JP6124276B2 - 基体表面の親水性維持方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基体表面の防曇及び/又は防汚を長期間維持可能な新規な方法、並びに、長期防曇性又は長期防汚性を備える基体及びその製造方法に関する。
に関する。
ガラス板等の各種基体の表面が結露したり、又は、経時的に汚染されたりして、基体の視覚的又は物理的特性が劣化することがある。したがって、窓ガラス、照明器具等の用途においては、基体表面の結露及び/又は汚染をできるだけ長期間防止乃至低減することが望まれている。
従来、結露防止又は低減を目的として、結露の原因である水蒸気の凝縮が生じないように、基体を加熱したり、熱伝導を低下させる真空層を設けたり、断熱材を積層することが実施されている。しかし、基体が置かれる環境によっては基体の均一な加熱は困難であり、また、真空層の設置、断熱材の積層は、複雑な処理を必要とし、更に、基体表面付近の構成を複雑化させてしまう。
一方、汚染の防止又は低減を目的として、基体の表面に光触媒能を持たせること等が提案されている。しかし、室内等の太陽光を直接受けることのない環境下では十分な光触媒機能を発揮することが困難である。
なお、特開2004−256736号公報には、チタン又はケイ素の化合物を1層目に、ケイ素化合物を2層目とする防汚性積層体が開示されているが、1層目はあくまでも光学特性付与のためであり、防汚性はあくまでも2層目のケイ素化合物が担っている。
特開2004−256736号公報
本発明は、基体が置かれる環境に関わらず、防曇性及び/又は防汚性を基体表面に簡便に付与することが可能であり、また、基体の防曇性及び/又は防汚性を長期間維持することの可能な新たな手法を提供することをその目的とする。
本発明の目的は、親水性表面を少なくとも酸化剤で処理する工程を含む、親水性表面を有する基体の当該表面の親水性維持方法によって達成される。また、前記親水性表面を塩基で処理する工程を更に含むことが好ましい。
前記酸化剤としては過酸化物を含むものが好ましく、過酸化物としては過酸化水素が好ましい。
また、塩基としては無機塩基が好ましく、アンモニアがより好ましい。
前記親水性表面は少なくとも1種の親水性基を有することが好ましい。親水性基としては、ケイ素原子結合水酸基及び/又はケイ素原子結合ポリエーテル基が好ましい。
本発明の親水性維持方法は、基体の表面に、シラノール、ポリシリケート、水酸基変性シリコーン及び/又はポリエーテル変性シリコーンを塗布することによって前記親水性表面を形成する工程を更に含むことができる。
そして、本発明の親水性維持方法は、前記親水性表面を形成する工程の前に、前記基体の表面に、正電荷物質及び/又は負電荷物質を配置する工程を更に含むことができる。一方、前記基体が正電荷物質及び/又は負電荷物質を含んでいてもよい。
前記正電荷物質は
(1)陽イオン;
(2)正電荷を有する導電体又は誘電体;並びに
(3)正電荷を有する導電体、及び、誘電体又は半導体、の複合体
からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
前記負電荷物質は
(4)陰イオン;
(5)負電荷を有する導電体又は誘電体;
(6)負電荷を有する導電体、及び、誘電体又は半導体、の複合体;並びに
(7)光触媒機能を有する物質
からなる群から選択される1種以上であること画好ましい。
本発明は、親水性表面を有する基体の当該表面を酸化剤で処理する工程を含む、長期防曇性又は長期防汚性を備える基体の製造方法にも関する。前記親水性表面を塩基で処理する工程を更に含むことが好ましい。
本発明の製造方法は、シラノール、ポリシリケート、水酸基変性シリコーン及び/又はポリエーテル変性シリコーンを基体の表面に塗布して前記親水性表面を形成する工程を更に含むことができる。
そして、本発明の製造方法は、前記親水性表面を形成する工程の前に、前記基体の表面上に、正電荷物質、負電荷物質、又は、正電荷物質及び負電荷物質を配置する工程を更に含むことができる。一方、前記基体が正電荷物質及び/又は負電荷物質を含んでいてもよい。
また、本発明は、酸化剤で処理された親水性表面を有する長期防曇性又は長期防汚性を備える基体にも関する。前記親水性表面が塩基で更に処理されていることが好ましい。
更に、本発明は、基体上の、正電荷物質及び/又は負電荷物質含有層、並びに、少なくとも酸化剤で処理された親水性物質層からなる、長期防曇性又は長期防汚性を有する積層構造にも関する。
本発明によれば、基体が置かれる環境に関わらず、防曇性及び/又は防汚性を基体表面に簡便に付与することが可能であり、また、基体の防曇性及び/又は防汚性を長期間維持することの可能である。
本発明では、基体の親水性表面を過酸化水素等の酸化剤で処理するという簡潔な方法により、基体表面の親水性を長期間に維持することができる。したがって、例えば、雨天時には基体表面に水の膜が形成されて、基体表面に付着した汚染物を流れ落とすことができ、基体表面の清浄な状態を長期間に亘って維持することができる。また、アンモニア等の塩基によって親水性表面を処理することによって、本発明の効果を更に増強することができる。
そして、本発明の基体表面に正電荷物質及び/又は負電荷物質が存在する場合には、静電反発により、基体表面への汚染物への付着をより効果的に防止乃至低減することができる。
しかも、本発明の基体表面はセルフクリーニングされるのでメンテナンスが不要であり、基体の清浄化のための労力を削減することができる。
また、本発明では、基体の親水性表面を過酸化水素等の酸化剤で処理するという簡潔な方法により、任意の材質の基体に長期の防曇性を付与することができる。また、基体の親水性表面の全面を酸化剤で処理することにより、基体の親水性表面の全面に亘って均一な防曇性が発揮可能である。また、アンモニア等の塩基によって親水性表面を処理することによって、本発明の効果を更に増強することができる。
したがって、本発明は、屋内外で使用される建材、土木・工作物、冷蔵・冷凍庫、電気・電子機器、車両、航空機等の、特にガラスや高分子樹脂透明基板、及び、鏡に好適に使用することができる。
複合体による正電荷付与機構を示す概念図 本発明における正電荷及び負電荷付与機構の一例を示す概念図 本発明における正電荷及び負電荷付与機構の他の例を示す概念図 酸化チタンの第1の製造方法の一例の概略を示す図 基体表面に正電荷物質、負電荷物質、並びに、正電荷物質及び負電荷物質をそれぞれ配置し、その後、基体表面に親水性基を更に設けた本発明の一態様を示す概略断面図 基体が正電荷物質、負電荷物質、並びに、正電荷物質及び負電荷物質をそれぞれ含む場合に、基体表面に親水性基を設けた本発明の他の一態様を示す概略断面図 正電荷を帯びる基体表面から汚染物質が除去される機構を示す概念図 正電荷及び負電荷を帯びる基体表面から汚染物質が除去される機構を示す概念図
本発明において使用される基体は、特に限定されるものではなく、親水性又は疎水性の、並びに、無機系又は有機系の各種材料から構成されてもよい。
無機系基体としては、例えば、ソーダライムガラス、石英ガラス、耐熱ガラス等の透明若しくは半透明ガラス、又は、インジウムスズ酸化物(ITO)等の金属酸化物からなる基体、及び、シリコン若しくは金属等が挙げられる。また、有機系基体としては、例えば、プラスチックからなる基体が挙げられる。プラスチックをより具体的に例示すると、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ボリカーボネート、アクリル樹脂、PET等のポリエステル、ポリアミド、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、及び、ポリウレタン、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。耐熱性の点では無機系基体が好ましく、特に、少なくとも一部若しくは好ましくは全部が、樹脂、金属又はガラス製の基体が好ましい。なお、有機系基体の材質としては熱硬化性樹脂が好ましい。基体の少なくとも一部若しくは好ましくは全部が少なくとも可視光領域において透明であることが好ましい。
基体の形状は特に限定されるものではなく、立方体、直方体、球形、紡錘形、シート形、フィルム形、繊維状等の任意の形状をとることができる。基体表面は平面及び/又は曲面を備えていてもよく、また、エンボス加工されていてもよいが、平滑性を有することが好ましい。
基体の表面は塗装されていてもよく、塗装材としては、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、紫外線硬化樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、含成樹脂エマルジョン等の合成樹脂と着色剤とを含有するいわゆるペンキ塗料を好適に使用することができる。
前記塗装膜の厚みは0.01〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがより好ましく、特に、0.5μm〜10μmが好ましい。また、塗装手段としては、例えば、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等が適用できる。なお、塗装膜の硬度、基体との密着性等の物理的性能を向上させるために、基体及び塗装膜の許容範囲内で加熱することが望ましい。
本発明において使用される基体は、少なくともその一部、好ましくは全部、に親水性表面を有する。親水性表面の形成方法は任意であり、例えば、基体の表面にコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等を施すことによって親水性表面を形成することができる。
親水性表面は少なくとも1種の親水性基を有することが好ましい。親水性基としては、例えば、水酸基、エーテル基、ポリエーテル基、カルボニル基、アルカノイル基、カルボキシ基、アミノ基、スルホ基、ホスホ基等が挙げられる。水酸基及びポリエーテル基が好ましく、ケイ素原子結合水酸基及びケイ素原子結合ポリエーテル基がより好ましい。
前記親水性基は基体の表面処理によって形成することができる。表面処理の種類は特に限定されるものではなく、上記のコロナ放電、紫外線照射、プラズマ処理の他に、親水性基を提供可能な親水性物質を含む表面処理剤を基体表面に塗布することによっても実施可能である。この場合に使用される親水性物質としては、例えば、アルコール、エーテル、ポリエーテル、カルボン酸、アルデヒド、ケトン、アミン、スルホン酸、ホスホン酸等が挙げられる。塗布方法は、特に限定されるものではないが、例えば、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等が適用できる。なお、基体がガラス製の場合は、高温、例えば300℃以上、好ましくは400〜900℃に加熱後、常温に冷却する工程によって、ガラス表面に親水性基を形成することもできる。
一方、親水性基がケイ素原子結合水酸基である場合は、シラノール、ポリシリケート、水酸基変性シリコーン等を親水性物質として使用することができる。また、親水性基がケイ素原子結合ポリエーテル基である場合は、ポリエーテル変性シリコーン等を親水性物質として使用することができる。したがって、本発明では、基体の表面にシラノール、ポリシリケート、水酸基変性シリコーン及びポリエーテル変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも1種を塗布して前記親水性表面を形成することができる。
シラノールとしては、ケイ素原子結合水酸基を有するシラノール化合物であれば特に限定されるものではないが、一般式:RSiOH(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の、置換又は非置換の一価炭化水素基を表す)で表されるトリオルガノシラノール化合物が好ましい。
炭素数1〜20の、置換又は非置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子が少なくとも部分的にフッ素、塩素、ヨウ素等のハロゲン原子、又は、エポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等の有機基で置換された基(但し、総炭素原子数は1〜20)が挙げられる。
トリオルガノシラノール化合物としては、例えば、tert−ブチルジメチルシラノール、メチルジイソプロピルシラノール、tert−アミルジメチルシラノール、エチルジイソプロピルシラノール、ヘキシルジメチルシラノール、トリイソプロピルシラノール、プロピルジイソプロピルシラノール、3−クロロプロピルジイソプロピルシラノール、3-アセトキシプロピルジイソプロピルシラノール、3−(2−オキソピロリジノ)プロピルジイソプロピルシラノール、メチルジ−sec−ブチルシラノール、1−メチルシクロヘキシルジメチルシラノール、ブチルジイソプロピルシラノール、tert−ブチルジイソプロピルシラノール、エチルジ−sec−ブチルシラノール、フェニルジエチルシラノール、ヘキシルジエチルシラノール、イソプロピルジイソブチルシラノール、ペンチルジイソプロピルシラノール、シクロペンチルジイソプロピルシラノール、プロピルジ−sec−ブチルシラノール、イソプロピルジ−sec−ブチルシラノール、アリルジ−sec−ブチルシラノール、3−クロロプロピルジ−sec−ブチルシラノール、3−アセトキシプロピルジ−sec−ブチルシラノール、3−(2−オキソピロリジノ)プロピルジ−sec−ブチルシラノール、フェニルイソプロピルエチルシラノール、メチルジシクロペンチルシラノール、ヘキシルジイソプロピルシラノール、シクロヘキシルジイソプロピルシラノール、フェニルジイソプロピルシラノール、ブチルジ−sec−ブチルシラノール、sec−ブチルジイソブチルシラノール、エチルジシクロペンチルシラノール、ベンジルジイソプロピルシラノール、プロピルジシクロペンチルシラノール、イソプロピルジシクロペンチルシラノール、アリルジシクロペンチルシラノール、3−クロロプロピルジシクロペンチルシラノール、3−アセトキシプロピルジシクロペンチルシラノール、3−(2−オキソピロリジノ)プロピルジシクロペンチルシラノール、メチルジフェニルシラノール、オクチルジイソプロピルシラノール、2−エチルヘキシルジイソプロピルシラノール、エチルジフェニルシラノール、デシルジイソプロピルシラノール、ブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、ドデシルジイソプロピルシラノール、トリ−m−トリルシラノール、オクタデシルジイソプロピルシラノール、4−[4−(ジフェニルアミノ)スチリル]フェニルジイソプロピルシラノール、4−[4−(ジメチルアミノ)スチリル]フェニルジイソプロピルシラノール、5−[4−(ジフェニルアミノ)フェニル]−5’−[3−(ヒドロキシジイソプロピルシリル)スチリル]−2,2’−ビチオフェン、5−[4−(ビス(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)アミノ)フェニル]−5’−[3−(ヒドロキシジイソプロピルシリル)スチリル]−2,2’−ビチオフェン等が挙げられる。
ポリシリケートとしては、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート等のアルキルポリシリケートが好ましい。メチルポリシリケートとしては、例えば、メチルシリケート51(三菱化学(株)製)を使用することができ、エチルポリシリケートとしては、例えば、エチルシリケート48(コルコート(株)製)を使用することができる。
水酸基変性シリコーンとしては、方末端又は両末端水酸基変性ジオルガノポリシロキサンが好ましい。方末端水酸基変性ジオルガノポリシロキサンとしては、例えば、X−22−176DX、X−22−176F(信越化学工業(株)製)等の方末端シラノール変性ジメチルポリシロキサンを使用することができる。両末端水酸基変性ジオルガノポリシロキサンとしては、例えば、X−21−5841、KF−9701(信越化学工業(株)製)等の両末端シラノール変性ジメチルポリシロキサンを使用することができる。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、又は、これらの組合せからなるポリオキシアルキレン基によって変性されたシリコーンが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、SH3771M、SH3772M、SH3773M3、SH3775M(東レ・ダウコーニング(株)製)等のポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサン、SH3749(東レ・ダウコーニング(株)製)等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシリコーン13等のポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)/オルガノポリシロキサン共重合体、並びに、3−(ポリオキシエチレン)プロピルヘプタメチルトリシロキサン及びビス(ポリオキシエチレン)プロピルオクタメチルテトラシロキサンの混合物であるSH3746(東レ・ダウコーニング(株)製)等のポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサンの混合物を使用することができる。
親水性物質をメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール等のアルコール、水、又は、これらの混合物によって適宜希釈されて表面処理剤とすることが好ましい。表面処理剤中の親水性物質の濃度は特には限定されないが、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましく、0.3〜2質量%が更により好ましい。
基体表面への表面処理剤の塗布後に、基体表面を乾燥することが好ましい。乾燥温度は特に限定されるものではないが、15〜100℃が好ましく、20〜80℃がより好ましく、25〜60℃が更により好ましい。室温(25℃)での乾燥が特に好ましい。基体表面上の親水性物質層の厚みは1〜200nmが好ましく、50〜100nmがより好ましい。
基体表面の乾燥前に、表面処理剤が塗布された基体表面を流水にて更に処理してもよい。これにより、シリカ(SiO)成分を除去して、親水性基のみを基体表面に設けることができる。
基体の表面処理後に、基体を加熱してもよい。加熱温度は、親水性物質の種類によるが、親水性基をより強固に固定するためには、加熱温度は、80℃〜800℃が好ましく、150℃〜750℃がより好ましい。
本発明では、基体表面に正電荷物質及び/又は負電荷物質が存在することが好ましい。したがって、前記親水性表面を基体上に形成する前に、当該基体の表面上に、正電荷物質及び/又は負電荷物質を配置することが好ましい。一方、基体が正電荷物質及び/又は負電荷物質をもともと含んでいてもよく、その場合は、正電荷物質及び/又は負電荷物質を基体の表面上に新たに配置する必要はないが、必要に応じて、そのようにしてもよい。
前記正電荷物質は、正電荷を有する物質であれば、特に限定されるものではないが、
(1)陽イオン;
(2)正電荷を有する導電体又は誘電体;並びに
(3)正電荷を有する導電体、及び、誘電体又は半導体、の複合体
からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
前記陽イオンとしては、特に限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のイオン;カルシウム等のアルカリ土類金属のイオン;アルミニウム、セシウム、インジウム、セリウム、セレン、クロム、ニッケル、アンチモン、鉄、銅、マンガン、タングステン、ジルコニウム、亜鉛等の金属元素のイオンが好ましく、特に銅イオンが好ましい。更に、メチルバイオレット、ビスマルクブラウン、メチレンブルー、マラカイトグリーン等のカチオン性染料、第4級窒素原子含有基により変性されたシリコーン等のカチオン基を備えた有機分子も使用可能である。イオンの価数も特に限定されるものではなく、例えば、1〜4価の陽イオンが使用可能である。
前記金属イオンの供給源として、金属塩を使用することも可能である。具体的には、塩化アルミニウム、塩化クロム、塩化ニッケル、塩化第1及び第2アンチモン、塩化第1及び第2鉄、塩化セシウム、三塩化インジウム、塩化第1セリウム、四塩化セレン、塩化第2銅、塩化マンガン、四塩化タングステン、オキシ二塩化タングステン、タングステン酸カリウム、オキシ塩化ジルコニウム、塩化亜鉛、炭酸バリウム等の各種の金属塩が挙げられる。更に、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化クロム、水酸化インジウム等の金属水酸化物、ケイタングステン酸等の水酸化物、又は、油脂酸化物等の酸化物も使用可能である。
正電荷を有する導電体又は誘電体としては、上記の陽イオン以外の、正電荷が発生した導電体又は誘電体を挙げることができ、例えば、使用される導電体は耐久性の点から金属が望ましく、アルミニウム、錫、セシウム、インジウム、セリウム、セレン、クロム、ニッケル、アンチモン、鉄、銅、マンガン、タングステン、ジルコニウム、亜鉛等の金属や酸化金属が挙げられる。また、これらの金属の複合体又は合金も使用することができる。導電体の形状は特に限定されるものではなく、粒子状、薄片状、繊維状等の任意の形状をとることができる。
導電体としては、一部の金属の金属塩も使用可能である。具体的には、塩化アルミニウム、塩化第1及び第2錫、塩化クロム、塩化ニッケル、塩化第1及び第2アンチモン、塩化第1及び第2鉄、塩化セシウム、三塩化インジウム、塩化第1セリウム、四塩化セレン、塩化第2銅、塩化マンガン、四塩化タングステン、オキシ二塩化タングステン、タングステン酸カリウム、塩化第2金、オキシ塩化ジルコニウム、塩化亜鉛等の各種の金属塩が例示できる。また、水酸化インジウム、ケイタングステン酸等の水酸化物又は酸化物等も使用可能である。
正電荷を有する誘電体としては、例えば、摩擦により正に帯電した羊毛、ナイロン等の誘電体が挙げられる。
次に、前記複合体によって正電荷を付与する原理を図1に示す。図1は図示を省略する基体の表面に、導電体−誘電体又は半導体−導電体の組み合わせを配置した概念図である。導電体は、内部に自由に移動できる自由電子が高い濃度で存在することによって、表面に正電荷状態を有することができる。なお、導電体として陽イオンを含む導電性物質を使用することも可能である。
一方、導電体に隣接する誘電体又は半導体は、導電体の表面電荷状態の影響により誘電分極される。この結果、導電体に隣接する側には負電荷が、また、非隣接側には正電荷が誘電体又は半導体に発生する。これらの作用により導電体−誘電体又は半導体−導電体の組み合わせの表面は正電荷を帯びることとなり、基体表面に正電荷が付与される。前記複合体のサイズ(複合体を通過する最長軸の長さをいう)は1nmから100μm、好ましくは1nmから10μm、より好ましくは1nmから1μm、より好ましくは1nmから100nmの範囲とすることができる。
本発明において使用される複合体を構成する導電体は耐久性の点から金属が望ましく、アルミニウム、錫、セシウム、インジウム、セリウム、セレン、クロム、ニッケル、アンチモン、鉄、銀、銅、マンガン、白金、タングステン、ジルコニウム、亜鉛等の金属が挙げられる。また、これらの金属の酸化物や複合体又は合金も使用することができる。導電体の形状は特に限定されるものではなく、粒子状、薄片状、繊維状等の任意の形状をとることができる。
導電体としては、一部の金属の金属塩も使用可能である。具体的には、塩化アルミニウム、塩化第1及び第2錫、塩化クロム、塩化ニッケル、塩化第1及び第2アンチモン、塩化第1及び第2鉄、硝酸銀、塩化セシウム、三塩化インジウム、塩化第1セリウム、四塩化セレン、塩化第2銅、塩化マンガン、塩化第2白金、四塩化タングステン、オキシ二塩化タングステン、タングステン酸カリウム、塩化第2金、オキシ塩化ジルコニウム、塩化亜鉛、リン酸鉄リチウム等の各種の金属塩が例示できる。また、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化クロム等の上記導電体金属の水酸化物、並びに、酸化亜鉛等の上記導電体金属の酸化物も使用可能である。
導電体としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリチオフェンビニロン、ポリイソチアナフテン、ポリアセチレン、ポリアルキルピロール、ポリアルキルチオフェン、ポリ−p−フェニレン、ポリフェニレンビニロン、ポリメトキシフェニレン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリアントラセン、ポリナフタレン、ポリピレン、ポリアズレン等の導電性高分子も使用可能である。
半導体としては、例えば、C、Si、Ge、Sn、GaAs、Inp、GeN、ZnSe、PbSnTe等があり、半導体酸化金属や光半導体金属、光半導体酸化金属も使用可能である。好ましくは、酸化チタン(TiO)の他に、ZnO、SrTiOP、CdS、CdO、CaP、InP、In、CaAs、BaTiO、KNbO、Fe、Ta、WO、NiO、CuO、SiC、SiO、MoS、InSb、RuO、CeO等が使用されるが、Na等で光触媒能を不活性化したものが望ましい。
誘電体としては、強誘電体であるチタン酸バリウム(PZT)いわゆるSBT、BLTや次に挙げる PZT、PLZT―(Pb、La)(Zr、Ti)O、SBT、SBTN―SrBi(Ta、Nb)、BST―(Ba、Sr)TiO、LSCO―(La、Sr)CoO、BLT、BIT―(Bi、La)Ti12、BSO―BiSiO等の複合金属が使用可能である。また、有機ケイ素化合物であるシラン化合物、シリコーン化合物、いわゆる有機変性シリカ化合物、また、有機ポリマー絶縁膜アリレンエーテル系ポリマー、ベンゾシクロブテン、フッ素系ポリマーパリレンN、またはF、フッ素化アモルファス炭素等の各種低誘電材料も使用可能である。
前記負電荷物質は、負電荷を有する物質であれば、特に限定されるものではないが、
(4)陰イオン;
(5)負電荷を有する導電体又は誘電体;
(6)負電荷を有する導電体、及び、誘電体又は半導体、の複合体、並びに
(7)光触媒機能を有する物質
からなる群から選択される1種又は2種であることが好ましい。
前記陰イオンとしては、特に限定されるものではないが、フッ化物イオン、塩化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン等の無機系イオン;酢酸イオン等の有機系イオンが挙げられる。イオンの価数も特に限定されるものではなく、例えば、1〜4価の陰イオンが使用可能である。
負電荷を有する導電体又は誘電体としては、上記の陰イオン以外の、負電荷が発生した導電体又は誘電体を挙げることができ、例えば、金、銀、白金、スズ等の金属;石墨、硫黄、セレン、テルル等の元素;硫化ヒ素、硫化アンチモン、硫化水銀等の硫化物;粘土、ガラス粉、石英粉、石綿、澱粉、木綿、絹、羊毛等;コンジョウ、インジゴ、アニリンブルー、エオシン、ナフトールイエロー等の染料のコロイドが挙げられる。これらの中でも金、銀、白金、スズ等の金属のコロイドが好ましく、特に銀コロイドがより好ましい。この他に、既述した各種の導電体からなる電池の負電極、並びに、負に帯電したテフロン(登録商標)、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル等の誘電体が挙げられる。
半導体としては既述したものを使用することができる。
光触媒機能を有する物質としては、特定の金属化合物を含んでおり、光励起により当該層表面の有機及び/又は無機化合物を酸化分解する機能を有するものを使用することができる。光触媒の原理は、特定の金属化合物が光励起により、空気中の水又は酸素からOHやO のラジカル種を発生させ、このラジカル種が有機及び/又は無機化合物を酸化還元分解することであると一般的に理解されている。
前記金属化合物としては、代表的な酸化チタン(TiO)の他、ZnO、SrTiOP、CdS、CdO、CaP、InP、In、CaAs、BaTiO、KNbO、Fe、Ta、WO、NiO、CuO、SiC、SiO、MoS、InSb、RuO、CeO等が知られている。
光触媒機能を有する物質は光触媒性能が向上する金属(Ag、Pt)を含んでいてもよい。また、金属塩等の各種物質を、光触媒機能を失活させない程度の範囲で含むことできる。前記金属塩としては、例えば、アルミニウム、錫、クロム、ニッケル、アンチモン、鉄、銀、セシウム、インジウム、セリウム、セレン、銅、マンガン、カルシウム、白金、タングステン、ジルコニウム、亜鉛等の金属塩があり、それ以外にも一部の金属或いは非金属等については水酸化物又は酸化物も使用可能である。具体的には、塩化アルミニウム、塩化第一及び第二錫、塩化クロム、塩化ニッケル、塩化第一及び第二アンチモン、塩化第一及び第二鉄、硝酸銀、塩化セシウム、三塩化インジウム、塩化第一セリウム、四塩化セレン、塩化第二銅、塩化マンガン、塩化カルシウム、塩化第二白金、四塩化タングステン、オキシ二塩化タングステン、タングステン酸カリウム、塩化第二金、オキシ塩化ジルコニウム、塩化亜鉛等の各種金属塩が例示できる。また、金属塩以外の化合物としては、水酸化インジウム、ケイタングステン酸、シリカゾル、水酸化カルシウム等が例示できる。
前記の光触媒機能を有する物質は、励起状態においてはその物質表面の物理的吸着水や酸素からOH(水酸化ラジカル)、O (酸素化ラジカル)を吸着させて、その表面は陰イオンの特性を有しているが、そこに正電荷物質を共存させると、その濃度比に合せて、いわゆる光触媒活性は低下もしくは喪失する。しかし、本発明では、光触媒機能を有する物質が汚染物質に対して酸化分解作用をする必要はないので、負電荷物質として使用できる。そして、正電荷物質を共存させることにより、光触媒機能を有する物質のバインダー(典型的には無機系高分子及び有機系高分子)の酸化分解による劣化を回避することができる。したがって、光触媒機能を有する物質をバインダーによって固定して使用する場合であっても、正電荷物質と共存させることにより、当該バインダーの劣化を抑制しつつ正・負両方の電荷特性による防汚機能を発現させることができる。
正電荷物質及び負電荷物質は、それぞれ単独で基体表面に配置されてもよく、或いは、組合されて基体表面に配置されてもよい。
図2は、基体表面に正電荷及び負電荷の両方を配置する一つの態様を示す概念図であり、誘電体又は半導体−負電荷を有する導電体−誘電体又は半導体−正電荷を有する導電体の組み合わせを基体表面に設けた例である。図2に示す負電荷を有する導電体及び正電荷を有する導電体としては、既述したものを使用することができる。
図2に示すように、負電荷を有する導電体に隣接する誘電体又は半導体は、導電体の表面電荷状態の影響により誘電分極される。この結果、負電荷を有する導電体に隣接する側には正電荷が、また、正電荷を有する導電体に隣接する側には負電荷が誘電体又は半導体に発生する。これらの作用により図2に示す誘電体又は半導体−導電体−誘電体又は半導体−導電体の組み合わせの表面は正電荷又は負電荷を帯びることとなる。前記導電体と誘電体又は半導体との複合体のサイズ(複合体を通過する最長軸の長さをいう)は1nmから100μm、好ましくは1nmから10μm、より好ましくは1nmから1μm、より好ましくは1nmから100nmの範囲とすることができる。また、正もしくは正負電荷表面を形成する導電体及び誘電体、又は、半導体を含む複合体の場合の組成材比率は微細粒子又は容積比として1:1〜1:20が望ましい。
図3は、基体表面に正電荷及び負電荷を付与する他の態様を示す概念図である。
図3では、負電荷を有する導電体と正電荷を有する導電体とが隣接し、正電荷及び負電荷が接触消滅等して少ない状態である。なお、負電荷を有する導電体及び正電荷を有する導電体としては、既述したものを使用することができる。
正電荷物質及び/又は負電荷物質の配置方法は特に限定されるものではないが、特に、金属ドープ酸化チタンの形態で、正又は負電荷物質の層を基体表面上に形成することが好ましい。
前記金属としては、セリウム、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄及び亜鉛からなる群から選択された金属元素の少なくとも1つが好ましく、少なくとも2つがより好ましく、特に、銀又は錫、並びに、銅又は鉄が好ましい。正電荷付与可能な金属元素としては、例えば、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛等があり、負電荷付与可能な金属元素としては、例えば、セリウム、金、銀、白金、錫等がある。酸化チタンとしてはTiO、TiO、TiO、TiO/nHO等の各種の酸化物、過酸化物が使用可能である。特に、ペルオキソ基を有する過酸化チタンが好ましい。酸化チタンはアモルファス型、アナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型のいずれでもよく、これらが混在していてもよいが、アモルファス型酸化チタンが好ましい。
アモルファス型酸化チタンは光触媒機能を有さない。一方、アナターゼ型、ブルッカイト型及びルチル型の酸化チタンは光触媒機能を有するが、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄又は亜鉛を一定濃度以上に複合させると光触媒機能を喪失する。したがって、前記金属ドープチタン酸化物は光触媒機能を有さないものである。なお、アモルファス型酸化チタンは太陽光加熱等により経時的にアナターゼ型酸化チタンに変換されるが、銅、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄又は亜鉛と複合させるとアナターゼ型酸化チタンは光触媒機能を失うので、結局のところ、前記金属ドープチタン酸化物は経時的に光触媒機能を示さないものである。一方、セリウム、金、銀、白金、錫をドープしたチタン酸化物は、酸化チタンがアモルファス型からアナターゼ型に変換した場合は光触媒性能を有するようになるが、正電荷物質が一定濃度以上共存する場合は光触媒性能を示さないため、前記金属ドープチタン酸化物を使用した場合にも経時的に光触媒機能を有さないものである。
正電荷物質及び/又は負電荷物質の層を構成する前記金属ドープチタン酸化物の製造方法としては、一般的な二酸化チタン粉末の製造方法である塩酸法又は硫酸法をベースとする製造方法を採用してもよいし、各種の液体分散チタニア溶液の製造方法を採用してもよい。そして、上記金属は、製造段階の如何を問わずチタン酸化物と複合化することができる。
第1の製造方法
まず、四塩化チタン等の四価チタンの化合物とアンモニア等の塩基とを反応させて、水酸化チタンを形成する。次に、この水酸化チタンを酸化剤でペルオキソ化し、超微細粒子のアモルファス型過酸化チタンを形成する。この反応は好ましくは水性媒体中で行なわれる。さらに、任意に加熱処理することによりアナターゼ型過酸化チタンに転移させることも可能である。上記の各工程のいずれかにおいて、正電荷又は負電荷を有する金属元素として、例えば、セリウム、金、銀、白金、錫、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛又はそれらの化合物の少なくともいずれか1つが混合される。
ペルオキソ化用酸化剤は特に限定されるものではなく、チタンのペルオキソ化物、すなわち過酸化チタンが形成できるものであれば各種のものが使用できるが、過酸化水素が好ましい。酸化剤として過酸化水素水を使用する場合は、過酸化水素の濃度は特に制限されることはないが、30〜40%のものが好適である。ペルオキソ化前には水酸化チタンを冷却することが好ましい。その際の冷却温度は1〜5℃が好ましい。
図4に上記第1の製造方法の一例を示す。図示される製造方法では、四塩化チタン水溶液とアンモニア水とを、セリウム、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛の化合物の少なくとも1つの存在下で混合し、当該金属の水酸化物及びチタンの水酸化物の混合物を生成させる。その際の反応混合液の濃度及び温度については、特に限定されるわけではないが、希薄且つ常温とすることが好ましい。この反応は中和反応であり、反応混合液のpHは最終的に7前後に調整されることが好ましい。
このようにして得られた金属及びチタンの水酸化物は純水で洗浄した後、5℃前後に冷却され、次に、過酸化水素水でペルオキソ化される。これにより、金属がドープされた、アモルファス型のペルオキソ基を有するチタン酸化物微細粒子を含有する水性分散液、すなわち金属ドープチタン酸化物を含有する水性分散液を製造することができる。
第2の製造方法
四塩化チタン等の四価チタンの化合物を酸化剤でペルオキソ化し、これとアンモニア等の塩基とを反応させて超微細粒子のアモルファス型過酸化チタンを形成する。この反応は好ましくは水性媒体中で行なわれる。さらに、任意に加熱処埋することによりアナターゼ型過酸化チタンに転移させることも可能である。上記の各工程のいずれかにおいて、正電荷又は負電荷を有する金属元素として、例えば、セリウム、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛又はそれらの化合物の少なくともいずれか1つが混合される。
第3の製造方法
四塩化チタン等の四価チタンの化合物を、酸化剤及び塩基と同時に反応させて、水酸化チタン形成とそのペルオキソ化とを同時に行い、超微細粒子のアモルファス型過酸化チタンを形成する。この反応は好ましくは水性媒体中で行なわれる。さらに、任意に加熱処埋することによりアナターゼ型過酸化チタンに転移させることも可能である。上記の各工程のいずれかにおいて、正電荷又は負電荷を有する金属元素として、例えば、セリウム、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛又はそれらの化合物の少なくともいずれか1つが混合される。
なお、第1乃至第3の製造方法において、アモルファス型過酸化チタンと、これを加熱して得られるアナターゼ型過酸化チタンとの混合物を金属ドープチタン酸化物として使用できることは言うまでもない。
ゾル−ゲル法による製造方法
チタンアルコキシドに、水、アルコール等の溶媒、酸又は塩基触媒を混合撹拌し、チタンアルコキシドを加水分解させ、超微粒子のチタン酸化物のゾル溶液を生成する。この加水分解の前後のいずれかに、正電荷又は負電荷を有する金属元素として、例えば、セリウム、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛又はそれらの化合物の少なくともいずれか1つが混合される。なお、このようにして得られるチタン酸化物は、ペルオキソ基を有するアモルファス型である。
上記チタンアルコキシドとしては、一般式:Ti(OR´)(ただし、R´はアルキル基)で表示される化合物、又は上記一般式中の1つ或いは2つのアルコキシド基(OR´)がカルボキシル基或いはβ−ジカルボニル基で置換された化合物、或いは、それらの混合物が好ましい。
上記チタンアルコキシドの具体例としては、Ti(O−isoC、Ti(O−nC、Ti(O−CHCH(C)C、Ti(O−C1735、Ti(O−isoC[CO(CH)CHCOCH、Ti(O−nC[OCN(COH)、Ti(OH)[OCH(CH)COOH]、Ti(OCHCH(C)CH(OH)C、Ti(O−nC(OCOC1735)等が挙げられる。
四価チタンの化合物
金属ドープチタン酸化物の製造に使用する四価チタンの化合物としては、塩基と反応させた際に、オルトチタン酸(HTiO)とも呼称される水酸化チタンを形成できるものであれば各種のチタン化合物が使用でき、例えば四塩化チタン、硫酸チタン、硝酸チタン、燐酸チタン等のチタンの水溶性無機酸塩がある。それ以外にも蓚酸チタン等のチタンの水溶性有機酸塩も使用できる。なお、これらの各種チタン化合物の中では、水溶性に特に優れ、かつ金属ドープチタン酸化物の分散液中にチタン以外の成分が残留しない点で、四塩化チタンが好ましい。
また、四価チタンの化合物の溶液を使用する場合は、当該溶液の濃度は、水酸化チタンのゲルが形成できる範囲であれば特に制限されるものではないが、比較的希薄な溶液が好ましい。具体的には、四価チタンの化合物の溶液濃度は、5〜0.01wt%が好ましく、0.9〜0.3wt%がより好ましい。
塩基
上記四価チタンの化合物と反応させる塩基は、四価チタンの化合物と反応して水酸化チタンを形成できるものであれば、各種のものが使用可能であり、それにはアンモニア、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、苛性カリ等が例示できるが、アンモニアが好ましい。
また、上記の塩基の溶液を使用する場合は、当該溶液の濃度は、水酸化チタンのゲルが形成できる範囲であれば特に制限されるものではないが、比較的希薄な溶液が好ましい。具体的には、塩基溶液の濃度は、10〜0.01wt%が好ましく、1.0〜0.1wt%がより好ましい。特に、塩基溶液としてアンモニア水を使用した場合のアンモニアの濃度は、10〜0.01wt%が好ましく、1.0〜0.1wt%がより好ましい。
金属化合物
セリウム、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄又は亜鉛の化合物としては、それぞれ以下のものが例示できる。
Ce化合物:CeO、CeCl、Ce(SO、Ce(NO及びこれらの水和物
Au化合物:AuCl、AuCl、AuOH、Au(OH)、AuO、AuO
Ag化合物:AgNO、AgF、AgClO、AgOH、Ag(NH)OH、AgSO
Pt化合物:PtCl、PtO、Pt(NH)Cl、PtO、PtCl、〔Pt(OH)2−
Ni化合物:Ni(OH)、NiCl
Co化合物:Co(OH)NO、Co(OH)、CoSO、CoCl
Cu化合物:Cu(OH)、Cu(NO、CuSO、CuCl、Cu(CHCOO)
Zr化合物:Zr(OH)、ZrCl、ZrCl
Sn化合物:SnCl、SnCl、[Sn(OH)]
Mn化合物:MnNO、MnSO、MnCl
Fe化合物:Fe(OH)、Fe(OH)、FeCl
Zn化合物:Zn(NO、ZnSO、ZnCl
第1乃至第3の製造方法で得られる水性分散液中の過酸化チタン濃度(共存するセリウム、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄又は亜鉛を含む合計量)は、0.05〜15wt%が好ましく、0.1〜5wt%がより好ましい。また、正電荷又は負電荷を有する金属元素、例えば、セリウム、金、銀、白金、銅、ジルコニウム、錫、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄又は亜鉛の配合量については、チタンと金属成分とのモル比で、本発明からは1:1が望ましいが、水性分散液の安定性から1:0.01〜1:0.5が好ましく、1:0.03〜1:0.1がより好ましい。
本発明では、上記の製造方法で得られる溶液、懸濁液若しくはエマルジョンの形態の金属ドープ(過)酸化チタン含有組成物中に基体を浸漬してディップコーティングを行い、或いは、当該組成物を基体上にスプレー、ロール、刷毛、スポンジ等で塗布した後に、非加熱乾燥又は加熱乾燥して溶媒乃至媒体を揮散させる工程を少なくとも1回行うことによって金属ドープ酸化チタンの層を基体表面に形成することができる。
加熱する場合の温度は特に限定されるものではなく、例えば、30℃以上の任意の温度に加熱することができる。なお、加熱により、前記組成物中の過酸化チタンは酸化チタン(二酸化チタン)に変化する。このとき、更に、アモルファス型酸化チタンはアナターゼ型酸化チタンに転移する(一般に、アモルファス型酸化チタンは、100℃以上に加熱することによりアナターゼ型に転移する)。したがって、前記組成物中にアモルファス型過酸化チタンが含まれる場合は、100℃以上に加熱することが好ましい。この場合、アモルファス型過酸化チタン→アモルファス型酸化チタン→アナターゼ型酸化チタンのプロセスにより得られたアナターゼ型酸化チタンが基体表面上に存在する。更に、前記組成物中にアナターゼ型過酸化チタンが既に含まれている場合は、加熱により、そのままアナターゼ型酸化チタンに変化する。
前記組成物は、有機ケイ素化合物及び/又は無機ケイ素化合物を更に含むことが好ましい。
前記有機ケイ素化合物としては、例えば、各種の有機シラン化合物、並びに、シリコーンオイル、シリコーンゴム及びシリコーンレジン等のシリコーンが挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、混合物であってもよい。シリコーンとしては、分子中にアルキルシリケート構造若しくはポリエーテル構造を有するもの、又は、アルキルシリケート構造及びポリエーテル構造の両方を有するものが好ましい。ここで、アルキルシリケート構造とは、シロキサン骨格のケイ素原子にアルキル基が結合した構造をさす。一方、ポリエーテル構造とは、エーテル結合を有する構造をさし、これらに限定されるものではないが、具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド―ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリエチレンポリテトラメチレングリコール共重合体、ポリテトラメチレングリコール―ポリプロピレンオキサイド共重合体等の分子構造が挙げられる。そのなかでも、ポリエチレンオキサイド―ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体は、そのブロック度及び分子量により、基体表面における濡れ性を制御できる観点から好適である。
有機ケイ素化合物としては、分子中にアルキルシリケート構造及びポリエーテル構造の双方を有するシリコーンが特に好ましい。具体的には、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等のポリエーテル変性シリコーンが好適である。これは公知の方法で製造することができ、例えば、特開平4―242499号公報の合成例1,2,3,4や、特開平9−165318号公報の参考例記載の方法等により製造することができる。特に、両末端メタリルポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体とジヒドロポリジメチルシロキサンとを反応させて得られるポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体変性ポリジメチルシロキサンが好適である。具体的には、TSF4445、TSF4446(GE東芝シリコーン(株))、KPシリーズ(信越化学工業(株))、並びに、SH 200、SH3746M、DC3PA、ST869A(東レ・ダウコーニング(株))等を用いることができる。
前記組成物中の有機ケイ素化合物の濃度は、基体の表面処理の程度に応じて適宜変更することができるが、典型的には0.01〜5.0重量%であり、好ましくは0.05〜2.0重量%であり、より好ましくは0.1〜1.0重量%である。
無機ケイ素化合物としては、シリカ(二酸化ケイ素)、窒化ケイ素、炭化ケイ素、シリケート、ポリシリケート、シラン等が挙げられるが、シリカが好ましい。シリカとしては、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降シリカ等を使用することができるがコロイダルシリカが好ましい。市販のコロイダルシリカとしては、例えば、PL−1,PL−3(扶桑化学工業(株))、ポリシリケートとして、WM−12(多摩化学工業(株)製)、シリカゾル51(コルコート(株)製)等を用いることができる。
前記組成物中の無機ケイ素化合物の濃度は、基体の表面処理の程度に応じて適宜変更することができるが、典型的には0.01〜98重量%であり、好ましくは0.1〜90重量%であり、より好ましくは10.0〜80重量%である。
前記組成物は、水の他に、アルコール等の親水性媒体、或いは、有機溶媒等の非水性媒体を含むことができる。これらの媒体の濃度は典型的には10〜99.99重量%であり、好ましくは50〜99.9重量%であり、より好ましくは80〜99重量%である。
正電荷物質及び/又は負電荷物質の層と、基体表面との間には中間層が形成されてもよい。
前記中間層は、親水性又は疎水性の、任意の有機又は無機物質からなることができる。
親水性の有機物質としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体等のポリエーテル;ポリビニルアルコール;ポリアクリル酸(アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の塩を含む)、ポリメタクリル酸(アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の塩を含む)、ポリアクリル酸−ポリメタクリル酸(アルカリ金属塩、アンモニウム塩等の塩を含む)共重合体;ポリアクリルアミド;ポリビニルピロリドン;カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)等の親水性セルロース類;多糖類等の天然親水性高分子化合物等が挙げられる。これらの高分子材料にガラス繊維、炭素繊維、シリカ等の無機系誘電体を配合して複合化したものも使用可能である。また、上記の高分子材料として塗料を使用することも可能である。
親水性の無機材料としては、例えば、SiO又はその他のケイ素化合物が挙げられる。
撥水性の有機物質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン;ポリアクリレート、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等のアクリル樹脂;ポリアクリロニトリル;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニル;ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエチレン・プロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、フッ化ビニリデン・トリフルオロエチレン共重合体等のフッ素樹脂;ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート等のポリエステル;フェノール樹脂;ユリア樹脂;メラミン樹脂;ポリイミド樹脂;ナイロン等のポリアミド樹脂;エポキシ樹脂;ポリウレタン等が挙げられる。
撥水性の有機物質としてはフッ素樹脂が好ましく、特に、強誘電性と撥水性を有するフッ化ビニリデン・トリフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドのβ型結晶体及びそれを含有するものが好ましい。フッ素樹脂としては市販のものを使用することが可能であり、市販品としては、例えば、NTT−AT(株)製のHIREC1550等が挙げられる。
更に、フッ素原子を含有するオレフィンの2種以上からなる共重合体、フッ素原子を含有するオレフィンと炭化水素モノマーとの共重合体、およびフッ素原子を含有するオレフィンの2種以上からなる共重合体と熱可塑性アクリル樹脂との混合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のフッ素樹脂と界面活性剤からなるフッ素樹脂エマルジョン、並びに硬化剤(特開平5−124880号公報、特開平5−117578号公報、特開平5−179191号公報参照)および/又は上記シリコーン樹脂系撥水剤からなる組成物(特開2000−121543号公報、特開2003−26461号公報参照)も使用することができる。このフッ素樹脂エマルジョンとしては、市販されているものを使用することができ、ダイキン工業(株)よりゼッフルシリーズとして、旭硝子(株)よりルミフロンシリーズとして購入可能である。上記硬化剤としては、メラミン系硬化剤、アミン系硬化剤、多価イソシアネート系硬化剤、及びブロック多価イソシアネート系硬化剤が好ましく使用される。
撥水性の無機系材料としては、例えば、シラン系、シリコネート系、シリコーン系及びシラン複合系、又は、フッ素系の撥水剤或いは吸水防止剤等が挙げられる。特に、フッ素系撥水剤が好ましく、例としては、パーフルロロアルキル基含有化合物などの含フッ素化合物又は含フッ素化合物含有組成物が挙げられる。なお、基材表面への吸着性が高い含フッ素化合物を中間層に含む場合は、基材表面に適用した後、撥水剤又は吸水防止剤の化学成分が基材と反応して化学結合を生じたり、又は化学成分どうしが架橋したりする必要はかならずしもない。
このようなフッ素系撥水剤として用いることができる含フッ素化合物は、分子中にパーフルオロアルキル基を含有する分子量1,000〜20,000のものが好ましく、具体的には、パーフルオロスルホン酸塩、パーフルオロスルホン酸アンモニウム塩、パーフルオロカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキルリン酸エステル、及びパーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。中でも、基材表面への吸着性に優れることから、パーフルオロアルキルリン酸エステル、及びパーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましい。このような材料としては、サーフロンS−112、及びサーフロンS−121(共に商品名、セイミケミカル(株)製)などが市販されている。
なお、吸水性の高い基体の場合では、シラン化合物を含む中間層を予め基体上に形成することが好ましい。この中間層は、Si―O結合を大量に含有する為、正若しくは負電荷物質含有層の強度や基体との密着性を向上することが可能になる。また、前記中間層は、基体への水分の浸入を防止する機能をも有している。
前記シラン化合物としては、加水分解性シラン、その加水分解物及びこれらの混合物が挙げられる。加水分解性シランとしては各種のアルコキシシランが使用でき、具体的には、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシランが挙げられる。これらの内、1種類の加水分解性シランを単独で使用してもよく、必要に応じて2種類以上の加水分解性シランを混合して使用してもよい。またこれらのシラン化合物に、各種のオルガノポリシロキサンを配合してもよい。このようなシラン化合物を含有する中間層の構成材料としては、例えば、ドライシールS(東レ・ダウコーニング(株)製)がある。
また、中間層の構成材料として、メチルシリコーン樹脂及びメチルフェニルシリコーン樹脂等の室温硬化型シリコーン樹脂を使用してもよい。このような室温硬化型シリコーン樹脂としては、例えば、AY42−170、SR2510、SR2406、SR2410、SR2405、SR2411(東レ・ダウコーニング(株)製)がある。
中間層は塗装膜であってもよい。塗装膜を構成する塗装材料としては、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、紫外線硬化樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、含成樹脂エマルジョン等の合成樹脂と着色剤とを含有するいわゆるペンキ塗料を好適に使用することができる。
上記塗装膜の厚みは0.01〜100μmが好ましく、0.1〜50μmがより好ましく、特に、0.5μm〜10μmが好ましい。また、塗装手段としては、例えば、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等が適用できる。なお、塗装膜の硬度、基体との密着性等の物理的性能を向上させるために、基体及び塗装膜の許容範囲内で加熱することが望ましい。
本発明では、基体の親水性表面を少なくとも酸化剤で処理することによって、当該親水性表面の親水性を長期に亘って維持することができる。これにより、酸化剤で処理された親水性表面を有する本発明の基体は長期防曇性又は長期防汚性を発揮することができる。したがって、本発明の長期防曇性又は長期防汚性を備える基体は、親水性表面を有する基体の当該表面を酸化剤で処理することによって製造することができる。
本発明で使用される酸化剤は、酸化作用を有する限り特に限定されるものではなく、各種の無機系酸化剤及び有機系酸化剤を使用することができる。無機系酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸等の無機酸、硝酸カリウム、過マンガン酸塩、硝酸セリウムアンモニウム等の無機塩、過炭酸ナトリウム、過酸化水素等の無機系過酸化物を使用することができ、また、有機系酸化剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセトン、メチルエチルケトンペルオキシド、ジ−tert-ブチルペルオキシド、過酢酸等の有機系過酸化物を使用することができるが、過酸化物が好ましい。また、過酸化物の中では、基体上に有機物が残留しない点で、無機系過酸化物が好ましく、分解後に有害な副生成物が発生しないという観点から、過酸化水素がより好ましい。
本発明では、酸化剤を、そのまま、又は、適切な媒体中に希釈した組成物の状態で、基体の親水性表面に塗布することによって基体の親水性表面を処理することができる。前記組成物は室温で液体であることが好ましく、また、水系液体であることが好ましい。したがって、前記媒体としては、水、又は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール等のアルコールと水の混合物が好ましい。組成物中の酸化剤の濃度は限定されるものではないが、1〜80質量%が好ましく、2〜50質量%がより好ましい。塗布方法は、特に限定されるものではないが、例えば、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等を使用することができる。
基体の親水性表面への酸化剤の塗布後は、当該表面を乾燥することが好ましい。乾燥は、常温(25℃)乃至高温(例えば、40〜100℃)下で行うことができ、また、数分〜数時間(好ましくは数分〜数十分)の間、実施することができる。
本発明では、基体の親水性表面を更に塩基で処理することが好ましい。酸化剤と塩基の混合物によって基体の親水性表面を処理してもよいが、酸化剤での処理後に塩基で処理することが好ましい。
本発明で使用される塩基は、特に限定されるものではなく、各種の無機塩基及び有機塩基を使用することができるが、アンモニアの他、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基が好ましく、残留成分が発生しない観点からは、揮発性であるアンモニアが望ましい。
酸化剤による処理によって、基体の親水性表面の親水性が長期に亘って維持できる理由は明らかではないが、基体表面に親水性基が存在する場合は、酸化剤が、当該親水性基を基体表面に強固に固定するものと考えられる。また、塩基を併用する場合は、親水性基の固定状態を安定化するものと考えられる。
以下、本発明の作用効果についてより詳細に説明する。
本発明において、酸化剤で処理された親水性表面を有する基体は、当該親水性表面での水滴の形成が困難であり、したがって、結露形成が困難なために、防曇性を発揮することができる。特に、化粧鏡、自動車用窓内面、バックミラー等に防曇性が付与できることにより、視覚障害を低減させることができる。また、基体表面の親水性により、例えば、雨天時には基体表面に水の膜が形成されて、基体表面に付着した汚染物を流れ落とすことができ、基体表面を清浄化することができる。したがって、本発明は、基体が置かれる環境に関わらず、防曇性及び/又は防汚性を基体表面に簡便に付与することが可能である。
また、本発明では、基体の親水性表面を過酸化水素等の酸化剤、好ましくは更に塩基、で処理するという簡潔な方法により、基体表面の親水性を長期間に維持することができる。したがって、複雑な方法・装置を使用することなく、基体の防曇性及び/又は防汚性を長期間維持することが可能である。
しかも、これらの基体表面の保護作用は自然に継続されるので、基体表面の清浄な状態を長期間に亘って維持することができる。また、基体表面はセルフクリーニングされるので、基体表面の清浄化のためのメンテナンスは不要であり、労力を大幅に低減することができる。
そして、本発明の基体表面に正電荷物質及び/又は負電荷物質が存在する場合、特に、基体上の、正電荷物質及び/又は負電荷物質含有層、並びに、少なくとも酸化剤で処理された親水性物質層からなる、長期防曇性又は長期防汚性を有する積層構造の場合には、静電反発により、基体表面への汚染物への付着をより効果的に防止乃至低減することができる。以下、この点につき更に説明する。
図5(a)〜(c)は、基体表面に正電荷物質、負電荷物質、並びに、正電荷物質及び負電荷物質をそれぞれ配置し、その後、基体表面に親水性基(ここでは「−OH」で表す)を更に設けた本発明の一態様を示す概略断面図である。図示を省略しているが、図5における親水性基は少なくとも酸化剤による処理を受けている。
図6(a)〜(c)は、基体が正電荷物質、負電荷物質、並びに、正電荷物質及び負電荷物質をそれぞれ含む場合に、基体表面に親水性基(ここでは「−OH」で表す)を設けた本発明の他の一態様を示す概略断面図である。図示を省略しているが、図6における親水性基は少なくとも酸化剤による処理を受けている。
基体表面の退色乃至変色の原因の一つである汚染物質は、大気中に浮遊しているカーボン等の無機物質及び/又は油等の有機物質が基体表面に徐々に堆積することによって基体表面に付着していく。
屋内外の大気中に浮遊している汚染物質、特に油分は、太陽光をはじめとして各種の電磁波により、いわゆる光酸化反応を受けたり、燃焼排出物で、「酸化」された状態にあるといわれている。
光酸化反応とは、太陽光をはじめとした電磁波の作用により、有機物又は無機物表面の水分(HO)、酸素(O)からヒドロキシルラジカル(・OH)や一重項酸素()が生成される際に当該有機物又は無機物から電子(e)が引き抜かれて酸化される現象をいう。この酸化により、有機物では分子構造が変化し、劣化と称される変色又は脆化現象がみられ、無機物、特に金属では錆が発生する。これら「酸化」された有機物又は無機物の表面は、電子(e)の引き抜きにより、正に帯電する。
本発明では、基体表面上又は基体表面層中に正電荷、負電荷、又は、その両方が存在するので、前記有機物又は無機物を、静電反発力を利用して基体表面から自然に離脱させることができる。すなわち、本発明では、基体がもたらす静電的な反発作用によって、これらの汚染物質を基体から除去し、又は、これらの汚染物質の基体への付着を回避乃至低減することが可能である。
正電荷を帯びる基体表面(図5(a)及び図6(a))から汚染物質が除去される機構を図7に示す。なお、図7では親水性基の表示を省略する。
図7に示す態様では、基体表面上又は基体表面層中に正電荷物質が配置されており、これにより、基体表面に正電荷が付与される(図7−(1))。
基体表面に汚染物質が堆積し、太陽光等の電磁波の作用により光酸化される。こうして汚染物質にも正電荷が付与される(図7−(2))。
基体表面と汚染物質との間に正電荷同士の静電反発が発生し、反発離脱力が汚染物質に発生する。これにより、基体表面への汚染物質の固着力が低減される(図7−(3))。
風雨等の物理的な作用により、汚染物質は基体表面から容易に除去される(図7−(4))。これにより、基体はセルフクリーニングされる。
上記のように正電荷を基体表面に付与することによって、正電荷を帯びた汚染物質の基体表面への付着を回避することができる。
その一方で、汚染物質の中には水道水中の塩化物イオン等のように負電荷を帯びたもの、或いは、花粉や藻菌類等のように正電荷を当初有していたが他物体との相互作用(摩擦等)により負電荷を帯びるに至ったもの等が存在する。そこで、基体表面に負電荷を配置する(図5(b)及び図6(b))ことによって、上記と同様に、負電荷を帯びた汚染物質の基体表面への付着を回避することができる。
そして、本発明では、基体表面の親水性基が長期に亘って安定に存在することにより、雨水やシャワー水、及び、各種の散水により早期の汚れの除去と共に超親水防曇効果により水滴の生成が無いことで、水分中の汚染物の点在による汚染を防ぐことが出来る。又、防曇・防汚効果により視覚的透明性を長期に維持することが出来る。基体表面に水が存在する場合に、基体表面からの汚染物質の除去がより促進される。
しかし、正電荷又は負電荷の帯電量が比較的少ない絶縁物(例えばシリコーンオイル)からなる汚染物質は、当該物質の種類によっては、基体表面に強い正電荷又は負電荷のみが存在すると、その汚染物質の表面電荷が反転してしまい、結果的に当該基体表面に当該汚染物質が吸着する恐れがあるので、正電荷及び負電荷の両者を共存させることによって、そのような吸着を回避することができる。
正電荷及び負電荷を帯びる基体表面から汚染物質が除去される機構を図8に示す。なお、図7では親水性基の表示を省略する。
図8に示す態様では、基体表面上又は基体表面層中に既述した正電荷物質及び負電荷物質を配置することにより、正電荷及び負電荷を付与する(図8−(1))。
基体表面に汚染物質が堆積し、太陽光等の電磁波の作用により継続的に光酸化される。こうして汚染物質にも正電荷が付与される(図8−(2))。
基体表面と汚染物質との間に正電荷同士の静電反発が発生し、反発離脱力が汚染物質に発生する。これにより、基体表面への汚染物質の固着力が低減される(図8−(3))。
風雨、シャワー水等の散水物理的な作用により、汚染物質は基体表面から容易に除去される(図8−(4))。これにより、基体はセルフクリーニングされる。
そして、本発明では、基体表面の親水性基が長期に亘って安定に存在することにより、雨水や各種の散水等により基体表面に水が存在する場合に、基体表面からの汚染物質の除去がより促進されると同時に、防曇超親水により水滴痕汚染を低減することが出来る。
本発明は人工的なエネルギーを使用することなく、簡便に且つ長期に亘って、自然に汚染物質を除去できるので、屋内外の任意の分野において利用可能であり、例えば、ガラス、金属、セラミックス、コンクリート、木材、石材、高分子樹脂カバー、高分子樹脂シート、繊維(衣類、カーテン等)、シーリング剤等又はこれらの組み合わせからなる、建材;空調屋外機;厨房機器;衛生機器;照明器具;自動車;自転車;自動二輪車;航空機;列車;船舶等の屋内外で利用される物品、また、各種機械、電子機器、テレビ等のディスプレイのフェイスパネル、光学デバイス、或いは、太陽電池等に好適に使用される。特に、機器装置のフェイスパネル、浴室、洗面室等の鏡、又、冷蔵庫扉ガラスや、自動車用の窓・透明基板やミラ−に好適であり、当然、屋内外で使用される建築部材に好ましく、当該建築部材を使用して建造された家屋、ビルディング、道路、トンネル等の建築物、土木・工作物は経時的に高い効果を発揮することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に例証するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(作製例1)
メチルシリケート51(三菱化学(株)製)30g、メタノール変性アルコール(エタノール88重量%、メタノール5重量%、水7重量%の混合物)60g、純水5.7g、及び、アセチルアセトンアルミニウム0.3gを混合し60℃に加温しながら24時間撹拌することによって、固形分濃度16重量%のポリシリケート液96gを作製した。
(作製例2)
作製例1で得られたポリシリケート液5.3gを純水94.7gで希釈して固形分濃度0.85重量%のポリシリケート液100gを製造した。
(作製例3)
純水1000gにCeCl・7HO(塩化第一セリウム)1.298gを完全に溶かした溶液に、更に50%四塩化チタン溶液((株)大阪チタニウムテクノロジーズ製)20gを添加し純水を加え2000gにメスアップした溶液を準備する。この液に25%アンモニア水(高杉製薬(株)製)を10倍希釈したアンモニア水を滴下してpH7.0に調整して水酸化セリウムと水酸化チタンの混合物を沈殿させた。この沈殿物を純水で上澄み液の導電率が0.8mS/m以下になるまで洗浄した。導電率が0.679mS/mになったところで洗浄を終了すると濃度0.79重量%の水酸化物分散液650gが得られた。次に、この液を室温下で35重量%過酸化水素水(タイキ薬品工業(株)製)を112g添加し16時間撹拌すると黄褐色の透明なセリウムがドープされた濃度0.82重量%のアモルファス型過酸化チタン溶液760gが得られた。
(正電荷付与液)
固形分濃度0.85重量%の市販のアナターゼ型過酸化チタン分散液(STi−Z18−1600:サスティナブル・テクノロジー(株)製)と市販のカリウムドープポリシリケート(MS−AAAL1K10:サスティナブル・テクノロジー(株)製)を純水で固形分濃度0.85重量%に調整した液を1:1の重量比で混合したものに、市販の変性シリコーン(SH3746:東レ・ダウコーニング(株)製)を濃度0.1重量%となる量添加して正電荷付与液とした。
(負電荷付与液)
作製例2で得られたポリシリケート液と作製例3で得られたセリウムドープアモルファス型過酸化チタン溶液を1:1の重量比で混合したものに、市販の変性シリコーン(SH3746:東レ・ダウコーニング(株)製)を濃度0.1重量%となる量添加して負電荷付与液とした。
(両性電荷付与液)
市販のシリカベース正電荷付与液(MS−AAAL1K10:サスティナブル・テクノロジー(株)製)を純水で固形分濃度0.85重量%に調整した液と作製例3で得られたセリウムドープアモルファス型過酸化チタン溶液を1:1の重量比で混合したものに、市販の変性シリコーン(SH3746:東レ・ダウコーニング(株)製)を濃度0.1重量%となる量添加して両性電荷付与液とした。
(作製例4)
市販の変性シリコーン(SH3746:東レ・ダウコーニング(株))100gをメタノール変性アルコール81gで希釈して固形分濃度50重量%の変性シリコーン液181gを製造した。
(過酸化水素水)
市販の35重量%工業用過酸化水素水(タイキ薬品工業(株)製)を過酸化水素水として使用した。
(アンモニア水)
市販の工業用25wt%アンモニア水(高杉製薬(株)製)をイオン交換水で10倍希釈して濃度2.5wt%のアンモニア水を得た。
[評価基板1]
建材用青フロートガラス(厚さ3mm)上に、スポンジスキージー塗布方法で、正電荷付与液を12g/mの割合で塗布し、常温乾燥後、500℃で15分間加熱して、正電荷層(約100nm厚)を形成した。その後、常温で、作製例1で得られたポリシリケート液を、2〜3g/mの割合で塗布し、流水でSiO分を除去して親水基を形成した後に、乾燥を行った。その後、スプレーで過酸化水素水を2〜3g/mの割合で塗布し、その後、アンモニア水を同量塗布し、20分間常温乾燥して評価基板1とした。
[評価基板2]
作製例1で得られたポリシリケート液を作製例4で得られた変性シリコーン液とした以外は、評価基板1の上記製造工程を繰り返して、評価基板2を得た。
[比較基板1]
過酸化水素水の塗布及びその後のアンモニア塗布並びに常温乾燥を行わない以外は、評価基板1の上記製造工程を繰り返して、比較基板1を得た。
[比較基板2]
作製例1で得られたポリシリケート液の塗布並びにその後の流水処理及び乾燥を行わない以外は、評価基板1の上記製造工程を繰り返して、比較基板2を得た。
[比較基板3]
過酸化水素水の塗布及びその後のアンモニア塗布並びに常温乾燥を行わない以外は、評価基板2の上記製造工程を繰り返して、比較基板3を得た。
[評価基板3]
建材用青フロートガラス(厚さ3mm)上に、スポンジスキージー塗布方法で、両性電荷付与液を12g/mの割合で塗布し、常温乾燥後、500℃で15分間加熱して、正及び負電荷層(約100nm厚)を形成した。その後、常温で、作製例1で得られたポリシリケート液を、2〜3g/mの割合で塗布し、流水でSiO分を除去して親水基を形成した後に、乾燥を行った。その後、スプレーで過酸化水素水を2〜3g/mの割合で塗布し、その後、アンモニア水を同量塗布し、20分間常温乾燥して評価基板3とした。
[評価基板4]
作製例1で得られたポリシリケート液を作製例4で得られた変性シリコーン液とした以外は、評価基板3の上記製造工程を繰り返して、評価基板4を得た。
[比較基板4]
過酸化水素水の塗布及びその後アンモニア塗布並びに常温乾燥を行わない以外は、評価基板3の上記製造工程を繰り返して、比較基板4を得た。
[比較基板5]
作製例1で得られたポリシリケート液の塗布並びにその後の流水処理及び乾燥を行わない以外は、評価基板3の上記製造工程を繰り返して、比較基板5を得た。
[比較基板6]
過酸化水素水の塗布及びその後のアンモニア塗布並びに常温乾燥を行わない以外は、評価基板4の上記製造工程を繰り返して、比較基板6を得た。
[評価基板5]
建材用青フロートガラス(厚さ3mm)上に、スポンジスキージー塗布方法で、負電荷付与液を12g/mの割合で塗布し、常温乾燥後、500℃で15分間加熱して、負電荷層(約100nm厚)を形成した。その後、常温で、作製例1で得られたポリシリケート液を、2〜3g/mの割合で塗布し、流水でSiO分を除去して親水基を形成した後に、乾燥を行った。その後、スプレーで過酸化水素水を2〜3g/mの割合で塗布し、その後、アンモニア水を同量塗布し、20分間常温乾燥して評価基板5とした。
[評価基板6]
作製例1で得られたポリシリケート液を作製例4で得られた変性シリコーン液とした以外は、評価基板5の上記製造工程を繰り返して、評価基板6を得た。
[比較基板7]
過酸化水素水の塗布及びその後アンモニア塗布並びに常温乾燥を行わない以外は、評価基板5の上記製造工程を繰り返して、比較基板7を得た。
[比較基板8]
作製例1で得られたポリシリケート液の塗布並びにその後の流水処理及び乾燥を行わない以外は、評価基板5の上記製造工程を繰り返して、比較基板8を得た。
[比較基板9]
過酸化水素水の塗布及びその後アンモニア塗布並びに常温乾燥を行わない以外は、評価基板6の上記製造工程を繰り返して、比較基板9を得た。
[評価基板7]
ソーダライムガラス板(厚さ3mm)の表面を研磨、洗浄して表面の付着物を除去・乾燥後、スプレーで過酸化水素水を2〜3g/m2の割合で塗布し、表面乾燥後アンモニアを同量塗布して、更に、20分間常温乾燥して評価基板7とした。
[評価基板8]
ソーダライムガラス板(厚さ3mm)の表面を洗浄して表面の付着物を除去・乾燥後、センエンジニアリング(株)製PL16−11001Dを使用して184.9nm及び253.7nmの紫外線を照射後、スプレーで過酸化水素水を2〜3g/mの割合で塗布し、表面乾燥後アンモニアを同量塗布して、更に、20分間常温乾燥して評価基板8とした。
[比較基板10]
過酸化水素水の塗布及びその後の常温乾燥を行わない以外は、評価基板7の上記製造工程を繰り返して、比較基板10を得た。
[比較基板11]
過酸化水素水の塗布及びその後の常温乾燥を行わない以外は、評価基板8の上記製造工程を繰り返して、比較基板11を得た。
[評価基板9]
ポリカーボネート板(厚さ2mm)の表面を洗浄して表面の付着物を除去・乾燥後、センエンジニアリング(株)製PL16−11001Dを使用して184.9nm及び253.7nmの紫外線を照射後、スプレーで過酸化水素水を2〜3g/mの割合で塗布し、表面乾燥後アンモニアを同量塗布して、更に、20分間常温乾燥して評価基板9とした。
[比較基板12]
過酸化水素水の塗布及びその後の常温乾燥を行わない以外は、評価基板9の上記製造工程を繰り返して、比較基板12を得た。
(評価1)
評価基板1〜9及び比較基板1〜12について、イオン交換水を表面に滴下して、手動分度角度計を用いて目視で初期水接触角を測定した。次に、評価基板1〜9及び比較基板1〜12を水道水に浸漬後、暗室に24時間放置する作業を5回繰り返し、更に、その度に、ウェットウェスでの手動磨きを4回繰り返した。その後、イオン交換水を表面に滴下して、同様に、手動分度角度計を用いて目視で水接触角を測定した。結果を表1〜5に示す。
(評価2)
評価基板1〜9及び比較基板1〜12について、光度計V−550DS(日本分光(株))を用いて、可視光(380nm〜780nm)の平均透過率を測定した。次に、評価基板1〜9及び比較基板1〜12を水道水に浸漬後、暗室に24時間放置する作業を5回繰り返し、更に、その度に、ウェットウェスでの手動磨きを4回繰り返した。その後、同様に、光度計V−550DS(日本分光(株))を用いて、可視光(380nm〜780nm)の平均透過率を測定した。測定結果から、平均透過率の変化率を算出した。結果を表1〜5に示す
Figure 0006124276
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Figure 0006124276
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一般に、水接触角が10°以下の場合に防曇性が優れていると云える。また、可視光平均透過率の変化率が3%未満の場合に防汚性が優れていると云える。表1〜5から、本発明に対応する処理を受けた基板は、基板表面が液体物・固形物の接触を受けても親水性を維持することができ、優れた防曇性及び防汚性を発揮することが分かる。一方、酸化・塩基性化処理、或いは、ポリシリケート液又は変性シリコーン液による処理を受けていない比較基板は、基板表面が液体物・固体物の接触を受けて親水性が経時的に低下し、防曇性及び防汚性が悪化することが分かる。したがって、本発明の処理方法を施された基板は、長期間使用されても、優れた防曇性及び防汚性を発揮することができる。
また、酸化処理において、過酸化水素水とアンモニアを混合して同時に使用しても親水性表面の長期維持に有効であることが認められた。更に、親水性表面の長期維持のためには、80℃〜300℃程度加熱することが好ましいことも解った。

Claims (6)

  1. 正電荷物質及び/又は負電荷物質が配置された基体表面に、シラノール、ポリシリケート、水酸基変性シリコーン及び/又はポリエーテル変性シリコーンを塗布して親水性表面を形成し、当該親水性表面に過酸化水素水を塗布し、さらにアンモニア水を塗布する、親水性表面を有する基体の当該表面の親水性長期維持方法。
  2. 前記正電荷物質が
    (1)陽イオン;
    (2)正電荷を有する導電体又は誘電体;並びに
    (3)正電荷を有する導電体、及び、誘電体又は半導体、の複合体
    からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記負電荷物質が
    (4)陰イオン;
    (5)負電荷を有する導電体又は誘電体;
    (6)負電荷を有する導電体、及び、誘電体又は半導体、の複合体;並びに
    (7)光触媒機能を有する物質
    からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の方法。
  4. 正電荷物質及び/又は負電荷物質が配置された基体表面に、シラノール、ポリシリケート、水酸基変性シリコーン及び/又はポリエーテル変性シリコーンを塗布して親水性表面を形成し、当該親水性表面に過酸化水素水を塗布し、さらにアンモニア水を塗布する、長期防曇性又は長期防汚性を備える基体の製造方法。
  5. 正電荷物質及び/又は負電荷物質が配置された基体表面に、シラノール、ポリシリケート、水酸基変性シリコーン及び/又はポリエーテル変性シリコーンを塗布して親水性表面が形成され、当該親水性表面に過酸化水素水が塗布され、さらにアンモニア水が塗布された、親水性表面を有する長期防曇性又は長期防汚性を備える基体。
  6. 基体上の、正電荷物質及び/又は負電荷物質含有層、並びに、シラノール、ポリシリケート、水酸基変性シリコーン及び/又はポリエーテル変性シリコーンを塗布して親水性表面を形成し、当該親水性表面に過酸化水素が塗布され、さらにアンモニア水が塗布された親水性物質層からなる、長期防曇性又は長期防汚性を有する積層構造。
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