JP6118205B2 - 流体分離材料および流体分離モジュール - Google Patents

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本発明は、混合ガスから特定のガスを高純度に分離するための流体分離材料および流体分離モジュールに関する。
流体分離材料の一例である水素分離部材として、セラミックからなる多孔質基材の表面に水素透過膜および隔離部材を形成したものが知られている(特許文献1〜4参照)。特許文献1においては、水素分離部材と金属からなる固定部との接合部がろう材により接合されていることで、耐熱性が付与されている。しかし、水素透過膜としてシリカ膜を用いる場合は、水素分離材料の耐熱衝撃性を高めるため、水素透過膜と線熱膨張係数が近い多孔質シリカを基材として用いることが望まれている。
特許5057685号公報 特開2011−240301号公報 特開2012−7727号公報 特開2012−31967号公報
近年、水素燃料電池システムの一般家庭への普及が進み、さらに高発電効率化、システム小型化が要求されており、流体(水素)分離材料を用いた燃料改質器の開発が望まれている。
しかし、流体分離材料の多孔質支持体としてシリカ基材を用いる場合、シリカ基材と金属からなる固定部との熱膨張差が大きく、流体分離材料を高温加熱した際に接合部において割れ等が発生するおそれがある。そのため、流体分離材料を固定するためにOリングや接着剤などの有機物を用いる方法が検討されているが、Oリングや接着剤は耐熱性が低いため、この部分を高温に加熱できないという問題がある。このため、流体分離作業時に高温に加熱される流体分離材料に溶融シリカ管などの冷却部材を連結して加熱部から遠ざけてから、この溶融シリカ管をOリングや接着剤で構成される固定部で固定することにより耐熱性の問題を解消することが必要となる。しかし、この構成では、流体分離材料に連結された溶融シリカ管の分だけ流体分離材料の全体長が長くなってしまい、流体分離材料を備える流体分離モジュールも大型となってしまう。
本発明は、耐熱性の問題が生じることなく、小型化を実現可能な流体分離材料および流体分離モジュールを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の流体分離材料は、
分離膜を有する多孔質シリカ基材と、
前記多孔質シリカ基材と接続される石英管部と、
前記石英管部を介して前記多孔質シリカ基材と連結される金属管部と、
を備え、
前記石英管部と前記金属管部との間に、前記石英管部側から前記金属管部側に向かって段階的に線熱膨張係数が高くなるように構成された接続部が設けられている。
本発明によれば、耐熱性の問題が生じることなく、流体分離材料の小型化を実現することができる。
本発明の一実施形態である流体分離材料の例を示す縦断面図である。 図1の流体分離材料の一部拡大断面図である。 本発明に係る流体分離材料を備える流体分離モジュールの例を示す図である。 比較例に係る流体分離モジュールを示す図である。
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本願発明の実施形態に係る流体分離材料は、
(1)分離膜を有する多孔質シリカ基材と、
前記多孔質シリカ基材と接続される石英管部と、
前記石英管部を介して前記多孔質シリカ基材と連結される金属管部と、
を備え、
前記石英管部と前記金属管部との間に、前記石英管部側から前記金属管部側に向かって段階的に線熱膨張係数が高くなるように構成された接続部が設けられている。
石英管部と金属管部との熱膨張率の差を接続部で緩和させることで、石英管部と金属管部とを短い長さで接続することができ、金属管部では金属継手などを用いて容器などに固定できるので、耐熱性の問題が生じることなく、流体分離材料の小型化を実現することができる。
(2)前記接続部はガラスであり、前記石英管部側から前記金属管部側に向かってガラス成分である酸化珪素のモル分率が段階的に減少するように構成されていることが好ましい。
石英管部と金属管部との線熱膨張係数の差を接続部によりスムーズに埋めることができるためである。
(3)前記接続部の線熱膨張係数は7×10−7/K〜55×10−7/Kの範囲内で変化し、前記金属管部の線熱膨張係数は46×10−7/K〜55×10−7/Kであることが好ましい。
接続部および金属管部の線熱膨張係数を上記範囲とすることで、よりスムーズに石英管部と金属管部との線熱膨張係数の差を埋めることができ、流体分離材料の小型化をより確実に実現することができるためである。なお、上述の線熱膨張係数は、室温(25〜30℃)から300℃の範囲の平均線熱膨張係数を示す。
本願発明の実施形態に係る流体分離モジュールは、
(4)未精製ガスが導入される導入口と排出ガスが排出される排出口とを有する分離容器と、
前記分離容器内に配置される(1)から(3)のいずれかに記載の流体分離材料と、
を備えている。
短い流体分離材料を用いることにより、流体分離材料において耐熱性の問題が生じることなく、流体分離モジュールの小型化を実現することができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本発明に係る流体分離材料及びその製造方法の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
なお、本実施形態では、流体分離材料として水素を分離するものを例示して説明するが、本発明は、シリカ分離膜層の孔径等を変更することで、水素以外の気体または液体を分離するものとしても適用可能である。また、流体分離材料の形状は、平面状等、任意の形状とすることもできるが、反応効率の点から流体との接触面積をより広くするために、本実施形態では管状としている。
(流体分離材料)
図1及び図2に、流体分離材料の一実施形態を示す。図1は流体分離材料の縦断面図であり、図2は図1に示す流体分離材料の一部拡大断面図である。
図1に示すように、流体分離材料10は略円筒形状であり、その中心には流体分離材料10の長手方向に延びる略円形断面の中心孔12を有する。流体分離材料10は、多孔質シリカ基材14と、石英管部22と、金属管部24と、接続部26とを有している。
多孔質シリカ基材14は、中心孔12の外周上に管壁として形成されており、この外周上にシリカ分離膜層16を有する。多孔質シリカ基材14及びシリカ分離膜層16を有する部分の外径は例えば2mm〜50mmであり、内径(中心孔12の径)は例えば1.6mm〜48mm、長さは例えば200mm〜400mm程度である。中心孔12の一方の端部12aは塞がれており、中心孔12の他方の端部12bは開口されている。
シリカ分離膜層16は、水素透過膜として使用されるものであり、水素脆性や原料不純物との反応による膜の劣化を抑制できる。また、シリカ分離膜層16の支持体を多孔質シリカ基材14とすることで、シリカ分離膜層16における水素の透過を干渉することなく該薄膜を支持することができる。
また、多孔質シリカ基材14は、化学的耐久性や機械強度を改善する目的でシリカ以外の成分を導入することができるが、その線熱膨張係数は、2×10−6/K以下である。線熱膨張係数が2×10−6/Kを超えると、発生する熱応力が大きくなり、所望の耐熱衝撃性が得られない場合がある。多孔質シリカ基材14の形成材料は、耐熱衝撃性の観点からシリカ分離膜層16と線熱膨張係数が近似するものが好ましく、多孔質シリカであることがより好ましい。
石英管部22は、流体分離材料10の軸方向の開口端部12b側において、多孔質シリカ基材14と接続されている。石英管部22は、例えば純石英ガラスから構成されている。石英管部22の線熱膨張係数は、6×10−7/K程度である。
金属管部24は、石英管部22を介して多孔質シリカ基材14と連結されている。この金属管部24は、ガラス部24Aと、金属部24Bとを有している。ガラス部24Aは、例えばモル比で67SiO−18B−5Al−9RO(Rはアルカリ金属)からなるアルミノホウケイ酸塩ガラスから構成されている。このアルミノホウケイ酸塩ガラスの線熱膨張係数は石英管部22の線熱膨張係数の10倍程度である。金属部24Bは、例えばコバールから構成されている。金属部24Bとしては、コバール以外の金属を用いることもできるが、コバールは、上記アルミノホウケイ酸塩ガラスと同程度の線熱膨張係数を有しており、アルミノホウケイ酸塩ガラスと直接接合しても問題ないため、金属部24Bとしてコバールを用いることが好適である。具体的には、金属管部24の線熱膨張係数は46×10−7/K〜55×10−7/Kであることが好ましい。
接続部26は、石英管部22と金属管部24との間に設けられている。接続部26は、例えば石英からなる石英部26Aと、例えばアルミノホウケイ酸塩ガラスからなるガラス部26Bとを有している。図2に示すように、石英からなる石英部26Aは、同じ石英からなる石英管部22と連結され、アルミノホウケイ酸塩ガラスからなるガラス部26Bは、同じアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる金属管部24のガラス部24Aと連結されている。そのため、石英管部22と接続部26との境界および金属管部24と接続部26との境界においては、線熱膨張係数にほとんど差がなく、高温で加熱された場合にも割れ等が発生する問題は解消されている。
この接続部26において、石英部26Aとガラス部26Bとの間には、段継部26Cが設けられている。段継部26Cは、アルミノホウケイ酸塩ガラスから構成されている。段継部26Cは、石英管部22側から金属管部24側に向かって段階的に線熱膨張係数が高くなるように構成されている。なお、1段階の熱膨張係数差は、10×10−7/K以下とすることが好ましく、より好ましくは7×10−7/K以下である。具体的には、段継部26Cとして、ガラス成分である酸化珪素のモル分率が例えば97〜66%の範囲で異なるアルミノホウケイ酸塩ガラスを多段状に設けることで、酸化珪素のモル分率が石英管部22側から金属管部24側に向かって段階的に減少するように構成されている。
接続部26の線熱膨張係数は7×10−7/K〜55×10−7/Kの範囲内で変化していることが好ましい。
以上説明したように、本実施形態に係る流体分離材料10は、石英管部22と金属管部24との間に、石英管部22側から金属管部24側に向かって段階的に線熱膨張係数が高くなるように構成された接続部26が設けられている。そのため、石英管部22と金属管部24との熱膨張率の差を接続部26により徐々に緩和させることで、高温で加熱した場合でも流体分離材料10の割れの発生を防止することができ、流体分離材料10の耐熱信頼性を維持することができる。また、多孔質シリカ基材14に連結される石英管部22および接続部26は、多孔質シリカ基材14と金属管部24との熱膨張率の差を緩和するために必要な最低限の長さを有していれば良いため、流体分離材料10の全長を短くすることができ、流体分離材料10の小型化を実現することができる。
また、流体分離材料10において、接続部26は、ガラス成分である酸化珪素のモル分率が段階的に減少するように構成されている。これにより、石英管部22と金属管部24との線熱膨張係数の差を接続部26によりスムーズに埋めることができる。
また、流体分離材料10において、接続部26の線熱膨張係数は7×10−7/K〜55×10−7/Kであり、金属管部24の線熱膨張係数は46×10−7/K〜55×10−7/Kである。接続部26および金属管部24の線熱膨張係数を上記範囲とすることで、よりスムーズに石英管部と金属管部との線熱膨張係数の差を埋めることができ、流体分離材料10の小型化をより確実に実現することができる。
(流体分離モジュール)
次に、上記の流体分離材料10を適用した流体分離モジュールの一例について、図3を参照して説明する。
図3に示す流体分離モジュール30は、流体分離材料10を分離容器32内に備えている。分離容器32は、導入口33と、排出口34と、気密シール部35と、取出口36とを備えている。導入口33は、分離容器32の流体分離材料10が固定される面に開口されており、未精製ガス40を分離容器32内に導入する。排出口34は、分離容器32の導入口33と対向する面に開口されており、分離容器32から排出ガスである非透過ガス41を排出する。気密シール部35は、分離容器32の導入口33が開口された面に設けられている。気密シール部35において、流体分離材料10の開口側の端部である金属管部24が金属継手37により固定されている。取出口36は、気密シール部35に接続されており、この取出口36から透過ガス42が分離容器32の外部に取り出される。分離容器32の長手方向の周囲には分離容器32を加熱するためのヒータ部38が設けられている。
また、流体分離モジュール30は、分離容器内32内の流体分離材料10の周囲に、不図示の改質触媒を詰め、未精製ガス40は、水または酸素、あるいはその両方と、都市ガス、プロパンガス、灯油、石油、バイオメタノール、天然ガス、メタンハイドレート等の炭化水素を混合した原料ガスとし、分離容器内32で反応させることにより、改質器として動作する。原料ガス(未精製ガス40)は、導入口33を介して分離容器32内に導入された後にヒータ部38により500℃程度で加熱され、改質触媒(例えばRu系触媒)により改質されて水素ガスを生成する。改質反応中、生成した水素ガスは管状の流体分離材料10によって選択的に引抜かれて流体分離材料10内部の中心孔12(図1参照)まで透過され、取出口36から分離容器32の外部へ取り出される。
このような流体分離モジュール30において、気密シール部35では、分離容器32と流体分離材料10との間が密閉された状態で、流体分離材料10の金属管部24が金属継手37により固定されている。金属管部24の金属継手37により固定されている部分は、コバールから構成されているため、気密シール部35において気密にシールするための十分な機械的強度を有している。
上記の流体分離モジュール30を用いて、COメタン化触媒等を有するCO除去モジュールを更に備えた水素製造装置とすることもできる。また、圧力スウィング吸着(PSA)法を適用した水素高純度化モジュールを備えることで、自動車用燃料電池に用いる高純度水素製造装置とすることが可能である。
以上説明したように、流体分離モジュール30は、未精製ガス40が導入される導入口33と非透過ガス41が排出される排出口34とを有する分離容器32と、分離容器32内に配置される流体分離材料10と、を備えている。この構成によれば、長さの短い流体分離材料10を用いることができるので、流体分離材料10において耐熱性の問題が生じることなく、流体分離モジュール30全体の小型化が実現でき、例えば家庭用燃料電池システムであれば、従来の改質器よりも50mm程度短尺化した水素分離式改質器を提供することができる。
(実施例)
図3に示す流体分離モジュールを用い、流体分離材料のシリカ分離膜層を500±10℃に加熱して、HとNとの混合ガス(混合比率はHが50%、Nが50%)を導入し、流体分離材料により透過されて取出口から取り出された透過ガスのH濃度を、熱伝導ガス分析計を用いてモニターした。このとき、金属継手で保持される金属管部の温度は約250℃まで上昇した。
(比較例)
図4に、比較例に係る流体分離モジュール30Aの一例を示す。図4に示す流体分離モジュール30Aにおいては、分離容器32内に、流体分離材料10Aが設けられている。流体分離材料10Aは、シリカ分離膜層16を備えた多孔質シリカ基材14の開口側端部が石英管18と連結されたものである。この石英管18が気密シール部35AにおいてOリング37Aにより密閉状態で保持されている。なお、流体分離材料10Aの長さは、図3に示す実施例に係る流体分離材料10の長さとほぼ同一となるように形成されている。
図4に示す比較例に係る流体分離モジュールを用い、実施例と同様に、流体分離材料のシリカ分離膜層をヒータ部により500±10℃に加熱して、HとNとの混合ガス(混合比率はHが50%、Nが50%)を導入し、流体分離材料により透過されて取出口から取り出された透過ガスのH濃度を熱伝導ガス分析計を用いてモニターした。このとき、Oリングで保持される石英管の温度は約250℃まで上昇した。
その結果、多孔質シリカ基材、石英部、接続部および金属管部を備えた流体分離材料を用いた図3の実施例に係る流体分離モジュールにおいては、透過ガスのH濃度が99.5%以上である状態が10時間以上維持された。
一方、多孔質シリカ基材に溶融シリカ管が連結された流体分離材料を用いた図4の比較例に係る流体分離モジュールにおいては、加熱直後から石英管とそれを保持するOリングとの間の気密性が失われ始め、加熱開始から約10分後には透過ガスのH濃度が99.5%以下に低下した。
以上より、石英部と金属管部との間に接続部を備えた実施例に係る流体分離材料を用いることで、流体分離材料の耐熱信頼性を維持しながらも、流体分離材料および流体分離モジュールの小型化を実現することができることが確認できた。
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の思想と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
10:流体分離材料
12:中心孔
14:多孔質シリカ基材
16:シリカ分離膜層
22:石英管部
24:金属管部
24A:ガラス部
24B:金属部
26:接続部
26A:石英部
26B:ガラス部
26C:段継部
30:流体分離モジュール
32:分離容器
33:導入口
34:排出口
35:気密シール部
36:取出口
37:金属継手
40:未精製ガス(原料ガスの一例)
41:非透過ガス(排出ガスの一例)
42:透過ガス

Claims (4)

  1. 分離膜を有する多孔質シリカ基材と、
    前記多孔質シリカ基材と接続される石英管部と、
    前記石英管部を介して前記多孔質シリカ基材と連結される金属管部と、
    を備え、
    前記石英管部と前記金属管部との間に、前記石英管部側から前記金属管部側に向かって段階的に線熱膨張係数が高くなるように構成された接続部が設けられている、流体分離材料。
  2. 前記接続部はガラスであり、前記石英管部側から前記金属管部側に向かってガラス成分である酸化珪素のモル分率が段階的に減少するように構成されている、請求項1に記載の流体分離材料。
  3. 前記接続部の線熱膨張係数は7×10−7/K〜55×10−7/Kの範囲内で変化し、前記金属管部の線熱膨張係数は46×10−7/K〜55×10−7/Kである、請求項1または請求項2に記載の流体分離材料。
  4. 未精製ガスが導入される導入口と排出ガスが排出される排出口とを有する分離容器と、
    前記分離容器内に配置される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の流体分離材料と、
    を備えている、流体分離モジュール。
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