JP6125838B2 - リチウム複合酸化物の製造装置および製造方法、その製造方法によって得られるリチウム複合酸化物、それを含む二次電池用正極活物質、それを含む二次電池用正極、ならびにそれを正極として用いるリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウム複合酸化物の製造装置および製造方法、その製造方法によって得られるリチウム複合酸化物、それを含む二次電池用正極活物質、それを含む二次電池用正極、ならびにそれを正極として用いるリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、正極活物質として使用可能なリチウム複合酸化物の製造装置および製造方法、その製造方法によって得られるリチウム複合酸化物、それを含む二次電池用正極活物質、それを含む二次電池用正極、ならびにそれを正極として用いるリチウムイオン二次電池に関する。
リチウム電池は、他の電池に比べて大きなエネルギー密度を持ち、軽く、長時間使用できるという特徴を有し、携帯電話、PHS、小型コンピューター等の携帯機器類用電源、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源等として用いるために開発が進められている。
このようなリチウム電池は、リチウム含有複合酸化物を含む正極活物質からなる正極と、カーボン等のリチウムを吸蔵・放出することができる材料を活物質とする負極と、非水電解液を含むセパレータまたは固体電解質とを、主要構成成分として備えている。
そして、これら構成要素のうち、正極活物質として検討されているものには、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)等がある。特に、リチウムコバルト複合酸化物を正極に用いた電池については、優れた初期容量特性やサイクル特性を得るための開発がこれまで数多く行われており、すでに実用化に至っている。
しかし、コバルトが希少資源であるため、リチウムコバルト複合酸化物を正極に用いたリチウムイオン二次電池は高価である。そこで、コバルトよりも安価で高エネルギー密度を実現できる代替材料が求められており、すでにいくつかの提案がなされている。
例えば特許文献1には、リチウム源およびマンガン源を含有する分散媒中に、周期表2A族元素の水酸化物を配合するスラリーを噴霧乾燥し、これを焼成処理に供することを特徴とするリチウム遷移金属複合酸化物の製造装置が記載されている。
特開2002−241132号公報
しかしながら、特許文献1に記載のような従来のリチウム複合酸化物の製造装置を用いて得られるリチウム複合酸化物は、組成や粒度分布等の品質が均一になり難く、それに伴って、それを正極活物質として用いた電池の性能(充放電容量等)も均一になり難いという問題点があることを、本発明者は見出した。
本発明は、上記のような従来のリチウム複合酸化物の製造装置の問題点を解決するものである。すなわち、組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物が得られる製造装置およびそれを用いた製造方法を提供することを目的とする。また、そのような製造方法によって製造される、組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物を提供することを目的とする。また、このようなリチウム複合酸化物を含む正極活物質を提供することを目的とする。また、この正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池用正極を提供することを目的とする。さらに、この正極を用いた、充放電容量等の品質がより均一なリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)〜(13)である。
(1)リチウム源を含む、少なくとも一部が固体の原料を、溶媒に含有させた状態で粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥し、焼成する、リチウム複合酸化物の製造装置であって、
前記原料を受け入れてスラリー調整する懸濁部と、
前記懸濁部において調整したスラリーを受け入れ、これを湿式で粉砕してスラリーを排出する湿式粉砕部と、
前記湿式粉砕部から排出された粉砕後のスラリーを貯留する貯留部と、
前記貯留部からスラリーを受け入れ、これを乾燥して前駆体を形成する乾燥部と、
前記前駆体を受け入れ、これを焼成する焼成部と、
を有し、
前記貯留部から前記乾燥部までがスラリーを送液するための配管で繋がれていて、その配管は、前記貯留部側から順に、前記貯留部と繋がり水平方向に伸びる第1水平部L1と、それと繋がり垂直上方向に延びる第1垂直部L2と、それと繋がり水平方向に伸びる第2水平部L3と、それと繋がり垂直下方向に延びる第2垂直部L4と、を有しており、その配管の全長が7.0m以内である、リチウム複合酸化物の製造装置。
(2)第1水平部L1の配管の長さが1.0〜15.0m、
第1垂直部L2の配管の長さが0.05〜2.0m、
第2水平部L3の配管の長さが0.2〜3.0m、
第2垂直部L4の配管の長さが0.2〜3.0mである、上記(1)に記載のリチウム複合酸化物の製造装置。
(3)前記配管の断面直径が10〜50mmである、上記(1)または(2)に記載のリチウム複合酸化物の製造装置。
(4)さらに、前記湿式粉砕部と前記貯留部との間に濃度調整部を有し、
前記湿式粉砕部から排出された粉砕後のスラリーを前記濃度調整部にて受け入れた後、受け入れたスラリーの固形分濃度を調整し、その後、固形分濃度を調整したスラリーを貯留部に貯留することができる、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のリチウム複合酸化物の製造装置。
(5)前記乾燥部が、アトマイザーを備える噴霧乾燥機であり、
前記配管における、第2水平部L3との境界からアトマイザーとの境界までが第2垂直部L4である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のリチウム複合酸化物の製造装置。
(6)リチウム源を含む、少なくとも一部が固体の原料を、溶媒に含有させてスラリーを得る懸濁工程と、
前記スラリーを粉砕混合する湿式粉砕工程と、
前記湿式粉砕工程によって得られた粉砕後のスラリーを貯留する貯留工程と、
前記貯留工程において貯留されているスラリーを乾燥して前駆体を得る乾燥工程と、
前記前駆体を焼成して焼成体を得る焼成工程と、
を備え、
上記(1)〜(5)のいずれかに記載のリチウム複合酸化物の製造装置を用いて行う、リチウム複合酸化物の製造方法。
(7)下記式(I)で表されるリチウム複合酸化物が得られる、上記(6)に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
式(I):Li(x+y)1 (2-y-p)2 p(4-a)
式(I)において、M1はMn、Ni、Co、Mg、Fe、AlおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、M2はB、P、Pb、Sb、SiおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、1.0≦x≦2.0、0≦y≦0.2、0≦p≦1.0、0≦a≦1.0である。
(8)前記乾燥工程において、固形分濃度が15〜35質量%であり、固形分の平均粒子径が0.5μm以下に調整されたスラリーを乾燥して前駆体を得る、上記(6)または(7)に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
(9)前記貯留工程が、前記貯留部においてスラリーを50rpm以上の撹拌速度で撹拌して行う工程である、上記(6)〜(8)のいずれかに記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
(10)上記(6)〜(9)のいずれかに記載の製造方法によって得られるリチウム複合酸化物。
(11)上記(10)に記載のリチウム複合酸化物を含む正極活物質。
(12)上記(11)に記載の正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池用正極。
(13)上記(12)に記載のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、電解液とを有する、リチウムイオン二次電池。
本発明によれば、組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物が得られる製造装置およびそれを用いた製造方法を提供することができる。また、そのような製造方法によって製造される、組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物を提供することができる。また、このようなリチウム複合酸化物を含み、充放電容量等の品質がより均一な正極活物質を提供することができる。また、この正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池用正極を提供することができる。さらに、この正極を用いた、充放電容量等の品質がより均一なリチウムイオン二次電池を提供することができる。
配管の好ましい態様を示す概略断面図である。 配管の別の態様を示す概略断面図である。 実施例で用いた装置を示す概略図である。
本発明について説明する。
本発明は、リチウム源を含む、少なくとも一部が固体の原料を、溶媒に含有させた状態で粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥し、焼成する、リチウム複合酸化物の製造装置であって、前記原料を受け入れてスラリー調整する懸濁部と、前記懸濁部において調整したスラリーを受け入れ、これを湿式で粉砕してスラリーを排出する湿式粉砕部と、前記湿式粉砕部から排出された粉砕後のスラリーを貯留する貯留部と、前記貯留部からスラリーを受け入れ、これを乾燥して前駆体を形成する乾燥部と、前記前駆体を受け入れ、これを焼成する焼成部と、を有し、前記貯留部から前記乾燥部までがスラリーを送液するための配管で繋がれていて、その配管は、前記貯留部側から順に、前記貯留部と繋がり水平方向に伸びる第1水平部L1と、それと繋がり垂直上方向に延びる第1垂直部L2と、それと繋がり水平方向に伸びる第2水平部L3と、それと繋がり垂直下方向に延びる第2垂直部L4と、を有しており、その配管の全長が7.0m以内である、リチウム複合酸化物の製造装置である。
このような製造装置を、以下では「本発明の製造装置」ともいう。
また、本発明は、リチウム源を含む、少なくとも一部が固体の原料を、溶媒に含有させてスラリーを得る懸濁工程と、前記スラリーを粉砕混合する湿式粉砕工程と、前記湿式粉砕工程によって得られた粉砕後のスラリーを貯留する貯留工程と、前記貯留工程において貯留されているスラリーを乾燥して前駆体を得る乾燥工程と、前記前駆体を焼成して焼成体を得る焼成工程と、を備え、本発明の製造装置を用いて行う、リチウム複合酸化物の製造方法である。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
本発明の製造装置は、前記貯留部から前記乾燥部までがスラリーを送るための配管で繋がれていて、その配管は、前記貯留部側から順に、前記貯留部と繋がり水平方向に伸びる第1水平部L1と、それと繋がり垂直上方向に延びる第1垂直部L2と、それと繋がり水平方向に伸びる第2水平部L3と、それと繋がり垂直下方向に延びる第2垂直部L4と、を有しており、その上、その配管の全長が7.0m以内である
このような配管を有する製造装置を用いると、組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物を製造できることを、本発明者は見出した。また、このようなリチウム複合酸化物を用いて製造したリチウムイオン二次電池は、充放電容量等の品質がより均一なものであることを、本発明者は見出した。
本発明の製造装置が有する各部および本発明の製造方法について、以下に説明する。
<懸濁部および懸濁工程>
本発明の製造装置が有する懸濁部および本発明の製造方法が備える懸濁工程について説明する。
本発明の製造装置において懸濁部は、リチウム複合酸化物を得るための原料を受け入れてスラリー調整することができるものであれば特に限定されない。例えば、タンク等の槽状のものであって、ここへ原料を装入し、必要に応じて水等の溶媒を添加できるものが挙げられる。さらに、回転速度を調整できるスクリュー等の撹拌手段を備えるものであると、原料と溶媒とを容易に混合することができるので好ましい。
原料について説明する。
原料は、リチウム源を含む、少なくとも一部が固体の原料であれば特に限定されない。
リチウム源としては、リチウム原子を含む無機または有機の化合物(すなわち、リチウム化合物)を用いることができる。例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウムを用いることができる。これらの中でも水酸化リチウムおよび/または炭酸リチウムを用いることが好ましい。有害ガスの生成を抑制できるからである。
また、この原料は、リチウム源の他に、さらにM1を含む原料およびM2を含む原料を含むことが好ましい。
1を含む原料において、M1はMn、Ni、Co、Mg、Fe、AlおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を意味する。したがって、M1を含む原料としては、Mn、Ni、Co、Mg、Fe、AlおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物を用いることができる。
元素M1はMnを含むことが好ましく、MnおよびAlを含むことがより好ましい。
1を含む原料はマンガン源を含むことが好ましい。
マンガン源としては、マンガン原子を含む無機または有機の化合物(すなわち、マンガン化合物)を用いることができる。例えば、酸化マンガン、炭酸マンガン、炭酸マンガン水和物、水酸化マンガン、オキシ水酸化マンガンを用いることができる。これらの中でも酸化マンガンを用いることが好ましく、Mn34を用いることがより好ましい。工業原料として安価に入手でき、さらに、より容量維持率が高いリチウムイオン二次電池が得られる傾向があるからである。
1を含む原料としては、例えば、塩基性炭酸ニッケル、塩基性炭酸コバルト、マグネシア、ヘマタイト、アルミナ、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、酸化クロムなどを用いることができる。これらの中でもAlを含む化合物を用いることが好ましく、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)をより好ましく用いることができる。また、前記アルミナは格別に制限されるものではないが、例えば、αアルミナ、βアルミナ、γアルミナなどの無水アルミナ、アルミナ水和物(ベーマイト等)を挙げることができる。工業的に安価に入手でき、M1がMnを含む場合に結晶構造中のMnとの置換が比較的起こりやすく、より容量維持率が高いリチウムイオン二次電池が得られる傾向があるからである。
2を含む原料において、M2はB、P、Pb、Sb、SiおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を意味する。したがって、M2を含む原料としては、B、P、Pb、Sb、SiおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物を用いることができる。
元素M2はBおよび/またはVを含むことが好ましい。
元素M2がBである場合、そのようなマンガン酸リチウムを調製するために使用するM2を含む原料は、ホウ素を含む限り格別に制限されるものではない。例えば、含ホウ素酸化物、含ホウ素複合酸化物、含ホウ素酸、含ホウ素水素化物、含ホウ素窒素化合物、含ホウ素ハロゲン化物、含ホウ素硫化物、含ホウ素炭化物などを挙げることができる。このうち特にホウ酸(H3BO3)、三酸化二ホウ酸(B23)、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸リチウム、フッ化ホウ酸などを用いることができ、ホウ酸(H3BO3)を用いることが特に好ましい。工業原料として安価に入手できるからである。また、元素M2がBとなる原料を投入した場合、後に焼成する際の焼結性が高まり、粒子径が成長し、得られるリチウムイオン二次電池の容量維持率の向上に寄与するものと、本発明者は推定している。
2を含む原料としては、P25、PbO、Sb23、SiO2またはV25などを用いることができる。
本発明の製造装置を用い、本発明の製造方法によってスピネル型のリチウム複合酸化物を得る場合、M2を含む原料は、後述する焼成の際に、スピネル結晶の生成および成長を促進させる傾向がある。すなわち、スピネル結晶の生成過程で元素M2の酸化物が融剤として作用して、結晶の生成および成長を促進し、さらに結晶子の集合体である一次粒子の成長を促進すると考えられる。その結果、比表面積が小さく、きわめて緻密なリチウム複合酸化物を得ることができると考えられる。
本発明の製造装置において用いる原料は、少なくとも一部が固体の原料であるが、上記のリチウム源、M1を含む原料およびM2を含む原料からなる群から選ばれる少なくとも1以上が固体の原料であることが好ましい。例えば、リチウム源が液状原料であり、M1を含む原料(マンガン源等)が固体原料である場合、各部(各装置)または配管内において固体原料であるM1を含む原料(マンガン源等)が沈降する傾向があるため、スラリーにおいてリチウム源とM1を含む原料(マンガン源等)との均一性が保持し難いが、本発明の製造装置を用いると、固体原料であるM1を含む原料(マンガン源等)は沈降し難いため、組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物が得られる。
溶媒に含有させる際に、上記のようなリチウム源、M1を含む原料およびM2を含む原料の比率は、後述する式(I)で表される組成のリチウム複合酸化物が得られるように調整することが好ましい。
溶媒について説明する。
リチウム源、好ましくはさらにM1を含む原料およびM2を含む原料を含有させる溶媒は特に限定されず、例えば従来公知の溶媒、例えば水(純水等)、エタノール、アセトンなどを用いることができるが、水を用いることが好ましい。
また、これらの原料は、溶媒中の固形分濃度が好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは25〜40質量%となるように含有させる。
本発明の製造方法における懸濁工程は、前記原料を前記溶媒に含有させて撹拌混合して、スラリーを得る工程である。
<湿式粉砕部および湿式粉砕工程>
本発明の製造装置が有する湿式粉砕部および本発明の製造方法が備える湿式粉砕工程について説明する。
本発明の製造装置において湿式粉砕部は、前記懸濁部において調整したスラリーを受け入れ、これを湿式で粉砕してスラリーを排出することができるものであれば特に限定されない。例えば、前記懸濁部と配管で繋がれていて、ポンプの作用によって、この配管を通じてスラリーが送液可能に構成されている、ビーズミル等を用いた湿式微粉砕機が挙げられる。また、湿式粉砕部は、粉砕して排出したスラリーを再度受け入れ、所望の粒径になるまで複数回、粉砕する構成を備えることが好ましい。また、湿式粉砕部は、ここから排出されたスラリーのうち、粒子径が所定の大きさ以上の固形分を含むものは再度、湿式粉砕部に戻って粉砕され、所定の大きさ以下の固形分を含むスラリーのみが系外へ排出される回路になっていてもよい。
本発明の製造方法における湿式粉砕工程は、このような本発明の製造装置における湿式粉砕部を用いて、スラリーを粉砕混合して行うことができる。
また、この湿式粉砕は、固形分の平均粒子径(D50)が0.50μm以下であるスラリーが得られるまで行うことが好ましい。この平均粒子径は0.45μm以下であることが好ましく、0.40μm以下であることがより好ましい。また、平均粒子径は0.10μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であることがより好ましい。
平均粒子径がこのような範囲となるように粉砕すると、組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物を製造できるからである。また、後述する乾燥工程においてスラリーを乾燥する際に、スラリーの噴出部(アトマイザー)が詰まり難く、安定した操業を行うことができるからである。
なお、スラリー中の固形分の平均粒子径(D50)は、室温大気中で、スラリーにヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を添加し、超音波分散および撹拌によって分散させ、このスラリーを30〜60%の透過率となるように調節し、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて積算粒度分布(体積基準)を測定し、その粒度分布から求めたメジアン径を意味するものとする。
また、この湿式粉砕は、固形分における最大粒子径(Dmax)が5μm以下であるスラリーが得られるまで行うことが好ましい。このDmaxの粒子径は4μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。得られるリチウムイオン二次電池における常温よりも高温での容量維持率が高くなる傾向があるからである。
なお、スラリー中の固形分のDmaxの粒子径は、室温大気中で、スラリーにヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を添加し、超音波分散および撹拌によって分散させ、このスラリーを30〜60%の透過率となるように調節し、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて積算粒径分布(体積基準)を測定し、その積算粒度分布における最大粒径を意味するものとする。
<濃度調整部および濃度調整工程>
本発明の製造装置は、前記湿式粉砕部と前記貯留部との間に濃度調整部を有することが好ましい。濃度調整部は、前記湿式粉砕部から排出された粉砕後のスラリーを受け入れ、受け入れたスラリーの固形分濃度を調整した後、固形分濃度を調整したスラリーを貯留部に送ることができるものである。
また、本発明の製造方法は、湿式粉砕工程と貯留工程との間に、濃度調整工程を備えることが好ましい。濃度調整工程は、湿式粉砕工程によって得られた粉砕後のスラリーの固形分濃度を調整する工程である。その後、固形分濃度を調整したスラリーを貯留工程に供することができる。
本発明の製造装置が有することが好ましい濃度調整部および本発明の製造方法が備えることが好ましい濃度調整工程について説明する。
本発明の製造装置において濃度調整部は、前記湿式粉砕部から排出された粉砕後のスラリーを受け入れて水等の溶媒を添加して固形分濃度を調整できるものであれば特に限定されない。例えば、タンク等の槽状のものであって、ここへ湿式粉砕部から排出された粉砕後のスラリーを、前記湿式粉砕部と繋がる配管を通じて流し込み、必要に応じて水等の溶媒を添加できるものが挙げられる。さらに、回転速度を調整できるスクリュー等の撹拌手段を備えるものであると、スラリーにおける固形分濃度等を均一化することができるので好ましい。
本発明の製造方法における濃度調整工程は、このような本発明の製造装置における濃度調整部を用いて行うことができる。具体的には、湿式粉砕部から排出された粉砕後のスラリーを槽状の貯留部へ流し込み、必要に応じて水等の溶媒を添加し、これらを撹拌混合する。
後述する乾燥工程において、固形分濃度が15〜35質量%であることが好ましいので、濃度調整工程においてこの範囲に固形分濃度を調整することが好ましい。この固形分濃度は20〜30質量%であることがより好ましい。固形分濃度がこのような範囲となるように調整すると、組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物を製造できるので好ましい。また、後述する乾燥工程においてスラリーを乾燥する際に、スラリーの噴出部(アトマイザー)が詰まり難く、安定した操業を行うことができるので好ましい。
<貯留部および貯留工程>
本発明の製造装置が有する貯留部および本発明の製造方法が備える貯留工程について説明する。
本発明の製造装置において貯留部は、前記湿式粉砕部から排出された粉砕後のスラリー(本発明の製造装置が濃度調整部を有する場合は、濃度調整部において濃度調整された後のスラリー)を貯留し、固形分濃度が均一となるように撹拌できる撹拌手段を備えるものであれば特に限定されない。例えば、湿式粉砕部(または濃度調整部)と繋がる配管を備える、タンク等の槽状のものであって、湿式粉砕部(または濃度調整部)と繋がる配管を通じて、湿式粉砕部から排出された粉砕後のスラリーを受け入れ、槽内において撹拌しながら、後述する特定の配管を通じてスラリーを乾燥部へ送液できるものが挙げられる。スラリーを撹拌する手段としては、回転速度を調整できるスクリュー等を用いることができる。
本発明の製造方法における貯留工程は、このような本発明の製造装置における貯留部を用いて行うことができる。具体的には、湿式粉砕部から排出された粉砕後のスラリー(本発明の製造方法が濃度調整工程を備える場合は、濃度調整工程において濃度調整された後のスラリー)を槽状の貯留部へ流し込み、これらを撹拌混合する。
ここでスクリュー等を用いてスラリーを撹拌する場合、50rpm以上の撹拌速度で撹拌することが好ましい。この撹拌速度は65rpm以上であることが好ましく、80rpm以上であることがさらに好ましい。また、200rpm以下であることが好ましく、150rpm以下であることがさらに好ましい。このような範囲の撹拌速度で撹拌すると、スラリーの固形分濃度がより均一化して、組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物を製造できるからである。
<貯留部から乾燥部までを繋ぐ配管>
前記貯留部から前記乾燥部までは、スラリーを送液するための配管で繋がれており、ポンプ等の作用によって、この配管を通じて、貯留部に貯留されたスラリーは、乾燥部まで送られる。
そして、その配管は、前記貯留部側から順に、前記貯留部と繋がり水平方向に伸びる第1水平部L1と、それと繋がり垂直上方向に延びる第1垂直部L2と、それと繋がり水平方向に伸びる第2水平部L3と、それと繋がり垂直下方向に延びる第2垂直部L4とを有している。
また、この配管は、前記貯留部側から順に、前記貯留部と繋がり水平方向に伸びる第1水平部L1と、それと繋がり垂直上方向に延びる第1垂直部L2と、それと繋がり水平方向に伸びる第2水平部L3と、それと繋がり乾燥部との境界まで垂直下方向に延びる第2垂直部L4とを有することが好ましい。ここで、後述するように乾燥部はアトマイザーを備える噴霧乾燥機であることが好ましく、第2水平部L3と繋がりアトマイザーとの境界まで垂直下方向に延びる部分が、前記配管における第2垂直部L4であることが好ましい。
図1は、前記配管の好ましい態様を示す概略断面図である。図1において前記配管は、前記貯留部側から順に、第1水平部L1、第1垂直部L2、第2水平部L3および第2垂直部L4からなる。ここで、第1水平部L1は、前記貯留部から水平方向に伸びる部分である。また、第1垂直部L2は、第1水平部L1と、第1水平部L1における前記貯留部と繋がっていない端部において繋がっていて、垂直上方向に延びている。また、第2水平部L3は、第1垂直部L2と、第1垂直部L2における前記第1水平部L1と繋がっていない端部において繋がっていて、水平方向に伸びている。また、第2垂直部L4は、第2水平部L3と、第2水平部L3における前記第1垂直部L2と繋がっていない端部において繋がっていて、垂直下方向に延びている。そして、第2水平部L3はスプレードライヤーにおけるアトマイザーの入口(境界)まで延びている。
ここで図1に例示した態様のものは、各部の長手方向は直線をなしており、第1水平部L1と第1垂直部L2とがなす角、第1垂直部L2と第2水平部L3とがなす角、第2水平部L3と第2垂直部L4とがなす角は略直角であるので、各部の境界は明確である。例えば、配管が金属のような変形し難い材質からなるものである場合は、このような態様となり得る。
これに対して、配管が、例えばチューブホースのような変形し得るものである場合は、図2に例示するように各部は蛇行しやすく、第1水平部L1と第1垂直部L2とがなす角、第1垂直部L2と第2水平部L3とがなす角、第2水平部L3と第2垂直部L4とがなす角は直角になり難い。このような図2に例示したような態様の場合、第1水平部L1は、前記貯留部から水平方向に伸びる部分とし、その長さは配管の長手方向の長さを意味するものとする。また、第1垂直部L2と第2水平部L3との境界(境界P1)および第2水平部L3と第2垂直部L4との境界(境界P2)を、配管の長手方向が水平に対して45度をなす箇所と定義する。そして、第1垂直部L2は、第1水平部L1との境界から境界P1までの配管の長手方向の長さを意味するものとする。また、第2水平部L3は、境界P1から境界P2までの配管の長手方向の長さを意味するものとする。また、第2垂直部L4は、境界P2から乾燥部との境界(図2においてはアトマイザーの入口)までの配管の長手方向の長さを意味するものとする。
また、図1および図2に例示した態様のように、配管が途中で枝分かれしている場合、各配管について上記のような定義に基づいて長さを求め、最も長い長さを、各部における長さとする。
前記貯留部から前記乾燥部までを繋ぐ配管が上記のような第1水平部L1、第1垂直部L2、第2水平部L3および第2垂直部L4を含み、さらに配管全長が7.0m以内である本発明の製造装置によると、組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物を製造できることを、本発明者は見出した。また、このようなリチウム複合酸化物を用いて製造したリチウムイオン二次電池は、充放電容量等の品質がより均一なものであることを、本発明者は見出した。
また、本発明の製造装置は、前記配管が第1垂直部L2および第2垂直部L4を含むことを主な理由として、貯留部から乾燥部までスラリーを安定して供給することができる。これらの垂直部が存在しない従来の場合、いわゆる液切れが生じやすく、スラリーの安定供給は困難である。本発明の製造装置は液切れが起き難いため、乾燥部において安定して乾燥処理を行うことができるため、結果として品質が安定したリチウム複合酸化物を得ることができる。
また、本発明の製造装置が乾燥部としてアトマイザーを備える噴霧乾燥機を用いる場合に、前記配管が第1垂直部L2および第2垂直部L4を含むことを主な理由として、アトマイザーから配管内へ空気が逆流し難いため、安定して操業することができる。第1垂直部L2および第2垂直部L4を含まない従来の装置の場合、アトマイザーから配管へ空気が逆流するので、得られるリチウム複合酸化物の品質が不安定になりやすく、また、操業を継続し難くなる場合があった。
前記配管の全長は7.0m以内であるが、第1水平部L1の配管の長手方向の長さが1.0〜15.0m、第1垂直部L2の配管の長手方向の長さが0.05〜2.0m、第2水平部L3の配管の長手方向の長さが0.2〜3.0m、第2垂直部L4の配管の長手方向の長さが0.2〜3.0mであると、組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物を製造でき、その結果、このようなリチウム複合酸化物を用いて製造したリチウムイオン二次電池は、充放電容量等の品質がより均一なものになるのでより好ましい。
第1水平部L1の配管の長手方向の長さは、2.0m以上であることが好ましく、3.0m以上であることがより好ましく、4.0m以上であることがさらに好ましい。また、第1水平部L1の配管の長手方向の長さは、10.0m以下であることが好ましく、8.0m以下であることがより好ましく、6.0m以下であることがさらに好ましい。
第1垂直部L2の配管の長手方向の長さは、0.1m以上であることが好ましく、0.20m以上であることがより好ましく、0.25m以上であることがさらに好ましい。また、第1垂直部L2の配管の長手方向の長さは、1.5m以下であることが好ましく、1.0m以下であることがより好ましく、0.5m以下であることがさらに好ましい。
第2水平部L3の配管の長手方向の長さは、0.3m以上であることが好ましく、0.0.4m以上であることがより好ましく、0.5m以上であることがさらに好ましい。また、第2水平部L3の配管の長手方向の長さは、2.0m以下であることが好ましく、1.0m以下であることがより好ましく、0.8m以下であることがさらに好ましい。
第2垂直部L4の配管の長手方向の長さは、0.3m以上であることが好ましく、0.0.4m以上であることがより好ましく、0.5m以上であることがさらに好ましい。また、第2垂直部L4の配管の長手方向の長さは、2.0m以下であることが好ましく、1.0m以下であることがより好ましく、0.8m以下であることがさらに好ましい。
組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物を製造でき、その結果、このようなリチウム複合酸化物を用いて製造したリチウムイオン二次電池は、充放電容量等の品質がより均一なものになるのでより好ましい。
また、前記配管の断面直径が10〜50mmであることが好ましく、15〜35mmであることがより好ましく、20〜30mmであることがさらに好ましい。組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物を製造でき、その結果、このようなリチウム複合酸化物を用いて製造したリチウムイオン二次電池は、充放電容量等の品質がより均一なものになるからである。
本発明の製造方法では、このような配管を流れるスラリーの流速が3〜20L/minとなるように調整することが好ましい。この流速は4〜10L/minであることがより好ましく、5〜8L/minであることがさらに好ましい。
組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物を製造できる傾向があり、その結果、このようなリチウム複合酸化物を用いて、充放電容量等の品質がより均一なリチウムイオン二次電池が得られる傾向があるからである。
本発明の製造方法では、このような配管を流れるスラリーの線速度が5〜33m/minとなるように調整することが好ましい。この線速度は7〜17m/minであることがより好ましく、8〜13m/minであることがさらに好ましい。
組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物を製造できる傾向があり、その結果、このようなリチウム複合酸化物を用いて、充放電容量等の品質がより均一なリチウムイオン二次電池が得られる傾向があるからである。
<乾燥部および乾燥工程>
本発明の製造装置が有する乾燥部および本発明の製造方法が備える乾燥工程について説明する。
本発明の製造装置において乾燥部は、前記配管を通じて、前記貯留部からスラリーを受け入れ、これを乾燥して前駆体を形成する。乾燥部はバンド乾燥機、棚型乾燥機などの乾燥機であってよいが、噴霧乾燥機であることが好ましい。噴霧乾燥とは、スラリーを噴霧し、霧状とした後または霧状としながら、乾燥することである。噴霧乾燥機は、所望の条件で噴霧乾燥して、得られる前駆体の粒子径を所望の範囲内に調整することができるものである。
噴霧乾燥機は、高速回転するアトマイザーにスラリーを流入させることによってアトマイザーのスリットからスラリー成分の液滴を吐出させ、適当な乾燥ガス温度や送風量に調節して飛散した液滴を迅速に乾燥させる構成を備えるものであることが好ましい。このときスラリー流量は好ましくは0.5〜700kg/h、より好ましくは1〜600kg/h、さらに好ましくは300〜550kg/h、アトマイザ回転数は好ましくは10,000〜30,000rpm、より好ましくは17,000〜25,000rpm、さらに好ましくは19,000〜23,000rpmとする。飛散した液滴を迅速に乾燥させるように、適当な温度や送風等の処理が施されるが、乾燥塔上部から下部に向かいダウンフローで乾燥ガスを導入することが好ましい。
噴霧乾燥機はアトマイザーを備えるスプレードライヤーであることが好ましい。また、スプレードライヤーの乾燥用熱風の入口温度を好ましくは60〜500℃、より好ましくは250〜450℃、さらに好ましくは300〜400℃、出口温度を好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは130〜160℃とする。
本発明の製造方法における乾燥工程は、このような本発明の製造装置における乾燥部を用いて行うことができる。
なお、乾燥工程において乾燥するスラリーの固形分濃度は15〜35質量%であることが好ましいので、前工程においてこのような固形分濃度となるように調整することが好ましい。よって、前述の濃度調整工程においてこの範囲に固形分濃度を調整することが好ましい。
この固形分濃度は20〜30質量%であることがより好ましい。固形分濃度がこのような範囲となるように調整すると、組成や粒度分布等の品質がより均一なリチウム複合酸化物を製造できるので好ましい。また、後述する乾燥工程においてスラリーを乾燥する際に、スラリーの噴出部(アトマイザー)が詰まり難く、安定した操業を行うことができるので好ましい。
<焼成部および焼成工程>
本発明の製造装置が有する焼成部および本発明の製造方法が備える焼成工程について説明する。
本発明の製造装置において焼成部は、前記前駆体を受け入れて、これを酸素含有雰囲気中で焼成することができるものであれば特に限定されない。例えば従来公知の焼成炉、具体的にはトンネル炉、マッフル炉、ロータリーキルン等を用いることができる。
本発明の製造方法における焼成工程は、このような本発明の製造装置における焼成部を用いて行うことができる。
前記前駆体を焼成する温度である焼成温度は600〜1200℃であることが好ましい。この焼成温度は650℃以上であることが好ましく、700℃以上であることが好ましく、750℃以上であることがより好ましく、780℃以上であることがより好ましく、800℃以上であることがより好ましく、850℃以上であることがさらに好ましい。
一次粒子の成長(径の増大)が促進され、活物質中のLiの溶出が抑制され、常温よりも高温でのサイクル特性が向上する傾向があるからである。
また、この焼成温度は950℃以下であることが好ましく、900℃以下であることがより好ましく、870℃以下であることがより好ましく、850℃以下であることがより好ましく、830℃以下であることがより好ましく、800℃以下であることがさらに好ましい。
焼成温度が高すぎると、結晶構造中から酸素が離脱する可能性があり、その場合、電池性能が低下する傾向があるからである。
このような焼成温度で前記前駆体を焼成する時間である焼成時間は8時間以下であることが好ましく、7時間以下であることがより好ましく、4時間以下であることがより好ましく、2.5時間以下であることがより好ましく、1時間以下であることがさらに好ましい。
焼成時間が長すぎると、結晶構造中から酸素が離脱したり、粒子間の焼結により酸素欠損したりする可能性があり、その場合、電池性能が低下する傾向があるからである。
また、焼成時間は0.1時間以上であることが好ましく、0.5時間以上であることがより好ましく、1.0時間以上であることがより好ましく、1.5時間以上であることがさらに好ましい。
一次粒子の成長(径の増大)が促進され、活物質中の未反応Li量が低減され、常温よりも高温でのサイクル特性が向上する傾向があるからである。
このような本発明の製造装置を用いた本発明の製造方法によって、下記式(I)で表されるリチウム複合酸化物を得ることができる。
式(I):Li(x+y)1 (2-y-p)2 p(4-a)
式(I)において、M1はMn、Ni、Co、Mg、Fe、AlおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、M2はB、P、Pb、Sb、SiおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、1.0≦x≦2.0、0≦y≦0.2、0≦p≦1.0、0≦a≦1.0である。
このようなリチウム複合酸化物を、以下では「本発明の複合酸化物」ともいう。
<本発明の複合酸化物>
本発明の複合酸化物について説明する。
本発明の複合酸化物には、スピネル型リチウム複合酸化物、層状岩塩型リチウム複合酸化物および逆スピネル型リチウム複合酸化物が含まれる。
本発明の複合酸化物は、これらの中の複数種類のリチウム複合酸化物を含むものであってよい。
本発明の複合酸化物は、スピネル型リチウム複合酸化物であることが好ましい。
スピネル型リチウム複合酸化物とは、立方晶系の構造を備え、空間群Fd−3mの対称性を有するものである。理想的な構造では、アニオンであるO(酸素)が立方最密充填し、その隙間にカチオンが充填されていると考えられる。
また、従来、作動電位が5Vレベルと高い5V型または5V級と呼ばれる場合がある置換型のスピネル型リチウム複合酸化物も、本発明の複合酸化物に含まれるものとする。
層状岩塩型リチウム複合酸化物とは、α−NaFeO2型(空間群R−3m)とも呼ばれる、酸化物イオンが六方晶構造をとり、立方最密充填となっていると考えられるものである。層状岩塩型リチウム複合酸化物として、具体的には、LiNi0.5Co0.2Mn0.32、LiMn0.5Ni0.52、LiMn1/3Ni1/3Co1/32、Li4/32/32(ここでMは本発明の複合酸化物におけるM1およびM2からなる群から選ばれる少なくとも1つ。)が例示される。
また、LiCoO2やLiNiO2をベースとする固溶体化合物も、本発明の複合酸化物に含まれるものする。この固溶体化合物には、LiNi0.5Mn0.52、LiNi1/3Mn1/3Co1/32等が含まれる。LiNi0.5Mn0.52、LiNi1/3Mn1/3Co1/32の固溶体化合物は、空間群R−3mとも呼ばれる酸化物イオンが六方晶構造をとり、立方最密充填となっていると考えられる。また、固溶体化合物として、γLi4/32/32・(1−γ)LiMO2(0<γ<1。ここでMは本発明の複合酸化物におけるM1およびM2からなる群から選ばれる少なくとも1つ。)の態様のものが含まれるとする。
逆スピネル型リチウム複合酸化物とは、空間群Fd−3mをとり、LiAMB4(ここでMは遷移元素)の一般式において、Aが四面体サイト、M(遷移元素)とリチウムがランダムに八面体サイトを占める構造を備えるものである。
式(I)について説明する。
式(I)においてxは、1.0≦x≦2.0の範囲であるが、1.0≦x≦1.2であることが好ましく、1.0≦x≦1.1であることがより好ましく、x=1.0であることがさらに好ましい。xが1.0に近いほどリチウム複合酸化物はスピネル型に近い。xが2.0に近いほどリチウム複合酸化物は層状岩塩型に近い。
式(I)においてyは、0≦y≦0.2の範囲であるが、0<y≦0.2であることが好ましく、0.03≦y≦0.15であることがより好ましい。
yは、M1と置換しているLi量を意味する。本発明の複合酸化物はM1の一部がLiと置換していることが好ましい。すなわち、リチウムイオン電池の正極活物質として用いられるリチウム複合酸化物の組成式におけるLiの原子数(組成比)の理論値より過剰のLiが含まれていることが好ましい。この場合、過剰のLiの一部または全部に見合う分だけM1量を少なくすることにより、Liの少なくとも一部がM1と置換した構造をとる。
Liの置換量(y)が多くなると、電池の充放電容量は若干低下するものの、常温よりも高温でのサイクル特性が向上する傾向がある。しかしながら、yが0.2より大きくなっても常温よりも高温でのサイクル特性は大きくは向上し難い傾向がある。また、Li総量(x+y)が1.0未満になると不純物となる異相が生成され、電池の充放電性能が低下する傾向がある。
式(I)において、M1はMn、Ni、Co、Mg、Fe、AlおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、Mnおよび/またはAlを含むことが好ましい。
1の存在量である2−y−pは0よりも大きい。2−y−pの下限は0.66であることが好ましく、0.8であることがより好ましい。2−y−pが小さすぎると容量が保持でき難いからである。
また、2−y−pの上限は2.0であるが、1.95であることが好ましく、1.90であることがより好ましい。2−y−pが大きすぎるとサイクル特性が劣化するからである。
1がMnを含む場合、式(I)は次のような式(I−1)と表すことができる。
式(I−1):Li(x+y)Mn(2-y-p-r)11 r2 p(4-a)
式(I−1)においてM11はM1におけるMn以外の元素、すなわち、Ni、Co、Mg、Fe、AlおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、rはM11の置換量を意味し、0≦r≦2.0である。
また、0<2−y−p−rとする。2−y−p−rの好ましい上限と好ましい下限については、前述の2−y−pの場合と同様である。
11の置換量であるr(M11として複数種類の元素を含む場合は、それらの合計)は好ましくは0≦r≦1.0、より好ましくは0.02≦r≦0.2、さらに好ましくは0.1程度である。正極活物質として用いたときに、一定の放電容量を確保し、常温よりも高温でのサイクル特性を維持することができるからである。なお、M11の置換量が多くなり過ぎると、正極活物質として用いたときの電池の常温よりも高温でのサイクル特性は向上するものの、電池の放電容量が低下してしまう場合がある。
式(I)において、元素M2はB、P、Pb、Sb、SiおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素である。これらの中で好ましい元素はBおよび/またはVである。
2の置換量であるp(M2として複数種類の元素を含む場合は、それらの合計)は0≦p≦1.0であり、上限は0.1であることが好ましく、0.05であることがより好ましい。正極活物質として用いたときに、常温よりも高温でのサイクル特性が向上する傾向があるからである。置換量pが高すぎると正極活物質として用いたときのリチウムイオン二次電池の放電容量が低下する傾向がある。
なお、pは0となる場合がある。この場合、式(I)で表されるリチウム複合酸化物はM2を含まない。すなわち、式(I)で表されるリチウム複合酸化物は、Li(x+y)1 (2-y)(4-a)で表される組成となる場合もある。
式(I)において、aはO(酸素)の欠損量を示している。
式(I)においてaは0≦a≦1.0を満たし、a=0であることが好ましい。
酸素欠損量が小さいと(すなわちaが小さいと)充放電試験における3.2V以下容量が小さくなる傾向がある。酸素欠損量が小さいと結晶構造が安定し、常温よりも高温でのサイクル特性が向上する傾向がある。
本発明の複合酸化物はスピネル型リチウム複合酸化物であることが好ましい。この場合、本発明の複合酸化物は下記式(I−2)で表されるものであることが好ましい。
式(I−2):Li(1+y)1 (2-y-p)2 p(4-a)
式(I−2)は、式(I)におけるxが1の場合に相当する。
また、本発明の複合酸化物はMnを含むスピネル型リチウム複合酸化物であることが好ましい。この場合、本発明の複合酸化物は下記式(I−3)で表されるものであることが好ましい。
式(I−3):Li(1+y)Mn(2-y-p-r)11 r2 p(4-a)
式(I−3)は、式(I−1)におけるxが1の場合に相当する。
式(I−3)におけるM11およびrは、式(I−1)におけるM11およびrと同様である。また、式(I−1)の場合と同様に、0<2−y−p−rとする。2−y−p−rの好ましい上限と好ましい下限については、前述の2−y−pの場合と同様である。
本発明の複合酸化物が層状岩塩型リチウム複合酸化物である場合、本発明の複合酸化物は下記式(I−4)で表されるものであることが好ましい。
式(I−4):Li(2+y)1 (2-y-p)2 p(4-a)
式(I−4)は、式(I)におけるxが2の場合に相当する。
式(I−4)は、下記式(I−5)と表すことができる。
式(I−5):Li(1+z)1 (1-z-q)2 q(2-b)
ここで0≦z≦0.34、0≦q≦1.0、0≦b≦1.0である。
式(I−5)においてzは、0≦z≦0.34の範囲であるが、0<z≦(1/3)であることがより好ましく、0.05≦z≦0.15であることがより好ましい。
zは、M1と置換しているLi量を意味する。本発明の複合酸化物が式(I−5)で表される場合、M1の一部がLiと置換していることが好ましい。すなわち、リチウムイオン電池の正極活物質として用いられるリチウム複合酸化物の組成式におけるLiの原子数(組成比)の理論値より過剰のLiが含まれていることが好ましい。この場合、過剰のLiの一部または全部に見合う分だけM1量を少なくすることにより、Liの少なくとも一部がM1と置換した構造をとる。
Liの置換量(z)が多くなると、電池の充放電容量は若干低下するものの、常温よりも高温でのサイクル特性が向上する傾向がある。しかしながら、zが0.34より大きくなっても常温よりも高温でのサイクル特性は大きくは向上し難い傾向がある。また、Li総量(1+z)が1.0未満になると不純物となる異相が生成され、電池の充放電性能が低下する傾向がある。
1の存在量である1−z−qは0よりも大きい。1−z−qの下限は0.5であることが好ましく、0.66であることがより好ましい。1−z−qが小さすぎると容量が保持できないからである。
2の置換量であるq(M2として複数種類の元素を含む場合は、それらの合計)は0≦q≦1であり、上限は0.1であることが好ましく、0.05であることがより好ましい。正極活物質として用いたときに、常温よりも高温でのサイクル特性が向上する傾向があるからである。置換量qが高すぎると正極活物質として用いたときのリチウムイオン二次電池の放電容量が低下する傾向がある。
なお、qは0となる場合がある。この場合、式(I−5)で表されるリチウム複合酸化物はM2を含まない。すなわち、式(I−5)で表されるリチウム複合酸化物は、Li(1+z)1 (1-z)(2-b)で表される組成となる場合もある。
一方、式(I−5)において0<1−z−qであるので、式(I−5)で表されるリチウム複合酸化物はM1を必ず含む。
式(I−5)において、bはO(酸素)の欠損量を示している。
式(I−5)においてbは0≦b≦1.0を満たし、b=0であることが好ましい。
酸素欠損量が小さいと(すなわちbが小さいと)充放電試験における3.2V以下容量が小さくなる傾向がある。酸素欠損量が小さいと結晶構造が安定し、常温よりも高温でのサイクル特性が向上する傾向がある。
本発明の複合酸化物は、二次粒子を構成要素とするものであることが好ましく、二次粒子の集合体であることがより好ましい。
ここで、結晶子(単結晶部)の集合体であり、5000倍のSEM観察において視認できる最少の粒子単位を一次粒子、また一次粒子が焼結してなる、ハンドリングにおいて一粒の粒子として振る舞う粒子を二次粒子と定義する。
本発明の複合酸化物は、一次粒子の平均粒子径が0.1〜5.0μmのものであることが好ましく、0.8〜2.5μmのものであることがより好ましく、1.2〜2.0μmのものであることがさらに好ましい。
ここで一次粒子の平均粒子径とは、前述の一次粒子(結晶子の集合体)のメジアン径を意味するものとする。
また、一次粒子のメジアン径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、本発明の複合酸化物を倍率5000倍で写真撮影し、得られた写真から任意に500個を選び、ノギスを用いて各々の投影面積円相当径を測定して積算粒度分布(体積基準)を求め、それより平均粒子径(メジアン径)を算出して求める値とする。
本発明の複合酸化物は、一次粒子の粒子径の標準偏差が0.001〜0.8μmのものであることが好ましく、0.001〜0.5μmのものであることがより好ましく、0.001〜0.4μmのものであることがさらに好ましい。
ここで一次粒子の標準偏差は、前述の一次粒子のメジアン径の場合と同様に、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、本発明の複合酸化物を倍率5000倍で写真撮影し、得られた写真から任意に500個を選び、ノギスを用いて各々の投影面積円相当径を測定して粒度分布(体積基準)を求め、それより標準偏差を算出して求める値とする。
本発明の複合酸化物は、二次粒子の平均粒子径が2〜30μmのものであることが好ましく、8〜20μmのものであることがより好ましく、14〜20μmのものであることがさらに好ましくい。
ここで二次粒子は、前述のように一次粒子が焼結してなるものである。
また、二次粒子の平均粒子径とは、二次粒子のメジアン径を意味するものとする。
また、二次粒子の平均粒子径は、次の方法で測定した値を意味するものとする。
初めに、室温大気中で、本発明の複合酸化物をヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に添加し、超音波分散し撹拌することで分散させてスラリーとする。次に、このスラリーを80〜90%の透過率となるように調節した後、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて積算粒度分布(体積基準)を測定する。このようにして測定した粒度分布から求めたメジアン径を、本発明の複合酸化物における二次粒子の平均粒子径とする。
本発明の複合酸化物はBET比表面積が0.1〜2.0m2/gのものであることが好ましく、0.2〜1.0m2/gのものであることがより好ましく、0.2〜0.4m2/gのものであることがさらに好ましくい。
BET比表面積は、連続流動法によるBET1点法測定で求める値とする。具体的には、使用する吸着ガスおよびキャリアガスは共に、窒素、空気およびヘリウムの混合ガスであり、試料を前記混合ガスにより450℃以下の温度で過熱脱気し、次いで液体窒素により冷却して前記混合ガスを吸着させ、室温に戻して吸着された窒素ガスを脱着させ、熱伝導度検出器によって検出し、脱着ピークとしてその量を求め、試料の比表面積として算出する。このようなBET比表面積は、公知のBET式粉体比表面積測定装置を用いて測定することができる。
本発明において、単に「比表面積」と記した場合、「BET比表面積」を意味するものとする。
また、本発明の複合酸化物を正極活物質として用いてなる二次電池の充電容量および放電容量は、90mAh/g以上、好ましくは100mAh/g以上、より好ましくは105mAh/g以上、さらに好ましくは106mAh/g以上となり得る。本発明の複合酸化物を正極活物質として用いてなる二次電池の充電容量および放電容量は、130〜107mAh/gであることが好ましい。
なお、本発明においてリチウムイオン二次電池の充電容量および放電容量(mAh/g)は、次のように測定するものとする。
本発明の複合酸化物を85質量%、アセチレンブラックを7.5質量%、ポリフッ化ビニリデンを7.5質量%の割合で秤量し、ノルマルメチルピロリドンに分散させて合剤を得る。そして、得られた合剤を約0.1mmの厚さとなるようにAl箔上に塗布して、約110℃で真空乾燥した後、14mmφのポンチを用いて打ち抜き、正極を作製する。まず、微粒子状のリチウム複合酸化物、導電材としてのアセチレンブラックおよびバインダーとしてのポリ四フッ化エチレンパウダーを、75:20:5の質量比で混合し、乳鉢で混練して正極用合剤を調製した。そして、この合剤を展伸ローラーで厚さ0.1mmのシートとし、16mmφに型抜きした後、110℃で真空乾燥して試験用正極を作成した。
次に、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比で1:1となるように混合して得た非水溶媒にLiPF6を添加して、LiPF6濃度が1mol/lの非水電解液を得た。
次に、得られた試験用正極をステンレス製容器に設置し、さらにセパレータとしてポリプロピレン不織布および負極として金属リチウム箔(厚さ0.2μm)を積層した後、上記の非水電解液を十分含浸させた後、ステンレス製の上部品で封止して、半開放のリチウム電池を得た。
また、本発明の複合酸化物を正極活物質として用いてなる二次電池の、常温よりも高い温度でのサイクル容量維持率は96.0%以上、好ましくは95.6%以上、より好ましくは97.0%以上、さらに好ましくは97.5%以上となり得る。
なお、本発明において二次電池の常温よりも高い温度でのサイクル容量維持率(%)は、次のように測定するものとする。
初めに、上記のリチウムイオン二次電池の初期放電容量(mAh/g)を測定する場合と同様の方法で試験用コインセルを作成する。
そして、得られたリチウム電池を60℃の恒温槽に設置し、0.5mA/cm2の定電流充電を上限4.3V、下限3.0Vで繰り返し行い、1サイクル目の放電容量(初期放電容量)に対する、100サイクル目の放電容量の割合(%)を、常温よりも高い温度でのサイクル容量維持率とする。
以上のような本発明の複合酸化物は、結晶が十分に成長しているので、これを正極活物質として用いた場合、電解液と接触したときに電解液中に溶解するLiの量が、従来のリチウム複合酸化物に比べて高温でも少なくなる。その結果、常温よりも高い温度でのサイクル特性の向上を図ることができると考えられる。
<本発明の正極活物質>
本発明の正極活物質について説明する。
本発明の正極活物質は、本発明の複合酸化物を用いた非水系電解質二次電池用正極活物質である。
本発明の正極活物質は、本発明の複合酸化物を80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、実質的に100質量%含む、すなわち本発明の複合酸化物からなることがさらに好ましい。
<本発明の正極およびその製造方法>
本発明の正極は、本発明の正極活物質を用いてなるものであれば、例えば従来公知の正極と同様の態様であってよい。例えば、本発明の正極活物質に必要に応じて導電助剤、結着剤などを添加し混合したものからなる層を集電体上に形成してなるものが挙げられる。具体的には、本発明の正極活物質に導電助剤、結着剤およびN−メチルピロリドンなどの有機溶媒を混練してインク(スラリー)を調製し、このインクを集電体のアルミ箔に塗布し乾燥した後、ローラープレス機にかけることにより得ることができる。ローラープレス機にかけることによって、正極活物質と集電体との接触を良くすると共に正極活物質の密度を高めることができる。また、本発明の正極活物質に導電助剤および結着剤を充分混合したのち、ローラープレスでシート状に成形して正極を得ることができる。
ここで、導電助剤として、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)やアセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料などが挙げられる。
また、結着剤として、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレンジエンゴム、フッ素ゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などが挙げられる。
また、集電体についても限定されず、例えば従来公知のネット状、シート状、フィルム状のものを用いることができる。
<本発明の二次電池>
本発明の二次電池について説明する。
本発明の二次電池は、正極として本発明の正極を用いること以外は、通常のリチウムイオン二次電池と同様の構成であってよく、円筒型、角型、コイン型、ボタン型などであってよい。すなわち、正極、負極および非水系電解質を主たる電池構成要素とし、これら要素が、例えば電池缶内に封入されている。正極および負極はそれぞれリチウムイオンの担持体として作用し、充電時には、リチウムイオンが負極中に吸蔵され、放電時には負極から離脱する。
負極は特に限定されず、例えば従来公知の負極と同様の態様であってよい。例えば、負極活物質としては、リチウムやリチウム−アルミニウムで代表されるリチウム合金を用いることができ、また、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などのリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出できる炭素系材料を用いることもできる。例えば集電体は、正極の場合と同様のものを用いることができる。
負極は、負極活物質がリチウムやリチウム合金の場合は、そのまま用いるか、あるいは集電体に圧着することによって製造することができる。また、負極活物質がリチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素系材料(グラファイト、カーボンブラックなど)の場合は、必要に応じて正極の場合と同様の結着剤を負極活物質に添加して混合し、溶剤を用いてペースト状にし、得られた負極合剤含有ペーストを銅箔などからなる負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、必要に応じて加圧成形する工程を経ることによって製造することができる。
非水系電解質としては有機系電解質、ポリマー電解質、固体電解質などを用いることができる。ここで、有機系電解質とはリチウム塩が非水溶媒に加えられたものであり、ポリマー電解質とは、リチウム塩が高分子化合物に加えられたものである。
ここで、リチウム塩としては、例えば、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li210Cl10、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252が挙げられる。これらの中でもLiBF4(四フッ化ホウ酸リチウム)は、電解質中に存在する水分との反応性がより低いので、安全性により優れ、サイクル特性、レート特性(高率放電特性)および初期特性などの優れたリチウム電池を得易い。
有機系電解質中のリチウム塩の濃度は0.1〜3.0mol/lが好ましく、0.2〜2.0mol/lがより好ましい。非水系電解質のイオン電導率が高くなり、非水系電解質中にリチウム塩が析出し難く、高性能な電池性能を備えるリチウム電池が得られるからである。
有機系電解質の非水溶媒としては、例えば従来公知のものを用いることができ、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネートおよびビニレンカーボネートの混合溶媒を好ましく使用することができる。エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンおよびプロピレンカーボネートは、誘電率が高いことから、イオン伝導を確実に起こすことができ、さらに、非水溶媒にビニレンカーボネートを含有させることにより、充電時において、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンおよびプロピレンカーボネートの分解を確実に抑制可能なビニレンカーボネート由来の皮膜を負極上に形成できるので、充電をより十分に行うことができる。
有機系電解質は、リチウム塩および非水溶媒の他に、さらに他の有機溶媒を含んでもよい。
非水系電解質をポリマー電解質とする場合には、可塑剤(非水電解液)でゲル化されたマトリクス高分子化合物を含むが、このマトリクス高分子化合物としては、ポリエチレンオキサイドやその架橋体などのエーテル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂などを単独、もしくは混合して用いることができる。
これらの中で、酸化還元安定性の観点などから、ポリビニリデンフルオライドやビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂を用いることが好ましい。
ポリマー電解質の作製は特に限定されないが、例えば、マトリックスを構成する高分子化合物、リチウム塩および溶媒を混合し、加熱して溶融・溶解する方法が挙げられる。また、混合用有機溶媒に、高分子化合物、リチウム塩、および溶媒を溶解させた後、混合用有機溶媒を蒸発させる方法、重合性モノマー、リチウム塩および溶媒を混合し、紫外線、電子線または分子線などを照射して、重合性モノマーを重合させ、ポリマーを得る方法などを挙げることができる。
ポリマー電解質中の溶媒の割合は10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。このような割合であると、導電率が高く、機械的強度が強く、フィルム化しやすい。
固体電解質としては、例えばリチウムイオンを含む酸化物系急冷ガラス、硫化物ベースのオキシスルフィド系超イオン伝導ガラスなどのガラス系固体電解質、ポリエーテルなどの高分子に、Li塩が溶解・分散した高分子固体電解質などが挙げられる。
また高分子固体電解質は、溶媒成分を含むゲル状であってもよい。
本発明の二次電池は、正極と負極とが直接接触することを防ぐセパレータを有することが好ましい。
セパレータは特に限定されず、例えば従来公知のものを用いることができ、例えば織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが挙げられる。合成樹脂製微多孔膜が好適であるが、なかでもポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗の面で好適である。具体的には、ポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜等である。
なお、非水系電解質として有機系電解質またはポリマー電解質を用いる場合、通常セパレータが使用されるが、固体電解質の場合、セパレータを使用せずに固体電解質をセパレータとしてもよい。
本発明の二次電池の製造方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法で製造することができる。例えば、リチウム電池用セパレータを介して本発明の正極と前記負極とを積層する前または積層した後に非水系電解質を注液し、最終的に、外装材で封止することによって製造することができる。外装材としては、例えば、ニッケルメッキした鉄、ステンレススチール、アルミニウム、金属箔を樹脂フィルムで挟み込んだ構成の金属樹脂複合フィルム等が挙げられる。
以下に本発明の実施例および比較例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
図3に示す装置Xを用意した。この装置Xは、上流側から順に、懸濁槽、湿式粉砕機、濃度調整槽、クッション槽、スプレードライヤーおよび焼成炉を備え、リチウム複合酸化物を製造できる装置である。
装置Xを構成する各要素について具体的に説明する。
装置Xが備える懸濁槽は1800Lのタンク型の槽である。ここへ所定量の純水を投入し、所定の撹拌速度で撹拌しながら原料を投入して、原料スラリーを調整することができる。
実施例1では、リチウム源としてLi2OH・H2O、マンガン源としてMnO2、アルミニウム源としてAl23、ホウ素源としてH3BO3を用意し、それぞれの原料を、最終的に得られるリチウム複合酸化物の組成がLi1.07Mn1.82Al0.100.014となり、かつ原料総質量が520kgとなるように秤量した。そして、懸濁槽へ純水821Lを投入し、54rpmで撹拌しながら、上記原料の全量を投入した。このとき、次式で示される固形分濃度は39質量%である。
固形分濃度=(原料総質量)/{(原料総質量)+(純水質量)}×100
装置Xが備える湿式粉砕機は、懸濁槽内で撹拌混合して得られた原料スラリーを湿式で粉砕して、粉砕後スラリーを得るものである。
実施例1では、湿式粉砕機によって、原料スラリーを、固形分の平均粒子径(メジアン径)が0.35μmである粉砕後スラリーが得られるまで粉砕した。
なお、粉砕後スラリー中の固形分の平均粒子径(メジアン径)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所:LA−950v2)を用いて求めた。具体的には室温大気中で、粉砕後スラリーにヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を添加し、超音波分散および撹拌によって分散させ、30〜60%の透過率となるように調節した後、上記の装置を用いて屈折率2.20の条件で積算粒度分布(体積基準)を測定して求めた。
装置Xが備える濃度調整槽は1800Lのタンク型の槽である。湿式粉砕機によって粉砕して得られた粉砕後スラリーへ水等を添加して濃度調整を行い、所定の固形分濃度の濃度調整後スラリーを得るものである。
実施例1では、湿式粉砕機から排出された粉砕後スラリーを濃度調整槽へ移送した後、濃度調整槽に純水を549L添加し、54rpmで撹拌混合して、固形分濃度が28質量%に調整された濃度調整後スラリーを得た。
装置Xが備えるクッション槽は2100Lのタンク型の槽である。濃度調整後スラリーを受け入れ、所定の撹拌速度で撹拌することで濃度調整後スラリーの濃度を一定に保持しながら、所定の供給速度で濃度調整後スラリーをスプレードライヤーへ送るものである。
実施例1では、クッション槽に1500Lの濃度調整後スラリーを貯留し、これを80rpmで撹拌した。そして、その撹拌を継続して濃度調整後スラリーの固形分濃度を一定に保持しながら、濃度調整後スラリーを7.1L/minでスプレードライヤーへ送った。その後、クッション槽内の濃度調整後スラリーが200Lまで減少したら、懸濁槽から1500Lの原料スラリーを排出し、これを湿式粉砕機で処理し、続いて濃度調整槽で処理し、クッション槽内のスラリーが1700L程度となるように調整する操作を繰り返し行った。
また、装置Xにおいてクッション槽からスプレードライヤーにおけるアトマイザーまでは、垂直断面の直径が1インチ、全長6.8mの配管で繋がれている。また、その配管は、クッション槽側から順に、クッション槽と繋がり水平方向に伸びる第1水平部L1と、それと繋がり垂直上方向に延びる第1垂直部L2と、それと繋がり水平方向に伸びる第2水平部L3と、それと繋がりアトマイザーとの境界まで垂直下方向に延びる第2垂直部L4とを有しており、各々の長さは次の通りである。
第1水平部L1:5.2m
第1垂直部L2:0.3m
第2水平部L3:0.7m
第2垂直部L4:0.6m
装置Xが備えるスプレードライヤーは、クッション槽から配管を通じて供給されたスラリーを噴霧乾燥して粒子状の前駆体を製造するものである。
実施例1では、スプレードライヤーとして、ディスク型スプレードライヤーを用いた。そして、このスプレードライヤーにおける噴霧乾燥は、都市ガスを燃焼させて加熱した乾燥ガス(空気)を用いた。また、乾燥ガスの入口温度は355℃に調整し、乾燥ガスの風量は65m3/min、アトマイザー回転数は21,000rpmとした。このような噴霧乾燥を行うことで、粒子状の前駆体を得た。
装置Xが備える焼成炉は、前駆体を所定の焼成温度で所定の焼成時間、調整して、焼成体としてのリチウム複合酸化物を製造するものである。
実施例1は、前駆体を850℃で6時間、空気中で焼成して目標組成のリチウム複合酸化物(以下「複合酸化物[1]」ともいう)を得た。
実施例1では上記のような操作によって169ロットの複合酸化物[1]のサンプルを作成した。そして、各々について、以下の方法によって平均粒子径、BET比表面積、格子定数、充電容量および放電容量を測定し、各々について平均値、標準偏差および変動係数を求めた。
結果を第1表に示す。
[平均粒子径]
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所:LA−950v2)を用いて、リチウム複合酸化物の平均粒子径を測定した。測定条件は以下の通りである。
初めに、室温大気中で、本発明の複合酸化物をヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に添加し、超音波分散し撹拌することで分散させてスラリーとした。次に、このスラリーを80〜90%の透過率となるように調節した後、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて積算粒度分布(体積比率)を測定し、平均粒子径としてメジアン径(D50)を求めた。
[BET比表面積]
全自動BET比表面積測定装置(マウンテック製:Macsorb HM model−1220)を用いて、リチウム複合酸化物のBET比表面積を測定した。
BET比表面積は、連続流動法によるBET1点法測定で求めた。具体的には、使用する吸着ガスおよびキャリアガスは共に、窒素、空気およびヘリウムの混合ガスであり、粉体試料を前記混合ガスにより450℃以下の温度で過熱脱気し、次いで液体窒素により冷却して前記混合ガスを吸着させ、室温に戻して吸着された窒素ガスを脱着させ、熱伝導度検出器によって検出し、脱着ピークとしてその量を求め、試料の比表面積として算出した。
[格子定数]
X線回折装置(株式会社リガク製「MultiFlex」を使用して、リチウム複合酸化物についてX線回折測定を行った。
その結果、リチウム複合酸化物は立方晶のスピネル構造を有していることがわかった。
また、15〜90degのX線回折パターンから最小二乗法により格子定数aを求めた。
測定結果を第1表に示す。
なお、X線回折における測定条件等は以下のとおりである。
TARGET:Cu
VOLTAGE&CURRENT:40kV,40mA
DETECTOR:SCINTILLATION COUNTER
SLITS:DS 1deg.、SS 1deg.、RS
0.15mm
SAMPLING:0.01deg.
FIXED TIME:1s
[充電容量および放電容量]
リチウム複合酸化物を正極活物質として用いて、リチウムイオン二次電池を作製し、充電容量および放電容量を測定した。
本発明の複合酸化物を85質量%、アセチレンブラックを7.5質量%、ポリフッ化ビニリデンを7.5質量%の割合で秤量し、ノルマルメチルピロリドンに分散させて合剤を得る。そして、得られた合剤を約0.1mmの厚さとなるようにAl箔上に塗布して、約110℃で真空乾燥した後、14mmφのポンチを用いて打ち抜き、正極を作製する。まず、微粒子状のリチウム複合酸化物、導電材としてのアセチレンブラックおよびバインダーとしてのポリ四フッ化エチレンパウダーを、75:20:5の質量比で混合し、乳鉢で混練して正極用合剤を調製した。そして、この合剤を展伸ローラーで厚さ0.1mmのシートとし、16mmφに型抜きした後、110℃で真空乾燥して試験用正極を作成した。
次に、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比で1:1となるように混合して得た非水溶媒にLiPF6を添加して、LiPF6濃度が1mol/lの非水電解液を得た。
次に、得られた試験用正極をステンレス製容器に設置し、さらにセパレータとしてポリプロピレン不織布および負極として金属リチウム箔(厚さ0.2μm)を積層した後、上記の非水電解液を十分含浸させた後、ステンレス製の上部品で封止して、半開放のリチウム電池を得た。
そして、定電流で0.5mA/cm2の電流密度、充電電位4.3Vまで、放電電位3.0Vまでの電位規制の条件で、充電容量および放電容量を測定した。
測定結果を第1表に示す。
<比較例1>
実施例1にて用いた装置Xにおけるクッション槽からスプレードライヤーにおけるアトマイザーまでを繋ぐ配管を、垂直断面の直径が1インチ、全長が28.6m、各部の長さが以下のような配管に変更した。
第1水平部L1:27.0m
第1垂直部L2:0.3m
第2水平部L3:0.7m
第2垂直部L4:0.6m
そして、それ以外は全て実施例1と同様の操作を行い、目標組成のリチウム複合酸化物(以下「複合酸化物[2]」ともいう)を169ロット作成し、これをサンプルとして、実施例1と同様の方法によって平均粒子径、BET比表面積、格子定数、充電容量および放電容量を測定し、各々について平均値、標準偏差および変動係数を求めた。
結果を第1表に示す。
Figure 0006125838
実施例1と比較例1と比較すると、平均粒子径、比表面積、格子定数、充電容量および放電容量のいずれにおいても、平均値は概ね同一であった。しかし、標準偏差および変動係数は実施例1の方が低くなった。すなわち、実施例1の方が、均一なものが得られていることが確認できた。
また、実施例1および比較例1のいずれの場合も、処理中にアトマイザーから空気が逆流することはなく処理を安定して継続することができた。これは実施例1および比較例1のいずれの場合も、クッション槽からスプレードライヤーにおけるアトマイザーまで繋がれている配管が、2つの所定長さの垂直部(第1垂直部L2および第2垂直部L4)を備えているためと考えられる。

Claims (12)

  1. リチウム源を含む、少なくとも一部が固体の原料を、溶媒に含有させた状態で粉砕混合し、得られたスラリーを乾燥し、焼成する、リチウム複合酸化物の製造装置であって、
    前記原料を受け入れてスラリー調整する懸濁部と、
    前記懸濁部において調整したスラリーを受け入れ、これを湿式で粉砕してスラリーを排出する湿式粉砕部と、
    前記湿式粉砕部から排出された粉砕後のスラリーを貯留する貯留部と、
    前記貯留部からスラリーを受け入れ、これを乾燥して前駆体を形成する乾燥部と、
    前記前駆体を受け入れ、これを焼成する焼成部と、
    を有し、
    前記貯留部から前記乾燥部までがスラリーを送液するための配管で繋がれていて、その配管は、前記貯留部側から順に、前記貯留部と繋がり水平方向に伸びる第1水平部L1と、それと繋がり垂直上方向に延びる第1垂直部L2と、それと繋がり水平方向に伸びる第2水平部L3と、それと繋がり垂直下方向に延びる第2垂直部L4と、を有しており、その配管の全長が7.0m以内である、リチウム複合酸化物の製造装置。
  2. 第1水平部L1の配管の長さが1.0〜6.0m
    第1垂直部L2の配管の長さが0.05〜2.0m、
    第2水平部L3の配管の長さが0.2〜3.0m、
    第2垂直部L4の配管の長さが0.2〜3.0mである、請求項1に記載のリチウム複合酸化物の製造装置。
  3. 前記配管の断面直径が10〜50mmである、請求項1または2に記載のリチウム複合酸化物の製造装置。
  4. さらに、前記湿式粉砕部と前記貯留部との間に濃度調整部を有し、
    前記湿式粉砕部から排出された粉砕後のスラリーを前記濃度調整部にて受け入れた後、受け入れたスラリーの固形分濃度を調整し、その後、固形分濃度を調整したスラリーを貯留部に貯留することができる、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム複合酸化物の製造装置。
  5. 前記乾燥部が、アトマイザーを備える噴霧乾燥機であり、
    前記配管における、第2水平部L3との境界からアトマイザーとの境界までが第2垂直部L4である、請求項1〜4のいずれかに記載のリチウム複合酸化物の製造装置。
  6. リチウム源を含む、少なくとも一部が固体の原料を、溶媒に含有させてスラリーを得る懸濁工程と、
    前記スラリーを粉砕混合する湿式粉砕工程と、
    前記湿式粉砕工程によって得られた粉砕後のスラリーを貯留する貯留工程と、
    前記貯留工程において貯留されているスラリーを乾燥して前駆体を得る乾燥工程と、
    前記前駆体を焼成して焼成体を得る焼成工程と、
    を備え、
    請求項1〜5のいずれかに記載のリチウム複合酸化物の製造装置を用いて行う、リチウム複合酸化物の製造方法。
  7. 下記式(I)で表されるリチウム複合酸化物が得られる、請求項6に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
    式(I):Li(x+y)1 (2-y-p)2 p(4-a)
    式(I)において、M1はMn、Ni、Co、Mg、Fe、AlおよびCrからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、M2はB、P、Pb、Sb、SiおよびVからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、1.0≦x≦2.0、0≦y≦0.2、0≦p≦1.0、0≦a≦1.0である。
  8. 前記乾燥工程において、固形分濃度が15〜35質量%であり、固形分の平均粒子径が0.5μm以下に調整されたスラリーを乾燥して前駆体を得る、請求項6または7に記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
  9. 前記貯留工程が、前記貯留部においてスラリーを50rpm以上の撹拌速度で撹拌して行う工程である、請求項6〜8のいずれかに記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
  10. 請求項6〜9のいずれかに記載の製造方法によってリチウム複合酸化物を得た後、それを用いて正極活物質を得る、正極活物質の製造方法。
  11. 請求項10に記載の製造方法によって正極活物質を得た後、それを用いてリチウムイオン二次電池用正極を得る、リチウムイオン二次電池用正極の製造方法。
  12. 請求項11に記載の製造方法によってリチウムイオン二次電池用正極を得た後、そのリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、電解液とを用いてリチウムイオン二次電池を得る、リチウムイオン二次電池の製造方法。
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