JP6139266B2 - 二軸延伸積層ポリエステルフィルム - Google Patents

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本発明は近赤外線遮蔽性、合わせガラス加工性および透明性に優れる二軸延伸積層ポリエステルフィルムに関する。
自動車や電車などの乗物および建築物の窓に用いるガラスとして、熱線を遮蔽する機能を有する合わせガラスが検討されており、一部は既に実用化されている。このような合わせガラスは熱線の入射を防ぐため、省エネルギーの観点から近年注目を集めている。
この合わせガラスは、全光線のうち可視光線は透過し、熱線を選択的に反射または吸収する。例えばこれを窓ガラスとして用いると、太陽光の強い時期には熱線の入射による室内の温度上昇を抑え、他方、太陽光が弱く暖房を使用する時期には室内から屋外への熱の逃避を抑えることができる。そのため、この合わせガラスを用いることによってエネルギーの利用効率を大幅に向上させることができ、省エネルギーに役立たせることができる。
この合わせガラスは、熱線遮蔽フィルムをガラスに積層することにより、得ることができる。
特許文献1には、赤外線を反射し可視光線を透過する光学干渉フィルムとして、いずれの層も光学的厚さが0.09〜0.45μmの範囲にある少なくとも3種類の層からなる多種交互層からなり、そして第2の層のポリマーの屈折率が第1の層のポリマーの屈折率と第3の層のポリマーの屈折率の中間にある光学干渉フィルムが開示されている。特許文献1には、3層のうちの1層がポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであってもよいことが開示されている。しかしながら、特許文献1には2種類の層を交互積層する層構成で、近赤外線遮蔽性のみならず合わせガラス加工性にも優れる積層ポリエステルフィルムの検討はなされていない。
特許文献2には対象となる波長領域で少なくとも幅100nmの帯域の光を少なくとも50%反射する複屈折性誘電性多層フィルムが記載されており、該多層フィルムが第1のポリマーと第2のポリマーの交互層を含むこと、非平面ガラス層と積層させて乗物用フロントガラスに用いてもよいことが記載されている。一方、特許文献2で具体的に検討されている各層ポリマーは第1のポリマーがポリエステルであるのに対し、第2のポリマーはPMMAであった。
特許文献3には、複数の層を含むポリマーフィルムと、金属または金属化合物を含有する少なくとも1つの層を有する透明導電体とからなる、赤外線を反射し、可視光線を透過する透明多層デバイスが開示されている。特許文献3には、鏡(ミラー)系の場合、すなわちフィルム面内の二方向に延伸して得られる多層フィルムの場合の組み合わせ例として、PENと商品名「Ecdel」(熱可塑性エラストマー)、PEN/sPS、PEN/共重合PETなどが例示されており、透明多層デバイスを自動車などのフロントガラスや窓ガラスに用いてもよいことなどが記載されている。一方、特許文献3では合わせガラス加工性を高める検討はなされていない。
特許文献4には、融点が250〜260℃の範囲にあり、かつ主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートからなる第1層と、融点が200〜245℃の範囲にあり、かつ主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートからなる第2層とが交互に積層された近赤外線遮蔽フィルムが開示されており、第1層と第2層に組成の近い樹脂を用いて層間密着性を高くすることで層間剥離現象が抑制されることが記載されている。しかしながら、組成が近い樹脂では層間の屈折率差が小さいため、層数を増加させる必要があり、第1層と第2層の層厚み比の異なる第1積層部と第2積層部をさらに積層させるという複雑な層構成をとる必要性がある。また、特許文献4において合わせガラス加工性を高める検討はなされていない。
同様に特許文献5も第1のポリマーがポリエチレンテレフタレート、第2のポリマーが共重合ポリエチレンテレフタレートを用いた近赤外線反射フィルムであり、組成が近い樹脂であるため層数が600層以上と多く、フィルムの薄肉化が課題となることがある。
このように、従来、主として検討されている異種のポリマーの交互積層体の場合、例えばPMMAは硬度が高いため、合わせガラス加工した際に細かな凹凸が発生するような現象は生じることがなく、課題として知見されていなかった。しかしながら、リサイクル性や層間剥離解消などの目的でポリエステル同士の交互積層体を用いた合わせガラス用フィルムの検討を進める過程で、より少ない積層数でも近赤外領域の反射率を高め、近赤外線遮性を発現させること、また近赤外線遮性に優れるポリエステル系交互積層体を合わせガラスに加工する際に細かな凹凸がフィルム表面に発生することが新たに判明し、合わせガラス加工性を高めたフィルムが求められているのが現状である。同時に、ポリエステル同士の交互積層体のポリマー種によっては初期は高反射率、高透明であっても加熱によって反射率や透明性が低下しやすいことも新たに判明し、後加工での熱処理によってかかる特性が低下しないことも求められている。
特開平4−313704号公報 特開2011−225445号公報 特表平11−508380号公報 国際公開第2005/040868号パンフレット 国際公開第2013/002130号パンフレット
本発明の課題は、より少ない積層数でも高い近赤外遮蔽性能を有し、合わせガラスに加工する際の加工性が優れており、同時に熱処理前後とも高い近赤外遮蔽性能および透明性を備える二軸延伸積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、従来のポリエステル系の近赤外線遮蔽性に優れる二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、高い近赤外遮蔽性能を発現するために積層数を増やす必要があったり、また合わせガラスに加工される高温になると、フィルムのヤング率が大きく変化してしまい、加熱加圧で行われる合わせガラス加工の際に積層させる相手材の表面形状が転写されやすく、合わせガラス加工性が低下していたこと、さらに初期は高反射率、高透明であっても加熱によって反射率や透明性が低下しやすいことを見出し、本発明に到達した。
かくして本発明によれば、本発明の目的は、第1の層および第2の層が交互に積層された合計51層以上の二軸延伸積層ポリエステルフィルムであって、第1層、第2層の各層厚みは、層間の光干渉によって選択的に近赤外光を反射する効果が得られる厚みであり、第1の層および第2の層が交互に積層された積層構造部(I)の両側にガラス転移温度が90℃以上のポリマーからなる保護層を有し、第1の層を構成するポリエステル(A)がポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであり、第2の層を構成するポリエステル(B)がエチレンテレフタレート成分を含む非晶性ポリエステルであり、波長400−750nmの範囲内での平均反射率が25%以下、かつ波長800−1200nmの範囲内での平均反射率が50%以上であり、90℃におけるフィルムのヤング率がフィルム縦方向と横方向の少なくとも一方向において2400MPa以上であり、ヘーズが0.9%以下である二軸延伸積層ポリエステルフィルムによって達成される。
また本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムには、好ましい態様として以下の構成のものが包含される。
項2 第1の層および第2の層が交互に積層された積層構造部(I)の両側にガラス転移温度が90℃以上のポリマーからなる厚さ5μm以上20μm以下の保護層を有する、項1に記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
項3 第2の層を構成する前記ポリエステル(B)が全繰返し単位を基準として50モル%以上80モル%以下のエチレンテレフタレート成分を含むポリエステルである、項1または2に記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
項4 第2の層を構成する前記ポリエステル(B)がガラス転移温度90℃未満の共重合ポリエチレンテレフタレートである、項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
項5 第2の層を構成する前記ポリエステル(B)がシクロヘキサンジメタノールを含む共重合ポリエチレンテレフタレートである、項1〜4のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
項6 100℃、72時間加熱後のヘーズが1.2%以下である、項1〜5のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
項7 波長800−1200nmにおいて、100℃、72時間加熱前後で反射率が20%以上低下する帯域が30nm以下である、項1〜6のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
項8 熱線遮蔽用に用いられる項1〜7のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
項9 合わせガラス用に用いられる項1〜8のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
本発明によれば、より少ない積層数でも高い近赤外遮蔽性能を有し、合わせガラスに加工する際の加工性に優れ、同時に熱処理前後とも高い近赤外遮蔽性能および透明性を備える二軸延伸積層ポリエステルフィルムが提供され、本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムを用いることにより、合わせガラスに加工した際に細かな凹凸が生じない優れた外観性と、高い近赤外遮蔽性能、可視光透過性能に優れる合わせガラスを提供することができる。
[第1の層]
本発明において、第1の層を構成するポリエステル(A)はポリエチレンナフタレンジカルボキシレートである。
ポリエステル(A)におけるエチレンナフタレンジカルボキシレート成分の割合は、ポリエステル(A)を構成する全繰返し単位を基準として95モル%以上100モル%以下であることが好ましく、より好ましくは96モル%以上、さらに好ましくは97モル%以上である。主たる成分であるエチレンナフタレンジカルボキシレート成分の割合が下限に満たないと第1の層を構成するポリエステル(A)の融点が低下し、後述する第2の層を構成するポリエステル(B)との融点差が得られがたく、結果として二軸延伸積層ポリエステルフィルムに十分な屈折率差を付与しがたいことがある。
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートの中でも強度、屈折率の観点からポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであることが好ましい。
ポリエステル(A)を構成する主たる成分以外の共重合成分として、イソフタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、主たるナフタレンジカルボン酸以外のナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸などの芳香族カルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸等の酸成分や、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のグリコール成分が好ましく例示される。
これらの共重合成分の中でも、イソフタル酸、テレフタル酸、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびジエチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの共重合成分の中でも特に、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましい。これらの共重合成分は、単独で用いてもよく、また2成分以上用いることもできる。
ポリエステル(A)は、公知の方法を適用して製造することができる。例えば、主たる成分のジオール成分、ジカルボン酸成分、および必要に応じて共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造することができる。また、これらの原料モノマーの誘導体をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造してもよい。さらに、2種以上のポリエステルを用いて押出機内で溶融混練してエステル交換反応(再分配反応)させて得る方法であってもよい。
第1の層を構成するポリエステル(A)の固有粘度は、好ましくは0.40〜0.80dl/gであり、更には0.45〜0.75dl/gの範囲であることが好ましい。第1の層を構成するポリエステル(A)の固有粘度がかかる範囲内にない場合、第2の層を構成するポリエステル(B)の固有粘度との差が大きくなることがあり、その結果交互積層構成とした場合に層構成が乱れたり、製膜はできるものの製膜性が低下したりすることがある。2種以上のポリエステルを用いて押出機内で溶融混合し、エステル交換反応させて得る場合は、それぞれのポリエステルの固有粘度が上記の範囲内にあればよい。
また、第1の層を構成するポリエステル(A)のガラス転移温度は、第2の層を構成するポリエステル(B)のガラス転移温度より高いことが好ましい。
本発明の第1の層は、本発明の目的を損なわない範囲で少量の添加剤を含有していてもよく、不活性粒子などの滑剤、顔料や染料などの着色剤、安定剤、難燃剤、発泡剤などの添加剤が例示される。滑剤粒子として、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリンなどの無機粒子、触媒残渣の析出粒子、シリコーン、ポリスチレン架橋体、アクリル系架橋体などの有機粒子が例示される。
[第2の層]
本発明において、第2の層を構成するポリエステル(B)はエチレンテレフタレート成分を含む非晶性ポリエステルである。ここで非晶性とは、二軸延伸積層ポリエステルフィルムを昇温速度20℃/分でDSC測定したときに第2の層に由来する融点が観察されないことをいう。
第2層のポリエステル(B)として結晶性のポリエステルを用いた場合、フィルム製膜時の加工条件を選択すればフィルム初期の透明性や反射率を高めることができるものの、後加工時の加熱によって結晶化し、透明性や反射率特性の低下を伴うことがある。第2層のポリエステル(B)として非晶性ポリエステルを用いることにより、フィルム初期の高い透明性や反射率を後加工時の加熱後も維持することができる。
エチレンテレフタレート成分を含む非晶性ポリエステルとして、第2の層を構成するポリエステル(B)の全繰り返し単位を基準として50モル%以上80モル%以下のエチレンテレフタレート成分を含むポリエステルが挙げられ、さらに好ましくはエチレンテレフタレート成分が55モル%以上75モル%以下である(すなわち共重合成分が好ましくは20〜50モル%、さらに好ましくは25〜45モル%共重合された)共重合ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。かかる共重合量の範囲内で、用いる共重合成分の種類に応じて非晶性を示す共重合量を調整すればよく、例えば共重合PETの共重合成分がイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の場合は概ね30モル%以上である。
共重合量が下限未満である場合には製膜時に結晶、配向化しやすくなって第1の層との間に屈折率差がつきにくくなり、近赤外線反射能が低下しやすい。また、製膜時の結晶化によってヘーズが増加する。一方、共重合量が上限を超える場合には、製膜時(特に押出時)の耐熱性や製膜性が低下しやすく、また共重合成分が高屈折率性を付与する成分である場合には、屈折率増加によって第1の層との屈折率差が小さくなりやすい。共重合量が上記の範囲内にあることにより、良好な耐熱性、製膜性を維持しつつ、第1の層との屈折率差を十分確保することができ、十分な近赤外線反射性能を付与することができるようになる。
第2の層として結晶性ポリエステルを用いた場合、フィルム製膜時の熱固定温度を第2の層の融点以上、第1の層の融点以下に設定して製膜時に第2の層を溶融させることで第2の層の結晶化を抑制することができ、初期のヘーズを小さくすることはできる。また製膜時に第2の層を溶融させ、結晶、配向を抑制することで第1の層との間に屈折率差がつきやすくなり、高い近赤外線反射性能を付与することができる。しかしながら、結晶性ポリエステルの性質上、第2の層が結晶性を有しているため、フィルムの後加工において加熱されると第2の層が結晶化してヘーズの増加および反射率の低下が発生する。
第2の層を構成するポリエステル(B)に好ましく用いられる共重合成分として、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸といった脂環族ジカルボン酸等の酸成分、ブタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールといった脂環族ジオール、スピログリコール等のグリコール成分を挙げることができる。なかでもイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールが好ましく、これら以外の共重合成分を含む場合には、その共重合量は10モル%以下であることが好ましい。特に、屈折率が低く、押出時の分子量低下が小さいという観点から、エチレンテレフタレート成分を含む非晶性ポリエステルの共重合成分は1,4−シクロヘキサンジメタノールであることが好ましい。
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムの好ましい態様の1つとして、第1の層及び第2の層が交互に積層された積層構成部(I)の両側にガラス転移温度が90℃以上のポリマーからなる厚さ5μm以上20μm以下の保護層を有する構成が挙げられる。かかるポリマーのガラス転移温度はポリマーサンプルを用いて後述するDSC測定法により求められる。
かかる特徴の保護層を有することにより、合わせガラス加工時に軟化しやすいポリマーを第2の層に用いた場合でも、合わせガラス加工時の加工条件で保護層の強度が保たれる結果、フィルムの平坦性を保つことができ、細かな凹凸の発生が認められない良好な外観の合わせガラスを得ることができる。
具体的には、かかる特徴の保護層を有する層構成の場合、第2の層を構成するポリエステル(B)として、ガラス転移温度90℃未満の共重合ポリエチレンテレフタレートを好適に用いることができる。かかるガラス転移温度のポリエステルを使用することにより、第1の層のポリエステル(A)が配向するような延伸条件で延伸した場合、第2の層のポリエステル(B)にとっては高い延伸温度になるために配向が進まず、第1の層と第2の層との間に屈折率差をつけやすくなる。ここでいうポリエステル(B)のガラス転移温度についても、ポリマーサンプルを用いて後述するDSC測定法により求められる。
また、上記特徴を備える保護層を用いる層構成に代えて、第2の層を構成するポリエステル(B)としてガラス転移温度90℃以上の共重合ポリエチレンテレフタレートを用いてもよい。その場合は積層構成部(I)の両側に設けるガラス転移温度90℃以上の保護層の厚さは前記範囲の下限よりも薄くてもよい。
第2の層を構成するポリエステル(B)の固有粘度は、好ましくは0.4〜1.0dl/gであり、より好ましくは0.45〜0.95dl/g、さらに好ましくは0.5〜0.95dl/gの範囲である。第2の層を構成するポリエステル(B)の固有粘度がかかる範囲内にない場合、第1の層を構成するポリエステル(A)の固有粘度との差が大きくなることがあり、その結果、交互積層構成とした場合に層構成が乱れたり、製膜はできるものの製膜性が低下することがある。
2種以上のポリエステルを用いて押出機内で溶融混合し、エステル交換反応させて得る場合は、それぞれのポリエステルの固有粘度が上記の範囲内にあればよい。
本発明におけるポリエステル(B)は公知の方法を適用して製造することができる。例えば、主たる成分の酸成分、グリコール成分、および共重合成分をエステル化反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造することができる。また、これらの原料モノマーの誘導体をエステル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させてポリエステルとする方法で製造してもよい。さらに、2種以上のポリエステルを用いて押出機内で溶融混練してエステル交換反応(再分配反応)させて得る方法であってもよい。
本発明の第2の層は、本発明の目的を損なわない範囲で少量の添加剤を含有していてもよく、不活性粒子などの滑剤、顔料や染料などの着色剤、安定剤、難燃剤、発泡剤などの添加剤が例示される。滑剤粒子として、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリンなどの無機粒子、触媒残渣の析出粒子、シリコーン、ポリスチレン架橋体、アクリル系架橋体などの有機粒子が例示される。
[積層構造]
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、上述の第1の層と第2の層が交互に積層された合計51層以上の積層フィルムである。屈折率の異なる層を一定数積層させることにより多重干渉による選択反射を大きくすることが知られているが、第1の層のポリエステルとしてポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを用い、第2の層のポリエステルとしてエチレンテレフタレート成分を含むポリエステルを用いることにより、双方にポリエステルを用いながら層間の屈折率差が大きくなるため、従来よりも少ない積層数で近赤外波長域における十分な反射率を得ることができる。また、かかる積層数の範囲内でより積層数が多い方がより近赤外波長域における反射率特性が高まるが、積層数の上限は、生産性および低ヘーズの観点より600層以下であることが好ましい。また積層数の下限はより好ましくは101層、さらに好ましくは150層、上限はより好ましくは500層、さらに好ましくは400層である。層数が下限に満たないと多重干渉による選択反射が小さく、十分な近赤外線反射性能が得られない。
[層厚み]
本発明における第1層、第2層の各層厚みは、層間の光干渉によって選択的に近赤外光を反射する効果が得られる厚みであることが好ましい。
ここで、積層フィルムの反射波長は、隣り合った第1層と第2層の光学厚みの合計の2倍に対応する。かかる光学厚みは、屈折率と各層厚みの積で表され、使用する樹脂の屈折率と目的とする反射波長によって各層厚みを調整することが好ましい。
また、ラドフォードらの「Reflectivity of Iridescent Co extruded Multilayered Plastic Films」や、Polymer Engineering and Science、Vol.13、No.3、1973年5月号にあるように、四分の一波長による多層干渉を利用した多層フィルムは、主反射ピークが可視光領域に生じない場合でも、高次反射ピークが可視光領域に生じると、高次反射による着色を示すことがあるため、高次反射を除くための適切な光学厚みとすることが好ましい。
多層干渉フィルムにおいて、主反射ピークの第1層の光学厚みに対する第2層の光学厚みの比が1.0の場合には、高次のピークのうち、2次(主反射ピークの1/2波長)、4次(主反射ピークの1/4波長)を除去することができる。
高次反射を除くための適切な光学厚みを考慮した一例として、第1層にポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下「PEN」と称する)、第2層に1,4−シクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「PETG」と称する)を使用し、800〜1200nmの波長を一次反射させる場合の各層厚みについて説明する。フィルムの製膜条件にもよるが、一般的にPENの延伸方向の屈折率は1.74〜1.78、PETGの延伸方向の屈折率は1.50〜1.58程度であるので、第1の層の各層厚みは0.10μm以上0.23μm以下の範囲であることが好ましい。PENとPETGとの組み合わせの例において、第1の層の各層がこの範囲の厚みを有することにより、近赤外領域の光を選択的に反射し、遮蔽することができる。
第1の層の厚みが下限より薄い範囲では反射光が可視光線の領域となり、フィルムが着色し、視認性が低下することがある。一方、第1の層の厚みが上限を超えると、層間の光干渉によって3次ピーク(主反射ピークの1/3)が可視光域に生じるため着色が生じ、透明性が損なわれることがある。
また、PENとPETGとの組み合わせの例において、第2の層の各層厚みは、層間の光干渉によって選択的に近赤外光を反射する効果を得るために0.10μm以上0.23μm以下の範囲であることが好ましい。第2の層の各層がこの範囲の厚みを有することにより、近赤外領域の光を選択的に反射し、遮蔽することができる。第2の層の厚みが下限より薄い範囲では、反射光が可視光線の領域となり、フィルムが着色し、視認性が低下することがある。一方、第2の層の厚みが上限を超えると、層間の光干渉によって3次ピークが可視光域に生じるため着色が生じ、透明性が損なわれることがある。
本発明の積層ポリエステルフィルムの場合、上述した光学厚みの関係および各層の屈折率を考慮し、隣接する第1の層の厚みに対する第2の層の厚みの比(厚み比)が0.9〜1.4の範囲内となる組み合わせをより多くすることにより、可視光域に生じる高次のピークを減らすことができ、可視光域の平均反射率をより小さくすることができる。
この関係は、積層フィルムの層の大部分について成立していればよく、積層構成部の総層数の70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90% 以上、特に好ましくは95%以上について成立していればよい。
各層の厚みは、波長800−1200nmの領域での反射率を向上させるため、第1層における最大厚みと最小厚みの比が最大/最小で1.2〜1.8で連続的に変化させることが好ましい。
また、第2の層の各層の厚みも波長800−1200nmの領域での反射率を向上させるため、最大厚みと最小厚みの比が最大/最小で1.2〜1.6で連続的に変化させることが好ましい。
[保護層]
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、積層構造部の両側にガラス転移温度が90℃以上、好ましくは110℃以上のポリマーからなる、厚さ5μm以上20μm以下、好ましくは7μm以上18μm以下、より好ましくは7μm以上16μm以下の保護層を有することが好ましい。かくすることにより、合わせガラスに加工する際の加工温度条件でも保護層の強度が保たれ、本発明の90℃ヤング率特性が得られる結果、合わせガラス加工時にフィルムの平坦性が保たれて、細かな凹凸の発生が認められない良好な外観の合わせガラスが得られる。かかるポリマーのガラス転移温度はポリマーサンプルを用いて後述するDSC測定法により求められる。
第2の層のポリエステル(B)のガラス転移温度が90℃以上の場合は、保護層ポリマーのガラス転移温度が90℃未満、あるいは保護層の厚さが5μm未満であっても合わせガラス加工の際に細かな凹凸の抑制効果が得られることがある。
一方、保護層の厚さが20μmを超える場合には、細かな凹凸の発生抑制効果はそれより薄いものと変わらない上、湾曲した形状の合わせガラスを成形する際に湾曲部分への追従性が低下することがある。
保護層に好ましく用いられるガラス転移温度90℃以上のポリマーとしては、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンオキシドなどが挙げられる。保護層の積層方法としては、共押出によって積層構造部分と保護層とを同時に作成してもよいし、保護層のみ後から貼り合わせてもよい。なかでも、保護層として第1層のポリマーであるポリエチレン−2,6−ナフタレートを使用し、共押出法によって保護層と積層構造部分とを同時に作成するのが好ましい。
[屈折率差]
第1の層と第2の層の屈折率差は、縦方向(長さ方向、製膜方向、MD方向)および横方向(幅方向、製膜方向に直角方向、TD方向)のいずれも0.10以上であることが好ましく、より好ましくは0.12以上、さらに好ましくは0.13以上である。屈折率差がかかる範囲にあることにより、反射特性を効率よく高めることができるため、より少ない積層数で高い反射率を得ることができる。
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、第1の層および第2の層として前述のポリエステルを採用しているため、延伸後に容易に上記屈折率差を達成することができる。
[反射率特性]
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、波長400−750nmの範囲内での平均反射率が25%以下であり、かつ波長800−1200nmの範囲内での平均反射率が50%以上である。
また本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、波長800−1200nmにおいて、100℃、72時間加熱前後で反射率が20%以上低下する帯域が30nm以下であることが好ましい。加熱後の反射率変化をこの範囲に収めることで、後加工後でも近赤外線反射性能を高く保つことができる。
可視光線波長域における平均反射率が低く、かかる波長域における透過率が高いこと、同時に近赤外波長域における平均反射率が高いことにより、例えば建物窓や自動車窓などの窓用合わせガラスの近赤外線遮蔽フィルムとして用いた際に、高い視認性と高透明性とともに、近赤外線遮蔽性能を効率的に高めることができる。
波長400−750nmの範囲内での平均反射率はさらに好ましくは20%以下である。可視光線波長域における反射率が小さいことにより、より高透明となり、視認性が高まる。また、波長800−1200nmの範囲内での平均反射率は、より好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上である。この波長領域の反射率が高いほど、近赤外波長域の熱線の遮蔽効果が高まり、日射透過率が低下する。
800−1200nmの中でも短波長側の反射率が高くなるように、層厚み分布によってスペクトルの形状を調節すれば遮熱性能が高くなり、長波長側の反射率が高くなるようにスペクトルの形状を調節すれば傾けて見た時のフィルムの着色を抑えることができる。
[透過率特性]
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、波長400−750nmの範囲内での可視光線透過率が75%以上であることが好ましく、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。可視光線透過率はJIS−R3106の規定によって求めることができる。本発明のフィルムがかかる可視光線透過率特性を備えることにより、建物窓や自動車窓などの窓用合わせガラスに使用した際に高度の透明性が得られ、高い視認性が得られる。
また、本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、波長400−750nmの範囲内で透過率が80%以下となる帯域を50nm以上備えないことが好ましい。可視領域全体で均一に透過率を高く保つことで、自動車用合わせガラスとして適した高い可視光透過率を持たせることができる。
[ヘーズ]
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムはヘーズが0.9%以下である。また、本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは加熱後のフィルムのヘーズ変化が小さいことが特徴であり、100℃、72時間加熱後のヘーズは1.2%以下であることが好ましい。また、加熱によるヘーズの増加量は好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.3%以下、特に好ましくは0.1%以下である。
加熱後のフィルムのヘーズを低くすることで、フィルムを挟み込んだ合わせガラスを作製した際に、加熱処理が行われた合わせガラス自体のヘーズも低くすることができ、自動車用窓ガラス等で使用した際に曇って見えることを防ぐことができる。また、自動車用窓ガラス等で長期に使用した際の合わせガラスの性能の低下も防ぐことができる。
かかるヘーズ特性は第1の層および第2の層として上述のポリエステルを用いることにより得られる。第2の層に結晶性ポリエステルを使用したフィルムでは、初期ヘーズ値を満たしても加熱処理によって結晶化がすすみ、100℃、72時間加熱後のヘーズが1.2%を超えることがある。
また、二軸延伸積層ポリエステルフィルムの厚みが厚くなるとヘーズが高くなりやすいため、近赤外波長領域の反射波長を維持しつつできるだけフィルム厚みを薄くすることが好ましい。上述の通り、本発明では第1の層および第2の層のポリエステルとして屈折率差が大きい材料を用いることで、必要な層数を少なくすることができ、フィルム厚みを薄くすることができる。
[90℃におけるフィルムのヤング率特性]
本発明の二軸延伸多層ポリエステルフィルムは、90℃におけるフィルムのヤング率がフィルム縦方向と横方向の少なくとも一方において2400MPa以上であり、好ましくは2600MPa以上、さらに好ましくは2700MPa以上である。90℃におけるヤング率がフィルム縦方向と横方向の両方向ともかかる範囲に満たないと、合わせガラスに加工する際にフィルムが変形し、フィルムに細かな凹凸やしわが発生してフィルムの平滑性が低下し、合わせガラス加工性が低下するので好ましくない。
90℃におけるヤング率特性を得るためには、第1の層を構成するポリエステル(A)としてポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを用い、さらに第1の層と第2の層が交互に積層された積層構造部(I)の両側にガラス転移温度が90℃以上のポリマーからなる厚さ5μm以上20μm以下の保護層を設ける態様が好ましいが、第2の層を構成するポリエステル(B)としてガラス転移温度が90℃以上の非晶性ポリエチレンテレフタレートを用いてもよい。
積層構造部(I)の両側にかかる特性の保護層を有することにより、第2層のポリエステルが90℃の雰囲気下で軟化しても保護層が十分な剛性を有するため、合わせガラス加工性を高めることができる。
[120℃での5%伸長時応力]
本発明の二軸延伸多層ポリエステルフィルムは、120℃での5%伸長時応力がフィルム縦方向と横方向の両方で25MPa以上であることが好ましく、より好ましくは30MPa以上、さらに好ましくは35MPa以上である。かかる120℃での5%伸長時応力を有しない方向が存在すると、合わせガラスに加工する際にフィルムが変形しやすく、フィルムに細かな凹凸やしわが発生してフィルムの平滑性が低下し、合わせガラス加工性が低下することがある。
本発明の120℃での5%伸長時応力特性を得るためには、二軸延伸多層ポリエステルフィルムの動的粘弾性を測定したときに、ガラス転移温度が115℃以上のピークを1つ以上有することが好ましい。例えば、第1の層を構成するポリエステル(A)としてポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを用いた二軸延伸多層ポリエステルフィルムは、動的粘弾性測定でポリエチレンナフタレンジカルボキシレート由来のガラス転移温度を140℃付近に有する。かかる特性のポリマー層を最表層に有することにより、第2層のポリエステルが120℃の雰囲気下で軟化しても十分な剛性を有するため、合わせガラス加工性を高めることができる。
[日射透過率]
本発明において、二軸延伸積層ポリエステルフィルムは建物窓や自動車窓などの窓用合わせガラスに使用した際に高度な近赤外線遮蔽性を得るため、JIS−R3106に規定される太陽光の日射透過率が80%以下であることが好ましく、さらに好ましくは75%以下、特に好ましくは70%以下である。かかる日照透過率特性は、上述のように可視領域の透過率を高めつつ800−1200nmの波長域については反射性能を高めることによって得られる。
[熱収縮率特性]
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、曲面を有する合わせガラス用途に用いる場合、150℃で30分での熱収縮率がフィルム縦方向と横方向の両方において1.0%以上であることが好ましく、さらに1.5%以上、より好ましくは2.0%以上であることが好ましい。熱収縮率が下限に満たないと、曲面を有する合わせガラスでフィルムを挟持し、加熱処理により貼り合わせる合わせガラス加工を施したときに、曲面形状によってはフィルムがガラスの曲面形状に合うように十分に収縮できず、しわが生じることがある。
かかる熱収縮率特性は、フィルム製造工程において、熱固定温度を150〜210℃にすることにより得ることができ、さらに150〜200℃の範囲が好ましい。
また、フィルム縦方向と横方向の熱収縮率の差が4.0%以下であることが好ましい。
[滑剤]
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、可視光線波長域において高い透明性を維持する観点から、フィルム中に不活性粒子を含まないことが好ましい。しかし、製造工程での微小なキズ防止や、フィルムの巻き取り性を向上させるため、少量の不活性粒子を含有させることも許容される。この場合、第1層、第2層のいずれに含有させてもよく、両方に含有させてもよい。不活性粒子は、例えば平均粒径0.01μm〜2μm、さらには0.05〜1μm、特に0.1〜0.3μmのものを用いるとよい。不活性粒子を用いる場合は、積層フィルムの重量を基準として、例えば0.001重量%〜0.01重量%配合することができる。
不活性粒子を配合する場合、不活性粒子の平均粒径が下限よりも小さいか、含有量が下限よりも少ないと、フィルムの巻取り性を向上させる効果が不十分になりやすく、他方、不活性粒子の含有量が上限を超えるか、平均粒径が上限を超えると、透明性が低下する傾向がある。
不活性粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、カオリン、タルクのような無機不活性粒子、シリコーン、架橋ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体のような有機不活性粒子を挙げることができる。
これらの不活性粒子は、その長径と短径の比が1.2以下、さらには1.1以下である球状粒子(以下、真球状粒子ということがある)であることが、フィルムの滑り性と透明性とをできるかぎり維持する観点から好ましい。また、これらの不活性粒子の粒度分布はシャープであることが好ましい。
[紫外線吸収剤]
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、紫外線吸収剤を含有する層を少なくとも1層有することが好ましい。
本発明において用いられる紫外線吸収剤は、好ましくは波長380nmにおける吸光係数εが2以上、さらに好ましくは3以上の紫外線吸収剤である。ここでいう吸光係数εは下記式(1)で表され、Lambert−Beerの式をもとにし、テトラヒドロフラン中に溶解させた紫外線吸収剤の吸光度を測定し、濃度の値から算出した吸光係数である。
ε=A/(c×b) ・・・(1)
(上式(1)中、εは吸光係数、Aは吸光度、cは濃度(g/L)、bは試料中の光路長(cm)をそれぞれ表す)
かかる吸光特性を有する紫外線吸収剤を用いることにより、紫外線耐久性が比較的低いポリエチレンナフタレンジカルボキシレート層を含む積層ポリエステルフィルムでありながら、乗物や建築物の窓などの熱線遮蔽用途に用いることのできる高い紫外線耐久性を付与することができる。
紫外線吸収剤として、例えばトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、サルチレート系紫外線吸収剤を挙げることができ、好ましくはトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いるが、これら全てが上述の吸光特性を満足するわけではなく、これら中から選択して用いる必要がある。
波長380nmにおける吸光係数εが2以上の特性を満足する紫外線吸収剤として、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)4,6−ビス(1−エチル−1−フェニルエチル)フェノール、フェノール,2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)4−メチル、2,2’−メチレンビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)ロキシ]フェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニシル)−1,3,5−トリアジン、ベンゼンプロパン酸,3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9分岐及び鎖状アルキルエステル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール,2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが例示される。
紫外線吸収剤を含む層における紫外線吸収剤の濃度は、層の重量を基準として、例えば0.1重量%以上、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。紫外線吸収剤の含有量が下限に満たないと十分な紫外線の吸収効果が得られないことがある。
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、かかる紫外線吸収剤を含有する場合、波長300nm以上400nm未満の範囲内での該フィルムの平均光線透過率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムのいずれかの層に該紫外線吸収剤を含有させる場合、少なくとも最外層に含有することが好ましく、多層積層部分の両側に保護層を設ける場合は少なくとも保護層に含有させることが好ましい。
その他、積層フィルムの最外層上に共押出法により紫外線吸収剤を含む層を設ける態様、コーティングなどの方法で塗布層を設け、かかる塗布層中に紫外線吸収剤を含有させる態様であってもよい。
積層フィルムの最外層上にこれらの層を設けるにあたり、バインダー樹脂を用いて紫外線吸収剤をフィルム上に固着させることが好ましく、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、メラミン系樹脂、セルロース樹脂、およびポリアミド樹脂を例示することができる。これらのバインダー樹脂の中で、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂が光安定性に優れるため好ましく、ポリエステル樹脂は第1の層と第2の層との交互積層部分と共押出法などで積層させやすい。
また、後述するように合わせガラスに用いる場合は、後述するポリビニルブチラールといったガラス板とフィルムとを接着させる樹脂層中に紫外線吸収剤を含有させることがさらに好ましい。このように紫外線がポリエチレンナフタレンジカルボキシレート層に到達する前の段階で紫外線を遮蔽することが好ましく、外側に位置する層に該紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
また紫外線吸収剤とともに、クエンチャーやHALSといった光安定剤を併用してもよい。
[塗布層]
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、合わせガラスに加工した際に中間膜との接着性を高めるために積層ポリエステルフィルムの両面に厚みが0.05〜0.20μm、好ましくは0.07〜0.12μmの塗布層を設けることが好ましい(以下、塗膜、易接着層と称することがある)。
合わせガラスに映る像が歪んで見えるという現象を抑制するために、少なくとも片面の塗布層の屈折率を1.60〜1.63に調整してもよい。
[製造方法]
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムを製造する方法として、まず、第1の押出機より供給された第1の層用のポリエステル(A)と、第2の押出機より供給された第2の層用のポリエステル(B)とを溶融状態で交互に合計で51層以上重ね合わせて未延伸積層シートを得て、これを回転するドラム上にキャストすることにより、未延伸積層フィルムを作成する。
続いて、得られた未延伸積層フィルムを、製膜方向(縦方向、長手方向、MD方向)とそれに直交する方向(横方向、幅方向、TD方向)の二軸方向に延伸する。延伸温度はポリエステル(A)のガラス転移温度(Tg)〜(Tg+50)℃の範囲とし、延伸の面積倍率は5〜50倍とすることが好ましい。
延伸方法は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のいずれの方法であってもよい。
次にこの二軸延伸積層ポリエステルフィルムに熱処理を施すが、上述する熱収縮率特性を備えることが好ましく、そのため、150〜210℃の温度範囲で熱処理を施すことが好ましい。フィルム縦方向と横方向の熱収縮率のバランスをとるために、熱処理の工程で0.3〜2.0%程度の弛緩操作を加えてもよい。
[用途]
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、可視光線波長域における透過率が高く、同時に近赤外波長域における反射特性が高いため、熱線遮蔽が求められる用途に広く用いることができ、特に合わせガラス加工時の加工性に優れるため、合わせガラス用途に好適に用いられ、建物窓や自動車窓などの窓用合わせガラスに用いることができる。
合わせガラスは、2枚のガラス板の間に、エチレン−ビニルアセテート共重合体、ポリビニルブチラール、アイオノマー樹脂から選ばれた少なくとも1種類からなる樹脂層を介して本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムを挟持する構成であり、合わせガラスの加工方法として、これらの積層部材を重ね合わせた後に、圧力をかけながら加熱する方法が挙げられる。
また、該樹脂層が紫外線吸収剤を含有する場合、波長300nm以上400nm未満の範囲内での合わせガラスの平均光線透過率が10%以下であることが好ましい。
合わせガラスとして用いる際には、該樹脂層中にさらに上述の紫外線吸収剤が含まれていることにより、紫外線耐久性が比較的低いポリエチレンナフタレンジカルボキシレート層を含む積層ポリエステルフィルムでありながら、乗物や建築物の窓などの熱線遮蔽用に長時間使用しても、紫外線によるフィルムの白濁や黄変などを効率的に抑制でき、高い紫外線耐久性を付与することができる。
[金属系の積層]
遮熱性能を高めるために、上述の積層フィルムの片面に無機物からなる層を積層させてもよい。
本発明において、本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムの片面に、さらに低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された積層構成(II)を有する、金属および/あるいは金属酸化物の積層体が積層された構成を有してもよい。ここで金属および/あるいは金属酸化物の積層体を構成する低屈折率層と高屈折率層との屈折率差は0.1以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.5以上である。両層の屈折率差がかかる関係を満たしていれば各層の屈折率の範囲は特に制限されない。
金属は低屈折率層に使用することができ、金属酸化物は低屈折率層と高屈折率層の両方に使用することができる。
また、本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムの片面に該金属系の積層体を積層する際、二軸延伸積層ポリエステルフィルムは5μm以上20μm以下の保護層を有していることが好ましい。該保護層厚みが下限に満たない場合には本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムの片面に金属系の積層体を積層させた場合に互いに干渉して可視光透過率が低下し、これらを組み合わせた赤外線遮蔽構成体としての可視光領域の平均反射率が30%を超えてしまうことがある。
一方、該保護層厚みが上限を超える場合には、湾曲した形状の合わせガラスを成形する際に湾曲部分への追従性が低下する傾向にある他、二軸延伸積層ポリエステルフィルムの積層構成(I)の厚みに対する保護層の厚みの割合が高くなり、積層構成(I)を作成する溶融状態の工程で積層構成(I)の各層厚みの均一性が損なわれ、反射率特性にばらつきが生じることがある。
(金属)
本発明において用いられる金属および/あるいは金属酸化物の積層体に用いられる金属としては、Au、Ag、CuまたはAlなどの金属が例示される。これらの中で特に好ましいのは可視光線の吸収がほとんどないAgである。なお、該金属層を形成する金属は、必要に応じて2種以上併用しても良い。
係る金属層を形成する方法としては、気相成長法が好ましく、特に真空蒸着法、スパッタ―法またはプラズマCVD法が好ましい。該金属層の厚みは、5〜1000nm、好ましくは10〜500nmの範囲である。該金属層厚みが下限に満たないと十分な熱線遮蔽性能が発現しにくい。また、該金属層厚みが上限を越えると、可視光の透過率が不十分なものとなりやすく、透明性が損なわれることがある。
(金属酸化物)
本発明において用いられる金属酸化物としては、TiO、ZrO、SnO、In、SiO、ITO、IZO、AZOなどが挙げられる。
係る金属酸化物層の形成方法は、前述の金属層の形成方法と同様に、気相成長法が好ましく、特に真空蒸着法、スパッタ―法またはプラズマCVD法が好ましい。該金属酸化物層の厚みは、光干渉の面から他の金属層や金属酸化物層の屈折率および厚みとも関連するが、0.1〜750nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜500nmの範囲である。該厚みが範囲外であると光干渉効果が十分に得られないことがあり、可視光の反射率の増加や熱線反射性能が低下することがある。
(積層体)
金属および/あるいは金属酸化物の積層体の構成は特に限定するものではないが、例えば、最初に高屈折率層として金属酸化物の層を形成し、続いて低屈折率層として金属層、最後にまた高屈折率層として金属酸化物からなる層を形成し、金属層を金属酸化物層で挟んだ構成とすれば、金属酸化物による反射防止効果によって、高い赤外領域の反射率を保ったままで可視光領域の反射率を下げることができるので好ましい。また、別の態様としては、高屈折率の金属酸化物と低屈折率の金属酸化物を積層させ、干渉によって赤外光を反射させる構成も好ましい。
金属および/あるいは金属酸化物の積層体の層数は生産性の観点から40層以下が好ましく、より好ましくは30層以下、さらに好ましくは10層以下である。また層数の下限は好ましくは3層、さらに好ましくは5層である。
以下、実施例をもって本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性や特性は下記の方法によって測定または評価した。
(1)層厚み
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUTS、製造元:ライヘルト社)で製膜方向と厚み方向に沿って切断し、厚さ50nmの薄膜切片にした。得られた薄膜切片を、透過型電子顕微鏡(製造元:日本電子(株)、商品名:JEM2010)を用いて、加速電圧100kVにて観察・撮影し、写真から各層の厚みを測定した。
なお判別が難しい場合は、ミクロトームで切断したフィルムサンプルを2%オスミウム酸で60℃、2時間染色して、透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM2010)を用いて塗布層の厚みを測定してもよい。
(2)フィルム厚み
電子マイクロメータ(アンリツ(株)製の商品名「K−312A型」)を用いて針圧30gにてフィルム厚みを測定した。
(3)平均反射率
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、波長350nmから2100nmの範囲にわたり、BaSO白板を100%とした時の反射率を測定した。得られたスペクトルのなかで、400〜750nmにおける反射率を平均した平均反射率、および800〜1200nmにおける反射率を平均した平均反射率をそれぞれ求めた。
(4)可視光線透過率、日射透過率
分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、各波長での硫酸バリウム積分球に対する相対分光透過率を波長300nmから2100nmの範囲で測定した。得られた透過率曲線から、JIS R 3106:1998に準じて、400〜750nmの範囲における可視光透過率および340〜1800nmの波長域より日射透過率を算出した。
(5)ガラス転移温度(Tg)
<ポリマー>
各層を構成するポリマーのペレットサンプル約10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入してDSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)に装着し、30℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、300℃で3分間保持した後取り出して急冷した。このパンを再度DSCに装着し、30℃から20℃/分の速度で昇温させて、ガラス転移温度Tgを測定した。
<フィルム>
動的粘弾性測定装置(オリエンテック社製、DDV−01FP)を用い、測定温度範囲30〜180℃、昇温速度2℃/min、1Hzの条件で、得られた二軸延伸フィルムの内部損失tanδを測定し、高温側のピーク温度から第1の層のガラス転移温度(Tg)、低温側のピーク温度から第2の層のガラス転移温度(Tg)をそれぞれ求めた。
(6)ヤング率
フィルムを150mm長×10mm幅に切り出した試験片を用い、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用いて、90℃の温度雰囲気に設定されたチャンバー内に試験片及びテンシロンのチャック部分をセットし、2分間静置後、チャック間100mmにして引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分で引張り、得られる荷重―伸び曲線の立ち上り部の接線よりヤング率を計算する。なお、長手方向(縦方向)のヤング率とはフィルムの縦方向(MD方向)を測定方向としたものであり、幅方向(横方向)のヤング率とはフィルムの横方向(TD方向)を測定方向としたものである。各ヤング率はそれぞれ10回測定し、その平均値を用いた。
(7)ポリエステル成分
フィルムサンプルの各層について、H−NMR測定よりポリエステルの各成分および共重合成分量を求めた。
(8)フィルムのDSCによる融点、結晶化ピークの測定
サンプルフィルム10mgについて、DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)を用い、20℃/minの昇温速度で結晶化ピークの温度および各層の融点を測定した。
(9)ヘーズ値
JIS K7136に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用して初期のフィルムのヘーズ値を測定した。
(10)熱収縮率特性
フィルムの縦方向および横方向について、あらかじめ正確な長さを測定してマーキングした長さ30cm四方のフィルムを、150℃に設定されたオーブン中に無荷重で入れ、30分間静置した後に取り出し、室温に戻してからその寸法変化を読み取る。
熱処理前の長さ(L0)と熱処理による寸法変化量(ΔL)より、次式(2)に従って縦方向および横方向の熱収縮率をそれぞれ求めた。各方向の熱収縮率はそれぞれサンプル数n=5で評価を行い、その平均値を用いた。
熱収縮率(%)=(ΔL/L0)×100 ・・・(2)
(11)120℃伸長時の5%応力特性
フィルムを100mm長×10mm幅に切り出した試験片を用い、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用いて、120℃の温度雰囲気に設定されたチャンバー内に試験片及びテンシロンのチャック部分をセットし、2分間静置後、チャック間50mmにして引張速度50mm/分で引張り、5%伸長時の応力を求めた。なお、長手方向(縦方向)の特性はフィルムの縦方向(MD方向)を測定方向としたものであり、幅方向(横方向)の特性はフィルムの横方向(TD方向)を測定方向としたものである。各方向についてそれぞれ10回測定し、その平均値を用いた。
(12)合わせガラス加工性評価
フィルムを、ラミネート装置により、エンボス加工が施された厚さ0.38mmのポリビニルブチラールシート(PVB)2枚の間にPVBのエンボス加工面がフィルムと接触するようにして挟み、さらに厚さ2mm、500mm×400mmの平板状のガラス板2枚で挟み、その後、加熱加圧炉に入れ、130℃、13atmで30分間処理後、圧は維持したまま温度だけ40℃まで低下させた後、常圧に戻し、加熱加圧炉から取り出し、ガラス板の周囲にはみでているフィルムを切り放し、合わせガラスを得た。ポリビニルブチラールシートとして、エンボスの間隔が略1mmのものを用いた。
上記方法で得られた合わせガラスにおいて、目視にて30W蛍光灯光源のもと、サンプルガラス中にPVBのエンボスに類似した凹凸(略1mm以下の径の凹凸)、しわ、ギラツキ、エアが観察されるものを×、観察されないものを○とした。
(13)耐久性(加熱処理後のヘーズ、反射率)
外周が100mm×100mmで幅が10mmの金枠に上記の方法で反射率およびヘーズを測定したフィルムを載せ、四方をポリイミドテープで固定して、100℃に保持したオーブン中に72h静置した。72h後、オーブンからとりだして、金枠からフィルムを取り外し、加熱後の反射率とヘーズを求めた。反射率については、加熱前後の結果から、800−1200nmの波長領域で20%以上反射率が低下した反射波長を求めた。反射率が20%以上低下した連続した帯域が30nm以上ある場合は反射率評価結果を×、30nm未満の場合は評価結果を○とした。
[実施例1]
第1の層用でかつ保護層用であるポリエステルとして固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレート(以下「PEN」という)、第2の層用のポリエステルとしてシクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.77dl/gのシクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「PETG」という)をそれぞれ準備した。
そして、第1の層用でかつ保護層用であるポリエステルを180℃で5時間、第2の層用ポリエステルを60℃で12時間乾燥後、押出機に供給し、PENは300℃、PETGは270℃まで加熱して溶融状態とした。第1の層のポリエステルを137層、第2の層のポリエステルを138層に分岐させた後、第1の層のポリエステル層と第2の層のポリエステル層とが交互に積層され、かつ第1の層と第2の層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みの比が最大/最小で1.4倍まで連続的に変化するような積層構造部分と該積層構造部分の両面に保護層を積層させるような多層フィードブロック装置を使用して積層し、その積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストした。そして、フィルム両面の最外層にPEN層からなる保護層を持ち、積層構造部の全層数が275層の未延伸多層積層フィルムを作成した。なお、保護層の厚みは、延伸後の厚みが表2記載のとおりとなるように供給量を調整した。また、保護層を除いた積層部の第1の層と第2の層の光学厚み比が等しくなるように、第1の層と第2の層の吐出量を調整した。
このようにして得られた未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より900℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に3.5倍に延伸した。続いてテンターに供給し、145℃にて横方向に4.5倍に延伸した。得られた二軸配向ポリエステルフィルムを、180℃の温度で30秒間熱固定した。なお、層構成と製膜条件を表1に、得られたフィルムの層構成を表2、物性を表3に示す。
[実施例2、3、比較例1]
保護層厚みが表2記載のとおりとなるように調整した以外は実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたフィルムの層構成を表2、物性を表3に示す。
[実施例4]
第2の層用のポリエステルとしてイソフタル酸を26mol%、2,6−ナフタレンジカルボン酸を9mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.70dl/gのイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「IA26NDC9PET」という)を使用した以外は実施例2と同様な操作を繰り返した。得られたフィルムの層構成を表2、物性を表3に示す。
[実施例5]
第2の層用のポリエステルとしてスピログリコールを45mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.60dl/gのスピログリコール共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「SPG45PET」という)を使用し、保護層の厚みが表2記載のとおりとなるように調整した以外は実施例2と同様な操作を繰り返した。得られたフィルムの層構成を表2、物性を表3に示す。
[比較例2]
第2の層用のポリエステルとしてイソフタル酸を12mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65dl/gのイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(以下「IA12PET」という)を使用して、IA12PETの乾燥時間と押出温度をそれぞれ170℃で3時間と280℃とし、熱固定温度を235℃とした以外は実施例2と同様な操作を繰り返した。PENの融点は262℃、IA12PETの融点は224℃であるため、235℃で熱固定することでIA12PETのみ溶融させることができる。得られたフィルムの層構成を表2、物性を表3に示す。
[比較例3]
熱固定温度が表1記載のとおりとなるように調整した以外は比較例2と同様な操作を繰り返した。得られたフィルムの層構成を表2、物性を表3に示す。
[比較例4]
第1層のポリエステルとして固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.64dl/gのポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)、第2の層用のポリエステルとしてPETGをそれぞれ準備した。
そして、第1の層用でかつ保護層用であるポリエステルを170℃で3時間、第2の層用ポリエステルを60℃で12時間乾燥後、押出機に供給し、PETは290℃、PETGは270℃まで加熱して溶融状態とした。第1の層のポリエステルを137層、第2の層のポリエステルを138層に分岐させた後、第1の層のポリエステル層と第2の層のポリエステル層とが交互に積層され、かつ第1の層と第2の層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みの比が最大/最小で1.4倍まで連続的に変化するような積層構造部分と該積層構造部分の両面に保護層を積層させるような多層フィードブロック装置を使用して積層し、その積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストした。そして、フィルム両面の最外層にPET層からなる保護層を持ち、積層構造部の全層数が275層の未延伸多層積層フィルムを作成した。なお、保護層の厚みは、延伸後の厚みが表2記載のとおりとなるように供給量を調整した。また、保護層を除いた積層部の第1の層と第2の層の光学厚み比が等しくなるように、第1の層と第2の層の吐出量を調整した。
このようにして得られた未延伸フィルムを、この未延伸積層フィルムを90℃の温度で製膜方向に3.5倍延伸し、さらに95℃の温度で横方向に4.5倍に延伸し、180℃で30秒間熱処理を行った。なお、層構成と製膜条件を表1に、得られたフィルムの層構成を表2、物性を表3に示す。
Figure 0006139266
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本発明によれば、より少ない積層数でも高い近赤外遮蔽性能を有し、合わせガラスに加工する際の加工性にも優れており、同時に熱処理前後とも高い近赤外遮蔽性能および透明性を備える二軸延伸積層ポリエステルフィルムが提供され、本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムを用いることにより、合わせガラスに加工した際に細かな凹凸が生じない優れた外観性と、高い近赤外遮蔽性能、可視光透過性能に優れる合わせガラスを提供することができる。

Claims (9)

  1. 第1の層および第2の層が交互に積層された合計51層以上の二軸延伸積層ポリエステルフィルムであって、第1層、第2層の各層厚みは、層間の光干渉によって選択的に近赤外光を反射する効果が得られる厚みであり、第1の層および第2の層が交互に積層された積層構造部(I)の両側にガラス転移温度が90℃以上のポリマーからなる保護層を有し、第1の層を構成するポリエステル(A)がポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであり、第2の層を構成するポリエステル(B)がエチレンテレフタレート成分を含む非晶性ポリエステルであり、波長400−750nmの範囲内での平均反射率が25%以下、かつ波長800−1200nmの範囲内での平均反射率が50%以上であり、90℃におけるフィルムのヤング率がフィルム縦方向と横方向の少なくとも一方向において2400MPa以上であり、ヘーズが0.9%以下であることを特徴とする二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
  2. 第1の層および第2の層が交互に積層された積層構造部(I)の両側にガラス転移温度が90℃以上のポリマーからなる厚さ5μm以上20μm以下の保護層を有する、請求項1に記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
  3. 第2の層を構成する前記ポリエステル(B)が全繰返し単位を基準として50モル%以上80モル%以下のエチレンテレフタレート成分を含むポリエステルである、請求項1または2に記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
  4. 第2の層を構成する前記ポリエステル(B)がガラス転移温度90℃未満の共重合ポリエチレンテレフタレートである、請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
  5. 第2の層を構成する前記ポリエステル(B)がシクロヘキサンジメタノールを含む共重合ポリエチレンテレフタレートである、請求項1〜4のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
  6. 100℃、72時間加熱後のヘーズが1.2%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
  7. 波長800−1200nmにおいて、100℃、72時間加熱前後で反射率が20%以上低下する帯域が30nm以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
  8. 熱線遮蔽用に用いられる請求項1〜7のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
  9. 合わせガラス用に用いられる請求項1〜8のいずれかに記載の二軸延伸積層ポリエステルフィルム。
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