JP6140605B2 - Al合金鋳造品及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Si、Ca、P、Feを含むAl合金の溶湯を凝固させて得られるAl合金鋳造品及びその製造方法に関する。
一般に、Al合金鋳造品では、鋳造時に、金型に充填された溶湯の凝固速度が最も遅い部分を中心として、凝固収縮に伴う内部空隙(鋳巣)が発生することが知られている。例えば、内燃機関のシリンダヘッド等のように圧縮圧力が加えられる部材をAl合金鋳造品で構成する場合、上記の鋳巣が集中し互いに連なっているときに、圧漏れが生じ易くなる。従って、製品としての歩留まりを向上させるためには、圧漏れにつながる規模の鋳巣が発生することを抑制する必要がある。
また、Al合金鋳造品では、鋳造組織が微細で均一であるほど、優れた機械的性質(例えば、強度や靱性等)を示すことが知られている。従って、良好な機械的性質を示すAl合金鋳造品を得るべく、鋳造組織を可及的に微細化することが求められている。
そこで、例えば、特許文献1では、圧漏れにつながるような鋳巣の発生が抑制され、且つ鋳造組織が微細化されたAl合金鋳造品を得るための技術が提案されている。具体的には、Al合金鋳造品を製造する過程で不純物として混入するCaを、フッ化アルミニウムカリウムの脱Ca能を利用して、溶湯中から除去している。これによって、Caが鋳巣を分散及び連続させて、圧漏れにつながる鋳巣を生じさせること、及びCaがAl合金中に添加したPと反応して、Pによる初晶Siの微細化作用を阻害することを防止するとのことである。つまり、特許文献1では、Al合金鋳造品を得る際に、Al合金の溶湯に添加したフッ化アルミニウムカリウムをCaと反応させて、溶湯中のCaを可及的少量とすることが提案されている。
また、特許文献2では、鋳造組織が微細化されたAl合金鋳造品を得るための技術が提案されている。すなわち、過共晶Al−Si合金に関して、Pによる初晶Siの微細化作用をCaが阻害し、Caによる共晶組織の微細化作用をPが阻害するため、これらの改善を図るべくCaとPの成分バランス等を調整している。具体的には、過共晶Al−Si合金の鋳造組織について、Si:13〜21質量%、Ca:6〜70ppm、P:40ppm以上100ppm未満とし、且つP/Caを質量比で0.6〜6の範囲としている。
特公昭61−51616号公報 特許第2730423号公報
しかしながら、特許文献1記載の技術では、Al合金の溶湯中からCaを除去することのみに着目しており、Caによる共晶組織の微細化作用を得ることについては一切考慮されていない。すなわち、特許文献1の記載に従って作業を行う際、過度にCaを除去してしまうと、Al合金鋳造品の鋳造組織を十分に微細化することが困難になる懸念がある。
また、特許文献2記載の技術では、溶湯を指向性凝固させる場合のように、金型内における溶湯の凝固速度が部位毎に異なるとき、初期凝固部位から最終凝固部位までの全ての部位で、上記のCaとPの成分バランスを維持することは困難である。溶湯の最終凝固部位及びその近傍では、他の部位で晶出しなかったCaやP等が濃縮されるためである。従って、指向性凝固を行う際に、特許文献2の技術を用いても、最終凝固部位におけるCaやPの量は過剰となってしまう。このため、Al合金鋳造品に圧漏れにつながる鋳巣が生じ易くなり、且つ鋳造組織を十分に微細化することが困難になる懸念がある。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、凝固速度の如何に関わらず、圧漏れにつながる鋳巣の発生が回避され、且つ鋳造組織が十分に微細化されたAl合金鋳造品及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らの鋭意検討によれば、Si、Fe、Ca、Pを含むAl合金鋳造品では、これらの元素の金属間化合物、すなわち、Al−Si−Fe−Ca−P化合物が鋳造組織中に晶出しているとの知見が得られた。また、上記の通りCa、P、Fe等が濃縮される最終凝固部位及びその近傍において、特に、Al−Si−Fe−Ca−P化合物の晶出量が増大し、該晶出量が多い部位ほど、圧漏れにつながる鋳巣の発生率が高いとの知見も得られた。
このAl−Si−Fe−Ca−P化合物は、樹状に広がって粗大化し易く、その晶出量が増大すると、溶湯の湯流れを阻害する要因になる可能性がある。つまり、最終凝固部位及びその近傍のようにAl−Si−Fe−Ca−P化合物の晶出量が増大し易い部位では、該化合物に湯道が遮られて溶湯の流動が阻害されることにより、圧漏れにつながる鋳巣が発生し易くなると推察される。
以上の観点から、本発明者らは、上記の特許文献1、2記載の技術では一切考慮されていない、溶湯のCa、P、Fe等の含有量と、Al−Si−Fe−Ca−P化合物の晶出量との関係に着目しつつ、さらなる鋭意検討を行って本発明をするに至った。
すなわち、本発明は、Si、Ca、P、Feを含むAl合金鋳造品であって、Siを4.0〜10.0質量%、Feを0.15〜0.50質量%、Caを7〜15質量ppm、Pを3〜8質量ppm含有し、残部の組成がJIS AC2A、AC2B、AC4B、AC4Dの何れか1つと同様であるAl合金の溶湯から得られ、1.5mm×1.8mmの面積内に晶出するAl−Si−Fe−Ca−P化合物の面積率が全部位で10%未満であることを特徴とする。
Si、Ca、P、Feを含むAl合金鋳造品について、鋳造組織中に晶出するAl−Si−Fe−Ca−P化合物(以下、単に化合物ともいう)の上記面積率が10%未満であるとき、キャビティ内での溶湯の湯回りを良好に維持することができる。その結果、Al合金鋳造品に圧漏れにつながる鋳巣が発生することを効果的に抑制できる。
本発明に係るAl合金鋳造品では、溶湯のSi、Fe、Ca、Pの割合が上記の通り調整され、特にCaの含有量が15ppm以下となっている。このような溶湯を凝固させて得られるAl合金鋳造品では、Si、Fe、Ca、Pの成分が金属間化合物を形成することを抑制でき、凝固速度の如何に関わらず、全部位における化合物の上記面積率を10%未満にすることができる。
つまり、例えば、指向性凝固を行う場合に、他部位に比して溶湯の冷却速度(凝固速度)が小さく、且つCa、P、Feが濃縮された最終凝固部位であっても、化合物の晶出を十分に抑制することができる。従って、圧漏れにつながる鋳巣の発生が全部位で回避されたAl合金鋳造品を得ることができる。この場合、例えば、最終凝固部位等を除去することなくAl合金鋳造品を得ることが可能になり、省資源化及び低コスト化を図ることができる。
また、上記の溶湯では、Caによる共晶組織の微細化作用が十分に得られるように、Caの含有量が7ppm以上となっている。さらに、最終凝固部位で成分が濃縮された状態であっても、Caの共晶組織の微細化作用を阻害することなく、初晶Siの微細化作用が十分に得られる成分バランスが維持できるようにPの含有量を調整するとよい。すなわち、上記の通り調整されたCaの含有量に合わせて、Ca/Pが質量比で略1.94となるようにPの含有量を調整することが好ましい。これによって、上記の通り圧漏れにつながる鋳巣が抑制できることに加えて、凝固速度の如何に関わらず、全部位で、初晶Si、共晶Si、化合物等の鋳造組織が良好に微細化されたAl合金鋳造品を得ることが容易となるからである。
以上から、例えば、高圧鋳造(HPDC)に比して凝固速度が小さい低圧鋳造(LPDC)及び重力鋳造(GDC)を採用した場合であっても、全部位において圧漏れにつながる鋳巣の発生を抑制し、且つ鋳造組織を良好に微細化することができる。さらに、この場合、ガスの巻き込み等を低減することができるため、緻密なAl合金鋳造品を得ることが可能になる。
1.5mm×1.8mmの面積内に晶出している全ての晶出相の面積率が全部位で20%未満であることが好ましい。上記の通り、Al合金鋳造品の鋳造組織中に晶出している化合物の上記面積率が10%未満であるとき、該化合物や共晶Si等を含む全ての晶出相の面積率が20%未満となることがほとんどである。この場合、圧漏れにつながる鋳巣の抑制及び鋳造組織の微細化を一層良好に図ることができる。
また、本発明は、Si、Ca、P、Feを含むAl合金鋳造品の製造方法であって、Siを4.0〜10.0質量%、Feを0.15〜0.50質量%、Caを7〜15質量ppm、Pを3〜8質量ppm含有し、残部の組成がJIS AC2A、AC2B、AC4B、AC4Dの何れか1つと同様であるAl合金の溶湯を鋳造金型装置のキャビティに供給する工程と、前記キャビティ内で、前記溶湯を凝固させ、1.5mm×1.8mmの面積内に晶出しているAl−Si−Fe−Ca−P化合物の面積率が全部位で10%未満であるAl合金鋳造品を得ることを特徴とする。
このような過程を経ることにより、上記の通り、凝固速度の如何に関わらず、圧漏れにつながる鋳巣の発生が回避され、且つ鋳造組織が十分に微細化されたAl合金鋳造品を容易に得ることができる。このように、Al合金鋳造品の圧漏れ不良率を低減できることで、歩留まりを向上させることができる。また、例えば、最終凝固部位等を除去する必要がない分、Al合金鋳造品を省資源且つ簡略な工程で低コストに得ることが可能になる。
前記鋳造金型装置は、前記溶湯を指向性凝固させるものであり、前記溶湯の最小冷却速度を0.1〜0.7℃/秒とすることが好ましい。溶湯を指向性凝固する際の最小冷却速度を上記の通り設定して、緻密な鋳造組織を得るべくLPDC又はGDC等を行っても、全部位において圧漏れにつながる鋳巣の発生が抑制され、且つ鋳造組織が良好に微細化されたAl合金鋳造品を得ることができる。
Al合金鋳造品を得る際、1.5mm×1.8mmの面積内に晶出している全ての晶出相の面積率を全部位で20%未満とすることが好ましい。この場合、圧漏れにつながる鋳巣の抑制及び鋳造組織の微細化を良好に図ることができる。
本発明によれば、Si、Fe、Ca、Pの含有量を各々調整したAl合金の溶湯からAl合金鋳造品を得る。これによって、凝固速度の如何に関わらず、Al合金鋳造品の全部位について、Al−Si−Fe−Ca−P化合物の晶出量を一定値未満に制限し、且つ鋳造組織を十分に微細化することができる。その結果、圧漏れにつながる鋳巣の発生が回避され、強度や靱性等の機械的性質にも優れたAl合金鋳造品を歩留まり良く得ることが可能になる。
本実施形態に係るAl合金鋳造品aと、比較例に係るAl合金鋳造品b、c1、c2、dの鋳造組織を示す光学顕微鏡写真である。 図1に示すAl合金鋳造品a〜dについて、1.5mm×1.8mmの面積に対する化合物、晶出相、鋳巣のそれぞれの面積率を示すグラフである。 溶湯のCa含有量と、圧漏れが生じるAl合金鋳造品を不良品とした際の不良率との関係を示すグラフである。
以下、本発明に係るAl合金鋳造品及びその製造方法につき好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係るAl合金鋳造品は、任意の用途に適用可能であるが、例えば、内燃機関のシリンダヘッド等として好適に用いられるものであり、Si、Ca、P、Feを含むAl合金の溶湯から得られる。
具体的には、Al合金の溶湯は、Siを4.0〜10.0質量%、Feを0.15〜0.50質量%、Caを7〜15ppm、Pを3〜8ppm含有する。また、残部は、Alと、不可避的不純物であってもよいが、その他の金属元素を含んでいてもよい。なお、残部の組成については、特に限定されるものではないが、例えば、日本工業規格(JIS)に規定される、AC2A、AC2B、AC4B、AC4D等と同様とすることができる。
なお、これらのAl合金にも、SiやCa、Feは含有されているが、JISにおいて、各々の組成比は所定値以下であることが規定されているのみであり、下限値及び上限値が設定された範囲としては規定されていない。
上記の溶湯を、後述する通り、鋳造金型装置を用いて凝固させることで、Al合金鋳造品を得ることができる。このように、Si、Fe、Ca、Pを含むAl合金鋳造品では、これらの元素の金属間化合物、すなわち、Al−Si−Fe−Ca−P化合物が、共晶Si等と共に鋳造組織中に晶出している。
この化合物は、上記したように樹状に広がって粗大化し易く、その晶出量が増大すると、溶湯の湯流れ等を阻害する要因になる。この化合物の晶出量は、最終凝固部位及びその近傍のように、Fe、Ca、Pが濃縮された部位で多くなり易い。つまり、最終凝固部位及びその近傍では、化合物によって溶湯の湯道が遮られて、溶湯の供給が阻害されることにより、圧漏れにつながる鋳巣が発生し易くなる。
そこで、本実施形態に係るAl合金鋳造品では、例えば、最終凝固部位等を含む全部位での化合物の晶出量について、溶湯の良好な湯回りを維持できる範囲、すなわち、圧漏れにつながる鋳巣を抑制できる範囲に制限している。具体的には、Al合金鋳造品の全部位において、1.5mm×1.8mmの面積内に晶出している化合物の面積率が10%未満となっている。また、このとき、上記の面積内に晶出している全ての晶出相の面積率が20%未満となっている。
以下、Al合金鋳造品の製造方法について、低圧鋳造(LPDC)又は重力鋳造(GDC)を行う鋳造金型装置によって、上記の溶湯を指向性凝固させる場合を例に挙げて説明する。なお、本発明に係るAl合金鋳造品は、特にLPDC及びGDCに限られず、例えば、高圧鋳造(HPDC)等の周知の鋳造方法を用いて製造することが可能である。また、凝固速度についても特に限定されるものではなく、如何なる速度で凝固させてもよい。
この製造方法では、先ず、上記のようにSi、Fe、Ca、P等の成分を調整した溶湯を鋳造金型装置のキャビティに供給する。キャビティに充填された溶湯は、温度が所定値以下となった部分から凝固していく。このため、例えば、金型の湯口から遠い部分を冷やし金等によって冷却することで、冷却部分から湯口側に向かって徐々に凝固を進行させる指向性凝固を行うことができる。この場合、上記の冷却部分の近傍が初期凝固部位となり、湯口側の近傍が最終凝固部位となる。また、初期凝固部位から最終凝固部位に向かうにつれて、溶湯の冷却速度(凝固速度)が小さくなる。
好適な冷却速度の一例としては、初期凝固部位で3〜10℃/秒であり、最終凝固部位で0.1〜0.7℃/秒である。このように冷却速度を設定することで、ガスの巻き込み等を低減し、緻密なAl合金鋳造品を得ることができる。一般的にAl合金の溶湯を鋳造する場合、冷却速度が小さい程、圧漏れにつながる鋳巣が発生し易くなる。しかしながら、上記の通り溶湯の成分を調整した本実施形態では、上記のように小さな冷却速度であっても、圧漏れにつながる鋳巣の発生を抑制し、且つ鋳造組織を良好に微細化できる。
なお、最終凝固部位は、Al合金鋳造品の用途や形状等に応じて適宜の部位に設定することができる。また、この最終凝固部位は、Al合金鋳造品の形状等から溶湯流動解析、凝固解析等の方法を用いて解析することが可能である。
このように溶湯を順次凝固させることで、Al合金鋳造品を得ることができる。この際、上記の通り、最終凝固部位及びその近傍では、他の部位で晶出しなかったCa、P、Fe等が濃縮されるため、化合物を含む全ての晶出相の晶出量が増大し易い。化合物の晶出量が所定の量を超えて増大する部位では、圧漏れにつながる鋳巣が生じ易くなる。
具体的には、Al合金鋳造品の1.5mm×1.8mmの面積内に晶出している化合物の面積率が10%以上、及び晶出相の面積率が20%以上になると、圧漏れ不良によるAl合金鋳造品の不良率が増大する。
本実施形態に係るAl合金鋳造品では、Si、Fe、Ca、Pの割合が上記のように調整され、特にCaの含有量が15ppm以下である溶湯を凝固させて得られる。このため、たとえ、最終凝固部位において上記の成分が濃縮されても、Caが、Si、Fe、Pと金属間化合物を形成することを抑制できる。これによって、最終凝固部位を含む全部位において、化合物の上記の面積率を10%未満とすることができる。すなわち、Al合金鋳造品において、凝固速度の大きい初期凝固部位は勿論、凝固速度の小さい最終凝固部位についても、化合物の晶出量を圧漏れにつながる鋳巣の発生を抑制できる範囲に制限できる。従って、凝固速度の如何に関わらず、全部位で圧漏れにつながる鋳巣の発生が回避されたAl合金鋳造品を得ることができる。
また、上記の溶湯では、Caによる共晶組織の微細化作用が十分に得られるように、Caの含有量が7ppm以上となっている。さらに、最終凝固部位で成分が濃縮された状態であっても、Caの共晶組織の微細化作用及びPの初晶Siの微細化作用の各々が良好に得られるように、Ca及びPの含有量が調整されている。すなわち、Caの含有量に合わせて、Ca/Pが質量比で略1.94となるようにPの含有量が調整されている。これによって、凝固速度の如何に関わらず、全部位で、初晶Si、共晶Si、化合物等の鋳造組織が良好に微細化されているAl合金鋳造品を得ることができる。
以上から、圧漏れにつながる鋳巣の発生が回避され、強度や靱性等の機械的性質にも優れたAl合金鋳造品を得ることができる。また、Al合金鋳造品の圧漏れ不良率を低減できることで、歩留まりを向上させることができる。さらに、最終凝固部位等を除去する必要がない分、Al合金鋳造品を省資源且つ簡略な工程で低コストに得ることが可能になる。
なお、本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは勿論である。
上記の通り成分を調整した溶湯からAl合金鋳造品の実施例aを作製し、比較用に成分を調整した複数の溶湯からそれぞれAl合金鋳造品の比較例b、c、dを作製した。そして、実施例a及び比較例b〜dのAl合金鋳造品のそれぞれについて、鋳造組織の観察を行った。
具体的には、Siを7.0質量%、Feを0.50質量%、Caを10.7ppm、Pを5.5ppm含有し、残余の成分がJIS合金 AC2B系と同様である溶湯を指向性凝固させて実施例aのAl合金鋳造品を作製した。
また、実施例aの溶湯の成分中、Caを6.7ppm、Pを3.5ppmとした比較例b、Caを28.0ppm、Pを14.4ppmとした比較例c、Caを34.6ppm、Pを17.8ppmとした比較例dのAl合金鋳造品をそれぞれ作製した。なお、実施例a、比較例b〜dのAl合金鋳造品について、溶湯の成分以外の作製条件は同様である。
次に、実施例a及び比較例b〜dのAl合金鋳造品の鋳造組織を光学顕微鏡によって観察した。その結果を図1に示す。図1において、実施例a及び比較例b、dのAl合金鋳造品の光学顕微鏡写真は、最終凝固部位近傍を撮影したものである。また、比較例cのAl合金鋳造品の光学顕微鏡写真は、c1が初期凝固部位近傍、c2が最終凝固部位近傍を撮影したものである。なお、図1では、化合物に10、共晶Siに12、化合物10及び共晶Si12を含む全ての晶出相に14、鋳巣に16の参照符号をそれぞれ付している。
次に、実施例a及び比較例b〜dのAl合金鋳造品の最終凝固部位近傍と、比較例cのAl合金鋳造品の初期凝固部位近傍とについて、1.5mm×1.8mmの面積内に晶出している化合物10、晶出相14、鋳巣16の面積率をそれぞれ算出した。その結果を図2に示す。なお、図2では、化合物10の面積率を■、晶出相14の面積率を◆、鋳巣16の面積率を▲で示している。また、この面積率は、Al合金鋳造品の最終凝固部位及び初期凝固部位の各々について、複数箇所で光学顕微鏡写真を撮影し、画像処理を行って得られた面積率を平均した値である。
図1及び図2から諒解されるように、実施例aのAl合金鋳造品では、最終凝固部位近傍であっても、化合物10の面積率が6.5%、晶出相14の面積率が13.3%であり、鋳巣16の面積率が0.2%であった。すなわち、化合物10の面積率を10%未満とし、晶出相14の面積率を20%未満とすることができ、このとき、圧漏れにつながる鋳巣の発生が回避されていることが確認された。また、鋳造組織の微細化が十分に図られていることが確認された。
なお、実施例aのAl合金鋳造品では、上記の通り、最終凝固部位で、圧漏れにつながる鋳巣の回避及び鋳造組織の良好な微細化が可能であったことからも当然に、初期凝固部位においても、圧漏れを回避し且つ鋳造組織を良好に微細化することができた。
比較例bのAl合金鋳造品では、最終凝固部位近傍での化合物10、晶出相14、鋳巣16のそれぞれの面積率が4.6%、9.5%、0.1%であった。このとき、化合物10の面積率が10%未満であり、且つ晶出相14の面積率が20%未満であるため、圧漏れにつながる鋳巣の発生は回避されていた。しかしながら、鋳造組織は十分に微細化されていないことが確認された。これは、溶湯のCaの含有量が7ppm未満であり、Caの微細化作用を得るのに十分な量に満たなかったためと考えられる。
比較例cのAl合金鋳造品では、溶湯を指向性凝固させた結果、Caの含有量が、初期凝固部位近傍c1では17.9ppmであるのに対し、最終凝固部位近傍c2では111ppmまで濃縮されていることが確認された。この場合、化合物10、晶出相14、鋳巣16のそれぞれの面積率が、初期凝固部位近傍c1では、5.9%、16.2%、0.6%であり、最終凝固部位近傍c2では、10.7%、26.8%、4.8%であった。つまり、最終凝固部位近傍においては、化合物10の面積率が10%を超え、且つ晶出相14の面積率が20%を超えてしまい、圧漏れにつながる鋳巣が発生した。
比較例dのAl合金鋳造品では、最終凝固部位近傍での化合物10、晶出相14、鋳巣16のそれぞれの面積率が13.8%、28.1%、7.7%であった。すなわち、化合物10の面積率が10%を超え、且つ晶出相14の面積率が20%を超えており、圧漏れにつながる鋳巣が発生した。
以上から、溶湯のCa含有量を15ppm以下とすることで、化合物10の面積率を10%未満、晶出相14の面積率を20%未満とし、化合物10の最大長を20μm程度とすることができる。この場合、Al合金鋳造品に圧漏れにつながる鋳巣が発生することを回避することができることが分かった。このことは、溶湯のCa含有量と圧漏れ不良率との関係を示すグラフである図3において、溶湯Ca含有量が15ppmを超えたときに、圧漏れ不良率が大きく上昇していることからも明らかである。
また、溶湯のCa含有量を7ppm以上とすることで、化合物10及び共晶Si12の各々や、これらを含む晶出相14からなる鋳造組織を良好に微細化できることが分かった。
従って、Siを4.0〜10.0質量%、Feを0.15〜0.50質量%、Caを7〜15ppm、Pを3〜8ppm含有するAl合金の溶湯から得られたAl合金鋳造品では、凝固速度の如何に関わらず、全部位について、化合物10の面積率を10%未満、晶出相14の面積率を20%未満に制限し、且つ鋳造組織を十分に微細化することができる。その結果、圧漏れにつながる鋳巣の発生が回避され、強度や靱性等の機械的性質にも優れたAl合金鋳造品を歩留まり良く得ることが可能になる。
10…Al−Si−Fe−Ca−P化合物 12…共晶Si
14…晶出相 16…鋳巣

Claims (5)

  1. Si、Ca、P、Feを含むAl合金鋳造品であって、
    Siを4.0〜10.0質量%、Feを0.15〜0.50質量%、Caを7〜15質量ppm、Pを3〜8質量ppm含有し、残部の組成がJIS AC2A、AC2B、AC4B、AC4Dの何れか1つと同様であるAl合金の溶湯から得られ、
    1.5mm×1.8mmの面積内に晶出するAl−Si−Fe−Ca−P化合物の面積率が全部位で10%未満であることを特徴とするAl合金鋳造品。
  2. 請求項1記載のAl合金鋳造品において、前記面積内に晶出している全ての晶出相の面積率が全部位で20%未満であることを特徴とするAl合金鋳造品。
  3. Si、Ca、P、Feを含むAl合金鋳造品の製造方法であって、
    Siを4.0〜10.0質量%、Feを0.15〜0.50質量%、Caを7〜15質量ppm、Pを3〜8質量ppm含有し、残部の組成がJIS AC2A、AC2B、AC4B、AC4Dの何れか1つと同様であるAl合金の溶湯を鋳造金型装置のキャビティに供給する工程と、
    前記キャビティ内で、前記溶湯を凝固させ、1.5mm×1.8mmの面積内に晶出しているAl−Si−Fe−Ca−P化合物の面積率が全部位で10%未満であるAl合金鋳造品を得ることを特徴とするAl合金鋳造品の製造方法。
  4. 請求項3記載のAl合金鋳造品の製造方法において、
    前記鋳造金型装置は、前記溶湯を指向性凝固させるものであり、
    前記溶湯の最小冷却速度を0.1〜0.7℃/秒とすることを特徴とするAl合金鋳造品の製造方法。
  5. 請求項4記載のAl合金鋳造品の製造方法において、
    前記面積内に晶出している全ての晶出相の面積率を全部位で20%未満とすることを特徴とするAl合金鋳造品の製造方法。
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