JP6137390B2 - 化学強化用ガラス及び化学強化ガラス並びに化学強化ガラスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タブレットPC、ノートPC、スマートフォン及び電子書籍リーダー等の情報機器に備えられたタッチパネルディスプレイのカバーガラス及びタッチセンサーガラス、液晶テレビ及びPCモニター等のカバーガラス、自動車インパネ等のカバーガラス、太陽電池用カバーガラス、並びにビルや住宅の窓に用いられる複層ガラス等に用いられる化学強化ガラスの素板ガラスとして好適な化学強化用ガラス及びそれを用いた化学強化ガラス並びにその製造方法に関する。
近年、情報機器は、タブレットPC、スマートフォン及び電子書籍リーダー等に見られるようにタッチパネルディスプレイを備えるものが主流となっている。タッチパネルディスプレイは、ディスプレイ用ガラス基板の上にタッチセンサーガラスとカバーガラスを重ねた構造を有している。また、OGS(One・glass・solution)と呼ばれるタッチセンサーガラスとカバーガラスを一体化した構成のものもある。
タッチセンサーガラス、カバーガラス及びOGSのガラスのいずれのガラスも薄く高強度であることが求められており、イオン交換で化学強化処理を施した化学強化ガラスが用いられている。
これらの化学強化ガラスの強化特性は、一般に、表面圧縮応力(CS;Compressive stress)と圧縮応力深さ(DOL;Depth of layer)で表現されている。通常のソーダライムシリケートガラスを素板ガラスとして化学強化処理を施した場合、一般的にはCSが500〜600MPa、DOLが6〜10μmとなる化学強化ガラスが得られる。
また、強度向上のためイオン交換しやすい組成のアルミノシリケートガラスが提案されており、アルミノシリケートガラスを素板ガラスとして同じ化学強化処理を施した場合、CSが700〜850MPa、DOLが20〜100μmとなる化学強化ガラスが得られる。
しかしながら、アルミノシリケートガラスは、イオン交換速度は速いが粘性が高いため、生産性が悪く、コストが高くなるという問題があった。
一方、ソーダライムシリケートガラスは、アルミノシリケートガラスに比べて安価である。しかしながら、従来のソーダライムガラスの化学強化ガラスでは、イオン交換速度が遅いため、近年求められているようなガラス強度レベルにCSを向上させることが困難であった。そのため、ソーダライムシリケートガラスを使用した化学強化ガラスでガラス強度を向上させることが可能な化学強化処理方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、化学強化処理において、イオン交換を効率的に行うには、MgOを含有させることが効果的である。MgOは、アルカリ土類金属酸化物(RO)の成分の中では、アルカリイオン交換を促進する効果が最も大きいことが知られている(例えば、特許文献2)。特許文献2は、MgOが液相温度T、すなわち失透温度を上昇させる作用を有しているので、これを補うためにSrOを含ませたガラス組成を開示している。
国際公開第2013/47676号 日本国特開2013−193877号公報
しかしながら、SrOはイオン交換を阻害する成分であり、イオン交換性能の向上と失透特性の向上を両立させた組成としては必ずしも十分なものではなかった。
本発明は、従来と同じ化学強化処理を施しても従来のソーダライムシリケートガラスより強度を向上させることが可能で、かつ失透特性が良好な化学強化用ガラス及びそれを用いた化学強化ガラス並びにその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、特定のガラス組成とすることにより、従来のソーダライムシリケートガラスより化学強化特性が良好であり、かつ、失透特性が向上し、かつ従来のソーダライムシリケートガラス並みの粘性で生産性に優れた化学強化用ガラスが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
酸化物基準の質量百分率表示で
SiOを60〜72%、
Alを4.4〜10%、
MgOを5〜10.9%、
CaOを0.1〜5%、
NaOを14〜19%、
Oを0〜3%を含有し、
ROが7%以上11%以下(ROはアルカリ土類金属酸化物、すなわち、MgO、CaO、SrO、BaOの和を示す。)、および、RO/(RO+RO)が0.20以上、0.42以下(ROはアルカリ金属酸化物の和を示す。)である化学強化用ガラス。
本発明の化学強化用ガラスは、特定の組成を有し、特に、Al、CaO及びMgOの含有量、並びにRO及びRO/(RO+RO)が特定範囲であることにより、従来のソーダライムシリケートガラスよりも化学強化時に強化が入りやすく、失透特性が良好であり、かつ従来のソーダライムシリケートガラス並みの粘性で生産性に優れた化学強化ガラスを提供することができる。
図1は、化学強化用ガラスのRO/(RO+RO)の値とT−Tの値の相関関係を示す図である。
<化学強化用ガラス>
以下に本発明の一実施形態について説明する。本実施形態の化学強化用ガラスは、酸化物基準の質量百分率表示でSiOを60〜72%、Alを4.4〜10%、MgOを5〜10.9%、CaOを0.1〜5%、NaOを14〜19%、KOを0〜3%を含有し、ROが7%以上11%以下、および、RO/(RO+RO)が0.20以上、0.42以下であることを特徴とする。ここで、「化学強化用ガラス」とは、イオン交換可能なガラスであり、化学強化処理に適したガラスを指す。
本実施形態の化学強化用ガラスにおいて、ガラス組成を前記範囲に限定した理由を以下に説明する。
SiOは、ガラス微細構造の中で網目構造を形成する成分として知られており、ガラスを構成する主要成分である。SiOの含有量は、60%以上であり、好ましくは62%以上、より好ましくは63%以上、さらに好ましくは64%以上である。また、SiOの含有量は、72%以下であり、好ましくは70%以下、より好ましくは69%以下である。SiOの含有量が60%以上であるとガラスとしての安定性及び耐候性の点で優位である。一方、SiOの含有量が72%以下であると溶解性及び成形性の点で優位である。
Alは化学強化におけるイオン交換性能を向上させる作用があり、特にCSを向上する作用が大きい。ガラスの耐候性を向上する成分としても知られている。また、フロート成形時にボトム面からの錫の浸入を抑制する作用がある。Alの含有量は、1%以上であり、好ましくは3%以上、より好ましくは4%以上、さらに好ましくは4.4%以上、特に好ましくは5%以上である。また、Alの含有量は、10%以下であり、より好ましくは9%以下、さらに好ましくは8%以下、特に好ましくは7%以下である。
Alの含有量が1%以上であると、イオン交換により、所望のCS値が得られ、また、錫の浸入を抑制する効果が得られる。一方、Alの含有量が10%以下であると、ガラスの粘性が高い場合でも失透温度が大きくは上昇しないため、ソーダライムガラス生産ラインでの溶解、成形の点で優位である。
MgOは、ガラスを安定化させる成分であり、必須である。MgOの含有量は、5%以上、好ましくは6%以上、より好ましくは7%以上、さらに好ましくは8%以上である。また、MgOの含有量は、12%以下であり、好ましくは10.9%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは9%以下である。MgOの含有量が5%以上であると、ガラスの耐薬品性が良好になる。高温での溶解性が良好になり、失透が起こり難くなる。一方、MgOの含有量が12%以下であると、失透の起こりにくさが維持され、十分なイオン交換速度が得られる。
CaOはガラスを安定化させる成分であり、必須である。CaOはアルカリイオンの交換を阻害する傾向があるため、DOLを大きくしたい場合は含有量を減らすことが好ましい。CaOの含有量は0.1%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.8%以上である。CaOを含有する場合の量は、5%以下であり、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下である。CaOの含有量が5%以下であると、十分なイオン交換速度が保たれ、所望のDOLが得られる。
一方、耐薬品性を向上させるためには、0.5%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは3%以上含有することが好ましい。
NaOはイオン交換により表面圧縮応力層を形成させる必須成分であり、CSの低下を抑制しつつDOLを深くする作用がある。またガラスの高温粘性と失透温度を下げ、ガラスの溶解性、成形性を向上させる成分である。NaOの含有量は、13%以上であり、好ましくは14%以上、より好ましくは15%以上である。また、NaOの含有量は、19%以下であり、好ましくは18%以下、より好ましくは17%以下である。
NaOの含有量が13%以上であると、イオン交換により所望の表面圧縮応力層を形成することができる。一方、NaOの含有量が19%以下であると、十分な耐候性が得られる。
Oは必須ではないが、イオン交換速度を増大しDOLを深くする効果があるため含有してもよい。一方、KOが多くなりすぎると十分なCSが得られなくなる。KOを含有する場合の量は、5%以下であり、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。KOの含有量が5%以下であると、十分なCSが得られる。
SrOは必須ではないが、失透特性を向上する効果があるため、含有してもよい。一方、SrOが多くなりすぎると十分なDOLが得られなくなる。SrOを含有する場合の量は3%以下であり、好ましくは2%以下、より好ましくは1%未満である。SrOの含有量が3%以下であると十分なDOLが得られる。
BaOは必須ではないが、失透特性を向上する効果があるため、含有してもよい。一方、BaOが多くなりすぎると十分なDOLが得られなくなる。BaOを含有する場合の量は2%以下であり、好ましくは1%以下である。BaOの含有量が2%以下であると十分なDOLが得られる。
RO(ここでROはアルカリ土類金属酸化物、すなわち、MgO、CaO、SrO、BaOの和)は、溶融性を向上させる成分であるとともに、Tgと歪点の調節に有効な成分である。ROの含有量は好ましくは5.1%以上であり、より好ましくは7%以上であり、さらに好ましくは8%以上であり、最も好ましくは9%以上である。また、好ましくは11%以下であり、より好ましくは10.5%以下であり、さらに好ましくは10.3%以下である。ROが5.1%以上であることにより溶解性を向上することができる。また、ROが11%以下であることにより失透特性を向上することができる。
本願の発明者は、失透特性とRO/(RO+RO)(ここでROはアルカリ金属酸化物の和)の相関性を解析した結果、図1に示すような相関関係にあることを見出した。図1のTとは粘性が10dP・sとなる温度、Tとは失透温度を示すので、T−Tは失透特性を示す。
ガラス成形を行う場合は、T−Tは−50℃以上であることが好ましく、−30℃以上であることがより好ましく、−10℃以上であることがさらに好ましい。特に、フロート法などで失透の可能性なしに製造するためには、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。
図1に示すように、RO/(RO+RO)の値が0.42を超えると、T−Tは0℃未満となり、失透しやすくなる。したがって、本発明の化学強化ガラスにおいて、RO/(RO+RO)の値が0.42以下であり、好ましくは0.41以下であり、より好ましくは0.40以下であり、さらに好ましくは0.39以下である。また、RO/(RO+RO)の値は、0.20以上であり、好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.30以上、最も好ましくは0.35以上である。RO/(RO+RO)の値が0.20以上であると、熱膨張係数(CTE)を低く抑えることができる。
熱衝撃に対する耐性を高くするため、CTEは150×10−7−1以下であることが好ましく、120×10−7−1以下であることがより好ましく、100×10−7−1以下であることがさらに好ましい。
高温粘性はガラス製造の指標となる物性値であり、ガラスの溶解温度の指標として粘度が10dPa・sとなる温度(T)を設定した。Tは、原料の溶解性と製造設備の寿命や製造コストのバランスの観点から1550℃以下が好ましく、1530℃以下がより好ましく、1510℃以下がさらに好ましい。
成形を行う温度の指標として、粘度が10dPa・sとなる温度(T)を設定した。フロート法による成形では、Tは、失透温度Tよりも高いと、成形する際に失透が生じにくくなるため、Tは高い方がよい。1000℃以上が好ましく、1020℃以上がより好ましく、1040℃以上がさらに好ましく、1060℃以上が最も好ましい。一方、高過ぎるとフロートバスの寿命を短くし、製造コストの上昇となるので好ましくない。Tは1130℃以下が好ましく、1110℃以下がより好ましく、1090℃以下がさらに好ましい。
この他、ガラスの溶融の清澄剤として、硫酸塩、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。本発明のガラスは本質的に以上で説明した成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は4%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以下、典型的には0.5%以下である。以下、上記その他成分について例示的に説明する。
は高温での溶融性またはガラス強度の向上のために、4%以下の範囲で含有してもよい。好ましくは1%以下である。一般的には、NaOまたはKOのアルカリ成分とBを同時に含有すると揮散が激しくなり、煉瓦を著しく浸食するので、Bは実質的に含有しないことが好ましい。
Feは、自然界及び生産ラインのあらゆるところに存在するため、その含有量をゼロにすることが極めて困難な成分である。酸化状態にあるFeが黄色の着色原因となり、還元状態にあるFeOが青色の着色原因となることが知られており、両者のバランスでガラスは緑色に着色することが知られている。Feの含有量は典型的には0.005%以上であり、着色を抑えるためには1%以下、より好ましくは0.2%以下であることが好ましい。Feが1%以下であることによって、ガラスが着色することを回避できる。
TiOは、天然原料中に多く存在し、黄色の着色源となることが知られている。TiOを含有する場合の量は、1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。TiOの含有量が1%以下であることでガラスが黄色味を帯びる現象を回避できる。
ZnOはガラスの高温での溶融性を向上するために、たとえば2%まで含有してもよい。しかし、フロート法で製造する場合には、フロートバスで還元され製品欠点となるので含有しないことが好ましい。
ZrOはCSの向上のために、4%以下の濃度で含有してもよい。ZrOを含有する場合の量は2%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。ZrOが4%で以下であることで失透温度の上昇を回避できる。
LiOはTgを低くして応力緩和を起こりやすくし、その結果安定した表面圧縮応力層を得られなくする成分であるので含有しないことが好ましく、含有する場合であってもその含有量は1%未満であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下、特に好ましくは0.01%未満である。
本実施形態の化学強化用ガラスは、通常、板形状をしているが、平板でも曲げ加工を施したガラス板でもよい。本実施形態の化学強化用ガラスは、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法など、既知のガラス成形方法によって平板形状に成形されたガラス板である。
本実施形態の化学強化用ガラスは、既存の成形法で成形可能な寸法を有する。すなわち、フロート法で成形すれば、フロート成形幅の連続したリボン状のガラスが得られる。また、本実施形態の化学強化用ガラスは、最終的には使用目的に適した大きさに切断される。
すなわち、タブレットPCまたはスマートフォン等のディスプレイの大きさであったり、ビルまたは住宅の窓ガラスの大きさとなる。本実施形態のガラスは、一般的には矩形に切断されているが、円形または多角形などの他の形状でも問題なく、穴あけ加工を施したガラスも含まれる。
<化学強化処理>
化学強化処理は、従来公知の方法によって行うことができる。また、化学強化処理の前に、用途に応じた形状加工、例えば、切断、端面加工及び穴あけ加工などの機械的加工を行うことが好ましい。
化学強化処理により、大きなイオン半径のアルカリ金属イオン(典型的には、Kイオン)を含むアルカリ金属塩(例えば、硝酸カリウム塩)の融液に浸漬などによって、ガラス基板を接触させることにより、ガラス基板中の小さなイオン半径の金属イオン(典型的には、Naイオン)が大きなイオン半径の金属イオンと置換される。
化学強化処理は、例えば、330〜550℃の硝酸カリウム溶融塩中にガラス板を5分〜20時間浸漬することによって行うことができる。イオン交換条件は、ガラスの粘度特性や、用途、板厚、ガラス内部の引っ張り応力等を考慮して最適な条件を選択すればよい。
イオン交換処理を行うための溶融塩としては、例えば、硝酸カリウム塩、硫酸カリウム塩、及び塩化カリウム塩等のアルカリ硝酸塩、アルカリ硫酸塩及びアルカリ塩化物塩などが挙げられる。これらの溶融塩は単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、化学強化特性を調整するために、ナトリウムを含む塩を混ぜてもよい。
本発明において、化学強化処理の処理条件は、特に限定されず、ガラスの特性及び溶融塩等を考慮して最適な条件を選択すればよい。
<化学強化ガラス>
本発明の化学強化用ガラスを化学強化して得られる化学強化ガラス(以下、本発明の化学強化ガラスともいう。)は、イオン交換処理によって表面に圧縮応力層を備える。表面圧縮応力は300MPa以上であることが好ましく、500MPa以上であることがより好ましい。
また、化学強化ガラスの使用時に表面圧縮応力層の深さを超える傷がつくとガラスの破壊につながるため、表面圧縮応力層は深い方が好ましく、10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは14μm以上である。また、化学強化処理後の切断を可能とするためには、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。
なお、本発明の化学強化ガラスの表面圧縮応力層の深さ及び表面圧縮応力値は、表面応力計(例えば、折原製作所製FSM−6000)等を用いて測定することができる。
本発明の化学強化ガラスは、ナトリウムイオン、銀イオン、カリウムイオン、セシウムイオン及びルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種を表面に有することが好ましい。このことにより、表面に圧縮応力が誘起されガラスが高強度化される。また、銀イオンを表面に有することで、抗菌性を付与することができる。
本発明の化学強化用ガラスを化学強化することにより、化学強化ガラス製品を得ることができる。化学強化ガラス製品としては、ディスプレイ装置などのカバーガラス並びにディスプレイのガラス基板が挙げられる。
本発明の化学強化ガラスの用途は、特段限定されない。高い機械的強度を有することから、落下による衝撃や、他の物質との接触が予想される箇所への使用に好適である。
具体的には、例えば、携帯電話機(スマートフォン等の多機能情報端末を含む。)、PHS、PDA、タブレット型端末、ノート型パーソナルコンピューター、ゲーム機、携帯音楽・動画プレーヤー、電子ブック、電子端末、時計、カメラまたはGPS等のディスプレイ部分用のカバーガラス、及びこれらの機器のタッチパネル操作用モニターのタッチセンサーガラス、電子レンジ、オーブントースター等の調理器のカバーガラス、電磁調理器等のトッププレート、メーター、ゲージ等の計器類のカバーガラス並びにコピー機またはスキャナ等の読み取り部分用のガラス板等の機械または機器類の保護用途がある。
また、例えば、ビル、住宅、車両、船舶、航空機等の窓用ガラス、家庭用または産業用の照明機器、信号、誘導灯、電光掲示板のカバーガラス、ショーケース及び防弾ガラス等の用途が挙げられる。太陽電池保護用のカバーガラス及び太陽電池の発電効率を高めるための集光用のガラス材の用途が挙げられる。
また、例えば、水槽、皿やコップ等の食器、びん又はまな板等の各種の調理器具、食器棚、冷蔵庫の棚板及び壁、屋根または仕切り等の建材としての用途が挙げられる。
これらの用途に加え、化学強化処理を終えて製造される化学強化ガラスは、液晶、プラズマ、有機EL等の各種画像表示装置に組み込まれるディスプレイ用ガラス材として最適である。
以下に本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[化学強化用ガラスの作成]
表1及び表2の例1〜23についてSiOからKOまでの欄に質量百分率表示で示す組成になるように、酸化物、水酸化物、炭酸塩または硝酸塩等一般に使用されているガラス原料を適宜選択し、ガラスとして900gとなるように秤量した。ついで、混合した原料を白金製るつぼに入れ、1600℃の抵抗加熱式電気炉に投入し、4時間溶融し、脱泡、均質化した。
得られた溶融ガラスを型材に流し込み、Tg+30℃の温度で1時間保持した後、1℃/分の速度で室温まで冷却し、ガラスブロックを得た。このガラスブロックを切断、研削し、最後に両面を鏡面に加工して、サイズが20mm×20mm、厚みが1mmである板状ガラス(化学強化用ガラス)を得た。このガラスの比重、Tg、T、T、T及びCTEを測定した。その結果を表1及び表2に示す。
得られた化学強化用ガラスを425℃の97.8%KNO、2.2%NaNO溶融塩中に2時間30分浸漬して化学強化処理することにより化学強化ガラスを得た。化学強化処理後の各ガラスについて、CS及びDOLを測定した。その結果を表1及び表2に示す。
[評価方法]
(1)比重
比重はアルキメデス法で測定した。表1及び表2中のカッコ内の数値は、計算値を示す。計算値については、比重の測定値とガラス組成から線形回帰式を作成して、計算により求めた。
(2)ガラス転移点(Tg)
ガラス転移点はTMAにより測定した。表1及び表2中のカッコ内の数値は、計算値を示す。計算値については、Tgの測定値とガラス組成から線形回帰式を作成して、計算により求めた。
(3)高温粘性
粘度が10dPa・sとなる温度(T)、粘度が10dPa・sとなる温度(T)は回転式粘度計を用いて測定した。表1及び表2中のカッコ内の数値は、計算値を示す。計算値については、T及びTの測定値とガラス組成から線形回帰式を作成して、計算により求めた。
(4)CTE
CTEはJIS R 1618:2002に基づき、ガラス転移点(Tg)の測定と同時に熱膨張計(ブルカー・エイエックスエス社製、TD5000SA)を用いて5℃/分の昇温速度で測定し50〜350℃の平均線熱膨張係数を求めた。表1及び表2中のカッコ内の数値は、計算値を示す。計算値については、CTEの測定値とガラス組成から線形回帰式を作成して、計算により求めた。
(5)失透温度(T
失透温度は、ガラスを乳鉢で2mm程度のガラス粒に粉砕し、このガラス粒を白金ボートに並べて置き、温度傾斜炉中において5℃刻みで24時間熱処理した。結晶が析出しているガラス粒の温度の最高値を失透温度とした。
(6)表面圧縮応力(CS)及び圧縮応力層深さ(DOL)
表面圧縮応力及び圧縮応力層深さは、折原製作所社製表面応力計FSM−6000にて測定した。表1及び表2中のカッコ内の数値は、計算値を示す。計算値については、CS及びDOLの測定値とガラス組成から線形回帰式を作成して、計算により求めた。
Figure 0006137390
Figure 0006137390
表1及び表2中、例1、4、7〜9、11〜13が実施例、例17〜23が比較例、例2、3、5、6、10、14〜16が参考例である。
表1及び表2に示す結果から以下の考察が得られた。
各実施例で調整した本発明の化学強化用ガラスは、特にAl、CaO及びMgOの含有量、並びにRO及びRO/(RO+RO)が特定範囲であることにより、化学強化によるDOL値を効果的に向上させることができ、T−Tが高く、失透特性を向上させることができることが分かる。
これに対し、比較例の例17、18、21及び22の化学強化用ガラスは、MgOが少なく、CaOが多い組成となっている。このため、例17、18、21及び22の化学強化用ガラスを化学強化処理した化学強化ガラスは、DOLが低く、化学強化により強化が入りにくいガラスであることが分かる。
比較例の例19及び20の化学強化用ガラスは、RO/(RO+RO)の値が、いずれも0.43であり、0.42を超えている。このため、例19及び20の化学強化用ガラスのT−Tの値は、例19が−122℃、例20が−134℃でいずれも0℃未満となっており、失透特性が悪かった。
比較例の例23の化学強化用ガラスは、Alの含有量が、12.8%であり、10%を超えている。このため、例23の化学強化用ガラスのTは、1601℃と高い値を示し、粘性が高くなっている。
また、参考例の例15及び比較例の例17〜22の化学強化用ガラスは、RO/(RO+RO)が0.41より大きく、RO/(RO+RO)が0.40より小さい実施例の例1、4、7〜9、11と比較して、T−Tの値が低かったことから、RO/(RO+RO)の値は、0.40以下がより好ましい。
さらに、参考例の例15及び比較例の例17〜22の化学強化用ガラスは、ROが11%を超えており、ROが11%以下である実施例の例1、4、7〜9、11と比較して、T−Tの値が低かったことから、ROは11%以下とすることがより好ましい。
本発明の化学強化用ガラスを化学強化処理にすることにより得られる本発明の化学強化ガラスは、ディスプレイ装置、特にタッチパネルディスプレイのカバーガラスなどに利用できる。また、ビル住宅用の複層ガラスや太陽電池基板などにも利用することができる。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2014年3月28日付で出願された日本特許出願(特願2014−070098)に基づいており、その全体が引用により援用される。

Claims (10)

  1. 酸化物基準の質量百分率表示で
    SiO65.670%、
    Alを4.4〜7%、
    MgOを〜10.9%、
    CaOを0.1〜5%、
    NaOを15〜19%、
    Oを0〜3%含有し、
    ROが7%以上11%以下(ROはアルカリ土類金属酸化物、すなわち、MgO、CaO、SrO、BaOの和を示す。)、および、RO/(RO+RO)が0.20以上、0.42以下(ROはアルカリ金属酸化物の和を示す。)であり、
    粘度が10 dPa・sとなる温度(T2)が1550℃以下である化学強化用ガラス。
  2. RO/(RO+RO)が0.40以下である請求項に記載の化学強化用ガラス。
  3. Alを5%以上含有する請求項1または2に記載の化学強化用ガラス。
  4. MgOを10%以下含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
  5. を0〜4%、Feを0〜1%、TiOを0〜1%を含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
  6. フロートガラスである、請求項1〜のいずれか1項に記載の化学強化用ガラス。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の化学強化用ガラスが化学強化された、化学強化ガラス。
  8. 表面圧縮応力が300MPa以上である請求項に記載の化学強化ガラス。
  9. 圧縮応力深さが10μm以上である請求項又はに記載の化学強化ガラス。
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載の化学強化用ガラスをイオン交換処理する化学強化工程を含む化学強化ガラスの製造方法。
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