JP6133059B2 - シンチレータパネルの製造方法、シンチレータパネル、及び放射線検出器 - Google Patents

シンチレータパネルの製造方法、シンチレータパネル、及び放射線検出器 Download PDF

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Description

本発明は、シンチレータパネルの製造方法、シンチレータパネル、及び放射線検出器に関するものである。
従来、二次元光センサの画素毎に独立したシンチレータを備える装置が知られている。例えば、特許文献1には、基板に複数の画素が形成された光検出パネルを備え、光検出パネル上には複数の画素の少なくとも1つの画素ごとに複数の凸状パターンが形成され、複数の凸状パターンの上面にはシンチレータの柱状結晶がそれぞれ結晶成長されている放射線検出装置が記載されている。
また、特許文献2には、二次元的に配列した複数の画素単位を備え、この画素単位のそれぞれが、所定の入力面から入射したX線を光に変換するシンチレータ部を有し、隣接する画素単位のシンチレータ部同士間に、シンチレータ部同士が連続しない中断領域を設けたX線平面検出器が記載されている。この中断領域は、シンチレータ層にレーザ光を照射してシンチレータ層の全幅にわたる溝を形成することによって形成されている。特許文献3には、レーザアブレーションによって形成された溝により、光学的に独立した画素に分割されたシンチレータ層を備えるX線イメージング装置が記載されている。
特許第2547908号公報 特開2003−167060号公報 米国特許第6921909号明細書
特許文献1、2に記載の装置では、二次元光センサの画素毎に独立したシンチレータを形成することにより、二次元光センサの全面にシンチレータを形成する場合と比較して、シンチレータ部でのクロストークに起因したMTFの低下の抑制等を図っている。
ところで、シンチレータパネルの感度特性を向上させるために、シンチレータの膜厚を大きくすることが要請される場合がある。しかしながら、シンチレータの柱状結晶は、その柱径が結晶成長の基点から離れるにつれて拡大するように成長する性質があるため、特許文献1に記載の放射線検出装置のように、凸状パターンの上面にシンチレータを結晶成長させた場合には、シンチレータの膜厚が大きくなると、隣接するシンチレータ同士が接触してしまうおそれがある。シンチレータの独立性を保つためには凸状パターンの形成ピッチを大きくすることが考えられるが、この場合には開口率が低下してしまう。一方、特許文献2に記載のX線平面検出器では、シンチレータ層の全厚にわたる溝を形成することから、レーザ光の照射によって生じるシンチレータの柱状結晶の劣化がシンチレータ層の全厚に及んでしまい、輝度低下が大きくなるおそれがある。更に、特許文献3に記載されているように、レーザアブレーションによって厚膜のシンチレータ層を加工する場合、シンチレータ層のレーザ光入射部分がレーザ光加工先端部分よりも広範囲にわたって加工される結果、レーザ光によって形成される溝がくさび形状になる傾向にある。このため、シンチレータ層の厚みが増すほどレーザ光入射部分の加工範囲が広がるので、必要な溝幅以上にシンチレータ層が失われてX線吸収性能が低下してしまうおそれがある。
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、結晶の劣化を抑制しつつ厚膜化が可能なシンチレータパネルの製造方法、シンチレータパネル、及び放射線検出器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係るシンチレータパネルの製造方法は、放射線をシンチレーション光に変換するためのシンチレータパネルの製造方法であって、表面及び裏面を有する基板の表面上に、裏面から表面に向かう所定の方向に突出する複数の凸部と、凸部によって規定される凹部とを形成する第1の工程と、シンチレータ材料の柱状結晶を結晶成長させることにより、基板の凸部のそれぞれから所定の方向に沿って延びる第1のシンチレータ部を形成する第2の工程と、凹部に沿ってレーザ光を走査することによって、互いに隣接する凸部から延びる第1のシンチレータ部同士の接触部分にレーザ光を照射し、互いに隣接する凸部から延びる第1のシンチレータ部同士を互いに分離する第3の工程と、を含む、ことを特徴とする。
このシンチレータパネルの製造方法では、シンチレータ材料の柱状結晶を結晶成長させることにより、基板の凸部のそれぞれから所定の方向に沿って延びる第1のシンチレータ部を形成している。このため、第1のシンチレータ部は、例えば、凸部の上面を基点とする所定の高さまでは互いに分離した状態で形成されると共に、所定の高さ以上では、凹部上で互いに接触した状態で形成される。したがって、凹部に沿ってレーザ光を走査することによって、第1のシンチレータ部同士の接触部分にレーザ光を照射して第1シンチレータ同士を互いに分離すれば、厚膜化された第1のシンチレータ部が得られる。また、この第1のシンチレータ部の分離に際して、その接触部分のみにレーザ光を照射すればよいので、結晶の劣化を抑制することができる。更に、レーザ加工によって形成される溝幅が、クロストーク抑制に必要な溝幅よりも大きくなることを抑制できる。
本発明に係るシンチレータパネルの製造方法においては、第3の工程よりも前に、基板の凹部の底面上に第2のシンチレータ部を形成する第4の工程を更に含むものとすることができる。この場合、凹部の底面上に形成される第2のシンチレータ部が保護膜として機能するため、レーザ光を照射する際に基板上に設けられる配線等の破損を防止することができる。
本発明に係るシンチレータパネルの製造方法においては、第1の工程においては、基板の表面上に二次元状に配列されるように凸部を形成することによって、基板の表面上に格子状に規定される凹部を形成し、第4の工程においては、凹部の交差領域における第2のシンチレータ部の厚さを、交差領域を除く位置における第2のシンチレータ部の厚さよりも大きくすることができる。この場合、レーザ光を格子状の凹部に沿って走査したときに、2回レーザ光が照射される凹部の交差領域において、相対的に厚さの大きな第2のシンチレータ部が保護膜として機能するので、基板上に設けられる配線等の破損をより確実に防止することができる。
シンチレータパネルは、放射線をシンチレーション光に変換するためのシンチレータパネルであって、表面及び裏面を有すると共に、裏面から表面に向かう所定の方向に表面から突出する複数の凸部と、凸部によって規定される凹部とが形成された基板と、凸部のそれぞれから所定の方向に沿って延びると共に、互いに分離した複数の第1のシンチレータ部と、を備え、第1のシンチレータ部は、それぞれ、凸部上に複数の柱状結晶を結晶成長させることにより形成され、第1のシンチレータ部を構成する柱状結晶は、凹部の底面上の少なくとも一部において、レーザ光の照射により互いに融着している、ことを特徴とする。
このシンチレータパネルでは、複数の柱状結晶が互いに融着される範囲が凹部の底面上の少なくとも一部に限られているため、結晶の劣化が少ない。
本発明に係るシンチレータパネルにおいては、基板の凹部の底面上に形成された第2のシンチレータ部を更に備えるものとすることができる。この場合、その製造時において、例えば凹部に沿ってレーザ光を走査して第1のシンチレータ部同士を分離する際に、凹部の底面上に形成された第2のシンチレータ部が保護膜として機能するので、基板上に設けられる配線等の破損を防止することができる。
本発明に係るシンチレータパネルにおいては、凸部は、基板の表面上に二次元状に配列されており、凹部は基板の表面上において凸部によって格子状に規定されており、凹部の交差領域における第2のシンチレータ部の厚さは、交差領域を除く位置における第2のシンチレータ部の厚さよりも大きくすることができる。この場合、上述したように、その製造時において、例えば凹部に沿ってレーザ光を走査して第1のシンチレータ部同士を分離する際に、2回レーザ光が照射される交差領域において、相対的に厚さの大きな第2のシンチレータ部が保護膜として機能することにより、基板を十分に保護することができる。
シンチレータパネルにおいては、第2のシンチレータ部の少なくとも一部は、レーザ光の照射により溶融した後に固形化しているものとすることができる。
放射線検出器は、上述したシンチレータパネルを備え、基板は、第1のシンチレータ部に光学的に結合されるように配列された複数の光電変換素子を有するセンサパネルである、ことを特徴とする。この放射線検出器は、上述したように結晶の劣化を抑制しつつ厚膜化が可能なシンチレータパネルを備えるので、MTF等の特性を向上することができる。特に、基板が光電変換素子を含むセンサパネルであるので、その光電変換素子上に直接凸部を形成し、その凸部の上にシンチレータ部を形成することができる。このため、別途用意したシンチレータパネルとセンサパネルとを張り合わせる必要がない。
本発明によれば、結晶の劣化を抑制しつつ厚膜化が可能なシンチレータパネルの製造方法、シンチレータパネル、及び放射線検出器を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るシンチレータパネルの斜視図である。 図1に示されたシンチレータパネルの部分的な平面図である。 図2のIII−III線に沿った断面図である。 図2のIV−IV線に沿った断面図である。 本発明の一実施形態に係るシンチレータパネルの製造手順を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係るシンチレータパネルの製造手順を示す部分的な平面図である。 本発明の一実施形態に係るシンチレータパネルの製造手順を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係るシンチレータパネルの製造手順を示す部分的な平面図である。
以下、本発明の一実施形態に係るシンチレータパネルの製造方法及びこの製造方法により製造されたシンチレータパネルについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下の実施形態に係るシンチレータパネルは、入射したX線等の放射線Rを可視光等のシンチレーション光に変換するためのものであり、例えば、マンモグラフィー装置、胸部検査装置、CT装置、歯科口内撮影装置、及び、放射線カメラ等において、放射線イメージング用のデバイスとして用いることができる。
まず、本実施形態に係るシンチレータパネルについて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るシンチレータパネルの斜視図である。図2は、図1に示されたシンチレータパネルの部分的な平面図である。図3は、図2に示されたシンチレータパネルのIII−III線に沿った断面図である。図4は、図2に示されたシンチレータパネルのIV−IV線に沿った断面図である。図1〜4に示されるように、シンチレータパネル1は、矩形状の基板10を備えている。
基板10は、互いに対向する表面10a及び裏面10bを有する。基板10は、表面10aに形成された凹凸パターンPaを有している。基板10の材料としては、例えば、AlやSUS(ステンレス鋼)等の金属、ポリイミドやポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等の樹脂フィルム、アモルファスカーボンや炭素繊維強化プラスチック等のカーボン系材料、FOP(ファイバオプティックプレート:直径が数ミクロンの多数の光ファイバを束ねた光学デバイス(例えば、浜松ホトニクス社製J5734))等を用いることができる。凹凸パターンPaの材料としては、例えば、エポキシ系樹(日本化薬(株)製KMPRやSU−8等)といった高アスペクトレジスト、シリコン、及び、ガラス等を用いることができる。
特に、凹凸パターンPaを構成する凸部の材料は、後述するシンチレータ部20で生じるシンチレーション光に対して透過性を有する材料とすることができ、その場合、基板10の裏面10b側においてシンチレータパネル1と光電変換素子を有するセンサパネルとを張り合わせて放射線検出器を構成することもできる。また、凹凸パターンPaは、いずれも後述するシンチレータ部20と同一のシンチレータ材料(例えば、CsI(ヨウ化セシウム))により構成することができる。
凹凸パターンPaは、複数の凸部11と、凸部11によって規定された凹部12とによって形成されている。つまり、基板10の表面10aには、複数の凸部11と凹部12とが形成されている。凸部11のそれぞれは、基板10の裏面10bから表面10aに向かう所定の方向(ここでは、放射線Rの入射方向、及び、基板10の表面10aや裏面10bに直交する方向)に沿って表面10aから突出している。凸部11のそれぞれは、直方体状に形成されている。凸部11は、基板10に平行であって互いに直交するX軸及びY軸に沿って、基板10の表面10a上に二次元アレイ状に周期的に配列されている。したがって、凸部11によって規定される凹部12は、平面視で矩形の格子状を呈する溝である。以下では、凹部12のX軸方向に延びる領域とY軸方向に延びる領域とが交差する領域を交差領域Cという。
このような凹凸パターンPaの各寸法は、例えば、凸部11のピッチ(凸部11の形成周期)Pを127μm程度とした場合には凹部12の幅(溝幅)Wを45〜200μm程度とし、凸部11のピッチPを200μm程度とした場合には凹部12の幅Wを50μm〜70μm程度とすることができる。また、凸部11の高さHは、2.5μm〜50μm程度とすることができる。特に、本実施形態においては、凸部11のピッチPを200μm程度とし、凹部12の幅Wを70μm程度とし、凸部11の高さHを15μm程度としている。
シンチレータパネル1は、凸部11のそれぞれの上に形成された複数のシンチレータ部(第1のシンチレータ部)20と、凹部12内に形成されたシンチレータ部(第2のシンチレータ部)30,30aとを備えている。シンチレータ部20同士は互いに離間している(すなわち、シンチレータパネル1は、分離型シンチレータ部を有している)。シンチレータ部20は、例えばCsI(ヨウ化セシウム)といった柱状結晶を形成するシンチレータ材料により形成することができる。シンチレータ部20の高さ(シンチレータ膜厚)Tは、例えば、100μm〜600μm程度とすることができる。
シンチレータ部20は、凸部11のそれぞれから所定の方向に沿って延びると共に、互いに分離している。シンチレータ部20は、第1の部分21と、第2の部分22とを有する。第1の部分21は、平面視において、凸部11の形状に対応するように矩形状を呈している。第2の部分22は、平面視において、第1の部分21の側部を覆うように矩形環状を呈している。第1の部分21は、凸部11の上面11aから放射線Rの入射方向(基板10に対して略垂直な方向)に沿って延在している。より具体的には、第1の部分21は、凸部11の上面11aから放射線Rの入射方向に沿って結晶成長して形成されたシンチレータ材料の複数の柱状結晶C1から構成されている。
第2の部分22は、凸部11の側面11bから放射線Rの入射方向に沿って延在して第1の部分21と接触している。第2の部分22は、凸部11の側面11bから側方に張り出すように形成され、凹部12の底面上に位置している。第2の部分22は、第1の部分21と一体的に形成されている(第1の部分21と接合されている)。より具体的には、第2の部分22は、凸部11の側面11bから放射線Rの入射方向(基板10に対して略垂直な方向)に交差する方向(所定の方向に交差する方向)に沿って結晶成長して形成されたシンチレータ材料の複数の柱状結晶C2から構成されており、全体として放射線Rの入射方向に沿って延びている。柱状結晶C2は、凸部11の側面11bの全体に形成されている。
第1の部分21を構成する柱状結晶C1は、凸部11の上面11aから離れるにつれて拡径するテーパ状を呈している。つまり、柱状結晶C1の柱径は、凸部11の上面11aから離れるにつれて(すなわち、上面11a側の基端部から反対側の先端部に向けて)拡大している。第2の部分22を構成する柱状結晶C2は、凸部11の側面11bから離れるにつれて拡径するテーパ状を呈している。つまり、柱状結晶C2の柱径は、凸部11の側面11bから離れるにつれて(すなわち、側面11b側の基端部から反対側の先端部に向けて)拡径している。
特に、柱状結晶C2の柱径の拡大率は、柱状結晶C1の柱径R1の拡大率よりも大きい。したがって、例えばそれぞれの先端部において、柱状結晶C1の柱径よりも柱状結晶C2の柱径の方が相対的に大きくなる。なお、上述した凸部11の高さHは、少なくとも第1の部分21を構成する柱状結晶C1及び第2の部分22を構成する柱状結晶C2の基端部における柱径よりも大きい。したがって、凸部11の上面11a上又は側面11b上には、複数の柱状結晶C1又は柱状結晶C2が形成されている。
第2の部分22は、上部22aと下部22bとを有している。上部22aは、第2部分22のうち、シンチレータ部20の高さ方向の途中位置である高さT1よりも先端側を構成する部分である。下部22bは、第2部分22のうち、高さT1よりも基端側を構成する部分である。上部22aの先端側の一部は、融着部22cとされている。融着部22cは、複数のシンチレータ部20を互いに分離するために照射されるレーザ光によって形成される領域であり、上部22aの外側面に形成されている。互いに隣接するシンチレータ部20において、融着部22cは、互いに離間している。また、互いに隣接するシンチレータ部20の下部22bは、互いに離間している。融着部22cにおいては、複数の柱状結晶C2が互いに融着しており、柱状構造が崩れている。また、融着部22cにおいては、レーザ光の照射により柱状結晶C2の先端部が潰れている。
このように、複数のシンチレータ部20は、レーザ光の照射により互いに分離されており、互いに隣接するシンチレータ部20の間には隙間Sが形成されている。隙間Sは、互いに隣接するシンチレータ部20及び凹部12の底面によって画成されている。隙間Sは、隙間Sを介して対向する上部22aの間において間隔D1を有しており、隙間Sを介して対向する下部22bの間において間隔D1よりも広い間隔D2を有している。ただし隙間Sは、レーザ光入射位置(シンチレータ部20の先端部の間の位置)Aにおいて、シンチレータ部20の先端部に向かうにつれて間隔が広くなるくさび型形状を呈している。つまり、隙間Sは、全体として高さ方向の途中位置(隙間Sを介して対向する上部22aの間の位置)が窄んだ砂時計形状を呈している。
シンチレータ部30,30aは、凹部12内において、特に凹部12の底面12a上に形成されている。シンチレータ部30は、平面視で格子状の凹部12のうち格子点に対応する領域とは異なる領域内、つまり凹部12の交差領域Cを除いた領域に形成されている。シンチレータ部30aは、平面視で格子状の凹部12のうち格子点に対応する領域内、すなわち凹部12の交差領域Cに形成されている。シンチレータ部30,30aは、凹部12の全体にわたって一体に形成されている。シンチレータ部30の高さH1は、凸部11の高さHよりも低くなるように形成されている。また、シンチレータ部30aの高さH2は、凸部11の高さHよりも高くなるように形成されている。つまり、シンチレータ部30aの厚さは、シンチレータ部30の厚さよりも大きく形成されている。シンチレータ部30,30aは、後述するレーザ光の照射から基板10を保護する保護膜として機能する。
シンチレータ部30,30aは、シンチレータ部20の第1の部分21及び第2の部分22と同様に、CsIといったシンチレータ材料の複数の柱状結晶により構成されている。シンチレータ部30,30aを構成する各柱状結晶は、凹部12の底面12aから放射線Rの入射方向に沿って結晶成長されて形成されている。シンチレータ部30は、凹部12の隅(凸部11の側面11bと凹部12の底面12aとの接続部分)から凹部12の幅方向の中心に向かって厚みが増すような凸状(断面略三角形状)を呈している。シンチレータ部30aは、凹部12の交差領域Cの中心点において最も厚く、この中心点から離れるについて厚みが減るような凸状(略円錐形状)を呈している。なお、シンチレータ部30,30aは、凸部11の側面11bから延びる第2の部分22の柱状結晶C2を凹部12の底面12a側から支えるように、第2の部分22と接触していてもよい。因みに、第2の部分22におけるシンチレータ部30と接触している部分の柱状結晶の柱径は、第1の部分21の柱状結晶C1の柱径R1よりも小さい。シンチレータ部30,30aは、その一部又は全体がレーザ光の照射により溶融した後に固形化していてもよい。
次に、図5〜8を参照して、シンチレータパネル1の製造方法について説明する。まず、基板10の表面10a上に、複数の凸部11と、凸部11によって規定される凹部12とを形成する(第1の工程)。この凹凸パターンPaの形成に際しては、基板10の元となる基材を用意し、図5に示されるように、基材上に凹凸パターンPaの材料を塗布乾燥によって形成する。続いて、フォトリソグラフィによってその基材に凹凸パターンPaを形成して所望の寸法の凹凸パターンPaを有する基板10を作製する(第1の工程)。この際、凸部11が基板10の裏面10bから表面10aに向かう所定の方向(ここでは、放射線Rの入射方向、及び、基板10の表面10aや裏面10bに直交する方向)に突出するように凹凸パターンPaを形成する。また、凸部11をX軸方向、Y軸方向に沿った二次元状に配列することにより、図6に示されるように、平面視で矩形の格子状を呈する凹部を形成する。なお、基材上にスクリーン印刷によって凹凸パターンPaを形成してもよい。
次に、図7に示されるように、CsIといったシンチレータ材料の柱状結晶C1,C2を結晶成長させることにより、基板10の凸部11のそれぞれから所定の方向(ここでは、放射線Rの入射方向、及び、基板10の表面10aや裏面10bに直交する方向)に沿って延びるシンチレータ部40を形成する(第2の工程)。これと共に、基板10の凹部12の底面12a上にシンチレータ部30,30aを結晶成長により形成する(第4の工程)。シンチレータ部40は、平面視において、凸部11の形状に対応するように矩形状を呈する第1の部分41と、平面視において、第1の部分21の側部を覆うように矩形環状を呈する第2の部分42とを含むように形成される。シンチレータ部40は、後に上述したシンチレータ部20となる部分である。
このとき、凸部11の上面11a上のシンチレータ部が所定の高さ(例えば100μm〜600μm)となるまで、シンチレータ材料を結晶成長させる。これにより、図7に示されるように、高さT1より基端側の部分(後に、上述した下部22bとなる部分)において互いに分離し、高さT1より先端側の部分(後に、上述した上部22aとなる部分)において互いに接触した複数のシンチレータ部40が形成される。このようにして、境界面が接触部分43とされた複数のシンチレータ部40が形成される。シンチレータ部30は、交差領域Cを除く凹部12内に形成される。シンチレータ部30aは、交差領域C内の凹部12内に形成される。シンチレータ部30aは、シンチレータ部30よりも肉厚に形成される。
シンチレータ部30,30a,40は、例えば真空蒸着によってCsIといったシンチレータ材料を基板10の上に蒸着することにより形成される。各種蒸着条件(真空度、蒸着レート、基板加熱温度、蒸気流の角度等)を制御することにより、凹凸パターンPa上に上述したようなシンチレータ部30,30a,40を形成する。シンチレータ部20,30,30a,40は、真空蒸着法以外の気相堆積法を用いて形成することもできる。
続いて、凹部12に沿ってレーザ光Lを走査することによって、互いに隣接する凸部11から延びるシンチレータ部40同士の接触部分43にレーザ光Lを照射し、シンチレータ部40同士を互いに分離する(第3の工程)。図8は、レーザ光Lを用いてシンチレータ部40を分離する工程を示した図である。図8に示されるように、シンチレータ部40同士の接触部分43に沿って、X軸方向及びY軸方向にレーザ光Lを走査することにより、互いに隣接する凸部11から延びるシンチレータ部40の接触部分43にレーザ光Lを照射する。このレーザ光Lの照射により、シンチレータ部40の第2の部分42の一部を切断、除去し、シンチレータ部40同士を互いに分離する。このレーザ光Lの走査に際して、凹部12の交差領域Cでは、X軸方向及びY軸方向にレーザ光Lが走査されることにより、2回レーザ光Lが照射されることになる。シンチレータ部40同士の接触部分43では、レーザ光Lが照射されることにより、複数の柱状結晶C2が互いに融着する。これにより、シンチレータ部40の第2の部分42の一部に融着部22cが形成される。このように、レーザ光Lを照射し、複数のシンチレータ部40を互いに分離することにより、シンチレータ部20が形成され、シンチレータパネル1が作製される。
ここで使用されるレーザ光Lとしては、例えば波長が515nm、パルスが幅1ps、繰返し周波数が20kHzであるレーザ光を第2高調波発生(SHG)させたものや、波長が258nm、パルスが幅1ps、繰返し周波数が20kHzであるレーザ光を第4高調波発生(SHG)させたものを使用することができる。
このように、互いに隣接するシンチレータ部20同士の接触部分に沿ってレーザ光を走査することで、結晶成長によって形成されるシンチレータ部20同士を互いに分離することができる(すなわち、シンチレータ部のピクセル化を実現できる)。シンチレータ部20の下部22bの間は離間した状態で結晶成長されているので、このレーザ光の走査の際、互いに隣接するシンチレータ部20の上部22aの一部のみにレーザ光が照射されることになる。
以上説明したように、本実施形態に係るシンチレータパネル1の製造方法では、シンチレータ材料の柱状結晶を結晶成長させることにより、基板10の凸部11のそれぞれから所定の方向に沿って延びるシンチレータ部40を形成している。このため、シンチレータ部40は、凸部11の上面11aを基点とする所定の高さまでは互いに分離した状態で形成されると共に、所定の高さ以上では、凹部12上で互いに接触した状態で形成される。したがって、凹部12に沿ってレーザ光Lを走査することによって、シンチレータ部40同士の接触部分43にレーザ光Lを照射してシンチレータ部40同士を互いに分離すれば、厚膜化されたシンチレータ部20が得られる。また、このシンチレータ部40の分離に際して、その接触部分43のみにレーザ光を照射すればよいので、結晶の劣化を抑制することができる。
また、本実施形態に係るシンチレータパネル1の製造方法では、凹部12の底面12a上に形成されるシンチレータ部30が保護膜として機能するため、例えば基板10がセンサパネルである場合に、レーザ光Lを照射する際にセンサパネル上に設けられる配線等の破損を防止することができる。特に、本実施形態に係るシンチレータパネル1の製造方法では、レーザ光Lを格子状の凹部12に沿って走査したときに、2回レーザ光Lが照射される凹部12の交差領域Cにおいて、相対的に厚さの大きなシンチレータ部30aが保護膜として機能するので、基板(センサパネル)10上に設けられる配線等の破損をより確実に防止することができる。
以上の実施形態は、本発明に係るシンチレータパネルの一実施形態を説明したものである。したがって、本発明は、上述したシンチレータパネル1〜1Cに限定されない。本発明は、各請求項の要旨を変更しない範囲において、上述したシンチレータパネル1を任意に変更し、又は他のものに適用したものとすることができる。
例えば、上記実施形態においては、本発明をシンチレータパネルに適用した場合について説明したが、本発明は、上述したシンチレータパネル等を備える放射線検出器に適用することができる。その場合には、放射線検出器は、上述したシンチレータパネル1のいずれかを備えると共に、それらの基板10を、シンチレータ部20に光学的に結合されるように配列された複数の光電変換素子を備えるセンサパネル(TFTパネルやCMOSイメージセンサパネル)とすることができる。
その場合には、例えば、基板10であるTFTパネルやCMOSイメージセンサの各画素にそれぞれ対応する凸部11を形成し、その上にシンチレータ部20,30を形成する。凸部11の材料や形成方法は上述したとおりである。その際、凸部11のそれぞれを、シンチレータ部20で生じるシンチレーション光に対して透過性を有する材料により構成することが好ましい。
このような放射線検出器によれば、上述したシンチレータパネル1を備えるので、特性を向上することができる。また、基板10が、光電変換素子を含むセンサパネルであるので、その光電変換素子の上に直接凸部11を形成してシンチレータ部20を設ければ、別途用意したシンチレータパネルとセンサパネルとを張り合わせる必要がない。
1…シンチレータパネル、10…基板(センサパネル)、11…凸部、11…直接凸部、11a…上面、11b…側面、12…凹部、12a…底面、20,40…シンチレータ部(第1のシンチレータ部)、22c…融着部、30…シンチレータ部(第2のシンチレータ部)、30a…シンチレータ部、43…接触部分、C…交差領域、C1,C2…柱状結晶、R…放射線。

Claims (12)

  1. 放射線をシンチレーション光に変換するためのシンチレータパネルの製造方法であって、
    表面及び裏面を有する基板の前記表面上に、前記裏面から前記表面に向かう所定の方向に突出する複数の凸部と、前記凸部によって規定される凹部とを形成する第1の工程と、
    シンチレータ材料の柱状結晶を結晶成長させることにより、前記基板の前記凸部のそれぞれから前記所定の方向に沿って延びる第1のシンチレータ部を形成する第2の工程と、
    前記凹部に沿ってレーザ光を走査することによって、互いに隣接する前記凸部から延びる前記第1のシンチレータ部同士の接触部分に前記レーザ光を照射し、互いに隣接する前記凸部から延びる前記第1のシンチレータ部同士を互いに分離する第3の工程と、を含み、
    前記第1の工程においては、前記複数の凸部を前記表面上に二次元アレイ状に周期的に形成する、
    ことを特徴とするシンチレータパネルの製造方法。
  2. 前記第3の工程よりも前に、前記基板の前記凹部の底面上に第2のシンチレータ部を形成する第4の工程を更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載のシンチレータパネルの製造方法。
  3. 前記第1の工程においては、前記凸部によって、前記基板の前記表面上に格子状に規定される前記凹部を形成し、
    前記第4の工程においては、前記凹部の交差領域における前記第2のシンチレータ部の厚さを、前記交差領域を除く位置における前記第2のシンチレータ部の厚さよりも大きくする、ことを特徴とする請求項2に記載のシンチレータパネルの製造方法。
  4. 放射線をシンチレーション光に変換するためのシンチレータパネルであって、
    表面及び裏面を有すると共に、前記裏面から前記表面に向かう所定の方向に前記表面から突出する複数の凸部と、前記凸部によって規定される凹部とが形成された基板と、
    前記凸部のそれぞれから前記所定の方向に沿って延びると共に、互いに分離した複数の第1のシンチレータ部と、を備え、
    前記複数の凸部は、前記表面上に二次元アレイ状に周期的に配列されており、
    前記第1のシンチレータ部は、それぞれ、前記凸部上に形成された複数の柱状結晶からなり、
    前記複数の柱状結晶の各々は、前記凸部側に位置する基端部と該基端部とは反対側に位置する先端部とを有し、前記複数の柱状結晶の前記先端部側の一部同士は、前記凹部の底面の上方において、互いに融着している、ことを特徴とするシンチレータパネル。
  5. 前記基板の前記凹部の前記底面上に形成された第2のシンチレータ部を更に備える、ことを特徴とする請求項4に記載のシンチレータパネル。
  6. 前記凹部は前記基板の前記表面上において前記凸部によって格子状に規定されており、
    前記凹部の交差領域における前記第2のシンチレータ部の厚さは、前記交差領域を除く位置における前記第2のシンチレータ部の厚さよりも大きい、ことを特徴とする請求項5に記載のシンチレータパネル。
  7. 表面及び裏面を有すると共に、前記裏面から前記表面に向かう所定の方向に前記表面から突出する複数の凸部と、前記凸部によって規定される凹部とが形成された基板と、
    前記凸部のそれぞれから前記所定の方向に沿って延びると共に、互いに分離した複数の第1のシンチレータ部と、を備え、
    前記基板は、複数の光電変換素子を有し、
    前記凸部は、前記光電変換素子のそれぞれに対応するように形成されており、
    前記第1のシンチレータ部は、それぞれ、前記凸部上に形成された複数の柱状結晶からなり、
    前記複数の柱状結晶の各々は、前記凸部側に位置する基端部と該基端部とは反対側に位置する先端部とを有し、前記複数の柱状結晶の前記先端部側の一部同士は、前記凹部の底面の上方において、互いに融着している、
    ことを特徴とする放射線検出器。
  8. 前記基板の前記凹部の前記底面上に形成された第2のシンチレータ部を更に備える、ことを特徴とする請求項7に記載の放射線検出器。
  9. 前記凸部は、前記基板の前記表面上に二次元状に配列されており、
    前記凹部は前記基板の前記表面上において前記凸部によって格子状に規定されており、
    前記凹部の交差領域における前記第2のシンチレータ部の厚さは、前記交差領域を除く位置における前記第2のシンチレータ部の厚さよりも大きい、ことを特徴とする請求項8に記載の放射線検出器。
  10. 表面及び裏面を有する基板の前記表面上に、前記裏面から前記表面に向かう所定の方向に突出する複数の凸部と、前記凸部によって規定される凹部とを形成する第1の工程と、
    シンチレータ材料の柱状結晶を結晶成長させることにより、前記基板の前記凸部のそれぞれから前記所定の方向に沿って延びる第1のシンチレータ部を形成する第2の工程と、
    前記凹部に沿ってレーザ光を走査することによって、互いに隣接する前記凸部から延びる前記第1のシンチレータ部同士の接触部分に前記レーザ光を照射し、互いに隣接する前記凸部から延びる前記第1のシンチレータ部同士を互いに分離する第3の工程と、を含み、
    前記基板は、複数の光電変換素子を有し、
    前記第1の工程においては、前記複数の凸部を、前記光電変換素子のそれぞれに対応するように形成する、
    ことを特徴とする放射線検出器の製造方法。
  11. 前記第3の工程よりも前に、前記基板の前記凹部の底面上に第2のシンチレータ部を形成する第4の工程を更に含む、ことを特徴とする請求項10に記載の放射線検出器の製造方法。
  12. 前記第1の工程においては、前記基板の前記表面上に二次元状に配列されるように前記凸部を形成することによって、前記基板の前記表面上に格子状に規定される前記凹部を形成し、
    前記第4の工程においては、前記凹部の交差領域における前記第2のシンチレータ部の厚さを、前記交差領域を除く位置における前記第2のシンチレータ部の厚さよりも大きくする、ことを特徴とする請求項11に記載の放射線検出器の製造方法。
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