JP6127433B2 - 金属粒子分散体、及び物品 - Google Patents

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Description

本発明は、金属粒子分散体、及び、物品に関するものである。
数nm〜数十nm程度の粒径を有する微細な金属粒子は、従来の金属材料とは異なる、種々の物理的、化学的特性を示すことから、導電性ペースト、透明導電膜、遮光フィルター、化学センサー、触媒、抗菌材、導光部材、ガスバリア材、光散乱・反射部材、光拡散部材、感光性材料、光電変換素子、蛍光材料、色材等、幅広い分野への応用が期待されている。上記金属粒子は、溶剤中で分散することによりインクやペースト状の金属粒子分散体とすることができる。
例えば、透明導電膜や熱線遮蔽膜などの用途として、ITO(スズドープ酸化インジウム)やATO(スズドープ酸化アンチモン)などの金属酸化物からなる金属粒子をマトリックス材料に均一分散した金属粒子分散体が使用されている。この場合、粒径が数十ナノメートルより大きい金属粒子を用いると可視光が散乱して濁って見えてしまうが、数十ナノメートルより小さい金属粒子を用いることにより、光散乱を抑制した透明性の高い光学材料が得られることが期待されている。
また、金属粒子は、微細化することにより、劇的に融点が低下することが知られている。これは、金属粒子の粒径が小さくなるのに伴って、粒子の比表面積が増加し、表面エネルギーが増大することによるものである。この効果を利用すれば、金属粒子分散体を用いて基材に直接パターンを印刷し、回路パターンを形成する手法において、金属粒子同士の焼結を従来よりも低温で進行させることができ、従来のフォトレジスト法等と比較して、生産性が飛躍的に向上するとともに、従来用いることが困難であった、耐熱性の低い樹脂基材に対しても、印刷による回路形成が可能となると期待されている。
このように、微細な金属粒子は、金属粒子分散体として広く用いられており、より分散性や分散安定性に優れた金属微粒子分散体が望まれている。
特許文献1には、金属酸化物微粒子の分散安定性に優れた手法として、特定の金属酸化物微粒子と、非イオン性の有機分散剤と、バインダーと、有機溶剤とを含有する反射防止フィルム用塗布組成物が記載されている。
特許文献2には、インクジェット印刷方式によって、金属光沢に優れた文字や画像を印字又は印刷可能なインク組成物として、金属ナノ粒子をカルボキル基を有する有機化合物と高分子分散剤を含む有機保護剤で被覆した金属コロイド粒子を用いることが記載されている。
しかしながら、特許文献1及び2の手法は、高濃度の金属粒子を分散する場合に多量の分散剤が必要であり、更なる分散性の向上が求められていた。
特許文献3には、特定の金属微粒子と、特定のポリエステル骨格を有する高分子分散剤と、分散媒を含有する金属微粒子分散体が記載されている。
特許文献3によれば、上記特定の高分子分散剤が金属微粒子の分散性に高い効果を示し、しかも後の焼結工程で容易に揮散されると記載されている。しかしながら、後述の比較例で示されるように、特許文献3の手法では、金属微粒子分散体の保存安定性が十分でなく、一定期間保管後には金属粒子の沈降がみられることがあった。
特開2005−272755号公報 特開2009−227736号公報 国際公開第2011/040189号パンフレット
上述のように、微細な金属粒子が均一に分散された金属粒子分散体が望まれている。しかしながら、一般に金属粒子は比重が高く、沈降しやすいため、分散性、分散安定性が高い分散体を得ることは非常に難しい課題であった。更に、金属粒子の粒径が小さいほど、分散性や分散安定性が良好な分散体を調製することが困難であった。
本発明は、このような状況下になされたものであり、分散性、分散安定性に優れ、金属粒子の沈降が抑制された金属粒子分散体、及び、前記本発明に係る金属粒子分散体、又は当該金属粒子分散体を含む組成物の塗膜、成形体、若しくは焼結膜を含む、物品を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の金属粒子と特定の分散剤を組み合わせて用いることにより、分散性、分散安定性に優れるとの知見を得た。
本発明は、係る知見に基づいて完成したものである。
本発明に係る金属粒子分散体は、金属粒子と、分散剤と、溶剤とを含有し、
前記金属粒子は、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、モリブデン、アルミニウム、アンチモン、スズ、クロム、ランタン、インジウム、ガリウム、及びゲルマニウムより選択される1種以上の金属粒子であり、且つ、
前記分散剤は、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、前記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、臭化アリル、及び下記一般式(III)で表される酸性リン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成したブロック共重合体であることを特徴とする。
(一般式(I)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、Rは、水素原子又はメチル基、Qは、下記一般式(I−a)で表される基、又は、置換基を有していても良い、塩形成可能な含窒素複素環基を表す。)
(一般式(I−a)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
(一般式(II)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、R10は、水素原子又はメチル基、R11は、炭化水素基、−[CH(R12)−CH(R13)−O]−R14又は−[(CH−O]−R14で示される1価の基である。R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R14は、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
(一般式(III)中、Rは、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)
本発明の金属粒子分散体においては、前記金属粒子の平均一次粒径が5〜200nmであることが、好ましい。
また、本発明は、前記本発明に係る金属粒子分散体又は金属粒子分散体を含む組成物の塗膜、成形体又は焼結膜を含む、物品を提供する。
本発明によれば、分散性、分散安定性に優れ、金属粒子の沈降が抑制された金属粒子分散体、及び、前記本発明に係る金属粒子分散体、又は当該金属粒子分散体を含む組成物の塗膜、成形体、若しくは焼結膜を含む、物品を提供することができる。
図1は、本発明に係る物品の一例を示す概略図である。 図2は、本発明に係る物品の、別の一例を示す概略図である。 図3は、本発明に係る物品の、別の一例を示す概略図である。
以下、本発明に係る金属粒子分散体、及び物品について説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことをいう。また本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートのいずれかであることを意味する。
[金属粒子分散体]
本発明に係る金属粒子分散体は、金属粒子と、分散剤と、溶剤とを含有し、
前記金属粒子は、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、モリブデン、アルミニウム、アンチモン、スズ、クロム、ランタン、インジウム、ガリウム、及びゲルマニウムより選択される1種以上の金属粒子であり、且つ、
前記分散剤は、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、前記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、ハロゲン化アリル化合物、及び下記一般式(III)で表される酸性有機リン化合物の少なくとも1種とが塩を形成したブロック共重合体であることを特徴とする。
(一般式(I)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、Rは、水素原子又はメチル基、Qは、下記一般式(I−a)で表される基、又は、置換基を有していても良い、塩形成可能な含窒素複素環基を表す。)
(一般式(I−a)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
(一般式(II)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、R10は、水素原子又はメチル基、R11は、炭化水素基、−[CH(R12)−CH(R13)−O]−R14又は−[(CH−O]−R14で示される1価の基である。R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R14は、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
(一般式(III)中、Rは、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)
本発明に係る金属粒子分散体は、上記特定の金属粒子と、上記特定の分散剤とを組み合わせて用いることにより、分散性、分散安定性に優れ、金属粒子の沈降が抑制されたものである。また、本発明の金属粒子分散体は、低粘度の分散体とすることが可能である。
上記特定の組み合わせにより、上記のような特定の効果を発揮する作用としては、未解明の部分もあるが、以下のように推定される。
従来、金属粒子分散体は、金属粒子の比重が、分散体中の各成分と比較して大きいことから、保存時に金属粒子が沈降するという問題があった。
本発明の金属粒子分散体は、分散剤として、一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、前記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、ハロゲン化アリル化合物及び/又は一般式(III)で表される酸性有機リン化合物とが塩を形成したブロック共重合体を用いて金属粒子を分散することにより、溶剤に対して不溶性となる分散剤中の塩形成部位が、金属粒子表面に強く吸着することで安定化するものと推定される。また、分散剤が有する一般式(II)で表される構成単位は、溶剤への溶解性に優れている。このため、上記特定の分散剤が、金属粒子を取り囲んで、溶剤中で安定して存在するため、金属粒子同士の凝集が生じにくく、分散性及び分散安定性に優れ、金属粒子が沈降することをも抑制することができるものと推測される。
本発明に係る金属粒子分散体は、上述のように金属粒子の分散性及び分散安定性に優れているため、従来と比較して、金属粒子に対する分散剤の含有割合を低く抑えることも可能となる。そのため、低粘度の金属微粒子分散体とすることもでき、また、当該金属粒子分散体を、焼成して金属膜を形成する場合には、焼結後の有機成分の残存が少ないものとすることもできる。
なお、本発明において低粘度の具体的な目安としては、金属粒子分散体の粘度が10mPa・s以下のことをいい、更に、3mPa・s以下であることが好ましい。このような低粘度の金属微粒子分散体は、インクジェット用の組成物としても好適に用いることができる。
本発明の金属粒子分散体は、少なくとも金属粒子と、分散剤と、溶剤とを含有するものであり、本発明の効果が損なわれない限り、必要に応じて他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本発明の金属粒子分散体の各成分について順に詳細に説明する。
<金属粒子>
本発明に用いられる金属粒子は、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、モリブデン、アルミニウム、アンチモン、スズ、クロム、ランタン、インジウム、ガリウム、及びゲルマニウムより選択される1種以上の金属粒子である。なお、本発明において、金属粒子とは、金属状態の粒子に加えて、合金状態の粒子や、金属化合物の粒子等も含まれるものである。また、例えば、金属状態の粒子の表面が酸化されて金属酸化物となっているように、1つの粒子中に、金属、合金、及び金属化合物の1種以上が含まれていてもよいものである。
金属の種類は、用途に応じて、導電性、抗菌性、熱線遮蔽性等を有するもの等を適宜選択することができる。なお、本発明の金属粒子分散体を焼成などにより金属膜とする場合には、当該金属膜が導電性、抗菌性、熱線遮蔽性等を発現する金属、合金、及び金属化合物の1種以上を適宜選択すればよい。
導電性を有する金属としては、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、モリブデン、アルミニウム、アンチモン、スズ、クロム、インジウム、ガリウム、及びゲルマニウムが挙げられるが、これらのうち、金、銀、銅、及びニッケル等が導電性の点から好適なものとして挙げられる。抗菌性を有する金属としては、銀、及び銅が挙げられる。また、熱線遮蔽性が良好な金属としては、銀、銅、ITO(スズドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、六ホウ化ランタンが挙げられる。なお、ここでの熱線遮蔽性には、熱線吸収性と熱線反射性が包含される。
上記金属化合物としては、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物等が挙げられる。焼成により金属膜とする場合には、焼成時に分解されて、金属となるものが好ましい。銀を有する金属化合物としては、例えば、酸化銀、有機銀化合物等が挙げられる。また、銅を有する金属化合物としては、例えば、酸化第一銅、酸化第二銅、及びこれらの混合物などの銅酸化物等が挙げられる。
また、合金としては、例えば、銅−ニッケル合金、銀−パラジウム合金等が挙げられる。
金属粒子は、上記金属、合金、及び金属化合物粒子の1種以上を含む金属粒子のうち、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記金属粒子の調製方法は、従来公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、メカノケミカル法などにより金属粉を粉砕する物理的な方法;化学気相法(CVD法)や蒸着法、スパッタ法、熱プラズマ法、レーザー法のような化学的な乾式法;熱分解法、化学還元法、電気分解法、超音波法、レーザーアブレーション法、超臨界流体法、マイクロ波合成法等による化学的な湿式法等を用いて金属粒子を得ることができる。
例えば、蒸着法では、高真空下で分散剤を含む低蒸気圧液体中に加熱蒸発した金属の蒸気を接触させて微粒子を製造する。
また、化学還元法の1種としては、錯化剤及び有機保護剤の存在下で、金属酸化物と還元剤とを溶媒中で混合して生成する方法が挙げられる。
上記錯化剤とは、当該錯化剤が有する配位子のドナー原子と、金属イオン又は金属原子とが結合して、金属錯体化合物を形成するものである。上記ドナー原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好適に挙げられる。窒素原子がドナー原子である錯化剤としては、例えば、アミン類、イミダゾール及びピリジン等の窒素含有複素環式化合物類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、上記有機保護剤は、精製した金属粒子の分散安定化剤として作用するものであり、具体的には、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン等のタンパク質系;デンプン、デキストリン等の天然高分子;ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系;ポリビニルアルコール等の親水性合成高分子等が挙げられる。中でも、分散安定性の点からは、タンパク質系の有機保護剤が好ましい。
なお、上記の方法の他、市販の金属粒子を適宜用いることができる。
金属粒子の平均一次粒径は、用途に応じて適宜設定すればよいものであるが、通常、1〜500nmの範囲で設定される。中でも、分散性、分散安定性に優れ、沈降物を生じにくい点から、金属粒子の平均一次粒径が5〜200nmであることが好ましい。
なお、上記金属粒子の平均粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とした。次に100個以上の粒子についてそれぞれ粒子の体積(質量)を、求めた粒径の直方体と近似して求め、体積平均粒径として求めそれを平均粒径とした。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)、走査型(SEM)又は走査透過型(STEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
本発明の金属粒子分散体において、金属粒子の含有量は、用途に応じて適宜選択されれば良いが、分散性の点から、金属粒子分散体の全量に対して、1〜70質量%であることが好ましく、更に、5〜50質量%の範囲内であることがより好ましい。本発明においては、後述する分散剤と組み合わせて用いることにより、従来に比べて金属粒子の含有量を高めた場合であっても、金属粒子の分散性や分散安定性に優れ、沈降物を生じにくいものとすることができる。
<分散剤>
本発明において用いられる分散剤は、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、前記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、ハロゲン化アリル化合物、及び下記一般式(III)で表される酸性有機リン化合物の少なくとも1種とが塩を形成したブロック共重合体である。
(一般式(I)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、Rは、水素原子又はメチル基、Qは、下記一般式(I−a)で表される基、又は、置換基を有していても良い、塩形成可能な含窒素複素環基を表す。)
(一般式(I−a)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
(一般式(II)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、R10は、水素原子又はメチル基、R11は、炭化水素基、−[CH(R12)−CH(R13)−O]−R14又は−[(CH−O]−R14で示される1価の基である。R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R14は、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
(一般式(III)中、Rは、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)
本発明においては、分散剤として、ハロゲン化アリル化合物及び/又は上記特定の酸性有機リン化合物と塩を形成した窒素部位を有する上記一般式(I)で表される構成単位を含む特定のブロック共重合体を用いることにより、前記金属粒子の分散性及び分散安定性が向上する。また、本発明の金属粒子分散体を焼成して金属膜を形成する場合には、焼結時の加熱により上記分散剤が分解されやすく、得られた金属膜は分散剤の残存が少ないため、導電性など、所望の機能を発現しやすい。また、上記分散剤を用いることにより金属微粒子分散体の低粘度化が可能となるため、本発明の金属粒子分散体は、インクジェット用のインクとしても好適に用いることができる。
(一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部)
上記ブロック共重合体は、一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部を有する。
一般式(I)において、Aは、直接結合又は2価の連結基である。直接結合とは、下記一般式(I−1)のように、Qが連結基を介することなく炭素原子に直接結合していることを意味する。
(一般式(I−1)中、R及びQは、一般式(I)と同様である。)
Aにおける2価の連結基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−基、−COO−基、炭素数1〜10のエーテル基(−R’−OR”−:R’及びR”は、各々独立にアルキレン基)及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
中でも、分散性の点から、一般式(I)におけるAは、直接結合、−CONH−基、又は、−COO−基を含む2価の連結基であることが好ましい。
例えば、Aが−COO−基を含む2価の連結基でQが上記一般式(I−a)で表される基である場合、一般式(I)で表される構成単位は下記式(I−2)で表される構造が挙げられる。
(一般式(I−2)中、Rは、一般式(I)と同様であり、R及びRは、一般式(I−a)と同様であり、Rは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−であり、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を表す。)
における炭素数1〜8のアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基、各種オクチレン基などである。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、yは1〜5の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。zは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。
上記Rとしては、分散性の点から、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、中でも、Rがメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であることが更に好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。
一般式(I−a)における、R及びRの、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基における炭化水素基は、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルキル基の炭素数は、1〜18が好ましく、中でも、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、7〜20が好ましく、更に7〜14が好ましい。
また、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。なお、上記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
ヘテロ原子を含む炭化水素基とは、上記炭化水素基中の炭素原子がヘテロ原子でおきかえられた構造を有する。炭化水素基が含んでいてもよいヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられる。
また、炭化水素基中の水素原子は、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子により置換されていてもよい。
また、Qにおける置換基を有していても良い、塩形成可能な含窒素複素環基としては、例えば、5〜7員環の含窒素複素環単環、又はこれらの縮合環が挙げられ、更に別のヘテロ原子を有していてもよく、置換基を有していていもよい。また、含窒素複素環基は芳香族性を有していてもよい。
上記含窒素複素環基を形成する含窒素複素環式化合物としては、具体的には、ピリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。中でも、ピリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール等のヘテロ原子として窒素原子のみを含む含窒素複素環式化合物であることが好ましく、ピリジン、イミダゾール等の芳香族性を有する含窒素複素環基であることがより好ましい。
上記含窒素複素環基において、有していてもよい置換基としては、例えば炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。また、これらの置換基の置換位置、及び置換基数は特に限定されない。
上記一般式(I)で表される構成単位としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート等の含窒素(メタ)アクリレート;ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等の含窒素ビニル単量体;ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体等から誘導される構成単位が挙げられるが、これらに限定されない。
一般式(I)で表される構成単位は、1種類からなるものであってもよく、2種以上の構成単位を含むものであってもよい。
一般式(I)で表される構成単位を有するブロック中、一般式(I)で表される構成単位は、3個以上含まれることが好ましい。中でも、分散性を良好なものとする点から、3〜200個含むことが好ましく、3〜50個含むことがより好ましく、更に3〜30個含むことがより好ましい。
一般式(I)で表される構成単位は、前記金属粒子との親和性を有する部位として機能すれば良く、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
一般式(I)で表される構成単位を有するブロック共重合体中、一般式(I)で表される構成単位の含有割合は、一般式(I)で表される構成単位を有するブロック共重合体全体を100質量%としたときに、5〜60質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
なお、上記構成単位の含有割合は、一般式(I)で表される構成単位を有するブロック共重合体を合成する際の仕込み量から算出される。
(一般式(IV)で表される構成単位を有するブロック部)
上記ブロック共重合体は、前記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部を有する。当該ブロック部を有することにより、溶剤親和性を良好にし、金属粒子の分散性及び分散安定性が良好なものとなる。
一般式(II)において、Aは、前記一般式(I)と同様のものとすることができる。中でも、金属粒子の分散性、分散安定性に優れ、金属粒子の沈降を抑制する点から、下記式(II−1)で表される構造であることが好ましい。
(一般式(II−1)中、R10及びR11は、一般式(II)と同様である。)
一般式(II)及び一般式(II−1)において、R11は、炭化水素基、−[CH(R12)−CH(R13)−O]−R14又は−[(CH−O]−R14を示す。
11における炭化水素基としては、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、又はアリール基であることが好ましい。
上記炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−エトキシエチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。
上記炭素数2〜18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基などを挙げることができる。アルケニル基の二重結合の位置には限定はないが、得られたポリマーの反応性の点からは、アルケニル基の末端に二重結合があることが好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アリール基の炭素数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。
また、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アラルキル基の炭素数は、7〜20が好ましく、更に7〜14が好ましい。
アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
なお、上記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
また、上記R14は水素原子、炭化水素基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であって、直鎖状、分岐状、又は環状のいずれであってもよい。
上記R14における炭化水素基は、前記R11で示したものと同様のものとすることができる。
上記R11において、x、y及びzは、前記Rで説明したとおりである。
また、上記一般式(II)及び一般式(II−1)で表される構成単位中のR11は、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
上記R11としては、中でも、後述する溶剤との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、金属粒子分散体に使用する溶剤に合わせて適宜選択されれば良い。具体的には、例えば上記溶剤が、金属粒子分散体の溶剤として一般的に使用されているエーテルアルコールアセテート系、エーテル系、エステル系などの溶剤を用いる場合には、メチル基、エチル基、イソブチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。
更に、上記R11は、金属粒子分散体の用途に合わせて適宜選択されることが好ましい。例えば、金属粒子分散体を焼成して用いる場合には、上記R11としては、熱分解し易い、分岐アルキル基(イソプロピル、2−エチルヘキシル)やメチル基、n−ブチル基などが好ましい。
また、例えば、熱線遮蔽性等を有する機能性フィルムに用いる場合には、上記R11としては、透明性や耐熱性などを考慮して、脂環アルキル基(シクロヘキシル、イソボルニル、アダマンチル)などが好ましい。
更に、金属粒子分散体を含む樹脂成型品とする場合には、組み合わせて使用する樹脂と類似の骨格とすることが好ましく、例えば、ポリメチルメタクリレートを用いる場合には、上記R11としてはメチル基等とすることが好ましい。
また、上記R11は、上記ブロック共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、水素結合形成基等の置換基によって置換されたものとしてもよく、また、上記ブロック共重合体の合成後に、上記置換基を有する化合物と反応させて、上記置換基を付加させてもよい。また、これらの置換基を有するブロック共重合体を合成した後に、当該置換基と反応する官能基と重合性基とを有する化合物を反応させて、重合性基を付加したものとしてもよい。例えば、カルボキシル基を有するブロック共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させたり、イソシアネート基を有するブロック共重合体にヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたりして、重合性基を付加することができる。
一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部を構成する構成単位の数は特に限定されないが、溶剤親和性部位と、金属粒子との親和性部位が効果的に作用し、金属粒子分散体の分散性を向上し、金属粒子の沈降を抑制する点から、10〜200個であることが好ましく、10〜100個であることがより好ましく、更に10〜70個であることがより好ましい。
ブロック共重合体中、一般式(II)で表される構成単位の含有割合は、ブロック共重合体全体を100質量%としたときに、40〜95質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましい。
なお、上記構成単位の含有割合は、一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部を合成する際の仕込み量から算出される。
一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部は、溶剤親和性部位として機能するように選択されれば良く、一般式(II)で表される構成単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。本発明においては、上記塩形成可能な窒素部位を有する構成単位がブロック部として含まれれば良く、一般式(II)で表される構成単位が2種以上の構成単位を含む場合に、当該ブロック部内は2種以上の構成単位がランダムに配列していてもよい。
分散剤として用いられるブロック共重合体において、一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部の構成単位のユニット数mと、一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部の構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.01〜1の範囲内であることが好ましく、0.05〜0.7の範囲内であることが、金属粒子の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
前記ブロック共重合体の結合順としては、上記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部及び一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部を有し、金属粒子を安定に分散することができるものであればよく、特に限定されないが、上記一般式(II)で表される構成単位を含むブロック部が上記ブロック共重合体の一端のみに結合したものであることが、金属粒子との相互作用に優れ、分散剤同士の凝集を効果的に抑えることができる点から好ましい。
分散剤の質量平均分子量は、特に限定されないが、分散性を良好なものとし、焼結時に揮散しやすい点から、1000〜20000であることが好ましく、2000〜12000であることがより好ましく、更に3000〜10000であることがより好ましい。
なお、上記質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー社製のHLC−8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、20650、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー社製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー社製)として行われたものである。
<ハロゲン化アリル化合物、酸性有機リン化合物>
本発明の分散剤は、上記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、酸性有機リン化合物とが塩を形成したブロック共重合体である。
本発明においては、ハロゲン化アリル化合物、及び下記一般式(III)で表される酸性有機リン化合物の少なくとも1種を塩形成剤として用いることにより、分散剤を、前記金属粒子の分散性及び安定性に優れ、本発明の金属粒子分散体を焼成して金属膜を形成する場合に焼成時に当該分散剤を揮散乃至分解しやすいものとすることができる。
前記ハロゲン化アリル化合物の具体例としては、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリル等が挙げられる。
前記酸性有機リン化合物は、下記一般式(III)で表される化合物である。
(一般式(III)中、Rは、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)
におけるアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。中でも、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。
におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アリール基の炭素数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。
におけるアラルキル基は、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アラルキル基の炭素数は、7〜20が好ましく、更に7〜14が好ましい。
におけるアリール基、及びアラルキル基の芳香環が有してもよい置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
なお、上記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
ハロゲン化アリル化合物、及び酸性有機リン化合物は、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明で用いる分散剤におけるハロゲン化アリル化合物、及び上記一般式(III)で表される酸性有機リン化合物の少なくとも1種の含有量は、良好な分散安定性が発揮されるのであればよく、特に制限はないが、一般に前記一般式(I)で表される構成単位に含まれる窒素部位に対して、0.05〜2.0モル当量程度、好ましくは0.1〜1.0モル当量、より好ましくは0.2〜0.8モル当量とすることが、金属粒子の分散安定性を向上させる点から好ましい。
<分散剤の製造>
本発明において分散剤に用いられる、ブロック共重合体の製造方法としては、少なくとも一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、一般式(II)で表されるブロックとを有し、前記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、ハロゲン化アリル化合物、及び上記一般式(III)で表される酸性有機リン化合物の少なくとも1種とが塩を形成したブロック重合体を製造することができる方法であればよく特に限定されない。本発明においては、例えば、一般式(I)で表される構成単位を有するモノマーと、一般式(II)で表される構成単位を有するモノマーを公知の重合手段を用いて重合した後、後述する溶剤中に溶解又は分散し、次いで該溶剤中にハロゲン化アリル化合物、及び上記一般式(III)で表される酸性有機リン化合物を添加し、攪拌、更に必要により加熱することにより製造することができる。
上記重合手段としては、一般式(I)で表される構成単位及び一般式(II)で表される構成単位を所望のユニット比で重合し、所望の分子量とすることができる手段であればよく、特に限定されず、ビニル基を有する化合物の重合に一般的に用いられる方法を採用することができ、例えばアニオン重合やリビングラジカル重合等を用いることができる。本発明においては、なかでも、「J.Am.Chem.Soc.」105、5706(1983)に開示されているグループトランスファー重合(GTP)のようにリビング的に重合が進行する方法を用いることが好ましい。この方法によると、分子量、分子量分布等を所望の範囲とすることが容易であるので、当該分散剤の分散性、焼成時の揮発乃至分解性等の特性を均一にすることができる。
本発明の金属粒子分散体において、分散剤は、上記ブロック共重合体を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量は、用いる金属粒子の種類等に応じて適宜設定されるが、金属粒子100質量部に対して、通常、1〜200質量部の範囲であり、3〜100質量部であることが好ましく、5〜80質量部であることがより好ましい。分散剤の含有量が上記範囲内にあれば、金属粒子を均一に分散させることができ、分散安定性に優れている。
<溶剤>
本発明の金属粒子分散体おいて、溶剤は、金属粒子分散体中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に限定されない。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系;メトキシアルコール、エトキシアルコール、メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテルアルコール系;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系;メトキシエチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、メトキシエトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエーテルアルコールアセテート系;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド系;γ−ブチロラクトンなどのラクトン系;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系;n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−オクタンなどの飽和炭化水素系などの有機溶剤が挙げられる。
これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテルアルコール系;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテルアルコールアセテート系;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系;酢酸3−メトキシブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系等を好適に用いることができる。
中でも、本発明に用いられる溶剤としては、MBA(酢酸3−メトキシブチル)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、DMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、BCA(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)又はこれらを混合したものが、分散剤の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
本発明の金属粒子分散体における溶剤の含有量は、該金属粒子分散体の各構成を均一に溶解又は分散することができるものであればよく、特に限定されない。本発明においては、該金属粒子分散体中の固形分含有量が、5〜70質量%の範囲が好ましく、10〜50質量%の範囲がより好ましい。上記範囲であることにより、塗布に適した粘度とすることができる。
<その他の成分>
本発明の金属粒子分散体には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、錯化剤、有機保護剤、還元剤、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
<金属粒子分散体の製造方法>
本発明において、金属粒子分散体の製造方法は、金属粒子が良好に分散できる方法であればよく、従来公知の方法から適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、前記分散剤を前記溶媒に混合、攪拌し、分散剤溶液を調製した後、当該分散剤溶液に、金属粒子と、必要に応じて他の成分を混合し、公知の攪拌機、又は分散機等を用いて分散させることによって、金属粒子分散体を調製することができる。
<金属粒子分散体の用途>
本発明の金属粒子分散体は、分散性及び分散安定性に優れ、金属粒子の沈降も抑制されることから、従来公知の用途に好適に用いることができる。本発明の金属粒子分散体は、例えば、導電性材料、金属光沢を付与する材料、抗菌性材料、熱線遮蔽性を付与する材料、帯電防止性を付与する材料、蛍光材料等に用いられる。更に本発明の金属粒子分散体は、従来よりも低温で焼成した場合であっても、得られた金属膜に有機成分の残存が少ないことから、特に、焼成による金属膜形成用途に好適に用いることができる。
[物品]
本発明に係る物品は、前記本発明に係る金属粒子分散体又は金属粒子分散体を含む組成物の塗膜、成形体又は焼結膜を含むことを特徴とする。
本発明に係る物品は、前記本発明に係る分散性が良好な金属粒子分散体を用いることにより、金属粒子の凝集や偏りが低減された均一な塗膜や成形体を有する高品質な物品を得ることができる。また、焼成により、前記本発明に係る金属粒子分散体又は金属粒子分散体を含む組成物の焼結膜とした場合には、有機成分の残存が少ない金属膜を含む高品質な物品を得ることができる。
前記本発明に係る金属粒子分散体又は金属粒子分散体を含む組成物の塗膜を含む物品としては、典型的には、塗膜の支持体となる基材を含む態様が挙げられる。一態様としては、基材上に少なくとも前記本発明に係る金属粒子分散体又は金属粒子分散体を含む組成物の塗膜を含む基板の態様をとる物品が挙げられる。なお、金属粒子分散体を含む組成物の塗膜には、組成物に光及び/又は熱硬化性樹脂が含まれる場合等、硬化塗膜も包含される。
また、前記本発明に係る金属粒子分散体又は金属粒子分散体を含む組成物の焼結膜を含む物品としても、典型的には、焼結膜の支持体となる基材を含む態様が挙げられる。
ここで、上記塗膜及び焼結膜としては、連続層だけでなく、島状の不連続層であっても良く、金属粒子が何らかの基材に不連続に担持されている状態を含む。
このような本発明に係る基板の態様をとる物品について、図を参照しながら説明する。
図1は、本発明の物品の一例を示す概略断面図であり、物品100は、基材1上に、金属粒子分散体又は金属粒子分散体を含む組成物を焼成処理して形成された焼結膜2を有している。
図2は、本発明の物品の他の一例を示す概略断面図であり、物品100は、基材1上に、金属粒子4が薄膜3で担持された塗膜10を有している。
また、図3は、本発明の物品の他の一例を示す概略断面図であり、物品100は、基材1上に、マトリックス5中に金属粒子6を含有する塗膜10を有している。
上記基材を含む態様に用いられる基材としては、従来公知の基材の中から、用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、樹脂基材やガラス基材が挙げられる。焼結膜の支持体となる基材としては、ガラス基材が好適に用いられるが、前記本発明に係る金属粒子分散体は、従来よりも低温で焼成が可能であるため、従来焼結膜に対しては適用が困難であった樹脂基材であっても好適に用いることができる。当該樹脂基材としては、中でも、耐熱性に優れた基材であること好ましく、具体的には、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
当該基材の形状は、用途に応じて適宜選択すればよく、平板上であっても、曲面を有するものであってもよい。平板上の基材を用いる場合、当該基材の厚みは、用途に応じて適宜設定すればよく、例えば25μm〜100mm程度のものとすることができる。
上記前記本発明に係る金属粒子分散体又は金属粒子分散体を含む組成物の塗膜を含む物品としては、例えば、熱線遮蔽フィルムや、帯電防止フィルム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、上記前記本発明に係る金属粒子分散体又は金属粒子分散体を含む組成物の焼結膜を含む物品としては、例えば、配線基板、導電膜、電極等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一方、前記本発明に係る金属粒子分散体又は金属粒子分散体を含む組成物の成形体を含む物品としては、典型的には、支持体となる基材を含まない態様が挙げられる。
例えば、金属粒子分散体を、抗菌剤、色材、又は補強材等として含有した、樹脂成形物や、樹脂繊維などが挙げられ、抗菌性物品、意匠性物品等が挙げられる。
金属粒子分散体を含む組成物に含まれる構成成分は、例えば、前記塗膜10において、薄膜3、マトリックス5、又は成形体のマトリックスとなり得るものであるが、これらは、各物品において公知の構成成分を適宜選択して採用すれば良い。また、各物品において、前記本発明に係る金属粒子分散体又は金属粒子分散体を含む組成物の塗膜、成形体又は焼結膜以外の構成成分についても、各物品において公知の構成成分を適宜選択して採用すれば良い。
具体的には、例えば熱線遮蔽フィルムの場合、樹脂基材等の基材上に、前記本発明に係る金属粒子分散体と光硬化性樹脂を含む組成物の硬化膜が配置された構造が挙げられる。当該樹脂基材や当該光硬化性樹脂は、熱線遮蔽フィルムに従来用いられていた樹脂基材や光硬化性樹脂を適宜選択して用いることができる。
<物品の製造方法>
物品の製造方法は、例えば、基材又は基材上の他の機能層上に、上記金属粒子分散体又は上記金属粒子分散体を含む組成物を塗布して、塗膜を形成することにより得ることができる。また、当該塗膜は、必要に応じて焼成処理して、焼結膜とすることができる。
金属粒子分散体又は上記金属粒子分散体を含む組成物を塗布する方法は、従来公知の方法を適宜選択すればよい。例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、スプレーコート、ダイコート、スピンコート、コンマコート、バーコート、ナイフコート、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、ディスペンサ印刷等の方法が挙げられる。中でも、微細なパターニングを行うことができる点から、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、及びインクジェット印刷が好ましい。特に、本発明の金属粒子分散体は、分散性に優れているため、インクジェットの吐出ノズルにつまりが生じたり、吐出曲がりが生じることがないため、インクジェット印刷に適している。
得られた塗膜は、従来公知の方法で乾燥してもよい。乾燥後の膜厚は、用途に応じて適宜調整すればよいものであるが、通常、0.01〜100μmの範囲であり、好ましくは、0.1〜50μmである。
塗膜を焼成して焼結膜とする場合には、従来公知の焼成方法を用いればよい。例えば、金属粒子同士が焼結する温度に昇温する方法や、マイクロ波エネルギーの印加により発生する表面波プラズマによる方法等が挙げられる。
また、上記金属粒子分散体を含む組成物の成形体を製造する方法は、従来公知の方法を適宜選択すればよい。例えば、樹脂をマトリックスとする場合の成形方法としては、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形等を挙げることができる。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
(製造例1 銅粒子の製造)
酸化第二銅64gとゼラチン5.1gを650mLの純水に添加し、混合して混合液とした。15%のアンモニア水を用いて、当該混合液のpHを10に調整した後、20分かけて室温から90℃まで昇温した。昇温後、攪拌しながら錯化剤として1%のメルカプト酢酸溶液6.4gと、80%のヒドラジン一水和物75gを150mLの純水に混合した液を添加し、1時間かけて酸化第二銅と反応させて、銅粒子を生成させた。その後、濾過洗浄し、乾燥することで、銅粒子を得た。得られた銅粒子を走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察したところ、平均一次粒径は50nmであった。
(製造例2 銀粒子の製造)
硝酸銀50gと純水200mLの混合液に、ポリメタクリル酸2−ジメチルアミノエチル(質量平均分子量2000)5gと50mLの純水に混合した液を添加し、1時間かけて硝酸銀と反応させて、銀粒子を生成させた。その後、濾過洗浄し、乾燥することで、銀粒子を得た。得られた銀粒子を走査透過型電子顕微鏡(STEM)で観察したところ、平均一次粒径は、40nmであった。
(製造例3 分散剤溶液Aの調製)
100mLナスフラスコ中で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)33.89質量部に、上記一般式(I)で表される構成単位と上記一般式(II)で表される構成単位とを有するブロック共重合体)(商品名:BYK−LPN6919、ビックケミー社製)(アミン価120mgKOH/g、質量平均分子量7000、固形分60質量%)15.27質量部(有効固形分9.16質量部)を溶解させ、更に、フェニルホスフィン酸を0.84質量部(ブロック共重合体のアミノ基に対して0.3モル当量)を加え、40℃で30分攪拌することで分散剤溶液A(固形分20%)を調製した。このとき、ブロック共重合体のアミノ基は、フェニルホスフィン酸と酸−塩基反応により塩形成されている。
(製造例4 分散剤溶液Bの調製)
製造例3において、PGMEA33.61質量部、BYK−LPN6919を15.97質量部(有効固形分9.58質量部)、フェニルホスフィン酸の代わりに、ホスホン酸0.42質量部(ブロック共重合体のアミノ基に対して0.25モル当量)を用いた以外は、製造例3と同様にして、分散剤溶液Bを調製した。このとき、ブロック共重合体のアミノ基は、ホスホン酸と酸−塩基反応により塩形成されている。
(製造例5 分散剤溶液Cの調製)
製造例3において、PGMEA33.19質量部、BYK−LPN6919を15.99質量部(有効固形分9.59質量部)、フェニルホスフィン酸の代わりに、ホスフィン酸50質量%水溶液0.82質量部(有効固形分0.41質量部、ブロック共重合体のアミノ基に対して0.3モル当量)を用いた以外は、製造例3と同様にして、分散剤溶液Cを調製した。このとき、ブロック共重合体のアミノ基は、ホスフィン酸と酸−塩基反応により塩形成されている。
(製造例6 分散剤溶液Dの調製)
製造例3において、PGMEA33.65質量部、BYK−LPN6919を15.89質量部(有効固形分9.53質量部)、フェニルホスフィン酸の代わりに、塩化アリル0.47質量部(ブロック共重合体のアミノ基に対して0.3モル当量)を用い、120℃で2時間攪拌した以外は、製造例3と同様にして、分散剤溶液Dを調製した。このとき、ブロック共重合体のアミノ基は、塩化アリルとの4級化反応により塩形成されている。
(製造例7 分散剤溶液Eの調製)
製造例3において、PGMEA33.81質量部、BYK−LPN6919を15.47質量部(有効固形分9.28質量部)、フェニルホスフィン酸の代わりに、臭化アリル0.72質量部(ブロック共重合体のアミノ基に対して0.3モル当量)を用いた以外は、製造例3と同様にして、分散剤溶液Eを調製した。このとき、ブロック共重合体のアミノ基は、臭化アリルとの4級化反応により塩形成されている。
(実施例1 金属粒子分散体Aの調製)
製造例1で得られた銅粒子40.0質量部、製造例3で得られた分散剤溶液A15.0質量部(有効固形分3.0質量部)、PGMEA45.0質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで4時間分散し、実施例1の金属粒子分散体Aを得た。
(実施例2〜5及び参考例4 金属粒子分散体B〜Eの調製)
実施例1において、分散剤溶液Aの代わりに、製造例4〜7で得られた分散剤溶液B〜Eをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜5及び参考例4の金属粒子分散体B〜Eを得た。
(比較例1 金属粒子分散体X1の調製)
実施例1において、分散剤溶液Aの代わりに、塩形成していないBYK−LPN6919 5.0質量部(有効固形分3.0質量部)、PGMEA55.0質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の金属粒子分散体X1を得た。
(比較例2 金属粒子分散体X2の調製)
実施例1において、分散剤溶液Aの代わりに、ソルスパース71000(日本ルーブリゾール社製)3.0質量部、PGMEA57.0質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の金属粒子分散体X2を得た。
(比較例3 金属粒子分散体X3の調製)
実施例1において、分散剤溶液Aの代わりに、BYK−111(ビックケミー社製)3.0質量部、PGMEA57.0質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の金属粒子分散体X3を得た。
(比較例4 金属粒子分散体X4の調製)
実施例1において、分散剤溶液Aの代わりに、BYK−161(ビックケミー社製)10.0質量部(有効固形分3.0質量部)、PGMEA50.0質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例4の金属粒子分散体X4を得た。
(比較例5 金属粒子分散体X5の調製)
実施例1において、分散剤溶液Aの代わりに、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)3.0質量部、PGMEA57.0質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例5の金属粒子分散体X5を得た。
(評価)
<分散性評価>
金属粒子の分散性の評価として、各実施例、参考例及び比較例で得られた金属粒子分散体中の金属粒子の平均粒径とせん断粘度の測定を行った。平均粒径の測定には、日機装社製「ナノトラック粒度分布計UPA−EX150」を用い、粘度測定には、Anton Paar社製「レオメータMCR301」を用いて、せん断速度が60rpmのときのせん断粘度を測定した。結果を表1に示す。
<沈降物評価>
各実施例、参考例及び比較例で得られた金属粒子分散体を、冷蔵で1週間静置し、静置後の金属微粒子分散体中の沈降物を目視で観察した。結果を表1に示す。
沈降物がなければ分散安定性に優れているといえる。
<焼結評価>
(1)導電性基板の作製
各実施例、参考例及び比較例で得られた金属粒子分散体を、ガラス基板(商品名:OA−10G、日本電気硝子社製、厚さ0.7mm)上にワイヤーバーで塗布して、80℃で15分乾燥して、膜厚が2μmの塗膜とした。得られた塗布膜を、300℃、水素3体積%/窒素97体積%の混合ガス雰囲気下で30分焼成し、導電性基板を得た。
(2)シート抵抗値の測定
表面抵抗計(ダイアインスツルメンツ社製「ロレスタGP」、PSPタイププローブ)を用いて、上記(1)で得られた実施例2〜5、参考例4及び比較例1〜5の導電性基板の焼結膜に4探針を接触させ、4探針法によりシート抵抗値を測定した。結果を表1に示す。
シート抵抗値が低ければ、低温焼結性に優れ、有機成分の残存が少ないといえる。なお、本測定法によるシート抵抗値の測定上限は10Ω/□であった。
表1の結果から、分散剤として、一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、ハロゲン化アリル化合物、又は一般式(III)で表される酸性リン化合物とが塩を形成したブロック共重合体を用いた、実施例2〜5及び参考例4の金属粒子分散体は、分散性、分散安定性に優れ、沈降物を生じることがなく、更に低温焼結に適していることが明らかとなった。一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有するが、塩形成していない分散剤を用いた、比較例1の金属粒子分散体は、沈降物が生じ分散安定性が悪かった。また、比較例1は、シート抵抗値が高く、低温焼結性が悪いことが明らかとなった。また、その他の市販の分散剤を用いた比較例2〜5の金属粒子分散体は、沈降物が生じ分散安定性が悪かった。また、比較例2〜5は、シート抵抗値が高く、低温焼結性が悪いことが明らかとなった。
(実施例6 金属粒子分散体Fの調製)
製造例2で得られた銀粒子10.0質量部、製造例3で得られた分散剤溶液A30.0質量部(有効固形分6.0質量部)、PGMEA60.0質量部を混合し、ペイントシェーカーにて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで8時間分散し、実施例6の金属粒子分散体Fを得た。
(実施例7 金属粒子分散体Gの調製)
実施例6において、銀粒子の代わりに、モリブデン粒子(シグマアルドリッチ社製、100nm以下)を用い、本分散時間を6時間とした以外は、実施例6と同様にして、実施例7の金属粒子分散体Gを得た。
(実施例8 金属粒子分散体Hの調製)
実施例6において、銀粒子の代わりに、アルミナ粒子(シグマアルドリッチ社製、100nm以下)を用い、本分散時間を2時間とした以外は、実施例6と同様にして、実施例8の金属粒子分散体Hを得た。
(実施例9 金属粒子分散体Iの調製)
実施例7において、銀粒子の代わりに、酸化インジウム粒子(シグマアルドリッチ社製、100nm以下)を用い、本分散時間を3時間とした以外は、実施例6と同様にして、実施例9の金属粒子分散体Iを得た。
(実施例10 金属粒子分散体Jの調製)
ATO粒子(スズドープ酸化アンチモン粒子、「T−1−20L」三菱マテリアル社製、平均粒径20nm)10.0質量部、製造例3で得られた分散剤溶液A15.0質量部(有効固形分3.0質量部)、PGMEA75.0質量部を混合し、ペイントシェーカーにて予備分散として2mmジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として0.1mmジルコニアビーズで24時間分散し、実施例10の金属粒子分散体Jを得た。
(実施例11 金属粒子分散体Kの調製)
実施例10において、分散剤溶液Aの代わりに、製造例7の分散剤溶液Eを用いた以外は、実施例10と同様にして、実施例11の金属粒子分散体Kを得た。
(実施例12 金属粒子分散体Lの調製)
実施例10において、ATO粒子の代わりに、ITO粒子(スズドープ酸化インジウム粒子、「ナノテックITO−R」シーアイ化成社製、平均粒径30nm)を用い、本分散時間を12時間とした以外は、実施例10と同様にして、実施例12の金属粒子分散体Lを得た。
(評価)
実施例6〜12で得られた金属微粒子分散体F〜Lについて、前記分散性評価及び前記沈降物評価と同様にして、金属粒子分散体中の金属粒子の平均粒径とせん断粘度、及び、静置後の金属微粒子分散体中の沈降物の有無についてそれぞれ評価した。結果を表2に示す。
表2の結果の通り、分散剤として、一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、ハロゲン化アリル化合物、乃至一般式(III)で表される酸性有機リン化合物とが塩を形成したブロック共重合体を用いた、金属粒子分散体は、金属粒子が銅以外であっても、分散性、分散安定性に優れ、沈降物を生じることがなかった。
(実施例13 熱線吸収フィルムの作製)
実施例12の金属粒子分散体L 4.81質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート1.78質量部、イルガキュア814(BASF社製)0.10質量部を混合しインキを調整した。インキをPETフィルム上に10μmの膜厚となるように塗布し、70℃のオーブンで3分乾燥させた後、窒素雰囲気下で紫外線露光機により300mJ/cmの紫外線を照射することで硬化塗膜を作製した。
(評価)
<透過率測定>
実施例13の硬化塗膜を、分光光度計(島津製作所社製UV3100)を用いて300〜2500nmの波長領域の透過率を測定した。
表3に赤外線透過率(1200nmの透過率)及び可視光透過率(650nmの透過率)の測定結果を示す。
1 基材
2 金属膜
3 薄膜
4 金属粒子
5 塗膜
10 金属含有層
100 基板

Claims (3)

  1. 金属粒子と、分散剤と、溶剤とを含有し、
    前記金属粒子は、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、モリブデン、アルミニウム、アンチモン、スズ、クロム、ランタン、インジウム、ガリウム、及びゲルマニウムより選択される1種以上の金属粒子であり、且つ、
    前記分散剤は、下記一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(II)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、前記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、臭化アリル、及び下記一般式(III)で表される酸性リン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種とが塩を形成したブロック共重合体である、金属粒子分散体。
    (一般式(I)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、Rは、水素原子又はメチル基、Qは、下記一般式(I−a)で表される基、又は、置換基を有していても良い、塩形成可能な含窒素複素環基を表す。)
    (一般式(I−a)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
    (一般式(II)中、Aは、直接結合又は2価の連結基、R10は、水素原子又はメチル基、R11は、炭化水素基、−[CH(R12)−CH(R13)−O]−R14又は−[(CH−O]−R14で示される1価の基である。R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R14は、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR15で示される1価の基であり、R15は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
    xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
    (一般式(III)中、Rは、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)
  2. 前記金属粒子の平均一次粒径が5〜200nmである、請求項1に記載の金属粒子分散体。
  3. 請求項1又は2に記載の金属粒子分散体又は金属粒子分散体を含む組成物の塗膜、成形体又は焼結膜を含む、物品。
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