JP4143781B2 - 保温断熱容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インスタントラーメン等の即席麺類、またはお茶、コーヒー、スープ、シチュー、みそ汁等のように主に熱湯を注ぐことにより飲食できる食品の容器や冷凍食品等のような電子レンジを用いて容器ごと調理解凍を行う場合の如く、保温性と断熱性が必要とされる食品の調理容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、上記の食品容器には、発泡ポリスチレン製容器が断熱性、保温性に優れ、成形、加工性もよく、さらに安価なため多用されているが、最近になり省資源、環境保護、環境問題への関心が高まり、家庭ゴミとして廃棄する際に焼却処理が容易であり、また土壌中の微生物による生分解が可能である紙を主体とする食品容器への要望が高まってきている。
【0003】
紙基材を主体とするこの種の容器としては紙基材上に少なくとも、片面にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたものが使用されているが、断熱性が低く、容器を持つ手に直接熱が伝わり熱くて持ちにくい、或いは保温性が劣り、内容物の温度が急激に低下する。或いは容器が軟化して容器の強度が低下するなどという問題があった。
【0004】
これらを改善する目的で、例えば内容物の温度が直接指に伝わらないようにするとともに容器の強度を向上させるため、容器の胴部の外面にフインのような多数のリブを付設する方法が特開昭51−2576号公報に提案されているが、この方法ではリブの凸部の温度は低く保たれ、容器を持つ手に熱が伝わりにくいものの、リブが冷却フィンのような機能を果たすため保温性という意味では劣っていた。またリブとカップ本体との間に形成される段差によって見栄えと印刷性に劣るという問題があった。
【0005】
また、カップ本体とその外側に設ける外装部材たる外筒の間に断熱空気層を設ける方法が提案されている。すなわち実開平6−39717号公報には、同一深度の点状のエンボス模様を形成した紙製シートを紙カップ外周に巻き付けた断熱性紙カップが提案されている。このものは、高低差1〜2mm、直径2〜5mmの点状凸部または凹部のエンボス模様を3〜10個/cm2の密度で施した紙製シートを紙カップの側壁外周に巻き付けるものであるが、見栄えと印刷性に劣るという問題があった。
【0006】
一方、リブおよびエンボス処理した紙をカップ外周に貼付し、さらに最外周に外装紙を貼り付ける方法が実開平6−65279号公報に提案されているが、これらは容器を構成する部品点数が増え、首記の省資源の目的を達成できない。
【0007】
これらの容器の胴部外面にリブを付設する法、エンボス処理紙を巻き付ける法、エンボス紙の外側にさらに外装紙を貼り付ける法は冷却の悪さや見栄えの悪さ、部品点数増の問題点を改善するものとしては、従来からも、特開平4−201840号公報により胴部周壁に段部を設け、外側からカップ胴部に外装紙を巻き付けて空隙を形成した紙容器が提案されている。また実開平4−45212号公報により、カップ本体の底部外周に内向きカールさせた紙製外筒をカップ本体の外周に被せて空気断熱層を設ける方法が提案されている。さらに特開平7−223683号公報によりカップ本体の胴部外壁面の円周上に帯状突起を設け、カップ本体と外壁面との間に断熱空気層を設ける方法が提案されている。
【0008】
しかしながら上述した断熱空気層を設ける方法では、いずれも空隙の容積を大きくして断熱空気層を設けているが故に、熱湯を注いでカップを手で持ち上げたとき、これらの空隙が潰れてしまい、断熱効果を損なってしまう問題があった。
【0009】
「潰れ」を抑止するために紙の剛性を高めれば紙はたわみにくくなる。紙の剛性を高めるには紙の坪量を上げる方策がある。しかしこの方策では省資源の目的を達成できないばかりでなく、紙シートを内側の紙カップに巻き付ける際に紙が厚すぎて成形しにくく、紙折れを発生して見栄えが悪くなるなどの問題があった。
【0010】
紙の重量を上げずに剛性を発揮する手段としては、古紙の配合量を減らすか配合せずに強度の高いUKP(未晒クラフトパルプ)などのパルプを使用する事が考えられるが、紙強度を上げると、シートを内側の紙カップに巻き付ける際に紙が硬すぎて成形しにくく紙折れを発生して見栄えが悪くなるなどの問題があった。
【0011】
成形しやすさと、断熱空気層が潰れない剛性を併せ持つ外装紙の選定に際しては、ある範囲内の剛性をもった紙、板紙を使用せざるを得ず、剛性の低い、一般的な紙、板紙を使用するには問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このようなことから、一般的な紙、板紙を使用して成形しやすく、かつ外装紙とカップとの間の断熱空気層が潰れにくい形状を持った保温性断熱容器は知られておらず、その開発が望まれていた。
【0013】
よって本発明者は、保温性と断熱性を有するだけでなく、前記の断熱空気層が潰れにくく、かつ食品を食するときに、安全であり、印刷性、見栄え等の商品性を損なうことなく、複雑な製造工程を経ずに製造され、さらに廃棄する際の易廃棄性と環境負荷の少ない紙カップを提供する方法について鋭意研究を重ねた結果、截頭円錐形の紙製カップの胴部外面に紙製サックを巻き付けてカップ胴部を2重構造にした紙カップにおいて、ほぼ扇形に打ち抜いた紙または板紙から成る紙製サックを紙製カップの胴部外面に巻き付ける際に、該扇形の紙または板紙の上縁と下縁との間に、直線状または円弧状をなす罫線で区切られた多角形またはレンズ形の多数の単位面が連設されるように形成した上で全体をサック貼りしてカップ胴部外面に巻き付けると、サックの単位面と、サック内側のカップ胴面との間に、ほぼ3角形のトラス構造もしくはアーチ構造からなる断熱空気層が作られ、紙坪量の大きい特別な紙基材を使用することなしに断熱空気層を維持して、良好な保温、断熱性を付与できることを見いだした。
【0014】
潰れにくい断熱空気層構造を維持するために、剛性のある紙、板紙が通常必要であるが、単に剛性の高い紙、板紙では巻き付け成形性の低下という問題が発生する。そこで剛性と巻き付け成形性を併せ備える紙、板紙が必要となる。しかし、一般的な紙、板紙を使用しても、その紙に直線状または曲線状罫線を入れて多数の単位面を連設してサックを作ると、前記単位面によって、ほぼ3角形のトラスもしくはアーチが多数作られる。よって、この3角形のトラスもしくはアーチで紙製サックと内側のカップとの間に断熱空気層を作れば、特定の紙、板紙を使用しなくても潰れにくい断熱空気層を形成することが可能となる。
【0015】
以上の説明からも明らかなように、本発明の目的は、截頭円錐型の紙製カップとサックとの間に断熱空気層を設けるための空隙を形成した保温断熱容器において、容器強度を維持して保温性と断熱性の低減を抑止するためのサック用紙基材の選定を容易に行うことを可能にし、かつ、食品を食するときに、安全であり、印刷性、見栄え等の商品性を損なうことなく、複雑な製造工程を経ずに製造され、さらに廃棄する際の易廃棄性と環境負荷の少ない紙カップを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の保温断熱性容器は以下の構成を採用したものである。
すなわち截頭円錐形の紙製カップの胴部外面に紙製サックを巻き付けてカップ胴部を2重構造にした紙カップにおいて、ほぼ扇形に打ち抜いた紙または板紙から成る紙製サックを紙製カップの胴部外面に巻き付ける際に、該扇形の紙または板紙の上縁と下縁との間に、直線状または円弧状をなす罫線で区切られた多角形またはレンズ形の多数の単位面が連設されるように形成した上で全体をサック貼りしてカップの胴部外面に巻き付け、かつサック貼りされたサックの単位面もしくは単位面を区画する罫線部とカップ胴部外面との間に、ほぼ3角形のトラス構造もしくはアーチ構造からなる断熱空間を形成させたことを特徴とする。
【0017】
換言すると、本発明は、截頭円錐型の紙製サックの内側にほぼ同形状の紙製カップをはめ込み、かつ前記サック内面とカップ胴部外面との間に断熱空気層を形成させるように前記サックをカップ外周の上端と下端もしくはそれら近傍に貼着または密着により位置ズレしないように固定した保温断熱容器であって、前記紙製サックはほぼ扇形に裁断した紙または板紙から成り、該扇形の紙または板紙の上縁と下縁との間に直線または円弧状をなす罫線で区切られた多角形またはレンズ形の多数の単位面が連設されるように形成した上で、全体をサック貼りしかつサック貼りされたサックの単位面もしくは単位面を区画する罫線部とカップ胴部外面との間に、ほぼ3角形のトラス構造もしくはアーチ構造からなる断熱空気層が形成させたことを特徴とする保温断熱容器である。
なお、ここでいう「サック」は、従来の技術でいうカップの外側に設ける「外装部材」と同意義であり、また「サック貼り」とは、扇形に打ち抜いた紙シートの両端部を貼り合わせて、上下の開口した状態になるように成形することを意味している。
【0018】
本発明で使用する紙サック基材の剛さに特別の条件はなく、一般的な紙、板紙を紙サックの基材とすることができる。すなわち、坪量が200〜400g/m2で、ヤング率は、抄紙方向と平行な方向と直角方向の相乗平均値で1.5〜4.5GPaの範囲とし、さらに密度は0.45〜1.0g/cm3の範囲であればどのような、紙、板紙でも使用できる。
【0019】
これらの数値範囲内に原紙を抄造していくためには、剛直なパルプ、たとえばKP(クラフトパルプ)などを使用することは特に必要なく、自由にパルプを選定することができる。
【0020】
【作用】
本発明において、紙製サックを截頭円錐形の紙製カップの胴部外面に巻き付けるとき、扇形の紙または板紙を用い、その上縁と下縁との間に、直線状または円弧状をなす罫線で区切られた多角形またはレンズ形の多数の単位面が連設されるように形成した上で、全体をサック貼りしてカップの胴部外面に巻き付けると、該サックの上部開口と下部開口の曲率が異なっているので、サックにおける罫線で囲まれた各単位の領域に大小異なる曲げ応力を生ずることとなり、その結果、該サックの罫線で囲まれた各単位面は、図5〜図7に示すように、自動的に、凸形の曲面または凹形の曲面を呈するようになる。
【0021】
本発明において、紙サックと内側のカップとの間に潰れにくい断熱空気層構造を維持し、かつカップ成形性能を有することができる理由は、以下のように考えることが出来る。
断熱空気層構造体を維持するために紙自体に剛性が必要なことはいうまでもないが、紙の変形は、一般に紙の厚さとヤング率、密度に比例する。これは構造力学のたわみ式などによっても明らかである。通常、カップを手で持ったときのたわみ量は、単純ばりのたわみ量の式から次のように求めることができる。簡易的に原紙坪量を一定として、紙の厚さをh、密度をρ、ヤング率をEとし、支点間の距離を2a、支点から荷重Pをかける点の距離をaとし、幅をbとすると、荷重Pをかけたときのたわみ量は2P・a3/E・b・h3となる。一方、2点間で支えられる単純ばりがトラス構造をとり、上から荷重Pをかけたとき、トラス部材が支点を結ぶ方向とのなす角度をθとすると、そのときのたわみ量は、E・h・sin2θ/a+12E・h3・cos5θ/a3と考えることができ、トラス構造にするとたわみ量は小さくできる。
【0022】
なお前記の単純ばりがアーチになり、これと同じアーチが横方向に連続しそれが接合されて一体になったとすればシェル構造となるのである。これらの場合においても前記トラス構造の場合と同様にたわみ量は小さくできる。
【0023】
本発明においてヤング率とは、弾性率、弾性係数とも呼ばれる紙引張り抵抗性を示す数値である。この数値は、剛性に影響を与えるのみならず、紙の絞り適性、折り曲げ易さや、カールさせ易さなどの紙の成形性と密接に関わる。測定法は定速伸長形引張り試験から求められる荷重−変形曲線の初期直線勾配と紙の断面積から計算する。また、高感度コンデンサマイクロフォンとFFTアナライザーを用いて振動時における共振周波数を求め、曲げこわさの数値から導き出すこともできる。さらに3点曲げ法を用いて曲げ変位量と荷重により、弾性率を導き出すこともできる。
【0024】
以下本発明について詳しく述べる。本発明の紙製サックを構成する紙基材は、坪量が200〜400g/m2の範囲で適宜選択する。またその紙基材の密度も0.45〜1.0g/cm3、紙のヤング率を抄紙方向と平行な方向と直角方向の相乗平均値で1.5〜4.5GPaの範囲で選択し、該基材が一層又は二層以上の抄合わせた紙、または板紙が用いられる。
【0025】
また前記の紙基材の抄造方法については特に制限はないが、長網、或いは丸網抄紙機を用いて単層か複数に積層し抄造するか、複数のパルプの混合によって抄造し、抄造時に、キャレンダーを用いて所望の密度に仕上げる方法がある。これらの方法においては坪量が200〜400g/m2の範囲として、さらに前記のように紙の縦横の相乗平均ヤング率が1.5〜4.5GPaの範囲とし、密度は0.45〜1.0g/cm3の範囲で抄紙、製造出来れば特にその抄造条件と使用するパルプは制限が無く、GP、RGP、TMPなどの機械パルプやCGP、SCPなどのセミケミカルパルプやSP、KPなどの化学パルプ、さらに古紙や非木材を用いたパルプなどを使用できる。
【0026】
また、特に個々のパルプフリーネス設定に制限はない。個々のパルプフリーネス調整は、コニカル型やドラムタイプ、ディスクタイプの各種のリファイナー、ジョルダンを用いることが出来る。さらにこれらの制御は各種のプロセス計測制御装置を用いることが出来る。またフリーネスの調整に静電気結合型の低分子ポリマーや比較的高分子の架橋型ポリマー、例えばポリエチレンイミン、ポリアクリルアミドを使用することもできる。パルプスラリーにはその他に、前述のように各種のアニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留向上剤、紙力増強剤、サイズ剤等が適宜選択して使用できる。
【0027】
本発明のサック用紙基材を抄造するには、パルプや紙力増強剤を混合したパルプをワイヤー網に流して抄紙、脱水・乾燥する。これに用いる紙力増強剤には、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド尿素ホルムアルデヒド樹脂、ケトン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、グリセロールポリグリシジルエーテル樹脂、ポリエチレンイミン樹脂等を挙げることができる。これら紙力増強剤を2種以上併用してもよい。その他、必要に応じて乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、耐水化剤、サイズ剤、スライムコントロール剤、内添填料、染料、消泡剤、等を使用しても良い。
サック用紙基材には印刷適性向上のため表面に塗工層を設けることが望ましい。塗工層の材料は、通常塗工型印刷用紙などに用いられる組成・配合が採用でき、また、表裏両面に塗工していても片面のみに塗工していても構わない。塗料は、カオリンクレー、炭酸カルシウム、酸化チタンなどからなる顔料と、ラテックス等の合成接着剤と澱粉やカゼイン等からなる接着剤とその他助剤などから構成されている。塗工は単層塗工または複層塗工とすることができ、塗工後にオンマシンまたはオフマシンキャレンダー処理で平滑化処理することも有効である。
また、乾燥方式をキャストコート方式とすることも好ましい例である。塗工方法についてもその装置については特に制限はなく、ブレードコーター、ロッドコーターなど各種コーターを使用できる。
【0028】
サック用の紙基材の表面はそのまま印刷して使用することもできるが、熱可塑性合成樹脂フィルムを印刷面上に融着させるか、または熱可塑性合成樹脂フィルムの裏面に印刷させた後、融着させることもできる。さらに該基材と印刷後の一般印刷用紙、あるいは印刷前の印刷用紙を熱可塑性合成樹脂フィルムか、ゴム系、アクリル系、シリコーン系粘着剤、ホットメルト粘着剤、澱粉系接着剤、植物ガム系接着剤などの接着剤で貼り合わせて使用することもできる。印刷前の印刷用紙と前記の紙基材を貼り合わせた場合、貼り合わせた後に印刷しても、使用上問題はない。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明をする。
図1が本発明たる保温断熱容器の外観の一例を示した斜視図であって、截頭円錐型の紙製カップ2の胴部外面に紙製サック1を巻き付けて、前記サック1の内面とカップ2の外面との間に、断熱空気層を形成させるように前記サックをカップ外周の上端と下端もしくはそれら近傍に貼着または密着により位置ズレしないように固定することにより構成されている。
【0030】
紙製サック1は、図2〜図4に例示したように、ほぼ扇形に裁断した紙または板紙6から成り、該扇形の紙または板紙の上縁と下縁との間に直線または円弧状をなす罫線7で区切られた多角形またはレンズ形の多数の単位面8〜10が連設されるように形成させた上で、両端を貼り合わせることにより、全体を截頭円錐型をなすようにサック貼りして構成されている。サック貼りすると、サック1は、図5〜図7の状態となり、サックの外周面に前記単位面によって、ほぼ3角形のトラス構造もしくはアーチ構造が形成される。
【0031】
紙製カップ2は、内面もしくは内外両面にポリエチレン等をコーテイングした加工紙からなるブランクを巻回し、その両端を貼り合わせて胴部を構成した後、該胴部の下方に同じ紙からなる底板3を巻締めるとともに、上方開口縁に外向きカール部4を形成させてなるものであり、従来の紙カップと同様なものである。
【0032】
紙製サック1の高さは紙製カップ2の高さとほぼ同じ高さに形成される。紙製サック1の上部開口は紙製カップ上縁のカール部4の外周径よりも僅かに小さくなるように形成され、また該サックの下部開口は紙製カップの底部外周径よりも僅かに大きくなるように形成するものであり、図5〜図7に示すように、サック内面とカップ外面との間に断熱空気層5を形成させるように、前記サックをカップ外周の上端と下端もしくはそれら近傍に酢酸ビニル系の接着剤等で貼着するか、あるいはカップ外周の上部と下部とに密着させて位置ズレしないように固定するのである。
【0033】
紙製サック1の高さは紙製カップ2の高さとほぼ同じ高さに形成する必要性はなく、少なくとも手でもつ部分にサックがあれば上記した同様の断熱作用を奏するので、サックを短く形成して、サックの上側及び下側あるいはそのどちらか一方にカップの胴部が露出した形態としてよい。
【0034】
図8〜図9に示すように、紙製サックを構成する扇形の紙または板紙6の下縁11あるいは上縁に折り返し部12を設けることができる。この折り返し部12は罫線7の延長上において複数片に切り離して形成させておくことがよい。この折り返し部は図9に示すように内側に折り曲げサック内面に接着して使用する。このようにして紙製カップ2の胴部外面に紙製サック1を巻き付けたときは、折り返し部12によりカップの胴部外面とサック内面との間の空間が先の実施例のものよりも広くなる。また折り返し部がある部分では紙一枚分の厚さが増えるので断熱効果が一層高くなる。
【0035】
本発明による断熱性紙カップは、あらかじめカップに貼着する外装紙を印刷し、罫線を入れ、扇型に打ち抜き、打ち抜いた後のシートの両端部を貼り合わせ、上下が開口した状態になるようにして、紙カップの胴部外面にサック貼り処理を行うものである。本発明による断熱性紙カップは打ち抜き、罫線処理した外装紙の両端部を貼り合わせる際に、特に大きな外力を加えることなく凹凸が形成されることが特徴で特殊な嵌合機械等を用いて紙に凹凸をつける必要がない。従って、本発明による断熱性紙カップは従来のものよりも簡単な工程で断熱空気層を有した、断熱紙カップを製造しうる。
【0036】
【実施例】
以下実施例を挙げて本発明をより具体的に述べるが、勿論本発明はこれによって限定されるものではない。なお、濃度、配合、塗布量等を示す数値は、固形分重量もしくは有効成分重量基準の数値である。
先ず、サックの基材構成から述べる。
実施例1
米坪350g/m2、密度0.80g/cm3の特板紙を用い、その表面に予めオフセット印刷し、その後このシートの裏面から、下記の図2のようにぼぼ菱形状の単位面9をを形成するように数本の罫線7を入れてダイカッターにより扇形に打ち抜き、打ち抜いた後のシートの両端部を貼り合わせ、上下が開口した状態になるように成形して、サック1を形成する。
別に、内壁部に厚さ40μmのポリエチレンを融着ラミネートした210g/m2の上質紙からなるカップ本体2を用意する。そのカップ本体2の胴部外面に前記のサック1をはめ、サック内面とカップ胴部外面との間に断熱空気層5を形成させるように、前記サックの上端をカップのカール部4の外周下側に、またサックの下端はカップの下部外周にそれぞれ密着させ、酢酸ビニル糊で位置ズレしないように貼着して、図5に示すような2重カップを得る。
【0037】
実施例2
米坪350g/m2、密度0.80g/cm3の白板紙を用い、その表面に予めオフセット印刷し、その後このシートの裏面から、下記の図3のようにほぼレンズ形状をした単位面9を形成するように円弧状罫線を入れて扇形に打ち抜き、打ち抜いた後のシートの両端部を貼り合わせ、上下が開口した状態になるように成形して、目的のサック1を得る。次に、内壁部に厚さ40μmのポリエチレンを融着ラミネートした210g/m2の上質紙からなるカップ本体2を用いて、実施例1と同様な操作を行い、図6に示すような2重カップを得る。
【0038】
実施例3
米坪230g/m2、密度0.80g/cm3の特板紙を用い、その表面に予めオフセット印刷し、その後このシートの裏面から罫線加工を施して下記の図4に示すような罫線を入れてほぼ矢尻状をした単位面9を形成するように罫線7を入れて扇形に打ち抜き、打ち抜いた後のシートの両端部を貼り合わせ、上下が開口した状態になるように成形して、サック1を形成する。次に、内壁部に厚さ40μmのポリエチレンを融着ラミネートした210g/m2の上質紙からなるカップ本体2を用いて、実施例1と同様な操作を行い、図7に示すような2重カップを得る。
【0039】
比較例1
米坪450g/m2、密度0.80g/cm3の白板紙を用い、その表面にあらかじめオフセット印刷した外装紙を用意する。
別に、内壁部に厚さ40μmのポリエチレンを融着ラミネートした210g/m2の上質紙からなるカップ本体を形成し、該カップ本体の胴壁の外周に幅1.0mmでカップ上縁から20mm位置にピーター線による突起部を設ける。このピーター線入りカップの胴部外周に、断熱空気層を形成させるように前記の外装紙を巻き付けて、実施例1と同様に、酢酸ビニル糊で外装紙とカップとを固定するとともに、ピーター線を外装紙に酢酸ビニル糊で貼着して円筒状2重容器を得た。
【0040】
比較例2
米坪350g/m2、密度0.80g/cm3の白板紙を用いて、その表面にあらかじめオフセット印刷した外装紙を用意する。
別に、内壁部に厚さ40μmのポリエチレンを融着ラミネートした210g/m2の上質紙からなるカップ本体を形成し、該カップ本体の胴壁の外周に幅1.0mmでカップ上縁から20mm位置にピーター線による突起部を設ける。このピーター線入りカップの胴部外周に、断熱空気層を形成させるように前記の外装紙を巻き付けて、実施例1と同様に、酢酸ビニル糊で外装紙とカップとを固定するとともに、ピーター線を外装紙に酢酸ビニル糊で貼着して円筒状2重容器を得た。
【0041】
比較例3
米坪350g/m2、密度0.60g/cm3のカールドファイバーを用いた低密度紙を使用し、その表面にあらかじめオフセット印刷した外装紙を用意する。
別に、内壁部に厚さ40μmのポリエチレンを融着ラミネートした210g/m2の上質紙からなるカップ本体を用意して、前記の外装紙をカップ本体の側壁の外周に、空間を生じさせないように、酢酸ビニル系糊で貼着させて2重カップを得た。
【0042】
トラス構造を有する本発明の製品とトラス構造を有しない製品との優劣を見るために、下記の断熱適性試験とコスト比較による判定を行った。
評価試験方法
1.縦横のヤング率の相乗平均値
ヤング率の算出は、JIS P8113による引っ張り試験法による荷重と変位のグラフ及び、紙厚と試験片の幅から求めた断面積により、E(ヤング率)=F(引っ張り強さ)/ε(歪み量)×A(断面積)から算出した。
2.たわみ量
カップ本体を架台に固定し、外装紙の上部から50mmの位置で自動変位量、熱流検出測定器であるKES−F7サーモラボ(カトーテック(株)社製)の人工指(接触面積2.0/cm2)を用い、荷重125gf/cm2、加圧速度0.2mm/secの条件でカップの外装部分を加圧したときの外装紙の変位量をたわみ量として算出した。
3.表面温度
接触式温度計を用い、カップ外装の表面温度を測定した。
4.断熱保持時間
20℃65%RH環境下にカップを24時間放置したのち、カップに95℃の温水を入れ、3分後カップを手で持って、熱く感じ、容器から指の位置を変えるまでに至る時間を断熱時間として測定した。
5.断熱触感
熱湯注入3分後、手でカップを保持できる時間を評価。これらの時間範囲で○〜△〜×の5段階評価とする。試験者による測定誤差を少なくするために、3人以上で測定し平均データを採用した。
○:60sec以上、 ○〜△:45〜60sec、 △:30〜45sec、
△〜×:15〜30sec、 ×:15sec以下
6.外装紙コスト
紙パ技協紙第52巻第7号、1998年七月号による東京用紙・板紙卸売り市場価格表により価格を算出し、実施例2および比較例2を標準として、これよりかなり安いものを◎、安いものを○、やや高いものを△、明らかに高いものを×とした。
7.総合判定
上記の4〜6までの評価項目によって、一つでも×があるものは×判定とし、○と△の評価のものは○とした。
その結果を、表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1の結果より、実施例1〜実施例3で作成した3角形のトラス構造を有したサックを使用すると、該サックに形成させた単位面と、サック内側のカップ胴面との間に、ほぼ3角形のトラス構造もしくはアーチ構造からなる断熱空気層が作られ、紙坪量の大きい特別な紙基材を使用することなしに断熱空気層を維持して、良好な保温、断熱性を付与できることがわかった。
【0045】
【発明の効果】
以上のとおり本発明は、サック内面とカップ外面との間に断熱空気層を設けるための空隙を形成した保温断熱容器において、紙坪量の大きい特別な紙基材を使用することなしに低級な紙、板紙を用いても容器強度を維持できるようになし、もって保温性と断熱性の低減を抑止するためのサック用紙基材の選定を容易に行うことを可能にし、かつ、食品を食するときに、安全であり、印刷性、見栄え等の商品性を損なうことなく、複雑な製造工程を経ずに製造され、さらに廃棄する際の易廃棄性と環境負荷の少ない紙カップを提供することができる点で有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明保温断熱容器の外観の一例を示した斜視図。
【図2】図2はサックを構成する扇形板紙を示す平面図。
【図3】図3はサックを構成する扇形板紙の別例を示す平面図。
【図4】図4はサックを構成する扇形板紙の他の例を示す平面図。
【図5】図5は図2の板紙をサック貼りしてカップの胴部外面に巻き付けた状態を示す縦断面図であり、図2におけるA線とB線に沿ってサックを切断した場合の概要を示すものである。
【図6】図6は図3の板紙をサック貼りしてカップの胴部外面に巻き付けた状態を示す縦断面図であり、図3におけるA線とB線に沿ってサックを切断した場合の概要を示すものである。
【図7】図7は図4の板紙をサック貼りしてカップの胴部外面に巻き付けた状態を示す縦断面図であり、図4におけるA線とB線に沿ってサックを切断した場合の概要を示すものである。
【図8】図8はサックを構成する扇形板紙のさらに別の例を示す平面図。
【図9】図9は図8に示す扇形板紙の折り返し部を折り曲げて接着した状態を示した平面図。
【符号の説明】
1 紙製サック
2 紙製カップ
3 底板
4 カール部
5 断熱空気層
6 板紙
7 罫線
8〜10 単位面
Claims (4)
- 截頭円錐形の紙製カップの胴部外面に紙製サックを巻き付けてカップ胴部を2重構造にした紙カップにおいて、ほぼ扇形に打ち抜いた紙または板紙から成る紙製サックを紙製カップの胴部外面に巻き付ける際、該扇形の紙または板紙の上縁と下縁との間に、直線状または円弧状をなす罫線で区切られた多角形またはレンズ形の多数の単位面が連設されるように形成した上で全体をサック貼りしてカップの胴部外面に巻き付け、かつサック貼りされたサックの単位面もしくは単位面を区画する罫線部とカップ胴部外面との間に、ほぼ3角形のトラス構造もしくはアーチ構造からなる断熱空間を形成させたことを特徴とする保温断熱容器。
- サック内面とカップ胴部外面との間に断熱空気層を形成させるように前記サックをカップ外周の上端と下端もしくはそれら近傍に貼着または密着により位置ズレしないように固定した請求項1記載の保温断熱容器。
- 紙製サックを構成する紙基材は、坪量が200〜400g/m2の範囲の紙または板紙である請求項1または2記載の保温断熱容器。
- 紙製サックを構成する紙基材は、密度が0.45〜1.0g/cm3、ヤング率が1.5〜4.5GPa(但し、抄紙方向と平行な方向と直角方向のヤング率の相乗平均値)であり、該基材が一層又は二層以上の抄合わせ抄紙による紙または板紙であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の保温性断熱容器。
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