本発明は、以下に説明する複数の発明を包含する発明群に属する発明であり、以下に、その発明群の実施の形態として、第1,第2,第3の実施の形態および第1,第2の変形例について説明するが、そのうち、第3の実施の形態が、本出願人が特許請求の範囲に記載した発明に対応するものである。
以下、本発明に係る建設機械の旋回装置の実施の形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。ここで、1は建設機械の代表例である油圧ショベルを示し、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより大略構成されている。上部旋回体3の前部側には作業装置4が俯仰動可能に設けられ、この作業装置4を用いて掘削作業等を行うものである。また、下部走行体2と上部旋回体3との間には後述の旋回輪5が設けられ、上部旋回体3は旋回輪5を介して下部走行体2上に旋回可能に支持されている。
5は下部走行体2と上部旋回体3との間に設けられた旋回輪で、該旋回輪5は、図1に示す下部走行体2の支持筒体2A上に固定された内輪5Aと、上部旋回体3のベースとなる旋回フレーム3Aの下面側に固定された外輪5Bと、内輪5Aと外輪5Bとの間に設けられた多数の鋼球5C(1個のみ図示)とにより構成されている。また、内輪5Aの内周側には、全周に亘って内歯5Dが形成されている。そして、後述の旋回装置11が作動して旋回フレーム3Aに固定された外輪5Bが内輪5Aの周囲を回転することにより、上部旋回体3が下部走行体2上で旋回動作を行う構成となっている。
次に、第1の実施の形態による旋回装置11について説明する。
11は旋回輪5を介して下部走行体2上に支持された上部旋回体3を旋回させる旋回装置で、該旋回装置11は、後述するハウジング12と、旋回モータとしての油圧モータ15と、出力軸20と、遊星歯車減速機構25,26を含む減速機23と等により大略構成されている。
12は上部旋回体3の旋回フレーム3Aに上,下方向に配設された筒状のハウジングで、該ハウジング12は、旋回フレーム3Aの上面側に取付けられた下側ハウジング13と、該下側ハウジング13の上端側に取付けられた上側ハウジング14とからなり、旋回フレーム3Aの上面から上,下方向に延びている。
下側ハウジング13の下端側には、大径な環状のフランジ部13Aが設けられ、該フランジ部13Aは、ボルト13Bを用いて旋回フレーム3Aに締結されている。一方、上側ハウジング14は、ボルト14Aを用いて下側ハウジング13の上端側に締結されている。また、上側ハウジング14の内周側には、上,下方向に延びる内歯車14Bが全周に亘って形成されている。そして、上側ハウジング14の上端側には、後述するモータハウジング16がボルト16Dを用いて締結されている。
15は上側ハウジング14の上端側に設けられた旋回モータとしての油圧モータを示している。該油圧モータ15は、例えば斜板式の油圧モータからなり、モータハウジング16と、モータ軸19等により大略構成されている。そして、油圧モータ15は、上部旋回体3に搭載された油圧ポンプ(図示せず)等から圧油を給排して回転源(図示せず)を駆動させてモータ軸19を回転させることにより、下部走行体2上で上部旋回体3を旋回させるものである。
16は内部にシリンダ等の回転源(図示せず)を収容した筒状のモータハウジングで、該モータハウジング16は、油圧モータ15の外殻を構成するものである。モータハウジング16の下端側は、径方向外側に向けて突出して設けられた環状のフランジ部16Aと、該フランジ部16Aから径方向内側に向けて延びる底部16Bと、該底部16Bから上側ハウジング14内に向けて突出する軸受収容部16Cとにより構成されている。
モータハウジング16のフランジ部16Aは、ボルト16Dを用いて上側ハウジング14の上端側に締結されている。そして、軸受収容部16Cは、後述のモータ軸19を支持する軸受17を収容するための軸受支持部16C1と、該軸受支持部16C1から後述の太陽歯車26に向けて突出したスラストプレート当接部16C2とにより円筒状に形成されている。また、軸受収容部16Cの内周側は、軸受17を介して後述のモータ軸19が挿通されるモータ軸挿通孔16C3となっている。軸受17の下側には、軸受収容部16Cと後述のモータ軸19との間をシールするオイルシール18が設けられている。
スラストプレート当接部16C2の下端面16C4は、水平方向に平坦な環状に形成され、後述のスラストプレート37に対面している。そして、後述する上段の遊星歯車減速機構25のキャリア28が上方に向けて移動(変位)したときに、スラストプレート当接部16C2の下端面16C4は、スラストプレート37と当接(摺動)する構成となっている。
19はモータハウジング16内に上,下方向に延びて設けられたモータ軸を示している。該モータ軸19は、下端側が軸受収容部16Cのモータ軸挿通孔16C3を通じて下方に向けて突出し、後述する上段の遊星歯車減速機構25に連結されている。ここで、モータ軸19の下端側は、軸受収容部16Cの軸受支持部16C1に設けられた軸受17によって回転可能に支持され、モータ軸19の上端側は、モータハウジング16に軸受(図示せず)を介して回転可能に支持されている。
そして、モータ軸19の軸方向の中間部位は、例えばスプライン結合等により回転源(図示せず)と結合されている。一方、軸受収容部16Cから突出したモータ軸19の下端部には、雄スプライン部19Aが形成され、この雄スプライン部19Aは、後述する太陽歯車26に形成された雌スプライン部26Cにスプライン結合されている。これにより、モータ軸19は、モータハウジング16内の回転源により回転駆動され、この回転力を後述する上段の遊星歯車減速機構25に伝達する構成となっている。
20は後述する減速機23によって減速された油圧モータ15の回転を出力する出力軸で、該出力軸20は、下側ハウジング13内に上側軸受21、下側軸受22を介して回転可能に支持され、下側ハウジング13内を上,下方向に延びている。ここで、出力軸20の上端側には雄スプライン部20Aが形成され、該雄スプライン部20Aは、後述する下段の遊星歯車減速機構24のキャリア24Cにスプライン結合されている。
一方、出力軸20の下端側には、ピニオン20Bが一体に設けられ、該ピニオン20Bは、下側ハウジング13の下端部から下方に突出し、旋回輪5の内輪5Aに設けられた内歯5Dに噛合している。即ち、出力軸20は、後述する各遊星歯車減速機構25,24によって2段減速された油圧モータ15の回転を出力するものである。
次に、油圧モータ15の下側に配置された減速機23について説明する。
23は油圧モータ15の下側に配置された減速機で、該減速機23は、油圧モータ15の回転を減速して出力軸20に出力するものである。ここで、減速機23は、最上段に位置する上段の遊星歯車減速機構25と、2段目(次段)に位置する下段の遊星歯車減速機構24とにより構成されている。
24は上側ハウジング14内の下側に配設された下段の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構24は、後述する上段の遊星歯車減速機構25の回転を減速して出力軸20に伝達するものである。遊星歯車減速機構24は、後述する上段の遊星歯車減速機構25のキャリア28にスプライン結合された太陽歯車24Aと、該太陽歯車24Aと上側ハウジング14の内歯車14Bの下側とに噛合し、太陽歯車24Aの周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車24B(1個のみ図示)と、該各遊星歯車24Bを回転可能に支持するキャリア24Cとにより構成されている。そして、遊星歯車減速機構24のキャリア24Cは、出力軸20の上端側に設けられた雄スプライン部20Aにスプライン結合される構成となっている。
次に、上段の遊星歯車減速機構25について説明する。
25は上側ハウジング14内の上側に配設された上段の遊星歯車減速機構で、該遊星歯車減速機構25は、油圧モータ15と下段の遊星歯車減速機構24との間に配置され、油圧モータ15(モータ軸19)の回転を減速して下段の遊星歯車減速機構24に伝達するものである。そして、遊星歯車減速機構25は、後述する太陽歯車26と、遊星歯車27と、キャリア28とにより大略構成されている。
26は油圧モータ15のモータ軸19に接続された太陽歯車を示している。該太陽歯車26は、後述する遊星歯車27と噛合する歯車部26Aと、該歯車部26Aの上面26A1から上方に向けて突出する円形状の突出部26Bと、歯車部26Aと突出部26Bとを上,下方向(軸方向)に貫通する雌スプライン部26Cとにより段付状の円筒体となっている。太陽歯車26は、後述するキャリア28内で後述のプレート35上に配置されている。そして、太陽歯車26の雌スプライン部26Cは、油圧モータ15のモータ軸19の下端側に形成された雄スプライン部19Aにスプライン結合される。従って、太陽歯車26は、モータ軸19と一体的に回転するものである。
27は太陽歯車26と上側ハウジング14に設けられた内歯車14Bとに噛合する複数の遊星歯車を示している。該各遊星歯車27は、太陽歯車26の歯車部26Aよりも小径な円筒体として形成され、後述する遊星歯車配設孔32に配設されている。即ち、遊星歯車27は、太陽歯車26と内歯車14Bとの間で周方向に離間して3個設けられている(図4参照)。この場合、遊星歯車27の上面27Aは、太陽歯車26の歯車部26Aの上面26A1と同一平面上に配置されている。そして、各遊星歯車27は、後述するキャリア28の歯車支持軸33に回転可能に支持され、太陽歯車26と内歯車14Bとの間で、太陽歯車26の周囲を自転しつつ公転する。
28は各遊星歯車27を回転可能に支持する両持ち支持構造のキャリアで、該キャリア28は、図3および図4に示すように、内歯車14Bの歯先円径よりも僅かに小径な円板状をなし、各遊星歯車27を軸方向から挟む上支持板29,下支持板30と、これら上,下の支持板29,30間を連結し周方向に均等な間隔をもって離間した複数(3個)の連結部31と、上支持板29と下支持板30との間で遊星歯車27を回転可能に支持する後述の歯車支持軸33とにより構成されている。
そして、キャリア28は、上支持板29と下支持板30と連結部31とが例えば鋳造等によって一体形成されている。即ち、キャリア28は、歯車支持軸33の上,下方向の両端側を上支持板29と下支持板30とにより両持ち支持するものである。
上支持板29は、その中心部に太陽歯車26が挿通される太陽歯車挿通孔29Aが穿設され、該太陽歯車挿通孔29Aの周囲には、各連結部31間に位置して3個の上側支持軸挿嵌孔29Bが穿設されている。太陽歯車挿通孔29Aの下端縁29A1と太陽歯車26との間には、後述するスラストプレート37を挿通させる隙間29Cが形成されている。そして、上支持板29の下面29Dには、後述するスラストプレート37の上面38Aが当接する。
一方、下支持板30の中心部には、下段の遊星歯車減速機構24に向けて突出する筒部30Aが設けられている。該筒部30Aの内周側は、下段の遊星歯車減速機構24の太陽歯車24Aの上端側にスプライン結合する雌スプライン部30Bが形成されている。該雌スプライン部30Bの周囲には、上支持板29の各上側支持軸挿嵌孔29Bに対応する位置に下側支持軸挿嵌孔30Cが穿設されている。即ち、下側支持軸挿嵌孔30Cは、各連結部31間に位置して3個穿設されている。
また、各連結部31間は、遊星歯車27が配設される遊星歯車配設孔32となっている。即ち、遊星歯車27は、遊星歯車配設孔32内で上側支持軸挿嵌孔29Bと下側支持軸挿嵌孔30Cとの間に配設された状態で、後述の歯車支持軸33により回転可能に支持され、太陽歯車26と内歯車14Bとに噛合している。
33は上支持板29の上側支持軸挿嵌孔29Bと、下支持板30の下側支持軸挿嵌孔30Cとによって両持ち支持された複数(3個)の歯車支持軸で、該歯車支持軸33は、遊星歯車27を回転可能に支持するものである。各歯車支持軸33は、上端側が上側支持軸挿嵌孔29Bに挿嵌され、下端側が下側支持軸挿嵌孔30Cに挿嵌されることにより、両持ち支持され、軸受34を介して各遊星歯車27を回転可能に支持している。
この場合、キャリア28は、各歯車支持軸33によって遊星歯車27を回転可能に支持し、各遊星歯車27が太陽歯車26の周囲を公転することにより回転し、この回転を下段の遊星歯車減速機構24に伝達するものである。そして、キャリア28から遊星歯車減速機構24には大きな回転力(トルク)が伝達されるため、遊星歯車27を支持する歯車支持軸33には大きな負荷が作用するが、キャリア28は、上支持板29と下支持板30とによって各歯車支持軸33を両持ち支持しているので、歯車支持軸33に作用する負荷を確実に受承できるようになっている。即ち、キャリア28は、歯車支持軸33を両持ち支持構造とすることにより強度を高くしている。
35は下支持板30の雌スプライン部30Bの上側に配設された環状のプレートで、該プレート35は、上段の遊星歯車減速機構25の太陽歯車26と、下段の遊星歯車減速機構24の太陽歯車24Aとの間に位置して、太陽歯車26が下側に移動するのを規制している。
36は下支持板30と遊星歯車27との間に設けられた環状の摺動板で、該摺動板36は、遊星歯車27を下支持板30に対して円滑に回転させるものである。この摺動板36により、遊星歯車27の下面と下支持板30の上面の摩耗を抑制している。
次に、第1の実施の形態に用いられるスラストプレート37について説明する。
37はキャリア28の3個の歯車支持軸33のうち、1個の歯車支持軸33に設けられたスラストプレートを示している。該スラストプレート37は、歯車支持軸33から太陽歯車26に向けて延び、長さ方向の中間部がくびれた略メガネ形状に形成されている。スラストプレート37は、太陽歯車26に係合して太陽歯車26が油圧モータ15のモータ軸19に沿って移動するのを規制するものである。そして、スラストプレート37は、支持軸側係合部38と、くびれ部39と、太陽歯車側係合部40とにより構成されている。
38はキャリア28の歯車支持軸33に係合する支持軸側係合部で、該支持軸側係合部38は、外周側が円弧状に形成され、その外径寸法Aは遊星歯車27の外径寸法(歯先円径)よりも小さく、歯車支持軸33の外径寸法よりも大きく形成されている(図4参照)。また、支持軸側係合部38には、上面38Aから下面38Bに向けて貫通する支持軸側円形孔38Cが形成されている。この支持軸側円形孔38Cの直径寸法(孔径)は、歯車支持軸33の外径寸法とほぼ同じ寸法ないし若干大きい寸法に形成されている。これにより、支持軸側円形孔38Cを歯車支持軸33に挿通させて、支持軸側係合部38を歯車支持軸33に係合させる構成となっている。
この場合、支持軸側係合部38は、遊星歯車27とキャリア28の上支持板29との間に挟持される(図3参照)。これにより、スラストプレート37は、キャリア28と共に回転しつつ、上,下方向の移動を規制されている。その結果、太陽歯車26がモータ軸19の雄スプライン部19Aに沿って上方に移動するのを規制する構成となっている。従って、太陽歯車26と遊星歯車27との噛合い状態を常に良好に保つことができるので、太陽歯車26や遊星歯車27の寿命を向上することができる。
また、スラストプレート37の支持軸側係合部38の下面38Bは、遊星歯車27の上面27Aに当接(摺動)するので、遊星歯車27を上支持板29に対して円滑に回転させることができ、遊星歯車27の上面27Aと上支持板29の下面29Dの摩耗を抑制することができる。
39は支持軸側係合部38から太陽歯車26側に向けて延びるくびれ部で、該くびれ部39は、支持軸側係合部38と後述する太陽歯車側係合部40との間を連結するものである。くびれ部39は、支持軸側係合部38および後述する太陽歯車側係合部40と同一平面を形成している。くびれ部39の幅方向寸法Bは、後述する太陽歯車側係合部40の外径寸法Cよりも小さく形成され、その外形形状は、太陽歯車側係合部40からくびれ部39に向けて滑らかに凹湾曲状となっている(図4参照)。
ここで、スラストプレート37の太陽歯車側係合部40を太陽歯車26の突出部26Bに係合させるときには、スラストプレート37を支持軸側係合部38側から太陽歯車26とキャリア28の太陽歯車挿通孔29Aとの間の隙間29Cに挿入して、太陽歯車側係合部40の太陽歯車側円形孔40Cを太陽歯車26の突出部26Bに挿通させる(図5参照)。この場合、くびれ部39の幅寸法Bは、くびれ部39の両端縁39A,39Bがキャリア28の太陽歯車挿通孔29Aの下端縁29A1に当接しない寸法に設定されている。換言すると、くびれ部39の幅寸法Bは、スラストプレート37を隙間29Cに挿入して差し込んでいくときに、くびれ部39の両端縁39A,39Bが太陽歯車挿通孔29Aの下端縁29A1をかわすことができる短い寸法に設定されている。
40はくびれ部39から太陽歯車26の突出部26B側に向けて延びる太陽歯車側係合部で、該太陽歯車側係合部40は、太陽歯車26の突出部26Bに係合する部位である。太陽歯車側係合部40は、外周側が円弧状に形成され、その外径寸法Cは太陽歯車26の歯車部26Aの外径寸法(歯先円径)よりも小さく、突出部26Bの外径寸法よりも大きく形成されている(図4参照)。
太陽歯車側係合部40には、上面40Aから下面40Bに向けて貫通する円形孔としての太陽歯車側円形孔40Cが形成されている。この太陽歯車側円形孔40Cの直径寸法(孔径)は、太陽歯車26の突出部26Bの外径寸法よりも若干大きく形成されている。これにより、太陽歯車側円形孔40Cを太陽歯車26の突出部26Bに挿通させて、太陽歯車側係合部40の下面40Bを太陽歯車26の上面26A1に広く当接させることができるので、太陽歯車26の上方への移動を安定して抑制することができる。
この場合、スラストプレート37は、キャリア28と共に回転し、キャリア28は、太陽歯車26の回転速度に比べて減速比分だけ減速した速度で回転する。その結果、太陽歯車26とスラストプレート37の太陽歯車側係合部40との摺動による摩擦を低減させることができるので、太陽歯車26とスラストプレート37の摺動磨耗量やロストルク、および発熱を抑制することができる。
また、太陽歯車26と係合する部位である太陽歯車側係合部40は、その上面40Aがモータハウジング16のスラストプレート当接部16C2の下端面16C4に対面している。そして、キャリア28が上方に移動したときに、太陽歯車側係合部40の上面40Aとスラストプレート当接部16C2の下端面16C4とが当接(摺動)する構成となっている。これにより、モータ軸19にスラスト荷重が生じるのを抑制することができるので、油圧モータ15にかかる負担を低減することができる。
次に、第1の実施の形態に係る上段の遊星歯車減速機構25の組付け手順について説明する。
まず、キャリア28の上支持板29に形成された太陽歯車挿通孔29Aからプレート35を挿通して、下支持板30の雌スプライン部30Bの上側に載置する。そして、太陽歯車26を太陽歯車挿通孔29Aから挿通してプレート35上に載置する。
次に、太陽歯車26と太陽歯車挿通孔29Aとの間の隙間29Cに、スラストプレート37を支持軸側係合部38側から挿入して、太陽歯車側係合部40の太陽歯車側円形孔40Cを太陽歯車26の突出部26Bに挿通する。これにより、スラストプレート37の太陽歯車側係合部40を、太陽歯車26に係合させることができる。
ここで、スラストプレート37の長さ方向の中間部には、太陽歯車側係合部40の外径寸法Cよりも小さい幅寸法Bのくびれ部39が形成されている。これにより、スラストプレート37が、太陽歯車側円形孔40Cを太陽歯車26の突出部26Bに挿通することができる位置に到達する前に、上支持板29の太陽歯車挿通孔29Aの下端縁29A1とスラストプレート37の端縁39A,39Bとが当接(干渉)するのを抑制している。
そして、スラストプレート37の支持軸側係合部38の支持軸側円形孔38Cを上支持板29の上側支持軸挿嵌孔29Bと同軸上に位置させた状態で、支持軸側係合部38の下側に遊星歯車27と摺動板36とを配設する。その後、上側支持軸挿嵌孔29Bと、スラストプレート37の支持軸側円形孔38Cと、遊星歯車27と、摺動板36と、下側支持軸挿嵌孔30Cとに歯車支持軸33を挿通させて、歯車支持軸33の上,下方向の両端側を上側支持軸挿嵌孔29Bと下側支持軸挿嵌孔30Cとに挿嵌させることにより、上段の遊星歯車減速機構25を組付けることができる。
本実施の形態による建設機械の旋回装置11は上述の如き構成を有するもので、油圧モータ15に作動油が供給されてモータ軸19が回転すると、このモータ軸19の回転が、減速機23の上段の遊星歯車減速機構25,下段の遊星歯車減速機構24によって2段減速されて出力軸20に伝わり、ピニオン20Bは大きな回転力(トルク)をもって回転する。そして、ピニオン20Bが、旋回輪5の内輪5Aに設けた内歯5Dに噛合しつつ内輪5Aに沿って公転し、このピニオン20Bの公転力が旋回フレーム3Aに伝わることにより、上部旋回体3が下部走行体2上で旋回動作を行う。
本実施の形態では、上段の遊星歯車減速機構25には、歯車支持軸33の上,下方向の両端側をそれぞれ両持ち支持する両持ち支持構造のキャリア28を用いることにより、強度を高くしている。即ち、遊星歯車減速機構25のキャリア28から下段の遊星歯車減速機構24には大きな回転力(トルク)が伝達されるため、遊星歯車27を支持する歯車支持軸33には大きな負荷が作用するが、キャリア28は、上支持板29と下支持板30とによって各歯車支持軸33を両持ち支持しているので、歯車支持軸33に作用する負荷を確実に受承できるようになっている。
この場合、例えば太陽歯車26がモータ軸19に沿って上方に移動すると、太陽歯車26と遊星歯車27との噛合う長さが短くなり、小さい接触面積でトルクを伝達することになる。その結果、太陽歯車26と遊星歯車27との接触面圧が高くなり、太陽歯車26や遊星歯車27の寿命が低下する虞がある。
そこで、本実施の形態では、キャリア28の歯車支持軸33のうちいずれか1つの歯車支持軸33には、太陽歯車26がモータ軸19に沿って移動するのを規制するスラストプレート37を設けている。スラストプレート37は、太陽歯車26と歯車支持軸33との間に延びる薄板材で、支持軸側係合部38が歯車支持軸33に係合された状態で、遊星歯車27と上支持板29との間に挟持されている。そして、スラストプレート37の太陽歯車側係合部40の下面40Bを、太陽歯車26の歯車部26Aの上面26A1に当接させて、太陽歯車26がモータ軸19に沿って上方に移動するのを規制している。
これにより、太陽歯車26が上方に移動して太陽歯車26と遊星歯車27との噛合い長さが短くなるのを抑制することができる。その結果、太陽歯車26と遊星歯車27との接触面圧が高くなるのを抑制し、太陽歯車26や遊星歯車27の寿命を向上することができる。
また、キャリア28は、太陽歯車26の回転速度に比べて減速比分だけ減速した速度で回転し、スラストプレート37はキャリア28と共に回転する。その結果、太陽歯車26とスラストプレート37との摺動による摩擦を低減させることができるので、太陽歯車26とスラストプレート37の摺動磨耗量やロストルク、および発熱を抑制することができる。
また、スラストプレート37の太陽歯車側係合部40には、太陽歯車側円形孔40Cを形成している。これにより、太陽歯車26の歯車部26Aの上面26A1とスラストプレート37の太陽歯車側係合部40の下面40Bとの当接面積を広くとることができるので、太陽歯車26の上方への移動を安定して抑制することができる。
さらに、キャリア28が上方に向けて移動したときに、スラストプレート37は、モータハウジング16の下端側に設けられたスラストプレート当接部16C2の下端面16C4に当接するので、モータ軸19にスラスト荷重が生じるのを抑制することができる。これにより、油圧モータ15にかかる負担を低減することができる。
また、スラストプレート37は、太陽歯車26の回転速度に比べて減速比分だけ減速した速度で回転している。その結果、太陽歯車26がスラストプレート当接部16C2に直接当接する場合に比べて摺動による摩擦を低減させることができるので、太陽歯車26およびスラストプレート当接部16C2の摺動磨耗量やロストルク、および発熱を抑制することができる。
次に、図7ないし図9は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、スラストプレートの太陽歯車側係合部に凹円弧状の凹溝を形成したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
41は第1の実施の形態によるスラストプレート37に代えて用いられるスラストプレートで、該スラストプレート41は、歯車支持軸33から太陽歯車26に向けて延び、太陽歯車26が油圧モータ15のモータ軸19に沿って移動するのを規制するものである。そして、スラストプレート41は、支持軸側係合部42と、くびれ部43と、太陽歯車側係合部44とにより構成されている。
42はキャリア28の歯車支持軸33に係合する支持軸側係合部で、該支持軸側係合部42には、上面42Aから下面42Bに向けて貫通する支持軸側円形孔42Cが形成されている。この支持軸側円形孔42Cの直径寸法は、歯車支持軸33の外径寸法とほぼ同じ寸法ないし若干大きい寸法に形成されている。これにより、支持軸側円形孔42Cを歯車支持軸33に挿通させて、支持軸側係合部42を歯車支持軸33に係合させる構成となっている。
この場合、支持軸側係合部42は、遊星歯車27とキャリア28の上支持板29との間に挟持される。これにより、スラストプレート41は、キャリア28と共に回転しつつ、上,下方向の移動を規制されている。その結果、太陽歯車26がモータ軸19の雄スプライン部19Aに沿って上方に移動するのを規制する構成となっている。
43は支持軸側係合部42から太陽歯車26側に向けて延びるくびれ部で、該くびれ部43は、支持軸側係合部42と後述する太陽歯車側係合部44との間を接続するものである。くびれ部43の幅方向寸法は、後述の太陽歯車側係合部44の幅寸法Eよりも小さく形成され、その外形形状は、太陽歯車側係合部44からくびれ部43に向けて滑らかに凹湾曲状となっている(図7参照)。
44はくびれ部43から太陽歯車26の突出部26B側に向けて延びる太陽歯車側係合部で、該太陽歯車側係合部44は、太陽歯車26の突出部26Bに係合する部位である。太陽歯車側係合部44は、長さ方向の一側が開口した凹状に形成されている(図9参照)。具体的には、太陽歯車側係合部44には、上面44Aから下面44Bに向けて貫通し、太陽歯車26の突出部26Bに外周側から係合する凹円弧状の凹溝44Cが形成されている。この凹溝44Cの開口寸法Dは、太陽歯車26の突出部26Bの外径寸法よりも若干大きく形成されている。また、太陽歯車側係合部44の幅寸法Eは、キャリア28の隣合う連結部31間の最小間隔寸法Fよりも小さく形成されている。
これにより、図8に示すように、スラストプレート41は、上支持板29と下支持板30との間に形成された遊星歯車配設孔32から挿入して、太陽歯車側係合部44を太陽歯車26の突出部26Bに外周側から係合させることができる構成となっている。従って、簡単にスラストプレート41を太陽歯車26に係合させることができるので、組立作業の作業性を向上させることができる。
この場合、太陽歯車側係合部44の上面44Aは、モータハウジング16のスラストプレート当接部16C2の下端面16C4に対面している。そして、キャリア28が上方に移動したときに、太陽歯車側係合部44の上面44Aとスラストプレート当接部16C2の下端面16C4とが当接(摺動)する構成となっている。
かくして、このように構成された第2の実施の形態の建設機械の旋回装置においても、第1の実施の形態と同様の作用、効果を得ることができる。特に、本実施の形態においては、スラストプレート41の太陽歯車側係合部44に凹溝44Cを形成したことにより、上支持板29と下支持板30との間に形成された遊星歯車配設孔32からスラストプレート41を挿入して、太陽歯車側係合部44を太陽歯車26の突出部26Bに外周側から係合させることができる。これにより、簡単にスラストプレート41を太陽歯車26に係合させることができるので、組立作業の作業性を向上させることができる。
次に、図10および図11は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、スラストプレートを段付状に形成したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
51は第1の実施の形態による太陽歯車26に代えて用いられる太陽歯車で、該太陽歯車51は、遊星歯車27と噛合する歯車部51Aと、該歯車部51Aから上方に向けて突出する突出部51Bと、歯車部51Aと突出部51Bとを上,下方向(軸方向)に貫通する雌スプライン部51Cとにより段付状の円筒体となっている。図10に示すように、歯車部51Aの上面は、遊星歯車27の上面27Aとほぼ同一平面上に位置する下段面51A1と、該下段面51A1よりも上方に突出した上段面51A2とにより段付状に形成されている。即ち、上段面51A2は、遊星歯車27の上面27Aよりも上方に位置している。
そして、突出部51Bは、上段面51A2から上方に向けて突出し、太陽歯車51の雌スプライン部51Cは、油圧モータ15のモータ軸19の下端側に形成された雄スプライン部19Aにスプライン結合され、太陽歯車51はモータ軸19と一体的に回転する。
52は第1の実施の形態によるスラストプレート37に代えて用いられるスラストプレートで、該スラストプレート52は、太陽歯車26が油圧モータ15のモータ軸19に沿って移動するのを規制するものである。そして、スラストプレート52は、支持軸側係合部53と、段差付連接部54と、太陽歯車側係合部55とにより構成されている。
53はキャリア28の歯車支持軸33に係合する支持軸側係合部で、該支持軸側係合部53は、歯車支持軸33に係合した状態で、キャリア28の上支持板29と遊星歯車27との間に挟持され、太陽歯車26に向けて水平方向に延びている。支持軸側係合部53には、上面53Aから下面53Bに向けて貫通する支持軸側円形孔53Cが形成されている。この支持軸側円形孔53Cの直径寸法(孔径)は、歯車支持軸33の外径寸法とほぼ同じ寸法ないし若干大きい寸法に形成されている。これにより、支持軸側円形孔53Cを歯車支持軸33に挿通させて、支持軸側係合部53を歯車支持軸33に係合させる構成となっている。
この場合、支持軸側係合部53は、遊星歯車27とキャリア28の上支持板29との間に挟持される(図10参照)。これにより、スラストプレート52は、キャリア28と共に回転しつつ、上,下方向の移動を規制されている。その結果、太陽歯車51がモータ軸19の雄スプライン部19Aに沿って上方に移動するのを規制する構成となっている。
54は支持軸側係合部53から斜め上側に向けて延び、上,下方向に段差を有する段差付連接部で、該段差付連接部54は、支持軸側係合部53と後述する太陽歯車側係合部55との間を傾斜した段差をもって連結するものである。段差付連接部54は、スラストプレート52を歯車支持軸33と太陽歯車51とに係合させた状態で、キャリア28の上支持板29よりも太陽歯車51側に位置している。段差付連接部54の高さ寸法は、遊星歯車27の上面27Aから太陽歯車51の上段面51A2までの高さ寸法と同じ寸法となっている。
また、段差付連接部54の幅方向寸法は、後述する太陽歯車側係合部55の外径寸法よりも小さく形成され、その外形形状は、太陽歯車側係合部55から段差付連接部54に向けて滑らかに凹湾曲状となっている(図11参照)。これにより、スラストプレート52を、支持軸側係合部53側から太陽歯車51とキャリア28の太陽歯車挿通孔29Aとの間の隙間29Cに挿入し、スラストプレート52の太陽歯車側係合部55を太陽歯車51に係合させるときに、スラストプレート52は上支持板29の下端縁29A1をかわすことができる。
55は段差付連接部54から太陽歯車51の突出部51B側に向けて延びる太陽歯車側係合部で、該太陽歯車側係合部55は、太陽歯車51の突出部51Bに係合する部位である。太陽歯車側係合部55は、外周側が円弧状に形成され、その外径寸法は太陽歯車51の歯車部51Aの外径寸法(歯先円径)よりも小さく、突出部51Bの外径寸法よりも大きく形成されている。
また、太陽歯車側係合部55には、上面55Aから下面55Bに向けて貫通する円形孔としての太陽歯車側円形孔55Cが形成されている。この太陽歯車側円形孔55Cの直径寸法(孔径)は、太陽歯車51の突出部51Bの外径寸法よりも若干大きく形成されている。これにより、太陽歯車側円形孔55Cを太陽歯車51の突出部51Bに挿通させて、太陽歯車側係合部55を太陽歯車51に係合させることができる構成となっている。
この場合、太陽歯車側係合部55は、下面55Bが太陽歯車51の上段面51A2に当接(摺動)した状態で歯車支持軸33に向けて水平方向に延びている。また、太陽歯車側係合部55の上面55Aは、モータハウジング16のスラストプレート当接部16C2の下端面16C4に対面している。そして、キャリア28が上方に移動したときに、太陽歯車側係合部55の上面55Aとスラストプレート当接部16C2の下端面16C4とが当接(摺動)する構成となっている。
かくして、このように構成された第3の実施の形態の建設機械の旋回装置においても、第1の実施の形態と同様の作用、効果を得ることができる。特に、本実施の形態においては、スラストプレート52の支持軸側係合部53と太陽歯車側係合部55との間に段差付連接部54を形成したことにより、遊星歯車27の上面27Aと太陽歯車51の上面(上段面51A2)との間に段差がある場合でも、この段差を段差付連接部54によって吸収することができる。その結果、スラストプレート52をがたつくことなく太陽歯車51と歯車支持軸33とに組付けることができるので、太陽歯車がモータ軸に沿って移動するのを安定して規制することができる。
なお、上述した第2の実施の形態では、スラストプレート41の支持軸側係合部42には、歯車支持軸33に係合する支持軸側円形孔42Cを設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図12および図13に示す第1の変形例のように、スラストプレート61は、支持軸側係合部62と、くびれ部63と、凹溝としての太陽歯車側凹溝64Aを有する太陽歯車側係合部64とにより構成し、支持軸側係合部62にも支持軸側凹溝62Aを形成してもよい。これにより、スラストプレートを可及的に小さくコンパクトにすることができるので、歩留まりを向上させることができる。このことは、第1,第3の実施の形態についても同様である。
また、上述した第2の実施の形態では、スラストプレート41は、太陽歯車側係合部44の外径寸法Eよりも小さい幅寸法のくびれ部43を形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図14および図15に示す第2の変形例のように、スラストプレート71の支持軸側係合部72から太陽歯車側係合部73までの幅方向寸法を同じ寸法に形成してもよい。これにより、スラストプレートは、くびれ部分を加工する必要がないので、スラストプレートの製造作業の作業性を向上させることができる。
また、上述した第1の実施の形態では、スラストプレート37の外形形状を太陽歯車側係合部40から支持軸側係合部38に向けて両端側を凹湾曲状に形成したくびれ部を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば太陽歯車側係合部から支持軸側係合部に向けて先細りとなるように徐々に縮径させてもよい。また、連接部の幅寸法を支持軸側係合部の外径寸法とほぼ同じ寸法で、連接部の両端側の外形形状を直線状に形成してもよい。このことは、第2,第3の実施の形態および第1の変形例についても同様である。
また、上述した第3の実施の形態では、連接部を支持軸側係合部53から太陽歯車側係合部55に向けて斜め上側に傾斜する段差付連接部54とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば段差付連接部を支持軸側係合部から太陽歯車側係合部に向けて略90度上側に立上る垂直部としてもよい。
また、上述した第3の実施の形態では、略メガネ形状のスラストプレート52を段付状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第2の実施の形態によるスラストプレート41を段付状に形成してもよい。このことは、第1,第2の変形例についても同様である。
また、上述した実施の形態では、旋回モータとして油圧モータ15を用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば旋回モータとして電動モータを用いてもよい。
また、上述した実施の形態では、油圧ショベル1の旋回装置11を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧クレーン等の他の建設機械に広く適用することができるものである。