で胴部201の外周面が凹状に形成されている。図11(a)に示す例では、胴部201の凹面203aが勾配形状に形成されている。また、図11(b)に示す例では、胴部201の凹面203bが湾曲形状に形成されている。
このような扱胴200の構成によれば、扱胴200の胴部201の外周面の大部分が凹状に形成されているため、上述したような過負荷状態が生じても力が逃げやすくなる。また、凹状であることでスペースが拡大されて、同じ量の穀稈が供給された場合に凹状ではないものと比べて負荷を軽減させることができる。これにより、脱穀作業を安定させることができる。また、凹面203a,203bに籾などが入り込んでも、扱胴200の回転による遠心力によって籾などが外方へ導かれ、扱ぎ残しや穀粒などの持ち回り(滞留)による排出ロスを軽減させることができる。
次に、図12〜図18を参照して扱胴200のさらなる変形例について説明する。図12〜図18は、扱胴200の変形例(扱胴200a〜200g)の説明図である。なお、図12〜図17は、扱胴200の変形例(扱胴200a〜200f)を示す背面断面図である。また、図18は、扱胴200の変形例(扱胴200g)を示す平面断面図である。図12〜図18に示すように、扱胴200には胴部201の軸方向に沿った扱歯202の列が等間隔をあけて6つ並んで設けられている。
図12に示すように、扱胴200(200a)は、円筒形状の胴部201の内部に六角形状の副胴部205が胴部201と同軸で設けられている。なお、図12において、扱胴200aは、矢印aの方向(図中、左まわり)に回転する。扱胴200aは、副扱胴205の外周面に、扱歯202を胴部201に支持するパイプ連結プレート206へ向けて延伸する複数の仕切板207が胴部201の内部を区画するように設けられている。なお、仕切板207は、扱歯202の列ごとに設けられている。
このため、図12に示す例では、仕切板207が6つ設けられている。また、仕切板207は、パイプ連結プレート206へ向けて扱歯202の傾斜角度と略同等に傾斜しているとともに、パイプ連結プレート206の左面に対してオーバーラップして設けられている。これにより、仕切板207の姿勢が保持されるとともに、胴部201の内部に区画された各空間(風洞)の隙間をなくすことができる。
このような扱胴200aの構成によれば、仕切板207の強度を保持することができ、仕切板に区画された各風洞の気密を確保することができる。これにより、脱穀および選別能力を安定させることができる。また、仕切板207と扱歯202とが直線状に並んでいるため、穀粒の流れを安定させることができ、また、負荷を軽減させることができる。
図13に示すように、扱胴200(200b)は、扱歯202が胴部201の外周面に対して周方向に角度変更可能に設けられている。これにより、扱歯202の設置角度を調整することができる。なお、図13〜図18においては、図12を用いて説明した扱胴200aと同一または同等の箇所には同一の符号を付して、説明を省略する。
このような扱胴200bの構成によれば、扱歯202を受網に対して角度調整することができる。これにより、扱胴200bの負荷や扱ぎ量を調整することができる。
また、扱胴200bでは、扱歯202を支持する支持パイプ208が胴部201の軸方向、すなわち、扱胴200bの設置状態において機体の前後方向に2分割可能に設けられ、扱歯202の傾斜角度を前後で変更可能に構成してもよい。
このような扱胴200bの構成によれば、扱歯202を受網に対して角度調整することができることに加えて、扱胴200bの前側と後側とで扱ぎ量を変更して扱ぎ残しなどを軽減することができる。
図14に示すように、扱胴200(200c)は、扱歯202が支持パイプ208を貫通して設けられている。なお、扱歯202は、胴部201の外周面から外方へ突出している部分と内方へ突出している部分とを異なる突出量として設けられてもよい。また、扱歯202の外方へ突出している部分と内方へ突出している部分との突出量が変更可能に設けられてもよい。また、扱歯202が、外方へ突出している部分と内方へ突出している部分とを反転させて取付可能に設けられてもよい。
このような扱胴200cの構成によれば、扱歯202を受網に対して角度調整することができる。これにより、扱胴200cの負荷や扱量を調整することができる。また、扱歯202の耐久性を向上させることができる。さらに、扱歯202が摩耗した場合などに反転させて使用することで、扱歯202の耐久性を向上させるとともに、受網との隙間を変更して扱ぎ具合を調整することができる。
図15に示すように、扱胴200(200d)は、仕切板207aが扱胴200dの回転軸部209から支持パイプ208へ向けて延伸して設けられている。したがって、扱胴200dは、仕切板207aによって胴部201の内部が6区画に分割されている。また、仕切板207aは、回動軸部209に対して着脱可能に設けられている。
このような扱胴200dの構成によれば、仕切板207aによって脱穀および選別能力を向上させるとともに、仕切板207aの数量を変更することで、仕切板207aに区画された各風洞の容積や扱ぎ度合いを調整することができる。
図16に示すように、扱胴200(200e)は、扱歯202を支持する支持パイプ208が胴部201に対して着脱可能に設けられている。また、扱胴200(200e)は、仕切板207bが副胴部205に対して着脱可能に設けられている。
このような扱胴200eの構成によれば、扱歯202および仕切板207bの数量を変更することができる。これにより、扱ぎ具合や脱穀時の風量を調整することができる。また、脱穀および選別性能を任意に調整することができる。
図17に示すように、扱胴200(200f)は、扱歯202aが支持パイプ208に貫通して設けられるとともに、扱歯202aにおける胴部201の内方へ突出している部分の先端部204が回動軸部209に当接または連結されている。
このような扱胴200fの構成によれば、扱歯202aにおける胴部201の内方へ突出している部分によって胴部201の内部を区画して胴部201の内部に風洞を形成することができる。また、胴部201の内部に風洞が形成されることで、脱穀性能を向上させることができる。さらに、扱歯202aにおける胴部201の内方へ突出している部分が補強部材となるため、強度を向上させることができる。
図18に示すように、扱胴200(200g)は、支持パイプ208と回動軸部209とを連結させる中板210に、前後に風を送るためのファン211が設けられている。
このような扱胴200gの構成によれば、扱胴200gの後半部における籾などの吐き出しや穀粒の選別などを促進させることができる。すなわち、選別能力を向上させることができるとともに、籾などの吐き出しを円滑化することができる。
さらに、上述したような各扱胴200(200a〜200g)の構成によれば、米穀(たとえば、ジャポニカ米やインディカ米)に対する脱穀適応性を向上させることができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。