JP6135159B2 - 凸版印刷装置及び有機el素子形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高分子有機ELディスプレイパネルの有機EL素子を形成するための凸版印刷装置と高分子有機EL素子の形成方法に関する。
有機エレクトロルミネッセンス(以下有機EL)素子は、対向する陽極と陰極との間に有機発光材料からなる有機発光層が形成された構造をもつ発光素子であり、電圧の印加によって陽極、陰極からそれぞれ正孔、電子が注入され、それらが有機発光層で再結合を起こすことにより発光するものであるが、効率の良い発光を得るためには、有機発光層の膜厚が重要な要素であり、数nmから数十nm程度で膜厚をコントロールする必要がある。さらに、これをディスプレイ化するには高精細にパターニングする必要がある。
図1は有機ELディスプレイパネルに用いられる発光素子体の断面の一例を模式的に示す図である。この有機EL表示体600は、基板(透光性基板)601と透明導電層602と正孔注入層603と有機発光層604と陰極層605と、画素を区画する隔壁606とで構成されるものである。
透光性基板601上に透明導電層602及び正孔注入層603を形成するには、公知の方法を用いれば良く、それらを形成した後に、正孔注入層603の上に有機発光層604を形成する。
透明導電層602、正孔注入層603、有機発光層604、陰極層605、および画素隔壁606は、透光性基板601に接着剤層607を介して封止キャップ609を貼りあわせられる。透光性基板601で密封した空間には乾燥剤608が備えられる。
有機発光層604に用いられる有機発光材料は、低分子系材料と高分子系材料に区分されており、有機発光層の形成方法は有機発光材料の種類によって異なる。
一般に低分子系材料は、抵抗加熱蒸着法(真空蒸着法)等によって透光性基板に薄膜を形成する。有機EL素子をフルカラー化する場合には、各色の画素形状に応じたパターンのマスクを用いて、異なる発光色の発光材料をそれぞれの画素に蒸着して形成する方法が採用されている。この方法は、薄膜形状を均一に形成するには優れた方法であるが、蒸着される透光性基板が大型になるとマスクのパターン精度が出難くなるという問題点がある。
一方で高分子系材料では、有機発光材料を溶剤に溶解あるいは分散させてインキ化し、これをウェットコーティング法によって薄膜を形成する方法が主に用いられている。ウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、突出コート法、ディップコート法等があるが、高精細なパターニングや、フルカラー化の色の塗り分けにこれらの方法を用いることは困難である。そこで、フルカラー化に有機発光材層をパターニングする手段としては、インキジェット法や印刷法によるパターン印刷が有効であると考えられる。
高精細パターニング方法のひとつとして、例えばインキジェットノズルから溶剤に溶かした有機発光材料を透光性基板上に噴出させ、透光性基板上で乾燥させることでパターンを形成するインキジェット方法がある(特許文献1)。この方法においては、ノズルから噴出されたインキ液滴は球状をしている為、透光性基板上に着弾する際にインキが円形状
に広がり、形成されたパターンの形状が直線性に欠けたり、あるいは着弾精度が悪くなってパターンの直線性が得られなかったりするという課題がある。
一方で印刷法によるパターン形成方法には、凸版印刷法、反転印刷法、スクリーン印刷法等が提案されている。有機EL素子やディスプレイでは、基材としてガラス基板を用いることが多く、グラビア印刷法等のように金属製等の硬い印刷版を用いる方法は不向きである。そのため、弾性を有するゴム製の印刷版を用いた印刷法や、ゴム製の印刷用ブランケットを用いたオフセット印刷法、弾性を有するゴムやその他の樹脂を主成分とした感光性樹脂版を用いる凸版印刷法等が適正な印刷法と考えられている。実際に、これらの印刷法の試みとして、オフセット印刷によるパターン印刷方法(特許文献2)、凸版印刷によるパターン印刷方法(特許文献3)などが提唱されている。特に凸版印刷による方法は、パターン形成精度や膜厚均一性などに優れ、印刷による有機EL素子の製造方法として最も適している。
凸版印刷法による有機EL素子の形成工程の一例を以下に示す。まず、微細な孔を有するアニロックスロールの表面にインキを塗布する。次に、アニロックスロール表面の余分なインキをドクターでかきとることによって、アニロックスロールの単位面積あたりのインキ塗布量を均一にする。その後、有機EL素子の画素形状に対応してパターニングされた印刷版上にアニロックスロール上のインキを転写する。最後に、印刷版上のインキ薄膜を透光性基板上に転写させることで有機EL素子の発光層を形成する。
図2は凸版印刷法によって発光層を形成する方法の一例を示す図である。図2中に示すインキングユニット703にはインキが貯留されている。アニロックスロール704にはこのインキングユニット703中においてインキが供給された後に、その表面の余分なインキがドクター705によって掻き落とされ、アニロックスロール704の孔内部にのみインキが蓄えられる。孔内部のインキは、アニロックスロール704と相対して回転する版胴702に巻かれている凸版701(樹脂凸版)に転移される。さらに、凸版701表面に形成された薄膜は矢印709の方向に回転する版胴702と相対して矢印708の方向に移動する基板定盤707上に載置された被印刷基板706上に転写される。
有機EL素子の発光層を凸版印刷法で形成する場合、印刷版上の転写パターンは有機EL素子の各画素を構成する複数の発光部のうち、同色発光部を形成するための転写パターンが複数配列された構成となっており、それぞれの発光色に発光する発光部を順次印刷していくことで有機EL素子の発光層を得ている。
前述したように、凸版印刷法ではアニロックスロールから樹脂凸版にインキを転写することで樹脂凸版上にインキの薄膜が形成されるが、印刷工程初期の樹脂凸版上のインキの薄膜は膜厚が一定でなく、被印刷基板への転写に対して不安定な状態なため、印刷工程初期の被印刷基板に形成されるインキ薄膜は膜厚均一性が低く、転写欠陥が発生するという問題があった。
そのため、凸版印刷法においては印刷前に予備転写を複数回実施することで樹脂凸版から被印刷基板への転写安定性を向上させている。凸版印刷法における有機EL素子作製のための予備転写はガラス基板に実施しているため、予備転写に使用されるインキ、ガラス基板、印刷回数の増加がランニングコスト増大につながるという課題がある。
また、ガラス基板へ予備転写実施後に有機EL素子基板へインキ転写する際には、表面材質が異なることから転写が安定するまでにさらに複数枚の基板が必要になる問題がある。
前記予備転写を有機EL素子基板に実施することも可能であるが、安定転写可能な状態を形成するまでに高価な有機EL素子基板へ複数枚の予備転写が必要になるためコスト増大につながるという課題がある。
特開平10−12377号公報 特開2001−93668号公報 特開2001−155858号公報
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、被印刷基板を用いずに予備転写を実施することによって、被印刷基板上に転写不良のない均一なパターンを安価に転写することができる凸版印刷装置と、この凸版印刷装置を用いて有機EL素子を形成する方法と、を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
凸版を印刷版として被印刷基板に有機発光層を印刷する凸版印刷装置であって、
版シリンダと、基板定盤と、インキ供給装置と、インキの転写安定性を向上させるための予備転写装置と、を備え、
版シリンダは、表面に転写パターンが形成されている前記凸版を周面に有するシリンダであって、
基板定盤は被印刷基板を載置する定盤であって、
インキ供給装置は、前記凸版にインキを供給する手段であって、
予備転写装置は予備転写ロールを備えており、この予備転写ロールと被印刷基板とから選択された一方が前記凸版に当接して、該凸版からインキが転写されるように構成されており、
前記予備転写ロールの表面には、インキが転写される方向と直交する方向に溝が形成されていることを特徴とする凸版印刷装置である。
また、請求項2に記載の発明は、
前記予備転写ロールの表面に形成される溝は、被印刷基板上のパターンと同じ大きさで、深さAが0.5μm≦A≦5.0μmであることを特徴とする請求項1記載の凸版印刷装置である。
また、請求項3に記載の発明は、
前記予備転写ロール表面の材質が被印刷基板表面と同材質であることを特徴とする請求項1または2に記載の凸版印刷装置である。
また、請求項4に記載の発明は、
前記予備転写装置は、前記予備転写ロールに加えて、貯液槽と、洗浄液内ドクターと、洗浄液外ドクターと、乾燥ノズルとを備えており、
前記貯液槽は洗浄液を貯えるものであり、前記予備転写ロールは、その上面が洗浄液から露出するとともに下面が洗浄液に浸漬するように配置されており、
前記洗浄液ドクターは、前記予備転写ロールの表面を擦るように洗浄液内に配置されており、
前記洗浄液外ドクターは、洗浄液内ドクターで擦られた予備転写ロールの表面を洗浄液の外で擦るように配置されており、
前記乾燥ノズルは、洗浄液外ドクターで擦られた予備転写ロールの表面に窒素またはク
リーンエアを吹き付けるものである、
ことを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の凸版印刷装置。
また、請求項5に記載の発明は、
前記貯液槽内に洗浄液を供給する洗浄液供給ノズルと、前記貯液槽から洗浄液をオーバーフローさせるオーバーフロー管とを備えることを特徴とする請求項4に記載の凸版印刷装置である。
また、請求項6に記載の発明は、
前記予備転写ロール面に前記凸版を接触させてインキを転写しているときに、前記洗浄液供給ノズルは、前記貯液槽内に供給する洗浄液を、インキが転写された前記予備転写ロールの表面に吐出することを特徴とする請求項5に記載の凸版印刷装置である。
また、請求項7に記載の発明は、
被印刷基板に有機発光層を印刷で形成する方法であって、
請求項1〜6のいずれかに記載の凸版印刷装置を用いて、前記有機発光層の形成用インキを前記予備転写ロールへ予備転写を行った後、前記被印刷基板上に有機発光層を形成するようにしたことを特徴とする有機EL素子形成方法である。
また、請求項8に記載の発明は、
前記凸版印刷装置の凸版から前記予備転写ロールへ前記有機発光層形成用インキの予備転写を1〜20回実施した後、前記有機発光層形成用インキを前記被印刷基板に転写することを特徴とする請求項7に記載の有機EL素子形成方法である。
請求項1、2、3に記載の発明によれば、予備転写ロール上に凸版と接触してインキ転写される方向と直交する方向に溝が形成されること、形成する溝の間隔や深さを適正化すること、によって凸版表面に予備転写ロールの溝形状に追従したインキ量でインキ薄膜が形成できる。それによって凹凸形状を有する被印刷基板へムラのない転写が可能になる。また、予備転写ロール上へのインキ転写時に凸版とのアライメントが不要となることから装置機構が複雑化することも回避できる。これによって被印刷基板を用いた予備転写と同等の転写性が得られ、予備転写による転写ムラのない高品質な有機ELパネルを安価に製造できる。
また、予備転写ロール表面に凸版と接触してインキ転写される方向と直交する方向に溝が形成されること、予備転写時にインキ薄膜が形成された凸版が接触する予備転写ロール表面が被印刷基板と同材質であること、によって被印刷基板表面への転写は予備転写と同等の転写安定性が得られる。これによって被印刷基板への予備転写後最初の転写においても転写バラツキが抑制された高品質な有機EL素子を形成することが可能になる。
請求項4に記載の発明によれば、予備転写ロールの表面に転写したインキは、洗浄液内ドクターにより洗浄液中で掻き落とされるので、掻き落とされた塗布液が乾燥して予備転写ロールを汚染することが無い。また、洗浄液内ドクターでインキが掻き落とされた予備転写ロール表面は、その表面に付着した洗浄液は洗浄液外ドクターで掻き落とされ、さらに窒素またはクリーンエアが吹き付けられるので確実に乾燥する。これによって予備転写ロール表面を清潔かつ乾燥状態で維持することが可能となる。
また、常に清潔かつ乾燥状態の予備転写ロールに予備転写することで、樹脂凸版上に形成されたインキが転写に最適の状態となる。これによって、膜厚均一性の高い有機EL素子を形成することが可能となる。
請求項5に記載の発明によれば、凸版上に形成されたインキ薄膜を予備転写ロール上に予備転写している間、貯液槽に洗浄液が供給されるとともに貯液槽から洗浄液をオーバーフローするので、貯液槽内の洗浄液は適宜置換され洗浄効果がなくなるほど汚れることはない。
請求項6に記載の発明によれば、インキが転写した予備転写ロール表面に貯液槽に供給される洗浄液をかけるので、より高い洗浄効果が得られる。
請求項7に記載の発明によれば、請求項1〜6記載の凸版印刷装置を用いて有機EL表示体の透光性基板に有機発光層を形成するので、予備転写装置を用いた有機発光層形成用インキの予備転写には、高価な基板が予備転写により消費されない。したがって、膜厚均一性の高い有機EL素子を安価なコストで透光性基板に形成することができる。
請求項8に記載の発明によれば、インキ供給された凸版から予備転写ロールへの予備転写を1〜20回実施する事で凸版から被印刷基板への転写安定性が向上する効果があり、これによって膜厚均一性の高い有機EL素子の形成が可能になる。
また、洗浄剤に浸漬された予備転写ロールは洗浄後に繰り返し使用可能であるため、予備転写で透光性基板を使用することなく膜厚均一性の高い有機ELパネルの作製が可能になる。これによって安価に高品位な製品を製造可能となる。
本発明の有機EL素子の形成に用いる凸版印刷装置の一例の断面図である。 本発明の有機EL素子の形成に用いる予備転写装置及び凸版印刷装置の断面図である。 本発明の有機EL素子の形成に用いる予備転写装置の一実施形態の断面図である。 本発明の有機EL素子の形成に用いる予備転写ロール表面形状の模式図の一例である。 本発明の有機EL素子の形成方法で製造された有機ELパネルの断面図である。 本発明の予備転写ロール201の表面形状の模式図の一例である。(a)は予備転写ロール201の断面を模式的に示す図。(b)は予備転写ロール201上に形成された溝を示す図。 本発明の予備転写工程のフローを示す図である。 本発明の凸版印刷装置により製造された有機EL素子の断面模式図の一例である。
図3は本発明の凸版印刷装置の概略構成を示す図である。本発明の凸版印刷装置120は版シリンダ102と、基板定盤107と、インキ供給装置110と、予備転写装置200と、を備えている。
版シリンダ102は、表面に転写パターンが形成されている凸版101を周面に有する版胴である。基板定盤107は被印刷基板106を載置する定盤である。インキ供給装置110は、インキングユニット103に貯留されているインキをアニロックスロール104で掻きあげた後に、アニロックスロール104の表面の余分なインキをドクター105によって掻き落とし、アニロックスロール104に付着しているインキをアニロックスロール104と相対して回転する凸版101に供給する。予備転写装置200は予備転写ロール201が備えられており、凸版101に当接して凸版からインキが予備転写され、予備転写することによって凸版101表面のインキを安定にした後、被印刷基板106への印刷が行われる。
次に、本発明の各構成を詳細に説明する。
版シリンダ(版胴)102は移動定盤107上に配置されるものであり、定位置に回転可能に支持されている。凸版101は、版胴102の周面に装着されている。アニロックスロール104は版胴102の回転軸と平行にかつ凸版101の表面の版面と接触するように設置されている。インキングユニット103はインキングユニット103の種類に応じて、アニロックスロール104とインキングユニット103の供給口とが接するよう設置されている。被印刷基板106は移動定盤107上に載置されている。
また、予備転写装置200は移動定盤107に伴って支持基台300上を移動する。そして、支持基台300が版胴102の下方に位置して水平に設置され、移動定盤107及び予備転写装置200は、支持基台300上にガイドを介して版胴102の回転軸と直角な水平方向(矢印111で示す)に移動可能なように設置されている。
上述した構成の凸版印刷装置では、被印刷基板106は摺動可能な移動定盤107上に固定され、凸版101のパターンと被印刷基板106のパターン形成位置との位置調整機構により、位置調整しながら印刷開始位置まで移動する。印刷開始位置からは被印刷基板106は凸版101の凸部と接して版胴102の回転と同期しながら移動し、凸版101から被印刷基板106の所定位置にパターニングしてインキが転写される。被印刷基板106にインキパターンが形成された後は、必要に応じてオーブンなどによる乾燥工程を設けることができる。
本発明に係るアニロックスロール104は、版胴102の周速と同一の周速で回転しながらインキを凸版101に供給するものである。アニロックスロール104はクロム製やセラミックス製のものを用いることができ、アニロックスロール104の外周面には、インキを保持するための細かい孔や凹部、セル状などのパターンが形成されていることが望ましい。
本発明に係るインキングユニット103は、アニロックスロール104の下方周面部分を浸漬するインキ溜りや、滴下型のインキングユニット、ファウンテンロール、ダイコーター、キャップコーターなどのコーターやそれらを組み合わせたものなどを用いることができる。また、インキングユニット103にインキを補充するインキ補充装置(図示せず)や、インキを保存するインキタンク(図示せず)が接続されていることが望ましい。
また、アニロックスロール104上に均一にインキを供給する為にドクター105を併設することが望ましい。ドクター105の形状は刃状のものやロール状のものなどがあり、そのいずれでもかまわない。また、インキングユニット103がインキ溜りの場合には、ドクター105は、アニロックスロール104の回転方向で、インキ溜りからアニロックスロール104と凸版101との当接点までの間に位置し、掻き取ったインキがインキ溜りに落ちるようにするのが好ましい。
図4は本発明に係る凸版101の断面を示す図である。凸版101は表面層101aと基材層101bとで構成されている。符号102は版胴である。
本発明の凸版101に用いられる表面層101aの材料は、印刷に対する機械的強度を有すれば良く、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの公知の合成樹脂、鉄や銅、アルミニウムといった公知の金属、またはそれらの積層
体を用いることができる。
凸版101を構成する基材層101bとしては、高い寸法安定性を保持するものが望ましく、基材として用いられる材料としては金属が好適に使用される。基材として用いられる金属としては鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、チタン、クロム、金、銀やそれらの合金、積層体などが挙げられるが、特に、加工性、経済性から鉄を主成分とするスチール基材やアルミ基材を好適に用いることができる。
凸版101の版面の表面層101aを樹脂で形成する場合、その版面上の凸部の形成方法としてはポジ型感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法、ネガ型感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法、射出成型、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、孔版印刷法、レーザーアブレーション法等の種々のパターン成型法を用いることができるが、パターンの高精細さの観点から、感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法が望ましく、また、要求精度の凸版を形成可能なネガ型感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法が最も望ましい。
感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法を凸部パターン形成法として適用する場合、基材層、反射抑制層、感光性樹脂層が順次積層されている板状感光性樹脂積層体から凸版101の凸部を形成することが最も望ましい。感光性樹脂層の成型方法は、射出成型法、突出成型法、ラミネート法、バーコート法、スリットコート法、カンマコート法などの公知の方法を用いることができる。
凸版101の版面の表面層101aの樹脂層は、用いる樹脂としてはインキに対する耐溶剤性があればよく、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴムの他に、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの合成樹脂やそれらの共重合体、セルロース誘導体などや、フッ素系エラストマーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ六フッ化ビニリデンやそれらの共重合体といったフッ素系樹脂から一種類以上を選択することができる。
本発明の実施の形態に係る凸版101は、上記のように表面層101aに凸部パターンが形成された凸版101を版胴102に巻きつけて使用されるが、版胴102を基材として直接版胴102に凸部パターンを形成しても良い。
使用するインキは、インキ供給装置103からアニロックスロール104への塗工及びアニロックスロール104から凸版101への転写を考慮して適した粘度に調整し、インキの粘度は10〜200mPa・sとすることが望ましい。本実施の形態で用いる凸版印刷法ではアニロックスロール104から凸版101上へのインキの転写が最初に行われるが、200mPa・s以上の粘度ではアニロックスロール104から凸版101上へインキが転写した後、凸版101上で十分インキがレベリングせず、ムラの原因になる。また、10mPa・s以下では、画素内ではじきムラが発生しやすく、ムラの原因になる。
アニロックスロール104から凸版101上に転写されるインキ量は、被印刷基板106に成膜する膜厚によって決定するが、インキ濃度とアニロックスロール104のセル容積を調整してすることで凸版101上に転写されるインキ量を一定にすることが望ましい。
上記のアニロックスロール104から凸版101へのインキの転写において、予備転写装置200が存在しなければ、印刷工程初期の凸版101上に供給されたインキ薄膜は膜厚が一定でなく、被印刷基板106への転写に対して不安定な状態なため、印刷工程初期に被印刷基板106への転写を行なうと、被印刷基板106上に形成されるインキ薄膜の膜厚均一性が悪く、転写欠陥が発生するおそれがある。そこで、被印刷基板106への予備転写を行なうようにすれば、上記の印刷工程初期における転写の問題を解消することができるが、しかし、この場合には予備転写に用いられる高価な被印刷基板106がコストの増大につながる。そのため、本発明の凸版印刷法を用いた有機EL素子の形成方法においては、被印刷基板106への転写の前に予備転写装置200に予備転写を行うことで、被印刷基板106を用いずに予備転写が行なえ、印刷工程初期の転写欠陥などの問題を解消することができる。
本発明に係る予備転写装置200の一例を図5に示す。予備転写装置200は、洗浄液213を貯える貯液槽208と、上部が洗浄液213から露出するとともに下部が洗浄液213に浸漬している予備転写ロール201と、予備転写ロール201の表面を擦るように洗浄液213内に配置された洗浄液内ドクター203と、洗浄液内ドクター203で擦られた予備転写ロール201の外周をさらに擦るように貯液槽208の外に配置された洗浄液外ドクター205と、洗浄液外ドクター205で擦られた予備転写ロール201の表面に窒素またはクリーンエアを吹き付ける乾燥ノズル207とを備え、インキ薄膜が形成された凸版101から予備転写ロール201の表面にインキを転写させるものである。
また、予備転写装置200は、貯液槽208内に洗浄液213を供給する洗浄液供給ノズル202と、貯液槽208から洗浄液213をオーバーフローさせるオーバーフロー管209と、を備えている。洗浄液供給ノズル202は、インキが転写された予備転写ロール201の表面の方に向けて配置されていることが望ましい。
また、予備転写装置200は、ドレンバルブ211を有するドレン管215を貯液槽208の底に備える。ドレンバルブ211が開くと、ドレン管215は、貯液槽208の底から洗浄液213を排出し、ドレンバルブ211が閉じると、洗浄液213が貯液槽208に貯液される。
前記予備転写ロール表面は、被印刷基板最表面と同材質を使用することが望ましい。また、予備転写ロール表面には被印刷基板同様に溝形状のパターンを有することが望ましい。このとき、予備転写ロール表面のパターンは凸版が接触する面の全領域にあることが望ましいが、その限りではない。
図6に予備転写ロール201の表面形状の模式図の一例を示す。図6(a)は予備転写ロール201の断面を模式的に示す図で、図6(b)は予備転写ロール201上に形成された溝を示す図である。溝の深さ401は、予備転写ロール201の転写方向と直交する方向に、被印刷基板106上に形成する有機層膜厚、版線幅、転写速度など必要な印刷特性に合わせて決めることが望ましく、溝の深さAが0.5μm≦A≦5.0μmの範囲で適宜選択すれば良いことを見出した。被印刷基板106に形成される画素隔壁高さと同等の溝深さ401としてもよいがそれに限定されるものではない。
また、予備転写ロール201表面に形成する溝の幅402は被印刷基板106に形成される画素間隔、即ち被印刷基板上のパターンと同じ大きさであればよい。そうすることによって、被印刷基板106のパターン内にインキを転写する場合と同じ条件で予備転写することが出来る。
図7は、予備転写工程のフローを示す図である。次に、予備転写装置200による凸版
101からの予備転写工程について図5の予備転写装置及び図7の予備転写工程のフロー図を用いて説明する。
はじめに貯液槽208に洗浄液213を貯めておく。次に回転している予備転写ロール201上にインキ薄膜が形成された凸版101からインキを転写させる。
このとき再び洗浄液供給ノズル202から洗浄液213を供給することが望ましい。これによって洗浄液213を予備転写ロール201に吐出しながら供給するとより高い洗浄効果が期待できる。
予備転写装置200は、版胴102上の凸版101と予備転写装置の予備転写ロールとが接する位置まで支持基台300上を移動定盤107と伴に移動する(S1)。その後、移動定盤107上の被印刷基板106への転写工程の前に、アニロックスロール104の回転と版胴102の回転と予備転写ロール201の回転とが同期しながら、アニロックスロール104から転写された凸版101上のインキが予備転写装置200の予備転写ロール201上へと転写される(S2)。
この凸版101から予備転写ロール201への予備転写工程は、印刷枚数や被印刷基板106上に形成する有機層膜厚、版線幅及びインキ粘度など必要な印刷特性値に合わせて予備転写回数を調整することが望ましく、転写安定性をより向上させるためには少なくとも2回以上実施することが望ましい。ここで、1回の予備転写工程とは、凸版101の端面から端面の全面が予備転写ロール201と接することをいう。
凸版101からインキが転写された予備転写ロール201は、予備転写ロール201の回転とともに洗浄液213中に浸漬され、予備転写ロール201のインキは貯液槽208内の洗浄液内ドクター203によって掻き落される。洗浄液213中であるため、掻き落されたインキが乾燥して予備転写ロール201や洗浄液内ドクター203を汚染することはない。
次に洗浄液213の外にある洗浄液外ドクター205によって、予備転写ロール201に付着した洗浄液213を掻き取る(S3)。その後、予備転写ロール201表面に向けて、乾燥ノズル207から窒素またはクリーンエアを吹き付けることによって、予備転写ロール201の表面を乾燥させる(S4)。
インキの予備転写中は常に洗浄液213が洗浄液供給ノズル202から供給されていることが望ましい。余剰分はオーバーフロー管209によりオーバーフローされるため、貯液槽208内の洗浄液213は適宜置換され洗浄効果がなくなるほど汚れることはない。洗浄液供給ノズル202と乾燥ノズル207は円筒管を多数並列させたものでも、予備転写ロール201の幅と同一の長さのスリットを持つノズル形状でも良い。
また、適時ドレンバルブ211を開きドレン管215から貯液槽208内の洗浄液213を排出し、洗浄液供給ノズル202により洗浄液213を貯液槽208に供給することで、貯液槽208内の洗浄液213を新液と入れ替えることもできることが望ましい。尚、図中符号204は洗浄液内ドクター203用のドクターホルダを示し、符号206は洗浄液外ドクター205用のドクターホルダを示す。また符合210は洗浄液供給バルブ、符号212は窒素又はクリーンエア供給バルブを示す。
上記ステップ(S2)からステップ(S4)を1〜20回実施した後(S5のYES)、凸版101から被印刷基板106への転写を行うため被印刷基板106が凸版101と接する位置まで基板定盤で移動される(S6)。その後、基板上に転写、印刷を行う(S7)。
図8に、本発明による凸版印刷装置により製造された有機EL素子体500の断面模式図を示す。
この有機EL表示体500は、透光性基板501と透明導電層502と正孔注入層503と有機発光層504と陰極層505と、画素を区画する隔壁506とを具備するものである。
この有機EL表示体500において、透光性基板501としては、ガラス基板やプラスチック製のフィルムまたはシートを用いることができる。プラスチック製のフィルムを用いれば、巻き取りにより有機発光素子の製造が可能となり、安価に素子を提供できる。そのプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等を用いることができる。また、透光性基板501の透明導電層502を成膜しない側に、セラミック蒸着フィルムやポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物等の他のガスバリア性フィルムを積層してもよい。
透明導電層502をなす材料としては、インジウムと錫の複合酸化物(以下ITOという)が挙げられる。また、アルミニウム、金、銀等の金属が半透明状に蒸着されたものや、ポリアニリン等の有機化合物などが挙げられる。
正孔注入層503をなす材料としては、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物等の導電性高分子材料を用いても良い。
有機発光層504は、電圧の印加により発光する層であり、図2の装置によって、本発明に係る凸版101を用いて形成された層であり、上述した塗工液が乾燥してできた層である。
陰極層505をなす材料としては、有機発光層504の発光特性に応じたものを使用すればよく、例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、イッテルビウム、アルミニウムなどの金属単体や酸化物、これらと金、銀などの安定な金属との合金などが用いられる。また、インジウム、亜鉛、錫などの導電性酸化物を用いることもできる。
透光性基板501上に透明導電層502及び正孔注入層503を形成するには、公知の方法を用いればよく、それらを形成した後に、その上に、図3に示す本発明の凸版印刷装置を用いて有機発光層504を形成し、更にその上に、陰極層505を形成する。陰極層505の形成には真空蒸着法の他にインキジェット法といった公知の手段を用いることができる。透明導電層502、正孔注入層503、有機発光層504、陰極層505、および画素隔壁506は、透光性基板501に接着剤層507を介して貼りあわせる方法を用いることができる。封止キャップ509と透光性基板501で密封した空間には乾燥剤508を備えることが出来る。
図3に示す本発明の凸版印刷装置を用いて有機発光層504を形成する際には、予備転写装置200への有機発光層形成用インキの予備転写を行った後に、有機発光層形成用インキの被印刷基板501への転写を行う。この場合、有機発光層形成用インキの予備転写は、1〜20回行うことが望ましく、その回数は適宜選択すれば良い。
以下に、本発明に係る有機EL素子500の形成方法の実施例及び比較例を示すが、こ
れに限るものではない。
実施例及び比較例1〜3の結果を表1に示す。
<実施例>
(被印刷基板501の作製工程)
被印刷基板501として、支持体上に設けられたスイッチング素子として機能する薄膜トランジスタと、その上方に形成された平坦化層と、平坦化層状に形成されてコンタクトホールによって前記薄膜トランジスタと導通が図られている画素電極とを備えたアクティブマトリクス基板を用いた。画素サイズの1辺は、150μm角であり、RGBのサブピクセルのサイズは50×150μmである。
前記アクティブマトリクス基板上に設けられている画素電極の端部を被覆し画素を区画するような形状で隔壁を形成した。この隔壁の形成は、日本ゼオン社製ポジレジストZWD6216−6をスピンコーターにてアクティブマトリクス基板の全面に乾燥後の膜厚が1μmであるように成膜した後、フォトリソグラフィーによって各サブピクセルの4辺に線幅20μmの隔壁を形成した。
画素電極の上にスピンコート法により正孔輸送層として、ポリ−(3,4)−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)1.5wt%水溶液を、100nmの膜厚で成膜した。さらに、この成膜されたPEDOT/PSS薄膜を、減圧下100℃で1時間乾燥することで、被印刷基板106を作製した。
(有機発光層形成用インキの作製工程)
赤色、緑色、青色(R、G、B)の3色からなる以下の高分子有機発光インキを、キシレンに溶解し調整した。赤色発光インキ(R)は、ポリフルオレン系誘導体のキシレン1wt%溶液(住友化学社製赤色発光材料、商品名Red1100)である。緑色発光インキ(G)は、ポリフルオレン系誘導体のキシレン1wt%溶液(住友化学社製緑色発光材料、商品名Green1300)である。青色発光インキ(B)は、ポリフルオレン系誘導体のキシレン1wt%溶液(住友化学社製青色発光材料、商品名Blue1100)である。
(凸版101の作製工程)
厚さ250μmの42ニッケル材を感光性樹脂による凸版101の基材として、前記基材の上に黒色顔料を混錬したアクリルバインダー樹脂溶液を乾燥膜厚が10μmになるように塗布して乾燥し、反射防止層を形成した。
水溶性ポリアミドを主成分とし、ラジカル重合性モノマーとしてとしてジペンタエリスリトールヘキサキスアクリレート、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を混錬した感光性樹脂組成物が、前記基材の表面に版材の総厚が310μmとなるように溶融塗工したものを感光性樹脂層とし、ポリビニルアルコール溶液を乾燥膜厚1μmになるように塗布したポリエチレンテレフタレートフィルム(フィルム厚み125μm:帝人デュポンフィルム社製)をラミネートした。これにより、感光性樹脂凸版を形成した。
合成石英基材のクロムマスクを凸版101のパターンの原版とし、このマスクをプロキシミティ露光装置にセットしたものを用いて感光性樹脂凸版を露光することで、所望のパ
ターンが形成された凸版101を作製した。
(有機発光層形成用インキの印刷工程)
凸版101を枚葉式の印刷装置の版胴102に固定した。次に、前記高分子有機発光インキをインキパン103に供給し、アニロックスロール104を回転させることで全面にインキングした。アニロックスロール104は600ライン/インチのアニロックスロールを使用した。その後、アニロックスロール104上の余剰インキをドクター105でかき取り、凸版101の凸パターン部にインキングした。
前述のようにインキングされた凸版101上のインキを被印刷基板106に転写する前に、回転させた予備転写ロール201上に予備転写する。予備転写ロールは表面が被印刷基板と同形状にパターニングされ、その表面を被印刷基板最表面と同材質で被覆した予備転写ロールを使用した。予備転写後、上記の有機発光層形成用インキの印刷工程と同様に凸版101の凸パターン部をインキングした。本実施例ではこのような予備転写を10回実施した。
前述のように予備転写を実施した後、再度有機発光層形成用インキの印刷工程を繰り返し、インキングされた凸版101を被印刷基板106に押し当てることで、被印刷基板106の上にストライプパターンを印刷した。この工程を赤色有機発光層、緑色有機発光層、青色有機発光層それぞれに繰り返すことで有機発光層パターンを得た。各色について印刷をおこなった後、オーブン内にて130℃で1時間乾燥を行った。
前記実施例の場合は、表1に示すように形成されたパターン各色における印刷1枚目のパネル内平均膜厚は60nmであり、パネル内膜厚rangeは7.2nmであった。
また、印刷により形成した高分子有機発光層上に真空蒸着法によってカルシウムを10nm、銀を300nm成膜し、その後ガラスキャップを用いて封止することで有機ELパネル400を作製した。
前記有機ELパネル400について点灯表示確認を行ったところ、パネル全面において転写ムラの無い良好な発光特性が得られた。
<比較例1>
被印刷基板最表面と同材質であるが、表面に溝パターンが形成されていない予備転写ロール201を使用して、前述の実施例同様に有機ELパネルを作製した。
上記のように形成されたパターン各色における印刷1枚目のパネル内平均膜厚は、75nmであり、パネル内膜厚rangeは12nmであった。このようにして作製した有機ELパネルについて点灯表示確認を行ったところ、パネル内に膜厚差による発光輝度ムラが確認された。上記パネル作製後に連続して作製した印刷2枚目のパネル内平均膜厚は65nmであり、パネル内膜厚rangeは8.2nmであった。また、このようにして作製した有機ELパネルについて点灯表示確認を行ったところ、パネル全面において転写ムラの無い良好な発光が得られた。
<比較例2>
予備転写を予備転写ロール201ではなくガラス基板上に実施して、前述の実施例同様に有機ELパネルを作製した。
上記のように形成されたパターン各色における印刷1枚目のパネル内平均膜厚は77nmであり、パネル内膜厚rangeは15nmであった。このようにして作製した有機E
Lパネルについて点灯表示確認を行ったところ、パネル内に膜厚差による発光輝度ムラが確認された。上記パネル作製後に連続して作製した印刷2枚目のパネル内平均膜厚は64nmであり、パネル内膜厚rangeは7.5nmであった。また、このようにして作製した有機ELパネルについて点灯表示確認を行ったところ、パネル全面において転写ムラの無い良好な発光が得られた。
<比較例3>
予備転写を実施することなく、前述の実施例同様に有機EL素子を作製した。
上記のように形成されたパターン各色のパネル内平均膜厚は35nmであり、パネル内膜厚rangeは25nmであった。また、このようにして作製した有機ELパネルについて点灯表示確認を行ったところ、転写不具合に起因する発光不良や発光ムラが確認された。
以上のように、溝パターンのある予備転写ロールに予備転写を行った実施例では、溝パターンのない予備転写ロールへ予備転写した比較例1や、ガラス基板に予備転写を行った比較例2や、予備転写を行わなかった比較例3に較べて転写1枚目から発光特性が良好な結果が得られた。
以上のように本発明による凸版印刷装置及び有機EL素子の形成方法によれば、被印刷基板を用いずに予備転写を実施することによって、被印刷基板の無駄を省き、転写不良のない均一なパターンを転写することができるため、品質の良い有機EL素子を安価に作製することが出来る。
101・・・凸版
101a・・・凸版101の表面層
101b・・・凸版101の基材層
102・・・版胴
103・・・インキングユニット
104・・・アニロックスロール
105・・・ドクターブレード
106・・・被印刷基板
107・・・移動定盤
111・・・移動定盤107の移動方向
120・・・凸版印刷装置
200・・・予備転写装置
201・・・予備転写ロール
202・・・洗浄液供給ノズル
203・・・洗浄液内ドクター
204・・・ドクターホルダ
205・・・洗浄液外ドクター
206・・・ドクターホルダ
207・・・乾燥ノズル
208・・・貯液槽
209・・・オーバーフロー管
210・・・洗浄液供給バルブ
211・・・ドレンバルブ
212・・・窒素またはクリーンエア供給バルブ
213・・・洗浄液
214・・・転写されたインキ
215・・・ドレン管
300・・・支持基台
401・・・予備転写ロール201表面の溝の深さ
402・・・予備転写ロール201表面の溝の幅
500・・・有機EL表示体
501・・・透光性基板
502・・・透明導電層
503・・・正孔注入層
504・・・有機発光層
505・・・陰極層
506・・・画素隔壁
507・・・接着剤層
508・・・乾燥剤
509・・・封止キャップ
600・・・有機EL表示体
601・・・基板(透光性基板)
602・・・透明導電層
603・・・正孔注入層
604・・・有機発光層
605・・・陰極層
606・・・画素隔壁
607・・・接着剤層
608・・・乾燥剤
609・・・封止キャップ
701・・・凸版
702・・・版胴
703・・・インキングユニット
704・・・アニロックスロール
705・・・ドクターブレード
706・・・被印刷基板
707・・・移動定盤
708・・・移動定盤707の移動方向
709・・・版胴702の回転方向

Claims (8)

  1. 凸版を印刷版として被印刷基板に有機発光層を印刷する凸版印刷装置であって、
    版シリンダと、基板定盤と、インキ供給装置と、インキの転写安定性を向上させるための予備転写装置と、を備え、
    版シリンダは、表面に転写パターンが形成されている前記凸版を周面に有するシリンダであって、
    基板定盤は被印刷基板を載置する定盤であって、
    インキ供給装置は、前記凸版にインキを供給する手段であって、
    予備転写装置は予備転写ロールを備えており、この予備転写ロールと被印刷基板とから選択された一方が前記凸版に当接して、該凸版からインキが転写されるように構成されており、
    前記予備転写ロールの表面には、インキが転写される方向と直交する方向に溝が形成されていることを特徴とする凸版印刷装置。
  2. 前記予備転写ロールの表面に形成される溝は、被印刷基板上のパターンと同じ大きさで、深さAが0.5μm≦A≦5.0μmであることを特徴とする請求項1記載の凸版印刷装置。
  3. 前記予備転写ロール表面の材質が被印刷基板表面と同材質であることを特徴とする請求項1または2に記載の凸版印刷装置。
  4. 前記予備転写装置は、前記予備転写ロールに加えて、貯液槽と、洗浄液内ドクターと、
    洗浄液外ドクターと、乾燥ノズルとを備えており、
    前記貯液槽は洗浄液を貯えるものであり、前記予備転写ロールは、その上面が洗浄液から露出するとともに下面が洗浄液に浸漬するように配置されており、
    前記洗浄液ドクターは、前記予備転写ロールの表面を擦るように洗浄液内に配置されており、
    前記洗浄液外ドクターは、洗浄液内ドクターで擦られた予備転写ロールの表面を洗浄液の外で擦るように配置されており、
    前記乾燥ノズルは、洗浄液外ドクターで擦られた予備転写ロールの表面に窒素またはクリーンエアを吹き付けるものである、
    ことを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の凸版印刷装置。
  5. 前記貯液槽内に洗浄液を供給する洗浄液供給ノズルと、前記貯液槽から洗浄液をオーバーフローさせるオーバーフロー管とを備えることを特徴とする請求項4に記載の凸版印刷装置。
  6. 前記予備転写ロール面に前記凸版を接触させてインキを転写しているときに、前記洗浄液供給ノズルは、前記貯液槽内に供給する洗浄液を、インキが転写された前記予備転写ロールの表面に吐出することを特徴とする請求項5に記載の凸版印刷装置。
  7. 被印刷基板に有機発光層を印刷で形成する方法であって、
    請求項1〜6のいずれかに記載の凸版印刷装置を用いて、前記有機発光層の形成用インキを前記予備転写ロールへ予備転写を行った後、前記被印刷基板上に有機発光層を形成するようにしたことを特徴とする有機EL素子形成方法。
  8. 前記凸版印刷装置の凸版から前記予備転写ロールへ前記有機発光層形成用インキの予備転写を1〜20回実施した後、前記有機発光層形成用インキを前記被印刷基板に転写することを特徴とする請求項7に記載の有機EL素子形成方法。
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