〔第1実施形態〕
本実施形態において、現像剤を収容するための容器自体を現像剤補給容器、内部に現像剤が収容されている状態の現像剤補給容器のことを現像剤補給キットと称する。
まず、画像形成装置の基本構成について説明し、続いて、この画像形成装置に搭載される現像剤補給システム、つまり、現像剤補給装置と現像剤補給キットの構成について順に説明する。
(画像形成装置)
現像剤補給キット(所謂、トナーカートリッジ)が着脱可能(取り外し可能)に装着される現像剤補給装置が搭載された画像形成装置の一例として、電子写真方式を採用した複写機(電子写真画像形成装置)の構成について図1を用いて説明する。
同図において、100は複写機本体(以下、画像形成装置本体もしくは装置本体という)である。また、101は原稿であり、原稿台ガラス102の上に置かれる。そして、原稿の画像情報に応じた光像を光学部103の複数のミラーMとレンズLnにより、像担持体である電子写真感光体104(以下、感光体)上に結像させることにより静電潜像を形成する。この静電潜像は乾式の現像器(1成分現像器)201aにより現像剤(乾式粉体)としてのトナー(1成分磁性トナー)を用いて可視化される。
なお、本実施形態では現像剤補給容器1から補給すべき現像剤として1成分磁性トナーを用いた例について説明するが、このような例だけではなく、後述するような構成としても構わない。
具体的には、1成分非磁性トナーを用いて現像を行う1成分現像器を用いる場合、現像剤として1成分非磁性トナーを補給することになる。また、磁性キャリアと非磁性トナーを混合した2成分現像剤を用いて現像を行う2成分現像器を用いる場合、現像剤として非磁性トナーを補給することなる。なお、この場合、現像剤として非磁性トナーとともに磁性キャリアも併せて補給する構成としても構わない。
105〜108は記録媒体(以下、「シート」ともいう)Sを収容するカセットである。これらカセット105〜108に積載されたシートSのうち、複写機の液晶操作部から操作者(ユーザ)が入力した情報もしくは原稿101のシートサイズを基に最適なカセットが選択される。ここで記録媒体としてはシートに限定されずに、例えばOHPシート等適宜使用、選択できる。
そして、給送分離装置105A〜108Aにより搬送された1枚のシートSを、搬送部109を経由してレジストローラ110まで搬送し、感光体104の回転と、光学部103のスキャンのタイミングを同期させて搬送する。
111、112は転写帯電器、分離帯電器である。ここで、転写帯電器111によって、感光体104上に形成された現像剤による像をシートSに転写する。そして、分離帯電器112によって、現像剤像(トナー像)の転写されたシートSを感光体104から分離する。
この後、搬送部113により搬送されたシートSは、定着部114において熱と圧によりシート上の現像剤像を定着させた後、片面コピーの場合には、排出反転部115を通過し、排出ローラ116により排出トレイ117へ排出される。
また、両面コピーの場合には、シートSは排出反転部115を通り、一度排出ローラ116により一部が装置外へ排出される。そして、この後、シートSの終端がフラッパ118を通過し、排出ローラ116にまだ挟持されているタイミングでフラッパ118を制御すると共に排出ローラ116を逆回転させることにより、再度装置内へ搬送される。さらに、この後、再給送搬送部119,120を経由してレジストローラ110まで搬送された後、片面コピーの場合と同様の経路をたどって排出トレイ117へ排出される。
上記構成の装置本体100において、感光体104の回りには現像手段としての現像器201a、クリーニング手段としてのクリーナ部202、帯電手段としての一次帯電器203等の画像形成プロセス機器が設置されている。なお、現像器201aは原稿101の画像情報に基づき光学部103により感光体104に形成された静電潜像に現像剤を付着させることにより現像するものである。また、一次帯電器203は、感光体104上に所望の静電像を形成するため感光体表面を一様に帯電するためのものである。また、クリーナ部202は感光体104に残留している現像剤を除去するためのものである。
(現像剤補給装置)
次に、現像剤補給システムの構成要素である現像剤補給装置201について、図1〜図6を用いて説明する。ここで、図2は現像剤補給装置201の部分断面図、図3は現像剤補給容器1を装着する装着部10の斜視図、図4は装着部10の断面図を示している。また、図5は、制御系並びに、現像剤補給容器1と現像剤補給装置201を部分的に拡大した断面図を示している。図6は制御系による現像剤補給の流れを説明するフローチャートである。
現像剤補給装置201は、図1に示すように、現像剤補給容器1が取り外し可能(着脱可能)に装着される装着部(装着スペース)10と、現像剤補給容器1から排出された現像剤を一時的に貯留するホッパ10aと、現像器201aと、を有している。現像剤補給容器1は、図4に示すように、装着部10に対してM方向に装着される構成となっている。つまり、現像剤補給容器1の長手方向(回転軸線方向)がほぼこのM方向と一致するように装着部10に装着される。なお、このM方向は、後述する図10(a)のX方向と実質平行である。また、現像剤補給容器1の装着部10からの取り出し方向はこのM方向とは反対の方向となる。
現像器201aは、図1及び図2に示すように、現像ローラ201fと、撹拌部材201c、送り部材201d、201eを有している。そして、現像剤補給容器1から補給された現像剤は撹拌部材201cにより撹拌され、送り部材201d、201eにより現像ローラ201fに送られて、現像ローラ201fにより感光体104に供給される。
なお、現像ローラ201fには、ローラ上の現像剤コート量を規制する現像ブレード201g、現像器201aとの間の現像剤の漏れを防止するために現像ローラ201fに接触配置された漏れ防止シート201hが設けられている。
また、装着部10には、図3に示すように、現像剤補給容器1が装着された際に現像剤補給容器1のフランジ部4(図8参照)と当接することでフランジ部4の回転方向への移動を規制するための回転方向規制部(保持機構)11が設けられている。
また、装着部10は、現像剤補給容器1が装着された際に、後述する現像剤補給容器1の排出口(排出孔)4a(図8参照)と連通し、現像剤補給容器1から排出された現像剤を受入れるための現像剤受入れ口(現像剤受入れ孔)13を有している。そして、現像剤補給容器1の排出口4aから現像剤が現像剤受入れ口13を通して現像器201aへと供給される。なお、本実施形態において、現像剤受入れ口13の直径φは、装着部10内での現像剤による汚れを可及的に防止する目的より、微細口(ピンホール)として約3mmに設定されている。なお、現像剤受入れ口の直径は排出口4aから現像剤が排出できる直径であればよい。
また、ホッパ10aは、図5に示すように、現像器201aへ現像剤を搬送するための搬送スクリュー10bと、現像器201aと連通した開口10cと、ホッパ10a内に収容されている現像剤の量を検出する現像剤センサ10dを有している。
更に、装着部10は、図3に示すように、駆動機構(駆動部)として機能する駆動ギア300を有している。この駆動ギア300は、駆動モータ500(不図示)から駆動ギア列を介して回転駆動力が伝達され、装着部10にセットされた状態にある現像剤補給容器1に対し回転駆動力を付与する機能を有している。
また、駆動モータ500は、図5に示すように、制御装置(CPU)600(不図示)によりその動作を制御される構成となっている。制御装置600は、図5に示すように、現像剤センサ10dから入力された現像剤残量情報に基づき、駆動モータ500の動作を制御する構成となっている。
なお、本実施形態において、駆動ギア300は、駆動モータ500の制御を簡易化させるため、一方向にのみ回転するように設定されている。つまり、制御装置600は、駆動モータ500について、そのオン(作動)/オフ(非作動)のみを制御する構成となっている。従って、駆動モータ500(駆動ギア300)を正方向と逆方向とに周期的に反転させることで得られる反転駆動力を現像剤補給容器1に付与する構成に比して、現像剤補給装置201の駆動機構の簡易化を図ることができる。
(現像剤補給容器の装着/取り出し方法)
次に、現像剤補給容器1の装着/取り出し方法について説明する。
まず、操作者が、交換カバー(不図示)を開き、現像剤補給容器1を現像剤補給装置201の装着部10へ挿入、装着させる。この装着動作に伴い、現像剤補給容器1のフランジ部4が現像剤補給装置201に保持、固定される。
その後、操作者が交換カバーを閉じることで、装着工程が終了する。その後、制御装置600が駆動モータ500を制御することにより、駆動ギア300を適宜のタイミングで回転させる。
一方、現像剤補給容器1内の現像剤が空となってしまった場合には、操作者が、交換カバーを開き、装着部10から現像剤補給容器1を取り出す。そして、予め用意してある新しい現像剤補給容器1を装着部10へと挿入、装着し、交換カバーを閉じることにより、現像剤補給容器1の取り出し〜再装着に至る交換作業が終了する。
(現像剤補給装置による現像剤補給制御)
次に、現像剤補給装置201による現像剤補給制御について、図6のフローチャートを基に説明する。この現像剤補給制御は、制御装置(CPU)600により各種機器を制御することにより実行される。
本実施形態では、現像剤センサ10dの出力に応じて制御装置600が駆動モータ500の作動/非作動の制御を行うことにより、ホッパ10a内に一定量以上の現像剤が収容されないように構成している。
具体的には、まず、現像剤センサ10dがホッパ10a内の現像剤収容量をチェックする(S100)。そして、現像剤センサ10dにより検出された現像剤収容量が所定量未満であると判定された場合、つまり、現像剤センサ10dにより現像剤が検出されなかった場合、駆動モータ500を駆動し、一定時間、現像剤の補給動作を実行する(S101)。
この現像剤補給動作の結果、現像剤センサ10dにより検出された現像剤収容量が所定量に達したと判定された場合、つまり、現像剤センサ10dにより現像剤が検出された場合、駆動モータ500の駆動をオフし、現像剤の補給動作を停止する(S102)。この補給動作の停止により、一連の現像剤補給工程が終了する。
このような現像剤補給工程は、画像形成に伴い現像剤が消費されてホッパ10a内の現像剤収容量が所定量未満となると、繰り返し実行される構成となっている。
このように、現像剤補給容器1から排出された現像剤を、ホッパ10a内に一時的に貯留し、その後、現像器201aへ補給する構成でも構わないが、本実施形態では、以下のような現像剤補給装置201の構成としている。
具体的には、図7に示すように、上述したホッパ10aを省き、現像剤補給容器1から現像器201aへ直接的に現像剤を補給する構成である。この図7は、現像剤補給装置201として2成分現像器800を用いた例である。この現像器800には、現像剤が補給される撹拌室と現像スリーブ800aへ現像剤を供給する現像室を有しており、撹拌室と現像室には現像剤搬送方向が互いに逆向きとなる撹拌スクリュー800bが設置されている。そして、撹拌室と現像室は長手方向両端部において互いに連通しており、2成分現像剤はこれらの2つの部屋を循環搬送される構成となっている。また、撹拌室には現像剤中のトナー濃度を検出する磁気センサ800cが設置されており、この磁気センサ800cの検出結果に基づいて制御装置600が駆動モータ500の動作を制御する構成となっている。この構成の場合、現像剤補給容器から補給される現像剤は、非磁性トナー、もしくは非磁性トナー及び磁性キャリアとなる。
本実施形態では、後述するように、現像剤補給容器1内の現像剤は排出口4aから重力作用のみではほとんど排出されず、ポンプ部3aによる容積可変動作によって現像剤が排出されるため、排出量のばらつきを抑えることができる。そのため、ホッパ10aを省いた図7のような例であっても、現像室へ現像剤を安定的に補給することが可能である。
(現像剤補給容器)
次に、現像剤補給システムの構成要素である現像剤補給容器1の構成について、図8、図9、図10を用いて説明する。ここで、図8(a)は現像剤補給容器1の全体斜視図、図8(b)は現像剤補給容器1の排出口4a周辺の部分拡大図、図8(c)は現像剤補給容器1を装着部10に装着した状態を示す正面図である。また、図9は現像剤補給容器の断面斜視図、図10(a)はポンプ部3aが使用上最大限伸張された状態の部分断面図、(b)はポンプ部3aが使用上最大限収縮された状態の部分断面図である。
現像剤補給容器1は、図8(a)に示すように、中空円筒状に形成され内部に現像剤を収容する内部空間を備えた現像剤収容部2(容器本体とも呼ぶ)を有している。本実施形態では、円筒部2kと排出部4c(図7参照)、ポンプ部3a(図7参照)が現像剤収容部2として機能する。さらに、現像剤補給容器1は、現像剤収容部2の長手方向(現像剤搬送方向)一端側にフランジ部4(非回転部とも呼ぶ)を有している。また、円筒部2kはこのフランジ部4に対して相対回転可能に構成されている。なお、円筒部2kの断面形状を、現像剤補給工程における回転動作に影響を与えない範囲内において、非円形状としても構わない。例えば、楕円形状のものや多角形状のものを採用しても構わない。
なお、本実施形態では、図10(a)に示すように、現像剤収容室として機能する円筒部2kの全長L1が約460mm、外径R1が約60mmに設定されている。また、現像剤排出室として機能する排出部4cが設置されている領域の長さL2は約21mm、ポンプ部3aの全長L3(使用上の伸縮可能範囲の中で最も伸びた状態のとき)は約29mmとなっている。また、図10(b)に示すように、ポンプ部3aの全長L4(使用上の伸縮可能範囲の中で最も縮んだ状態のとき)は約24mmとなっている。
また、本実施形態では、図7、図8に示すように、現像剤補給容器1が現像剤補給装置201に装着された状態のとき円筒部2kと排出部4cが水平方向に並ぶように構成されている。つまり、円筒部2kは、その水平方向長さがその鉛直方向長さよりも充分に長く、その水平方向側が排出部4cと接続された構成となっている。従って、現像剤補給容器1が現像剤補給装置201に装着された状態のとき排出部4cの鉛直上方に円筒部2kが位置するように構成する場合に比して、後述する排出口4a上に存在する現像剤の量が少なくすることができる。その為、排出口4a近傍の現像剤が圧密され難く、吸排気動作を円滑に行うことが可能となる。
(現像剤補給容器の材質)
本実施形態では、後述するように、ポンプ部3aにより現像剤補給容器1内の容積を変化させることにより、排出口4aから現像剤を排出させる構成となっている。よって、現像剤補給容器1の材質としては、容積の変化に対して大きく潰れてしまったり、大きく膨らんでしまったりしない程度の剛性を有したものを採用するのが好ましい。
また、本実施形態では、現像剤補給容器1は、外部とは排出口4aを通じてのみ連通しており、排出口4aを除き外部から密閉された構成としている。つまり、ポンプ部3aにより現像剤補給容器1の容積を減少、増加させて排出口4aから現像剤を排出する構成を採用していることから、安定した排出性能が保たれる程度の気密性が求められる。
そこで、本実施形態では、現像剤収容部2と排出部4cの材質をポリスチレン樹脂とし、ポンプ部3aの材質をポリプロピレン樹脂としている。
なお、使用する材質に関して、現像剤収容部2と排出部4cは容積可変に耐えうる素材であれば、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の他の樹脂を使用することが可能である。また、金属製であっても構わない。
また、ポンプ部3aの材質に関しては、伸縮機能を発揮し容積変化によって現像剤補給容器1の容積を変化させることができる材料であれば良い。例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレン等を肉薄で形成したものでも構わない。また、ゴムや、その他の伸縮性材料などを使用することも可能である。
なお、樹脂材料の厚みを調整するなどして、ポンプ部3a、現像剤収容部2、排出部4cのそれぞれが上述した機能を満たすのであれば、それぞれを同じ材質で、例えば、射出成形法やブロー成形法等を用いて一体的に成形されたものを用いても構わない。
以下、フランジ部4、円筒部2k、ポンプ部3a、駆動受け機構2d、駆動変換機構2e(カム溝)、の構成について、順に、詳細に説明する。
(フランジ部)
このフランジ部4には、図9に示すように、円筒部内(現像剤収容室内)2kから搬送されてきた現像剤を一時的に貯留するための中空の排出部(現像剤排出室)4cが設けられている。この排出部4cの底部には、現像剤補給容器1の外へ現像剤の排出を許容する、つまり、現像剤補給装置201へ現像剤を補給するための小さな排出口4aが形成されている。この排出口4aの大きさについては後述する。
さらに、フランジ部4には排出口4aを開閉するシャッタ4bが設けられている。このシャッタ4bは、現像剤補給容器1の装着部10への装着動作に伴い、装着部10に設けられた突き当て部21(図3参照)と突き当たるように構成されている。従って、シャッタ4bは、現像剤補給容器1の装着部10への装着動作に伴い、円筒部2kの回転軸線方向(M方向とは逆方向)へ現像剤補給容器1に対して相対的にスライドする。その結果、シャッタ4bから排出口4aが露出されて開封動作が完了する。
この時点で、排出口4aは装着部10の現像剤受入れ口13と位置が合致しているので互いに連通した状態となり、現像剤補給容器1からの現像剤補給が可能な状態となる。
また、フランジ部4は、現像剤補給容器1が現像剤補給装置201の装着部10に装着されると、実質不動となるように構成されている。
具体的には、フランジ部4が自ら円筒部2kの回転方向へ回転することがないように、図3に示す回転方向規制部11が設けられている。
従って、現像剤補給容器1が現像剤補給装置201に装着された状態では、フランジ部4に設けられている排出部4cも、円筒部2kの回転方向へ回転することが実質阻止された状態となる(ガタ程度の移動は許容する)。
一方、円筒部2kは現像剤補給装置201により回転方向への規制は受けることなく、現像剤補給工程において回転する構成となっている。
また、図10(a)に示すように、円筒部2kから螺旋状の凸部(搬送部)2cにより搬送されてきた現像剤を、排出部4cへと搬送するための板状の仕切り壁6が設けられている。この仕切り壁6は、現像剤収容部2の一部の領域を略2分割するように設けられており、円筒部2kとともに一体的に回転する構成とされている。そして、この仕切り壁6にはその両面に現像剤補給容器1の回転軸線方向に対し傾斜した傾斜突起6aが設けられている。この傾斜突起6aは排出部4cの入口部に接続されている。
従って、搬送部2cにより搬送されてきた現像剤は、円筒部2kの回転に連動してこの仕切り壁6により重力方向下方から上方へと掻き上げられる。その後、円筒部2kの回転が進むに連れて重力によって仕切り壁6表面上を滑り落ち、やがて傾斜突起6aによって排出部4c側へと受け渡される。この傾斜突起6aは、円筒部2kが半周する毎に現像剤収容部内の現像剤が排出部4cへと送り込まれるように、仕切り壁6の両面に設けられている。
(フランジ部の排出口について)
本実施形態では、現像剤補給容器1の排出口4aについて、現像剤補給容器1が現像剤補給装置201に現像剤を補給する姿勢のとき、重力作用のみでは十分に排出されない程度の大きさに設定している。なお、ここでの現像剤は、主に1成分磁性トナー、1成分非磁性トナー、2成分非磁性トナー、2成分磁性キャリアが該当する。つまり、排出口4aの開口サイズは、重力作用のみでは現像剤補給容器から現像剤の排出が不充分となる程度に小さく設定している(微細口(ピンホール)とも言う)。言い換えると、排出口4aが現像剤で実質閉塞されるようにその開口の大きさを設定している。これにより、以下の効果を期待できる。
(1)排出口4aから現像剤が漏れ難くなる。
(2)排出口4aを開放した際の現像剤の過剰排出を抑制できる。
(3)現像剤の排出をポンプ部3aによる排気動作に支配的に依存させることができる。
また、排出口4aの大きさを小さくすることで、以下の効果も得ることができる。
現像剤を画像形成装置に補給することによって、現像剤補給容器1の排出口4a、及び現像剤受入れ口13の周縁部に現像剤が付着する。そのため、排出口4aのサイズが大きくなると、開口の縁の周長が長くなるため現像剤が付着する範囲が大きくなり、汚れやすくなる。つまり、汚れを抑える方法としては、排出口4aのサイズを小さくすることがある。
本実施形態では、現像剤補給容器1の排出口4aのサイズをφ4mm(面積12.6mm2)以下にしている。排出口4aのサイズをこのような微細孔(ピンホール)とすることで、画像形成装置への現像剤の補給時に現像剤補給容器1の排出口4a、及び画像形成装置に付着する現像剤を少なくしている。
一方、排出口4aの大きさの下限値としては、現像剤補給容器1から補給すべき現像剤(1成分磁性トナー、1成分非磁性トナー、2成分非磁性トナー、2成分磁性キャリア)が少なくとも通過できる値に設定するのが好ましい。つまり、現像剤補給容器1に収容されている現像剤の粒径(トナーの場合は体積平均粒径、キャリアの場合は個数平均粒径)よりも大きい排出口にするのが好ましい。例えば、補給用の現像剤に2成分非磁性トナーと2成分磁性キャリアが含まれている場合、大きい方の粒径、つまり、2成分磁性キャリアの個数平均粒径よりも大きな排出口にするのが好ましい。
具体的には、補給すべき現像剤に2成分非磁性トナー(体積平均粒径が5.5μm)と2成分磁性キャリア(個数平均粒径が40μm)が含まれている場合、排出口4aの径を0.05mm(開口面積0.002mm2)以上に設定するのが好ましい。
但し、排出口4aの大きさを現像剤の粒径に近い大きさに設定してしまうと、現像剤補給容器1から所望の量を排出させるのに要するエネルギー、つまり、ポンプ部3aを動作させるのに要するエネルギーが大きくなってしまう。また、現像剤補給容器1の製造上においても制約が生じる場合がある。射出成形法を用いて樹脂部品に排出口4aを成形するには、排出口4aの部分を形成する金型部品の耐久性が厳しくなってしまう。以上から、排出口4aの直径φは0.5mm以上に設定するのが好ましい。
なお、本実施形態では、排出口4aの形状を円形状としているが、このような形状に限定されるものでは無い。
但し、円形状の排出口は、開口の面積を同じとした場合、他の形状に比べて現像剤が付着して汚れてしまう開口の縁の周長が最も小さい。そのため、シャッタ4bの開閉動作に連動して広がってしまう現像剤の量も少なく、汚れ難い。また、円形状の排出口は、排出時の抵抗も少なく最も排出性が高い。従って、排出口4aの形状としては、排出量と汚れ防止のバランスが最も優れた円形状がより好ましい。
本実施形態では、以上の観点から、排出口4aを円形状とし、その開口の直径φを2mmに設定している。
なお、本実施形態では、排出口4aの数を1個としているがそれに限るものではなく、それぞれの開口面積が上述した開口面積の範囲を満足するように、排出口4aを複数設ける構成としても構わない。例えば、直径φが3mmの1つの現像剤受入れ口13に対して、直径φが0.7mmの排出口4aを2つ設ける構成である。但し、この場合、現像剤の排出量(単位時間当たり)が低下してしまう傾向となるため、直径φが2mmの排出口4aを1つ設ける構成の方がより好ましい。
(円筒部)
次に、現像剤収容室として機能する円筒部2kについて図7、図8を用いて説明する。
円筒部2kは、図7、図8に示すように、円筒部2kの内面には、収容された現像剤を自らの回転に伴い、現像剤排出室として機能する排出部4c(排出口4a)に向けて搬送する手段として機能する螺旋状に突出した搬送部2cが設けられている。また、円筒部2kは、上述した材質の樹脂を用いてブロー成型法により形成されている。
なお、現像剤補給容器1の容積を大きくし充填量を増やそうとした場合、現像剤収容部2としてのフランジ部4の容積を高さ方向に大きくする方法が考えられる。しかし、このような構成とすると、現像剤の自重により排出口4a近傍の現像剤への重力作用がより増大してしまう。その結果、排出口4a近傍の現像剤が圧密されやすくなり、排出口4aを介した吸気/排気の妨げとなる。この場合、排出口4aからの吸気で圧密された現像剤を解す、または、排気で現像剤を排出させるためには、ポンプ部3aの容積変化量を更に大きくしなければならなくなる。しかし、その結果、ポンプ部3aを駆動させるための駆動力も増加し、画像形成装置本体100への負荷が過大になるおそれがある。
それに対し、本実施形態においては、円筒部2kをフランジ部4に水平方向に並べて設置しているため、上記構成に対して、現像剤補給容器1内における排出口4a上の現像剤層の厚さを薄く設定することができる。これにより、重力作用により現像剤が圧密されにくくなるため、その結果、画像形成装置本体100へ負荷をかけることなく、安定した現像剤の排出が可能になる。
また、円筒部2kは、図10(a)、(b)に示すように、フランジ部4の内面に設けられたリング状のシール部材のフランジシール5bを圧縮した状態で、フランジ部4に対して相対回転可能に固定されている。
これにより、円筒部2kは、フランジシール5bと摺動しながら回転するため、回転中において現像剤が漏れることなく、また、気密性が保たれる。つまり、排出口4aを介した空気の出入りが適切に行われるようになり、補給中における、現像剤補給容器1の容積可変を所望の状態にすることができるようになっている。
(ポンプ部)
次に、往復動に伴いその容積が可変なポンプ部(往復動可能な)3aについて図9、図10を用いて説明する。ここで、図9は現像剤補給容器の断面斜視図、図10(a)はポンプ部が使用上最大限伸張された状態の部分断面図、図10(b)はポンプ部が使用上最大限収縮された状態の部分断面図である。
本実施形態のポンプ部3aは、排出口4aを介して吸気動作と排気動作を交互に行わせる吸排気機構として機能する。言い換えると、ポンプ部3aは、排出口4aを通して現像剤補給容器の内部に向かう気流と現像剤補給容器から外部に向かう気流を交互に繰り返し発生させる気流発生機構として機能する。
ポンプ部3aは、図10(a)に示すように、排出部4cからX方向に設けられている。つまり、ポンプ部3aは排出部4cとともに、円筒部2kの回転方向へ自らが回転することがないように設けられている。
また、本実施形態のポンプ部3aは、その内部に現像剤を収容可能な構成となっている。このポンプ部3a内の現像剤収容スペースは、後述するように、吸気動作時における現像剤の流動化に大きな役割を担っている。
そして、本実施形態では、ポンプ部3aとして、往復動に伴いその容積が可変な樹脂製の容積可変型ポンプ部(蛇腹状ポンプ)を採用している。具体的には、図9〜図10に示すように、蛇腹状のポンプを採用しており、「山折り」部と「谷折り」部が周期的に交互に複数形成されている。従って、このポンプ部3aは、現像剤補給装置201から受けた駆動力により、圧縮、伸張を交互に繰り返し行うことができる。なお、本実施形態では、ポンプ部3aの伸縮時の容積変化量は、5cm3(cc)に設定されている。図10(a)に示すL3は約29mm、図10(b)に示すL4は約24mmとなっている。ポンプ3aの外径R2は約45mmとなっている。
このようなポンプ部3aを採用することにより、現像剤補給容器1の容積を、可変させるとともに、所定の周期で、交互に繰り返し変化させることができる。その結果、小径(直径が約2mm)の排出口4aから排出部4c内にある現像剤を効率良く、排出させることが可能となる。
(駆動受け機構)
次に、搬送部2cを回転させるための回転駆動力を現像剤補給装置201から受ける、現像剤補給容器1の駆動受け機構(駆動受け部、駆動力受け部)について説明する。
現像剤補給容器1には、図8(a)に示すように、現像剤補給装置201の駆動ギア300(駆動機構として機能する)と係合(駆動連結)可能な駆動受け機構(駆動受け部、駆動力受け部)として機能するギア部2dが設けられている。このギア部2dは、円筒部2kと一体的に回転可能な構成となっている。
従って、駆動ギア300からギア部2dに入力された回転駆動力は図11(a)、(b)の往復動部材3bを介してポンプ3aへ伝達される仕組みとなっている。具体的には、駆動変換機構で後述する。本実施形態の蛇腹状のポンプ部3aは、その伸縮動作を阻害しない範囲内で、回転方向へのねじれに強い特性を備えた樹脂材を用いて製造されている。
なお、本実施形態では、円筒部2kの長手方向(現像剤搬送方向)側にギア部2dを設けているが、このような例に限られるものではなく、例えば、現像剤収容部2の長手方向他端側、つまり、最後尾側に設けても構わない。この場合、対応する位置に駆動ギア300が設置されることになる。
また、本実施形態では、現像剤補給容器1の駆動受け部と現像剤補給装置201の駆動部間の駆動連結機構としてギア機構を用いているが、このような例に限られるものではなく、例えば、公知のカップリング機構を用いるようにしても構わない。具体的には、駆動受け部として非円形状の凹部を設け、一方、現像剤補給装置201の駆動部として前述の凹部と対応した形状の凸部を設け、これらが互いに駆動連結する構成としても構わない。
(駆動変換機構)
次に、現像剤補給容器1の駆動変換機構(駆動変換部)について説明する。なお、本実施形態では、駆動変換機構の例としてカム機構を用いた場合について説明する。
現像剤補給容器1には、ギア部2dが受けた搬送部2cを回転させるための回転駆動力を、ポンプ部3aを往復動させる方向の力へ変換する駆動変換機構(駆動変換部)として機能するカム機構が設けられている。
つまり、本実施形態では、搬送部2cの回転とポンプ部3aの往復動するための駆動力を1つの駆動受け部(ギア部2d)で受ける構成としつつ、ギア部2dが受けた回転駆動力を、現像剤補給容器1側で往復動力へ変換する構成としている。
これは、現像剤補給容器1に駆動受け部を2つ別々に設ける場合に比して、現像剤補給容器1の駆動入力機構の構成を簡易化できるからである。更に、現像剤補給装置201の1つの駆動ギアから駆動を受ける構成としたため、現像剤補給装置201の駆動機構の簡易化にも貢献することができる。
ここで、図11(a)はポンプ部3aが使用上最大限伸張された状態の部分図、図11(b)はポンプ部3aが使用上最大限収縮された状態の部分図、図11(c)はポンプ部の部分図である。図11(a)、(b)に示すように、回転駆動力をポンプ部3aの往復動力に変換する為に介する部材としては往復動部材3bを用いている。具体的には、駆動ギア300から回転駆動を受けた駆動受け部(ギア部2d)と、一体となっている全周に溝が設けられているカム溝2eが回転する。このカム溝2eについては後述する。このカム溝2eには、往復動部材3bから一部が突出した往復動部材係合突起3cがカム溝2eに係合している。なお、本実施形態では、この往復動部材3bは図11(c)に示すように、円筒部2kの回転方向へ自らが回転することがないように(ガタ程度は許容する)保護部材回転規制部3fによって円筒部2kの回転方向が規制されている。このように、回転方向が規制されることで、カム溝2eの溝に沿って(図10のX方向もしくは逆方向)往復動するように規制されている。さらに、往復動部材係合突起3cはカム溝2eに複数係合するように設けられている。具体的には、円筒部2kの外周面に2つの往復動部材係合突起3cが約180°対向するように設けられている。
ここで、往復動部材係合突起3cの配置個数については、少なくとも1つ設けられていれば構わない。但し、ポンプ部3aの伸縮時の抗力により駆動変換機構等にモーメントが発生し、スムーズな往復動が行われないおそれがあるため、後述するカム溝2e形状との関係が破綻しないよう複数個設けるのが好ましい。
つまり、駆動ギア300から入力された回転駆動力でカム溝2eが回転することで、カム溝2eに沿って往復動部材係合突起3cがX方向もしくは逆方向に往復動作をする。これにより、ポンプ部3aが伸張した状態(図11の(a))とポンプ部3aが収縮した状態(図11の(b))を交互に繰り返すことで、現像剤補給容器1の容積可変を達成することができる。
(駆動変換機構の設定条件)
本実施形態では、駆動変換機構は、円筒部2kの回転に伴い排出部4cへ搬送される現像剤搬送量(単位時間当たり)が、排出部4cからポンプ部作用により現像剤補給装置201へ排出される量(単位時間当たり)よりも多くなるように駆動変換している。
これは、排出部4cへの搬送部2cによる現像剤の搬送能力に対してポンプ部3aによる現像剤の排出能力の方が大きいと、排出部4cに存在する現像剤の量が次第に減少してしまうからである。つまり、現像剤補給容器1から現像剤補給装置201への現像剤補給に要する時間が長くなってしまうことを防止するためである。
また、本実施形態では、駆動変換機構は、円筒部2kが1回転する間にポンプ部3aが複数回往復動するように、駆動変換している。これは以下の理由に依るものである。
円筒部2kを現像剤補給装置201内で回転させる構成の場合、駆動モータ500は円筒部2kを常時安定して回転させるために必要な出力に設定するのが好ましい。但し、画像形成装置100における消費エネルギーを可能な限り削減するためには、駆動モータ500の出力を極力小さくする方が好ましい。ここで、駆動モータ500に必要な出力は、円筒部2kの回転トルクと回転数から算出されることから、駆動モータ500の出力を小さくするには、円筒部2kの回転数を可能な限り低く設定するのが好ましい。
しかし、本実施形態の場合、円筒部2kの回転数を小さくしてしまうと、単位時間当たりのポンプ部3aの動作回数が減ってしまうことから、現像剤補給容器1から排出される現像剤の量(単位時間当たり)が減ってしまう。つまり、画像形成装置本体100から要求される現像剤の補給量を短時間で満足させるには、現像剤補給容器1から排出される現像剤の量では不足してしまうおそれがある。
そこで、ポンプ部3aの容積変化量を増加させれば、ポンプ部3aの1周期当たりの現像剤排出量を増やすことができるため、画像形成装置本体100からの要求に応えることが可能となるが、このような対処方法では以下のような問題がある。
つまり、ポンプ部3aの容積変化量を増加させると、排気工程における現像剤補給容器1の内圧(正圧)のピーク値が大きくなるため、ポンプ部3aを往復動させるのに要する負荷が増大してしまう。
このような理由から、本実施形態では、円筒部2kが1回転する間にポンプ部3aを複数周期動作させているのである。これにより、円筒部2kが1回転する間にポンプ部3aを1周期しか動作させない場合に比して、ポンプ部3aの容積変化量を大きくすることなく、単位時間当たりの現像剤の排出量を増やすことが可能となる。そして、現像剤の排出量を増やすことができた分、円筒部2kの回転数を低減することが可能となる。
従って、本実施形態のような構成とすることにより、駆動モータ500をより小さい出力に設定できる。
(駆動変換機構の配置位置)
本実施形態では、図11に示すように、駆動変換機構(往復動部材係合突起3cとカム溝2eにより構成されるカム機構)を、現像剤収容部2の外部に設けている。つまり、駆動変換機構を、円筒部2k、ポンプ部3a、フランジ部4の内部に収容された現像剤と接触することが無いように、円筒部2k、ポンプ部3a、フランジ部4の内部空間から隔てられた位置に設けている。
これにより、駆動変換機構を現像剤収容部2の内部空間に設けた場合に想定される問題を解消することができる。つまり、駆動変換機構の摺擦箇所への現像剤の侵入により、現像剤の粒子に熱と圧が加わって軟化していくつかの粒子同士がくっついて大きな塊(粗粒)となることや、変換機構への現像剤の噛み込みによりトルクアップするのを防止することができる。
(現像剤補給工程)
次に、図11、図12を用いて、ポンプ部3aによる現像剤補給工程について説明する。
本実施形態では、後述するように、ポンプ部動作による吸気工程(排出口4aを介した吸気動作)と排気工程(排出口4aを介した排気動作)とポンプ部非動作による動作停止工程(排出口4aから吸排気が行われない)が行われるように、駆動変換機構で回転駆動力を往復動力へ変換する構成となっている。以下、吸気工程と排気工程と動作停止工程について、順に、詳細に説明する。
(吸気工程)
まず、吸気工程(排出口4aを介した吸気動作)について説明する。
上述した駆動変換機構(カム機構)によりポンプ部3aが最も縮んだ状態の図11(b)からポンプ部3aが最も伸びた状態の図11(a)になることで、吸気動作が行われる。つまり、この吸気動作に伴い、現像剤補給容器1の現像剤を収容し得る部位(ポンプ部3a、円筒部2k、フランジ部4)の容積が増大する。
その際、現像剤補給容器1の内部は排出口4aを除き実質密閉された状態となっており、さらに、排出口4aが現像剤Tで実質的に塞がれた状態となっている。そのため、現像剤補給容器1の現像剤Tを収容し得る部位の容積増加に伴い、現像剤補給容器1の内圧が減少する。
このとき、現像剤補給容器1の内圧は大気圧(外気圧)よりも低くなる。そのため、現像剤補給容器1外にあるエアーが、現像剤補給容器1内外の圧力差により、排出口4aを通って現像剤補給容器1内へと移動する。
その際、排出口4aを通して現像剤補給容器1外からエアーが取り込まれるため、排出口4a近傍に位置する現像剤Tを解す(流動化させる)ことができる。具体的には、排出口4a近傍に位置する現像剤に対して、エアーを含ませることで嵩密度を低下させ、現像剤Tを適切に流動化させることができる。
更に、この際、エアーが排出口4aを介して現像剤補給容器1内に取り込まれるため、現像剤補給容器1の内圧はその容積が増加しているにも関わらず大気圧(外気圧)近傍を推移することになる。
このように、現像剤Tを流動化させておくことにより、後述する排気動作時に、現像剤Tが排出口4aに詰まってしまうことなく、排出口4aから現像剤をスムーズに排出させることが可能となるのである。従って、排出口4aから排出される現像剤Tの量(単位時間当たり)を、長期に亘り、ほぼ一定とすることが可能となる。
なお、吸気動作が行われる為に、ポンプ部3aが最も縮んだ状態から最も伸びた状態になることに限らず、ポンプ部3aが最も縮んだ状態から最も伸びる状態途中で停止したとしても、現像剤補給容器1の内圧変化が行われれば吸気動作は行われる。つまり、吸気工程とは、往復動部材係合突起3cが図12に示すカム溝2hに係合している状態のことである。
(排気工程)
次に、排気工程(排出口4aを介した排気動作)について説明する。
ポンプ部3aが最も伸びた状態の図11(a)からポンプ部3aが最も縮んだ状態の図11(b)になることで、排気動作が行われる。具体的には、この排気動作に伴い現像剤補給容器1の現像剤を収容し得る部位(ポンプ部3a、円筒部2k、フランジ部4)の容積が減少する。その際、現像剤補給容器1の内部は排出口4aを除き実質密閉されており、現像剤が排出されるまでは、排出口4aが現像剤Tで実質的に塞がれた状態となっている。従って、現像剤補給容器1の現像剤Tを収容し得る部位の容積が減少していくことで現像剤補給容器1の内圧が上昇する。
このとき、現像剤補給容器1の内圧は大気圧(外気圧)よりも高くなるため、現像剤Tは現像剤補給容器1内外の圧力差により、排出口4aから押し出される。つまり、現像剤補給容器1から現像剤補給装置201へ現像剤Tが排出される。
現像剤Tとともに現像剤補給容器1内のエアーも排出されていくため、現像剤補給容器1の内圧は低下する。
以上のように、本実施形態では、1つの往復動式のポンプ部3aを用いて現像剤の排出を効率良く行うことができるので、現像剤排出に要する機構を簡易化することができる。
なお、排気動作が行われる為に、ポンプ部3aが最も伸びた状態から最も縮んだ状態になることに限らず、ポンプ部3aが最も伸びた状態から最も縮む状態途中で停止したとしても、現像剤補給容器1の内圧変化が行われれば排気動作は行われる。つまり、排気工程とは、往復動部材係合突起3cが図12に示すカム溝2gに係合している状態のことである。
(動作停止工程)
次に、ポンプ部3aが往復動作しない動作停止工程について説明する。
本実施形態では、前述したように磁気センサ800cや現像剤センサ10dの検出結果に基づいて制御装置600が駆動モータ500の動作を制御する構成となっている。この構成では、現像剤補給容器1から排出される現像剤量がトナー濃度に直接影響を与えるので、画像形成装置が必要とする現像剤量を現像剤補給容器1から補給する必要がある。このとき、現像剤補給容器1から排出される現像剤量を安定させるために、毎回決まった容積可変量を行うことが望ましい。
例えば、排気工程と吸気工程のみで構成されたカム溝2eにすると、排気工程もしくは吸気工程途中でモータ駆動を停止させることになる。その際、駆動モータ500が回転停止後も惰性で円筒部2kが回転し、円筒部2kが停止するまでポンプ部3aも連動して往復動作し続けることとなり、排気工程もしくは吸気工程が行われることとなる。惰性で円筒部2kが回転する距離は、円筒部2kの回転速度に依存する。さらに、円筒部2kの回転速度は駆動モータ500へ与えるトルクに依存する。このことから、現像剤補給容器1内の現像剤量によって駆動モータ500へのトルクが変化し、円筒部2kの速度も変化する可能性があることから、ポンプ部3aの停止位置を毎回同じにすることが難しい。
そこで、ポンプ部3aを毎回決まった位置で停止させるためには、カム溝2eに、円筒部2kが回転動作中でもポンプ部3aが往復動しない領域を設ける必要がある。本実施形態では、ポンプ部3aを往復動させないために、図12に示すカム溝2iを設けている。カム溝2iは、円筒部2kの回転方向に溝が掘られており、回転しても往復動部材3bが動かないストレイト形状である。つまり、動作停止工程とは、往復動部材係合突起3cがカム溝2iに係合している状態のことである。
また、上記のポンプ部3aが往復動しないとは、排出口4aから現像剤が排出されないこと(円筒部2kの回転時振動等で排出口4aから落ちてしまう現像剤は許容する)である。つまり、カム溝2iは排出口4aを通じた排気工程、吸気工程が行われなければ、回転方向に対して回転軸方向に傾斜していても構わない。さらに、カム溝2iが傾斜していることから、ポンプ部3aの傾斜分の往復動作は許容できる。
(現像剤補給容器の内圧の推移)
次に、現像剤補給容器1の内圧がどのように変化しているかについての検証実験を行った。以下、この検証実験について説明する。
現像剤補給容器1内の現像剤収容スペースが現像剤で満たされるように現像剤を充填した上で、ポンプ部3aを5cm3の容積変化量で伸縮させた際の、現像剤補給容器1の内圧の推移を測定した。現像剤補給容器1の内圧の測定は、現像剤補給容器1に圧力計(株式会社キーエンス社製、型名:AP−C40)を接続して行った。
現像剤を充填した現像剤補給容器1のシャッタ4bを開いて排出口4aを外部のエアーと連通可能とした状態で、ポンプ部3aを伸縮動作させている際の圧力変化の推移を図13に示す。
図13において、横軸は時間を示し、縦軸は大気圧(基準(1kPa))に対する現像剤補給容器1内の相対的な圧力を示している(+が正圧側、−が負圧側を示している)。
現像剤補給容器1の容積が増加し、現像剤補給容器1の内圧が外部の大気圧に対して負圧になると、その気圧差により排出口4aからエアーが取り込まれる。また、現像剤補給容器1の容積が減少し、現像剤補給容器1の内圧が大気圧に対して正圧になると、内部の現像剤に圧力が掛かる。このとき、現像剤及びエアーが排出された分だけ内部の圧力が緩和される。
この検証実験により、現像剤補給容器1の容積が増加することで現像剤補給容器1の内圧が外部の大気圧に対して負圧になり、その気圧差によりエアーが取り込まれることを確認できた。また、現像剤補給容器1の容積が減少することで現像剤補給容器1の内圧が大気圧に対して正圧になり、内部の現像剤に圧力が掛かることで現像剤が排出されることを確認できた。この検証実験では、負圧側の圧力の絶対値は約1.2kPa、正圧側の圧力の絶対値は約0.5kPaであった。
このように、本実施形態の構成の現像剤補給容器1であれば、ポンプ部3aによる吸気動作と排気動作に伴い現像剤補給容器1の内圧が負圧状態と正圧状態とに交互に切り替わり、現像剤の排出を適切に行うことが可能となることが確認された。
以上説明した通り、本実施形態では、現像剤補給容器1に吸気動作と排気動作を行う簡易なポンプ部を設けたことで、エアーによる現像剤の解し効果を得ながら、エアーによる現像剤の排出を安定的に行うことができる。
つまり、本実施形態の構成であれば、排出口4aの大きさが極めて小さい場合であっても、現像剤を嵩密度の小さい流動化した状態で排出口4aを通過させることが出来るため、現像剤に大きなストレスをかけることなく、高い排出性能を確保することができる。
また、本実施形態では、容積可変型のポンプ部3aの内部を現像剤収容スペースとして利用する構成としているため、ポンプ部3aの容積を増大させて内圧を減圧させる際に、新たな現像剤収容空間を形成することができる。従って、ポンプ部3aの内部が現像剤で満たされている場合であっても、簡易な構成で、現像剤にエアーを含ませて、嵩密度を低下させることができる(現像剤を流動化させることができる)。よって、現像剤補給容器1に現像剤を従来以上に高密度に充填させることが可能となる。
(吸気工程における現像剤の解し効果について)
次に、吸気工程での排出口4aを介した吸気動作による現像剤の解し効果について検証を行った。なお、排出口4aを介した吸気動作に伴う現像剤の解し効果が大きければ、小さな排気圧(少ないポンプ容積変化量)で、次の排気工程において現像剤補給容器1内の現像剤の排出をただちに開始させることができる。従って、本検証は、本実施形態の構成であれば、現像剤の解し効果が顕著に高まることを示すためのものである。以下、詳しく説明する。
図14(a)、図15(a)に検証実験に用いた現像剤補給システムの構成を簡易に示したブロック図を示す。図14(b)、図15(b)は現像剤補給容器内で生じる現象を示す概略図である。なお、図14は本実施形態と同様な方式の場合であり、現像剤補給容器Cに現像剤収容部C1とともにポンプ部Pが設けられている。そして、ポンプ部Pの伸縮動作により現像剤補給容器Cの排出口(直径φが2mm(不図示))を介した吸気動作と排気動作を交互に行い、ホッパHに現像剤を排出するものである。一方、図15は比較例の方式の場合であり、ポンプ部Pを現像剤補給装置側に設け、ポンプ部Pの伸縮動作により現像剤収容部C1への送気動作と現像剤収容部C1からの吸引動作を交互に行い、ホッパHに現像剤を排出させるものである。なお、図14、図15において、現像剤収容部C1、ホッパHは同じ内容積であり、ポンプ部Pも同じ内容積(容積変化量)となっている。
まず、現像剤補給容器Cに200gの現像剤を充填する。
次に、現像剤補給容器Cの物流後の状態を想定して15分間に亘り加振を行った後、ホッパHに接続する。
そして、ポンプ部Pを動作させて、排気工程において直ちに現像剤を排出開始させるために必要となる吸気工程の条件として、吸気動作時に達する内圧のピーク値を測定した。なお、図14の場合は現像剤収容部C1の容積が480cm3となる状態、図15の場合はホッパHの容積が480cm3となる状態を各々ポンプ部Pの動作をスタートさせる位置としている。
また、図15の構成での実験は、図14の構成と空気容積の条件を揃えるため、予めホッパHに200gの現像剤を充填した上で行った。また、現像剤収容部C1及びホッパHの内圧は、それぞれに圧力計(株式会社キーエンス社製、型名:AP−C40)を接続することで測定を行った。
検証の結果、図14に示す本実施形態と同様な方式では、吸気動作時の内圧のピーク値(負圧)の絶対値が少なくとも1.0kPaであれば、次の排気工程において現像剤を直ちに排出開始させることができた。一方、図15に示す比較例の方式では、送気動作時の内圧のピーク値(正圧)が少なくとも1.7kPaでないと、次の排気工程において現像剤を直ちに排出開始させることができなかった。
つまり、図14に示す本実施形態と同様な方式であれば、ポンプ部Pの容積増加に伴い吸気が行われることから、現像剤収容部C1の内圧を大気圧(容器外の圧力)よりも低い負圧側にすることができ、現像剤の解し効果が顕著に高いことが確認された。これは、図14(b)に示すように、ポンプ部Pの伸張に伴い現像剤収容部C1の容積が増加することにより、現像剤層Tの上部の空気層Rが大気圧に対して減圧状態となるからである。そのため、この減圧作用により現像剤層Tの体積が膨張する方向に力が働くため(波線矢印)、現像剤層を効率的に解すことが可能となるのである。さらに、図14の方式においては、この減圧作用により、現像剤収容部C1内へ外部からエアーが取り込まれることになり(白抜き矢印)、このエアーが空気層Rへ到達する際にも現像剤層Tが解されることになり、非常に優れたシステムと言える。
一方、図15に示す比較例の方式では、現像剤収容部C1への送気動作に伴い現像剤収容部C1の内圧が高まり大気圧よりも正圧側となってしまい現像剤が凝集してしまうため、現像剤の解し効果が認められなかった。これは、図15(b)に示すように、現像剤収容部C1の外部からエアーが強制的に送り込まれるため、現像剤層Tの上部の空気層Rが大気圧に対して加圧状態となるからである。そのため、この加圧作用により、現像剤層Tの体積が収縮する方向に力が働くため(波線矢印)、現像剤層Tが圧密化してしまうのである。従って、図15の方式においては、現像剤層Tの圧密化により、その後の現像剤排出工程を適切に行うことができないおそれが高い。
また、上記した空気層Rが加圧状態となることによる現像剤層Tの圧密化を防ぐ為に空気層Rと対向する部位にエアー抜き用のフィルタ等を設けて、圧力上昇を低減することも考えられる。しかし、フィルタ等の透気抵抗分が、空気層Rの圧力上昇に繋がってしまう。また、圧力上昇を仮に無くしたとしても、上述した空気層Rを減圧状態とすることによる解し効果は得られない。
以上から、本実施形態のように、現像剤補給キットの装着後、ポンプ部Pが最初に動作する方向として現像剤収容部C1の内圧が大気圧よりも低い状態となる方向に動作させる本実施形態の方式を採用することにより、ポンプ部の容積増加に伴う「排出口を介した吸気動作」が果たす役割が大きいことが確認された。
(カム溝の設定条件の変形例)
次に、図12を用いてカム溝2eの設定条件の変形例について説明する。まず、前述した図12はカム溝2eの展開図を示したものである。図12に示す駆動変換機構部の展開図を用いて、カム溝2eの形状を変更した場合のポンプ部3aの運転条件に与える影響について説明する。
ここで、図12において、矢印Aは円筒部2kの回転方向(カム溝2eの移動方向)、矢印Bはポンプ部3aの伸張方向、矢印Cはポンプ部3aの圧縮方向を示す。また、カム溝2eの構成は、ポンプ部3aを圧縮させる際に使用される溝をカム溝2gと、ポンプ部3aを伸張させる際に使用する溝をカム溝2hと、前述したポンプ部3aが往復動作しないポンプ部非動作部2iとなっている。更に、円筒部2kの回転方向Aに対するカム溝2gのなす角度をα、カム溝2hのなす角度をβとして、カム溝のポンプ3aの伸縮方向B、Cにおける振幅(=ポンプ部3aの伸縮長さ)は前述したようにK1である。
まず、ポンプ部3aの伸縮長さK1に関して説明する。
例えば、伸縮長さK1を短くした場合、即ち、ポンプ部3aの容積可変量が減少してしまうことから、外気圧に対し発生させることができる圧力差も小さくなってしまう。そのため、現像剤補給容器1内の現像剤にかかる圧力が減少し、結果としてポンプ部3aの1周期(=ポンプ部3aを1往復伸縮)当たりの現像剤補給容器1から排出される現像剤の量が減少する。
このことから、図16に示すように、角度α、βが一定の状態でカム溝の振幅K2をK2<K1に設定すれば、図12の構成に対し、ポンプ部3aを1往復させた際に排出される現像剤の量を減少させることができる。逆に、K2>K1に設定すれば、現像剤の排出量を増加させることも当然可能となる。
また、カム溝の角度α、βに関して、例えば、角度を大きくした場合、円筒部2kの回転速度が一定であれば、現像剤収容部2が一定時間回転した時に移動する往復動部材係合突起3cの移動距離が増えるため、結果としてポンプ部3aの伸縮速度は増加する。
その一方、往復動部材係合突起3cがカム溝2g、カム溝2hを移動する際にカム溝2g、カム溝2hから受ける抵抗が大きくなるため、結果として円筒部2kを回転させるのに要するトルクが増加する。
このことから、図17に示すように、伸縮長さK1が一定の状態で、カム溝2gの角度α′、カム溝2hの角度β′を、α′>α及びβ′>βに設定すれば、図12の構成に対しポンプ部3aの伸縮速度を増加できる。その結果、円筒部2kの1回転当たりのポンプ部3aの伸縮回数を増加させることができる。更に、排出口4aから現像剤補給容器1内へ入り込む空気の流速が増加するため、排出口4a周辺に存在する現像剤の解し効果は向上する。
逆に、α′<α及びβ′<βに設定すれば円筒部2kの回転トルクを減少させることができる。また、例えば、流動性の高い現像剤を使用した場合、ポンプ部3aを伸張させた際に、排出口4aから入り込んだ空気により排出口4a周辺に存在する現像剤が吹き飛ばされやすくなる。その結果、排出部4c内に現像剤を十分に貯留することができなくなり、現像剤の排出量が低下する可能性がある。この場合は、本設定によりポンプ部3aの伸張速度を減少させれば、現像剤の吹き飛ばしを抑えることで排出能力を向上することができる。
また、図18に示すカム溝2eのように、角度α<角度βに設定すれば、ポンプ部3aの伸張速度を圧縮速度に対して大きくすることができる。逆に、角度α>角度βに設定すれば、ポンプ部3aの伸張速度を圧縮速度に対して小さくすることができる。
それにより、例えば現像剤補給容器1内の現像剤が高密度状態にある場合、ポンプ部3aを伸張する時よりも圧縮する時の方がポンプ部3aの動作力が大きくなるため、結果としてポンプ部3aを圧縮する時の方が円筒部2kの回転トルクが高くなりやすい。しかし、この場合は、カム溝2eを図18に示す構成に設定すれば、図12の構成に対しポンプ部3aの伸張時における現像剤の解し効果を増加させることができる。更に、ポンプ部3aの圧縮時に往復動部材係合突起3cがカム溝2eから受ける抵抗が小さくなり、ポンプ部3aの圧縮時における回転トルクの増加を抑制することが可能になる。
なお、図18に示すように、往復動部材係合突起3cがカム溝2hを通過した直後に、カム溝2gを通過する様にカム溝2eを設けても良い。この場合、ポンプ部3aが吸気動作を行った直後に排気動作に入る構成になる。図12のポンプ部3aが伸張した状態で動作停止する過程が除かれるので、除かれる動作停止の間、現像剤補給容器1内の減圧状態が持続されず、現像剤Tの解し効果が薄れてしまう。しかし、動作停止する過程が除かれるので、円筒部2kが1回転する間に吸排気工程を多く取り入れることができ、多く現像剤Tを排出することができる。
また、図20に示す様に、動作停止工程をポンプ部3aが最も縮んだ状態、もしくはポンプ部3aが最も伸びた状態以外に、排気工程および吸気工程途中にも設けることができる。このことより、必要量の容積可変量に設定することが可能で、現像剤補給容器1内の圧力を調整することができる。
以上のように、図12、図16乃至図20のカム溝2eの形状を変更することにより、現像剤補給容器1の排出能力を調整することができるため、現像剤補給装置201から要求される現像剤の量や使用する現像剤の物性等に適宜対応することが可能となる。
以上のように、本実施形態では、搬送部(螺旋状の凸部2c)を回転させるための駆動力とポンプ部3aを往復動させるための駆動力を1つの駆動受け部(ギア部2a)で受ける構成としている。従って、現像剤補給容器1の駆動入力機構の構成を簡易化することができる。また、現像剤補給装置201に設けられた1つの駆動機構(駆動ギア300)により現像剤補給容器1へ駆動力を付与する構成としたため、現像剤補給装置201の駆動機構の簡易化にも貢献することができる。
また、本実施形態の構成によれば、現像剤補給装置から受けた搬送部を回転させるための回転駆動力を、現像剤補給容器の駆動変換機構により駆動変換する構成としたことで、ポンプ部3aを適切に往復動させることが可能となる。
(現像剤の物性)
次に本実施形態の現像剤補給容器に収容される現像剤の物性について説明する。
<トータルエネルギー>
本実施形態の現像剤補給キットを用いることで、現像剤補給容器に収容された現像剤を適切に搬送させたり、現像剤補給容器内に収容された現像剤を適切に排出させたりすることができる。
また本実施形態において、トータルエネルギーという指標を用いることにより、現像剤補給容器内に収容される現像剤の状態を精度よく類推することが可能となった。なお、トータルエネルギーとは、粉体層中にプロペラ型ブレードを回転させながら侵入させた時の回転トルクと垂直荷重の総和である。
具体的には、現像剤のトータルエネルギーが小さいと、仕切り壁6によって現像剤をすくい上げる際に現像剤がこぼれてしまい、現像剤補給容器内での現像剤の搬送性が落ちる可能性がある。また、現像時のトナー飛散で部材汚染が生じる可能性が増加するおそれがある。また、現像剤のトータルエネルギーが大きいと、本実施形態の現像剤補給容器内のエアーによる解しが十分に行えなかったり、搬送の均一性に影響を及ぼしたりする可能性がある。
本実施形態で用いている現像剤補給容器では、エアーによって内部の現像剤を解している。そのため、現像剤がエアーによって解されていない状態とエアーによって解された状態のそれぞれのトータルエネルギーが、以下を満たすことで、現像剤の搬送性、排出性が更に良化すると共に、トナー飛散による部材汚染が抑制できる。
10≦E(mJ)≦80 ・・・式(1)
0.4≦Ea(mJ)≦2.0 ・・・式(2)
ここで、Eは現像剤層からエアーを取り除いた状態でのトータルエネルギーを、Eaは現像剤層にエアーを含ませて流動化させた状態でのトータルエネルギーをそれぞれ表している。
表1に実施形態に用いた補給用現像剤の物性値を示す。
本実施形態におけるE(mJ)およびEa(mJ)は、「粉体流動性分析装置パウダーレオメータFT−4」(Freeman Technology社製、以下、「FT−4」と省略する場合がある。)を用いることによって測定した。
具体的には、以下の操作により測定を行う。
全ての操作において、プロペラ型ブレードはFT−4専用の23.5mm径ブレードを用いる。
測定容器は、FT−4測定専用の内径25mm、25mlスプリット容器に通気測定用底板を接続したものを用いる。
尚、温度23℃、湿度60%RHの環境下に3日放置された現像剤を、前記の測定容器に上面まで入れ(約20g)、現像剤粉体層とする。
(1)コンディショニング操作
(a)プロペラ型ブレードを、ブレードの最外縁部の周速が100mm/secとなるように、粉体層表面に対して時計回り(ブレードの回転により粉体層がほぐされる方向)に回転する。このブレードを、移動中のブレードの最外縁部が描く軌跡と粉体層表面とのなす角(以降、なす角と省略する場合がある。)が5°となる進入速度で、粉体層表面から、現像剤粉体層の底面から5mmの位置まで垂直方向に進入させる。その後、なす角が2°、ブレードの最外縁部の周速が40mm/secとなるように変更し、粉体層表面に対して時計回りに回転しながら、現像剤粉体層の底面から2mmの位置までブレードを進入させる。さらに、なす角が5°の速度で、ブレードの最外縁部の周速が40mm/secとなるように、粉体層表面に対して時計回りに回転しながら、現像剤粉体層の底面から55mmの位置までブレードを移動させ、抜き取りを行う。抜き取りが完了したら、ブレードを時計回り、反時計回りに交互に小さく回転させることでブレードに付着した現像剤を払い落とす。
(b)(1)−(a)の操作を5回繰り返し、現像剤粉体層中に取り込まれている空気を取り除く。
(2)スプリット操作
上述のFT−4専用容器のスプリット部分で現像剤粉体層をすり切り、粉体層上部の現像剤を取り除く。尚、この操作により、現像剤粉体層の体積を測定毎に同じとすることができる。
(3)測定操作
(i):E(mJ)の測定
(a):上記(1)−(a)と同様の操作を1回行う。
(b):次にブレードの回転スピードを100(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が5°のスピードで、粉体層表面に対して反時計回り(ブレードの回転により粉体層から抵抗を受ける方向)の回転方向に、トナー粉体層の底面から5mmの位置までブレードを進入させる。
その後、ブレードの回転スピードを40(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が2°のスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、粉体層の底面から2mmの位置までブレードを進入させる操作を行う。
その後、ブレードの回転スピードを40(mm/sec)、粉体層からの垂直方向の抜き取り速度をなす角が5°のスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、粉体層の底面から55mmの位置までブレードの抜き取りを行う。
抜き取りが完了したら、ブレードを時計回り、反時計回りに交互に小さく回転させることでブレードに付着した現像剤を払い落とす。
(c):上記(b)の一連の操作を7回繰り返す。
上記(c)の操作において、7回目のブレードの回転スピードが100(mm/sec)であるときの、現像剤粉体層の底面から100mmから10mmの位置までブレードを進入させたときに得られる、回転トルクと垂直荷重の総和をE(mJ)とする。
(ii)Ea(mJ)の測定
(a):E(mJ)の測定を終了した現像剤粉体をエアレーション容器に投入し、まず上記(1)−(a)操作を一回行う。
(b):次に、容器底部の多孔質板から、流量を0.20(mm/sec)になるように、徐々に乾燥空気を通気させる。この際、FT−4測定専用通気ユニットを用いる。
(c):現像剤に乾燥空気が馴染んだ状態で上記(1)−(b)の操作を一度行う。
(d):上記(c)の動作の後に流速が0.20(mm/sec)の乾燥空気が通気した状態で、かつブレードの回転スピードが100(mm/sec)であるときの、現像剤粉体層の底面から100mmから10mmの位置までブレードを進入させたときに得られる、回転トルクと垂直荷重の総和をEa(mJ)とする。
上述したFT−4で測定されるエアーを含まない時のトータルエネルギーE(mJ)及びエアーを含んだときのトータルエネルギーEa(mJ)は、本実施形態においての現像剤補給容器内の現像剤の解れ易さを示すことができる。本実施形態では現像剤が10≦E(mJ)≦80、且つ、0.4≦Ea(mJ)≦2.0であると、本実施形態の現像剤補給容器内で現像剤の流動性が確保でき、搬送性や排出性が著しく良化する。
具体的には、表1で示す現像剤A、B、Cのトータルエネルギーは、上記の範囲内に入っている。この中で、現像剤A、BはE、Eaともに現像剤Cよりも低くなっている。そのため、現像剤A、Bは現像剤Cよりもエアーでの解し効果が得られやすいため、補給される現像剤を均一な状態に保つことができる。特に、図7に示すようなホッパ10aが無いような系では、均一な現像剤の補給により画像濃度変動を抑制することができる。また、現像剤Cは現像剤A、BよりもEとEaが高くなっている。そのため、現像剤A、Bよりも仕切り壁6による搬送効果がより高いため、現像剤の消費量がより多い場合でも、画像形成装置に必要な量の現像剤を供給することが容易である。
FT−4で測定されるEが10mJより小さい場合、エアーを含んでいない時の現像剤を仕切り壁6ですくい上げる際に、仕切り壁6から現像剤がこぼれてしまい、現像剤の搬送性が悪化してしまう場合がある。一方、Eが80mJより大きい場合、補給する現像剤が均一な状態で保たれなくなる場合があり、特に低濃度でプリントするなどして長期に亘り使用する場合は、濃度が低下する等画像品質が保持できなくなる場合がある。更に、長期放置後のポンプ始動時に現像剤が解れにくくなる場合がある。
また、FT−4で測定されるEaが0.4mJより小さい場合、補給容器から現像剤が排出する際に、現像剤が飛散して付近を汚染してしまう場合がある。一方、Eaが2.0mJより大きい場合、エアー吸引時、容器内の現像剤を十分に解すことができず、そのため現像剤の排出が困難になってしまう場合がある。
具体的には、表1に示す現像剤Dを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、容器内の現像剤を十分に解すことができず、排出が困難になる場合が見られた。また、現像剤Eを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、現像剤搬送性の悪化による排出精度の低下や、排出時の周囲へのトナー飛散が見られた。
つまり、本実施形態の現像剤補給容器には、EとEaが適した範囲である現像剤を補給することで、現像剤補給容器内の現像剤の搬送性や排出性が著しく良化する。
(現像剤製造方法)
次に本実施形態に用いられる補給用現像剤の製造方法の例を以下に示す。
<キャリアコアの調製>
マグネタイト微粒子(個数平均粒径220nm、磁化の強さ65Am2/kg)と、シラン系カップリング剤(3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)(マグネタイト微粒子の質量に対して3.0質量%の量)とを、容器に導入した。そして、該容器内において100℃以上で高速混合撹拌して、マグネタイト微粒子を表面処理した。
次に下記材料
・フェノール 10質量部
・ホルムアルデヒド溶液(ホルムアルデヒド36質量%水溶液) 16質量部
・表面処理したマグネタイト微粒子 86質量部
を5000Lの反応窯に投入し(マグネタイト微粒子600kg)、40℃にしてよく混合した。その後、撹拌しながら平均昇温速度1℃/分で、温度85℃に加熱し、25質量%アンモニア水4質量部および水25質量部を反応釜に加えた。温度85℃にて保持し、3時間重合反応させて硬化させた。このときの撹拌翼の周速は3.0m/秒とし、反応釜の圧力を1500hPaとした。
重合反応させた後、温度40℃まで冷却して水を添加した。上澄み液を除去して得られた沈殿物を水洗し、さらに風乾した。得られた風乾物を、減圧下(5hPa以下)にて、温度60℃で乾燥して、磁性体が分散された平均粒径36.2μmのキャリアコアを得た。
<磁性キャリアの調製>
・トルエン 110質量部
・下記被覆樹脂 12質量部
・カーボンブラック(東海カーボン社製:#4400) 0.6質量部
・メラミン粒子(日本触媒社製:エポスターS) 0.6質量部
被覆樹脂は、重量平均分子量5,000のメタクリル酸メチルマクロマー35質量部と、シクロヘキシルをユニットとしてエステル部位を有するメタクリル酸シクロヘキシルモノマー65質量部のグラフト共重合体であって、重量平均分子量は66,000、Tgは90℃であった。
上記成分を、120分間、循環式メディアミルを用いて、撹拌、分散処理を行い、樹脂被覆層形成溶液1を調製した。
樹脂被覆層の形成には、該樹脂被覆層形成溶液1とキャリアコアをナウターミキサー(ホソカワミクロン社製:NX−10を圧力制御可能、且つモータ速度アップ可能に改造した)に投入し、撹拌速度を15m/minで被覆させ、目開き75μmの篩を通すことにより磁性キャリアを調製した。磁性キャリアの表面粗さRaは22.0nmであった。
〔補給用現像剤Aの製法例〕
<樹脂Aの製造例(ハイブリッド樹脂)>
ポリエステル系の原料モノマーとして、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2452質量部(7.0mol)、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン977質量部(3.0mol)、テレフタル酸1167質量部(7.0mol)、無水トリメリット酸384質量部(2.0mol)とヘキサン酸錫6.0質量部をガラス製5リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒータ内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、145℃の温度で撹拌した。
ビニル系重合体として、スチレン603質量部(2.9mol)603質量部、2−エチルヘキシルアクリレート335質量部(0.91mol)、フマル酸35質量部(0.15mol)35質量部、α−メチルスチレンの2量体14質量部(0.03mol)14質量部、重合開始剤ジクミルパーオキサイド46質量部を滴下ロートに入れ、4つ口フラスコ内に5時間かけて滴下した。次いで200℃に昇温を行い、3.5時間反応させてハイブリッド樹脂(樹脂A)を得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量測定の結果を表2に示す。なお、表2において、Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量であり、Mpはピーク分子量である。
<樹脂B製造例(ハイブリッド樹脂)>
ポリエステル系の原料モノマーとして、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2452質量部(7.0mol)、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン977質量部(3.0mol)、テレフタル酸(997質量部)(6.0mol)、無水トリメリット酸634質量部(3.3mol)とヘキサン酸錫6.0質量部をガラス製5リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒータ内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、145℃の温度で撹拌した。
ビニル系重合体として、スチレン702質量部(4.5mol)、2−エチルヘキシルアクリレート335質量部(1.21mol)、フマル酸26質量部(0.15mol)、α−メチルスチレンの2量体10.1質量部(0.03mol)、重合開始剤ジクミルパーオキサイド46質量部を滴下ロートに入れ、5時間かけて滴下した。次いで200℃に昇温を行い、4.5時間反応させてハイブリッド樹脂(樹脂B)を得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量測定の結果を表2に示す。
<トナーAの製造例>
・樹脂A 60質量部
・シアン顔料(PigmentBlue15:3) 40質量部
上記の処方でニーダーミキサーにより溶融混練し、シアンマスターバッチを作製した。
・樹脂A 36.2質量部
・樹脂B 44.6質量部
・パラフィンワックス(最大吸熱ピーク:70℃、Mw=450、Mn=320) 5.0質量部
・上記シアンマスターバッチ(着色剤分40質量%) 14.0質量部
・3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.2質量部
上記の処方で十分にヘンシェルミキサーにより予備混合をし、二軸押出し混練機で混練物温度が140℃になるよう溶融混練を行なった。冷却後ハンマーミルを用いて約1〜2mm程度に粗粉砕した。さらにターボ工業製のターボ・ミル(RSローター/SNBライナー)を用いて7μm程度に微粉砕物を作った。表面改質処理装置90を用いて、分級と同時に球形化を行い、シアン粒子(トナー粒子A)を得た。
このトナー粒子A 100質量部に対し、ヘキサメチレンジシラザン(処理量:シリカ微粒子100質量部当たり10質量部)とジメチルシリコーンオイル(処理量:シリカ微粒子100質量部当たり16質量部)で疎水化処理されたシリカ粒子(BET比表面積:75m2/g)1.5質量部、イソブチルトリメトキシシラン(処理量:酸化チタン微粒子100質量部当たり10質量部)で疎水化処理されたルチル型酸化チタン微粉体(平均一次粒径:30nm)0.2質量部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製FM10C、上羽根:Y1型/下羽根:So型)を使用し66.7s−1で5分間乾式混合して、本実施形態に用いられるトナーAを得た。
<補給用現像剤Aの製造例>
トナーAを100質量部、上記製造例で記載した磁性キャリアCを10質量部、V型混合機を用いて混合し、目開き250μmの篩を通すことにより本実施形態に用いられる補給用現像剤Aを調製した。
〔補給用現像剤Bの製法例〕
<トナーBの製造例>
スチレン単量体100質量部に対して、シアン顔料(PigmentBlue15:3)を16.5質量部、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物を3.0質量部用意した。これらを、アトライター(日本コークス工業株式会社社製)に導入し、半径1.25mmのジルコニアビーズ(140質量部)を用いて3.3s−1にて25℃で180分間撹拌を行い、マスターバッチ分散液を調製した。
一方、イオン交換水710質量部に0.1M−Na3PO4水溶液450質量部を投入し60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7質量部を徐々に添加してリン酸カルシウム化合物を含む水系媒体を得た。
・マスターバッチ分散液 40質量部
・スチレン単量体 52質量部
・n−ブチルアクリレート単量体 19質量部
・低分子量ポリスチレン 15質量部
(Mw=3,000、Mn=1,050、Tg=55℃)
・炭化水素系ワックス 9質量部
(フィッシャートロプシュワックス、最大吸熱ピーク=78℃、Mw=750)
・ポリエステル樹脂 5質量部
(酸価=13mgKOH/g、水酸基価=20mgKOH/g、Tg=70.0℃、Mw=8,000、Mn=3,500)
上記材料を63℃に加温し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、83.3s−1にて均一に溶解し分散した。これに、重合開始剤1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの70%トルエン溶液7.0質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、温度65℃、N2雰囲気下において、TK式ホモミキサーにて200s−1で10分間撹拌し重合性単量体組成物を造粒し、その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ温度67℃に昇温し、重合性ビニル系単量体の重合転化率が90%に達したところで、0.1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して水系分散媒体のpHを9に調整した。更に昇温速度40℃/hで85℃に昇温し4時間反応させた。重合反応終了後、減圧下でトナー粒子の残存モノマーを留去した。水系媒体を冷却後、塩酸を加えpHを1.4にし、6時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解した。トナー粒子を濾別し水洗を行った後、温度40℃にて48時間乾燥し、シアン色のトナー粒子Bを得た。
このトナー粒子B 100質量部に対し、ジメチルシリコーンオイルで疎水化処理(処理量:シリカ微粒子100質量部当たり16質量部)されたシリカ粒子(BET比表面積:75m2/g)1.5質量部、ジメチルシリコーンオイルで疎水化処理(処理量:シリカ微粒子100質量部当たり7質量部)されたルチル型酸化チタン微粉体(平均一次粒径:30nm)0.2質量部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製FM10C、上羽根:Y1型/下羽根:So型)を使用し66.7s−1で5分間乾式混合して、本実施形態に用いられるトナーBを得た。
<補給用現像剤Bの製造例>
トナーBを100質量部、上記製造例で記載した磁性キャリアCを10質量部を、V型混合機を用いて混合し、目開き250μmの篩を通すことにより本実施形態に用いられる補給用現像剤Bを調製した。
〔補給用現像剤Cの製法例〕
<結着樹脂C−1の製造例>
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン71.3質量部(0.155mol)、テレフタル酸24.1質量部(0.145mol)、及びチタンテトラブトキシド0.6質量部をガラス製5リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒータ内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた(第1反応工程)。その後、無水トリメリット酸5.8質量部(0.030mol)を添加し、220℃で12時間反応させ(第2反応工程)、結着樹脂C-1を得た。
この結着樹脂C-1の酸価は15mgKOH/gであり、水酸基価は7mgKOH/gである。また、GPCによる分子量は、重量平均分子量(Mw)200,000、数平均分子量(Mn)5,000、ピーク分子量(Mp)10,000、軟化点は150℃であった。
<結着樹脂C−2の製造例>
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン76.9質量部(0.167mol)、テレフタル酸24.1質量部(0.145mol)、及びチタンテトラブトキシド0.5質量部をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒータ内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた(第1反応工程)。その後、無水トリメリット酸2.0質量部(0.010mol)を添加し、180℃で1時間反応させ(第2反応工程)、結着樹脂1を得た。
この結着樹脂C−2の酸価は10mgKOH/gであり、水酸基価は65mgKOH/gであった。また、GPCによる分子量は、重量平均分子量(Mw)8,000、数平均分子量(Mn)3,500、ピーク分子量(Mp)5,700、軟化点は90℃であった。
<結着樹脂D−1の製造例>
結着樹脂C−1を50質量部と結着樹脂C−2を50質量部とをヘンシェルミキサーで混合し、結着樹脂D−1とした。
<トナーC(補給用現像剤C)の製造例>
・結着樹脂D−1 100質量部
・磁性酸化鉄粒子 90質量部
(平均粒径0.15μm、Hc=11.5kA/m、σs=90Am2/kg、σr=1 6Am2/kg)
・フィッシャートロプシュワックス 2質量部
(最大吸熱ピーク=105℃、Mn=1500、Mw=2500)
・パラフィンワックス 2質量部
(最大吸熱ピーク=75℃、Mn=800、Mw=1100)
・3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 2質量部
上記材料をヘンシェルミキサーで前混合した後、二軸混練押し出し機によって、溶融混練した。この時、混練された樹脂の温度が150℃になるように滞留時間をコントロールした。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕し、得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)6.9μmのトナー粒子Cを得た。
このトナー粒子C 100質量部に対し、ヘキサメチレンジシラザン(処理量:シリカ微粒子100質量部当たり10質量部)とジメチルシリコーンオイル(処理量:シリカ微粒子100質量部当たり16質量部)で疎水化処理されたシリカ粒子(BET比表面積:75m2/g)1.5質量部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製FM10C、上羽根:Y1型/下羽根:So型)を使用し66.7s−1で5分間乾式混合して、本実施形態に用いられるトナーCを得た。
〔補給用現像剤Dの製法例〕
<トナーDの製造例>
トナーC製造時における、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製FM10C、上羽根:Y1型/下羽根:So型)での乾式混合の時間を20分とすることで、本実施形態に用いられるトナーDを得た。
〔補給用現像剤Eの製法例〕
<トナーEの製造例>
トナーC製造時における、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製FM10C、上羽根:Y1型/下羽根:So型)での乾式混合の時間を1分とすることで、本実施形態に用いられるトナーEを得た。
(トナー製造装置)
ここで本実施形態に用いるトナーAの製造に好ましく用いられる表面改質処理装置90に対して詳しく述べる。図22及び図23に示すように表面改質装置は以下のものから構成されている。
ケーシング70、
冷却水或いは不凍液を通水できるジャケット(図示しない)、表面改質手段である、ケーシング70内にあって中心回転軸に取りつけられた、上面に角型のディスク或いは円筒型のピン80を複数個有し、高速で回転する円盤上の回転体である分散ローター76、
分散ローター76の外周に一定間隔を保持して配置されている表面に多数の溝が設けられているライナー74(尚、ライナー表面上の溝はなくても構わない)、
更に、表面改質された原料を所定粒径に分級するための手段である分級ローター71、
更に、冷風を導入するための冷風導入口75、
被処理原料を導入するための原料供給口73、
更に、表面改質時間を自在に調整可能となるように、開閉可能なように設置された排出弁78、
処理後の粉体を排出するための粉体排出口77、
更に、分級手段である分級ローター71と表面改質手段である分散ローター76−ライナー74との間の空間を、分級手段へ導入される前の第一の空間81と、
分級手段により微粉を分級除去された粒子を表面処理手段へ導入するための第二の空間82に仕切る案内手段である円筒形のガイドリング79とから構成されている。
なお、分散ローター76とライナー74との間隙部分が表面改質ゾーンであり、分級ローター71及びローター周辺部分が分級ゾーンである。
以上のように構成してなる表面改質装置では、排出弁78を閉とした状態で原料供給口73から微粉砕品を投入すると、投入された微粉砕品は、まずブロワー(図示しない)により吸引され、分級ローター71で分級される。その際、分級された所定粒径以下の微粉は装置外へ連続的に排出除去され、所定粒径以上の粗粉は遠心力によりガイドリング79の内周(第二の空間62)に沿いながら分散ローター76により発生する循環流にのり表面改質ゾーンへ導かれる。表面改質ゾーンに導かれた原料は分散ローター76とライナー74間で機械式衝撃力を受け、表面改質処理される。表面改質された表面改質粒子は、機内を通過する冷風にのって、ガイドリング79の外周(第一の空間81)に沿いながら分級ゾーンに導かれ、分級ローター71により、再度微粉は機外へ排出される。そして、粗粉は、循環流にのり、再度表面改質ゾーンに戻され、繰り返し表面改質作用を受ける。一定時間経過後、排出弁78を開とし、排出口77より表面改質粒子を回収する。
〔第2実施形態〕
次に第2実施形態の構成について図24乃至図30で説明する。図24は第2実施形態における、現像剤補給容器の断面斜視図、図25はポンプが最大限膨張された時の部分断面図である。また、図26(a)は第2実施形態の容器に内装される仕切り壁6全体の斜視図で、図26(b)は仕切り壁6の側面図、図27乃至図30はそれぞれ補給動作時の容器内の様子を図25でポンプ部3a側から見た断面図である。
本実施形態では、上述した第1実施形態と同様な構成に関しては同符号を付すことで詳細な説明を省略する。
本実施形態の構成では排出口4aの上部に一定量の現像剤を収納することができる計量部4dが設けられている。また、仕切り壁6のポンプ部3a側に、仕切り壁6が円筒部2kと連動して回転した際に一緒に回転する囲い部7が設けられている。その他の構成は第1実施形態とほぼ同様である。
図26(a)に示すように、囲い部7は軸方向の離れた位置に平行に設けられた2枚の扇形板状部材7aと、連結壁7eと、連結壁7eより回転方向下流側にある摺り切り部7dと、によって構成されている。また、ポンプ部3a側にある扇形板状部材7aの回転軸中心付近に連通穴7bが形成されている。図26(b)で示されるように、2枚の扇形板状部材7aの間には幅Sの空間7cが設けられ、空間7cは連通穴7bを介して現像剤補給容器内のポンプ部3a側の空間と連通している。なお、本実施形態では扇の中心角は90°、連通穴7bの半径は5mm、幅Sは5mmにそれぞれ設定されている。
本実施形態の構成での排出動作について図27乃至図30を用いて説明する。
図27において、現像剤補給容器1はポンプ部3aの動作していない動作停止工程となっている。
このとき、仕切り壁6によって排出部4cへと現像剤Tが搬送される。この状態では、計量部4dは扇形板状部材7aに全くおおわれていない状態(現像剤流入許容状態)であるため、排出部4c下部にある計量部4d内にも現像剤Tが流れ込む。したがって、図27では、計量部4d内は現像剤Tで満たされ、排出部4cにも現像剤Tが存在している状態となっている。
この状態から仕切り壁6が回転することで、図28の状態となる。
図28において、ポンプ部3aは最も縮んだ状態から最も伸びた状態へ向かう途中の状態、すなわち吸気工程である。
このとき、扇形板状部材7aは計量部4dを全く覆っていないか、もしくは一部のみ覆っている状態である。この状態では、計量部4d内部および上部は現像剤が満たされている状態である。この状態からポンプ部3aが伸びることで、計量部4d内部や周辺の現像剤Tにエアーが取り込まれる。
この状態からさらに仕切り壁6が回転することで、図29の状態となる。
図29において、ポンプ部3aは最も伸びた状態から最も縮んだ状態へ向かう途中の状態、すなわち排気工程である。
このとき、計量部4d上部の現像剤Tは、擦切り部7dによって回転方向下流側へ押しのけられている。さらに、計量部4dは扇形板状部材7aによって少なくとも一部が蓋をされた状態(現像剤流入抑止状態)となっている。この状態では、計量部4d外の現像剤Tが計量部4d内に流入することが抑制されている状態となっている。そのため、この状態からポンプ部3aが縮み、現像剤補給容器1の内圧が上昇した際に排出口4aから排出される現像剤Tの大半は、計量部4d内部にあるものとなる。
図30は計量部4d内の現像剤を排出した後の状態である。このとき、壁面への付着分を除き、計量部4d内に現像剤Tは無い。ここからさらに仕切り壁6が回転することで、図27の状態に戻り、計量部4d内に現像剤Tが搬送される。
本実施形態では、このように、図27乃至図30の工程を繰り返すことで、排出される現像剤Tの大半を計量部4d内部の現像剤とすることができる。従って、周囲から様々な状態の現像剤Tが排出口4aに流れ込んでくる第1実施形態よりも、一定の空間内の現像剤Tのみを排出する本実施形態の方が排出口4aから排出される現像剤Tの定量性を向上させることが可能となる。
(トータルエネルギー)
本構成においても第1実施形態の物性を備えた現像剤と組み合わせることで、現像剤補給容器内の現像剤の搬送性や排出性を著しく良化させることができる。
具体的には、表1に示される現像剤A、B、Cを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、非常に高い排出精度を得ることができる。さらに、第1実施形態同様に、現像剤A、Bは現像剤Cよりもエアーでの解し効果が得られやすいため、本実施形態の現像剤補給容器と組み合わせることで、第1実施形態以上に補給される現像剤を均一な状態に保つことができる。特に、図7に示すようなホッパ10aが無いような系ではその効果が顕著であり、画像濃度変動を大幅に抑制することができる。また、現像剤Cは、現像剤A、Bよりも仕切り壁6による搬送効果がより高いため、現像剤の消費量がより多い場合でも、画像形成装置に必要な量の現像剤を供給することが容易である。
吸気工程では、エアーが排出口4aから現像剤補給容器1内に取り込まれ、計量部4d内の現像剤Tがエアーを含んだ状態となる。そのため、その後の排気工程において排出される現像剤Tはエアーを含んだ現像剤となる。このとき、エアーを含んだときのトータルエネルギーEaが0.4mJより小さい場合は、現像剤排出の際に現像剤が飛散して周囲を汚してしまう可能性がある。また、Eaが2.0mJよりも大きい場合は、吸気工程において、現像剤Tを十分にほぐすことができない場合が生じる可能性があり、現像剤Tの排出が困難になってしまう可能性がある。
エアーを含まないときのトータルエネルギーEが10mJよりも小さい時は、排気工程において、扇形板状部材7aと排出部4cの隙間から現像剤Tが計量部4d内へ進入する。そのため、排出時に計量部4d内の現像剤Tのみならず、その周辺の現像剤を多く巻き込んで排出することになるおそれがある。従って、排出口4aから排出される現像剤Tの量にばらつきが生じる可能性が高くなる。また、Eが80mJよりも大きい場合は、現像剤Tが扇形板状部材7aと排出部4cの隙間に滞留しやすくなり、扇形板状部材7aと排出部4cの相対回転によってストレスを受けて凝集するおそれが増加する。
具体的には、表1に示される現像剤Dを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、容器内の現像剤を十分に解すことができず、排出が困難になる場合や、扇形板状部材7aと排出部4cの間で現像剤が凝集する場合が見られた。また、現像剤Eを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、現像剤の排出精度の低下や、排出時の周囲へのトナー飛散が見られた。
従って、本実施形態の現像剤補給容器には、EとEaが適した範囲である現像剤を補給することで、現像剤を適切にほぐすことや、計量部内の現像剤量を一定に保つことができ、現像剤補給容器からの現像剤の排出量をより高い精度にすることができる。さらに、現像剤がストレスを受けやすい場所に滞留して凝集するおそれも、より低減することができる。
〔第3実施形態〕
次に現像剤補給容器に収容する現像剤の他の物性について説明する。なお、本実施形態は現像剤の物性以外の構成、例えば現像剤補給容器等は前述した第1実施形態と同一であるため重複する説明を省略する。
本実施形態の現像剤は25℃における現像剤間付着力Ftbが20g以上100g以下であり、且つ、移送性指数が0.5以上25.0以下に構成されている。この現像剤を前述した構成の現像剤補給容器に収容することにより、現像剤の搬送性、排出性が更に良化する。
尚、本実施形態の現像剤補給容器から補給される現像剤の種類としては、1成分現像器を用いる場合は、1成分非磁性トナー、あるいは、1成分磁性トナーを補給することになる。2成分現像器を用いる場合は、非磁性トナー、あるいは、非磁性トナーと磁性キャリアを混合した2成分現像剤を補給することになる。即ち、本実施形態で用いられる現像剤としては、現像器の構成によって選択されるが、上述の現像剤物性の範囲であれば、どの現像剤の種類であっても構わない。
表3に本実施形態に用いる補給用現像剤の物性値を示す。
(現像剤間付着力:Ftb)
現像剤間付着力Ftbは、粉体層の圧縮・引張特性計測装置アグロボット(ホソカワミクロン社製)を用いて計測することで得られる粒子間における付着性を示す値である。
具体的には、下記条件下で上下2分割の円筒セル内に一定量の粉体を充填し、粉体を8kgの荷重を加え保持した後、上部セルを持ち上げ、粉体層が破断されたときの強度、圧縮時の高さ(距離)、容積から算出できる。
[測定条件]
サンプル量:7.0g、
環境温度:25℃、
湿度:42%、
セル内径:25mm、
セル温度:25℃、
バネ線径:1.0mm、
圧縮速度:0.10mm/sec、
圧縮力:8kgf、
圧縮保持時間:300秒、
引張速度:0.40mm/sec、
現像剤間付着力Ftbは、圧縮時の現像剤間の付着力を示しており、圧縮後の現像剤間の凝集性や流動性を評価することができる。現像剤補給容器内では、ポンプ作動時の現像剤同士の圧縮、特に排出口付近の圧縮が、搬送性や排出性に影響を及ぼすが、現像剤間付着力Ftbが20g以上100g以下であると現像剤補給容器内の現像剤の搬送性や排出性が著しく良化する。
本実施形態の検討結果からは、現像剤間付着力Ftbが20gより小さい場合は、付着力が小さすぎて現像剤の飛散が懸念される。特に本実施形態のようにポンプを用いてエアーで解して排出させるような構成の場合、付着力が低過ぎる場合、粒子同士が付着しにくいのでエアーの圧力で周囲にトナーが飛散しやすくなる傾向がある。そのためトナー汚れが悪化してしまう可能性がある。
一方、現像剤間付着力Ftbが100gより大きい場合は、逆に現像剤同士の凝集性が高すぎて補給容器内の流動性が均一でなくなったり、排出口付近で現像剤が凝集しやすくなり排出性能が低下してしまう可能性がある。また付着力が強いために長時間、高温高湿環境下に保管された場合などはトナー同士が凝集してしまうなどのブロッキングも発生しやすくなる。特に本実施形態のように排出口4aの口径が非常に小さい場合においては現像剤の凝集やブロッキングといった現象は排出性に影響を及ぼす可能性があるため、非常に重要な問題である。
(移送性指数)
次に本実施形態のもう一つの物性指標である移送性指数について説明する。
移送性指数は、図21に示すパーツフィーダー(コニカミノルタ製)により測定されるものであり、一定の振動を与えた状態におけるトナーの移動性を指数化したものである。この移送性指数はトナーの静止時における静嵩密度、安息角などによって評価される流動性とは異なるものであり、回転する補給容器内のトナーと補給容器との動的な流動性を示す指標である。
具体的な測定方法について図21に基づいて説明する。パーツフィーダーは、特定の振動を発生させるための駆動源40および、この駆動源40の上方において支持された円筒状のボール41により構成されている。ボール41にはその内周壁面に沿って、その底面と上端縁とを連絡する螺旋状の坂路42が形成されている。ここで、坂路42はその上端部43がボール41の上端縁と同じ高さ位置において当該ボール41の側壁から径方向外方に突出した態様で配設されている。図21において44はボール41の中心軸、45は坂路42の上端部43の下方に設けられた受け皿、46は受け皿に接続された計量手段である。
このパーツフィーダーにおいては、駆動源40により供給される回転動力をボール41に伝達されることによりボール41を全体的に振動させる振動運動に変換し、上下運動の戻り位置を角度を持たせて配設されたバネの作用により変更させる。これにより、ボール41内に位置されたトナーが坂路42に沿って上方に移送され、坂路42の上端部43より受け皿45に落下する。
こうして、本実施形態におけるトナーの移送性指数の測定は以下のように行う。
まず、ボール41の内部の中心軸周辺にトナー1gを投入するとともに、駆動源40を周波数134.0乃至136.0Hz、振幅0.59乃至0.61mmの条件で駆動させる。
次に、トナーを坂路42に沿って上方に移動し受け皿に到達させて、計量手段46によって計量された受け皿に到達したトナーの量が300mg乃至700mgとなったときの、前記駆動源40の駆動を開始したときからの時間を測定し、下記一般式利用して算出することができる。
(移送性指数)=(700−300)mg/(T700−T300)秒
上記一般式においてT300は受け皿に300mgのトナーを移送するために要した時間を示し、T700は受け皿に700mgのトナーを移送するために要した時間を示す。
移送性指数は、一定の振動を与えた状態におけるトナーの移動性を指数化したものである。本実施形態では、この移送性指数が現像剤補給容器のポンプ作動時の現像剤の流動性を評価でき、移送性指数が0.5以上25.0以下であると、現像剤補給容器内で現像剤の搬送性が著しく良化することが分かっている。移送性指数が0.5より小さい場合は、現像剤の流動性が高すぎることを意味しており、そのような場合は先述した現像剤間付着力Ftbにて説明したようにトナーの飛散が悪化する可能性がある。一方、移送性指数が25.0より大きい場合は、現像剤同士の凝集性が高すぎて補給容器内の流動性が均一でなくなるため補給する現像剤が均一な状態で保たれなくなる可能性がある。
(各トナー物性による排出結果)
表3に示した現像剤A,B、Cを本実施形態の現像剤補給容器に収容し、通常の画像形成を行いながらトナー補給させたところ、トナー飛散やトナーが詰まるといった問題も無く、初期から最後まで安定した補給量を維持したまま、トナー補給を行うことができた。
また図7に示すようなホッパ10aが無いような系では、均一な現像剤の補給により画像濃度変動を抑制することができる。
次に、表3に示した現像剤Dを同様に評価したところ、初期からトナー詰まりも無く補給はできたが、現像剤の流動性が高すぎてトナー飛散が悪化してしまい、シャッター開口部周辺のトナー汚れが悪かった。
次に、表3に示した現像剤Eを同様に評価したところ、現像剤間付着力Ftbと移送性指数が共に高く、現像剤の流動性が著しく悪かったため、排出初期から容器内の現像剤を十分に崩すことができずに、排出困難になる場合が見られた。
以上説明したように、本実施形態における現像剤補給容器に、現像剤間付着力Ftbと移送性指数が共に下記に示したように適した範囲内である現像剤とすることで、現像剤補給容器内の現像剤の搬送性や排出性が著しく良化する。その結果、現像剤補給容器内の現像剤が均一な状態が保たれ、排出精度が格段に向上する。具体的には25℃における現像剤付着力Ftb及び移送性指数が下記の範囲内にあることを示す。
・現像剤間付着力:20g以上、100g以下
・移送性指数 :0.5以上、25.0以下
本実施形態における現像剤補給容器は容器自身に伸縮自在のポンプを備え、そのポンプを用いてエアーの吸気・排気工程を利用することで、排出開口部が非常に小さい口径においても正しく補給できる極めて特徴的な構成を有する。排出口径が小さいことによって従来の容器にあったようなトナー飛散や汚れといった問題に対して、非常に優れた利点を有する。一方、万が一容器内部のトナーがブロッキングしてしまった場合など、補給性に対するリスクも高いが、本実施形態のように上記の現像剤の物性値を適正な範囲内に抑えることで、排出初期から常に安定した補給性能を維持することが可能となる。そのため、本実施形態のような特徴的な構成を有する現像剤補給容器においては非常に重要且つ有効な手段となる。
なお、本実施形態で用いた現像剤の製造方法は前述した第1実施形態で説明した構成と同一である。
(計量部を有する現像剤補給容器)
また、本実施形態の現像剤は前述した第2実施形態で説明した排出口4aの上部に一定量の現像剤を収納することができる計量部4dを設けた現像剤補給容器にあっても好適に用いることができる。具体的には、表3に示される現像剤A、B、Cを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、非常に高い排出精度を得ることができた。
さらに現像剤A、B、Cはエアーでの解し効果が得られやすいため、本例の現像剤補給容器と組み合わせることで補給される現像剤を均一な状態に保つことができる。特に図7に示すようなホッパ10aが無いような系では、その効果が顕著であり、画像濃度変動を大幅に抑制することができる。
吸気工程では、エアーが排出口4aから現像剤補給容器1内に取り込まれ、計量部4d内の現像剤Tがエアーを含んだ状態となる。そのため、その後の排気工程において排出される現像剤Tはエアーを含んだ現像剤となる。このとき、エアーを含んだときの移送性指数が0.5より小さい場合は、現像剤排出の際に現像剤が飛散して周囲を汚してしまう可能性がある。また、移送性指数が25.0よりも大きい場合は、吸気工程において、現像剤Tを十分にほぐすことができない場合が生じる可能性があり、現像剤Tの排出が困難になってしまう可能性がある。
エアーを含まないときの現像剤間付着力Ftbが20gよりも小さい時は、排気工程において、扇形板状部材7aと排出部4cの隙間から現像剤Tが計量部4d内へ進入する。そのため、排出時に計量部4d内の現像剤Tのみならず、その周辺の現像剤を多く巻き込んで排出することになるおそれがある。従って、排出口4aから排出される現像剤Tの量にばらつきが生じる可能性が高くなる。また、現像剤間付着力Ftbが100gよりも大きい場合は、現像剤Tが扇形板状部材7aと排出部4cの隙間に滞留しやすくなり、扇形板状部材7aと排出部4cの相対回転によってストレスを受けて凝集するおそれが増加する。
具体的には、表3に示される現像剤Eを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、容器内の現像剤を十分に解すことができず、排出が困難になる場合や、扇形板状部材7aと排出部4cの間で現像剤が凝集する場合が見られた。
また、現像剤Dを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、現像剤の排出精度の低下や、排出時の周囲へのトナー飛散が見られた。
従って、本例の現像剤補給容器には、現像剤間付着力Ftbと移送性指数が適した範囲である現像剤を補給することで、現像剤を適切にほぐすことや、計量部内の現像剤量を一定に保つことができる。これにより、現像剤補給容器からの現像剤の排出量をより高い精度にすることができる。さらに、現像剤がストレスを受けやすい場所に滞留して凝集するおそれも、より低減することができる。
〔第4実施形態〕
次に現像剤補給容器に収容する現像剤の他の物性について説明する。なお、本実施形態は現像剤の物性以外の構成、例えば現像剤補給容器等は前述した第1実施形態と同一であるため重複する説明を省略する。
本実施形態は現像剤の物性として最大圧密応力、単軸崩壊応力、及び、ゆるみ見掛け密度という指標を用いることにより、現像剤補給容器1内に収容される現像剤の状態を精度よく類推することを可能とするものである。
本実施形態では前述した第1実施形態で説明した現像剤A、B、Cの他に以下の現像剤F、Gを調整した。
〔補給用現像剤Fの製法例〕
トナーAを50質量部、上記製造例で記載した磁性キャリアCを50質量部、V型混合機を用いて混合し、目開き250μmの篩を通すことにより本実施形態に用いられる補給用現像剤Fを調製した。
〔補給用現像剤Gの製法例〕
トナーAを100質量部、上記製造例で記載した磁性キャリアCを0質量部、V型混合機を用いて混合し、目開き250μmの篩を通すことにより本実施形態に用いられる補給用現像剤Gを調製した。
なお、本実施形態で用いるトナーAの製造に好ましく用いられる表面改質処理装置90は前述した実施形態で説明したものと同じである。
(単軸崩壊応力とゆるみ見掛け密度)
本実施形態においては、最大圧密応力、単軸崩壊応力、及び、ゆるみ見掛け密度という指標を用いることにより、現像剤補給容器1内に収容される現像剤の状態を精度よく類推することが可能となる。
最大圧密応力とは粉体集合体を粉体層にするのに要する垂直荷重である。単軸崩壊応力とは最大圧密応力で形成された粉体層が破壊され、流動を開始するのに必要なせん断応力である。また、ゆるみ見掛け密度とは粉体を自然落下させた状態のかさ密度である。
具体的には、現像剤が、最大圧密応力がゼロのときの単軸崩壊応力が大きく、且つ、ゆるみ見掛け密度も大きいと、本実施形態の現像剤補給容器内のエアーによる解しが十分に行えなかったり、搬送の均一性に影響を及ぼしたりする可能性がある。また、最大圧密応力がゼロのときの単軸崩壊応力が小さく、且つ、ゆるみ見掛け密度が小さいと、現像時のトナー飛散で部材汚染が生じる可能性が増加するおそれがある。
本実施形態で用いている現像剤補給容器1では、エアーによって内部の現像剤を解している。そのため、現像剤がエアーによって解された状態である最大圧密応力がゼロのときの単軸崩壊応力、且つ、現像剤のゆるみ見掛け密度が、以下を満たすことで、現像剤の搬送性、排出性が更に良化すると共に、トナー飛散による部材汚染が抑制できる。
X=0のときのU≦2.0 かつ、250≦ρ≦1000
X:最大圧密応力(kPa)
U:単軸崩壊応力(kPa)
ρ:ゆるみ見掛け密度(kg/m3)
尚、本実施形態の現像剤補給容器1から補給される現像剤の種類としては、1成分現像器を用いる場合は、1成分非磁性トナー、あるいは、1成分磁性トナーを補給することになる。2成分現像器を用いる場合は、非磁性トナー、あるいは、非磁性トナーと磁性キャリアを混合した2成分現像剤を補給することになる。即ち、本実施形態で用いられる現像剤としては、現像器の構成によって選択されるが、上述の現像剤物性の範囲であれば、どの現像剤の種類であっても構わない。表4に本実施形態に用いた補給用現像剤の物性値を示す。
本実施形態の補給用現像剤の最大圧密応力(X)と単軸崩壊応力(U)は、「シェアスキャン TS−12」(Sci−Tec社製)により測定したものである。シェアスキャンは、Prof.Virendra M.Puriによって書かれた「CHARACTERIZING POWDER FLOWABILITY(2002年1月24日発表)」記載のモールクーロンモデルによる原理で測定を行う。
具体的には、断面方向に直線的に剪断力を付加できる回転セル(円柱状、内径110mm、容量200ml)を使用し、室温環境(23℃、60%RH)にて測定を行った。このセルの中に現像剤を入れ、2.5kPaになるように垂直荷重をかけ、この垂直荷重における最密な充填状態となるように圧密粉体層を作成する。シェアスキャンによる測定は、この圧密状態を圧力を自動で検知し個人差なく作成できる点で、本実施形態において好ましい。同様に、垂直荷重を5.0kPa及び10.0kPaとした圧密粉体層を形成する。そして、各垂直荷重で形成したサンプルに圧密粉体層を形成した際にかけた垂直荷重を継続してかけながら徐々にせん断力を加え、その際のせん断応力の変動を測定する試験を行い、定常点を決定する。定常点に到達したとの判断は、上記試験において、せん断応力の変位と垂直荷重をかけるための荷重印加手段の垂直方向の変位が小さくなり、両者が安定した値を取るようになったとき定常点に到達したものとする。次に、定常点に到達した圧密粉体層から徐々に垂直荷重を除荷し、各荷重における破壊包絡線(垂直荷重応力vsせん断応力のプロット)を作成し、Y切片及び傾きを求める。モールクーロンモデルによる解析において、単軸崩壊応力及び最大圧密応力は下記式で表され、上記Y切片は「凝集力」となり、傾きが「内部摩擦角」になる。
単軸崩壊応力(U)=2c(1+sinφ)/cosφ
最大圧密応力(X)=((A−(A2sin2φ−τssp 2cos2φ)0.5)/cos2φ)×(1+sinφ)−(c/tanφ)
(A=σssp+(c/tanφ)、c=凝集力、φ=内部摩擦角、
τssp=c+σssp×tanφ、σssp=定常点における垂直荷重)
各荷重において算出した単軸崩壊応力と最大圧密応力をプロット(Flow Function Plot)し、そのプロットに基づき直線を引く。この直線より、最大圧密応力がゼロの時の単軸崩壊応力を求める。
本実施形態に用いられる補給用現像剤は、現像剤の最大圧密応力がゼロのときの単軸崩壊応力が2.0kPa以下であることが好ましい。これは、通常時(現像剤補給容器1内の現像剤が特に圧密されていない状態)長時間放置された後ポンプが始動した際に、ポンプ内圧およそ2.0kPaで空気を取り込むことで現像剤補給容器1内部の現像剤を確実に解して、瞬時にして容器内の現像剤に良好な流動性を発現させることができることを示している。
現像剤の最大圧密応力がゼロのときの単軸崩壊応力が2.0kPaより大きいと、長時間放置された後のポンプ始動時に、容器内部の現像剤を確実に解して良好な流動性を確保できるようになるまでに時間がかかってしまう可能性がある。
本実施形態の補給用現像剤のゆるみ見掛け密度(ρ)は、パウダーテスタPT−R(ホソカワミクロン社製)を用い測定した。測定環境は、23℃,50%RHで行った。また測定は、現像剤を、目開き75μmの篩を用いて、振幅を1mmで振動させながら、容積100mlの金属製カップに捕集し、ちょうど100mlとなるように擦り切った。そして、金属製カップに捕集した現像剤質量から、ゆるみ見掛け密度(kg/m3)を計算した。
即ち、ゆるみ見掛け密度は、現像剤の圧密しやすさを示しており、本実施形態では現像剤のゆるみ見掛け密度ρが250kg/m3以上1000kg/m3以下であると、現像剤補給容器1内で現像剤の搬送性や排出性が著しく良化する。
ゆるみ見掛け密度が250kg/m3より小さい場合は、現像剤が嵩高くなりすぎて流動性が高すぎることを意味しており、現像剤を仕切り壁6ですくい上げる際に、仕切り壁6から現像剤がこぼれてしまい、現像剤の搬送性が悪化してしまう可能性がある。
一方、ゆるみ見掛け密度が1000kg/m3より大きい場合は、現像剤補給容器1内の流動性が確保できず補給する現像剤が均一な状態で保たれなくなる可能性がある。更に、長期放置後のポンプ始動時に現像剤が解れにくくなる可能性がある。つまり、本実施形態の現像剤補給容器1に、最大圧密応力がゼロのときの単軸崩壊応力とゆるみ見掛け密度が適した範囲である現像剤を補給することで、現像剤補給容器1内の現像剤の搬送性や排出性が著しく良化する。
以上から、本例の現像剤補給容器に対し、単軸崩壊応力とゆるみ見掛け密度が適した範囲である現像剤(A、B、C)を組合せることで、現像剤補給容器内の現像剤の搬送性や排出性が著しく良化することが示される。
また、以上に示したように均一な現像剤の補給が可能であることから、特に図7に示すようなホッパ10aを省略した構成を用いる場合であっても、排出性が安定していることから画像濃度変動を抑制することができる。
一方、前述した現像剤Fを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、容器内の現像剤を十分に解すことができず、排出が困難になる。また、現像剤Gを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、現像剤搬送性の悪化による排出精度の低下や、排出時の周囲へのトナー飛散が見られることから好ましくない。
(計量部を有する現像剤補給容器)
また、本実施形態の現像剤も前述した第2実施形態で説明した排出口4aの上部に一定量の現像剤を収納することができる計量部4dを設けた現像剤補給容器にあっても好適に用いることができる。
すなわち、吸気工程では、エアーが排出口4aから現像剤補給容器1内に取り込まれ、計量部4d内の現像剤Tがエアーを含んだ状態となる。このとき、ゆるみ見掛け密度ρが250kg/m3より小さい場合は、現像剤が嵩高くなりすぎて流動性が高くなりすぎる。よって、計量部4d内で現像剤Tが暴れてばらつきが生じ、排出口4aから排出される現像剤の量が一定に保てない可能性がある。一方、ゆるみ見掛け密度ρが1000kg/m3より大きい場合は、現像剤が解れにくくなって不均一になっている。よって、計量部4d内に所定量の現像剤が確保できずに補給する現像剤が一定に保てない可能性がある。また、単軸崩壊応力Uが2.0kPaよりも大きい場合は、現像剤Tを適切に解すことができない場合が生じる可能性があるため、安定した排出性を得られないおそれがある。
排気工程では、エアーを含まないときのゆるみ見掛け密度ρが250kg/m3よりも小さい時は、扇形板状部材7aと排出部4cの隙間から現像剤Tが計量部4d内へ進入する。そのため、排出時に計量部4d内の現像剤Tのみならず、その周辺の現像剤を多く巻き込んで排出することになるおそれがある。従って、排出口4aから排出される現像剤Tの量にばらつきが生じる可能性が高くなる。また、ゆるみ見掛け密度ρが1000kg/m3よりも大きい場合は、現像剤が扇形板状部材7aと排出部4cの隙間に滞留し、扇形板状部材7aと排出部4cの相対回転によってストレスを受けて凝集するおそれが増加する。
従って、本例の現像剤補給容器1には、最大圧密応力がゼロのときの単軸崩壊応力と、ゆるみ見掛け密度が適した範囲である現像剤(A、B、C)を補給することで、現像剤を適切にほぐすことや、計量部内の現像剤量を一定に保つことができる。これにより、現像剤補給容器1からの現像剤の排出量をより高い精度にすることができる。さらに、現像剤がストレスを受けやすい場所に滞留して凝集するおそれも、より低減することができる。
従って、本例に示す現像剤補給容器のように、搬送部材による現像剤へのシェアがより掛かるおそれのある構成を用いた場合であっても、単軸崩壊応力とゆるみ見掛け密度が適した範囲である現像剤を補給することで、現像剤を適切にほぐすことや、計量部内の現像剤量を一定に保つことができ、現像剤補給容器からの現像剤の排出量をより高い精度にすることができる。さらに、現像剤がストレスを受けやすい場所に滞留して凝集するおそれも、より低減することができる。
〔第5実施形態〕
次に現像剤補給容器に収容する現像剤の他の物性について説明する。なお、本実施形態は現像剤の物性以外の構成、例えば現像剤補給容器等は前述した第1実施形態と同一であるため重複する説明を省略する。
(現像剤の物性)
本実施形態の現像剤補給容器に収容された現像剤は、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子と無機微粉体を有するトナーを有し、トナーの二粒子間付着力Fpが1.0×10−9N以上1.0×10−6N以下であり、且つ、トナーの無機微粉体の遊離率が40個数%以下である。これにより、現像剤の搬送性、排出性が更に良化する。
尚、本実施形態の現像剤補給容器から補給される現像剤の種類としては、1成分現像器を用いる場合は、1成分非磁性トナー、あるいは、1成分磁性トナーを補給することになる。2成分現像器を用いる場合は、非磁性トナー、あるいは、非磁性トナーと磁性キャリアを混合した2成分現像剤を補給することになる。即ち、本実施形態で用いられる現像剤としては、現像器の構成によって選択されるが、上述の現像剤物性の範囲であれば、どの現像剤の種類であっても構わない。
表5に本実施形態に用いたトナーの物性値を示す。
(二粒子間付着力)
トナーの二粒子間付着力Fpは、粉体層の圧縮・引張特性計測装置アグロボット(ホソカワミクロン社製)を用いて計測することで得られる粒子間における付着性を示す値である。
具体的には、下記測定条件下で上下2分割の円筒セル内に一定量の粉体を充填し、粉体を8kgの荷重を加え保持した後、上部セルを持ち上げ、粉体層の破断前後の引張力の差から最大引張破断力を求め、これにより最大引張破断強度を算出する。最大引張破断強度は最大引張破断力から、下記式より換算する。
σt=Ftb・9.80665×10−3/(π・(d/2×10−3)2)
σt:最大引張破断強度[Pa]、Ftb:最大引張破断力[gf]、D:セル内径[mm]
また、粉体力学で最も一般的なRumpfの式を用い、最大引張破断強度から二粒子間付着力Fpを算出する。
Fp=σt・Vf・Dvs 2/(1−Vf)
Fp:二粒子間付着力[N]、σt:最大引張破断強度[Pa]、Vf:空隙率[―]、Dvs:粉体の体面積平均径[m]
[測定条件]
サンプル量:7.0g、
環境温度:24℃、
湿度:42%、
セル内径:25mm、
セル温度:25℃、
バネ線径:1.0mm、
圧縮速度:0.10mm/sec、
圧縮力:8kgf、
圧縮保持時間:300秒、
引張速度:0.40mm/sec、
トナーの二粒子間付着力Fpは、圧縮時の付着力を示しており、圧縮後のトナーの凝集性や流動性を評価することができる。現像剤補給容器内では、ポンプ作動時のトナー同士での圧縮、特に排出口付近での圧縮が、搬送性や排出性に影響を及ぼす。このとき、トナーの二粒子間付着力Fpが1.0×10−9N以上1.0×10−6N以下であると現像剤補給容器内のトナーの搬送性や排出性が著しく良化する。
トナーの二粒子間付着力Fpが1.0×10−9Nより小さい場合は、仕切り壁6によって現像剤をすくい上げる際に現像剤がこぼれてしまい、本実施形態の現像剤補給容器内での現像剤の搬送性が落ちる可能性があったり、現像時のトナー飛散で部材汚染が生じる可能性が増加するおそれがある。
一方、トナーの二粒子間付着力Fpが1.0×10−6Nより大きい場合は、トナー同士の凝集性が高すぎて補給容器内の流動性が均一でなくなったり、排出口付近でトナーが凝集しやすくなり排出性能が低下する可能性がある。
(遊離率)
本実施形態における無機微粉体の遊離率は、各無機元素に対して得られた遊離率の総和と定義する。
無機微粉体、例えばシリカの遊離率は、トナーをプラズマへ導入し、このときの発光スペクトルから測定することができる。この場合では遊離率とは、結着樹脂の構成元素である炭素原子の発光と、ケイ素原子の発光の同時性から次式により定義される値である。
遊離率(%)={ケイ素原子のみの発光回数/(炭素原子と同時に発光したケイ素原子の発光回数+ケイ素原子のみの発光回数)}×100
ここで、「同時に発光」とは、炭素原子の発光から2.6msec以内に発光した無機元素(シリカの場合は、ケイ素原子)の発光を同時発光とし、それ以降の無機元素の発光は無機元素のみの発光とする。
本実施形態では、炭素原子と無機元素が同時発光するということは、トナー粒子が無機微粉体を含有していることを意味し、無機元素のみの発光は、無機微粉体がトナー粒子から遊離していることを意味すると言い換えることも可能である。
上記の無機微粉体の遊離率は、Japan Hardcopy97論文集の65〜68ページに記載の原理に基づいて測定することができる。このような測定を行う場合では、例えばパーティクルアナライザー(PT1000:横河電機(株)製)が好ましくは用いられる。具体的には、該装置はトナー等の微粒子を一個ずつプラズマへ導入し、微粒子の発光スペクトルから発光物の元素、粒子数、粒子の粒径を知ることが出来る。
上記測定装置を用いる具体的な測定方法をシリカの場合について、以下に説明する。0.1%酸素含有のヘリウムガスを用い、23℃湿度60%の環境にて測定を行い、トナーサンプルは同環境下にて1晩放置し、調湿したものを測定に用いる。また、チャンネル1で炭素原子(測定波長247.860nm、Kファクターは推奨値を使用)、チャンネル2でケイ素原子(測定波長288.160nm、Kファクターは推奨値を使用)を測定し、一回のスキャンで炭素原子の発光数が1000〜1400個となるようにサンプリングを行い、炭素原子の発光数が総数で10000個以上となるまでスキャンを繰り返し、発光数を積算する。この時、炭素元素の発光個数を縦軸に、炭素元素の三乗根電圧を横軸にとった分布において、該分布が極大を一つ有し、更に、谷が存在しない分布となるようにサンプリングし、測定を行う。そして、このデータを元に、全元素のノイズカットレベルを1.50Vとし、上記計算式を用い、ケイ素原子、即ちシリカの遊離率を算出する。
本実施形態では、無機微粉体の遊離率は外添強度、外添剤の種類や量によって変化させることが可能である。即ち、外添強度を高くしたり、外添剤量を減らしたりすれば、遊離率を低下させることができる。
本実施形態では、トナーの無機微粉体の遊離率が40個数%以下であることが好ましい。本実施形態の補給容器の排出口は小開口であるため、そこを通過するトナーはストレスがかかりやすく無機微粉体が遊離しやすい状態になってしまう。そこで、無機微粉体の遊離率が40個数%以下であるトナーを用いることで、補給容器からトナーが排出されるときの無機微粉体の遊離を著しく少なく抑えることができ、遊離した無機微粉体による部材汚染を抑制し良好な耐久性を維持できるものとなる。
以上から、本実施形態の現像剤補給容器に、トナーの二粒子間付着力Fpと無機微粉体の遊離率が適した範囲であるトナーを補給することで、現像剤補給容器内のトナーの搬送性や排出性が著しく良化する。さらに、排出時の無機微粉体の遊離を顕著に抑制することで、補給されるトナーが均一な状態に保たれる。
更に表5で示す現像剤A、B、Cにおいて、現像剤A、Bは二粒子間付着力Fpが現像剤Cよりも低くなっている。そのため、現像剤A、Bは現像剤Cよりもエアーでの解し効果が得られやすいため、補給される現像剤を均一な状態に保つことができる。特に、図7に示すようなホッパ10aが無いような系では、均一な現像剤の補給により画像濃度変動を抑制することができる。また、現像剤Cは現像剤A、Bよりも二粒子間付着力Fpが高くなっている。 そのため、現像剤A、Bよりも仕切り壁6による搬送効果がより高いため、現像剤の消費量がより多い場合でも、画像形成装置に必要な量の現像剤を供給することが容易である。一方、表5に示す現像剤Iを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、容器内の現像剤を十分に解すことができず、排出が困難になる場合が見られた。また、現像剤Hを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、現像剤搬送性の悪化による排出精度の低下や、排出時の周囲へのトナー飛散が見られた。
また、現像剤B、Cは現像剤Aに比べて遊離率が低く、本実施形態の構成のように小開口をエアーの力で通過させた場合でも無機微粉体の遊離をより抑えることが出来ることから、部材汚染がより軽微であった。これに対し、現像剤Iは遊離率が高く、無機微粉体による部材汚染が見られた。
なお、本実施形態では前述した第1実施形態で説明した現像剤A、B、Cの他に以下の現像剤H、Iを調整した。
〔補給用現像剤Hの製法例〕
トナーC製造時における、シリカ粒子(BET比表面積:75m2/g)の量を0.45質量部とし、かつヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製FM10C、上羽根:Y1型/下羽根:So型)での乾式混合の時間を1分とすることで、本実施形態に用いられるトナーHを得た。
〔補給用現像剤Iの製法例〕
トナーC製造時における、シリカ粒子(BET比表面積:75m2/g)の量を4.5質量部とし、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製FM10C、上羽根:Y1型/下羽根:So型)での乾式混合の時間を1分とすることで、本実施形態に用いられるトナーIを得た。
(計量部を有する現像剤補給容器)
また、本実施形態の現像剤も前述した第2実施形態で説明した排出口4aの上部に一定量の現像剤を収納することができる計量部4dを設けた現像剤補給容器にあっても好適に用いることができる。
本実施形態の現像剤にあっては、吸気工程では、エアーが排出口4aから現像剤補給容器1内に取り込まれ、計量部4d内の現像剤Tがエアーを含んだ状態となる。この時、エアーを含んだ時のトナーの二粒子間付着力Fpが1.0×10−9Nより小さい場合は、トナーの流動性が高すぎるため、吸気して現像剤Tにエアーが取り込まれた際に計量部4d外まであふれ出るおそれがある。その場合、排気工程での計量部4d内の現像剤量にばらつきが生じ、排出口4aから排出される現像剤Tの量が一定に保てない可能性がある。また、Fpが1.0×10−6Nより大きい場合は、現像剤Tを適切にほぐすことができない場合が生じる可能性があるため、安定した排出性を得られないおそれがある。
また、排気工程では、エアーを含まない時のFpが1.0×10−9Nより小さい場合は、扇形板状部材7aと排出部4cの隙間から現像剤Tが計量部4d内へ進入する。そのため、排出時に計量部4d内の現像剤Tのみならず、その周辺の現像剤を多く巻き込んで排出することになるおそれがある。従って、排出口4aから排出される現像剤Tの量にばらつきが生じる可能性が高くなる。また、Fpが1.0×10−6Nより大きい場合は、現像剤が扇形板状部材7aと排出部4cの隙間に滞留し、扇形板状部材7aと排出部4cの相対回転によってストレスを受けて凝集するおそれが増加する。
更に、本実施例でも、トナーの無機微粉体の遊離率が40個数%以下であることが好ましい。本実施例の現像剤補給容器の排出口も小開口であり、かつ、本実施例では計量部4dや扇形板状部材7aが設けられているため、そこを通過するトナーはストレスがかかりやすく無機微粉体が遊離しやすい状態になってしまう。そこで、無機微粉体の遊離率が40個数%以下であるトナーを用いることで、現像剤補給容器からトナーが排出されるときの無機微粉体の遊離を著しく少なく抑えることができる
具体的には、表5に示される現像剤A、B、Cを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、非常に高い排出精度を得ることができる。さらに、現像剤A、Bは現像剤Cよりもエアーでの解し効果が得られやすいため、本例の現像剤補給容器と組み合わせることで、補給される現像剤を均一な状態に保つことができる。特に、図7に示すようなホッパ10aが無いような系ではその効果が顕著であり、画像濃度変動を大幅に抑制することができる。また、現像剤Cは、現像剤A、Bよりも仕切り壁6による搬送効果がより高いため、現像剤の消費量がより多い場合でも、画像形成装置に必要な量の現像剤を供給することが容易である。
一方、表5に示される現像剤Iを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、容器内の現像剤を十分に解すことができず、排出が困難になる場合や、扇形板状部材7aと排出部4cの間で現像剤が凝集する場合が見られた。また、現像剤Hを本実施形態の現像剤補給容器に収容すると、現像剤の排出精度の低下や、排出時の周囲へのトナー飛散が見られた。
また、現像剤B、Cは現像剤Aに比べて遊離率が低く、本実施例の排出構成のように、より現像剤にシェアが掛かるおそれのある構成を用いて排出を行った場合でも、無機微粉体の遊離を抑えられることから、部材汚染を軽微に抑えることが可能であった。これに対し、現像剤Iは遊離率が高く、本実施例の排出構成のように、より現像剤にシェアが掛かるおそれのある構成ではより遊離し易いため、遊離した無機微粉体による部材汚染が実施例1よりも多く見られた。
従って、本例の現像剤補給容器には、二粒子間付着力と遊離率が適した範囲である現像剤を補給することで、現像剤を適切にほぐすことや、計量部内の現像剤量を一定に保つことができ、現像剤補給容器からの現像剤の排出量をより高い精度にすることができる。さらに、現像剤がストレスを受けやすい場所に滞留して凝集するおそれも、より低減することができる。