近年、百貨店、スーパー等の商業施設、市役所、病院、駅ビル等の公共施設、大型オフィスビル等の大型建築物が増加するにつれて、火災時に火炎や煙を遮断して延焼を最小限に食い止める防火戸の機能について、国土交通省からの認定を取得した防火設備や特定防火設備が市販され、その使用頻度が増加している。
防火設備とは、建築基準法施行令第109条の二に、「通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものであること」と規定されている。また、特定防火設備とは、建築基準法施行令第112条第1項に、「防火設備であって、これに通常の火災による火炎が加えられた場合に、加熱開始後一時間当該加熱面以外の面に火炎を出さない性能を有するもの」と規定されている。これらの認定を受けるには、国土交通省から指定された評価試験機関による試験に合格する必要がある。
現在、防火設備及び特定防火設備に使用される耐熱板ガラスとしては、耐熱強化ガラス、低膨張防火ガラス、耐熱結晶化ガラスなどが知られている。耐熱強化ガラスは、建築用板ガラスとして通常使用されているソーダ石灰ガラスを寸断して、エッジに特殊研磨を施した後に特殊な熱強化処理をして耐熱強度を高めたものである。低膨張防火ガラスは、建築用板ガラスとして通常使用されているソーダ石灰ガラスに対して、ソーダ、石灰を減らしてホウ酸を含有させたガラスからなるものであり、原寸切断した後、熱処理して防火用に使用できるようにしたガラスである。耐熱結晶化ガラスは、リチウムアルミノ珪酸塩系組成のガラスで、素板ガラスを熱処理してガラス全体に負膨張の微細結晶を析出させて熱膨張を略ゼロとすることで、熱衝撃強度を高めたものである。
上記の耐熱板ガラスとしては、防火設備及び特定防火設備に要求される耐熱性能とともに、人体や物体が板ガラスに衝突しても鋭利な破片が飛散しないような衝撃安全性をも要求される場合がある。このような場合、2枚以上の耐熱板ガラスを、樹脂層を介して貼り合わせて一体化させた、いわゆる合わせガラスが用いられる場合がある。また、板ガラスの一方面に飛散防止フィルムを貼り付けることにより、衝撃安全性が付与される場合がある。このように、防火性能に加え、安全性能を付加したものは、防火安全ガラスと呼ばれている。
上述した防火設備や特定防火設備に用いられる防火安全ガラスとして、例えば、特許文献1及び2には、複数枚の防火性ガラス板の片面あるいは両面に、鎖状の分子構造のみからなるフッ素樹脂フィルムが接着されてなる防火安全ガラスが開示されている。また、防火安全ガラスの枠体への取り付け構造として、例えば、特許文献3及び4には、枠体にセッティングブロックや充填材を介して防火安全ガラスを取り付ける取り付け構造が記載されている。
また、特許文献5には、合わせガラスの下部の端面を耐熱性封止材により連続的に封止した防火安全ガラスが記載されている。この特許文献5に記載の技術は、火災時の初期段階で合わせガラスの板ガラス間にある樹脂フィルムが融けてガラス下辺から施工枠の下枠内に溜り非加熱側に火炎が出やすくなる、という問題点や、防火安全ガラスのサイズが大きい寸法になると火災時に樹脂フィルムから発生するガスの総量が多くなり板ガラスが爆裂を起こして破損する確率が高くなる、という問題点に着目し、合わせガラスの下部の端面を耐熱性封止材により連続的に封止することで、火災時の初期段階で板ガラス間にある樹脂フィルムが融けた場合に非加熱側に火炎が発生しないようにし、また、樹脂層からのガス抜け不全による耐熱板ガラスの爆裂を起こさないようにしたものである。
また、本発明者らは、本発明の開発前に、従来開発品として図6に記載の防火安全ガラス窓100を開発していた。この防火安全ガラス窓100は、防火安全ガラス板3の下部の端面に封止材34を取り付けるとともに、下枠1b及び側枠1c,1cの底面1dに熱膨張材8を取り付けることで、火災時の初期段階で融けた樹脂フィルム32が防火安全ガラス板3の下部から漏れ出すことを防止し、漏れ出した樹脂が防火安全ガラス用窓枠1の下枠1b等に溜まって非加熱側に火炎が発生することを防止しようとしたものである。
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の防火安全ガラスは、火災時の初期段階で合わせガラスの板ガラス間にある樹脂フィルムが融け、融けた樹脂フィルムが、ガラス下辺から流出し施工枠の下枠内に溜まり、その結果、非加熱側に火炎が出やすくなり、加熱条件によっては本来の防火設備の火焔遮断性能が発揮できない場合がある。また、例えば防火安全ガラスのサイズが1000mm×2000mmより大きい寸法になると、火災等の加熱時に樹脂フィルムが融けることにより発生するガスや液体化した樹脂の総量が多くなるため、大型の合わせガラスの板ガラス間からガスや液体化した樹脂が抜けない場合には、爆裂を起こして破損する確率が高くなるなどの課題がある。これらの課題は、上記特許文献3及び4に記載の取り付け構造では解決することが困難であった。
また、上述した特許文献5に記載の防火安全ガラスでは、耐熱板ガラスの爆裂を防止するために、合わせガラスの下部の端面を耐熱性封止材により連続的に封止する、という構造が採用されている。しかしながら、この特許文献5に記載の構造では、火災時に樹脂フィルムが融けることにより発生するガスや液体化した樹脂が、施工枠との間のシール材や耐熱性封止材等の存在により逃げ場を失い易く、ガラス板間から抜け難い、という問題があった。また、図6に示すように、本発明者らの従来開発品においても同様に、火災時に樹脂フィルム32が融けることにより発生するガスや液体化した樹脂が、封止材34や熱膨張材8や防火性シリコーン6等の存在により逃げ場を失い易く、ガラス板31,31間から抜け難い、という問題があった。そのため、火災時に樹脂フィルムから発生するガスや液体化した樹脂の充満によるガラス板の爆裂を効果的に防止し、火災時におけるガラス板の破損を効果的に防止する観点から更なる改善の余地があった。
本発明は、火災時に加熱されることに起因する気体や液体が発生したとしても、これらの気体や液体が速やかに系外に放出され、気体や液体の充満によるガラス板の爆裂を起こし難くなり、高い安全性及び優れた火炎遮断性能を備えることが可能となる防火安全ガラス用窓枠、及び、この防火安全ガラス用窓枠を用いた防火安全ガラス窓を提供することを目的とする。
本発明者らは、火災時に発生する気体や液体を系外に排出することにより、防火安全ガラス板が爆裂を起こし難くなることを見出し、本発明を提示するものである。
第1の発明の防火安全ガラス用窓枠は、上枠、下枠、側枠の少なくとも1つの枠材に、火災時に発生する気体又は液体を排出させるための排出孔を設けた。
上記構成によると、火災時に加熱されることに起因する気体や液体が発生したとしても、上枠、下枠、側枠の少なくとも1つの枠体に設けられた排出孔によって効率的に気体や液体を系外に排出させることができるため、気体や液体の膨張圧によりガラス板が爆裂を起こして破損する確率が大幅に減少する。また、火災時に発生する気体又は液体を排出孔から排出できる結果として、火災時に発生した液体が施工枠の下枠内などに溜り難くなり、火災時における非加熱側での火炎の発生を防止できる。
第2の発明の防火安全ガラス窓は、上記第1の発明の防火安全ガラス用窓枠に、2枚のガラス板を樹脂により貼り合わせた防火安全ガラス板を嵌め込んだ防火安全ガラス窓であって、前記排出孔は、火災時に樹脂層から発生するガス又は液体化した樹脂を排出させる。
上記構成によると、2枚以上のガラス板を樹脂により貼り合わせた防火安全ガラス板を窓枠に嵌め込んでおり、火災時に樹脂が加熱されることに起因するガスや液体化した樹脂が発生するものの、上記防火安全ガラス用窓枠によりガスや液体化した樹脂が系外に排出されるため、ガスや液体化した樹脂の膨張圧によりガラス板が爆裂を起こして破損する確率が大幅に減少する。また、火災時に発生するガス又は液体化した樹脂を排出孔から排出できる結果として、火災時に発生した液体化した樹脂が施工枠の下枠内などに溜り難くなり、火災時における非加熱側での火炎の発生を防止できる。
第3の発明は、上記第2の発明の防火安全ガラス窓において、前記上枠又は前記下枠の左右中間部に前記排出孔を設けた。
上記構成によると、火災時に温度が上昇し易い上枠又は下枠の左右中間部から火災時に樹脂層から発生するガス又は液体化した樹脂を迅速に排出できる。
第4の発明は、上記第2又は第3の発明の防火安全ガラス窓において、前記上枠又は前記下枠における、左右中心よりも左側の左側部分の左右中間部よりも左側の箇所と、左右中心よりも右側の右側部分の左右中間部よりも右側の箇所に、前記排出孔を設けた。
上記構成によると、防火安全ガラス板の上部に充満するガスや下部に溜まった液体化した樹脂を、防火安全ガラス板の右側角部や左側角部に滞留させることなく左右の排出孔から効率よく排出できる。
第5の発明は、上記第2〜第4発明のいずれか一つの防火安全ガラス窓において、前記下枠に、前記防火安全ガラス板の下端側を支持させるセッティングブロックを設けて、該セッティングブロックを避けるように前記下枠に前記排出孔を設けた。
上記構成によると、排出孔がセッティングブロックに塞がれて火災時に樹脂層から発生する液体化した樹脂が排出孔から排出され難くなることを未然に防止できる。
第6の発明は、上記第2〜第5発明のいずれか一つの防火安全ガラス窓において、前記枠材に、前記防火安全ガラス板を嵌め込む溝部を形成し、前記排出孔を、前記樹脂層の端部に対向する、前記溝部の底面の溝幅方向中央部に設けた。
上記構成によると、火災時に樹脂層から発生するガスや液体化した樹脂を、膨張圧が作用したガスや液体化した樹脂の噴出方向となる位置に形成された排出孔から効率よく排出できる。
第7の発明は、上記第2〜第6発明のいずれか一つの防火安全ガラス窓において、前記ガラス板の少なくとも1枚は、30〜750℃の温度範囲において−10〜10×10−7/Kの平均線膨張係数を有する結晶化ガラスよりなる。
上記構成によると、急激な温度変化によって生じる熱衝撃に対してガラス板が割れ難くなり、防火安全ガラス窓として、優れた性能を有することとなる。
第8の発明は、上記第2〜第7発明のいずれか一つの防火安全ガラス窓において、前記樹脂は、THV樹脂、EVA樹脂、又はPVB樹脂を少なくとも一種含む。
上記構成によると、コストが安く、かつ良好な接着特性を与えるものであり、防火安全ガラス窓として、優れた性能を有することとなる。また、これらの樹脂はガスや液体の発生量が多くなる傾向となるため、本発明の防火安全ガラス窓を適用した事による、ガラス板の爆裂破損の確率を減少させるという効果が顕著に現れる。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
[防火安全ガラス窓の全体構造]
図1及び図2に基づいて本発明に係る防火安全ガラス窓10の全体構造を説明する。図1は、本発明に係る防火安全ガラス窓10の部分破断説明図であり、図2は、本発明に係る防火安全ガラス窓10の拡大断面図である。図1に示すように、防火安全ガラス窓10は、防火安全ガラス用窓枠1に、防火安全ガラス板3を嵌め込んでなる。本実施形態において例示する防火安全ガラス用窓枠1の寸法は、外寸が2495mm×1250mm×125mmであり、内寸が2400mm×1200mm×125mmである。そして、防火安全ガラス用窓枠1は、上枠1aと、下枠1bと、左右の側枠1c,1cにより構成されている。図2に示すように、防火安全ガラス用窓枠1は、防火安全ガラス板3を嵌め込み可能となるように、断面がコの字形状の溝部を形成している。溝部の溝幅Aは、防火安全ガラス板3の厚さtに応じて定められており、例えば、{防火安全ガラス用窓枠1のコの字の溝部の溝幅Amm−防火安全ガラス板3の厚さt(mm)}=+5〜15mmとなるように設計される。防火安全ガラス用窓枠1は、火災により軟化、燃焼しない材質により構成することができる。具体的には、アルミニウム、鋼、ステンレス、銅などの金属により構成することができるが、亜鉛メッキ等の防錆加工を施した鋼板製の中空材が好ましい。施工の際は、後述するように、防火安全ガラス板3の固定と、水の浸入を防止する目的で、防火性シリコーン6が封入される。
[防火安全ガラス板の構造]
図3に基づいて本発明に係る防火安全ガラス窓10を構成する防火安全ガラス板3の構造を説明する。図3は、本発明に係る防火安全ガラス窓10を構成する防火安全ガラス板3の断面図であり、(a)は、第一の実施形態の防火安全ガラス板3の断面図であり、(b)は、第二の実施形態の防火安全ガラス板3の断面図である。本発明に係る防火安全ガラス窓10を構成する防火安全ガラス板3として、第一の実施形態の防火安全ガラス板3を採用してもよく、第二の実施形態の防火安全ガラス板3を採用してもよい。図3(a)に示すように、第一の実施形態の防火安全ガラス板3は、2枚のガラス板31,31を樹脂フィルム32により貼り付けることで積層されたガラス積層体である。防火安全ガラス板3の作製は、2枚のガラス板31,31の間に、樹脂フィルム32を挟んで積層した積層状態とし、図示しないオートクレーブ等の加熱手段により加熱することにより樹脂フィルム32を融着させて、2枚のガラス板31,31と樹脂フィルム32とを一体化させることで製造することができる。樹脂フィルム32としては、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂,UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)等の熱硬化性樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、フッ素樹脂(THV)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)等の熱可塑性樹脂、その他紫外線硬化樹脂などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、THV樹脂、EVA樹脂、PVB樹脂は、コスト面や接着性の面に優れているため好ましい。このように、2枚のガラス板31,31を積層させることにより、防火安全ガラス板3の強度を高めることが可能となる。また、樹脂フィルム32が介在しているため、火災の際に非常に強い衝撃が加わり、防火安全ガラス板3が破損したとしても、破片が飛散するおそれがなくなり、安全性が向上する。なお、図3(a)では、2枚のガラス板31,31を積層しているが、防火性に応じて3枚以上のガラス板31を積層してもよい。また、複数枚のガラス板31のうち、少なくとも一枚が耐熱ガラス板からなることにより、最低限の防火性能を付与できるが、優れた防火性能とするためには、全てのガラス板31が耐熱ガラス板からなることが好ましい。
図3(b)に示すように、第二の実施形態の防火安全ガラス板3は、2枚のガラス板31,31の間に樹脂板33を挟んで2枚の樹脂フィルム32により貼り付けることで積層されたガラス積層体である。防火安全ガラス板3の作製は、2枚のガラス板31,31の間に、樹脂フィルム32と、オートクレーブ等により加熱しても融着しない板状の樹脂板33と、樹脂フィルム32とを順に挟んで積層した積層状態とし、上述した加熱手段により加熱することにより樹脂フィルム32を融着させて、2枚のガラス板31,31と樹脂板33及び2枚の樹脂フィルム32,32とを一体化させることで製造することができる。樹脂板33が耐火特性を備えたものであれば、2枚のガラス板31,31のみを樹脂フィルム32で一体化した防火安全ガラス板3と比べて防火特性が向上する。耐火特性を備えた樹脂板33としては、フッ素樹脂板等が挙げられる。なお、図3(b)では、2枚のガラス板31,31を積層しているが、防火性に応じて3枚以上のガラス板31を積層してもよい。また、3枚以上のガラス板31を積層した場合、それぞれのガラス板31の間に樹脂板32を挟んでもよい。また、複数枚のガラス板31のうち、少なくとも一枚が耐熱ガラス板からなることにより、最低限の防火性能を付与できるが、優れた防火性能とするためには、全てのガラス板31が耐熱ガラス板からなることが好ましい。
第一及び第二の実施形態の防火安全ガラス板3に用いられるガラス板31は、熱膨張率の小さいガラスから構成されてなることが好ましい。熱膨張率の小さい、すなわち熱膨張し難いガラスを用いることにより、火災時に防火安全ガラス板3に急激な温度変化が生じた場合においても、熱衝撃による破損の恐れを軽減することができる。ガラス板31の熱膨張係数としては、30〜750℃の温度範囲において−10〜10×10−7/Kの平均線膨張係数であることが好ましい。
[防火安全ガラス窓の施工方法]
図4に基づいて本発明に係る防火安全ガラス窓10の施工方法を説明する。図4は、本発明に係る防火安全ガラス窓10の詳細構造を示す説明図であり、(a)は、防火安全ガラス窓10の正面図であり、(b)は、(a)のX−X位置での断面図である。なお、防火安全ガラス窓10の施工方法は、この方法に限定されるものではない。図4(a)及び(b)に示すように、先ず、防火安全ガラス板3の下部及び側面に取り付けられる下枠1b及び側枠1c,1cを作製する。前述した通り、アルミニウムや鋼等の金属をコの字形状の断面を有するように加工し、その内側に防火安全ガラス板3を受け入れる溝部を形成する。溝部の形成された上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cを溶接やネジ止めにより連結一体化して防火安全ガラス用窓枠1を作製する。作製された窓枠1に防火安全ガラス板3を嵌め込んで防火安全ガラス窓10の施工が完了する。この場合、防火安全ガラス板3の下部と、下枠1bの溝部との間には、左右一対のセッティングブロック4と、発泡ポリ塩化ビニルやセラミックファイバーブランケット等により構成された充填材5,5を介在させる。また、防火安全ガラス板3の左右側部及び上部と、上枠1a及び側枠1c,1cの溝部との間には、充填材5,5を介在させる。そして、防火安全ガラス板3と上枠1a、下枠1b、及び側枠1c,1cの溝部との間に生じる隙間には、防火性シリコーン6を封入する。防火性シリコーン6としては、例えば、SE5007(東レ・ダウコーニング社製)、シーランド40N(信越シリコーン社製)、シーラント74(信越シリコーン社製)等を用いることができ、コーキングガンにより充填される。
図4(a)に示すように、左右一対のセッティングブロック4,4は、防火安全ガラス板3の左右中心となる中心線CLよりも左側の左ガラス部分の下面の左右中間部と、防火安全ガラス板3の中心線CLよりも右側の右ガラス部分の下面の左右中間部とを支持するように配設される。これにより、左右一対のセッティングブロック4,4によって防火安全ガラス板3を効率よく安定して支持できる。
[排出孔の構造]
図4及び図5に基づいて本発明に係る排出孔2の構造を説明する。図5は、本発明に係る排出孔2の構造を示す詳細図であり、(a)は、下枠1bの底面1dを示す平面図であり、(b)は、上枠1aの底面1dを示す平面図である。図4(a)に示すように、防火安全ガラス用窓枠1の上枠1aには、防火安全ガラス板3の中心線CLに対して左右対称となるように、火災時に樹脂フィルム32から発生するガスを外部に排出させるための3つの排出孔2が形成され、防火安全ガラス用窓枠1の下枠1bには、防火安全ガラス板3の中心線CLに対して左右対称となるように、火災時に樹脂フィルム32から発生する液体化した樹脂を外部に排出させるための3つの排出孔2が形成されている。
上枠1aに形成された排出孔2は、上枠1aの左右中間部と、上枠1aの中心線CLよりも左側の上枠左側部分における左端寄りの位置と、上枠1aの中心線CLよりも右側の上枠右側部分における右端寄りの位置に配設されている。また、下枠1bに形成された排出孔2は、下枠1bの左右中間部と、下枠1bの中心線CLよりも左側の下枠左側部分における左端寄りの位置と、下枠1bの中心線CLよりも右側の下枠右側部分における右端寄りの位置に配設されている。そして、下枠1bに形成された排出孔2は、防火安全ガラス板3の下端側を下枠1bに支持させる左右一対のセッティングブロック4,4を避けるように、左右一対のセッティングブロック4,4の間と、左側のセッティングブロック4の左側と、右側のセッティングブロック4の右側に配設されている。これにより、排出孔2が全体的に又は部分的にセッティングブロック4に塞がれて火災時に樹脂フィルム32から発生する液体化した樹脂が外部に排出され難くなることを未然に防止できる。左側のセッティングブロック4の左側に配設される排出孔2と、右側のセッティングブロック4の右側に配設される排出孔2は、例えば左右一対のセッティングブロック4,4の配置を左右中央側に位置変更した場合等において、全体的にも部分的にも左右一対のセッティングブロック4,4に塞がれない位置であれば、下枠1bの下枠左側部分の左右中間部や下枠右側部分の左右中間部に配設してもよいが、図4(a)に例示したセッティングブロック4,4の配置であれば、下枠1bの左端からの距離が下枠1bの全長の1/4以内の位置と、下枠1bの右端からの距離が下枠1bの全長の1/4以内の位置に配設するのが好ましい。なお、上枠1aの排出孔2は、下枠1bとの部品の共通化を図って防火安全ガラス窓10の製造コスト削減を図るべく、下枠1aの排出孔2と長手方向での配置が同じ位置で上枠1a及び下枠1bが上下及び左右対称形状となるように形成されている。
図4(b)に示すように、上枠1aの排出孔2は、樹脂フィルム32の上端部に対向するように、上枠1aの溝部の底面1dの溝幅方向中央部に形成されている。また、下枠1bの排出孔2は、樹脂フィルム32の下端部に対向するように、下枠1bの溝部の底面1dの溝幅方向中央部に形成されている。これにより、火災時に樹脂フィルム32から発生したガスを、膨張圧が作用したガスの噴出方向となる位置に形成された排出孔2、すなわち、樹脂フィルム32の上端面の真上に形成された排出孔2から効率よく排出できる。また、火災時に樹脂フィルム32から発生した液体化した樹脂を、膨張圧が作用した液体化した樹脂の噴出方向となる位置に形成された排出孔2、すなわち、樹脂フィルム32の下端面の真下に形成された排出孔2から効率よく排出できる。
各排出孔2は、防火安全ガラス板3への防火安全ガラス用窓枠1の取り付け前に、パンチによる打ち抜き加工や孔開け具による孔開け加工やレーザーによるレーザー加工等によって予め形成される。各排出孔2は、底面1dに形成された底面孔2aと、上枠1aの上面となる外面1e又は下枠1bの下面となる外面1eに形成された外面孔2bとで、上下方向に貫通する貫通孔となるように形成されている。これにより、底面1dに形成された底面孔2aから排出されたガスや液体化した樹脂を、底面孔2aに対して上下に対向する位置に形成された外面穴2bから上枠1a及び下枠1bの外面1eの外側にスムーズに排出できる。
図4(a)に示すように、防火安全ガラス用窓枠1の側枠1c,1cにも、火災時に樹脂フィルム32から発生するガス又は液体化した樹脂を外部に排出させるための排出孔2が、それぞれ6つずつ形成されている。各側枠1c,1cの排出孔2は、各側枠1c,1cの部品の共通化を図って防火安全ガラス窓10の製造コスト削減を図るべく、各側枠1c,1cの長手方向での排出孔2の配置が同じ位置で各側枠1c,1cが上下及び左右対称形状となるように形成されている。なお、側枠1c,1cに形成された各排出孔2の構造は、上枠1a及び下枠1bに形成された排出孔2と同様の構造であり、底面1dに形成された底面孔2aと、側枠1cの横面となる外面1eに形成された外面孔2bとで、左右方向に貫通する貫通孔となるように形成されている。
図5(a)及び(b)に示すように、上枠1a、下枠1b、及び側枠1c,1c(側枠1cは図5には図示せず)の全ての底面1dの面積に対する排出孔2の開口率R、すなわち、R={(N×S)/(A×B)}×100(N:排出孔2の数,S:一つの排出孔2の開口面積,A:底面1dの溝幅,B:底面1dの全長B(上枠1aの底面1dの全長Baと、下枠1bの底面1dの全長Bb(=Ba)と、側枠1c,1cの底面1dの全長Bc,Bc(全長Bcは図5には図示せず)の和))は、火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂を迅速に外部に排出できかつ火災時における防火安全ガラス用窓枠1の剛性を著しく低下させない開口率Rに設定するのが好ましく、例えば、0.5%以上で25%以下であることが好ましく、0.5%以上で5%以下であることがより好ましい。
図5(a)に示すように、下枠1bに形成された3つの排出孔2の配設ピッチCは、排出孔2が全体的にも部分的にもセッティングブロック4に塞がれないように、セッティングブロック4,4の取り付け位置に対して設定するのが好ましく、例えば、10mm以上で700mm以下であることが好ましく、400mm以上で700mm以下であることがより好ましい。また、下枠1bに形成された右側の排出孔2は、右側のセッティングブロック4に対して所定距離D以上離間するように配置されている。同様に、下枠1bに形成された左側の排出孔2も、左側のセッティングブロック4に対して所定距離D以上離間するように配置されている。これにより、防火安全ガラス板3に防火安全ガラス用窓枠1を取り付けた場合における組み付け誤差等が生じた場合や、火災時の樹脂フィルム32の溶融や防火安全ガラス用窓枠1の変形等に起因して排出孔2とセッティングブロック4との相対位置関係がずれた場合であっても、各排出孔2がセッティングブロック4に塞がれることを回避することができる。その結果、火災時に樹脂フィルム32から発生する液体化した樹脂を各セッティングブロック4,4の左右両側から迅速にかつ確実に外部に排出できる。なお、所定距離Dは、各排出孔2がセッティングブロック4に塞がれることを回避できるのであれば数mm程度であってもよいが、1cm以上であることがより好ましい。なお、上枠1a及び側枠1c,1cに形成された各排出孔2の配設ピッチは、孔開け加工等を容易に行って防火安全ガラス窓10の製造コスト削減を図るべく、下枠1bの各排出孔2の配設ピッチCと同じ配設ピッチに設定されている。
図5(a)及び(b)に示すように、各排出孔2の形状は、上枠1a及び下枠1bの長手方向に細長い長方形状に形成されている。図示しないが、側枠1c,1cの各排出孔2も同様に、側枠1cの長手方向に細長い長方形状に形成されている。これにより、火災時における防火安全ガラス用窓枠1の剛性を確保する観点から排出孔2の開口率Rを比較的小さく設定した場合であっても、防火安全ガラス板3の各辺の長手方向に細長い排出孔2から火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂を効率よく外部に排出できる。なお、各排出孔2の形状は、長方形状に限らず、孔開け加工が比較的容易な円形の丸孔や角形の角孔、上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの長手方向に細長い長円形状や楕円形状など種々の形状を採用できる。また、図4(b)に示すように、各排出孔2の溝幅方向の長さは、防火安全ガラス板3の厚さ及び溝幅方向での充填材5,5の内面間距離と略同じ長さ又は短い長さに設定されている。これにより、各排出孔2が充填材5,5に塞がれることを回避しながら充填材5,5の取り付け代を十分に確保できる。
一つの排出孔2の開口面積Sは、火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂を迅速に外部に排出できかつ上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの局所的な剛性の低下を回避できる面積が好ましく、例えば、0.1cm2以上で3cm2以下であることが好ましく、0.5cm2以上で3cm2以下であることがより好ましい。なお、上述した開口率R、配設ピッチC及び開口面積Sは、防火安全ガラス板3の大きさや防火安全ガラス用窓枠1の形状等に合わせて設定されるものであり、その設定に際しては、開口率Rが最も優先される。
以上のように、排出孔2を有する防火安全ガラス用窓枠1を構成することで、火災時に樹脂フィルム32から発生して防火安全ガラス板3の上部に充満するガスは、上枠1aに形成された各排出孔2から外部に排出される。この場合、防火安全ガラス板3の上部に充満するガスを、防火安全ガラス板3の右側角部や左側角部に滞留させることなく、3つの排出孔2から外部に効率よく排出できる。また、火災時に樹脂フィルム32から発生して防火安全ガラス板3の下部に溜まった液体化した樹脂は、下枠1bに形成された各排出孔2から外部に排出される。この場合、防火安全ガラス板3の下部の左右中間部に溜まった液体化した樹脂は、左右一対のセッティングブロック4,4の間に配設された排出孔2から外部に排出される。また、防火安全ガラス板3の下部の左側角部に溜まった液体化した樹脂は、左側のセッティングブロック4の左側に配設された排出孔2から外部に排出され、防火安全ガラス板3の下部の右側角部に溜まった液体化した樹脂は、右側のセッティングブロック4の右側に配設された排出孔2から外部に排出される。これにより、火災時に防火安全ガラス板3の下部に溜まった液体化した樹脂が左右一対のセッティングブロック4,4に堰き止められて外部に排出され難くなることを防止でき、液体化した樹脂を下枠1bに形成された各排出孔2から外部に効率よくかつ確実に排出できる。そして、例えば、樹脂フィルム32から発生するガスに空気よりも軽い気体や重い気体がそれぞれ含まれる場合や、樹脂フィルム32から発生するガスの量が多い場合などには、側枠1cに設けられた排出孔2から発生したガスを効率よく排出できる。また、例えば、防火安全ガラス板3の下部に溜まる樹脂が多い場合などには、側枠1cに設けられた排出孔2から溜まった樹脂を効率よく排出できる。その結果、火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂が2枚のガラス板31,31の間に充満してガラス板31,31が爆裂を起こすことを効果的に防止できる。
[参考形態]
図6に基づいて本発明に対する参考形態として従来開発品の防火安全ガラス窓100の構造を説明する。図6は、従来開発品の防火安全ガラス窓100の構造を示す説明図であり、(a)は、防火安全ガラス窓100の正面図であり、(b)は、(a)のY−Y位置での断面図であり、(c)は、(a)のZ−Z位置での断面図である。なお、本発明に係る防火安全ガラス窓10と同様の構造については、上記実施形態で示したとおりであり詳しい説明は省略する。
図6(a)に示すように、防火安全ガラス板3の下部の端面は、耐熱性の封止材34により連続的に封止されている。つまり、2枚のガラス板31,31を貼り合わせた後に、防火安全ガラス板3の下辺の端面と防火安全ガラス板3の左右辺の端面の下部が、封止材34で連続的に封止される。封止材34としては、耐熱性シーリング材や帯状の耐熱テープにより防火安全ガラス板3の端面の板厚方向中央部(樹脂フィルム32の端部近傍)のみを封止したものであってもよいが、図6(b)に示すように、防火安全ガラス板1の端面と両板面とに亘ってU字状に貼り付けた耐熱テープが好ましい。耐熱テープとしては、例えば、耐熱性と強度を付与した複合材からなる耐熱アルミクロステープ等が挙げられる。なお、防火安全ガラス板3の下辺の端面のうちのセッティングブロック4,4に支持させる部分は、防火安全ガラス板3をセッティングブロック4,4に安定して支持させるべく、封止材34で封止しなくてもよい。
防火安全ガラス板3の左右辺の端面に封止材34を貼り付ける下辺からの高さMは、防火安全ガラス板3の全高Lの1/6以上で1/2未満であることが好ましく、防火安全ガラス板3の全高Lの1/4以上で1/3未満であることがより好ましい。これにより、封止材34によって火災時の初期段階で融けた樹脂フィルム32が防火安全ガラス板3の下部から漏れ出すことを効果的に防止できる。
図6(c)に示すように、下枠1bの底面1dには、その全長に亘ってシート状の熱膨張材8が貼付されている。また、図示しないが、左右の側枠1c,1cの底面1dにおける封止材34を貼り付けた部分(高さMの範囲内の側枠1c,1cの底面1d)にも同様に、熱膨張材8が貼付されている。つまり、封止材34を貼り付けた箇所に対応する下枠1bの底面1d及び側枠1c,1cの底面1dには、その封止材34に対向するように熱膨張材8が貼付されている。熱膨張材8の横幅Wは、火炎を効果的に遮断しかつ底面1dへの貼付を容易に行えるように、底面1dの溝幅Aの80〜90%に設定されている。また、熱膨張材8の厚さは、火炎を効果的に遮断しかつ火災時に膨張した際に防火安全ガラス板3を破損させないように、セッティングブロック4の高さの1/2又は略1/2の厚さに設定されている。熱膨張材8は、火災時に高熱を受けると膨張して断熱層を形成し、火炎の通過を遮断するものであり、例えば、フィブロック(積水化学工業社製)、インツメックス(インツメックス社製)、ゴム成型品(十川ゴム社製)などを用いることができる。
従来開発品の防火安全ガラス窓100では、封止材34及び熱膨張材8を取り付けることで、火災時の初期段階で融けた樹脂フィルム32が防火安全ガラス板3の下部から漏れ出すことを防止し、漏れ出した樹脂が防火安全ガラス用窓枠1の下枠1b等に溜まって非加熱側に火炎が発生することを防止していた。しかしながら、上述した通り、封止材34や熱膨張材8を取り付けるためには、それらの材料費が嵩むだけでなく、それらを取り付けるための作業費が嵩んで、結果として、防火安全ガラス窓100の製造コストが高騰する一因になっていた。そこで、火災時に融けた樹脂が漏れ出すことを防止する、という従来開発品からの発想の転換を図って、本発明に係る排出孔2を有する防火安全ガラス用窓枠1の構造を採用して積極的に排出孔2から火災時に発生するガスや液体化した樹脂を排出することで、従来開発品で取り付けられていた封止材34及び熱膨張材8の一方又は両方を廃止したとしても、漏れ出した樹脂が防火安全ガラス用窓枠1の下枠1b等に溜まって非加熱側に火炎が発生することを効果的に防止できるに至った。その結果、本発明に係る防火安全ガラス窓10は、上記実施形態で記載したように火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂の充満によるガラス板31,31の爆裂を効果的に防止できるだけでなく、防火安全ガラス窓10の大幅な製造コスト削減を図りながら、火災時における非加熱側での火炎の発生を効果的に防止できるに至ったのである。
以下、表1に基づいて本発明の実施例を説明する。なお、後述する実施例は一例として示すものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、表1に示す実施例では、上記実施形態で例示した寸法の防火安全ガラス用窓枠1を取り付けた防火安全ガラス窓10について、上記実施形態で例示した数及び配置の排出孔2を上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cに形成したもの(実施例1)と、上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cに形成する排出孔2の仕様を変更したもの(実施例2〜8)を外壁に取り付けて所定の防火性能試験を行った結果を示すものである。また、表1に示す開口率Rは、底面1dの溝幅A=19mm、底面1dの全長B=7370mm(上枠1a及び下枠1bの底面1dの全長Ba=Bb=1240mm,側枠1cの底面1dの全長Bc=2445mm)、底面1dの溝面積A×B=1400cm2として、上述した式により算出したものである。
表1の実施例1〜6に示されているように、開口率Rが0.5%以上で25%以下となるように排出孔2を形成したものでは、所定の防火性能試験を行ったところ、ガスや液体化した樹脂の充満によってガラス板31,31が爆裂を起こすことがなく、所望の防火性能を有することが確認できた。また、実施例1〜6においては、防火安全ガラス用窓枠1の著しい熱変形が生じていないことも確認できた。また、実施例1及び3に示されているように、配設ピッチCを大きくして排出孔2の数Nを少なくした場合であっても開口面積Sを所定面積以上確保すれば、実施例2に示す排出孔2の数Nを多くしたものと同様に、所望の防火性能を有することが確認できた。また、実施例1〜3に示されているように、開口率Rを5%以下に設定した場合であっても、実施例4及び5に示す開口率Rを20%以上に設定したものや、実施例6に示す開口率Rを5%以上に設定したものと同様に、所望の防火性能を有することが確認できた。
表1の実施例7及び8に示されているように、開口率Rを25%以上に設定したものでは、ガスや液体化した樹脂の充満によってガラス板31,31が爆裂を起こすことはなかったが、防火安全ガラス用窓枠1の剛性不足により防火安全ガラス用窓枠1に著しい熱変形が生じた。そのため、防火設備としての使用は可能であるものの、実施例1〜6と比べて防火性能(火炎遮断性能)が低いことが確認できた。
表1に示す比較例は、防火安全ガラス窓10と同様の構造で排出孔2を形成していないものについて、上記実施例1〜8と同様の条件で所定の防火性能試験を行ったものである。比較例では、ガスや液体化した樹脂の充満によってガラス板31,31が爆裂を起こした。また、比較例では、火災時の初期段階で融けた樹脂フィルム32が防火安全ガラス板3の下部から漏れ出して加熱側の火炎が非加熱側に噴出し、所望の防火性能(火炎遮断性能)を有しなかった。
以上の防火性能試験の結果から、上記実施形態で示した排出孔2の構造や配置、各種設定値、各種数値範囲等が、防火性能上優れたものであることが確認でき、本発明に係る防火安全ガラス窓10が、高い安全性及び優れた火炎遮断性能を備えたものであることが確認できた。
[別実施形態]
(1)上記実施形態では、防火安全ガラス用窓枠1の上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cのすべての枠材に排出孔2を設けた例を示したが、上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cのうちのいずれか一つの枠材にのみ排出孔2を設けてもよく、上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cのうちの2つ又は3つの任意の組み合わせの枠材に排出孔2を設けてもよい。具体的には、例えば、防火安全ガラス用窓枠1の剛性の確保と防火安全ガラス用窓枠1の製造コスト削減を優先させて、側枠1c,1cには排出孔2を設けずに上枠1aと下枠1bに排出孔2を設けてもよい。この場合であっても、火災時に樹脂フィルム32から発生したガスや液体化した樹脂を上枠1a及び下枠1bの排出孔2から効率よく排出できる。また、例えば、左右一方の側枠1cのみに排出孔2を設けた場合であっても、樹脂フィルム32から発生するガスは防火安全ガラス板3の上部に充満し易いため、側枠1cの上部に設けた排出孔2からガスを排出することが可能であり、また、樹脂フィルム32から発生する液体化した樹脂は防火安全ガラス板3の下部に溜り易いため、側枠1cの下部に設けた排出孔2から樹脂を排出することが可能である。
(2)上記実施形態では、上枠1aの排出孔2を、上枠1aの左右中間部と、上枠1aの上枠左側部分と、上枠1aの上枠右側部分に設けた例を示したが、上枠1aの左右中間部にのみ排出孔2を設けてもよく、上枠1aの上枠左側部分及び上枠右側部分に排出孔2を設けてもよく、上枠1aの上枠左側部分及び上枠右側部分の一方のみに排出孔2を設けてもよい。なお、下枠1bの排出孔2についても同様である。また、側枠1cの排出孔2についても同様に、側枠1cの上下中間部、上部、下部のいずれの位置に排出孔2を設けてもよい。すなわち、上枠1a、下枠1b、側枠1c,1cに設ける排出孔2の数や排出孔2の配置は、防火安全ガラス用窓枠1の形状や大きさ等に応じて任意に設定できる。
(3)上記実施形態では、上枠1a及び下枠1bに同じ数及び同じ開口面積Sの排出孔2を形成して、上枠1aの排出孔2の開口率と下枠1bの排出孔2の開口率とを同じ開口率に設定した例を示したが、排出孔2から排出されるガスや液体化した樹脂の排出量を制御すべく、排出孔2の数を異ならせたり、一つの排出孔2の開口面積Sを異ならせたりする等して、上枠1a及び下枠1bの排出孔2の開口率を互いに異ならせてもよい。具体的には、例えば、下枠1bの排出孔2の開口率を上枠1aの排出孔2の開口率よりも大に設定してもよく、逆に、上枠1aの排出孔2の開口率を下枠1bの排出孔2の開口率よりも大に設定してもよい。例えば、下枠1bの排出孔2の開口率を上枠1aの排出孔2の開口率よりも大に設定すると、防火安全ガラス板3の上部に充満するガスの圧力を低下し難くして、防火安全ガラス板3の下部に溜まった液体化した樹脂にガスの圧力を効率よく作用させて、開口率が大きく設定された下枠1bの排出孔2から液体化した樹脂を勢いよく排出することができる(なお、上枠1aの排出孔2や側枠1cの上部の排出孔2を廃止した場合においても同様の作用を有する)。また、例えば、上枠1aの排出孔2の開口率を下枠1bの排出孔2の開口率よりも大に設定すると、防火安全ガラス板3の上部に充満するガスの圧力を迅速に低下させて、防火安全ガラス板3の下部に溜まった液体化した樹脂を開口率が小さく設定された下枠1bの排出孔2から徐々に排出することができる。
(4)上記実施形態では、火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂を排出孔2から上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの外面1eの外側に排出するように構成した例を示したが、火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂を上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの溝部の外側に排出する構成として異なる構造を採用してもよい。具体的には、例えば、図7(a)に示すように、排出孔2を、底面1dに形成された底面孔2aのみで構成し、火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂を排出孔2から上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの内部空間に排出するように構成してもよい。この場合、上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの内部空間の圧力が上昇し過ぎることを回避するため、上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの少なくともいずれか一つの外面1eに小さな圧抜き孔を設けてもよい。
(5)上記実施形態では、排出孔2を、底面孔2aと外面孔2bとで構成した例を示したが、図7(b)に示すように、底面孔2aと外面孔2bとを、丸パイプや角パイプなどの筒材により構成された接続部材2cによって接続してもよい。この場合、接続部材2cの断面形状は、排出孔2の形状と同じ断面形状であってもよく、排出孔2の形状とは異なる断面形状であってもよい。これにより、接続部材2cを利用して排出孔2形成箇所を効果的に補強しながら、底面1dに形成された底面孔2aから排出されたガスや液体化した樹脂が上枠1aや下枠1bや側枠1c,1cの内部空間に溜まって上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの外側に排出され難くなることを防止でき、火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂を上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの外面1eの外側に更に確実に排出できる。
(6)上記実施形態では、火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂を、上枠1aの上面となる外面1e、下枠1bの下面となる外面1e及び側枠1cの横面となる外面1eの外側に排出するように構成した例を示したが、火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂を上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの外側に排出する構成として異なる構造を採用してもよい。具体的には、例えば、図7(c)に示すように、火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂を、上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの加熱側又は非加熱側の側面となる外面1fから排出するように構成してもよい。この場合、底面1dに形成された底面孔2aと外面1fに形成された外面孔2bとをL字状の接続部材2cで接続してもよく接続しなくてもよい。また、図7(d)に示すように、火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂を、上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの加熱側及び非加熱側の側面となる外面1f,1fから排出するように構成してもよい。この場合、底面1dに形成された底面孔2aと外面1f,1fに形成された外面孔2b,2bとを逆T字状の接続部材2cで接続してもよく接続しなくてもよい。
(7)上記実施形態では、上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの排出孔2を溝部の底面1dに形成した例を示したが、図7(e)に示すように、上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの排出孔2を溝部の側面1g,1gのいずれか一方又は両方に形成してもよい。この場合、排出孔2が充填材5で塞がれないように、排出孔2近傍の充填材5に連通部5Aを形成してもよく、図示しないが、排出孔2近傍の充填材5を部分的に省略してもよい。
(8)上記実施形態では、防火安全ガラス用窓枠1を中空材で構成した例を示したが、図7(f)に示すように、防火安全ガラス用窓枠1をアルミニウム等の中実材で構成した場合には、上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの溝部の底面1dと外面1eとに亘って貫通孔2Aを形成すればよい。これにより、孔開け加工等を施すだけで上述した接続部材2cと同様の機能を確保できる。なお、上記(6)と同様に、L字状又は逆T字状の貫通孔を形成して、又は、上記(7)と同様に、溝部の側面1g,1gのいずれか一方又は両方から横向きの貫通孔を形成して、火災時に樹脂フィルム32から発生するガスや液体化した樹脂を、上枠1a、下枠1b及び側枠1c,1cの側面となる外面1f,1fから排出するように構成してもよい。
(9)上記実施形態では、防火安全ガラス板3の下部の端面を封止材によって封止しないものを例に示したが、上記参考形態に記載したものと同様の構造で、防火安全ガラス板3の下部の端面を封止材34で封止するように構成してもよい。この場合であっても、封止材34の耐熱性が充分でない場合や火災時に封止材34が破損した場合などにおいて液体化した樹脂が漏れ出た場合に、下枠1bや側枠1c,1cに形成された排出孔2の機能を発揮させることができる。
(10)上記実施形態で示した防火安全ガラス板3の形状や大きさ等は一例として示したものであり、図示しないが、横長の防火安全ガラス板や、円形や楕円形の防火安全ガラス板等異なる形状の防火安全ガラス板や、サイズが小さい防火安全ガラス板等においても同様に適用できる。