JP4623372B2 - 鋳物用アルミニウム合金およびその製造方法、ならびにアルミニウム合金鋳造製品の製造方法 - Google Patents
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Description
「ひけ」とは、鋳型に注入されたアルミニウム合金の溶湯が凝固時に体積収縮を起こす結果、鋳造品の内部に形成される空間のことである。「ひけ」には、主に「内びけ」と「外びけ」とがある。「内びけ」は、鋳造品の内部に形成される閉じた状態のひけである。「外びけ」は、鋳造時に、溶湯を供給する湯口の近傍であって、鋳造品の表面付近に形成される開いた状態のひけである。通常のダイカストなどでは、湯口に通じる溶湯には圧力を付与している。よって、溶湯の更なる供給が可能な「外びけ」はそれ程問題とはならない。しかし、湯口が閉塞するために、その後の溶湯の内部収縮を補償することが出来ない「内びけ」は重大な内部欠陥となる。
ここには、鉄を多量に含むアルミニウム―ケイ素―マグネシウム系またはアルミニウム−ケイ素−マグネシウム−銅系合金において、合金中に適量のカルシウムを添加含有させることで、合金鋳造に際して鋳物中に見られる互いに連通する亀裂状の引け巣および微細な線状の引け巣の発生を大巾に減少させることができ、鋳物の耐圧性を一段と向上させることができる旨が記載してある。しかし、どのようなメカニズムによって内びけが低減されるのかは明らかではない。
しかし、リンおよびカルシウムがアルミニウム合金中に共存する場合に、製品としての鋳物用アルミニウム合金にどのようなひけが発生するか、そして、リンとカルシウムとの含有量の関係をどのように設定すれば、ひけ(特に、内びけ)の発生を有効に抑えることができるか等、ひけの形成挙動に関する研究はほとんどなされていない。このため、鋳物用アルミニウム合金中のひけを確実に防止できる技術は未だ確立されていない。
本発明に係る鋳物用アルミニウム合金の特徴構成は、ケイ素:4.5〜12.5質量%、銅:1.5〜5.0質量%、マグネシウム:0.2〜0.5質量%、リン:X質量%、カルシウム:Y質量%、ならびに、残部アルミニウムおよび不純物からなり、前記リン、および、前記カルシウムの含有量が、0.0030≦Y≦0.0100、Y≧1.94X>0 を充足する点にある。
本構成の鋳物用アルミニウム合金は、特に、リンの含有量をX質量%とし、カルシウムの含有量をY質量%としたとき、カルシウムが、0.0030≦Y≦0.0100 であり、リンとカルシウムとの関係が、Y≧1.94X>0 を充足する。
カルシウムはひけの抑制に有効な物質である。しかし、カルシウムの添加量が過剰になると、カルシウムが合金中のシリコンと結合して板状結晶を生成するようになる。このような板状結晶が多量に発生すると、それらが互いに連結することで鋳型の薄肉部の閉塞を促進させ、ひけ性が悪くなる。また、この板状結晶は、合金の靭性(伸び性・耐衝撃性)を低下させる。そこで、カルシウムの含有量を0.0100%以下に設定することで,上記不都合の発生を防止している。
しかし、アルミニウム合金の溶湯中にリンとともにカルシウムが共存すると、アルミニウムと化合していたリンが優先的にカルシウムと化合して、リン化カルシウムを形成する。このリン化カルシウムの格子定数は、シリコンの格子定数と大きく異なる。よって、共晶凝固時に不均質核生成を引き起こすことが無く、内びけの発生を有効に防止することができる。
本発明の鋳物用アルミニウム合金においては、前記リンの含有量を、X≦0.0025とすることができる。
通常のアルミニウム合金では、リンの含有量が0.0025質量%を越える場合は少ない。また、仮に、リンの含有量が0.0025質量%を越える合金を用いる場合には、カルシウムの添加量を増大してリン化アルミニウムを確実に除去する必要がある。しかし、リンの含有量が多くなれば、カルシウムとの化合物を形成するのにもある程度の時間が必要になる。リンが合金中で偏在している場合には、全てのリンを処理できない事態も生じ得る。
このため、本構成の如く、リンの含有量の最大値を0.0025質量%と設定することで、リン化アルミニウムを確実に除去したアルミニウム合金を効率的に得ることができる。
本発明の鋳物用アルミニウム合金においては、前記カルシウムの含有量を、Y≧0.0050 とすることができる。
本構成の如く、カルシウムの含有量を0.0050質量%以上に限定したのは、一般の合金中に含まれるリンの含有量と関連する。通常、アルミニウム合金中のリン含有量は高々0.0025質量%である。本件発明は、リンの含有量に応じてリンを除去できるカルシウムを混入させるものである。よって、リン含有量の測定は、最適なカルシウムを投入するために必要である。
ただし、当該測定には時間と費用とが伴う。また、従来の技術より、カルシウムがある程度過剰に存在しても、当該カルシウムはひけの低減に寄与する。
そこで、本構成のごとく、アルミニウム合金中のリン含有量を一律に0.0025質量%であるとし、これに対して約1.94倍の重量のカルシウムを混入することにしたものである。本構成では、リンの含有量に拘らず、少なくとも0.0050質量%のカルシウムを合金中に混入させる。ただし、合金中のリン含有量が仮にゼロであっても、合金中のカルシウム含有量は上記0.0100質量%を越えることはなく、ひけ性に悪影響を及ぼすことは無い。
このように、本構成であれば、リンを確実に除去したアルミニウム合金を効率的に得ることができる。
本発明に係る鋳物用アルミニウム合金の製造方法は、アルミニウム合金の原材料から鋳造用アルミニウム合金を製造するものであって、ケイ素:4.5〜12.5質量%、銅:1.5〜5.0質量%、マグネシウム:0.2〜0.5質量%、微量のリン:X質量%、ならびに、残部アルミニウムおよび不純物からなる前記原材料中のリンの含有量を測定する工程と、前記鋳造用アルミニウム合金中のカルシウムの含有量:Y質量%が、0.0030≦Y≦0.0100、 Y≧1.94X>0、を充足するように、リンの含有量に応じて、カルシウムを添加する工程とを有する点に特徴がある。
本構成の鋳物用アルミニウム合金の製造方法では、原材料となるアルミニウム合金中に
含まれるリンの含有量を測定する点に特徴を有する。その結果に基づいてリンを確実に除去し得る量のカルシウムを添加する。これにより、上記特徴構成1で述べたのと同様に、リンの大略全てがリン化カルシウムに変化する。よって、溶湯の凝固時にリン化アルミニウムが不均質核生成を招来することがなく、鋳型内の溶湯の流動性を確保して内びけの発生を防止することができる。
カルシウムの添加量については、上記特徴構成1の作用効果と同様に、下限を設けることで、従来のアルミニウム合金との差異を明確にしている。また、カルシウム添加量の上限を設けることで、合金の靭性を確保しつつ、カルシウムが合金中のシリコンと結合して板状結晶を生成するのを防止し、内びけの生じ難い鋳造用アルミニウム合金を得ることができる。
本発明に係る鋳物用アルミニウム合金の製造方法は、アルミニウム合金の原材料から鋳造用アルミニウム合金を製造する方法であって、ケイ素:4.5〜12.5質量%、銅:1.5〜5.0質量%、マグネシウム:0.2〜0.5質量%、微量のリン:X質量%、ならびに、残部アルミニウムおよび不純物からなる前記原材料中のリンの含有量を測定する工程と、リンの含有量が、0.0025質量%以下である原材料に対して、前記鋳造用アルミニウム合金中のカルシウムの含有量:Y質量%が、0.0030≦Y≦0.0100、 Y≧1.94X>0、を充足するように、リンの含有量に応じて、カルシウムを添加する工程とを有する点に特徴がある。
本構成の鋳物用アルミニウム合金の製造方法は、上記特徴手段1の構成と比較して、リンの含有量が0.0025質量%以下の原材料に対してカルシウムを添加する点が異なる。
上記特徴構成2で述べたとおり、通常のアルミニウム合金では、リンの含有量が0.0025質量%を越える場合は少ない。また、仮に、リンの含有量が0.0025質量%を越える場合には、カルシウムの添加量を増大したとしても全てのリンを処理できない事態が生じ得る。
そこで、本構成の如く、リンの含有量を測定して0.0025質量%以下のアルミニウム合金についてのみリンの除去を行うことで、リン化アルミニウムを確実に除去したアルミニウム合金を効率的に得ることができる。
本発明に係る鋳物用アルミニウム合金の製造方法は、アルミニウム合金の原材料から鋳造用アルミニウム合金を製造する方法であって、ケイ素:4.5〜12.5質量%、銅:1.5〜5.0質量%、マグネシウム:0.2〜0.5質量%、微量のリン:X質量%、ならびに、残部アルミニウムおよび不純物からなる前記原材料中のリンの含有量を測定する工程と、リンの含有量が、0.0025質量%以下である原材料に対して、前記鋳造用アルミニウム合金中のカルシウムの含有量:Y質量%が、0.0050≦Y≦0.0100、Y≧1.94X>0、を充足するように、リンの含有量に応じて、カルシウムを添加する工程とを有する点に特徴がある。
本構成の鋳物用アルミニウム合金の製造方法は、上記特徴手段2の構成と比較して、カルシウムの含有量を0.0050質量%以上に限定した点が異なる。
これは、上記特徴構成3で述べたのと同様に、アルミニウム合金中のリン含有量を一律に0.0025質量%であるとし、これに対してリン化カルシウムを生成する化学量論比である約1.94という値を前記0.0025質量%に乗じたものである。
本方法であれば、所定の時間と費用とを伴うリンの測定作業を省略することが出来、リンが確実に除去されて良好なひけ性を備えたアルミニウム合金を効率的に得ることができる。
本発明に係るアルミニウム合金鋳造製品の製造方法は、上記特徴構成および特徴手段のうち何れかに係る鋳物用アルミニウム合金を、250℃以上に予熱した鋳型を用いて鋳造する点に特徴を有する。
本構成のアルミニウム合金鋳造製品の製造方法では、鋳物用アルミニウム合金の鋳造を行う際に、鋳型を250℃以上に予熱しておくことにより、溶湯の急激な冷却固化を防止することができる。これにより、アルミニウム合金鋳造製品に発生する内びけを低減することができ、高品質のアルミニウム合金鋳造製品を得ることができる。
本発明は、アルミニウム鋳造用の合金(以下、単に「合金」と略称する)であって、特に、鋳造時の内びけの発生を抑制し得るものに関する。本発明では、通常、一般に合金中の不純物とされるリン(P)とカルシウム(Ca)との含有量および、これらの含有比率に着目した。以下には、ひけの発生を防止するためのPおよびCaの最適範囲を述べると共に、当該合金の製造方法、及び、当該合金を用いた鋳造製品の製造方法について説明する。
ひけは、アルミニウム合金によって鋳造製品を製造する際に、製品の内部に空洞が生じる欠陥である。ひけには、例えば、製品の外形の一部が欠け落ちた「外びけ」や、製品の中心部分にパイプ状等の収縮孔を形成する「内びけ」、あるいは、製品の内部に多数の気泡が残存する「ポロシティ」がある。
ただし、ダイカストを行う場合には、溶湯の圧力が常に作用する。よって、仮に外びけが生じた場合でも、順次、溶湯が追加供給されるから、外びけの発生は比較的容易に阻止することができる。
本発明の合金は、例えば、JIS H 5302に規定されるアルミニウム合金ダイカストに適用可能な合金である。その中でも、特に、ADC10・ADC12等に対して本発明の合金を適用することができる。
本実施形態では、このうち自動車のエンジン部品や、各種機械部品に広く用いられるADC12を用いて実験した。
尚、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、他の種類の鋳物用アルミニウム合金も同様に用いることができる。
本実施形態では、Pの含有量をP1〜P3の3種類に変化させたものと、Caの含有量をC1〜C3の3種類に変化させたものとを組み合わせて9種類の試料を用意した。このうち、Pの含有量については、P1が14〜15ppmであり、P2が17〜18ppmであり、P3が25〜27ppmである。
一方、Caの含有量については、C1が18ppmであり、C2が36〜37ppmであり、C3が65〜82ppmである。
これらの試料の作製は、まず、電気炉に設置した黒鉛るつぼで、市販のADC12合金の地金5kgを720℃で溶解した。この溶湯にCu−8%P合金を添加し、P含有量を図1のごとく調整した。さらに、Al−5%Ca合金を添加し、上記のごとくCa含有量を調製した。
上記9種類の合金についてのひけ性の評価は、図2(a)に示す鋳型を用いたテータモールド試験により行った。当該試験は、世界的標準になりつつある手法であり、アルミニウム合金の組成の差異により、内びけと外びけとを明確に区別して定量できる試験方法である。
図2(a)に示すごとく、テータモールド鋳型は円錐状の上型と円柱状の下型とで構成してある。この鋳型は、例えば片状黒鉛鋳鉄を用いて構成する。内容積は480mlである。この鋳型に、溶湯を例えば90〜150g/sの速度で満に充填する。その際には、鋳型温度と溶湯温度とを所定の温度に維持しておく。溶湯で鋳型を満たした後、その状態で静置する。
得られた鋳造品に対し、前記パイプ状の空間を満たす水の量を測定して、まず内びけ量を測定する。続いて、図2(a)のテータモールド鋳型の内面と略同じ高さ・同じ円錐面を有する計測用のプラスチックコーンを鋳造品の傾斜面に密着させて覆い、当該コーンを満たす水の量を測定する。この水の量から前記内びけ量を差し引いて外びけ量を得る。
内びけ率および外びけ率の測定結果を図3に示す。併せて、PとCaとの関係に応じてどのようなひけが生じたのかを図4に示す。
図3から明らかなごとく、9種類の試料の全てにおいて内びけが生じていた。また、外びけについては、生じるものと生じないものとがあった。
テータモールド試験では、溶湯を注入したのち静置するから、合金の収縮に伴って必ずひけが生じる。図3には、ポロシティの発生率、および、合金の総収縮率を併せて掲載した。ポロシティ率については、何れの試料でも0.5%程度と変化がない。また、総収縮率についても試料P1で3.4〜3.9%、試料P2で3.3〜4.1%、試料P3で3.8〜3.9%と、それほどの差は認められない。
このような結果からみて、内びけの発生状況と外びけの発生状況とは相反し、合計すると一定レベルになると判断できる。よって、図3の結果を整理するとき、特に外びけの発生状況に注目するとPとCaとの関係を理解し易い。
具体的には、試料P1の外びけ率は、P1C1でゼロ、P1C2で0.8%に増加し、P1C3では1.3%に増加する。一方、試料P2の外びけ率は、P2C1でゼロ、P2C2で0.6%に増加し、P2C3では0.5%となる。これに対し、試料P3では、C1〜C3の何れの場合にも外びけ率はゼロであった。
内びけ率については、試料P1が、P1C1で2.8%、P1C2で2.7%に減少し、P1C3では更に2.0%に減少する。試料P2の内びけ率は、P2C1で3.0%、P2C2では殆ど変化せず、P2C3では2.5%に減少する。これに対し、試料P3では、C1〜C3の何れの場合にも内びけ率は3.2〜3.5%であった。
これはつまり、これら4種類の試料では、内びけ量が減少していることを意味する。内びけ量と外びけ量とを合計すると、ほぼ全体のひけ量になる。実際に図3では、Ca量が増大するほど内びけ率が少なくなっている。
このような点を考慮して、図4には、各試料のプロットとして外びけ率を示した。つまり、外びけ量がゼロではないものについては、内びけの改良がなされていると判断することができる。
本実験で得た図4に基づけば、内びけの発生を抑制し得るPおよびCaの適正範囲は以下のように考えることができる。
(1) 第1の適正範囲
図4のうち、ABCDで囲まれる範囲である。
まず、Caの含有量Y%について
0.0030≦Y≦0.0100
である必要がある。
このうち、Ca含有量が0.0030%以上というのは、一般の合金のCa含有量との関係に基づく。通常のアルミニウム合金におけるPおよびCaの含有量は、図4のうち、OJIBで囲まれた範囲である。つまり、Pは最大で0.0025質量%程度含まれるものがあり、Caはおよそ0.0030質量%未満程度含まれるものがある。よって、従来の合金との間に差異を設けるために当該限定を付している。
Caはひけの抑制に有効な物質ではあるが、Caの添加量が過剰になると、Caが合金中のSiと結合して板状結晶を生成するようになる。この板状結晶は、合金の靭性(伸び性・耐衝撃性)を低下させる原因となる。
また、このような板状結晶が多量に発生すると、それらが互いに連結することで鋳型の薄肉部の閉塞を促進させ、ひけ性が悪くなる。
例えば、図5には、ADC12合金中のCa含有量と外びけとの関係を示す。この図によれば、Ca含有量が100ppm、つまり、0.0100%を超えると、外びけ率が0.5%を下回っていくことがわかる。図4での外びけ率は、何れも0.5%以上であるから、図5でCa含有量%の基準値を約0.5%以上に設定することは、図4との整合を採る意味で好ましい。
この1.94という値は、PとCaとで形成されるCa3P2の化学量論比(3Ca/2P=120.234/61.9476=1.94/1)に基づくものである。この理由を以下に説明する。
本発明の合金としては、Pの含有量をさらに 0.0025質量%以下に規定することができる。これは、図4に示す領域のうち、ABCEFで囲まれる領域となる。
このように限定するのは、原料中のPの含有量が0.0025質量%を越える場合を想定しても、そのような合金は実際には多くはなく、実効性に乏しいからである。
さらに、仮に、Pの含有量が0.0025質量%を越える合金を用いる場合には、Caの添加量を増大してAlPを確実に除去する必要がある。しかし、Pの含有量が多くなれば、Caとの化合物を形成するのにもある程度の時間が必要になる。Pが合金中で偏在している場合には、全てのPを処理できない事態も生じ得る。
このように、図4においてFEDで囲まれた右側の領域は、Pの含有量が多いため、内びけを解消する処理の効果がやや劣る。このため、本発明の合金においては、Pの含有量の最大値を0.0025質量%と設定することができる。
本発明の合金としては、上記第2の適正範囲に加えてさらに、Caの含有量を0.0050質量%以上に限定することができる。これは、図4においてAGHFで囲まれる領域である。
そこで、本件発明では、合金中のP含有量を一律に0.0025質量%であるとし、これに対して約1.94倍の重量のCaを混入することにしたものである。よって、本構成の場合には、合金中のCaが少なくとも0.0050質量%となるように無条件でCaを混入させることになる。ただし、合金中のP含有量が仮にゼロであっても、合金中のCa含有量は上記0.100質量%を越えることはなく、ひけ性に悪影響を及ぼすことは無い。
通常、鋳造用アルミニウム合金を準備する際には、各種メーカーの原材料を入手し、複数の原材料を混合して行う。これにより、特定の原材料に見られる化学成分の偏りを解消することができる。
本発明の方法では、入手した各原材料のPおよびCaの含有量を湿式分析法ならびに発光分光分析法にて行う。夫々の測定結果に基き、各原材料の混合量に応じて、PとCaとの比率が上記何れかの適正範囲となるように、Caの混入量を決定する。
Caの含有率は、例えば、Al-5%Ca中間合金を添加することで調整する。また、Pの含有量を調整する必要がある場合には、例えば、Cu-8%P合金を添加して行う。
溶湯が直に接触する金型の温度は溶湯の凝固特性に大きく影響する。しかしながら、一般の鋳造現場では、鋳造装置の稼動・休止を定期的に行う必要があったり、金型に対する離型剤の噴霧量が一定にならない等、金型温度の管理が必ずしも万全ではない。
そこで、本発明では、アルミニウム合金のひけ性に及ぼす金型温度の影響を明らかにするために、前記テータモールド金型等を用いて以下の測定を行った。
ひけ量は鋳型容積に対する体積百分率で表してある。
内びけ率は200℃以下の範囲では4.1%で一定である。250℃になると低下が見られ、300℃以上になると著しい低下を示す。300℃では3.1%、400℃では1.9%、500℃では0.1%であった。
これに対して外びけ率は、300℃以下の範囲ではゼロであるが、400℃では0.5%、500℃では1.8%に上昇する。
ポロシティ率は、200℃までは0.5%程度であって変化は見られない。しかし、300℃以上になると略直線的に上昇した。
このように、鋳物用アルミニウム合金の鋳造を行う際には、鋳型を予熱することで、溶湯の急激な冷却固化を防止し、内びけの発生を有効に防止することができる。具体的には、鋳造の際に鋳型を250℃以上に予熱しておくことで、内びけの少ない高品質なアルミニウム合金鋳造製品を製造することが可能である。
Claims (7)
- ケイ素:4.5〜12.5質量%、銅:1.5〜5.0質量%、マグネシウム:0.2〜0.5質量%、リン:X質量%、カルシウム:Y質量%、ならびに、残部アルミニウムおよび不純物からなり、
前記リン、および、前記カルシウムの含有量が、
0.0030≦Y≦0.0100
Y≧1.94X>0
を充足する鋳物用アルミニウム合金。 - 前記リンの含有量が、
X≦0.0025
を充足する請求項1に記載の鋳物用アルミニウム合金。 - 前記カルシウムの含有量が、
Y≧0.0050
を充足する請求項2に記載の鋳物用アルミニウム合金。 - アルミニウム合金の原材料から鋳造用アルミニウム合金を製造する方法であって、
ケイ素:4.5〜12.5質量%、銅:1.5〜5.0質量%、マグネシウム:0.2〜0.5質量%、微量のリン:X質量%、ならびに、残部アルミニウムおよび不純物からなる前記原材料中のリンの含有量を測定する工程と、
前記鋳造用アルミニウム合金中のカルシウムの含有量:Y質量%が、
0.0030≦Y≦0.0100
Y≧1.94X>0
を充足するように、リンの含有量に応じて、カルシウムを添加する工程とを有する鋳物用アルミニウム合金の製造方法。 - アルミニウム合金の原材料から鋳造用アルミニウム合金を製造する方法であって、
ケイ素:4.5〜12.5質量%、銅:1.5〜5.0質量%、マグネシウム:0.2〜0.5質量%、微量のリン:X質量%、ならびに、残部アルミニウムおよび不純物からなる前記原材料中のリンの含有量を測定する工程と、
リンの含有量が、0.0025質量%以下である原材料に対して、前記鋳造用アルミニウム合金中のカルシウムの含有量:Y質量%が、
0.0030≦Y≦0.0100
Y≧1.94X>0
を充足するように、リンの含有量に応じて、カルシウムを添加する工程とを有する鋳物用アルミニウム合金の製造方法。 - アルミニウム合金の原材料から鋳造用アルミニウム合金を製造する方法であって、
ケイ素:4.5〜12.5質量%、銅:1.5〜5.0質量%、マグネシウム:0.2〜0.5質量%、微量のリン:X質量%、ならびに、残部アルミニウムおよび不純物からなる前記原材料中のリンの含有量を測定する工程と、
リンの含有量が、0.0025質量%以下である原材料に対して、前記鋳造用アルミニウム合金中のカルシウムの含有量:Y質量%が、
0.0050≦Y≦0.0100
Y≧1.94X>0
を充足するように、リンの含有量に応じて、カルシウムを添加する工程とを有する鋳物用アルミニウム合金の製造方法。 - 請求項1〜3の何れか一項に記載の鋳物用アルミニウム合金、又は、請求項4〜6の何れか一項に記載の製造方法によって得た鋳物用アルミニウム合金を、250℃以上に予熱した鋳型を用いて鋳造するアルミニウム合金鋳造製品の製造方法。
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- 2005-07-27 JP JP2005218004A patent/JP4623372B2/ja not_active Expired - Fee Related
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