以下、本発明のフェルール、光配線部品および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<光配線部品>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の光配線部品の第1実施形態およびそれに含まれる本発明のフェルールの第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の光配線部品の第1実施形態を示す斜視図、図2は、図1のA−A線断面図およびB−B線断面図、図3は、本発明のフェルールの第1実施形態を示す斜視図、図4は、図3のA−A線断面図およびB−B線断面図、図5は、図1の光配線部品が含む光導波路のみを拡大して図示した斜視図である。なお、以下の説明では、図2、4、5中の上方を「上」、下方を「下」という。
図1に示す光配線部品10は、光導波路1と、光導波路1の端部に設けられたフェルール5と、を有している。
図1に示す光導波路1は、長尺状をなし、かつ幅よりも厚さが小さい横断面形状を有する帯状のものである。この光導波路1では、長手方向の一端と他端との間で光信号を伝送することができる。なお、本願の各図では、光導波路1のうち、一端近傍のみを図示しており、その他の部位の図示は省略しているが、他端近傍についても一端近傍と同様の構成とすることができる。また、本明細書では、各図におけるこの光導波路1の一端部を「先端部」、一端の端面を「先端面」ともいう。
このような光導波路1は、図5に示すように、クラッド層11、コア層13およびクラッド層12が下方からこの順で積層された積層体を備えている。また、図5に示すコア層13には、並列に設けられた2本の長尺状のコア部14と、各コア部14の側面に隣接する側面クラッド部15と、が形成されている。
図1に示す光導波路1の先端部には、この先端部を覆うようにフェルール5が設けられている。すなわち、フェルール5は光導波路1を収納し得る貫通孔(収納部)50を有しており、この貫通孔50内に光導波路1の先端部が挿入されている。そして、フェルール5の一端面が光導波路1の先端面と揃うよう構成されている。なお、本明細書では、各図におけるこのフェルール5の一端を「先端」、一端の端面を「先端面」といい、光導波路1の挿入口となるフェルール5の他端を「基端」、他端の端面を「基端面」という。貫通孔50は、フェルール5の基端から先端にかけて貫通形成されている。
光配線部品10では、光導波路1の先端部のうち、一方の主面たる下面101が、接着層55を介して、貫通孔50の内壁面のうち、光導波路1の下面101に臨む面である下面5001に固定されている。一方、光導波路1の先端部のうち、他方の主面たる上面102は、貫通孔50の上面5002から離間しており、光導波路1の先端部のうち、両側面103、103も、貫通孔50の側面5003、5003から離間している。
ここで、従来の光配線部品でも、このように接着層を介して光導波路とフェルールとを接着することが行われており、接着剤には一般に光硬化性のものが用いられていた。ところが、光導波路とフェルールとの隙間は非常に薄いので、フェルールの貫通孔内に光導波路を挿入した後、フェルールの先端側から接着剤に光を照射しても、接着剤の隅々まで光が届かない。このため、接着剤が十分に硬化せず、光導波路とフェルールとを確実に固定することができなかった。
かかる課題に鑑み、本発明者は、フェルールの構造を著しく複雑化させることなく、光硬化性接着剤の硬化性を高め得るフェルールの構造について鋭意検討を重ねた。そして、フェルールの光導波路を収納する収納部のうち、光導波路に臨む面の一部に、この面とフェルールの先端面の双方に開放する凹部を設けることにより、上記課題を効果的に解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、図1に示すフェルール5の貫通孔50のうち、下面5001には、下面5001を凹没させた凹部5001aが形成されている。この凹部5001aは、図3、4に示すように、フェルール5の先端面58と貫通孔50の下面5001とにそれぞれ開放するよう構成されている。また、凹部5001aは、フェルール5の基端側に延伸しており、基端側にも開放するよう構成されている。
貫通孔50の下面5001にこのような凹部5001aが形成されることにより、接着層55の未硬化物は、図2に示すように、その一部が凹部5001a内に入り込む。これにより、接着層55の未硬化物は、凹部5001aに入り込んだ分だけ、フェルール5の先端面に広く露出することとなる。このような接着層55の未硬化物の露出部は、この未硬化物に光を照射して硬化させる際、多くの光量を受けることができる。なお、光硬化性接着剤は、通常、露光によって含有する開始剤が反応してラジカルやカチオンが発生し、重合反応、すなわち硬化反応が進行する。また、開始剤の反応は、連鎖的に生じるため、光の照射面積が広ければ広いほど、硬化反応を急速に生じさせることができる。
一方、凹部5001aは、貫通孔50の下面5001にも開放しているので、開始剤の反応は、下面5001の全体へと速やかに広がることとなる。これにより、この露出部を中心にして下面5001の全体に硬化反応が進行し、接着層55の隅々まで、より短時間で硬化を完了させることができる。その結果、光導波路1とフェルール5とを確実に固定した信頼性の高い光配線部品10が得られる。
また、凹部5001aが基端側にも開口していることで、接着剤の硬化反応をより促進させることができる。すなわち、凹部5001aの先端側のみでなく基端側からも光を照射した場合、凹部5001aの長手方向の双方から光を進入させることができるので、硬化反応をより一層促進させることができる。
また、凹部5001aを設けることにより、接着層55の一部が凹部5001aに入り込むため、接着層55とフェルール5との間にはアンカー効果が生じる。その結果、凹部5001aを設けない場合に比べて、光導波路1とフェルール5との接着力をより増強することができる。
以下、光配線部品10の各部についてさらに詳述する。
(光導波路)
光導波路1は、平面視で帯状をなす長尺状の部材であり、一端から他端に光信号を伝送するものである。
図5に示す2本のコア部14は、クラッド部(側面クラッド部15および各クラッド層11、12)で囲まれており、コア部14に光を閉じ込めて伝搬することができる。
コア部14の屈折率は、クラッド部の屈折率より大きければよいが、その差は0.3%以上であるのが好ましく、0.5%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は特に設定されないが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率差が前記下限値未満の場合、光を伝搬する効果が低下するおそれがあり、一方、屈折率差が前記上限値を上回る場合、光の伝送効率のそれ以上の向上は期待できない。
なお、前記屈折率差とは、コア部14の屈折率をA、クラッド部の屈折率をBとしたとき、次式で表される。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
また、コア部14の横断面における幅方向の屈折率分布は、いかなる形状の分布であってもよい。この屈折率分布は、屈折率が不連続的に変化したいわゆるステップインデックス(SI)型の分布であってもよく、屈折率が連続的に変化したいわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布であってもよい。SI型の分布であれば屈折率分布の形成が容易であり、GI型の分布であれば屈折率の高い領域に信号光が集まる確率が高くなるため伝送効率が向上する。
また、コア部14は、平面視で直線状であっても曲線状であってもよい。さらに、コア部14は途中で分岐または交差していてもよい。
なお、コア部14の横断面形状は特に限定されず、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形であってもよいが、四角形(矩形状)であることにより、コア部14を形成し易い利点がある。
また、コア部14の幅および高さ(コア層13の厚さ)は、特に限定されないが、それぞれ1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜70μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1の伝送効率の低下を抑えつつコア部14の高密度化を図ることができる。
一方、図5に示すように複数のコア部14が並列しているとき、コア部14同士の間に位置する側面クラッド部15の幅は、5〜250μm程度であるのが好ましく、10〜200μm程度であるのがより好ましく、10〜120μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、コア部14同士の間で光信号が混在(クロストーク)するのを防止しつつコア部14の高密度化を図ることができる。
上述したようなコア層13の構成材料(主材料)は、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等を用いることができる。なお、樹脂材料は、異なる組成のものを組み合わせた複合材料であってもよい。
クラッド層11、12の平均厚さは、コア層13の平均厚さの0.05〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.1〜1.25倍程度であるのがより好ましい。具体的には、クラッド層11、12の平均厚さは、それぞれ1〜200μm程度であるのが好ましく、3〜100μm程度であるのがより好ましく、5〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に厚膜化するのを防止しつつ、クラッド部としての機能が確保される。
また、クラッド層11、12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特に(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂またはエポキシ系樹脂がより好ましい。
また、光導波路1の横断面の厚さ方向の屈折率分布についても、特に限定されず、例えばSI型、GI型の分布が挙げられる。
光導波路1の幅は、特に限定されないが、2〜100mm程度であるのが好ましく、5〜50mm程度であるのがより好ましい。
また、光導波路1中に形成されるコア部14の数は、特に限定されないが、1〜100本程度であるのが好ましい。なお、コア部14の数が多い場合は、必要に応じて、光導波路1を多層化してもよい。具体的には、図5に示す光導波路1の上に、さらにコア層とクラッド層とを交互に重ねることにより多層化することができる。
また、図5に示す光導波路1は、最下層として支持フィルム2を、最上層としてカバーフィルム3を、それぞれ備えている。
支持フィルム2およびカバーフィルム3の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂材料が挙げられる。
また、支持フィルム2およびカバーフィルム3の平均厚さは、特に限定されないが、5〜500μm程度であるのが好ましく、10〜400μm程度であるのがより好ましい。これにより、支持フィルム2およびカバーフィルム3は、適度な剛性を有するものとなるため、コア層13を確実に支持するとともに、外力や外部環境からコア層13を確実に保護することができる。
なお、クラッド層11と支持フィルム2との間、および、クラッド層12とカバーフィルム3との間は、それぞれ接着剤、粘着剤、接着シート、粘着シート等の部材を介して、あるいは熱圧着により接着されている。
(フェルール)
フェルール5は、光導波路1の先端部に設けられ、光導波路1を他の光学部品と光学的に接続し得るものである。このフェルール5は、各種コネクター規格に準拠した部位を含んでいてもよく、かかるコネクター規格としては、例えば小型(Mini)MTコネクター、JIS C 5981に規定されたMTコネクター、16MTコネクター、2次元配列型MTコネクター、MPOコネクター、MPXコネクター等が挙げられる。
本実施形態に係るフェルール5の先端面58には、図1、2に示すように、2つのガイド孔511が開口している。このガイド孔511は、フェルール5の基端面から先端面58まで貫通形成されている。これらのガイド孔511には、光配線部品10に他の光学部品を接続する際、他の光学部品側に設けられたガイドピンが挿入される。これにより、フェルール5と他の光学部品とを位置合わせするとともに、両者を固定することができる。すなわち、ガイド孔511は、光導波路1を他の光学部品と接続するための接続機構として用いられる。
なお、ガイド孔511は、先端面58に開口していれば、基端側には開口していなくてもよい。
また、上記接続機構に代えて、爪による係止を利用した係止構造や接着剤等を用いて接続するようにしてもよい。
図1に示す貫通孔50の下面5001には、3本の凹部5001aが、それぞれフェルール5の先端面58から基端側にかけて延在している。
各凹部5001aの形状は、下面5001を平面視したとき、フェルール5の先端と基端とを結ぶ方向、すなわち光導波路1の長手方向と平行な方向に長軸を持つ細長い形状になっている。このため、凹部5001aに入り込んだ接着層55の未硬化物に光が照射されたとき、凹部5001aを介してその光をフェルール5の基端側にまで効率よく届けることができる。すなわち、凹部5001aが導光路となって、直接露光できない部位を間接的に露光することができる。これにより、光硬化性接着剤における硬化反応の連鎖だけでなく、光の進行を利用することで硬化反応のさらなる促進を図ることができる。
下面5001に形成される凹部5001aの数は、例えば光導波路1やフェルール5のサイズ、光配線部品10の組み立てにおいて必要な接着剤の硬化性、下面5001の形状等に応じて適宜設定され、何ら限定されるものではないが、好ましくは1〜30個程度とされ、より好ましくは2〜20個程度とされる。これにより、下面5001の平坦な領域を一定量確保して下面5001に固定される光導波路1の位置精度を維持しつつ、接着剤を短時間で確実に硬化させることができる。また、この程度の数であれば、フェルール5の形状を著しく複雑化させることがないので、フェルール5の製造容易性の観点からも好ましい。
下面5001において凹部5001aが占める面積率は、特に限定されないが、0.5〜50%程度であるのが好ましく、1〜40%程度であるのがより好ましい。面積率を前記範囲内に設定することにより、下面5001の平坦な領域を一定量確保することによる下面5001に固定される光導波路1の位置精度と、凹部5001aの面積を一定量確保することによる接着信頼性とを、高度に両立させることができる。すなわち、面積率が前記下限値を下回ると、凹部5001aの割合が相対的に少なくなって接着剤を十分に硬化させることができないおそれがある。一方、面積率が前記上限値を上回ると、凹部5001aの割合が相対的に多くなり過ぎ、光導波路1の位置を定める領域が小さくなるため、固定後の光導波路1の位置精度が低下、すなわち設計からの位置ずれが増大するおそれがある。
なお、凹部5001aの平面視形状は、図3に示すような直線状に限定されず、例えば途中で分岐したり、交差していたりしてもよい。また、先端面58から基端側に向かって凹部5001aの幅が漸増していたり、漸減していたりしてもよい。
また、フェルール5は、凹部5001aのように下面5001と先端面58の双方に開放している凹部以外に、例えば下面5001には開放しているものの先端面58に開放していない凹部を備えていてもよい。このような凹部を設けることにより、上述したアンカー効果をより増強することができる。
一方、凹部5001aの長軸に直交する横断面における形状は、図3に示すような略半円形に限定されず、例えば三角形、四角形、五角形のような多角形の他、台形、半星形、フック形等であってもよい。また、先端面58から基端側に向かう途中で凹部5001aの横断面形状が変化していてもよい。
なお、フェルール5の先端面58を平面視したとき、凹部5001aと下面5001との連結部では、図4(a)に示すように、面同士が不連続的に連結されていてもよいが、連続的に(滑らかに)連結されているのが好ましい。これにより、接着層55の下面にも不連続的な面ができなくなるので、形状的作用から、接着層55に応力が集中し易くなるのを避けることができる。
また、凹部5001aの深さは、特に限定されないが、下面5001からその法線方向における最大の深さが2〜500μm程度であるのが好ましく、5〜400μm程度であるのがより好ましい。凹部5001aの深さを前記範囲内に設定することで、接着剤の露光面積およびアンカー効果をそれぞれ増大させるとともに、接着層55の体積が大きくなり過ぎることによる熱膨張量の増大を抑制することができる。すなわち、凹部5001aの深さが前記下限値を下回ると、光導波路1やフェルール5のサイズ等によっては、接着剤を十分に硬化させることができないおそれがあり、一方、凹部5001aの深さが前記上限値を上回ると、光導波路1やフェルール5のサイズ等によっては、接着層55の体積が大きくなり過ぎて熱膨張量が増大し、例えば光導波路1との接着界面の剥離や光導波路1への応力集中といった不具合を発生させるおそれがある。
また、光導波路1の先端部のうち、両側面103、103は、貫通孔50の側面5003、5003に固定されていたり当接していたりしてもよいが、図2(a)に示すように、側面5003、5003から離間していてもよい。これにより、例えば温度変化や湿度変化に伴って光導波路1に体積変化が生じた場合でも、変化分をこの隙間で吸収することができ、光導波路1内に無用な応力集中が発生するのを緩和することができる。その結果、応力集中に伴って伝送効率が低下したり、光導波路1とフェルール5との間に剥離が発生したりするのを抑制することができる。
さらに、光導波路1の先端部のうち、上面102は、貫通孔50の上面5002に固定されていたり当接していたりしてもよいが、図2に示すように、上面5002から離間していてもよい。これにより、上述した応力集中の緩和をより一層図ることができる。
光導波路1の側面103と貫通孔50の側面5003との離間距離L1(図2参照)は、光導波路1やフェルール5のサイズ等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、好ましくは5〜1000μm程度とされ、より好ましくは10〜750μm程度とされ、さらに好ましくは15〜500μm程度とされ、特に好ましくは25〜350μm程度とされる。離間距離L1を前記範囲内に設定することにより、温度変化や湿度変化が大きな環境下でも伝送効率の低下や接着界面の剥離の発生を十分に抑制するとともに、光配線部品10の著しい大型化を避けることができる。
なお、光導波路1の側面103と貫通孔50の側面5003との間は、局所的に上記離間距離の範囲から外れている領域を含んでいてもよい。その場合、この領域の面積率は30%以下であるのが好ましい。
一方、光導波路1の側面103または貫通孔50の側面5003に離型処理を施すことにより、光導波路1と貫通孔50との間の潤滑性(摺動性)を高めることができる。これにより、離間距離L1をより狭めても、上述したような効果を得ることができる。具体的には、光導波路1の側面103および貫通孔50の側面5003のうちの少なくとも一方に離型処理を施すことにより、離間距離L1の範囲を好ましくは0.001〜1000μm、より好ましくは0.1〜500μm、さらに好ましくは1〜200μmまで拡張することができる。これにより、応力集中をより確実に緩和することができるとともに、光配線部品10の設計自由度を高めることができる。
離型処理としては、例えば、離型剤を被処理面に塗布または成膜する処理、プラズマ処理等の表面改質処理等が挙げられる。また、離型剤としては、例えば、フッ素系離型剤、シリコン系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、パラフィン系離型剤、モンタン系離型剤、カルナバ系離型剤等が挙げられ、これらのうちの1種を含むもの、または2種以上の混合物が用いられる。
また、光導波路1の上面102と貫通孔50の上面5002との離間距離L2(図2参照)も、光導波路1やフェルール5のサイズ等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、好ましくは10〜2000μm程度とされ、より好ましくは15〜1000μm程度とされ、さらに好ましくは100〜1000μm程度とされ、特に好ましくは300〜800μm程度とされる。離間距離L2を前記範囲内に設定することにより、温度変化や湿度変化が大きな環境下でも伝送効率の低下や剥離の発生を十分に抑制するとともに、光配線部品10の著しい大型化を避けることができる。
なお、光導波路1の上面102と貫通孔50の上面5002との間は、局所的に上記離間距離の範囲から外れている領域を含んでいてもよい。その場合、この領域の面積率は30%以下であるのが好ましい。
また、接着層55の厚さは、上記離間距離L2と同等程度であるのが好ましい。これにより、フェルール5に対して光導波路1を正確かつ確実に固定することができる。
また、離間距離L2は、離間距離L1より小さくても、等しくても、あるいは大きくてもよいが、離間距離L1の30〜300%程度であるのが好ましく、50〜200%程度であるのがより好ましい。これにより、フェノール5に対して光導波路1をより正確かつ確実に固定することができる。
なお、光導波路1の上面102または貫通孔50の上面5002にも上述したような離型処理を施すことにより、光導波路1と貫通孔50との間の潤滑性(摺動性)を高めることができる。これにより、離間距離L2をより狭めても、上述したような効果を得ることができる。具体的には、光導波路1の上面102および貫通孔50の上面5002のうちの少なくとも一方に離型処理を施すことにより、離間距離L2の範囲を好ましくは0.001〜1000μm、より好ましくは0.1〜500μm、さらに好ましくは1〜200μmまで拡張することができる。これにより、応力集中をより確実に緩和することができるとともに、光配線部品10の設計自由度を高めることができる。
また、フェルール5の貫通孔50の横断面形状は、基端から先端まで一定であってもよいが、途中で変化していてもよい。
本実施形態に係るフェルール5では、図4(b)に示すように、貫通孔50の高さがフェルール5の基端側に向かって漸増するよう構成されている。具体的には、貫通孔50の下面5001のうち、基端側の一部は、基端に向かうにつれて下方への傾斜が徐々に大きくなるよう湾曲している。すなわち、下面5001の基端側の一部は、湾曲面5001bになっており、その曲率が基端に向かって漸増している。また、上面5002のうち、基端側の一部は、基端に向かうにつれて上方への傾斜が徐々に大きくなるよう湾曲している。すなわち、上面5002の基端側の一部は、湾曲面5002bになっており、その曲率が基端に向かって漸増している。
貫通孔50がこのような構成になっていると、図2(b)に示すように貫通孔50に対して光導波路1が挿入されたとき、光導波路1と下面5001との間の距離、および、光導波路1と上面5002との間の距離が、それぞれ基端に向かって漸増することとなる。このような隙間があることにより、光導波路1に対して図2(b)の上方あるいは下方に引っ張る外力が付与されたとき、光導波路1は下面5001や上面5002に沿って湾曲することができる。これにより、光導波路1は湾曲面5001bや湾曲面5002bに沿って緩やかに湾曲することとなり、急激な折れ曲がりが生じることが抑制される。その結果、急激な折れ曲がりに伴う伝送効率の低下や断線といった不具合の発生を防止することができる。
また、外力を受けた光導波路1が湾曲面5001b、5002bに接するまでの間、光導波路1は外力にしたがって比較的自由に動くことができる。この間は外力を受け流すことができるため、光導波路1が貫通孔50から抜けてしまうのを抑制することができる。
下面5001のうちの湾曲面5001bの長さL3および上面5002のうちの湾曲面5002bの長さL3は、フェルール5の全長L4の5〜50%程度であるのが好ましく、10〜40%程度であるのがより好ましい。L4に対するL3の割合を前記範囲内に設定することで、フェルール5に対する光導波路1の確実な固定と、光配線部品10の外力に対する耐久性とを、高度に両立させることができる。すなわち、L3/L4が前記下限値を下回ると、光配線部品10の外力に対する許容性が低くなるおそれがあり、一方、L3/L4が前記上限値を上回ると、固定力が低下し、強い力で引っ張ったときなどに固定が解除されてしまうおそれがある。
フェルール5の構成材料としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂のような各種樹脂材料、ステンレス鋼、アルミニウム合金のような各種金属材料等が挙げられる。
(接着層)
接着層55の構成材料としては、例えば、接着剤の硬化物、ボンディングシートの硬化物等が挙げられる。
このうち、接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、オレフィン系接着剤、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。
一方、ボンディングシートの構成材料としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂のようなビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のようなノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等のような芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の各種エポキシ樹脂のほか、ポリイミド、ポリアミドイミドのようなイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ボンディングシートの構成材料は、上記の熱硬化性樹脂の他に、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、反応性末端カルボキシル基NBR(CTBN)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ビニルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂のような熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。これらのゴム成分および熱可塑性樹脂の含有率は、熱硬化性樹脂100質量部に対して10〜200質量部程度であるのが好ましく、20〜150質量部程度であるのがより好ましい。
接着層55の引張弾性率(ヤング率)は、光導波路1のサイズ等に応じて若干異なるものの、好ましくは100〜20000MPa程度とされ、より好ましくは300〜15000MPa程度とされ、さらに好ましくは500〜12500MPa程度とされ、特に好ましくは1000〜10000MPa程度とされる。接着層55の引張弾性率を前記範囲内に設定することにより、フェルール5に対して光導波路1をより確実に固定しつつ、光導波路1中における応力集中をより確実に緩和して伝送損失の増大を抑えることができる。
なお、接着層55の引張弾性率は、JIS K 7127に規定された方法に準拠して測定され、測定温度は25℃とする。
また、接着層55のガラス転移温度は、30〜180℃程度であるのが好ましく、35〜140℃程度であるのがより好ましい。接着層55のガラス転移温度を前記範囲内に設定することにより、光配線部品10の耐熱性をより高めることができる。
なお、接着層55のガラス転移温度は、動的粘弾性測定法(DMA法)により測定することができる。
また、本実施形態では、光導波路1の側面103、103と貫通孔50の側面5003、5003とが離間しているが、接着層55についても図2(a)に示すように貫通孔50の側面5003、5003から離間しているのが好ましい。これにより、光導波路1内に局所的な応力集中が発生するのをより確実に抑制することができる。この場合の離間距離は、上記離間距離L1と同様に設定される。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の光配線部品の第2実施形態および本発明のフェルールの第2実施形態について説明する。
図6は、本発明のフェルールの第2実施形態を示す図であって、図2のA−A線断面図に相当する第2実施形態の断面図および図2のB−B線断面図に相当する第2実施形態の断面図、図7は、図6に示すフェルールの変形例である。
以下、第2実施形態について説明するが、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図6、7において第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第2実施形態は、凹部5001aの構成が異なる以外、第1実施形態と同様である。
図6に示すフェルール5では、凹部5001aが基端側に開口しておらず、貫通孔50の途中までで止まるように形成されている。
このようなフェルール5においても、凹部5001aは、貫通孔50の下面5001とフェルール5の先端面58の双方に開放しているので、かかるフェルール5およびこのフェルール5を備えた光配線部品10は、第1実施形態と同様の作用、効果を奏する。
また、本実施形態に係るフェルール5では、接着剤の硬化反応を先端側から基端側へと順次進めることができる。このため、接着剤全体において一斉に硬化反応が始まる場合に比べて、光導波路1と接着層55との接着界面に歪みが発生し難くなる。その結果、光導波路1の意図しない変形を抑えることができる。
また、凹部5001aの横断面形状は、図7(a)に示すような矩形状であってもよい。
図7に示すフェルール5には、横断面形状が矩形状をなす凹部5001aが1つだけ形成されている。この凹部5001aは、貫通孔50の下面5001の幅のほぼ中心を下方に凹没させてなるものであり、上述したものと同様、下面5001と先端面58の双方に開放している。また、この凹部5001aは、基端側に開口しておらず、貫通孔50の途中まで形成されている。
このような凹部5001aの幅(先端面58の開口の幅)W(複数の場合は幅の合計)は、光導波路1の剛性等に応じて適宜設定されるが、光導波路1の幅の1〜80%程度であるのが好ましく、10〜60%程度であるのがより好ましい。これにより、特に良好な硬化性を得ることができる。
≪第3実施形態≫
次に、本発明の光配線部品の第3実施形態および本発明のフェルールの第3実施形態について説明する。
図8は、本発明のフェルールの第3実施形態を示す図であって、図2のA−A線断面図に相当する第3実施形態の断面図および図2のB−B線断面図に相当する第3実施形態の断面図、図9は、図8に示すフェルールの変形例である。
以下、第3実施形態について説明するが、第1、第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図8において第1実施形態と同様の構成部分については、先に説明したのと同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第3実施形態は、フェルール5の構成が異なる以外、第1実施形態と同様である。
図8に示すフェルール5は、貫通孔50に代えて、先端から基端にかけて形成され、光導波路1を収納し得る溝(収納部)501を備えており、この溝501内に光導波路1の先端部が収納されている。そして、フェルール5の先端面58が光導波路1の先端面と揃うよう構成されている。光導波路1の先端部は、この溝501の底面5011に対し、接着層を介して固定されることとなる。
溝501の底面5011には、第1実施形態に係る凹部5001aと同様の凹部5011aが形成されている。この凹部5011aも、凹部5001aと同様、フェルール5の先端面58と溝501の底面5011の双方に開放している。このため、かかるフェルール5およびこのフェルール5を備えた光配線部品10は、第1実施形態と同様の作用、効果を奏する。
また、溝501に光導波路1を収納することで固定するため、貫通孔50に光導波路1を収納して固定する場合に比べて、固定作業、すなわち光配線部品10の組み立て作業が容易になる。
なお、溝501には、必要に応じて封止材を充填するようにしてもよい。この際、光導波路1の先端部の両側面103、103と溝501の側面5012、5012との隙間には、封止材が入り込まないようにするのが好ましい。例えば硬化性の封止材の場合、硬化前の封止材の流動性を最適化することにより、小さな隙間に入り込めなくすることができるので、それを利用すればよい。また、この隙間を埋めるようにスペーサーを挿入しておき、その状態で封止材を溝501に充填し、封止材の硬化後、スペーサーを除去する手順をとることもできる。
また、溝501の開放部を塞ぐことにより、実質的に貫通孔50を形成し、そこに光導波路1を収納するようにしてもよい。
図9に示すフェルール5は、先端から基端にかけて形成された溝501を備えた本体51と、溝501内に収まった状態で溝501の開放部を塞ぐよう設けられた蓋体52と、で構成されている。なお、図9は、溝501に蓋体52が収まる前の状態、すなわちフェルール5の分解状態を図示している。また、図9に示す溝501のうち、底面5011から上方に立設する2つの面をそれぞれ側面5012とする。溝501内に蓋体52が収まると、実質的に貫通孔50が形成されることとなる。すなわち、貫通孔50の下面が溝501の底面5011で構成され、両側面が溝501の側面5012で構成され、上面が蓋体52の下面521で構成されることとなる。この貫通孔50内に光導波路1の先端部が挿入され、両者を固定することにより、光配線部品10となる。なお、溝501の開放部を蓋体52で塞ぐとは、開放部を閉じるように蓋体52を載置し、これにより溝501を実質的な「孔」にすることをいう。このとき、蓋体52の側面が溝501の側面5012に当接していてもよく、固定されていてもよい。
一方、蓋体52は、その下面521が光導波路1の上面102に固定されていてもよい。このとき、蓋体52の側面は溝501の側面5012から離間しているのが好ましい。これにより、蓋体52は、本体51に直接固定されるのではなく、光導波路1を介して間接的に固定されることとなる。その結果、蓋体52は、光導波路1を保護するという機能を果たしつつも、光導波路1と同じように動くことのできるものとなる。換言すれば、本体51とは独立して動くことができるようになる。これにより、フェルール5は、光導波路1に応力集中をもたらすことなく、光導波路1を確実に保護し得るものとなる。
なお、蓋体52の側面と溝501の側面5012との離間距離は、上述した離間距離L1と同様に設定することができる。また、蓋体52の側面と溝501の側面5012との離間距離をこのように設定することで、この隙間を介して接着剤に露光することも可能になる。したがって、接着剤の硬化反応をさらに促進させることができる。
<電子機器>
上述したような本発明の光配線部品は、前述したように、他の光学部品と接続しても光導波路における伝送効率の低下が抑えられる。したがって、本発明の光配線部品を備えることにより、高品質の光通信を行い得る信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
本発明の光配線部品を備える電子機器としては、例えば、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類が挙げられる。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光配線部品を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消され、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
以上、本発明のフェルール、光配線部品および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、光導波路の一端には上述した各実施形態に係るフェルールが装着されている一方、他端には異なるフェルールやコネクター類が装着されていてもよく、光路変換部で受発光素子が実装されていてもよい。さらに他端にはフェルール等が装着されていなくてもよい。
また、光導波路の形状によっては、凹部を形成する面を、貫通孔の下面以外の面、例えば側面や上面にしてもよく、下面、上面および側面から選択される2つ以上の面に凹部を形成するようにしてもよい。なお、光導波路に主面と側面とがある場合、貫通孔の内壁面のうち、光導波路の主面に臨む面に凹部を形成するようにすれば、確実な固定と硬化反応の促進とを特に両立させることができる。