JP6142624B2 - 生インキ内蔵筆記具 - Google Patents
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Description
なお、本発明でいう筆記具とは、上述の水性、油性の筆記具のみを意味するのでなく、例えば、幅広い部分の塗布が可能なポスター用の塗布具や修正液の塗布具、更には化粧液や薬剤等を塗るための塗布具も包含するものである(以下、筆記具という)。
更に、ペン芯の後端部近傍に繊維組織が密な部分が形成されているので、ペン芯にインキをより安定して供給することが可能となる。また、インキはインキ供給孔とインキ供給管の先端開口部の2箇所より供給されるので、繊維組織が密な部分においてインキが十分に吸収され貯留され、ペン芯にインキを安定して供給することが可能となる。
一方、温度や圧力等の使用環境条件に変化が生じた場合でも、外周部に繊維組織の粗な層が形成されているので、この粗な部分に余剰インキが分散・吸収されることでインキ漏れが的確に防止されることとなる。また、空気流路は従来のように必ずインキ吸蔵体の後方側を経由させる必要がなく、前方側からも空気を流通させることが可能となり、シンプルな構造とすることができる。
更には、インキ吸蔵体の軸方向の繊維組織が密な部分は、内筒体の壁面に設けた凹み部によって圧縮形成されるとともに、インキ供給管の挿入によって軸方向に圧縮形成されるものであり、この凹み部の底面にはインキ供給孔が形成してあるので、インキ吸蔵体を内筒体内へ挿入するだけで繊維組織が密な部分を容易に形成することができる。また、簡単な構造であり、加工及び組み立て作業を容易に行うことが可能である。
図1は、本発明の実施の形態を示す断面図であり、図において、1は有底の筒状本体、2はこの筒状本体1内に嵌挿される内筒体である。この内筒体2は、後端が栓体2aで閉じられており、内部にポリエステルやアクリル繊維等を集束したいわゆる中綿、あるいはスポンジ等からなるインキ吸蔵体3が収容されている。この筒状本体1と内筒体2の間には一定の空間が形成されてインキタンク4となっており、このインキタンク4内のインキ(液状の生インキ)を、前記内筒体2の壁面に形成したインキ供給孔2bを通じてインキ吸蔵体3、及びその先端側に装着したペン芯5に供給する構造となっている。なお、インキ供給孔2bを設ける位置については、後述する。
このような多層構造とすることにより、インキ供給孔2bから供給されたインキをインキ吸蔵体3の中心部にある繊維組織の密な層3aに十分に吸収させて貯留することができ、ペン芯5に安定して供給できることとなる。
この首座6は、ペン芯5の先端部分を外部へ露出させ、一方、後端部分をインキ吸蔵体3内へ押し込んで埋没させるようにペン芯5を保持している。このペン芯5の押し込みにより、ペン芯5の後端部近傍には繊維組織が密(スポンジであれば、密度が密)な部分が形成された構造となっている。
なお、ペン芯5を保持する首座6の内面には、空気流路が形成されている。この空気流路は、インキタンク4内の空気が膨張してインキ供給孔2bよりインキ吸蔵体3にインキが強制的に流入した際、インキ吸蔵体3に流入したインキによって押し出される空気が外気へ排出されるために必要な構成である。
また、ペン芯5の先端部は、キャップ(図示せず)により開閉自在とされている点は従来と同様である。
また、凹み部2cの底面には、前記インキ供給孔2bが設けられており、前記インキ吸蔵体3の繊維組織が密な部分に向けて開口させた構造となっている。これにより、インキタンク4内のインキが繊維組織の密な部分に向けて補給され、この密な部分は常にインキが満たされた状態となってペン芯5に安定してインキを供給することとなる。この結果、ペン芯5からは安定したインキの吐出量が確保されることとなる。
凹み部2cを全周でなく部分的に設けることで、軸方向に垂直な断面でみた場合に、中心部に繊維組織の密な層が形成され、外周部に繊維組織の粗な層が部分的に形成されるため、この粗な部分においても余剰インキを分散・吸収し、ペン芯からのインキ漏れを防止することができる。
また、「凹み部2cを部分的に設けると、インキ吸蔵体3の外周面と内筒体2の内周面の間に間隙(図5(a)を参照)が生じるため、別途空気流路を確保する必要がなくなる。この空気流路は、インキタンク4内の空気が膨張してインキ供給孔2bよりインキ吸蔵体3にインキが強制的に流入した際、インキ吸蔵体3に流入したインキによって押し出される空気が外気へ排出されるために必要な構成である。また、インキタンク4内だけでなく、内筒体2内またはインキ吸蔵体3内の空気が膨張することによって押し出される空気が外気へ排出されるためにも必要な構成である。
なお、インキ供給孔2bと先端開口部2eは、そのどちらでも空気およびインキの流通が可能であり、その形状や大きさや設置数によって適宜設定できるが、ここでは、インキ供給孔2bでの空気とインキの流れについて説明する。
本発明では、組立てたときに、インキ供給孔2bからインキ吸蔵体3にインキは流出する。このインキの流出によってインキタンク4にはインキが減少した分の空気がインキ吸蔵体3より同時に流入し、インキタンク4とインキ吸蔵体3の間でインキと空気の置換が行われる。そして、インキタンク4への空気の流入とインキ吸蔵体3へのインキの流出が平衡に達した時点で、インキ供給孔2bを通じたインキ吸蔵体3へのインキの流出は停止する。
そして、インキ吸蔵体3に流出したインキが筆記によって消費されると、前記首座6の内面に設けた空気流路から取り込まれた外気が、インキ吸蔵体3を通ってインキ供給孔2bよりインキタンク4内に流入し、その際、これと入れ替わってインキがインキ供給孔2bを通ってインキ吸蔵体3へ流出し、インキがインキ供給孔2bを閉塞する位置に到達するまで流出すると、空気はもはやインキ供給孔2bを通過することが不可能となり、その結果インキのインキ吸蔵体3への流出は停止する。
このように、インキ供給孔2bはインキおよび空気の流通のバルブ機能を有するもので、インキが過剰にインキ吸蔵体3に供給されることを防止し、常に一定量のインキをインキ吸蔵体3に供給する役目をする。すなわち、空気の流入量分だけインキがインキ吸蔵体3へ流出することになる。
なぜなら、平常時、インキはインキ吸蔵体3の粗の部分に吸収されることが殆どないため、インキ吸蔵体3の粗の部分は常にインキが吸収できるスペースを確保することできるからである。そのため、インキタンク4内の空気が膨張して、インキ供給孔2bよりインキが強制的に溢れ出しても、溢れ出したインキ(余剰インキ)はインキ吸蔵体3の粗の部分が吸収するのでペン芯5よりのインキボタ落ちを防ぐことができる。このとき、インキ吸蔵体3の粗の部分に吸収されたインキによって押し出される内筒体2内の空気は、空気流路を通じて外気に排出され、ペン芯5からのインキボタ落ちを防止できる。
図3に示されるように、前記インキ吸蔵体3は、ペン芯5がある先端側から筒状本体1の底部がある後端側に向けて、軸方向に繊維組織が粗な部分、密な部分、粗な部分の順に並んだ構造となっている。
この場合は、常時は繊維組織が密な部分に十分なインキが蓄えられていて、ペン芯5に供給するため、安定した書き味を保証することができる。一方、温度や圧力等の環境条件等の変化により、繊維組織が密な部分でインキ貯留量を超えたとしても、前方側と後方側の繊維組織の粗な部分が溢れたインキ(余剰インキ)を即座に分散・吸収するので、ペン芯5からインキ漏れが生じるのを的確に防止することとなる。
また、ペン芯5の軸方向とインキ供給孔2bを結んだ線の交叉する部分の近傍は、軸方向に対し垂直方向の圧縮力と軸方向の圧縮力の2方向の圧縮力がかかるため、特に繊維組織が密になり、最密な部分が形成されることとなる。この結果、最密部分に十分なインキが貯留され、より安定したインキの貯留と供給が確保される。
そして本構造は、インキ供給孔2bと当接する位置3b1においてインキ供給速度をコントロールできる利点を有する。すなわち、繊維組織の密な層3aと繊維組織の粗な層3bの材質や目付量(単位面積あたりの重量)のバランスを調整することで、インキ供給孔2bの形状や大きさや設置数を変えずに、インキの供給速度をコントロールできる。これは、多層構造を有するインキ吸蔵体3を変更するだけで、金型を変えず種々のインキに対応できることを意味する。
また本構造は、インキ供給孔2bと当接する以外の位置3b2において、余剰インキを分散・吸収できる。すなわち、軸方向に垂直な断面でみた場合に、本構造は、中心部に繊維組織の密な層3aが形成され、外周部に繊維組織の粗な層3bが形成された多層構造からなるため、外周部に設けた繊維組織の粗な層3bにおいても余剰インキを分散・吸収し、ペン芯からのインキ漏れをより効果的に防止することができる。
また、図示のように、内筒体2の壁面の円周方向に部分的に凹み部2cを形成すると、インキ供給孔2bと当接する位置3b1は、インキ供給孔2bと当接する以外の位置3b2より繊維組織が密になるため、インキ供給孔2bと当接する位置3b1にインキが集まるとともに、インキ供給孔2bと当接する以外の位置3b2でも余剰インキを分散・吸収し、ペン芯からのインキ漏れをより効果的に防止することができる。
図6に示すものでは、前記インキ吸蔵体3を、ペン芯5がある先端側から筒状本体1の底部がある後端側に向けて、繊維組織が粗な部分、密な部分、密な部分の順に並んだ構造とされている。図7にその要部の断面図を示し、図8にインキ吸蔵体の状態の説明図を示す。
また、ペン芯5の軸方向とインキ供給孔2bを結んだ線の交叉する部分の近傍は、前記凹み部2cによる軸方向に対し垂直方向の圧縮力と、インキ供給管2dの挿入による軸方向の圧縮力(更には、ペン芯5の押し込みによる圧縮力も加えられている)の2方向の圧縮力がかかるため、繊維組織の最密な部分が形成されて、十分なインキの貯留ができる点は第1の実施例と同じである。
即ち、前記繊維素材を内筒体2に押し込むと、内筒体2の壁面に設けられた凹み部2cによって、対応部分が中心方向へ圧縮された状態となる。また、軸方向の圧縮については、インキ供給管2dの挿入による軸方向の圧縮力と、ペン芯5の押し込みによる圧縮力がかかることとなる。このような圧縮作用によって、インキ吸蔵体3のペン芯5の軸方向でペン芯5の後端部近傍に繊維組織が密な部分を形成するとともに、この密な部分の前方側に繊維組織が粗な部分を形成することができる。
2 内筒体
2a 栓体
2b インキ供給孔
2c 凹み部
3 インキ吸蔵体
3a 繊維組織の密な層
3b 繊維組織の粗な層
3b1 繊維組織の粗な層のインキ供給孔と当接する位置
3b2 繊維組織の粗な層のインキ供給孔と当接する以外の位置
4 インキタンク
5 ペン芯
6 首座
Claims (5)
- 筒状本体内に、後端が閉じられ内部にインキ吸蔵体が収容された内筒体を嵌挿して、両者間をインキタンクとし、このインキタンクのインキを内筒体の壁面に形成したインキ供給孔を通じてインキ吸蔵体、及びその先端側に装着したペン芯に供給するようにした生インキ内蔵筆記具であって、前記インキ吸蔵体を軸方向に垂直な断面でみた場合に、中心部に繊維組織の密な層が形成され、外周部に繊維組織の粗な層が形成された多層構造からなるものとし、このインキ吸蔵体のペン芯の後端部近傍に繊維組織が密な部分を形成し、また、前記内筒体に底面からペン芯に向けて延びるインキ供給管を形成し、前記インキ供給孔とインキ供給管の先端開口部の2つをインキ吸蔵体の繊維組織が密な部分に向けて開口させ、更に、前記インキ吸蔵体の繊維組織が密な部分を、内筒体の壁面に設けた凹み部によって軸方向に対し垂直方向に圧縮形成するとともに、インキ供給管の挿入によって軸方向に圧縮形成し、また前記凹み部の底面にはインキ供給孔を形成したことを特徴とする生インキ内蔵筆記具。
- インキ吸蔵体の軸方向の繊維組織が密な部分の前方側に繊維組織が粗な部分を形成してある請求項1に記載の生インキ内蔵筆記具。
- 凹み部は、内筒体の壁面の円周方向に部分的に形成してある請求項1または2に記載の生インキ内蔵筆記具。
- インキ吸蔵体は、軸方向にみた場合に、先端側から繊維組織が粗な部分、密な部分、粗な部分の順に並んでいる請求項2または3に記載の生インキ内蔵筆記具。
- インキ吸蔵体は、軸方向にみた場合に、先端側から繊維組織が粗な部分、密な部分、密な部分の順に並んでいる請求項2または3に記載の生インキ内蔵筆記具。
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