JP6119716B2 - プレス成形方法及びプレス成形用金型 - Google Patents

プレス成形方法及びプレス成形用金型 Download PDF

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Description

本発明は、金属板のプレス成形方法に関し、特に、ブランク材の天板部を板押えで押さえてプレス成形するプレス成形方法及びプレス成形用金型に関するものである。
従来より、金属板のプレス成形時には金型の一方に被加工材である金属板の移動を抑えるための板押えが用いられている(例えば特許文献1〜4)。従来のプレス成形方法では、ブランク材の天板部分の全面を板押えで押えることが多い。しかし、伸びフランジ成形又は縮みフランジ成形においては、金属板の変形が板押えによって制限されてしまうため、引張変形又は圧縮変形が集中するフランジ部では成形後に割れやシワが発生するという問題がある。
そこで、発明者は特許文献5及び6に示すプレス成形方法を開発した。該プレス成形方法では、図25及び図26(a)に示すように、金型71の板押え77の端部を凹状外周縁部のR止まりに相当する部位から所定の距離を離して、ブランク材9をダイ73の天板に載置する。次いで、パンチ75を下動して縦壁部を成形する縦壁成形工程(図26(b)参照)において、ブランク材9の板押え77で押さえていない部位がダイ73の天板面から浮き上がるような変形が生じる。その結果、ブランク材9の縦壁部の屈曲部7aにおける圧縮変形又は引張変形が緩和され、フランジ部での割れやシワの発生が抑制される。
特開2012−245536 特開2012−51005 特開2011−218388 特開2004−154786 特願2013−243525 特願2013−243527
しかし、図27中のGに示す箇所において、ブランク材9の表面に急峻な折れ曲がりが発生する場合があることが分かった。ブランク材の天板部の外周縁部のR止まりから所定の距離Lを離して板押えを配置してプレス成形を行う際、板押えの端部形状におけるブランク材に接する面と縦壁部が直交交差する「ピン角」の板押えを用いた場合、ブランク材の浮き上がるような変形に伴って該端部付近でブランク材の表面に塑性変形が生じる(図26(b))。この塑性変形は図26(c)に示す天板部を平坦に成形する天板部成形工程においても解消されない。
このような問題はプレス成形品の形状精度あるいは外観の点から好ましいものではなく、凸状屈曲部を有する縮みフランジ成形及びドロー成形においても生じる可能性がある。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、板押えの端部形状におけるブランク材表面の折れ曲がりを低減可能なプレス成形方法及びプレス成形用金型を提供することを目的とする。
(1)本発明に係るプレス成形方法は、天板部と、該天板部における外周縁部に沿って成形された縦壁部とを有する成形品をプレス成形するプレス成形方法であって、ブランク材における前記天板部に相当する部位の一部を板押えによって押える板押え工程と、前記縦壁部を成形する縦壁成形工程を備えており、前記板押え工程は、前記天板部の前記外周縁部のR止まりから所定の距離を離して板押えを行い、かつ前記板押えの先端部が、水平面の先端から延び出す延出部を有し、該延出部の全部が、下式で示される前記水平面の先端からの垂線上に中心を持ち前記水平面に内接して形成される曲率半径rの仮想の円弧状曲面の内側にあり、かつ前記延出部の一部又は全部が前記円弧状曲面に内接する部位を有する形状であることを特徴とするものである。
r0<r≦15*r0
r0:ピン角の板押えを用いて天板部を押えることにより発生するブランク材の円弧状曲面の曲率半径
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記延出部の形状が、円弧状曲面であることを特徴とするものである。
(3)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記延出部の形状が、曲率の異なる曲面の組み合わせで構成されていることを特徴とするものである。
(4)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記延出部の形状が、傾斜の異なる平面の組み合わせで構成され、平面同士の境界の一部又は全部が前記仮想の円弧状曲面に内接することを特徴とするものである。
(5)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記延出部の形状が段形状であり、段の一部又は全部の角が前記仮想の円弧状曲面に内接することを特徴とするものである。
(6)本発明に係るプレス成形用金型は、天板部と、該天板部における外周縁部に沿って成形された縦壁部とを有する成形品をプレス成形する際に用いるプレス成形用金型であって、該プレス成形用金型はブランク材における天板部に相当する部位の一部を押える板押えを備えており、該板押えはその先端部が、水平面の先端から延び出す延出部を有し、該延出部の全部が下式で示される前記水平面の先端からの垂線上に中心を持ち前記水平面に内接して形成される曲率半径rの仮想の円弧状曲面の内側にあり、かつ前記延出部の一部又は全部が前記円弧状曲面に内接する部位を有する形状であることを特徴とするものである。
r0<r≦15*r0
r0:ピン角の板押えを用いて天板部を押えることにより発生するブランク材の円弧状曲面の曲率半径
(7)また、上記(6)に記載のものにおいて、前記延出部の形状が、円弧状曲面であることを特徴とするものである。
(8)また、上記(6)に記載のものにおいて、前記延出部の形状が、曲率の異なる曲面の組み合わせで構成されていることを特徴とするものである。
(9)また、上記(6)に記載のものにおいて、前記延出部の形状が、傾斜の異なる平面の組み合わせで構成され、平面同士の境界の一部又は全部が前記仮想の円弧状曲面に内接することを特徴とするものである。
(10)また、上記(6)に記載のものにおいて、前記延出部の形状が段形状であり、段の一部又は全部の角が前記仮想の円弧状曲面に内接することを特徴とするものである。
本発明に係るプレス成形方法及びプレス成形用金型によれば、板押え工程においては、天板部の外周縁部のR止まりから所定の距離を離して板押えを行い、かつ前記板押えの先端部は水平面の先端から延び出す延出部を有し、該延出部の全部が下式で示される前記水平面の先端からの垂線上に中心を持ち前記水平面に内接して形成される曲率半径rの仮想の円弧状曲面の内側にあり、かつ前記延出部の一部又は全部が前記円弧状曲面に内接する部位を有する形状とすることにより、板押えの端部におけるブランク材の折れ曲がりを抑制することができる。
r0<r≦15*r0
r0:ピン角の板押えを用いて天板部を押えることにより発生するブランク材の円弧状曲面の曲率半径
また、本発明に用いる金属板や金型構造は一般のプレス成形とほぼ同一のため、本発明のプレス成形方法及びプレス成形用金型を用いることで製造コストが増加する懸念もない。
本発明の実施の形態1に係るプレス成形方法に用いられるプレス成形金型及び板押え端部の要部の説明図である。 本発明の実施の形態1に係るプレス成形方法の説明図である。 本発明の実施の形態1に係るプレス成形方法によって成形されるプレス成形品の説明図である。 本実施の形態1におけるプレス成形方法の板押え端部の曲率半径と相当塑性ひずみ最大値との関係を示すグラフである。(板厚1.2mm、材質590MPa級) 本実施の形態1におけるプレス成形方法の縦壁成形工程における板押え端部近傍に発生するブランク材曲がりの曲率半径の定義を示す説明図である。 本実施の形態1におけるプレス成形方法の板押え端部の曲率半径と相当塑性ひずみ最大値との関係に対する板厚の影響を示すグラフである。(板厚0.6mm及び1.8mm) 本発明の実施の形態1におけるプレス成形方法の板押え端部の曲率半径と相当塑性ひずみ最大値との関係に対する材質の影響を示すグラフである。(材質270MPa級及び980MPa級) 板押え端部の好ましい形状の例を示す図である(その1)。 板押え端部の好ましい形状の例を示す図である(その2)。 本発明の実施の形態2に係るプレス成形方法によって成形されるプレス成形品の説明図である。 本発明の実施の形態2に係るプレス成形方法に用いられるプレス成形金型の説明図である。 本発明の実施の形態2のプレス成形方法におけるブランク材の塑性変形の発生を示す解析結果である。 本発明の実施の形態2におけるプレス成形方法の板押え端部の曲率半径と相当塑性ひずみ最大値の関係を示すグラフである。(板厚1.2mm、材質590MPa級) 本発明の実施の形態3におけるプレス成形方法によって形成されるプレス成形品形状の説明図である。 本発明の実施の形態3におけるプレス成形方法の説明図である。 本発明の実施の形態3におけるプレス成形方法に用いられるプレス成形金型及び板押えの要部の説明図である。 本発明の実施形態3におけるプレス成形方法に用いられる板押え形状の説明図である。 本発明の実施形態3のプレス成形方法におけるブランク材の折れ曲がり発生の説明図である。 本発明の実施形態3におけるプレス成形方法の板押え端部の曲率半径と相当塑性ひずみ最大値との関係を示すグラフである。(板厚1.2mm、材質590MPa) 本発明に係るプレス成形方法における板押え端部の曲率半径と相当塑性ひずみ最大値との関係に対する成形モードの影響を示すグラフである。 実施例においてピン角端部の板押えを用いて得られた成形品形状のシミュレーション結果の図である。 実施例において円弧状曲面を有する板押えを用いて得られた成形品形状のシミュレーション結果の図である。 実施例においてピン角端部の板押えを用いて得られた成形品の実験結果の写真である。 実施例において円弧状曲面を有する板押えを用いて得られた成形品の実験結果の写真である。 本発明に至った経緯を説明するプレス成形方法に用いるプレス成形金型を示す説明図である。 本発明に至った経緯を説明するプレス成形方法の説明図である。 本発明に至った経緯を説明する板押え端部におけるブランク材の折れ曲がりを示す説明図である。
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1に係るプレス成形方法は、図3に示す外周縁の一部が内方に凹んだ凹状外周縁部3を有する天板部5と、天板部5における凹状外周縁部3に沿って曲げ成形された縦壁部7を有する成形品1をプレス成形する伸びフランジ成形方法である。該伸びフランジ成形方法は、ブランク材9における天板部5に相当する部位の一部を板押え17によって押える板押え工程(図2(a)参照)と、縦壁部7を成形する縦壁成形工程(図2(b)参照)と、天板部5を平坦に成形する天板部成形工程(図2(c)参照)を備えている。以下、本発明の実施の形態1に係るプレス成形方法について図1〜図8に基づいて詳細に説明する。
<成形品>
本実施の形態1におけるプレス成形の目標形状となる成形品1は、図3に示すように、外周縁の一部が内方に凹んだ凹状外周縁部3を有する天板部5と、天板部5における凹状外周縁部3に沿って曲げ成形された縦壁部7を有するものである。このような形状の成形品1は、縦壁部7が伸びフランジ変形となり、縦壁部7の屈曲部7aに伸び変形が集中し、当該部位に割れが発生しやすい。
<プレス成形金型>
本発明に係るプレス成形に用いる金型11は、図1に例を示すように、下金型となるダイ13と、パンチ15と、ブランク材9を押える板押え17を備えている。
板押え17の先端部は図1の丸で囲った箇所Aに円弧状曲面である例を示すとおり、板押え17の水平面からの延出部を有する。板押え17によるブランク材9をダイ13に押圧する押圧力は、パンチ15の移動による成形においても天板部5の板押えをしている部位に変形が生じないような十分強い圧力であることが望ましい。
<プレス成形方法>
次に、上記金型11を用いたプレス成形方法について、前述した板押え工程、縦壁成形工程及び天板部成形工程を詳細に説明する。
≪板押え工程≫
板押え工程は、図2(a)に示すように、ブランク材9をダイ13の上面に載置して板押え17で押さえる工程である。
ブランク材9は、縦壁部7に相当する部位をパンチ15で押し曲げ可能なように載置する。板押え17は、その板押え端部を天板部5における凹状外周縁部3のR止まりに相当する部位から所定の距離だけ離して配置する。こうすることで、次の縦壁成形工程において、ブランク材9の板押えをしていない部位がある程度自由に変形することが可能となり、屈曲部位7aにおける割れを抑制できる。
また、板押え17の端部は図2(b)に円弧状曲面の一例を示すとおり、板押え17の水平面からの延出部を有する。この延出部は、板押え17の端部の先端から板押え17とブランク材が接する箇所までの距離を有し、この距離は4mm以上30mm以下が好ましい。端部先端から板押え17とブランク材9が接する箇所までの距離が4mm未満では、ピン角と同様に板押え17の端部形状によりブランク材9の表面が折れ曲がり易く問題であり、30mmを超えると、当該箇所のブランク材9が自由変形して天板部成形工程(図2(c)参照)により、天板部5を十分平坦にできない場合がある。
板押え17の端部の具体的形状及び所定範囲については、詳細を後述する。
≪縦壁成形工程≫
縦壁成形工程は、図2(a)の状態から、パンチ15を移動させて、図2(b)に示すように、曲げ成形を行って凹状外周縁部3と縦壁部7を形成する工程である。この工程では、板押え17が天板部5における凹状外周縁部3のR止まりから所定の距離だけ離して配置してあるため、ブランク材9の板押えをしていない部位が浮き上がるような変形となり、屈曲部位7aにおける割れが抑制される。また、板押え17の端部を円弧状曲面としているので、ブランク材9の天板部5に折れ曲がりが生じることが抑制される。
≪天板部成形工程≫
天板部成形工程は、図2(c)に示すように、図2(b)の状態からパンチ15をさらに移動させて、縦壁成形工程において天板部5の板押えをしていない部位、すなわち、天板部5の凹状外周縁部3のR止まりから板押え17の端部までの部位について成形を行う工程である。
縦壁成形工程において天板部5の板押えしていない部位に発生した浮き上がりは、次の天板部成形工程においてパンチ15が移動し、パンチ15の下死点においてダイ13とパンチ15に狭圧されることにより平坦に成形される(図2(c)参照)。このとき縦壁部7は圧縮変形を受ける。しかし、その変形は縦壁部7全体に広く分散されるため、シワが発生することはない。このようにして、金型形状と同一形状のプレス成形品を得ることができる。
<板押え端部の形状とその範囲>
板押え17の端部を一例として円弧状曲面とすることにより、天板部5の折れ曲がりが抑制される効果を検証するため、該板押え端部の円弧状曲面の曲率半径を変更してプレス成形解析を実施した。なお、円弧状曲面の曲率中心は板押え17の水平面の先端からの垂線上とし、円弧状曲面は板押え17の水平面に内接するようにした。
該プレス成形解析においては、前記端部付近におけるブランク材9の相当塑性ひずみ最大値を求めた。ここで相当塑性ひずみ最大値に着目したのは、天板部5の板押え端部形状の転写や折れ曲がりが塑性変形によるものであり、前記端部付近の塑性ひずみ最大値を低減することができれば、折れ曲がり変形が抑制されるためである。
プレス成形解析は有限要素法を用いたコンピュータ解析により行った。解析プログラムとしてはLSTC社製のLS−DYNAバージョン971の動的陽解法ソルバーを用いた。
図4は、板厚1.2mm、引張強度590MPa級の高張力鋼板をブランク材9として、伸びフランジ成形した場合における板押え17の端部の曲率半径r(mm)と、該板押え端部付近の相当塑性ひずみ最大値との関係を示すグラフである。また、表1に伸びフランジ成形における板押え17の端部の曲率半径と相当塑性ひずみ最大値の結果を示す。
図4より、板押え17の端部の曲率半径rの増加とともに相当塑性ひずみ最大値は一旦減少し、r=56mmから96mmの範囲において極小値を示し、r=96mm以上に曲率半径を増加すると相当塑性ひずみ最大値が増加する結果となった。この結果より、1)板押え17の端部を円弧状曲面形状にすることにより、成形過程において該板押え端部付近のブランク材に発生する塑性ひずみ量が減少する、2)前記板押え端部付近に生じる相当塑性ひずみ量を減少させるのに適した曲率半径の範囲(以下、好適範囲と記す)が存在することがわかる。
以下、板押え17の端部の曲率半径の好適範囲について検討を進める。該板押え端部がピン角の板押えを用いた場合、ブランク材9の天板部5に折れ曲がりが発生する場合が見られたことから、少なくともピン角端部付近のブランク材9の曲がりの曲率半径よりも板押え17の端部の曲率半径を大きくすることにより、ブランク材9の折れ曲がりを抑制できるのではないかと考えた。そこで、前記板押え端部の曲率半径に対する好適範囲の下限値については、板押え端部が円弧状曲面でないピン角の板押え18を用いた場合にブランク材9に生じる曲率半径r0を基準とする(図5参照)。
板厚1.2mm、引張強度590MPa級の高張力鋼板をピン角端部の板押え18を用いて伸びフランジ成形を行うプレス成形解析を実施した結果、該板押え端部付近におけるブランク材9の曲率半径はr0=25mmであった。表1より、板押え端部がピン角の場合においては相当塑性ひずみ最大値が0.065であるのに対し、板押え端部の曲率半径がr0=25mm以上であるr=32mmの場合では相当塑性ひずみ最大値は0.051となり、ピン角端部の場合に比べて約18%減少した。これより、板押え17の端部の円弧状曲面の曲率半径をピン角の場合においてブランク材9に生じた曲率半径を超える値とすることにより塑性ひずみ量を低減、すなわち、ブランク材9の折れ曲がりを抑制することが可能となる。
一方、板押え17の端部の円弧状曲面の曲率半径に関する好適範囲の上限値に関しては、ピン角端部を用いた場合におけるブランク材9の相当塑性ひずみ最大値と板押え端部を円弧状曲面とした時の相当塑性ひずみ最大値との差の最大の値Δεmaxを求め、この差の半分の値をピン角端部を用いた場合の相当塑性ひずみ最大値から差し引いた値以下となるときの曲率半径を目安とする。例えば、表1の板厚1.2mm、590MPa級鋼板の場合、円弧状曲面端部の曲率半径がr=56mm〜96mmの時にピン角端部との相当塑性ひずみ最大値の差Δεmaxが最も大きくなり(Δεmax=0.065-0.042=0.023)、Δεmaxの半分の値は0.0115となる。したがって、ピン角の相当塑性ひずみ最大値0.065からΔεmaxの半分の値を差し引くと、0.065-0.0115=0.0535となり、この値と表1の相当塑性ひずみ最大値とを比較すると、ブランク材9の曲率半径r0=25mm以上ではr=256mmまで相当塑性ひずみ最大値が前記0.0535以下となる。したがって、この場合においては、r=256mmとr=512mmの中間に曲率半径の上限値があり、ブランク材9の曲率半径r0の約15倍とした。
すなわち、
r0<r≦15*r0・・・(1)
とした。
上記の方法により求めた板押え17の端部に設けた円弧状曲面の曲率半径の好適範囲が、板厚、又は材質の異なる鋼板においてもブランク材9の天板部における折れ曲がりを抑制するのに適しているかどうかについて検討した。表2に板厚及び材質を変更した場合の伸びフランジ成形における板押え17の端部の曲率半径と相当塑性ひずみ最大値の結果を示す。
図6は、表2のうち板厚が0.6mm及び1.8mm、引張強度が590MPa級の高張力鋼板をブランク材9として用いて伸びフランジ成形した場合における板押え17の端部の曲率半径rと、該板押え端部付近の相当塑性ひずみ最大値との関係を示すグラフである。
図7は、表2のうち板厚1.2mmのブランク材9において、その材質を270MPa級及び980MPa級の鋼板を用いたときの板押え端部曲率半径と板押え端部付近の相当塑性ひずみ最大値の関係を示すグラフである。
板厚又は鋼板の引張強度の違いにより、相当塑性ひずみ最大値は変化するものの、板押え端部の曲率半径の増加に伴い相当塑性ひずみ最大値は一旦減少し、極小値を示した後に増加する傾向が確認された。そこで、板厚又は引張強度が異なるブランク材9においても、板押え17の端部における円弧状曲面の曲率半径の好適範囲を検討した。
この好適範囲の下限値を、前述の板厚1.2mm、引張強度590MPa級の鋼板の場合と同様、ピン角端部の板押え18を用いた時に前記板押え端部付近に生じるブランク材9の変形の最小曲率半径をr0とすると、板厚又は引張強度の異なる鋼板においても、板押え17の端部付近の相当塑性ひずみ最大値を低減する効果が得られることが図6及び図7から示される。
一方、好適範囲の上限値に関しても、板厚1.2mm、引張強度590MPa級の鋼板の場合と同様、最小曲率半径の15倍とすると、ピン角端部の板押え17を用いた場合よりも相当塑性ひずみ最大値が低減していることが図6及び図7より確認される。
例えば、板厚0.6mm、引張強度590MPa級の高張力鋼板をピン角端部の板押え18を用いて伸びフランジ成形を行うプレス成形解析を実施した結果、該板押え端部付近におけるブランク材9の曲率半径はr0=11mmであった。また、表2より、曲率半径16mmで相当塑性ひずみ最大値が0.061と極小値を示し、ピン角の相当塑性ひずみ最大値0.170との差(0.170-0.061=0.109)の半分の値(0.0545)を求めると、ピン角の相当塑性ひずみ最大値0.170との差は(0.170-0.0545=)0.1155となる。この値と表2の相当塑性ひずみ最大値とを比較すると、ブランク材9の曲率半径r0=11mm以上ではr=128mmまで、相当塑性ひずみ最大値が前記0.1155以下であることがわかる。したがって、r=128mmとr=256mmの中間に曲率半径の上限値があり、ブランク材9の曲率半径r0=11mmの約15倍となる。
次いで、板厚1.8mm、引張強度590MPa級の高張力鋼板をピン角端部の板押え18を用いて伸びフランジ成形を行うプレス成形解析を実施した結果、該板押え端部付近におけるブランク材9の曲率半径はr0=39mmであった。また、表2より、曲率半径96mmで相当塑性ひずみ最大値が0.040と極小値を示し、ピン角の相当塑性ひずみ最大値0.050との差(0.050-0.040=0.010)の半分の値(0.005)を求めると、ピン角の相当塑性ひずみ最大値0.050との差は(0.050-0.005=)0.045となる。この値と表2の相当塑性ひずみ最大値とを比較すると、ブランク材9の曲率半径r0=39mm以上ではr=512mmまで、相当塑性ひずみ最大値が前記0.045以下であることがわかる。したがって、r=512mmを超えた曲率半径の上限値があり、ブランク材9の曲率半径r0=39mmの約15倍としてよい。
さらに、板厚1.2mm、引張強度270MPa級の鋼板をピン角端部の板押え18を用いて伸びフランジ成形を行うプレス成形解析を実施した結果、該板押え端部付近におけるブランク材9の曲率半径はr0=28mmであった。また、表2より、曲率半径96mmで相当塑性ひずみ最大値が0.029と極小値を示し、ピン角の相当塑性ひずみ最大値0.052との差(0.052-0.029=0.023)の半分の値(0.0115)を求めると、ピン角の相当塑性ひずみ最大値0.052との差は(0.052-0.0115=)0.0405となる。この値と表2の相当塑性ひずみ最大値とを比較すると、ブランク材9の曲率半径r0=28mm以上ではr=256mmまで、相当塑性ひずみ最大値が前記0.0405以下であることがわかる。したがって、r=256mmとr=512mmの中間に曲率半径の上限値があり、ブランク材9の曲率半径r0=28mmの約15倍となる。
次いで、板厚1.2mm、引張強度980MPa級の高張力鋼板をピン角端部の板押え18を用いて伸びフランジ成形を行うプレス成形解析を実施した結果、該板押え端部付近におけるブランク材9の曲率半径はr0=20mmであった。また、表2より、曲率半径40mmで相当塑性ひずみ最大値が0.048と極小値を示し、ピン角の相当塑性ひずみ最大値0.075との差(0.075-0.048=0.027)の半分の値(0.0135)を求めると、ピン角の相当塑性ひずみ最大値0.075との差は(0.075-0.0135=)0.0615となる。この値と表2の相当塑性ひずみ最大値とを比較すると、ブランク材9の曲率半径r0=30mm以上ではr=256mmまで、相当塑性ひずみ最大値が前記0.0615以下であることがわかる。したがって、r=256mmとr=512mmの中間に曲率半径の上限値があり、ブランク材9の曲率半径r0=20mmの約15倍となる。
以上より、板押え17の端部を円弧状曲面とする際、ピン角端部の場合にブランク材9に生じる曲率半径を基準として、板押え17の端部の曲率半径の好適範囲を定められることが示された。しかしながら、上記の方法では板厚又は引張強度の異なる鋼板を伸びフランジ成形する場合には有限要素法を用いたプレス成形解析を行い、該鋼板の前記ブランク材9に生じる曲率半径を知る必要がある。そこで、プレス成形解析を実施せず、鋼板の板厚及び材質から前記ブランク材9に生じる曲率半径を推算し、前記曲率半径の好適範囲を求めるために、図5から図7に示した鋼板条件における鋼板の板厚及び引張強度をパラメータフィッティングし、ブランク材9の曲率半径を推算する下式(2)を導出した。
r0,cal=(板厚)1.2*(材料n値)0.4*42・・・(2)
上式(1)により得られる推算値の妥当性を検証するため、有限要素法による伸びフランジ成形解析で得られた値r0と比較検討した。その結果を表3に示す。
表3より、式(1)により得られる推算値とプレス成形解析により得られる値とが良く一致し、上式(1)の有効性が実証された。
従って、本発明に係るプレス成形方法を伸びフランジ成形に適用する際には、ブランク材9の板厚および材料n値を用いて式(2)により曲率半径r0(=r0,cal)を推算し、この値を基に式(2)に示す板押え17の端部の円弧状曲面の曲率半径の好適範囲を求める。
r0,cal<r≦15*r0,cal・・・(3)
この好適範囲に含まれる曲率半径の円弧状曲面端部を有する板押え17を用い、伸びフランジ成形を行うことにより、該板押え端部付近におけるブランク材9の折れ曲がりを抑制することが可能となる。
以上、本発明に係る実施の形態1では、板押え17の端部を円弧状曲面としているが、本発明により期待される効果の本質は、ピン角端部の板押え18を用いてプレス成形した際に、該板押え端部付近でブランク材9が塑性変形して折れ曲がることを抑制するものである。すなわち、プレス成形時にブランク材9が浮き上がるような変形をする際、天板面上でブランク材9に接している板押え17に、ブランク材9の浮き上がるような変形を抑制するような延出部を板押え17の端部に設けることにより、ブランク材9の折れ曲がりを防止することが可能となる。
そこで、例えば、ブランク材の急峻な折れ曲がりを抑制するためには、図8及び図9に示すように、ブランク材9をダイ13に配置する際に用いる板押え17の端部について、曲率の異なる曲面を組み合わせたもの(図8(a))、平面を組み合わせて円弧状曲面を模擬したもの(図8(b))、段差形状のもの(図9(a)及び(b))とする等、板押え17の端部を円弧状曲面又は平滑な平面をいくつか組み合わせて構成した形状としても良い。
なお、曲率半径rの円弧状曲面の内側となる延出部は、平面同士の境界又は段の一部又は全部が前記円弧状曲面を仮想として内接する。
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係るプレス成形方法は、図10に示す凸状外周縁部24を有する天板部26と、天板部26における凸状外周縁部24に沿って曲げ成形された縦壁部28を有する成形品22をプレス成形する縮みフランジ成形方法である。このような形状の成形品22は、縦壁部28が縮みフランジ変形となり、縦壁部28の屈曲部28aに縮み変形が集中し、当該部位にシワが発生しやすい。
該縮みフランジ成形方法は、図11に示すダイ23と、パンチ25と、ブランク材9を押える板押え27を備えた金型21を用いて行うものであり、ブランク材9における天板部26に相当する部位の一部を板押え27により押えることによりブランク材9をダイ23に固定する板押え工程と、パンチ25を移動させることにより縦壁部28を形成する縦壁成形工程(図12(a))、パンチ25をさらに移動させることにより天板部26を平坦に成形する天板部成形工程(図12(b))を備えている。
実施の形態1に示した伸びフランジ成形方法と同様、該縮みフランジ成形方法においても、縦壁成形工程において板押え27の端部付近にてブランク材の塑性変形による折れ曲がりが生じ(図12(a)、(b))、該折れ曲がりが生じた箇所は天板部成形工程を経ても解消されず残ってしまう。
そこで、実施の形態1と同様、板押え端部を板押え水平面からの延出部の一例となる円弧状曲面とした板押え27を用いてプレス成形することにより(図11参照)、板押え27の端部付近における折れ曲がりを抑制する方法について精査した。具体的には、板押え27の端部に様々な曲率半径を与えた場合のプレス成形解析を実施し、該板押え端部近傍におけるブランク材9の相当塑性ひずみ最大値を求めた。
プレス成形解析は、実施の形態1と同様、有限要素法を用いたコンピュータ解析により行った。解析プログラムとしてはLSTC社製のLS−DYNAバージョン971の動的陽解法ソルバーを用いた。
図13は、ブランク材9の板厚が1.2mm、引張強度が590MPa級の高張力鋼板を縮みフランジ成形した場合における板押え27の端部の曲率半径r(mm)と、板押え27の端部付近の相当塑性ひずみ最大値との関係を示すグラフである。また、表4に縮みフランジ成形における前記板押え端部の曲率半径と相当塑性ひずみ最大値の関係を示す。
板押え27の端部の曲率半径の増加とともに相当塑性ひずみ最大値は一旦減少し、曲率半径r=40mmにおいて極小値を示し、曲率半径r=48mm以上に増加すると相当塑性ひずみは増加している。この結果は、実施の形態1に示した伸びフランジ成形の場合と同様、1)板押え27の端部を円弧状曲面形状にすることにより、成形過程において該板押え端部付近のブランク材9に発生する塑性ひずみ量を減少することが可能であること、2)前記板押え端部の付近にてブランク材9に生じる相当塑性ひずみ量を減少させるのに好適な曲率半径の範囲が存在することを表している。
板押え27の端部の曲率半径の好適範囲に関して、実施の形態1と同様に、該板押え端部がピン角の場合の前記板押え端部におけるブランク材9の曲率半径r0を基準として決定する方法について検討した。
好適範囲の下限値に関しては、ピン角端部の板押え27を用いた場合にブランク材9の曲がり変形の曲率半径r0とした。板厚1.2mm、引張強度590MPa級の高張力鋼板をピン角端部の板押え27を用いて縮みフランジ成形した場合の該板押え端部の付近におけるブランク材9の曲率半径はr0=23mmであった。表4より、前記板押え端部がピン角の場合には相当塑性ひずみの最大値が0.094であるのに対し、前記板押え端部の曲率半径がr0=23mm以上であるr=32mmの場合には0.065となり、約31%減少した。これより、前記板押え端部を円弧状曲面とし、その曲率半径をピン角端部を用いた場合にブランク材9に生じる曲率半径より大きくすることにより、相当塑性ひずみ量を十分に抑制する効果があることが分かる。
板押え27の端部の円弧状曲面の曲率半径に対する好適範囲の上限値に関して、本発明においては、ピン角端部を用いた場合におけるブランク材9の相当塑性ひずみ最大値と板押え端部を円弧状曲面としたときの相当塑性ひずみ最大値との差の最大の値Δεmaxを求め、この差が半分以下となる場合の曲率半径を目安とした。
表4より、曲率半径40mmで相当塑性ひずみ最大値が0.056と極小値を示し、ピン角の相当塑性歪み最大値0.094との差(0.094-0.056=0.038)の半分の値(0.019)を求め、ピン角の相当塑性ひずみ最大値0.094との差は(0.094-0.019=)0.075となる。この値と表4の相当塑性ひずみ最大値とを比較すると、ブランク材9の曲率半径r0=23mm以上ではr=256mmまで、相当塑性ひずみ最大値が前記0.075以下であることがわかる。したがって、r=256mmとr=512mmの中間に曲率半径の上限値があり、ブランク材9の曲率半径r0=23mmの約15倍となる。
以上より、縮みフランジ成形においても、上式(1)により前記端部の曲率半径の好適範囲を推定することが可能であることが示された。
次に、表5に、式(2)により推算される曲率半径r0,calと有限要素法を用いたコンピュータ解析により得られたピン角端部におけるブランク材9の変形の曲率半径r0を示す。
表5より、両者は良く一致していることが確認された。従って、縮みフランジ成形の場合においても、式(2)によりピン角端部の板押え27を用いた時のブランク材9の天板部のピン角端部付近に生じる変形の曲率半径を良好に推算できることが示された。
以上より、本発明に係る縮みフランジ成形方法を実施する際には、ブランク材9の板厚および材料n値を用いて式(2)によりブランク材9に生じる曲率半径r0,calを推算し、この値を基準として板押え27の端部の円弧状曲面の曲率半径の好適範囲を上式(3)より求め、この好適範囲に含まれる曲率半径の円弧状曲面端部を有する板押え27を用いて縮みフランジ成形を行うことにより、ブランク材9の折れ曲がりが抑制されたプレス成形品を成形することが可能となる。
[実施の形態3]
本発明の実施の形態3に係るプレス成形方法は、図14に示すL字型の成形品31をプレス成形するドロー成形方法である。
該ドロー成形方法は、図15に示す上金型となるダイ43と、パンチ45と、ブランク材9を押える板押え48と、板押え48を押圧するガスシリンダー49と、ブランク材9をダイ43に固定するブランクホルダー51を備えた金型41を用いて行うものであり、ブランク材9の天板部に相当するブランク材9の部位の一部をガスシリンダー49により押えてブランク材9をダイ43に固定する板押え工程と、ダイ43を移動させることにより板押え48により押圧する板押え工程と、ダイ43を移動させることにより縦壁部を成形する縦壁成形工程と、ダイ43をさらに移動させることにより天板部を平坦に成形する天板部成形工程を備えている。
前記実施の形態1及び2に示したフランジ成形方法と同様、板押えを用いたドロー成形方法においても、図18(a)及び(b)のCに示す箇所のように、縦壁成形工程において板押え48の端部付近にてブランク材の塑性変形による折れ曲がりが生じる場合がある。
そこで、実施の形態1及び2と同様、図15にて示すピン角の板押え端部を有する板押え48(図17(a))の替わりに、図17(b)に示すような板押え端部を円弧状曲面とした板押え47を用いてドロー成形することにより、板押え端部付近における折れ曲がりを抑制する方法について精査した。具体的には、図17(b)中の破線で囲む箇所に示すように、板押え47の端部を円弧状曲面とし、該円弧状曲面の曲率半径を変更してドロー成形解析を実施し、該端部近傍におけるブランク材の相当塑性ひずみ最大値を求めた。
ドロー成形解析は、実施の形態1及び2と同様、有限要素法を用いたコンピュータ解析により行った。解析プログラムとしてはLSTC社製のLS−DYNAバージョン971の動的陽解法ソルバーを用いた。本実施の形態では、解析対象としたブランク材9は板厚1.2mm、引張強度590MPa級の高張力鋼板であり、板押え荷重は63kNとした。
板厚1.2mm、引張強度590MPa級の高張力鋼板をピン角端部の板押え48を用いてドロー成形した場合の該板押え端部の付近におけるブランク材9の曲率半径はr0=25mmであった。
図19は、板厚1.2mm、材質590MPa級の鋼板をブランク材9として前記有限要素法によるドロー成形解析を行って得られた、板押え47の端部の曲率半径と該端部付近の相当塑性ひずみ最大値の関係を表すグラフである。また、表6にドロー成形における板押え47の端部の曲率半径と相当塑性ひずみ最大値の関係を示す。
前記板押え端部の曲率半径の増加とともに相当塑性ひずみ最大値は減少し、板厚1.2mm、590MPa級鋼板の場合は曲率半径r=70mmにおいて一旦極小値を示し、曲率半径がさらに増加すると相当塑性ひずみ最大値は増加する。この結果は、実施の形態1及び2に示したフランジ成形の場合と同様、板押え47の端部を円弧状曲面にすることにより、1)縦壁を成形する工程において前記板押え端部付近に生じる相当塑性ひずみ量を低減することが可能である、2)前記板押え端部付近に生じる相当塑性ひずみ量を低減するのに好適な曲率半径の範囲が存在することを表している。
板押え47の端部の曲率半径の好適範囲に関して、実施の形態1と同様に、ブランク材9の天板部の前記板押え端部付近での変形の該板押え端部がピン角の場合における曲率半径r0を基準とする方法について検討した。
曲率半径の好適範囲の下限値に関しては、ピン角端部の板押え48を用いた場合にブランク材に生じる曲がり変形の曲率半径r0,calを基準とした。式(2)により与えられる曲率半径r0,calは、r0,cal=25mmである。
前記板押え端部の円弧状曲面の曲率範囲の上限値に関しても、前記実施の形態1及び2のフランジ成形と同様、ピン角端部の板押え48を用いた場合と該板押え端部を円弧状曲面とした場合の相当塑性ひずみ最大値との差の最大の値Δεmaxを求め、この差が半分以下となる場合の曲率半径を目安とした。
板厚1.2mm、引張強度590MPa級の高張力鋼板の場合、ピン角端部付近におけるブランク材9の曲率半径はr0=25mmであった。また、表6より、曲率半径70mmで相当塑性ひずみ最大値が0.041と極小値を示し、ピン角の相当塑性ひずみ最大値0.092との差(0.092-0.041=0.051)の半分の値(0.0255)を求めると、ピン角の相当塑性ひずみ最大値0.092との差は(0.092-0.0255=)0.0665となる。この値と表6の相当塑性ひずみ最大値とを比較すると、ブランク材9の曲率半径r0=25mm以上では、r=300mmとr=500mmの中間に曲率半径の上限値があり、ブランク材9の曲率半径r0=25mmの約15倍となる。
これより、ドロー成形においても板押え47の端部を円弧状曲面とし、その曲率半径をピン角端部の板押え48を用いた場合にブランク材9に生じる曲率半径以上とすることにより、成形過程における折れ曲がりを抑制することが可能であることが示された。
また、本発明の他の実施形態に係るドロー成形方法を実施する際において、ブランク材9の板厚および材料n値を用いて式(2)により曲率半径r0,calを推算し、この値を基準として該板押え端部の円弧状曲面の曲率半径の好適範囲を求め、この好適範囲に含まれる曲率半径の円弧状曲面端部を有する板押え47を用いてドロー成形を行うことにより、ブランク材の折れ曲がりが抑制されたプレス成形品を成形することが可能となる。
なお、図20は円弧状曲面の板押え端部の曲率半径rと相当塑性ひずみ最大値の関係における成形モードの違いを比較したグラフである。いずれの成形モードにおいても、円弧状曲面形状の板押え端部を有する板押え17、27又は47を用いることにより、成形過程において該板押え端部付近のブランク材9に発生する相当塑性ひずみ量を減少させることが可能であること、さらに、該板押え端部付近に生じる相当塑性ひずみ量を減少させるのに好適な曲率半径の範囲が存在することが分かる。
本発明に係るプレス成形品の製造方法の効果を確認する実験及びコンピュータ解析を行ったので、以下これについて説明する。
板厚1.4mm、引張強度1180MPaの高張力鋼板をドロー成形して、図14に示すL字型の成形品31を作製した。ドロー成形方法は、ブランク材9をブランクホルダー51により上金型となるダイ43に固定するとともに、成形品31の天板部に相当するブランク材9の部位の一部をガスシリンダー49を用いて板押え48又は47により押圧する工程と、パンチ45の上方からダイ43を下動させることにより縦壁部を形成する縦壁成形工程を備えている(図15参照)。板押え工程においては板押え端部がピン角又は円弧状曲面の板押え48又は47を用い、ドロー成形して得られた成形品31の形状を比較検討した。
実験及びコンピュータ解析で用いた板押え47には、図17に示す形状のものを使用した。板押え端部を円弧状曲面とした場合(図17(b))、その曲率半径は前記実施の形態3で示した曲率半径の好適範囲内(r0=25mm<r≦15*25=375mm)にあるr=80mmとした。ドロー成形条件として、板押え48又は47によるブランク材9の板押え荷重は14kNとした。コンピュータ解析は前記実施の形態と同様、有限要素法を用いたコンピュータ解析により行った。解析プログラムとしてはLSTC社製のLS−DYNAバージョン971の動的陽解法ソルバーを用いた。
図21及び図22は板押え端部形状がピン角又は円弧状曲面の板押え48又は47を用いた場合のドロー成形解析を行って得られた成形品31の形状である。ピン角端部の板押え48を用いた場合(図21)は、図中Dに示す成形品31の天板部に折れ曲がりが見られるのに対し、円弧状曲面の板押え47を用いた場合(図22)は、成形品31の天板部に折れ曲がりが見られず、該成形品の形状が良好であることを示している。
図23及び図24は板押え端部形状がピン角又は円弧状曲面の板押え48又は47を用いた場合のドロー成形実験を行って得られた成形品31の写真である。ピン角端部の板押え48を用いた場合、図23に示すEの箇所において、解析結果と同様に成形品31の天板部の板押え48の端部付近に折れ曲がりが発生していることが確認できる。一方、円弧状曲面端部の板押え47を用いた場合(図24)、図中Fに示す箇所の天板部に凹状の変形が見られるものの、折れ曲がりとはならず変形が緩和されていることが分かる。
以上より、板押え47の板押え端部を円弧状曲面とし、その曲率半径を適切に選択することによって、プレス成形品31の天板部に発生する折れ曲がり変形を抑制できることが実証された。
1 成形品
3 凹状外周縁部
5 天板部
7 縦壁部
7a 屈曲部
9 ブランク材
11 金型
13 ダイ
15 パンチ
17 板押え
18 板押え(端部形状がピン角)
21 金型
22 成形品
23 ダイ
24 凸状外周縁部
25 パンチ
26 天板部
27 板押え
28 縦壁部
28a 屈曲部
31 成形品
41 金型
43 ダイ
45 パンチ
47 板押え
48 板押え(端部形状がピン角)
49 ガスシリンダー
51 ブランクホルダー
71 金型
73 ダイ
75 パンチ
77 板押え

Claims (10)

  1. 天板部と、該天板部における外周縁部に沿って成形された縦壁部とを有する成形品をプレス成形するプレス成形方法であって、
    ブランク材における前記天板部に相当する部位の一部を板押えによって押える板押え工程と、前記縦壁部を成形する縦壁成形工程を備えており、
    前記板押え工程は、前記天板部の前記外周縁部のR止まりから所定の距離を離して板押えを行い、かつ前記板押えの先端部が、水平面の先端から延び出す延出部を有し、該延出部の全部が、下式で示される前記水平面の先端からの垂線上に中心を持ち前記水平面に内接して形成される曲率半径rの仮想の円弧状曲面の内側にあり、かつ前記延出部の一部又は全部が前記円弧状曲面に内接する部位を有する形状であることを特徴とするプレス成形方法。
    r0<r≦15*r0
    r0:ピン角の板押えを用いて天板部を押えることにより発生するブランク材の円弧状曲面の曲率半径
  2. 前記延出部の形状が、円弧状曲面であることを特徴とする請求項1に記載のプレス成形方法。
  3. 前記延出部の形状が、曲率の異なる曲面の組み合わせで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレス成形方法。
  4. 前記延出部の形状が、傾斜の異なる平面の組み合わせで構成され、平面同士の境界の一部又は全部が前記仮想の円弧状曲面に内接することを特徴とする請求項1に記載のプレス成形方法。
  5. 前記延出部の形状が、段形状であり、段の一部又は全部の角が前記仮想の円弧状曲面に内接することを特徴とする請求項1に記載のプレス成形方法。
  6. 天板部と、該天板部における外周縁部に沿って成形された縦壁部とを有する成形品をプレス成形する際に用いるプレス成形用金型であって、
    該プレス成形用金型はブランク材における天板部に相当する部位の一部を押える板押えを備えており、
    該板押えはその先端部が、水平面の先端から延び出す延出部を有し、該延出部の全部が下式でしめされる前記水平面の先端からの垂線上に中心を持ち前記水平面に内接して形成される曲率半径rの仮想の円弧状曲面の内側にあり、かつ前記延出部の一部又は全部が前記円弧状曲面に内接する部位を有する形状であることを特徴とするプレス成形用金型。
    r0<r≦15*r0
    r0:ピン角の板押えを用いて天板部を押えることにより発生するブランク材の円弧状曲面の曲率半径
  7. 前記延出部の形状が、円弧状曲面であることを特徴とする請求項6に記載のプレス成形用金型。
  8. 前記延出部の形状が、曲率の異なる曲面の組み合わせで構成されていることを特徴とする請求項6に記載のプレス成形用金型。
  9. 前記延出部の形状が、傾斜の異なる平面の組み合わせで構成され、平面同士の境界の一部又は全部が前記仮想の円弧状曲面に内接することを特徴とする請求項6に記載のプレス成形用金型。
  10. 前記延出部の形状が段形状であり、段の一部又は全部の角が前記仮想の円弧状曲面に内接することを特徴とする請求項6に記載のプレス成形用金型。
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