以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るエンジンの冷却装置について説明する。
(1)システム構造
図1は、本発明の冷却装置が適用されたエンジンの好ましい実施形態を示す概略図である。エンジン(以下、エンジンシステムという)1は、エンジン本体10と冷却装置102とを有する。
エンジンシステム1は、冷却液を吐出可能な冷却液ポンプ(ポンプ)8と、冷却液ポンプ8から吐出された冷却液が内側をそれぞれ流通する第1冷却通路71、第2冷却通路72、第3冷却通路73、第4冷却通路74、第5冷却通路(分岐通路)75、ラジエータ62および2つのサーモスタット91、92、2つの圧力センサSN1、SN2を有する。エンジンシステム1は、冷却液ポンプ8を含むエンジンシステム1の各部を制御するためのECU(図5参照、制御装置)100を有する。
また、エンジンシステム1は、ATF温度調整器(熱交換器)51と、エンジンオイル温度調整器(熱交換器)52と、EGRクーラー54と、空調用ヒーター(空調用のヒーター)56と、電子スロットルボディ58(以下、ETB58という)と、エアバイパスバルブボディ60(被加熱部材、以下、ABV60という)とを有する。
冷却装置102は、少なくとも、これら各機器51、52、54、56,58、60と、冷却液ポンプ8、各通路71〜75、ラジエータ62、サーモスタット91、92、圧力センサSN1、SN2、ECU100、エンジン本体10に設けられた後述する各ジャケット21、31を含む。
本実施形態では、図1に示すように、エンジン本体10は、所定の方向に並ぶ4つの略円筒状の気筒2(図1の左から順に、第1気筒、第2気筒、第3気筒、第4気筒)を有する直列4気筒の4サイクルエンジンである。このエンジン本体10は、車輪の駆動源として車両に搭載される。以下では、適宜、気筒2の並び方向であって図1の左右方向を気筒配列方向あるいは左右方向という。
エンジン本体10には、各気筒2に吸気を導入するための吸気通路(不図示)と、各気筒2から排ガス(燃焼後のガス)を排出するための排気通路(不図示)とが接続されている。
冷却液ポンプ8は、エンジン本体10にこれを冷却するための冷却液を送り込む装置である。冷却液ポンプ8は、その吐出量を変更可能な可変流量型のポンプからなる。なお、この吐出量を変更するための機構は限定されず、冷却液ポンプ8としては、機械的にその吐出量が変更されるものや、電気的にその吐出量が変更されるものを用いることができる。
本実施形態では、エンジンシステム1に、排気通路と吸気通路とを連通して、排気通路を流通する排気(エンジン本体10から排出された燃焼後のガス)の一部を吸気通路に還流するEGR通路が設けられている。EGRクーラー54は、このEGR通路を流通するガスであるEGRガスを冷却する装置である。具体的には、EGRクーラー54には、EGRガスおよび冷却液がそれぞれ流通する通路が形成されており、これら通路を通ることでEGRガスと冷却液との間で熱交換が行われてEGRガスが冷却される。
また、本実施形態では、吸気通路にコンプレッサ(不図示)が設けられており、エンジン本体10に吸入される空気がコンプレッサによって過給されるようになっているとともに、吸気通路に、コンプレッサをバイパスするバイパス通路が接続されている。ABV60は、このバイパス通路を開閉するバルブであり、コンプレッサによる過給圧が過剰に高くなった場合等に開弁する。
ETB58は、吸気通路を流通する空気の流量を変更するための装置である。ETB58は、吸気通路を開閉するスロットルバルブとこれを駆動するモータ等の駆動装置とを含む。
ABV60およびETB58は、いずれも吸気通路に設けられたバルブを含む。外気温が低いときは、エンジンの始動前に吸気通路内でバルブが凍りついているおそれがあるため、エンジンの始動後の早いタイミングでバルブの温度を強制的に高める必要がある。そのため、ABV60およびETB58は少なくともエンジンの始動直後において加温する必要がある。これに対して、本実施形態では、ABV60およびETB58に、バルブの周囲に冷却液を流す通路が形成されており、この通路に冷却液を流すことでバルブを加温できるようになっている。
ATF温度調整器51は、自動変速機の作動油であるATF(ATF:Automatic transmission fluid)を温めるあるいは冷却するための装置である。つまり、本実施形態では、エンジン本体10の回転を車軸等に連結される軸に伝達し且つこの回転数を変換可能な自動変速機がエンジンに接続されており、ATF温度調整器51はこの自動変速機内のATFを温めるまたは冷却する。ATF温度調整器51には、ATFと冷却液とがそれぞれ流通する通路が形成されており、これら通路を通ることでATFと冷却液との間で熱交換が行われてATFが加熱あるいは冷却される。
ATFの温度が低いとその粘度が高くなり自動変速の性能が悪くなる。そのため、エンジンの冷間始動時等のATFの温度が低いときには、ATFを温めるのが好ましい。一方、ATFは温度が高いと劣化しやすくなる。そのため、エンジンの暖機後で且つエンジン負荷が高い場合等のATFの温度が高いときには、ATFを冷却するのが好ましい。
エンジンオイル温度調整器52は、エンジン本体10の各部を潤滑するための潤滑油であるエンジンオイルを温めるあるいは冷却するための装置である。エンジンオイル温度調整器52には、エンジンオイルと冷却液とがそれぞれ流通する通路が形成されており、これら通路を通ることでエンジンオイルと冷却液との間で熱交換が行われてエンジンオイルが加熱あるいは冷却される。
エンジンオイルの温度が低いとその粘度が高くなり潤滑性能が悪くなり、エンジンオイルが供給される各部での摺動抵抗が大きくなって好ましくない。そのため、エンジンの冷間始動時等のエンジンオイルの温度が低いときには、エンジンオイルを温めるのが好ましい。一方、エンジンオイルは温度が高いと劣化しやすくなる。そのため、エンジンの暖機後で且つエンジン負荷が高い場合等のエンジンオイルの温度が高いときには、エンジンオイルを冷却するのが好ましい。
空調用ヒーター56は、車室内等に温かい空気を導入するための暖房用(空調用)のヒーターである。空調用ヒーター56には、空気と冷却液とがそれぞれ流通する通路が形成されており、これら通路を通ることで空気と冷却液との間で熱交換が行われて空気が加温される。
ラジエータ62は、冷却液を冷却するための装置であり、内側を流通する冷却液を車両の走行風や冷却ファン等によって冷却する。
(i)エンジン本体の詳細構造
図2は、エンジン本体10の概略断面図である。以下では、図2の上下方向を単に上下方向という。また、以下では、適宜、気筒の径方向を単に径方向という。
エンジン本体10は、内側に4つの気筒2が形成されたシリンダブロック11と、シリンダブロック11の上方に位置してシリンダブロック11にガスケット(不図示)を介して締結されるシリンダヘッド12とを有する。
気筒2内には、ピストン13が上下方向に往復動可能に挿入されている。ピストン13の上方には、シリンダブロック11とシリンダヘッド12とによって燃焼室14が区画されている。具体的には、気筒2の内側面つまりシリンダボア壁2aの内周面と、シリンダヘッド12の下面と、ピストン13の上面とで、燃焼室14が区画されている。
(シリンダヘッド)
シリンダヘッド12には、吸気通路と連通して気筒2(燃焼室14)内に吸気を導入するための吸気ポート15と、排気通路と連通して気筒2(燃焼室14)から燃焼後のガスを導出するための排気ポート16とが形成されている。本実施形態では、1つの気筒2に対して2つの吸気ポート15と2つの排気ポート16とが設けられている。
吸気ポート15と排気ポート16とは、ほぼ気筒の中心軸を挟んで、気筒配列方向と直交するエンジン本体10の幅方向(図2の左右方向)の一方側と他方側とに分かれて形成されている。以下では、適宜、このエンジン本体10の幅方向の一方側であって吸気ポート15が形成された側を吸気側、反対側を排気側という。また、図1等において「EX」は排気側であることを示し、「IN」は吸気側であることを示している。
吸気ポート15は吸気バルブ17によって開閉され、排気ポート16は排気バルブ18によって開閉される。
シリンダヘッド12には、内側を冷却液が流通するヘッド側ジャケット21が形成されている。図1に示すように、ヘッド側ジャケット21は、気筒配列方向に延びている。
ヘッド側ジャケット21は、排気ポート16の周囲に形成された排気ポート側ジャケット22と、排気ポート側ジャケット22よりも燃焼室14に近い位置に形成された燃焼室側ジャケット23とで構成されている。
具体的には、図2に示すように、排気ポート側ジャケット22は、シリンダヘッド12の排気側にのみ(エンジン本体10の幅方向について気筒の略中心軸よりも排気側にのみ)形成されている。また、排気ポート側ジャケット22は、排気ポート16の直上方および直下方において排気ポート16に沿ってエンジン本体10の幅方向に延びている。
一方、図1および図2に示すように、燃焼室側ジャケット23は、排気ポート16の下方であって排気ポート側ジャケット22よりも燃焼室14に近い領域、吸気ポート15の下方、および、気筒の中心軸付近に形成されている。つまり、燃焼室側ジャケット23は、シリンダヘッド12の下部の燃焼室14と対向する部分およびその周囲のうち、各ポート15、16、各バルブ17、18、図示しないインジェクタおよび点火プラグが設けられた気筒の中心軸付近を除く部分の略全体にわたって形成されている。
燃焼室側ジャケット23の左側端部は、シリンダヘッド12の下面に開口しており、燃焼室側ジャケット23と後述するブロック側ジャケット31とを連通する主連通部23aとして機能する。
シリンダヘッド12の右側端部には、燃焼室側ジャケット23および排気ポート側ジャケット22とそれぞれ連通し且つシリンダヘッド12の外側面にそれぞれ開口する第1ヘッド側排出部24と第2ヘッド側排出部25とが形成されている。本実施形態では、第1ヘッド側排出部24はシリンダヘッド12の排気側の外側面に開口し、第2ヘッド側排出部25はシリンダヘッド12の吸気側の外側面に開口している。
さらに、本実施形態では、シリンダヘッド12の左側端部付近であって主連通部23aよりもわずかに右側の位置に、燃焼室側ジャケット23と連通し且つシリンダヘッド12の外側面に開口する第3ヘッド側排出部26が形成されている。第3ヘッド側排出部26は、シリンダヘッド12の吸気側の外側面に開口している。また、第3ヘッド側排出部26は、燃焼室側ジャケット23のうち左端に位置する第1気筒の上方に配置された部分と連通している。
また、シリンダヘッド12の左側端部には、排気ポート側ジャケット22と連通し且つシリンダヘッド12の外側面に開口するヘッド側冷却液導入部28が形成されている。ヘッド側冷却液導入部28は、シリンダヘッド12の左側端面に開口している。
(シリンダブロック)
シリンダブロック11には、内側を冷却液が流通するブロック側ジャケット31が形成されている。図1に示すように、ブロック側ジャケット31は、各気筒2を囲むように形成されており、気筒配列方向に延びている。
シリンダブロック11には、ブロック側ジャケット31と連通し且つシリンダブロック11の排気側の外側面に開口するブロック側冷却液導入部34が形成されている。冷却液ポンプ8は、ブロック側冷却液導入部34近傍に配置されて主ポンプ吐出通路29を介してブロック側冷却液導入部34と連通しており、ブロック側冷却液導入部34には冷却液ポンプ8から吐出された冷却液が導入される。例えば、冷却液ポンプ8は、ブロック側冷却液導入部34が開口するシリンダブロック11の外側面にブロック側冷却液導入部34の開口部分に近接する位置に取り付けられている。
ブロック側冷却液導入部34は、シリンダブロック11の右側端部であって左右方向について主連通部23aと反対側の端部に形成されており、シリンダブロック11の排気側の外側面の右側端部付近に開口している。
また、シリンダブロック11には、ブロック側ジャケット31と連通し且つシリンダブロック11の吸気側の外側面に開口するブロック側冷却液導出部35が形成されている。ブロック側冷却液導出部35は、左右方向についてブロック側冷却液導入部34よりも左側の部分に形成されている。
ブロック側ジャケット31の内側には、ブロック側ジャケット31の内側空間を径方向の内側と外側(エンジン本体10の幅方向について燃焼室側と反燃焼室側)とに区画するスペーサ部材40が収容されている。なお、図1ではスペーサ部材40は省略している。
図3は、シリンダブロック11周辺の概略構成を示す分解斜視図である。図4は、スペーサ部材40を排気側から見た斜視図である。
スペーサ部材40は、スペーサ本体部41と、スペーサ部材40の下端に位置する第1フランジ49と、第1フランジ49よりも上方に位置する第2フランジ48とを有する。スペーサ部材40は、例えば、シリンダブロック11の素材(例えばアルミニウム合金)よりも熱伝導率が小さい素材(例えば合成樹脂)で構成されている。
第1フランジ49は、スペーサ本体部41の下端の径方向外側縁からその全周にわたって径方向外側に突出しており、スペーサ部材40は、この第1フランジ49がブロック側ジャケット31の底面に当接した状態でブロック側ジャケット31内に収容されている。
第2フランジ48も、第1フランジ49よりも上方においてスペーサ本体部41の外周面からそのほぼ全周にわたって径方向外側に突出している。
スペーサ本体部41は、各気筒2に対応するシリンダボア壁2aの外周全体を囲む部材である。具体的には、スペーサ本体部41は、シリンダボア壁2aに沿って平面視で4つの円が若干オーバーラップしてつながり、このオーバーラップ部分が除去されたような筒状を有する。
スペーサ本体部41は、ブロック側ジャケット31の深さと同程度の高さを有している。これに伴い、ブロック側ジャケット31は、ほぼその全体にわたってスペーサ本体部41により径方向内側(燃焼室14側)と径方向外側(反燃焼室14側)とに区画されている。
スペーサ本体部41は、各気筒2に対応するシリンダボア壁2aの上部(例えば、ピストン13の上面の上下方向移動範囲のうちの上側約1/3の部分)を囲む上部壁43と、上部壁43の下端に連設されて径方向内側に突出する段部42と、段部42の内側端部に連設されて上部壁43の下側に位置する下部壁44とを有し、上部壁43に対して下部壁44が内側に縮小した異形筒状体を呈している。
ブロック側ジャケット31の径方向内側の面31aと上部壁43との距離は、ブロック側ジャケット31の径方向外側の面31bと上部壁43との距離よりも大きくなっている。一方、ブロック側ジャケット31の径方向内側の面31aと下部壁44との距離は、ブロック側ジャケット31の径方向外側の面31bと下部壁44との距離よりも小さくなっている。これに伴い、ブロック側ジャケット31の上部では、スペーサ部材40よりも径方向内側の部分つまり燃焼室14に近い部分に流路面積の大きい流路(以下、適宜、上部流路という)31uが区画され、ブロック側ジャケット31の下部では、スペーサ部材40よりも径方向外側の部分つまり燃焼室14から遠い部分に流路面積の大きい流路(以下、適宜、下部流路という)31dが区画されている。
図2および図4に示すように、スペーサ部材40がブロック側ジャケット31に収容された状態において、ブロック側冷却液導入部34はスペーサ本体部41の右側端部付近と対向する。ここで、このブロック側冷却液導入部34と対向するスペーサ本体部41の右側端部には径方向内側に突出する段部42は設けられておらず、この右側端部において、スペーサ本体部41はブロック側ジャケット31の径方向内側の面31aに近接して上下に延びている。そして、この右側端部には、スペーサ本体部41から径方向外側に突出する仕切壁41bが設けられている。この仕切壁41bは、段部42とほぼ同じ高さ位置に設けられている。ブロック側冷却液導入部34は、この仕切壁41bよりも上方の位置から下方の位置まで延びている。
上部壁43の排気側および吸気側の両壁には、左右方向についてブロック側冷却液導入部34よりも左側の位置に、それぞれ上部壁43の表裏を貫通する冷却液誘導孔43a、43aが形成されている。
また、段部42の左側端部にはその表裏を上下方向に貫通する連絡孔41aが形成されている。そして、この連絡孔41aを介して、上部流路31uと下部流路31dとが連通している。
以上のように構成されたシリンダブロック11では、次のように冷却液が流れる。
まず、冷却液ポンプ8からブロック側冷却液導入部34内に冷却液が導入される。そして、ブロック側冷却液導入部34からブロック側ジャケット31内に冷却液が導入される。このとき、一部の冷却液は仕切壁41bの下方に導入されて下部流路31dに流入し、残りの冷却液は、仕切壁41bの上方に導入される。
下部流路31d内において、冷却液はブロック側冷却液導入部34から左右に分かれ、一部の冷却液は下部流路31dの排気側の流路を通り一部の冷却液は下部流路31dの吸気側の流路を通って下部流路31dの左側端部に向かう。そして、下部流路31d内の冷却液は、下部流路31dの左側端部において、連絡孔41aを通って上部流路31uに流れ込む。
また、仕切壁41bの上方に導入された冷却液は、ブロック側冷却液導入部34から左右に分かれた後、吸気側および排気側の各冷却液誘導孔43aを通って上部流路31uに流入する。そして、吸気側および排気側において、上部流路31u内を左側に移動する。
上部流路31uの左側端部において、上部流路31uを通ってきた冷却液と下部流路31dを通ってきた冷却液とは合流する。そして、合流後の冷却液は、主連通部23aを通って燃焼室側ジャケット23に流入する。つまり、本実施形態では、主連通部23aは、ブロック側ジャケット31のうち上部流路31uの左端部と連通しており、この左端部から主連通部23aを通って燃焼室側ジャケット23に冷却液が流入する。
(ii)冷却通路
(第1冷却通路)
第1冷却通路71は、冷却液ポンプ8から吐出された冷却液をエンジン本体10の内部を通過させた後に冷却液ポンプ8に戻す通路である。第1冷却通路71は、冷却液ポンプ8とブロック側冷却液導入部34とをつなぐ主ポンプ吐出通路29と、ブロック側ジャケット31と、燃焼室側ジャケット23と、第1ヘッド側排出部24と、第1ヘッド側排出部24の開口部分と冷却液ポンプ8とをつなぐ主連絡通路81とで構成されている。これに伴い、第1冷却通路71では、冷却液ポンプ8から送り出された冷却液がその内側で循環する。
冷却液ポンプ8から吐出された冷却液の一部は、前記のように、ブロック側冷却液導入部34と主ポンプ吐出通路29とを介してブロック側ジャケット31に流入する。そして、冷却液は、上部流路31uおよび下部流路31dを通過した後、主連通部23aを通って燃焼室側ジャケット23内に流入する。
図1に示すように、燃焼室側ジャケット23内において、冷却液は主連通部23aからこれと反対側(右側)に向かって流れる。燃焼室側ジャケット23を通りその右側端部に到達した冷却液は、第1ヘッド側排出部24に流入し、第1ヘッド側排出部24から主連絡通路81を通って冷却液ポンプ8に戻る。
第1冷却通路71には、冷却液ポンプ8の前後差圧を検出するためのセンサが設けられている。本実施形態では、第1冷却通路71に、冷却液ポンプ8のすぐ上流側の部分の圧力を検出する第1圧力センサ(検出装置)SN1と、冷却液ポンプ8のすぐ下流側の部分の圧力を検出する第2圧力センサ(検出装置)SN2とが設けられており、これらの圧力センサSN1、SN2で検出された圧力の差によって前後差圧が検出されるようになっている。
(第2冷却通路)
第2冷却通路72は、第1冷却通路71から分流した冷却液をラジエータ62で冷却させた後に冷却液ポンプ8に戻す通路である。本実施形態では、第2冷却通路72は、第2ヘッド側排出部25の開口部分と冷却液ポンプ8とをつないでいる。そして、第2冷却通路72のうち第2ヘッド側排出部25と冷却液ポンプ8との間にラジエータ62が設けられており、第2ヘッド側排出部25から排出された冷却液がラジエータ62にて冷却されるようになっている。
第1サーモスタット91は、この第2冷却通路72に設けられており冷却液の温度に応じて第2冷却通路72を開閉する。具体的には、第1サーモスタット91は、冷却液の温度を感知する感知部と、感知部での感知結果に応じて第2冷却通路72を全閉と全開とに切り替えるバルブとを有している。本実施形態では、第1サーモスタット92の感知部には、主連絡通路81を流通する冷却液が流入するようになっており、主連絡通路81内の冷却液の温度が予め設定された第1基準温度以上になるとバルブが開弁される。
(第3冷却通路)
第3冷却通路73は、第1冷却通路71から分流した冷却液をATF温度調整器51およびエンジンオイル温度調整器52を通過させた後に冷却液ポンプ8に戻す通路である。本実施形態では、第3冷却通路73は、ブロック側冷却液導出部35の開口部分と冷却液ポンプ8とをつないでおり、冷却液ポンプ8から34を介してブロック側ジャケット31に流入し、ブロック側ジャケット31の吸気側の部分に回り込んだ冷却液の一部が第3冷却通路72に流入する。
第2サーモスタット92は、この第3冷却通路73に設けられており冷却液の温度に応じて第3冷却通路73を開閉する。具体的には、第2サーモスタット92は、冷却液の温度を感知する感知部と、感知部での感知結果に応じて第3冷却通路73を全閉と全開とに切り替えるバルブとを有している。第2サーモスタット92は、第3冷却通路73のうちATF温度調整器51よりも上流側に設けられており、第2サーモスタット92の感知部にはブロック側ジャケット31の冷却液が流入する。これに伴い、第2サーモスタット92のバルブは、ブロック側ジャケット31内の冷却液の温度ひいては第1冷却通路71内の冷却液の温度が予め設定された第2基準温度以上になると開弁される。
第2基準温度は、第1基準温度よりも低い温度に設定されている。
(第4冷却通路)
第4冷却通路74は、冷却液ポンプ8と排気ポート側ジャケット22とをつないでいる。詳細には、第4冷却通路74は、冷却液ポンプ8と、排気ポート側ジャケット22に連通するヘッド側冷却液導入部28の開口部分とに接続されている。これに伴い、本実施形態では、第4冷却通路74と排気ポート側ジャケット22と主連絡通路81とによって、内側を冷却液が循環する循環経路82が構築されている。
第4冷却通路74には、EGRクーラー54と空調用ヒーター56とが設けられている。第3冷却通路74において、EGRクーラー54は空調用ヒーター56よりも上流側に設けられている。
EGRクーラー54を流通するEGRガスは燃焼後のガスでありその温度は冷却液の温度に比べて高い。そのため、EGRクーラー54において冷却液はEGRガスを冷却し、冷却液はこれに伴って昇温される。その後、空調用ヒーター56に冷却液が導入され、空調用ヒーター56内において冷却液と空気とが熱交換して空気が温められる。ここで、空調用ヒーター56に導入された冷却液はEGRクーラー54において昇温されている。そのため、空調用ヒーター56において冷却液は空気を効果的に温める。
空調用ヒーター56から導出された冷却液は、ヘッド側冷却液導入部28を介して排気ポート側ジャケット22に流入する。図1に示すように、排気ポート側ジャケット22内において、冷却液はヘッド側冷却液導入部28からこれと反対側(右側)に向かって流れる。排気ポート側ジャケット22を通りその右側端部に到達した冷却液は、第1ヘッド側排出部24に流入する。そして、第1ヘッド側排出部24から主連絡通路81を通って冷却液ポンプ8に戻る。
(第5冷却通路)
第5冷却通路75は、燃焼室側ジャケット23と第4冷却通路74の途中部とを接続している。具体的には、第5冷却通路75は、第4冷却通路74の空調用ヒーター56よりも下流側の部分と、第3ヘッド側排出部26とを接続している。第5冷却通路75には、ABV60およびETB58が設けられている。以下では、第5冷却通路75と第4冷却通路74との接続部分を接続部75aという。
第5冷却通路75では、第3ヘッド側排出部26から接続部75aに向かって冷却液が流れるようになっており、第3ヘッド側排出部26から導出された冷却液であって燃焼室側ジャケット23内の冷却液の一部が接続部75aに流入する。
第5冷却通路75を流通する冷却液は、前記のように、燃焼室側ジャケット23内の冷却液であり、ブロック側ジャケット31全体および燃焼室側ジャケット23の一部を通ったことで昇温されている。そのため、この昇温された冷却液が導入されることでABV60およびETB58は加温される。詳細には、前記のようにABV60およびETB58にそれぞれ設けられた通路を冷却液が通過することでABV60およびETB58の各バルブが加温される。ABV60およびETB58との相対的な位置関係は特に限定されないが、本実施形態では、ABV60がETB58よりも上流側に設けられており、第3ヘッド側排出部26から導出された冷却液は、まずABV60に導入される。
(2)制御系
図5は、本実施形態に係る制御系のブロック図である。
ECU100は、冷却液ポンプ8を含むエンジンシステム1の各部を制御するための装置であり、周知のとおり、CPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロプロセッサである。
ECU100は、前記の第1圧力センサSN1、第2圧力センサSN2およびその他各種センサと接続されており、ECU100には、これらセンサの検出結果が入力される。例えば、ECU100には、エンジン本体10の回転数を検出する回転数センサSN3や、吸気通路を流通する吸気の温度を検出する吸気温センサSN4や、冷却液の温度を検出する冷却液温センサSN5等の検出結果が入力される。冷却液温センサSN5は、例えば、燃焼室側ジャケット23内の冷却液の温度を検出する。
ECU100は、これらセンサの検出結果に基づいて冷却液ポンプ8を制御してその吐出流量を変更する。また、ECU100は、冷却液ポンプ8の駆動と停止とを切り替える。
ECU100は、エンジンの冷間始動時等であって、冷却液温センサSN5で検出された冷却液の温度が予め設定されたポンプ駆動温度よりも低い場合、つまり、燃焼室側ジャケット23内の冷却液ひいてはエンジン本体10の温度が低い場合には、冷却液ポンプ8を停止させる。そして、エンジン本体10の駆動に伴って冷却液の温度が上昇し、冷却液温センサSN5で検出された冷却液の温度がポンプ駆動温度以上になると、冷却液ポンプ8を駆動する。ポンプ駆動温度は、第1基準温度および第2基準温度よりも低く設定されている。
このように、本実施形態では、冷却液の温度がポンプ駆動温度未満では冷却液ポンプ8の駆動は停止され、各通路内での冷却液の流通は停止される。従って、エンジンの冷間始動時等であって冷却液の温度がポンプ駆動温度未満と非常に低い状態では、循環する冷却液によってエンジン本体10の熱が奪われるのが抑制され、エンジン本体10の暖機が促進される。
冷却液の温度がポンプ駆動温度以上になると冷却液ポンプ8が駆動される。ただし、冷却液の温度が未だ第2基準温度未満の場合は、第1サーモスタット91および第2サーモスタット92は閉弁している。そのため、この場合は、冷却液は、第4冷却通路74、第5冷却通路75、第1冷却通路71のみを流通する。そして、第1冷却通路71に含まれるブロック側ジャケット31および燃焼室側ジャケット23と、第4冷却通路74と連通する排気ポート側ジャケット22を通過してエンジン本体10との熱交換によって昇温された冷却液により、ABV60に含まれるエアバイパスバルブおよびETB58に含まれるスロットルバルブが昇温されてこれらの適切な駆動が確保される。また、空調用ヒーター56内の空気を冷却液によって温めることが可能となるため、要求に応じて適切な暖房を行うことが可能となる。
冷却液の温度が第2基準温度以上になると、第2サーモスタット92が開弁する。ただし、冷却液の温度が第1基準温度未満の場合は、第1サーモスタット91は閉弁している。そのため、この場合は、冷却液は、第4冷却通路74、第5冷却通路75、第1冷却通路71に加えて、第2冷却通路72を流通するようになる。そして、エンジン本体10を通過することで昇温された冷却液がATF温度調整器51およびエンジンオイル温度調整器52に供給されるようになり、ATFおよびエンジンオイルが昇温される。
冷却液の温度が第1基準温度以上になると、第1サーモスタット91が開弁し、冷却液は、さらに、第2冷却通路72を流通するようになる。これに伴い、冷却液はラジエータ62で冷却される。つまり、冷却液の温度が第1基準温度以上であってエンジン本体10の暖機がほぼ完了すると、今度は、ラジエータ62による冷却液が行われてエンジン本体10の冷却が行われる。また、このラジエータ62により冷却された冷却液によってEGRクーラー54にてEGRガスが冷却されるようになる。
このように、本実施形態では、第2サーモスタット92の開弁に伴って、冷却液が流通する通路が、第4冷却通路74、第5冷却通路75、第1冷却通路71から、これら通路71、74、75および第3冷却通路73となり、冷却液の流路面積が増大する。従って、第2サーモスタット92の開弁後は冷却液ポンプ8の吐出流量を増大させても冷却液の流通抵抗の増大を抑制することができる。そこで、本実施形態では、第2サーモスタット92の開弁に伴って冷却液ポンプ8の吐出流量を増大させる。つまり、ECU100は、第2サーモスタット92の開弁に伴って冷却液ポンプ8をその吐出流量が増大するように制御する。例えば、ECU100は、冷却液温センサSN5で検出された冷却液の温度が第2基準温度以上になると第2サーモスタット92が開弁したと判定して冷却液ポンプ8の吐出流量を増大させる。
また、本実施形態では、第1サーモスタット91の開弁に伴って、冷却液がさらに第2冷却通路72を流通可能となる。従って、第1サーモスタット91の開弁後においても、冷却液ポンプ8の吐出流量を増大させても冷却液の流通抵抗の増大を抑制することができる。そこで、本実施形態では、第1サーモスタット91の開弁に伴って冷却液ポンプ8の吐出流量をさらに増大させる。つまり、ECU100は、第1サーモスタット91の開弁に伴って冷却液ポンプ8をその吐出流量が増大するように制御する。例えば、ECU100は、冷却液温センサSN5で検出された冷却液の温度が第1基準温度以上になると第1サーモスタット91が開弁したと判定して冷却液ポンプ8の吐出流量を増大させる。
また、本実施形態では、第2サーモスタット92の開弁前または開弁後、さらに第1サーモスタット91の開弁後(このとき、第2サーモスタット92も開弁している)は、空調用ヒーター56、ATF温度調整器51、エンジンオイル温度調整器52および燃焼室14の壁面に供給するべきあるいはこれらから奪うべき熱エネルギーをそれぞれ算出し、算出したこれらの値に基づいて、冷却液ポンプ8の吐出流量を変更する。
具体的には、ECU100は、空調用ヒーター56を操作する操作装置に対する操作状況に基づいて、空調用ヒーター56に供給するべき熱エネルギー、つまり、空調用ヒーター56内の空気をどれくらい昇温することが要求されているかを算出する。そして、ECU100は、この要求されている昇温量を実現するために必要な冷却液ポンプ8の吐出流量(以下、要求吐出流量という)を、例えば、前記昇温量と冷却液温センサSN5で検出された冷却液の温度とに基づいて算出する。
また、ECU100は、ATFの温度に基づいて、ATF温度調整器51に供給するべき熱エネルギー量、つまり、ATFをどれくらい昇温すべきであるかを算出する。そして、ECU100は、この要求されている昇温量を実現するために必要な冷却液ポンプ8の吐出流量(以下、要求吐出流量という)を、例えば、前記昇温量と冷却液温センサSN5で検出された冷却液の温度とに基づいて算出する。
また、ECU100は、エンジンオイルの温度に基づいて、エンジンオイル温度調整器52から奪うべき熱エネルギー、つまり、エンジンオイルをどれくらい降温すべきであるかを算出する。そして、ECU100は、この要求されている降温量を実現するために必要な冷却液ポンプ8の吐出流量(以下、要求吐出流量という)を、例えば、前記降温量と冷却液の温度とに基づいて算出する。
また、ECU100は、現在の燃焼室14の壁面の温度を推定し、この推定値と燃焼室14の壁面の温度の目標値との差であって、燃焼室14の壁面の温度をどれだけ昇温すべきであるかあるいはどれだけ降温すべきであるかを算出する。そして、ECU100は、この要求されている昇温量あるいは降温量を実現するために必要な冷却液ポンプ8の吐出流量(以下、要求吐出流量という)を、例えば、前記昇温量あるいは降温量と冷却液の温度とに基づいて算出する。なお、現在の燃焼室14の壁面の温度は、冷却液温センサSN5で検出された冷却液の温度、回転数センサSN3で検出されたエンジン回転数、吸気温センサSN4で検出された吸気の温度、エンジン負荷等に基づいて推定される。また、燃焼室14の壁面の温度の目標値は、エンジン回転数とエンジン負荷等に基づいて決定される。
そして、ECU100は、これら空調用ヒーター56、ATF温度調整器51、エンジンオイル温度調整器52および燃焼室14の壁面についてそれぞれ算出した要求吐出流量に基づいて最終的な冷却液ポンプ8の吐出流量を算出する。本実施形態では、ECU100は、各要求吐出流量の平均値を算出して、その値を最終的な吐出流量として決定する。なお、最終的な吐出流量は、各要求吐出流量の平均値に限らず、エンジン性能に影響する燃焼室14の壁面温度に関連する要求吐出流量を主体にして変更してもよく、また、エンジンの高負荷運転状態においては、各要求吐出流量から最大の要求吐出流量を基に変更してもよい。
また、本実施形態では、ECU100は、冷却液ポンプ8の前後差圧に応じてもその吐出流量を変更する。具体的には、ECU100は、冷却液ポンプ8の前後差圧が所定値を超えないように、冷却液ポンプ8の吐出流量が制御される。本実施形態では、サーモスタット91の開弁状況に応じて冷却液ポンプ8の吐出流量の制限値(前記所定値)が異なるように設定されており、各サーモスタット91、92が閉弁している場合に前記制限値が最小値とされ、各サーモスタット91、92がともに開弁している場合に前記要求吐出流量を加味して設定される前記制限値が最大値とされ、第1サーモスタット91が開弁している場合には前記制限値は前記最小値と最大値との間の値とされる。
(3)作用等
以上のように、本実施形態では、エンジン始動時等の冷却液の温度が第2基準温度よりも低いときは、第1サーモスタット91および第2サーモスタット92が閉弁して第2冷却通路72および第3冷却通路73が閉鎖されことで、冷却液をラジエータ62、ATF温度調整器51およびエンジンオイル温度調整器52を通さずに冷却液ポンプ8とエンジン本体10との間で循環させることができる。従って、ラジエータ62、ATF温度調整器51およびエンジンオイル温度調整器52で冷却液が冷却されるのを回避して、エンジン本体10をより早期に暖機することができる。なお、エンジンの冷間始動直後は、冷却液ポンプ8からの冷却液の吐出を停止して冷却液のエンジン本体への循環を停止させてもよい。
また、冷却液の温度が第2基準温度以上になったとき(且つ第1基準温度よりも低いとき)は、第2サーモスタット92が開弁して第3冷却通路73が開放されることで、エンジン本体10との接触により昇温された冷却液の一部がATF温度調整器51およびエンジンオイル温度調整器52に導入される。そのため、ATFおよびエンジンオイルを早期に加熱して適切な温度にすることができる。
また、冷却液の温度が第1基準温度以上になったときには、第1サーモスタット91が開弁して第2冷却通路72が開放されることで、ラジエータ62にて冷却液を冷却することができ冷却液およびこれにより冷却されるエンジン本体10、ATFおよびエンジンオイルの温度を適切な温度にすることができる。
しかも、本実施形態では、冷却液ポンプ8が可変流量型のポンプであるため、前記のように冷却液の温度に応じて冷却液の流通経路を切り替えることに加えて、各経路を通る冷却液の流量を変更することができ、エンジン本体10、ATF温度調整器51、エンジンオイル温度調整器52、ラジエータ62にそれぞれ適切な量の冷却液を導入してエンジン本体10、ATFおよびエンジンオイルの温度をより確実に適切な温度にすることができる。さらに、冷却液ポンプ8の吐出流量が、第1サーモスタット91および第2サーモスタット92の開弁に伴って増大される。そのため、冷却液の流通抵抗が増大するのを回避しながらその流量を多くすることができ、冷却液を効率よく各経路に流すことができる。
特に、本実施形態では、第3冷却通路73がブロック側冷却液導出部35を介してブロック側ジャケット31の途中部と冷却液ポンプ8とを接続している。そのため、冷却液およびエンジン本体10の温度が低い場合において、ブロック側ジャケット31を通過して昇温された冷却液によってATFおよびエンジンオイルを加熱しつつ、ブロック側ジャケット31を流通する冷却液の量を少なくしてシリンダブロック11およびエンジン本体10の冷却を抑制することができ、これによりATF、エンジンオイルおよびエンジン本体10をともにより早期に昇温することができる。
また、本実施形態では、空調用ヒーター56と、EGRクーラー54とが設けられた第4冷却通路74がさらに設けられて、第4冷却通路74において冷却液ポンプ8から吐出された冷却液がEGRクーラー54と空調用ヒーター56とにこの順で導入されるように構成されている。そのため、冷却液を利用してEGRガスを冷却できるとともに、EGRガスによって昇温された冷却液を利用して空調用ヒーター54(ヒーター内の空気)を昇温することができ、EGRクーラー(EGRガス)と空調用ヒーター54(ヒーターを流通する空気)との温度をそれぞれ適切にすることができる。
また、第1サーモスタット91および第2サーモスタット92が開弁している状態において、空調用ヒーター56、ATF温度調整器51、エンジンオイル温度調整器52および燃焼室14の壁面に供給するべきあるいはこれらから奪うべき熱エネルギーをそれぞれ算出し、算出したこれらの値に基づいて、冷却液ポンプ8の吐出流量が変更される。そのため、これら各機器56、51、52および燃焼室14の壁面の温度を適切な温度にすることができる。例えば、これらの一つの温度が過剰に高くなる、あるいは、低くなるのを防止できる。
また、本実施形態では、冷却液ポンプ8の前後差圧に基づいて冷却液ポンプ8の吐出流量が制御される。そのため、冷却液の流通抵抗をより確実に小さく抑えて、冷却液ポンプ8を効率よく駆動させることができる。
(4)変形例
前記実施形態では、第3冷却通路73に設けられて冷却液と熱交換を行う熱交換器としてATF温度調整器51およびエンジンオイル温度調整器52を設けた場合について説明したが、熱交換器の具体的な種類はこれらに限らない。
また、第5冷却通路75に設けられて冷却液により加熱あるいは冷却される部材も、ETB58やABV60に限らない。
また、前記実施形態では、第4冷却通路74をエンジン本体10の外部に設けた場合について説明したが、第4冷却通路74の一部をシリンダブロック11内に形成してもよい。具体的には、ブロック側ジャケット31のうち前記のようにスペーサ部材40によって区画された下部流路31dであって反気筒2側(反燃焼室14側)の通路を利用してもよい。例えば、図6に示すように、下部流路31dの排気側の通路を第4冷却通路74の一部として機能させてもよい。
この場合には、図7に示すように、スペーサ部材40の下部壁44のうち左右方向についてブロック側冷却液導入部34と反対側の端部つまり左側端部付近に、径方向外側に突出する突出部44aを設ける。また、図3の破線で示すように、シリンダブロック11の左側端部付近であって突出部44aよりも右側の部分にブロック側ジャケット31の下部流路31dと連通してシリンダブロック11の外側面に開口するバイパス用導出部134を形成する。そして、図7の破線で示すように、ブロック側冷却液導入部34から下部流路31dの排気側部分に流入した冷却液を、突出部44aで堰き止めてバイパス用導出部134に誘導して、バイパス用導出部134からエンジン本体10の外部に排出し、EGRクーラー54に向けて流すようにすればよい。
このようにすれば、第4冷却通路74の一部がシリンダブロック11の内側に形成されることで、冷却装置1全体をコンパクトにすることができる。また、ブロック側ジャケット31のうち反気筒2側であって気筒2側の部分に比べて比較的温度が低く抑えられる空間を第4冷却通路74の一部として利用することで、この空間の通過時における冷却液の温度上昇を抑えてEGRクーラー(EGRガス)に対してより確実に低温の冷却液を導入することができ、EGRガスを適切に冷却することができる。