以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について詳述する。
図1に示されるように、本実施形態におけるエンジン5は、シリンダブロック5Bと、シリンダブロック5Bの上側に設けられたシリンダヘッド5Aとを有している。
図1は、シリンダヘッド5Aを上方から見たものとして表し、シリンダブロック5Bを吸気側から見たものとして表している。
なお、図1,3,4,6,8、10,12において、冷却水の流路に矢印が記載されている場合には、その流路に冷却水が流れていることを表し、流路に矢印が記載されていない場合には、その流路に冷却水が流れていないことを表している。
シリンダヘッド5Aおよびシリンダブロック5Bの内部には、ピストン(図示略)がそれぞれ嵌挿された複数の気筒#1〜#4が形成されている。具体的には、図1の左から順に第1気筒#1,第2気筒#2,第3気筒#3,第4気筒#4が形成されている。エンジン5は、4つの気筒#1〜#4がクランク軸方向に直列に並ぶ直列4気筒エンジンである。シリンダヘッド5Aにおける第4気筒#4側の端部に、後述のロータリバルブ装置2が設けられている。エンジン5は、車両前部に設けられたエンジンルーム内に配置されている。
ピストンの上方には燃焼室が形成されている。シリンダヘッド5Aには、燃焼室に向かって開口する吸気ポートおよび排気ポート(いずれも図示略)が形成されている。吸気ポートは、図1において気筒#1〜#4の下側に位置しており、排気ポートは、図1において気筒#1〜#4の上側に位置している。吸気ポートは、各気筒内に吸気を導入するためのものである。排気ポートは、各気筒内から排気を排出するためのものである。
また、シリンダヘッド5Aには、排気側ウォータジャケットおよびメインウォータジャケットが形成されている。排気側ウォータジャケットは、シリンダヘッド5Aの排気ポート側の部分を第1気筒#1側から第4気筒#4側まで気筒列方向に通過する。メインウォータジャケットは、シリンダヘッド5Aの排気ポート側の部分以外の部分、つまり燃焼室の周囲の部分および吸気ポート側の部分を第1気筒#1側から第4気筒#4側まで気筒列方向に通過する。
排気側ウォータジャケットは、後述の排気側流路22(図1参照)に相当する。メインウォータジャケットは、後述のメイン流路23(図1参照)に相当する。排気側ウォータジャケット(排気側流路22)とメインウォータジャケット(メイン流路23)の間には隔壁28が設けられ、この隔壁28を介して排気側ウォータジャケットとメインウォータジャケットとは相互に分離して形成されている。
シリンダブロック5Bは、気筒#1〜#4の周囲に設けられたメインウォータジャケットを有している。メインウォータジャケットは、シリンダブロック5Bを第1気筒#1側から第4気筒#4側を回って第1気筒#1側まで一巡するように通過する。シリンダブロック5Bのウォータジャケットは、後述のブロック側流路25(図1参照)に相当する。
次に、エンジン5の冷却装置1について詳細に説明する。
図1に示されるように、冷却装置1は、ヒータ用循環経路40と、補機用循環経路41と、連絡流路27と、連絡流路45(図8参照)と、水温センサ7,8,24と、アクセル開度センサ30と、クランク角センサ32と、吸気温センサ38と、ヒータ側ポンプ4と、補機側ポンプ3と、ロータリバルブ装置2と、ECU31(Electronic Control Unit)とを備えている。
ヒータ側ポンプ4は、電子制御式の電動ポンプである。ヒータ側ポンプ4は、本発明における「第1のポンプ」に相当する。ヒータ側ポンプ4は、吸込口と吐出口を一つずつ有している。吸込口には、後述のヒータ側流路15の下流端部が接続されている。吐出口には、下流側で2つに分岐する図外の分岐管が接続されている。分岐管における分岐した一方側の端部に後述の連絡流路26(図1参照)の上流端部が接続され、他方側の端部に後述のETB側流路19(図1参照)の上流端部が接続されている。
補機側ポンプ3は、機械式ポンプであり、エンジンの駆動力を受けて作動する。補機側ポンプ3は、本発明における「第2のポンプ」に相当する。
本実施形態における補機は、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラ9、オイルクーラ10、EGRバルブ11、ATF(Automatic Transmission Fluid)ウォーマ12、電子制御スロットルボディ(以下、「ETB」と称する)13、およびラジエータ14である。
<ヒータ用循環経路40の構成>
ヒータ用循環経路40(図1参照)は、冷却水が循環する経路であり、排気側流路22、ヒータ側流路15、ETB側流路19、ロータリバルブ装置2内の流路、および連絡流路26を有している。ヒータ用循環経路40は、本発明における「第1の循環経路」に相当する。
排気側流路22は、シリンダヘッド5Aの排気ポート側部分5aを通過する通路である。排気側流路22の一端部は、ブロック側流路25に接続されており、より具体的にはブロック側流路25におけるロータリバルブ装置2とは反対側の部分に接続されている。排気側流路22の他端部は、ロータリバルブ装置2に接続されている。
ヒータ側流路15は、空調装置のヒータコア6を通過する流路である。ヒータ側流路15の上流端部は、排気側流路22の中途部、より具体的には排気側流路22におけるロータリバルブ装置2とは反対側の部分に接続されている。ヒータ側流路15におけるヒータコア6の下流側には、冷却水の温度を検出する水温センサ7が設けられている。
ETB側流路19は、ETB13を通過する流路である。ETB側流路19の下流端部は、ヒータ側流路15におけるヒータコア6とヒータ側ポンプ4の間の区間に接続されている。
連絡流路26は、ヒータ側ポンプ4の吐出口とロータリバルブ装置2とを連絡する流路である。連絡流路26の下流端部は、ロータリバルブ装置2における後述の流量調節弁V3に接続されている。
<ロータリバルブ装置2の構成>
ロータリバルブ装置2は、図2(b)に示されるように、円筒状のロータリバルブ2aと、ロータリバルブ2aを収容する直方体状のハウジング2bと、ロータリバルブ2aを回転駆動する電子制御式の電動モータ(図示略)とを有している。ロータリバルブ2aは、ハウジング2b内で周方向(軸周り方向)に回転可能となっている。
図2(a)は、ロータリバルブ2aの周面上の位置を、ロータリバルブ2aの軸心周りの角度0°〜360°で表した、ロータリバルブ2aの展開図である。図2(a)における上下方向を、ロータリバルブ2aの軸方向とし、図2(a)における左右方向を、ロータリバルブ2aの周方向とする。
ロータリバルブ2aは、軸方向中央部に設けられた円板状の隔壁W(図2(a)参照)と、隔壁Wを挟む一方側に設けられた中実円筒部21aと、隔壁Wを挟む他方側に設けられた中空円筒部22aとを有している。中実円筒部21aと中空円筒部22aとは、隔壁Wによって仕切られている。なお、図2(b)においては、隔壁Wの図示を省略している。
図2(b)に示されるように、ハウジング2bは、開口部H1,H2,H3,H4,H5と、図外の開口部(以下、「図外開口部」と称する)とを有している。開口部H1は、ハウジング2bにおけるエンジン5側の面(図2(b)における左側の面)に形成されている。開口部H2は、ハウジング2bにおけるエンジン5とは反対側の面(図2(b)における右側の面)に形成されている。開口部H3,H4は、ハウジング2bにおける上面(図2(b)における上側の面)に形成されている。開口部H5は、ハウジング2bにおける下側の面(図2(b)における下側の面)に形成されている。これら開口部H1,H2,H3,H4,H5は、冷却水が通過する穴である。
開口部H1,H2,H3,H4,H5と切欠孔K11,K12,K21,K31,K32,K33,K41,K51との位置関係を示すために、図2(a)には、開口部H1,H2,H3,H4,H5を二点鎖線で示している。図2(a)に示されるように、開口部H1,H2,H3,H4,H5は、この順に、ハウジング2bの軸方向一端側から他端側に並んでいる。図2(a)に示されるように、開口部H1の中心は基準位置0°に常時あるものとする。
開口部H1とロータリバルブ2aとの間には、開口部H1の内周縁からロータリバルブ2aに向かって延びる円筒状のリップ部2cが設けられている。リップ部2cの開口部H1側の端部は、開口部H1の内周縁に固定されている。リップ部2cは、ロータリバルブ2aとは別体となっており、ロータリバルブ2aには固定されていない。リップ部2cのロータリバルブ2a側の端面は、ロータリバルブ2aの外周面に沿った形状となっている。これにより、リップ部2cのロータリバルブ2a側の端面は、ロータリバルブ2aの外周面に摺接可能となっている。
開口部H2とロータリバルブ2aの間にも、リップ部2cと同様のリップ部2dが設けられ、開口部H3とロータリバルブ2aの間にも、リップ部2cと同様のリップ部2eが設けられ、開口部H4とロータリバルブ2aの間にも、リップ部2cと同様のリップ部2fが設けられ、開口部H5とロータリバルブ2aの間にも、リップ部2cと同様のリップ部2gが設けられている。
図2(a)に示されるように、ロータリバルブ2aの中実円筒部21aには、切欠孔K11,K12,K21,K31,K32,K33と、トンネル部T1,T2,T3とが形成されている。
ロータリバルブ2aの中空円筒部22aの周壁には、切欠孔K41,K51が形成されている。また、中空円筒部22aの軸方向端部(図2(a)における下端部)には、開口部36(図2(b)参照)が形成されている。
切欠孔K11,K12,K21,K31,K32,K33は、中実円筒部21aの周面から所定の深さに形成された凹部である。切欠孔K11,K12,K21,K31,K32,K33の深さは、中実円筒部21aの径方向中心には到達しない程度の深さである。
切欠孔K41,K51は、中空円筒部22aの周壁に形成された貫通孔である。
図2(a)に示されるように、切欠孔K11,K12は、ロータリバルブ2aの周方向に並んでいる。切欠孔K31,K32,K33は、ロータリバルブ2aの周方向に並んでいる。切欠孔K11,K12から構成される1列目の切欠孔、切欠孔K21から構成される2列目の切欠孔、切欠孔K31,K32,K33から構成される3列目の切欠孔、切欠孔K41から構成される4列目の切欠孔、切欠孔K51から構成される5列目の切欠孔は、この順に、ロータリバルブ2aの軸方向一端側から他端側に並んでいる。
ロータリバルブ2aは、回転するにつれて切欠孔K1,K2,K3,H4,H5の位置が周方向(図2(a)の左右方向)に変化する。
切欠孔K11の開口形状は、ロータリバルブ2aの周方向に延びる長方形状をなしており、図2(a)に示される或る時点(冷却装置1全体において冷却水の流れを停止させるとき)では、30°付近から280°付近に亘って延在している。
切欠孔K12の開口形状は、ロータリバルブ2aの周方向に延びる長方形状をなしており、図2(a)に示される或る時点では、290°付近から25°付近に亘って延在している。
切欠孔K21の開口形状は、ロータリバルブ2aの周方向に延びる長方形状をなしており、図2(a)に示される或る時点では、335°付近から105°付近に亘って延在している。
切欠孔K31の開口形状は、ロータリバルブ2aの周方向に延びる長方形状をなしており、図2(a)に示される或る時点では、25°付近から110°付近に亘って延在している。
切欠孔K32の開口形状は、ロータリバルブ2aの周方向に延びる長方形状をなしており、図2(a)に示される或る時点では、120°付近から235°付近に亘って延在している。
切欠孔K33の開口形状は、ロータリバルブ2aの周方向に延びる長方形状をなしており、図2(a)に示される或る時点では、245°付近から10°付近に亘って延在している。
切欠孔K11,K12,K21,K31,K32,K33の開口幅(ロータリバルブ2aの軸方向に沿った長さ)は、互いに同じである。
切欠孔K41は、ロータリバルブ2aの周方向に延びて長手方向一端側(図2(a)における左側端部)が凹状に窪んだ長方形状の主部K41cと、主部K41cの長手方向他端部(図2(a)における右側端部)に連続して設けられて三角形状に窄まる窄まり部K41bと、窄まり部K41bの先端から突出する突起部K41aとを有する。図2(a)に示される或る時点では、切欠孔K41は、200°付近から55°付近に亘って延在している。切欠孔K41の主部K41cの幅は、切欠孔K11,K12,K21,K31,K32,K33の開口幅よりも大きい。
切欠孔K51は、ロータリバルブ2aの周方向に延びて長手方向一端側が凹状に窪んだ長方形状の主部K51cと、主部K51cの長手方向他端部に連続して設けられて三角形状に窄まる窄まり部K51bと、窄まり部K51bの先端から突出する突起部K51aとを有している。主部K51cの周方向の長さは、切欠孔K41における主部K41cの周方向長さよりも短くなっており、図2(a)に示される或る時点では、355°付近から145°付近に亘って延在している。切欠孔K51の主部K51cの幅は、切欠孔K41の主部K41cの幅に等しい。
図2(a)に示されるように、トンネル部T1(破線で示す)は、切欠孔K21と切欠孔K33とを繋ぐように、中実円筒部21aの内部に形成されている。トンネル部T1の一端部は切欠孔K21の内壁面で開口し、トンネル部T1の他端部は切欠孔K33の内壁面で開口している。切欠孔K21と切欠孔K33とは、トンネル部T1を通じて連通している。
トンネル部T2は、切欠孔K12と切欠孔K31とを繋ぐように、中実円筒部21aの内部に形成されている。トンネル部T2の一端部は切欠孔K12の内壁面で開口し、トンネル部T2の他端部は切欠孔K31の内壁面で開口している。切欠孔K12と切欠孔K31とは、トンネル部T2を通じて連通している。なお、図2(a)において、トンネル部T2と切欠孔K21とが互いに交差しているが、これらは互いに連通していない。トンネル部T2は、中実円筒部21aの内部で切欠孔K21を迂回するように形成されている。
トンネル部T3は、切欠孔K11と、切欠孔K32と、中空円筒部22aとを繋ぐように、中実円筒部21aの内部に形成されている。トンネル部T3の一端部は切欠孔K11の内壁面で開口し、トンネル部T3の長さ方向中央部は切欠孔K32の内壁面で開口し、トンネル部T3の他端部は隔壁Wを貫通して隔壁Wの中空円筒部22a側の面で開口している。切欠孔K11と、切欠孔K32と、中空円筒部22aとは、トンネル部T3を通じて連通している。
開口部H1は、ロータリバルブ2aの回転に応じて切欠孔K11,K12と重なり合うことが可能な位置に設けられており、図2(a)に示される0°を中心とした位置に設けられている。開口部H1の直径は、切欠孔K11,K12の幅よりも若干大きい。開口部H1は、排気側流路22におけるロータリバルブ装置2側の端部に接続されている。
開口部H2は、ロータリバルブ2aの回転に応じて切欠孔K21と重なり合うことが可能な位置に設けられており、図2(a)に示される180°を中心とした位置に設けられている。開口部H2の直径は、切欠孔K21の幅よりも若干大きい。開口部H2は、後述の連絡流路27(図1参照)の上流端部に接続されている。
開口部H3は、ロータリバルブ2aの回転に応じて切欠孔K31,K32,K33と重なり合うことが可能な位置に設けられており、図2(a)に示される90°を中心とした位置に設けられている。開口部H3の直径は、切欠孔K31,K32,K33の幅よりも若干大きい。開口部H3は、連絡流路26(図1参照)の下流端部に接続されている。
開口部H4は、ロータリバルブ2aの回転に応じて切欠孔K41と重なり合うことが可能な位置に設けられており、図2(a)に示される90°を中心とした位置に設けられている。開口部H4の直径は、切欠孔K41の幅よりも若干大きい。開口部H4は、後述の補機側流路35(図1参照)における上流側流路34に接続されている。
開口部H5は、ロータリバルブ2aの回転に応じて切欠孔K51と重なり合うことが可能な位置に設けられており、図2(a)に示される270°を中心とした位置に設けられている。開口部H5の直径は、切欠孔K51の幅よりも若干大きい。開口部H5は、後述のラジエータ側流路33(図1参照)の上流端部に接続されている。
ロータリバルブ2aの軸方向端部の開口部36(図2(b)参照)と、ハウジング2bにおける開口部36に対向する内壁面との間には隙間が設けられている。ハウジング2bに形成された上記の図外開口部は、この隙間や切欠孔K41,K51を通じて、ロータリバルブ2aの中空円筒部22aの内部と常時連通している。この常時連通している部分を、図1において連通部37として図示する。
このロータリバルブ装置2においては、図2,7に示されるように、切欠孔K12と開口部H1とが重なり合い、かつ、切欠孔K31と開口部H3とが重なり合ったときに、図1,3,6に示されるように、排気側流路22と連絡流路26とが連通する。つまり、ロータリバルブ装置2内に、排気側流路22と連絡流路26とを繋ぐ連絡流路42が形成される。
また、図5に示されるように、切欠孔K11と開口部H1とが重なり合い、かつ、切欠孔K32と開口部H3とが重なり合ったときに、図4に示されるように、排気側流路22と連絡流路26とメイン流路23とが連通する。つまり、ロータリバルブ装置2内に、排気側流路22と連絡流路26とメイン流路23とを繋ぐ連絡流路43が形成される。
また、図7に示されるように、切欠孔K41と開口部H4とが重なり合ったときに、図6に示されるように、メイン流路23と補機側流路35とが連通する。つまり、ロータリバルブ装置2内に、メイン流路23と補機側流路35とを繋ぐ連絡流路44が形成される。
また、図9に示されるように、切欠孔K11と開口部H1とが重なり合い、かつ、切欠孔K41と開口部H4とが重なり合ったときに、図8に示されるように、排気側流路22とメイン流路23と補機側流路35とが連通する。つまり、ロータリバルブ装置2内に、排気側流路22と連絡流路44とを繋ぐ連絡流路45と、連絡流路44とが形成される。
また、図9,11に示されるように、切欠孔K21と開口部H2とが重なり合い、かつ、切欠孔K33と開口部H3とが重なり合ったときに、図8,10に示されるように、連絡流路26と連絡流路27とが連通する。つまり、ロータリバルブ装置2内に、連絡流路26と連絡流路27とを繋ぐ連絡流路46が形成される。
また、図11に示されるように、切欠孔K11と開口部H1とが重なり合い、かつ、切欠孔K41と開口部H4とが重なり合い、かつ、切欠孔K51と開口部H5とが重なり合ったときに、図10に示されるように、排気側流路22とメイン流路23と補機側流路35とラジエータ側流路33とが連通する。つまり、ロータリバルブ装置2内に、ラジエータ側流路33と連絡流路44とを繋ぐ連絡流路47と、連絡流路44と、連絡流路45とが形成される。
また、図13に示されるように、切欠孔K11と開口部H1とが重なり合い、かつ、切欠孔K32と開口部H3とが重なり合い、かつ、切欠孔K41と開口部H4とが重なり合い、かつ、切欠孔K51と開口部H5とが重なり合ったときに、図12に示されるように、排気側流路22とメイン流路23と連絡流路26と補機側流路35とラジエータ側流路33とが連通する。つまり、ロータリバルブ装置2内に、連絡流路26と連絡流路44とを繋ぐ連絡流路48と、連絡流路44と、連絡流路45と、連絡流路47とが形成される。
このロータリバルブ装置2においては、切欠孔K11と開口部H1とが重なり合う面積、および、切欠孔K12と開口部H1とが重なり合う面積が、ロータリバルブ2aの回転に応じて変化する。つまり、切欠孔K11,K12と開口部H1によって、流量調節弁が構成される。以下の説明では、切欠孔K11,K12と開口部H1によって構成される流量調節弁を流量調節弁V1(図1参照)と称する。
同様に、切欠孔K21と開口部H2によって、流量調節弁が構成されている。また、切欠孔K31,K32,K33と開口部H3によって、流量調節弁が構成されている。また、切欠孔K41と開口部H4によって、流量調節弁が構成されている。また、切欠孔K51と開口部H5によって、流量調節弁が構成されている。
以下の説明では、切欠孔K21と開口部H2によって構成される流量調節弁を流量調節弁V2(図1参照)と称し、切欠孔K31,K32,K33と開口部H3によって構成される流量調節弁を流量調節弁V3と称し、切欠孔K41と開口部H4によって構成される流量調節弁を流量調節弁V4と称し、切欠孔K51と開口部H5によって構成される流量調節弁を流量調節弁V5と称する。
図3,6に示されるように、流量調節弁V1と流量調節弁V3とが連通している場合には、排気側流路22と連絡流路26との間で冷却水が流れることが可能になる。また、図4に示されるように、流量調節弁V1と流量調節弁V3と連通部37とが連通している場合には、排気側流路22と連絡流路26とメイン流路23との間で冷却水が流れることが可能になる。また、図6に示されるように、連通部37と流量調節弁V4とが連通している場合には、メイン流路23と補機側流路35との間で冷却水が流れることが可能になる。
また、図8に示されるように、流量調節弁V1と連通部37と流量調節弁V4とが連通している場合には、排気側流路22とメイン流路23と補機側流路35との間で冷却水が流れることが可能になる。また、図8,10に示されるように、流量調節弁V2と流量調節弁V3とが連通している場合には、連絡流路26と連絡流路27との間で冷却水が流れることが可能になる。
また、図10に示されるように、流量調節弁V1と連通部37と流量調節弁V4と流量調節弁V5とが連通している場合には、排気側流路22とメイン流路23と補機側流路35とラジエータ側流路33との間で冷却水が流れることが可能になる。また、図12に示されるように、流量調節弁V1と連通部37と流量調節弁V3と流量調節弁V4と流量調節弁V5とが連通している場合には、排気側流路22とメイン流路23と連絡流路26と補機側流路35とラジエータ側流路33との間で冷却水が流れることが可能になる。
つまり、流量調節弁V1,V2,V3,V4,V5により、冷却水の流路を切り替える流路切替弁が構成される。
ヒータ用循環経路40において冷却水を循環させるためには、(i)ヒータ側ポンプ4が作動している状態において、図3,4,6、12に示されるように、流量調節弁V1と流量調節弁V3とを連通させるか、または(ii)補機側ポンプ3およびヒータ側ポンプ4のうち少なくとも補機側ポンプ3が作動している状態において、図8,10に示されるように、流量調節弁V1と流量調節弁V4とを連通させ、かつ、流量調節弁V2と流量調節弁V3とを連通させる必要がある。その理由については後述する。
<補機用循環経路41の構成>
補機用循環経路41(図1参照)は、冷却水が循環する経路であり、ブロック側流路25、メイン流路23、ロータリバルブ装置2内の流路、上流側流路34、オイルクーラ側流路20、EGRバルブ側流路21、EGRクーラ側流路17、リターン流路16、およびラジエータ側流路33を有している。補機用循環経路41は、本発明における「第2の循環経路」に相当する。
オイルクーラ側流路20、EGRバルブ側流路21、EGRクーラ側流路17、およびリターン流路16により、補機側流路35が構成されている。
ブロック側流路25は、シリンダブロック5Bを通過する流路である。ブロック側流路25の上流端部は、補機側ポンプ3の吐出口に接続されている。
メイン流路23は、シリンダヘッド5Aの排気ポート側部分以外の部分、つまり燃焼室の周囲の部分および吸気ポート側の部分を通過する流路である。メイン流路23におけるロータリバルブ装置2とは反対側の端部は、ブロック側流路25に接続されている。
上流側流路34は、ロータリバルブ装置2の開口部H4(流量調節弁V4)から流出した冷却水を、オイルクーラ側流路20、EGRバルブ側流路21、およびEGRクーラ側流路17に導くための流路である。上流側流路34の上流端部は、開口部H4に接続されている。上流側流路34の下流端部は、オイルクーラ側流路20、EGRバルブ側流路21、およびEGRクーラ側流路17の上流端部に接続されている。上流側流路34には、冷却水の温度を検出する水温センサ8が設けられている。
オイルクーラ側流路20の下流端部は、リターン流路16に接続されている。オイルクーラ側流路20には、オイルクーラ10が設けられている。
EGRバルブ側流路21の下流端部は、リターン流路16に接続されている。EGRバルブ側流路21には、EGRバルブ11およびATFウォーマ12が設けられている。
ラジエータ側流路33の上流端部は、ロータリバルブ装置2の開口部H5(流量調節弁V5)に接続されている。ラジエータ側流路33の下流端部は、リターン流路16に接続されている。ラジエータ側流路33には、ラジエータ14が設けられている。
リターン流路16は、オイルクーラ側流路20、EGRバルブ側流路21、ラジエータ側流路33、およびEGRクーラ側流路20から流出した冷却水を補機側ポンプ3に戻すための流路である。リターン流路16の上流部または中流部に、オイルクーラ側流路20、EGRバルブ側流路21、ラジエータ側流路33、およびEGRクーラ側流路20の下流端部が接続されている。リターン流路16の下流端部は、補機側ポンプ3の吸込口に接続されている。
補機用循環経路41において冷却水を循環させるためには、補機側ポンプ3が作動している状態において、連通部37と流量調節弁V4とが連通している必要がある(図6,8,10,12参照)。
<連絡流路27の構成>
連絡流路27は、リターン流路16の中途部と、流量調節弁V2とを繋ぐ流路である。連絡流路27の上流端部は流量調節弁V2に接続され、連絡流路27の下流端部はリターン流路16の中途部に接続されている。図1に示される例では、連絡流路27の下流端部は、リターン流路16における、リターン流路16とEGRクーラ側流路17の接続点よりも上流側の部分に接続されている。連絡流路27は、本発明における「第1の連絡流路」に相当する。
<水温センサおよび各種センサの構成>
水温センサ24は、メイン流路23に設けられており、メイン流路23を流れる冷却水の温度を検出する。水温センサ7は、ヒータ側流路15におけるヒータコア6の下流側に設けられており、ヒータコア6から流出した冷却水の温度を検出する。水温センサ8は、上流側流路34に設けられており、ロータリバルブ装置2から流出した冷却水の温度を検出する。アクセル開度センサ30は、運転者によるアクセルペダルの踏込量をアクセル開度として検出する。クランク角センサ32は、クランクシャフトの回転角度を検出する。吸気温センサ38は、エンジン5に流入する吸入空気の温度を検出する。
水温センサ8、アクセル開度センサ30、クランク角センサ32、および吸気温センサ38は、本発明の「温度検出手段」に相当する。
<ECU31の構成>
ECU31は、CPU、RAM、ROM等により構成されている。ECU31は、水温センサ24、アクセル開度センサ30、およびクランク角センサ32から受けた検出値を示す信号に基づいて、ロータリバルブ装置2およびヒータ側ポンプ4の動作を制御するための制御信号を生成し、その制御信号をロータリバルブ装置2およびヒータ側ポンプ4に送信する。ECU31は、本発明の「温度検出手段」および「制御部」に相当する。
なお、水温センサ7,8の検出値は、ECU31によってロータリバルブ装置2およびヒータ側ポンプ4が制御されている間、ヒータコア6やエンジン5が適切に温度調節されているかどうかを判断するために用いられる。以下の説明では、水温センサ7,8の検出値を用いたロータリバルブ装置2およびヒータ側ポンプ4の制御動作の説明は省略する。
次に、ECU31によるロータリバルブ装置2およびヒータ側ポンプ4の制御動作について、図14、15のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、エンジン5は既に始動され、補機側ポンプ3はエンジン5の動力を受けて作動しているものとする。
図14に示されるように、まず、ECU31は、水温センサ24、アクセル開度センサ30、クランク角センサ32、および吸気温センサ38から、検出値を示す信号を入力する(ステップS1)。
次いで、ECU31は、アクセル開度センサ30が検出したアクセル開度に基づいて、エンジンで発生したエンジン負荷(エンジンで発生する駆動トルク)を算出する(ステップS2)。
次いで、ECU31は、クランク角センサ32が検出したクランク角に基づいて、エンジン回転数を算出する(ステップS3)。
次いで、ECU31は、冷却水温度、エンジン負荷、エンジン回転数、および吸入空気温度に基づいて、エンジン5のシリンダヘッド5A側の燃焼室の壁面温度(以下、「燃焼室壁温」と称する)を算出する(ステップS4)。この燃焼室壁温は、本発明における「エンジンの温度」に相当する。
次いで、ECU31は、燃焼室壁温がレベル0の温度範囲にあるかどうかを判断する(ステップS5)。レベル0の温度範囲は、冷間状態に相当する温度T0未満の温度であり、本発明における「第1の温度範囲」に含まれる。
ECU31は、ステップS5でYESの判断をした場合には、図1に示されるように、流量調節弁V1と流量調節弁V3とが連通する状態とし、ヒータ側ポンプ4を停止状態とする制御を行う(ステップS6)。
ステップS6の制御が行われることにより、図2(a)に示されるように、ロータリバルブ装置2において、開口部H1と切欠孔K12とが重なり合い、開口部H2と切欠孔K21とが重なり合わず、開口部H3と切欠孔K31とが重なり合い、開口部H4と切欠孔K41とが重なり合わず、開口部H5と切欠孔K51とが重なり合わない状態となる。これにより、図1に示されるように、ロータリバルブ装置2内に、排気側流路22と連絡流路26とを繋ぐ連絡流路42が形成されるが、ヒータ側ポンプ4が停止しているため、ヒータ用循環経路40において冷却水は循環しない。また、ロータリバルブ装置2内に、メイン流路23と補機側流路35とを繋ぐ連絡流路が形成されないので、補機用循環経路41においても冷却水は循環しない。このように、冷却装置1のいずれの流路においても冷却水は流れないので、エンジン5の暖機が促進される。以下、ステップS6の制御状態を、「水停止状態」と称する。ECU31は、ステップS6の処理を実行した後、ステップS1にリターンする。
ECU31は、ステップS5でNOの判断をした場合には、燃焼室壁温がレベル1の温度範囲にあるかどうかを判断する(ステップS7)。レベル1の温度範囲は、温度T0以上かつT1未満の温度範囲(暖機中)であり、本発明における「第1の温度範囲」に含まれる。
ECU31は、ステップS7でYESの判断をした場合には、図3に示されるように、流量調節弁V1と流量調節弁V3とが連通する状態とし、ヒータ側ポンプ4を作動させる制御を行う(ステップS8)。ヒータ側ポンプ4は、冷却水をヒータ側流路15側から連絡流路26およびETB側流路19側へ流す向きに作動する。ヒータ側ポンプ4が作動する他のステップにおいても同様である。
ステップS8の制御が行われることにより、図3に示されるように、排気側流路22、ヒータ側流路15、連絡流路26、連絡流路42、およびETB側流路19に冷却水が流れる。すなわち、これら排気側流路22、ヒータ側流路15、連絡流路26、連絡流路42、およびETB側流路19から構成されるヒータ用循環経路40において冷却水が循環する。以下、ステップS8の制御状態を、「制御状態A」と称する。ECU31は、ステップS8の処理を実行した後、ステップS1にリターンする。
ECU31は、ステップS7でNOの判断をした場合には、燃焼室壁温がレベル2の温度範囲にあるかどうかを判断する(ステップS9)。レベル2の温度範囲は、温度T1以上かつT2未満の温度範囲(暖機中)であり、本発明における「第1の温度範囲」に含まれる。
ECU31は、ステップS9でYESの判断をした場合には、図4に示されるように、流量調節弁V1と連通部37と流量調節弁V3とが連通する状態とし、ヒータ側ポンプ4を作動させる制御を行う(ステップS10)。
具体的には、ロータリバルブ2aがハウジング2b内で回転することにより、図5に示されるように、ロータリバルブ装置2において、開口部H1と切欠孔K11とが重なり合い、開口部H2と切欠孔K21とが重なり合わず、開口部H3と切欠孔K32とが重なり合い、開口部H4と切欠孔K41とが重なり合わず、開口部H5と切欠孔K51とが重なり合わない状態となる。これにより、図4に示されるように、ロータリバルブ装置2内に、排気側流路22とメイン流路23と連絡流路26とを繋ぐ連絡流路43が形成される。
そして、排気側流路22、メイン流路23、ブロック側流路25におけるロータリバルブ装置2とは反対側の部分、ヒータ側流路15、連絡流路26、連絡流路43、およびETB側流路19によってヒータ用循環経路40が構成される。ヒータ側ポンプ4の圧送力により、このヒータ用循環経路40において冷却水が循環する。以下、ステップS10の制御状態を、「制御状態B」と称する。ECU31は、ステップS10の処理を実行した後、ステップS1にリターンする。
ECU31は、ステップS9でNOの判断をした場合には、燃焼室壁温がレベル3の温度範囲にあるかどうかを判断する(ステップS11)。レベル3の温度範囲は、温度T2以上かつT3未満の温度範囲(暖機中)であり、本発明における「第1の温度範囲」に含まれる。
ECU31は、ステップS11でYESの判断をした場合には、図6に示されるように、流量調節弁V1と流量調節弁V3とが連通する状態とし、連通部37と流量調節弁V4とが連通する状態とし、流量調節弁V4の開度を小開度とし、ヒータ側ポンプ4を作動させる制御を行う(ステップS12)。
具体的には、図7に示されるように、ECU31は、ロータリバルブ2aを、各切欠孔K11,K12,K21,K31,K32,K33,K41,K51が図7における左側から右側へ進むように回転させる(以下、「右回転」と称する)。ロータリバルブ2aが回転することにより、図7に示されるように、ロータリバルブ装置2において、開口部H1と切欠孔K12とが重なり合い(流量調節弁V1が全開状態)、開口部H2と切欠孔K21とが重なり合わず(流量調節弁V2が全閉状態)、開口部H3と切欠孔K31とが重なり合い(流量調節弁V3が全開状態)、開口部H4と、切欠孔K41の突起部K41aおよび窄まり部K41bとが重なり合い(流量調節弁V4が小開度状態)、開口部H5と切欠孔K51とが重なり合わない状態(流量調節弁V5が全閉状態)となる。
これにより、図6に示されるように、ロータリバルブ装置2内に、排気側流路22と連絡流路26とを繋ぐ連絡流路42が形成され、メイン流路23と補機側流路35とを繋ぐ連絡流路44が形成される。連絡流路42と連絡流路44は、互いに独立している。
そして、排気側流路22、ヒータ側流路15、連絡流路26、連絡流路42、およびETB側流路19によってヒータ用循環経路40が構成される。ヒータ側ポンプ4の圧送力により、このヒータ用循環経路40において冷却水が循環する。
また、ブロック側流路25、メイン流路23、連絡流路44、補機側流路35によって補機用循環経路41が構成される。補機側ポンプ3の圧送力により、この補機用循環経路41において冷却水が循環する。
連絡流路42と連絡流路44が互いに独立しているため、ヒータ用循環経路40と補機用循環経路41の間の流路に冷却水は流れない。つまり、ヒータ用循環経路40と補機用循環経路41は、冷却水が混じり合わない互いに独立した循環経路となり、それぞれの循環経路において冷却水が別々に循環する。
また、流量調節弁V4が小開度状態となることにより、流量調節弁V4の開弁時に、補機側流路35内、つまり、オイルクーラ側流路20、EGRバルブ側流路21、EGRクーラ側流路17、およびリターン流路16内の低温の冷却水が短時間のうちに大量にメイン流路23に流入することが防止される。
また、ステップS12において、開口部H4に切欠孔K41の突起部K41aから重なり始める(図7参照)。従って、メイン流路23と補機側流路35とが接続された当初の所定期間は流量が少量に制限される。その後、開口部H4と、切欠孔K41の突起部K41aおよび窄まり部K41bとが重なり合う状態となるまで、流量が次第に多くなっていく。従って、メイン流路23と補機側流路35を接続する際に、補機側流路35内の低温の冷却水がメイン流路23に徐々に流入するので、燃焼室周りの急激な温度低下を抑制することができる。以下、ステップS12の制御状態を、「制御状態C」と称する。
ECU31は、ステップS11でNOの判断をした場合には、図15に示されるように、燃焼室壁温がレベル4の温度範囲にあるかどうかを判断する(ステップS13)。レベル4の温度範囲は、温度T3以上かつT4未満の温度範囲(暖機中)であり、本発明における「第2の温度範囲」に含まれる。温度T4は、エンジンが暖機中か否かの判断基準となる温度である。つまり、燃焼室壁温がT4未満であればエンジンは暖機中であり、T4以上であればエンジンは暖機完了状態にある。
ECU31は、ステップS13でYESの判断をした場合には、図8に示されるように、ロータリバルブ装置2において、流量調節弁V1と連通部37と流量調節弁V4とが連通する状態とし、流量調節弁V2と流量調節弁V3とが連通する状態とし、流量調節弁V4の開度を大開度(全開状態よりは開度が少し小さい状態)とし、ヒータ側ポンプ4を停止させる制御を行う(ステップS14)。
具体的には、ECU31は、ロータリバルブ2aを右回転させる(図9参照)。ロータリバルブ2aが右回転することにより、図9に示されるように、ロータリバルブ装置2において、開口部H1と切欠孔K11とが重なり合い(流量調節弁V1が大開度状態)、開口部H2と切欠孔K21とが重なり合い(流量調節弁V2が大開度状態)、開口部H3と切欠孔K33とが重なり合い(流量調節弁V3が大開度状態)、開口部H4と、切欠孔K41の窄まり部K41bおよび主部K41cとが重なり合い(流量調節弁V4が大開度状態)、開口部H5と切欠孔K51とが重なり合わない状態(流量調節弁V3が全閉状態)となる。
流量調節弁V4の開度が大きくなることにより、ロータリバルブ装置2から補機側流路35へ流出する冷却水の量が増加する。
ステップS14の制御を行うことにより、図8に示されるように、ロータリバルブ装置2内に、連絡流路44と、排気側流路22と連絡流路44とを繋ぐ連絡流路45と、連絡流路27と連絡流路26とを繋ぐ連絡流路46とが形成される。
連絡流路46は、本発明における「第1の連絡流路」に相当する。そして、連絡流路46を形成することにより、連絡流路27を開放すること(図8,10に示す状態)が、本発明における「第1の連絡流路の開放」に相当し、連絡流路46を形成しないことにより、連絡流路27が閉鎖されること(図1,3,4,6,12に示す状態)が、本発明における「第1の連絡流路の閉鎖」に相当する。
また、連絡流路45は、本発明における「第2の連絡流路」に相当する。そして、連絡流路45を形成することにより、排気側流路22と連絡流路44とを繋ぐこと(図8,10,12に示す状態)が、本発明における「第2の連絡流路の開放」に相当し、連絡流路45を形成せずに連絡流路42または連絡流路43を形成すること(図1,3,4,6に示す状態)が、本発明における「第2の連絡流路の閉鎖」に相当する。
ステップS14の制御を行うことにより、ヒータ側流路15、連絡流路26、連絡流路46、連絡流路27、リターン流路16、ブロック側流路25におけるロータリバルブ装置2とは反対側の部分、排気側流路22におけるロータリバルブ装置2とは反対側の部分、およびETB側流路19によってヒータ用循環経路40が構成される。補機側ポンプ3の圧送力により、このヒータ用循環経路40において冷却水が循環する。
また、ブロック側流路25、メイン流路23、連絡流路44、排気側流路22、連絡流路45、補機側流路35によって補機用循環経路41が構成される。補機側ポンプ3の圧送力により、この補機用循環経路41において冷却水が循環する。
ここで、補機側ポンプ3の圧送力により、ヒータ用循環経路40において冷却水が循環する理由について説明する。
エンジン5の動力を受けて補機側ポンプ3が駆動されている状態(図6参照)では、補機用循環経路41における補機9,10,11,12の上流側部分は補機9,10,11,12の下流側部分よりも冷却水の圧力が高い。このため、リターン流路16(低圧)と連絡流路44(高圧)との間には圧力差が生じる。
この圧力差をヒータ用循環経路40における冷却水の循環に利用するべく、図8に示されるように、連絡流路46を形成することにより連絡流路27を開放するとともに、排気側流路22と連絡流路44とを繋ぐ連絡流路45を形成する。これにより、ヒータ用循環経路40における離れた2点P1,P2(図8参照)間に、補機側ポンプ3による圧力差を生じさせる。P1は、リターン流路16と連絡流路27との接続点(低圧)であり、P2は、ヒータ側流路15と排気側流路22との接続点(高圧)である。P1,P2間に圧力差を発生させることにより、補機側ポンプ3の圧送力を利用して、ヒータ用循環経路40において冷却水が循環する。補機側ポンプ3の圧送力を利用して、ヒータ用循環経路40で冷却水を循環させることができるため、ヒータ側ポンプ4を停止させた状態で、ヒータ用循環経路40において冷却水を循環させることができる。
すなわち、ステップS14の制御により、ヒータ用循環経路40における離れた2点P1,P2間に補機側ポンプ3による圧力差を生じさせることにより、補機側ポンプ3の圧送力を利用してヒータ用循環経路40で冷却水を循環させ、その結果、ヒータ側ポンプ4にかかる負荷を低減して、ヒータ側ポンプ4の消費電力低減および寿命向上を図ることができる。
以下、ステップS14の制御状態を、「制御状態D」と称する。
ECU31は、ステップS13でNOの判断をした場合には、エンジン負荷が所定の閾値未満であるかどうかを判断する(ステップS15)。その閾値は、エンジン5が高負荷状態であるか否かの判断基準となる値である。つまり、エンジン負荷がその閾値未満であれば、エンジン5は低負荷または中負荷状態であり、エンジン負荷がその閾値以上であれば、エンジン5は高負荷状態である。なお、ステップS13でNOと判断された場合には、燃焼室壁温はT4以上である。T4以上の温度範囲は、本発明における「第3の温度範囲」に相当する。
ECU31は、ステップS15でYESの判断をした場合には、図10に示されるように、ロータリバルブ装置2において、流量調節弁V1と連通部37と流量調節弁V4と流量調節弁V5とが連通する状態とし、流量調節弁V2と流量調節弁V3とが連通する状態とし、流量調節弁V4の開度を全開状態とし、流量調節弁V5の開度を中開度状態とし、ヒータ側ポンプ4を停止させる制御を行う(ステップS16)。
具体的には、ECU31は、ロータリバルブ2aを右回転させる(図11参照)。ロータリバルブ2aが右回転することにより、図11に示されるように、ロータリバルブ装置2において、開口部H1と切欠孔K11とが重なり合い(流量調節弁V1が全開状態)、開口部H2と切欠孔K21とが重なり合い(流量調節弁V2が全開状態)、開口部H3と切欠孔K33とが重なり合い(流量調節弁V3が全開状態)、開口部H4と、切欠孔K41の主部K41cとが重なり合い(流量調節弁V4が全開状態)、開口部H5と、切欠孔K51の突起部K51a、窄まり部K51bおよび主部K51cとが重なり合う状態(流量調節弁V5が中開度状態)となる。
流量調節弁V4の開度が大きくなることにより、ロータリバルブ装置2から補機側流路35へ流出する冷却水の量が増加する。
ステップS16の制御を行うことにより、図10に示されるように、ロータリバルブ装置2内に、連絡流路44と、排気側流路22と連絡流路44とを繋ぐ連絡流路45と、ラジエータ側流路33と連絡流路44とを繋ぐ連絡流路47と、連絡流路27と連絡流路26とを繋ぐ連絡流路46とが形成される。
そして、ヒータ側流路15、連絡流路26、連絡流路46、連絡流路27、リターン流路16、ブロック側流路25におけるロータリバルブ装置2とは反対側の部分、排気側流路22におけるロータリバルブ装置2とは反対側の部分、およびETB側流路19によってヒータ用循環経路40が構成される。補機側ポンプ3の圧送力により、このヒータ用循環経路40において冷却水が循環する。
また、ブロック側流路25、メイン流路23、連絡流路44、排気側流路22、連絡流路45、補機側流路35、連絡流路47、ラジエータ側流路33によって補機用循環経路41が構成される。補機側ポンプ3の圧送力により、この補機用循環経路41において冷却水が循環する。
また、流量調節弁V5が中開度状態となることにより、ラジエータ側流路33内の低温の冷却水が短時間のうちに大量にメイン流路23に流入することが防止される。
また、ステップS16において、図11に示されるように、開口部H5に切欠孔K51の突起部K51aから重なり始める。従って、メイン流路23とラジエータ側流路33とが接続された当初の所定期間は流量が少量に制限される。その後、開口部H5と、切欠孔K51の突起部K51aおよび窄まり部K51bとが重なり合う状態となるまで、流量が次第に多くなっていく。従って、メイン流路23とラジエータ側流路33を接続する際に、ラジエータ側流路33内の低温の冷却水がメイン流路23に徐々に流入するので、燃焼室周りの急激な温度低下を抑制することができる。以下、ステップS16の制御状態を、「制御状態E」と称する。
ECU31は、ステップS15でNOの判断をした場合には、図12に示されるように、ロータリバルブ装置2において、流量調節弁V1と連通部37と流量調節弁V3と流量調節弁V4と流量調節弁V5とが連通する状態とし、流量調節弁V4の開度を中開度状態とし、流量調節弁V5の開度を大開度状態とし、ヒータ側ポンプ4を作動させる制御を行う(ステップS17)。
具体的には、ECU31は、ロータリバルブ2aを右回転させる(図13参照)。ロータリバルブ2aが右回転することにより、図13に示されるように、ロータリバルブ装置2において、開口部H1と切欠孔K11とが重なり合い(流量調節弁V1が全開状態)、開口部H2と切欠孔K21とが重なり合わず(流量調節弁V2が全閉状態)、開口部H3と切欠孔K32とが重なり合い(流量調節弁V3が全開状態)、開口部H4と、切欠孔K41の主部K41cの一端部(凹部側)とが重なり合い(流量調節弁V4が中開度状態)、開口部H5と、切欠孔K51の主部K51cの一端部(凹部側)とが大きく重なり合う状態(流量調節弁V5が大開度状態)となる。
流量調節弁V4の開度よりも流量調節弁V5の開度が大きくなることにより、ロータリバルブ装置2から補機側流路35へ流出する冷却水の量よりも、ロータリバルブ装置2からラジエータ側流路33へ流出する冷却水の量の方が多くなる。
ステップS17の制御を行うことにより、図12に示されるように、ロータリバルブ装置2内に、連絡流路44と、排気側流路22と連絡流路44とを繋ぐ連絡流路45と、ラジエータ側流路33と連絡流路44とを繋ぐ連絡流路47と、連絡流路26と連絡流路44とを繋ぐ連絡流路48とが形成される。
そして、ヒータ側流路15、連絡流路26、連絡流路48、補機側流路35、ブロック側流路25におけるロータリバルブ装置2とは反対側の部分、排気側流路22におけるロータリバルブ装置2とは反対側の部分、およびETB側流路19によってヒータ用循環経路40が構成される。補機側ポンプ3およびヒータ側ポンプ4の圧送力により、このヒータ用循環経路40において冷却水が循環する。
また、ブロック側流路25、メイン流路23、連絡流路44、排気側流路22、連絡流路45、補機側流路35、連絡流路47、およびラジエータ側流路33によって補機用循環経路41が構成される。補機側ポンプ3の圧送力により、この補機用循環経路41において冷却水が循環する。また、補機側流路35およびラジエータ側流路33には、連絡流路48を介して、ヒータ用循環経路40から冷却水が流入する。従って、補機側流路35およびラジエータ側流路33を流れる冷却水の量は、ステップS16のときよりも増加する。よって、冷却装置1の冷却能力が向上する。以下、ステップS17の制御状態を、「制御状態F」と称する。
以上説明したように、本実施形態によれば、制御状態A〜Cにおいて、シリンダヘッド5Aで温められた冷却水をヒータ側ポンプ4の圧送力によってヒータコア6に供給し、制御状態D,Eにおいて、シリンダヘッド5Aで温められた冷却水を補機側ポンプ3の圧送力を利用してヒータコア6に供給するので、ヒータ用循環経路40(第1の循環経路)と補機用循環経路41(第2の循環経路)とを別々に設けた冷却水循環系において、ヒータ用循環経路40(第1の循環経路)に設けたヒータ側ポンプ4(第1のポンプ)にかかる負荷を低減することができ、ヒータ側ポンプ4の消費電力の低減および寿命向上を図ることができる。
すなわち、制御状態D,Eにおいて、ヒータ用循環経路40における離れた2点P1,P2間に補機側ポンプ3による圧力差を生じさせることにより、補機側ポンプ3の圧送力を利用してヒータ用循環経路40で冷却水を循環させ、その結果、ヒータ側ポンプ4にかかる負荷を低減して、ヒータ側ポンプ4の消費電力低減および寿命向上を図ることができる。
また、本実施形態においては、暖機の後期から暖機完了までの間に、ラジエータ側流路33に冷却水を流すので、暖機の後期からラジエータ14によって冷却水を冷却することができる。
また、本実施形態においては、制御状態Fにおいて、連絡流路48を連絡流路44に接続した状態で、ヒータ側ポンプ4を作動させるので、暖機完了後において、補機側流路35およびラジエータ側流路33に流す冷却水の量を増加させて、冷却装置1の冷却能力を向上させることができる。つまり、制御状態D,Eのように連絡流路27を開放した状態では、ヒータ側ポンプ4から吐出された冷却水の一部が補機9〜12およびラジエータ14を経由せずにその下流側へ流れてしまうため、冷却装置1の冷却性能が低下する虞があるが、制御状態Fのように連絡流路27を閉鎖した状態では、ヒータ側ポンプ4から吐出された冷却水の殆どが補機9〜12およびラジエータ14を経由して流れるので、冷却性能の低下を抑制することができる。
また、本実施形態においては、ヒータ用循環経路40に、シリンダヘッド5Aの排気ポート側部分5aが含まれているので、ヒータコア6の暖機を促進することができる。つまり、排気ポートには高温の排気ガスが流れるため、シリンダヘッド5Aの排気ポート側部分5aを流れる冷却水は、速やかに温められ、高温に温められる。よって、ヒータコア6にはシリンダヘッド5Aの排気ポート側部分5aの熱が与えられ、ヒータコア6の昇温が促進される。
また、本実施形態においては、シリンダヘッド5Aの排気ポート側部分5aと、シリンダヘッド5Aの排気ポート側以外の部分5bの間には隔壁28が設けられ、隔壁28を介して排気ポート側部分5aと排気ポート側以外の部分5bとは相互に分離して形成されているので、シリンダヘッド5Aの排気ポート側部分5aの熱をヒータコア6の昇温に優先的に利用することができ、ヒータコア6の昇温がさらに促進される。
また、本実施形態においては、制御状態D,Eにおいて、ECU31は、ヒータ側ポンプ4を停止させる制御を行うので、ヒータ側ポンプ4の消費電力低減および寿命向上を促進することができる。
なお、上記実施形態においては、制御状態D,Eにおいて、ヒータ側ポンプ4を停止させているが、これに限られない。すなわち、制御状態D,Eにおいて、ヒータ側ポンプ4の吐出量を、制御状態A〜Cよりも少なくしてもよい。つまり、ヒータ側ポンプ4の吐出量を抑えて、補機側ポンプ3をアシストする形でヒータ側ポンプ4を用いても、ヒータ側ポンプ4の負荷を低減することができる。
また、上記実施形態における制御状態Fにおいては、ヒータ側ポンプ4の吐出量を、制御状態A〜Cと同じになるように制御してもよいが、制御状態A〜Cよりも増加するように制御することが好ましい。ヒータ側ポンプ4の吐出量が制御状態A〜Cよりも増加するように制御すれば、補機9〜13を流れる冷却水の量およびラジエータ14を流れる冷却水の量が増えるので、冷却装置1の冷却性能をさらに向上させることができる。
また、制御状態Fにおいて、ヒータ側ポンプ4の吐出量を、ヒータ側ポンプ4に許容される最大吐出量もしくは最大吐出量付近にまで増加するように制御することがより好ましい。このように制御すれば、補機9〜13を流れる冷却水の量およびラジエータ14を流れる冷却水の量がさらに増えるので、冷却装置1の冷却性能をより一層向上させることができる。