JP6132598B2 - 連続式固定床触媒反応装置及びこれを用いた触媒反応方法 - Google Patents

連続式固定床触媒反応装置及びこれを用いた触媒反応方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6132598B2
JP6132598B2 JP2013045554A JP2013045554A JP6132598B2 JP 6132598 B2 JP6132598 B2 JP 6132598B2 JP 2013045554 A JP2013045554 A JP 2013045554A JP 2013045554 A JP2013045554 A JP 2013045554A JP 6132598 B2 JP6132598 B2 JP 6132598B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
catalyst
reaction vessel
gas
reaction
fixed bed
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013045554A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014171943A (ja
Inventor
信明 伊藤
信明 伊藤
鈴木 公仁
公仁 鈴木
藤本 健一郎
健一郎 藤本
憲治 中尾
憲治 中尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Kobe Steel Ltd
Nippon Steel Corp
Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
JFE Steel Corp
Kobe Steel Ltd
Nippon Steel Corp
Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp, Kobe Steel Ltd, Nippon Steel Corp, Nippon Steel Nisshin Co Ltd filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2013045554A priority Critical patent/JP6132598B2/ja
Publication of JP2014171943A publication Critical patent/JP2014171943A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6132598B2 publication Critical patent/JP6132598B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Catalysts (AREA)

Description

本発明は、固定床触媒を用いた流体の化学反応を連続式に行うための反応容器を有する触媒反応装置及びこれを用いた触媒反応方法の技術に関する。
触媒を充填した固定床触媒反応容器を用いた流体の化学反応において、触媒反応によって固体等の析出物を生成する場合には、しばしば、触媒層中の触媒間の空間にこの固体析出物が堆積して触媒層を閉塞させ、通気できなくなる問題が発生する。
例えば、特許文献1(特開2010−77219号公報)においては、水素・二酸化炭素・水蒸気・タール含有ガスを、固定床触媒反応装置において、ニッケル・セリウム・アルミニウムを含む触媒に接触させてタールガスの改質を行う技術が開示されており、この技術においては、改質中に触媒表面に固体炭素が析出し、これを除去するために水蒸気または空気を前記炭素に接触させる再生処理の必要なことが記載されている。
また、特許文献1には、移動床形式および流動床形式の触媒反応容器の使用も例示されている。これらの方式では触媒表面に析出した炭素を反応作業中に除去しうる。しかし、このような反応容器は、固定床触媒反応容器に比べて装置が複雑化することや、流動床形式の場合には操業も不安定になりやすいので、特に、高温・高圧・高腐食性流体を処理するための反応容器としては一般的ではない。
一方、移動床形式および流動床形式の触媒反応容器における上記のような問題がない固定床反応容器では、通常、触媒層を挟んだ両側に空間を設け、一方の空間から他方に流体を流通させて反応させる。触媒層の両側に空間を形成するためには、触媒の保持機構が必要であり、触媒保持機構の代表例は特許文献2(特開2011−6289号公報)に記載されているが、触媒径よりも小さな孔径を有するパンチングメタル板や網を用いて触媒の保持と通気を確保している。図13にその例を示すが、触媒反応容器1の内部に触媒2が収容されており、触媒の保持はパンチングメタル板や網3によって行われている。図13において、原料ガス4は流入口5から流入し、流出口6から改質ガス7として流出する。
反応中の固体析出物の堆積による触媒層の閉塞を防止する手段として、例えば特許文献2には、2つの触媒層の間をガスが通気する自由空間において、第1の触媒層から流出したガス中の粉塵を補足することによって第2の触媒層での閉塞を防ぐ技術が記載されている。しかしこの場合には、触媒層内部で生成し、触媒間の空間で触媒に付着・堆積する粉塵による触媒層の閉塞を防止することはできない。
特許文献3(特開2009−48797号公報)には、燃料電池用のセル内の触媒層に超音波を照射することによって、触媒上で発生した水を流出・除去する技術が記載されている。超音波は、自由空間中や粒体層・粉体層中での減衰が大きいので、照射源近傍にしか作用できない。このため、燃料電池用セル内の触媒層のように比較的小型のものには有効であるが、大量の流体を処理する大型の触媒層では、超音波によって触媒層全体を振動させることは困難である。
特許文献4(特開2008−120604号公報)には、炭化水素の水蒸気改質を低温で実施することによりコーキングを抑制する技術が記載されている。しかし、触媒反応には触媒耐久性および反応速度上の観点から最適な反応温度条件が存在し、コーキングによる触媒層の閉塞は、この最適条件において発生している。そのため、触媒反応温度を低下させてしまうと、反応の最適条件ではなくなるので、触媒性能が低下する問題がある。
特許文献5(特開平8−24622号公報)には、従来技術として、移動床触媒反応容器における堆積ダストによる触媒層の部分閉塞を槌打装置やバイブレータによって除去することが記載されている。この場合には、槌打やバイブレーションによって、触媒の充填率が上昇して触媒間の空間が狭まり、触媒の流動性がかえって悪化する問題がある。
非特許文献1には、特殊な固定床触媒反応容器として、平行流式、モノリス式、管壁式等が記載されている。これらはいずれも、触媒反応容器内に触媒層と、触媒層に囲まれた専用の気流路を設けることによって、触媒反応容器内の通気抵抗の低減を図っている。簡単に言うと、平行流式では、網などで両端を保持した通常の触媒層を平行に複数並べ、触媒層間の空間を専用気流路とする。モノリス式では、ハニカム構造等の構造物の表面に触媒を担持し、ハニカム構造の孔を専用気流路とする。管壁式では、管路内を専用気流路とし、管内面に触媒を担持する。
専用の気流路を設けた場合、触媒反応によって固体生成物が生じると、専用気流路を構成する触媒表面に固体生成物が堆積して専用気流路の流路幅が狭まり、閉塞を生じることがある。あるいは、気流路の閉塞を生じない場合でも、専用気流路を構成する触媒表面に堆積した固体生成物によって専用気流路と触媒層間の流体の交換が阻まれるので、原料ガスが活性を保持した触媒と接触することなく流出して触媒反応効率が著しく減少してしまうという「吹き抜け」現象を生じる。あるいは、モノリス式のように反応容器内に専用気流路が複数存在し、各専用気流路が互いに孤立(即ち、隣接する気流路間での物質交換およびこれに伴う熱交換の抑制された状態)しており、反応容器の奥深い部位での専用気流路内では外部から熱供給を行えない気流路を設けた反応容器において、触媒反応が強い吸熱反応の場合には、上流側の反応によって下流では流体温度が大きく低下して反応可能温度以下となり、反応効率が極端に低下してしまう。逆に触媒反応が強い発熱反応の場合には、反応容器の奥深い部位では発生した熱量を反応容器を通じて外部に放出できないので、下流では流体温度が過度に上昇して触媒を失活させたり、触媒反応容器を焼損することがある。
さらに、モノリス式の場合、一般に複雑な形状で大型となるモノリス全体を、触媒を担持するための担体、または、触媒自身の単一構造物として成形する必要があるため、触媒製造技術上、適用できる触媒設計(構造)が比較的単純なもの(例えば、単一化学成分種の触媒を担体表面に均一塗布する等)に限られるという問題がある。このため、例えば、タール改質触媒のように、表面が複数の異なる化学種成分の区画に微細に分割されて各化学種成分が互いに協調して触媒効果を発揮するような複雑な設計(構造)の触媒にモノリス式を適用することは、著しく困難であり、可能だとしても極めて高価なものになる。
特開2010−77219号公報 特開2011−6289号公報 特開2009−48797号公報 特開2008−120604号公報 特開平8−24622号公報
触媒学会編:触媒講座第6巻(工学編2)触媒反応装置とその設計,講談社(東京),1985,pp.100−169
このように、従来技術では大型の固定床触媒層内で生成・堆積する固体生成物を有効に除去する手段がなかった。本発明の目的は、大型の固定床触媒層内で生成・堆積する固体生成物の除去に有効な手段を備えた連続式固定床触媒反応装置と、これを用いて原料ガス、特にタール含有原料ガスを、高効率に改質する触媒反応方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明者の研究の結果、以下の解決方法を発明するに至った。
(1)触媒反応用の原料ガスの流入路及び改質ガスの流出路と、
流入路及び流出路に接続され、かつ触媒を収容する触媒反応容器と、
を有する連続式固定床触媒反応装置であって、
・貫通孔を有する触媒と、
・複数の前記触媒を貫通してそれらの可動性を損なわない触媒連を形成する中心棒と、
・複数の前記中心棒を保持する保持板と、
・前記触媒反応容器内で前記保持板を往復運動させるための駆動機構と、
を具備し、
前記触媒は、前記触媒連において隣りあう触媒の端面がそれらの一部だけで互いに接し端面のその他の部分が反応器内空間に開放される形状を有する、
ことを特徴とする、連続式固定床触媒反応装置。
(2)前記中心棒が略水平に配置されるとともに、前記触媒の重心が貫通孔中心軸上とは異なる場所に存在することを特徴とする、上記(1)に記載の連続式固定床触媒反応装置。
(3)前記触媒がその貫通孔の中心線に対し傾斜した平面として形成された端面を有することを特徴とする、上記(2)に記載の連続式固定床触媒反応装置。
(4)前記中心棒がリング状であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の連続式固定床触媒反応装置。
)前記触媒反応用の原料ガスが炭化水素を含有するガスであり、触媒反応による生成物がガスと固体の炭化水素または固体のカーボンとであることを特徴とする、上記(1)〜()のいずれか1つに記載の連続式固定床触媒反応装置。
)前記触媒反応用の原料ガスがタールを含有するガスであることを特徴とする、上記()に記載の連続式固定床触媒反応装置。
)前記触媒が、ニッケル、マグネシウム、セリウム、アルミニウムを含む複合酸化物であって、アルミナを含まない複合酸化物からなる触媒であり、前記複合酸化物が、NiMgO、MgAl24、CeO2の結晶相からなることを特徴とする、上記(1)〜()のいずれか1つに記載の連続式固定床触媒反応装置。
)上記(1)〜()のいずれか1つに記載の連続式固定床触媒反応装置を用いて、触媒反応を行うことを特徴とする、連続式固定床触媒反応方法。
ここで、本発明者が本発明に到達した経緯を説明すると、次のとおりである。
本発明者らの調査の結果、固定床触媒層中の触媒間に生成固体カーボンの堆積する機構は次のとおりであることがわかった。
(1)固定床触媒層中の隣り合う複数の触媒で形成される触媒間空間において、主流の上流側の隙間から原料ガス(一部改質済み)が流入し、主流の下流側の隙間から改質されたガス(一部は残留した原料ガス)が改質ガスとして流出する。
(2)触媒間空間に供給された原料ガスが触媒反応によって改質される際、触媒表面で生成した固体カーボンの一部が触媒表面に付着する。
(3)触媒間空間に供給された原料ガスが触媒反応によって改質される際、触媒表面で生成し、気流によって触媒表面から離脱した固体カーボン微粒子は、上記の既に触媒表面に付着した固体カーボン上に付着して、触媒表面で直径数十μmから約1mmのカーボン球が成長する。
(4)上記のカーボン球は、時に触媒表面から離脱し、既に存在する他のカーボン球の上に再付着するなどして、触媒表面に多層のカーボン球から構成される厚みが数mmにもおよぶ固体カーボンの堆積層が形成される。
(5)この固体カーボン堆積層は実質的に多孔質であるので、高速のガスが通気する際には大きな圧力損失を生じる。
(6)特定の触媒間空間での通気抵抗が過大となれば、主流は、他のより通気抵抗の低い触媒間空間を優先的に通気するようになる。但し、固体カーボン堆積層が多孔質であるため、固体カーボンの堆積によって通気抵抗が過大になった空間においても、触媒間空間へのガスの流れが完全に遮断されるわけではなく、触媒表面には低流量で原料ガスが供給され続ける。この結果、触媒表面でのガス改質による固体カーボンの成長は常に進行し続ける(但し、触媒表面での露出面積は減少するので、改質速度は初期に比べて大幅に低下する)。
(7)触媒層中の大半の触媒間空間において固体カーボンの堆積が進むと触媒層全体としての圧力損失が過大となり、「閉塞状態」が生じる(触媒反応容器では所与の流量で原料ガスを処理しなければならず、この所与のガス流量時にいずれの触媒間空間を通気しても圧力損失が反応装置の許容値(ガス搬送能力や容器の強度等によって定まる)を超えることが避けられない状態で触媒層は実質的な「閉塞」となる)。
水素・二酸化炭素・水蒸気・タール含有ガスの改質反応を行い、閉塞を生じた固定床触媒反応容器の触媒表面から固体カーボン堆積層を単独で取り出し、容器の中に入れて軽くシェイクする様な機械的外力を加えると、構成単位であるカーボン球の境界で容易に分離し、粉化した。このような固体カーボンの堆積により閉塞を生じた触媒層から固体カーボンを除去するために、本発明者らは、種々の対策を試みた。
第1の対策として、触媒層外部からのブローによる触媒層の逆洗を試みた。詳しく言えば、反応容器内に触媒層の下流側に窒素ガス供給配管を設け、触媒層に対して高速窒素流を噴射して、触媒層の逆洗を試みた。逆洗は、粉塵除去用のフィルタの閉塞時の対策として一般に用いられる手法である。
結果として、一部の固体カーボンは除去されたが、触媒層の圧力損失の変化は軽微であり、閉塞を解消する効果はなかった。その理由としては、次のことが考えられる。
1)フィルタの場合、上流からフィルタ内に流入した粉塵粒のうち、フィルタの目開きよりも大きいものをその場で捕集する。フィルタは、通常、上流ほど目開きが大きい。従って、フィルタの閉塞部に対して主流の下流側から高速流を供給して逆洗を行う場合、捕集された粉塵粒のうちフィルタの目から離脱したものは、高速気流に搬送されて主流の上流側に進行する際、より大きな目開きを通過するので、メッシュに再捕集されることは少なく、フィルタ外に排出できる。
一方、本発明が対象とする触媒反応副生物である固体カーボンなどの堆積層は、主流の上流から流入するのではなく、触媒間空間中で、ガスを原料として生成する。このため、堆積カーボンの大きさが触媒間空間の流出入の隙間よりも小さいとは限らないので、そのままでは触媒間空間から流出できない堆積カーボンが多量に存在する。
カーボン堆積層を破壊して微粉化すれば触媒間空間から流出できる可能性がある。しかし、気流が堆積カーボンに与える応力は一般に小さいので(触媒層全体に大きい気圧差を与えても、触媒層中で触媒は、通常多数の層で積載されているいので、個々の触媒間空間の入側−出側気圧差は微小となり、大きな応力を堆積カーボンに与えることはできない)、堆積カーボン層を破壊することはできない。
2)一部のカーボンを除去した時点で、カーボン除去の結果として通気抵抗の小さくなった少数の触媒間空間を連ねた狭い流路が触媒層の中に新たに形成され、主流の大半はこの流路に集中して流れる。この際、新たに形成された流路以外の触媒間空間には気流はほとんど通過しないので、これ以上カーボンが除去されることはない。このため、主流が通過する狭い流路で流速が上昇して大きな圧力損失が生じるので、閉塞状態はあまり改善されない。このように形成された新たな流路も、流路内で新たなカーボンが生成・堆積することよって急速に再閉塞していくので、逆洗の効果は短時間とならざるをえない。その一方、早期に失活を生じた触媒によって構成される(囲まれる)触媒間空間ではこのような触媒間空間の再閉塞を生じない。しかし、そもそも、主流が失活した触媒のみと接触して触媒層を通過するのであれば、ガスの改質を行えないので、触媒反応容器としての性能を発揮できない。
これらから、次のように結論することができる。
すなわち、一般に、閉塞を生じた触媒層においては、
[個々の堆積カーボンの大きさ]>[当該触媒間空間の隙間]
の状態となっており、
[個々の堆積カーボンの大きさ]<[当該触媒間空間の隙間]
としない限り、触媒層からカーボンを大量に除去することはできず、触媒層外部からのブローによる触媒層の逆洗はこれに有効ではない。
そこで次に、第2の対策として、反応容器外面を槌打して、堆積カーボン層の破壊、または触媒間空間の拡大を試みた。
結果として、最初の閉塞発生後に槌打(第1回目の槌打)すると、一部の堆積カーボンを除去でき、圧力損失も半分程度に減少し、一定の効果が見られた。この後、再閉塞発生後に再び槌打(第2回目の槌打)すると、堆積カーボンの除去は微小であり、圧力損失の変化はなく、閉塞を回避することはできなかった。すなわち、反応容器外面の槌打は、2回目以降は堆積カーボンの除去に有効でないことがわかった。その理由としては、次のことが考えられる。
1)通常、触媒を反応容器内に積層する際には上部から単純に落下させるので、触媒層における触媒は最密充填状態にはない。ここに、第1回目の槌打を加えると、振動によって触媒が最密充填あるいはそれに近い状態になる(簡単にするために、以下ではこれを「最密重点化」と称することにする)。最密充填化の過程で触媒間の相対位置は、合計で触媒代表長さの30%程度の大きさで移動する。この相対位置の移動時(即ち、触媒間相対運動)に、一部の堆積カーボンが触媒との接触応力によって破壊されて小型化するとともに、触媒間の間隔が一時的に広がる瞬間を生じるので、
[個々の堆積カーボンの大きさ]<[当該触媒間空間の隙間]
の関係が実現されて触媒層中を落下し、遂には触媒層から除去された。
2)一方、第1回の槌打終了後に触媒層は最密充填化されているので、第2回目以降の槌打を行っても触媒間の相対位置はほとんど変化せず、堆積カーボンの破壊や触媒間の間隔の広がりは生じない。このため、第2回目以降の槌打では堆積カーボンの除去の効果が認められなかった。
これらから、次のように結論することができる。
すなわち、1回限りの閉塞解消効果では、多くの場合、触媒反応容器における所要処理継続時間を満足できないので、反応容器外面の槌打は堆積カーボンの継続的な除去のためには不十分である。触媒層から堆積カーボンを継続的に除去するためには、
[個々の堆積カーボンの大きさ]<[当該触媒間空間の隙間]
とした後に、触媒層の最密充填状態を解消する手段が必要である。
前述の結論を踏まえ、第3の対策として、内部に貫通孔を有する複数の触媒を用いて個々の触媒を中心棒で貫いて一列に整列させたものとして定義する「触媒連」を用い、複数の触媒連を、間隔をあけて配列して形成したものとして定義する「触媒柵」を触媒反応容器内に配置して、各触媒連間の空間を専用気流路とし、触媒反応容器の運転を行った。
その結果、反応初期の、反応固体生成物の触媒表面への堆積の比較的少ない期間では、
[個々の堆積カーボンの大きさ]<[当該触媒間空間の隙間(専用気流路の幅)]
の関係を実現できた。
ここでは、従来の単純な積層構造の触媒層と同一レベルの触媒充填率を維持しつつ、気流路を集約して各気流路の断面を広大なもの(例えば、主流方向に触媒容器高さのレベル、かつ、主流垂直方向に触媒断面積と同等レベル)とした集約気流路にすることができる。このため、集約気流路内での少々の生成物堆積量では反応容器の通気性が阻害されることはないという顕著な効果が得られる。
また、この触媒連を、触媒反応容器の運転を開始してから一定時間経過後に短時間往復運動させることを試みた結果、次のことがわかった。
(a)固体生成物が触媒上に所定量堆積した後に触媒柵を往復運動させることによって堆積物を触媒表面から離脱させることができる。その結果、
[個々の堆積カーボンの大きさ]<[当該触媒間空間の隙間(専用気流路の幅)]
なる条件を維持できる。さらに、離脱させた固体生成物を、専用気流路を通じて落下または気流搬送することによって、触媒反応容器外に排出することができる。このようにして、触媒表面の固体生成物を除去することによって、触媒表面での固体生成物堆積状態を反応の初期状態と同様の状態に戻すことができるので、この往復運動操作を固体生成物の堆積が進行するたびに繰り返すことによって、反応容器の通気性を常に良好に保つことができる。
ここでも、従来の単純な積層構造の触媒層と同一レベルの触媒充填率を維持しつつ、気流路を集約して各気流路の断面を広大なもの(例えば、主流方向に触媒容器高さのレベル、かつ、主流垂直方向に触媒断面積と同等レベル)とした集約気流路にすることができる。このため、集約気流路内での少々の固体生成物堆積量では反応容器の通気性が阻害されることはないので、上記の往復動作の所要頻度を、少なくすることができきる(例えば、1回/時間)。これは、従来の単純な積層構造の触媒層では触媒ごとに分散した多数の小空間であった触媒間の隙間を、ここでは少数の太い集約気流路に集約することによって、高い通気性と高い触媒充填率を両立できるからである。一方、従来の単純な積層構造の触媒層では、個々の触媒が互いに支え合って触媒層を形成・保持するという構造であるため、隣接する触媒間で構成される気流路は、触媒ごとに細分化されるとともに狭窄部を生じ易い。このような触媒層では気流路の狭窄部において高々、触媒断面積の1/10程度の流路断面積しか確保できないため、気流路内での少量の生成物の堆積があっても、反応容器の通気抵抗が急上昇してしまう(気流路の通気抵抗は、一般に狭窄部での断面積に依存する)。しかも、この方式に限らず、従来の触媒層では気流路に一旦、固体生成物が堆積すると、これを取り除く手段が存在しなかったので、反応によって固体生成物を生じ易い反応容器では、通気抵抗の上昇による制約によって、連続運転可能な時間は極めて短いものであった。
(b)特に、複数の触媒の貫通孔を中心棒で貫いて一体化した触媒連を用いた場合、隣あう触媒は互いに結合されていないので、外力によって触媒間での相対運動を容易に生じる。このため、触媒間での衝突が容易に生じるので衝突時に各触媒で強い表面振動を生じて固体生成物を触媒表面から離脱させることができる。
(c)触媒連間の専用気流路が互いに連結しているので流体の主流垂直方向にガスが拡散(物質交換およびこれに伴う熱交換)しやすい。このため、加熱面(触媒反応が吸熱反応の場合)である触媒反応容器の外壁面から遠く離れた触媒に対しても、ガス拡散によって加熱面から十分に熱を供給することがきでき、吹き抜けを生じにくい。
こうして、各触媒連間の空間を専用気流路及び粒子落下路とするとともに、触媒の集合体である触媒柵を触媒反応容器内で往復運動させることによって、触媒層全域(触媒柵全体)において触媒表面に堆積した固体生成物を効率的に落下させて触媒層(触媒柵)から除去できるという顕著な効果を奏することが分かった。
さらに、本発明者らは、貫通孔を有する触媒のうち代表的形状である円筒状触媒を一直線上に連ねた触媒連(この触媒連においては、隣りあう触媒の全端面どうしが互いに接触する)と、隣りあう触媒の端面がそれらの一部だけで互いに接し端面のその他の部分が反応器内空間に開放される形状である触媒を連ねた触媒連とを比較した結果、以下のことを見出した。即ち、円筒状の触媒を用いた触媒連では、隣り合う触媒間の端面が互いに全面で接触するため、端面に原料ガスが到達できず、この端面での触媒反応がなされないという不効率を生じる。一方、隣りあう触媒の端面がそれらの一部だけで互いに接する触媒連の場合、隣り合う触媒端面の反応器内空間に開放される隙間を原料ガスが容易に通気可能なので、このような反応器内空間に開放される部分を含む触媒表面のほぼ全体で触媒反応を行うことができ、効率的である。特に、隣り合う触媒の端面間でコーキングによる固体カーボンが堆積した場合であっても、各触媒が独立に可動であるので、外力によって震動させる等すれば、この堆積カーボンを容易に落下除去することができる。
また、隣りあう触媒の端面がそれらの一部だけで互いに接し端面のその他の部分が反応器内空間に開放される形状である触媒を連ねた触媒連の一例として、端面が中心棒垂直面に対して傾斜角を有する平面である触媒を用いた場合、触媒が中心棒のまわりに180°回転するとこの傾斜角は反転するので、中心棒に対して180°異なる位相で隣接する触媒間では傾斜角が一致し、互いに端面の全面で接触して端面間で隙間を生じないことがありえる。この問題に対しては、中心棒を水平に配置するとともに、触媒の重心を貫通孔の中心軸からずらした形状とすることによって、触媒連中のいずれの触媒でも触媒の重心が中心棒中心軸の下方に存在することになるため、隣り合う触媒間で位置の位相が一致し、上記のような隣接触媒間での位相差による問題を避けることができる。
こうして、発明者は、隣りあう触媒の端面がそれらの一部だけで互いに接し端面のその他の部分が反応容器内空間に開放される形状である触媒を連ねた触媒連を用いることにより、大型の固定床触媒層内で生成・堆積する固体生成物の除去に有効な手段を備えた連続式固定床触媒反応装置と、これを用いて原料ガス、特にタール含有原料ガスを、高効率に改質する触媒反応方法である本発明を完成するに至った。
本発明は、固定床触媒層内で触媒上に生成・堆積する固体生成物の除去に好適に適用することができる。例えば、ニッケル、マグネシウム、セリウム、ジルコニウム、アルミニウムを含む複合金属酸化物触媒によるタール含有ガスの改質反応では、他の反応に比べて触媒表面への固体カーボンの堆積量が多く、それを除去するニーズがより高い。本発明は、このように他の反応に比べ触媒表面への固体カーボンの堆積量が多いタール含有ガス改質反応用の触媒を用いる場合においても、触媒上に生成・堆積する固体生成物の効率的な除去を可能にする。
本発明の対象である触媒固定床と異なり、移動床は、原則として反応中に絶えず触媒を移動(および撹拌)させる。それに対し、本発明では、反応容器内での触媒の移動を間欠的に、短時間実施すればよいので、反応中に触媒撹拌を行う必要はない。さらに、移動床では、反応中に一定量の触媒を系外に排出するとともに同量の触媒を系外から供給する。それに対し、本発明では、反応中に触媒の入れ替えは行わない(触媒層が固定床であるから)。
本発明の触媒反応装置によれば、固定床触媒層内で触媒上に生成・堆積して触媒性能を低下させる原因となる固体堆積物を、触媒間で相対運動させることにより、効率よく除去することができる。さらに、本発明の触媒反応装置では、触媒反応容器内において隣り合う触媒連どうしは一定の間隔をあけて配置されるため、触媒をランダムに充填して構成される触媒層などにおいて生じる触媒間の空間での固体生成物の堆積による閉塞の問題は、本質的に回避される。そのため、従来のように触媒や触媒保持器を洗浄するために運転を停止する必要なしに、反応装置を連続運転することが可能となる。また、その触媒反応装置を用いて、固体カーボンなどの固体生成物を発生する触媒反応を高い効率で行うことができる。
本発明の第1の実施形態の反応装置を説明する模式図である。 本発明の反応装置で使用する触媒連を説明する模式図である。 本発明の反応装置で使用する触媒柵を説明する模式図である。 本発明の反応装置で使用する触媒形状の模式図である。 本発明の第2の実施形態の反応装置を説明する模式図である。 本発明の反応装置で使用する別の触媒形状の模式図である。 本発明の反応装置で使用する別の触媒形状の模式図である。 本発明の反応装置で使用する別の触媒形状の模式図である。 本発明の第3の実施形態の反応装置を説明する模式図である。 本発明の反応装置で使用する別の触媒連の模式図である。 実施例及び比較例の効果を説明する図である。 実施例及び比較例の分析サンプルを説明する図である。 従来技術の触媒反応容器を説明する模式図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(全体構造)
図1に、本発明の第1の実施形態の連続式固定床触媒反応装置10を示す。この図の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。本発明の触媒反応装置10は、反応容器11を含み、その内部に、保持板12によって保持された触媒連13の集合体である触媒柵14が収容されている。各触媒連13における触媒51は、隣りあう触媒どうしがそれらの端面の一部だけで接するような形状であるが、図1においては簡単にするためそれらは端面の全体で接しているように描かれている。図1の実施形態では、保持板12と触媒連13との間には、カラー22が配置されている。ここで言う触媒の「端面」とは、複数の触媒を連ねて触媒連を形成したときに、隣りあう触媒の互いに向き合う面を指す。
このように、触媒連13とその集合体である触媒柵14を用いることが本発明の一つの特徴である。触媒連13は、図2に示したように、複数の触媒51と、それらの可動性を損なわずに貫通して触媒連を形成する中心棒52とにより形成される。触媒柵14は、図3に示したように、複数の触媒連13と、その中心棒52を立設する、すなわち立てた状態で固定する、保持板12により形成される。図2、3の各触媒連13における触媒51は、端面を曲面として、隣りあう触媒どうしがそれらの端面の一部だけで接するように形成されている。
本発明においては、保持板12の下に、保持板12を昇降させることにより触媒柵14を一斉に上下方向に往復運動させるための駆動機構15を設けることができる。駆動機構15は昇降装置16と、昇降装置16を保持板12につなぐ伝導軸17で構成されている。駆動機構15は、触媒柵14全体を昇降させることで各触媒51に移動運動を生じさせ、例えば隣りあう触媒の間隙に堆積した触媒反応の固体生成物を脱離させるのに有用である。とは言え、例えば触媒上に堆積する固体生成物が触媒から脱離しやすく、触媒柵を強制的に運動させる必要がない場合などには、駆動機構15を省いても差し支えない。
反応容器11には、下方から原料ガス18が供給されて、その主流が触媒連13と平行に触媒柵14を通過する際に反応し、触媒柵14からの改質ガス19は反応容器11の上方から排出される。原料ガス18の例は、炭化水素を含有するガス、炭化水素とともにタールを含有するガスなどでよい。改質ガス19の例は、炭化水素を含有するガスを改質して得られる改質ガスなどでよい。触媒の例を挙げると、炭化水素改質用の触媒などでよく、その表面には触媒反応の副生物として固形物、例えば固体カーボンなどが堆積する。触媒反応が吸熱反応の場合、反応に必要な温度と熱を、触媒反応容器11を例えば加熱炉(図示せず)中に配置することにより、与えてもよい。触媒反応が発熱反応の場合は、反応熱を、触媒反応容器の外部に設けた冷媒流路(図示せず)に冷媒を流すなどにより除去してもよい。場合により、反応容器11への原料ガスは、図1とは逆に、触媒柵14の上方から下方へ流れるように供給することも可能である。
(反応容器の形状)
反応容器11は、両端に開口20a、21aを有し、これらの開口間に触媒柵を収納できるものであればどのような形状でもよい。開口20aは、触媒反応用流体(原料ガス)の流入路20を構成する供給管に通じており、触媒反応用流体の反応容器11への流入口に当たるものである。開口21aは、反応容器11からの改質ガスの流出路21を構成する排出管に通じており、改質ガスの反応容器11からの流出口に当たるものである。反応容器11は、例えば、円筒状、角型ダクト状などの形状であることができる。以下では、角型ダクト状の反応容器を例に説明する。
以下の説明において、「容器の中心軸」とは、容器の水平断面の図心を鉛直方向に連ねたものと定義する。「反応容器厚」は、水平断面における反応容器の代表長さのうちの最小の長さに相当し、「反応容器幅」は、水平平面における反応容器の代表長さのうちの最大の長さに相当する。容器が円筒の場合には、容器の「幅」および「厚」を「直径」と置き換えればよい。
(反応容器の材質)
反応容器11の材質は、触媒を保持する強度、触媒反応に関与する流体への耐熱・耐食性、反応生成物への耐汚染性を有する材料であれば、どのようなものでも使用できる。例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等の金属材料、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミックス材料(煉瓦に加工されたものを含む)、ソーダガラス、溶融石英等のガラス材料を使用することができる。
(反応容器の寸法)
反応容器厚及び反応容器幅ともに、触媒直径よりも大きい必要がある。反応容器の厚みが大きいほど、空間を効率的に使用して多量の触媒を触媒反応容器に収納することができる。一般に触媒反応では発熱または吸熱があり、かつ、反応容器の表面を通じてこれらの熱を外部と授受するため、反応容器の厚みが大きいほど、厚み方向に熱が伝わりにくくなる。このため、反応容器の厚み(反応容器断面が円形の場合には直径)は、500mm以下であることが好ましい。また、当然のことながら、反応容器の厚みは、収納する触媒の代表寸法(例えば、触媒直径)よりも大きくなければならない。
反応容器の幅には、機能上、特段の制約はない。保持すべき触媒柵体積、反応容器厚を基に、構造上・強度上の制約を考慮してエンジニアリング的に定めればよい(例えば、5000mm)。
反応容器の高さは、使用する触媒柵を収容できればよい。反応容器が触媒柵を昇降させる駆動機構を有する場合は、それにより触媒柵を上昇させたときの触媒柵の高さよりも大きくなければならない。一方、反応容器高さの上限については、機能上の制約はなく、構造上・強度上の制約を考慮してエンジニアリング的に定めればよい(例えば、5000mm)。
(触媒連と触媒柵)
図2に示したように、触媒連13は、円筒状などの内部に貫通孔を有する触媒51と、一群の触媒51を貫く中心棒52により構成される。図3に示したように、触媒柵14は、一群の触媒連13を保持板12に固定して製作される。
触媒柵14が、図1に示したように触媒連13を垂直方向に向けて反応容器11内に配置される場合には、中心棒52の下部(触媒連と保持板とが接合する部分)に、触媒の落下防止用のカラー22を設けることができる。カラー22の直径を触媒孔径よりも大きくすることで、触媒の落下を防止できる。また、この場合には、カラー22より下方が流体の流入または流出のための空間、並びに、触媒表面で生成した生成物を落下・堆積させるための空間となる。
触媒柵14が、後に説明する第2の実施形態におけるように触媒連13を水平方向に向けて反応容器11内に配置される場合には、中心棒52の両端を保持板12に接合する。
(触媒柵の開口率)
触媒柵の開口率は、開口率=(1−[触媒柵の主流に垂直な断面の断面積]/[触媒反応容器の主流に垂直方向の見かけ断面積])×100(%)として定義することができる。「主流」とは、反応容器11へ供給された流体が、反応容器11内でその流入口20aから流出口20bへと向かう流れ、として定義され、図1の場合には、主流は触媒連13に平行な方向の流体の流れとなる。触媒柵の開口率が大きいほど、通気抵抗が小さい。一方、開口率が過大だと必要な触媒反応容器体積が増大し、また、通気抵抗が小さいので吹き抜けも生じやすい。従って、開口率は、30%以上60%以下の範囲が好ましい。
(触媒連の中心棒)
触媒連の中心棒は、触媒を貫くことでそれを損傷させないように、丸棒が好ましい。但し、加工の便宜等の理由によって、多角形断面の棒であってもよい。
また、触媒が中心棒の周囲で移動しやすいように、中心棒は直線状であることが好ましい。但し、加工の便宜等の理由によって、曲がり棒であってもよい。
中心棒の直径は、触媒の孔径よりも小さくなければならない。また、触媒の保持や昇降運動に耐えうる強度を保ち、高温時のクリープ等による座屈を避けるために、適度の直径であることが好ましい。例えば、直径1mm以上、30mm以下を適用することができる。
中心棒の材質は、強度・剛性・耐熱性等の観点から、また、高熱伝導性材料であるのが好ましいことから、金属、特に、ステンレス鋼、インコネル(登録商標)等のニッケル合金、チタン、チタン合金を用いることができる。また、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等は、高熱伝導性材料として特に好ましい。
(触媒連の長さ)
上下方向に往復運動させる触媒柵が反応容器内に収納可能である限り、触媒連の長さは触媒反応容器高さの範囲内あれば特に制約はない。中心棒で貫く触媒の数を増やすことで、触媒連長さを自由に定めることができる。但し、長い触媒連の場合、下流側では原料流体濃度が減少するので、触媒反応の反応速度は低下する。従って、処理する原料流体流量と触媒総量の比を勘案して適宜最適な長さを決めればよい。
(触媒連の作製方法)
触媒連は、例えば、手作業で触媒を中心棒に貫通させて作製することができる。
(触媒連の保持板)
触媒連を支持する保持板は、中心棒を、溶接やねじ込みなどの方法で取り付けることができる材料で製作される。その材質は、強度・剛性・耐熱性等の観点から、中心棒と同様に、ステンレス鋼、インコネル(登録商標)等のニッケル合金、チタン、チタン合金などでよい。カラーを用いる場合、それも保持板の材料と同様の材料で製作することができる。
(触媒形状)
触媒連を構成する触媒は、触媒連の中心棒を通しうる貫通孔を有するとともに、触媒連上で隣り合う触媒の端面どうしが接触した場合であっても、それらの間に触媒反応容器内空間に対して開放された隙間を形成できればどのような形状であってもよい。また、隣り合う触媒が同一形状であることは必ずしも必要ない。
具体的な触媒形状として、図4のように、軸対称の触媒61を用いることができる。この図の触媒61は、長手方向に中心を貫通する貫通孔62を有するとともに、両端に凸状の端面63を有する。触媒61は軸対称であるから、その重心Gは長手方向の中心線の中央に位置している。図4の触媒61の場合、隣りあう触媒端面63が接触する場所は、端面の貫通孔周辺部のみであり、その部分を除いて、隣りあう触媒の端面間には触媒反応容器内空間に対して開放された隙間が形成される。
触媒の貫通孔寸法は、触媒連の中心棒に対して触媒が自由に移動できるように、中心棒の直径よりも十分に大きくなければならない。特に、次に説明する第2の実施形態のように触媒連が水平に配置され、触媒柵の往復動が鉛直方向になされる場合には、個々の触媒の鉛直方向の相対移動(中心棒に対する)距離は、[中心孔径]−[中心棒直径]の範囲に限られるので、この差を十分に大きく設定することが好ましい。例えば、[中心孔径]を[中心棒直径]+1mmとすることができる。
このような形状に触媒を成形する方法としては、例えば、触媒原料粉末を所望の形状となるように製作した型に詰めたうえで型を加熱し、触媒原料粉を焼結して触媒を成形することができる。あるいは、円筒状の触媒を切削するなどして所望の形状に加工してもよい。
(触媒柵の駆動機構)
本実施形態では、保持板12を昇降させることによってその上の触媒柵14を反応容器11内で昇降させることができる。そのために、本実施形態の反応容器11には保持板12を昇降させる駆動機構15が装備される。駆動機構15には、エアシリンダ、ラックピニオン等の歯車を利用した昇降装置16などの、一般的な駆動機構を用いることができる。保持板12は、伝導軸17を用いて昇降装置16に結合される。昇降装置16を作動させると、保持板12の全体が反応容器11の軸線に沿って移動して、触媒柵14の全体をやはり反応容器11の軸線に沿って上下に移動させる。
少なくとも伝導軸17の保持板12側の一部は反応容器11、または、反応容器11の下方に存在しうる原料ガス流入路20(この原料ガス流入炉20は、原料ガス18を反応容器11の上方から供給する場合、改質ガス流出路となる)の内側に存在する必要がある。昇降装置16は、反応容器11の外部に設けることができる。反応容器11を例えば加熱炉などの加熱装置(図示せず)内に配置する場合には、昇降装置16を加熱装置外に設けることもできる。この場合、市販の昇降装置を使える一方で、伝導軸17が反応容器11を貫通する部分を高温用パッキン等で封止する必要がある。
駆動機構15全体を、図1に示したように反応容器11内に設ける場合には、昇降装置16を、例えば反応容器11内の高温や腐食性物質から保護するために、耐熱・耐食性のものとする必要がある。これは、一例として、駆動機構15のエアシリンダ全体をハステロイ(登録商標)等の耐熱合金製とすることによって実現できる。この場合、エアシリンダへの供給エア配管(図示せず)は反応容器11を貫通するが、この部分は非可動部なので、配管を全周溶接するなどして封止を図ればよい。
(保持板の昇降ストローク)
触媒間の相対運動を十分行うためには、保持板12の昇降ストロークは大きいことが好ましい。例えば、触媒外面の代表寸法(例:直径又は長さ)の0.1倍程度の昇降ストロークであっても加振の効果は存在するので、触媒表面の固体カーボンなどの堆積物の除去効果は一定程度は得られる。とは言え、十分な堆積物除去効果を挙げるためには、保持板12の昇降ストロークは触媒外面代表寸法の0.5倍以上であることが好ましく、1倍以上であることがより好ましい。
一方、昇降ストロークが極端に大きい場合には、反応容器11および駆動機構15が大型化するので効率的ではない。また、小さいストローク(但し、1倍以上)の昇降を繰り返し行うことで、より大きな昇降ストロークと同様の効果が得られる。よって、昇降ストロークは、触媒外面の代表寸法の10倍以下であることが好ましい。
(保持板の昇降速度)
上昇速度には特段の制約はない。下降速度は、固体堆積物を触媒表面から離脱させるのに十分な触媒間の相対運動を可能にするように設定する必要がある。極端に遅い下降速度では、触媒間で相対運動を生じないので好ましくない。下降速度は、触媒の自由落下速度(例:100mm/s)よりも速くすることができる。このようにすることによって、個々の触媒が下降する際に触媒と中心棒との接触状態に応じて下降速度のバラツキを生じ、触媒間で相対運動と衝突を生じさせることができる。
あるいは、駆動機構の往復運動の終端部において中心棒の速度が触媒の速度よりも小さくなるようにすることで、慣性を利用して触媒を保持板に衝突させることにより衝撃を与えることも可能である。これは、図5を参照して次に説明する第2の実施形態におけるように触媒柵を水平方向に運動させる場合に、特に有効である。
(触媒の材質・作用)
本発明の触媒反応装置を適用できる触媒の材質や触媒作用は、流体、特にガスを原料とする触媒反応に用いられる触媒であれば、特に制限はない。流体がガスであり、触媒反応による生成物がガスと固体または液体とである触媒反応、中でも、触媒反応用流体が炭化水素を含有するガスであり、触媒反応による生成物がガスおよび固体または液体である触媒反応、特に、触媒反応用流体がタールを含有するガスであり、触媒反応による生成物が固体の炭化水素または固体のカーボンを含む触媒反応に用いられる触媒に好適に使用できる。
一般的には、上記のような触媒反応に用いられる酸化物触媒に広く使用でき、特に触媒反応用流体がタールを含有するガスであり、触媒反応による生成物が固体の炭化水素または固体のカーボンを含む触媒反応に用いられる酸化物触媒に好適に適用できる。
本発明の触媒反応装置に好適に使用できる触媒の具体的な例としては、たとえば、ニッケル、マグネシウム、セリウム、アルミニウムを含む酸化物であって、少なくとも1種の複合酸化物を含み、単独化合物としてアルミナを含まないタール含有ガスの改質用触媒を挙げることができる(WO2010/134326)。この複合酸化物の好適な例は、NiMgO、MgAl24、CeO2の結晶相からなり、さらには、各結晶相の内、X線回折測定により求めたNiMgO結晶相の(200)面の結晶子の大きさが1nm〜50nm、MgAl24結晶相の(311)面の結晶子の大きさが1nm〜50nm、CeO2結晶相の(111)面の結晶子の大きさが1nm〜50nmである。この触媒は、炭素質原料を熱分解した際に発生する多量の硫化水素を含み、炭素析出を起こし易い縮合多環芳香族主体のタール含有ガスであっても、随伴するタール等重質炭化水素を高効率に改質して、水素、一酸化炭素、メタンを主体とする軽質炭化水素に変換すること、また、触媒性能が劣化した際、水蒸気又は空気の少なくともいずれかを高温下で触媒に接触させることにより、触媒上の析出炭素や吸着硫黄を除去して触媒性能を回復させ長期間安定した運転が可能になるという特徴を有する。
(その他の適用可能な例)
本発明は、上記に例示した触媒反応装置及び触媒のほか、コーキング等を生じる、下記の触媒反応装置にも好適に使用できる。
1)メタン改質触媒反応装置: 特開2006−35172号公報の「比較例」には、炭化水素であるメタンガスを原料ガスとして大量のコーキング(炭素析出)が発生することが記載されている。
2)都市ガス改質触媒反応装置: 特許文献2にコーキングの事例が記載されている。
3)その他、LPG等の各種石油精製ガスや天然ガスの改質のための触媒反応装置、水素を含有するガスと酸化剤ガスを作用させて発電し、水を副生する、燃料電池用の触媒反応装置(例:特開2009−48797号公報)等に適用できる。
次に、図5を参照して第2の実施形態の連続式固定床触媒反応装置を説明する。この図の(a)は平面図、(b)正面図、(c)は側面図である。図5の触媒反応装置10は、触媒柵が触媒連を水平、または略水平方向に向けて反応容器内に配置されることを除いて、図1を参照して説明した第1の実施形態のものと同様である。ここで言う「略水平」とは、完全な水平の場合(触媒連の長手方向中心軸の方向が水平面と平行である場合)を含め、触媒連の長手方向中心軸の方向が水平面に対して0°〜20°の角度にあることを意味する。
この実施形態では、触媒連13の両端を保持板12に固定して、触媒柵14’が形成されている。触媒連13と保持板12との接合部に、第1の実施形態の触媒柵14(図1)で用いられるカラーは不要である。保持板12は触媒柵14’の下方へ延長して、支持部材25に接続しており、支持部材25が昇降機構15の伝導軸17と連結している。図5においても図1と同様に、各触媒連13における触媒51は、隣りあう触媒どうしがそれらの端面の一部だけで接するような形状であるが、図5においては簡単にするためそれらは端面の全体で接しているように描かれている。
第2の実施形態では、具体的な触媒として、図4を参照して説明した軸対称の触媒を用いてもよい。あるいは、例えば、図6に示す形状の触媒71を用いることができる。この図の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図6の触媒71のの形状は、中心に貫通孔72を有する円筒の両端面を斜めに切り落とした形状(すなわち、貫通孔の中心線に対し傾斜した端面を有する形状)とみなすことができ、触媒71が一様な密度分布の場合、一般に触媒の重心Gは、貫通孔72の中心軸上には存在しない。この触媒71のみを用いて触媒連を構成し、触媒連の中心軸を水平に保持した場合、触媒連内の全ての触媒は、重心Gが中心棒中心軸の下方に存在するように中心棒の周りで回転する。この結果、全ての触媒71の姿勢が触媒連内で同一となる、即ち、触媒71の位置の位相が一致するので、中心軸周りで隣り合う触媒位置の位相が180°異なることによる触媒端面73の全面接触の問題を回避することができる。この結果、本形状では隣り合う触媒端面73の勾配が反対となる(右側の触媒端面の傾斜は右上がり勾配、かつ、左側の触媒端面の傾斜は左上がり勾配となる)ので、隣りあう触媒どうしが接触する場合には、端面下端近傍のみでの接触となり、隣接触媒間に上方に向けて触媒反応容器内空間に対して開放された隙間が形成される。触媒端面形状は、平面であることが好ましいが、製造上の便宜等の理由から、曲面であってもよい。
あるいは、図7の形状の触媒81を用いることができる。この図の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図7の触媒81の形状は、円柱の両端面を斜めに切り落とすとともに、もとの円柱の中心軸に平行に、かつ、触媒81の長い側面寄りに貫通孔82を設けたものとみなすことができる。この場合の触媒81も、図6で説明した触媒71と同様に、密度分布が一様な場合、一般に触媒の重心Gは貫通孔82の中心軸上には存在しない。そして図6の形状の触媒と同様に、本触媒形状でも触媒連内で各触媒の位置の位相は一致する。隣りあう触媒どうしが接触する場合には、端面73の上端近傍のみでの接触となり、隣接触媒間に下方に向けて触媒反応容器内空間に対して開放された隙間が形成される。触媒端面形状は、やはり平面であることが好ましいが、製造上の便宜等の理由から、曲面であってもよい。
あるいは、触媒断面形状が実質的にリング状であれば本発明の効果を発揮できるので、図8の形状の触媒91を用いることができる。この図の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。図8の触媒91の形状は図6の触媒形状にスリットを設けたものであり、詳しく言えば、中心に貫通孔92を有する円筒の両端面を斜めに切り落とし、さらに貫通孔92に連絡するスリット95を設けたものである。触媒91でも、一様な密度分布の場合、一般にその重心Gは、貫通孔92の中心軸上には存在しない。そのため、図6に示した触媒71について説明したように、触媒端面93の全面接触の問題を回避することができる。さらに、触媒91のスリット95は、触媒91の半径方向での周方向熱膨張率差による触媒への熱応力を軽減することができる。この熱応力は、触媒加熱時の、触媒内での温度差や焼結程度の分布差によって生じるものである。
図6〜8で説明した触媒71、81、91において、各端面73、83、93の貫通孔72、82、92の中心軸に対する傾斜角は、例えば50〜85°とすることができる。後述の実施例では傾斜角が75°の触媒を用いた。
本発明で用いる触媒において、貫通孔の中心軸断面形状は触媒の可動性を確保するために円形または楕円形等の滑らかな形状が好ましい。その一方、触媒の中心軸垂直断面外縁の形状は、必ずしも円形である必要はなく、楕円形や多角形であってもよい。
この実施形態における特徴は、次のとおりである。
(1)触媒柵が触媒連を水平方向に向けて反応容器内に配置されており、すなわち、触媒連が主流に直交するように配置される。特に、主流からみて触媒連を千鳥配置にできる。これにより、主流の流れは、触媒連の側面である触媒表面に衝突して触媒連の両側を通るように流れの向きが曲げられる。この際、主流に対し垂直な方向に強い移流と乱流拡散を生じることによって、主流垂直方向での物質移動および熱移動が促進される。その結果、反応容器内を加熱する場合に反応容器表面に外部から供給された熱は、反応容器の内部深くまで輸送されるとともに、反応容器の厚み方向で触媒反応速度が異なったとしても物質輸送の効果によって厚み方向での流体濃度は均一化され、吹き抜けを生じにくい。特に、触媒連を千鳥配置した場合には、主流の流れは、絶えず触媒連との衝突によって曲げられるため、厚み方向での物質移動・熱移動が一層促進され、これらの効果がより顕著になる。
(2)触媒柵を上下に往復運動させることができる。これにより、個々の触媒の内孔と中心棒間で相対運動を生じて、それらの衝突が起きる。この衝突の際の振動を用いて、個々の触媒表面に生成したバルク状の固体生成物を脱落、除去することができる。
(3)触媒連中心棒の中心軸から各触媒の重心をずらす構造の触媒を用いることによって、重力を利用して触媒連内での触媒の位置の位相を揃えることができ、隣り合う触媒間の位置の位相差によって隣り合う触媒端面が完全に重なり隙間を生じない問題を回避することができる。
(4)別途、水平方向に触媒柵を往復運動させるための駆動装置を設けて、触媒柵を水平に往復運動させてもよい。これにより、第1の実施形態と同様に、触媒間で衝突を生じることによって、個々の触媒表面に生成したバルク状の固体生成物を脱落、除去することができる。
次に、図9を参照して第3の実施形態の連続式固定床触媒反応装置を説明する。図9の触媒反応装置10は、触媒連と保持板の構造が異なること、並びに、昇降機構のないことを除いて、図1を参照して説明した第1の実施形態のものと同様である。
第3の実施形態では、触媒連を構成する中心棒として、図10に示すリング状の中心棒52’を適用する。中心棒52’の全周で触媒51’を貫通して触媒連13’を構成する。本実施形態では中心棒側に曲率が存在しているので、触媒形状は、第1、第2の実施形態でのような特別な形状である必要は必ずしもなく、通常の円筒状の触媒を用いることができる。このとき、隣り合う触媒51’の端面は、リング状の触媒連13’の内側で接触するとともに、隣りあう触媒間には触媒連13’の外側に向けて隙間が形成される。リング状の中心棒52’で触媒51’を貫通する方法としては、例えば、中心棒を分割構造とし、分割状態で触媒を貫通した後、中心棒を組み立ててリング状にすることができる。図9に示したように、この触媒連13’を反応容器11内で単純に積み重ねて積層構造とし、最下段の触媒連は、反応容器11に固定された保持板12’上に積載され、それ以外の触媒連は、保持板等に固定する必要はない。
積層して隣接した触媒連の間にリング状等のスペーサ(図示せず)を挟んで、触媒連間の気流路を水平方向に集約してもよい。また、触媒連中心の空間をガスが吹き抜ける現象を抑制するために、触媒反応器中心部に触媒連の内径よりも直径の小さい円柱状のじゃま板(図示せず)を設けてもよい。
本実施形態では、昇降機構を設けていないが、触媒連13’内の触媒51’は、反応容器11に対する触媒の位置関係が完全に固定されるような触媒配置に比べて、気流が通気する際の流体力によって容易に揺動するので、触媒表面に堆積した固体カーボンの一部を落下除去できる。
このように本実施形態の触媒反応器では、複雑な構造が不要なので、内部構造を簡略化でき、装置を安価化できる。
本発明において可能な実施形態は、前述のものに限られることはない。例えば、第2の実施形態において、触媒連を水平に配置するのではなく、水平面に対し角度を与えて配置してもよい。第1、第2の実施形態において、触媒連を水平方向に往復動させてもよい。また、第1、第2の実施形態おいて、鉛直方向と水平方向の往復運動を組み合わせて触媒連を運動させてもよい。さらに、第1、第2の実施形態において、例えば触媒上に堆積する固体生成物が触媒から脱離しやすく、触媒柵を強制的に運動させる必要がない場合などには、駆動機構を省いてもよい。
以下の実施例により本発明をさらに説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(反応系全体の構成)
石炭供給装置(石炭ホッパー定量供給器)から、加熱されたキルンに20kg/時の速度で石炭を供給して石炭乾留ガス(石炭中の水分に起因する水蒸気を含む)を連続発生させた。触媒反応装置の流入口は、保温管によってキルンに接続し、触媒反応装置流出口は、保温管によってスクラバ経由で誘引ファンに接続した。石炭乾留ガスは、ガス中のタールが触媒反応容器で改質されて軽質ガス(水素等)を生成し、改質ガスとして誘引ファンによってフレアスタック(改質ガスを燃焼する)経由で大気中に放散させた。触媒反応容器は、炉温が一定温度に制御された電気加熱炉内に収容した。誘引ファンは、流量を調節でき、石炭乾留ガスの発生速度に対応する流量に制御された。
(触媒反応装置)
図5の触媒反応装置で試験した。反応容器は、ステンレス鋼製であり、寸法が80mm厚×300mm幅×700mm高さで、上下に開口を持つダクト形状であった。反応容器のダクトの上端に、JIS 80Aの流出管を、ダクトの下端にJIS 150Aの流入管を接続して通気するようにした。
(作業条件)
作業条件は、次のとおりであった。
・石炭乾留キルン温度: 750℃
・電気加熱炉炉温: 800℃
・石炭乾留ガス流量: 平均10Nm3/h
・石炭乾留ガス通気時間: 10時間
改質反応を始める前に、まず反応器を窒素雰囲気下で800℃まで昇温した後、水素ガスを80Nl/min流しながら30分間還元処理を行った。その後、コークス炉ガスを調整して導入し、常圧下、反応評価した。
以下の触媒7kgを図5に示した触媒反応装置に収容し、触媒柵中央位置に熱電対を挿入した。
(触媒)
触媒としては、Ni0.1Ce0.1Mg0.8Oなる成分系のものを使用した。
硝酸ニッケル、硝酸セリウム、硝酸マグネシウムを各金属元素のモル比が1:1:8になるように精秤して、60℃の加温で混合水溶液を調製したものに、60℃に加温した炭酸カリウム水溶液を加えて、ニッケル、マグネシウム、及びセリウムを水酸化物として共沈させ、スターラーで十分に攪拌した。その後、60℃に保持したまま一定時間攪拌を続けて熟成を行った後、吸引ろ過を行い、80℃の純水で十分に洗浄を行った。洗浄後に得られた沈殿物を120℃で乾燥し粗粉砕した後、空気中600℃で焼成(か焼)したものを解砕した後にビーカーに入れ、アルミナゾルを加えて攪拌羽根を取り付けた混合器で十分混合したものをなすフラスコに移してロータリーエバポレーターに取り付け、攪拌しながら吸引することで、水分を蒸発させた。なすフラスコ壁面に付着したニッケルとマグネシウムとセリウムとアルミナの化合物を蒸発皿に移して120℃で乾燥、600℃でか焼後、粉末を圧縮成形器を用いてプレス成型し、外径15mm、内径5mm、高さ15mmの円筒状成型体を得た。
その成型体を空気中950℃で焼成を行い、Ni0.1Ce0.1Mg0.8Oにアルミナが50質量%混合した触媒成型体を調製した。その成型体の成分をICP分析で確認した結果、所望の組成であることを確認した。また、その成型体を木屋式硬度計で計測したところ、約100Nの強度を保持することがわかった。次に、この円筒状成型体の両端面を研削して、図6に示す触媒形状に加工した。両端面の中心軸に対する傾斜角は75°とした。
(触媒柵)
直径4mm、長さ280mmのステンレス製丸棒を中心棒として使用して18個の前記触媒を貫通したものを触媒連とした。各触媒連の片端側を一方の保持器に溶接、もう一端側を他方の保持器に着脱式に取り付けて、前記触媒連を反応容器の厚方向に5列、高さ方向に22段の千鳥配置としとしたものを触媒柵とした。
(保持板の駆動機構)
・駆動装置昇降ストローク: 20mm
・駆動装置上昇速度: 10mm/秒
・駆動装置下降速度: 80mm/秒
・操作タイミング: 石炭乾留ガス通気開始後4時間で3往復の昇降を行う
(結果)
試験中に通気抵抗が徐々に上昇して2〜3kPa程度に達したが、触媒柵の往復運動を実施することで、急激に圧力損失を低減することができた。
試験終了後に、反応容器を冷却し、解体して使用後の触媒を回収して、走査蛍光X線による触媒断面の元素分布を調査した。その結果を、触媒を貫通孔中心軸に平行に切断した断面内におけるカーボン元素濃度分布として、図11(a)に示す。図11(a)は、図12に示したように使用済み触媒101から端面102を含む一部分103を分析サンプルとして切り出し、そのサンプルの切断断面104において測定したカーボン濃度をバブルチャートとして表示しており、各バブルの面積が分析したサンプルの所定位置でのカーボン濃度を示している(バブルの面積が大きいほど、その位置でのカーボン濃度が相対的に大きいことを示している)。触媒は多孔質なので、原料ガスが触媒内部まで浸透して改質されれば、その結果として触媒内部の気孔表面に固体カーボンが生成される。このため、カーボン元素が触媒サンプルの所定の位置に高濃度で存在するならば、その位置では通気中に触媒が新鮮な原料ガスに晒されていたと判断できる。図11(a)において、円筒形状の触媒の外側面と同程度の濃度のカーボン元素が、端面近傍に存在している。また、内側面近傍でも外側面に近い高い濃度のカーボン元素が存在している。従って、本発明によるこの実施例では、触媒端面や触媒内側面が新鮮な原料ガスに晒されて改質反応が効率的に行われたといえる。
[比較例1]
触媒を端面を研削しない円筒形状とし、これ以外の条件は実施例1と同様にして、石炭乾留ガス通気試験を行った。
試験終了後に、反応容器を冷却し、解体して使用後の触媒を回収して、走査蛍光X線による触媒断面の元素分布を調査した。その結果を図11(b)に示す。図11(b)において、カーボン元素は、外側面近傍では大きな濃度で存在するものの、端面および内側面ではごく小さな濃度でしか存在していない。これは、本比較例の触媒では隣り合う触媒端面間が密着して原料ガスが端面間に流入することが阻まれ、これに伴い、内側面への原料ガス供給流路も遮断されたためと考えられる。隣りあう端面どうしが接触する円筒状の触媒では、通気前に端面間に隙間を設けておいても、端面で一旦改質反応を生じると、短時間でこの隙間を、生成した固体カーボンが埋めてしまうことが観測された。従って、本比較例の触媒では、触媒端面および内側面では効率的に改質反応を行えなかったものと判断できる。
10 連続式固定床反応装置
11 反応容器
12、12’ 保持板
13、13’ 触媒連
51 触媒
14、14’ 触媒柵
15 駆動機構
16 昇降装置
17 伝導軸
18 原料ガス
19 改質ガス
20 原料ガス流入路
21 改質ガス流出路
22 カラー
51、51’ 触媒
52、52’ 中心棒
61、71、81、91 触媒
62、72、82、92 貫通孔
63、73、83、93 端面
95 スリット

Claims (8)

  1. 触媒反応用の原料ガスの流入路及び改質ガスの流出路と、
    流入路及び流出路に接続され、かつ触媒を収容する触媒反応容器と、
    を有する連続式固定床触媒反応装置であって、
    ・貫通孔を有する触媒と、
    ・複数の前記触媒を貫通してそれらの可動性を損なわない触媒連を形成する中心棒と、
    ・複数の前記中心棒を保持する保持板と、
    ・前記触媒反応容器内で前記保持板を往復運動させるための駆動機構と、
    を具備し、
    前記触媒は、前記触媒連において隣りあう触媒の端面がそれらの一部だけで互いに接し端面のその他の部分が反応器内空間に開放される形状を有する、
    ことを特徴とする、連続式固定床触媒反応装置。
  2. 前記中心棒が略水平に配置されるとともに、前記触媒の重心が貫通孔中心軸上とは異なる場所に存在することを特徴とする、請求項1に記載の連続式固定床触媒反応装置。
  3. 前記触媒がその貫通孔の中心線に対し傾斜した平面として形成された端面を有することを特徴とする、請求項2に記載の連続式固定床触媒反応装置。
  4. 前記中心棒がリング状であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の連続式固定床触媒反応装置。
  5. 前記触媒反応用の原料ガスが炭化水素を含有するガスであり、触媒反応による生成物がガスと固体の炭化水素または固体のカーボンとであることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の連続式固定床触媒反応装置。
  6. 前記触媒反応用の原料ガスがタールを含有するガスであることを特徴とする、請求項に記載の連続式固定床触媒反応装置。
  7. 前記触媒が、ニッケル、マグネシウム、セリウム、アルミニウムを含む複合酸化物であって、アルミナを含まない複合酸化物からなる触媒であり、前記複合酸化物が、NiMgO、MgAl24、CeO2の結晶相からなることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の連続式固定床触媒反応装置。
  8. 請求項1からのいずれか1項に記載の連続式固定床触媒反応装置を用いて、触媒反応を行うことを特徴とする、連続式固定床触媒反応方法。
JP2013045554A 2013-03-07 2013-03-07 連続式固定床触媒反応装置及びこれを用いた触媒反応方法 Active JP6132598B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013045554A JP6132598B2 (ja) 2013-03-07 2013-03-07 連続式固定床触媒反応装置及びこれを用いた触媒反応方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013045554A JP6132598B2 (ja) 2013-03-07 2013-03-07 連続式固定床触媒反応装置及びこれを用いた触媒反応方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014171943A JP2014171943A (ja) 2014-09-22
JP6132598B2 true JP6132598B2 (ja) 2017-05-24

Family

ID=51693794

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013045554A Active JP6132598B2 (ja) 2013-03-07 2013-03-07 連続式固定床触媒反応装置及びこれを用いた触媒反応方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6132598B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6789462B2 (ja) * 2015-08-28 2020-11-25 日本製鉄株式会社 触媒反応装置及び触媒反応方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4610770Y1 (ja) * 1966-09-01 1971-04-15
JPH115034A (ja) * 1997-04-24 1999-01-12 Touken Sangyo:Kk 光触媒用の酸化チタニウム成形体及びその集合配置体
JP2001280116A (ja) * 2000-03-30 2001-10-10 Akira Sugiyama ディーゼルエンジンの排ガス浄化装置
JP2004321841A (ja) * 2003-04-21 2004-11-18 Takuma Co Ltd 除塵脱臭装置と除塵脱臭方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014171943A (ja) 2014-09-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101566650B1 (ko) 연속식 고정상 촉매 반응 장치 및 이것을 사용한 촉매 반응 방법
JP5933284B2 (ja) 連続式固定床触媒反応器
JP4897112B2 (ja) タール含有ガス改質用触媒、タール含有ガス改質用触媒の製造方法、タール含有ガス改質用触媒を用いたタール含有ガス改質方法、及びタール含有ガス改質用触媒の再生方法
US9937484B2 (en) Reactor, CO2 sorbent system, and process of making H2 with simultaneous CO2 sorption
JP4215253B2 (ja) フィルター要素とフィルターグリッドを備えたフィルターアセンブリ
JP5924969B2 (ja) 粒状体処理装置
CN113896171A (zh) 蒸汽重整
JP4334340B2 (ja) 触媒または収着剤の床
GB2540240A (en) Catalyst particle
JP6045404B2 (ja) 連続式固定床触媒反応装置及びこれを用いた触媒反応方法
JP5904814B2 (ja) 粒状体処理装置及びこれを用いた粒状体処理方法
JP5826051B2 (ja) 連続式固定床触媒反応装置及びこれを用いた触媒反応方法
JP6132598B2 (ja) 連続式固定床触媒反応装置及びこれを用いた触媒反応方法
JP5840020B2 (ja) 粒状体処理装置及びこれを用いた粒状体処理方法
JP6066781B2 (ja) 連続式固定床触媒反応装置、および連続式固定床触媒反応方法
JP6066782B2 (ja) 粒状体処理装置、連続式固定床触媒反応装置、および連続式固定床触媒反応方法
JP5783919B2 (ja) 連続式固定床触媒反応装置及びこれを用いた触媒反応方法
JP5762318B2 (ja) 連続式固定床触媒反応装置及びこれを用いた触媒反応方法
JP6789462B2 (ja) 触媒反応装置及び触媒反応方法
JP4437696B2 (ja) 触媒反応装置
JP6574591B2 (ja) 触媒処理装置およびその製造方法
JP6327888B2 (ja) 石炭乾留ガスからの水素ガス製造装置および水素ガス製造方法
CN110354855B (zh) 一种除尘脱硝一体化无机膜管及其制备方法
WO2018023058A1 (en) Apparatus and system for forming solid carbon products

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160107

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160831

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160906

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161107

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170321

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170418

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6132598

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313115

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250