以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下では、電磁リレーの電磁石ブロックが形成される側を前後方向前側、可動接点部および固定接点部が設けられている側を前後方向後側と規定する。また、ケースが取り付けられる方向を上下方向と規定する。そして、前後方向および上下方向と直交する方向を幅方向と規定する。
また、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
図1〜図8は、本発明にかかる電磁リレーの第1実施形態を示した図である。図7に示すように、本実施形態の電磁リレー1は、ケース2、ベース30、電磁石ブロック10、接極子16、可動接点部21および固定接点部22を備えている。
ベース30は、絶縁材料である合成樹脂によって形成されており、図5に示すように、略中央部に平面視で略コ字状の絶縁壁31を備えている。この絶縁壁31の前面側(図7の左側)には、電磁石ブロック10を収納する電磁石収納部34が形成されている。一方、後面側(図7の右側)には、壁部32が設けられており、絶縁壁31と壁部32によって囲まれた接点収納部33が形成されている。接点収納部33には、可動接点部21および固定接点部22が配設される。また、絶縁壁31は、電磁石ブロック10と接点部(可動接点部21および固定接点部22)とを遮断する作用を有している。
電磁石ブロック10は、継鉄14、コイルブロック11および鉄心15で構成されている。
継鉄14は、略L字状に折り曲げ形成されており、継鉄14の底板14a上にはコイル12をコイルボビン13に巻装することで形成されるコイルブロック11が載置されている。また、コイル12はベース30に植設されるコイル端子19に接続される。鉄心15は、胴部15bと、胴部15bの頭部に配置された鍔状の吸着片15aと、を備えており、胴部15bをコイルボビン13の貫通孔13aに通した状態で、継鉄14の底板14aの取付孔14bに固定されている。
接極子16は、磁極片16aと垂設片16bとを備えており、磁極片16aと垂設片16bとでL字状に形成されている。本実施形態では、接極子16は、側面視で、磁極片16aが上部かつ略水平方向に延在し、垂設片16bが下部かつ略垂直方向に延在するように逆L字状に配置されている。そして、継鉄14の上端両側から突設された挟持片14cが磁極片16aの両側に形成された切欠き凹所16cに係合することで、接極子16が揺動自在に支承される。この接極子16の磁極片16aは、鉄心15の吸着片15aに対向する位置に配置されている。
ヒンジばね18は、接極子16と継鉄14との間に介装されており、上部に、後述する絶縁部17の上部を押圧するばね片18aが形成されている。そして、コイル12への非通電時(電磁石ブロック10の非励磁時)には、このばね片18aの押圧力によって、接極子16の磁極片16aが鉄心15の吸着片15aから引き離された状態で保持される。一方、コイル12への通電時(電磁石ブロック10の励磁時)には、鉄心15の吸着片15aの磁力がばね片18aの押圧力に勝って、接極子16の磁極片16aが鉄心15の吸着片15aに接触する。
そして、このような接極子16の動作(揺動)に応じて揺動する可動接点部21が、絶縁部17を介して接極子16の垂設片16bに取り付けられている。
この可動接点部21には可動接点21aが設けられており、可動接点部21の揺動に応じて可動接点21aが固定接点部22に設けられた固定接点22aと接離することで、接点切換が行われる。
本実施形態では、可動接点部21は、絶縁部17を介して接極子16の垂設片16bに取り付けられる固定片23と、一端側がその固定片23に連結され、他端側に一対(複数)の可動接点21aが設けられる可動ばね(可動接点保持部)24と、を備えている。
本実施形態の可動ばね24は、上下方向に延在して上端に取付穴24dが形成された連結片24aと、連結片24aの下端から水平方向かつ後方に延設される底板24bと、底板24bの後端から上方に向けて立ち上がる立ち上がり片24cと、を備えている。
そして、立ち上がり片24cに、可動接点21aが後方を向くように固着されている。本実施形態では、底板24bは、二股に分岐した形状をしており、各分岐部分の後端にそれぞれ立ち上がり片24cが形成されている。このような可動接点部21とすることで、可動接点21aが絶縁部17よりも後方に突出した状態となり、可動接点21aと絶縁部17が平面視でオーバーラップしないようになる。
そして、この固定片23および可動ばね24は、図6に示すように、それぞれ2組設けられている。すなわち、本実施形態の電磁リレー1には、4つの可動接点21aが設けられていることとなる。
そして、固定接点部22は、固定接点22aが1つずつ固着された4個の固定接点板26で構成されており、ベース30の接点収納部33に取り付けられている。
具体的には、図7に示すように、固定接点板26は、クランク状に折り曲げ形成されており、この固定接点板26の上端に、固定接点22aが固着されている。なお、固定接点板26は、必ずしもクランク状に折り曲げ形成させる必要はなく様々な形状とすることができる。例えば、折り曲げ形成されていない、側面視で直線状の固定接点板を用いることも可能である。
そして、固定接点22aが上部かつ後方に位置する状態で、固定接点板26を接点収納部33に下方から挿入することで、固定接点板26がベース30の接点収納部33に取り付けられている。このとき、4個の固定接点板26は、4つの固定接点22aが4つの可動接点21aにそれぞれ対向するように取り付けられている。そして、コイル12への非通電時(電磁石ブロック10の非励磁時)には、4つの固定接点22aと4つの可動接点21aとが、ベース30の接点収納部33の後面側(図7の右側)に離間して配設されるようにしている。一方、コイル12への通電時(電磁石ブロック10の励磁時)に、可動接点部21が揺動した際には、4つの可動接点21aが、互いに対向する4つの固定接点22aに接近して当接するようになっている。
また、本実施形態では、電磁リレー1に、可動接点21aと固定接点22aとが接離する際に生じるアークを伸長させるアーク伸長空間Sを形成している。
具体的には、図2に示すように、ケース2の内側に、壁部2aおよび側壁2bを設けている。そして、各部材を取り付けたベース30をケース2で覆った際に、一対の対応する可動接点21aおよび固定接点22a(互いに接離する接点)が壁部2aおよび側壁2bで囲われるようにしている。本実施形態では、この壁部2a、側壁2bで仕切られた空間がアーク伸長空間Sとなっている。このとき、壁部2aによって固定接点22aと絶縁部17とが画成されることとなる。
さらに、電磁リレー1には、可動接点21aと固定接点22aとが接離する際に生じるアークを、アーク伸長空間Sに導く磁界発生手段としての永久磁石50が設けられている。この永久磁石50は、図4および図5に示すように、対になる可動接点21aおよび固定接点22aの幅方向一端側に上下に延在するように設けられている。そして、可動接点21aと固定接点22aとが接離する際に生じるアークが、永久磁石50の磁気作用によってアーク伸長空間Sの上方に引き伸ばされるようにしている。
さらに、アーク伸長空間S内の少なくとも固定接点部22の周囲に、固定接点22aが収容されるようにアーク消弧部40を設けている。本実施形態では、このアーク消弧部40は、下方に開口した箱型をしており、固定接点22aを覆うようにアーク伸長空間S内に挿入されている。なお、アーク消弧部40の天壁42には、アークがアーク伸長空間S内に入り込みやすくなるように、小さな開口42aが形成されている。
さらに、アーク消弧部40は、アークが当接した際に、アーク消弧性ガスを発生しうる絶縁材料で形成されている。このアーク消弧部40を組成する絶縁材料としては、不飽和ポリエステルや、鎖式化合物に金属水酸化物または水和物を添加したものが好ましい。
そして、接点(対になる可動接点21aおよび固定接点22a)を覆うように収容するアーク消弧部40および永久磁石50は、磁気遮断ヨーク60によって、上方および幅方向両端が覆われている。この磁気遮断ヨーク60は、ある接点に作用させる永久磁石50が他の接点に作用するのを抑制するためのものである。
また、アーク伸長空間Sを画成する壁部(壁部2a、側壁2bおよびケース2の側壁)のうち可動ばね24側に設けられた壁部2aの下側には、立ち上がり片24cが挿入可能な開口部が形成されている。本実施形態では、壁部2aの下側およびアーク消弧部40の前壁41の下側に、開口部2cおよび開口部41aをそれぞれ形成することで、可動接点21aが形成された立ち上がり片24cをアーク伸長空間S内に挿入できるようにしている。
ここで、本実施形態では、上述した一対(複数)の可動接点21a、21aが設けられる可動ばね(可動接点保持部)24に、可動接点21a、21aのそれぞれで独立した動作を確保できる工夫を施している。
具体的には、図8(a)に示すように、本実施形態では、可動ばね24の一対の可動接点21a、21a間にスリット28を形成している。スリット28は、本実施形態では、可動ばね24の底板24bから連結片24aの上下方向の略中間位置まで伸びており、可動ばね24の連結片24a、底板24bおよび立ち上がり片24cを二股状に分岐している。このような構成により、可動ばね24には、第1の可動接点21aが設けられる第1の保持部24Aと、第1の保持部24Aと離間するとともに第2の可動接点21aが設けられる第2の保持部24Bと、が形成されることになる。また、可動ばね24には、その可動ばね24の一端部に上述した第1および第2の可動接点21a、21aが設けられる一方で、他端部には第1の保持部24Aと第2の保持部24Bとを連結する連結部24Cが設けられることになる。
このように、本実施形態では、可動ばね24に第1の保持部24Aと第2の保持部24Bとを離間させるスリット28を形成することで、第1の保持部24Aを第2の保持部24Bに対して相対移動自在に構成している。したがって、可動ばね24の第1の保持部24Aと第2の保持部24Bとは、スリット28の切れ目部分から互いに独立した動作が可能となる。
また、本実施形態では、可動ばね24をクロム銅で形成している。クロム銅は、ばね性(弾性)を有しており、このような可動ばね24自体によっても、第1の可動接点21aと第2の可動接点21aの独立動作(相対移動)を促進させるようにしている。
さらに、本実施形態では、可動ばね24における底板24bの基端側(連結片24a側)に半円状の切欠部29を設けている。切欠部29は、図8(a)では、可動ばね24の第1の保持部24A側にのみ図示されているが、実際には第2の保持部24B側にも設けられている。このような切欠部29によって、第1と第2の保持部24A、24Bの立ち上がり片24cを動作させ易くすることができ、接点(対になる可動接点21aおよび固定接点22a)間でワイピング効果を得られるようにしている。
次に、かかる構成の電磁リレー1の接点動作について説明する。
この電磁リレー1は、電磁石ブロック10が非励磁の状態のときには、ヒンジばね18のばね片18aが絶縁部17の上面を押圧しているため、接極子16は図7における時計回り方向に回動している。そのため、接極子16の磁極片16aは鉄心15の吸着片15aから開離した状態となっている。この状態では、図7に示すように、可動接点21aと固定接点22aも開離している。
そして、コイル12へ通電して電磁石ブロック10を励磁させると、継鉄14、鉄心15および接極子16を通して、接極子16の磁極片16aを鉄心15の吸着片15aに吸引する磁力が発生する。このとき、接極子16の磁極片16aは、ヒンジばね18のばね力(押圧力)に抗して鉄心15の吸着片15aに吸引され、接極子16が図7における反時計回り方向に回動する。これにともなって可動ばね24も反時計回り方向に移動し、4つの可動接点21aはそれぞれ、対向する固定接点22aに接触する。
そして、コイル12への通電を停止すると、逆の動作が行われて、可動接点21aと固定接点22aが開離する。
このように、コイル12への通電のオン・オフを切り換えることで、可動接点21aと固定接点22aとが接離することとなり、可動接点21aと固定接点22aとが接離する際にアークが生じる場合がある。
このようなアークが生じた場合、アークは、永久磁石50によってアーク伸長空間Sに導かれる。すなわち、可動接点21aと固定接点22aとが接離する際に生じたアークは、アーク消弧部40内の空間(アーク伸長空間S)に伸長される。このとき、アークは、アーク消弧部40の内面をなめるように走行して伸長する。すなわち、アークは、アーク消弧部40の内面に当接しながら伸長する。このため、アーク消弧部40からアーク消弧性のガスが生じ、当該ガスによってアークが消弧されることとなる。
一方、本実施形態では、上述したアーク伸長空間Sなどを設けることでアーク遮断性能を高めることができるようにしているが、アークによって可動接点21aと固定接点22aとが溶着してしまう虞もある。特に、可動ばね24に設けられる一対の可動接点21a、21aのうちの一方側の可動接点21aが溶着してしまった場合、従来では他方側の可動接点21aをそれと対向する固定接点22aに接触させることができなくなってしまう虞があった。しかしながら、本実施形態では、それを解決することができる。
すなわち、図9(a)に示す従来例のように、従来では可動ばね24に可動接点保持部として弾性のない可動接点板25を取り付ける構成であった。かかる構成で、一方側の可動接点21aがそれと対向する固定接点22aに溶着してしまうと、コイル12への通電の停止により、ヒンジばね18のばね力が可動接点板25に入力し、図9(b)に示すように、可動接点板25が捻れ変形してしまうことが考えられる。このような状態で、再びコイル12へ通電して電磁石ブロック10を励磁させたとしても、可動接点板25には弾性がないため、可動接点板25はその変形した状態を維持しつつ、スライド移動(一対の可動接点21a、21aが一体動作)することとなる。したがって、一方側の可動接点21aと固定接点22aとは再び接触させることができるようになるが、他方側の可動接点21aと固定接点22aとは通電しても離れた状態となり、これら他方側の接点を再び接触させることができなくなってしまう。
これに対し、本実施形態では、図8(a)に示すように、可動ばね24(可動接点保持部)にスリット28を設けるとともに、可動ばね24を弾性体で構成し、第1の保持部24Aを第2の保持部24Bに対して相対移動自在に構成している。そのため、例え可動ばね24が捻れ変形してしまったとしても、一対の可動接点(第1の可動接点と第2の可動接点)21a、21aが設けられる第1の保持部24Aと第2の保持部24Bとのそれぞれで独立した動作を行うことができる。したがって、第1の保持部24Aの可動接点(第1の可動接点)21aがそれと対向する固定接点22aと捻れ変形により離れた状態となるが、図8(b)に示すように、この状態から通電により第1の保持部24Aを相対移動させて押し込むことができるようになる。よって、第1の保持部24Aの可動接点(第1の可動接点)21aをそれと対向する固定接点22aに再び接触させることができるようになり、従来の問題を解決することができる。
以上、説明したように、本実施形態では、可動ばね(可動接点保持部)24に、第1の保持部24Aと第2の保持部24Bと連結部24Cとを形成し、第1の保持部24Aを第2の保持部24Bに対して相対移動自在に構成している。そのため、第1の可動接点21aが設けられる第1の保持部24Aと第2の可動接点21aが設けられる第2の保持部24Bとのそれぞれで独立した動作が可能となり、接点の信頼性をより高めることができる。
また、本実施形態では、可動ばね(可動接点保持部)24に、第1の保持部24Aと第2の保持部24Bとを離間させるスリット28を形成している。そのため、第1の保持部24Aと第2の保持部24Bとをより確実に相対移動させることができ、独立した動作の信頼性を高めることができる。
さらにまた、本実施形態では、可動ばね(可動接点保持部)24を弾性体で構成したので、可動ばね24にばね性(弾性)を持たせることができ、第1の保持部24Aと第2の保持部24Bの独立動作(相対移動)を促進させることができる。また、このように可動接点保持部としての可動ばね24を弾性体で構成する場合には、ワイピング効果が得られ易くなるという利点もある。なお、ワイピング効果とは、接点(対になる可動接点21aと固定接点22a)が接触した後、可動接点21aがすべって固定接点22a表面上に生成された不純物等を擦り取る効果のことである。
特に、本実施形態では、弾性体から成る可動ばね24の底板24bに切欠部29を設けたので、可動接点21aが設けられた立ち上がり片24cを動作させ易くすることができ、ワイピング効果をより確実に得ることができる。
また、本実施形態では、第1および第2の可動接点21a、21aを可動ばね(可動接点保持部)24の一端部に設けるとともに、連結部24Cを可動ばね(可動接点保持部)24の他端部に設けている。そのため、例えば連結部24Cを可動ばね24の中間部に設ける構成と比べて、第1の保持部24Aと第2の保持部24Bとをより長く分岐させることができ、第1の保持部24Aと第2の保持部24Bとを相対移動させ易くすることができる。
次に、図10〜図12を参照して、第1実施形態にかかる可動接点保持部の変形例について説明する。
図10は、可動接点保持部としての可動ばね24Aの第1変形例を示した図であり、本変形例が上記第1実施形態と主に異なる点は、可動ばね24の連結部24Cに設けられた縮径部を廃止したことにある。
以上の構成の本変形例にあっても、上記第1実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
なお、本変形例のように連結片24aを矩形状に形成した場合には、上記第1実施形態の縮径部が設けられた可動ばね24と比べてばね定数が大きくなってしまうが、製造し易くできる。
図11は、可動接点保持部としての可動ばね24Bの第2変形例を示した図であり、本変形例が上記第1変形例と主に異なる点は、スリット28の切れ目に円弧状の孔部28aを設けたことにある。
以上の構成の本変形例にあっても、上記第1実施形態および第1変形例と同様の作用、効果を得ることができる。
図12は、可動接点保持部の第3変形例を示した図であり、本変形例が上記第1実施形態と主に異なる点は、可動ばね24に可動接点保持部としての可動接点板25を取り付けたことにある。
本変形例は、従来例と同様に可動ばね24に一対の可動接点21a、21aが設けられる可動接点板25を取り付ける構成となっているが、可動ばね24と可動接点板25とにスリット28を形成している。
すなわち、可動ばね24はスリット28を介して分岐した連結片24aを備えるとともに、可動接点板25は、その分岐した連結片24aに取り付けられる一対の連結板25a、底板25bおよび立ち上がり片25cを備えている。
以上の構成の本変形例にあっても、上記第1実施形態および第1、第2変形例と同様の作用、効果を得ることができる。
なお、本変形例の場合には、可動接点板25の分、部品点数が増加してしまうことになる。換言すると、可動ばね24のみで可動接点保持部を構成する上記第1実施形態および第1、第2変形例では、部品点数を削減することができるという利点がある。
[第2実施形態]
本実施形態にかかる電磁リレー1Aは、上記第1実施形態の電磁リレー1と略同様の構成を有している。
すなわち、図13に示すように、本実施形態の電磁リレー1Aは、ケース2、ベース30、電磁石ブロック10、接極子16、可動接点部21、固定接点部22、アーク伸長空間Sおよび磁界発生手段としての永久磁石50を備えている。
ここで、本実施形態の電磁リレー1Aが、上記第1実施形態の電磁リレー1と主に異なる点は、アーク伸長空間S内にアーク消弧部40を設けないようにしたことにある。
以上の構成の本実施形態にあっても、上記第1実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。すなわち、可動接点21aと固定接点22aとが接離する際に生じるアークのアーク長を、永久磁石50によって伸長することができ、アーク消弧性能(アーク遮断性能)をより高めることができる。
また、仮にアークによって可動接点板25(可動接点保持部)に設けられた可動接点21aのうちの一方側(例えば第2の可動接点21a)が溶着してしまったとしても、可動接点板25にはスリット28が形成されている。そのため、一対の可動接点(第1の可動接点と第2の可動接点)21a、21aが設けられる第1の保持部24Aと第2の保持部24Bとのそれぞれで独立した動作が可能となり、接点の信頼性をより高めることができる。
なお、本実施形態では、上記第3変形例にかかる可動接点保持部(可動ばね24に可動接点板25を取り付ける構成)を適用したが、上記第1実施形態や上記第1、2変形例にかかる可動接点保持部(可動ばね24、24A、24B)を適用しても勿論よい。
また、図13に示す電磁リレー1Aにおいて、壁部2aをアークが当接した際に、アーク消弧性ガスを発生しうる絶縁材料(上記第1実施形態で示したアーク消弧部40と同一の材料)で形成し、壁部2aがアーク消弧部を兼ねるようにしてもよい。また、ケース2全体を上記第1実施形態で示したアーク消弧部40と同一の材料で形成してもよい。
[第3実施形態]
本実施形態にかかる電磁リレー1Bは、上記第2実施形態のアーク伸長空間S内にアーク消弧部40を設けないようにした電磁リレー1Aと略同様の構成を有している。
ここで、本実施形態の電磁リレー1Bが、上記第2実施形態の電磁リレー1Aと主に異なる点は、図14に示すように、アーク伸長空間Sを分割する分離壁70を設けたことにある。
具体的には、本実施形態にあっても、ケース2の内側に形成された壁部2aと側壁2bとによって仕切られた空間がアーク伸長空間Sとなっている。そして、その仕切られた各アーク伸長空間Sには、一対の対応する可動接点21aおよび固定接点22a(互いに接離する接点)が配置され、それぞれのアーク伸長空間Sごとに分離壁70を設けている。
分離壁70は、本実施形態では、ケース2の上壁部2dから固定接点22a側に向けて突出して設けられており、アーク伸長空間SをアークAの伸長方向に沿って縦に二分割している。
なお、本実施形態では、各アーク伸長空間Sごとに1つの分離壁70を設け、アーク伸長空間Sを二分割としたが、各アーク伸長空間Sごとに複数の分離壁70を設け、アーク伸長空間Sを三分割以上とするようにしてもよい。
以上の本実施形態によっても、上記第1および第2実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
また、本実施形態では、アーク伸長空間Sを分割する分離壁70を設けている。そのため、分離壁70を回り込ませることができるようになる分、上記第1および第2実施形態よりも、アークA長をより長くすることができ、アーク消弧性能(アーク遮断性能)をより高めることができる。
また、このようにアーク消弧性能(アーク遮断性能)を高められることは、可動接点21aと固定接点22a間で遮断することができる遮断電圧である両接点21a、22a間に発生する電圧を高められるという利点がある。
さらにまた、本実施形態では、ケース2の内側に形成された壁部2aと側壁2bとによって仕切られた空間をアーク伸長空間Sとし、そのアーク伸長空間Sに分離壁70を設けている。そのため、アーク伸長空間Sを、上記第1および第2実施形態と同様の消弧スペース寸法としつつ、アークA長を長くとることができるという利点もある。したがって、電磁リレー1Bの小型化に繋がる。
[第4実施形態]
本実施形態にかかる電磁リレー1Cは、上記第3実施形態のアーク伸長空間Sを分割する分離壁70を設けるようにした電磁リレー1Bと略同様の構成を有している。
ここで、本実施形態の電磁リレー1Cが、上記第3実施形態の電磁リレー1Bと主に異なる点は、図15に示すように、アーク伸長空間Sと面する壁面に凹凸部73を設けたことにある。
具体的には、本実施形態にあっても、ケース2の内側に形成された壁部2aと側壁2bとによって仕切られた空間がアーク伸長空間Sとなっている。そして、その仕切られた各アーク伸長空間Sには、一対の対応する可動接点21aおよび固定接点22a(互いに接離する接点)が配置され、それぞれのアーク伸長空間Sごとに分離壁70と凹凸部73とを設けている。
凹凸部73は、本実施形態では、アーク伸長空間Sと面する壁面としてケース2の上壁部2dの内面に形成されている。そして、このようにケース2の上壁部2dに分離壁70を挟んで左右両側に凹凸部73を設けることで、アークAの伸長方向に沿って凹凸部73の凹面ならびに凸面が形成されるようにしている。
以上の本実施形態によっても、上記第1〜第3実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
また、本実施形態では、アーク伸長空間Sと面する壁面に凹凸部73を設けている。そのため、凹凸部73を回り込ませることができるようになる分、上記第3実施形態よりも、アークA長をより長くすることができ、アーク消弧性能(アーク遮断性能)をより高めることができる。また、上記第3実施形態に対して、遮断電圧もより高めることができる。
さらにまた、本実施形態では、凹凸部73をアークAの伸長方向に沿って形成したので、アークAを凹凸部73により確実に入り込ませることができ、アークA長を確実に長くとることができる。
なお、本実施形態では、特徴部分である凹凸部73を分離壁70を設けた上記第3実施形態に適用するようにしたが、分離壁70を設けない上記第1および第2実施形態にあっても適用可能である。
[第5実施形態]
本実施形態にかかる電磁リレー1Dは、上記第2実施形態のアーク伸長空間S内にアーク消弧部40を設けないようにした電磁リレー1Aと略同様の構成を有している。
ここで、本実施形態の電磁リレー1Dが、上記第2実施形態の電磁リレー1Aと主に異なる点は、図16に示すように、アーク伸長空間S1、S2を分割する分離壁70Aを設けたことにある。
具体的には、本実施形態では、壁部2aの下側に形成される開口部2cを上記第2実施形態よりも上側に広くとっている。そして、壁部2aを分離壁70Aとして機能させ、分離壁70Aから固定接点22a側(図16の右側)の空間を第1のアーク伸長空間S1とし、分離壁70Aから絶縁部17側(図16の左側)の空間を第2のアーク伸長空間S2としている。したがって、本実施形態では、一対の対応する可動接点21aおよび固定接点22aに対応して複数の第1のアーク伸長空間S1が形成されるのに対し、第2のアーク伸長空間S2は、ケース2の内側に1つだけ形成されて共有することになる。
以上の本実施形態によっても、上記第1〜第4実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
また、本実施形態では、アーク伸長空間S1、S2を分割する分離壁70Aを設けている。そのため、分離壁70Aを回り込ませることができるようになる分、上記第1〜第4実施形態よりも、アークA長をより長くすることができ、アーク消弧性能(アーク遮断性能)をより高めることができる。また、上記第1〜第4実施形態に対して、遮断電圧もより高めることができる。
なお、本実施形態では、分離壁70Aによってアーク伸長空間S1、S2を二分割としたが、例えば、第1のアーク伸長空間S1に上記第3実施形態の分離壁70を追加して、アーク伸長空間を三分割以上とするようにしてもよい。
[第6実施形態]
本実施形態にかかる電磁リレー1Eは、上記第5実施形態のアーク伸長空間S1、S2を分割する分離壁70Aを設けるようにした電磁リレー1Dと略同様の構成を有している。
ここで、本実施形態の電磁リレー1Eが、上記第5実施形態の電磁リレー1Dと主に異なる点は、図17に示すように、アーク伸長空間S1、S2と面する壁面に凹凸部73を設けたことにある。
具体的には、本実施形態にあっても、壁部2aの下側に形成される開口部2cを上側に広くとり、壁部2aを分離壁70Aとして機能させている。そして、分離壁70Aから固定接点22a側の空間を第1のアーク伸長空間S1とし、分離壁70Aから絶縁部17側の空間を第2のアーク伸長空間S2とし、これら第1と第2のアーク伸長空間S1、S2のそれぞれに凹凸部73を設けている。
凹凸部73は、本実施形態では、アーク伸長空間S1、S2と面する壁面としてケース2の上壁部2dの内面と、ベース30の中央壁35の可動ばね24側の面とにそれぞれ形成されている。そして、これら一対の凹凸部73は、いずれもアークAの伸長方向に沿って凹凸部73の凹面ならびに凸面が形成されるようにしている。
以上の本実施形態によっても、上記第1〜第5実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
また、本実施形態では、アーク伸長空間S1、S2と面する壁面に凹凸部73を設けている。そのため、凹凸部73を回り込ませることができるようになる分、上記第5実施形態よりも、アークA長をより長くすることができ、アーク消弧性能(アーク遮断性能)をより高めることができる。また、上記第5実施形態に対して、遮断電圧もより高めることができる。
さらにまた、本実施形態では、凹凸部73をアークAの伸長方向に沿って形成したので、アークAを凹凸部73,73により確実に入り込ませることができ、アークA長を確実に長くとることができる。
[第7実施形態]
本実施形態にかかる電磁リレー1は、上記第1実施形態の電磁リレー1と略同様の構成を有している。
すなわち、本実施形態の電磁リレー1は、ケース2、ベース30、電磁石ブロック10、接極子16、可動接点部21、固定接点部22、アーク伸長空間Sおよび磁界発生手段としての永久磁石50を備えている。
そして、図7および図18(a)、(b)に示すように、可動接点部21は、可動ばね(可動接点保持部)24の少なくとも連結部24Cと重なるように配置され、その連結部24Cの上端部(先端部)24fが接合される板状の固定片(固定部)23を備えている。
なお、上述したように、可動ばね24の上端部24fには一対の取付穴24d(図8(a)参照)が形成されており、その取付穴24dと固定片23の取付穴(図示せぬ)とが固定部材27によって例えばリベット接合されるようになっている。固定片23は、絶縁部17を介して接極子16の垂設片16bに取り付けられるようになっており、これにより、接極子16の揺動に伴って可動接点部21の固定片23と可動ばね24とが一体に揺動することとなる。
ここで、本実施形態の電磁リレー1が、上記第1実施形態の電磁リレー1と主に異なる点は、可動ばね24と固定片23とが重なる対向面24g,23aのうち何れか一方に凸部20を設けたことにある。
具体的には、図18(a)、(b)に示すように、本実施形態では、凸部20を固定片23の対向面23aに設けており、その対向面23aから可動ばね24側に向けて円弧状に突出している。このとき、凸部20は、一対の対向面24g,23aにおける連結部24Cの上端部(先端部)24f側とは反対側の端部23bに設けられるのが好適である。
図19は、可動ばね24の動作を示した図であって、(a)は可動接点21aと固定接点22aとを接触させるON時の動作を示した図、(b)は可動接点21aと固定接点22aとを離間させるOFF時の動作を示した図である。
コイル12へ通電して接極子16の磁極片16aを鉄心15の吸着片15aに吸引させると、図7の状態から接極子16と連動して可動ばね24が図19(a)の矢印aの方向に回動し、可動接点21aと固定接点22aとが接触してONの状態となる。一方、コイル12への通電を停止すると、逆の動作が行われて、接極子16と連動して可動ばね24が図19(b)の矢印bの方向に回動し、可動接点21aと固定接点22aとが離間してOFFの状態となり、図7の状態に戻る。
このとき、本実施形態では、可動ばね24と固定片23とが重なる対向面24g,23aのうち何れか一方に凸部20を設けている。そのため、上述したように、アークによって可動接点21aと固定接点22aとが溶着してしまった場合でも、凸部20によって可動ばね24に矢印b方向(即ち、可動接点21aを固定接点22aから引き剥がす方向)に力を作用させることができる。したがって、二点鎖線で示す元の状態の可動ばね24に対して凸部20を作用させることで可動接点21aを固定接点22aから引き剥がし易くすることができるようになり、接点の信頼性をより高めることができる。
以上の本実施形態によっても、上記第1〜第6実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
また、本実施形態では、可動接点部21は、可動ばね(可動接点保持部)24の少なくとも連結部24Cと重なるように配置され、その連結部24Cの上端部(先端部)24fが接合される固定片(固定部)23を備えている。そして、可動ばね(可動接点保持部)24と固定片(固定部)23とが重なる対向面24g,23aのうち何れか一方に凸部20を設けている。そのため、可動接点21aが固定接点22aから離間する接点のOFF時に、図19(b)に示すように、凸部20によって可動ばね24に矢印b方向(可動接点21aを固定接点22aから引き剥がす方向)に力を作用させることができる。したがって、アークによって可動接点21aと固定接点22aとが溶着してしまった場合でも、可動接点21aを固定接点22aから引き剥がし易くすることができるようになり、接点の信頼性をより高めることができる。
さらに、本実施形態では、凸部20を一対の対向面24g,23aにおける連結部24Cの上端部(先端部)24f側とは反対側の端部23bに設けている。そのため、凸部20による可動ばね24に力が印加される部位をより接点側に近づけることができるため、引き剥がし力を増大させてより可動接点21aを固定接点22aから引き剥がし易くすることができる。
さらにまた、本実施形態では、固定片23の対向面23aに設けられる凸部20を円弧状に形成している。そのため、凸部20と可動ばね24の対向面24gとの接触時に、凸部20あるいは対向する対向面24g側の削れなどの損傷を抑制することができつつ、円弧状に突出した先端側で効果的に引き剥がし方向に力を印加することができる。
[第8実施形態]
本実施形態にかかる電磁リレー1は、上記第7実施形態の電磁リレー1と略同様の構成を有している。
ここで、本実施形態の電磁リレー1が、上記第7実施形態の電磁リレー1と主に異なる点は、固定片(固定部)23Aを可動ばね(可動接点保持部)24の第1の保持部24Aおよび第2の保持部24Bと重なる位置まで延設したことにある。
具体的には、図20(a)、(b)に示すように、本実施形態にあっても、凸部20が固定片23の対向面23aに設けられており、その対向面23aから可動ばね24側に向けて円弧状に突出している。また、凸部20は、一対の対向面24g,23aにおける連結部24Cの上端部(先端部)24f側とは反対側の端部23bに設けられている。
そして、固定片23Aは、連結部24Cから二股状に分岐した第1の保持部24Aおよび第2の保持部24Bをオーバーラップする位置であって、本実施形態では、可動ばね24の底板24bの近傍まで延設されている。
以上の本実施形態によっても、上記第1〜第7実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。すなわち、可動接点21aが固定接点22aから離間する接点のOFF時に、凸部20によって可動ばね24に可動接点21aを固定接点22aから引き剥がす方向に力を作用させることができる。したがって、アークによって可動接点21aと固定接点22aとが溶着してしまった場合でも、可動接点21aを固定接点22aから引き剥がし易くすることができ、接点の信頼性をより高めることができる。
また、本実施形態では、固定片(固定部)23Aを可動ばね(可動接点保持部)24の第1の保持部24Aおよび第2の保持部24Bと重なる位置まで延設している。そのため、凸部20による可動ばね24に力が印加される部位をさらに接点側に近づけることができるため、引き剥がし力を増大させてより一層可動接点21aを固定接点22aから引き剥がし易くすることができる。
[第9実施形態]
本実施形態にかかる電磁リレー1は、上記第7および第8実施形態の電磁リレー1と略同様の構成を有している。
ここで、本実施形態の電磁リレー1が、上記第7および第8実施形態の電磁リレー1と主に異なる点は、凸部20Aを可動ばね(可動接点保持部)24の対向面24gに設け、その対向面24gから固定片(固定部)23側に向けて円弧状に突出したことにある。
凸部20Aは、図21(a)、(b)に示すように、可動ばね24の一部を湾曲することにより形成されており、本実施形態にあっても、一対の対向面24g,23aにおける連結部24Cの上端部(先端部)24f側とは反対側の端部23bに設けられている。
そして、本実施形態では、可動接点21aの引き剥がし時に、凸部20Aが固定片23の対向面23aと接触することで、可動ばね24に引き剥がし方向の力が入力されることとなる。
以上の本実施形態によっても、上記第1〜第8実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。すなわち、可動接点21aが固定接点22aから離間する接点のOFF時に、凸部20Aによって可動ばね24に可動接点21aを固定接点22aから引き剥がす方向に力を作用させることができる。したがって、アークによって可動接点21aと固定接点22aとが溶着してしまった場合でも、可動接点21aを固定接点22aから引き剥がし易くすることができ、接点の信頼性をより高めることができる。
なお、本実施形態では、凸部20Aを可動ばね24の連結部24Cに設けたが、凸部20Aを第1の保持部24Aおよび第2の保持部24Bに設け、固定片23を第1の保持部24Aおよび第2の保持部24Bと重なる位置まで延設するようにしても勿論よい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記各実施形態では、絶縁部17を介して可動接点部21が接極子16に取り付けられたものを例示したが、絶縁部17を介さずに可動接点部21を接極子16に取り付けるようにしてもよい。
また、上記第2〜第6実施形態にかかる電磁リレー1A〜1Eでは、上記第3変形例にかかる可動接点保持部(可動ばね24に可動接点保持部としての可動接点板25を取り付ける構成)を適用している。しかしながら、これに限定されず、上記第1実施形態や上記第1、2変形例にかかる可動接点保持部(可動ばね24、24A、24B)を適用しても勿論よい。
また、接極子16やヒンジばね18、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。