JP3931722B2 - 塗布具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性・油性の筆記具用インキ類、ジェットプリンタ用インキ類、アイライナー等の化粧液、塗料や薬剤などの塗布液といった液料(以下インキという)の収容用生インキタンクを備え、塗布或いは筆記、記録に呼応し、インキが自動的に吐出制御される機構を備えた塗布具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、軸筒内にインキ収容部を備え、収容したインキが、筆記又は塗布で使用消耗されるに従って塗布体(ペン体)に順次補給され、連続的に筆記又は塗布ができるようにした生インキ自動吐出制御の筆記具が知られている。例えば、実公昭60−69690号公報に、軸内のインキ収容部と塗布体先端との間のインキ流通経路にインキ吸収体を配置し、筆記に呼応する塗布体の毛管内インキ移動圧力(毛管浸透圧)によって、インキを流通させ、連続的に筆記ができる生インキ吐出制御機構が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記筆記具などは、インキがボタ落ちするのを防止するためインキ収容部と塗布体との間にスポンジなどのインキ吸蔵体を配置し、溢出したインキを吸収することがなされていた。しかし、自然放置状態でインキ吸蔵体がインキ収容部内のインキを自然吸収しインキが充満してしまうことが多く、気温や体温による温度上昇や飛行機内の気圧変化などで、インキ収容部内の空気が不定常に膨張してインキが溢出した場合、インキ吸蔵体が吸収する役目を果たさず、インキが塗布体よりボタ落ちしてしまうという問題があった。また、上記筆記具は、大容量インキタンクの製品を製作する場合、インキタンクの内容量を大きくすると、空気膨張によるインキ溢出量も比例して大きくなるため、インキ吸蔵体も大きくすることが必要である。この場合、インキタンクとペン体後部との間に大きなインキ吸蔵体の設置部分を設けることが必要であるために、外側からでは、軸内にインキ存在状態(残留量)を確かめにくい部分が多く存在するため、好ましい軸外観のデザイン形成上、極めて制限が多い構成になっていた。ところで、適切な機能の油性インキ充填製品を得ようとする場合、一般に油性インキは紙などへの浸透が速いために、塗布体はカスレが発生しやすいから、インキ吐出を増やしたいという課題があった。しかし、油性インキは、水性インキよりも表面張力が低い溶剤が使用されるために、吸蔵体への濡れ・浸透性が強く前述の自然吸収が起こりやすいし、インキ吸蔵体の保持力も低下し、水性インキよりもボタ落ちが生じやすいという問題点があった。加えて油性インキは、蒸気圧の高い溶剤が使用されることが多いために温度上昇時のインキ収容部内の気体膨張量も多く、前記ボタ落ち問題の解消は更に難度が高く、この様な油性インキに対しては好ましい製品を提供することが難しい状況であった。本発明は、水性インキは勿論、油性インキを使用する場合であっても、保存中や使用上の諸々の使用環境条件下で、ボタ落ちなどインキ漏洩をせず、特に、速い筆記速度にも適切なインキ吐出を維持する品質を備え、且つ、外側から軸内のインキ残留量を確認しやすく、実用的に安価に製作できる塗布具を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、インキ連通部の一端にインキ吸蔵体前側を連設し、インキ連通部の他端に塗布体を接続し、インキ連通部とインキ収容部とを接続してなり、インキ吸蔵体後側は外気と連通し、前記インキ連通部の毛管力を、インキ吸蔵体の毛管力よりも高く、塗布体の毛管力より小さくなすと共に、前記インキ連通部の前記塗布体側の前端部にそのインキ連通部とインキ収容部内とを接続する接続部を形成したことを特徴とする塗布具を要旨とする。
【0005】
【作用】
本発明の塗布具は、インキ吸蔵体の配置個所に工夫をし、インキ収容部と接続するインキ連通部の毛管力を、インキ吸蔵体の毛管力よりも高く、塗布体の毛管力より低くすることによって、自然放置状態でインキ収容部内のインキが自然吸収されインキ吸蔵体全体に充満してしまうのを防いでいるものである。
【0006】
インキ吸蔵体がインキ収容部内のインキを自然吸収する状態にあるのは、そのインキ吸収分量に見合う外部空気が、インキ収容部内に吸入される(空気交換される)状態の時であるから、逆にこのような空気移動を抑制することによって、インキがインキ吸蔵体の全体に自然吸収され、充満しないように前述の如き毛管力を配置にしたものである。即ち、インキ連通部の毛管力をインキ吸蔵体の毛管力より高くしたことで、インキ連通部近傍は、局部的に強い毛管力が働き、常にインキの液密状態を保つ。このため、毛管作用が弱いインキ吸蔵体がインキ収容部内のインキを吸収しようとしても、液密状態が、タンク内に入ろうとする外部空気の吸入を抑制するので、インキ吸蔵体内にインキが充満せず、未吸収状態を保つ。このような液密状態による空気吸入の制御は、毛管作用が更に強い塗布体がインキを消耗する時は、インキ収容部内のインキが塗布体に吸収移動するのに連動して空気吸入ができるので、液密部に空気が通り連続的に筆記が可能である。以上の作用で、本発明に係る塗布具は、インキ吸蔵体がインキ吸収可能な状態を維持するため、保存中や使用中の諸々の使用環境条件下で不定状なインキ溢出があっても、ボタ落ちなどインキ漏洩が起こりにくく、適切なインキ吐出で、部品数の少ない安価な構造となっている。
【0007】
この構造においては、使用中など、インキ収容部内の空気が膨張してインキ収容部よりインキが強制的に溢出した場合は、溢出インキは、インキ連通部を介して、塗布体とインキ吸蔵体の両方向に向かおうとするが、塗布体側は最も密度が高いためにインキの通過抵抗が大きく流出しにくく、一方、インキ吸蔵体内にはインキを吸収するスペースがあり、外気との空気交換もスムーズにできるので、インキが優先的に供給され、塗布体よりのボタ落ちを防ぐことができる。再びインキ収容部内の空気が膨張状態から元の状態に収縮復帰する場合、塗布体側は密度が高く毛管力が強いので、この方向から外部空気がインキ連通部やインキ収容部内に吸入されるのを阻止しており、従って、インキ吸蔵体内に吸収されたインキがインキ収容部内に吸い戻されるので、インキ吸蔵体は、再びインキを吸収する能力を回復し、繰り返される膨張・収縮環境でもインキ漏洩が起きないものである。
【0008】
本発明の構造は、上述の作用を有するが、前項の課題に示した通り、好ましい油性インキ充填製品を目指す場合、インキ漏洩を起こさないと同時に、インキ吐出量も十分である必要がある。しかし上記、の課題は、一般的に相反する作用で、一方を良くすると他方が悪くなる関係にある。即ち、インキ連通部の毛管作用を強くする対策は、塗布体のインキ消耗中のインキ収容部への空気吸入(空気交換)を阻害し、インキ吐出が減少する問題などにつながる。具体的には、インキ連通部の形成上、単にインキ連通部(管内)にインキ吸蔵体を圧縮状に挿通したり、多孔質毛管材の塗布体後部を圧入する場合には、インキ吸蔵体や塗布体自身の外径寸法の細・太や毛管密度の大・小のバラツキなどが影響し、ボタ落ちに対する信頼性があってもインキ吐出が十分でないなどの問題がある。
【0009】
本発明は、上記相反する作用の調和を図るために、インキ連通部の内壁に設けた凹凸形状と、これに対面するインキ導通部材外壁との間に形成される微細間隙により、インキ収容部に通じる空気連通間隙を形成し、外部空気がインキ収容部内に吸入されるようになすこともできる。即ち、本発明は、インキ連通部の内壁面を凹凸形状となしているので、凹凸形状部分にインキ導通部材であるインキ吸蔵体や塗布体の後部などが圧縮または圧入されても、凹凸の山と谷の関係により一定の間隙寸法の毛管部が確保されるので、インキ導通部材にバラツキがある場合であっても、安定した間隙のバラツキの少ない毛管部が形成でき、インキ漏れとインキ吐出性の好ましい筆記具を得ることができる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の実施例を、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
実施例1
図1、図2に本発明の実施例1を示す。図1は本実施例の縦断面図であり、図2は、本実施例の要部拡大横断面図である(図1のA−A'断面図)。参照符号1はインキ収容部で、後方部は閉じており、外管1aと内管1bとよりなる二重管状で囲まれており、外管1aと内管1bの間にインキ収容部1を形成している。また、インキ収容部1前方部は開口しており、外管1a内壁と前軸2とが圧入固定されている。筒状の前軸2には、内壁に顎部2aが配置しており、塗布体3が挿入固定されている。
【0011】
塗布体3の後部3aには、インキ連通部4が配置しており、塗布体後部3aと接続している。また、インキ連通部4の後方には、柱状のインキ吸蔵体5が接続しており、蓋体6によって固定されている。また、蓋体6には、インキ吸蔵体5と外気を連通するリブ6aを配置している。
【0012】
インキ収容体内管1b内壁部には、開口端面近傍に凸状の全周リブ1cを配置してインキ連通部4となしており、インキ吸蔵体5より密度の高い状態に圧縮している。インキ連通部4は、インキ吸蔵体5の密度より高く、塗布体3より密度の低いもので有れば、別部材を用いても構わない。
【0013】
インキ収容体内管1bの開口端面には、スリット状の切り込みを形成し、インキ連通部4とインキ収容部1内とを接続する接続部1dとなしている。前記接続部1dの形状は、スリット状に限らず、貫通口など適宜選択すればよい。また、前軸2とインキ収容体外管1aの圧入部付近にはインキ流通路7があり、インキは、インキ収容部1からインキ流通路7を通り接続部1dを介して、インキ連通部4へ供給できるようになっている。
【0014】
インキ吸蔵体5には、インキを吸収しやすく且つ吐き出しやすい、スポンジ又はポリエステルやアクリル、アセテート繊維を集束したいわゆる中綿などを適宜使えばよい。また、インキ吸蔵体5として筒状体ではなく、断面が円形や矩形の一般的な柱状の部材を用いることができるので、製作費が安価で組立も簡単なものを用いることができる。
【0015】
本実施例記載の塗布具の塗布作用は、以下の通りである。塗布に応じて、塗布体の前方部毛管空隙内のインキが消費され、それを補充するために塗布体後方部よりインキを吸い出そうとするので、その毛管浸透圧でインキ連通部内のインキが塗布体前方部に移動する。それに伴ってインキ収容部内のインキは、インキ流通路を通り、接続部を介してインキ連通部へ補充されるので、インキ連通部内の液密状態が回復し、インキ吐出制御が継続される。
【0016】
インキ連通部の密度は、インキ吸蔵体の密度より高い状態にあるので、極部的に強い毛管力が働き、常にインキを保持し液密状態を保ち続ける。そのため、インキが塗布体より消費されない限り、液密状態が保たれており、通常時はインキ収容部からインキが吸蔵体へ移動吸収されることが抑制されている(空気交換が抑制された状態)。よって、自然放置状態時に、インキはインキ吸蔵体へ必要以上吸収されることが無く、インキ吸蔵体は常にインキが吸収できるスペースを確保することができる。そのため、インキ収容部内の空気が膨張してインキ収容部より強制的にインキが溢出しても、溢出したインキは塗布先には行かず、インキ吸蔵体が吸収するので塗布体よりのインキボタ落ちを防ぐことができる。再びインキ収容部内の空気が圧縮する場合、インキ吸蔵体に入ったインキはインキ収容部内の減圧によって吸い戻されるので、インキ吸蔵体は、再びインキを吸収する能力を回復し、繰り返される膨張・収縮にもインキ漏洩が起きない。因みに、本実施例において、インキ収容部は、外管と内管よりなる二重管でインキ吸蔵体は内管の中に収容した構造であるので、長手方向に沿った外管部などを透明材料にすることにより内部のインキ量を確認しやすい軸デザインにすることが可能である。
【0017】
実施例2
図3、図4に本発明の実施例2を示す。図3は本実施例の縦断面図であり、図4は本実施例の要部拡大横断面図である(図3のB−B'断面図)。実施例2は、実施例1において、実施例1の塗布具を更に外軸8によって覆った以外は、実施例1と同じである。本実施例に係る塗布具は、筒状の外軸8を形成し、外軸8後方部は、蓋体16を圧入固定することによって閉じている。蓋体16には、リブ16aを配置しており、インキ収容部11を固定している。また、外軸8前方部には、軸長手方向に縦リブ8aを形成しており、インキ吸蔵体15後端は、リブ16aと縦リブ8aとを介して外気と連通している。本実施例に係る塗布具の作用効果は、実施例1の塗布具と同様であるが、外軸を配置することによって、インキ吸蔵体からの外気流通路を迂回させることになり、仮にインキ吸蔵体からインキが洩れたとしても、塗布具の外部に漏れ出る経路が実施例1の塗布具より長くなっているので、インキ漏れに対して、より安全な構造になっている。
【0018】
実施例3
図5、図6に本発明の実施例3を示す。図5は本実施例の縦断面図であり、図6は本実施例の要部拡大横断面図である(図5のA−A'断面図)。参照符号21はインキ収容部で、後方部は閉じており、外管21aと内管21bとよりなる二重管状で囲まれており、外管21aと内管21bの間にインキ収容部21を形成している。また、インキ収容部21前方部は開口しており、外管21a内壁と前軸22とが圧入固定されている。筒状の前軸22には、内壁に顎部22aが配置しており、塗布体23が挿入固定されている。
【0019】
塗布体23の後部23aには、インキ連通部24を配置しており、塗布体の後部23aと接続している。インキ連通部24の後部24aは、凸状の円筒形状をしており、柱状のインキ吸蔵体25前部に前記後部24aを挿入することでインキ吸蔵体25と圧縮接続している。また、インキ吸蔵体25の後方部は、蓋体26によって固定されている。蓋体26は、筒状の外軸28後方部と圧入固定することによって外軸28後部を閉じており、外軸28は、インキ収容部21及び前軸22を被うように配置している。蓋体26には、リブ26aを配置しており、インキ収容部21を固定している。また、外軸28前方部には、軸長手方向に縦リブ28aを形成しており、インキ吸蔵体25は、リブ26aと縦リブ28aとを介して外気と連通している。
【0020】
インキ連通部24は、インキ吸蔵体25より毛管力が高く、塗布体23より毛管力の低い、インキ吸蔵体25とは別体の連通多孔質体を用いている。なお、多孔質体の毛管力の一般的な調整方法としては、連通多孔質体の気孔率を低くすることによって毛管力を高くすることができ、逆に気孔率を高くすることによって毛管力を低くことができるので、塗布体23、インキ吸蔵体25の毛管力に合わせて、適宜調整すればよい。また、上記多孔質体として、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン樹脂などからなる連続気泡体又は樹脂焼結体などを用いることができる。なお、インキ連通部24には、上記記載したもの以外に、アクリル系繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などからなる繊維集束体なども用いることができる。
【0021】
インキ収容体内管21bの開口端面は、コの字状に切り欠かれており、インキ連通部24とインキとを接続する接続部21dを形成している。また、前軸22とインキ収容部外管21aの圧入部付近にはインキ流通路27があり、インキは、インキ収容部21からインキ流通路27を通り接続部21dを介して、インキ連通部24へ供給できるようになっている。
【0022】
インキ吸蔵体5には、実施例1と同様なものを用いることができる。
【0023】
本実施例記載の塗布具の塗布作用は、実施例1と同様であるが、インキ連通部として別体の連通多孔質体を用いているので、インキ連通部の毛管力設定が容易である。
【0024】
実施例4
図7、図8に、本発明の実施例4を示す。図7は本実施例の縦断面図であり、図8は、本実施例の要部拡大横断面図である(図7のB−B'断面図)。実施例4は、実施例3において、インキ連通部34を内部横断面が中心から放射状に12本伸びたスリット状のインキ連通路34bを有する毛細管を形成した円筒状の成形物にした以外は実施例3と同じである。インキ連通部34の後部側壁部34cは、インキ収容部内管31bと圧入固定されている。また、インキ連通部34の前方側壁部34dはインキ連通路34bがむき出し状態になっており、インキは、インキ連通路34bを通って、塗布体33及びインキ吸蔵体35に連通している。また、上記成形物としては、ポリアセタール系樹脂(ホモポリマー、コポリマーなどの樹脂を含む)、ポリプロピレン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂などを材料として選択することができ、その形状は、プラスチック製ペン先などに多く用いられる、横断面異形の貫通孔を長手方向に設けた毛細管を形成した成形物を用いることができる。横断面異形の貫通孔の形状は、インキ吸蔵体と塗布体の毛管力にあわせて、適宜調整すればよい。本実施例に係る塗布具の作用効果は、実施例1と同様であるが、インキ連通部として成形物を用いたので、寸法精度の高いものを得ることができる。
【0025】
実施例5
図9、図10に、本発明の実施例5を示す。図9は本実施例の縦断面図であり、図10は、本実施例の要部拡大横断面図である(図9のC−C'断面図)。実施例5は、実施例3おいて、インキ連通部44を横断面外部に微細間隙の溝状のインキ連通路44bを有する成形物を用いた以外は、実施例3と同じである。なお、上記成型物としては、実施例4同様の材料を用いることができる。本実施例に係る塗布具の作用効果は、実施例4と同様である。
【0026】
実施例6
図11、図12に、本発明の実施例6を示す。図11は本実施例の縦断面図であり、図12は、本実施例の要部拡大横断面図である(図11のD−D'断面図)。実施例6は、実施例3において、インキ連通部54を、円柱状の成形物とし、インキ収容部内管51bとの間に毛管間隙が形成されるように、適宜の大きさにした以外は、実施例3と同じである。インキ連通部54の後部54aは、凸状の円錐形状をしており、インキ吸蔵体55と圧縮接続することによって固定されている。本実施例に係る塗布具の作用効果は、インキ連通部に配置する部材を単純な形にすることによって、より安価に製作できる以外は、実施例3と同様である。
【0027】
実施例7
図13、図14、図15に本発明の実施例7を示す。図13は本実施例の縦断面図であり、図14は図13のA−A’線横断面図で、図15は本実施例のインキ連通部要部の拡大縦断面図である。参照符号61はインキ収容部で、外管61aと内管61bとよりなる二重管状で囲まれて後方部(図中上側)は閉じており、外管61aと内管61bの間にインキを充填している。また、インキ収容部61前方部は開口しており、外管61a内壁に筒状の前軸62の外径が固定されおり、顎部62aに塗布体63が圧入固定されている。
【0028】
内管61bの先端部をインキ連通部64とし、塗布体63の後部63aが、インキ連通部64の先端部に連接しており、このインキ連通部64の内壁には、浅い雌ネジ状螺旋の連通溝により凹凸形状64eを形成してあり、内管61b後方から挿入した柱状インキ吸蔵体65の前部を挿通しインキ導通部材69としている。雌ネジ状螺旋の連通溝64eの内径(ネジ山部64e1)をインキ吸蔵体65の外径より細い関係とし、インキ吸蔵体65前部を圧縮して密度を上げ、毛管作用を強くし、同時にインキ導通部材69と雌ネジ状螺旋の谷径64e2との間に、微細な空気連通間隙kが作られる状態に挿通してあるので、この微細な空気連通間隙kは、インキ収容部61内と内管61bの後方を連通すると共に、毛管作用が強い状態になっている。
【0029】
内管61bには、後端部からインキ連通部後部に至る縦リブ61eが設けてあり、この縦リブ61eによりインキ吸蔵体65の側面は内管61b内壁との間に通気間隙61fが形成されており、この通気間隙61fは前記微細な空気連通間隙kに連通している。インキ吸蔵体65の後端部は、蓋体66によって固定されている。蓋体66は、筒状の外軸68後方部と圧入固定することによって外軸68後部を閉じており、外軸68は、インキ収容部61及び前軸62を収納している。蓋体66には、リブ66aがあり、インキ収容部61を固定している。また、外軸68前方部には、軸長手方向に縦リブ68aを形成している。このためインキ吸蔵体65の周辺は通気間隙61f、リブ66aと縦リブ68aとを介して外気と連通している。
【0030】
インキ連通部64にインキ吸蔵体65を挿通して圧縮したインキ導通部材69と雌ネジ状螺旋の谷部64e2との間の微細な空気連通間隙kは、塗布体63より毛管力が低いが、インキ吸蔵体65内の平均的な毛管より毛管力が高い状態にある。インキ連通部64の開口端面には、V字状に切り欠いた接続部61dを設けており、挿通したインキ吸蔵体65の端面とインキ収容部61内のインキとが接触している。また、前軸62と外管61aの圧入部付近にはインキ流通路67があり、インキは、インキ収容部61内からインキ流通路67を通り接続部61dを介して、インキ連通部64内に挿通したインキ導通部材69に供給できるようになっている。なお、本実施例において、インキ導通部材は、インキ吸蔵体の前部分を圧縮して形成したが、別部材を用いても良い。
【0031】
インキ吸蔵体5は、実施例1と同様のものを用いることができる。
【0032】
本実施例記載の塗布具の塗布作用は、実施例1と同様であるが、詳細には、以下の通りである。塗布において、塗布体中の毛管は、吸収していたインキが消耗するので、それを補充するために、塗布体後方部よりインキを吸い出そうとし、その毛管浸透圧でインキ収容部内が減圧され、インキ連通部内のインキが塗布体中に移動する、この時、インキ吸蔵体内にインキが多く存在する場合は、インキ吸蔵体内から補充されるが、インキ吸蔵体内のインキが少なくなっていると、インキ連通部に空気が吸入される。一方、インキ収容部内のインキは、インキ流通路を通り、インキ接続部を介してインキ連通部と接触しているので、ここで、インキ連通部内に吸入されてきた空気とインキが置き換わる(空気交換)作用が起こり、インキ収容部のインキが連続的に吐出消耗されていく。
【0033】
塗布にてインキが少なくなったインキ吸蔵体内は、空の毛管部が多く存在する状態になっていく(ここで、何の制御もなければ、インキ収容部内のインキを自然吸収し、インキが充満してしまう。このような自然吸収が進行する現象は、外部空気がインキ収容部内に吸入(空気交換)されることと表裏関係にある。)。本実施例のインキ連通部は、インキ吸蔵体の前端部をインキ連通部(管部)の山径で圧縮しており、また、連通部管壁に設けた雌ネジ状螺旋溝によって作られた空気連通間隙も、インキ吸蔵体の平均的な毛管より強い毛管作用が働くような間隙にしているので、インキ吸蔵体がインキを吸い出す時の表裏関係にある空気交換を抑制している。従って定常時、インキ吸蔵体は、インキが少なくなった状態を維持し、使用環境状態の変化で、インキ収容部内のインキが溢出する場合は、インキを吸収することが可能であり、ボタ落ちを防ぐことができる。
【0034】
このような作用が起こるのは、インキ連通部の毛管力が、インキ吸蔵体内の平均的な毛管力より高い状態にあるため、強い毛管力でインキを取り込んでおり、常に液密状態を保とうとするからである。この液密状態において、外部空気が空気交換されるようになるのは、インキ吸蔵体中に空の毛管部が多くなり、インキ吸蔵体中の毛管の一部とインキ連通部の毛管の強さが均衡化したときと、インキ連通部より更に毛管力の高い塗布体によりインキが消耗された場合であり、この時、液密状態の平衡が壊れて、空気交換がされる仕組みである。従って、この様な状態以外の場合は、インキ収容部内のインキがインキ吸蔵体へ移動するのが抑制されている。
【0035】
よって自然放置状態時、インキ吸蔵体は常にインキが吸収できるスペースを確保しているから、温度変化によりインキ収容部内の空気が膨張し、インキ収容部より強制的にインキが溢出することがあっても、塗布先からボタ落ちする前にインキ吸蔵体が吸収するので塗布体よりのインキボタ落ちを防ぐことができる。再びインキ収容部内の空気が収縮する場合、インキ吸蔵体に入ったインキはインキ収容部内の減圧によって吸い戻されること、及びインキ吸蔵体のインキが塗布中に真っ先に消耗されるので、再びインキを吸収する能力を回復し、繰り返される膨張・収縮にもインキ漏洩が起こりにくいものになっている。
【0036】
この様な作用は、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素などの溶剤よりなる油性インキにも好適で、インキ連通部内には、ネジ状溝により微細間隙が精度良く設けてあるので、塗布体のインキ吐出消耗に呼応したインキ収容部への空気吸入及びインキの移動も適切に行うことができ、インキの吐出性とインキ漏洩に対して好ましい筆記具が得られる。
【0037】
実施例8
本発明の実施例8を図16に示す。本実施例は、実施例7におけるインキ連通部74内壁に設けた凹凸形状を、傾斜状の凸リブによって形成してある以外は実施例7と同じである。インキ連通部74の内壁部には、連通溝として平行する複数の傾斜状態の凸リブ74e1(凸部と管壁の段差が150ミクロンメーター以下)が設けられており、インキ吸蔵体(図示せず)を圧縮して挿通した状態にある。この凸リブ74e1によってインキ吸蔵体の圧縮部(インキ導通部材)側面と内壁との間には、微細な空気連通間隙(図示せず)が形成されており、この微細な空気連通間隙は、実施例7と同様に内管後方側面の通気間隙とインキ収容部内とを連通している。この微細な空気連通間隙は、実施例7と同様に、インキ吸蔵体内の平均的な毛管より毛管力が強く、塗布体の毛管より弱い状態に形成されているので、インキ吸蔵体内の毛管は、定常時インキ収容部内のインキを充満するまで自然吸収することが抑制されており、インキ吸収可能な空の毛管部を多く残した状態になっている。従って、本実施例に係る塗布具の作用効果は、実施例7と同様である。
【0038】
実施例9
本発明の実施例9を図17に示す。本実施例は、実施例7におけるインキ連通部84内壁に設けた凹凸形状を、縦・横・斜め形状の凸リブ(84e0,84e1)によって形成してある以外は実施例7と同じである。この凸リブ(84e0,84e1)間の間隙溝kによって、インキ吸蔵体(図示せず)の圧縮部(インキ導通部材)側面と内壁との間には、微細な空気連通間隙(図示せず)が形成されており、この微細な空気連通間隙は、実施例7と同様に内管後方側面の通気間隙とインキ収容部内とを連通している。本実施例に係る塗布具の作用効果は、実施例7と同様である。
【0039】
【発明の効果】
本発明に係る塗布具は、水性インキを用いた場合でも、油性インキを用いた場合でも、保存中や使用上の諸々の使用環境条件下において、ボタ落ちなどインキ漏洩をせず、適切なインキ吐出を維持する品質を備え、且つ、外観から見て軸内のインキ残留量を確認しやすく、実用的に安価に製作できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図 1】 実施例1の縦断面図である。
【図 2】 図1のA−A’線断面図である。
【図 3】 実施例2の縦断面図である。
【図 4】 図3のB−B’線断面図である。
【図 5】 実施例3の縦断面図である。
【図 6】 図5のA−A’線断面図である。
【図 7】 実施例4の縦断面図である。
【図 8】 図7のB−B’線断面図である。
【図 9】 実施例5の縦断面図である。
【図10】 図9のC−C’線断面図である。
【図11】 実施例6の縦断面図である。
【図12】 図11のD−D’線断面図である。
【図13】 実施例7の縦断面図である。
【図14】 図13のA−A’線断面図である。
【図15】 実施例7のインキ連通部の要部拡大断面図である。
【図16】 実施例8のインキ連通部の要部拡大断面図である。
【図17】 実施例9のインキ連通部の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 インキ収容部
11 インキ収容部
21 インキ収容部
61 インキ収容部
3 塗布体
23 塗布体
33 塗布体
63 塗布体
4 インキ連通部
34 インキ連通部
24 インキ連通部
34 インキ連通部
44 インキ連通部
54 インキ連通部
64 インキ連通部
74 インキ連通部
84 インキ連通部
5 インキ吸蔵体
15 インキ吸蔵体
25 インキ吸蔵体
35 インキ吸蔵体
55 インキ吸蔵体
65 インキ吸蔵体

Claims (5)

  1. インキ連通部の一端にインキ吸蔵体前側を連設し、インキ連通部の他端に塗布体を接続し、インキ連通部とインキ収容部とを接続してなり、インキ吸蔵体後側は外気と連通し、前記インキ連通部の毛管力を、インキ吸蔵体の毛管力よりも高く、塗布体の毛管力より小さくなすと共に、前記インキ連通部の前記塗布体側の前端部にそのインキ連通部とインキ収容部内とを接続する接続部を形成したことを特徴とする塗布具。
  2. インキ収容部は、外管と内管よりなる二重管状で、外管と内管の間をインキ収容部としており、内管内部の長軸方向に並列してインキ吸蔵体を配置したものであることを特徴とする請求項1記載の塗布具。
  3. インキ連通部が、前記インキ吸蔵体と別体の連通多孔質体であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の塗布具。
  4. インキ連通部が、内部に微細な貫通孔を長手方向に設けた成形物であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の塗布具。
  5. インキ連通部の内壁を凹凸形状とすることによって、これに対面するインキ導通部材の外壁との間に、インキ収容部に通じる空気連通間隙となる微細間隙を形成すると共に、前記インキ導通部材の毛管力をインキ吸蔵体の毛管力よりも高く、塗布体の毛管力より小さくなしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の塗布具。
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