JP2012197560A - 防火板ガラスの取付構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】遮炎性能を高めることができ、軽量化及び低コスト化を図ることができる防火板ガラスの取付構造体を提供する。
【解決手段】加熱側からの加熱による非加熱側への延焼を防止するための防火板ガラス10を下枠1に取り付けた防火板ガラスの取付構造体であって、加熱側に設けられる耐熱板ガラス11と、非加熱側に設けられ、加熱された際に耐熱板ガラス11より割れやすい板ガラス12とを樹脂層13を介して貼り合わせた防火板ガラス10、または耐熱ガラスの非加熱側に飛散防止フィルム16が貼り付けられた防火板ガラス10と、防火板ガラスの下端部10aを収納する収納部2を有する下枠1とを備え、下枠1が、収納部2から非加熱側に向かって略水平に延びる水平部3と、水平部3から下方に傾斜して延びる傾斜部4とを有し、水平部3の非加熱側端部3aと防火板ガラス10の非加熱側端面12aとの間の水平方向の距離Lが、10mm以下となるように水平部3及び傾斜部4が形成されていることを特徴としている。
【選択図】図1
【解決手段】加熱側からの加熱による非加熱側への延焼を防止するための防火板ガラス10を下枠1に取り付けた防火板ガラスの取付構造体であって、加熱側に設けられる耐熱板ガラス11と、非加熱側に設けられ、加熱された際に耐熱板ガラス11より割れやすい板ガラス12とを樹脂層13を介して貼り合わせた防火板ガラス10、または耐熱ガラスの非加熱側に飛散防止フィルム16が貼り付けられた防火板ガラス10と、防火板ガラスの下端部10aを収納する収納部2を有する下枠1とを備え、下枠1が、収納部2から非加熱側に向かって略水平に延びる水平部3と、水平部3から下方に傾斜して延びる傾斜部4とを有し、水平部3の非加熱側端部3aと防火板ガラス10の非加熱側端面12aとの間の水平方向の距離Lが、10mm以下となるように水平部3及び傾斜部4が形成されていることを特徴としている。
【選択図】図1
Description
本発明は、防火板ガラスとして耐熱板ガラスを用いた防火板ガラスの取付構造体に関するものである。
近年、事務所ビル、デパート等の大型建築物が増加するにつれて、火災時に火炎や煙を遮断して延焼を最小限に食い止める防火戸の機能を有する防火設備や特定防火設備が国土交通省からの認定を取得して市販され、その使用量が増加している。
防火設備とは、建築基準法第2条第9号の二のロに規定してあり、通常の火災による火炎が加えられた場合に、加熱開始後20分間、加熱面以外の面に火炎を出さない性能を有するものであり、また特定防火設備とは建築基準法施行令第112条第1項に規定してあり、通常の火災による火炎が加えられた場合に、加熱開始後1時間、加熱面以外の面に火炎を出さない性能を有するものであり、認定を受けるには国土交通省から指定された評価試験機関による試験に合格する必要がある。
現在、防火設備及び特定防火設備に使用される耐熱板ガラスとしては、耐熱強化ガラス、低膨張防火ガラス、耐熱結晶化ガラスなどが知られている。
耐熱強化ガラスは、建築用板ガラスとして通常使用されているソーダ石灰ガラスを原寸寸断して、エッジに特殊研磨を施した後に特殊な熱強化処理をして耐熱強度を高めたものである。低膨張防火ガラスは、建築用板ガラスとして通常使用されているソーダ石灰ガラスに対して、ソーダ、石灰を減らして主にホウ酸を用いたガラスからなるものであり、原寸切断した後、熱処理して防火用に使用できるようにしたガラスである。耐熱結晶化ガラスは、リチウムアルミナ珪酸塩系組成のガラスで、素板ガラスを再熱処理してガラス全体に微細結晶を析出して熱膨張をほとんどなくして、熱衝撃強度を高めたものである。
上記の耐熱板ガラスとしては、防火設備及び特定防火設備に要求される耐熱性能とともに、人体や物体が板ガラスに衝突しても鋭利な破片が飛散しないような衝撃安全性をも要求される場合がある。このような場合、耐熱板ガラス2枚以上を樹脂層を介して貼り合わせ一体化させた貼り合わせガラスが用いられる場合がある。また、板ガラスの一方面に飛散防止フィルムを貼り付けることにより、衝撃安全性が付与される場合がある。
特許文献1及び2においては、複数の防火性ガラス板の片面あるいは両面に、鎖状の分子構造のみからなるフッ素樹脂フィルムが接着された防火安全ガラスが開示されている。特許文献3においては、特許文献2に記載の防火安全ガラスの製造方法が開示されている。
特許文献4〜6においては、貼り合わせ構造の防火板ガラスの取付構造が開示されている。
しかしながら、複数の耐熱板ガラスを樹脂層を介して貼り合わせて一体化した防火板ガラスは、複数枚の耐熱板ガラスを用いるため、重量が重くなるという問題がある。また、耐熱板ガラスとして、耐熱結晶化ガラスなどの耐熱性の良好なガラスを用いると、非常に高価なものになってしまうという問題がある。
また、耐熱板ガラスの表面に飛散防止フィルムを貼り付けた防火板ガラスにおいては、耐熱板ガラスが加熱された際、加熱側とは反対側の非加熱側に設けられた飛散防止フィルムが燃焼してしまい、結果的に延焼を防止することができないという問題がある。
本発明の目的は、遮炎性能を高めることができ、軽量化及び低コスト化を図ることができる防火板ガラスの取付構造体を提供することにある。
本発明は、加熱側からの加熱による非加熱側への延焼を防止するための防火板ガラスを枠体に取り付けた防火板ガラスの取付構造体であって、加熱側に設けられる耐熱板ガラスと、非加熱側に設けられ、加熱された際に耐熱板ガラスより割れやすい板ガラスとを樹脂層を介して貼り合わせた防火板ガラス、または耐熱ガラスの非加熱側に飛散防止フィルムが貼り付けられた防火板ガラスと、防火板ガラスの下端部を収納する収納部を有する下枠とを備え、下枠が、収納部から非加熱側に向かって略水平に延びる水平部と、水平部から下方に傾斜して延びる傾斜部とを有し、水平部の非加熱側端部と防火板ガラスの非加熱側端面との間の水平方向の距離が、10mm以下となるように水平部及び傾斜部が形成されていることを特徴としている。
傾斜部の傾斜角度は、水平面に対して10°以上90°未満であることが好ましい。
耐熱板ガラスは、−10×10−7/K以上10×10−7/K以下の熱膨張係数を有する耐熱結晶化ガラスからなることが好ましい。
上記樹脂層及び上記飛散防止フィルムは、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、紫外線硬化性樹脂、及びフッ素樹脂よりなる群より選ばれる少なくとも1種から形成されていることが好ましい。
非加熱側に設けられる板ガラスの厚みは、加熱側に設けられる耐熱板ガラスの厚みよりも薄いことが好ましい。板ガラスの厚みは、耐熱板ガラスの厚みの1/2以下であることがさらに好ましい。
本発明によれば、遮炎性能を高めることができ、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
以下、本発明を具体的な実施形態により説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明の作用効果を説明するため、先ず比較例の防火板ガラスの取付構造体について説明する。
図4は、比較例の防火板ガラスの取付構造体を示す断面図である。図4に示すように、防火板ガラス10の下端部10aは、下枠1の中央部に形成された溝状の収納部2に収納されている。下枠1の下端部10aは、収納部2内に配置されたセッティングブロック2aの上に載せられている。セッティングブロック2aの上には、防火板ガラス10を挟むようにバックアップ材2bが設けられている。バックアップ材2bは、例えばセラミックファイバーのような材料から形成されている。バックアップ材2bの上には、シーリング材2cが充填されている。
図4において、図面右側が加熱側であり、図面左側が非加熱側である。防火板ガラス10は、加熱側に設けられる耐熱板ガラス11と、非加熱側に設けられる板ガラス12を樹脂層13により貼り合わせることにより構成されている。
図4に示す比較例の下枠1においては、収納部2から非加熱側に向かって略水平に延びる水平部3が形成されており、水平部3の非加熱側端部3aから下方に、すなわち略垂直に延びる壁部5が形成されている。防火板ガラスの非加熱側の端面、すなわち板ガラス12の非加熱側の端面12aと、水平部3の非加熱側の端部3aとの間の水平方向の距離Lは、本比較例において、15mmに設定されている。
図5は、図4に示す比較例の防火板ガラスの取付構造体において、加熱側に炎20を当てて防火板ガラス10を加熱した状態を示す断面図である。
図5に示すように、防火板ガラス10の加熱側に炎20を当て、防火板ガラス10を加熱すると、非加熱側に設けられた板ガラス12の耐熱性が、耐熱板ガラス11よりも劣るため、板ガラス12において、亀裂12bが発生する。また、樹脂層13も加熱されるため、樹脂層13が溶融する。溶融した樹脂融液13aは、板ガラス12に形成された亀裂12bを通り、板ガラス12の表面12aに沿って下方に流れる。下方に流れた樹脂融液13aは、下枠1の水平部3の上に溜まり、水平部3上に溜まった樹脂融液13aが、加熱側からの加熱により発火し、炎21を生じる。
以上のように、図4に示す比較例の防火板ガラスの取付構造体では、加熱側からの加熱によって、非加熱側の板ガラス12に亀裂12bを生じ、この亀裂12bを通り、樹脂層13が加熱により溶融して生じる樹脂融液13aが板ガラス12の外部に流れ出る。流れ出た樹脂融液13aは下枠1の水平部3の上に溜まり、発火する。このため、加熱側の加熱による非加熱側への延焼を防止することができない。
図1は、本発明に従う一実施形態の防火板ガラスの取付構造体を示す断面図である。
図1に示すように、防火板ガラス10の下端部10aは、図4に示す比較例の防火板ガラスの取付構造体と同様に、下枠1に形成された溝状の収納部2内に収納されている。防火板ガラス10の下端部10aは、収納部2内において、セッティングブロック2aの上に載せられており、バックアップ材2bにより両側を挟まれている。バックアップ材2bの上には、シーリング材2cが充填されている。
防火板ガラス10は、加熱側に設けられる耐熱板ガラス11と、非加熱側に設けられる板ガラス12と、耐熱板ガラス11と板ガラス12の間に設けられる樹脂層13から構成されている。耐熱板ガラス11としては、−10×10−7/K以上10×10−7/K以下の熱膨張係数を有する耐熱結晶化ガラスを用いることが好ましい。このような耐熱結晶化ガラスを用いることにより、火災時の800℃に達する高温環境下においても、ほぼ0に近い熱膨張係数を有しているので、火炎による急激な加熱やスプリンクラー等からの放水による急激な冷却時の熱衝撃によって破損するのを防止することができる。耐熱板ガラス11の熱膨張係数は、さらに0に近い−5×10−7/K以上5×10−7/K以下の範囲であることが好ましい。
また、上記の熱膨張係数を有する耐熱結晶化ガラスは、一般に主結晶としてβ−石英固溶体を析出しており、通常の窓板ガラスが軟化変形する800℃の高温下でも軟化変形しないものであるため、火災時に変形やそれに伴う破損を起こすことがなく、火炎や煙を遮る機能に優れている。これらの性能を有する耐熱結晶化ガラスを使用することは、建築基準法第2条第9号のニのロで規定されている防火設備の遮炎性能の基準及び建築基準法施工令第112条第1項で規定されている特定防火設備の基準を満たす上で有効である。
本実施形態においては、耐熱板ガラス11として、透明で、かつ30〜750℃の温度範囲における熱膨張係数が−3×10−7/Kの耐熱結晶化ガラス(日本電気硝子株式会社社製、商品名「ファイアライト」)を用いている。また、耐熱板ガラス11の寸法は、1200×2400×4mmである。従って、厚みは4mmである。
非加熱側に設けられる板ガラス12は、加熱された際、耐熱板ガラス11より割れやすい板ガラスである。耐熱板ガラス11として、耐熱結晶化ガラスを用いる場合、板ガラス12としては、上述の耐熱強化ガラス、低膨張防火ガラスなどを用いることができる。また、厚みが薄くなることなどにより、加熱された際耐熱板ガラス11よりも割れやすくなる場合には、耐熱板ガラス11と同様の耐熱結晶化ガラスを用いてもよい。本実施形態においては、板ガラス12として、ホウ珪酸ガラスを用いている。寸法は、1200×2400×0.7mmであり、従って厚みは、0.7mmである。
樹脂層13としては、例えば、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、紫外線硬化性樹脂、及びフッ素樹脂などが挙げられる。
フッ素樹脂としては、鎖状の分子構造を有するフッ素樹脂が好ましく用いられる。鎖状の分子構造を有するフッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびビニリデンフルオライドのモノマー等の共重合体から形成されてなるものであり、樹脂フィルムを構成するモノマーとしては、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ビニリデンフルオライド(VDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ビニルフルオライド(VF)、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)等が使用可能であるが、特にテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライドのモノマーの共重合体からなるフッ素樹脂が、融点が低いため好適である。
このような鎖状の分子構造のみからなるフッ素樹脂は、炭素−フッ素間の強固な原子間結合と、フッ素原子が炭素骨格を取り囲むことによるバリアー効果によって難燃性であり、空気中では燃えないという特性を有している。またこのフッ素樹脂は、重合度が高く、他の分子構造のフッ素樹脂に比べて複雑に絡み合った構造を有するため、伸びと引っ張り強度が大きく、これをガラス板に接着すると、衝撃吸収性に富み、耐貫通性、飛散防止性に優れた材料が得られる。また、鎖状の分子構造を有するフッ素樹脂が、鎖状の分子構造のみからなるフッ素樹脂であることが、防火安全ガラスに高い難燃性及び強度を発揮させる上で好ましい。
樹脂層13の厚みとしては、0.05mm以上2mm以下の範囲が好ましい。樹脂層13の厚みが0.05mm未満であると、所望の耐衝撃性を得ることが困難な場合がある。樹脂層13の厚みが2mmを超えると、窓として用いる場合の高い透明性を確保することが困難になり、さらには火災時に樹脂が溶融するときに、煙が多く発生しやくなるため、防火上好ましくない。また、樹脂層13の厚みが2mmを超えると、防火安全ガラスを製造する際の経済性及び組み立て時の作業性が損なわれる。
樹脂層13は、透明または半透明であることが好ましいが、着色及び/または模様が施されていてもよい。また、紫外線の遮蔽性能や赤外線の遮蔽性能を有するものであってもよい。
本実施形態においては、テトラフルオロエチレン(TFE)40質量%、ヘキサフルオロプロピレン(HEP)20質量%、及びビニリデンフルオライド(VDF)40質量%の共重合体からなり、厚さ0.5mmの鎖状の分子構造のみからなるフッ素樹脂フィルムを用いている。
図1に示すように、下枠1は、収納部2から非加熱側に向かって略水平方向に延びる水平部3を有している。水平部3の非加熱側端部3aからは、さらに下方に傾斜して延びる傾斜部4が形成されている。傾斜部4の非加熱側端部からは略垂直方向、すなわち下方に向かって延びる壁部5が形成されている。
水平部3の非加熱側端部3aと、防火板ガラス10の非加熱側端面12aとの間の水平方向の距離Lは、本発明において10mm以下である。本実施形態において、距離Lは、7mmに設定されている。
また、傾斜部4の水平面に対する傾斜角度θは、本発明において、10°以上90°未満であることが好ましく、さらに好ましくは、20°以上90°未満である。本実施形態においては、30°に設定されている。
図3は、防火板ガラス10を製造する工程を説明するための断面図である。
図3(a)に示すように、耐熱板ガラス11の上に、樹脂層13となるフッ素樹脂フィルムを配置する。
次に、図3(b)に示すように、樹脂層13の上に、板ガラス12を載置する。次に、図3(c)のようにして積層した積層体の周囲に、真空用パッキン14を装着する。真空用パッキン14の溝部に積層体の端面を嵌め込むことにより装着する。真空用パッキン14を装着した状態で、オートクレーブ装置15に入れ、オートクレーブ装置15内を減圧ポンプによって減圧することにより、耐熱板ガラス11と樹脂層13との間、及び板ガラス12と樹脂層13との間に存在する気泡を取り除きながら、140℃、12kgf/cm2の環境下で、15分間保持して熱圧着処理を行う。
以上のようにして、図3(d)に示すような防火板ガラス10が得られる。
図1に示す下枠1は、厚み1.6mmのスチール板から作製している。
図2は、図1に示す防火板ガラス10の取付構造体の加熱側を炎20によって加熱したときの状態を示す断面図である。
図2に示すように、防火板ガラス10の加熱側において、炎20によって加熱されると、非加熱側の板ガラス12に亀裂12bが発生する。樹脂層13が加熱することによって生じる樹脂融液13aは、この板ガラス12に形成された亀裂12bを通り、板ガラス12の非加熱側表面12aに沿って流れ落ちる。樹脂融液13aは、水平部3まで流れ落ちた後、水平部3の上で溜まることなく、水平部3に連なる傾斜部4の傾斜に沿って下方に流れ落ちる。傾斜部4に沿って流れ落ちた樹脂融液13aは、さらに略垂直方向に延びる壁部5の表面に沿って下方に流れる。
従って、樹脂融液13aは水平部3及び傾斜部4に溜まることなく、加熱側から遠い位置に設けられている壁部5を通り、下方に流れ落ちる。従って、相対的に高い温度である水平部3及び傾斜部4の上に溜まることがない。このため、水平部3及び傾斜部4において樹脂融液13aが発火するのを防止することができる。従って、本発明によれば、加熱側からの加熱による非加熱側への延焼を有効に防止することができる。
図1に示す本実施形態の防火板ガラスの取付構造体について、以下のようにして防火性能を評価するため、加熱試験を行った。加熱試験の加熱条件は、加熱温度T(平均炉内温度)が、以下の式で求められる加熱時間Tとなるように設定した。
T=345log10(8t+1)+20
上記の式において、Tは平均炉内温度(℃)であり、tは試験の経過時間(分)である。本加熱試験では、加熱時間tを60分に設定している。
加熱開始後4分15秒で、板ガラス12に亀裂12bが発生し、この亀裂12bを通り、樹脂融液13aが下方に流れたが、水平部3及び傾斜部4においては、樹脂融液13aの溜まりが形成されず、非加熱側において発火は観察されなかった。
その後、加熱開始20分後において、耐熱板ガラス11と板ガラス12の間に溜まった樹脂融液13aが黒く変色し、その状態で加熱開始後60分まで経過した。
板ガラス12においては、破片の大部分が落下したが、耐熱板ガラス11においては、有害な変形などは発生しなかった。従って、本実施形態の防火板ガラス10の取付構造体によれば、加熱側からの加熱による非加熱側への延焼を有効に防止することができ、試験判定は合格となった。
比較のため、水平部3の非加熱側端部3aと防火板ガラス10の非加熱側端面12aとの間の水平の距離Lが、12mmである下枠1を作製し、上記と同様の加熱試験を行ったところ、水平部3の上に樹脂融液13aの溜まりが生じ、溜まった樹脂融液13aが発火した。従って、加熱側からの加熱による非加熱側への延焼を防止することができなかった。
本発明において、距離Lは、10mm以下であり、さらに好ましくは、2mm以上10mm以下であり、さらに好ましくは2mm以上8mm以下である。
上記実施形態においては、防火板ガラスとして、耐熱板ガラス11と板ガラス12とを樹脂層13を介して貼り合わせた防火板ガラス10を例にして説明したが、耐熱ガラスの非加熱側に飛散防止フィルムが貼り付けられた防火板ガラスに対しても本発明を適用することができる。
図6は、このような防火板ガラスを示す断面図である。図6に示すように、耐熱板ガラス11の上には、飛散防止フィルム16が貼り付けられている。飛散防止フィルム16の材質としては、樹脂層13と同様のものを用いることができ、また、その厚みも、樹脂層13と同様の厚みとすることが好ましい。
図6に示すような耐熱板ガラス11の表面に飛散防止フィルム16を貼り付けた防火板ガラス10を用いても、上記本発明の効果を得ることができる。
1…下枠
2…収納部
2a…セッティングブロック
2b…バックアップ材
2c…シーリング材
3…水平部
4…傾斜部
5…壁部
10…防火板ガラス
10a…下端部
11…耐熱板ガラス
12…板ガラス
12a…端面
12b…亀裂
13…樹脂層
13a…樹脂融液
14…真空用パッキン
15…オートクレーブ装置
16…飛散防止フィルム
20,21…炎
2…収納部
2a…セッティングブロック
2b…バックアップ材
2c…シーリング材
3…水平部
4…傾斜部
5…壁部
10…防火板ガラス
10a…下端部
11…耐熱板ガラス
12…板ガラス
12a…端面
12b…亀裂
13…樹脂層
13a…樹脂融液
14…真空用パッキン
15…オートクレーブ装置
16…飛散防止フィルム
20,21…炎
Claims (5)
- 加熱側からの加熱による非加熱側への延焼を防止するための防火板ガラスを枠体に取り付けた防火板ガラスの取付構造体であって、
加熱側に設けられる耐熱板ガラスと、非加熱側に設けられ、加熱された際に前記耐熱板ガラスより割れやすい板ガラスとを樹脂層を介して貼り合わせた防火板ガラス、または耐熱ガラスの非加熱側に飛散防止フィルムが貼り付けられた防火板ガラスと、
前記防火板ガラスの下端部を収納する収納部を有する下枠とを備え、
前記下枠が、前記収納部から非加熱側に向かって略水平に延びる水平部と、前記水平部から下方に傾斜して延びる傾斜部とを有し、前記水平部の非加熱側端部と前記防火板ガラスの非加熱側端面との間の水平方向の距離が、10mm以下となるように前記水平部及び前記傾斜部が形成されていることを特徴とする防火板ガラスの取付構造体。 - 前記傾斜部の傾斜角度が、水平面に対して10°以上90°未満であることを特徴とする請求項1に記載の防火板ガラスの取付構造体。
- 前記耐熱板ガラスが、−10×10−7/K以上10×10−7/K以下の熱膨張係数を有する耐熱結晶化ガラスからなることを特徴とする請求項1または2に記載の防火板ガラスの取付構造体。
- 前記樹脂層及び前記飛散防止フィルムが、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、紫外線硬化性樹脂、及びフッ素樹脂よりなる群より選ばれる少なくとも1種から形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防火板ガラスの取付構造体。
- 非加熱側に設けられる前記板ガラスの厚みが、加熱側に設けられる前記耐熱板ガラスの厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防火板ガラスの取付構造体。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20140603 |